JP2018103606A - 積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】積層体表面上に粘着層を形成し、次いで粘着層を剥離したとき、剥離力が低く、粘着層の帯電が小さく、積層体の帯電が小さく、表面がオリゴマーブロック性及び耐溶媒密着性を有する積層体の提供。【解決手段】支持基材1の少なくとも一方の面に、層A2と層B3とを支持基材1側からこの順に有する積層体であって、層A2がオニウム塩を含み、層B3がオニウム塩及びポリジメチルシロキサンを含み、厚み方向における層B3の最表面の領域(領域X8)、層Bの中央部の領域(領域Y9)、層Aと層Bの界面の領域(領域Z10)におけるオニウム塩の濃度が式(1)又は(2)を満足する積層体。層A2がポリアルコキシシロキサン及び金属キレートを含むことが、好ましい積層体。更に好ましくはオニウム塩がイオン液体である、積層体。領域X≧領域Z>領域Y・・・式(1)、領域Z>領域X>領域Y・・・式(2)【選択図】図1

Description

本発明は積層体に関するものであり、特に粘着層が積層体の表面に形成され、使用時には粘着層から剥離される離型フィルムに好適に用いることができる積層体に関するものである。
透明なポリエステルフィルムは、液晶偏光板、位相差板等の光学フィルム製造時に用いる保護用フィルムとして近年多用されており、特にポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムは、粘着層を保護するための離型フィルムとして用いられている。
光学フィルムの粘着層は、離型フィルムから剥離後、所定の材料に貼合されることでその機能を発揮する。そのため、離型フィルムの基本機能は、粘着層の粘着力を様々な保管環境、保管期間であっても維持、保護することである。さらに離型フィルムには、前述の基本機能に加えて、貼合工程の省力化、高速化、収率アップに貢献することが求められる。
具体的には、生産性の観点からは粘着層から離型フィルムをはがす際の剥離力が、剥離速度によらず低いことや、粘着層から離型フィルムをはがした後、離型フィルムや粘着層の帯電に起因する品位低下や埃の付着を防ぐ観点から、「帯電防止性」が求められている。
さらに粘着層の形成工程にて、粘着層側に離型フィルム基材の低分子量成分(オリゴマー)が移行、析出することによる異物が発生しないこと(以降「オリゴマーブロック性」とする)や、離型フィルム上に粘着剤を塗布−乾燥した際に、離型層が粘着層溶出しないこと(以降「溶媒密着性」とする)も求められる。
この離型フィルムに求められる上記4つの特性に対し、特許文献1では「平均粒子径0.5〜3.0μmのコア・シェル型粒子を表層に含有する積層ポリエステルフィルムの一方の面に、四級アンモニウム塩基含有ポリマー、ポリエチレングリコール含有アクリレートポリマー、および架橋剤を含有する塗布液を塗布して得られたA層を有し、当該A層上に、少なくとも一種のオルガノシロキサン化合物を含有する塗布剤を塗布して形成された、厚みが10〜100nmのB層を有するポリエステルフィルムであって、当該B層上に離型層を有することを特徴とする離型ポリエステルフィルム」が提案されている。
また特許文献2では「二軸延伸ポリエステルフィルムの片面に、四級アンモニウム基含有ポリマーおよび多価アルデヒド化合物を含有する塗布液を塗布し、乾燥して得られた下引き層を有し、当該下引き層上に離型層を有することを特徴とする離型フィルム」が提案されている。
さらに特許文献3では「ポリエステルフィルムおよびその少なくとも一方の面に帯電防止剤および離型剤を含む帯電防止離型層を有する帯電防止離型性ポリエステルフィルムであって、該帯電防止剤がポリオキシアルキレン鎖を含有するカチオンポリマーであり、該カチオンポリマーが、下記式(1)または下記式(2)で表わされる単量体から形成された構成単位A、および下記式(3)または下記式(4)で表わされる単量体から形成された構成単位Bを含んでなり、該離型剤がシリコーン化合物であり、含有量が帯電防止離型層の重量を基準として20重量%以上であることを特徴とする帯電防止離型性ポリエステルフィルム」が提案されている。
特許文献4では「基材フィルムの片面に粘着剤層が形成された帯電防止表面保護フィルムの、前記粘着剤層の表面に、帯電防止剤を転写することができる帯電防止表面保護フィルム用剥離フィルムであって、 前記帯電防止表面保護フィルム用剥離フィルムは、樹脂フィルムの片面に、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、該剥離剤と反応しない帯電防止剤とを含有する剥離剤層を積層してなり、前記帯電防止剤の成分が、融点が30℃未満のイオン性化合物で
あり、前記帯電防止表面保護フィルム用剥離フィルムを、前記剥離剤層を介して前記粘着剤層
の表面に貼り合せたときに、前記剥離剤層の帯電防止剤を前記粘着剤層の表面に転写できることを特徴とする帯電防止表面保護フィルム用剥離フィルム」が提案されている。
特開2015−62999号公報 特開2014−226924号公報 特許第5623767号公報 特開2016−130016号公報
かかる背景技術において、本発明の積層体が実現しようとする課題をまとめると、以下の5点になる。
1.積層体表面上に粘着層を形成し、次いで粘着層を剥離したとき、剥離力が低いこと
2.積層体表面上に粘着層を形成し、次いで粘着層を剥離したとき、粘着層の帯電が小さいこと
3.積層体表面上に粘着層を形成し、次いで粘着層を剥離したとき、積層体の帯電が小さいこと
4.積層体の表面がオリゴマーブロック性を有すること
5.積層体の表面が耐溶媒密着性を有すること。
これに対し本発明者らが確認したところ、前述の公知技術は以下の状況にある。
特許文献1の技術は、オリゴマーブロック性が良好であるが、積層体側、粘着層側の帯電防止が不十分である。特許文献2の技術も、オリゴマーブロック性と積層体側の帯電防止は良好だが、粘着層側の帯電防止と、耐溶媒密着性が不十分である。特許文献3の技術は、積層体側の帯電防止は良好であるが、粘着層側の帯電防止と、オリゴマーブロック性、耐溶媒密着性が不十分である。特許文献4の技術は、粘着剤層と剥離剤層の間で剥離した際、粘着剤層側の帯電防止が良好だが、剥離剤層側の帯電防止と、剥離フィルムのオリゴマーブロック性が不十分である。以上の点から、これらいずれの技術またはこれらの技術の組み合わせを行っても前述の5つの項目を満たすことはできなかった。
なお、本発明者らは従来技術の問題点について以下のように考察した。まず、特許文献1に記載の技術で帯電防止性が不十分となる原因は積層構成にあり、帯電防止剤として用いられる四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含む層Aは、層A上に層B、さらに層B上に層Cが積層されており、帯電防止性が必要な最表面からの距離が遠く、その結果、粘着層を離型フィルムから剥離したときの剥離帯電を低下させる能力が低く、離型層、および粘着層側の帯電防止性が低いと考えている。
特許文献2に記載の技術で溶媒密着性が不十分となる原因は、支持基材と離型層の間にある塗布層が、離型層に対して密着性が弱いことにあり、その本質的な原因は、塗布層の造膜成分と基材、および離型層の造膜成分の相溶性が低いためである。また、粘着層側の帯電防止が不十分な理由は、帯電防止剤として用いられる四級アンモニウム塩基含有ポリマーの存在位置が、剥離帯電を引き起こす粘着層と積層体表面の界面から離れているためと考えている。
特許文献3に記載の技術でオリゴマーブロック性が不十分となる原因は、ポリエステルフィルム基材から表面に供給されるオリゴマーを遮蔽する物が、帯電防止離型層のみであり、帯電防止離型層は、密度が低いシリコーン化合物と該帯電防止剤がポリオキシアルキレン鎖を含有するカチオンポリマーを含むため、オリゴマーを通過させやすいと考えている。また、粘着層側の帯電防止が不十分な理由は、帯電防止剤として用いられる四級アンモニウム塩基含有ポリマーの存在は離型層内で均一になっており、本来剥離帯電抑制に必要な粘着層と離型層表面が作る界面から離れているためと考えている。
特許文献4に記載の技術で、剥離フィルムのオリゴマーブロック性が不十分となる原因は、樹脂フィルムの片面に設けられた剥離剤層が、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、該剥離剤と反応しない帯電防止剤とを含有したものであるため、密度が低くオリゴマーを通過させやすいと考えている。また、粘着剤層と剥離剤層の間で剥離した際、粘着剤層側の帯電防止が良好だが、剥離剤層側の帯電防止が不十分な理由は、剥離剤層の帯電防止剤が剥離時に粘着剤層の表面に転写するため、剥離剤層側の帯電防止成分が少なくなり、帯電防止性能が低下するためと考えている。
本発明者らは、前述の5つの課題に対して、支持基材の少なくとも一方の面に、層Aと層Bとを支持基材側からこの順に有する積層体であって、該層Aがオニウム塩を含み、該層Bがオニウム塩およびポリジメチルシロキサンを含む積層体で、積層体の層B内でのオニウム塩の厚み方向濃度分布が特定の形態にあることが、好ましいことを見いだした。なお、層B内でのオニウム塩の厚み方向の濃度分布とは、後述するように層Bを領域X、Y、Z(ただし、領域Zは層Aおよび層Bの両方を含む層Aと層Bの界面の領域である)に区分したときの、当該領域X、Y、Zそれぞれのオニウム塩の濃度の分布をいう。つまり、本発明者らは、従来技術の実情に鑑み鋭意検討の結果、以下の発明に至った。
1.支持基材の少なくとも一方の面に、層Aと層Bとを支持基材側からこの順に有する積層体であって、該層Aがオニウム塩を含み、該層Bがオニウム塩およびポリジメチルシロキサンを含み、厚み方向における層Bの最表面の領域(領域X)、層Bの中央部の領域(領域Y)、層Aと層Bの界面の領域(領域Z)におけるオニウム塩の濃度が下記式(1)または(2)を満足することを特徴とする積層体。
領域X≧領域Z>領域Y ・・・式(1)
領域Z>領域X>領域Y ・・・式(2)。
2.支持基材の少なくとも一方の面に、層Aと層Bとを支持基材側からこの順に有する積層体であって、該層Aがオニウム塩を含み、該層Bがオニウム塩およびポリジメチルシロキサンを含み、厚み方向における層Bの最表面の領域(領域V)、層Bの中央部の領域(領域S)、層Aの中央部の領域(領域T)、層Aと支持基材の界面の領域(領域W)におけるオニウム塩の濃度が下記式(3)または(4)を満足することを特徴とする積層体。
領域V≧領域W>領域Sおよび領域T ・・・式(3)
領域W>領域V>領域Sおよび領域T ・・・式(4)。
3.前記層Aが、ポリアルコキシシロキサンおよび金属キレート化合物を含むことを特徴とする1または2に記載の積層体。
4.前記オニウム塩が、イオン液体であることを特徴とする1から3のいずれかに記載の積層体。
5.前記積層体の180℃、10分間熱処理した後のジメチルホルムアミド抽出によるポリエステルオリゴマー量が0.1mg/m以下であり、かつ、ガラス板検査法による、層B表面における外接直径が30μm以上の大きさの異物欠点数が、2個/50cm以下であることを特徴とする1から4のいずれかに記載の積層体。
本発明によれば、積層体表面上に粘着層を形成し次いで粘着層を剥離したとき、粘着層の剥離力が低く、粘着層から積層体を剥離した際に積層体表面と粘着層に生じる剥離帯電が小さく、さらに積層体の離型層のオリゴマーブロック性と溶媒密着性が優れた積層体を得ることができる。
本発明の積層体を説明する断面図である。 本発明の積層体を説明する断面図である。
本発明の実施の形態について具体的に述べる。
本発明における層Aおよび層Bに含まれる「オニウム塩」とは、カチオン(陽イオン)化合物とアニオン(陰イオン)化合物を含む塩であり、水素化物のプロトン化により生じたカチオン(陽イオン)化合物を含む塩を指す。オニウム塩の具体例としては、ブロモニウム塩、ヨードニウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、アルソニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩などがある。オニウム塩は帯電防止性を発現することができる。
層Aにオニウム塩を含有させる手法は特に限定されないが、例えばオニウム塩を含む層A用塗料組成物を塗布・乾燥することにより、オニウム塩を含む層Aを形成することができる。層Bにオニウム塩を含有させる手法は特に限定されないが、例えばオニウム塩を含む層Aを形成するための層A用塗料組成物の塗布・乾燥中にさらに層A上に層Bを形成することにより、層Aに含まれるオニウム塩を層Bに移行させ、オニウム塩を含む層Bを形成する手法が挙げられる。
前記オニウム塩は、イオン液体であることが好ましい。ここで「イオン液体」とは、カチオン(陽イオン)化合物とアニオン(陰イオン)化合物を含む塩の一種であり、100℃以下で液体状態の塩を指す。イオン液体は高い電気伝導度を示すことから、優れた帯電防止性を発現することができるため好ましく、また積層体の層B内でのオニウム塩の厚み方向濃度分布を形成する観点からも好ましい。
イオン液体の具体例としては、カチオン部分がイミダゾリウム系、ピリジニウム系、アンモニウム系、スルホニウム系、ホスホニウム系、ヨウ素系などがあり、アニオン部分が硫酸エステル系、ホウ酸エステル系、燐酸エステル系、スルホン酸系、ハロゲン系などがあり、その組み合わせにより得られる。
さらに前記イオン液体が、下記のカチオン化合物群に記載のカチオン化合物およびアニオン化合物群に記載のアニオン化合物から構成されるイオン液体であることが好ましい。
(カチオン化合物群) ホスホニウム系カチオン化合物、アンモニウム系カチオン化合物およびピリジニウム系カチオン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のカチオン化合物。
(アニオン化合物群) 含フッ素系アニオン化合物、スルホン酸系アニオン化合物、カルボン酸系アニオン化合物および無機酸系アニオン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のアニオン化合物。
カチオン化合物群のホスホニウム系カチオン化合物の具体例は、テトラアルキルホスホニウムカチオン及び前記アルキル基の一部がアルケニル基に置換されたものなどが挙げられ、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラプロピルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、テトラペンチルホスホニウムカチオン、テトラヘキシルホスホニウムカチオン、テトラヘプチルホスホニウムカチオン、テトラオクチルホスホニウムカチオン、テトラノニルホスホニウムカチオン、テトラデシルホスホニウムカチオン、テトラドデシルホスホニウムカチオン、トリブチルメチルホスホニウムカチオン、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムカチオン、トリフェニルメチルホスホニウムカチオン、トリフェニルエチルホスホニウムカチオン、トリフェニルブチルホスホニウムカチオン、トリフェニルヘプチルホスホニウムカチオン、トリフェニルドデシルホスホニウムカチオン、トリフェニルヘキサデシルホスホニウムカチオン、トリフェニルベンジルホスホニウムカチオン、テトラフェニルホスホニウムカチオンなどがある。アンモニウム系カチオン化合物の具体例は、テトラアルキルアンモニウムカチオン、前記アルキル基の一部がアルケニル基に置換されたもの、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、モルホリニウムカチオン、ビピロリジニウムカチオン、ビピペリジニウムカチオンなどが挙げられ、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラペンチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、テトラヘプチルアンモニウムカチオン、テトラオクチルアンモニウムカチオン、テトラノニルアンモニウムカチオン、テトラデシルアンモニウムカチオン、テトラドデシルアンモニウムカチオン、テトラアリルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、ジデシルジメチルアンモニウムカチオン、ジオレイルジメチルアンモニウムカチオン、トリメチルヘキサデシルアンモニウムカチオン、1,1−ジメチルピペリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピペリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピペリジニウムカチオン、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1,1’−スピロビピロリジニウムカチオンなどがある。ピリジニウム系カチオン化合物の具体例は、1−メチルピリジニウムカチオン、1−エチルピリジニウムカチオン、1−プロピルピリジニウムカチオン、1−ブチルピリジニウムカチオン、1−ヘキシルピリジニウムカチオン、1−オクチルピリジニウムカチオン、1−デシルピリジニウムカチオン、1−ドデシルピリジニウムカチオン、1−ヘキサデシルピリジニウムカチオン、1−メチル−2−メチルピリジニウムカチオン、1−エチル−2−メチルピリジニウムカチオン、1−プロピル−2−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−2−メチルピリジニウムカチオン、1−ヘキシル−2−メチルピリジニウムカチオン、1−オクチル−2−メチルピリジニウムカチオン、1−デシル−2−メチルピリジニウムカチオン、1−ドデシル−2−メチルピリジニウムカチオン、1−ヘキサデシル−2−メチルピリジニウムカチオン、1−メチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−エチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−プロピル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ヘキシル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−オクチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−デシル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ヘキサデシル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−メチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−エチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−プロピル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−ヘキシル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−オクチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−デシル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−ドデシル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−ヘキサデシル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−メチル−3,5−ジメチルピリジニウムカチオン、1−エチル−3,5−ジメチルピリジニウムカチオン、1−プロピル−3,5−ジメチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3,5−ジメチルピリジニウムカチオン、1−ヘキシル−3,5−ジメチルピリジニウムカチオン、1−オクチル−3,5−ジメチルピリジニウムカチオン、1−デシル−3,5−ジメチルピリジニウムカチオン、1−ドデシル−3,5−ジメチルピリジニウムカチオン、1−ヘキサデシル−3,5−ジメチルピリジニウムカチオン、1−メチル−3,5−ジエチルピリジニウムカチオン等が挙げられる。
アニオン化合物群の含フッ素系アニオン化合物の具体例は、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドアニオン、パーフルオロアルカンスルホン酸アニオン、パーフルオロアルカンカルボン酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、アルカンスルホン酸アニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン、(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドアニオン、(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドアニオン、[(トリフルオロメタンスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)]イミドアニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロエタンスルホン酸アニオン、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、ペンタフルオロプロピオン酸アニオン、ヘプタフルオロブタン酸アニオン、ペンタデカフルオロオクタン酸アニオンなどがある。スルホン酸系アニオン化合物の具体例としては、メタンスルホン酸アニオン、エタンスルホン酸アニオン、ブタンスルホン酸アニオン、オクタンスルホン酸アニオン、パラトルエンスルホン酸アニオン、デシルベンゼンスルホン酸アニオン、ドデシルベンゼンスルホン酸アニオン、テトラデシルベンゼンスルホン酸アニオンなどがある。カルボン酸系アニオン化合物の具体例としては、ギ酸アニオン、酢酸アニオン、プロピオン酸アニオン、ブタン酸アニオン、オクタン酸アニオン、デカン酸アニオン、安息香酸アニオン、サリチル酸アニオンなどがある。無機酸系アニオン化合物の具体例としては、過塩素酸アニオン、硝酸アニオン、硫酸アニオン、リン酸アニオン、ホウ酸アニオンなどがある。
イオン液体は、構成するカチオン化合物とアニオン化合物の種類、または組み合わせを変更することにより、様々な物性を得ることができる。層Aに含まれるイオン液体が上記カチオン化合物群に記載のカチオン化合物およびアニオン化合物群に記載のアニオン化合物から構成されることにより、帯電防止性を発現しながら、オリゴマーブロック性、溶媒密着性を達成することができるため好ましい。
次に、本発明における層Bに含まれる「ポリジメチルシロキサン」は、Si−O−Siからなるポリシロキサン骨格のSiにメチル基が2つ付いた構造を基本骨格とした材料で、一般にシリコーン樹脂とも呼ばれる。詳細は後述するが、層Bがポリジメチルシロキサンを含むことにより、積層体はその表面に粘着層を設けた場合にも、粘着層と層Bの間で容易に剥離することができる。
積層体の層B内でのオニウム塩の厚み方向濃度分布は、具体的には、厚み方向における層Bの最表面の領域(領域X)、層Bの中央部の領域(領域Y)、層Aと層Bの界面の領域(領域Z)におけるオニウム塩の濃度が下記式(1)または(2)を満足することが好ましい。
領域X≧領域Z>領域Y ・・・式(1)
領域Z>領域X>領域Y ・・・式(2)
本発明の積層体では、領域Z、および領域Xの2カ所にオニウム塩が多く存在することにより、積層体の層B上に粘着層を形成し、次いで粘着層を剥離したとき、粘着層の帯電を小さくすることができ、剥離後の積層体の帯電も小さくすることができる。
上記式(1)は、領域X、および領域Zのオニウム塩濃度が等しいか、または、領域Zより領域Xのオニウム塩濃度が高いことを表している。また、領域X、および領域Zに対し、領域Yのオニウム塩濃度が低いことを表している。式(1)を満たすことにより、領域X、および領域Zの2カ所にオニウム塩が多く存在することにより、積層体の層B上に粘着層を形成し、次いで粘着層を剥離したとき、粘着層の帯電を小さくすることができ、剥離後の積層体の帯電も小さくすることができる。
上記式(2)は、領域Zのオニウム塩濃度が最も高く、次いで領域Xのオニウム塩濃度が高く、領域Yのオニウム塩濃度が最も低いことを表している。オニウム塩の濃度分布を上記のようにすることで、積層体の層B上に粘着層を形成し、次いで粘着層を剥離したとき、粘着層表面に移行する領域Xのオニウム塩の量を微量にすることができ、さらに剥離後の積層体の帯電もより小さくすることができる。
領域Xのオニウム塩濃度は、0.1%以上30%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以上25%以下、さらに好ましくは1%以上20%以下の範囲である。領域Xのオニウム塩濃度が30%を超えると、積層体の剥離力が高くなる場合があり、0.1%未満では積層体の層B上に粘着層を形成し、次いで粘着層を剥離したとき、粘着層の帯電が大きくなる場合がある。
領域Yのオニウム塩濃度は、領域Xのオニウム塩の濃度の1/2以下であることがより好ましい。領域Yのオニウム塩濃度が低いことが望ましいが、後述する本発明の積層体の製造方法では0%とすることは難しく、下限値としては0.05%程度である。領域Yのオニウム塩濃度が、領域Xのオニウム塩濃度の1/2を超えると、層Bの硬化不良が発生し、積層体の耐溶媒密着性が低下する場合がある。
領域Zのオニウム塩濃度は、0.1%以上30%以下であることが好ましく、より好ましくは1%以上25%以下、さらに好ましくは5%以上25%以下の範囲である。領域Zのオニウム塩濃度が0.1%未満では、積層体の層B上に粘着層を形成し、次いで粘着層を剥離したとき、積層体の帯電が大きくなる場合があり、30%を超えると、層A、および層Bの硬化不良が発生し、積層体の耐溶媒密着性が低下する場合がある。なお、ここでいう%とは、各領域に含まれるオニウム塩に特徴的な元素の濃度(atm%)である。
ここで、領域X、領域Y、領域Zの位置関係を図1に示す。図1は本発明の積層体の断面を示し、支持基材1の一方の面上に層A2、次いで層B3が順に積層されている。この断面において、支持基材に垂直な基準線4を引いたとき、層Bの表面との交点を点α5、層Bと層Aの界面との交点を点γ7、基準線上の層Bの中点を点β6とする。
領域X8は、点αから厚み方向に10nm、左右に10nmの範囲を、領域Y9は、点βを含み、厚み方向に領域X、領域Z以外の範囲を、領域Z10は、点γを含み、点γを中心に上下5nm、左右に10nmの範囲を指す。
各領域のオニウム塩の濃度の詳細な算出方法については後述するが、積層体の各領域について元素分析を実施し、得られた異なる元素ピークの強度比を濃度比として算出し、オニウム塩に含まれる特徴的な元素の濃度をオニウム塩の濃度とした。元素分析の手法については特に限定されるものではないが、EDXやEELS、TOF−SIMSなどを用いて分析することができる。また、オニウム塩に含まれる特徴的な元素の例としては、イミダゾリウム塩やアンモニウム塩を用いた場合はN元素、ホスホニウム塩を用いた場合はP元素、スルホニウム塩を用いた場合はS元素、等が挙げられる。
積層体の層B内でのオニウム塩の厚み方向濃度分布が、前述の条件を満たすことによって、積層体の層B上に、粘着層を形成し、ついで剥離したとき、粘着層側と積層体双方の剥離帯電を低くすることができる。その機構について、
積層体の層B上に粘着層を形成すると、オニウム塩は粘着層と積層体の界面部と積層体の層Aと層Bの界面部の2カ所に高濃度で存在することになる。粘着層を積層体から粘着層と層Bの間で剥離すると、剥離した粘着層と層Bの表面にオニウム塩が存在するため、表面の帯電列が近くなるため剥離帯電量が小さくなり、さらに粘着層表面にオニウム塩が存在するため、剥離帯電による電荷を瞬時に漏洩、減衰させることができる。さらに離型フィルム側の帯電も、層Bと層Aの界面に存在するオニウム塩の濃度の高い部位が導電パスを形成することで低くなる。
積層体の層Aと層B内でのオニウム塩の厚み方向濃度分布を達成する方法については、特に限定されないが、後述する層A用塗料組成物と層B用塗料組成物を後述する積層体の製造方法で塗布、乾燥することにより形成することが好ましい。
また、積層体の層Bおよび層A内でのオニウム塩の厚み方向濃度分布は、具体的には、厚み方向における層Bの最表面の領域(領域V)、層Bの中央部の領域(領域S)、層Aの中央部の領域(領域T)、層Aと支持基材の界面の領域(領域W)におけるオニウム塩の濃度が下記式(3)または(4)を満足することが好ましい。
領域V≧領域W>領域Sおよび領域T ・・・式(3)
領域W>領域V>領域Sおよび領域T ・・・式(4)。
本発明の積層体では、領域V、および領域Wの2カ所にオニウム塩が多く存在することにより、積層体の層B上に粘着層を形成し、次いで粘着層を剥離したとき、粘着層の帯電を小さくすること、および剥離後の積層体の帯電も小さくすることができ、さらに溶媒密着性を向上することができる。
上記式(3)は、領域V、および領域Wのオニウム塩濃度が等しいか、または、領域Wより領域Vのオニウム塩濃度が高いことを表している。また、領域V、および領域Wに対し、領域Sおよび領域Tのオニウム塩濃度が低いことを表している。式(3)を満たすことにより、領域V、および領域Wの2カ所にオニウム塩が多く存在することにより、積層体の層B上に粘着層を形成し、次いで粘着層を剥離したとき、粘着層の帯電を小さくすることができ、剥離後の積層体の帯電も小さくすることができる。
上記式(4)は、領域Wのオニウム塩濃度が最も高く、次いで領域Vのオニウム塩濃度が高く、領域Sおよび領域Tのオニウム塩濃度が最も低いことを表している。オニウム塩の濃度分布を上記のようにすることで、積層体の層B上に粘着層を形成し、次いで粘着層を剥離したとき、粘着層表面に移行する領域Vのオニウム塩の量を微量にすることができ、さらに剥離後の積層体の帯電もより小さくすることができることに加え、耐溶媒密着性を向上することができる。
領域Vのオニウム塩濃度は、0.1%以上30%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以上25%以下、さらに好ましくは1%以上20%以下の範囲である。領域Xのオニウム塩濃度が30%を超えると、積層体の剥離力が高くなる場合があり、0.1%未満では積層体の層B上に粘着層を形成し、次いで粘着層を剥離したとき、粘着層の帯電が大きくなる場合がある。
領域Sのオニウム塩濃度は、領域Vのオニウム塩の濃度の1/2以下であることがより好ましい。領域Sのオニウム塩濃度は低いことが望ましいが、後述する本発明の積層体の製造方法では0%とすることは難しく、下限値としては0.05%程度である。領域Sのオニウム塩濃度が、領域Vのオニウム塩濃度の1/2を超えると、層Bの硬化不良が発生し、積層体の耐溶媒密着性が低下する場合がある。
領域Tのオニウム塩濃度は、領域Wのオニウム塩の濃度の1/2以下であることがより好ましい。領域Tのオニウム塩濃度は低いことが望ましいが、後述する本発明の積層体の製造方法では0%とすることは難しく、下限値としては0.05%程度である。領域Tのオニウム塩濃度が、領域Wのオニウム塩濃度の1/2を超えると、層Aの硬化不良が発生し、積層体の耐溶媒密着性の低下、およびオリゴマーブロック性が低下する場合がある。
領域Wのオニウム塩濃度は、0.1%以上30%以下であることが好ましく、より好ましくは1%以上30%以下、さらに好ましくは5%以上30%以下の範囲である。領域Wのオニウム塩濃度が0.1%未満では、積層体の層B上に粘着層を形成し、次いで粘着層を剥離したとき、積層体の帯電が大きくなる場合があり、30%を超えると、層Aの硬化不良が発生し、積層体の耐溶媒密着性の低下、およびオリゴマーブロック性が低下する場合がある。なお、ここでいう%とは、各領域に含まれるオニウム塩に特徴的な元素の濃度(atm%)である。
ここで、領域V、領域S、領域T、領域Wの位置関係を図2に示す。図2は本発明の積層体の断面を示し、支持基材11の一方の面上に層A12、次いで層B13が順に積層されている。なお、前述の図1で示される積層体と図2で示される積層体はいずれも支持基材の少なくとも一方の面に、層Aと層Bとを支持基材側からこの順に有する積層体であり、支持基材、層Aと層Bという構成の点では図1および図2は同じ構成を有する積層体である。この断面において、支持基材に垂直な基準線14を引いたとき、層Bの表面との交点を点ε15、基準線上の層Bの中点を点σ16、基準線上の層Aの中点を点ω17、層Aと支持基材の界面との交点を点η18とする。
領域V19は、点εから厚み方向に10nm、点εから左右に10nmの範囲を、領域S20は、点σを含み、点σを中心に上下5nm、点σを中心に左右に10nmの範囲を、領域T21は、点ωを含み、点ωを中心に上下5nm、点ωを中心に左右に10nmの範囲を、領域W22は、点ηから層A12方向に10nm、点ηから左右に10nmの範囲を指す。
各領域のオニウム塩の濃度の詳細な算出方法については後述するが、積層体の各領域について元素分析を実施し、得られた異なる元素ピークの強度比を濃度比として算出し、オニウム塩に含まれる特徴的な元素の濃度をオニウム塩の濃度とした。元素分析の手法については特に限定されるものではないが、EDXやEELS、TOF−SIMSなどを用いて分析することができる。また、オニウム塩に含まれる特徴的な元素の例としては、イミダゾリウム塩やアンモニウム塩を用いた場合はN元素、ホスホニウム塩を用いた場合はP元素、スルホニウム塩を用いた場合はS元素、等が挙げられる。
積層体の層Bおよび層A内でのオニウム塩の厚み方向濃度分布が、前述の条件を満たすことによって、積層体の層B上に、粘着層を形成し、ついで剥離したとき、粘着層側と積層体双方の剥離帯電を低くすることができ、さらに溶媒密着性を向上することができる。その機構としては、積層体の層B上に粘着層を形成すると、オニウム塩は粘着層と積層体の界面部と積層体の層Aと支持基材の界面部の2カ所に高濃度で存在することになる。粘着層を積層体から粘着層と層Bの間で剥離すると、剥離した粘着層と層Bの表面にオニウム塩が存在するため、表面の帯電列が近くなるため剥離帯電量が小さくなり、さらに粘着層表面にオニウム塩が存在するため、剥離帯電による電荷を瞬時に漏洩、減衰させることができる。さらに離型フィルム側の帯電も、層Aと支持基材の界面に存在するオニウム塩の濃度の高い部位が導電パスを形成することで低くなる。また、層Aと支持基材の界面にオニウム塩が多く存在することにより、オニウム塩が抽出されやすい粘着剤(溶媒)を用いた場合においても、粘着層表面に移行するオニウム塩の量を微量にすることができ、耐溶媒密着性を向上することができる。
積層体の層Aと層B内でのオニウム塩の厚み方向濃度分布を達成する方法については、特に限定されないが、後述する層A用塗料組成物と層B用塗料組成物を後述する積層体の製造方法で塗布、乾燥することにより形成することが好ましい。
また前記層Aは、ポリアルコキシシロキサンおよび金属キレート化合物を含むことが好ましい。ここで「ポリアルコキシシロキサン」とは、Si−O−Siからなるシロキサン骨格を繰り返し単位としたセグメントが、1次元から3次元に規則的またはランダムに連なり、Si上の残りの部位にアルコキシ基が付いた物、アルコキシ基以外の官能基が付いたもの、アルコキシ基が加水分解によりシラノール基になったもの、さらにシラノール基が金属キレートを介して架橋したものなども含む。
層Aがポリアルコキシシロキサンを含むと、シラノール基やアルコキシ基等の官能基が存在することにより基材との親和性が、さらに層Aがシロキサン骨格を含むため、層Bに含まれるポリジメチルシロキサンとも親和性が得られるため、積層体の溶媒密着性が向上するため好ましい。また、ポリジメチルシロキサンは、緻密な膜を形成でき、かつ極性の大きな材料であるため、疎水的なオリゴマーを通しにくいため、オリゴマーブロック性の観点から好ましく、またオニウム塩の層内での移動を制御する観点から、積層体の層B内でのオニウム塩の厚み方向濃度分布を形成する上で、好ましい。
ポリアルコキシシロキサンは、アルコキシシランが加水分解しさらにシラノール縮合することにより得られる。ここでアルコキシシランは、化学式1または化学式2で示される化合物で、nは0〜3の整数、mは0〜2の整数、Rは(メタ)アクリル基、エポキシ基、ビニル基、フェニル基、アミノ基等、Rは炭素数1から4のアルキル基、Rは炭素数1から3のアルキレン基及びそれらから導出されるエステル構造、Rは水素又は炭素数が1から4のアルキル基が好ましい。
具体的にポリアルコキシシロキサンは、(メタ)アクリロキシ(モノ、ジ、トリ)アルコキシシラン、エポキシ(モノ、ジ、トリ)アルコキシシラン、ビニル(モノ、ジ、トリ)アルコキシシラン、フェニル(モノ、ジ、トリ)アルコキシシラン、アミノ(モノ、ジ、トリ)アルコキシシラン、およびテトラアルコキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコキシシランの加水分解縮合体、加水分解縮合体の金属キレートによる架橋体、およびその混合物であることが好ましく、テトラアルコキシシランの加水分解縮合体、加水分解縮合体の金属キレートによる架橋体、およびその混合物であることが、層A内に緻密なシロキサン結合を形成することができるため、オリゴマーブロック性と、積層体の層B内でのオニウム塩の厚み方向濃度分布の観点からより好ましい。
さらに本発明のポリアルコキシシロキサンは、前記テトラアルコキシシランと、エポキシ(モノ、ジ、トリ)アルコキシシラン、フェニル(モノ、ジ、トリ)アルコキシシラン、メチル(モノ、ジ、トリ)アルコキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコキシシランとの加水分解縮合体、加水分解縮合体の金属キレートによる架橋体、およびその混合物であることにより、層A内の有機基が支持基材との密着性を高め、耐溶媒性を向上することができ、さらに積層体の層Bから層A内でのオニウム塩の厚み方向濃度分布の観点からより好ましい。
ポリアルコキシシロキサンのシロキサン骨格の構造には、一般に「はしご状」、「かご状」、「ランダム状」などの種類があるが、本発明の積層体の層Aにおいては、オリゴマーブロック性の観点や、積層体の層B内でのオニウム塩の厚み方向濃度分布を形成する観点から、緻密な層が得られるはしご状、もしくはかご状の割合が多くなっていることが好ましい。
層Aに含まれるポリアルコキシシロキサンの形成方法については特に限定されず、支持基材上に後述する層A用塗料組成物として、前述のアルコキシランの単量体を含む塗料組成物を塗布し、塗膜の乾燥、硬化工程にて加水分解、縮合反応させてもよいし、事前にアルコキシシランの加水分解縮合体を形成し、これを含む層A用塗料組成物を塗布、乾燥させてもよいが、後者の方がオリゴマーブロック性、および積層体の層B内でのオニウム塩の厚み方向濃度分布を形成する観点から好ましい。また、前記層A用塗料組成物として、事前にアルコキシシランの加水分解縮合体を形成し、さらにアルコキシシランの単量体を一部混合したものを含む層A用塗料組成物を塗布、乾燥させることにより、耐溶媒密着性、および積層体の層Bおよび層A内でのオニウム塩の厚み方向濃度分布を形成する観点から好ましい。
前記「金属キレート」とは、金属元素に対して複数の配位原子が存在する配位子(多座配位子)のみが配位した化合物、金属元素とアルコールの塩(金属アルコキシ塩、金属アルコレート)の一部が前述の多座配位子に置き換わった化合物、およびそれらのオリゴマーを指す。
金属キレートの金属元素としては、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛および鉄より選ばれる少なくとも1種が好ましく、多座配位子としては、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル等のβケトエステル、βジケトン、βジエステル類が好ましい。具体的な材料については後述する。前記層Aが金属キレートを含むことにより、層A内で金属イオンを介してポリアルコキシシロキサンを架橋することができるため、耐溶媒密着性、オリゴマーブロック性に加えて、積層体の層B内でのオニウム塩の厚み方向濃度分布を形成する上でも効果をもたらしている。
金属キレートとして、アルミニウム元素を含む金属キレートの例には、アルミニウムトリス(アセチルアセトネ−ト)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウム−ジ−n−ブトキシド−モノエチルアセトアセテート、アルミニウム−ジ−イソ−プロポキシド−モノメチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が例示される。チタン元素を含む金属キレートの例には、テトラメチルチタネート等のチタンベーターエステル類;チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、ポリチタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、チタンエチルアセトアセテート類等が例示される。
具体的なジルコニウム元素を含む金属キレートの例には、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート等が例示される。
本発明の積層体は、特定の条件にて処理されたときのポリエステルオリゴマーの析出量が特定範囲であることが好ましい。具体的には好ましくは、180℃、10分間熱処理した後の、積層体の層B表面のジメチルホルムアミド抽出によるポリエステルオリゴマー量が0.1mg/m以下、より好ましくは、0mg/mである。180℃、10分間熱処理した後の積層体の層B表面のジメチルホルムアミド抽出によるポリエステルオリゴマー量が0.1mg/mを上回るレベルにあると、例えば、本発明の積層体を偏光板用粘着層の離型フィルムとして使用された場合、ポリエステルオリゴマーが偏光板の粘着剤に転移、層内で粒子を形成し、最終的にディスプレイに貼付された場合に、画素欠陥が多く発生する可能性がある。
また、本発明の積層体は、好ましくは、ガラス板検査法による外接直径30μm以上の大きさの異物欠点数が、2個/50cm以下、より好ましくは、0個/50cm以下である。ガラス板検査法による外接直径30μm以上の大きさの異物欠点数が、2個/50cm以下であると、LCD画面の輝度異常が目立たず、良好な光学特性を発揮することができる。なお、ここでいう「外接直径」とは、異物欠点を完全に囲む(外接する)最小の円の直径をいう。以下、本発明の各構成について詳細を述べる。
[積層体]
本発明の積層体は、支持基材の少なくとも一方の面に、前述の条件を満たす層Aと層Bを支持基材側からこの順に有するものであればよく、支持基材の両方の面に支持基材側からこの順に層A、層Bを有してもよい。
ここで本発明における「層」とは、前記積層体の表面から厚み方向に向かい、隣接する部位との構成元素の組成、粒子等の含有物の形状、厚み方向の物理特性が不連続な境界面を有することで区別される有限の厚みを有する部位を指す。より具体的には、前記積層体を表面から厚み方向に各種組成/元素分析装置(FT−IR、XPS、XRF、EDAX、SIMS、EPMA、EELS等)、電子顕微鏡(透過型、走査型)または光学顕微鏡にて断面観察した際、前記不連続な境界面により区別され、有限の厚みを有する部位を指す。
[層A]
本発明の積層体では、支持基材からの低分子量成分の表面移行を抑制するオリゴマーブロック性、層Bおよび支持基材との耐溶媒密着性、積層体の層B上に粘着層を形成し、次いで粘着層を剥離したときの粘着層と積層体の双方の帯電防止性の観点から、支持基材上にオニウム塩を含む1層以上の層Aを設けることが好ましく、ポリアルコキシシロキサンおよび金属キレート化合物を含むことがより好ましい。本発明の積層体には、機能に合せて複数の層Aを設けてもよい。また、支持基材の両方の面に層Aを設けてもよい。
層Aの形成方法は、前述の条件を満たすことができれば特に限定されないが、後述する層A用塗料組成物を後述する積層体の積層方法により形成されていることが好ましい。層Aの形成は支持基材の製膜途中で後述する層A用塗料組成物を塗布したフィルムを作成してもよいし、支持基材の製膜後、層A用塗料組成物を支持基材に塗布し、乾燥、巻き取りを行ってもよい。
層Aの乾燥後の塗布厚みは、好ましくは、10〜500nm、より好ましくは15〜200nm、さらに好ましくは15〜100nmである。塗布厚みが10nm〜500nmであると、オリゴマーブロック性、層Bおよび支持基材との耐溶媒密着性、積層体の層B上に粘着層を形成し、次いで粘着層を剥離したときの粘着層と積層体の双方の帯電防止性、および優れた塗膜品位を得ることができるため好ましい。
[層A用塗料組成物、樹脂組成物前駆体]
層A用塗料組成物は、支持基材上に塗布、乾燥することで、層Aがオニウム塩を含み、かつ積層体の層B内でのオニウム塩の厚み方向濃度分布が前述の特定の条件を満たすことができれば特に限定されないが、好ましくは、層A用塗料組成物は、オニウム塩を含み、より好ましくはオニウム塩と金属キレートとポリアルコキシシロキサンもしくはその前駆体を含み、特に好ましくはイオン液体と金属キレートと、ポリアルコキシシロキサンもしくはその前駆体を含む。
層A用塗料組成物に含まれることが好ましいオニウム塩、およびイオン液体の定義については、前述の通りである。
具体的なイオン液体の製品例としては、日本乳化剤(株)のAS100、AS200、AS300、AS400、広栄化学(株)のIL−Pシリーズ、IL−Aシリーズ、IL−Cシリーズ、IL−IMシリーズ、IL−APシリーズ、などが挙げられる。
さらに、本発明に用いられるイオン液体は反応性部位を有していてもよく、反応性部位を有するイオン液体の例としては、日本乳化剤(株)JI62J01、JI62G01、広栄化学(株)のIL−MAシリーズ、IL−Sシリーズ、スリーエムジャパン株式会社のFC−4400、などが挙げられる。
層A用塗料組成物に含まれるイオン液体の量は、0.1〜30質量%が好ましく、より好ましくは1〜25質量%であり、さらに好ましくは3〜20質量%の範囲である。イオン液体の量が0.1質量%未満であると、帯電防止性が不十分になる場合があり、イオン液体の量が30質量%を超えると、イオン液体が積層体の表面に析出する場合がある。
層A用塗料組成物Aに含まれることが好ましい、ポリアルコキシシロキサン、およびアルコキシシランの定義は前述の通りである。ポリアルコキシシロキサン前駆体とは、前述のアルコキシシラン単量体、もしくはアルコキシシランの加水分解体、アルコキシシランの加水分解縮合体を指す。
層A用塗料組成物A反応性の観点から、オリゴマーとモノマーを併用してもよく、塗料組成物に含まれるモノマーの量は、0〜50質量%が好ましく、0〜30質量%がより好ましい。
層A用塗料組成物に含まれることが好ましい金属キレートの定義については、前述の通りである。
具体的な金属キレートの製品例としては、マツモトファインケミカル(株)のAL-3001、AL-3100、TC-401、TC-750、ZC-150、ZC-700、ホープ製薬
(株)のアセトープAl、アセトープFe、川研ファインケミカル(株)のアルミキレートA、アルミキレートD、ALCH、AIPD、PADM、などが挙げられる。
層A用塗料組成物に含まれる金属キレートの量は0.1〜30質量%が好ましく、より好ましくは1〜20質量%であり、さらに好ましくは3〜15質量%の範囲である。金属キレートの量が0.1質量%未満であると、層Aの硬化反応が迅速に進まない場合があり、塗布速度を遅くする必要が生じる場合がある。さらに、層Aの上に層Bを形成した場合、層Bの硬化阻害が発生し、剥離力が低下する場合がある。金属元素を有する化合物の量が30質量%を超えると、塗料組成物の経時安定性の低下、塗膜品位の低下が発生する場合がある。
本発明における層A用塗料組成物の固形分濃度は、特にこれに限定されないが、層A用塗料組成物が溶媒を含む場合には、通常20質量%以下が好ましく、更には0.5〜10質量%であることが好ましい。固形分濃度が0.5質量%未満であると、基材フィルム上でハジキが発生しやすくなる場合があり、固形分濃度が20質量%を超えると粘度が高くなるため、品位が低下する場合がある。
[層B]
本発明の積層体では、支持基材からの低分子量成分の表面移行を抑制するオリゴマーブロック性、層Bおよび支持基材との耐溶媒密着性、積層体の層B上に粘着層を形成し、次いで粘着層を剥離したときの粘着層と積層体の双方の帯電防止性の観点から、支持基材上に1層以上の層Aを設けた上に、ポリジメチルシロキサンを含む層Bを設けることが好ましい。
層Bに含まれるポリジメチルシロキサンは、層B表面の元素分析を実施することで確認できる。具体的には、層B表面について、各種組成/元素分析装置(FT−IR、XPS、XRF、EDAX、SIMS、EPMA、EELS等)を用いて元素分析を実施し、ポリジメチルシロキサン由来のSi元素ピークの検出有無で確認できる。
層Bの形成方法は、ポリジメチルシロキサンを含む層Bが形成できれば特に限定されないが、層A上に後述する層B用樹脂組成物の層が形成することができることが好ましく、層B用樹脂前駆体を含む層B用塗料組成物を後述する積層体の形成方法にて塗布、乾燥することが好ましい。
例えば層Bを塗布により形成する場合、層Bの乾燥塗布厚みは、10〜500nmであることが好ましく、20〜200nmであることがより好ましい。層Bの乾燥塗布厚みを上記範囲とすることで、生産性を低下させにくく安定した離型フィルムとしての基本機能と付加機能を実現させることができる。
[層B用樹脂組成物]
本発明における層B用樹脂組成物は、離型性の観点からポリジメチルシロキサンを含むことが好ましく、シリコーン系樹脂がより好ましく、特に硬化型シリコーン系樹脂が好ましい。
硬化型シリコーン系樹脂には、オルガノハイドロジェンポリロキサンとアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとを白金触媒のもとに、加熱硬化させた「付加反応型」、オルガノハイドロジェンポリロキサンと末端に水酸基を含有するオルガノポリシロキサンとを有機錫触媒を用いて加熱硬化させた「縮重合反応型」、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとメルカプト基を含有するオルガノポリシロキサンとを光重合触媒を用いて硬化させる「ラジカル付加型」、エポキシ基をオニウム塩開始剤にて光開環させて硬化させる「カチオン重合型」があり、いずれを用いてもよいが、生産性、剥離力の観点から、オルガノハイドロジェンポリロキサンとアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとを、白金触媒のもとに加熱硬化させた付加反応型が好ましい。
本発明における層B用樹脂組成物は、好ましくは後述する層B用塗料組成物を必要に応じて乾燥工程で溶媒を除去の上、硬化することにより形成することができる。
[層B用塗料組成物、層B用樹脂前駆体]
前述の層B用塗料組成物は、前述の層B、もしくは前述の層B用樹脂組成物を形成することができる室温にて液体の性状を示す混合物であり、少なくとも後述する層Bを有する積層体の製造方法によって、層B用樹脂組成物を形成可能な材料(以降これを樹脂前駆体と呼ぶ)と、重合開始剤、硬化剤、硬化触媒を含み、さらに溶媒、粒子、帯電防止剤などの各種添加剤を含んでもよい。
層B用塗料組成物は、層Bがポリジメチルシロキサンを含めば、その組成は特に限定されないが、前述のように離型性や耐熱性の観点から、シリコーン系樹脂、特に硬化型シリコーン系樹脂を形成可能な樹脂前駆体が好ましく、「付加反応型」、「縮重合反応型」、「ラジカル付加型」、「カチオン重合型」の樹脂前駆体、および重合開始剤、硬化剤、硬化触媒を含む塗料組成物がより好ましく、「付加反応型」が最も好ましい。
付加反応型シリコーン系樹脂前駆体と触媒の具体例としては、末端にビニル基を含有するポリジメチルシロキサンとハイドロジェンシロキサンとを含むものが好ましく、信越化学工業(株)社製のKS−3650、KS843、KS847、KS847H、KS847T、X62−2829、KS838、東レ・ダウコーニング(株)社製のSD7333、SRX357、SRX345、LTC310、LTC303E、LTC300B、LTC350G、LTC750A、LTC851、LTC759、LTC755、LTC761、LTC856、などが挙げられる。
縮重合反応型シリコーン系樹脂前駆体と触媒の具体例としては、末端に水酸基を含有するポリジメチルシロキサンとハイドロジェンシロキサンとを有機錫触媒を含むものが好ましく、東レダウコーニング(株)社製SRX290やSY LOFF23が挙げられる。
ラジカル付加型シリコーン系樹脂前駆体と触媒の具体例としては、アルケニル基を含むシロキサンとメルカプト基を含むシロキサンと光重合触媒を含むものが好ましく、東レ・ダウコーニング(株)社製BY24−510HおよびBY24−544などが挙げられる。
カチオン重合型シリコーン系樹脂前駆体と触媒の具体例としては、エポキシ基を含むシロキサンと、オニウム塩開始剤を含むものが好ましく、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製TPR6501、UV9300およびXS56−A2775などが挙げられる。
本発明における層B用塗料組成物の固形分濃度は、特に限定されないが、層B用塗料組成物が溶媒を含む場合には、通常10質量%以下であり、更には0.5〜5質量%であることが好ましい。塗料組成物の固形分濃度が0.5質量%未満であると、支持基材もしくは前述の層A上でハジキが発生しやすくなる場合があり、塗料組成物の固形分濃度が10質量%を超えると表面が粗くなる場合がある。
[その他の塗料組成物添加剤]
前述の層A用塗料組成物と層B用塗料組成物は溶媒を含んでいてもよく、製造適性の面から溶媒を含むことが好ましい。ここで溶媒とは塗布後の乾燥工程にてほぼ全量を蒸発させることが可能な、常温、常圧で液体である物質を指す。本発明の積層体に適した塗料組成物は、溶媒を含んでもよい。溶媒の種類数としては1種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは1種類以上10種類以下、さらに好ましくは1種類以上6種類以下である。
溶媒の種類とは溶媒を構成する分子構造によって決まる。すなわち、同一の元素組成で、かつ官能基の種類と数が同一であっても結合関係が異なるもの(構造異性体)、前記構造異性体ではないが、3次元空間内ではどのような配座をとっても重ならないもの(立体異性体)は、種類の異なる溶媒として取り扱う。例えば、2−プロパノールと、n−プロパノールは異なる溶媒として取り扱う。
[支持基材]
本発明における支持基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等が挙げられるが、特に離型フィルムとして用いられる際に好適に使用される支持基材としては、機械的強度、耐熱性、熱寸法安定性および耐薬品性に優れ、且つ経済的である2軸延伸ポリエステルフィルムが好ましい。
支持基材の表面には、前記層Aを形成する前に各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例としては、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が挙げられる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
[積層体の製造方法]
本発明の積層体は、層A用塗料組成物を支持基材上に塗布し、さらに層B用塗料組成物を塗布することにより形成する方法が好ましい。
支持基材上への塗料組成物の塗布方法は特に限定されないが、塗料組成物をディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などにより支持基材等に塗布することにより層を形成することが好ましい。さらに、これらの塗布方式のうち、グラビアコート法またはダイコート法が塗布方法としてより好ましい。次いで、支持基材等の上に塗布された液膜を乾燥する。得られる積層体中から完全に溶媒を除去することに加え、塗膜の硬化を促進する観点からも、乾燥工程では液膜の加熱を伴うことが好ましい。
乾燥方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などが挙げられる。この中でも、本発明の製造方法では、精密に幅方向でも乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱または輻射伝熱を使用した方式が好ましい。
さらに、熱またはエネルギー線を照射することによるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃以下であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、より好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは130℃以上200℃以下である。
また、エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)および/または紫外線(UV線)であることが好ましい。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100〜3,000mW/cm、好ましくは200〜2,000mW/cm、さらに好ましくは300〜1,00mW/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが好ましく、紫外線の積算光量が100〜3,000mJ/cm、好ましくは200〜2,000mJ/cm、さらに好ましくは300〜1,500mJ/cmとなる条件で紫外線照射を行うことがより好ましい。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計および被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
[用途]
また、本発明の積層体は離型フィルムとして好適に用いることができ、特に偏光板、位相差フィルムの粘着層保護用の離型フィルムとして好適に用いることができる。
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されない。なお、同一の化合物については特記しない限り同一の製品を用いた。
[支持基材の作成]
[支持基材1]
組成を表1の通りとして、原料を、酸素濃度を0.2体積%としたベント同方向二軸押出機に供給し、A層押出機シリンダー温度を280℃で溶融し、短管温度を275℃、口金温度を280℃で、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸シートを得た。次いで、長手方向への予熱温度85℃で1.5秒間予熱を行い、延伸温度115℃で長手方向に3.3倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却化した。次いでテンター式横延伸機にて予熱温度85℃で1.5秒予熱を行い、延伸前半温度115℃、延伸中盤温度135℃、延伸後半温度145℃で幅方向に3.3倍延伸し、そのままテンター内にて、熱処理温度230℃で、幅方向に5%のリラックスを掛けながら熱処理を行い、フィルム厚み23μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。これを支持基材1とした。
[塗料組成物の作成]
[層A用塗料組成物a1〜a29の作成]
層A用塗料組成物a1〜a29は、表2に示す材料と比率で混合することにより得た。なお表2中の各原材料の詳細は下記の通りである。
[層A用塗料組成物a30〜a53の作成]
層A用塗料組成物a30〜a53は、表5に示す材料と比率で混合することにより得た。なお表5中の各原材料の詳細は下記の通りである。
[アルコキシシラン]
A1:3メタクリロキシプロピルトリメトキシシシラン(KBM−503 信越化学工業(株))
A2:3グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403 信越化学工業(株))
A3:テトラエトキシシラン(KBE04 信越化学工業(株))
A4:シランオリゴマー(KR500 信越化学工業(株))
A5:シランオリゴマー(メチルシリケート53A コルコート(株))
A6:シランオリゴマー(エチルシリケート48 コルコート(株))
A7:シランオリゴマー(HAS−6 コルコート(株))
A8:フェニルトリエトキシシラン(KBE103 信越化学工業(株))。
[オニウム塩]
B1:イオン液体(アミノイオンAS100 日本乳化剤(株))
B2:イオン液体(KOELIQTMIL−AP3 広栄化学工業(株))
B3:イオン液体(KOELIQTMIL−A2 広栄化学工業(株))
B4:イオン液体(KOELIQTMIL−P14 広栄化学工業(株))
B5:イオン液体(KOELIQTMIL−IM1 広栄化学工業(株))
B6:アクリル基を有するイオン液体(アミノイオンASシリーズJI62J01 日本乳化剤(株))
B7:アルコキシシリル基を有するイオン液体(アミノイオンASシリーズJI62G02 日本乳化剤(株))。
[金属キレート化合物]
C1:アルミニウムトリスアセチルアセトネート(AL−3100 マツモトファインケミカル(株))
C2:アルミニウムイソプロピレート(AIPD 川研ファインケミカル(株))
C3:チタンアセチルアセトネート(TC−100 マツモトファインケミカル(株))
C4:ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(ZC−150マツモトファインケミカル(株))
C5:鉄アセチルアセトネート(アセトープFe ホープ製薬(株)。
[他添加剤]
D1:光重合開始剤(イルガキュア184 BASFジャパン(株)。
[溶媒]
E1:イソプロピルアルコール
E2:メチルエチルケトン。
[層B用塗料組成物b1〜b3の作成]
[層B用塗料組成物b1] 下記材料を混合し層B用塗料組成物b1を得た。
・メチルビニルポリシロキサンおよびメチル水素化ポリシロキサンのトルエン溶液:10質量部 (KS847H 信越化学工業(株)製 固形分濃度 30質量%)
・メチルビニルポリシロキサンと白金の錯体溶液:0.1質量部(PL−50T 信越化学工業(株)製)
・トルエン:10質量部
・ヘプタン:10質量部。
[層B用塗料組成物b2] 下記材料を混合し層B用塗料組成物b2を得た。
・メチルヘキシレンポリシロキサンおよびメチル水素化ポリシロキサンのトルエン溶液:10質量部(LTC750A 東レダウコーニング(株)製 固形分濃度 30質量%)
・メチルビニルポリシロキサンと白金の錯体溶液:0.1質量部(SRX212 東レダウコーニング(株)製)
・トルエン:10質量部
・ヘプタン:10質量部。
[層B用塗料組成物b3] 下記材料を混合し層B用塗料組成物b3を得た。
・メチルビニルポリシロキサンおよびメチル水素化ポリシロキサンのトルエン溶液:10質量部 (KS847H 信越化学工業(株)製 固形分濃度 30質量%)
・メチルビニルポリシロキサンと白金の錯体溶液:0.1質量部(PL−50T 信越化学工業(株)製)
・イオン液体:0.088質量部(アミノイオンAS100 日本乳化剤(株)製)
・トルエン:10質量部
・ヘプタン:10質量部。
[積層体の作成、層Bの作成]
以下の積層体の作成−c1〜c9、層Bの作成−c10にしたがって、積層体、および層Bを得た。
[積層体の作成−c1]
厚み38μmのポリエステルフィルム(東レ(株)製商品名“ルミラー”(登録商標)R60)に、層A用塗料組成物を、乾燥・硬化後の塗布厚みが50nmとなるようにグラビアコーターで塗布し、80℃で3秒乾燥硬化した。
次いで、3分以内に層B用塗料組成物を、乾燥後の塗布厚みが80nmとなるようにグラビアコートで塗布し、120℃で30秒乾燥硬化し、積層体を得た。
[積層体の作成−c2]
厚み38μmのポリエステルフィルム(東レ(株)製商品名“ルミラー”(登録商標)R60)に、層A用塗料組成物を、乾燥・硬化後の塗布厚みが50nmとなるようにグラビアコーターで塗布し、80℃で3秒乾燥硬化した。
次いで、3分以内に層B用塗料組成物を、乾燥後の塗布厚みが80nmとなるようにグラビアコートで塗布し、120℃で30秒乾燥硬化し、次いで高圧水銀灯にて、100mJ/cmの紫外線を照射して積層体を得た。
[積層体の作成−c3]
前記積層体の作成−c1に対し、層A用塗料組成物の乾燥・硬化後の塗布厚みを80nmとなるようにグラビアコーターで塗布した以外は同様にして、積層体を得た。
[積層体の作成−c4]
前記積層体の作成−c1に対し、層A用塗料組成物の乾燥・硬化後の塗布厚みを120nmとなるようにグラビアコーターで塗布した以外は同様にして、積層体を得た。
[積層体の作成−c5]
前記積層体の作成−c1に対し、層A用塗料組成物の乾燥・硬化後の塗布厚みを15nmとなるようにグラビアコーターで塗布した以外は同様にして、積層体を得た。
[積層体の作成−c6]
前記積層体の作成−c1に対し、層B用塗料組成物の乾燥・硬化後の塗布厚みを50nmとなるようにグラビアコーターで塗布した以外は同様にして、積層体を得た。
[積層体の作成−c7]
前記積層体の作成−c1に対し、層B用塗料組成物の乾燥・硬化後の塗布厚みを150nmとなるようにグラビアコーターで塗布した以外は同様にして、積層体を得た。
[積層体の作成−c8]
前記積層体の作成−c1に対し、層B用塗料組成物の乾燥・硬化後の塗布厚みを30nmとなるようにグラビアコーターで塗布した以外は同様にして、積層体を得た。
[積層体の作成−c9]
厚み23μmのポリエステルフィルム(支持基材1)に、層A用塗料組成物を、乾燥・硬化後の塗布厚みが50nmとなるようにグラビアコーターで塗布し、80℃で3秒乾燥硬化した。
次いで、3分以内に層B用塗料組成物を、乾燥後の塗布厚みが80nmとなるようにグラビアコートで塗布し、120℃で30秒乾燥硬化し、積層体を得た。
[層Bの作成-c10]
厚み38μmのポリエステルフィルム(東レ(株)製商品名“ルミラー”(登録商標)R60)に、層B用塗料組成物を、乾燥後の塗布厚みが80nmとなるようにグラビアコートで塗布し、120℃で30秒乾燥硬化し、層Bを得た。
以上の方法により実施例1〜35、実施例36〜65の積層体、比較例1〜3の積層体、比較例4の層B、比較例5の層B、比較例6〜8の積層体を作成した。実施例1〜35と比較例1〜4の層A、層Bの塗料組成物、層A、層Bの厚み、製造方法を表3に、実施例36〜65と比較例5〜8の層A、層Bの塗料組成物、層A、層Bの厚み、製造方法を表6に記載した。
[積層体の評価]
作成した積層体について、次に示す性能評価を実施し、得られた結果を表4および表7に示す。特に断らなければ、測定は各実施例・比較例において、1つのサンプルにつき場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
[オニウム塩の濃度(領域X、領域Y、領域Z)]
オニウム塩の濃度は、電界放出型透過電子顕微鏡(JEOL製 JEM−2100F)を用いて得られた積層体の断面(HAADF-STEM像)について、各領域のEELS分析(元素分析)を実施し、オニウム塩の濃度を算出した。
具体的には、RuO染色超薄切片法を用いて積層体の超薄膜切片を作成し、電界放出型透過電子顕微鏡(JEOL製 JEM−2100F)を用いて20万倍の倍率で観察される断面(HAADF-STEM像)について、各領域のEELS分析(元素分析)を実施した。
上記RuO染色超薄切片法では、RuO染料を用いて積層体断面の染色を実施し、包埋樹脂で固定化した後、凍結ミクロトームを用いて積層体断面の超薄膜切片を作成する。得られた超薄膜切片を電界放出型透過電子顕微鏡を用いて観察すると、層Bは染色され、層Aは染色されないため、コントラスト差により層Bと層Aの界面が観察される。
次いで、得られた積層体の断面像から、下記領域についてEELS分析(元素分析)を実施すると、各領域の元素ピーク(atm%)比が得られる。得られた元素ピーク比を各元素の濃度比として算出し、オニウム塩に含まれる特徴的な元素の濃度をオニウム塩の濃度とした。
・領域X:厚み方向における層Bの最表面の領域
上記方法を用いて観察される積層体の断面像において、点α(包埋樹脂と層Bのコントラスト差から識別)から厚み方向に5nmの点を測定の中心点としEELS分析を実施し、得られた異なる元素ピークの強度比を濃度比として算出し、オニウム塩に含まれる特徴的な元素の濃度を、領域Xのオニウム塩の濃度とした。
・領域Y:層Bの中央部の領域
上記方法を用いて観察される積層体の断面像において、点β(コントラスト差から層Bを識別し、層Bの膜厚みから層Bの中点を算出)を含み、厚み方向に領域X、領域Z以外の範囲についてEELS分析を実施する。領域Yは領域X、領域Zと比較して広域であるため、領域Xと領域Yとの界面から支持基材方向に5nmの点から領域内を支持基材方向に10nmの範囲毎に元素分析を実施し、得られた異なる元素ピークの強度比を濃度比として算出し、オニウム塩に含まれる特徴的な元素の濃度をオニウム塩の濃度として算出した。領域Y内において、最もオニウム塩濃度が高いものを、領域Yのオニウム塩の濃度とした。
・領域Z:層Aと層Bの界面の領域
上記方法を用いて観察される積層体の断面像において、点γ(層Aと層Bのコントラスト差から識別)を含み、点γを測定の中心点としEELS分析を実施し、得られた異なる元素ピークの強度比を濃度比として算出し、オニウム塩に含まれる特徴的な元素の濃度を、領域Zのオニウム塩の濃度とした。
[オニウム塩の濃度(領域V、領域S、領域T、領域W)]
オニウム塩の濃度は、前述の[オニウム塩の濃度(領域X、領域Y、領域Z)]に記載の方法と同様にして、濃度を算出した。
・領域V:厚み方向における層Bの最表面の領域
上記方法を用いて観察される積層体の断面像において、点ε(包埋樹脂と層Bのコントラスト差から識別)から厚み方向に5nmの点を測定の中心点としEELS分析を実施し、得られた異なる元素ピークの強度比を濃度比として算出し、オニウム塩に含まれる特徴的な元素の濃度を、領域Vのオニウム塩の濃度とした。
・領域S:層Bの中央部の領域
上記方法を用いて観察される積層体の断面像において、点σ(コントラスト差から層Bを識別し、層Bの膜厚みから層Bの中点を算出)を含み、点σを測定の中心点としてEELS分析を実施し、得られた異なる元素ピークの強度比を濃度比として算出し、オニウム塩に含まれる特徴的な元素の濃度を、領域Sのオニウム塩の濃度とした。
・領域T:層Aの中央部の領域
上記方法を用いて観察される積層体の断面像において、点ω(コントラスト差から層Aを識別し、層Aの膜厚みから層Aの中点を算出)を含み、点ωを測定の中心点としてEELS分析を実施し、得られた異なる元素ピークの強度比を濃度比として算出し、オニウム塩に含まれる特徴的な元素の濃度を、領域Tのオニウム塩の濃度とした。
・領域W:層Aと支持基材の界面の領域
上記方法を用いて観察される積層体の断面像において、点η(層Aと支持基材のコントラスト差から識別)から層A方向に5nmの点を測定の中心点としEELS分析を実施し、得られた異なる元素ピークの強度比を濃度比として算出し、オニウム塩に含まれる特徴的な元素の濃度を、領域Wのオニウム塩の濃度とした。
[剥離力(常温)]
積層体の層B形成面に粘着テープ(日東電工(株)製、ポリエステルテープ商品名31B:以下31Bテープ)を、5kgfのゴムローラーを1往復させて圧着し、20℃65%RH24時間放置後、引張り試験機を用いて300mm/分の速度で180°剥離した時の応力を測定した。剥離力は0.13mN以下を合格とした。
[耐溶媒密着性]
テスター産業社製、学振型摩擦試験機II型を用いて、積層体の層B表面に対し、トルエン約1mlを染み込ませた綿布(金巾3号)で荷重200gf×30往復擦過し、積層体についた溶剤を乾燥させた後、ポリエステル粘着テープ(日東電工(株)社製No.31Bテープ、18mm幅)を、5kgfローラーで圧着させながら貼り合わせ、1時間放置し、引張り試験機で剥離速度300mm/分、剥離角度180°でテープを剥離した時の荷重を測定した。この剥離力をトルエン含浸綿布で擦過した後の層B形成面の剥離力とした。
上記測定に用いたサンプルとは別の積層体の層B形成面に、ポリエステル粘着テープ(日東電工(株)社製No.31Bテープ、18mm幅)を、5kgfローラーで圧着させながら貼り合わせ、1時間放置し、引張り試験機で剥離速度300mm/分、剥離角度180°でテープを剥離した時の荷重を測定し、この剥離力を初期の層B形成面の剥離力とした。
この結果を以下の数式に当てはめて、耐溶媒密着性を計算した。耐溶媒密着性が85%以上を合格とした。
耐溶媒密着性=A/B×100
A:初期の層B形成面の剥離力
B:トルエン含浸綿布で擦過した後の層B形成面の剥離力。
[耐溶媒密着性2]
テスター産業社製、学振型摩擦試験機II型を用いて、積層体の層B表面に対し、酢酸エチル約1mlを染み込ませた綿布(金巾3号)で荷重200gf×30往復擦過し、積層体についた溶剤を乾燥させる。次いで23℃×65%RH環境下にて、表面抵抗測定機(三菱化学(株)製 ハイレスターUX 検出上限値 9×1014Ω/□)を用い、擦過後の積層体の層B表面の任意の3点を測定した。その平均値を酢酸エチル擦過後の表面抵抗値とし、9×1012Ω/□以下を合格とした。
[帯電防止性1・・・初期の表面抵抗値と粘着層剥離後の表面抵抗値]
23℃×65%RH環境下にて、表面抵抗測定機(三菱化学(株)製 ハイレスターUX 検出上限値 9×1014Ω/□)を用い、積層体の層B表面の任意の3点を測定した。その平均値を初期の表面抵抗値とし、9×1012Ω/□以下を合格とした。
[帯電防止性2・・・剥離後の粘着層と積層体の帯電量]
積層体の層B上に、ワイヤーバー(No.40)を用いてアクリル系粘着剤(トーヨーケム(株)製、オリバインBPS−8170)を塗布し、150℃のオーブンで2分間粘着剤を乾燥させ、粘着層を形成した。次いで、該粘着層上に、厚み25μmのポリエステルフィルムを5kgのローラーで圧着させながら貼り合わせ、室温23℃、湿度65%RHの雰囲気下で1時間放置した。
その後、ポリエステルフィルムと粘着層を介して圧着された積層体を、A4(210mm×297mm)サイズに裁断し、積層体のみを剥離して剥離後の粘着層、および剥離後の積層体を得た。剥離後の粘着層、および剥離後の積層体について、表面電位計(トレックジャパン(株)製 MODEL323)を用いて電位を測定し、20.0V以下を合格とした。電位は、A4の短手方向(210mm)について測定し、得られた電位(絶対値)の平均値を算出して用いた。
[オリゴマーブロック性1・・・オリゴマー量]
オリゴマー量は、下記に示す方法で測定した。
積層体を180℃×10分間熱処理後、底辺の面積が72cmになるように積層体を折り、内側が層A、層Bとなるように四角の箱を作成した。次いで、ここで作成した積層体の箱の中に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)10mlを入れ、底面積が全てDMFに浸るようにし、3分間放置した後、DMFを回収し、液体クロマトグラフィー(Shimadzu CLASS−VP)に供給し、DMF中のポリエステルオリゴマー量を求めた。DMF中のポリエステルオリゴマー量を接触させた積層体の面積で割り、オリゴマー量(mg/m)とし、オリゴマー量が0.1(mg/m)以下を合格とした。
DMF中のオリゴマー量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた。標準試料は、あらかじめ分取したポリエステルオリゴマー(環状三量体)を正確に秤量し、同時に正確に秤量したDMFに溶解し得た。標準試料の濃度は0.001〜0.01(mg/m)とした。
液体クロマトグラフによるDMF中のポリエステルオリゴマー量の測定条件は下記のとおりである。
移動相A:メタノール
移動相B:純水
カラム:YMC−Pack OSD−A
カラム温度:40℃
検出波長:240nm。
[オリゴマーブロック性2・・・異物欠点数]
異物欠点数は、下記に示すガラス板検査法で測定した。
積層体の層B上に、十分異物が無いことを確認した後、ワイヤーバー(No.40)を用いてアクリル系粘着剤(トーヨーケム(株)製、オリバインBPS−8170)を塗布し、150℃のオーブンで2分間粘着剤を乾燥させ、粘着層を形成した。次いで、該粘着層上に、厚み25μmのポリエステルフィルムを5kgのローラーで圧着させながら貼り合わせ、室温23℃、湿度65%RHの雰囲気下で1時間放置した。
その後、ポリエステルフィルムと粘着層を介して圧着された積層体を、50mm×100mmに裁断後、積層体のみを剥離し、厚み5mmの平滑で透明なガラス板に、粘着層付きのポリエステルフィルムの粘着層側を5kgローラーで圧着させながら貼り合わせた。
標準光源下にて、ガラス板/粘着層/ポリエステルフィルムの貼合品の両面を目視観察し、外接直径が30μm以上の輝点、曇り等の異物欠点数を数えた。また、欠点の大きさは顕微鏡で観察した。下記判定基準で異物欠点数を判定し、2点以上を合格とした。
3点 :異物欠点数=0個 /50cm
2点 :異物欠点数=1〜2個/50cm
1点 :異物欠点数=3個以上/50cm
1 支持基材
2 層A
3 層B
4 支持基材に垂直な基準線
5 点α
6 点β
7 点γ
8 領域X
9 領域Y
10 領域Z
11 支持基材
12 層A
13 層B
14 支持基材に垂直な基準線
15 点ε
16 点σ
17 点ω
18 点η
19 領域V
20 領域S
21 領域T
22 領域W
本発明の積層体は、例えば偏光板、位相差フィルムの粘着層の保護用途に好適に利用することができる。

Claims (5)

  1. 支持基材の少なくとも一方の面に、層Aと層Bとを支持基材側からこの順に有する積層体であって、該層Aがオニウム塩を含み、該層Bがオニウム塩およびポリジメチルシロキサンを含み、厚み方向における層Bの最表面の領域(領域X)、層Bの中央部の領域(領域Y)、層Aと層Bの界面の領域(領域Z)におけるオニウム塩の濃度が下記式(1)または(2)を満足することを特徴とする積層体。
    領域X≧領域Z>領域Y ・・・式(1)
    領域Z>領域X>領域Y ・・・式(2)
  2. 支持基材の少なくとも一方の面に、層Aと層Bとを支持基材側からこの順に有する積層体であって、該層Aがオニウム塩を含み、該層Bがオニウム塩およびポリジメチルシロキサンを含み、厚み方向における層Bの最表面の領域(領域V)、層Bの中央部の領域(領域S)、層Aの中央部の領域(領域T)、層Aと支持基材の界面の領域(領域W)におけるオニウム塩の濃度が下記式(3)または(4)を満足することを特徴とする積層体。
    領域V≧領域W>領域Sおよび領域T ・・・式(3)
    領域W>領域V>領域Sおよび領域T ・・・式(4)
  3. 前記層Aが、ポリアルコキシシロキサンおよび金属キレート化合物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
  4. 前記オニウム塩が、イオン液体であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の積層体。
  5. 前記積層体の180℃、10分間熱処理した後のジメチルホルムアミド抽出によるポリエステルオリゴマー量が0.1mg/m以下であり、かつ、ガラス板検査法による、層B表面における外接直径が30μm以上の大きさの異物欠点数が、2個/50cm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の積層体。
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