JP2018068910A - 疾病予測方法 - Google Patents
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Abstract
Description
図6(a)、図6(b)は、いずれも縦軸に分泌される血清中のメラトニン濃度を示し、横軸に分泌の時刻を示した図であり、図6(a)は健常者のものである。図6(b)はアルツハイマーを発症した患者のものである(出典:Mishima K, Tozawa T, Satoh K et al. "Melatonin secretion rhythm disorders in patients with senile dementia of Alzheimer's type with disturbed sleep-waking." Biol Psychiatry 1999;45:417-421.)。図6(a)、図6(b)から明らかなように、健常者ではメラトニンの濃度が夕方から高まって深夜にピークを向かえ、早朝に向けて下降している。このようなメラトニンの変化により、健常者は、夜に眠り、翌朝目覚めるというリズムに従って行動することができる。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、測定にかかる被験者の負荷が小さく、かつ日常的な生活リズムの乱れから疾病の発症を予測することができる疾病予測方法、疾病予測プログラム、疾病予測装置及び疾病予測プログラムに関する。
(疾病予測装置)
図1は、本実施形態の疾病予測装置10を説明するための図である。疾病予測装置10は、疾病予測装置の利用者(以下、単に「利用者」と記す)が行った活動の状況及びこの活動が行われた時間帯に関する活動情報に基づいて利用者が発症する疾病または障害(以下、単に「疾病等」と記す)を予測する疾病予測部132を備えている。疾病等の予測は、少なくとも、予め取得された複数の被験者(以下、単に「被験者」と記す)が行った活動の状況及びこの活動が行われた時間帯に関する被験者活動情報と、被験者の身体の状態に関する被験者状態情報と、の関連性を表す疾病関連情報に、利用者が行った活動の状況及び活動が行われた時間帯に関する利用者活動情報を適用して行われる。
ここで、「活動」とは、利用者の意識、無意識に関わらず行われる身体の動きを指す。利用者が意識して行う活動には、例えば歩行や水泳等が挙げられる。無意識のうちに行う活動には、例えば、寝返りや心臓の脈動等の他、座位や立位での姿勢維持(静止状態)が挙げられる。疾病は、例えば心不全や癌といった身体の異常をいう。本実施形態では、特に鬱病や糖尿病といった生活習慣の影響を受けやすい内因性のものを対象とする。障害は、疾病とまでは言わないものの、老化等によって起こる身体の不具合を指す。本実施形態では、特に、腰痛、膝痛及び転倒等の身体の劣化によって発症するものを対象とする。被験者とは、疾病関連情報を作成するための活動情報及び状態情報を提供する者をいい、利用者とは、この疾病関連情報を利用した疾病予測方法を利用する者をいう。
また、本実施形態でいう「活動の状況」とは、被験者または利用者が一日のうちの特定の時間帯に行った活動の活動量または活動強度をいう。「活動量」は動作を行った回数や時間、ある一定の活動の強度の出現頻度等によって表される。「活動の強度」は、動作時に身体に加わった力によって表される。「被験者状態情報」とは、被験者を実際に検査や診断して得られた疾病等の情報である。利用者が発症する疾病等の予測は、疾病関連情報に利用者の活動情報を適用して得られる認知症INDEX(インデックス)や鬱病INDEX等のINDEXによって評価される。各疾病のINDEXは、利用者が疾病を発症する兆候の度合いを示す数値である。
なお、疾病関連情報については、後に詳述する。
(加速度センサ)
加速度センサ11は、x、y、zの3軸方向の加速度を検出する加速度センサであって、y軸方向を重力方向として疾病予測装置10、ひいては利用者にかかる加速度を検出している。加速度センサ11としては、例えば、スズケン社のライフコーダEX(登録商標)や、ライフコーダPLUS等が使用される。加速度センサ11を使って活動情報を取得する本実施形態では、利用者の歩行動作を活動として計測している。歩行を計測する場合、加速度センサ11は、利用者の腰付近に装着される。
なお、本実施形態は、歩行以外の活動を活動情報の取得に採用してもよい。歩行以外の活動としては、例えば、利用者の手首の動き等が考えられる。手首が動いた回数や速度を計測する場合には、加速度センサ11を利用者の手首に装着することが考えられる。手首に加速度センサ11を装着すれば、利用者が座った状態で飲食したり機器を操作したりする活動を計測することができる。
制御部13は、活動情報作成部131、疾病予測部132及びメッセージ作成部133を備えている。活動情報作成部131は、加速度センサ11が取得した加速度に関する加速度データを入力する。そして、加速度データから利用者の歩行の歩数とその強度(以下、「活動強度」とも記す)を検出する。なお、活動強度は、例えば、歩行の「速度」により検出してもよい。
さらに、活動情報作成部131は、歩数または活動強度にタイマ17から取得した時刻の情報を対応つけて活動情報を作成する。このような制御部13は、所謂コンピュータであり、図示しないCPU(Central Processing Unit)やデータ蓄積用のメモリ及びワーキングメモリといった公知の構成を備えている。活動情報作成部131、疾病予測部132及びメッセージ作成部133は、各々コンピュータ上で動作して所定の機能を発揮するハードゥェアとプログラムとを含むものである。
活動情報作成部131は、加速度センサ11から出力された加速度信号を読み取り、以下に説明するように各種の演算処理によって活動の量及び活動強度を算出する。本実施形態は、活動量として歩行の歩数を加速度が加わった回数によって計測する。また、活動の強度を歩行の速度とし、速度を加わった加速度の強さによって計測する。
はじめに、活動情報作成部131は、加速度センサ11から逐次出力される加速度信号を電圧信号に変換し、デジタル変換及びノイズ除去し、三軸加速度の合成または重力方向成分の抽出等の処理を行って加速度データを生成する。なお、本実施形態において加速度とは、地球の重力加速度の影響を除去したものをいう。すなわち、歩行中の利用者には重力加速度と併せて1G(Gは重力加速度)を超える加速度(たとえば1.2G)が負荷される。活動情報作成部131は、計測された加速度から重力加速度の影響を排除した値(この場合、0.2G)を加速度として取得する。
本実施形態では、活動情報作成部131が、計測された加速度データをその大きさに基づいて例えば0から9及び0.5の11段階に分類する。分類された加速度データは、強度決定間隔の間に計測されたデータを1単位として前記したデータ蓄積用のメモリに記憶される。
活動情報作成部131は、強度決定間隔毎に加速度センサ11からの加速度信号に基づいて1個または複数個の加速度データを生成して加速度の大きさを判定する。好ましくは、強度決定間隔毎に複数個の加速度データを生成してそれぞれ加速度の大きさを判定するとよい。この場合、加速度センサ11が加速度信号を取得するサンプリング間隔は、上記の強度決定間隔よりも短く設定し、より好ましくは強度決定間隔の時間内に加速度センサ11は加速度信号を複数回に亘って計測するように設定する。このため、強度決定間隔を1秒以上とすることで、加速度センサ11のサンプリング間隔を過度に短くすることなく、強度決定間隔の時間内に多くの加速度信号を加速度センサ11で計測することができる。
活動情報作成部131は、強度決定間隔の時間内にカウントされた加速度を平均して活動強度を決定してもよい。これにより、利用者が立ち上がったり倒れたりした瞬間に記録される大きな加速度によって過度に高い活動強度が計測されることが防止される。このようにして、活動情報作成部131は強度決定間隔毎に、この強度決定間隔の時間内に取得された複数個の加速度データに基づいて1個の活動強度を生成することができる。
メッセージ作成部133は、利用者の活動情報を被験者の活動情報や身長、体重及び年齢と比較して、利用者に行うべき活動の状況及びこの活動を行うべき時間帯を示唆するアドバイス情報を含んだメッセージを作成する。メッセージ作成部133によって作成されたアドバイス情報を含むメッセージは、表示部15に出力され、表示される。表示部15は、公知のディスプレイ装置であってもよい。また、本実施形態は、メッセージを表示部15にテキストで表示させる構成に限定されるものでなく、活動すべき時間帯や時間間隔を音声や光で利用者に通知するものであってもよい。
また、本実施形態は、上記した疾病予測装置10の構成に限定されるものではなく、活動情報を取得する活動情報取得装置と、取得された活動情報を演算処理して疾病を予測する疾病予測装置とを別体とすることもできる。
図2(a)、図2(b)は、活動情報取得装置と疾病予測装置とを別体とした構成を例示した図である。なお、本実施形態では、活動情報取得装置と疾病予測装置とを別体とした構成を「疾病予測システム」とも記す。図2(a)に示した構成は、活動情報取得装置30と、活動情報を使って疾病を予測する疾病予測装置50と、によって疾病予測システムを構築した例を示している。活動情報取得装置30は、加速度センサ11、活動情報作成部131及びタイマ17に加えて出力インターフェース(I/F)31を備えている。疾病予測装置50は、疾病予測部132、メッセージ作成部133、関連情報蓄積用メモリ19及び入力部21及び表示部15に加えて入力インターフェース(I/F)51を備えている。
また、本実施形態は、図2(b)に示したように、加速度センサ11、活動情報作成部131及びタイマ17を備えた活動情報取得装置20と、疾病予測部132、メッセージ作成部133、関連情報蓄積用メモリ19、入力部21及び表示部15を備えた疾病予測装置40とをネットワークNに接続してコンピュータシステムを構築してもよい。
次に、本実施形態の疾病予測方法を説明する。
本実施形態の疾病予測方法は、少なくとも、被験者の活動情報と被験者の状態情報と、の関連性を表す疾病関連情報に、利用者が行った活動の状況及びこの活動が行われた時間帯に関する利用者の活動情報を適用して利用者がかかる疾病等を予測する工程を含んでいる。
また、本実施形態の疾病予測方法では、上記工程において、さらに、利用者の身長、体重及び年齢の少なくとも一つに関する情報に基づいて利用者の疾病を予測する。
本実施形態では、このような疾病予測方法の説明に先立って、先ず、疾病関連情報について説明する。
本実施形態では、歩行の歩数、強度及び歩行の時間帯と認知症や鬱病の状態情報との関係を例にして疾病関連情報を説明する。本発明の発明者は、50人以上、好ましくは100人以上の被験者から各人の活動情報を取得した。活動情報の取得は、被験者の歩行を活動の指標とし、歩行の歩数を「活動量」、歩行の早さを「活動強度」とした。また、活動情報の取得は、図2(a)に示した活動情報取得装置30を被験者が28日間起きている間腰につけて行った。さらに、活動情報の取得は、3時間毎の歩行を1単位として行った。このため、本実施形態では、被験者の28日間の歩行の歩数と強度とが3時間毎に時間帯と対応つけられて記録される。
本実施形態の疾病推定方法は、適用可能な被験者の年齢に特に制限はない。鬱病は20代、30代といった若年層でも発症するからである。ただし、疾病として認知症を予測する場合、被験者の年齢は、好ましくは60歳以上、より好ましくは65歳以上、さらに好ましくは70歳以上である。また、被験者としては、例えば、医療従事者や消防士、警察官といった活動時間帯が不規則になりやすい者は好ましくない。
以下、本実施形態の疾病関連情報の作成方法について説明する。
本実施形態では、疾病関連情報を、以下の(A)から(E)の工程を実行することによって作成した。
(A)年齢、性別、身長及び体重(BMI)等の被験者の体格に関するデータを1つ以上取得する。
このような工程は、例えば、図2(a)に示した疾病予測装置50の入力部21からオペレータが入力することによって実行される。
活動情報は、図2に示した活動情報取得装置30の加速度センサ11によって取得された加速度データを活動情報作成部131が処理することによって作成される。本実施形態では、活動情報作成部131によって作成される活動情報と共に疾病関連情報に適用される身長等のパラメータを以下のように44種類に定めた。なお、パラメータが平均値である場合、この平均値は特に記載がない限り全計測期間(28日間)を通じての平均値である。
設定された3時間の時間帯(例えば3−6時)毎の歩数(Ns3−6)を計測する。そして、各時間帯の歩数の28日間の平均値(Ns3−6ave)を算出して、各時間帯の歩数の平均値とする。
Ns3−6ave、Ns6−9ave、Ns9−12ave、Ns12−15ave、Ns15−18ave、Ns18−21ave、Ns21−24ave、Ns24−3ave
設定された3時間の時間帯(例えば3−6時)毎の活動の強度(Np3−6)を計測する。活動強度は3時間の間に変化するから、利用者が歩行中であると活動情報作成部131が判断した時間内における活動強度を強度決定間隔ごとに算出し、それらを時間平均した値を、その時間帯の平均活動強度とする。そして、各時間帯の平均活動強度に関して28日間の平均値(Np3−6ave)を算出して、各時間帯の活動強度の平均値とする。
Np3−6ave、Np6−9ave、Np9−12ave、Np12−15ave、Np15−18ave、Np18−21ave、Np21−24ave、Np24−3ave
1日において、行われた歩行の回数を強度毎(Nf0、Nf0.5、Nf1、Nf2、Nf3、Nf4、Nf5、Nf6、Nf7、Nf8、Nf9)に毎日カウントする。そして、各強度の歩行の回数に関して28日間の平均値(Nf0ave)を算出して、各段階の強度の歩行が行われる頻度の平均値とする。
Nf0ave、Nf0.5ave、Nf1ave、Nf2ave、Nf3ave、Nf4ave、Nf5ave、Nf6ave、Nf7ave、Nf8ave、Nf9ave
28日間の歩数の標準偏差Nssdを算出する。また、計測された歩数を28日間で平均した平均値(Nsave)を算出する。そして、標準偏差Nssdを平均値(Nsave)で除算した以下の値を歩数の変動係数とする。
Nssd/Nsave×100
28日間の装着時間の標準偏差Nisdを算出する。また、計測された装着時間を28日間で平均した平均値(Niave)を算出する。そして、標準偏差Nisdを平均値Niaveで除算した以下の値を装着時間変動係数とする。
Nisd/Niave×100
28日間の活動強度の標準偏差Npsdを算出する。また、計測された活動強度を28日間で平均した平均値(Npave)を算出する。そして、標準偏差Npsdを平均値Npaveで除算した以下の値を活動強度変動係数とする。
Npsd/Npave×100
各段階(0〜9及び0.5)の強度で歩行が行われた頻度(Nf0、Nf0.5、Nf1、Nf2、Nf3、Nf4、Nf5、Nf6、Nf7、Nf8、Nf9)を毎日カウントする。また、カウントされた頻度の標準偏差を強度毎に算出する(Nsd0、Nsd0.5、Nsd1、Nsd2、Nsd3、Nsd4、Nsd5、Nsd6、Nsd7、Nsd8、Nsd9)。そして、上記標準偏差(Nsd0、Nsd0.5、Nsd1、Nsd2、Nsd3、Nsd4、Nsd5、Nsd6、Nsd7、Nsd8、Nsd9)を(3)に示した各強度の28日間の平均値(Nf0ave、Nf0.5ave、Nf1ave、Nf2ave、Nf3ave、Nf4ave、Nf5ave、Nf6ave、Nf7ave、Nf8ave、Nf9ave)で除算して100を乗じ、各段階の活動強度の頻度の変動係数とする。
Nsd0/Nf0ave×100、Nsd0.5/Nf0.5ave×100、Nsd1/Nf1ave×100、Nsd2/Nf2ave×100、Nsd3/Nf3ave×100、Nsd4/Nf4ave×100、Nsd5/Nf5ave×100、Nsd6/Nf6ave×100、Nsd7/Nf7ave×100、Nsd8/Nf8ave×100、Nsd9/Nf9ave×100
ただし、上記Nsd0、Nf0aveは、いずれも被験者が活動情報取得装置30を装着していない時間帯の情報を除くものとする。
(8) 42;年齢
(9) 43;身長
(10) 44;体重
さらに、本実施形態は、活動の一日のうちの活動量の分布に関する情報をも活動情報として推定に使用することができる。活動量の分布とは、例えば、「朝活動時間割合」、「昼活動時間割合」及び「夜活動時間割合」等によって表される。朝活動時間割合は、3時から9時に行われた歩行の歩数が1日の歩数に占める割合を示す。昼活動時間割合は、9時から18時に行われた歩行の歩数が1日の歩数に占める割合を示す。夜活動時間割合は、18時から3時に行われた歩行の歩数が1日の歩数に占める割合を示す。
(数1)
(男性)
推定歩行速度(Km/h)=0.862×(活動強度平均値)+0.035×(身長(cm))−4.705 ...式(1)
(数2)
(女性)
推定歩行速度(Km/h)=0.684×(活動強度平均値)+1.851 ...式(2)
(出典:高柳直人ら「活動量計を用いた日常歩行速度とADL低下に関する研究」 厚生の指標. 2014; 61(4):15-20)
なお、METsでは、例えば、3METsを67m/分で平地を歩く程度、3.3METsを81m/分で平地を歩く程度、3.8METsを94m/分で平地を歩く程度、4METsを95m〜100m/分で平地を歩く程度、5METsを107m/分で平地を速歩する程度と定めている(出典:厚生労働省「健康づくりのための運動指針2006」)。
本実施形態の回帰分析は、市販の統計計算用のソフトウェアを使って行った。回帰分析には、多変量回帰分析や、ロジスティック回帰分析が使用される。回帰分析では、説明変数に使用されるパラメータに変数増加法、変数減少法あるいはその両方を行って組み合わせを変えながら正答率が高くなるパラメータが選択される。さらに、パラメータに付される係数は適宜選択される。
このような工程は、被験者に対する問診や検査によって行われる。つまり、この工程は、被験者の鬱病や認知症の有無を実測するものといえる。
(D)(C)で実測された鬱病や認知症の有無を目的変数としてロジスティック回帰分析を行い、(B)で取得された活動情報の少なくとも1つ、あるいは身長、体重といったパラメータを説明変数に含む回帰式を算出する。
なお、(D)の工程においては、(C)で行った実測の結果により明らかに認知症や鬱病の症状が認められる者のデータと認められない者のデータの両方を抽出しておく。具体的には、(C)の工程の結果、被験者から「なし」、「現病(服薬なし)」、「現病(服薬あり)」及び「既往」の4つのグループを抽出し、「なし」とされた被験者を明らかに症状のない者とする。また、「現病(服薬なし)」、「現病(服薬あり)」とされた被験者を明らかに症状のある者とする。
鬱病、認知症についての疾病関連情報は、表1に示したように、いずれも実測値との間でモデルΧ2検定の値が0.01以下であり、有意であることがわかる。また、鬱病について82.8%、認知症については97.2%の高い的中率を得た。なお、表1に示した疾病関連情報は、男女共通のものである。
本実施形態は、表1から表5の各疾病関連情報の括弧「()」内に利用者のパラメータを入力して演算式を解くことによって利用者の状態情報を得ることができる。また、本実施形態の疾病関連情報は、当然のことながら、表1から表5に示したような一次式の形式に限定されるものではない。疾病関連情報は、利用者の活動情報や身長等を入力して疾病を予測するものであればどのようなものであってもよく、例えば、一次式以外の演算式であってもよいし、テーブルであってもよい。
次に、利用者の疾病の予測結果に基づいて作成されるアドバイス情報を含むメッセージの例について説明する。本実施形態では、上記した疾病関連情報に活動情報を適用して得られた結果得られる疾病のINDEXに基づいて、利用者が行うべき活動に関するアドバイスを含むメッセージを作成する。アドバイスとは、利用者に対して活動の量、強度、時間帯等を示唆する情報であり、メッセージは、アドバイス情報に適宜必要な情報を付加したものである。アドバイス情報に付加される情報としては、例えば、図3、図4に示したものがある。
図3は、複数の疾病について疾病のINDEXを五角形のグラフで示した例を示す図である。図3に示した例では、認知症INDEX、鬱病INDEX、変形関節症INDEX、骨粗鬆症INDEX、膝痛INDEXの5つを五角形の5つの各頂点で示している。各INDEXの値は、五角形の中心から離れるほど大きくなっている。図3に示した例では、複数の疾病等について予測結果を示すと共に、そのバランスを利用者が把握することができる。
例えば、利用者の認知症INDEXが0.5から所定の閾値(図中に「○」で示す)の範囲にある場合、利用者は「認知症危険度」(左欄)から自身が認知症を発症する可能性が60%程度であると判定する。「認知症危険度レベル」(中央欄)は、認知症を発症する可能性を五角形のグラフで示している。認知症危険度レベルでは、「2」で示した領域が認知症発症の可能性が60%であることを示し、「1」で示した領域が認知症発症の可能性0%、「3」で示した領域が認知症発症の可能性80%をそれぞれ示している。認知症危険度レベルにおいては、例えば、利用者の認知症予測に対応する領域が所定の色に着色されて表示されるようにしてもよい。さらに、図5の例は、さらに、利用者の認知症発症の予測をA、B、Cのレベルで評価した「認知症危険度ランク」(右欄)が含まれる。
また、本実施形態は、利用者が、例えば、3時間の間に行う歩行の歩数や強さを入力部21から入力することができる。このようにすると、メッセージ作成部133は、増やすべき歩数や活動強度が利用者の設定した上限値を上回った場合、上限値に設定された歩数や強度の歩行をするように利用者にアドバイスするメッセージを作成する。このような処理によれば、利用者の望む疾病予測情報と現状との差分が比較的大きくても、時間をかけることによって利用者の苦痛を抑えながら疾病を発症する可能性を低減することができる。さらに、メッセージ作成部133は、利用者の疾病等を発症する可能性が十分低くなった場合、例えば、「認知症発症の予兆が低減しました」等のメッセージを作成する。
図5は、本実施形態の疾病予測方法を説明するためのフローチャートである。また、図5のフローチャートは、図2(a)に示した活動情報取得装置30及び疾病予測装置50によって行われる例を示している。このフローチャートでは、利用者の活動情報として活動強度を3時間計測し、計測値の平均値を算出する処理を例示するものとする。また、図5のフローチャートでは、説明の簡単のため、1つの活動情報を一回取得する例を示している。しかし、表1から表3に示すように、本実施形態は、複数種の活動情報を複数回取得する場合も多い。
本実施形態の疾病予測方法では、処理が開始されると、活動情報取得装置30の加速度センサ11が、利用者の活動情報の取得を開始する(ステップS501)。なお、このような処理は、例えば、利用者が予測を望む疾病に応じた時刻に自動的に開始するものであってもよいし、予め定めた所定の時刻に開始するものであってもよい。
「利用者が予測を望む疾病に応じた時刻」とは、例えば、利用者が表1に示した鬱病の予測を望んでいる場合の6時または18時を指す。
なお、メッセージの出力は、図5に示したフローチャートに記載されたタイミングに限定されるものではない。例えば、表1に示した鬱病のように、6時から9時、18時から21時の2回に渡って行われる活動から活動情報を取得する場合、21時までに行われた活動の活動情報から疾病を予測する。そして、予測された疾病の種別に基づいて作成されたメッセージを、例えば、翌日の活動開始時に利用者に提供するようにしてもよい。
また、本実施形態は、時間行動学の原理に基づいて被験者の実測値を考慮した疾病関連情報に活動情報を適用して疾病を予測している。このため、実測値と相関性が高い推定値を得ることができる。
本発明者らは、70歳から93歳の男性1483名、女性1598名を被験者とし、各被験者の鬱病の状態と認知症の状態とを問診によって取得した。また、本発明者らは、被験者の身長、体重、年齢を取得し、身長と体重とからBMIを算出した。
次に、本発明者らは、各被験者に加速度センサを24時間携帯させ、活動情報として被験者の歩行の歩数と強度を取得した。加速度センサによって取得された活動情報は、疾病予測装置としてのコンピュータに出力される。コンピュータは、取得された活動情報や被験者の身長等の情報を使ってロジスティック回帰分析を行って疾病関連情報を作成した。本実施例の疾病関連情報は、pxを算出する一次の回帰式である。この一次の回帰式を用いて求めたpxをlogpx/(1−px)に代入することで被験者xの疾病等の発生率が求まり、この発生率は0から1の数値をとる。
(数3)
疾病関連情報(鬱病:男性)=−3×10−3×(21時から24時に行った歩行の歩数の平均値)−0.576×(6時から9時に行った活動の強度の平均値)−0.65 ...式(3)
(数4)
疾病関連情報(鬱病:女性)=10−3×(3時から6時に行った歩行の歩数の平均値)−0.819×(12時から15時に行った活動の強度の平均値)+0.162×(年齢)+0.018(昼活動時間割合)−12.585 ...式(4)
(数5)
疾病関連情報(認知症:女性)=−0.022×(21時から24時に行った歩行の歩数の平均値)−2.774×(3時から6時に行った活動の強度の平均値)+0.29×(年齢)−23.916 ...式(5)
<1>
少なくとも、予め取得された複数の被験者が行った活動の状況及び当該活動が行われた時間帯に関する被験者活動情報と、前記被験者の身体の状態に関する被験者状態情報と、の関連性を表す疾病関連情報に、利用者が行った活動の状況及び当該活動が行われた時間帯に関する利用者活動情報を適用して前記利用者が発症する疾病または障害を予測する疾病予測工程を含むことを特徴とする、疾病予測方法。
<2>
前記疾病予測工程は、さらに、前記利用者の身長、体重及び年齢の少なくとも一つに関する情報に基づいて前記利用者の疾病を予測する、<1>に記載の疾病予測方法。
<3>
前記被験者活動情報は、前記被験者が一日のうちの特定の時間帯に行った活動の活動量または活動強度に関する情報である、<1>または<2>に記載の疾病予測方法。
<4>
前記被験者活動情報は、前記被験者が行った活動の活動量または活動強度の一日のうちの分散に関する情報である、<1>または<2>に記載の疾病予測方法。
<5>
前記疾病予測工程において行われた予測の結果に基づいて、利用者が行うべき活動に関するアドバイスを含むメッセージを作成するメッセージ作成工程、をさらに含む<1>から<4>のいずれか1項に記載の疾病予測方法。
<6>
少なくとも、予め取得された複数の被験者が行った活動の状況及び当該活動が行われた時間帯に関する被験者活動情報と、前記被験者の身体の状態に関する被験者状態情報と、の関連性を表す疾病関連情報に、利用者が行った活動の状況及び当該活動が行われた時間帯に関する利用者活動情報を適用して前記利用者が発症する疾病または障害を予測する疾病予測ステップを含むことを特徴とする疾病予測プログラム。
<7>
少なくとも、予め取得された複数の被験者が行った活動の状況及び当該活動が行われた時間帯に関する被験者活動情報と、前記被験者の身体の状態に関する被験者状態情報と、の関連性を表す疾病関連情報に、利用者が行った活動の状況及び当該活動が行われた時間帯に関する利用者活動情報を適用して前記利用者が発症する疾病または障害を予測する疾病予測部を備えることを特徴とする疾病予測装置。
<8>
利用者が行った活動の状況及び当該活動が行われた時間帯に関する利用者活動情報を取得する活動情報取得装置と、
前記活動情報取得装置から前記利用者活動情報を入力する入力部と、
前記利用者活動情報に基づいて前記利用者が発症する疾病または障害を予測する疾病予測部と、を備える<7>に記載の疾病予測装置と、
を含むことを特徴とする疾病予測システム。
11・・・加速度センサ
13・・・制御部
15・・・表示部
17・・・タイマ
19・・・関連情報蓄積用メモリ
20,30・・・活動情報取得装置
21・・・入力部
31・・・出力I/F
51・・・入力I/F
131・・・活動情報作成部
132・・・疾病予測部
133・・・メッセージ作成部
Claims (8)
- 少なくとも、予め取得された複数の被験者が行った活動の状況及び当該活動が行われた時間帯に関する被験者活動情報と、前記被験者の身体の状態に関する被験者状態情報と、の関連性を表す疾病関連情報に、利用者が行った活動の状況及び当該活動が行われた時間帯に関する利用者活動情報を適用して前記利用者が発症する疾病または障害を予測する疾病予測工程を含むことを特徴とする、疾病予測方法。
- 前記疾病予測工程は、さらに、前記利用者の身長、体重及び年齢の少なくとも一つに関する情報に基づいて前記利用者の疾病を予測する、請求項1に記載の疾病予測方法。
- 前記被験者活動情報は、前記被験者が一日のうちの特定の時間帯に行った活動の活動量または活動強度に関する情報である、請求項1または2に記載の疾病予測方法。
- 前記被験者活動情報は、前記被験者が行った活動の活動量または活動強度の一日のうちの分散に関する情報である、請求項1または2に記載の疾病予測方法。
- 前記疾病予測工程において行われた予測の結果に基づいて、利用者が行うべき活動に関するアドバイスを含むメッセージを作成するメッセージ作成工程、をさらに含む請求項1から4のいずれか1項に記載の疾病予測方法。
- 少なくとも、予め取得された複数の被験者が行った活動の状況及び当該活動が行われた時間帯に関する被験者活動情報と、前記被験者の身体の状態に関する被験者状態情報と、の関連性を表す疾病関連情報に、利用者が行った活動の状況及び当該活動が行われた時間帯に関する利用者活動情報を適用して前記利用者が発症する疾病または障害を予測する疾病予測ステップを含むことを特徴とする疾病予測プログラム。
- 少なくとも、予め取得された複数の被験者が行った活動の状況及び当該活動が行われた時間帯に関する被験者活動情報と、前記被験者の身体の状態に関する被験者状態情報と、の関連性を表す疾病関連情報に、利用者が行った活動の状況及び当該活動が行われた時間帯に関する利用者活動情報を適用して前記利用者が発症する疾病または障害を予測する疾病予測部を備えることを特徴とする疾病予測装置。
- 利用者が行った活動の状況及び当該活動が行われた時間帯に関する利用者活動情報を取得する活動情報取得装置と、
前記活動情報取得装置から前記利用者活動情報を入力する入力部と、
前記利用者活動情報に基づいて前記利用者が発症する疾病または障害を予測する疾病予測部と、を備える請求項7に記載の疾病予測装置と、
を含むことを特徴とする疾病予測システム。
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