JP2018078023A - リチウムイオン二次電池の制御装置 - Google Patents

リチウムイオン二次電池の制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】複数の正極活物質が予め定められた割合で含まれているリチウムイオン二次電池の適切な制御
【解決手段】
ここで提案されるリチウムイオン二次電池の制御装置では、対象となるリチウムイオン二次電池の正極には、複数の正極活物質が予め定められた割合で含まれている。記憶部Cでは、正極に含まれる正極活物質毎に、前記対象となるリチウムイオン二次電池の初期状態のSOCと正極電位との関係が記録されている。算出部Eでは、正極に含まれる正極活物質毎に、温度−SOC−劣化度の関係を示すマップが予め用意されている。そして、温度履歴とSOC履歴とに基づいて、正極活物質毎に劣化度を算出し、正極活物質毎に算出された劣化度に正極活物質の割合を掛けて加算することによって、正極の劣化度K1が算出される。
【選択図】図4

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の制御装置に関する。
本明細書において「リチウムイオン二次電池」は、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充電と放電が実現される二次電池を意味する。ここで、制御装置の制御対象としての「リチウムイオン二次電池」には、複数の電池要素が接続された「組電池」が含まれうる。また、制御装置の制御対象としての「リチウムイオン二次電池」には、「組電池」の電池要素として組み込まれた二次電池が含まれうる。
リチウムイオン二次電池の制御方法として、特開2013−89424号公報には、電池の劣化を予測する方法が開示されている。同公報で開示される予測方法では、ある温度とSOCとに、予め定められた時間滞在したときに、電池がどの程度劣化するかを予測するデータテーブルを用意する。そして、実際に、温度とSOCとについての履歴を基に、電池の劣化度を予測している。
特開2013−89424号公報
リチウムイオン二次電池の劣化度を推定する手法について、特開2013−89424号公報に提案された手法は、リチウムイオン二次電池の劣化度を一応推定できる。しかしながら、推定値として算出される劣化度と、実際のリチウムイオン二次電池の劣化度との差は小さいことが望ましい。また、リチウムイオン二次電池の劣化に伴って変化しうる開回路電圧についても精度良く推定できることが望ましい。ここでは、精度良くリチウムイオン二次電池の開回路電圧および劣化度を推定できる新たな手法を提案する。ここでは、特に、複数の正極活物質が予め定められた割合で含まれている場合について言及する。
ここで提案されるリチウムイオン二次電池の制御装置は、温度センサと、SOC検知部と、記録部A〜Dと、算出部E〜Iとを含んでいる。
ここで、温度センサは、対象となるリチウムイオン二次電池の温度を検知するセンサである。
SOC検知部は、対象となるリチウムイオン二次電池のSOCを検知する。
記録部Aは、温度センサによって検知された温度に基づく温度履歴を記録する。
記録部Bは、SOC検知部によって検知されたSOCに基づくSOC履歴を記録する。
記録部Cは、対象となるリチウムイオン二次電池の初期状態のSOCと正極電位との関係を記録している。
記録部Dは、対象となるリチウムイオン二次電池の初期状態のSOCと負極電位との関係を記録している。
算出部Eは、温度履歴とSOC履歴とに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池の正極の劣化度K1を算出する。
算出部Fは、温度履歴と前記SOC履歴とに基づいて、前記対象となるリチウムイオン二次電池の負極の劣化度K2を算出する。
算出部Gは、温度履歴とSOC履歴とに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池のリチウムトラップ量TLiを算出する。
算出部Hは、温度履歴と前記SOC履歴とに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池の正極電位と負極電位の起点SPを算出する。
算出部Iは、記録部Cに記録されたSOCと正極電位との関係と、記録部Dに記録されたSOCと負極電位との関係と、算出部Eによって算出された正極の劣化度K1と、算出部Fによって算出された負極の劣化度K2と、算出部Gによって算出されたリチウムトラップ量TLiと、算出部Hによって算出された起点SPとに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池の開回路電圧を算出する。
ここで、対象となるリチウムイオン二次電池の正極には、複数の正極活物質が予め定められた割合で含まれている場合において、記憶部Cでは、正極に含まれる正極活物質毎に、対象となるリチウムイオン二次電池の初期状態のSOCと正極電位との関係が記録されているとよい。
算出部Eでは、正極に含まれる正極活物質毎に、温度−SOC−劣化度の関係を示すマップが予め用意されているとよい。そして、温度履歴とSOC履歴とに基づいて、正極活物質毎に劣化度を算出し、正極活物質毎に算出された劣化度に正極活物質の割合を掛けて加算することによって、正極の劣化度K1が算出されるとよい。
この制御装置によれば、正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2と、リチウムトラップ量TLiと、起点SP(換言すれば、正極と負極がそれぞれ縮み起点)とを考慮して、対象となるリチウムイオン二次電池の劣化後の開回路電圧が算出される。このため、劣化後の開回路電圧が精度良く算出されうる。この制御装置は、コンピュータによって具現化されうる。例えば、SOC検知部と、記録部A〜Dと、算出部E〜Iとの各処理は、予め定められたプログラムに沿って動くプロセッサーによって実現されうる。また、本制御装置の手法は、リチウムイオン二次電池の劣化度を推定する手法にも応用されうる。
図1は、リチウムイオン二次電池の充電電流量と開回路電圧(OCV)との関係の一典型例を示すグラフである。 図2は、初期状態のリチウムイオン二次電池の充電電流量に対する正極電位と負極電位との典型的な関係を示すグラフである。 図3は、劣化後のリチウムイオン二次電池の充電電流量に対する正極電位と負極電位との典型的な関係を示すグラフである。 図4は、制御装置100を模式的に示すブロック図である。 図5は、放置状態のデータテーブルM1A〜M4Aを例示した図である。 図6は、通電状態のデータテーブルM1B〜M4Bを例示した図である。 図7は、制御装置100の制御フローの一例を示すフローチャートである。 図8は、他の形態における放置状態のデータテーブルM1A〜M4Aを例示した図である。 図9は、他の形態における通電状態のデータテーブルM1B〜M4Bを例示した図である。
以下、ここで提案されるリチウムイオン二次電池の制御装置について一実施形態を説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。
〈リチウムイオン二次電池の劣化〉
本明細書でのリチウムイオン二次電池の劣化は、リチウムイオン二次電池の容量劣化を意味している。リチウムイオン二次電池の電池容量は、使用によって初期状態よりも減少する傾向がある。リチウムイオン二次電池の劣化度は、初期状態の電池容量に対する、現状の電池容量の割合で表される。つまり、リチウムイオン二次電池の劣化度は、下記の式(A)で表され、初期状態の電池容量を100としたときの、現状の電池容量の割合であり、容量維持率とも称されうる。

リチウムイオン二次電池の劣化度=(現状の電池容量)/(初期状態の電池容量)×100(%)・・・(A)
リチウムイオン二次電池について、「初期状態」は、リチウムイオン二次電池が組み立てられた後の状態で任意に定めることができる。例えば、リチウムイオン二次電池が組み立てられ、予め定められたコンディショニング工程を経過し、リチウムイオン二次電池として通常の使用ができる状態を「初期状態」としてもよい。また、リチウムイオン二次電池の初期状態は、リチウムイオン二次電池が出荷される際の状態としてもよい。
〈リチウムイオン二次電池の電池容量〉
リチウムイオン二次電池の電池容量について、ここでは、開回路電圧を基にリチウムイオン二次電池の上限電圧と下限電圧とを予め設定する。そして、CCCV充電によって、リチウムイオン二次電池を上限電圧まで充電し、その後、CCCV放電によってリチウムイオン二次電池を下限電圧まで放電する。この際、初期状態でのリチウムイオン二次電池について、上限電圧から下限電圧まで放電したときの放電容量を、リチウムイオン二次電池の初期状態の電池容量とする。
この実施形態では、対象となるリチウムイオン二次電池に対して、開回路電圧を基にリチウムイオン二次電池の下限電圧を3.0Vとし、上限電圧を4.1Vとする。この場合、開回路電圧が3.0Vである状態がSOC0%であり、開回路電圧が4.1Vである状態がSOC100%(満充電状態)である。電池容量はCCCV充電によって開回路電圧が4.1Vになる状態まで充電し、CCCV放電によって開回路電圧が3.0Vになるまで放電したときの放電容量に相当する。ここで、「SOC」は、State Of Chargeの略であり、電池の充電状態を示している。ここでは、「SOC」は、満充電状態に対する充電率で定められる。以下、満充電状態に対する充電率を「充電率」と称する。
〈リチウムイオン二次電池の劣化傾向〉
以下に、本発明者の知見を基に、リチウムイオン二次電池の劣化事象を説明する。
図1は、リチウムイオン二次電池の充電電流量と開回路電圧(OCV)との関係の一典型例を示すグラフである。図2は、初期状態のリチウムイオン二次電池の充電電流量に対する正極電位と負極電位との典型的な関係を示すグラフである。図3は、劣化後のリチウムイオン二次電池の充電電流量に対する正極電位と負極電位との典型的な関係を示すグラフである。なお、図1,図2および図3は、典型例を模式的に示すものであり、厳密な測定結果を示すものではない。
ここで、図1中の実線Sは、リチウムイオン二次電池について初期状態でのSOCと開回路電圧(OCV)との関係を示している。破線S1は、劣化後のSOCと開回路電圧(OCV)との関係を示している。図2および図3の横軸は、充電または放電の電流量を示している。図2の実線Pは、初期状態での充電電流量に対する正極電位を示している。実線Qは、初期状態での充電電流量に対する負極電位を示している。図3の実線P1は、劣化後の充電電流量に対する正極電位を示している。実線Qは、劣化後の充電電流量に対する負極電位を示している。図1では、横軸がリチウムイオン二次電池のSOCを示しており、縦軸が開回路電圧(OCV)を示している。また、破線で示すように、使用によって正極と負極はそれぞれ劣化(単極での容量が減少)し、その結果、リチウムイオン二次電池の電池容量が減少する。
本明細書では、初期状態での正極電位を、適宜に「OCP+」と称する。初期状態での負極電位を、適宜に「OCP−」と称する。正極電位、負極電位は、それぞれ参照電極との電位差で把握されうる。参照電極には、例えば、金属リチウムが用いられる。初期状態でのSOCと正極電位(OCP+)との関係は、典型的には、図2の実線Pのようになる。実線Pは、適宜に、「SOC−OCP+」と称される。SOCと負極電位(OCP−)との関係は、典型的には、図2の実線Qのようになる。実線Qは、適宜に、「SOC−OCP−」と称される。
〈リチウムイオン二次電池の劣化傾向〉
ここで、図1,図2および図3は、例えば、層構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物)を正極活物質粒子とし、黒鉛構造を有する黒鉛粒子を負極活物質として用いたリチウムイオン二次電池についての傾向を示している。
図2に実線P、Qによって示されるように、初期状態のリチウムイオン二次電池では、放電電流量に対して正極電位Pが徐々に低下し、負極電位Qが徐々に上昇する。そして、放電末期では、正極電位Pが急激に低下し、負極電位Qも急激に上昇する。また、充電電流量に対して正極電位Pは徐々に上昇し、負極電位Qは段階的に低下する。
図2において、同じ充電状態(i)での正極電位P(i)と負極電位Q(i)との差分{P(i)−Q(i)}がリチウムイオン二次電池の開回路電圧S(i)に相当する。図2で示すような正極電位Pと負極電位Qは、例えば、正極電位と負極電位をそれぞれ測定する試験によって得られうる。また、正極電位P、負極電位Qは、リチウムイオン二次電池の仕様に応じて理論的に求められうる。例えば、正極電位Pは、正極に含まれる正極活物質量および正極活物質の材料特性に基づいて理論的に求められうる。また、負極電位Qは、負極に含まれる負極活物質量および負極活物質の材料特性に基づいて理論的に求められうる。
また、正極では、充電電流量が低い始端Psから終端Ptまでリチウムイオンが放出される。そして、始端Psから終端Ptまでに放出されるリチウムイオンの放出量に応じて正極初期容量W+が定められる。また、負極では、始端Qsから終端Qtまでリチウムイオンが吸収される。そして、始端Qsから終端Qtまでに吸収されるリチウムイオンの放出量に応じて負極初期容量W−が定められる。
これに対して、図3によって示されるように、劣化後のリチウムイオン二次電池では、放電電流量に対して正極電位P1が低下するタイミングや、負極電位Q1が上昇するタイミングは、初期状態よりも早くなる傾向がある。また、正極電位P1は、充電電流量に対して上昇するタイミングが初期状態よりも早くなり、負極電位Q1は、充電電流量に対して段階的に低下するタイミングが初期状態よりも遅くなる。
図3において、破線Qtは、図2の初期状態の負極電位Qのグラフの終点に相当する位置を示している。破線Psは、破線Ptを基準とし、図2の初期状態の正極電位Pのグラフの始端に相当する位置を示している。破線Qsは、破線Ptを基準とし、図2の初期状態の負極電位Qのグラフの始端に相当する位置を示している。図3に示されるように、劣化後の正極電位P1のグラフは、初期状態の正極電位Pのグラフよりも横軸(充電電流量)に沿って縮んだグラフになる。その結果、劣化後の正極容量W1+は、正極初期容量W+(図2参照)よりも減る。また、劣化後の負極電位Q1のグラフは、初期状態の負極電位Qのグラフよりも横軸(充電電流量)に沿って縮んだようなグラフになる。その結果、劣化後の負極容量W1−は、負極初期容量W−(図2参照)よりも減る。
上記の劣化後の傾向について、正極では、正極活物質がリチウムイオンを放出または吸蔵できる量が減少することが原因と考えられる。つまり、図3に示されるように、リチウムイオン二次電池について予め定められた開回路電圧の範囲での充電または放電において、正極活物質がリチウムイオンを放出または吸蔵できる量が減少する。この現象は、「正極の劣化」と称される。また、充電電流量を示す横軸に沿って正極が機能する幅が短くなることから、「正極縮み」とも称されうる。
また、負極では、負極活物質がリチウムイオンを放出または吸蔵できる量が減少することが原因と考えられる。つまり、リチウムイオン二次電池について予め定められた開回路電圧の範囲での充電または放電において、負極活物質がリチウムイオンを放出または吸蔵できる量が減少する。この現象は、「負極の劣化」と称される。また、充電電流量を示す横軸に沿って負極が機能する幅が短くなることから、「負極縮み」とも称されうる。
本発明者は、劣化後の正極電位P1および劣化後の負極電位Q1の関係を、より精度良く得るためには、劣化後の正極電位P1および劣化後の負極電位Q1が、劣化によりどの程度縮んだかという点と、どの位置を起点にして縮んだかを知る必要があると考えている。ここでは、初期状態の正極電位Pと負極電位Qのグラフに対して、劣化後の正極電位P1と負極電位Q1のグラフが縮む起点を「起点SP」と称する。なお、ここで例示される例では、起点SPは、正極も負極も同じ起点SPが算出されている。これに限らず、起点SPは、正極と負極でそれぞれ異なっていてもよい。正極と負極でそれぞれSPが異なることを考慮する場合、起点SPを算出する際に、正極と負極とでそれぞれ異なるデータテーブルを用意して、それぞれ異なる起点SPを算出するとよい。
また、リチウムイオン二次電池では、充電時に正極からリチウムイオンが放出され、負極はリチウムイオンを吸収するとともに、負極に電荷が蓄えられる。放電時には、負極に蓄えられたリチウムイオンが放出され、正極にリチウムイオンが戻る。かかる充電と放電において、リチウムイオンは被膜に取り込まれたり、一部析出したりするので、劣化が進むと電池反応に寄与するリチウムが減少する。ここでは、電池反応に寄与するリチウムが減少した量を「リチウムトラップ量」と称する。
図2および図3に示すように、例えば、電池反応に寄与するリチウムが減少することによって、劣化後の正極電位P1と負極電位Q1に相対的なずれが生じる。また、劣化後の正極電位P1と負極電位Q1のグラフは、初期状態の正極電位Pと負極電位Qのグラフに対してそれぞれ縮む。このため、例えば、放電側を観察すると、劣化後の正極電位P1が降下するタイミングと負極電位Q1が上昇するタイミングとは、劣化によってずれる。
ここで提案されるリチウムイオン二次電池の制御方法では、正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2と、リチウムトラップ量TLiと、起点SPとに基づいて、リチウムイオン二次電池の開回路電圧および劣化度が推定される。
正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2と、リチウムトラップ量TLiと、起点SPとは、対象となるリチウムイオン二次電池について、温度環境とSOCの履歴に基づいてそれぞれ推定される。ここで提案されるリチウムイオン二次電池の制御方法によれば、リチウムイオン二次電池の開回路電圧および劣化度を、より精度良く推定することができ、リチウムイオン二次電池のより適切な制御が可能になる。
図4は、制御装置100を模式的に示すブロック図である。制御装置100は、ここで提案されるリチウムイオン二次電池の制御方法を具現化する装置である。制御装置100は、予め定められたプログラムに沿って演算を行う演算装置と、電子化された情報を記憶する記憶装置とを備えている。演算装置は、中央処理装置(CPU)などと称されうる。記憶装置は、メモリやハードディスクなどと称されうる。制御装置100は、予め定められたプログラムに沿って所定の演算処理を行い、演算結果を基にリチウムイオン二次電池10を電気的に制御する。また、車両用途では、制御装置100は、エンジンやステアリングやブレーキや二次電池などを制御するために車両に搭載された電子制御ユニット(ECU)に組み込まれているとよい。
図4に示す例では、制御対象となるリチウムイオン二次電池10の正極端子12と負極端子14には、入力装置32(例えば、電源)と、出力装置34(例えば、出力先の外部装置)とが、それぞれ並列に接続されている。また、リチウムイオン二次電池10には、電流計22が直列に接続されており、電圧計24が並列に接続されている。また、リチウムイオン二次電池10には、温度センサ26が取り付けられている。
〈制御装置100〉
制御装置100には、電流計22と、電圧計24と、温度センサ26からそれぞれ測定値に関する情報が入力される。そして、リチウムイオン二次電池10の開回路電圧や劣化度を推定し、リチウムイオン二次電池10の充電と放電とを制御する。図4に示す例では、制御装置100は、入力装置32と、出力装置34と、入力スイッチ42と、出力スイッチ44とを制御する。制御装置100は、例えば、入力装置32または出力装置34を制御することによって、リチウムイオン二次電池10に通電する電流値を調整できる。また、例えば、入力スイッチ42または出力スイッチ44を制御することによって、リチウムイオン二次電池10への通電を停止できる。
ここで、温度センサ26は、対象となるリチウムイオン二次電池10の温度を検知するセンサであり、リチウムイオン二次電池10の予め定められた位置、例えば、側面に取り付けられる。温度センサ26は、所要の感度を備えており、制御装置100に温度に応じた電気的な信号が得られればよく、かかる機能を奏するものであれば、温度センサ26の構造は特に限定されない。
制御装置100は、図4に示すように、SOC検知部101と、記録部A〜Dと、算出部E〜Jとを含んでいる。
〈SOC検知部101〉
SOC検知部101は、制御装置100において、対象となるリチウムイオン二次電池10のSOCを検知する処理部である。制御装置100が対象となるリチウムイオン二次電池10のSOCを検知する手法としては、具体的には種々の手法を採用しうる。以下に一例を示す。SOCを検知する手法はここで例示される手法に限定されない。
〈SOCを検知する手法例〉
リチウムイオン二次電池10のSOCを検知する手法について説明する。この実施形態では、同型のリチウムイオン二次電池について、初期状態における開回路電圧(OCV)とSOCとの関係に相当するデータを、試験によって得て、制御装置100に予め記憶させておく。
初期状態におけるリチウムイオン二次電池10の充電電流量に対する正極電位Pの変化量に相当するデータを、試験によって得て、制御装置100に予め記憶させておく。また、初期状態におけるリチウムイオン二次電池10の充電電流量に対する負極電位Qの変化量に相当するデータを、試験によって得て、制御装置100に予め記憶させておく。
SOC検知部101には、初期状態のリチウムイオン二次電池10について、開回路電圧(OCV)とSOCとの関係が予め記憶されている。そして、SOC検知部101は、予め記憶された開回路電圧(OCV)とSOCとの関係と、開回路電圧(OCV)とに基づいて、初期状態におけるリチウムイオン二次電池10のSOCを検知する。検知されたSOCは、制御装置100において、積算期間の直前の充電率SOCyとして記憶される。その後は、予め定められた積算期間の充電電流量と放電電流量とが積算された積算電流量(ΔI)に基づいて、充電率の変化量(ΔSOC)が算出される。
積算電流量(ΔI)は、充電電流量が放電電流量よりも多い場合には+になり、放電電流量が充電電流量よりも多い場合には−になる。以下の式(B)のように、積算電流量(ΔI)を電池容量(Io)で割ることによって、充電率の変化量(ΔSOC)が求められる。

ΔSOC=ΔI/Io・・・(B)
なお、対象となるリチウムイオン二次電池10の電池容量(Io)は、使用によって劣化する傾向がある。つまり、リチウムイオン二次電池10の電池容量は、初期状態よりも使用により徐々に減少する傾向がある。充電率の変化量ΔSOCを算出する上で、積算電流量(ΔI)を電池容量(Io)で割る。この際、電池容量(Io)には、より厳密には、積算期間直前の電池容量として、直前の積算期間で算出された劣化後の電池容量Ixを用い、式(B1)によって、充電率の変化量ΔSOCを算出してもよい。この場合、制御装置100に記憶されている電池容量(Io)は、直前の積算期間で算出された劣化後の電池容量Ixに随時に更新するとよい。なお、劣化後の電池容量Ixの算出方法は、さらに後で説明されている。

ΔSOC=ΔI/Ix・・・(B1)
当該積算期間後の充電率SOCxは、以下の式(C)のように、当該積算期間の直前の充電率SOCyと、充電率の変化量ΔSOCとの和によって算出される。

SOCx=SOCy+ΔSOC・・・(C)

制御装置100に記憶されている当該積算期間の直前の充電率SOCyは、当該積算期間後に算出された充電率SOCxに随時に更新されるとよい。
式(C)において、SOCyは、充電率の変化量ΔSOCを算出する際の積算電流量の積算期間の直前の充電率である。ここで、積算電流量(ΔI)と積算期間後の充電率SOCxとは、予め定められた単位時間を積算期間として、かかる積算期間毎に算出される。積算期間は任意に設定できる。積算期間は、例えば、15秒、30秒、1分、5分あるいは10分で設定してもよい。この実施形態では、積算期間は1分間で設定されており、1分毎に、劣化後の電池容量と、積算期間後の充電率SOCxとを算出している。なお、積算期間後の充電率SOCxを検知する手法は、他にも種々あり、例えば、活物質の特性を考慮して適当な手法を採用するとよい。
〈記録部A〉
記録部Aは、制御装置100において、温度センサ26によって検知された温度に基づく温度履歴を記録する処理部である。例えば、温度センサ26で検知された温度の情報を、時系列に記録するとよい。
〈記録部B〉
記録部Bは、制御装置100において、SOC検知部101によって検知されたSOCに基づくSOC履歴を記録する処理部である。例えば、SOC検知部101によって検知されたSOCの情報を、時系列に記録するとよい。
〈記録部C〉
記録部Cには、対象となるリチウムイオン二次電池10のSOCと正極電位Pとの関係が記録されている。この実施形態では、記録部Cには、図2に示す、リチウムイオン二次電池10の初期状態のSOCと正極電位Pとの関係が記録されている。
〈記録部D〉
記録部Dには、対象となるリチウムイオン二次電池10のSOCと負極電位Qとの関係が記録されている。この実施形態では、記録部Dには、図2に示す、リチウムイオン二次電池10の初期状態のSOCと負極電位Qとの関係が記録されている。
〈算出部E〜H〉
算出部Eは、制御装置100において、温度履歴とSOC履歴とに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池10の正極の劣化度K1を算出する処理部である。
算出部Fは、制御装置100において、温度履歴とSOC履歴とに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池10の負極の劣化度K2を算出する処理部である。
算出部Gは、制御装置100において、温度履歴とSOC履歴とに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池10のリチウムトラップ量TLiを算出する処理部である。
算出部Hは、制御装置100において、温度履歴とSOC履歴とに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池10の正極電位と負極電位の起点SP(縮み起点)を算出する処理部である。
図5および図6は、正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2と、リチウムトラップ量TLiと、起点SPとの算出に用いるデータテーブルM1〜M4をそれぞれ例示している。このうち、図5には、放置状態におけるデータテーブルM1A〜M4Aが例示されている。図6には、通電状態におけるデータテーブルM1B〜M4Bが例示されている。
〈データテーブルM1〜M4〉
正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2と、リチウムトラップ量TLiとの算出に用いるデータテーブルM1〜M4は、図5および図6に示すように、リチウムイオン二次電池が放置されている状態(放置状態)と、リチウムイオン二次電池が通電されている状態(通電状態)とに応じてそれぞれ用意されている。なお、図5および図6で示されたデータテーブルM1〜M4は、ここで提案される制御方法の理解を助ける目的で、それぞれ説明の便宜上作成したものである。図5および図6で示されたデータテーブルM1〜M4は、必ずしも実際のリチウムイオン二次電池に対して具体的なデータを示すものではない。例えば、図5および図6では、SOCについて0%から100%まで20%刻みで、かつ、温度について−30℃、0℃、25℃、60℃の4つの温度について、データが入力されている。実際には、SOCおよび温度について、それぞれさらに細分化したデータテーブルを用いるとよい。
かかるデータテーブルは、例えば、当該温度およびSOCの状態に、対象となるリチウムイオン二次電池と同型のリチウムイオン二次電池を滞在させ、どの程度の劣化が起きるかを予め試験を行って作成するとよい。
放置状態では、例えば、特定の温度およびSOCの状態で、リチウムイオン二次電池の劣化が十分に観察できる日数(例えば、10日程度)放置する。放置状態のデータテーブルM1A〜M4Aには、かかる試験を基に、ある特定の温度およびSOCの状態で、1日放置されたときの正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2と、リチウムトラップ量TLi、起点SPが評価されている。
また、通電状態では、例えば、特定の温度下で、平均的に、ある特定のSOCの状態になるように、短周期で充電と放電を繰り返す制御を十分に劣化が観察できる程度の予め定められた時間(例えば、24時間程度)行う。通電状態のデータテーブルM1B〜M4Bには、かかる試験を基に、ある特定の温度およびSOCの状態で、1日通電されたときの正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2と、リチウムトラップ量TLi、起点SPが評価されている。
ここで、正極の劣化度K1と負極の劣化度K2とは、それぞれ初期状態を1として、その劣化の進行度の割合(正極縮み)と(負極縮み)の程度を評価している。リチウムトラップ量TLiは、初期状態を0とし、リチウムトラップ量に応じて容量(Ah)に相当する数値で評価している。
図5のデータテーブルM1A、M2Aは、それぞれ1日放置したときの正極の劣化度(K1/day)と、1日放置したときの負極の劣化度(K2/day)とを記録している。図5の例では、正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2は、それぞれ初期状態を1とする係数で評価されており、1に近いほど劣化が小さいことを示している。図5の例では、−30℃の低温状態で放置された場合には、正極の劣化度K1と負極の劣化度K2はそれぞれ1であり、劣化が小さいことが示されている。これに対して、温度が上がるにつれて劣化が大きい。特に正極では負極よりも温度の影響が大きい傾向が示されている。
図6のデータテーブルM1B、M2Bは、それぞれ1日通電したときの正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2とを記録している。図6の例では、正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2は、それぞれ初期状態を1とする係数で評価されており、1に近いほど劣化が小さいことを示している。図6の例では、SOCが0%に近い状態や、100%に近い状態であるほど、正極と負極の劣化が大きいことがそれぞれ示されている。また、温度が高いほど、正極と負極の劣化が大きいことがそれぞれ示されている。
図5のデータテーブルM3Aは、1日放置したときのリチウムトラップ量TLiを記録している。図5の例では、リチウムトラップ量TLiは、それぞれ0から1までの数値で評価されており、0はリチウムトラップ量TLiがほとんど増加しないことを示している。また、0に近いほどリチウムトラップ量TLiが小さいことを示している。また、リチウムトラップ量TLiが−であることは、トラップされたリチウムが回復することを示している。換言すれば、リチウムイオン二次電池の電池反応に寄与しなくなったリチウムが、反応に寄与しうる状態に回復することを示している。−の数値は、回復するリチウムの量を示している。
図5のデータテーブルM3Aによれば、リチウムイオン二次電池が放置されている場合には、リチウムトラップ量TLiは、温度に依存していることが示されている。ここでは、−30℃の低温状態で放置された場合には、リチウムトラップ量TLiが0であり、リチウムトラップ量TLiの変化がほとんど生じないことが示されている。温度が0℃〜25℃のような温度では、リチウムトラップ量TLiがマイナスであり、リチウムトラップ量TLiが減り、電池反応に寄与するリチウムの量が増えることが示されている。また、温度が60℃程度まで上昇すると、リチウムトラップ量TLiがプラスになり、リチウムトラップ量TLiが増えることが示されている。
図6のデータテーブルM3Bは、1日通電したときのリチウムトラップ量TLiを記録している。図6のデータテーブルM3Bでは、同じSOCでは、−30℃の低温状態よりも温度が高くなればなるほど、リチウムトラップ量TLiが大きくなり、リチウムトラップ量TLiに対する影響が大きいことが示されている。また、SOC40%〜60%では、リチウムトラップ量TLiが小さい。SOCが0%の近くなればなるほど、また、SOCが100%に近くなればなるほど、リチウムトラップ量TLiが大きくなることが示されている。
図5のデータテーブルM4Aは、1時間放置したときの起点SPを記録している。図6のデータテーブルM4Bは、1時間通電したときの起点SPを記録している。図5および図6の例では、起点SPは、それぞれ0から1までの数値で評価されており、0に近ければ近いほど起点SPが小さいことを示しており、1に近ければ近いほど起点SPが大きいことを示している。
なお、例えば、通電レートに応じて、正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2と、リチウムトラップ量TLiと、起点SPとが異なる傾向であれば、通電レートのレベルに応じて複数のデータテーブルを用意しておくとよい。例えば、図示は省略するが、通電状態のデータテーブルM1B,M2B,M3B,M4Bについては、さらに電流レートに応じて複数のデータテーブルが用意されていてもよい。あるいは、通電した時については、電流レートに応じて、データテーブルを補正する補正係数が用意されていてもよい。電流レートに応じたデータテーブルを用いること、あるいは、電流レートに応じてデータテーブルを補正することによって、正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2と、リチウムトラップ量TLiと、起点SPとを精度良く算出しうる。
以下に、正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2と、リチウムトラップ量TLiと、起点SPとの算出例を順に例示する。
〈正極の劣化度K1の算出例〉
制御装置100は、正極の劣化度K1の算出では、記録部Aに記録されたリチウムイオン二次電池10の温度履歴と、記録部Bに記録されたリチウムイオン二次電池10のSOCの履歴とに基づいて、正極の劣化度K1に関するデータテーブルM1A、M1Bを、単位時間毎に参照する。ここで、当該単位時間においてリチウムイオン二次電池10が放置されているときは、データテーブルM1Aを参照する。当該単位時間においてリチウムイオン二次電池10が通電されているときは、データテーブルM1Bを参照する。これによって単位時間毎に正極の劣化度K1(t)を適切に評価することができる。ここで、正極の劣化度K1(t)は、ある単位時間(t)における参照値を示している。リチウムイオン二次電池10の使用期間において、得られた単位時間毎の正極の劣化度K1(t)を積算することによって、正極の劣化度K1が得られる。
〈負極の劣化度K2の算出例〉
制御装置100は、負極の劣化度K2の算出では、記録部Aに記録されたリチウムイオン二次電池10の温度履歴と、記録部Bに記録されたリチウムイオン二次電池10のSOCの履歴に基づいて、負極の劣化度K2に関するデータテーブルM2A、M2Bを、単位時間毎に参照する。ここで、当該単位時間においてリチウムイオン二次電池10が放置されているときは、データテーブルM2Aを参照する。当該単位時間においてリチウムイオン二次電池10が通電されているときは、データテーブルM2Bを参照する。これによって単位時間毎に負極の劣化度K2(t)を適切に評価することができる。ここで、負極の劣化度K2(t)は、ある単位時間(t)における参照値を示している。リチウムイオン二次電池10の使用期間において、得られた単位時間毎の負極の劣化度K2(t)を積算することによって、負極の劣化度K2が得られる。
この実施形態では、上述のようにデータテーブルに1日当りの正極の劣化度K1と負極の劣化度K2が記録されている。ここでの正極の劣化度K1と負極の劣化度K2の参照値は、初期状態を1とする係数で評価されている。また、記録部Aの温度履歴と記録部Bの温度履歴では、それぞれ一分毎の履歴が記録されているものとする。この場合の算出式は、以下の式(D)、式(E)の通りである。

K1=Π(1−{(1−K1(t))/1440})・・・(D)
K2=Π(1−{(1−K2(t))/1440})・・・(E)
ここで、正極の劣化度K1と負極の劣化度K2の参照値が初期状態を1とする係数で評価されているため、(1−K1(t))の部分は、データテーブルにおける単位時間(ここでは1日)において劣化がどの程度進行するかを示している。(1−K1(t))/1440は、データテーブルの参照値が1日当りの劣化度を評価しているのに対して、記録部Aの温度履歴と記録部Bの温度履歴は、それぞれ一分毎の履歴で記録されているので、1440分(60分×24)で割って1分当りの劣化度として評価したものである。(1−{(1−K1(t))/1440})は、当該単位時間(ここでは、1分)における劣化度を示している。Πは、(1−{(1−K1(t))/1440})を積算することを示す記号である。ここでは、Πは、総乗を示している。
つまり、0から予め定められた期間(x)まで、単位時間(1分)毎に(1−{(1−K1(t))(t=0〜x)を算出する。そして、これを0からxまで順に乗算する。これによって、当該期間(t=0〜x)における正極の劣化度K1が得られる。ここでは、正極の劣化度K1について説明しているが、負極の劣化度K2についても同様に算出される。なお、単位時間毎の劣化度の積算方法は、劣化度の設定の仕方や、リチウムイオン二次電池の活物質の性質に応じて適当な積算方法を採用するとよい。例えば、ここではΠは総乗を意味しているが、劣化度の設定の仕方によってはΠを総和として積算してもよい。
上記の算出式によって、ある期間における正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2とを推定することができる。制御装置100は、当該期間の初期の劣化度(前回までに算出された劣化度)を記憶しているとよい。そして、当該期間の初期の劣化度と、算出された当該期間の劣化度とを掛け合わせるとよい。ここで、当該期間の初期の正極の劣化度(前回までに算出された劣化度)をLK1とする。当該期間の初期の負極の劣化度(前回までに算出された劣化度)をLK2とする。この場合、正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2は、以下の式(D1)、式(E1)で算出されうる。

K1=LK1×Π(1−{(1−K1(t))/1440})・・・(D1)
K2=LK2×Π(1−{(1−K2(t))/1440})・・・(E1)

例えば、初期状態から継続して算出することによって初期状態からの正極の劣化度K1と負極の劣化度K2を算出することができる。
〈算出部E〉
算出部Eは、温度履歴とSOC履歴とに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池10の正極の劣化度K1を算出する。この場合、制御装置100は、温度と、SOCと、単位時間あたりの正極の劣化度との関係が予め記録されたデータテーブルM1A、M1Bを記憶した記録部E1を備えているとよい。算出部Eは、記録部G1に記憶されたデータテーブルM1A、M1Bと、温度履歴とSOC履歴とから得られる単位時間毎の正極劣化量を基に、正極の劣化度K1を算出するとよい。
〈算出部F〉
算出部Fは、温度履歴とSOC履歴とに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池の負極の劣化度K2を算出する。この場合、制御装置100は、温度と、SOCと、単位時間あたりの負極の劣化度との関係が予め記録されたデータテーブルM2A、M2Bを記憶した記録部F1を備えているとよい。算出部Fは、記録部F1に記憶されたデータテーブルM2A、M2Bと、温度履歴とSOC履歴とから得られる単位時間毎の負極劣化量を基に、負極の劣化度K2を算出するとよい。
〈算出部G〉
算出部Gは、温度履歴とSOC履歴とに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池10のリチウムトラップ量TLiを算出する。この場合、制御装置100は、温度と、SOCと、単位時間あたりのリチウムトラップ量との関係が予め記録されたデータテーブルM3A、M3Bを記憶した記録部G1を備えているとよい。算出部Gは、記録部G1に記憶されたデータテーブルM3A、M3Bと、温度履歴とSOC履歴とから得られる単位時間毎のリチウムトラップ量ΔTLiを基に、リチウムトラップ量TLiを算出するとよい。
〈リチウムトラップ量TLiの算出〉
リチウムトラップ量TLiは、以下の式(F)で算出される。

TLi=Σ(TLi(t)/1440)・・・(F)

つまり、この実施形態では、上述のようにデータテーブルM3A、M3Bに1日当りのリチウムトラップ量TLiが記録されている。ここでのリチウムトラップ量TLiの参照値は、初期状態を0とし、最大限劣化した状態を1として、0から1の数値で評価されている。また、記録部Aの温度履歴と記録部Bの温度履歴では、それぞれ一分毎の履歴が記録されているものとする。ここで、TLi(t)は、ある単位時間(t)におけるリチウムトラップ量TLiの参照値である。Σは、積和を示している。例えば、0〜xまでの期間のリチウムトラップ量TLiを算出する場合は、t=0〜xまでの(TLi(t)/1440)を足し合わせるとよい。
また、制御装置100は、当該期間の初期のリチウムトラップ量LTLiを記憶しているとよい。この場合、当該期間の初期のリチウムトラップ量LTLiと、当該期間で算出されたリチウムトラップ量を足し合わせることによって、当該期間の初期のリチウムトラップ量LTLiを加味したリチウムトラップ量TLiを算出することができる。
この場合、例えば、以下の式(F1)により、初期状態から継続してリチウムトラップ量TLiを算出することによって、初期状態からのリチウムトラップ量TLiを算出することができる。

TLi=LTLi+Σ(TLi(t)/1440)・・・(F1)
〈算出部H〉
算出部Hは、温度履歴とSOC履歴とに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池の正極電位と負極電位の起点SPを算出する。この場合、制御装置100は、温度と、SOCと、単位時間あたりの起点SPとの関係が予め記録されたデータテーブルM4A、M4Bを記憶した記録部H1を備えているとよい。この実施形態では、起点SPは、データテーブルM4A、M4Bの各マス目の値と、各マス目で規定される条件に滞在した時間(滞在時間)とを掛けた値の総和を、総時間(滞在時間の総和)で割った値で評価される。
図5の例では、リチウムイオン二次電池10がSOC100%、25℃の状態で5時間放置され、その後、SOC80%、60℃の状態で5時間放置された場合では、データテーブルM4AのSOC100%、25℃の状態のマス目の値(1.0)に時間(5h)を掛ける。そして、SOC80%、60℃の状態のマス目の値(0.9)に時間(5h)を掛ける。それぞれ掛けた値を足して総時間(10h)で割る。SP=(1.0×5h+0.9×5h)/10h=0.95となる。ここで、起点SPは、正極電位Pおよび負極電位Qが縮む際の起点である。正極電位Pでは、正極初期容量W+の0.95(95%)の位置が、正極電位Pが劣化により縮む際の起点になる。負極電位Qでは、負極初期容量W−の0.95(95%)の位置が、負極電位Qが劣化により縮む際の起点になる。
〈算出部I〉
算出部Iは、記録部Cに記録されたSOCと正極電位Pとの関係と、記録部Dに記録されたSOCと負極電位Qとの関係と、正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2と、リチウムトラップ量TLiと、起点SPとに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池10の開回路電圧を算出する。
例えば、制御装置100には、正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2と、リチウムトラップ量TLiと、起点SPとに基づいて、図3に示すような、リチウムイオン二次電池10の劣化後の正極電位P1と負極電位Q1とが導出できるマップデータが予め用意されているとよい。マップデータは、(P1,Q1)=(K1,K2,TLi,SP)と表記されうる。リチウムイオン二次電池10の開回路電圧は、導出された劣化後の正極電位P1と負極電位Q1の電位差として導き出されうる。
〈算出部J〉
算出部Jは、正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2と、リチウムトラップ量TLiとに基づいてリチウムイオン二次電池10の劣化度Xを算出する。ここで、制御装置100には、正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2と、リチウムトラップ量TLiと、起点SPとに基づいて、リチウムイオン二次電池10の劣化度Xが導出できるマップデータが予め用意されているとよい。マップデータは、X=(K1,K2,TLi,SP)と表記されうる。リチウムイオン二次電池10の劣化度Xを算出する処理は、正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2と、リチウムトラップ量TLiと、起点SPとに基づいて、マップデータ{X=(K1,K2,TLi,SP)}から、Xを導き出すとよい。
また、算出部Iおよび算出部Jの他の方法として、正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2と、リチウムトラップ量TLiと、起点SPとに基づいて導出される、図3に示すような劣化後の正極電位P1と負極電位Q1に基づいて開回路電圧と劣化度Xを算出する方法も採用しうる。
例えば、劣化後の正極容量(W1+)は、正極初期容量(W+)と正極の劣化度(K1)との積で算出できる。また、初期状態の正極電位Pの始端Psを基準とした、劣化後の正極電位P1の始端P1sのずれ量X1(電流量)は、正極初期容量(W+)と正極の劣化度K1に基づく(1−K1)と起点(SP)との積{X1=(W+)×(1−K1)×SP}とで求められる。かかる劣化後の正極容量W1+と、劣化後の正極電位P1の始端P1sのずれ量X1とによって、図3に示すように、劣化後の正極電位P1が得られる。
また、劣化後の負極容量(W1−)は、負極初期容量(W−)と負極の劣化度(K2)との積で算出できる。また、初期状態の負極電位Qの始端Qsを基準とした、劣化後の負極電位Q1の始端Q1sのずれ量X2(電流量)は、負極初期容量(W−)と負極の劣化度K2に基づく(1−K2)と起点(SP)との積{(W−)×(1−K2)×SP}と、リチウムトラップ量TLiとの和で求められる[X2=TLi+{(W−)×(1−K2)×SP}]。かかる劣化後の負極容量W1−と、劣化後の負極電位Q1の始端Q1sのずれ量X2とによって、図3に示すように、劣化後の負極電位Q1が得られる。
劣化後の開回路電圧(OCV)は、劣化後の正極電位P1と負極電位Q1との電位差として推定されうる。また、OCV(P1−Q1)が予め定められた下限電圧(この実施形態では、3.0V)となる位置と、OCV(P1−Q1)が予め定められた上限電圧(この実施形態では、4.1V)となる位置を特定する。そして、3.0V〜4.1Vの間の電池容量を算出する。そして、算出された電池容量を劣化後の電池容量Ixとする。そして、以下の式(G)に基づいて劣化後の電池容量Ixを初期容量Ioで割ってリチウムイオン二次電池10の劣化度X(容量維持率)を算出してもよい。

X=Ix/Io・・・(G)
このように、制御装置100の算出部I,Jは、正極の劣化度K1,負極の劣化度K2,リチウムトラップ量TLiおよび起点SPに基づいて、正極電位の推定ずれ量X1や、負極電位の推定ずれ量X2や、リチウムイオン二次電池10の開回路電圧や、劣化後の電池容量Ixなどを推定する処理を含んでいてもよい。
また、制御装置100は、正極の劣化度K1が予め定められた閾値を超えた場合、または、負極の劣化度K2が予め定められた閾値を超えた場合に、リチウムイオン二次電池10に通電する電流値を抑制してもよい。正極の劣化度K1が予め定められた閾値を超えている場合、または、負極の劣化度K2が予め定められた閾値を超えている場合には、正極活物質または負極活物質が劣化している可能性があり、リチウムイオン二次電池10に通電する電流値を抑制することによって、リチウムイオン二次電池10の容量劣化が進行するのを抑制することができる。
〈電流抑制部K〉
この場合、制御装置100は、当該処理を実施する電流抑制部Kを備えているとよい。電流抑制部Kは、正極の劣化度K1が予め定められた閾値を超えている場合、または、負極の劣化度K2が予め定められた閾値を超えている場合に、リチウムイオン二次電池10に通電する電流値を抑制する。ここで、閾値は、リチウムイオン二次電池10への通電を抑制すべきと考えられる状況に応じて任意に設定されうる。
例えば、制御装置100は、記録部F2と算出部F3を備えているとよい。ここで、記録部F2は、正極の劣化度K1と負極の劣化度K2と、リチウムイオン二次電池10に通電する電流値を抑制する係数Jとの関係が予め定められたデータテーブルM5{J=(K1,K2)}を記憶しているとよい。算出部F3は、正極の劣化度K1と負極の劣化度K2とに基づいて、リチウムイオン二次電池に通電する電流値を算出する。ここで、算出部F3の処理は、正極の劣化度K1と負極の劣化度K2とデータテーブルM5{J=(K1,K2)}とに基づいて、リチウムイオン二次電池10に通電する電流値を抑制する係数Jを求める。そして、式(H)のように、通常の制御において、リチウムイオン二次電池10に通電されるべき電流値Aoに対して、係数Jを掛けて実際に通電する電流値Axを求める。

Ax=Ao×J・・・(H)

ここで、当該係数Jは、リチウムイオン二次電池10に通電する電流値を抑制する係数であり、0〜1の数値で設定されているとよい。
また、リチウムトラップ量TLiに基づいて、リチウムトラップ量TLiが予め定められた閾値を超えた場合に、リチウムイオン二次電池への通電を停止してもよい。リチウムトラップ量TLiが予め定められた閾値を超えた場合には、リチウムイオン二次電池10において、電池反応に寄与しないリチウムが予め定められた量を超えて増加していることを意味している。この場合、リチウムイオン二次電池10への通電を停止することによって、電池反応に寄与するリチウムの量を回復させ、リチウムトラップ量TLiを減少させることができる。
〈停止制御部L〉
この場合、制御装置100は、停止制御部Lを備えているとよい。停止制御部Lは、リチウムトラップ量TLiに基づいて、予め定められた閾値よりも大きい場合に、リチウムイオン二次電池10への通電を停止する。ここで、閾値は、リチウムイオン二次電池10への通電を停止すべきと考えられる状況に応じて任意に設定されうる。
以上のように、制御装置100は、リチウムイオン二次電池10の劣化度算出方法として、上記の処理F1、F2ように正極の劣化度K1、負極の劣化度K2、あるいは、リチウムトラップ量TLiに基づいてリチウムイオン二次電池の劣化度を算出する処理を具現化した処理部を備えているとよい。
図7は、制御装置100の制御フローの一例を示すフローチャートである。図7で示された制御フローは以下の通りである。この制御フローは、リチウムイオン二次電池10が車両に搭載される用途を想定している。開始処理:ここでは、定常走行モードに入った状態でこの制御フローが開始される。
S100:初期状態の正極電位Pと負極電位Qとについてそれぞれ単極のマップを保持する。
S101:制御対象となるリチウムイオン二次電池の電圧、電流および温度を検知する。制御装置100では、温度センサによって検知された温度に基づく温度履歴は、記録部Aに記録される。電圧値、電流値の履歴についても合わせて制御装置100に記録される(図4参照)。
S102:制御対象となるリチウムイオン二次電池のSOCを検知する。制御装置100では、SOC検知部101によって検知されたSOCに基づくSOC履歴が記録部Bに記録される(図4参照)。
S103:正極の劣化度K1を算出する。制御装置100では、算出部Eが、温度履歴とSOC履歴とに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池10の正極の劣化度K1を算出する(図4参照)。
S104:負極の劣化度K2を算出する。制御装置100では、算出部Fが、温度履歴とSOC履歴とに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池10の負極の劣化度K2を算出する(図4参照)。
S105:リチウムトラップ量TLiを算出する。制御装置100では、算出部Gが、温度履歴とSOC履歴とに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池10のリチウムトラップ量TLiを算出する(図4参照)。
S106:縮み起点SPを算出する。制御装置100では、算出部Hが、温度履歴とSOC履歴とに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池の正極電位と負極電位の起点SPを算出する(図4参照)。
S107:正極の劣化度K1,負極の劣化度K2,リチウムトラップ量TLiおよび起点SPに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池10の劣化後の開回路電圧(OCV)と、劣化度Xとを算出する。制御装置100では、算出部I,Jが、温度履歴とSOC履歴とに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池10のリチウムトラップ量TLiを算出する(図4参照)。
S108:正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2とに基づいて、対象となるリチウムイオン二次電池の容量劣化を判定する。図7に示すフローでは、制御装置100は、正極の劣化度K1が予め定められた閾値Lk1を超えているか否か(K1>Lk1)を判定する(図4参照)。また、負極の劣化度K2が予め定められた閾値Lk2を超えているか否か(K2>Lk2)を判定する。
S208:正極の劣化度K1と負極の劣化度K2の何れか一方が閾値(Lk1,Lk2)を超えている場合に電流抑制制御(S206)が実施される。制御装置100では、電流抑制部Kが対象となるリチウムイオン二次電池10への通電を抑制する。制御装置100は、例えば、Ig=f(k1,k2)で示される関数式、あるいは、データテーブルを予め記憶しておき、算出される電流値Igに従って、対象となるリチウムイオン二次電池10に通電する電流値を制御するとよい。
S109:リチウムトラップ量TLiが予め定められた閾値(Lt)を超えているか否か(TLi>Lt)を判定する。
S209:停止制御が実施される。リチウムトラップ量TLiが予め定められた閾値(Lt)を超えている場合に、対象となるリチウムイオン二次電池10への通電を停止する。制御装置100は、では停止制御部Lによって処理される。制御装置100は、例えば、Th=f(TLi)で示される関数式、あるいは、データテーブルを予め記憶しておき、算出される時間Thに従って、対象となるリチウムイオン二次電池10への通電を停止する時間が設定されるように構成されているとよい。
S110:通常の通電処理が実施される。制御装置100は、上記判定ステップS108で、劣化度K1と劣化度K2が何れも閾値(Lk1,Lk2)を超えておらず、上記判定ステップS109で、リチウムトラップ量TLiが予め定められた閾値(Lt)を超えていない場合に、対象となるリチウムイオン二次電池10への通常の通電処理を実施する。
本制御は、対象となるリチウムイオン二次電池10が使用されている状態では、常に実行されていることが望ましく、制御終了後、開始処理に戻る。対象となるリチウムイオン二次電池10が使用されている状態では、繰り返し実行される。なお、図示は省略するが、制御終了後、開始処理に戻る処理において、制御を終了する条件が設定された判定処理部が設けられており、条件付きで制御が終了されるように構成してもよい。
ところで、対象となるリチウムイオン二次電池の正極には、複数の正極活物質が予め定められた割合で含まれている場合がある。この場合には、正極の劣化度K1の精度を上げるため、正極に含まれる正極活物質毎に、温度−SOC−劣化度の関係を示すマップ(この実施形態では、データテーブル)を予め用意するとよい。そして、正極活物質毎に算出された劣化度を算出し、正極活物質毎に算出された劣化度に当該正極活物質の割合を掛けて加算することによって、正極の劣化度K1が算出されるとよい。
例えば、正極に活物質Aと活物質Bとが含まれている場合、活物質Aと活物質Bとが劣化について異なる性質を有する場合がある。この場合、正極に含まれる正極活物質毎に、温度−SOC−劣化度の関係を示すマップ(この実施形態では、データテーブル)を予め用意するとよい。以下に、正極に正極活物質A,Bの2種類の正極活物質が用いられており、正極活物質A,Bの混合比(重量割合)が4:1である場合を例示する。
図8および図9は、正極の劣化度K1と、負極の劣化度K2と、リチウムトラップ量TLiと、起点SPとの算出に用いるデータテーブルM1〜M4がそれぞれ例示されている。このうち、図8には、放置状態におけるデータテーブルM1A〜M4Aが例示されている。図9には、通電状態におけるデータテーブルM1B〜M4Bが例示されている。
この実施形態では、正極に活物質Aと活物質Bとが含まれている。正極の劣化度K1を算出するためのデータテーブルとして、活物質Aに対応したデータテーブルと活物質Bに対応したデータテーブルとが用意されている。ここで、図8では、データテーブルM1A−Aは、活物質Aに対応したデータテーブルであり、データテーブルM1A−Bは、活物質Bに対応したデータテーブルである。図9では、データテーブルM1B−Aは、活物質Aに対応したデータテーブルであり、データテーブルM1B−Bは、活物質Bに対応したデータテーブルである。
正極の劣化度K1の算出では、温度履歴とSOC履歴とに基づいて、正極活物質毎に劣化度を算出し、正極活物質毎に算出された劣化度に正極活物質の割合を掛けて加算することによって、正極の劣化度K1が算出される。
例えば、正極活物質Aについての劣化度K1−Aの算出では、制御装置100(図4参照)は、記録部Aに記録されたリチウムイオン二次電池10の温度履歴と、記録部Bに記録されたリチウムイオン二次電池10のSOCの履歴とに基づいて、正極活物質Aの劣化度K1−Aに関するデータテーブルM1A−A、M1B−Aを、単位時間毎に参照する。正極活物質Bについての劣化度K1−Bの算出では、制御装置100(図4参照)は、記録部Aに記録されたリチウムイオン二次電池10の温度履歴と、記録部Bに記録されたリチウムイオン二次電池10のSOCの履歴とに基づいて、正極活物質Bの劣化度K1−Bに関するデータテーブルM1A−B、M1B−Bを、単位時間毎に参照する。
これによって、正極活物質Aの劣化度K1−Aおよび正極活物質Bの劣化度K1−Bが算出される。正極活物質Aの劣化度K1−Aおよび正極活物質Bの劣化度K1−Bは、それぞれデータテーブルM1Aを利用した正極の劣化度K1の算出に準じて算出される。
さらに、正極の劣化度K1は、正極活物質毎に算出された劣化度(K1−A)、(K1−B)に正極活物質の割合(重量割合)を掛けて加算することによって算出される。
この場合、正極の劣化度K1は、以下の式で求められる。
K1=(K1−A)×0.8+(K1−B)×0.2
また、初期状態での正極電位Pは、初期状態の正極活物質Aの正極電位P(A)と、初期状態の正極活物質Bの正極電位P(B)と、正極活物質A,Bの重量割合とで算出される。
つまり、初期状態での正極電位Pは、以下の式で求められる。
P=P(A)×0.8+P(B)×0.2
さらに、劣化後の正極電位P1は、以下の式で求められる。
P1=(K1−A)×P(A)×0.8+(K1−B)×P(B)×0.2
対象となるリチウムイオン二次電池の初期状態のSOCと正極電位との関係を記録した記録部Cでは、正極活物質Aの初期状態のSOCと正極電位との関係P(A)と、正極活物質Bの初期状態のSOCと正極電位との関係P(B)とが記録されているとよい。
このように、正極に2種類の正極活物質A,Bが用いられている場合には、上述のように正極に含まれる正極活物質A,B毎に、温度−SOC−劣化度の関係を示すマップが予め用意されているとよい。また、正極活物質A,B毎に初期状態のSOCと正極電位との関係が記録されているとよい。
そして、温度履歴とSOC履歴とに基づいて、正極活物質A,B毎に劣化度を算出し、正極活物質A,B毎に算出された劣化度に正極活物質A,Bの割合を掛けて加算することによって、正極の劣化度K1が算出されるとよい。さらに、正極活物質A,B毎に、初期状態のSOCと正極電位との関係に、劣化度と正極活物質A,Bの割合を掛けて加算することによって、劣化後の正極電位P1が求められるとよい。
ここで算出された正極の劣化度K1および劣化後の正極電位P1は、正極に単一の活物質が含まれている場合の正極の劣化度K1および劣化後の正極電位P1と同等に扱われる。ここで算出された正極の劣化度K1および劣化後の正極電位P1は、例えば、図7に示すフローチャートにおいて、上述した電流抑制部Kにおける電流抑制制御および停止制御部Lにおける停止制御などの各制御に用いられる。
なお、ここでは、正極に正極活物質A,Bの2種類の正極活物質が用いられており、正極活物質A,Bの混合比(重量割合)が4:1である場合を例示したが、これに限定されない。例えば、対象となるリチウムイオン二次電池の正極に、複数の正極活物質が予め定められた割合で含まれている場合には、正極に含まれる正極活物質毎に、対象となるリチウムイオン二次電池の初期状態のSOCと正極電位との関係と、温度−SOC−劣化度の関係を示すマップ(この実施形態では、データテーブル)とが予め用意されているとよい。これにより、正極に3種類、4種類など複数の正極活物質が用いられている場合に適用されうる。
以上、ここで提案されるリチウムイオン二次電池の制御方法および制御装置を種々説明した。ここで提案されるリチウムイオン二次電池の制御方法および制御装置は、特に言及されない限りにおいて、上述した実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。
ここで提案されるリチウムイオン二次電池の制御方法および制御装置は、種々のリチウムイオン二次電池の制御に適用できる。
制御対象となるリチウムイオン二次電池の正極活物質材料としては、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。
リチウム遷移金属複合酸化物としては、例えば、遷移金属としてコバルトを多く含む(コバルト系)材料、遷移金属としてニッケルを多く含む(ニッケル系)材料、遷移金属としてニッケル、コバルト、マンガンを含む(いわゆる三元系)材料、マンガンスピネル系材料、いわゆるオリビン系材料などが挙げられる。
制御対象となるリチウムイオン二次電池の負極活物質材料としては、例えば、非晶質天然黒鉛やグラファイトのような炭素系の負極材料や、チタン酸リチウムなどが挙げられる。
10 リチウムイオン二次電池
12 正極端子
14 負極端子
22 電流計
24 電圧計
26 温度センサ
32 入力装置
34 出力装置
42 入力スイッチ
44 出力スイッチ
100 制御装置
101 検知部
A 記録部
B 記録部
C 記録部
D 記録部
E 算出部
E1 記録部
F 算出部
F1 記録部
F2 記録部
F3 算出部
G 算出部
G1 記録部
H 算出部
H1 記録部
I 算出部
J 算出部
K 電流抑制部
L 停止制御部
M1〜M5 データテーブル

Claims (1)

  1. 対象となるリチウムイオン二次電池の温度を検知する温度センサと、
    前記対象となるリチウムイオン二次電池のSOCを検知するSOC検知部と、
    前記温度センサによって検知された温度に基づく温度履歴を記録する記録部Aと、
    前記SOC検知部によって検知されたSOCに基づくSOC履歴を記録する記録部Bと、
    前記対象となるリチウムイオン二次電池の初期状態のSOCと正極電位との関係を記録した記録部Cと、
    前記対象となるリチウムイオン二次電池の初期状態のSOCと負極電位との関係を記録した記録部Dと、
    前記温度履歴と前記SOC履歴とに基づいて、前記対象となるリチウムイオン二次電池の正極の劣化度K1を算出する算出部Eと、
    前記温度履歴と前記SOC履歴とに基づいて、前記対象となるリチウムイオン二次電池の負極の劣化度K2を算出する算出部Fと、
    前記温度履歴と前記SOC履歴とに基づいて、前記対象となるリチウムイオン二次電池のリチウムトラップ量TLiを算出する算出部Gと、
    前記温度履歴と前記SOC履歴とに基づいて、前記対象となるリチウムイオン二次電池の正極電位と負極電位の起点SPを算出する算出部Hと、
    前記記録部Cに記録されたSOCと正極電位との関係と、前記記録部Dに記録されたSOCと負極電位との関係と、前記算出部Eによって算出された正極の劣化度K1と、前記算出部Fによって算出された負極の劣化度K2と、前記算出部Gによって算出されたリチウムトラップ量TLiと、前記算出部Hによって算出された起点SPとに基づいて、前記対象となるリチウムイオン二次電池の開回路電圧を算出する算出部Iと
    を含み、
    前記対象となるリチウムイオン二次電池の正極には、複数の正極活物質が予め定められた割合で含まれており、
    前記記憶部Cでは、
    前記正極に含まれる正極活物質毎に、前記対象となるリチウムイオン二次電池の初期状態のSOCと正極電位との関係が記録されており、
    前記算出部Eでは、
    前記正極に含まれる正極活物質毎に、温度−SOC−劣化度の関係を示すマップが予め用意されており、
    前記温度履歴と前記SOC履歴とに基づいて、前記正極活物質毎に劣化度を算出し、前記正極活物質毎に算出された劣化度に前記正極活物質の割合を掛けて加算することによって、前記正極の劣化度K1が算出される、
    リチウムイオン二次電池の制御装置。
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