以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的に接続することを意味する。各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示しているとは限らない。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。英数字の連続符号は記号「〜」を用いて略記する。「巻装」は巻いた状態に装うことを意味し、巻き回す意味の「巻回」と同義である。「電流」は、特に明示しない限り「電機子電流」を意味する。径方向の幅を「径方向幅」と呼び、周方向の幅を「周方向幅」と呼ぶ。
〔実施の形態1〕
実施の形態1は図1〜図10を参照しながら説明する。図1に示す回転電機10は、電機子11,回転子13,軸受14,回転軸15などをフレーム12内に有する。この回転電機10は、インナーロータ型の回転電機であって、Interior Permanent Magnet(以下では「IPM」と呼ぶ)モータに相当する。フレーム12の内部または外部には、回転電機10の回転制御(後述する電流位相βの制御を含む)を司る制御部16が設けられる。
「筐体」や「ハウジング」などに相当するフレーム12は、電機子11,回転子13,軸受14,回転軸15などを収容できれば、形状や材質等を問わない。このフレーム12は、少なくとも電機子11を支持して固定するとともに、軸受14を介して回転軸15を回転自在に支持する。本形態のフレーム12は、非磁性体のフレーム部材12a,12bなどを含む。フレーム部材12a,12bは一体成形してもよく、個別に成形した後に固定してもよい。固定は、例えばボルト,ネジ,ピン等のような締結部材を用いる締結や、母材を溶かして溶接を行う接合などが該当する。
「固定子」や「ステータ」などに相当する電機子11は、相巻線11a,電機子鉄心11b,複数のスロット11sなどを含む。「固定子鉄心」や「ステータコア」などに相当する電機子鉄心11bは、図2に示す複数のスロット11sを含む。電機子鉄心11bは磁束が流れればよく、本形態では軟磁性体である多数の電磁鋼板を軸方向に積層して構成する。スロット11sは、「鉄心溝」とも呼ばれ、相巻線11aを収容して巻装するために電機子鉄心11bに設けられた空間部位である。
「電機子巻線」や「ステータコイル」などに相当する相巻線11aは、スロット11sに収容して巻装される。本形態の相巻線11aは、相数を三相とし、巻装形態を集中巻とする。相巻線11aの断面形状は、例えば平角線の四角形状や、丸線の円形状、三角線の三角形状などが該当する。本形態では、後述する鉄心歯(例えば図3に示す幅狭鉄心歯11b2や幅広鉄心歯11b3)に対して、アルファ巻で巻装する。アルファ巻は、相巻線11aの巻始めと巻終わりにかかるリード線が両方とも径方向の端側(本形態では外周側)に設けられる巻装形態である。
「ロータ」に相当する回転子13は、電機子鉄心11bに対向して内径側に設けられるとともに、回転軸15に固定される。すなわち、回転子13と回転軸15は一体的に回転する。回転子13の構成例については後述する。回転子13と電機子11との間には、空隙Gが設けられる。空隙Gは回転子13と電機子11との間で磁束が流れるような数値を設定してよく、本形態では図1に示す空隙長GLとする。
制御部16は、例えば力行時において相巻線11aに流す多相交流を制御したり、回生時において相巻線11aで発生した起電力の利用(例えば蓄電や供給等)を制御したりする。多相交流の相数は、相巻線11aの相数と等しくするとよい。
図2に示す回転電機10は、フレーム12の図示を省略している。電機子11は、上述したように相巻線11a,電機子鉄心11b,スロット11sなどを含む。電機子鉄心11bに設けられた複数のスロット11sには、相巻線11aが収容されて巻装される。電機子鉄心11bの具体的な構成例については、後述する。
回転子13は、界磁巻線を含まず、回転子鉄心13a,永久磁石13b,収容穴13cなどを有する。回転子鉄心13aは、磁束が流れればどのように構成してもよい。本形態では、図1に示すように多数の電磁鋼板を軸方向に積層して構成する。
複数の永久磁石13bは、軸方向に垂直な断面が矩形状の角柱状である。永久磁石13bは、長辺が回転子鉄心13aの周縁に沿うように収容穴13cに収容される。それぞれ永久磁石13bは、径方向に磁化される。周方向に隣り合う永久磁石13bは、径方向に磁化される磁化方向が逆になっている。言い換えると、永久磁石13bで磁化される回転子鉄心13aの周縁部(すなわち磁極部)は、N極とS極が交互にあらわれる。回転子鉄心13a(具体的には収容穴13c)に収容する永久磁石13bの数は、回転電機10の定格や仕様等に応じて適切に設定してよく、本形態では「8」とする。
次に、電機子鉄心11bの構成例について、図3と図4を参照しながら説明する。図3に示す電機子鉄心11bは、バックヨーク11b1,複数の幅狭鉄心歯11b2,複数の幅広鉄心歯11b3などを有する。図2にも示すように、本形態では幅狭鉄心歯11b2および幅広鉄心歯11b3の数をそれぞれ「6」とする。
バックヨーク11b1は、電機子鉄心11bにおける円筒状の部位である。複数の幅狭鉄心歯11b2と複数の幅広鉄心歯11b3は、バックヨーク11b1から径方向に突出して設けられる凸状の部位である。幅狭鉄心歯11b2と幅広鉄心歯11b3は、電機子鉄心11bの周方向に交互に配列して設けられる。電機子鉄心11bは多数の電磁鋼板を積層して構成されているので、結果的にバックヨーク11b1,幅狭鉄心歯11b2および幅広鉄心歯11b3は一体成形される。
複数の幅狭鉄心歯11b2と複数の幅広鉄心歯11b3には、それぞれ相巻線11aが集中巻される。本形態の相数は三相であるので、例えばU相,V相,W相とする。三相の相巻線11aは、U相,V相,W相が周方向に相順に配置されて制御部16に接続される。図2に符号として「U」,「V」,「W」を付したように、本形態の相巻線11aは反時計回りに相順(すなわちU相,V相,W相の順番)で繰り返し配置している。図示を省略するが、時計回りに相順で繰り返し配置してもよい。
幅広鉄心歯11b3に巻かれる相巻線11aの巻数をN1とし、幅狭鉄心歯11b2に巻かれる相巻線11aの巻数をN2とする。全体のトルクTを従来よりも高めるには、0<N2≦N1の不等式を満たすとよい。巻数N1,N2の上限値に制限は無いが、一本の相巻線11aの断面積S1とスロット11sの断面積S2との関係によって事実上の上限値が定まる。すなわち、(N1+N2)×S1≦S2の不等式を満たす必要がある。
図3に示す電機子11において、バックヨーク11b1は径方向幅W1の幅(あるいは厚み)を有する。幅狭鉄心歯11b2は周方向幅W2の幅を有する。幅広鉄心歯11b3は周方向幅W3の幅を有する。径方向幅W1と周方向幅W2との関係や、周方向幅W2と周方向幅W3との関係は後述する。なお、周方向幅W2は、図3に示す幅狭鉄心歯11b2の鉄心歯本体部b2aにかかる周方向の幅を意味し、端部から周方向に延びる鍔部b2bを含まない。周方向幅W3は、図4に示す幅広鉄心歯11b3の鉄心歯本体部b3aにかかる周方向の幅を意味し、端部から周方向に延びる鍔部b3bを含まない。
図3において、周方向に隣り合う幅狭鉄心歯11b2と幅広鉄心歯11b3の間には、開口部11b4が開口する。開口部11b4はスロット11sが開口する部位でもある。開口部11b4に対応する開口角をθとし、極数をpとし、相数をmとするとき、機械角で180°/(p×m)≦θ≦360°/(p×m)の不等式を満たすとよい。本形態では、m=3であるので、60°/p≦θ≦120°/pの関係になる。
幅広鉄心歯11b3は、回転子13に対向する対向面11fに一以上の溝11cが設けられる。本例では、二つの溝11cが設けられ、軸方向(図3では紙面の表裏方向)に延びている。図示を省略するが、幅広鉄心歯11b3は、一つの溝11cを設けてもよく、周方向に沿って三つ以上の溝11cを設けてもよい。
幅広鉄心歯11b3に複数の溝11cを設ける場合には、図4に示すように設ける。図4では、周方向に隣り合う溝11cの間隔を機械角で角度ピッチθpだけあける。電機子11の極数をpとし、相数をmとするとき、θp=360°/(p×m)を満たすとよい。本形態では、m=3であるので、θp=120°/pになる。
図4に示す溝11cは、回転子13に対向する対向面11fに設けられる。溝11cは、溝深11c1の径方向深さと、溝幅11c2の周方向幅を有する。溝深11c1は、回転性能を向上させるため、空隙長GL以上になるように設けるとよい。例えば溝深11c1をdとすると、d≧GLを満たすように設ける。溝幅11c2は、回転性能を向上させるため、空隙長GLの二倍以上になるように設けるとよい。例えば溝幅11c2をwとすると、w≧2×GLを満たすように設ける。
次に、バックヨーク11b1の径方向幅W1と幅狭鉄心歯11b2の周方向幅W2との関係について、図5を参照しながら説明する。図5には、縦軸をトルクTとし、横軸を幅比Wr1としたとき、回転電機10の特性線L1を示す。幅比Wr1は、図3に示す径方向幅W1を周方向幅W2で除した比率である。すなわち、Wr1=W1/W2の関係を満たす。
回転電機10の外形体格を一定、すなわち電機子鉄心11bの外径を一定のもとで、性能が極大となる最適設計をする観点で検討した。この検討により、図5において、1≦Wr1≦2の不等式を満たすと、閾値トルクTth以上のトルクTが得られることを見出した。閾値トルクTthが従来技術で得られる最大トルクならば、回転電機10は従来以上のトルクTが得られる。なお、Wr1<1の範囲はW1<W2の関係になる。この関係では、バックヨーク11b1の径方向幅W1が狭いために磁束が飽和し易くなり、トルクTが低くなると考えられる。Wr1>2の範囲では、バックヨーク11b1の径方向幅W1が広いために、必要な巻線スペースを確保する条件のため、回転子13の径を小さく設計することになり、ひいては小出力となってしまう。回転子13の体格が小さくなると界磁力が弱くなり、また磁界の変化速度も遅くなるからである。結局は、回転電機10のトルクTが低くなると考えられる。
次に、幅狭鉄心歯11b2の周方向幅W2と幅広鉄心歯11b3の周方向幅W3との関係について、図6を参照しながら説明する。図6には、縦軸をトルクTとし、横軸を歯幅比Wr2としたとき、回転電機10の特性線L2を示す。歯幅比Wr2は、図3に示す周方向幅W3を周方向幅W2で除した比率である。すなわち、Wr2=W3/W2の関係を満たす。
図6において、1.5≦Wr2≦2.7の不等式を満たすと、従来トルクTold以上のトルクTが得られる。従来トルクToldは、従来技術で得られる最大トルクである。不等式を満たす範囲で周方向幅W2と周方向幅W3を設定すれば、回転電機10は従来以上のトルクTが得られる。シミュレーションでは、Wr2=1.9のときに最大トルクTmaxが得られ、最大トルクTmaxは従来トルクToldよりも30%程度増加した。
なお、1≦Wr2<1.5の範囲では、幅狭鉄心歯11b2と幅広鉄心歯11b3の周方向幅に差が無くなる。本来は、鉄心幅の広い方のグループを主として、回転子13に備えた永久磁石13bの磁束が集中して均整のとれた正常な三相の電機子11の作用をする。鉄心歯の周方向幅に差が無くなれば、永久磁石13bの磁束が分散して均整が崩れるため、トルクTは得られ難くなると考えられる。Wr2>2.7の範囲では、特許文献1に記載の従来技術と同様に、幅狭鉄心歯11b2に磁束が流れにくく、漏れ磁束が増えてトルクTが低くなると考えられる。Wr2<1の範囲は、幅狭鉄心歯11b2の周方向幅W2と幅広鉄心歯11b3の周方向幅W3を逆に入れ替えた場合と同じである。
次に、相巻線11aに電流を流して得られる磁束の流れについて、図7〜図9を参照しながら説明する。図7には、ある時点において回転電機10に備える電機子11と回転子13に流れる磁束を示す。
図7に示す回転電機10では、回転子13の磁極の進行方向で斜向かいに位置するときの幅広鉄心歯11b3と幅狭鉄心歯11b2に非常に多くの磁束が集中している。回転子13の磁極と真向いに位置するときの幅広鉄心歯11b3と幅狭鉄心歯11b2には、磁束は少なく抑制されている。ゴムひもに見立てられる磁束線は収縮力が働いて吸引力を発揮すると考えられるので、限られた磁束の原資を回転方向の磁気力、すなわちトルクTに有効に作用させていることを示している。当然のことながら、相巻線11aへの通電によって電機子11には回転磁界が生成されるので、図7に示す磁束の流れも回転磁界に追従して変化する。
図7に示す回転子13は反時計回りに回転する例であり、溝11cの回転方向先である非溝部位Kに磁束が集中して流れている。よって、回転子13と非溝部位Kとの間で吸引力がより大きく作用しているのは明らかである。
図8には、ある時点において従来の回転電機20に備える電機子21と回転子13に流れる磁束を示す。電機子21は、幅狭鉄心歯11b2と同等の鉄心歯21b2を有し、相巻線21aをスロット21sに全節分布巻きをしている。磁束は回転方向前方の鉄心歯に集中しているが、集中する鉄心歯の数が回転電機10の1/3であるため、磁束量は回転電機10よりも少ない。しかも、磁束は真向いに位置する鉄心歯や回転後方に位置する鉄心歯にも流れているので、限られた総磁束が有効にトルクとして作用しておらず、回転電機10よりも低いものとなっている。
図9には、ある時点において従来の回転電機30に備える電機子31と回転子13に流れる磁束を示す。電機子31は、幅広鉄心歯11b3と同等の鉄心歯を有し、相巻線31aをスロット31sに短節巻している。回転電機10や回転電機20と同様に、回転子13の前方の斜向かいに位置する鉄心歯に磁束は集中しているものの、その鉄心歯の本数割合は全体に対して少ない。また、斜向かいに位置していない鉄心歯への磁束の無駄な流れが比較的多い。そのためトルクTは回転電機10よりも低い。
上述した回転電機10,20,30でそれぞれ得られるトルクTの特性について、同じ条件でシミュレーションした結果を図10に示す。図10には、縦軸をトルクTとし、横軸を電流位相βとしたときの特性線を示す。回転電機10は太線で示す特性線L11,L12,L13が該当する。回転電機20は中太線で示す特性線L21,L22,L23が該当する。回転電機30は細線で示す特性線L31,L32,L33が該当する。実線で示す特性線L11,L21,L31はトータルトルクの特性である。一点鎖線で示す特性線L12,L22,L32はマグネットトルクの特性である。二点鎖線で示す特性線L13,L23,L33はリラクタンストルクの特性である。
図10において、回転電機10の特性線L11は、電流位相β3で最大のトルクT3を得ている。回転電機20の特性線L21は、電流位相β2で最大のトルクT2を得ている。回転電機30の特性線L31は、電流位相β1で最大のトルクT1を得ている。図10によって明らかなように、T3>T2>T1である。
上記の特性が得られる要因は、マグネットトルクにあり、幅狭鉄心歯11b2および幅広鉄心歯11b3を介して電機子11に磁束が流れるためと考えられる。特性線L12,L22,L32を比較してみると、全般的にL12>L22>L32の大きさで推移している。リラクタンストルクは、特性線L33が全般的に特性線L13,L23よりも大きいものの、マグネットトルクに比べてトルク差が小さい。
上述した実施の形態1によれば、以下に示す各作用効果を得ることができる。
(1)電機子11の電機子鉄心11bは、バックヨーク11b1から径方向に突出して相巻線11aが集中巻される複数の幅広鉄心歯11b3と、バックヨーク11b1から径方向に突出して幅広鉄心歯11b3よりも周方向の幅が狭い複数の幅狭鉄心歯11b2とを有する。幅広鉄心歯11b3と幅狭鉄心歯11b2とは、電機子鉄心11bの周方向に交互に配列して設けられる。バックヨーク11b1の径方向の幅をW1とし、幅狭鉄心歯11b2の周方向の幅をW2とするとき、1≦(W1/W2)≦2の不等式を満たす。この構成によれば、幅広鉄心歯11b3に巻かれた相巻線11aに通電して発生する磁束は、バックヨーク11b1を経て幅狭鉄心歯11b2に流れ易くなり、漏れ磁束が少なくなる。よって、幅狭鉄心歯11b2と回転子13との間で流れる磁束が従来よりも増え、リラクタンストルクが得られ易くなり、トルクTを従来よりも高めることができる。
(2)幅広鉄心歯11b3に加えて、幅狭鉄心歯11b2にも相巻線11aが集中巻される。幅広鉄心歯11b3と幅狭鉄心歯11b2とに巻かれた相巻線11aは、複数相(本形態ではU相,V相,W相)が周方向に相順に配置される。この構成によれば、複数相の相巻線11aが幅広鉄心歯11b3と幅狭鉄心歯11b2とで周方向に相順に配置されるので、複数相の相巻線11aに流す電流の制御が容易になる。また幅狭鉄心歯11b2にも相巻線11aが巻かれるので、より多くの起磁力を確保することができる。
(3)幅広鉄心歯11b3の周方向の幅をW3とするとき、1.5≦(W3/W2)≦2.7の不等式を満たす。この構成によれば、幅広鉄心歯11b3と幅狭鉄心歯11b2とに磁束を最適に流せるので、トルクTを従来よりも確実に高めることができる。
(4)幅広鉄心歯11b3に巻かれる相巻線11aの巻数をN1とし、幅狭鉄心歯11b2に巻かれる相巻線11aの巻数をN2とするとき、0<N2≦N1の不等式を満たす。この構成によれば、幅広鉄心歯11b3における起磁力を大きく確保するとともに、幅狭鉄心歯11b2でも起磁力を確保することができ、全体のトルクTを従来よりも高めることができる。
(5)幅広鉄心歯11b3は、回転子13に対向する対向面11fに設けられた一以上の溝11cを有する。溝11cは、軸方向に延びている。この構成によれば、溝11cがある溝部位は磁気抵抗が高くて磁束が流れ難いが、溝11cが無い非溝部位Kは回転子13との間で磁束が流れる。そのため、回転子13の磁極が溝11cに達すると、回転方向先の非溝部位Kとの間で磁束が流れようとして吸引力が作用する。したがって、回転性能を向上させることができる。
(6)幅広鉄心歯11b3は、複数の溝11cを有する。周方向に隣り合う溝11cは、極数をpとし、相数をmとするとき、機械角で360°/(p×m)の角度ピッチθpになるように設けられる。この構成によれば、極数pと相数mに合わせた溝11cが設けられるので、回転性能を確実に向上させることができる。
(7)溝11cの深さである溝深11c1は、空隙長GL以上になるように設けられる。この構成によれば、溝11c(すなわち溝部位)の磁気抵抗を非溝部位Kよりも高く確保することで、回転子13の磁極が回転方向先の非溝部位Kとの間で吸引力がより大きく作用するようになる。したがって、回転性能を確実に向上させることができる。
(8)溝11cの周方向の幅である溝幅11c2は、空隙長GLの二倍以上になるように設けられる。この構成によれば、溝11c(すなわち溝部位)の磁気抵抗を非溝部位Kよりも高く確保することで、回転子13の磁極が回転方向先の非溝部位Kとの間で吸引力がより大きく作用する。したがって、回転性能を確実に向上させることができる。
(9)周方向に隣り合う幅広鉄心歯11b3と幅狭鉄心歯11b2との間に開口する開口部11b4は、開口部11b4に対応する開口角をθとし、極数をpとし、相数をmとするとき、機械角で180°/(p×m)≦θ≦360°/(p×m)の不等式を満たす。開口部11b4はスロット11sが開口する部位でもある。この構成によれば、幅広鉄心歯11b3と幅狭鉄心歯11b2に集中巻し易くするためのスペースを確保するとともに、幅広鉄心歯11b3と幅狭鉄心歯11b2との間で直接的に磁束が流れる漏れ磁束を防止できる。
(10)相巻線11aは、集中巻の一つであるアルファ巻で行った。この構成によれば、スロット11sに巻装される相巻線11aの占積率が高く、巻数Nが多くなって起磁力を高めることができる。
(11)回転電機10は、電機子11と、回転子13とを有する。この構成によれば、幅狭鉄心歯11b2と回転子13との間で流れる磁束を従来よりも増やし、トルクTを従来よりも高めた回転電機10を提供することができる。
〔実施の形態2〕
実施の形態2は図11を参照しながら説明する。なお図示および説明を簡単にするため、特に明示しない限り、実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。よって、主に実施の形態1と相違する点を説明する。
図11に示す回転電機10は、図1,図2に示す回転電機10に代わる構成である。図11は、図2と同様の断面図である。図11に示す回転電機10は、図1と同様に、電機子11,回転子13,軸受14,回転軸15などをフレーム12内に有する。図11に示す回転電機10は、電機子11(具体的には相巻線11a)の構成が図2に示す回転電機10と相違する。
図11に示す相巻線11aは、幅広鉄心歯11b3には集中巻するが、幅狭鉄心歯11b2には巻かない。幅狭鉄心歯11b2に巻かない分だけ、スロット11sにスペースができるので、幅広鉄心歯11b3に集中巻する巻数Nが増える。よって、相巻線11aへの通電に伴って幅広鉄心歯11b3に生じる起磁力を増やせる。
上述した実施の形態2によれば、幅狭鉄心歯11b2に相巻線11aを巻くか否かの相違に過ぎず、回転子13との間で磁束が流れる電機子鉄心11bは同じである。図5に示す特性線L1や図6に示す特性線L2が得られるので、(2)と(4)を除いて実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について実施の形態1,2に従って説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
上述した実施の形態では、図1に示すように、インナーロータ型の回転電機10に適用する構成とした。この形態に代えて、アウターロータ型の回転電機に適用する構成としてもよい。アウターロータ型の回転電機では、電機子11を内径側に配置し、回転子13を外径側に配置する。電機子11と回転子13の配置が相違するに過ぎないので、実施の形態1,2と同様の作用効果が得られる。
上述した実施の形態1,2では、図1に示すように、ラジアルギャップ型の回転電機10に適用する構成とした。この形態に代えて、アキシャルギャップ型の回転電機に適用する構成としてもよい。アキシャルギャップ型では、電機子11と回転子13とをアキシャル方向(すなわち軸方向)に配置する。電機子11と回転子13の配置が相違するに過ぎないので、実施の形態1,2と同様の作用効果が得られる。
上述した実施の形態1,2では、幅狭鉄心歯11b2や幅広鉄心歯11b3にアルファ巻で相巻線11aを巻装する構成とした。この形態に代えて、他の集中巻で相巻線11aを巻装する構成としてもよい。他の集中巻には、例えばn条巻(nは正の整数)などがある。n条巻は、n本の相巻線11aを束ねて螺線状に巻く巻装形態であり、一条巻,二条巻,三条巻などが該当する。巻装形態が相違するに過ぎないので、実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
上述した実施の形態1,2では、図1に示すように多数の電磁鋼板を軸方向に積層することで電機子鉄心11bおよび回転子鉄心13aを構成した。この形態に代えて、電機子鉄心11bおよび回転子鉄心13aのうちで少なくとも一方は、例えば円柱状の磁性体を加工して構成してもよく、鋳造によって構成してもよく、冶金によって構成してもよい。加工には、例えば切削工具による切削加工、放電による放電加工、レーザ光によるレーザ加工などが該当する。電機子鉄心11bや回転子鉄心13aの構成が相違するに過ぎないので、実施の形態1,2と同様の作用効果を得ることができる。
上述した実施の形態1,2では、永久磁石13bの数を回転子13の極数pと同数の「8」とし、幅狭鉄心歯11b2および幅広鉄心歯11b3の数をそれぞれ「6」とする構成である。この形態に代えて、永久磁石13bの数を極数pの半数(すなわちコンシクエント極構成)としたり、また極数pを任意の数値に設定したりしてもよい。幅狭鉄心歯11b2および幅広鉄心歯11b3の数は、それぞれ回転子13の極数pの3/4の数であれば任意に設定できる。単に回転子13の機械的回転に対して電気的回転の周期が異なり、永久磁石13b,幅狭鉄心歯11b2および幅広鉄心歯11b3の数が相違するに過ぎないので、実施の形態1,2と同様の作用効果が得られる。
上述した実施の形態1,2では、回転子鉄心13aに埋め込む複数の永久磁石13bを単体で構成した。この形態に代えて、複数の永久磁石13bのうちで一以上の永久磁石13bは、複数の分割磁石を含む複合体で構成してもよい。複合体の永久磁石は、全体として単体の永久磁石と同様に機能する。一以上の永久磁石13bが単体であるか複合体であるかの相違に過ぎないので、実施の形態と同様の作用効果が得られる。
上述した実施の形態1,2では、永久磁石13bの断面を矩形状とし、永久磁石13bの長辺が回転子鉄心13aの周縁に沿うように収容して回転子鉄心13aに埋め込む構成とした。この形態に代えて、他の断面形状の永久磁石13bを埋め込む構成としてもよく、他の姿勢で永久磁石13bを埋め込む構成としてもよい。他の断面形状は、例えば四角形状以外の多角形状(すなわち三角形状や五角形状以上の形状)、円や楕円を含む円形状、複数の形状を合成して得られる合成形状などが該当する。他の姿勢は、長辺が径方向に沿う放射状に埋め込む姿勢や、長辺が径方向と交差する方向に沿って埋め込む姿勢などが該当する。単に永久磁石13bの断面形状や姿勢が相違するに過ぎないので、実施の形態1,2と同様の作用効果が得られる。
上述した実施の形態1,2では、IPMモータの機能を実現するように、永久磁石13bを回転子鉄心13aに埋め込んで回転子13を構成した。この形態に代えて、Surface Permanent Magnet(以下では「SPM」と呼ぶ)モータの機能を実現するように、電機子11と径方向に対向する回転子鉄心13aの周面に永久磁石13bを貼り付けて回転子13を構成してもよい。回転子鉄心13aに永久磁石13bを設ける位置が相違するに過ぎないので、実施の形態1,2と同様の作用効果が得られる。なお、IPMモータはSPMモータよりも高速回転や高トルクが得られる。これに対して、SPMモータはIPMモータよりも有効磁束量が大きくなってトルクリプルが小さくなる。
上述した実施の形態1,2では、複数相や多相交流として三相(すなわちm=3)を用いる構成とした。この形態に代えて、例えば四相,六相,十二相などのように、四相以上を用いてもよい。ただし、多くても数十相である。相数が相違するに過ぎないので、実施の形態1,2と同様の作用効果が得られる。
上述した実施の形態1,2では、複数相にU相,V相,W相を適用した。この形態に代えて、他の複数相を適用してもよい。他の複数相は、例えばX相,Y相,Z相や、A相,B相,C相,D相,E相,F相などが該当する。単に複数相として割り当てる相の名称が相違するに過ぎないので、実施の形態1,2と同様の作用効果が得られる。