JP2018081740A - 燃料電池用炭素粉末ならびに当該燃料電池用炭素粉末を用いる触媒、電極触媒層、膜電極接合体および燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐久性に優れる触媒を提供できる炭素粉末および触媒を提供する。
【解決手段】炭素を主成分とする炭素粉末であって、窒素吸着によるBET比表面積が800m2/g以上であり、かつXRD分析によって観測される2θ=22.5°〜25°の位置に存在するピーク0の面積をA、XRD分析によって観測される2θ=26°の位置に存在するピーク1の面積をBとした場合、ピーク0の面積Aに対するピーク1の面積Bの比(B/A)が0.06以上である、燃料電池用炭素粉末。
【選択図】なし
【解決手段】炭素を主成分とする炭素粉末であって、窒素吸着によるBET比表面積が800m2/g以上であり、かつXRD分析によって観測される2θ=22.5°〜25°の位置に存在するピーク0の面積をA、XRD分析によって観測される2θ=26°の位置に存在するピーク1の面積をBとした場合、ピーク0の面積Aに対するピーク1の面積Bの比(B/A)が0.06以上である、燃料電池用炭素粉末。
【選択図】なし
Description
本発明は、燃料電池用炭素粉末、特に燃料電池触媒用炭素粉末、ならびに当該燃料電池用炭素粉末を用いる触媒、電極触媒層、膜電極接合体および燃料電池に関するものである。
プロトン伝導性固体高分子膜を用いた固体高分子形燃料電池(PEFC)は、例えば、固体酸化物形燃料電池や溶融炭酸塩形燃料電池など、他のタイプの燃料電池と比較して低温で作動する。このため、固体高分子形燃料電池は、定置用電源や、自動車などの移動体用動力源として期待されており、その実用も開始されている。
このような固体高分子形燃料電池には、一般的に、Pt(白金)やPt合金に代表される高価な金属触媒が用いられている。また、金属触媒を担持する担体としては、上記金属触媒を高担持及び高分散させるために比表面積の大きい担体が使用されている。例えば、特許文献1には、比表面積が1200m2/g以上の担体に、電極触媒総重量に対して56〜90重量%の範囲の白金量で、ナノ寸法の白金または白金含有合金粒子を担持してなる触媒が記載される。特許文献1には、表面積の広い担体上に触媒粒子を高担持及び高分散することにより、支持体上の反応に寄与可能な白金粒子の表面積を増大し、触媒反応活性領域の最大化(燃料電池の性能向上)を実現することができることが記載される。
特許文献1に記載の触媒は、性能には優れるものの、耐久性に劣るという問題があった。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、耐久性を向上できる燃料電池用炭素粉末を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、触媒金属担持時に高触媒活性を発揮できる燃料電池用炭素粉末を提供することを目的とする。
本発明の別の目的は、耐久性および発電性能に優れる触媒、電極触媒層、膜電極接合体及び燃料電池を提供することである。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、特定の比表面積および結晶性を有する燃料電池用炭素粉末を担体として使用することによって、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の燃料電池用炭素粉末は、比表面積が大きくかつ結晶性が高いため、電気二重容量が大きくかつ耐腐食性に優れる。ゆえに、本発明の燃料電池用炭素粉末を担体として使用することによって、耐久性及び触媒活性に優れる触媒が提供できる。
本発明の燃料電池用炭素粉末(本明細書中では、単に「炭素粉末」または「本発明の炭素粉末」とも称する)は、炭素を主成分とする。ここで、「炭素を主成分とする」とは、炭素のみからなる、実質的に炭素からなる、の双方を含む概念であり、炭素以外の元素が含まれていてもよい。「実質的に炭素からなる」とは、全体の80重量%以上、好ましくは全体の95重量%以上(上限:100重量%未満)が炭素から構成されることを意味する。
また、本発明の燃料電池用炭素粉末は、下記構成(a)および(b)を満たす:
(a)窒素吸着による重量あたりのBET比表面積が800m2/g以上である;および
(b)XRD分析によって観測される2θ=22.5°〜25°の位置に存在するピーク0の面積をA、XRD分析によって観測される2θ=26°の位置に存在するピーク1の面積をBとした場合、ピーク0の面積Aに対するピーク1の面積Bの比(B/A)が0.06以上である。本明細書では、窒素吸着による重量あたりのBET比表面積を単に「BET比表面積」とも称する。また、本明細書において、XRD分析によって観測される2θ=22.5°〜25°の位置に存在するピーク0を単に「ピーク0」と、また、当該ピーク0の面積を単に「面積A」とも称する。同様にして、本明細書では、XRD分析によって観測される2θ=26°の位置に存在するピーク1を単に「ピーク1」と、また、当該ピーク1の面積を単に「面積B」とも称する。また、本明細書では、面積Bに対する面積Aの比を「B/A」または「B/A比」とも称する。
(a)窒素吸着による重量あたりのBET比表面積が800m2/g以上である;および
(b)XRD分析によって観測される2θ=22.5°〜25°の位置に存在するピーク0の面積をA、XRD分析によって観測される2θ=26°の位置に存在するピーク1の面積をBとした場合、ピーク0の面積Aに対するピーク1の面積Bの比(B/A)が0.06以上である。本明細書では、窒素吸着による重量あたりのBET比表面積を単に「BET比表面積」とも称する。また、本明細書において、XRD分析によって観測される2θ=22.5°〜25°の位置に存在するピーク0を単に「ピーク0」と、また、当該ピーク0の面積を単に「面積A」とも称する。同様にして、本明細書では、XRD分析によって観測される2θ=26°の位置に存在するピーク1を単に「ピーク1」と、また、当該ピーク1の面積を単に「面積B」とも称する。また、本明細書では、面積Bに対する面積Aの比を「B/A」または「B/A比」とも称する。
上記特許文献1に記載の支持体(担体)は、比表面積が大きい。このため、このような支持体を用いた触媒は白金または白金含有合金粒子の有効表面積が広がるので、性能を向上させることができる。しかしその一方で、カーボン腐食劣化は支持体の比表面積に比例するため、比表面積が大きい支持体はカーボン腐食耐久性が低い。このため、このような支持体を用いてなる電極触媒、さらには膜電極接合体(MEA)の耐久性が低下してしまう。
これに対して、本発明に係る炭素粉末は、上記(a)を満たす。上記(a)の構成を有する燃料電池用炭素粉末は比表面積が大きいため、電気二重層容量が大きい。また、炭素粉末に触媒金属を担持する場合には、触媒金属の凝集を抑制して、触媒金属を炭素粉末上に高分散できる。このため、本発明の炭素粉末に触媒金属を担持してなる触媒は高い触媒活性を発揮できる。また、本発明に係る炭素粉末は、上記(b)を満たす。上記(b)の構成を有する燃料電池用炭素粉末は結晶性が高いため、電気化学的な耐腐食性に優れる(腐食しにくい)。このため、本発明の炭素粉末に触媒金属を担持してなる触媒は耐久性に優れる。
したがって、本発明の燃料電池用炭素粉末は、耐久性に優れ、さらに触媒金属を担持した場合には高い触媒活性を発揮でき、かつ当該活性を維持できる。また、本発明の炭素粉末を担体として使用することによって、触媒活性及び耐久性に優れる触媒、さらには高性能及び高耐久性を有する電気化学デバイス(例えば、MEA、キャパシタ)が提供できる。このため、本発明の燃料電池用炭素粉末は、触媒、特に燃料電池用触媒の担体として好適に使用できる。すなわち、本発明は、本発明の燃料電池用炭素粉末に触媒金属が担持されてなる燃料電池用触媒を包含する。本発明の燃料電池用炭素粉末(担体)は比表面積が高い。このため、本発明の燃料電池用触媒によれば、触媒の分散性を向上して、電気二重層容量(電気化学反応面積)を増加できる、即ち、発電性能を向上できる。また、本発明の燃料電池用炭素粉末(担体)は結晶性が高い(カーボンエッジ量が少ない)。このため、本発明の燃料電池用触媒によれば、カーボン腐食による性能低下を抑制・防止できる、即ち、耐久性を向上できる。本発明の燃料電池用炭素粉末に触媒金属が担持されてなる燃料電池用触媒は、耐久性に優れ、高い触媒活性を発揮でき(触媒反応を促進でき)、かつ当該活性を維持できる。このため、このような触媒を用いた触媒層を有する膜電極接合体および燃料電池は、発電性能及び耐久性に優れる。したがって、本発明は、上記触媒および電解質を含む、燃料電池用電極触媒層、当該燃料電池用電極触媒層を含む、燃料電池用膜電極接合体、当該燃料電池用膜電極接合体を含む燃料電池を提供する。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の触媒の一実施形態、並びにこれを使用した触媒層、膜電極接合体(MEA)および燃料電池の一実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態のみには制限されない。なお、各図面は説明の便宜上誇張されて表現されており、各図面における各構成要素の寸法比率が実際とは異なる場合がある。また、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明した場合では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
[燃料電池]
燃料電池は、膜電極接合体(MEA)と、燃料ガスが流れる燃料ガス流路を有するアノード側セパレータと酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス流路を有するカソード側セパレータとからなる一対のセパレータとを有する。本形態の燃料電池は、耐久性に優れ、かつ高い発電性能を発揮できる。
燃料電池は、膜電極接合体(MEA)と、燃料ガスが流れる燃料ガス流路を有するアノード側セパレータと酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス流路を有するカソード側セパレータとからなる一対のセパレータとを有する。本形態の燃料電池は、耐久性に優れ、かつ高い発電性能を発揮できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池(PEFC)1の基本構成を示す概略図である。PEFC 1は、まず、固体高分子電解質膜2と、これを挟持する一対の触媒層(アノード触媒層3aおよびカソード触媒層3c)とを有する。そして、固体高分子電解質膜2と触媒層(3a、3c)との積層体はさらに、一対のガス拡散層(GDL)(アノードガス拡散層4aおよびカソードガス拡散層4c)により挟持されている。このように、固体高分子電解質膜2、一対の触媒層(3a、3c)および一対のガス拡散層(4a、4c)は、積層された状態で膜電極接合体(MEA)10を構成する。
PEFC1において、MEA 10はさらに、一対のセパレータ(アノードセパレータ5aおよびカソードセパレータ5c)により挟持されている。図1において、セパレータ(5a、5c)は、図示したMEA 10の両端に位置するように図示されている。ただし、複数のMEAが積層されてなる燃料電池スタックでは、セパレータは、隣接するPEFC(図示せず)のためのセパレータとしても用いられるのが一般的である。換言すれば、燃料電池スタックにおいてMEAは、セパレータを介して順次積層されることにより、スタックを構成することとなる。なお、実際の燃料電池スタックにおいては、セパレータ(5a、5c)と固体高分子電解質膜2との間や、PEFC 1とこれと隣接する他のPEFCとの間にガスシール部が配置されるが、図1ではこれらの記載を省略する。
セパレータ(5a、5c)は、例えば、厚さ0.5mm以下の薄板にプレス処理を施すことで図1に示すような凹凸状の形状に成形することにより得られる。セパレータ(5a、5c)のMEA側から見た凸部はMEA 10と接触している。これにより、MEA 10との電気的な接続が確保される。また、セパレータ(5a、5c)のMEA側から見た凹部(セパレータの有する凹凸状の形状に起因して生じるセパレータとMEAとの間の空間)は、PEFC 1の運転時にガスを流通させるためのガス流路として機能する。具体的には、アノードセパレータ5aのガス流路6aには燃料ガス(例えば、水素など)を流通させ、カソードセパレータ5cのガス流路6cには酸化剤ガス(例えば、空気など)を流通させる。
一方、セパレータ(5a、5c)のMEA側とは反対の側から見た凹部は、PEFC 1の運転時にPEFCを冷却するための冷媒(例えば、水)を流通させるための冷媒流路7とされる。さらに、セパレータには通常、マニホールド(図示せず)が設けられる。このマニホールドは、スタックを構成した際に各セルを連結するための連結手段として機能する。かような構成とすることで、燃料電池スタックの機械的強度が確保されうる。
なお、図1に示す実施形態においては、セパレータ(5a、5c)は凹凸状の形状に成形されている。ただし、セパレータは、かような凹凸状の形態のみに限定されるわけではなく、ガス流路および冷媒流路の機能を発揮できる限り、平板状、一部凹凸状などの任意の形態であってもよい。
上記のような、本発明のMEAを有する燃料電池は、優れた発電性能および耐久性を発揮する。ここで、燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記した説明中では高分子電解質形燃料電池を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられる。なかでも小型かつ高密度・高出力化が可能であるから、高分子電解質形燃料電池(PEFC)が好ましく挙げられる。また、前記燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用である。なかでも、比較的長時間の運転停止後に高い出力電圧が要求される自動車などの移動体用電源として用いられることが特に好ましい。
燃料電池を運転する際に用いられる燃料は特に限定されない。例えば、水素、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、第2級ブタノール、第3級ブタノール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが用いられうる。なかでも、高出力化が可能である点で、水素やメタノールが好ましく用いられる。
また、燃料電池の適用用途は特に限定されるものではないが、車両に適用することが好ましい。本発明の電解質膜−電極接合体は、発電性能および耐久性に優れ、小型化が実現可能である。このため、本発明の燃料電池は、車載性の点から、車両に該燃料電池を適用した場合、特に有利である。
以下、本形態の燃料電池を構成する部材について簡単に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみに制限されない。
[炭素粉末(担体)]
炭素粉末(担体)は、下記(a)及び(b)を満たす:
(a)窒素吸着による重量あたりのBET比表面積が800m2/g以上である;および
(b)XRD分析によって観測される2θ=22.5°〜25°の位置に存在するピーク0の面積をA、XRD分析によって観測される2θ=26°の位置に存在するピーク1の面積をBとした場合、ピーク0の面積Aに対するピーク1の面積Bの比(B/A)が0.06以上である。
炭素粉末(担体)は、下記(a)及び(b)を満たす:
(a)窒素吸着による重量あたりのBET比表面積が800m2/g以上である;および
(b)XRD分析によって観測される2θ=22.5°〜25°の位置に存在するピーク0の面積をA、XRD分析によって観測される2θ=26°の位置に存在するピーク1の面積をBとした場合、ピーク0の面積Aに対するピーク1の面積Bの比(B/A)が0.06以上である。
上記(a)により、炭素粉末は十分な比表面積を有するため、大きな電気二重層容量を達成できる。このため、上記(a)を満たす炭素粉末に触媒金属を担持してなる触媒は高活性を発揮できる。一方、炭素粉末の重量あたりのBET比表面積が800m2/g未満であると、比表面積が小さいため、触媒金属を担持する際に、高分散(高担持)することが困難である。このため、活性が低下してしまう。また、このような炭素粉末に触媒金属を担持してなる触媒を用いて電極触媒層を形成する際には、電解質による触媒被覆率が高くなる。このため、電極触媒層のガス輸送性が低下し、活性がさらに低下してしまう。電気二重層容量のより向上を考慮すると、炭素粉末のBET比表面積は、800〜3000m2/gであることが好ましく、850〜1800m2/gであることがより好ましく、900〜1500m2/gであることが特に好ましい。
なお、本明細書において、「BET比表面積(m2/g担体)」は、窒素吸着法により測定される。先ず、密閉された吸着測定用ガラスセル内に試料を配置した後、真空化し、300℃2時間の脱気処理を行った。窒素ガスを吸着ガスとして用い、77k(−196℃)で測定して窒素吸着等温線を求めた。当該測定には、日本ベル株式会社製の自動ガス/蒸気吸着量測定装置BELSORP−18を用いる。BET比表面積は、相対圧(P/P0)=0.05〜0.20の範囲の測定点より算出する。
また、上記(b)により、炭素粉末は十分な結晶性を有するため、電気化学的腐食の起点となるカーボン(グラフェン)のエッジ量を十分少なくできる。このため、このような炭素粉末を触媒に用いることによって、カーボン腐食を抑制し、耐久性を向上でき、触媒金属を担持した際の触媒活性の低下を効果的に抑制・防止できる。一方、炭素粉末のB/A比が0.06未満であると、炭素粉末の結晶性が低くなり、耐久性が低下してしまう。耐久性のより向上を考慮すると、炭素粉末のピーク1の面積Aに対するピーク2の面積Bの比(B/A比)は、0.06〜0.40であることが好ましく、0.07〜0.35であることがより好ましい。
ここで、ピーク0は、XRD分析によって観測される2θ=22.5°〜25°の位置に存在するブロードなピークである。ピーク0は、結晶性の低い炭素組織に起因する。また、ピーク1は、XRD分析によって観測される2θ=26°の位置に存在する鋭いピークであり、ピーク2はXRD分析によって観測される2θ=26.5°の位置に存在する鋭いピークである。ピーク1およびピーク2は、炭素の(002)面に由来するピークであり、結晶性の高い炭素組織に起因する。このため、ピーク1の面積Bが大きいことは、炭素の結晶性が高い(電気化学的腐食の起点となるカーボンのエッジ量が少ない)ことを意味する。ゆえに、B/A比を高く設定することにより、炭素粉末の耐久性を向上でき、ゆえに担体として使用した際の触媒の活性の低下を効果的に抑制・防止できる。
なお、面積AおよびBは、下記方法によって、X線回折装置(XRD)測定により2θ=22.5°〜25°の位置に存在するピーク(ピーク0)、2θ=26°の位置に存在するピーク(ピーク1)および2θ=26.5°の位置に存在するピーク(ピーク2)に基づいて求められる。
[面積AおよびBの測定方法]
X線回折測定は、試料(炭素粉末)をシリコン無反射板にサンプルを載せ、株式会社リガク社製X線回折装置RINT−TTRIIIを用いて行い、XRDパターンを得る。なお、X線回折測定では、線源としてCuKα線を用いて行う。
X線回折測定は、試料(炭素粉末)をシリコン無反射板にサンプルを載せ、株式会社リガク社製X線回折装置RINT−TTRIIIを用いて行い、XRDパターンを得る。なお、X線回折測定では、線源としてCuKα線を用いて行う。
得られたXRDパターンにおいて、Voigt関数(フォークト関数)でフィッティングを行い、2θ=22.5°〜25°、26°及び26.5°の位置にそれぞれ存在するピーク(ピーク0、ピーク1及びピーク2)の各面積を算出する。次に、上記にて算出されたピーク1の面積(B)をピーク0の面積(A)で除して、ピーク0の面積Aに対するピーク1の面積Bの比(B/A)を求める。
本発明の炭素粉末の製造方法は、特に制限されない。以下、本発明の炭素粉末の製造方法の好ましい形態を説明するが、本発明は下記形態に限定されるものではない。すなわち、(i)有機質材料をマグネシウム化合物またはアルカリ土類金属化合物と混合し(工程(i))、(ii)上記(i)で得られた混合物を加熱して炭素材料を製造し(工程(ii))、さらに(iii)上記(ii)で得られた炭素材料を熱処理する(工程(iii))。なお、上記工程(i)及び(ii)は、特開2006−062954号、特開2012−082134号及び特開2014−122158号、ならびに特開2012−218999号等に記載の方法等の公知の方法において熱可塑性樹脂を使用する方法が同様にしてまたは適宜修飾して適用できる。
(工程(i))
本工程では、有機質材料をマグネシウム化合物またはアルカリ土類金属化合物と混合して混合物を調製する。
本工程では、有機質材料をマグネシウム化合物またはアルカリ土類金属化合物と混合して混合物を調製する。
ここで、炭素粉末の原料となる有機質材料は、特に制限されないが、酢酸、クエン酸などの有機酸もしくは熱可塑性樹脂が好ましく使用できる。これらを原料に用いることで、比較的低温でもカーボン壁のスタッキング(積み重なり)を形成して、(002)面を成長できる(B/A比を増加できる)。
熱可塑性樹脂としては、以下に制限されないが、ポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂(脂肪族、芳香族のポリエステル樹脂)、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリブタジエンやポリイソプレン等を主体とするエラストマー、天然ゴム、石油樹脂などが挙げられる。これらのうち、実質的に炭素原子、水素原子及び酸素原子のみから構成されるポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、石油樹脂が好ましい。特にポリビニルアルコールを炭素粉末の原料として使用する際には、炭素粉末は、メソ孔に加えてミクロ孔を有する。また、ポリエチレンテレフタレートやヒドロキシプロピレングリコールを炭素粉末の原料として使用する際には、炭素粉末は、比較的大きいメソ孔を有する。
また、有機質材料は、いずれの形態でマグネシウム化合物またはアルカリ土類金属化合物と混合してもよい。具体的には、粉末状、ペレット状、塊状などの固体形状で、または適当な溶剤に溶解若しくは分散させた溶液若しくは分散液の形態で使用できる。
また、上記有機質材料と混合されるマグネシウム化合物またはアルカリ土類金属化合物は、有機質材料の賦活剤として作用するものであれば、特に制限されない。具体的には、アルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられる。これらのうち、マグネシウム化合物、カルシウム化合物を有機質材料と混合することが好ましい。
また、マグネシウム化合物またはアルカリ土類金属化合物は、マグネシウムまたはアルカリ土類金属のいずれの形態であってもよい。具体的には、マグネシウム化合物またはアルカリ土類金属化合物としては、マグネシウムまたはアルカリ土類金属の、酸化物、水酸化物及び炭酸塩、ならびに酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、アクリル酸塩及びメタクリル酸塩等の有機酸塩などが好ましく挙げられる。これらのうち、次工程(ii)の焼成工程で熱処理炉を劣化させたり汚染性ガスを発生したりすることなく、炭化物の多孔質化を促進できるため、酸化物が好ましい。
上記マグネシウム化合物及びアルカリ土類金属化合物は、それぞれ、単独して使用してもあるいは2種以上の混合物の形態で使用してもよい。または、上記マグネシウム化合物及びアルカリ土類金属化合物を適宜組み合わせて使用してもよい。
また、マグネシウム化合物またはアルカリ土類金属化合物の混合形態は、特に制限されず、粉末状、ペレット状、顆粒状、ペースト状などが挙げられる。これらのうち、有機質材料との均一混合性、炭化物の多孔質化などの観点から、粉末状、顆粒状が好ましい。
マグネシウム化合物またはアルカリ土類金属化合物の大きさは特に制限されない。次工程(ii)により得られる炭素材料の細孔(特にメソ孔)の空孔径は、マグネシウム化合物またはアルカリ土類金属化合の結晶子サイズによって調整されうる。すなわち、生成した酸化マグネシウムまたはアルカリ土類金属の酸化物(結晶子)を酸で溶出すると、上記酸化物の結晶子の大きさに対応した細孔が炭素材料中に生成する。このため、平均結晶子サイズは、炭素粉末の所望の孔(特にメソ孔)の大きさに応じて選択されることが好ましい。具体的には、平均結晶子サイズは、好ましくは5〜150nmである。このような結晶子サイズであれば、得られる炭素材料(ゆえに、本発明の炭素粉末)の細孔サイズや細孔分布を適切な範囲に調整できる。ここで、「結晶子」は、単結晶とみなせる最大の集まりをいう。また、「平均結晶子サイズ」は、特に言及のない限り、統計学的に有意な数(例えば、300個)についてX線回折によって測定した値の平均を採用する。また、「結晶子サイズ(直径)」とは、結晶子の中心を通りかつ粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味するものとする。
有機質材料と、マグネシウム化合物またはアルカリ土類金属化合物と、の混合比は特に制限されない。有機質材料を、マグネシウム化合物またはアルカリ土類金属化合物100重量部に対して、40〜700重量部、より好ましくは100〜300重量部の割合で、混合することが好ましい。このような混合比であれば、炭素材料を十分多孔質化して、所望の細孔サイズ及び細孔分布を有する炭素材料(ゆえに本発明の炭素粉末)をより効率よく製造できる。
(工程(ii))
本工程では、上記(i)で得られた混合物を加熱(焼成)して炭素材料を製造する。当該工程により、有機質材料が炭化・多孔質化して、所望の細孔サイズ及び細孔分布を有する炭素材料が得られる。
本工程では、上記(i)で得られた混合物を加熱(焼成)して炭素材料を製造する。当該工程により、有機質材料が炭化・多孔質化して、所望の細孔サイズ及び細孔分布を有する炭素材料が得られる。
ここで、混合物の加熱(焼成)条件は、特に制限されず、空気雰囲気下でも、あるいはアルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下でも行うことができる。好ましくは、不活性ガス雰囲気下で加熱(焼成)することが好ましい。より具体的には、上記混合物を電気炉などの加熱装置へ装入し、内部をアルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガスで置換した後、該装置内へ非酸化性ガスを吹き込みながら加熱する。当該操作により、有機質材料が熱分解(炭化)する。ゆえに、加熱後には、炭化物及び酸化マグネシウムまたはアルカリ土類金属酸化物が残る。
加熱(焼成)条件は特に制限されない。具体的には、加熱(焼成)温度は、好ましくは500〜1500℃、より好ましくは700〜1200℃である。また、加熱(焼成)時間は、好ましくは0.5〜5時間、より好ましくは1〜2時間程度である。このような条件であれば、マグネシウム化合物またはアルカリ土類金属化合物が有機質材料に十分有効に作用して、有機質材料の炭化及び多孔質化をより有効に促進すると共に、炭素材料の比表面積をさらに大きくできる。なお、酸化マグネシウムまたはアルカリ土類金属酸化物は熱的に安定であり、また水酸化物や炭酸塩、有機酸塩は、加熱処理中に熱分解して安定な酸化物に変わる。このため、次工程(iii)の熱処理でも加熱炉の内張り耐火物を劣化させたり環境汚染の原因となる有害ガスを生じたりすることもなく、安全に熱処理を行うことができる。
上述したように、本工程後で得られる炭素材料は、酸化マグネシウムまたはアルカリ土類金属酸化物と共存する。このため、本工程(ii)の生成物を、酸水溶液で処理することによって、炭素材料を分離することが好ましい。ここで、酸水溶液に使用される酸は、酸化マグネシウムまたはアルカリ土類金属酸化物を溶出するものであれば特に制限されない。具体的には、硫酸、硝酸、塩酸等の鉱酸、酢酸、シュウ酸等の有機酸などが挙げられる。また、酸水溶液の濃度もまた、酸化マグネシウムまたはアルカリ土類金属酸化物を溶できる濃度であれば特に制限されず、適宜選択できる。また、上記酸水溶液処理後は、処理物を濾過・水洗して酸を除去した後、乾燥することが好ましい。当該工程により、実質的に不純物を含まない炭素材料が得られる。
(工程(iii))
本工程では、上記(ii)で得られた炭素材料を熱処理する。当該工程によって、本発明の炭素粉末が得られる。
本工程では、上記(ii)で得られた炭素材料を熱処理する。当該工程によって、本発明の炭素粉末が得られる。
ここで、炭素材料の熱処理条件は、上記構成(a)及び(b)または上記構成(a)、(b)及び(c)を達成できる条件であれば特に制限されない。具体的には、有機質材料が熱可塑性樹脂である際には、熱処理温度は、2000℃未満であることが好ましく、より好ましくは1300℃を超えて1900℃、さらにより好ましくは1400〜1850℃、特に好ましくは1500〜1800℃である。熱処理における昇温速度は、100〜1000℃/時間であることが好ましく、300〜800℃/時間であることが特に好ましい。熱処理時間(所定の熱処理温度での保持時間)は、特に制限されないが、1分以上60分以下であることが特に好ましい。なお、熱処理は、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行う。このような条件であれば、上記構成(a)及び(b)または上記構成(a)、(b)及び(c)を満たす炭素粉末が簡便に得られる。なお、熱処理条件が上記下限を下回る(熱処理条件が緩やかすぎる)場合には、炭素粉末のB/A比が小さくなりすぎる可能性がある。逆に、熱処理条件が上記上限を超える(熱処理条件が厳しすぎる)場合には、黒鉛化が進みすぎて、炭素粉末のBET比表面積が小さくなりすぎる可能性がある。
[触媒(電極触媒)]
触媒(電極触媒)は、上記炭素粉末(担体)および上記炭素粉末に担持される触媒金属から構成される。
触媒(電極触媒)は、上記炭素粉末(担体)および上記炭素粉末に担持される触媒金属から構成される。
触媒金属は、電気的化学反応の触媒作用をする機能を有する。アノード触媒層に用いられる触媒金属は、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。また、カソード触媒層に用いられる触媒金属もまた、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、銅、銀、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属およびこれらの合金などから選択されうる。
これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。すなわち、触媒金属は、白金であるまたは白金と白金以外の金属成分を含むことが好ましく、白金または白金含有合金であることがより好ましい。このような触媒金属は、高い活性を発揮できる。特に触媒金属が白金である場合には、小粒径の白金を炭素粉末(担体)表面に分散できるため、白金使用量を低減しても重量あたりの白金表面積を維持できる。また、触媒金属が白金と白金以外の金属成分を含む場合には、高価な白金の使用量を低減できるため、コストの観点から好ましい。前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金の含有量を30〜90原子%とし、白金と合金化する金属の含有量を10〜70原子%とするのがよい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本願ではいずれであってもよい。この際、アノード触媒層に用いられる触媒金属およびカソード触媒層に用いられる触媒金属は、上記の中から適宜選択されうる。本明細書では、特記しない限り、アノード触媒層用およびカソード触媒層用の触媒金属についての説明は、両者について同様の定義である。しかしながら、アノード触媒層およびカソード触媒層の触媒金属は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択されうる。
触媒金属(触媒成分)の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒成分と同様の形状および大きさが採用されうる。形状としては、例えば、粒状、鱗片状、層状などのものが使用できるが、好ましくは粒状である。この際、触媒金属(触媒金属粒子)の平均粒径(直径)は、特に制限されないが、3nm以上、より好ましくは3nm超30nm以下、特に好ましくは3nm超10nm以下であることが好ましい。触媒金属の平均粒径が3nm以上であれば、触媒金属が炭素粉末(例えば、炭素粉末のメソ孔内)に比較的強固に担持され、触媒層内で電解質と接触するのをより有効に抑制・防止される。また、炭素粉末がミクロ孔を有する場合には、ミクロ孔が触媒金属で塞がれずに残存し、ガスの輸送パスがより良好に確保されて、ガス輸送抵抗をより低減できる。また、電位変化による溶出を防止し、経時的な性能低下をも抑制できる。このため、触媒活性をより向上できる、すなわち、触媒反応をより効率的に促進できる。一方、触媒金属粒子の平均粒径が30nm以下であれば、炭素粉末(例えば、炭素粉末のメソ孔内部)に触媒金属を簡便な方法で担持することができ、触媒金属の電解質被覆率を低減することができる。なお、本発明における「触媒金属粒子の平均粒径」は、X線回折における触媒金属成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径や、透過型電子顕微鏡(TEM)より調べられる触媒金属粒子の粒子径の平均値として測定されうる。
本形態において、単位触媒塗布面積当たりの触媒金属の含有量(mg/cm2)は、十分な触媒の担体上での分散度、発電性能が得られる限り特に制限されず、例えば、0.01〜1mg/cm2である。ただし、触媒が白金または白金含有合金を含む場合、単位触媒塗布面積当たりの白金含有量が0.5mg/cm2以下であることが好ましい。白金(Pt)や白金合金に代表される高価な貴金属触媒の使用は燃料電池の高価格要因となっている。したがって、高価な白金の使用量(白金含有量)を上記範囲まで低減し、コストを削減することが好ましい。下限値は発電性能が得られる限り特に制限されず、例えば、0.01mg/cm2以上である。より好ましくは、当該白金含有量は0.02〜0.4mg/cm2である。本形態では、担体の空孔構造を制御することにより、触媒重量あたりの活性を向上させることができるため、高価な触媒の使用量を低減することが可能となる。
なお、本明細書において、「単位触媒塗布面積当たりの触媒(白金)含有量(mg/cm2)」の測定(確認)には、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)を用いる。所望の「単位触媒塗布面積当たりの触媒(白金)含有量(mg/cm2)」にせしめる方法も当業者であれば容易に行うことができ、スラリーの組成(触媒濃度)と塗布量を制御することで量を調整することができる。
また、担体における触媒の担持量(担持率とも称する場合がある)は、触媒担持体(つまり、担体および触媒)の全量に対して、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜70重量%とするのがよい。担持量が前記範囲であれば、十分な触媒成分の担体上での分散度、発電性能の向上、経済上での利点、単位重量あたりの触媒活性が達成できるため好ましい。
なお、炭素粉末が上記(a)及び(b)を満たすものであれば触媒の構造は特に制限されない。すなわち、触媒は、担体として本発明の炭素粉末を使用する以外は、従来と同様の構造をとりうる。
また、触媒の製造方法(炭素粉末への触媒金属の担持方法)は、特に制限されない。好ましくは、触媒担体の表面に触媒金属を析出させた後、熱処理を行い、触媒金属の粒径を増大させる方法が好ましい。上記方法は、析出後に熱処理を施して触媒金属の粒形を増大させる。このため、触媒担体の空孔(特にメソ孔)内部に粒子径の大きな触媒金属を担持することができる。すなわち、本発明は、(i)触媒担体の表面に触媒金属を析出させる工程(析出工程)、および(ii)前記析出工程後に、熱処理を行い、前記触媒金属の粒径を増大させる工程(熱処理工程)を含む本発明の触媒の製造方法をも提供する。以下、上記方法を説明するが、本発明は、下記形態に限定されない。
以下、上記触媒の製造方法の好ましい形態を説明するが、本発明は下記形態に限定されない。
(i)析出工程
本工程では、触媒担体の表面に触媒金属を析出させる。本工程は、既知の方法であり、例えば、触媒金属の前駆体溶液に、触媒担体を浸漬した後、還元する方法が好ましく使用される。
本工程では、触媒担体の表面に触媒金属を析出させる。本工程は、既知の方法であり、例えば、触媒金属の前駆体溶液に、触媒担体を浸漬した後、還元する方法が好ましく使用される。
ここで、触媒金属の前駆体としては、特に制限されず、使用される触媒金属の種類によって適宜選択される。具体的には、上記白金等の触媒金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、酢酸塩およびアミン化合物などが例示できる。より具体的には、塩化白金(ヘキサクロロ白金酸六水和物)、塩化パラジウム、塩化ロジウム、塩化ルテニウム、塩化コバルトなどの塩化物、硝酸パラジウム、硝酸ロジウム、硝酸イリジウムなどの硝酸塩、硫酸パラジウム、硫酸ロジウムなどの硫酸塩、酢酸ロジウムなどの酢酸塩、ジニトロジアンミン白金硝酸、ジニトロジアンミンパラジウムなどのアンミン化合物などが好ましく、例示される。また、触媒金属の前駆体溶液の調製に使用される溶媒は、触媒金属の前駆体を溶解できるものであれば特に制限されず、使用される触媒金属の前駆体の種類によって適宜選択される。具体的には、水、酸、アルカリ、有機溶媒などが挙げられる。触媒金属の前駆体溶液中の触媒金属の前駆体の濃度は、特に制限されないが、金属換算で0.1〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜20重量%である。
還元剤としては、水素、ヒドラジン、ホウ素化水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、ホルムアルデヒド、メタノール、エタノール、エチレン、一酸化炭素等が挙げられる。なお、水素などの常温でガス状の物質は、バブリングで供給することもできる。還元剤の量は、上記触媒金属の前駆体を触媒金属に還元できる量であれば特に制限されず、公知の量を同様にして適用できる。
析出条件は、触媒金属が触媒担体に析出できる条件であれば特に制限されない。例えば、析出温度は、溶媒の沸点付近の温度、より好ましくは室温〜100℃であることが好ましい。また、析出時間は、1〜10時間、より好ましくは2〜8時間であることが好ましい。なお、上記析出工程は、必要であれば、撹拌・混合しながら行ってもよい。
これにより、触媒金属の前駆体が触媒金属に還元されて、触媒金属が触媒担体に析出(担持)する。
(ii)熱処理工程
本工程では、上記(i)析出工程後に、熱処理を行い、前記触媒金属の粒径を増大させる。
本工程では、上記(i)析出工程後に、熱処理を行い、前記触媒金属の粒径を増大させる。
熱処理条件は、触媒金属の粒径が増大できる条件であれば特に制限されない。例えば、熱処理温度は、300〜1200℃、より好ましくは500〜1150℃、特に好ましくは700〜1000℃であることが好ましい。また、熱処理時間は、0.02〜3時間、より好ましくは0.1〜2時間、特に好ましくは0.2〜1.5時間であることが好ましい。なお、熱処理工程は、水素雰囲気で行われてもよい。
これにより、触媒金属は、触媒担体で(特に触媒担体のメソ孔内で)粒径を増大させる。このため、触媒金属粒子は、系外に(触媒担体から)脱離しにくくなる。また、触媒金属より触媒担体表面付近に存在するミクロ孔が存在すると、機械的ストレス下であってもより大きな触媒金属粒子が触媒担体から脱離することをより効果的に抑制・防止する。ゆえに、触媒をより有効に利用できる。
[触媒層]
上述したように、本発明の触媒は、ガス輸送抵抗を低減し、高い触媒活性を発揮できる、即ち、触媒反応を促進できる。したがって、本発明の触媒は、燃料電池用の電極触媒層に好適に使用できる。すなわち、本発明は、本発明の電極触媒および電解質を含む、燃料電池用電極触媒層をも提供する。本発明の燃料電池用電極触媒層は、高い性能および耐久性を発揮できる。
上述したように、本発明の触媒は、ガス輸送抵抗を低減し、高い触媒活性を発揮できる、即ち、触媒反応を促進できる。したがって、本発明の触媒は、燃料電池用の電極触媒層に好適に使用できる。すなわち、本発明は、本発明の電極触媒および電解質を含む、燃料電池用電極触媒層をも提供する。本発明の燃料電池用電極触媒層は、高い性能および耐久性を発揮できる。
なお、本発明の燃料電池用電極触媒層は、担体として本発明の炭素粉末を使用すること以外は従来と同様にしてあるいは適宜修飾して使用できる。このため、以下には触媒層の好ましい形態を説明するが、本発明は下記形態に限定されない。
触媒層内では、触媒は電解質で被覆されているが、電解質は、触媒(特に担体)のメソ孔(さらにはミクロ孔)内には侵入しない。このため、担体表面の触媒金属は電解質と接触するが、メソ孔内部に担持された触媒金属は電解質と非接触状態である。メソ孔内の触媒金属が、電解質と非接触状態で酸素ガスと水との三相界面を形成することにより、触媒金属の反応活性面積を確保できる。
本発明の触媒は、カソード触媒層またはアノード触媒層のいずれに存在してもいてもよいが、カソード触媒層で使用されることが好ましい。上述したように、本発明の触媒は、電解質と接触しなくても、水との三相界面を形成することによって、触媒を有効に利用できるが、カソード触媒層で水が形成するからである。
電解質は、特に制限されないが、イオン伝導性の高分子電解質であることが好ましい。上記高分子電解質は、燃料極側の触媒活物質周辺で発生したプロトンを伝達する役割を果たすことから、プロトン伝導性高分子とも呼ばれる。
当該高分子電解質は、特に限定されず従来公知の知見が適宜参照されうる。高分子電解質は、構成材料であるイオン交換樹脂の種類によって、フッ素系高分子電解質と炭化水素系高分子電解質とに大別される。
フッ素系高分子電解質を構成するイオン交換樹脂としては、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが挙げられる。耐熱性、化学的安定性、耐久性、機械強度に優れるという観点からは、これらのフッ素系高分子電解質が好ましく用いられ、特に好ましくはパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーから構成されるフッ素系高分子電解質が用いられる。
炭化水素系電解質として、具体的には、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、スルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、ホスホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)、スルホン化ポリフェニレン(S−PPP)などが挙げられる。原料が安価で製造工程が簡便であり、かつ材料の選択性が高いといった製造上の観点からは、これらの炭化水素系高分子電解質が好ましく用いられる。なお、上述したイオン交換樹脂は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、上述した材料のみに制限されず、その他の材料が用いられてもよい。
プロトンの伝達を担う高分子電解質においては、プロトンの伝導度が重要となる。ここで、高分子電解質のEWが大きすぎる場合には触媒層全体でのイオン伝導性が低下する。したがって、本形態の触媒層は、EWの小さい高分子電解質を含むことが好ましい。具体的には、本形態の触媒層は、好ましくはEWが1500g/eq.以下の高分子電解質を含み、より好ましくは1200g/eq.以下の高分子電解質を含み、特に好ましくは1000g/eq.以下の高分子電解質を含む。
一方、EWが小さすぎる場合には、親水性が高すぎて、水の円滑な移動が困難となる。かような観点から、高分子電解質のEWは600以上であることが好ましい。なお、EW(Equivalent Weight)は、プロトン伝導性を有する交換基の当量重量を表している。当量重量は、イオン交換基1当量あたりのイオン交換膜の乾燥重量であり、「g/eq」の単位で表される。
また、触媒層は、EWが異なる2種類以上の高分子電解質を発電面内に含み、この際、高分子電解質のうち最もEWが低い高分子電解質が流路内ガスの相対湿度が90%以下の領域に用いることが好ましい。このような材料配置を採用することにより、電流密度領域によらず、抵抗値が小さくなって、電池性能の向上を図ることができる。流路内ガスの相対湿度が90%以下の領域に用いる高分子電解質、すなわちEWが最も低い高分子電解質のEWとしては、900g/eq.以下であることが望ましい。これにより、上述の効果がより確実、顕著なものとなる。
さらに、EWが最も低い高分子電解質を冷却水の入口と出口の平均温度よりも高い領域に用いることが望ましい。これによって、電流密度領域によらず、抵抗値が小さくなって、電池性能のさらなる向上を図ることができる。
さらには、燃料電池システムの抵抗値を小さくするとする観点から、EWが最も低い高分子電解質は、流路長に対して燃料ガス及び酸化剤ガスの少なくとも一方のガス供給口から3/5以内の範囲の領域に用いることが望ましい。
触媒層には、必要に応じて、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などの撥水剤、界面活性剤などの分散剤、グリセリン、エチレングリコール(EG)、ポリビニルアルコール(PVA)、プロピレングリコール(PG)などの増粘剤、造孔剤等の添加剤が含まれていても構わない。
触媒層の厚さ(乾燥膜厚)は、好ましくは0.05〜30μm、より好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは2〜15μmである。なお、上記は、カソード触媒層およびアノード触媒層双方に適用される。しかし、カソード触媒層及びアノード触媒層の厚さは、同じであってもあるいは異なってもよい。
(触媒層の製造方法)
以下、触媒層を製造するための好ましい実施形態を記載するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみには限定されない。また、触媒層の各構成要素の材質などの諸条件については、上述した通りであるため、ここでは説明を省略する。
以下、触媒層を製造するための好ましい実施形態を記載するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみには限定されない。また、触媒層の各構成要素の材質などの諸条件については、上述した通りであるため、ここでは説明を省略する。
まず、担体としての炭素粉末(本明細書では、「多孔質担体」または「導電性多孔質担体」とも称する)を準備する。具体的には、上記炭素粉末の製造方法で説明したように、作製すればよい。
次いで、多孔質担体に触媒を担持させて、触媒粉末とする。多孔質担体への触媒の担持は公知の方法で行うことができる。例えば、含浸法、液相還元担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。
続いて、触媒粉末、高分子電解質、および溶剤を含む触媒インクを作製する。溶剤としては、特に制限されず、触媒層を形成するのに使用される通常の溶媒が同様にして使用できる。具体的には、水道水、純水、イオン交換水、蒸留水等の水、シクロヘキサノール、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、及びtert−ブタノール等の炭素数1〜4の低級アルコール、プロピレングリコール、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらの他にも、酢酸ブチルアルコール、ジメチルエーテル、エチレングリコール、などが溶媒として用いられてもよい。これらの溶剤は、1種を単独で使用してもあるいは2種以上の混合液の状態で使用してもよい。
触媒インクを構成する溶剤の量は、電解質を完全に溶解できる量であれば特に制限されない。具体的には、触媒粉末および高分子電解質などを合わせた固形分の濃度が、電極触媒インク中、1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%程度とするのが好ましい。
なお、撥水剤、分散剤、増粘剤、造孔剤等の添加剤を使用する場合には、触媒インクにこれらの添加剤を添加すればよい。この際、添加剤の添加量は、本発明の上記効果を妨げない程度の量であれば特に制限されない。例えば、添加剤の添加量は、それぞれ、電極触媒インクの全重量に対して、好ましくは5〜20重量%である。
次に、基材の表面に触媒インクを塗布する。基材への塗布方法は、特に制限されず、公知の方法を使用できる。具体的には、スプレー(スプレー塗布)法、ガリバー印刷法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法など、公知の方法を用いて行うことができる。
この際、触媒インクを塗布する基材としては、固体高分子電解質膜(電解質層)やガス拡散基材(ガス拡散層)を使用することができる。かような場合には、固体高分子電解質膜(電解質層)またはガス拡散基材(ガス拡散層)の表面に触媒層を形成した後、得られた積層体をそのまま膜電極接合体の製造に利用することができる。あるいは、基材としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)[テフロン(登録商標)]シート等の剥離可能な基材を使用し、基材上に触媒層を形成した後に基材から触媒層部分を剥離することにより、触媒層を得てもよい。
最後に、触媒インクの塗布層(膜)を、空気雰囲気下あるいは不活性ガス雰囲気下、室温〜150℃で、1〜60分間、乾燥する。これにより、触媒層が形成される。
(膜電極接合体/燃料電池)
本発明のさらなる実施形態によれば、上記燃料電池用電極触媒層を含む、燃料電池用膜電極接合体および当該燃料電池用膜電極接合体を含む燃料電池が提供される。すなわち、固体高分子電解質膜2、前記電解質膜の一方の側に配置されたカソード触媒層と、前記電解質膜の他方の側に配置されたアノード触媒層と、前記電解質膜2並びに前記アノード触媒層3a及び前記カソード触媒層3cを挟持する一対のガス拡散層(4a,4c)とを有する燃料電池用膜電極接合体が提供される。そしてこの膜電極接合体において、前記カソード触媒層およびアノード触媒層の少なくとも一方が上記に記載した実施形態の触媒層である。
本発明のさらなる実施形態によれば、上記燃料電池用電極触媒層を含む、燃料電池用膜電極接合体および当該燃料電池用膜電極接合体を含む燃料電池が提供される。すなわち、固体高分子電解質膜2、前記電解質膜の一方の側に配置されたカソード触媒層と、前記電解質膜の他方の側に配置されたアノード触媒層と、前記電解質膜2並びに前記アノード触媒層3a及び前記カソード触媒層3cを挟持する一対のガス拡散層(4a,4c)とを有する燃料電池用膜電極接合体が提供される。そしてこの膜電極接合体において、前記カソード触媒層およびアノード触媒層の少なくとも一方が上記に記載した実施形態の触媒層である。
ただし、プロトン伝導性の向上および反応ガス(特にO2)の輸送特性(ガス拡散性)の向上の必要性を考慮すると、少なくともカソード触媒層が上記に記載した実施形態の触媒層であることが好ましい。ただし、上記形態に係る触媒層は、アノード触媒層として用いてもよいし、カソード触媒層およびアノード触媒層双方として用いてもよいなど、特に制限されるものではない。
本発明のさらなる実施形態によれば、上記形態の膜電極接合体を有する燃料電池が提供される。すなわち、本発明の一実施形態は、上記形態の膜電極接合体を挟持する一対のアノードセパレータおよびカソードセパレータを有する燃料電池である。
以下、図1を参照しつつ、上記実施形態の触媒層を用いたPEFC 1の構成要素について説明する。ただし、本発明は触媒層に特徴を有するものである。よって、燃料電池を構成する触媒層以外の部材の具体的な形態については、従来公知の知見を参照しつつ、適宜、改変が施されうる。
(電解質膜)
電解質膜は、例えば、図1に示す形態のように固体高分子電解質膜2から構成される。この固体高分子電解質膜2は、PEFC 1の運転時にアノード触媒層3aで生成したプロトンを膜厚方向に沿ってカソード触媒層3cへと選択的に透過させる機能を有する。また、固体高分子電解質膜2は、アノード側に供給される燃料ガスとカソード側に供給される酸化剤ガスとを混合させないための隔壁としての機能をも有する。
電解質膜は、例えば、図1に示す形態のように固体高分子電解質膜2から構成される。この固体高分子電解質膜2は、PEFC 1の運転時にアノード触媒層3aで生成したプロトンを膜厚方向に沿ってカソード触媒層3cへと選択的に透過させる機能を有する。また、固体高分子電解質膜2は、アノード側に供給される燃料ガスとカソード側に供給される酸化剤ガスとを混合させないための隔壁としての機能をも有する。
固体高分子電解質膜2を構成する電解質材料としては特に限定されず従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、先に高分子電解質として説明したフッ素系高分子電解質や炭化水素系高分子電解質を用いることができる。この際、触媒層に用いた高分子電解質と必ずしも同じものを用いる必要はない。
電解質層の厚さは、得られる燃料電池の特性を考慮して適宜決定すればよく、特に制限されない。電解質層の厚さは、通常は5〜300μm程度である。電解質層の厚さがかような範囲内の値であると、製膜時の強度や使用時の耐久性及び使用時の出力特性のバランスが適切に制御されうる。
(ガス拡散層)
ガス拡散層(アノードガス拡散層4a、カソードガス拡散層4c)は、セパレータのガス流路(6a、6c)を介して供給されたガス(燃料ガスまたは酸化剤ガス)の触媒層(3a、3c)への拡散を促進する機能、および電子伝導パスとしての機能を有する。
ガス拡散層(アノードガス拡散層4a、カソードガス拡散層4c)は、セパレータのガス流路(6a、6c)を介して供給されたガス(燃料ガスまたは酸化剤ガス)の触媒層(3a、3c)への拡散を促進する機能、および電子伝導パスとしての機能を有する。
ガス拡散層(4a、4c)の基材を構成する材料は特に限定されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性および多孔質性を有するシート状材料が挙げられる。基材の厚さは、得られるガス拡散層の特性を考慮して適宜決定すればよいが、30〜500μm程度とすればよい。基材の厚さがかような範囲内の値であれば、機械的強度とガスおよび水などの拡散性とのバランスが適切に制御されうる。
ガス拡散層は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防止することを目的として、撥水剤を含むことが好ましい。撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
また、撥水性をより向上させるために、ガス拡散層は、撥水剤を含むカーボン粒子の集合体からなるカーボン粒子層(マイクロポーラス層;MPL、図示せず)を基材の触媒層側に有するものであってもよい。
カーボン粒子層に含まれるカーボン粒子は特に限定されず、カーボンブラック、グラファイト、膨張黒鉛などの従来公知の材料が適宜採用されうる。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく用いられうる。カーボン粒子の平均粒径は、10〜100nm程度とするのがよい。これにより、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、触媒層との接触性も向上させることが可能となる。
カーボン粒子層に用いられる撥水剤としては、上述した撥水剤と同様のものが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられうる。
カーボン粒子層におけるカーボン粒子と撥水剤との混合比は、撥水性および電子伝導性のバランスを考慮して、重量比で90:10〜40:60(カーボン粒子:撥水剤)程度とするのがよい。なお、カーボン粒子層の厚さについても特に制限はなく、得られるガス拡散層の撥水性を考慮して適宜決定すればよい。
(膜電極接合体の製造方法)
膜電極接合体の作製方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を使用できる。例えば、固体高分子電解質膜に触媒層をホットプレスで転写または塗布し、これを乾燥したものに、ガス拡散層を接合する方法や、ガス拡散層の微多孔質層側(微多孔質層を含まない場合には、基材層の片面に触媒層を予め塗布して乾燥することによりガス拡散電極(GDE)を2枚作製し、固体高分子電解質膜の両面にこのガス拡散電極をホットプレスで接合する方法を使用することができる。ホットプレス等の塗布、接合条件は、固体高分子電解質膜や触媒層内の高分子電解質の種類(パ−フルオロスルホン酸系や炭化水素系)によって適宜調整すればよい。
膜電極接合体の作製方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を使用できる。例えば、固体高分子電解質膜に触媒層をホットプレスで転写または塗布し、これを乾燥したものに、ガス拡散層を接合する方法や、ガス拡散層の微多孔質層側(微多孔質層を含まない場合には、基材層の片面に触媒層を予め塗布して乾燥することによりガス拡散電極(GDE)を2枚作製し、固体高分子電解質膜の両面にこのガス拡散電極をホットプレスで接合する方法を使用することができる。ホットプレス等の塗布、接合条件は、固体高分子電解質膜や触媒層内の高分子電解質の種類(パ−フルオロスルホン酸系や炭化水素系)によって適宜調整すればよい。
(セパレータ)
セパレータは、固体高分子形燃料電池などの燃料電池の単セルを複数個直列に接続して燃料電池スタックを構成する際に、各セルを電気的に直列に接続する機能を有する。また、セパレータは、燃料ガス、酸化剤ガス、および冷却剤を互に分離する隔壁としての機能も有する。これらの流路を確保するため、上述したように、セパレータのそれぞれにはガス流路および冷却流路が設けられていることが好ましい。セパレータを構成する材料としては、緻密カーボングラファイト、炭素板などのカーボンや、ステンレスなどの金属など、従来公知の材料が適宜制限なく採用できる。セパレータの厚さやサイズ、設けられる各流路の形状やサイズなどは特に限定されず、得られる燃料電池の所望の出力特性などを考慮して適宜決定できる。
セパレータは、固体高分子形燃料電池などの燃料電池の単セルを複数個直列に接続して燃料電池スタックを構成する際に、各セルを電気的に直列に接続する機能を有する。また、セパレータは、燃料ガス、酸化剤ガス、および冷却剤を互に分離する隔壁としての機能も有する。これらの流路を確保するため、上述したように、セパレータのそれぞれにはガス流路および冷却流路が設けられていることが好ましい。セパレータを構成する材料としては、緻密カーボングラファイト、炭素板などのカーボンや、ステンレスなどの金属など、従来公知の材料が適宜制限なく採用できる。セパレータの厚さやサイズ、設けられる各流路の形状やサイズなどは特に限定されず、得られる燃料電池の所望の出力特性などを考慮して適宜決定できる。
燃料電池の製造方法は、特に制限されることなく、燃料電池の分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。
さらに、燃料電池が所望する電圧を発揮できるように、セパレータを介して膜電極接合体を複数積層して直列に繋いだ構造の燃料電池スタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
上述したPEFCや膜電極接合体は、発電性能および耐久性に優れる触媒層を用いている。したがって、当該PEFCや膜電極接合体は発電性能および耐久性に優れる。
本実施形態のPEFCやこれを用いた燃料電池スタックは、例えば、車両に駆動用電源として搭載されうる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
実施例1
以下により、担体Aを調製した。
以下により、担体Aを調製した。
具体的には、クエン酸粉末および酸化マグネシウム粉末3:1の重量比で混合した後、この混合物を窒素雰囲気900℃で1時間熱処理した。熱処理により得られた混合粉末を希硫酸水溶液に投入して室温(25℃)で十分に撹拌した後濾過し、さらに十分に水洗してから、乾燥することによって、炭素材料Aを製造した。
次に、この炭素材料Aを、窒素雰囲気下で、1500℃にまで加熱した後、1500℃で1時間熱処理することによって、担体Aを作製した。このようにして得られた担体Aについて、BET比表面積を測定した。その結果、担体AのBET比表面積が1460m2/gであった。また、このようにして得られた担体Aについて、ピーク0の面積Aに対するピーク1の面積Bの比(B/A)を測定したところ、0.06であった。なお、2θ=23.92°に観察されるピークをピーク0としてその面積(面積A)を算出した。
実施例2
実施例1において、炭素材料Aを、窒素雰囲気下で、1800℃で1時間熱処理した以外は、実施例1と同様の方法に従って、担体Bを作製した。このようにして得られた担体Bについて、BET比表面積を測定した。その結果、担体BのBET比表面積が950m2/gであった。また、このようにして得られた担体Bについて、ピーク0の面積Aに対するピーク1の面積Bの比(B/A)を測定したところ、0.16であった。なお、2θ=24.32°に観察されるピークをピーク0としてその面積(面積A)を算出した。
実施例1において、炭素材料Aを、窒素雰囲気下で、1800℃で1時間熱処理した以外は、実施例1と同様の方法に従って、担体Bを作製した。このようにして得られた担体Bについて、BET比表面積を測定した。その結果、担体BのBET比表面積が950m2/gであった。また、このようにして得られた担体Bについて、ピーク0の面積Aに対するピーク1の面積Bの比(B/A)を測定したところ、0.16であった。なお、2θ=24.32°に観察されるピークをピーク0としてその面積(面積A)を算出した。
比較例1
実施例1において、炭素材料Aを熱処理しなかった以外は、実施例1と同様の方法に従って、担体Cを作製した。このようにして得られた担体Cについて、BET比表面積を測定した。その結果、担体CのBET比表面積が1550m2/gであった。また、このようにして得られた担体Cについて、ピーク0の面積Aに対するピーク1の面積Bの比(B/A)を測定したところ、0であった。なお、2θ=22.70°に観察されるピークをピーク0としてその面積(面積A)を算出した。
実施例1において、炭素材料Aを熱処理しなかった以外は、実施例1と同様の方法に従って、担体Cを作製した。このようにして得られた担体Cについて、BET比表面積を測定した。その結果、担体CのBET比表面積が1550m2/gであった。また、このようにして得られた担体Cについて、ピーク0の面積Aに対するピーク1の面積Bの比(B/A)を測定したところ、0であった。なお、2θ=22.70°に観察されるピークをピーク0としてその面積(面積A)を算出した。
実施例3
上記実施例1で作製した担体Aを用い、これに触媒金属として平均粒径3nm超5nm以下の白金(Pt)を担持率が30重量%となるように担持させて、触媒粉末Aを得た。すなわち、白金濃度4.6重量%のジニトロジアンミン白金硝酸溶液を1000g(白金含有量:46g)に担体Aを46g浸漬させ攪拌後、還元剤として100%エタノールを100ml添加した。この溶液を沸点で7時間、攪拌、混合し、白金を担体Aに担持させた。そして、濾過、乾燥することにより、担持率が30重量%の触媒粉末を得た。その後、水素雰囲気において、温度900℃に1時間保持し、触媒粉末Aを得た。
上記実施例1で作製した担体Aを用い、これに触媒金属として平均粒径3nm超5nm以下の白金(Pt)を担持率が30重量%となるように担持させて、触媒粉末Aを得た。すなわち、白金濃度4.6重量%のジニトロジアンミン白金硝酸溶液を1000g(白金含有量:46g)に担体Aを46g浸漬させ攪拌後、還元剤として100%エタノールを100ml添加した。この溶液を沸点で7時間、攪拌、混合し、白金を担体Aに担持させた。そして、濾過、乾燥することにより、担持率が30重量%の触媒粉末を得た。その後、水素雰囲気において、温度900℃に1時間保持し、触媒粉末Aを得た。
実施例4
実施例3において、担体Aの代わりに、上記実施例2で作製した担体Bを使用した以外は、実施例3と同様の操作を行い、触媒粉末Bを得た。
実施例3において、担体Aの代わりに、上記実施例2で作製した担体Bを使用した以外は、実施例3と同様の操作を行い、触媒粉末Bを得た。
比較例2
実施例3において、担体Aの代わりに、上記比較例1で作製した担体Cを使用した以外は、実施例3と同様の操作を行い、触媒粉末Cを得た。
実施例3において、担体Aの代わりに、上記比較例1で作製した担体Cを使用した以外は、実施例3と同様の操作を行い、触媒粉末Cを得た。
実験1:耐久性の評価
上記実施例3〜4で作製した触媒粉末A及びBならびに上記比較例2で作製した触媒粉末Cについて、下記方法に従って、耐久性を評価した。結果を下記表1に示す。
上記実施例3〜4で作製した触媒粉末A及びBならびに上記比較例2で作製した触媒粉末Cについて、下記方法に従って、耐久性を評価した。結果を下記表1に示す。
すなわち、三電極式の電気化学セルを用い、ポテンショスタットとして、北斗電工社製電気化学システムHZ−5000+HR301を用いた。作用極として、グラッシーカーボン回転電極(GC−RDE)(φ(直径)=5mm)を用い、実施例および比較例で作製した各触媒粉末を分散媒としての水と1−プロパノール混合溶媒に分散させたインクを乾燥膜厚が1μmとなるようにコーティングして乾燥させた電極を用いた。対極にカーボン、参照電極には可逆水素電極(RHE)を使用した。電解液は、0.1M 過塩素酸を用い、O2で飽和させた。測定は60℃(液温)で行なった。
触媒有効表面積(ECA)の算出は、サイクリックボルタムメトリ(CV)により実施した。測定実施前に、1.0Vの電位で30秒間、電位走査を実施した。その後、1.0〜1.5Vの電位範囲を0.5V/sの電位掃引速度で上昇(1秒)下降(1秒)し、これを1サイクル(2秒/サイクル)とした。この電位サイクルを繰り返すと、電位サイクルの増加とともに、サイクリックボルタムメトリ法で計測される0.6V付近のキノン−ハイドロキノン還元電流のピーク電位が低電位側にシフトする。この還元電流の変化からカーボンの状態を見積もった。具体的には、還元電流の電位が0.5V以下となるまでに繰り返すことができたサイクル数を耐久性の指標とした。
表1の結果から、実施例3、4の触媒粉末は、BET比表面積および/またはB/A比が本発明から外れる比較例2の触媒粉末に比べて、還元電流の低下するサイクル数が大きいことが示される。これから、本発明の炭素粉末を用いた触媒は、電気二重層容量の低下が小さく、有意に高い活性を維持できる(耐久性に優れる)と、考察される。
1…固体高分子形燃料電池(PEFC)、
2…固体高分子電解質膜、
3a…アノード触媒層、
3c…カソード触媒層、
4a…アノードガス拡散層、
4c…カソードガス拡散層、
5a…アノードセパレータ、
5c…カソードセパレータ、
6a…アノードガス流路、
6c…カソードガス流路、
7…冷媒流路、
10…膜電極接合体(MEA)。
2…固体高分子電解質膜、
3a…アノード触媒層、
3c…カソード触媒層、
4a…アノードガス拡散層、
4c…カソードガス拡散層、
5a…アノードセパレータ、
5c…カソードセパレータ、
6a…アノードガス流路、
6c…カソードガス流路、
7…冷媒流路、
10…膜電極接合体(MEA)。
Claims (6)
- 炭素を主成分とする炭素粉末であって、
窒素吸着によるBET比表面積が800m2/g以上であり、かつ
XRD分析によって観測される2θ=22.5°〜25°の位置に存在するピーク0の面積をA、XRD分析によって観測される2θ=26°の位置に存在するピーク1の面積をBとした場合、ピーク0の面積Aに対するピーク1の面積Bの比(B/A)が0.06以上である、燃料電池用炭素粉末。 - 請求項1に記載の燃料電池用炭素粉末に触媒金属が担持されてなる燃料電池用触媒。
- 前記触媒金属は、白金であるまたは白金と白金以外の金属成分を含む、請求項2に記載の燃料電池用触媒。
- 請求項2または3に記載の燃料電池用触媒および電解質を含む、燃料電池用電極触媒層。
- 請求項4に記載の燃料電池用電極触媒層を含む、燃料電池用膜電極接合体。
- 請求項5に記載の燃料電池用膜電極接合体を含む燃料電池。
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