JP2018099666A - バラスト水処理装置及び配管ユニット - Google Patents

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辻 猛志
Takeshi Tsuji
猛志 辻
耕太 原
Kota Hara
耕太 原
剛 菅
Takeshi Suga
剛 菅
真理 山下
Mari Yamashita
真理 山下
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Abstract

【課題】バラスト配管内に存在する殺菌剤の混合を向上させるバラスト水処理装置そして装置の取付け保守を容易とする配管ユニットを提供することを課題とする。【解決手段】船舶外から取水されたバラスト水をバラストタンク2に向けてバラストポンプ4により流通させるためのバラスト水配管3に設けられた処理液注入のための注入部7と、該注入部7から上記バラスト水配管3内に殺菌剤を注入するための殺菌剤供給装置20と、上記バラスト水配管3内で流通している又は滞留している上記バラスト水を、上記バラスト水配管の下流側から、上流側であってバラストポンプの下流側の領域に帰還させる帰還配管経路10とを備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、船舶に搭載されるバラスト水を殺菌するためのバラスト水処理装置及びその設置を効率化するための配管ユニットに関する。
船舶に搭載されるバラスト水を殺菌するためのバラスト水処理装置では、バラスト水配管内に殺菌剤を注入した後、当該バラスト水配管内に存在するバラスト水と当該殺菌剤とを混合させる装置が、例えば、特許文献1に開示されている(特許文献1の図1のミキサーMxs、図23のMxc参照)。
特許第5924447号
バラスト水配管内に存在するバラスト水と殺菌剤との混合は、それが徹底されるほど殺菌効果が高まるので混合を徹底することが望ましい。
本発明は、特許文献1に比し、バラスト水配管内に存在するバラスト水と殺菌剤との混合効果がさらに高められたバラスト水処理装置を提供することを第一の目的とする。また、併せて、当該バラスト水処理装置の設置を効率化することができる配管ユニットを提供することを第二の目的とする。
本発明によれば、第一の目的は次のように構成されるバラスト水処理装置により、そして第二の目的は次のように構成される配管ユニットにより達成される。
<バラスト水処理装置>
船舶に搭載されるバラスト水を殺菌するためのバラスト水処理装置において、船舶外から取水されたバラスト水をバラストタンクに向けてバラストポンプにより流通させるためのバラスト水配管に設けられた注入部と、該注入部から上記バラスト水配管内に殺菌剤を注入するための殺菌剤供給装置と、上記バラスト水配管内で流通している又は滞留している上記バラスト水を、上記バラスト水配管の下流側から、上流側であってバラストポンプの下流側の領域に帰還させる帰還配管経路と、を備えていることを特徴とするバラスト水処理装置。
このような構成の本発明において、帰還配管経路は、バラスト水配管内で流通している又は滞留しているバラスト水を上記バラスト水配管内から取り出し上記バラスト水配管内に戻す帰還ポンプを有しているとともに全残留酸化性物質濃度計測装置をも有し、上記帰還ポンプは、全残留酸化性物質濃度計測装置が具備する計測用ポンプを兼ねているようにすることができる。
本発明において、殺菌剤供給装置は、バラスト水の殺菌のために使用されずに残った殺菌剤又はその成分を注入部からバラスト水配管内に注入する装置でもあることが好ましい。
本発明において、注入部は、バラスト水の殺菌のために使用されずに残った殺菌剤又はその成分と反応する還元剤をバラスト水配管内に注入する注入部でもあるようにすることができる。
本発明において、注入部は、バラスト水の殺菌のために使用されずに残った殺菌剤又はその成分をバラスト水配管内に注入するための第一の配管と、還元剤を上記バラスト水配管内に注入するための第二の配管とを具備しているようにすることができる。
本発明において、第一の配管の少なくとも一部及び第二の配管の少なくとも一部のうち一方が他方の内管をなす二重管構造を有するようにすることができる。
本発明において、第一の配管の先端は、第二の配管の先端よりも前記バラスト水配管の断面中心に近い位置に配置しているようにすることができる。
本発明において、注入部の下流側でバラスト水配管に設置された混合装置を有し、注入部が殺菌剤注入部と該殺菌剤注入部より下流側に位置する還元剤注入部とに分離して設けられていて、還元剤注入部は、上記混合装置と同じ位置又はその上流側で、バラスト水の殺菌のために使用されずに残った殺菌剤又はその成分と反応するための還元剤を上記バラスト水配管内に注入するようにすることが好ましい。さらに、帰還配管経路は、混合装置の下流側と混合装置の上流側とを接続している配管経路であるようにすることが好ましい。
本発明において、注入部の下流側でバラスト水配管内に設置された混合装置を有し、帰還配管経路は、該混合装置の下流側と該混合装置の上流側とを接続している配管経路であるようにすることができる。
本発明において、バラストタンクは、第一のバラストタンクと第二のバラストタンクを具備しており、該第一のバラストタンクに収容されているバラスト水は、少なくとも一時的に、上記第二のバラストタンクに移動可能であるようにすることができる。
本発明において、バラストタンクは、第一バラストタンクと第二バラストタンクを具備しており、該第一バラストタンクに収容されているバラスト水は、少なくとも一時的に、上記第二バラストタンクに移動可能であり、第一のバラストタンクに収容されているバラスト水の第二のバラストタンクへの移動により、該バラスト水の殺菌のために使用されずに残った殺菌剤又はその成分と還元剤の混合が促進されるように構成されていることが好ましい。
本発明において、船舶の揺れにより、バラスト水の殺菌のために使用されずに残った殺菌剤又はその成分と還元剤の混合が促進されるように構成されていることが好ましい。
<配管ユニット>
本発明による配管ユニットは、上述の構成のバラスト水処理装置を設置するためにバラスト水配管に対して取外し可能に同軸に取り付け可能なユニットを形成し、注入部と、帰還配管経路とを具備していることにより構成される。
本発明において、注入部の下流側に設置された混合装置をさらに具備しているようにすることができる。
本発明において、注入部は、殺菌剤をバラスト水配管へ注入する殺菌剤注入部と、バラスト水の殺菌のために使用されずに残った殺菌剤又はその成分と反応するための還元剤をバラスト水配管に注入するための還元剤注入部とを有し、該還元剤注入部は上記殺菌剤注入部と同一位置もしくは該殺菌剤注入部の下流側に位置しているようにすることができる。
本発明のバラスト水処理装置によれば、帰還配管経路を備えているので、バラスト水配管内を流通している又は滞留しているバラスト水を、当該バラスト水配管の下流側から上流側に帰還させることができ、それにより、バラスト水配管内に存在するバラスト水と殺菌剤との混合を促進することができ、その結果として、殺菌効果をより高めることができる。
本発明の配管ユニットによれば、バラスト水配管に対して取外し可能に同軸に取り付け可能なユニットを形成し、注入部と、帰還配管経路とを具備しているので、バラスト水処理装置の設置を効率化することができる。
(A)は本発明の第一実施形態装置の概要構成図であり、(B)は(A)での帰還配管経路についての変形例を示す図である。 本発明の第二実施形態の概要構成図である。 (A)は図2装置における注入部についての変形例であり、(B)はその横断面を拡大して示す図である。 (A)は図2装置における注入部についての他の変形例であり、(B)はその横断面を示す図である。 本発明の第三実施形態の概要構成図である。 本発明の第四実施形態を示し、(A)は装置の概要構成図、(B)以降は図6(A)装置の異なる運転状態を示し、(B)はバラスト水漲水運転時、(C)は残留物還元処理運転時、(D)はバラスト水排水運転時を示す。
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を詳細に説明する。その際、必要に応じて各図を参照しつつ説明するが、各図において同一部分又は相当する部分もしくは共通部分にはこれと同じ符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。いうまでもなく、本発明は、図示された実施の形態に限定されない。
<第一実施形態>
図1(A)は、本発明の第一実施形態に係るバラスト水処理装置の概要構成図である。
図1(A)において、本発明に係る船舶は、バラスト水を船外から取水する取水口又はシーチェスト1と、このバラスト水を収容あるいは漲水するバラストタンク2とを有し、シーチェスト1とバラストタンク2とをバラスト水配管3で接続している。
上記バラスト水配管3には、シーチェスト1から取水されたバラスト水をバラストタンク2へ向け送水するためのバラストポンプ(P1)4、バラスト水中の異物やプランクトンを濾過除去するための濾過装置5、濾過後のバラスト水に後述の殺菌剤供給装置20から供給された殺菌剤を注入する注入部7、注入された殺菌剤をバラスト水に混合するための混合装置6が設けられている。
上記バラスト水配管3には、混合装置6とバラストタンク2との間の位置に取出部8、そして濾過装置5と注入部7との間の位置に帰還部9とが設けられていて、該取出部8と帰還部9とが帰還配管経路10をなす配管で接続されている。該帰還配管経路10には、帰還ポンプ(P4)11と全残留酸化性物質濃度計測装置(以下、TRO計という)12とが設けられている。かくして、バラスト水配管3内のバラスト水は、上記帰還配管経路10とバラスト水配管3との間で循環するようになっている。ここで、TRO計12は、バラスト水に注入された殺菌剤の濃度を全残留酸化性物質濃度として計測する装置である。
上記バラスト水配管3に設けられた注入部7には、バラスト水配管3内のバラスト水を殺菌処理する殺菌剤をバラスト水配管3内へ注入するための殺菌剤供給装置20が接続されている。該殺菌剤供給装置20は、固形の塩素系薬剤を水に溶解して水溶液を塩素系殺菌剤として生成する殺菌剤溶解装置21と、該殺菌剤溶解装置21から上記注入部7へ殺菌剤を送る第一の配管22と、該第一の配管22に設けられた殺菌剤ポンプ(P2)23とを備えている。
このような本実施形態では、船外からシーチェスト1を経て取水したバラスト水を船内でバラスト水配管3に設けられたバラストポンプ(P1)4によりバラストタンク2へ向け流通させ該バラストタンク2に収容又は漲水する。該バラストタンク2に収容又は漲水される前に該バラスト水は殺菌剤により殺菌される。
本実施形態では、バラスト水処理は、船外から取水したバラスト水を濾過装置5で濾過し異物やプランクトンを除去した後、濾過後のバラスト水に酸化性物質を含有する殺菌剤を上記殺菌剤供給装置20により注入部7からバラスト水配管3内へ注入し、殺菌剤注入後に混合装置6でこの殺菌剤をバラスト水に混合し、殺菌剤により殺菌されたバラスト水をバラストタンク2に収容又は漲水することにより行われる。殺菌剤による殺菌処理としては、酸化性を有する遊離有効塩素を含有する塩素系薬剤の水溶液を殺菌剤として使用することが知られている。該塩素系薬剤の水溶液は、固形の塩素系薬剤を水に溶解させることで用意することができる。
バラスト水は、殺菌剤供給装置20からの殺菌剤により、上記バラスト水配管3内で殺菌されるが、殺菌剤がバラスト水配管3内のバラスト水に十分に均一に分散・混合されていないこともあり得る。本実施形態では、殺菌剤が注入されたバラスト水を取出部8から取出し帰還ポンプ(P4)11により帰還部9へ帰還させることで、該バラスト水をバラスト水配管3と帰還配管経路10との間で循環させて殺菌剤を十分に混合させ均一濃度とする。この濃度はTRO計12により計測され、殺菌が十分に行われ、また殺菌剤が過度に多くならないように、殺菌剤の濃度を所定範囲内とすべく、上記殺菌剤供給装置20からの殺菌剤の供給量を制御する。
上記帰還配管経路10の帰還位置、すなわち帰還部9の位置は、バラストポンプ(P1)4の下流側であって、混合装置6そして注入部7の位置に対して上流側あるいは下流側に選択的に設定できる。例えば、
(i)図1(A)にて実線で示されているように、帰還部9を濾過装置5と注入部7との間の位置に設ける、
(ii)図1(A)にて太破線で示されているように、帰還部9を注入部7と混合装置6(入口側)との間の位置に設ける。
(iii)図1(A)で細破線で示されるように、帰還部9を混合装置6(出口側)と取出部8との間の位置に設ける、
等の位置の設定が考えられる。その場合、注入部7、取出部8、帰還部9そして混合装置6の相互の距離関係を適切に設定することが好ましい。図1(A)内に記入したように、上記(i)における場合をXとして、各距離X1〜X4、そして上記(ii)における場合をYとして、各距離Y1〜Y4をバラスト水配管3の内径をDとして次のように設定するとよい。
Xの場合、
X1:(0.1〜10)D
X2:(2〜10)D
X3:(0.1〜10)D
X4:(2.2〜10)D
Yの場合、
Y1:(0.1〜5)D
Y2:(2〜10)D
Y3:(0.1〜5)D
Y4:(2.2〜15)D
である。各距離を上述のように選定する理由は、次の通りである。
(a)帰還配管経路10の帰還部9、取出部8と混合装置6との距離X1,X2,Y1,Y2が下限値より小さいと、混合装置6の入口、出口でのバラスト水流れの乱れにより、帰還ポンプ(P4)11により帰還するバラスト水の取出、帰還が不安定になり支障が生じることとなり不適であるからである。
(b)上記距離X1,X2,Y1,Y2が上限値より大きいと、帰還配管経路10の長さが過剰に長くなって圧力損失が大きくなり帰還ポンプ(P4)11の能力が大きいものを必要とするため装置コストが増加し不適となるからである。
(c)帰還配管経路10の帰還部9、取出部8と注入部7との距離X3,X4,Y3,Y4が下限値より小さいと、帰還配管経路10から流入する又は帰還配管経路10へ流出する帰還バラスト水の流れの影響を受けて、注入部7から供給される殺菌剤の注入が不安定になり支障が生じることとなり不適である。
(d)上記距離X3,X4,Y3,Y4が上限値より大きいと、帰還配管経路10の長さが過剰に長くなって圧力損失が大きくなり、帰還ポンプ(P4)11の能力が大きいものを必要とするため装置コストが増加し不適となるからである。
このような本実施形態によると、 帰還配管経路10を備えているので、バラスト水配管3内を流通している又は滞留しているバラスト水を、該バラスト水配管3の下流側の取出部8から上流側の帰還部9に帰還させることができ、それにより、バラスト水配管3内に存在するバラスト水と殺菌剤との混合を促進することができ、その結果として、殺菌効果をより高めることができる。
また、本実施形態によれば、帰還配管経路10により取出部8から帰還部9に戻されたバラスト水(殺菌剤が注入されたバラスト水)がバラスト水配管3内を流通するときに混合装置6を通過するので、殺菌剤の攪拌が促進される。その結果、殺菌剤が注入されたバラスト水がバラスト水配管3内を通過するときに殺菌効果が促進される。
さらに、本実施形態によれば、全残留酸化性物質濃度計測装置(TRO計)が具備するポンプを用いて帰還配管経路を構成することができるので、帰還ポンプを別途追加せずに済み、合理的であり、装置価格の上昇を避けることができる。
また、全残留酸化性物質濃度計測装置を酸化還元電位(ORP)計測装置で代用することができ、酸化還元電位計測装置もポンプを具備しているのであれば、当該ポンプを用いて帰還配管経路を構成するので、帰還ポンプを別途追加せずに済み、合理的であり、装置価格の上昇を避けることができる。
上記TRO計12は、図1(A)のように帰還配管経路10に直列に配置しなくとも、図1(B)のように帰還配管経路10に分岐管10Aを設けて、帰還配管経路10に対して並列をなすように該分岐管10AにTRO計12を配置するとともに、その前後にバルブ12A,12Bを設け、計測時にのみ該バルブ12A,12Bを開として殺菌剤の濃度を計測するようにしてもよい。
<第二実施形態>
次に、図2にもとづき、第一実施形態における殺菌剤の供給と、還元剤の供給とを行うこととした第二実施形態について説明するが、その説明に先立ち、用いられる用語を説明する。本発明においては、本実施形態そして以降の実施形態を含め、次に掲げる用語の意味又は解釈は、区別して別段の説明を行う場合を除き、以下のとおりとする。
(1)「塩素系薬剤」とは、溶媒である水に溶解したとき、水溶液中での不均化により、殺菌作用を有する遊離有効塩素を放出する薬剤又はその遊離有効塩素を放出し得る物質を生成する薬剤であり、本発明において「固形」、「液状」の場合がある。「固形」とは、常温において粉末、顆粒又は錠剤の状態にあることであり、本発明では、「塩素系薬剤」は「固形」である必要はない。
「固形の塩素系薬剤」の代表例は、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム及びその水和物、ジクロロイソシアヌル酸カリウム等である。「塩素系殺菌剤」とは、遊離有効塩素が有する殺菌作用を利用して殺菌を行う薬剤であり、その代表例は、塩素系薬剤の水溶液である。
(2)「還元剤」とは、固形であると否と問わず、他の物質から電子を受け取るために用いる薬剤をいい、塩素系殺菌剤との関係では、塩素系殺菌剤に由来する遊離有効塩素を還元するために用いる物質である。還元剤の代表例は、亜硫酸ナトリウム又はその水和物、チオ硫酸ナトリウム又はその水和物、あるいは、それらの水溶液である。図2にもとづき、第一実施形態における殺菌剤の供給と、還元剤の供給とを行うこととした第二実施形態について説明するが、その説明に先立ち、還元剤供給が必要となる背景を説明する。
船舶のバラスト水を殺菌剤により殺菌するバラスト水処理は、船外から取水したバラスト水を濾過した後、濾過後のバラスト水に酸化性物質を含有する殺菌剤を注入し、殺菌剤注入後のバラスト水をバラストタンクに収容又は漲水する殺菌処理が行われる。殺菌処理としては、酸化性を有する遊離有効塩素を含有する塩素系薬剤の水溶液を殺菌剤として使用することが知られている。該塩素系薬剤の水溶液は、固形の塩素系薬剤を水に溶解させることで用意することができる。
塩素系薬剤の水溶液を用意し、その水溶液を用いてバラストタンクに収容すべきバラスト水を殺菌する場合、通常、該バラスト水を殺菌するために本来必要な量よりも多目に、該水溶液を用意する。なぜなら、塩素系薬剤の水溶液を殺菌剤としてバラスト水に注入するためには、少なくとも、該水溶液を該バラスト水まで流通させるための配管が必要であり、本来バラスト水の殺菌に供される量に加え、その配管内に行き渡る量の該水溶液が余分に必要になるからである。
しかし、塩素系薬剤の水溶液を本来必要な量よりも多目に用意すると、余分な該水溶液がバラスト水処理に使用されることなく上記配管内と塩素系薬剤を水に溶解して塩素系薬剤の水溶液を塩素系殺菌剤として生成しバラスト水に供給する殺菌剤供給装置内に残留することになる。
バラスト水処理に使用されることなく残留する塩素系薬剤の水溶液及び/又は該塩素系薬剤の成分(以下、まとめて又は個別に「殺菌剤残留物」という)が、配管内と殺菌剤供給装置内で、溶媒である水の蒸発により濃化すると、あるいは、殺菌剤残留物の水温低下に伴い、塩素系薬剤の水に対する溶解度が低下すると、塩素系薬剤の成分の析出物が殺菌剤残留物中や、殺菌剤残留物と配管等との接液領域に発生し、堆積し、場合によっては、該析出物が配管内と殺菌剤供給装置内で固化するおそれがある。そのおそれは、塩素系殺菌剤の原料が固形の塩素系薬剤である場合、特に大きくなる。原料が固形であると、水に対する原料の溶解度の低下は、該原料の成分の析出物の発生に直結するからである。
上記析出物の発生・堆積・固化は、配管の閉塞、圧損増加その他の流通障害、配管と殺菌剤供給装置に備えてあるミキサー、センサ、バルブ、ポンプ等の機器の機能不全などの不具合(以下、まとめて、殺菌剤残留物に起因する「動作不具合」という)の原因となり、ひいてはバラスト水処理の正常な実行の阻害要因となる。
バラスト水処理装置の船内設置場所、船舶の行先、航路、航海時間等によっては、殺菌剤残留物の少なくとも一部の濃化が進行し、また殺菌剤残留物の水温低下により水に対する塩素系薬剤の溶解度が低下する。例えば、赤道直下を航行する船舶の機関室の空調及び通風の機能が不十分であると、機関室の温度は50℃近く(場合によっては50℃超)になることがあるので、そのような機関室内に設置してあるバラスト水処理装置では、水分の著しい蒸発により殺菌剤残留物の少なくとも一部の濃化が短時間で進行する。また、水分の蒸発が緩慢に進む場合であっても、バラスト水をバラストタンクへ収容しそして該バラスト水をバラストタンクから船外へ排水することを繰り返すバラスト水処理装置が一回目の運転から二回目の運転までの間、長時間活動停止状態に置かれる場合には、少しずつであっても確実に殺菌剤残留物の濃化は進行する。他方、中高緯度の低温海域を航行する船舶の機関室の空調及び通風の機能が不十分であると、機関室内は30℃未満になるので、そのような機関室内に設置してあるバラスト水処理装置では、殺菌剤残留物の水温低下に伴い、水に対する塩素系薬剤の溶解度が低下する。
殺菌剤残留物の少なくとも一部の濃化や水に対する塩素系薬剤の溶解度の低下が進行すると、塩素系薬剤の成分の析出物が、殺菌剤残留物中や、殺菌剤残留物とバラスト水処理装置の構成要素(容器、配管系統等)との接液領域に発生し、堆積し、場合によっては固化するので、殺菌剤残留物に起因する動作不具合が起こり、バラスト水処理の正常な実行の阻害要因となる。
塩素系薬剤の中には、塩素系薬剤の水溶液から塩素含有ガスを発生させるものがある。例えば、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの場合、その水溶液から塩素含有ガスが発生する。塩素含有ガスはたとえ少量であっても刺激臭を伴う場合が多いので、塩素含有ガスの発生源の周囲の船内作業環境を悪化させる。
本実施形態では、塩素系薬剤を水に溶解して得た水溶液を殺菌剤として使用するバラスト水処理の正常な実行の阻害要因の発生を抑制又は防止することができるバラスト水処理装置を提供することができる。
船舶には船外から取水したバラスト水を船内でバラストタンクへ向け流通させるバラストポンプと、該バラスト水を船内で収容する上記バラストタンクと、該バラストタンクに収容される前に該バラスト水を殺菌するバラスト水処理装置とが具備されている。
バラスト水処理装置は、バラストポンプが船外から取水したバラスト水をバラスト水配管内を該バラストタンクに向かって流通させて上記バラストタンクに収容又は漲水するとき、上記バラストタンクに向かって流通するバラスト水配管内のバラスト水に注入部から塩素系殺菌剤を供給する殺菌剤供給装置と、バラスト水配管内のバラスト水に注入部から還元剤を供給する還元剤供給装置とを備えている。該バラスト水処理装置は、バラストタンクに向かうバラスト水に注入されずに殺菌剤供給装置と注入部までの殺菌剤供給管内に残った上記塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部を注入部からバラスト水配管内に注入するように構成されている。
以下、図2にもとづき、殺菌剤の供給と還元剤の供給とを行うこととした第二実施形態のバラスト水処理装置の構成について説明する。なお、図2において、図1(A)に示された第一実施形態と同一あるいは共通部位には、同一符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態では、かかるバラスト水配管3内を流通するバラスト水に対して、図1の場合と同じく殺菌剤を供給する殺菌剤供給装置20が設けられているのに加え、還元剤を供給する還元剤供給装置30も設けられている。
殺菌剤供給装置20は、本実施形態では、図1の場合と同様に、固形の塩素系薬剤を水に溶解して水溶液を塩素系殺菌剤として生成する殺菌剤溶解装置21を備え、該殺菌剤溶解装置21で生成された塩素系殺菌剤を、殺菌剤供給管として形成された第一の配管22に設けられた殺菌剤ポンプ(P2)23により、濾過装置5と混合装置6との間でバラスト水配管3に設けられた注入部7から該バラスト水配管3内を流通するバラスト水へ注入するようになっている。
また、還元剤供給装置30は、還元剤を収容する還元剤タンク31を備え、還元剤供給管として形成された第二の配管32に設けられた還元剤ポンプ(P3)33により、上記注入部7から還元剤をバラスト水配管3内を流通するバラスト水へ注入するようになっている。還元剤注入部を殺菌剤注入部と別に設けてもよい。
本実施形態では、取水したバラスト水を濾過し、そして殺菌剤を供給してバラストタンク2へ漲水した後、殺菌剤供給装置20に残留する塩素系殺菌剤の残留物を、殺菌剤を供給する第一の配管22に設けられた殺菌剤ポンプ(P2)23により、注入部7から該バラスト水配管3内を流通するバラスト水へ注入する。
ここで、殺菌剤の残留物とは、殺菌剤供給装置20が具備する混合槽や殺菌剤供給配管に残留している、未使用の塩素系殺菌剤であり、その少なくとも一部が濃化してできる物質、塩素系殺菌剤の原料である塩素系薬剤と水とを混合してできる水溶液、混合物の少なくとも一つを含んでいる。また、未使用の塩素系殺菌剤の液状物にさらに水が混合された混合物も殺菌剤の残留物に含まれる。
次に、本実施形態について、その運転要領を説明する。
殺菌剤供給装置20では、バラスト水への殺菌剤の供給を停止したときには、第一の配管22、殺菌剤ポンプ(P2)23に殺菌剤(固形塩素系薬剤の溶解液)の残留物が残留している。この残留物には塩素系殺菌剤が存在しており、何ら処理しないと、配管の腐食、水分蒸発により生じる析出物の配管内への固着、閉塞、塩素ガスの発生等の問題が生じる。この問題の対処要領については、残留物還元処理運転の項で説明する。
<バラスト水漲水運転>
バラスト水漲水運転において、船舶が具備するバラストタンクに収容されるバラスト水を収容前に殺菌する。バラストポンプ(P1)4を運転すると、シーチェスト1を経て船外からバラスト水が取水されてバラスト水配管3を流れ、該バラスト水は、濾過装置5へもたらされ、ここでバラスト水中の異物やプランクトンが濾過除去される。濾過後のバラスト水は混合装置6へ向う。
上記バラストポンプ(P1)4の運転と同時あるいはその後に、殺菌剤ポンプ(P2)23を運転し、第一の配管22を介して注入部7からバラスト水配管3を流通するバラスト水に殺菌剤を供給して、バラスト水中の細菌を殺菌する。殺菌剤は混合装置6にてバラスト水に混合されて、殺菌が良好に行われる。かくして、殺菌済のバラスト水がバラスト水配管3を経てバラストタンク2へ送られここに収容又は漲水される。上記バラスト水は、バラスト水配管3と帰還配管経路10との間を循環することで、バラストタンク2へ送られる前に、殺菌剤が十分に拡散・混合されている。
<殺菌剤残留物処理運転>
次に、殺菌されたバラスト水をバラストタンク2へ漲水した後に行う、殺菌剤供給装置20内そしてバラスト水配管3内に残留する殺菌剤とその成分(殺菌剤残留物)の処理について説明する。
バラスト水漲水運転により殺菌処理が終了すると、殺菌剤の供給を停止し、バラストポンプ(P1)4の運転を停止し、バラスト水配管3内にバラスト水を滞留させる。また、殺菌剤溶解装置21への固形の塩素系薬剤の供給を停止したまま、殺菌剤ポンプ(P2)23を運転することにより、殺菌剤供給装置20の装置内と第一の配管22内に残留する殺菌剤及びその成分(殺菌剤残留物)を注入部7からバラスト水配管3内に滞留しているバラスト水に供給する。
これとともに、還元剤供給装置30により還元剤を注入部7からバラスト水配管3内に滞留しているバラスト水に供給する。バラスト水配管3内に滞留しているバラスト水には殺菌剤残留物と還元剤が供給されることとなる。
帰還配管経路10の帰還ポンプ(P4)11を運転しバラスト水配管3内に滞留しているバラスト水を取出部8から帰還部9へ向け帰還し循環させる。これにより、バラスト水に含まれる殺菌剤残留物と還元剤との混合が促進され、殺菌剤残留物に含まれる塩素系殺菌剤の遊離有効塩素が還元剤と反応して、遊離有効塩素が消失される還元処理がなされ無害化が効率よく行われる。
このように構成される本実施形態によるバラスト水処理装置にあっては、船外から取水されたバラスト水をバラストタンクへ収容又は漲水するとき、バラスト水は塩素系殺菌剤により殺菌される。しかしながら、バラスト水のバラストタンクへの収容又は漲水終了時には、塩素系殺菌剤がバラスト水の殺菌に供されることなく、上記バラスト水へ供給するための殺菌剤供給装置20内に残留物として留まることになる。このままの状態で、殺菌剤供給装置20内に塩素系殺菌剤が残留物として残留すると、塩素系殺菌剤の成分が析出し析出物の発生、堆積、固化により殺菌剤残留物に起因する動作不具合が生じ、バラスト水処理の正常な実行の阻害要因となる。そこで、本実施形態では、バラスト水の漲水運転終了後に、上記殺菌剤供給装置20内の殺菌剤残留物を注入部7からバラスト水配管3に供給し、還元剤供給装置30により還元剤を上記注入部7からバラスト水配管3に供給し、殺菌剤残留物と還元剤とを合流させ、帰還配管経路10により循環させることで、塩素系殺菌剤を還元して無害化し殺菌剤残留物に起因する動作不具合の発生を防止する。
このように、本実施形態では、バラスト水を船外から取水する運転を停止し、取水したバラスト水への殺菌剤を供給する操作(殺菌剤ポンプ(P2)23の運転)を停止してしまうと、殺菌剤供給装置20には、殺菌剤を含む残留物が残留しているので、殺菌剤溶解装置21への固形の塩素系薬剤の供給を停止したまま、殺菌剤ポンプ(P2)23を運転することにより、殺菌剤溶解装置21から殺菌剤供給装置20の装置内そして第一の配管22内の殺菌剤残留物を、注入部7を経てバラスト水配管3へ流送することとしている。
さらに、還元剤ポンプ(P3)33を運転し還元剤をバラスト水配管3へ流送して、バラスト水配管3に滞留しているバラスト水に、殺菌剤残留物と還元剤とを合流させ、帰還配管経路10により、滞留している殺菌剤残留物と還元剤を含むバラスト水を循環させることで、殺菌剤残留物と還元剤とが良好に混合され、殺菌剤残留物に含まれる塩素系殺菌剤中の遊離有効塩素が還元剤と反応して、遊離有効塩素が消失される還元処理がなされる。
かくして、還元処理された殺菌剤残留物と還元剤とを含むバラスト水は、バラスト水配管3内に貯留される。このバラスト水配管3内に貯留されるバラスト水は、バラスト水排水運転時に船外へ排出される。
帰還配管経路10により、滞留しているバラスト水を循環することにより、塩素系殺菌剤の残留物と還元剤とを十分に混合して塩素系殺菌剤の残留物中の遊離有効塩素を消失させる還元処理を促進させるとともに、還元剤との反応により塩素系殺菌剤から生成して固形物として析出する成分(析出物という)が結晶化して装置や配管内面に固着することを防ぐことができる。固形塩素系薬剤がジクロロイソシアヌル酸ナトリウムの場合は、イソシアヌル酸が固形物として析出する。
本実施形態によれば、バラスト水の殺菌のために使用されずに残った殺菌剤又はその成分(残留殺菌剤)を殺菌剤供給装置20からバラスト水配管3内に排出させることができるので、残留殺菌剤に起因する問題(たとえば、析出、堆積、固化による配管詰まり)を予防することができる。
また、本実施形態によれば、バラスト水配管3内で残留殺菌剤を還元剤により無害化させることができるので、安全である。特に、殺菌剤が塩素系殺菌剤である場合には、バラスト水配管3やこれに接続するバラストタンク2の腐食の懸念を払拭することができる。
本実施形態によれば、残留殺菌剤を第一の配管22を通じて、還元剤を第二の配管32を通じて、別々に注入するので、残留殺菌剤と還元剤との反応による悪影響(たとえば当該反応に伴う発熱)が殺菌剤供給装置20に及ばないようにすることができる。
本実施形態では、図3(A),(B)に見られるように、第一の配管22の少なくとも一部及び第二の配管32の少なくとも一部のうち一方が他方の内管をなす二重管構造を有しているようにすることができる。図3(A),(B)には、第一の配管22の一部が第二の配管32の内管をなす例が示されている。こうすることで注入部7は外観として一つの注入部を備えることになり、注入部を簡素に構成することが可能になる。
図3(A),(B)に示すように、第一の配管22の先端と第二の配管32の先端がバラスト水配管3の内壁面近傍の概ね同一の位置にある場合には、第一の配管22の先端部でバラスト水配管3を流れるバラスト水から受ける負圧は相対的に小さい。そのため、殺菌剤残留物の流動性が低い場合(たとえば、殺菌剤残留物の固化が進んでいる場合)には、第一の配管22の先端部で負圧により吸引される効果が低いため、当該殺菌剤残留物はバラスト水配管3内へ移動しにくくなる。
これに対して、図4(A),(B)に示すように、第一の配管22の先端が、第二の配管32の先端よりも前記バラスト水配管3の断面中心に近い位置に配置している場合には、第一の配管22の先端は、第一の配管22の先端がバラスト水配管3の内壁面近傍の位置にある場合よりも、バラスト水配管3の断面中心近くを流れるより高速のバラスト水からより大きな負圧を受ける。したがって、殺菌剤残留物の固化が進んで該殺菌剤残留物の流動性が低下していても、第一の配管22の先端部で負圧により吸引される効果が高いため、上記殺菌剤残留物をバラスト水配管3内に容易に移動させることができる。
なお、第一の配管22は、その先端が第二の配管32の先端よりもバラスト水配管3の断面中心に近い位置にあれば足り、該断面中心と一致する位置にまで延伸している必要はなく、当該断面中心に到達しないで断面中心に近い位置にまで延伸していてもよく、該断面中心を過ぎた位置まで延伸していてもよい。第一の配管22の先端が、例えば、上記断面中心から断面中心を過ぎる方向又はその逆方向へ断面半径の半分の距離だけ離れる範囲に位置していると、負圧により殺菌剤残留物を吸引する効果を良好に得ることができる。また、上記第一の配管22の先端開口は、下流側に向け屈曲されたり、あるいは下流側に向け大きく開口するように斜めに切り取られた切り口をなす形態とすることもできる。
「固形の塩素系殺菌剤」がトリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム又はその水和物、ジクロロイソシアヌル酸カリウム等のような塩素化イソシアヌル酸化合物である場合に使用される頻度が高い還元剤は、亜硫酸ナトリウム又はその水和物、チオ硫酸ナトリウム又はその水和物、あるいは、それらの水溶液である。還元剤が亜硫酸ナトリウム又はチオ硫酸ナトリウムの水溶液であれば十分流動性が高いので、第二の配管32の先端は、第一の配管22の先端よりもバラスト水配管の断面中心近くに配置している必要はない。しかし、還元剤の流動性が高い場合であれ、低い場合であれ、殺菌剤残留物と混合し易くすることが望まれる場合には、第二の配管32の先端も、当該断面中心近くに配置している方が好ましい。
本実施形態では、混合装置6を有しているので、該混合装置6によっても、残留殺菌剤と還元剤との混合を促進させることができるので効率的である。
さらに、本実施形態によれば、帰還配管経路10により下流側から上流側に戻されたバラスト水(殺菌剤が注入されたバラスト水、残留殺菌剤と還元剤が注入されたバラスト水)が混合装置6を通過するので、攪拌が促進される。その結果、殺菌剤が注入されたバラスト水が通過する場合には殺菌効果が促進され、残留殺菌剤と還元剤が注入されたバラスト水が通過する場合には残留殺菌剤の還元処理が促進され無害化が促進される。
以上のように本実施形態によれば、殺菌剤供給装置に残留する殺菌剤残留物の少なくとも一部をバラスト水配管内のバラスト水に注入し、還元剤をバラスト水配管内のバラスト水に注入し、殺菌剤残留物を還元剤と反応させ、遊離有効塩素を還元して消失させるので、その殺菌剤残留物に起因する、容器や配管経路の閉塞、圧損増加その他の流通障害、殺菌剤供給装置と配管経路に備えられた機器の機能不全などの動作不具合の発生を抑制又は防止することができる。
また、殺菌剤残留物の塩素系薬剤の水溶液から塩素含有ガスが発生し、その塩素含有ガスにより船内作業環境の悪化が懸念される場合であっても、還元剤により塩素系薬剤の水溶液(塩素系殺菌剤)中の遊離有効塩素を還元すれば、塩素含有ガスの発生は起らないか、抑制される。
総じて、本実施形態によれば、バラスト水処理を正常に実行することができるバラスト水処理装置を実現することができる。
<第三実施形態>
本実施形態では、帰還配管経路10を含む系をユニット化したことに特徴がある。本実施形態の配管ユニット40は、図5に見られるように、図1の帰還配管経路10を含む配管系に、接続部としてフランジ41,42,43を設けることで、図1装置に対して取り外し自在に接続できるようにしてユニット化している。したがって、帰還配管経路を備えていない既存のバラスト水処理装置であっても、対応部分に上記配管ユニット40を接続するだけで、本発明装置とすることができる。また、保守時においても、上記配管ユニット40を保守済の配管ユニット40と交換するだけでよいので、作業が簡単化される。図5の配管ユニット40は、図1の形態に対応して示されているが、図2の形態の装置にも適用可能である。
配管ユニット40の取付けを可能とするには、上記フランジ41,42,43に接続されるフランジとして、バラスト水配管3、第一の配管22、あるいは第一の配管22そして第二の配管32の両方に対応するフランジを設ければよい。
本実施形態によれば、注入部7と、帰還配管経路10との接続部としてのフランジ41,42,43を備えてユニット化されているので、バラスト水処理装置の設置を効率的に行うことができる。混合装置6も同様の要領でユニット化すれば、この効果をさらに高めることができる。
<第四実施形態>
次に、図6に示す本発明の第四実施形態について説明する。本実施形態は、図6(A)に装置の概要構成が示されているように、図2の第二実施形態の装置構成において、バラストタンクを二つ配したことに特徴がある。図6(A)においても、図2と同一もしくは共通部位には同一符号を付し、その説明は省略する。
図6(A)では、バラストタンク2は、第一バラストタンク2Aと第二バラストタンク2Bの二つのバラストタンクに別けられている。第一バラストタンク2Aと第二バラストタンク2Bは、バラスト水配管3に対しては並列に配設されている。すなわち、混合装置6の出口側に設けられた帰還配管経路10の取出部8の下流側で、バラスト水配管3は第一分岐管3Aと第二分岐管3Bに分岐されていて、それぞれ第一バラストタンク2Aと第二バラストタンク2Bに接続されている。第一分岐管3Aと第二分岐管3Bは第一バラストタンク2Aと第二バラストタンク2Bの下流側で合流して再び一つの管路をなし、バラストポンプ(P1)4の入口側でバラスト水配管3に接続されていて、バラスト水帰還路13を形成している。また、本実施形態では、前出の実施形態では図示が省略されていた、バラスト水排水管14が図示されている。該バラスト水排水管14は、上記取出部8とバラスト水配管3の分岐点との間で該バラスト水配管3に接続されており、船側に設けられた排水口15にまで延びている。
図6(A)においては、配管系を切り替えてバラスト水を異なる運転モードで扱うために、上記配管系に複数の弁が備えられている。先ず、バラスト水配管3には、シーチェスト1と上記バラスト水帰還路13の帰還点13Aとの間に第一弁51、第一分岐管3Aに設けられ第一バラストタンク2Aの入口側に位置する第二弁52と出口側に位置する第三弁53、第二分岐管3Bに設けられ第二バラストタンク2Bの入口側に位置する第四弁54と出口側に位置する第五弁55、バラスト水帰還路13に設けられた第六弁56、バラスト水排水管14に設けられた第七弁57を備えている。このように、本実施形態ではバラストタンクを二つ有し、両者について各弁51〜57の切り替えにより、バラスト水漲水運転、残留物還元処理運転、バラスト水排水運転を次の要領で行う。
<バラスト水漲水運転>
バラスト水を第一バラストタンク2Aに漲水するときには、第三弁53、第四弁54、第六弁56、第七弁57を閉とし、第一弁51と第二弁52を開とするとともに、殺菌剤ポンプ(P2)23と帰還ポンプ(P4)11を駆動(還元剤ポンプ(P3)33は停止)して、図6(B)にて太線で示される範囲で配管内にバラスト水が流通するようにする。この状態では、シーチェスト1から取水されたバラスト水には、注入部7から殺菌剤が注入されて、殺菌されたバラスト水がバラスト水配管3と第一分岐管3Aを経て第一バラストタンク2Aに漲水される。
バラスト水配管3内のバラスト水の一部は、取出部8から取出されて帰還配管経路10を経て帰還部9からバラスト水配管3へ戻されて循環流を形成し、殺菌剤がバラスト水に十分に混合されて殺菌処理がなされる。
<残留物還元処理運転>
第一バラストタンク2A内へのバラスト水の漲水を停止する際には、停止後に殺菌剤供給装置20の装置内の殺菌剤残留物を還元処理する必要があり、先ず、第一バラストタンク2A内のバラスト水の一部を第二バラストタンク2Bへ移動する。そのために、第一弁51、第二弁52、第五弁55、第七弁57を閉とし、第三弁53、第四弁54、第六弁56を開として、殺菌剤ポンプ(P2)23と還元剤ポンプ(P3)33を駆動して、図6(C)にて太線で示される範囲で配管内にバラスト水が流通するようにする。その際、殺菌剤溶解装置21からは殺菌剤が供給停止、還元剤供給装置31からは還元剤が供給可能状態となっている。かくして、第一バラストタンク2A内のバラスト水の一部はバラスト水帰還路13を経て帰還点13Aからバラスト水配管3へ戻されて第二バラストタンク2Bへ移動する。その際、注入部7からは、殺菌剤ポンプ(P2)23の駆動により該殺菌剤ポンプ(P2)23より下流側における第一の配管22内の殺菌剤残留物がバラスト水配管3内へ注入され、しかも、還元剤ポンプ(P3)33からは還元剤が注入されて、帰還配管経路10とバラスト水配管3との間の循環流により、殺菌剤残留物と還元剤とが十分に攪拌・混合され、殺菌剤残留物中の殺菌剤成分が還元され、バラスト水は十分に還元された状態で第二バラストタンク2Bへ移動する。したがって、上記残留物は完全に還元されてから第二バラストタンク2B内へ収容されることとなる。
<バラスト水排水運転>
第二バラストタンク2B内のバラスト水は、殺菌剤が十分に還元されて、無害化された状態にある。かかる状態で、第一バラストタンク2A内の残部バラスト水を排出する。そのために、第一弁51、第二弁52、第四弁54、第五弁55を閉とし、第三弁53、第六弁56、第七弁57を開とし、殺菌剤ポンプ(P2)23を停止して還元剤ポンプ(P3)33を駆動して、図6(D)にて太線で示される範囲で配管内にバラスト水が流通するようにする。かくして第一バラストタンク2A内の残部バラスト水は還元剤により還元された状態でバラスト排水管14を経て排水口15から船外へ排出される。
本実施形態は、バラスト水処理のために図6(A)にて、殺菌剤のみならず還元剤をもバラスト水に供給する例として示したが、殺菌剤のみを供給する図1の第一実施形態のような装置にも、第一バラストタンクと第二バラストタンクを設けるようにして適用することができる。
このように第一バラストタンクと第二バラストタンクを備えていると、第一バラストタンクに収容されているバラスト水が、少なくとも一時的に、第二バラストタンクに移動する過程で、当該バラスト水の攪拌が進む。それ故、図1の第一実施形態のような装置では、殺菌剤が注入されたバラスト水が通過する際に殺菌効果が促進され、図6(A)のような装置では、残留殺菌剤と還元剤が注入されたバラスト水が通過する際に殺菌剤の還元処理が促進され無害化が促進される。
2 バラストタンク
2A 第一バラストタンク
2B 第二バラストタンク
3 バラスト水配管
4 バラストポンプ
6 混合装置
7 注入部
10 帰還配管経路
11 帰還ポンプ
12 全残留酸化性物質濃度計測装置
20 殺菌剤供給装置
22 第一の配管
32 第二の配管
40 配管ユニット

Claims (16)

  1. 船舶に搭載されるバラスト水を殺菌するためのバラスト水処理装置において、
    船舶外から取水されたバラスト水をバラストタンクに向けてバラストポンプにより流通させるためのバラスト水配管に設けられた注入部と、
    該注入部から上記バラスト水配管内に殺菌剤を注入するための殺菌剤供給装置と、
    上記バラスト水配管内で流通している又は滞留している上記バラスト水を、上記バラスト水配管の下流側から、上流側であってバラストポンプの下流側の領域に帰還させる帰還配管経路と
    を備えていることを特徴とするバラスト水処理装置。
  2. 帰還配管経路は、バラスト水配管内で流通している又は滞留しているバラスト水を上記バラスト水配管内から取り出し上記バラスト水配管内に戻す帰還ポンプを有しているとともに全残留酸化性物質濃度計測装置をも有し、
    上記帰還ポンプは、全残留酸化性物質濃度計測装置が具備する計測用ポンプを兼ねていることとする請求項1に記載のバラスト水処理装置。
  3. 殺菌剤供給装置は、バラスト水の殺菌のために使用されずに残った殺菌剤又はその成分を注入部からバラスト水配管内に注入する装置でもあることとする請求項1又は請求項2に記載のバラスト水処理装置。
  4. 注入部は、バラスト水の殺菌のために使用されずに残った殺菌剤又はその成分と反応する還元剤をバラスト水配管内に注入する注入部でもあることとする請求項3に記載のバラスト水処理装置。
  5. 注入部は、バラスト水の殺菌のために使用されずに残った殺菌剤又はその成分をバラスト水配管内に注入するための第一の配管と、
    還元剤を上記バラスト水配管内に注入するための第二の配管と
    を具備していることとする請求項4に記載のバラスト水処理装置。
  6. 第一の配管の少なくとも一部及び第二の配管の少なくとも一部のうち一方が他方の内管をなす二重管構造を有することとする請求項5に記載のバラスト水処理装置。
  7. 第一の配管の先端は、第二の配管の先端よりも前記バラスト水配管の断面中心に近い位置に配置していることとする請求項6に記載のバラスト水処理装置。
  8. 注入部の下流側でバラスト水配管に設置された混合装置を有し、注入部が殺菌剤注入部と該殺菌剤注入部より下流側に位置する還元剤注入部とに分離して設けられていて、還元剤注入部は、上記混合装置と同じ位置又はその上流側で、バラスト水の殺菌のために使用されずに残った殺菌剤又はその成分と反応するための還元剤を上記バラスト水配管内に注入することとする請求項3に記載のバラスト水処理装置。
  9. 帰還配管経路は、該混合装置の下流側と該混合装置の上流側とを接続している配管経路であることとする請求項8に記載のバラスト水処理装置。
  10. 注入部の下流側でバラスト水配管内に設置された混合装置を有し、帰還配管経路は、該混合装置の下流側と該混合装置の上流側とを接続している配管経路であることとする請求項1ないし請求項7のいずれか一つに記載のバラスト水処理装置。
  11. バラストタンクは、第一バラストタンクと第二バラストタンクを具備しており、該第一バラストタンクに収容されているバラスト水は、少なくとも一時的に、上記第二バラストタンクに移動可能であることとする請求項1ないし請求項10のいずれか一つに記載のバラスト水処理装置。
  12. バラストタンクは、第一バラストタンクと第二バラストタンクを具備しており、該第一バラストタンクに収容されているバラスト水は、少なくとも一時的に、上記第二バラストタンクに移動可能であり、第一バラストタンクに収容されているバラスト水の第二バラストタンクへの移動により、該バラスト水の殺菌のために使用されずに残った殺菌剤又はその成分と還元剤の混合が促進されるように構成されていることとする請求項4ないし請求項10のいずれか一つに記載のバラスト水処理装置。
  13. 船舶の揺れにより、バラスト水の殺菌のために使用されずに残った殺菌剤又はその成分と還元剤の混合が促進されるように構成されていることとする請求項4ないし請求項10のいずれか一つに記載のバラスト水処理装置。
  14. 請求項1に記載のバラスト水処理装置を設置するためにバラスト水配管に対して取外し可能に同軸に取り付け可能なユニットを形成し、注入部と、帰還配管経路とを具備していることを特徴とする配管ユニット。
  15. 注入部の下流側に設置された混合装置をさらに具備していることとする請求項14に記載の配管ユニット。
  16. 注入部は、殺菌剤をバラスト水配管へ注入する殺菌剤注入部と、バラスト水の殺菌のために使用されずに残った殺菌剤又はその成分と反応するための還元剤をバラスト水配管に注入するための還元剤注入部とを有し、該還元剤注入部は上記殺菌剤注入部と同一位置もしくは該殺菌剤注入部の下流側に位置していることとする請求項14又は請求項15に記載の配管ユニット。
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