従来,ディーゼルエンジンの排気ガス中の有害成分である粒子状物質等の有害物質を捕集するディーゼルパティキュレートフイルタ(DPF)は,ディーゼルエンジンの運転時間に伴い捕集された粒子状物質(PM)によりフィルタが目詰まりして圧力上昇することにより,出力の低下,燃費の悪化等の問題が発生し,更にフィルタの目詰まりが進行すると,ディーゼルエンジンの運転自体も不可能となる状況であった。従来の排気ガス浄化装置には,粒子状物質や有害物質を消失させるためフィルタに触媒を担持させているが,触媒は低温では有効に活性化しない。そこで,従来の排気ガス浄化装置では,触媒を活性化させるため,排気ガスの温度を昇温させる排気ガス温度昇温装置が設けられている。しかしながら,エンジンから排出される排気ガスの流量が極めて高流量である場合に,適正温度の目標温度が高温である場合や供給する燃料が多い場合には,エンジンから排出される排気ガスによる冷却作用によって,排気ガス温度昇温装置の燃焼器の燃焼を維持することが難しい状態になる。
また,排気ガス浄化装置に設けた排気ガス昇温装置は,フイルタに捕集された粒子状物質等の有害物質を焼却したり,酸化・還元反応で消失させるため,排気ガス温度を昇温させて短時間で触媒を再生するものである。該排気ガス昇温装置は,排気ガス浄化装置のDPFの上流に燃焼器を配設して,排気ガスの流入部を備えた円筒形のケース,その中に配設された混合燃焼筒体,及び混合燃焼筒体の上流領域に設けた燃料ノズルとグロープラグを備えている。混合燃焼筒体は,上流領域が閉鎖されて防炎部に形成され,中流領域と下流領域の周囲に排気ガスが流入する多数の通孔が形成されている。これらの通孔から排気ガスが旋回流として,混合燃焼筒体内に流入して燃料と排気ガスの混合を促進し,混合気を着火燃焼させて排気ガスを迅速に昇温させる(例えば,特許文献1参照)。
また,従来のエンジンの排気ガス浄化装置は,排気ガス中のNOX 除去用リーンNOX 触媒を備え,追加燃料を噴射することで触媒を昇温させるシステムを備えており,適正な燃料を排気系に供給して短時間で触媒を再生するものが知られている。上記排気ガス浄化装置は,排気通路に設置されたリーンNOX 触媒と,燃焼室内での燃焼後の余剰酸素の量を推定する余剰酸素量推定手段と,推定された余剰酸素量で完全燃焼する燃料量を算出する燃料量算出手段と,リーンNOX 触媒を加熱すべきか判定する加熱判定手段と,加熱すべきときに燃料量算出手段で算出された量の燃料を触媒の上流側に供給して燃焼させる燃料供給手段と,供給燃料による燃焼熱を排気ガス中の空燃比に基づいて算出して触媒の温度状態を推定する触媒温度推定手段と,推定触媒温度が所定温度以上の状態の積算時間が予め設定された時間を越えたら燃料供給手段による燃料の供給を停止する完了判定手段とを備えたものである(例えば,特許文献2参照)。
また,エンジン始動後,脱硫処理,PM再生処理の際に排気通路に二次空気を供給して排気ガス浄化装置の触媒を昇温する排気ガス浄化システムは,内燃機関の排気通路の排気ガス浄化装置に過給器のコンプレッサで昇圧されない空気と昇圧された空気とをリード弁を介して選択的に排気通路に供給するように構成し,エンジン始動時には,昇圧されない空気を排気圧の脈動に応じて間欠的に排気ガス浄化装置に供給して触媒での燃料の酸化反応を促進し,脱硫処理又はPM再生処理の際には,昇圧された空気を十分な流量で排気ガス浄化装置に供給し,多量の燃料を酸化して昇温時間を短縮するものである(例えば,特許文献3参照)。
また,排気通路に接続される主排気通路と分岐排気通路を設けた排気ガス浄化装置は,排気入口に排気ガスを遮断可能な遮断弁を設け,主排気通路内に空気過剰雰囲気で窒素酸化物を一時的に吸着し,吸着した窒素酸化物を昇温又は還元雰囲気で脱離する窒素酸化物吸着材と,窒素酸化物吸着材より排気上流側に配置され,空気ノズルから供給される空気を昇温又は還元雰囲気にする吸着物質脱離手段と,窒素酸化物吸着剤より排気下流側に配置され,空気ノズル,燃料ノズル及び着火ノズルから構成される燃焼装置とを備えており,分岐排気通路の排気出口からは機関側排気通路からの排気ガスがそのまま排出されるものである(例えば,特許文献4参照)。
ところで,排気ガス浄化装置におけるフィルタで捕集されたPMの基本成分は,カーボンや煤でなる可燃物であることから,DPF自体を加熱し,フィルタを再生する方法が用いられている。粒子状物質の有害物質の加熱方法として,電気ヒータ,バーナ等の加熱器による方法,触媒反応による方法が検討されている。電気ヒータによる方法は.フィルタや排気ガスを電気加熱するための大電力が必要であり,装置そのものが大型化するという問題がある。また,車両を想定した場合には,排気ガス浄化装置は電力を必要とするため,電力源を設置する必要がある。また,触媒反応による方法は,特に,ディーゼルエンジンに用いる燃料成分により触媒の中には使用が不可能なものがあったり,車両等の運行状態によっては触媒反応可能な温度条件を得られない場合があると考えられる。また,PM以外の有害成分を除去するためにも触媒が用いられるが,排気ガスの十分な温度を得られないまま運用を行なった場合に,触媒への付着物の影響等,触媒の有効性が維持されない可能性がある。更に,バーナを用いる方法では,排気ガスに含まれる残存酸素は,エンジンの運転状態により変化するため,外部から燃焼用に大気を圧送するポンプを必要とするなど,装置そのものが大型化するという問題がある。また,排気ガス浄化装置において,例えば,ディーゼルエンジンに対して軽油を燃料とする燃焼器を用いる場合に,エンジンから排出される排気ガスは,車両の運行状況によって排気ガスの流量変化や昇温温度が著しく変化することが考えられる。また,既存のオイルバーナの構造では,失火や燃焼不良温度に偏り等,さまざまな問題が生じる。
上記排気ガス浄化装置は,上記の問題を解決するため,燃焼器への排気ガス流量の規制や,安定した燃焼のために大気を導入するブロア等を用いる必要がある。そのため,排気ガス浄化装置が大型化し,車両への搭載性やコストの面から問題がある。排気ガス浄化装置の大型化を防ぐため,排気ガスに含まれる残存酸素を用いて燃焼させる構造が必要とされる。また,従来の燃焼器は,排気ガス通路に供給した燃料を完全燃焼させることに問題があった。そこで,排気ガスの温度を昇温するための燃焼器を,排気ガス浄化装置に適応して,燃焼器における部品の配置を見直すことで,燃焼器の簡略化とコスト低減を行なうことが考えられる。燃焼器は,燃焼管構造を改善し,燃料を排気ガスと効率的に混合することによって燃焼の安定性と温度を制御可能とすることが求められる。また,燃焼器は,排気ガスの流量変化に対応可能で,且つ単純な形状で小形化することによって,装置のコストを低減し,さまざまな車両への搭載性を向上させることが考えられる。更に,燃焼器は,排気ガス中の残存酸素を用いて燃料を燃焼し,排気ガス温度を所定の温度まで昇温するための手段として,対象となる系統が1系統であっても,ディーゼルエンジンを停止することなく,昇温動作が可能でシステムがシンプル,コンパクト,安価で排気系への配置が容易な昇温システムを提供することが求められている。
この発明の目的は,上記の問題を解決することであり,ディーゼルエンジン等のエンジン,ボイラーや焼却炉等の燃焼装置から排気される排気ガスに含まれる煤,粒子状物質,HC,NOX 等の有害物質をフイルタで捕集して加熱焼却及び/又は酸化・還元反応させて消失させて,有害物質を大気へ放出することを防止する排気ガス浄化装置に適用する排気温度昇温装置であって,フィルタで捕集した粒子状物質や有害物質を有効に焼却したり消失させるために,低負荷時に排気ガス温度が低下した時に排気ガス温度を昇温し,高負荷時には燃焼器を停止させてフイルタの局部的な高温領域の発生を抑制し,排気ガスを予め決められた所定の温度範囲に昇温させる燃焼器を排気ガス浄化装置の上流側に設けて,燃焼器に供給された燃料が未燃焼のままで大気に排出されないようにするため燃焼器へ供給した燃料を確実に着火燃焼させるため,燃料噴射ノズル等の燃料供給部材とグロープラグ等の電熱ヒータとの位置関係を適正化し,また,排気ガス温度状況に応じた適正な燃料流量を燃焼器に供給するように制御することができる排気温度昇温装置を提供することである。
この発明は,一端に排気ガス通路と同径の流入孔部が形成され且つ他端に嵌挿孔が形成された前記流入孔部の直径より大径の円筒ケース,前記円筒ケースの前記嵌挿孔に密封状に嵌合して前記円筒ケース内に環状排気ガス通路を形成し且つ前端壁部を備えた燃焼用円筒,及び前記燃焼用円筒の上流側に配設された燃料供給部材と電熱ヒータを有し,
前記燃料供給部材は前記電熱ヒータに対して前記燃料供給部材から前記燃焼用円筒内に供給された燃料の一部が前記電熱ヒータの赤熱部に接触する位置に位置決めして配設され,前記燃焼用円筒の内径が前記流入孔部の内径の0.9〜1.3倍に設定されており,前記燃焼用円筒には前記円筒ケース内に連通する多数の通孔が形成され,前記通孔の連通する開口面積の合計が前記流入孔部の開口面積の0.9〜1.3の範囲に設定され,前記燃焼用円筒に形成された前記通孔は該通孔を通じて流入する前記排気ガスの流れが前記電熱ヒータの前記赤熱部に直接接触しない位置に設定されていることを特徴とした排気温度昇温装置に関する。
また,この排気温度昇温装置は,前記電熱ヒータの前記赤熱部より上流側の前記燃焼用円筒の前記前端壁部に形成された前記通孔の面積の合計は,前記燃焼用円筒に形成された前記通孔の面積の合計面積の1%〜30%に設定されているものである。また,前記電熱ヒータと前記燃料供給部材は,前記円筒ケースに取り付けられた一体的に配置する位置決め構造体に配設されており,前記位置決め構造体は外周部が前記円筒ケース内の前記排気ガス通路を流れる前記排気ガスとの熱交換を低減する遮熱層を介して前記円筒ケースと前記燃焼用円筒とに取り付けられている。
また,前記燃料供給部材は燃料噴射ノズルであり,前記電熱ヒータはディーゼルエンジンの始動用のグロープラグである。また,この排気温度昇温装置は,前記排気昇温装置の下流には温度センサーが取り付けられ,エンジンの回転速度と負荷情報,目標排気ガス温度から燃料投入量を計算して燃料を投入し,前記温度センサーの測定結果を加味して前記燃料投入量の補正を行うと共に,過大な温度となった場合は前記燃料供給部材からの燃料投入を直ちに停止するものである。
また,この排気温度昇温装置は,ディーゼルエンジン又は燃焼装置から排気ガス通路を通じて排気される排気ガス中に含まれる煤,カーボン等の粒子状物質を捕集するフィルタ及び触媒の助けでHC,未燃ガス等の有害物質を酸化還元反応させて浄化する排気ガス浄化装置が設けられた前記排気ガス通路の上流側の前記排気ガス通路に配設されて適用されるものである。
この排気ガス昇温装置は,上記のように構成されているので,ディーゼルエンジン等の低負荷時の排気ガス温度が低い場合には,排気温度昇温装置に供給された燃料が排気ガスと良好に旋回流となって攪拌され,排気温度昇温装置に供給された燃料が完全燃焼されて排気ガス温度が昇温され,排気ガスが予め決められた所定の温度に維持され,後流に配設された排気ガス浄化装置のフィルタに触媒が担持されている場合には,該触媒を活性化し,フィルタに捕集された粒子状物質が迅速に加熱燃焼されてフィルタが再生され,また,フィルタに触媒が担持されていなくても,該フィルタに捕集された粒子状物質やフィルタを通過する有害物質を排気ガスを昇温させることによって有効に焼却して除去することができる。しかも,燃焼器に供給された燃料が完全燃焼されてクリーンな排気ガスが外部に排出されるので大気を汚染することがない。また,この排気温度昇温装置は,ディーゼルエンジンの排気ガスの残存酸素を燃焼し,排気ガス温度を昇温する燃焼器として,低コスト,低スペースで安定した燃焼を可能とするものである。
この発明による排気温度昇温装置は,特に,次の点に特徴を有している。まず,この排気温度昇温装置は,燃料噴射ノズル等の燃料供給部材とグロープラグ等の電熱ヒータとを位置決め構造体に位置決めして設定し,更に該位置決め構造体を排気ガスに対して遮熱層を介して円筒ケースと燃焼用円筒とに設置したので,燃料供給部材と電熱ヒータとは排気ガスの熱影響を受けることが無く,安定して機能させることができる。また,前記燃焼用円筒に形成された前記通孔は該通孔を通じて流入する前記排気ガスの流れが前記電熱ヒータの前記赤熱部に直接接触しない位置に設定されているので,燃料供給部材から噴射された燃料が電熱ヒータに直接接触して発生した火炎が通孔を通じて入り込んだ排気ガスによって失火することが無い。また,この排気温度昇温装置は,燃料供給部材が電熱ヒータに対して燃料供給部材から燃焼用円筒内に供給された燃料の一部が電熱ヒータの赤熱部に接触する位置に配設されているので,燃料が確実に着火して燃焼することができ,排気ガスの昇温に寄与することができ,後流に設けた排気ガス浄化装置に使用されている触媒の活性化を促すことができる。また,排気温度昇温装置における円筒ケース内の燃焼用円筒と排気ガス通路の排気管の流入孔部の内径の0.9〜1.3倍に設定されているので,燃焼ガスの均一化が達成され,排気ガスの均等な昇温が可能になっている。即ち,燃焼用円筒の径が流入孔部の径より大き過ぎると,通孔から流入する排気ガスの運動エネルギーが燃焼用円筒の中央までスムーズに辿り着けず,燃焼ガスと排気ガスとの混合が悪化し,排気ガスの均等な昇温ができなくなる。また,燃焼用円筒に設けた多数の通孔の連通する開口面積の合計が流入孔部の開口面積の0.9〜1.3の範囲に設定されているので,燃焼ガスと排気ガスとの混合が良好になる。即ち,通孔の開口面積が流入孔部の開口面積より小さいと,圧力損失が大きくなり,大き過ぎると,燃焼ガスと排気ガスとの混合が悪化し,排気ガスの均等な昇温ができなくなる。更に,電熱ヒータの赤熱部より上流側の燃焼用円筒の前端壁部に形成された通孔の面積の合計は,燃焼用円筒に形成された通孔の面積の合計面積の1%〜30%に設定されているので,燃焼用円筒内の上流領域で濃い混合燃焼が可能になり,燃焼用円筒の後流領域即ち中流領域と下流領域で二次的混合と燃焼状態が良好になり,供給燃料の安定した燃焼が可能となり,排気ガスの昇温を適正に達成できる。
以下,図面を参照して,この発明による排気ガス昇温装置が適用された排気ガス浄化装置について説明する。図1に示すように,この排気ガス浄化装置7は,ディーゼルエンジン1等のエンジン,ボイラーや焼却炉等の燃焼装置(図示せず)から排出される排気ガスGに含有される煤,SOF,CO,HC,NOX 等の有害物質をディーゼルパティキュレートフイルタ(DPF)のフィルタ7Fに捕集し,フィルタ7Fの上流側に設けられた排気温度昇温装置2によって排気ガスGを昇温させて有害物質を焼却したり,触媒の助けで酸化・還元反応によって消失させるものである。排気温度昇温装置2は,排気ガスGを昇温させる排気ガス通路16に設けた排気ガス浄化装置7を構成するDPFの上流側の排気ガス通路16に配設されている。排気ガス浄化装置7は,例えば,ディーゼルエンジン1から排出される排気ガス通路16に配設された排気ガス浄化装置7であるDPFにおけるフィルタ7Fによって捕集された煤,カーボン,スート等の粒子状物質(PM)を加熱焼却し,或いは,排気ガスG中に含まれるCO,HC,NOX 等の有害物質を触媒の存在下で酸化・還元反応によって消失除去させるものである。また,排気ガス浄化装置7は,フィルタ7Fに触媒が担持されており,該触媒に対して,排気温度昇温装置2は触媒反応の有効性を確保するため,排気ガスGの温度を適正温度(例えば,300℃〜400℃)に昇温させるために有効となり,また,排気温度昇温装置2は,フィルタ7Fの再生時に,排気ガス通路16に供給された燃料Fを燃焼させて排気ガスGの温度を適正温度(例えば,600℃程度以上)に昇温させて有害物質を有効に焼却させることができるものである。
図1には,排気ガス浄化装置7を設置したディーゼルエンジン1の排気系を示している。この排気昇温装置2は,排気ガス浄化装置7の上流側の排気ガス通路16に配置して適用されており,ディーゼルエンジン1の排気ガス温度を目標温度に昇温させて触媒を活性化し,排気ガス浄化装置7に捕集したPMを加熱焼却又は有害物質を酸化・還元反応によって消失除去してフィルタ7Fを再生するシステムである。排気温度昇温装置2には,燃料供給部材である燃料噴射ノズル6と電熱ヒータであるグロープラグ5が設置されており,燃料噴射ノズル6からの供給燃料流量及びグロープラグ5の通電は,コントローラである制御装置10によって制御される。燃料噴射ノズル6へ供給される燃料流量は,燃料タンク12から燃料ポンプ13を経て圧送され,燃料ポンプ13は,制御装置10からの指令で制御して作動される。排気温度昇温装置2には,それぞれ流入側の排気ガス通路16に入口温度センサー8,及び流出側の排気ガス通路16に出口温度センサー9が配置されており,入口温度センサー8と出口温度センサー9で検出された温度信号は,制御装置10に信号線であるライン31,32を通じて入力される。
制御装置10は,電源線29を通じて電源のバッテリ11から電力が供給されて,燃料タンク12から排気温度昇温装置2に供給する燃料の供給量を信号線28を通じて制御すると共に,排気温度昇温装置2に供給された燃料を引火するためのグロープラグ5のON・OFFを電線であるライン33を通じて制御するように設定されている。排気温度昇温装置2には,燃料がディーゼルエンジン1の燃料タンク12から燃料ポンプ13の作動で燃料パイプ26,27を通じて燃料噴射ノズル6に供給され,排気温度昇温装置2内に噴霧される。制御装置10は,排気温度昇温装置2の上流側の排気ガス通路16に設けられた入口温度センサー8から信号ライン31を通じて温度信号を受けると共に,下流側の排気ガス通路16に設けられた出口温度センサー9から信号線のライン32を通じて温度信号を受け,それらの温度状態に応答して排気温度昇温装置2に設けた燃料噴射ノズル6とグロープラグ5の作動を制御する。即ち,排気温度昇温装置2の温度制御は,出口温度センサー9の値が制御装置10にフィードバックされることにより行なわれ,入口温度センサー8と出口温度センサー9の差によって排気温度昇温装置2の燃焼状態の把握と,必要な燃料の流量が算出され,燃料ポンプ13の動作を決定して燃料噴射ノズル6から燃焼用円筒4の上流領域34に噴霧される。燃料噴射ノズル6から燃料が噴霧された上流領域34は,燃料が濃い混合気領域37であり,排気ガスGが流入した中流領域35及び下流領域36は,燃料に排気ガスGが混合されて燃料が希釈された燃料が薄い混合気領域38になって燃焼が促進される。ディーゼルエンジン1の排気ガスGに含まれる残存酸素量は,エンジン運転状態によって変化するため,排気温度昇温装置2の燃焼状態にも影響を及ぼすが,排気温度昇温装置2の構造は,簡素でシンプルであり,不必要な熱容量が無いように構成されているので,出口温度センサー9によって燃焼状態の確認を瞬時に行なうことが可能であり,残存酸素量による制御を必要としない。
この発明による排気温度昇温装置2は,図2の(A)及び(B)に一実施例が図示されており,図3の(A)及び(B)に別の実施例が図示されている。図2の実施例と図3の実施例とは,電熱ヒータであるグロープラグ5と燃料噴射ノズル6との配列が異なるのみであって,実質的に同一の機能を果たすことができる。即ち,図2では,燃料噴射ノズル6が電熱ヒータのグロープラグ5の排気ガス流れの上流側に位置しているが,図3では,燃料供給部材である燃料噴射ノズル6と電熱ヒータであるグロープラグ5とは,燃焼用円筒4の同一の周方向に配設されている。また,燃焼用円筒4に形成された通孔20は該通孔20を通じて流入する排気ガスGの流れがグロープラグ5の赤熱部22に直接接触しない位置に設定されているので,燃料噴射ノズル6から噴射された燃料がグロープラグ5に直接接触して発生した火炎が通孔20を通じて入り込んだ排気ガスGによって失火することが無い。また,この排気温度昇温装置2では,で燃料供給部材としては,制御装置10の指令によって,加圧ポンプで加圧された燃料がソレノイドを用いてデュ−ティ制御で投入燃料流量を制御できる燃料噴射ノズル6,細孔を開けたパイプ(図示せず)と送油量を制御する燃料ポンプ13により送油量を制御する燃料噴射ノズル,或いは燃料を任意の量を供給できる燃料ポンプ13で駆動され且つ加圧エアにより混合気を生成する燃料噴射ノズルを用いることができる。
排気温度昇温装置2は,図2及び図3に示すように,概して,排気ガス通路16に接続されて一端の前端壁面24に排気ガスGが流入する流入孔部14が形成され且つ他端の後端壁面25に嵌挿孔18が形成された円筒ケース3,円筒ケース3内に環状排気ガス通路17を形成して配設されて円筒ケース3の嵌挿孔18に密接嵌挿され且つ支持バー39で円筒ケース3に支持された燃焼用円筒4,及び燃焼用円筒4の上流側に配設された燃料供給用の燃料供給部材である燃料噴射ノズル6と電熱ヒータであるグロープラグ5を有しており,特に,燃焼用円筒4には上流側の前端壁部40に排気ガスGが流入する数個の通孔20が形成され且つ中・下流側の円筒壁部41に多数の通孔19が形成されており,燃料噴射ノズル6がグロープラグ5に対して燃料噴射ノズル6から燃焼用円筒4内に供給された液体燃料の一部がグロープラグ5の赤熱部22に接触する位置に配設されていることを特徴としている。更に,円筒ケース3は,排気ガス通路16と同径の流入孔部14の径よりも大径に形成されている。言い換えれば,円筒ケース3は,一端に排気ガス通路16と同径の流入孔部14が形成され,他端に嵌挿孔18が形成され,しかも流入孔部14の直径より大径に形成されている。また,燃焼用円筒4は,円筒ケース3の嵌挿孔18に密封状に嵌合して円筒ケース3内に環状排気ガス通路17を形成して位置決め固定されている。具体的には,燃焼用円筒4は,その前端側が一対の支持バー39と位置決め構造体30によって円筒ケース3に支持され,後端側が円筒ケース4の後端壁面21に形成された嵌挿孔18に嵌合して支持されている。燃焼用円筒4は,上流側に通孔20が形成された前端壁部40を備えており,下流側に排気ガス浄化装置7へ連通する排気ガス通路16に連通する流出孔部15が形成されている。
更に,この発明による排気温度昇温装置2は,特に,燃焼用円筒4の内径が流入孔部14の内径の0.9〜1.3倍に設定されており,また,燃焼用円筒4には円筒ケース3内に連通する多数の通孔19,20が形成されており,通孔19,20の連通する開口面積の合計は,記流入孔部14の開口面積の0.9〜1.3の範囲に設定されており,燃焼用円筒4に形成された通孔19,20は,通孔19,20から流入する排気ガスGの流れがグロープラグ5の赤熱部22に直接接触しない位置に形成されていることを特徴としている。更に,排気温度昇温装置2については,グロープラグ5の赤熱部22より上流側の燃焼用円筒4の前端壁部40に形成された排気ガスGが流入する通孔20の面積の合計は,燃焼用円筒4に形成された通孔19,20の面積の合計面積の1%〜30%に設定されていることを特徴としている。
また,この排気温度昇温装置2では,制御装置10の指令で,燃料噴射ノズル6は加圧ポンプ(図示せず)で加圧された液体燃料がソレノイドを用いたデューティ制御されて液体燃料の流量が制御されるように構成されている。また,電熱ヒータであるグロープラグ5と燃料供給部材である燃料噴射ノズル6は,円筒ケース3に取り付けられた一体的に配置する位置決め構造体30に配設されており,位置決め構造体30は,外周部が円筒ケース3内の環状排気ガス通路17を流れる排気ガスGとの熱交換を低減する遮熱層23を介して円筒ケース3と燃焼用円筒4とに取り付けられている。更に,この排気温度昇温装置2は,その上流側には入口温度センサー8が設置されており,下流には出口温度センサー9が取り付けられており,それらのセンサー9からの情報に応答して制御装置10は,エンジンの回転速度と負荷情報,目標排気ガス温度から燃料投入量を計算して燃料を投入し,温度センサー8,9の測定結果を加味して燃料投入量の補正を行うと共に,過大な温度となった場合には,燃料噴射ノズル6からの燃料投入を直ちに停止するものである。排気温度昇温装置2に電熱ヒータとしてグロープラグ5を円筒ケース3に取り付けた場合に,グロープラグ5は先端部の赤熱部22が800℃程度になるので、グロープラグ5の根本部には電極等があり,800℃に耐える構造に構成されていないので,従って,外気に接触している円筒ケース3の一部と燃焼用円筒4の一部を連結して位置決め構造体30に配設し,グロープラグ5の取付け部を低温に保持するため,円筒ケース3と位置決め構造体30との間に遮熱層23が形成されている。
排気温度昇温装置2では,その通孔19,20から排気ガスGを燃焼用円筒4内に旋回流として流入させ,燃料噴射ノズル6からの燃料と旋回流の排気ガスGとを混合させた混合気を電熱ヒータであるグロープラグ5によって着火燃焼させて排気ガスGの温度を昇温させて燃焼用円筒4の流出孔部15から適正温度に昇温された排気ガス温度となって,排気ガス通路16を通じて後流の排気ガス浄化装置7に送り込まれ,フィルタ7Fの再生時に触媒を活性化したり,触媒が無い場合でもフィルタ7Fに捕集された粒子状物質を加熱焼却することができる。また,燃焼用円筒4については,燃料噴射ノズル6から燃焼用円筒4内の上流領域に噴射された燃料が着火燃焼した火炎燃焼方向に対して,燃焼用円筒4の通孔19から排気ガスGが直角に流入して燃料と混合して旋回流となって燃焼が促進されるものである。制御装置10は,排気ガスGの温度が予め決められた所定の温度以下に応答して燃料噴射ノズル6から燃料を燃焼用円筒4内に供給して着火燃焼させて排気ガスGを昇温する制御を行なうと共に,排気ガスGの温度が予め決められた所定の温度以上に応答して燃料噴射ノズル6からの燃料を燃焼用円筒4に供給するのを停止し,排気ガス温度を所定の温度範囲に制御するものである。
図2及び図3に示すように,排気温度昇温装置2は,小形化の観点から燃焼促進用の混合板の機能を備えた通孔19,20付きの燃焼用円筒4を円筒形状に構成しており,燃焼方向である軸方向と直角に燃焼用排気ガスGを導入し,それによって燃焼用円筒4内の中流領域35と下流領域36において混合気の多くの旋回流を発生させ,混合による火炎の均一化を行なって燃焼促進を達成する。特に,燃焼用円筒4の前端壁部40に形成された通孔20は,排気ガスGを燃焼用円筒4の上流領域34から流入させ.燃料噴射ノズル6からの噴射燃料の一部をグロープラグ5の赤熱部22に直接噴射して容易に確実に着火燃焼した火炎を中流領域35から下流領域36へ滞留させることなくスムーズに流すことができ,排気ガスGを昇温させることができる。燃焼用円筒4に形成された排気ガス導入孔即ち通孔19は,目標排気ガス流量及び目標昇温温度を達成できるように,配列形成されており,排気ガスGの目標温度の変化に対応させることが可能に構成されている。燃焼用円筒4は,上記のように,その軸方向に円筒壁部41に沿って形成された通孔19の構造即ち多段燃焼方式の構造として構成されており,ディーゼルエンジン1の各運転条件に応じて,酸素供給が可能となって燃焼の均一性が得られる。燃焼用円筒4は,円筒構造に形成され,排気ガスGが通孔20から上流領域34に僅かに流入し,円筒壁部41の通孔19からは排気ガスGが滞留することなくスムーズに流入して,燃焼用円筒4内で着火燃焼した火炎と排気ガスGとの混合気が乱れを起こして混合気が攪拌するようにして,排気ガスGが昇温し,排気ガス通路16から排気ガス浄化装置7へと送り込まれる。この排気温度昇温装置2は,燃焼方向と排気ガスGの流入方向とが直角になるように形成することによって,省スペースにおける自己再循環要素,濃淡燃焼要素,及び多段燃焼要素を導入することが可能であり,供給燃料を効率的に燃焼させることができ,排気ガス浄化装置7へ送り込まれる排気ガスG中には未燃焼の燃料が送り込めれることは無く,また,燃焼用円筒4は,上流領域34の火炎の流れをスムーズにする排気ガス流れと,中流領域35と下流領域36とを火炎と排気ガスGとの混合機能とが一体構造に構成されていることによって,部品点数の低減化と構造の簡略化を達成できる。
この排気温度昇温装置2について,電熱ヒータであるグロープラグ5と燃料供給部材である燃料噴射ノズル6とについて,燃料噴霧がグロープラグ5の赤熱部22に接触することについて説明すると,グロープラグ5の赤熱部22に燃料噴霧の一部が接触することで初期の燃焼が始まる。図4のグラフに示すように,燃料噴霧の一部が赤熱部22に接触することは必須の条件である。燃料噴霧の一部が赤熱部22に接触しないと,燃焼はスタートしない。そのためには,燃料の一部が赤熱部22に確実に接触させるため,燃料噴射ノズル6とグロープラグ5との位置関係が重要になってくる。図4に噴霧を赤熱部22に衝突した噴霧量割合を横軸に燃焼状況を示す。噴霧中心がグロープラグ5に直接当ってしまうとグロープラグ5が冷却され着火温度以下になってしまうため燃焼開始できない。図4のグラフから分るように,グロープラグ5の赤熱部22へかかる燃料噴射ノズル6からの燃料噴霧の割合は,7%以下では着火に必要な燃料が不足する不足領域,7%〜30%の範囲が燃料が着火できる着火領域,及び30%以上が燃料過多による冷却現象が生じて失火領域になる。
図5には,排気温度昇温装置2については,燃焼用円筒4の燃焼管の内径面積(直径)を排気ガス通路16の排気管の内径面積(直径)との比率に対する,燃焼用円筒4の直径と排気管直径の比率を変化したときの平均温度(三角印),未燃ガス量(HC濃度,四角印),及び圧力損失即ち背圧(菱形)を示している。平均温度(三角),背圧(菱形),及び未燃ガスHC(四角)を考慮すると,比率は,0.9〜1.3の範囲になることが好ましい。燃焼用円筒4の役割は,上流で燃料リッチな混合気と燃焼ガスを作製して、燃焼用円筒4の後流で二次的燃焼により完全燃焼させる。ここで,燃焼管即ち燃焼用円筒4の内径面積が排気管即ち排気ガス通路16の面積に比較して1以下では圧力損失が増大するのは当然であるが、ここで重要なことは大き過ぎると,燃焼が阻害される。即ち,燃焼用円筒4の直径が大き過ぎると,円筒ケース3から通孔19,20から流入する排気ガスGの流速が燃焼用円筒4の中央部まで到達できない,もしくは弱くなり,燃焼用円筒4全体の混合促進と二次的燃焼が阻害され、未燃ガス(HC)の生成の増大と燃焼効率の低下による平均燃焼温度の低下,もしくは局部的な燃焼温度の過大が発生する。
次に,図6には,燃焼用円筒4の上流部の空燃比と煤付着量の関係を示し,図7には,グロープラグ5の赤熱部22の中央部より上流側の通孔20の面積の合計と,多数の連通する通孔19の面積の合計面積の割合を変化した場合の平均温度(三角印),未燃ガス量(HC濃度,四角印),及び圧力損失即ち背圧(菱形印)が示されている。即ち,図6及び図7には,グロープラグ5の赤熱部22の中央部より上流側に設けられた円筒ケース3と燃焼用円筒4に連通する通孔19,20から流入する排気ガスGに存在する酸素量と燃料の平均割合で酸素量を空気量に置き換えた場合の空燃比を求めた結果を示されている。図6のグラフによると,空燃比が3〜10であることが好ましいことが解る。空燃比が3以下であると煤付着量が多くなり,10以上では不安定になって失火領域になる。自動車用エンジンのように排気ガス量と温度が逐一変化する場合でも,燃焼用円筒4に設けられたグロープラグ5の赤熱部22の中央から上流の燃料と酸素量は適切な数値が存在する。酸素量を空気量に換算した空燃費は3〜10に規定。ガソリンエンジンでの当量比はおよそ14であり,3〜10はかなりリッチであるが,後流では外周から空気を導入して混合と二次的燃焼を行わせるので,この前記数値範囲が良いことが解る。即ち,3より濃すぎると,燃料の炭化が起き,10より薄いと,着火が不十分となり失火する場合が多いことが解った。
図8には,燃焼用円筒4に開けた通孔19,20の合計面積と排気ガス通路16の排気管の内径面積の割合を変化した場合の平均温度(三角印),未燃ガス量(HC濃度,四角印),及び圧力損失即ち背圧(菱形印)が示されている。図8から解るように,燃焼用円筒4に開けた通孔19,20の合計面積と排気ガス通路16の排気管の内径面積の割合が0.9〜1.3に比率を設定することが好ましいことが解る。この規定も燃焼用円筒4の混合と良好な二次的燃焼に与える影響が大きく,面積が大き過ぎると,排気ガスGの流入速度が緩慢になり,混合が阻害される。面積が小さ過ぎると,圧力損失になるのは当然であるが,大き過ぎた場合は,図5に示した場合と同様に,平均温度(三角印)の低下し,未燃ガス(四角印)が増大することが起きる。
図9には,排気ガス通路16の排気管の径と燃焼用円筒4の燃焼管の長さの割合が変化した場合の平均温度(三角印),未燃ガス量(HC濃度,四角印),及び圧力損失即ち背圧(菱形印)が示されている。図9は,図5を参照して説明した燃焼用円筒4の内径面積を排気ガス通路16の内径面積との比率を考慮することに加えて,グロープラグ5の取付け部を排気ガスGからの受熱を最小とする条件を考慮したデータである。位置決め構造体30の取付け部を遮熱層23を形成することによって,グロープラグ5の取付け部を更に低温に保持することができる。燃焼用円筒4の燃焼管は,短いと二次的燃焼が十分に行われず,未燃ガス(HC)が増加,圧損が上昇に,温度低下を招くことになる。そこで,燃焼用円筒4内での良好な燃焼を行うためには,排気ガス通路16の排気管の直径に対して燃焼用円筒4が1.5倍の全長が必要となることが解る。