JP2018052953A - インフルエンザウイルスワクチンおよびその使用 - Google Patents

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Abstract

【課題】インフルエンザヘマグルチニンステムドメインを用いたインフルエンザウイルスワクチンの提供。【解決手段】(a)HA1C末端ステムセグメントに0〜50アミノ酸残基の結合配列により共有結合しているHA1N末端ステムセグメントを含むインフルエンザヘマグルチニンHA1ドメイン、及び、(b)インフルエンザヘマグルチニンHA2ドメインを含むインフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドであって、前記ヘマグルチニンステムドメインポリペプチドはHA1及びHA2間の連結部におけるプロテアーゼ開裂に耐性で、HA2のAへリックス及びへリックスCDを連結するアミノ酸配列中の1つ以上が野生型インフルエンザHA2ドメインと比較して変異しており、前記HA1及びHA2ドメインは、H1、H5、及び、H3から選択されるインフルエンザAウイルス亜型に由来するインフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチド。【選択図】なし

Description

本発明は、医薬の分野に関する。本明細書において、インフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチド、ヘマグルチニンステムドメインポリペプチドを提供する方法、それを含む組成物、それを含むワクチンならびに特にインフルエンザの検出、予防および/または治療におけるそれらの使用方法が提供される。
インフルエンザウイルスは、主要なヒト病原体であり、無症状感染から死亡をもたらし得る原発性ウイルス肺炎まで重症度に幅がある呼吸器疾患(一般に「インフルエンザ(influenza)」または「インフルエンザ(the flu)」と称される)を引き起こす。感染の臨床効果は、インフルエンザ株の病原性ならびに宿主の曝露、既往歴、年齢、および免疫状態により変動する。毎年、世界中で約10億人の人々がインフルエンザウイルスによる感染を受け、3〜5百万症例の重病および推定300,000から500,000のインフルエンザ関連死をもたらすことが推定されている。これらの感染の大部分は、H1またはH3ヘマグルチニン亜型を担持するインフルエンザAウイルスに起因し得、インフルエンザBウイルスからの寄与は小さく、したがって、3つ全ての代表物は季節性ワクチンに含まれる。現在の予防接種実施は、有効な季節性インフルエンザワクチンの適時産生を可能とするための循環インフルエンザウイルスの早期同定に依存する。次の季節の間に優性となる株の予測の固有の困難性とは別に、抗ウイルス耐性および免疫回避も、現在のワクチンが罹患および死亡を予防することができない一因である。これに加え、病原体保有動物から生じ、ヒトからヒトへの拡散を増加させるようにリアソートされた高度に病原性のウイルス株により引き起こされる流行病の可能性は、グローバルヘルスにとって顕著で現実的な脅威となる。
インフルエンザAウイルスは、天然に広く分布しており、種々の鳥類および哺乳動物に感染し得る。インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)の科に属するエンベロープRNAウイルスである。これらのゲノムは、11の異なるタンパク質、1つの核タンパク質(NP)、3つのポリメラーゼタンパク質(PA、PB1、およびPB2)、2つのマトリックスタンパク質(M1およびM2)、3つの非構造タンパク質(NS1、NS2、およびPB1−F2)、および2つの外部糖タンパク質:ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)をコードする8つの一本鎖RNAセグメントからなる。ウイルスは、HAおよびNAタンパク質の抗原構造の差に基づき分類され、それらの異なる組合せは、規定のインフルエンザウイルス株にさらに分類されるユニークなウイルス亜型を表す。全ての公知の亜型は鳥類において見出すことができるが、現在循環するヒトインフルエンザA亜型は、H1N1およびH3N2である。系統発生分析は、ヘマグルチニンの2つの主群への下位分類を実証した:とりわけ系統発生グループ1におけるH1、H2、H5およびH9亜型およびとりわけ系統発生グループ2におけるH3、H4およびH7亜型。
インフルエンザB型ウイルス株は、厳密にはヒトである。インフルエンザB型ウイルス株内のHAにおける抗原変異は、A型株内で観察されるものよりも小さい。2つの遺伝的および抗原的に区別されるインフルエンザBウイルスの系統は、B/Yamagata/16/88(B/Yamagataとも称される)およびB/Victoria/2/87(B/Victoria)系統により表わされるとおり、ヒトにおいて循環している(Ferguson et al.,2003)。インフルエンザBウイルスにより引き起こされる疾患のスペクトルは、インフルエンザAウイルスにより引き起こされるものよりも一般に軽度であるが、インフルエンザB感染について入院を要する重病が依然として頻
繁に観察される。
インフルエンザを中和する抗体が主としてヘマグルチニン(HA)に対して指向されることは公知である。ヘマグルチニンまたはHAは、ウイルスコートにアンカリングされ、二重の機能を有する三量体糖タンパク質であり:それは細胞表面受容体シアル酸への結合を担い、取り込み後、それはウイルスおよびエンドソーム膜の融合を媒介し、細胞の細胞質ゾル中でのウイルスRNAの放出をもたらす。HAは、大型の頭部ドメインおよびより小型のステムドメインを含む。ウイルス膜への付着は、ステムドメインに連結されたC末端アンカリング配列により媒介される。タンパク質は、特定のループで翻訳後開裂されて2つのポリペプチドHA1およびHA2を生じさせる(全配列は、HA0と称される)。膜遠位頭部領域は、主としてHA1に由来し、膜近位ステム領域は、主としてHA2に由来する(図1)。
季節性インフルエンザワクチンを毎年アップデートしなければならない理由は、ウイルスの大きい変異性である。ヘマグルチニン分子において、この変異は、抗原ドリフトおよびシフトが多数の異なるバリアントをもたらした頭部ドメイン中で特に顕在化される。これは、免疫優性の区域でもあるため、ほとんどの中和抗体はこのドメインに対して指向され、受容体結合を妨げることにより作用する。頭部ドメインの免疫優性および大きい変異の組合せは、なぜ特定の株による感染が他の株に対する免疫をもたらさないかも説明し:第1の感染により誘発される抗体は、一次感染のウイルスと密接に関連する限定数の株を認識するにすぎない。
近年、全てまたは実質的に全てのインフルエンザヘマグルチニン球状頭部ドメインを欠くインフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドが記載されており、ステムドメインポリペプチドの1つ以上の保存エピトープに対する免疫応答を生成するために使用されている。ステムドメインポリペプチドのエピトープは、球状頭部ドメインの高度に免疫原性の領域よりも免疫原性でなく、したがってステムドメインポリペプチド中の球状頭部ドメインの不存在がステムドメインポリペプチドの1つ以上のエピトープに対する免疫応答の発現を許容し得ると考えられている(Steel et al.,2010)。したがって、Steel et al.は、A/Puerto Rico/8/1934(H1N1)およびA/HongKong/1968(H3N2)株のHA1のアミノ酸残基53から276をHA一次配列から欠失させ、これを短いフレキシブル結合配列GGGGにより置き換えることにより新規分子を作出した。H3HK68構築物によるマウスのワクチン接種は、グループ1のHAと交差反応性の抗血清を誘発しなかった。さらに、以下の実施例において示されるとおり、ステムドメインポリペプチドは高度に不安定であり、ステム領域中の保存エピトープに結合することが示された抗体の結合の欠落により証明されるとおり、正確な立体構造を採用しなかった。
さらに、Bommakanti et al.(2010)は、HA2のアミノ酸残基1〜172、7アミノ酸リンカー(GSAGSAG)、HA1のアミノ酸残基7〜46、6アミノ酸リンカーGSAGSAに続くHA1の残基290〜321を、HA1中の突然変異V297T、I300E、Y302TおよびC305Tとともに含むHA2ベースポリペプチドを記載した。設計は、H3HA(A/HongKong/1968)の配列をベースとした。このポリペプチドは、H3亜型内の別のインフルエンザウイルス株に対する交差保護を提供したにすぎなかった(A/Phil/2/82に対して提供したが、H1亜型(A/PR/8/34に対しては提供しなかった)。
したがって、強固な広域中和抗体応答の産生を刺激し、広範な現在および将来のインフルエンザウイルス株(季節性および流行性の両方)に対する保護を提供する、特にインフルエンザの有効な予防および治療のために系統発生グループ1および/またはグループ2
内の1つ以上のインフルエンザAウイルス亜型に対する保護を提供する安全で有効なユニバーサルワクチンが依然として必要とされている。
本明細書において、インフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチド、ステムドメインポリペプチドを提供する方法、それを含む組成物、それを含むワクチンおよびそれらの使用方法が提供される。
第1の態様において、本発明は、インフルエンザ(HA)ステムドメインポリペプチドと称される、インフルエンザヘマグルチニンステムドメインを含み、球状頭部を欠く新規免疫原性ポリペプチドを提供する。ポリペプチドは、対象、特にヒト対象に投与された場合に免疫応答を誘導し得る。本発明のポリペプチドは、膜近位ステムドメインHA分子の保存エピトープを、膜遠位頭部ドメイン中に存在する優性エピトープの不存在下で免疫系に提示する。この目的のため、頭部ドメインを構成するHA0タンパク質の一次配列の一部を除去し、残留アミノ酸配列を直接的にまたは、一部の実施形態において、短いフレキシブル結合配列(「リンカー」)を導入することにより再連結させてアミノ酸鎖の連続性を回復させる。得られた配列を、HA0分子の残留部分の天然三次元構造を安定化する規定の突然変異を導入することによりさらに改変する。免疫原性ポリペプチドは、インフルエンザウイルスの全長HA1および/またはHA2を含まない。
インフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドは、ヒトインフルエンザワクチン産生に一般に使用されるインフルエンザウイルス株のHAをベースとする。特に、ポリペプチドは、H1、H5および/またはH3亜型のインフルエンザAウイルスのHAをベースとする。
ある実施形態において、本発明は、(a)HA1C末端ステムセグメントに0〜50アミノ酸残基の結合配列により共有結合しているHA1N末端ステムセグメントを含むインフルエンザヘマグルチニンHA1ドメイン、および(b)インフルエンザヘマグルチニンHA2ドメインを含むインフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドであって、HA1およびHA2間の連結部におけるプロテアーゼ開裂に耐性であり、HA2のAへリックスおよびへリックスCDを連結するアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸が野生型インフルエンザHA2ドメインと比較して突然変異しているヘマグルチニンステムドメインポリペプチドを提供する。好ましくは、HA1およびHA2ドメインは、H1、H5およびH3亜型からなる群から選択されるインフルエンザAウイルスに由来する。
本発明のポリペプチドは、図1に示されるへリックスAのC末端残基をへリックスCDのN末端残基に連結するHA2アミノ酸配列中の1つ以上の突然変異を含む。ある実施形態において、前記HA2アミノ酸配列中の1つ以上の疎水性アミノ酸は、親水性アミノ酸、例えば、極性および/もしくは荷電アミノ酸、またはフレキシブルアミノ酸グリシン(G)により置換されている。
ある実施形態において、HA1N末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸1〜xを含み、HA1C末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸y〜末端(すなわち、HA1のC末端アミノ酸)を含む。したがって、ある実施形態において、HA1セグメントの欠失は、x+1位におけるアミノ酸からy−1位におけるアミノ酸(そのアミノ酸を含む)のアミノ酸配列を含む。ある実施形態において、ポリペプチドは、シグナル配列を含まない。したがって、ある実施形態において、HA1N末端セグメントは、HA1のアミノ酸p〜xを含み、pは、成熟HA分子の最初のアミノ酸である(例えば、配列番号1の場合、p=18)。当業者は、シグナルペプチド(例えば、配列番号1のアミノ酸1〜17)
を有さない本明細書に記載のポリペプチドを調製することができる。ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、HAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有する。他の実施形態において、本発明のポリペプチドは、HAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含まない。ある実施形態において、細胞内および膜貫通配列、例えば、HA2ドメインの523、524、525、526、527、526、528、529、または530位(またはそれらの相当物)からHA2ドメインのC末端のアミノ酸配列が除去されている。
本発明のポリペプチドは、全長HA1を含まない。
ある実施形態において、ポリペプチドは、グリコシル化されている。
ある実施形態において、免疫原性ポリペプチドは、HA0よりも実質的に小型であり、好ましくは、全てまたは実質的に全てのHAの球状頭部を欠く。好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、360アミノ酸長以下、好ましくは、350、340、330、320、310、305、300、295、290、285、280、275、または270アミノ酸長以下である。ある実施形態において、免疫原性ポリペプチドは、約250から約350、好ましくは、約260から約340、好ましくは、約270から約330、好ましくは、約270から約330アミノ酸長である。
ある実施形態において、ポリペプチドは、HA1およびHA2ドメインがベースとするHAのアミノ酸配列と比較してHA1および/またはHA2ドメイン中の1つ以上の追加の突然変異をさらに含む。
本発明は、
(a)インフルエンザHA0アミノ酸配列を提供するステップ;
(b)HA1〜HA2の開裂部位を除去するステップ;
(c)球状頭部ドメインのアミノ酸配列、特にx+1から出発してy−1位までのアミノ酸配列を前記HA0配列から除去するステップ;
(d)へリックスAのC末端残基をへリックスCDのN末端残基に連結するアミノ酸配列中に1つ以上の突然変異を導入するステップ;および
(e)HAステムドメインポリペプチド中に1つ以上のジスルフィド架橋を導入するステップ
の一般的ステップを含むインフルエンザヘマグルチニンステムポリペプチドを提供する方法も提供する。
このような方法により得られるポリペプチドも、本発明の一部である。
ある実施形態において、ポリペプチドは、グループ1交差中和抗体CR6261(国際公開第2008/028946号パンフレットに開示)および/または抗体CR9114(以下、および同時係属出願のEP11173953.8号明細書に記載)、グループ1およびグループ2インフルエンザAウイルスの両方、ならびにインフルエンザBウイルスに結合し、中和し得る抗体の保存ステムドメインエピトープを含む。したがって、抗体CR6261および/または抗体CR9114に結合するHAステムドメインポリペプチドを提供することは、本発明の別の態様である。一実施形態において、ポリペプチドは、CR8057(国際公開第2010/130636号パンフレットに記載)、H3インフルエンザウイルスのみに結合するモノクローナル抗体に結合しない。ある実施形態において、ポリペプチドは、抗体CR8020、CR8043および/またはCR9114に結合する。本発明に提供されるインフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドは、複数のインフルエンザウイルスAおよび/またはB株に対する免疫応答を生成し得る免疫原性組成物(例えば、ワクチン)における使用に好適である。一実施形態において、イ
ンフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドは、系統発生グループ1および/またはグループ2のインフルエンザAウイルス株、特に系統発生グループ1およびグループ2の両方のインフルエンザウイルス株に対する免疫応答を生成し得る。一実施形態において、ポリペプチドは、同種インフルエンザウイルス株に対する免疫応答を生成し得る。一実施形態において、ポリペプチドは、同一およびまたは異なる亜型の異種インフルエンザウイルス株に対する免疫応答を生成し得る。さらなる実施形態において、ポリペプチドは、系統発生グループ1およびグループ2の両方のインフルエンザウイルス株ならびにインフルエンザBウイルス株に対する免疫応答を生成し得る。
本発明によるポリペプチドは、例えば、インフルエンザウイルス、特に系統発生グループ1もしくは2インフルエンザAウイルスおよび/もしくはインフルエンザBウイルスにより引き起こされる疾患または病態のスタンドアロン療法および/もしくは予防および/もしくは診断において、または他の予防および/もしくは治療処置、例えば、(既存または将来の)ワクチン、抗ウイルス剤および/もしくはモノクローナル抗体との組合せで使用することができる。
さらなる態様において、本発明は、インフルエンザHAステムドメインポリペプチドをコードする核酸分子を提供する。さらに別の態様において、本発明は、免疫原性ポリペプチドをコードする核酸を含むベクターを提供する。
さらなる態様において、本発明は、対象において免疫応答を誘導する方法であって、対象に本発明によるポリペプチドおよび/または核酸分子を投与することを含む方法を提供する。
さらなる態様において、本発明は、本発明によるポリペプチドおよび/または核酸分子を含む免疫原性組成物を提供する。本明細書に提供される免疫原性組成物は、対象、例えば、マウス、フェレットまたはヒトへの組成物の投与を可能とする任意の形態であり得る。具体的な実施形態において、免疫原性組成物は、ヒト投与に好適である。ポリペプチド、核酸分子および組成物は、インフルエンザウイルス疾患を予防および/もしくは治療する方法において、ならびに/または診断目的に使用することができる。組成物は、薬学的に許容可能な担体または賦形剤をさらに含み得る。ある実施形態において、本明細書に記載の組成物は、アジュバントを含み、またはアジュバントとの組合せで投与される。
別の態様において、本発明は、ワクチンとして使用されるポリペプチド、核酸および/または免疫原性組成物を提供する。本発明は、特に、系統発生グループ1および/もしくは2のインフルエンザウイルスA亜型ならびに/またはインフルエンザBウイルスにより引き起こされる疾患または病態の予防および/または治療においてワクチンとして使用される免疫原性ポリペプチド、核酸、および/または免疫原性組成物に関する。
本発明によるポリペプチドの種々の実施形態および使用は、以下の本発明の詳細な説明から明確になる。
天然三量体中に存在する融合前状態のHA単量体のモデルを示す。HA1を淡灰色で示し、HA2を暗灰色で示す。へリックスA(CR6261のエピトープの重要部分)およびへリックスCD(三量体界面の部分)を示し、ループがそれらの二次構造エレメントを連結する。 FACSにより分析された、全長HAおよび本発明によるHAステムドメインポリペプチドへのモノクローナル抗体の結合。A:染色後陽性の細胞の割合。B:平均蛍光強度。H1−Full−Length(配列番号1)、miniHA−cl1(配列番号3)、miniHA−cl1+2(配列番号4)、miniHA−cl1+3(配列番号5)、miniHA−cl1+4(配列番号6)、miniHA−cl1+2+3(配列番号7)、miniHA−cl1+2+3+4(配列番号8)。 FACSにより分析された、全長HAおよびHAステムドメインポリペプチドへのモノクローナル抗体の結合。A:染色後陽性の細胞の割合。B:平均蛍光強度。H1−Full−Length(配列番号1)、miniHA(配列番号2)、miniHA−cl1(配列番号3)。 HEK293F発現全長HAおよび本発明のポリペプチドへの血清抗体の結合。A:平均蛍光強度。B:染色後陽性の細胞の割合。H1−FL(配列番号1)、CL1(配列番号3)、CL1+2(配列番号4)およびCL1+4(配列番号6)。cM2は、陰性対照である。 HEK293F発現全長HAおよび本発明のポリペプチドへの血清抗体の結合。A:平均蛍光強度。B:染色後陽性の細胞の割合。H1−FL(配列番号1)、CL1(配列番号3)、CL1+2(配列番号4)およびCL1+4(配列番号6)。cM2は、陰性対照である。 FACSにより分析された、全長HAおよびHAステムドメインポリペプチドへのモノクローナル抗体の結合。上図:染色後陽性の細胞の割合。下図:平均蛍光強度。H1−Full−Length(配列番号1)、miniHA−cl1(配列番号3)、H1−mini1−cl11(配列番号9)、H1−mini2−cl11(配列番号10)、H1−mini3−cl11(配列番号11)、H1−mini4−cl11(配列番号12)、H1−mini1−cl11+5(配列番号13)、H1−mini2−cl11+5(配列番号14)、H1mini3−cl11+5(配列番号15)、およびH1−mini4−cl11+5(配列番号16)。 HAA/Brisbane/59/2007(配列番号1)、miniHA−cluster1(配列番号3)、Mini2−cluster11(配列番号10)、Mini1−cluster11+5(配列番号13)、Mini2−cluster11+5(配列番号14)およびcM2(コンセンサスM2配列)をコードするDNAによる筋肉内免疫化またはHAA/Brisbane/59/2007(配列番号1)、Mini2−cluster11+5(配列番号14)およびcM2(コンセンサスM2配列)をコードするDNAの遺伝子銃免疫化後のA/Brisbane59/2007からの全長HAのエクトドメインへの血清抗体の結合。パネルA:最初の免疫化から28日後。パネルB:免疫化から49日後。 HAA/Brisbane/59/2007(配列番号1)、miniHA−cluster1(配列番号3)、Mini2−cluster11(配列番号10)、Mini1−cluster11+5(配列番号13)、Mini2−cluster11+5(配列番号14)およびcM2(コンセンサスM2配列)をコードするDNAによる筋肉内免疫化またはHAA/Brisbane/59/2007(配列番号1)、Mini2−cluster11+5(配列番号14)およびcM2(コンセンサスM2配列)をコードするDNAの遺伝子銃免疫化後のA/Brisbane59/2007からの全長HAのエクトドメインへの血清抗体の結合。パネルA:最初の免疫化から28日後。パネルB:免疫化から49日後。 FACSにより分析された、全長HAおよびHAステムドメインポリペプチドへのモノクローナル抗体の結合。上図:染色後陽性の細胞の割合。下図:平均蛍光強度。H1−Full−Length(配列番号1)、miniHA(配列番号2)、H1−mini2−cl11+5(配列番号14)、H1−mini2−cl1+5(配列番号48)、H1−mini2−cl1+5+6(配列番号46)、H1−mini2−cl11+5+6(配列番号47)、H1−mini2−cl1+5+6−trim(配列番号44)、H1−mini2−cl1+5+6−GCN4(配列番号45)。 FACSにより分析された、全長HAおよびHAステムドメインポリペプチドへのモノクローナル抗体の結合。A:染色後陽性の細胞の割合。B:平均蛍光強度。 FACSにより分析された、全長HAおよびHAステムドメインポリペプチドへのモノクローナル抗体の結合。A:染色後陽性の細胞の割合。B:平均蛍光強度。 FACSにより分析された、全長HAおよびHAステムドメインポリペプチドへのモノクローナル抗体の結合。A:染色後陽性の細胞の割合。B:平均蛍光強度。 FACSにより分析された、全長HAおよびHAステムドメインポリペプチドへのモノクローナル抗体の結合。A:染色後陽性の細胞の割合。B:平均蛍光強度。 細胞表面上でのHongKong/1/1968ベース構築物の発現。 細胞表面上でのHongKong/1/1968ベース構築物の発現。 本発明のいくつかのポリペプチドの精製のSDS−PAGE(A−D)およびウエスタンブロット(E−F)分析。ウエスタンブロットについては、hisタグに対して指向される抗体を検出に使用した。 本発明のいくつかのポリペプチドの精製のSDS−PAGE(A−D)およびウエスタンブロット(E−F)分析。ウエスタンブロットについては、hisタグに対して指向される抗体を検出に使用した。 本発明のいくつかのポリペプチドの精製のSDS−PAGE(A−D)およびウエスタンブロット(E−F)分析。ウエスタンブロットについては、hisタグに対して指向される抗体を検出に使用した。 本発明のいくつかのポリペプチドの精製のSDS−PAGE(A−D)およびウエスタンブロット(E−F)分析。ウエスタンブロットについては、hisタグに対して指向される抗体を検出に使用した。 本発明のいくつかのポリペプチドの精製のSDS−PAGE(A−D)およびウエスタンブロット(E−F)分析。ウエスタンブロットについては、hisタグに対して指向される抗体を検出に使用した。 本発明のいくつかのポリペプチドの精製のSDS−PAGE(A−D)およびウエスタンブロット(E−F)分析。ウエスタンブロットについては、hisタグに対して指向される抗体を検出に使用した。 Elisaにより検出された、本発明のいくつかのポリペプチドへのモノクローナル抗体CR9114(A)、CR8020(B)およびポリクローナル抗H1HA血清(C)の結合。 Elisaにより検出された、本発明のいくつかのポリペプチドへのモノクローナル抗体CR9114(A)、CR8020(B)およびポリクローナル抗H1HA血清(C)の結合。 Elisaにより検出された、本発明のいくつかのポリペプチドへのモノクローナル抗体CR9114(A)、CR8020(B)およびポリクローナル抗H1HA血清(C)の結合。 本発明のポリペプチドのグリコシル化のSDS−PAGE(A)およびウエスタンブロット(B)分析。脱グリコシル化時、拡散バンドが予測分子量において集まる。ウエスタンブロットについては、H1HAに対して指向されるポリクローナル血清を検出に使用した。 本発明のポリペプチドのグリコシル化のSDS−PAGE(A)およびウエスタンブロット(B)分析。脱グリコシル化時、拡散バンドが予測分子量において集まる。ウエスタンブロットについては、H1HAに対して指向されるポリクローナル血清を検出に使用した。 本発明のポリペプチドのSEC−MALS分析。トレースを配列番号により標識する。 A:配列番号145を発現する細胞の上清のウエスタンブロット分析。ウエスタンブロットについては、hisタグに対して指向される抗体を検出に使用した。B:Elisaにより検出された、配列番号145へのモノクローナル抗体CR9114(四角)、CR6261(丸)、CR8020(正三角)およびFI6v3(逆三角)の結合。 Hisトラップカラム上での培養物上清からの配列番号145の精製の溶出プロファイル。本発明のポリペプチドは、100mM(ピークA)および200mM(ピークB)のイミダゾールにおいてそれぞれ溶出する。 A−B:サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex200)による配列番号145の精製の溶出プロファイル。ピークAおよびBの両方は、本発明のポリペプチドを含有する。C:サイズ排除クロマトグラフィーからのフラクションのネイティブPAGE分析。大多数の精製タンパク質は、タンパク質の単量体形態と一致する分子量においてランする。D:サイズ排除クロマトグラフィーからのフラクションのSDSPAGE分析。 本出願に記載のDNA免疫化スケジュールの結果としての同種全長タンパク質のエクトドメインに対するIgG応答の経時変化。 同種株H1N1A/Brisbane/59/2007(A)および異種株H1N1A/California/07/2009(B)からの全長ヘマグルチニンのエクトドメインに対する個々のマウスについての最初の免疫化後7週目におけるIgG応答。白丸記号は、アッセイの検出限界未満の値に対応する。種株H1N1A/California/07/2009(B)からの全長ヘマグルチニンのエクトドメインに対する個々のマウスについての最初の免疫化後7週目におけるIgG応答。白丸記号は、アッセイの検出限界未満の値に対応する。 同種株H1N1A/Brisbane/59/2007(A)および異種株H1N1A/California/07/2009(B)からの全長ヘマグルチニンのエクトドメインに対する個々のマウスについての最初の免疫化後7週目におけるIgG応答。白丸記号は、アッセイの検出限界未満の値に対応する。種株H1N1A/California/07/2009(B)からの全長ヘマグルチニンのエクトドメインに対する個々のマウスについての最初の免疫化後7週目におけるIgG応答。白丸記号は、アッセイの検出限界未満の値に対応する。 同種株H1N1A/Brisbane/59/2007(A)、異種株H1N1A/California/07/2009(B)異種亜型株H5N1A/Vietnam/1203/2004(C)および異種亜型株H3N2A/HongKong/1/1968(D)からの全長ヘマグルチニンのエクトドメインに対する個々のマウスについての最初の免疫化後7週目におけるIgG応答。白丸記号は、アッセイの検出限界未満の値に対応する。 同種株H1N1A/Brisbane/59/2007(A)、異種株H1N1A/California/07/2009(B)異種亜型株H5N1A/Vietnam/1203/2004(C)および異種亜型株H3N2A/HongKong/1/1968(D)からの全長ヘマグルチニンのエクトドメインに対する個々のマウスについての最初の免疫化後7週目におけるIgG応答。白丸記号は、アッセイの検出限界未満の値に対応する。 同種株H1N1A/Brisbane/59/2007(A)、異種株H1N1A/California/07/2009(B)異種亜型株H5N1A/Vietnam/1203/2004(C)および異種亜型株H3N2A/HongKong/1/1968(D)からの全長ヘマグルチニンのエクトドメインに対する個々のマウスについての最初の免疫化後7週目におけるIgG応答。白丸記号は、アッセイの検出限界未満の値に対応する。 同種株H1N1A/Brisbane/59/2007(A)、異種株H1N1A/California/07/2009(B)異種亜型株H5N1A/Vietnam/1203/2004(C)および異種亜型株H3N2A/HongKong/1/1968(D)からの全長ヘマグルチニンのエクトドメインに対する個々のマウスについての最初の免疫化後7週目におけるIgG応答。白丸記号は、アッセイの検出限界未満の値に対応する。 H3HAをベースとするステムドメインポリペプチドのFACSアッセイ。平均蛍光強度(A)および%陽性細胞(B)を示す。 同種株H1N1A/Brisbane/59/2007(パネルA)、異種株H1N1A/California/07/2009(パネルB)および異種亜型株H5N1A/Vietnam/1203/2004(パネルC)からの全長ヘマグルチニンに対する個々のマウスについての最初の免疫化後7週目におけるIgG応答。白丸記号は、アッセイの検出限界未満の値に対応する。 同種株H1N1A/Brisbane/59/2007(パネルA)、異種株H1N1A/California/07/2009(パネルB)および異種亜型株H5N1A/Vietnam/1203/2004(パネルC)からの全長ヘマグルチニンに対する個々のマウスについての最初の免疫化後7週目におけるIgG応答。白丸記号は、アッセイの検出限界未満の値に対応する。 同種株H1N1A/Brisbane/59/2007(パネルA)、異種株H1N1A/California/07/2009(パネルB)および異種亜型株H5N1A/Vietnam/1203/2004(パネルC)からの全長ヘマグルチニンに対する個々のマウスについての最初の免疫化後7週目におけるIgG応答。白丸記号は、アッセイの検出限界未満の値に対応する。 全長HAおよび本発明の対応するポリペプチドへのmAbのCR6261、CR9114、CR8020およびCR9020、ならびにポリクローナル抗H1血清の結合のFACS分析。上図:平均蛍光強度。下図:陽性細胞の割合。黒色のバーは、全長タンパク質を表し、縞模様のバーは、本発明のポリペプチドを表す。全長HAおよびその配列に由来する本発明の対応するポリペプチドは、同一のバックグラウンドの色を有する。 実施例21に記載のインフルエンザチャレンジ実験についてのカプラン・マイヤー生存曲線(A)、体重変化(B)および臨床スコア中央値(C)。 実施例21に記載のインフルエンザチャレンジ実験についてのカプラン・マイヤー生存曲線(A)、体重変化(B)および臨床スコア中央値(C)。 実施例21に記載のインフルエンザチャレンジ実験についてのカプラン・マイヤー生存曲線(A)、体重変化(B)および臨床スコア中央値(C)。 実施例22により選択されたH1N1配列のアラインメント。 実施例22により選択されたH1HAをベースとするステムドメインポリペプチドのFACSアッセイ。平均蛍光強度を示す。 バイオレイヤー干渉法により測定された、固定化モノクローナル抗体CR6261(A)、CR9114(B)およびCR8020(C)への三量体および単量体形態の全長H1HA(配列番号149)ならびにs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)の結合のカイネティクス。 固定化CR6261(A)およびCR9114(B)へのs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)の結合の定常状態力価測定に続くバイオレイヤー干渉法。 ELISAにより測定された、49日目におけるA/HongKong/1/1968からのHAのエクトドメインに対するIgG応答。実験の詳細を実施例24に記載する。白色記号は、アッセイの検出限界未満の値に対応する。 実施例24に記載のインフルエンザチャレンジ実験についてのカプラン・マイヤー生存曲線(A)、体重変化(B)および臨床スコア中央値(C)。 実施例24に記載のインフルエンザチャレンジ実験についてのカプラン・マイヤー生存曲線(A)、体重変化(B)および臨床スコア中央値(C)。 実施例24に記載のインフルエンザチャレンジ実験についてのカプラン・マイヤー生存曲線(A)、体重変化(B)および臨床スコア中央値(C)。 実施例25により選択されたH1HAをベースとするステムドメインポリペプチドのFACSアッセイ。平均蛍光強度を示す。 A/Wisconsin/67/2005(A)、A/HongKong/1/1968(B)およびA/Perth/16/2009(C)からのHAにより測定された、HAのエクトドメインに対する49日後のIgG応答。実験の詳細を実施例26に記載する。白丸記号は、アッセイの検出限界未満の値に対応する。 A/Wisconsin/67/2005(A)、A/HongKong/1/1968(B)およびA/Perth/16/2009(C)からのHAにより測定された、HAのエクトドメインに対する49日後のIgG応答。実験の詳細を実施例26に記載する。白丸記号は、アッセイの検出限界未満の値に対応する。 A/Wisconsin/67/2005(A)、A/HongKong/1/1968(B)およびA/Perth/16/2009(C)からのHAにより測定された、HAのエクトドメインに対する49日後のIgG応答。実験の詳細を実施例26に記載する。白丸記号は、アッセイの検出限界未満の値に対応する。 ELISAにより測定された、A/HongKong/1/1968からのHAのエクトドメインに対する49日後のIgG応答。実験の詳細を実施例27に記載する。白色記号は、アッセイの検出限界未満の値に対応する。 実施例28により選択されたH1HAをベースとするステムドメインポリペプチドのFACSアッセイ。平均蛍光強度を示す。
定義
本発明において使用される用語の定義を以下に挙げる。
本発明によるアミノ酸は、20の天然(または「標準」アミノ酸)またはそのバリアント、例えば、D−プロリン(プロリンのD−エナンチオマー)など、またはタンパク質に天然に見出されない任意のバリアント、例えば、ノルロイシンなどのいずれかであり得る。標準アミノ酸は、それらの特性に基づきいくつかのグループに分割することができる。重要な因子は、電荷、親水性または疎水性、サイズおよび官能基である。これらの特性は、タンパク質構造およびタンパク質−タンパク質相互作用にとって重要である。一部のアミノ酸は、特別な特性を有し、例えば、システインは、他のシステイン残基への共有ジスルフィド結合(またはジスルフィド架橋)を形成し得、プロリンは、ポリペプチド骨格への周期性を形成し、グリシンは、他のアミノ酸よりもフレキシブルである。表5は、標準アミノ酸の略語および特性を示す。
用語「アミノ酸配列同一性」は、通常、割合として表現される一対のアラインされたアミノ酸配列間の同一性または類似性の程度を指す。同一性パーセントは、同一(すなわち、アラインメント中の所与の位置におけるアミノ酸残基は、同一残基である)または類似(すなわち、アラインメント中の所与の位置におけるアミノ酸置換は、以下に論じる保存的置換である)の候補配列中のアミノ酸残基と、配列をアラインし、必要に応じてギャップを導入して最大パーセント配列相同性を達成した後のペプチド中の対応するアミノ酸残基との割合である。配列相同性、例として配列同一性および類似性の割合は、当分野において周知の配列アラインメント技術を使用して、例えば、目視調査および数学的計算により決定され、またはより好ましくは、比較は、コンピュータプログラムを使用して配列情報を比較することにより行われる。例示的な好ましいコンピュータプログラムは、Genetics Computer Group(GCG;Madison,Wis.)Wisconsinパッケージバージョン10.0プログラム、「GAP」(Devereux et al.(1984))である。
「保存的置換」は、あるクラスのアミノ酸の同一クラスの別のアミノ酸による置換を指す。特定の実施形態において、保存的置換は、本発明のポリペプチドの構造もしくは機能、またはその両方を変化させない。保存的置換の目的のためのアミノ酸のクラスには、疎水性(例えば、Met、Ala、Val、Leu)、中性親水性(例えば、Cys、Se
r、Thr)、酸性(例えば、Asp、Glu)、塩基性(例えば、Asn、Gln、His、Lys、Arg)、立体構造破壊物質(例えば、Gly、Pro)および芳香族(例えば、Trp、Tyr、Phe)が含まれる。
本明細書において使用される用語「疾患」および「障害」は、対象における病態を指すために互換的に使用される。一部の実施形態において、病態は、ウイルス感染、特にインフルエンザウイルス感染である。具体的な実施形態において、用語「疾患」は、細胞もしくは対象におけるウイルスの存在から生じ、またはウイルスによる細胞もしくは対象の侵襲による病理的状態を指す。ある実施形態において、病態は、免疫原性組成物の投与を介して対象において免疫応答を誘導することにより重症度が減少される対象における疾患である。
治療物を対象に投与する文脈における本明細書において使用される用語「有効量」は、予防および/または治療効果を有する治療物の量を指す。ある実施形態において、治療物を対象に投与する文脈における「有効量」は、インフルエンザウイルス感染、それに伴う疾患もしくは症状の重症度の低減もしくは改善、例えば、限定されるものではないが、インフルエンザウイルス感染、それに伴う疾患もしくは症状の持続時間の低減、インフルエンザウイルス感染、それに伴う疾患もしくは症状の進行の予防、インフルエンザウイルス感染、それに伴う疾患もしくは症状の発現もしくは発症もしくは再発の予防、ある対象から別の対象へのインフルエンザウイルスの拡散の予防もしくは低減、対象の入院および/もしくは入院期間の低減、インフルエンザウイルス感染もしくはそれに伴う疾患を有する対象の生存率の増加、インフルエンザウイルス感染もしくはそれに伴う疾患の排除、インフルエンザウイルス複製の阻害もしくは低減、インフルエンザウイルス力価の低減;および/または別の治療物の予防もしくは治療効果の向上および/もしくは改善を達成するために十分な治療物の量を指す。ある実施形態において、有効量は、インフルエンザウイルス疾患からの完全な保護をもたらさないが、未治療対象と比較してより低い力価または低減数のインフルエンザウイルスをもたらす。インフルエンザウイルスの力価、数または総負荷の低減の利益には、限定されるものではないが、より軽度の感染症状、より少ない感染症状および感染に伴う疾患の期間の低減が含まれる。
本明細書において使用される用語「宿主」は、ベクター、例えば、クローニングベクターまたは発現ベクターが導入された生物または細胞を指すものとする。生物または細胞は、原核または真核であり得る。好ましくは、宿主は、単離宿主細胞、例えば、培養物中の宿主細胞を含む。用語「宿主細胞」は、細胞が本発明のポリペプチドの(過剰)発現のために改変されていることを単に意味するにすぎない。宿主という用語は、特定の対象生物または細胞を指すだけでなく、そのような生物または細胞の子孫も同様に指すものとすることを理解すべきである。ある改変が突然変異または環境的影響のいずれかに起因して後続世代において生じ得るため、そのような子孫は、事実上、親生物または細胞と同一であり得ないが、依然として本明細書において使用される用語「宿主」の範囲内に含まれる。
本明細書において使用される用語「含まれる」または「例として」の後には、語「限定されるものではないが」が続くものとみなされる。
本明細書において使用される用語「感染」は、細胞または対象におけるウイルスの繁殖および/または存在による侵襲を意味する。一実施形態において、感染は、「活性」感染、すなわち、ウイルスが細胞または対象において複製しているものである。このような感染は、ウイルスにより最初に感染された細胞、組織、および/または器官から他の細胞、組織、および/または器官へのウイルスの拡散を特徴とする。感染は、潜伏感染、すなわち、ウイルスが複製していないものでもあり得る。ある実施形態において、感染は、細胞もしくは対象中のウイルスの存在から生じ、またはウイルスによる細胞もしくは対象の侵
襲による病理学的状態を指す。
インフルエンザウイルスは、インフルエンザウイルス型:A、BおよびC属に分類される。本明細書において使用される用語「インフルエンザウイルス亜型」は、ヘマグルチニン(H)およびノイラミニダーゼ(N)ウイルス表面タンパク質の組合せを特徴とするインフルエンザAウイルスバリアントを指す。本発明によれば、インフルエンザウイルス亜型は、それらのH番号、例えば、「H3亜型のHAを含むインフルエンザウイルス」、「H3亜型のインフルエンザウイルス」または「H3インフルエンザ」など、またはH番号およびN番号の組合せ、例えば、「インフルエンザウイルス亜型H3N2」もしくは「H3N2」などにより称することができる。用語「亜型」には、具体的には、通常、突然変異から生し、異なる病原プロファイルを示すそれぞれの亜型内の全ての個々の「株」、例として、天然分離株および人工突然変異体またはリアソータントなどが含まれる。このような株は、ウイルス亜型の種々の「分離株」と称することもできる。したがって、本明細書において使用される用語「株」および「分離株」は、互換的に使用することができる。ヒトインフルエンザウイルス株または分離株についての現在の命名法には、ウイルスの型(属)、すなわち、A、BまたはC、最初の分離の地理的場所、株番号および分離年度に通常括弧内に挙げられるHAおよびNAの抗原の記載が含まれ、例えば、A/Moscow/10/00(H3N2)である。非ヒト株には、命名法において起源の宿主も含まれる。インフルエンザAウイルス亜型は、それらの系統発生グループを参照することによりさらに分類することができる。系統分析は、ヘマグルチニンの2つの主要グループへの下位分類を実証した:とりわけ系統発生グループ1におけるH1、H2、H5およびH9亜型(「グループ1」インフルエンザウイルス)およびとりわけ系統発生グループ2におけるH3、H4、H7およびH10亜型(「グループ2」インフルエンザウイルス」)。
本明細書において使用される用語「インフルエンザウイルス疾患」は、細胞もしくは対象中のインフルエンザウイルス、例えば、インフルエンザAもしくはBウイルスの存在またはインフルエンザウイルスによる細胞もしくは対象の侵襲から生じる病理学的状態を指す。具体的な実施形態において、この用語は、インフルエンザウイルスにより引き起こされる呼吸器疾病を指す。
本明細書において使用される用語「核酸」には、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)ならびにヌクレオチドアナログを使用して生成されたDNAまたはRNAのアナログが含まれるものとする。核酸は、一本鎖または二本鎖であり得る。核酸分子は、化学的もしくは生化学的に改変することができ、または非天然もしくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含有し得、それは当業者により容易に認識される。このような改変には、例えば、標識、メチル化、アナログによる天然ヌクレオチドの1つ以上の置換、ヌクレオチド間改変、例えば、未荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホラミデート、カルバメートなど)、荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、懸垂部分(例えば、ポリペプチド)、挿入剤(例えば、アクリジン、プソラレンなど)、キレート化剤、アルキル化剤、および改変結合(例えば、アルファアノマー核酸など)が含まれる。核酸配列への言及は、特に記載のない限り、その相補物を包含する。したがって、特定の配列を有する核酸分子への言及は、その相補的配列を有するその相補鎖を包含すると理解すべきである。相補鎖も、例えばアンチセンス療法、ハイブリダイゼーションプローブおよびPCRプライマーに有用である。
ある実施形態において、本明細書において使用されるHA中のアミノ酸の番号付与は、野生型インフルエンザウイルスのHA0中のアミノ酸の番号付与、例えば、H1N1インフルエンザ株A/Brisbane/59/2007(配列番号1)のアミノ酸の番号付与に基づく。したがって、本発明において使用される語「HA中の「x」位におけるアミ
ノ酸」は、特定の野生型インフルエンザウイルス、例えば、A/Brisbane/59/2007(配列番号1;HA2ドメインのアミノ酸をイタリックで示した)のHA0中のx位におけるアミノ酸に対応するアミノ酸を意味する。他のインフルエンザウイルス株および/または亜型中の相当アミノ酸を多重配列アラインメントにより決定することができることが当業者により理解される(例えば、表8参照)。本出願全体にわたり使用される番号付与系において、1は、未成熟HA0タンパク質(配列番号1)のN末端アミノ酸を指すことに留意されたい。成熟配列は、例えば、配列番号1の18位上で開始する。ある実施形態において、相当アミノ酸の番号付与は、H3HA0中のアミノ酸の番号付与、特にH3N2インフルエンザ株A/Wisconsin/67/2005(配列番号89)のアミノ酸の番号付与に基づく。他のH3HA配列中の相当アミノ酸は、アラインメントにより決定することができる。産生の間にタンパク質の輸送を指向するリーダー配列(またはシグナル配列)(例えば、配列番号89のアミノ酸1〜17に対応)は一般に、例えば、ワクチンにおいて使用される最終ポリペプチド中に存在しないことが当業者により理解される。したがって、ある実施形態において、本発明によるポリペプチドは、リーダー配列を有さないアミノ酸配列を含み、すなわち、アミノ酸配列は、シグナル配列を有さないHA0のアミノ酸配列をベースとする。
「ポリペプチド」は、当業者により公知のアミド結合により結合しているアミノ酸の重合体を指す。本明細書において使用されるこの用語は、共有アミド結合により結合している単一ポリペプチド鎖を指し得る。この用語は、非共有相互作用、例えば、イオン接触、水素結合、ファン・デル・ワールス接触および疎水性接触により会合している複数のポリペプチド鎖も指し得る。当業者は、この用語には、例えば、翻訳後プロセシング、例えば、シグナルペプチド開裂、ジスルフィド結合形成、グリコシル化(例えば、N結合グリコシル化)、プロテアーゼ開裂および脂質改変(例えば、S−パルミトイル化)により改変されたポリペプチドが含まれることを認識する。
「ステムドメインポリペプチド」は、天然(または野生型)ヘマグルチニン(HA)のステムドメインを構成する1つ以上のポリペプチド鎖を含むポリペプチドを指す。典型的には、ステムドメインポリペプチドは、単一ポリペプチド鎖(すなわち、ヘマグルチニンHA0ポリペプチドのステムドメインに対応)または2つのポリペプチド鎖(すなわち、ヘマグルチニンHA2ポリペプチドと会合しているヘマグルチニンHA1ポリペプチドのステムドメインに対応)である。本発明によれば、ステムドメインポリペプチドは、野生型HA分子と比較して1つ以上の突然変異を含み、特に野生型HAの1つ以上のアミノ酸残基が特定の野生型HA中の対応位置上で天然に生じない他のアミノ酸により置換されていてよい。本発明によるステムドメインポリペプチドは、下記の1つ以上の結合配列をさらに含み得る。
用語「ベクター」は、複製され、一部の場合に発現される、宿主中への導入のために第2の核酸分子を挿入することができる核酸分子を示す。換言すると、ベクターは、それが結合した核酸分子を輸送し得る。クローニングおよび発現ベクターは、本明細書において使用される用語「ベクター」により企図される。ベクターには、限定されるものではないが、プラスミド、コスミド、細菌人工染色体(BAC)および酵母人工染色体(YAC)ならびにバクテリオファージまたは植物または動物(例として、ヒト)ウイルスに由来するベクターが含まれる。ベクターは、提示される宿主により認識される複製起源および発現ベクターの場合、宿主により認識されるプロモーターおよび他の調節領域を含む。あるベクターは、それらが導入された宿主中で自律複製し得る(例えば、細菌の複製起源を有するベクターは、細菌中で複製し得る)。他のベクターは宿主中への導入時に宿主のゲノム中に組み込むことができ、それによりベクターは宿主ゲノムに沿って複製される。本明細書において使用される、ウイルスの文脈における用語「野生型」は、高頻度であり、天然に循環し、典型的な疾患の蔓延を発生させているインフルエンザウイルスを指す。
詳細な説明
インフルエンザウイルスは、世界規模の公衆衛生に対して顕著な影響を及ぼし、毎年数百万の重病の症例、数千人の死亡、およびかなりの経済的損失を引き起こす。現在の三価インフルエンザワクチンは、ワクチン株および密接に関連する分離株に対する強力な中和抗体応答を誘発するが、ある亜型内のより分岐した株または他の亜型に及ぶことはほとんどない。さらに、適切なワクチン株の選択は多くの困難を提示し、準最適保護を頻繁にもたらす。さらに、次の流行性ウイルスの亜型の予測は、それがいつどこで生じるかを含め、現在では不可能である。
ヘマグルチニン(HA)は、中和抗体の主要な標的であるインフルエンザAウイルスからの主要なエンベロープ糖タンパク質である。ヘマグルチニンは、流入プロセスの間の2つの主要な機能を有する。第1に、ヘマグルチニンは、シアル酸受容体との相互作用を介して標的細胞の表面へのウイルスの付着を媒介する。第2に、ウイルスのエンドサイトーシス後、ヘマグルチニンは、続いてウイルスおよびエンドソーム膜の融合を生んでそのゲノムを標的細胞の細胞質中に放出させる。HAは、宿主由来酵素により開裂されてジスルフィド結合により結合したままの2つのポリペプチドを生成する約500アミノ酸の大型エクトドメインを含む。大多数のN末端断片(HA1、320〜330アミノ酸)は、受容体結合部位およびウイルス中和抗体により認識されるほとんどの抗原決定基を含有する膜遠位球状ドメインを形成する。より小型のC末端部分(HA2、約180アミノ酸)は、球状ドメインを細胞またはウイルス膜にアンカリングするステム様構造を形成する。亜型間の配列相同性の程度は、HA1ポリペプチド(34%〜59%の亜型間相同性)がHA2ポリペプチド(51〜80%の相同性)よりも小さい。ほとんどの保存領域は、開裂部位周囲の配列、特にHA2N末端23アミノ酸であり、それは全てのインフルエンザAウイルス亜型で保存される(Lorieau et al.,2010)。この領域の一部は、HA前駆体分子(HA0)中で表面ループとして曝露されるが、HA0がHA1およびHA2に開裂された場合に接近不可能になる。
ほとんどの中和抗体は、受容体結合部位を包囲するループに結合し、受容体結合および付着を妨げる。これらのループは高度に変異性であるため、それらの領域を標的化するほとんどの抗体は、株特異的であり、なぜ現在のワクチンがそのような限定された株特異的免疫を誘発するかを説明する。しかしながら、近年、広域交差中和効力を有するインフルエンザウイルスヘマグルチニンに対する完全ヒトモノクローナル抗体が生成された。機能および構造分析は、それらの抗体が膜融合プロセスを妨げ、インフルエンザHAタンパク質のステムドメイン中の高度に保存されたエピトープに対して指向されることを明らかにした(Throsby et al.,2008;Ekiert et al.2009、国際公開第2008/028946号パンフレット、国際公開第2010/130636号パンフレット)。
本発明によれば、広範のインフルエンザ株に対する保護を誘導するユニバーサルなエピトープベースのワクチンを作出するためにそれらのエピトープを含有する新規HAステムドメインポリペプチドを設計した。本質的には、高度に変異性で免疫優性の部分、すなわち、頭部ドメインを最初に全長HA分子から除去してmini−HAとも称されるステムドメインポリペプチドを作出する。このように、免疫応答は、広域中和抗体についてのエピトープが局在するステムドメインに対して再指向される。上記の広域中和抗体を使用して新たに作出された分子の正確なフォールディングを調べ、中和エピトープの存在を確認した。
本発明のステムドメインポリペプチドは、膜近位ステムドメインHA分子の保存エピトープを、膜遠位頭部ドメイン中に存在する優性エピトープの不存在下で免疫系に提示し得
る。この目的のため、頭部ドメインを構成するHA0タンパク質の一次配列の一部を除去し、直接的に、または一部の実施形態において、短いフレキシブル結合配列(「リンカー」)を導入することにより再連結させてポリペプチド鎖の連続性を回復させる。得られたポリペプチド配列を、HA0分子の残留部分の天然三次元構造を安定化する規定の突然変異を導入することによりさらに改変する。
したがって、本発明は、(a)HA1C末端ステムセグメントに0〜50アミノ酸残基の結合配列により共有結合しているHA1N末端ステムセグメントを含むインフルエンザヘマグルチニンHA1ドメイン、および(b)インフルエンザヘマグルチニンHA2ドメインを含むポリペプチドであって、HA2ドメイン中の1つ以上のアミノ酸が突然変異しているポリペプチドを提供する。したがって、本発明のポリペプチドにおいて、HA2ドメインは、HAステムドメインポリペプチドがベースとする野生型インフルエンザヘマグルチニンのHA2ドメインと比較して1つ以上の突然変異を含む。
インフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドは、一般に、ヒトインフルエンザウイルスワクチンにおいて使用されるインフルエンザAウイルス亜型のHAをベースとする。好ましい実施形態において、ステムドメインポリペプチドは、H1、H5および/またはH3亜型のHAを含むインフルエンザウイルスのHAをベースとする。
本発明は、特に、(a)HA1C末端ステムセグメントに0〜50アミノ酸残基の結合配列により共有結合しているHA1N末端ステムセグメントを含むインフルエンザヘマグルチニンHA1ドメイン、および(b)インフルエンザヘマグルチニンHA2ドメインを含むインフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドであって、HA1およびHA2間の連結部におけるプロテアーゼ開裂に耐性であり、HA2のAへリックスおよびへリックスCDを連結するアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸が野生型インフルエンザHA2ドメインと比較して突然変異しているヘマグルチニンステムドメインポリペプチドを提供する。好ましくは、HA1およびHA2ドメインは、H1、H5およびH3からなる群から選択されるインフルエンザAウイルス亜型に由来する。
したがって、本発明のポリペプチドは、図1に示されるへリックスAのC末端残基をへリックスCDのN末端残基に連結するHA2アミノ酸配列中の1つ以上の突然変異を含む。ある実施形態において、前記HA2アミノ酸配列中の1つ以上の疎水性アミノ酸は、親水性アミノ酸、例えば、極性および/もしくは荷電アミノ酸、またはフレキシブルアミノ酸グリシン(G)により置換されている。
本発明のポリペプチドは、全長HA1を含まない。
ある実施形態において、免疫原性ポリペプチドは、HA0よりも実質的に小型であり、好ましくは、全てまたは実質的に全てのHAの球状頭部を欠く。好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、360アミノ酸長以下、好ましくは、350、340、330、320、310、305、300、295、290、285、280、275、または270アミノ酸長以下である。ある実施形態において、免疫原性ポリペプチドは、約250から約350、好ましくは、約260から約340、好ましくは、約270から約330、好ましくは、約270から約330アミノ酸長である。
ある実施形態において、ポリペプチドは、HA1およびHA2ドメインが由来するHAのアミノ酸配列と比較してHA1および/またはHA2ドメイン中の1つ以上の追加の突然変異をさらに含む。したがって、ステムポリペプチドの安定性はさらに増加される。
本発明によれば、「HA1N末端セグメント」は、インフルエンザヘマグルチニン(H
A)分子のHA1ドメインのアミノ末端部分に対応するポリペプチドセグメントを指す。ある実施形態において、HA1N末端ポリペプチドセグメントは、HA1ドメインの1位からx位のアミノ酸を含み、x位上のアミノ酸は、HA1内のアミノ酸残基である。用語「HA1C末端セグメント」は、インフルエンザヘマグルチニンHA1ドメインのカルボキシ末端部分に対応するポリペプチドセグメントを指す。ある実施形態において、HA1C末端ポリペプチドセグメントは、HA1ドメインのy位からC末端アミノ酸(そのアミノ酸を含む)のアミノ酸を含み、y位上のアミノ酸は、HA1内のアミノ酸残基である。本発明によれば、yは、xよりも大きく、したがって、HA1N末端セグメントおよびHA1C末端セグメント間、すなわち、HA1のx位上のアミノ酸およびy位上のアミノ酸間のHA1ドメインのセグメントが欠失しており、一部の実施形態において、結合配列により置き換えられている。
ある実施形態において、HA1N末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸1〜xを含み、HA1C末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸y〜末端を含む。したがって、ある実施形態において、HA1セグメントの欠失は、x+1位におけるアミノ酸からy−1位におけるアミノ酸(そのアミノ酸を含む)のアミノ酸配列を含む。
ある実施形態において、ポリペプチドは、シグナル配列を含まない。したがって、ある実施形態において、HA1N末端セグメントは、HA1のアミノ酸p〜xを含み、pは、成熟HA分子の最初のアミノ酸である(例えば、配列番号1の場合、p=18)。当業者は、シグナルペプチド(例えば、配列番号1のアミノ酸1〜17)を有さない本明細書に記載のポリペプチドを調製することができる。ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、HAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有する。他の実施形態において、本発明のポリペプチドは、HAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含まない。ある実施形態において、細胞内および膜貫通配列、例えば、HA2ドメインの523、524、525、526、527、526、528、529、または530位(またはその相当物)からHA2ドメインのC末端のアミノ酸配列は、除去されている。
本発明によれば、ヘマグルチニンステムドメインポリペプチドは、HA1およびHA2間の連結部におけるプロテアーゼ開裂に耐性である。HA1およびHA2に及ぶArg(R)〜Gly(G)配列は、トリプシンおよびトリプシン様プロテアーゼについての認識部位であり、典型的には、ヘマグルチニン活性化のために開裂されることが当業者に公知である。本明細書に記載のHAステムドメインポリペプチドは活性化すべきでないため、本発明のインフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドはプロテアーゼ開裂に耐性である。したがって、本発明によれば、プロテアーゼ開裂部位が除去され、またはHA1およびHA2に及ぶプロテアーゼ部位がプロテアーゼ開裂に耐性である配列に突然変異される。
ある実施形態において、HA1C末端ステムセグメントのC末端アミノ酸残基は、アルギニン(R)またはリジン(K)以外の任意のアミノ酸である。ある実施形態において、HA1C末端アミノ酸は、グルタミン(Q)、セリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)である。ある実施形態において、HA1C末端ステムセグメントのC末端アミノ酸残基は、グルタミン(Q)である。
ある実施形態において、ポリペプチドはグリコシル化されている。
インフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドは、ヒトインフルエンザワクチンにおいて使用される亜型の任意の天然インフルエンザAヘマグルチニンウイルスのHAをベースとし得る。インフルエンザワクチンにおいて一般に使用されるインフルエン
ザAウイルス亜型は、H1、H3またはH5亜型のインフルエンザAウイルスである。「ベースとする」は、HA1ドメインおよび/またはHA2ドメインのN末端セグメント、および/またはC末端セグメントが、当業者に公知のまたは後に発見されるH1、H3および/またはH5亜型の任意の天然インフルエンザヘマグルチニンのHA1および/またはHA2ドメインの対応するN末端および/またはC末端セグメントと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有することを意味する。ある実施形態において、インフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドは、グループ1インフルエンザAウイルスのインフルエンザヘマグルチニンをベースとする。ある実施形態において、インフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドは、グループ2インフルエンザAウイルスのインフルエンザヘマグルチニンをベースとする。一部の実施形態において、インフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドは、複数のインフルエンザ株または亜型からのセグメントおよび/またはドメインを含み、またはそれらからなるハイブリッドまたはキメラポリペプチドである。例えば、インフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドは、異なるインフルエンザAウイルスHA亜型からのHA1N末端およびHA1C末端ステムセグメントおよび/またはHA2ドメインを含み得る。
ある実施形態において、ポリペプチドは、H1HAをベースとする。特定の実施形態において、ポリペプチドは、H1亜型のHAを含むインフルエンザAウイルス、例えば、下記のインフルエンザウイルスA/Brisbane/59/2007(H1N1)(配列番号1)からのHAからの、またはそれをベースとするヘマグルチニンステムドメインを含む。H1亜型のHAを含む他のインフルエンザAウイルスも本発明により使用することができることが当業者により理解される。ある実施形態において、ポリペプチドは、表7から選択されるインフルエンザAH1ウイルスのHAをベースとするヘマグルチニンステムドメインを含む。
ある実施形態において、ポリペプチドは、H1HAドメインの1位からx位のアミノ酸を含むHA1N末端ポリペプチドセグメントを含み、xは、46位上のアミノ酸〜60位上のアミノ酸の任意のアミノ酸、例えば、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、または59位上のアミノ酸であり、好ましくは、xは、52、53、55または59である。好ましくは、ポリペプチドは、シグナル配列を有さないHA1N末端セグメント、すなわち、HA1ドメインの18位(例えば、H1HAについて、例えば、配列番号1)、または他のH1インフルエンザウイルス株中の相当位置からx位のアミノ酸を含むHA1N末端セグメントを含む。したがって、ある実施形態において、HA1N末端セグメントは、HA1ドメインのp位(配列番号1のH1HAについてp=18、または他のH1HA上の相当位置)からx位のアミノ酸を含む。
ある実施形態において、HA1C末端ポリペプチドセグメントは、H1HA1ドメインのy位からC末端アミノ酸(そのアミノ酸を含む)のアミノ酸を含み、yは、H1HA1の290位上のアミノ酸〜325位上のアミノ酸の任意のアミノ酸であり、好ましくは、yは、291、303、318、または321である。本発明によれば、HA2ドメインは、へリックスAのC末端残基をへリックスCDのN末端残基に連結するHA2アミノ酸配列中の1つ以上の突然変異を含む(図1)。ある実施形態において、前記HA2アミノ酸配列中の1つ以上の疎水性アミノ酸は、親水性アミノ酸、例えば、極性および/または荷電アミノ酸により置換されている。ある実施形態(例えば、H1HAについて、例えば、配列番号1)において、へリックスAのC末端残基およびへリックスCDのN末端残基を連結するHA2アミノ酸配列は、インフルエンザHA2の残基402〜418のアミノ酸配列を含む。ある実施形態において、へリックスAのC末端残基およびへリックスCDのN末端残基を連結するHA2アミノ酸配列は、アミノ酸配列MNTQFTAVGKEFN(H/K)LE(K/R)(配列番号17)を含む。
ある実施形態において、xは、59であり、yは、291である。
ある実施形態において、xは、52であり、yは、321である。
ある実施形態において、xは、53であり、yは、303である。
ある実施形態において、xは、55であり、yは、318である。
一実施形態において、へリックスAのC末端残基をへリックスCDのN末端残基に連結するアミノ酸配列は、配列番号1のHA2の402位上のアミノ酸〜418位上のアミノ酸のアミノ酸配列に対応し、ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸402から418に及ぶアミノ酸配列中の1つ以上の突然変異を含む。血清型H1のインフルエンザHAの残基402〜418のアミノ酸配列は、アミノ酸配列MNTQFTAVGKEFN(H/K)LE(K/R)(配列番号17)を含む。ある実施形態において、血清型H1のインフルエンザHAの残基402〜418のアミノ酸配列は、アミノ酸配列MNTQXTAXGKEXN(H/K)XE(K/R)を含む。
したがって、ある実施形態において、ポリペプチドは、表6に示されるH1HA2ドメイン中の突然変異の1つ以上を含む。ある実施形態において、406、409、413および416位上のアミノ酸の1つ以上、すなわち、アミノ酸X、X、XおよびXの1つ以上は、突然変異している(番号付与は、配列番号1を指す)。ある実施形態において、406位上のアミノ酸、すなわち、Xは、S、T、N、Q、R、H、K、D、E、およびGからなる群から選択されるアミノ酸に変化しており、好ましくは、Sである。ある実施形態において、409位上のアミノ酸、すなわち、Xは、S、T、N、Q、R、H、K、D、E、およびGからなる群から選択されるアミノ酸に変化しており、好ましくは、T、QまたはGである。ある実施形態において、413位上のアミノ酸、すなわち、Xは、S、T、N、Q、R、H、K、D、E、Gからなる群から選択されるアミノ酸に変化しており、好ましくは、Sである。ある実施形態において、416位上のアミノ酸、すなわち、Xは、S、T、N、Q、R、H、K、D、E、Gからなる群から選択されるアミノ酸に変化しており、好ましくは、Sである。これらの突然変異の組合せも可能である。
ある実施形態において、HA1N末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸残基1〜59を含み、HA1C末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸残基291〜343を含み、343位上のアミノ酸、すなわち、R343は、突然変異しており、R以外のアミノ酸であり、好ましくは、グルタミン(Q)である。ある実施形態において、HA1N末端セグメントは、HA1のアミノ酸残基1〜59からなり、HA1C末端セグメントは、HA1のアミノ酸残基291〜343からなる。アミノ酸の番号付与は、H1HA0中のアミノ酸の番号付与、特にH1N1インフルエンザ株A/Brisbane/59/2007(配列番号1)のアミノ酸の番号付与に基づくことに留意される。異なるインフルエンザ亜型/株のHA配列は互いと比較して頭部領域中の挿入または欠失を有し得るため、番号付与は常に同一でないことに留意される。当業者は、異なるインフルエンザウイルス株および/または亜型のHA配列中の相当アミノ酸位置を配列アラインメントにより決定することができる。
ある実施形態において、HA1N末端ポリペプチドセグメントは、シグナル配列を含まない。好ましい実施形態において、HA1N末端セグメントは、HA1ドメインの18位から59位のアミノ酸を含む。ある実施形態において、HA1N末端セグメントは、HA1ドメインのアミノ酸18〜59からなる。
一部の実施形態において、本発明のポリペプチドは、HA1ドメインおよび/またはHA2ドメイン中の1つ以上のさらなる突然変異、すなわち、アミノ酸置換を含む。したがって、ある実施形態において、HA1ドメインは、以下の突然変異:L58T、V314TおよびI316Tの1つ以上をさらに含む。ここでも、アミノ酸の番号付与は、H1HA0中のアミノ酸の番号付与、特に、H1N1インフルエンザ株A/Brisbane/59/2007(配列番号1)のアミノ酸の番号付与に基づくことに留意される。当業者は、他のインフルエンザH1ウイルスのHA中の相当アミノ酸を決定することができ、したがって、相当突然変異を決定することができる。
具体的な実施形態において、HA1ドメインは、突然変異L58T、V314T、およびI316Tを含み、HA2ドメインは、以下の突然変異:F406S、V409T、およびL416Sの1つ以上を含む。
ある実施形態において、HA1ドメインは、突然変異K321Cをさらに含み、および/またはHA2ドメインは、以下の突然変異:Q405C、F413C、E421C、およびY502Sの1つ以上をさらに含む。
具体的な実施形態において、HA1ドメインは、突然変異L58T、V314T、I316T、およびK321Cを含み、HA2ドメインは、突然変異:Q405C、F406S、V409T、およびL416Sを含む。
具体的な実施形態において、HA1ドメインは、突然変異L58T、V314T、およびI316Tを含み、HA2ドメインは、突然変異:F406S、V409T、F413C、L416SおよびE421Cを含む。
具体的な実施形態において、HA1ドメインは、突然変異L58T、V314T、およびI316Tを含み、HA2ドメインは、突然変異:F406S、V409T、L416S、およびY502Sを含む。
具体的な実施形態において、HA1ドメインは、突然変異L58T、V314T、I316T、およびK321Cを含み、HA2ドメインは、突然変異:Q405C、F406S、V409T、F413C、L416SおよびE421Cを含む。
具体的な実施形態において、HA1ドメインは、突然変異L58T、V314T、I316T、およびK321Cを含み、HA2ドメインは、突然変異:Q405C、F406S、V409T、F413C、L416S、E421CおよびY502Sを含む。
他の実施形態において、HA2ドメインは、突然変異M420IおよびV421I、または相当突然変異の1つ以上をさらに含む。
具体的な実施形態において、HA1ドメインは、突然変異L58T、V314T、およびI316Tを含み、HA2ドメインは、以下の突然変異:F406S、V409T、L416S、M420IおよびV421Iの1つ以上を含む。
ある実施形態において、HA1N末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸残基1〜52、好ましくは、HA1のアミノ酸残基18〜52を含み、HA1C末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸残基321〜343を含み、343位上のアミノ酸、すなわち、R343は、突然変異しており、R以外のアミノ酸、好ましくは、グルタミン(Q)であり、HA2ドメインは、突然変異F406S、V409T、L416S、M420Iお
よびV421Iを含む。ある実施形態において、HA1N末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸残基1〜52、好ましくは、HA1のアミノ酸残基18〜52からなり、HA1C末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸残基321〜343からなる。
ある実施形態において、HA1N末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸残基1〜53、好ましくは、HA1のアミノ酸残基18〜53を含み、HA1C末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸残基303〜343を含み、343位上のアミノ酸、すなわち、R343は、突然変異しており、R以外のアミノ酸、好ましくは、グルタミン(Q)である。ある実施形態において、HA1N末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸残基1〜53、好ましくは、HA1のアミノ酸残基18〜53からなり、HA1C末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸残基303〜343からなる。具体的な実施形態において、HA1ドメインは、突然変異V314TおよびI316Tを含み、HA2ドメインは、以下の突然変異:F406S、V409T、L416S、M420IおよびV421Iの1つ以上を含む。好ましい実施形態において、ポリペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列を含む。
ある実施形態において、HA1N末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸残基1〜55、好ましくは、HA1のアミノ酸残基18〜55を含み、HA1C末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸残基318〜343を含み、343位上のアミノ酸、すなわち、R343は、突然変異しており、R以外のアミノ酸であり、好ましくは、グルタミン(Q)である。ある実施形態において、HA1N末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸残基1〜55、好ましくは、HA1のアミノ酸残基18〜55からなり、HA1C末端ステムセグメントは、HA1のアミノ酸残基318〜343からなる。一実施形態において、HA2ドメインは、突然変異F406S、V409T、L416S、M420IおよびV421Iを含む。
ある実施形態において、ポリペプチドは、HA1ドメイン中の突然変異R324CおよびHA2ドメイン中のT436Cをさらに含む。
具体的な実施形態において、HA1ドメインは、突然変異L58T、V314T、I316T、およびR324Cを含み、HA2ドメインは、以下の突然変異:F406S、V409T、L416S、M420I、V421IおよびT436Cの1つ以上を含む。
一実施形態において、HA1ドメインは、突然変異R324Cを含み、HA2ドメインは、突然変異F406S、V409T、L416S、M420I、V421IおよびT436Cを含む。
別の実施形態において、HA1ドメインは、突然変異V314T、I316TおよびR324Cを含み、HA2ドメインは、以下の突然変異:F406S、V409T、L416S、M420I、V421IおよびT436Cの1つ以上を含む。
一実施形態において、HA1ドメインは、突然変異R324Cを含み、HA2ドメインは、突然変異F406S、V409T、L416S、M420I、V421IおよびT436Cを含む。
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、HAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有する。他の実施形態において、細胞内および膜貫通配列、例えば、HA2ドメインの523、524、525、526、527、526、528、529、または530位(またはそれらの相当物)からHA2ドメインのC末端のアミノ酸配列(配列番号1による番号付与)が除去されている。ある実施形態において、ポリペプチドは、三量体構
造を形成することが公知の配列、すなわち、AYVRKDGEWVLL(配列番号143)(「foldon」配列)を場合によりリンカーを介して連結させて導入することによりさらに安定化される。リンカーは、当業者に周知のプロトコルに従って後で処理するための開裂部位を場合により含有し得る。可溶性形態の精製を容易にするため、短いリンカー、例えば、EGRを介して連結されたタグ配列、例えば、hisタグ(HHHHHHH)を付加することができる。一部の実施形態において、リンカーおよびhisタグ配列は、foldon配列を存在させることなく付加される。
ある実施形態において、HA2ドメインの530位(またはその相当物)からHA2ドメインのC末端のアミノ酸配列(配列番号1による番号付与)が除去されている。ある実施形態において、細胞内および膜貫通配列は、アミノ酸配列AGRHHHHHHH(配列番号81)またはSGRSLVPRGSPGSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFLGHHHHHHH(配列番号82)により置き換えられている。
ある実施形態において、ポリペプチドは、抗体CR6261および/またはCR9114に選択的に結合する。一実施形態において、ポリペプチドは、抗体CR8057に結合しない。一実施形態において、CR6261は、配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み;CR9114は、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一実施形態において、CR8057は、配列番号22のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
上記のとおり、ポリペプチドは、HA1C末端ステムセグメントに0〜50アミノ酸残基の結合配列により共有結合しているHA1N末端ステムセグメントを含むインフルエンザヘマグルチニンHA1ドメインを含む。結合配列は、天然HAにおいても野生型HAにおいても生じない。ある実施形態において、リンカーは、1つのアミノ酸残基、2つ以下のアミノ酸残基、3つ以下のアミノ酸残基、4つ以下のアミノ酸残基、5つ以下のアミノ酸残基、10以下のアミノ酸残基、15以下のアミノ酸残基、または20以下のアミノ酸残基または30以下のアミノ酸残基または40以下のアミノ酸残基または50以下のアミノ酸残基を含むペプチドである。具体的な実施形態において、結合配列は、G、GS、GGG、GSG、GSA、GSGS、GSAG、GGGG、GSAGS、GSGSG、GSAGSA、GSAGSAG、およびGSGSGSGからなる群から選択される配列である。
本発明は、本発明のポリペプチドを提供する方法、特に本発明によるH1HAステムドメインポリペプチドを提供する方法、およびそれらの方法により得られるまたは得られたポリペプチドも提供する。ある実施形態において、本方法は:
(a)インフルエンザHA0アミノ酸配列、特に、血清型H1のインフルエンザHA0アミノ酸配列を提供するステップ;
(b)好ましくは、HA1のC末端アミノ酸をアルギニン(R)またはリジン(K)以外のアミノ酸に突然変異させることにより、HA1およびHA2間の開裂部位を除去するステップ;
(c)球状頭部ドメインのアミノ酸配列をHA0配列から除去するステップ(このステップは、x位上のアミノ酸およびy位上のアミノ酸間のHA1ドメインのセグメントを欠失させ、こうして得られたHA1のN末端セグメント(HA1の1位上のアミノ酸からx位上のアミノ酸(そのアミノ酸を含む)に及ぶ)およびC末端セグメント(HA1のアミノ酸yからC末端アミノ酸に及ぶ)を場合により0〜50アミノ酸の結合配列を介して再連結させることにより行う。ある実施形態において、xは、HA1の46〜60位の任意の位置上のアミノ酸、好ましくは、52、53、55または59位上のアミノ酸であり、y
は、HA1の290〜325位の任意の位置上のアミノ酸、好ましくは、291、303、318、または321位上のアミノ酸である。ここでも、使用される番号付与は、配列番号1を指す。産生の間にタンパク質の輸送を指向するリーダー配列(またはシグナル配列)(例えば、配列番号1のアミノ酸1〜17に対応)は、一般に、例えば、ワクチンにおいて使用される最終ポリペプチド中には存在しないことが当業者により理解される。したがって、ある実施形態において、本発明によるポリペプチドは、リーダー配列を有さないHA1N末端セグメントを含む);
(d)好ましくは、へリックスAのC末端残基をへリックスCDのN末端残基に連結するアミノ酸配列中、好ましくは、特に、MNTQFTAVGKEFN(H/K)LE(K/R)(配列番号17)のアミノ酸配列を含む配列番号1のアミノ酸402〜418に及ぶアミノ酸配列中に1つ以上の突然変異を導入することにより、改変HAの融合前立体構造の安定性を増加させ、融合後立体構造を脱安定化させるステップ(突然変異は、好ましくは、疎水性アミノ酸残基の親水性アミノ酸残基への置換を含む);
(e)HAステムドメインポリペプチド中に1つ以上のジスルフィド架橋を導入するステップ
を含む。
本発明によれば、HA1およびHA2間の開裂部位の除去は、P1位におけるR(わずかな場合においてK)のQへの突然変異により達成することができる(例えば、開裂部位(配列番号1中の343位)の命名法の説明については、Sun et al,2010参照。Qへの突然変異が好ましいが、S、T、N、DまたはEも代替例である。
頭部ドメインの除去は、例えば、配列番号1からのアミノ酸53から320、または他のインフルエンザウイルスからのHA中の相当位置におけるアミノ酸を欠失させることにより達成することができる。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、ClustalまたはMuscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。配列の残留部分を直接的に結合させることができ、またはフレキシブルリンカーを導入することができる。リンカー配列は、1から50アミノ酸長であり得る。限定された長さ(10アミノ酸以下)のフレキシブルリンカー、例えば、GGG、GGGG、GSA、GSAG、GSAGSA、GSAGSAGまたは類似物が好ましい。欠失の長さは、例えば、欠失を(x)位(の相当物)において、例えば、54、55、56、57もしくは58位において開始することにより、または欠失の長さを増加させるため、47、48、49、50、51、もしくは52位において切断することにより変えることもできる。同様に、欠失させるべき最後のアミノ酸は、(y)位(の相当物)、例えば、315、316、317、318もしくは319位におけるもの、または欠失の長さを増加させるため、321、322、323、324、もしくは325位(の相当物)におけるものであり得る。欠失の長さの変化は、リンカー配列の長さを合致させることにより部分的に補うことができることを理解することは重要であり、すなわち、より大きい欠失はより長いリンカーと合致させることができ、逆もまた同様である。これらのポリペプチドも本発明により包含される。
本発明によれば、AへリックスおよびCDへリックス間のループの溶解度が増加される。このループは、H1A/Brisbane/59/2007(配列番号1)中の残基402から418(の相当物)により形成される。したがって、改変HAの融合前立体構造の安定性が増加され、融合後立体構造が脱安定化される。このループは、以下の表6において確認することができるとおり、H1配列中で高度に保存される。これは、例えば、前記ループ中のアミノ酸I、L、FまたはVを親水性相当物により置き換えることにより達成することができる。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、ClustalまたはMuscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。グリシンへの突然変異は、融合後立体構造を脱安定化させる。それというのも
、このアミノ酸の高いフレキシビリティがこのHA配列の一部により形成され得る融合後へリックスの安定性の減少をもたらすためである。血清型H1のインフルエンザHAの残基402〜418のループを記載するコンセンサス配列は、(配列番号17)MNTQFTAVGKEFN(H/K)LE(K/R)である。本発明のポリペプチドにおいて、406、409、413位および/または416位におけるアミノ酸(または配列アラインメントから決定されたそれらの相当物)は、極性(S、T、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)またはフレキシブル(G)アミノ酸である。これらの部位における突然変異の組合せも可能であり、例えば、F406S、V409T、L416Sである。一部の場合、コンセンサスアミノ酸を回復させるための突然変異が好ましく、例えば、VもしくはMが404位(Tへ)、Vが408位(Aへ)もしくは410位(Gへ)またはIが414位(Nへ)における場合であり;これらの特定のアミノ酸を有する配列の発生率は極めて低い。本発明のポリペプチドを特性決定する上記の突然変異の概要を表6に挙げる。
本発明によれば、1つ以上のジスルフィド架橋がステムドメインポリペプチド中に、好ましくは、H1A/Brisbane/59/2007中の324および436位(またはそれらの相当物)のアミノ酸間に導入される。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、Clustal、Muscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。遺伝子操作ジスルフィド架橋は、少なくとも一方(他方が既にシステインである場合)、しかし通常、空間的に近い2つの残基をシステインに突然変異させ、それが自発的にまたは活性酸化によりそれらの残基の硫黄原子間の共有結合を形成することにより作出される。
天然HAは、細胞表面上の三量体として存在する。三量体を一緒に保持する個々の単量体間の相互作用のほとんどは、頭部ドメイン中に局在する。したがって、頭部の除去後、三次構造は脱安定化され、したがって、トランケート分子中の単量体間の相互作用の強化は安定性を増加させる。ステムドメインにおいて、三量体化は、三量体コイルドコイルモチーフの形成により媒介される。このモチーフの増強により、より安定な三量体を作出することができる。本発明によれば、三量体コイルドコイルの形成のためのコンセンサス配列、例えば、IEAIEKKIEAIEKKIE(配列番号83)を、本発明のポリペプチド中に418から433位(の相当物)において導入することができる。ある実施形態において、GCN4に由来し、さらに三量体化することが公知の配列MKQIEDKIEEIESKQ(配列番号84)が、419〜433位(の相当物)において導入される。ある実施形態において、三量体界面は、M420、L423、V427、G430をイソロイシンに改変することにより安定化される。
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、H1HAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有する。他の実施形態において、細胞内および膜貫通配列、例えば、HA2ドメインの523、524、525、526、527、526、528、529、または530位(またはそれらの相当物)からHA2ドメインのC末端のアミノ酸配列(配列番号1による番号付与)は、細胞中の発現後に可溶性ポリペプチドを産生させるために除去されている。ある実施形態において、ポリペプチドは、三量体構造を形成することが公知の配列、すなわち、AYVRKDGEWVLL(配列番号80)を、場合によりリンカーを介して連結させて導入することによりさらに安定化される。リンカーは、当業者に周知のプロトコルに従って後で処理するための開裂部位を場合により含有し得る。可溶性形態の精製を容易にするため、短いリンカー、例えば、EGRを介して連結されたタグ配列、例えば、hisタグ(HHHHHHH)を付加することができる。一部の実施形態において、リンカーおよびhisタグ配列は、foldon配列を存在させることなく付加される。ある実施形態において、細胞内および膜貫通配列は、アミノ酸配列AGRHHHHHHH(配列番号97)またはSGRSLVPRGSPGSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFLGHHHHHHH(配列番号82)により置き換えられてい
る。
本出願人らは、一部がグループ1インフルエンザウイルスについて特異的(例えば、国際公開第2008/028946号パンフレットに記載のCR6261)および一部がグループ2インフルエンザウイルスについて特異的(例えば、国際公開第2010/130636号パンフレットに記載のCR8020)であったワクチン接種された個体からの一次ヒトB細胞から単離された広域中和抗体を既に同定している。これらのモノクローナル抗体の詳細なエピトープの分析により、それらの特異的抗体の交差反応性の欠落の理由が明らかになった。両方の場合、異なる位置上のグループ1またはグループ2HA分子中のグリカンの存在により、抗体がグループ特異的である事実が少なくとも部分的に説明された。以下に記載の多くのグループ1および2HA分子と交差反応するCR9114様抗体の同定により、ヒト免疫系がインフルエンザウイルスに対する極めて広域の中和抗体を誘発することが可能であることが明らかになった。しかしながら、毎年のワクチン接種スキームの必要性を考慮すると、それらの抗体は、亜型H1および/またはH3の(季節性)インフルエンザウイルスによる感染後にもワクチン接種後にも明らかに誘発されず、または極めて低い程度に誘発されるにすぎない。したがって、ある実施形態において、本発明は、広域中和抗体を誘発するエピトープが免疫優性可変領域の不存在下で免疫系に提示されるように立体構造的に正確な様式のHAのステム領域を提示するポリペプチドを提供する。グリカンのパターンはH1HAおよびH3HA間で異なることが公知であり、この差はよりグループ限定抗体応答をもたらし得ることが公知であるため、異なる実施形態において、本発明のポリペプチドは、グループ2HA分子(例えば、H3のHA)をベースとする。以下の実施例3に示されるとおり、CR9114のインビトロ中和能は、H1亜型がH3亜型と比較して高い。したがって、CR9114のエピトープは、H1がH3HA分子と比較して接近可能であることが仮定され、それは多くのグループ2HA亜型に共通するHA1中のN38上のグリカンに起因し得る。この理論に拘束されるものではないが、本発明のポリペプチドがH1をベースとする場合、得られる抗体は、グループ2HA分子上のN38上のグリカンにより障害を受ける可能性がより高く、したがって、グループ2インフルエンザウイルスに対していくぶん活性に欠けることを推定することができる。したがって、グループ1およびグループ2インフルエンザウイルスの両方に対して良好な活性で作用する広域中和抗体の誘発を可能とするため、ある実施形態において、本発明のステムドメインポリペプチドは、H3HA亜型をベースとする。
ヒトは、H1またはH3亜型のHAを含む季節性インフルエンザウイルスにより頻繁に感染される。これらのインフルエンザウイルスへの曝露にもかかわらず、広域中和抗体は、天然状況では生じないことが多いことは明らかである。この理由の1つは、HA中の可変頭部領域の存在に加え、既に確認されたものと密接に関連する新たな亜型への曝露により何らかの形で応答が広域にならないことであり得る。したがって、個体をより未関連の亜型配列に曝露させることが好ましい場合がある。したがって、さらに別の実施形態において、本発明のステムドメインポリペプチドは、HA1中の38位上のアスパラギン(N)(N38)を含有し、H3亜型でないグループ2亜型のHAをベースとする。
ある実施形態において、ポリペプチドは、インフルエンザAウイルス亜型をベースとする。ある実施形態において、ポリペプチドは、H7HAをベースとしない。
上記のとおり、本発明のポリペプチドは、グループ1のインフルエンザワクチンウイルス亜型(例えば、H1およびH5など)からの親HA配列をベースとして設計されるだけでなく、グループ2からのインフルエンザ亜型、特にインフルエンザワクチンに使用されるグループ2のインフルエンザウイルス亜型、例えば、H3のHA配列もベースとし得る。本発明によれば、CR8020およびCR8043のエピトープを保存するポリペプチドを構築した。それというのも、これらの抗体は広範なグループ2株を中和し得るためで
ある(国際公開第2010/130636号パンフレット)。これらのポリペプチドにおいて、ステム領域の底部におけるベータシートおよびその周辺を可能な限り保存すべきである。それというのも、これはCR8020およびCR8043がH3HAに結合する領域であるためである。
ある実施形態において、HAドメインは、H3亜型のもの、好ましくは、A/Wisconsin/67/2005(配列番号89)、またはA/HongKong/1/1968(配列番号121)のものである。H3亜型のHAを含む他のインフルエンザAウイルスも本発明により使用することができることが当業者により理解される。
ある実施形態において、ポリペプチドは、H3HA1ドメインの1位からx位のアミノ酸、好ましくは、HA1ドメインのp位からx位のアミノ酸を含むHA1N末端ポリペプチドセグメントを含み、またはそれからなり、xは、H3HA1の56〜69位の任意のアミノ酸であり、例えば、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67または68位であり、好ましくは、xは、61、62、63または68である。ある実施形態において、HA1C末端ポリペプチドセグメントは、H3HA1ドメインのy位からC末端アミノ酸(そのアミノ酸を含む)のアミノ酸を含み、yは、H3HA1の292〜325位(それを含む)の任意のアミノ酸であり、好ましくは、yは、293、306、318または323である。
ある実施形態において、HAドメインは、H3亜型のもの、好ましくは、A/Wisconsin/67/2005(配列番号89)、またはA/HongKong/1/1968(配列番号121)のものである。
本発明によれば、頭部ドメインは、HA1配列の大部分を欠失させ、NおよびC末端配列を短いリンカーを介して再連結させることにより除去されている。欠失は、長さを変えることができるが、結合配列を介する歪みの導入を回避するためにHA1のN末端配列の最後の残基およびC末端配列の最初の残基は空間的に近接することが好ましい。H3配列において、欠失は、S62〜P322、S63〜P305およびT64〜T317(の相当位置)において導入することができる。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、ClustalまたはMuscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。配列の残留部分を直接的に結合させることができ、またはフレキシブルリンカーを導入することができる。リンカー配列は、1から50アミノ酸長であり得る。限定された長さ(10アミノ酸以下)のフレキシブルリンカー、例えば、GGG、GGGG、GSA、GSAG、GSAGSA、GSAGSAGまたは類似物が好ましい。欠失の長さは、例えば、63、64、65、66、67位(の相当物)において開始することにより欠失の残基数を減少させることにより、または欠失の長さを増加させるため、57、58、59、60もしくは61位において切断することにより変えることもできる。同様に、欠失させるべき最後のアミノ酸は、317、318、319、320、もしくは321位(の相当物)におけるもの、または欠失の長さを増加させるため、323、324、325、326、もしくは327位(の相当物)におけるものであり得る。欠失の長さの変化は、リンカー配列の長さを合致させることにより部分的に補うことができることを理解することは重要であり、すなわち、より大きい欠失はより長いリンカーと合致させることができ、逆もまた同様である。これらのポリペプチドも本発明に含まれる。
ある実施形態において、xは61であり、yは323である。
ある実施形態において、xは62であり、yは306である。
ある実施形態において、xは63であり、yは318である。
ある実施形態において、xは、62、63、64、65、66位(の相当物)、または56、57、58、59もしくは60位である。
ある実施形態において、yは、306、318、319、320、321もしくは322位(の相当物)、または324、325、326、327、もしくは328位(の相当物)である。
一実施形態において、へリックスAのC末端残基をへリックスCDのN末端残基に連結するアミノ酸配列は、配列番号89のHA2の400位上のアミノ酸〜420位上のアミノ酸のアミノ酸配列、または他のH3ウイルス株中の相当位置上のアミノ酸残基に対応し、ポリペプチドは、へリックスAのC末端残基をへリックスCDのN末端残基に連結するアミノ酸配列、すなわち、配列番号89のアミノ酸400〜420、または他のH3インフルエンザウイルス株中の相当アミノ酸残基に及ぶアミノ酸配列中の1つ以上の突然変異を含む。
ある実施形態において、血清型H3のインフルエンザHAのへリックスAのC末端残基をへリックスCDのN末端残基に連結するアミノ酸配列は、配列番号104のアミノ酸配列を含む。
本発明によれば、ポリペプチドは、へリックスAのC末端残基をへリックスCDのN末端残基に連結するアミノ酸配列中の1つ以上の突然変異を含む。ある実施形態において、ポリペプチドは、表8の1つ以上の突然変異、またはH3亜型の他のインフルエンザウイルス株中の相当突然変異を含む。
本発明によれば、HA1およびHA2間の開裂部位は除去されている。ある実施形態において、345位(番号付与は、配列番号89を指す)における開裂部位の除去は、HA0からのHA1およびHA2の形成を防止するために突然変異(R345Q)している。場合により、残基347〜351(IFGAI、融合ペプチドの一部)をさらに欠失させて水性溶媒への疎水性残基の曝露を最小化することができる。開裂における陽性電荷はH3において100%保存され、したがって、この突然変異は全ての配列中に適用することができる。
頭部ドメインの欠失により、残基400〜420のBループが水性溶媒に目下曝露されたままとなる。H3HAにおいて、このループは高度に保存される(例えば、表9)。コンセンサス配列は:401I(E/G)KTNEKFHQIEKEFSEVEGR421(配列番号104;番号付与は、配列番号89を指す)である。融合前立体構造の本発明のポリペプチドのためにこのループの溶解度を増加させ、融合後立体構造を脱安定化させるため、一部の疎水性残基を極性(S、T、N、Q)、荷電アミノ酸(R、H、K、D、E)に改変しなければならず、またはGへの突然変異によりフレキシビリティを増加させなければならない。具体的には、401、408、411、415、418位(番号付与は、配列番号89を指す)における突然変異は、本発明のポリペプチドの安定性に寄与する。
本発明のポリペプチドの融合前立体構造を安定化させるため、一次配列中で遠位であるがフォールドした融合前立体構造中で近い2つの部分間に共有結合が導入される。この目的のため、ジスルフィド架橋を本発明のポリペプチド中で、好ましくは、H3A/Wisconsin/67/2005(配列番号89)中の326および438位(の相当物)間で遺伝子操作することができる。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、
Clustal、Muscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。遺伝子操作ジスルフィド架橋は、少なくとも一方(他方が既にシステインである場合)、しかし通常、空間的に近い2つの残基をシステインに突然変異させ、それが自発的にまたは活性酸化によりそれらの残基の硫黄原子間の共有結合を形成することにより作出される。代替的システイン架橋は、H3A/Wisconsin/67/2005(配列番号89)中の334位から393位(の相当物)の間でそれらの残基のシステインへの突然変異により作出することができる。一部の場合、321位(の相当物)におけるシステインは、不所望なジスルフィド架橋の形成を回避するためにグリシンに改変される。
ある実施形態において、ポリペプチドは、以下の突然変異:F408S、I411T、F415S、V418G、I401R、K326C、S438C、T334C、I393C、C321Gの1つ以上を含む。
天然HAは、細胞表面上の三量体として存在する。三量体を一緒に保持する個々の単量体間の相互作用のほとんどは、頭部ドメイン中に局在する。したがって、頭部の除去後、三次構造は脱安定化され、したがって、トランケート分子中の単量体間の相互作用の強化は安定性を増加させる。ステムドメインにおいて、三量体化は、三量体コイルドコイルモチーフの形成により媒介される。このモチーフの増強により、より安定な三量体を作出することができる。三量体コイルドコイルの形成のためのコンセンサス配列IEAIEKKIEAIEKKIEAIEKKが、421〜441位(の相当物)において導入される。326〜438位のジスルフィド架橋の形成の妨害を回避するため、代替的なより短い配列IEAIEKKIEAIEKKIも421〜435位(の相当物)において使用した。代替例は、GCN4に由来し、三量体化することが公知の配列RMKQIEDKIEEIESKQKKIENを421〜441位において、またはより短い配列RMKQIEDKIEEIESKを421〜435位において導入することである。
本発明のポリペプチドは、得られるポリペプチドが細胞中での発現時に細胞表面上に提示されるようにHAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有し得る。他の実施形態において、522位(の相当物)からC末端の細胞質配列および膜貫通配列は、分泌(可溶性)ポリペプチドが細胞中での発現後に産生されるように除去されている。場合により、523、524、525、526、527、528または529(の相当物)から配列を欠失させることによりいくつかの追加の残基を可溶性タンパク質中に含めることができる。可溶性ポリペプチドは、三量体構造を形成することが公知の配列、すなわち、AYVRKDGEWVLL(配列番号143)(「foldon」配列)を場合によりリンカーを介して連結させて導入することによりさらに安定化させることができる。リンカーは、当業者に周知のプロトコルに従って後で処理するための開裂部位を場合により含有し得る。可溶性形態の精製を容易にするため、短いリンカー、例えば、EGRを介して連結されたタグ配列、例えば、hisタグ(HHHHHHH)を付加することができる。一部の実施形態において、リンカーおよびhisタグ配列は、foldon配列を存在させることなく付加される。
本発明によれば、HA2ドメインの530位(配列番号1による番号付与)からC末端アミノ酸のアミノ酸配列を除去し、以下の配列EGRHHHHHHH(配列番号81)、またはSGRSLVPRGSPGSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFLGHHHHHHH(配列番号82)により置き換えることができる。
ある実施形態において、HA1N末端ステムセグメントは、シグナル配列を含まない。産生の間にタンパク質の輸送を指向するリーダー配列(またはシグナル配列)(例えば、配列番号89のアミノ酸1〜17に対応)は一般に、例えば、ワクチンにおいて使用され
る最終ポリペプチド中に存在しないことが当業者により理解される。したがって、ある実施形態において、本発明によるポリペプチドは、リーダー配列を有さないアミノ酸配列を含む。
本発明によれば、ポリペプチドは、インフルエンザBのHA分子をベースとしない。インフルエンザB型ウイルス株は、厳密には、ヒトである。インフルエンザB型ウイルス株内のHA中の抗原変異は、A型株内で観察されるものよりも小さい。2つの遺伝的および抗原的に区別されるインフルエンザBウイルスの系統は、B/Yamagata/16/88(B/Yamagataとも称される)およびB/Victoria/2/87(B/Victoria)系統により表わされるとおり、ヒトにおいて循環している(Ferguson et al.,2003)。インフルエンザBウイルスにより引き起こされる疾患のスペクトルは一般にインフルエンザAウイルスにより引き起こされるものよりも軽度であるが、インフルエンザB感染について入院を要する重病が依然として頻繁に観察される。
本発明によれば、CR6261およびCR9114の特異的エピトープを模倣し、例えば、単独で、または他の予防および/もしくは治療的治療との組合せでインビボで投与された場合、交差中和抗体を誘発するために免疫原性ポリペプチドとして使用することができるポリペプチドが提供される。「交差中和抗体」は、少なくとも2つ、好ましくは、少なくとも3つ、4つ、もしくは5つの系統発生グループ1のインフルエンザAウイルスの異なる亜型、および/または少なくとも2つ、好ましくは、少なくとも3つ、4つ、もしくは5つの系統発生グループ2のインフルエンザAウイルスの異なる亜型、および/または少なくとも2つのインフルエンザBウイルスの異なる亜型、特に、CR6261およびCR9114により中和される少なくとも全てのウイルス株を中和し得る抗体を意味する。
本発明のポリペプチドは、全長HA1を含まない。ある実施形態において、免疫原性ポリペプチドは、HA0よりも実質的に小型であり、好ましくは、全てまたは実質的に全てのHAの球状頭部を欠く。好ましくは、免疫原性ポリペプチドは、360アミノ酸長以下、好ましくは、350、340、330、320、310、305、300、295、290、285、280、275、または270アミノ酸長以下である。一実施形態において、免疫原性ポリペプチドは、約250から約350、好ましくは、約260から約340、好ましくは、約270から約330、好ましくは、約270から約330アミノ酸長である。
ある実施形態において、ポリペプチドは、抗体CR6261および/またはCR9114に選択的に結合する。一実施形態において、ポリペプチドは、抗体CR8057に結合しない。一実施形態において、CR6261は、配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み;CR9114は、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一実施形態において、CR8057は、配列番号22のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
上記のとおり、ポリペプチドは、HA1C末端ステムセグメントに0〜50アミノ酸残基の結合配列により共有結合しているHA1N末端ステムセグメントを含むインフルエンザヘマグルチニンHA1ドメインを含む。結合配列は、天然HAにおいても野生型HAにおいても生じない。ある実施形態において、リンカーは、1つのアミノ酸残基、2つ以下のアミノ酸残基、3つ以下のアミノ酸残基、4つ以下のアミノ酸残基、5つ以下のアミノ酸残基、10以下のアミノ酸残基、15以下のアミノ酸残基、または20以下のアミノ酸
残基または30以下のアミノ酸残基または40以下のアミノ酸残基または50以下のアミノ酸残基を含むペプチドである。具体的な実施形態において、結合配列は、G、GS、GGG、GSG、GSA、GSGS、GSAG、GGGG、GSAGS、GSGSG、GSAGSA、GSAGSAG、およびGSGSGSGからなる群から選択される配列である。
本発明は、本発明のポリペプチドを提供する方法、特に本発明によるHAステムドメインポリペプチドのアミノ酸配列を提供する方法、およびそれらの方法により得られるまたは得られたポリペプチドも提供する。ある実施形態において、本方法は:
−インフルエンザHA0アミノ酸配列、例えば、血清型H1、H5またはH3のインフルエンザHA0配列を提供するステップ;
−好ましくは、HA1のC末端アミノ酸をアルギニン(R)またはリジン(K)以外のアミノ酸に突然変異させることにより、HA1およびHA2間の開裂部位を除去するステップ;
−球状頭部ドメインのアミノ酸配列をHA0配列から除去するステップ(このステップは、x位上のアミノ酸およびy位上のアミノ酸間のHA1ドメインのセグメントを欠失させ、こうして得られたHA1のN末端セグメント(HA1の1位上のアミノ酸からx位上のアミノ酸(そのアミノ酸を含む)に及ぶ)およびC末端セグメント(HA1のアミノ酸yからC末端アミノ酸に及ぶ)を場合により0〜50アミノ酸の結合配列を介して再連結させることにより行う);
−好ましくは、へリックスAのC末端残基をへリックスCDのN末端残基に連結するアミノ酸配列中、好ましくは、特に、MNTQFTAVGKEFN(H/K)LE(K/R)(配列番号17)またはH3HAについてはI(E/G)KTNEKFHQIEKEFSEVEGR421(配列番号104)のアミノ酸配列を含むH1HAのアミノ酸402〜418に及ぶアミノ酸配列中に1つ以上の突然変異を導入することにより、改変HAの融合前立体構造の安定性を増加させ、融合後立体構造を脱安定化させるステップ(突然変異は、好ましくは、疎水性アミノ酸残基の親水性アミノ酸残基への置換を含む);
−HAステムドメインポリペプチド中に1つ以上のジスルフィド架橋を導入するステップを含む。
本発明によれば、HA1およびHA2間の開裂部位の除去は、P1位におけるR(わずかな場合においてK)のQへの突然変異により達成することができる(例えば、開裂部位(配列番号1中の343位)の命名法の説明については、Sun et al,2010参照。Qへの突然変異が好ましいが、S、T、N、DまたはEも代替例である。
頭部ドメインの除去は、例えば、配列番号1からのアミノ酸53から320を欠失させることにより達成することができる。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、ClustalまたはMuscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。配列の残留部分を直接的に結合させることができ、またはフレキシブルリンカーを導入することができる。リンカー配列は、1から50アミノ酸長であり得る。限定された長さ(10アミノ酸以下)のフレキシブルリンカー、例えば、GGG、GGGG、GSA、GSAG、GSAGSA、GSAGSAGまたは類似物が好ましい。欠失の長さは、例えば、欠失を(x)位(の相当物)において、例えば、54、55、56、57もしくは58位において開始することにより、または欠失の長さを増加させるため、47、48、49、50、51、もしくは52位において切断することにより変えることもできる。同様に、欠失させるべき最後のアミノ酸は、(y)位(の相当物)、例えば、315、316、317、318もしくは319位におけるもの、または欠失の長さを増加させるため、321、322、323、324、もしくは325位(の相当物)におけるものであり得る。欠失の長さの変化は、リンカー配列の長さを合致させることにより部分的に補うことができることを理解することは重要であり、すなわち、より大きい
欠失はより長いリンカーと合致させることができ、逆もまた同様である。これらのポリペプチドも本発明により包含される。
本発明によれば、AへリックスおよびCDへリックス間のループの溶解度が増加される。このループは、H1A/Brisbane/59/2007(配列番号1)中の残基402から418(の相当物)により形成される。したがって、改変HAの融合前立体構造の安定性が増加され、融合後立体構造が脱安定化される。このループは、以下の表6において確認することができるとおり、H1配列中で高度に保存される。これは、例えば、前記ループ中のアミノ酸I、L、FまたはVを親水性相当物により置き換えることにより達成することができる。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、ClustalまたはMuscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。グリシンへの突然変異は、融合後立体構造を脱安定化させる。それというのも、このアミノ酸の高いフレキシビリティがこのHA配列の一部により形成され得る融合後へリックスの安定性の減少をもたらすためである。血清型H1のインフルエンザHAの402〜418のループを記載するコンセンサス配列は、(配列番号17)MNTQFTAVGKEFN(H/K)LE(K/R)である。本発明のあるポリペプチドにおいて、406、409、413位および/または416位におけるアミノ酸(または配列アラインメントから決定されたそれらの相当物)は、極性(S、T、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)またはフレキシブル(G)アミノ酸である。これらの部位における突然変異の組合せも可能であり、例えば、配列番号10および配列番号14におけるF406S、V409T、L416Sである。一部の場合、コンセンサスアミノ酸を回復させるための突然変異が好ましく、例えば、VもしくはMが404位(Tへ)、Vが408位(Aへ)もしくは410位(Gへ)またはIが414位(Nへ)における場合であり;これらの特定のアミノ酸を有する配列の発生率は極めて低い。本発明のポリペプチドを特性決定する上記の突然変異の概要を表6に挙げる。
本発明によれば、1つ以上のジスルフィド架橋がステムドメインポリペプチド中に、好ましくは、H1A/Brisbane/59/2007:配列番号13〜16中の324および436位(またはそれらの相当物)のアミノ酸間に導入される。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、Clustal、Muscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。遺伝子操作ジスルフィド架橋は、少なくとも一方(他方が既にシステインである場合)、しかし通常、空間的に近い2つの残基をシステインに突然変異させ、それが自発的にまたは活性酸化によりそれらの残基の硫黄原子間の共有結合を形成することにより作出される。
前記方法により得られるポリペプチドも本発明の一部である。
天然HAは、細胞表面上の三量体として存在する。三量体を一緒に保持する個々の単量体間の相互作用のほとんどは、頭部ドメイン中に局在する。したがって、頭部の除去後、三次構造は脱安定化され、したがって、トランケート分子中の単量体間の相互作用の強化は安定性を増加させる。ステムドメインにおいて、三量体化は、三量体コイルドコイルモチーフの形成により媒介される。このモチーフの増強により、より安定な三量体を作出することができる。本発明によれば、三量体コイルドコイルの形成のためのコンセンサス配列、IEAIEKKIEAIEKKIE(配列番号83)を、本発明のポリペプチド中に418から433位(の相当物)において導入することができる。ある実施形態において、GCN4に由来し、さらに三量体化することが公知の配列MKQIEDKIEEIESKQ(配列番号84)が、419〜43位(の相当物)において導入される。ある実施形態において、三量体界面は、M420、L423、V427、G430をイソロイシンに改変することにより安定化される。
ある実施形態において、ポリペプチドは、配列番号3〜16、配列番号44〜53、配列番号111〜114、配列番号119〜120、配列番号125、126、130、配列番号144〜175および配列番号177〜187からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
ある実施形態において、ポリペプチドは、配列番号45、配列番号113および配列番号130からなる群から選択される。
産生の間にタンパク質の輸送を指向するリーダー配列(またはシグナル配列)(例えば、配列番号1のアミノ酸1〜17に対応)は一般に、例えば、ワクチンにおいて使用される最終ポリペプチド中に存在しないことが当業者により理解される。したがって、ある実施形態において、本発明によるポリペプチドは、リーダー配列を有さないアミノ酸配列を含む。
インフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドは、当業者に好適と考えられる任意の技術、例として、下記の技術に従って調製することができる。
したがって、本発明の免疫原性ポリペプチドは、当分野において公知の標準的方法によりDNA配列として合成し、当分野において公知の好適な制限酵素および方法を使用してクローニングし、続いてインビトロまたはインビボで発現させることができる。したがって、本発明はまた、上記のポリペプチドをコードする核酸分子に関する。本発明はさらに、本発明のポリペプチドをコードする核酸を含むベクターに関する。ある実施形態において、本発明による核酸分子は、ベクター、例えば、プラスミドの一部である。このようなベクターは、当業者に周知の方法により容易に操作することができ、例えば、原核および/または真核細胞中で複製し得るように設計することができる。さらに、多くのベクターは、直接的に、またはそれから単離された所望の断片の形態で真核細胞の形質転換に使用することができ、全部または一部としてそのような細胞のゲノム中に組み込まれ、所望の核酸をゲノム中に含む安定な宿主細胞をもたらす。使用されるベクターは、DNAのクローニングに好適であり、関心対象の核酸の転写に使用することができる任意のベクターであり得る。宿主細胞が使用される場合、ベクターは組込みベクターであることが好ましい。あるいは、ベクターは、エピソーム複製ベクターであり得る。
当業者は、好適な発現ベクターを選択し、本発明の核酸配列を機能的に挿入することができる。ポリペプチドをコードする核酸配列の発現を得るため、発現を駆動し得る配列を、ポリペプチドをコードする核酸配列に機能的に結合させ、タンパク質またはポリペプチドを発現可能なフォーマットでコードする組換え核酸分子をもたらすことができることは当業者に周知である。一般に、プロモーター配列が、発現させるべき配列の上流に配置される。多くの発現ベクターが当分野において利用可能であり、例えば、InvitrogenのpcDNAおよびpEFベクター系、BD SciencesからのpMSCVおよびpTK−Hyg、StratageneからのpCMV−Scriptなどであり、それらを使用して好適なプロモーターおよび/または転写終結配列、ポリA配列などを得ることができる。関心対象のポリペプチドをコードする配列が、コードされるポリペプチドの転写および翻訳を支配する配列に関して適切に挿入される場合、得られる発現カセットは、関心対象のポリペプチドを産生するために有用であり、それは発現と称される。発現を駆動する配列には、プロモーター、エンハンサーなど、およびそれらの組合せが含まれ得る。これらは、宿主細胞中で機能し得、それによりそれらに機能的に結合している核酸配列の発現を駆動し得るべきである。当業者は、宿主細胞中での遺伝子の発現を得るために種々のプロモーターを使用することができることを把握する。プロモーターは、構成的または調節的であり得、種々の資源、例として、ウイルス、原核、もしくは真核資源から得ることができ、または人工的に設計することができる。関心対象の核酸の発現は、天
然プロモーターもしくはその誘導体から、または完全に異種のプロモーター(Kaufman,2000)からのものであり得る。一部の周知で、真核細胞中での発現にかなり使用されるプロモーターは、ウイルス、例えば、アデノウイルスに由来するプロモーター、例えば、E1Aプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)に由来するプロモーター、例えば、CMV前初期(IE)プロモーター(本発明においてCMVプロモーターと称される)(例えば、pcDNA、Invitrogenから得られる)、シミアンウイルス40(SV40)に由来するプロモーター(Das et al,1985)などを含む。好適なプロモーターは、真核細胞からも由来し得、例えば、メタロチオネイン(MT)プロモーター、伸長因子1α(EF−1α)プロモーター(Gill et al.,2001)、ユビキチンCまたはUB6プロモーター(Gill et al.,2001)、アクチンプロモーター、免疫グロブリンプロモーター、熱ショックプロモーターなどである。プロモーター機能およびプロモーターの強度についての試験は、当業者の定型事項であり、一般に、例えば、試験遺伝子、例えば、プロモーター配列後方のlacZ、ルシフェラーゼ、GFPなどのクローニング、および試験遺伝子の発現試験を包含し得る。無論、プロモーターは、その配列の欠失、付加、突然変異により変え、機能性について試験して新たな、減衰した、または改善されたプロモーター配列を見出すことができる。本発明によれば、最適な真核細胞中で高い転写レベルを付与する強力なプロモーターが好ましい。
当業者に周知の方法を使用して構築物を真核細胞(例えば、植物、真菌、酵母または動物細胞)または大腸菌(E.coli)などの好適な原核発現系中に形質移入することができる。一部の場合、好適な「タグ」配列(例えば、限定されるものではないが、his、myc、strep、またはflagタグなど)または完全タンパク質(例えば、限定されるものではないが、マルトース結合タンパク質またはグルタチオンSトランスフェラーゼなど)を本発明の配列に付加して細胞または上清からのポリペプチドの精製および/または同定を可能とすることができる。場合により、特異的タンパク質分解部位を含有する配列を含めて後でタグをタンパク質分解消化により除去することができる。
精製ポリペプチドは、当分野において公知の分光法(例えば、円偏光二色分光法、フーリエ変換赤外分光法およびNMR分光法またはX線結晶分析法)により分析してへリックスおよびベータシートなどの所望の構造の存在を調査することができる。以前に記載された広域中和抗体(CR6261、CR9114、CR8057)への本発明のポリペプチドの結合を調査するためにELISA、OctetおよびFACSなどを使用することができる。したがって、正確な立体構造を有する本発明によるポリペプチドを選択することができる。
本発明はさらに、治療有効量の本発明のポリペプチドおよび/または核酸の少なくとも1つを含む免疫原性組成物に関する。ある実施形態において、組成物は、1つのインフルエンザ亜型のHAからの(またはそれをベースとする)、例えば、H1またはH7亜型のHAを含むインフルエンザウイルスのHAをベースとするヘマグルチニンステムドメインを含むポリペプチドを含む。ある実施形態において、組成物は、2つ以上の異なるインフルエンザ亜型のHAをベースとするヘマグルチニンステムドメインを含むポリペプチドを含み、例えば、組成物は、H1亜型のHAをベースとするヘマグルチニンステムドメインを含むポリペプチドおよびH7亜型のHAをベースとするヘマグルチニンステムドメインを含むポリペプチドの両方を含む。
免疫原性組成物は、好ましくは、薬学的に許容可能な担体をさらに含む。本文脈において、用語「薬学的に許容可能な」は、担体が用いられる投与量および濃度において、それが投与される対象中で不所望な効果も有害効果も引き起こさないことを意味する。このような薬学的に許容可能な担体および賦形剤は、当分野において周知である(Reming
ton’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,A.R.Gennaro,Ed.,Mack Publishing Company[1990];Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins,S.Frokjaer and L.Hovgaard,Eds.,Taylor & Francis[2000];およびHandbook of Pharmaceutical Excipients,3rd edition,A.Kibbe,Ed.,Pharmaceutical Press[2000]参照)。用語「担体」は、組成物がともに投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、またはビヒクルを指す。生理食塩溶液および水性デキストローズおよびグリセロール溶液は、例えば、特に注射溶液のための液体担体として用いることができる。正確な配合は、投与の様式に適合すべきである。ポリペプチドおよび/または核酸分子は、好ましくは、滅菌溶液として配合および投与される。滅菌溶液は、滅菌濾過により、または当分野において自体公知の他の方法により調製される。次いで、溶液は、凍結乾燥または医薬投与容器中に充填することができる。溶液のpHは、一般に、pH3.0から9.5、例えば、pH5.0から7.5の範囲である。
本発明はまた、対象において免疫応答を誘導する方法であって、対象に上記のポリペプチド、核酸分子および/または免疫原性組成物を投与することを含む方法に関する。本発明による対象は、好ましくは、感染性疾患惹起作用物質、特にインフルエンザウイルスにより感染され得、またはそうでなければ免疫応答の誘導から利益を受け得る哺乳動物であり、そのような対象は、例えば、げっ歯類、例えば、マウス、フェレット、または家庭もしくは農場動物、または非ヒト霊長類、またはヒトである。好ましくは、対象は、ヒト対象である。したがって、本発明は、特にグループ1および/もしくはグループ2インフルエンザAウイルス、例えば、H1、H2、H3、H4、H5、H7および/もしくはH10亜型のHAを含むインフルエンザウイルス、ならびに/またはインフルエンザBウイルスのインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)に対する免疫応答を、本明細書に記載のポリペプチド、核酸および/または免疫原性組成物を利用する対象において誘導する方法を提供する。一部の実施形態において、誘導される免疫応答は、グループ1および/もしくはグループ2インフルエンザAウイルス亜型ならびに/またはインフルエンザBウイルスにより引き起こされるインフルエンザウイルス感染を予防および/または治療するために有効である。一部の実施形態において、本明細書に記載のポリペプチド、核酸および/または免疫原性組成物により誘導される免疫応答は、インフルエンザAウイルスの2、3、4、5もしくは6つの亜型および/またはインフルエンザBウイルスにより引き起こされるインフルエンザAおよび/またはBウイルス感染を予防および/または治療するために有効である。
小型タンパク質および/または核酸分子は強力な免疫応答を常に有効に誘導するわけではないことが周知であるため、アジュバントを添加することによりポリペプチドおよび/または核酸分子の免疫原性を増加させることが必要であり得る。ある実施形態において、本明細書に記載の免疫原性組成物は、アジュバントを含み、またはそれとの組合せで投与される。本明細書に記載の組成物との組合せ投与のためのアジュバントは、前記組成物の投与前、投与と同時に、または投与後に投与することができる。好適なアジュバントの例には、アルミニウム塩、例えば、水酸化アルミニウムおよび/またはリン酸アルミニウム;油−エマルション組成物(または水中油型組成物)、例として、スクアレン−水エマルション、例えば、MF59(例えば、国際公開第90/14837号パンフレット参照);サポニン配合物、例えば、QS21および免疫刺激複合体(ISCOM)など(例えば、米国特許第5,057,540号明細書;国際公開第90/03184号パンフレット、国際公開第96/11711号パンフレット、国際公開第2004/004762号パンフレット、国際公開第2005/002620号パンフレット参照);細菌または微生物誘導体が含まれ、その例は、モノホスホリルリピドA(MPL)、3−O−脱アシル化
MPL(3dMPL)、CpG−モチーフ含有オリゴヌクレオチド、ADP−リボシル化細菌毒素またはその突然変異体、例えば、大腸菌(E.coli)熱不安定エンテロトキシンLT、コレラ毒素CT、百日咳毒素PT、または破傷風トキソイドTT、Matrix M(Isconova)である。さらに、公知の免疫強化技術、例えば、免疫応答を向上させることが当分野において公知のタンパク質(例えば、破傷風トキソイド、CRM197、rCTB、細菌性フラジェリンなど)への本発明のポリペプチドの融合またはビロソーム中へのポリペプチドの包含、またはそれらの組合せを使用することができる。使用することができる他の非限定的な例は、例えば、Coffman et al.(2010)により開示されている。
一実施形態において、本発明のインフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドは、ウイルス様粒子(VLP)ベクター中に取り込まれる。VLPは、一般に、典型的には、ウイルスの構造タンパク質に由来するウイルスポリペプチドを含む。好ましくは、VLPは、複製し得ない。ある実施形態において、VLPは、ウイルスの全ゲノムを欠き得、またはウイルスのゲノムの一部を含み得る。一部の実施形態において、VLPは、細胞に感染し得ない。一部の実施形態において、VLPは、それらの表面上で当業者に公知のウイルス(例えば、ウイルス表面糖タンパク質)または非ウイルス(例えば、抗体またはタンパク質)標的化部分の1つ以上を発現させる。
具体的な実施形態において、本発明のポリペプチドは、ビロソーム中に取り込まれる。本発明によるポリペプチドを含有するビロソームは、当業者に公知の技術を使用して産生することができる。例えば、ビロソームは、精製ウイルスを破壊し、ゲノムを抽出し、粒子をウイルスタンパク質(例えば、インフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチド)および脂質とリアソートさせてウイルスタンパク質を含有する脂質粒子を形成することにより産生することができる。
本発明はまた、特にワクチンとして使用される、インフルエンザHAに対する対象における免疫応答を誘導するための上記のポリペプチド、核酸および/または免疫原性組成物に関する。したがって、インフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、またはそのような核酸を含むベクターまたは本明細書に記載のポリペプチドは、インフルエンザウイルスに対する、例えば、インフルエンザウイルスヘマグルチニンのステム領域に対する中和抗体を誘発させるために使用することができる。本発明は特に、系統発生グループ1および/もしくは系統発生グループ2のインフルエンザAウイルスならびに/またはインフルエンザBウイルスにより引き起こされる疾患または病態の予防および/または治療においてワクチンとして使用される上記のポリペプチド、核酸、および/または免疫原性組成物に関する。一実施形態において、ワクチンは、系統発生グループ1および/または2の2、3、4、5、6もしくはそれより多い異なる亜型ならびに/またはインフルエンザBウイルスにより引き起こされる疾患の予防および/または治療において使用することができる。本発明のポリペプチドは、合成後にインビトロで、または好適な細胞発現系、例として、細菌および真核細胞中で使用することができ、またはインビボでそれが必要とされる対象中で、免疫原性ポリペプチドをコードする核酸を発現させることにより発現させることができる。このような核酸ワクチンは、任意の形態、例として、ネイキッドDNA、プラスミド、またはウイルスベクター、例として、アデノウイルスベクターを取り得る。
本発明によるポリペプチド、核酸分子、および/または免疫原性組成物の投与は、標準的な投与経路を使用して実施することができる。非限定的な例には、非経口投与、例えば、静脈内、皮内、経皮、筋肉内、皮下など、または粘膜投与、例えば、鼻腔内、経口などが含まれる。当業者は、本発明によるポリペプチド、核酸分子、および/または免疫原性組成物を投与して免疫応答を誘導する種々の可能性を決定することができる。ある実施形
態において、ポリペプチド、核酸分子、および/または免疫原性組成物(またはワクチン)は、2回以上、すなわち、いわゆる同種プライムブーストレジメンで投与される。ポリペプチド、核酸分子、および/または免疫原性組成物が2回以上投与されるある実施形態において、第2の用量の投与は、例えば、第1の用量の投与後1週間以上の時間間隔後、第1の用量の投与後2週間以上、第1の用量の投与後3週間以上、第1の用量の投与後1ヵ月以上、第1の用量の投与後6週間以上、第1の用量の投与後2ヵ月以上、第1の用量の投与後3ヵ月以上、第1の用量の投与後4ヵ月以上など、ポリペプチド、核酸分子、および/または免疫原性組成物の第1の用量の投与後数年まで実施することができる。ワクチンを第1のプライミング投与後に2回以上のブースト投与が続くように3回以上、例えば、3回、4回など投与することも可能である。他の実施形態において、本発明によるポリペプチド、核酸分子、および/または免疫原性組成物は、1回のみ投与される。
ポリペプチド、核酸分子、および/または免疫原性組成物は、プライムまたはブーストのいずれかとして、異種プライム−ブーストレジメンで投与することもできる。
本発明は、本明細書に記載のポリペプチド、核酸および/または組成物を利用して対象においてインフルエンザウイルス疾患を予防および/または治療する方法をさらに提供する。具体的な実施形態において、対象においてインフルエンザウイルス疾患を予防および/または治療する方法は、それが必要とされる対象に有効量の上記のポリペプチド、核酸および/または免疫原性組成物を投与することを含む。治療有効量は、グループ1もしくは2インフルエンザAウイルス、および/またはインフルエンザBウイルスによる感染から生じる疾患または病態の予防、改善および/または治療に有効な本明細書に定義のポリペプチド、核酸、および/または組成物の量を指す。予防は、インフルエンザウイルスの拡散の阻害もしくは低減またはインフルエンザウイルスによる感染に伴う症状の1つ以上の発症、発現もしくは進行の阻害もしくは低減を包含する。本明細書において使用される改善は、可視もしくは知覚疾患症状、ウイルス血症、または任意の他の計測可能なインフルエンザ感染の症候の低減を指し得る。
治療が必要とされる者には、グループ1もしくはグループ2インフルエンザAウイルス、またはインフルエンザBウイルスによる感染から生じた病態により既に苦痛を受ける者、およびインフルエンザウイルスによる感染を予防すべき者が含まれる。したがって、本発明のポリペプチド、核酸および/または組成物は、未投薬の対象、すなわち、インフルエンザウイルス感染により引き起こされる疾患を有さない、もしくはインフルエンザウイルス感染により感染されたことがなく、現在も感染されていない対象、またはインフルエンザウイルスにより既に感染され、および/または感染されたことのある対象に投与することができる。
一実施形態において、予防および/または治療は、インフルエンザウイルス感染を受けやすい患者群において標的化することができる。このような患者群には、限定されるものではないが、例えば、高齢(例えば、≧50歳、≧60歳、好ましくは、≧65歳)、若年(例えば、≦5歳、≦1歳)、入院患者および抗ウイルス化合物により治療されたが、不適切な抗ウイルス応答を示した患者が含まれる。
別の実施形態において、ポリペプチド、核酸および/または免疫原性組成物は、対象に1つ以上の他の活性剤、例えば、既存または将来のインフルエンザワクチン、モノクローナル抗体および/または抗ウイルス剤、および/または抗菌剤、および/または免疫調節剤との組合せで投与することができる。1つ以上の他の活性剤は、インフルエンザウイルス疾患の治療および/または予防において有益であり得、またはインフルエンザウイルス疾患に伴う症状または病態を改善し得る。一部の実施形態において、1つ以上の他の活性剤は、鎮痛剤、抗発熱薬、または呼吸を緩和もしくは補助する治療物である。
本発明のポリペプチドおよび/または核酸分子の投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調整することができる。好適な投与量範囲は、例えば、0.1〜100mg/kg体重、好ましくは、1〜50mg/kg体重、好ましくは、0.5〜15mg/kg体重であり得る。用いるべきポリペプチドおよび/または核酸分子の正確な投与量は、例えば、投与経路、および感染またはそれにより引き起こされる疾患の重症度に依存し、医師の判断および各対象の状況に従って決定すべきである。例えば、有効用量は、患者の標的部位、生理学的状態(例として、年齢、体重、健康)に応じて変動し、治療が予防的または治療的であるかを問わない。通常、患者は、ヒトであるが、非ヒト哺乳動物、例として、トランスジェニック哺乳動物を治療することもできる。治療投与量は、安全性および効力を最適化するように最適に力価測定される。
本発明のポリペプチドは、潜在的な治療候補物として同定されたモノクローナル抗体の結合を確認するために使用することもできる。さらに、本発明のポリペプチドは、診断ツールとして、例えば、本発明のポリペプチドに結合し得るそのような個体の血清中の抗体が存在するか否かを確認することにより個体の免疫状態を試験するために使用することができる。したがって、本発明はまた、患者におけるインフルエンザ感染の存在を検出するインビトロ診断法であって、a)前記患者から得られた生物学的試料を本発明によるポリペプチドと接触させるステップ;およびb)抗体−抗原複合体の存在を検出するステップを含む方法に関する。
本発明のポリペプチドは、新たな結合分子を同定するため、または既存の結合分子、例えば、モノクローナル抗体および抗ウイルス剤を改善するために使用することもできる。
本発明を以下の実施例および図面においてさらに説明する。実施例は、本発明の範囲を決して限定するものではない。
実施例1
新規グループ1およびグループ2交差中和抗体:CR9114の同定
末梢血を正常健常ドナーから静脈穿刺によりEDTA抗凝固試料管中に回収した。scFvファージディスプレイライブラリーを、本質的に本明細書に参照により組み込まれる国際公開第2008/028946号パンフレットに記載のとおりに得た。選択は、インフルエンザA亜型H1(A/New Caledonia/20/99)、H3(A/Wisconsin/67/2005)、H4(A/Duck/HongKong/24/1976)、H5(A/Chicken/Vietnam/28/2003)、H7(A/Netherlands/219/2003)およびH9(A/HongKong/1073/99)の組換えヘマグルチニン(HA)に対して実施した。2つの連続選択ラウンドを個々の一本鎖ファージ抗体の単離前に実施した。第2の選択ラウンド後、個々の大腸菌(E.coli)コロニーを使用してモノクローナルファージ抗体を調製した。上記のスクリーニングにおいて得られた一本鎖ファージ抗体を含有する選択上清を、ELISAにおいて特異性、すなわち、異なるHA抗原への結合についてバリデートした。この目的のため、バキュロウイルス発現組換えH1(A/New Caledonia/20/99)、H3(A/Wisconsin/67/2005)、H5(A/Vietnam/1203/04)H7(A/Netherlands/219/2003)、およびB(B/Ohio/01/2005)HA(Protein Sciences,CT,USA)を、Maxisorp(商標)ELISAプレートにコートした。得られた一本鎖ファージ抗体のうち、一本鎖ファージ抗体SC09−114は、組換えインフルエンザAH1、H3、H5、H7およびインフルエンザBHAに特異的に結合することが示された。SC09−114の結合および特異性をFACS分析によりバリデートした。この目的
のため、全長組換えインフルエンザA亜型H1(A/New Caledonia/20/1999)、H3(A/Wisonsin/67/2005)およびH7(A/Netherlands/219/2003)HAを、PER.C6細胞の表面上で発現させた。SC09−114は、インフルエンザA亜型H1、H3およびH7HAに特異的に結合することが示された。scFvの重鎖および軽鎖可変領域を既に記載(国際公開第2008/028946号パンフレット)のとおりクローニングした。ヒトIgG1重鎖および軽鎖をコードする得られた発現構築物を、293T細胞との組合せで一過的に発現させ、ヒトIgG1抗体CR9114を含有する上清を得、それを標準的な精製手順を使用して産生した。CR9114の重鎖および軽鎖のCDRのアミノ酸配列を表1に挙げる。重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は以下に挙げる。
実施例2
CR9114の交差結合反応性
CR9114を、ELISAにおいて結合特異性、すなわち、異なるHA抗原への結合についてバリデートした。この目的のため、バキュロウイルス発現組換えH1(A/New Caledonia/20/1999)、H3(A/Wisconsin/67/2005)、H5(A/Vietnam/1203/04、H7(A/Netherlands/219/2003)およびH9(A/HongKong/1073/99)HA(Protein Sciences,CT,USA)をMaxisorp(商標)ELISAプレートにコートした。対照として、未関連IgGのCR4098を使用した。CR114は、試験された全ての組換えHAに対する異種亜型交差結合活性を有することが示された。表2参照。
さらに、抗体を異種亜型結合についてFACS分析により試験した。この目的のため、全長組換えインフルエンザA亜型H1(A/New Caledonia/20/1999)、H3(A/Wisonsin/67/2005)およびH7(A/Netherlands/219/2003)HAを、PER.C6細胞の表面上で発現させた。細胞をCR9114と1時間インキュベートし、次いでPBS+0.1%のBSAによる3回の洗浄ステップを行った。結合した抗体は、PEコンジュゲート抗ヒト抗体を使用して検出した。対照として、未形質移入PER.C6細胞を使用した。CR9114は、インフルエンザA亜型H1、H3およびH7HAに対する交差結合活性を示したが、野生型PER.C6細胞は示さなかった。表2参照。
実施例3
CR9114の交差中和活性
CR9114が複数のインフルエンザA株を遮断し得たか否かを決定するため、追加のインビトロウイルス中和アッセイ(VNA)を実施した。VNAは、MDCK細胞(ATCC CCL−34)について実施した。MDCK細胞をMDCK細胞培養培地(抗生物質、20mMのHepesおよび0.15%(w/v)の重炭酸ナトリウムが補給されたMEM培地(完全MEM培地)に10%(v/v)のウシ胎仔血清が補給されたもの)中で培養した。アッセイにおいて使用されたH1(A/WSN/33、A/New Caledonia/20/1999、A/Solomon Islands/IVR−145(A/Solomon Islands/3/2006の高増殖リアソータント)、A/Brisbane/59/2007、A/NYMC/X−181(A/California/07/2009の高増殖リアソータント)、H2(A/Env/MPU3156/05)、H3(A/HongKong/1/68、A/Johannesburg/33/94、A/Panama/2000/1999、A/Hiroshima/52/2005、A/Wisconsin/67/2005およびA/Brisbane/10/2007)、H4(A/WF/HK/MPA892/06)、H5(PR8−H5N1−HK97(A/HongKong/156/97およびA/PR/8/34の6:2リアソ
ータント)およびA/Eurasian Wigeon/MPF461/07)、H6(A/Eurasian Wigeon/MPD411/07)、H7(NIBRG−60(A/Mallard/Netherlands/12/2000の6:2リアソータント)およびPR8−H7N7−NY(A/New York/107/2003(H7N7)およびA/PR/8/34の7:1リアソータント))、H8(A/Eurasian Wigeon/MPH571/08)H9(A/HongKong/1073/99およびA/Chick/HK/SSP176/09)、H10(A/Chick/Germany/N/49)およびH14(PR8−H14N5(A/mallard/Astrakhan/263/1982(H14N5)およびA/PR/8/34の6:2リアソータント))株を全て5.7×10TCID50/ml(1ml当たりの50%組織培養感染用量)の力価に希釈し、力価は、SpearmanおよびKarberの方法に従って計算した。IgG調製物(200μg/ml)を完全MEM培地中で4つ組のウェル中で段階的に2倍希釈(1:2〜1:512)した。それぞれのIgG希釈物の25μlを、ウイルス懸濁液(100TCID50/25μl)の25μlと混合し、37℃において1時間インキュベートした。次いで、懸濁液を、50μlの完全MEM培地中でコンフルエントMDCK培養物を含有する96ウェルプレート上に2つ組で移した。使用前、MDCK細胞をMDCK細胞培養培地中で1ウェル当たり3×10個の細胞において播種し、細胞がコンフルエントに達するまで増殖させ、300〜350μlのPBS、pH7.4により洗浄し、最後に50μlの完全MEM培地をそれぞれのウェルに添加した。接種した細胞を37℃において3〜4日間培養し、細胞変性効果(CPE)の発現について毎日観察した。CPEを陽性対照と比較した。
CR9114は、全ての試験インフルエンザA亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9およびH10ウイルスの代表株に対する異種亜型交差中和活性を有することが示された。表3参照。
実施例4
H1HAをベースとするCR6261およびCR9114の保存ステムドメインエピトープを含むステムドメインポリペプチドの設計
広域交差中和効力を有するインフルエンザウイルスヘマグルチニンに対する完全ヒトモノクローナル抗体を事前に同定した。CR6261(国際公開第2008/028946号パンフレットに記載)は、系統発生グループ1のインフルエンザAウイルスに対する広域交差中和活性を有することが示された。さらに、上記のCR9114は、系統発生グループ1および2の両方のインフルエンザAウイルスならびにインフルエンザBウイルスに結合し、中和し得ることが示されている。機能的および構造的分析は、これらの抗体が膜融合プロセスを妨げ、インフルエンザHAタンパク質のステムドメイン中で高度に保存されたエピトープに対して指向されることを明らかにした(Throsby et al.(2008);Ekiert et al.(2009)国際公開第2008/028946号パンフレット、および同時係属出願EP11173953.8号明細書)。
本発明をもたらした研究において、これらのエピトープを含有するHAのステムドメインを含む新たな分子を設計し、例えば、広範囲のインフルエンザ株に対する保護を誘導するワクチンとして使用することができるユニバーサルエピトープベース免疫原性ポリペプチドを作出した。本質的には、高度に変異性の免疫優性部分、すなわち、頭部ドメインを最初に全長HA分子から除去して「mini−HA」とも称されるHAステムドメインポリペプチドを作出する。このように、免疫応答は、広域中和抗体についてのエピトープが局在するステムドメインに対して再指向される。抗体CR6261およびCR9114は、新たに作出された分子の正確なフォールディングを調べるため、および中和エピトープの存在を確認するために使用される。
したがって、本発明のポリペプチドは、膜近位ステムドメインHA分子の保存エピトープを、膜遠位頭部ドメイン中に存在する優性エピトープの不存在下で免疫系に提示する。この目的のため、頭部ドメインを構成するHA0タンパク質の一次配列の一部を除去し、直接的に、または短いフレキシブル結合配列(「リンカー」)を導入することにより再連結させて鎖の連続性を回復させる。得られた配列を、HA0分子の残留部分の天然三次元構造を安定化する規定の突然変異を導入することによりさらに改変する。
ウイルス中のHA分子の機能は、細胞表面受容体シアル酸に結合し、エンドソーム中への取り込み後、ウイルスおよびエンドソーム膜の融合を媒介し、細胞中へのウイルスRNAの放出をもたらすことである。融合プロセスにおける不可欠なステップは、融合ペプチドが曝露されるように分子の二次構造エレメントを再配置するHA分子の大きい立体構造変化である。結果的に、三次構造に関して極めて異なるHA分子の2つの立体構造(融合前および後)が存在する。ウイルスHAタンパク質は融合前状態で主として免疫系に曝露されるため、本発明のポリペプチドがこの立体構造を採用することを確認することが重要である。この要件は、融合前立体構造を安定化させ、同時に融合後立体構造を脱安定化させることにより満たすことができる。この安定化/脱安定化は、必須である。それというのも、融合前立体構造は準安定性であり、融合後立体構造の採用は安定な立体構造、すなわち、低いエネルギー極小をもたらすためである(Chen et al,1995)。
この実施例において、H1N1A/Brisbane/59/2007(配列番号1)からのHAを一次(または野生型)配列としてみなして本発明のポリペプチドを作出する。
最初のステップにおいて、本発明のポリペプチドは、59〜291位のHA1配列を除去することにより構築する(番号付与は、配列番号1に示されるHA0配列中の位置を指す。ある実施形態において、HA1部分は、アミノ酸18〜343を含み、HA2部分は、アミノ酸残基344〜565を含み;それというのも、配列番号1は、シグナルペプチドを含み、HA1部分は、18位において開始するためである)。このことは、HA0の残基60から290の除去をもたらす。これらの残基は、GGGG結合配列により置き換えた。次に、融合前および融合後立体構造の両方のそれぞれの残基の接近可能な表面積を、Brugel(Delhaise et al.,1984)により計算した。それぞれの残基の曝露および埋込の程度を、融合前立体構造中で曝露され、融合後立体構造中で埋め込まれる残基に焦点を当てるSamantha et al(2002)に記載のとおり決定した。これらの残基のさらなる分析は、これらのアミノ酸残基の一部を、突然変異が融合前立体構造に対する影響を有さず、融合後立体構造を脱安定化させるように突然変異させることができることを示した。これらの残基は、一般に、疎水性側鎖を有し、融合後立体構造中のコイルドコイルの形成に関与する。これらのアミノ酸残基の親水性アミノ酸への突然変異は、コイルドコイル特性を撹乱し(コイルドコイル中のへリックス間の接触は、一般に、疎水性である)、したがって融合後立体構造を脱安定化させる。
この推定に従って、配列のHA2部分において、いくつかの突然変異:Phe406のSerへの(F406S)、Val409のThrへの(V409T)、Leu416のSerへの(L416S)およびTyr502のSerへの(Y502S)突然変異を導入した。これらは、HAの表面から疎水性残基を除去する突然変異である。L416のSまたはTのいずれかへの突然変異は、コンセンサスN−グリコシル化部位(コンセンサス配列は、NX(S/Tである)も導入することに留意すべきである。この位置におけるグリコシル化は、この領域の溶解度をさらに増加させる。さらに、Leu58をThr(L58T)に、Val314をThr(V314T)に、Ile316をThr(I316T)に突然変異させ;これらの突然変異は、全てHA1ドメイン、すなわち、天然HA0鎖の開裂後のHA1に対応する配列の部分中に存在する。最後の2つの突然変異は、側鎖
のベータ分枝を維持するが、表面から疎水性残基を除去する。以下に示されるとおり、これらの突然変異の一部を全てのバリアント中に導入し、他を別個のポリペプチド中で試験して突然変異が互いに不所望に影響するか否かを調査した。
ポリペプチドの安定性を増加させるため、HAを融合前立体構造で固定するために2つのジスルフィド架橋を調査した。ジスルフィド架橋は、(全長HA分子中で)互いから空間的に適切な距離において存在し、ジスルフィド架橋を形成させるために既に正確な位置においてCベータ原子を有する残基間で形成させる。提案される第1のジスルフィド架橋は、321位(HA1ドメイン)および405位(HA2ドメイン)間に存在する。HA2ドメイン内で、ジスルフィド架橋を413および421位間に作出した。
R343位におけるHAの開裂は、立体構造変化が本発明のポリペプチド中で生じ得るために不可欠なステップであるため、Arg(R)のGln(Q)への突然変異を導入することにより開裂部位を除去した。本発明による別の解決策は、ArgをGlnを変化させ、HA2の融合ペプチドの小部分の残基345から350を欠失させることである。これらの(疎水性)配列の除去は、ポリペプチドをさらに安定化させる。
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、HAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有する。他の実施形態において、HA2の523、524、525、526、526、527、528、529、または530位(またはそれらの相当物)からHA2のC末端(配列番号1による番号付与)の細胞質配列および膜貫通配列は、例えば、ワクチンにおいて使用することができる分泌(可溶性)ポリペプチドが細胞中での発現後に生成されるように除去した。可溶性ポリペプチドは、三量体構造を形成することが公知の配列、すなわち、AYVRKDGEWVLL(配列番号143)を場合によりリンカーを介して連結させて導入することによりさらに安定化させた。リンカーは、当業者に周知のプロトコルに従って後で処理するための開裂部位を場合により含有し得る。可溶性形態の精製を容易にするため、短いリンカー、例えば、EGRを介して連結されたタグ配列、例えば、hisタグ(HHHHHHH)を付加することができる。一部の実施形態において、リンカーおよびhisタグ配列は、foldon配列を存在させることなく付加する。本発明によれば、HA2ドメインの530位(配列番号1による番号付与)からC末端アミノ酸のアミノ酸配列を除去し、以下の配列:
短いリンカーおよびhisタグを含むEGRHHHHHHH(配列番号81)、または
トロンビン開裂部位、三量体化ドメイン、およびhisタグを含むSGRSLVPRGSPGSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFLGHHHHHHH(配列番号82)により置き換えた。
上記突然変異を、HAステムポリペプチドの三次元構造中のそれらの機能および局在に従ってクラスターに分類した。全てのポリペプチドは、H1HA配列1〜59および291〜565ならびにR343Q突然変異を、以下の追加の突然変異:L58T、V314T、I316T、F406S、V409T、L416S(配列番号3;cluster1と命名)とともに含有する。さらに、追加の突然変異を有するバリアントを作製した:
Cluster2:K321C、Q405C(配列番号4)
Cluster3:F413C、E421C(配列番号5)
Cluster4:HA2 Y502S(配列番号6)。
さらに、cluster1配列ならびにさらにcluster2および3(配列番号7)またはcluster2、3および4(配列番号8)の突然変異を含有する2つのバリアントを作製した。
一般に当業者に公知の方法を使用して上記のタンパク質配列をコードする遺伝子を合成
し、発現ベクターpcDNA2004中にクローニングした。比較の理由のため、全長配列(配列番号1)およびH1N1A/Puerto Rico/8/1934配列をベースとするSteel et al(2010)により記載された配列(H1−PR8−dH1;配列番号24)を実験に含めた。
形質移入剤として40μlの293transfectinを使用してHEK293F(Invitrogen)懸濁細胞(10個の細胞/ml、30ml)に発現ベクター(1μg/ml)を形質移入させ、さらに2日間増殖させた。細胞を回収し、アリコート化し(0.3ml、約310個の細胞)、アリコートを、発現を調べるためのH1HAに対して生じたポリクローナル血清またはHA特異的モノクローナル抗体(5マイクログラム/ml)のいずれかおよび染色に使用される二次抗体により処理した。次いで、発現を調べるためのH1HAに対して生じたポリクローナル血清を使用して細胞を本発明の膜付着HAステムドメインポリペプチドの発現について蛍光結合細胞選別(fluorescence associated cell sorting)(FACS)により分析した。全長タンパク質に結合する公知の特異性のモノクローナル抗体のパネル(例えば、CR6261およびCR9114)を使用して保存エピトープの存在、ならびに推論により全長HAおよび本発明のmini−HAポリペプチドの正確なフォールディングを調べた。結果を陽性細胞の割合および平均蛍光強度として表現し、図2に示す。
結果は、全ての構築物が細胞表面上で発現されることを示す。それというのも、ポリクローナル血清(抗H1ポリ)との反応が、未形質移入細胞についての約4%と比較して全ての分析細胞の75%以上が陽性であることをもたらすためである。これは、ポリクローナル血清による処理後の全ての構築物について類似する平均蛍光強度(MFI)の値により確認される。標識抗ヒトIgGまたは無関連mAbのみを使用するIgGの不存在下の対照実験は、全て陰性である。A/Brisbane/59/2007およびA/Puerto Rico/8/1934全長HAタンパク質の両方は、モノクローナル抗体CR6261、CR6254、CR6328(全てH1HAに結合し、それを中和することが公知;Throsby et al.(2008)、国際公開第2008/028946号パンフレット)、CR9114(上記)、CR8001(H1HAに結合するが、H1を中和しない;国際公開第2010/130636号パンフレットに記載)により認識されるが、CR8057(一部のH3株にのみ結合、これも国際公開第2010/130636号パンフレットに記載)およびCR6307(Throsby et al.(2008)、国際公開第2008/028946号パンフレット)により認識されない。
CR6261エピトープ(Ekiert et al.2009)の不連続および立体構造特徴を考慮すると、全長タンパク質の両方はそれらの天然三次元立体構造で存在することが結論づけられる。この実験において試験される新たに設計された本発明のポリペプチドについて、モノクローナル抗体のパネルによる同一の認識パターン:CR6261、CR6254、CR6328、CR9114およびCR8001による結合が観察されたが、CR6307およびCR8057による結合は観察されなかった。これは、陽性細胞の割合に基づくデータにおいて最も明らかであるが、平均蛍光強度データにおいても観察される。最良の結果は、%陽性細胞および平均蛍光強度の両方に関してminiHA−cluster1について得られる。
さらなる改変の追加、例えば、上記のジスルフィド架橋(cluster2および3)およびcluster4のY502S突然変異(またはそれらの組合せは、陽性細胞の割合の減少およびより低い平均強度をもたらした。頭部ドメインを欠失するがさらなる改変を欠くSteel et al.(2010)(配列番号24)により記載された構築物は、この実験において使用される抗体のいずれによってもバックグラウンドレベルを上回って認識されない。したがって、DNA形質移入後にこのタンパク質はそれがHA中で有
する天然三次元立体構造でディスプレイされないことが結論づけられる。
上記の結果は、HA分子のAへリックスおよび長い骨格へリックス(CD)を連結する残基402から418により形成されるループならびにその周辺区域の親水性特徴を増加させるcluster1突然変異の重要性を指す。本発明のポリペプチドの安定性およびフォールディングに対するcluster1の突然変異の有益な効果をさらに確認するため、miniHA(配列番号2;Steelによるが、A/Brisbaneをベースとするポリペプチド)およびminiHA_cluster1(本発明によるポリペプチド;配列番号3)の別個の実験において比較した(図3)。
miniHA−cluster1が形質移入された細胞の約60%が、CR6261、CR6254、CR6328およびCR9114の結合後に陽性である一方、miniHAによる形質移入(Steelによるが、A/Brisbaneをベースとするポリペプチド;配列番号2)は、バックグラウンドレベル(1〜3%)に極めて近い値をもたらす。本発明者らは、cluster1の突然変異が、これらの突然変異を欠く未改変miniタンパク質(配列番号2)と比較して本発明によるポリペプチドの適切なフォールディングおよび安定性に良好に寄与することを結論づける。
Steel et al.は、H1A/Puerto Rico/8/1934およびH3HK68株のHA1のアミノ酸残基53から276を一次配列から欠失させ、これを短いフレキシブルリンカーにより置き換えることにより新たな分子を作出した。この実施例において示されるとおり、これは、ステム領域中の保存エピトープに結合することが既に示された抗体の結合の欠落により証明されるとおり、正確な立体構造を調整しない高度に不安定な分子をもたらす。不正確なフォールディングは、通常は全長HA分子中で球状頭部によりシールドされる大きい区域の溶媒曝露により引き起こされる。この区域は天然で疎水性であるため、分子はもはや安定でなく、したがって適合が必要である。
本発明のポリペプチドにおいて行われた疎水性残基の親水性残基についての交換は、この効果を弱め、HAステムドメインポリペプチドを安定化させる。ステムドメインの天然三次元フォールドのさらなる安定化は、ジスルフィド架橋を適切な位置に導入して天然三次構造中で空間的に近いが一次構造中で離隔される残基を密接に連結させることにより達成される。
実施例5
実施例4のHAステムドメインポリペプチドの免疫原性
ステムドメインポリペプチドの免疫原性を評価するため、A/Brisbane/59/2007からの全長H1(配列番号1)、miniHA−cluster1(配列番号3)、miniHA−cluster1+2(配列番号4)およびminiHA−cluster1+4(配列番号6)をコードする発現ベクターによりマウスを免疫化した。比較の理由のため、Steel et al.(2010)によるminiHA設計(mini−PR8;配列番号24)およびA/Puerto Rico/8/1934からの対応する全長タンパク質HAも実験に含めた。cM2をコードする発現ベクターも陰性対照として含めた。
4匹のマウス(BALB\c)の群を、50μgの構築物+50μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)により筋肉内で1、21および42日目に免疫化した。49日目、最後の採血を実施し、血清を回収した。血清をFACSアッセイにより分析した。HEK293F(Invitrogen)懸濁細胞(10個の細胞/ml、30ml)に、形質移入剤として40マイクロリットルの293transfectinを使用して発現ベクター(1マイクログラム/ml)を形質移入し、さらに2日間増殖させた。細
胞を回収し、アリコート化(0.3ml、約310個の細胞)し、アリコートを構築物特異的血清により処理し、二次抗体により染色し、蛍光結合細胞選別により分析した。結果を図4に示す。
予測されるとおり、%陽性細胞およびMFIにより証明されるとおり、cM2特異的血清(陰性対照)はcM2を認識するが、全長HAもステムドメインポリペプチドも認識しない。対照的に、全長HA特異的血清は、対応する全長HA(配列番号1)を発現する細胞を染色するが、より低いレベル(全長についての約80%に対して約40%の陽性細胞、全長についての約7000に対して約1000のMFI)ではあるが、miniHA−cluster1(配列番号3)、miniHA−cluster1+2(配列番号4)およびminiHA−cluster1+4(配列番号6)も染色する。逆も当てはまり;miniHA−cluster1(配列番号3)、miniHA−cluster1+2(配列番号4)およびminiHA−cluster1+4(配列番号6)に特異的な血清は、対応する構築物および全長HA(配列番号1)を発現する細胞を認識する。結果を以下の表4にまとめる。
miniHA−cluster1(配列番号3)、miniHA−cluster1+2(配列番号4)およびminiHA−cluster1+4(配列番号6)についての上記結果と対照的に、全長PR8により免疫化されたマウスから得られた血清は、H1−PR8−dH1(配列番号24)が形質移入された細胞に十分結合しなかった。陽性細胞の割合は、miniHA−cluster1(配列番号3)およびminiHA−cluster1+2(配列番号4)についての40〜50%と比較して約20%であった。結果は、バックグラウンドレベルをわずかに上回る平均蛍光強度において観察されるものにおいても反映される。
まとめると、データは、本発明のポリペプチドが全長HAに対して指向される免疫応答を誘導し得ることを示す。特に、残基402〜418(配列番号1による番号付与)の領域中の改変は、安定な分子を作出するために重要である。
実施例6
第2世代のステムドメインポリペプチドの調製
実施例4に記載のステムドメインポリペプチドの平均蛍光強度は、全ての場合において、対応する全長タンパク質について観察されるものよりも低く;実際、最良の設計、miniHA−cluster1(配列番号3)は、モノクローナル抗体との結合後に全長構築物の平均強度の10%のオーダーである強度を有する。これは、細胞表面上のステムドメインポリペプチドの発現および/またはフォールディングが、全長タンパク質について観察されるものよりも低いことならびに設計をさらに改善することができることを示す。第1世代から得られた結果は第1世代構築物の改善が可能であることを示し、したがって、第2の設計ラウンドを開始した。
実施例4に記載のポリペプチドは、HA0鎖の同一の欠失、すなわち、残基L60からK290の欠失(mini1;番号付与は、H1N1A/Brisbane/59/2007からの全長HA0;配列番号1中の位置を指す)をベースとした。このアプローチは、頭部ドメインに目下もはや付着していない長い非構造化ループを作出する。このループは、全タンパク質安定性に寄与しておらず、ポリペプチドの他の部分のフォールディングに影響を与えずにかなり短縮することができることが推定された。3つの追加の欠失を設計し、上記のとおりGGGGリンカー配列により置き換え、上記のcluster1の突然変異と組み合わせた。欠失は、S53からP320(mini2)、H54からI302(mini3)、G56からG317(mini4)である。上記のcluster1と同一の追加の改変(L58T、V314T、I316T、F406S、V409T、L
416S)を導入した。このクラスターに属する残基の一部は、欠失配列の一部であり、したがって、もはや改変することができない(以下参照)。さらに、2つの追加の突然変異を、融合前状態で三量体コイルドコイルを形成する長いへリックスC中で作出した。三量体コイルドコイルは、この構造モチーフの特質である7残基リピート配列の420aおよびd位におけるIleにより安定化されることが当分野において周知である(Suzuki et al.,(2005);Woolfson et al.(2005))。この知見を、Ileを420位(M420I)および427位(V427I)において導入することにより適用した。これらの2つの突然変異およびcluster1の突然変異の組合せをcluster11と命名し;分類のため、組合せを以下に列記する:
Mini1:欠失L60からK290 cluster11:M420I、V427I、L58T、V314T、I316T、F406S、V409T、L416S
Mini2:欠失S53からP320 cluster11:M420I、V427I、F406S、V409T、L416S
Mini3:欠失H54からI302 cluster11:M420I、V427I、V314T、I316T、F406S、V409T、L416S
Mini4:欠失G56からG317 cluster11:M420I、V427I、F406S、V409T、L416S
ステムドメインポリペプチドの融合前状態をさらに安定化させるため、追加のジスルフィド架橋を324および436位間に導入し(cluster5:R324C、T436C)、異なる欠失突然変異体と組み合わせた。以下の組合せを合成し、上記のFACSアッセイにおいて結合について試験した:
Mini1−cluster11(配列番号9)
Mini2−cluster11(配列番号10)
Mini3−cluster11(配列番号11)
Mini4−cluster11(配列番号12)
Mini1−cluster11+5(配列番号13)
Mini2−cluster11+5(配列番号14)
Mini3−cluster11+5(配列番号15)
Mini4−cluster11+5(配列番号16)
比較の理由のため、miniHA−cluster1(配列番号3)も実験に含めた。結果を図5に示す。
全ての場合において、ステムドメインポリペプチドは、ポリクローナル抗H1血清による処理後の陽性細胞の割合(90%以上)により証明されるとおり、HEK293F細胞中への発現ベクターの形質移入後に細胞表面上に存在した。
この実験における全てのHAステムドメインポリペプチドは、CR6261、CR6254、CR6328およびCR9114により認識されたが、CR8057により認識されず;最後のものは予測される。それというのも、このmAbは、H3HAに特異的であるためである。しかしながら、異なる抗体について陽性の細胞の割合およびMFIの明確な差が存在する。特性決定された最良の抗体は、エピトープの詳細が公知のCR6261である。エピトープは不連続および立体構造的であり、したがって、この抗体の結合は、HAステムドメインポリペプチドの正確なフォールディングのストリンジェントな試験としてみなすことができる。CR9114は、広域中和性であり、グループ1および2の両方からの株をカバーする(表3)。CR6328およびCR6254のエピトープについて、詳細は公知でないが、%陽性細胞およびMFIについて見出されるより高い値、ならびにデータのより小さい拡散に基づき、これらの抗体の結合は、CR6261よりも感受性が小さい、正確なフォールディングのプローブであると考えられる。
陽性細胞の割合を比較(全ての抗体についてのデータを考慮)すると、Mini1から4構築物をランク付けすることができる(最大から最小%)
cluster11との組合せについてMini2>Mini1>Mini4>Mini3および
cluster11+5との組合せについてMini2>Mini1=Mini4>Mini3
このランク付けは、MFIに関するデータにおいても反映され、Mini2構築物、S53からP320の欠失がこの組からの正確な立体構造で細胞表面上でディスプレイされる最大レベルのタンパク質をもたらすという結論をもたらす。
MiniHA−cluster1(配列番号3)をmini1−cluster11(配列番号9)と比較すると、追加の突然変異M420I、V427Iは、構築物の追加の安定化をもたらすと考えられず;どちらかと言えば、それらは、より低い陽性細胞の割合およびMFI値をもたらすが、差は小さい。
ジスルフィド架橋の導入R324C、T436C(cluster5)は、細胞表面上の正確にフォールドされたタンパク質の増加を、mini2−cluster11(配列番号10)およびmini4−cluster11(配列番号12)についてもたらすが、mini1−cluster11(配列番号9)およびmini3−cluster11(配列番号11)については最小の改善をもたらし、または改善をもたらさない。全体的な最良の結果は、mini2−cluster11+5(配列番号14)について得られる。これは、特に、この構築物について全長構築物についての値の約50%であるMFI値から明らかである。
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、HAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有する。他の実施形態において、HA2の523、524、525、526、526、527、528、529、または530位(またはそれらの相当物)からC末端の細胞質配列および膜貫通配列(配列番号1による番号付与)を除去し、三量体構造を形成することが公知の配列、すなわち、AYVRKDGEWVLL(配列番号143)を場合によりリンカーを介して連結させて導入することにより場合により置き換える。リンカーは、当業者に周知のプロトコルに従って後で処理するための開裂部位を場合により含有し得る。可溶性形態の精製を容易にするため、短いリンカー、例えば、EGRを介して連結されたタグ配列、例えば、hisタグHHHHHHHを付加することができる。本発明によれば、HA2ドメインの530位(配列番号1による番号付与)からC末端アミノ酸のアミノ酸配列を除去し、配列番号81または配列番号82により置き換えた。
実施例7
第2世代HAステムドメインポリペプチドの免疫原性
実施例6のステムドメインポリペプチドの免疫原性を評価するため、A/Brisbane/59/2007からの全長H1(配列番号1)、miniHA−cluster1(配列番号3)、Mini2−cluster11(配列番号10)、Mini1−cluster11+5(配列番号13)、Mini2−cluster11+5(配列番号14)をコードする発現ベクターによりマウスを免疫化した。cM2をコードする発現ベクターも陰性対照として含めた。
4匹のマウス(BALB\c)の群を、50μgの構築物+50μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)により筋肉内で1、21および42日目に免疫化した。49日目、最後の採血を実施し、血清を回収した。全長HA0(配列番号1)、陰性対照c
M2およびMini2−cluster11+5(配列番号14)も、約10μgの構築物+約2μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)および同一の免疫化スキームを使用して遺伝子銃によりマウスの別個の群に投与した。血清を、A/Brisbane/59/2007株からの全長HAの組換えエクトドメイン(Protein Sciences Corporation,Meriden,CT,USAから入手)を抗原として使用してElisaにより分析した。手短に述べると、96ウェルプレートを50ngのHAにより4℃において一晩コートし、次いでブロック緩衝液(100μlのPBS、pH7.4+2%のスキムミルク)と室温において1時間インキュベートした。プレートをPBS+0.05%のTween−20により洗浄し、血清の20倍希釈から出発するブロック緩衝液中の100μlの2倍希釈系列を添加する。HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgGを使用して、当分野において十分確立された標準的プロトコルを使用して結合抗体を検出した。mAbの3AH1InA134(Hytest,Turku,Finland)を使用して力価を標準曲線と比較してElisa単位/ml(EU/ml)を導いた。
28および49日後のElisaの結果を図6AおよびBにそれぞれ示す。Mini2−cluster11+5(配列番号14)をコードするDNAにより免疫化されたマウスから得られた血清は、遺伝子銃を使用する免疫化28および49日後ならびにさらに筋肉内で免疫化した場合に49日後にエクトドメイン全長HAへの明確な結合を示す。Mini2−cluster11(配列番号10)およびMini1−cluster11+5(配列番号13)について、応答は、4匹のマウスのうち1匹について検出された一方、miniHA−cluster1(配列番号3)について結合は検出されなかった。
まとめると、データは、本発明のポリペプチドが全長HAに対して指向される免疫応答を誘導し得ることを示す。特に、残基402〜418(配列番号1による番号付与)の領域中の改変、欠失S53からP320は、ジスルフィド架橋R324C、T436Cとの組合せで、安定な分子を作出するために重要である。
実施例8
第3世代ステムドメインポリペプチドの調製
ステムドメインポリペプチドの設計をさらに改善するため、第3の設計ラウンドを実行した。全長HA中で埋め込まれるが、ステムドメインポリペプチド中で埋め込まれない表面の親水性を増加させる追加の突然変異を、413位において導入し、F413G(配列番号1により番号付与)、cluster6と命名した。このクラスターを、mini−2の欠失(S53からP320)、cluster5(R324C、T436C)のジスルフィド架橋およびcluster1(すなわち、F406S、V409T、L416S;配列番号46)またはcluster11(M420I、V427I、F406S、V409T、L416S;配列番号47)のいずれかの突然変異と組み合わせた。mini−2欠失(S53からP320)とcluster1(F406S、V409T、L416S)およびcluster5(R324C、T436C)との組合せも、参照のためにこの実験に含める(配列番号48)。
天然HAは、細胞表面上の三量体として存在する。三量体を一緒に保持する個々の単量体間の相互作用のほとんどは、頭部ドメイン中に局在する。したがって、頭部の除去後、三次構造は脱安定化され、したがって、トランケート分子中の単量体間の相互作用の強化は安定性を増加させる。ステムドメインにおいて、三量体化は、三量体コイルドコイルモチーフの形成により媒介される。このモチーフの増強により、より安定な三量体を作出することができる。本発明によれば、三量体コイルドコイルの形成のためのコンセンサス配列、IEAIEKKIEAIEKKIE(配列番号83)が、本発明のポリペプチド中にH1A/Brisbane/59/2007中の418から433位(配列番号44)(
配列番号1による番号付与)(の相当物)において導入される。代替例は、GCN4に由来し、三量体化することが公知の配列MKQIEDKIEEIESKQ(配列番号84)を、419〜433位(配列番号45)において導入することである。
配列番号44から配列番号48により記載されるステムドメインポリペプチドの場合において、全てのタンパク質は、ポリクローナル抗H1血清による処理後の陽性細胞の割合(90%以上)により証明されるとおり、HEK293F細胞中への発現ベクターの形質移入後に細胞表面上に存在した。結果を図7に示す。
この実験における全てのHAステムドメインポリペプチドは、miniHA(配列番号2)を除き、CR6261、CR6328およびCR9114により認識されたが、CR8020により認識されず;最後のものは予測される。それというのも、このmAbは、H3HAに特異的であるためである。陽性細胞の割合は、染色にCR6261、CR6328およびCR9114を使用してステムドメインポリペプチドについて約80%であり、ポリクローナル抗H1血清によってのみ認識されるminiHAを除く。ここでも、これは、この特定の構築物の適切なフォールディングの欠損を示す。しかしながら、異なる抗体についてMFIの明確な差が存在する。特性決定された最良の抗体は、エピトープの詳細が公知のCR6261である。エピトープは不連続および立体構造的であり、したがって、この抗体の結合は、HAステムドメインポリペプチドの正確なフォールディングのストリンジェントな試験としてみなすことができる。CR9114は、広域中和性であり、グループ1および2の両方からの株をカバーする(表3)。CR6328のエピトープについて、詳細は公知でないが、全長HAに関する結合試験においてCR6261との競合が観察される。
実験において使用されるモノクローナル抗体にかかわらず、H1−mini2−cl11+5(配列番号14)、H1−mini2−cl1+5(配列番号48)、H1−mini2−cl1+5+6(配列番号46)およびH1−mini2−cl11+5+6(配列番号47)についてのMFIは極めて類似する。コンセンサス三量体化ドメイン(配列番号44)残基の包含は、三量体化ドメインを有さない相当配列(すなわち、H1−mini2−cluster1+5+6;配列番号46)と比較してMFIを3から4倍だけ低減させるが、結果は、依然として頭部ドメインの欠失後のステムポリペプチドの改変の不存在下よりも明らかに良好である(miniHA結果参照)。GCN4三量体化配列(配列番号45)の付加は、MFIを全長タンパク質と同等のレベルに増加させる。
実施例9
CR6261およびCR9114の保存ステムドメインエピトープを含むさらなるステムドメインポリペプチドの設計
上記の手順に従って設計された本発明のポリペプチドは、安定性を増加させるためにさらに改変することができる。このような改変は、単量体および/または二量体種と比べて本発明のポリペプチドの三量体形態の形成を向上させるために導入することができる。上記のとおり、天然HAは、細胞表面上の三量体として存在する。三量体を一緒に保持する個々の単量体間の相互作用のほとんどは、頭部ドメイン中に局在する。したがって、頭部の除去後、三次構造は脱安定化され、したがって、トランケート分子中の単量体間の相互作用の強化は安定性を増加させる。ステムドメインにおいて、三量体化は、三量体コイルドコイルモチーフの形成により媒介される。このモチーフの増強により、より安定な三量体を作出することができる。
本発明によれば、三量体コイルドコイルの形成のためのコンセンサス配列、IEAIEKKIEAIEKKIE(配列番号83)を、本発明のポリペプチド中にH1A/Brisbane/59/2007中の418から433位(配列番号44)(配列番号1によ
る番号付与)(の相当物)において導入した。あるいは、IEAIEKKIEAIEKKI(配列番号85)を419〜433(配列番号49)において、またはIEAIEKKIEAIEKK(配列番号86)を420〜433(配列番号50)において導入することができる。代替例は、GCN4に由来し、三量体化することが公知の配列MKQIEDKIEEIESKQ(配列番号84)を、419〜433位(配列番号45)において導入することである。あるいは、MKQIEDKIEEIESK(配列番号87)を420〜433位(配列番号51)において、またはRMKQIEDKIEEIESKQK(配列番号88)を417〜433位(配列番号52)において導入することができる。同様に、三量体界面は、M420、L423、V427、G430をイソロイシンに改変することにより増強される(配列番号53)。
全てのペプチドは、CR9114およびCR6261に結合することが示された。
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、上記のとおりシグナル配列および/またはHAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有しない。
実施例10
H7HAをベースとするCR6261およびCR9114の保存ステムドメインエピトープを含むステムドメインポリペプチドの設計
本発明のポリペプチドを設計する上記の手順を、H7にも適用した。この実施例において、血清型H7に基づく本発明のポリペプチドの設計を記載する。H7インフルエンザウイルスA/Mallard/Netherlands/12/2000のHA(配列番号31)を親配列として使用したが、当業者は、他のH7配列の使用も同様に可能であったことを理解する。それというのも、この配列は特にステム領域が十分保存されるためである。
配列の第1の改変は、RをQに突然変異(R339Q)させることにより339位(番号付与は、配列番号31を指すにおける開裂部位を除去してHA0からのHA1およびHA2の形成を防止することである。場合により、残基341から345(LFGAI、融合ペプチドの一部)をさらに欠失させて水性溶媒への疎水性残基の曝露を最小化することができる。開裂における陽性電荷はH7において100%保存され、したがって、この突然変異は全ての配列中に適用することができる。
第2の改変は、HA1配列の大部分を欠失させ、NおよびC末端配列を短いリンカーを介して再連結させることにより頭部ドメインを除去することである。欠失は、長さを変えることができるが、結合配列を介する歪みの導入を回避するためにHA1のN末端配列の最後の残基およびC末端配列の最初の残基が空間的に近接することが好ましい。H7配列において、欠失は、H7A/Mallard/Netherlands/12/2000(配列番号31)中のR53〜P315(mini2;配列番号33)(の相当位置)において導入することができる。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、ClustalまたはMuscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。配列の残留部分を直接的に結合させることができ、またはフレキシブルリンカーを導入することができる。リンカー配列は、1から50アミノ酸長であり得る。限定された長さ(10アミノ酸以下)のフレキシブルリンカー、例えば、GGG、GGGG、GSA、GSAG、GSAGSA、GSAGSAGまたは類似物が好ましい。
配列番号40は、T54〜C314を欠失するそのような本発明のポリペプチド(mini5;配列番号40)を記載する。上記の欠失は、残基280〜310により形成される非構造化領域も除去されることを確保し;これは、本発明のポリペプチドの全安定性に有益である。類似の効果がH1配列に由来する本発明のポリペプチドについて観察された
(上記参照)。
頭部ドメインの欠失により、残基394〜414のループが水性溶媒に目下曝露されたままとなる。H7HAにおいて、このループは高度に保存される(表7参照)。コンセンサス配列は:LI(E/D/G)KTNQQFELIDNEF(N/T/S)E(I/V)E(Q/K)(配列番号32)である。
融合前立体構造の本発明のポリペプチドのためにこのループの溶解度を増加させ、融合後立体構造を脱安定化させるため、いくつかの疎水性残基を極性(S、T、N、Q)、荷電アミノ酸(R、H、K、D、E)に改変し、またはGへの突然変異によりフレキシビリティを増加させた。具体的には、402、404、405、409、412位(番号付与は、配列番号31を指す)における突然変異は、本発明のポリペプチドの安定性に寄与する。
F402およびF409位について、Sへの突然変異が好ましいが、他の極性(T、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)および高度にフレキシブルなアミノ酸(G)が同一効果を有する。404位(96%L)について、NまたはSへの突然変異が好ましく;後者のアミノ酸は低頻度ではあるが天然でも生じ、その場合、この位置の突然変異は不要である。他の極性(T、Q)、荷電(R、H、K、D、E)および高度にフレキシブルなアミノ酸(G)は、同一効果を有する。405位(99%I)について、TまたはDへの突然変異が好ましい。Dも天然で生じ、その場合、この位置の突然変異は不要である。他の極性(S、N、Q)、荷電(R、H、K、)および高度にフレキシブルなアミノ酸(G)は、同一効果を有する。412位(IまたはV)について、Nへの突然変異が好ましいが、他の極性(S、T、Q)、荷電(R、H、K、D、E)またはフレキシブル(G)残基も可能である。したがって、ポリペプチドは上記の突然変異の少なくとも1つを含有する。例えば、配列番号34〜39および41〜43に示されるとおり、2つ以上の突然変異の組合せも適用した。
本発明のポリペプチドの融合前立体構造を安定化させるため、一次配列中で遠位であるがフォールドした融合前立体構造中で近い2つの部分間に共有結合を導入した。この目的のため、ジスルフィド架橋を本発明のポリペプチド中で、好ましくは、H7A/Mallard/Netherlands/12/2000(配列番号36〜39、42、43)中の319および432位(の相当物)間で遺伝子操作した。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、Clustal、Muscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。遺伝子操作ジスルフィド架橋は、少なくとも一方(他方が既にシステインである場合)、しかし通常、空間的に近い2つの残基をシステインに突然変異させ、それが自発的にまたは活性酸化によりそれらの残基の硫黄原子間の共有結合を形成することにより作出される。
上記のとおり、天然HAは、細胞表面上の三量体として存在する。三量体を一緒に保持する個々の単量体間の相互作用のほとんどは、頭部ドメイン中に局在する。したがって、頭部の除去後、三次構造は脱安定化され、したがって、トランケート分子中の単量体間の相互作用の強化は安定性を増加させる。ステムドメインにおいて、三量体化は、三量体コイルドコイルモチーフの形成により媒介される。このモチーフの増強により、より安定な三量体を作出することができる。三量体コイルドコイルは、この構造モチーフの特質である7残基リピート配列のaおよびd位におけるIleにより安定化されることが当分野において周知である。ここで、この知見を、Ileを419、423、426および430位(配列番号38、43)(の相当物)において導入することにより適用した。あるいは、三量体コイルドコイルの形成のためのコンセンサス配列EAIEKKIEAIを、417から426位(配列番号39)(の相当物)において導入する。
これらの配列(配列番号33〜43)を、上記の蛍光結合細胞選別アッセイに供した。しかしながら、モノクローナル抗体CR8020も、CR8043も、CR9114も、CR8957も、その結合を検出することができなかった。本発明者らは、これらの配列はこれらの抗体のエピトープを提示せず、結果的に細胞膜上に存在するタンパク質がそれらの天然三次元構造にフォールドされないことを結論づけた。
実施例11
H3HAをベースとするCR8020、CR8043およびCR9114の保存ステムドメインエピトープを含むステムドメインポリペプチドの設計
第1のステップにおいて、本発明のポリペプチドを表す配列を、親配列としてのH3A/Wisconsin/67/2005からのHA(配列番号89)を使用してSteelら(Steel et al 2010)による記載と類似させて構築した。HAの頭部をアミノ酸D69からアミノ酸K292のHA1の一部の欠失により除去する。
これらの残基を3または4つのGlyにより置き換えることができる。4GlyリンカーがSteelらにより試験され、良好な発現結果が生じ、ここで採用してmini−H3(配列番号90)を作出した。全長HAタンパク質についての正常の翻訳後プロセシングステップであるポリペプチド鎖の開裂を防止するため、345位(アルギニン)における開裂部位をグルタミンに突然変異させた(R345Q)。
次に、構築されたmini−HAおよび融合後立体構造の両方のそれぞれの残基の接近可能な表面積をBrugelにより計算した。それぞれの残基の曝露および埋込の程度を、Samanthaら(Samantha et al.,2002)に記載のとおり決定した。融合前立体構造中で曝露され、融合後立体構造中で埋め込まれる残基に焦点を当てた。これらの残基のさらなる分析は、これらの一部を、突然変異が融合前立体構造に対する影響を有さず、融合後立体構造を脱安定化させるように改変させることができることが示す。一般に、これらの残基は、疎水性鎖を有し、融合後立体構造中のコイルドコイルの形成に関与する。親水性側鎖を含めるためのこれらの残基の突然変異は、コイルドコイル特性を撹乱し(コイルドコイル中のへリックス間の接触は、一般に、疎水性である)、したがって融合後立体構造を脱安定化させる。融合前立体構造中で曝露され、融合立体構造中で埋め込まれ、突然変異後に融合後立体構造に対する脱安定化効果を有することが予測される残基は、L397、I401およびL425(配列番号89による番号付与)である。ここでは、L397KおよびI401Tを含める。
へリックスA(残基383から400)を中央へリックスCD(残基421から470)と連結するループ(Bループ、残基401から420)は、融合後状態の採用時に立体構造を変化させ;それはヘリカルになり、伸長された三量体コイルドコイルの一部である。このリンカーの融合前ループ立体構造を安定化させ、および/またはその融合後立体構造を脱安定化させるため、コイルドコイルのコアの形成に関与する全ての残基を突然変異させることが十分なはずであることが推定された。N405位について、いくつかの突然変異、特に負電荷を担持する残基を設計する(AspおよびGlu、N405D、N405E)。それというのも、この余剰電荷は、融合前立体構造中で観察されるイオンネットワークを強化するためである。中性Alaへの突然変異(N405A)もこの試験に含める。本発明者らはまた、Phe408をThrに、His409をSerに、およびVal418をSerに(配列番号89による番号付与;F408T、H409S、V418S)に突然変異させて頭部ドメインの除去後に新たに曝露される表面の溶解度をさらに増加させた。
HAを融合前立体構造で固定するために5つのジスルフィド架橋を設計した。これらの
架橋は、互いから空間的に適切な距離において存在し、ジスルフィド架橋を形成させるために既に正確な位置においてCβ原子を有する残基間で形成させる。これらを、320および406位間(A320C、E406C;配列番号89による番号付与)、326および438位間(K326C、S438C)および415および423位間(F415C、Q423C)に導入する。最初の2つは、鎖のHA1およびHA2部分間の架橋である一方、最後のものはBループの頂部を一緒に共有結合的に連結する。K326C、S438Cジスルフィド架橋には、Asp435のAlaへ突然変異(D435A)が付随する。ジスルフィド架橋F347C/N461CおよびS385C/L463CをBommakanti et al(2010)による論文から採択し、それも試験において使用した。
新たに曝露される疎水性残基を溶媒から除去するため、いくつかの追加の突然変異を設計する。67位(配列番号89による番号付与)におけるIleをThrに突然変異させる(I67T)。この突然変異は、側鎖のベータ分枝を維持するが、疎水性残基を表面から除去する。同じことは、Ile298のThrへの突然変異(I298T)について述べることができる。別の突然変異を天然配列中の316位のイソロイシンにおいて導入する。直観的に、この残基をThrに突然変異させてベータ分枝を維持するが疎水性を表面から除去することが提案される。しかしながら、この突然変異は、余剰N−グリコシル化部位(314位は、Asnである)の導入をもたらし、したがって、Glnへの突然変異を導入する(I316Q)。
Gly495もGluに突然変異させた(G495E)。この突然変異は、イオン架橋を導入するために設計する。それというのも、陽性電荷が周囲に存在するためである。天然でGluをこの位置に有する一部のH3株が既に提供された。
HAの重要な残基は345位(Arg)である。それというのも、この残基はプロテアーゼ開裂が生じてタンパク質融合を可能にする位置であるためである。このArgのGlnへの突然変異(R345Q)は、開裂が生じることを防止し、それによりタンパク質を融合前状態で固定する。
上記の突然変異を下記のとおりクラスター化した:
Cluster1:I67T、I98T、I316Q、F408T、H409S、V418S
Cluster2:A320C、E406C
Cluster3 K326C、D435A、S438C
Cluster4 L397K、I401T
Cluster5 N405DまたはN405EまたはN405A
Cluster6 F415C、Q423C
Cluster7 G495E
Cluster8 F347C、S385C、N461C、L463C
本発明のポリペプチドを得るため、クラスターを下記のスキームに従って欠失D69からK292およびR345Q突然変異と組み合わせた。
H3 Mini−HA cluster1(配列番号91)
H3 Mini−HA cluster1+2(配列番号92)
H3 Mini−HA cluster1+3(配列番号93)
H3 Mini−HA cluster1+4(配列番号94)
H3 Mini−HA cluster1+5N405A(配列番号95)
H3 Mini−HA cluster1+5N405D(配列番号96)
H3 Mini−HA cluster1+5N405E(配列番号97)
H3 Mini−HA cluster1+6(配列番号98)
H3 Mini−HA cluster1+7(配列番号99)
H3 Mini−HA cluster1+2+3+4+5+6+7−N405E(配列番号100)
H3 Mini−HA cluster1+2+3+4+5+6+7−N405A(配列番号101)H3 Mini−HA cluster1+2+3+4+5+6+7−N405D(配列番号102)
H3 Mini−HA cluster1+8(配列番号103)
一般に当業者に公知の方法を使用して上記のタンパク質配列をコードする遺伝子を合成し、発現ベクターpcDNA2004中にクローニングした。比較の理由のため、H3A/Wisconsin/67/2005の全長HA配列、および開裂部位突然変異R343Qを含有するH1A/Brisbane/59/2007の全長HA配列を実験に含めた。
形質移入剤として40μlの293transfectinを使用してHEK293F(Invitrogen)懸濁細胞(10個の細胞/ml、30ml)に発現ベクター(1μg/ml)を形質移入させ、さらに2日間増殖させた。細胞を回収し、アリコート化し(0.3ml、約310個の細胞)、アリコートを、発現を調べるためのH3HA(Protein Sciences Corp,Meriden,CT,USA)に対して生じたポリクローナル血清またはHA特異的モノクローナル抗体(5マイクログラム/ml)のいずれかおよび染色に使用される二次抗体により処理した。次いで、発現を調べるためのH3HAまたはH1HAに対して生じたポリクローナル血清を使用して細胞を本発明の膜付着HAステムドメインポリペプチドの発現について蛍光結合細胞選別(FACS)により分析した。全長タンパク質に結合する公知の特異性のモノクローナル抗体のパネル(CR8020、CR8043およびCR9114)を使用して保存エピトープの存在、ならびに推論により全長HAおよび本発明のmini−HAポリペプチドの正確なフォールディングを調べた。モノクローナル抗体CR6261(H3HAに結合しないことが公知)およびCR8057(A/Wisconsin/67/2005からのHAの頭部ドメインに結合する)も実験に含めた。結果を陽性細胞の割合として表現し、図8に示す。
結果は、全ての構築物が細胞表面上で発現されることを示す。それというのも、H3ポリクローナル血清との反応が、未形質移入細胞についての4%未満と比較してH3ベース配列について全ての分析細胞の80〜90%および全長H1配列について50%超が陽性であることをもたらすためである。抗H1ポリクローナルを使用すると、全ての細胞の60〜70%が陽性であり、但し100%アプローチする全長H1配列を除く。標識抗ヒトまたは抗ウサギIgGのみを使用するIgGの不存在下の対照実験は、全て陰性である。A/Wisconsin/67/2005およびA/Brisbane/59/2007全長HAタンパク質の両方は、この両方の株を中和し得ることが公知のモノクローナル抗体CR9114により認識される。A/Wisconsin/67/2005全長HAは、CR8020、CR8043、およびCR8057(一部のH3株にのみ結合する、国際公開第2010/130636号パンフレットに記載)にさらに結合するが、CR6261(Throsby et al.(2008)、国際公開第2008/028946号パンフレット)には結合しない。A/Brisbane/59/2007からの全長HAについては逆のことが当てはまり;それはCR6261に結合するが、CR8020、CR8043およびCR8057には結合しない。
配列番号91から配列番号103に記載のポリペプチドは、図8においてバックグラウンドを上回るシグナルの欠落により証明されるとおり、いずれの場合にもCR8020、
CR8043およびCR9114に結合し得ない。したがって、これらの配列は、これらの抗体のエピトープを提示しないこと、および結果的に細胞膜上に存在するタンパク質がそれらの天然三次元構造にフォールドされないことが結論づけられた。
実施例12
H3HAをベースとするCR8020、CR8043およびCR9114の保存ステムドメインエピトープを含むさらなるステムドメインポリペプチドの設計
この実施例において、血清型H3に基づく本発明のさらなるポリペプチドの設計を記載する。H3インフルエンザウイルスA/Wisconsin/67/2005(配列番号89)およびA/HongKong/1/1968(配列番号121)のHAを親配列として使用した。
第1の配列の改変は、RをQに突然変異(R345Q)させることにより345位(番号付与は、配列番号89を指すにおける開裂部位を除去してHA0からのHA1およびHA2の形成を防止することである。場合により、残基347〜351(IFGAI、融合ペプチドの一部)をさらに欠失させて水性溶媒への疎水性残基の曝露を最小化することができる。開裂における陽性電荷はH3において100%保存され、したがって、この突然変異は全ての配列中に適用することができる。
第2の改変は、HA1配列の大部分を欠失させ、NおよびC末端配列を短いリンカーを介して再連結させることにより頭部ドメインを除去することである。欠失は、長さを変えることができるが、結合配列を介する歪みの導入を回避するため、HA1のN末端配列の最後の残基およびC末端配列の最初の残基が空間的に近接することが好ましい。H3配列において、欠失は、S62〜P322(mini2;配列番号105)、S63〜P305(mini3;配列番号119)およびT64〜T317(mini4;配列番号120(の相当位置)において導入することができる。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、ClustalまたはMuscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。配列の残留部分を直接的に結合させることができ、またはフレキシブルリンカーを導入することができる。リンカー配列は、1から50アミノ酸長であり得る。限定された長さ(10アミノ酸以下)のフレキシブルリンカー、例えば、GGG、GGGG、GSA、GSAG、GSAGSA、GSAGSAGまたは類似物が好ましい。欠失の長さは、例えば、欠失を63、64、65、66、67位(の相当物)において開始することにより欠失の残基数を減少させることにより、または欠失の長さを増加させるため、57、58、59、60もしくは61位において切断することにより変えることもできる。同様に、欠失させるべき最後のアミノ酸は、317、318、319、320もしくは321位(の相当物)におけるもの、または欠失の長さを増加させるため、323、324、325、326、もしくは327位(の相当物)におけるものであり得る。欠失の長さの変化は、リンカー配列の長さを合致させることにより部分的に補うことができることを理解することは重要であり、すなわち、より大きい欠失はより長いリンカーと合致させることができ、逆もまた同様である。これらのポリペプチドも本発明により包含される。
頭部ドメインの欠失により、残基400〜420のBループが水性溶媒に目下曝露されたままとなる。H3HAにおいて、このループは高度に保存される(表9参照)。コンセンサス配列は:401I(E/G)KTNEKFHQIEKEFSEVEGR421(配列番号104;番号付与は、配列番号89を指す)である。融合前立体構造の本発明のポリペプチドのためにこのループの溶解度を増加させ、融合後立体構造を脱安定化させるため、いくつかの疎水性残基を極性(S、T、N、Q)、荷電アミノ酸(R、H、K、D、E)に改変しなければならず、またはGへの突然変異によりフレキシビリティを増加させなければならない。具体的には、401、408、411、415、418位(番号付与
は、配列番号89を指す)における突然変異は、本発明のポリペプチドの安定性に寄与する。
F408およびF415位について、Sへの突然変異が好ましいが、他の極性(T、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)および高度にフレキシブルなアミノ酸(G)が同一効果を有する。411位(I)について、Tへの突然変異が好ましく;他の極性(S、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)および高度にフレキシブルなアミノ酸(G)は、同一効果を有し、したがってこれも本発明に含まれる。418位(V)について、Gへの突然変異が好ましい。他の極性(S、T、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)は、同一効果を有し、したがって、これも本発明に含まれる。401位(I)について、Rへの突然変異が好ましいが、他の極性(S、T、N、Q)、荷電(H、K、D、E)またはフレキシブル(G)残基も可能である。したがって、本発明のポリペプチドは上記の突然変異の少なくとも1つを含有する。例えば、配列番号123〜127および129〜131に示されるとおり、2つ以上の突然変異の組合せも可能である。
本発明のポリペプチドの融合前立体構造を安定化させるため、一次配列中で遠位であるがフォールドした融合前立体構造中で近い2つの部分間に共有結合を導入する。この目的のため、ジスルフィド架橋を本発明のポリペプチド中で、好ましくは、H3A/Wisconsin/67/2005(配列番号89)中の326および438位(の相当物)間で遺伝子操作する。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、Clustal、Muscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。遺伝子操作ジスルフィド架橋は、少なくとも一方(他方が既にシステインである場合)、しかし通常、空間的に近い2つの残基をシステインに突然変異させ、それが自発的にまたは活性酸化によりそれらの残基の硫黄原子間の共有結合を形成することにより作出される。代替的なシステイン架橋をH3A/Wisconsin/67/2005(配列番号89)中の334および393位(の相当物)間にこれらの残基のシステインへの突然変異により作出することができる。一部の場合、321位(の相当物)におけるシステインをグリシンに改変して不所望なジスルフィド架橋の形成を回避する。
天然HAは、細胞表面上の三量体として存在する。三量体を一緒に保持する個々の単量体間の相互作用のほとんどは、頭部ドメイン中に局在する。したがって、頭部の除去後、三次構造は脱安定化され、したがって、トランケート分子中の単量体間の相互作用の強化は安定性を増加させる。ステムドメインにおいて、三量体化は、三量体コイルドコイルモチーフの形成により媒介される。このモチーフの増強により、より安定な三量体を作出することができる。三量体コイルドコイルの形成のためのコンセンサス配列、IEAIEKKIEAIEKKIEAIEKKを、421〜441位(の相当物)において導入する。326〜438位のジスルフィド架橋の形成の妨害を回避するため、代替的なより短い配列IEAIEKKIEAIEKKIも421〜435位(の相当物)において使用した。代替例は、GCN4に由来し、三量体化することが公知の配列RMKQIEDKIEEIESKQKKIENを421〜441位において、またはより短い配列RMKQIEDKIEEIESKを421〜435位において導入することである。
本発明のポリペプチドは、得られるポリペプチドが細胞中での発現時に細胞表面上に提示されるようにHAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有し得る。他の実施形態において、522位(の相当物)からC末端の細胞質配列および膜貫通配列は、分泌(可溶性)ポリペプチドが細胞中での発現後に産生されるように除去されている。場合により、523、524、525、526、527、528または529(の相当物)から配列を欠失させることによりいくつかの追加の残基を可溶性タンパク質中に含めることができる。可溶性ポリペプチドは、三量体構造を形成することが公知の配列、すなわち、AYVRKDGEWVLL(配列番号143)(「foldon」配列)を場合によりリンカーを介
して連結させて導入することによりさらに安定化させることができる。リンカーは、当業者に周知のプロトコルに従って後で処理するための開裂部位を場合により含有し得る。可溶性形態の精製を容易にするため、短いリンカー、例えば、EGRを介して連結されたタグ配列、例えば、hisタグ(HHHHHHH)を付加することができる。一部の実施形態において、リンカーおよびhisタグ配列は、foldon配列を存在させることなく付加する。
HAの重要な残基は345位(Arg)である。それというのも、この残基は、プロテアーゼ開裂が生じてタンパク質融合を可能にする位置であるためである。このArgのGlnへの突然変異(R345Q)は、開裂が生じることを防止し、それによりタンパク質を融合前状態で固定する。
上記の突然変異を下記のとおりクラスター化した:
Cluster9 F408S、I411T、F415S
Cluster10 V418G
Cluster11 I401R
Cluster12 K326C、S438C
Cluster13 T334C、I393C
Cluster14 C321G
GCN4 421から441位におけるRMKQIEDKIEEIESKQKKIEN
または421から435位におけるRMKQIEDKIEEIESK
tri 421から441位におけるIEAIEKKIEAIEKKIEAIEKK
または421から435位におけるIEAIEKKIEAIEKKI
H3N2A/Wisconsin/67/2005からの全長HAの配列を出発点として使用して、上記のクラスターをS62〜P322欠失(mini2;配列番号105)と組み合わせて本発明のポリペプチドを得た。
配列番号105:H3−mini2
配列番号106:H3−mini2−cl9+10
配列番号107:H3−mini2−cl9+11
配列番号108:H3−mini2−cl9+10+11
配列番号109:H3−mini2−cl9+10+11−tri(421〜441位におけるtri配列)
配列番号110:H3−mini2−cl9+10+11−GCN4(421〜441位におけるGCN4配列)
配列番号111:H3−mini2−cl9+10+11+12
配列番号112:H3−mini2−cl9+10+12
配列番号113:H3−mini2−cl9+10+11+12−GCN4(421〜435位における短いGCN4配列)
配列番号114:H3−mini2−cl9+10+11+12−tri(421〜435位における短いtri配列)
配列番号115:H3−mini2−cl9+13
配列番号116:H3−mini2−cl9+10+11+13
配列番号117:H3−mini2−cl9+10+11+13−GCN4(421〜441位におけるGCN4配列)
配列番号118:H3−mini2−cl9+10+11+13−tri(421〜441位におけるtri配列)
さらに、欠失S63〜P305(mini3)およびT64〜T317(mini4)を、cluster9、10、11および14と組み合わせて本発明のポリペプチドを作
出した。
配列番号119:H3−mini3−cl9+10+11+12+14
配列番号120:H3−mini4−cl9+10+11+12+14
H3N2A/HongKong/1/1968からの全長HAの配列を出発点として使用して、上記のクラスターをS62〜P322欠失と組み合わせて本発明のポリペプチドを得た。
配列番号121:H3 Full length A/HongKong/1/1968配列番号122:HK68H3m2−cl9
配列番号123:HK68H3m2−cl9+10
配列番号124:HK68H3m2−cl9+10+11
配列番号125:HK68H3m2−cl9+10+12
配列番号126:HK68H3m2−cl9+10+11+12
配列番号127:HK68H3m2−cl9+10+11+13
配列番号128:HK68H3m2−cl9+10+11+12−tri(421〜435位における短いtri配列)
配列番号129:HK68H3m2−cl9+10+11+13−tri(421〜441位におけるtri配列)
配列番号130:HK68H3m2−cl9+10+11+12−GCN4(421〜435位における短いGCN4配列)
配列番号131:HK68H3m2−cl9+10+11+13−GCN4(421〜441位におけるGCN4配列)。
一般に当業者に公知の方法を使用して上記のタンパク質配列をコードする遺伝子を合成し、発現ベクターpcDNA2004中にクローニングした。比較の理由のため、H3A/Wisconsin/67/2005、および/またはH3A/HongKong/1/1968の全長HA配列を実験に含めた。
形質移入剤として40μlの293transfectinを使用してHEK293F(Invitrogen)懸濁細胞(10個の細胞/ml、30ml)に発現ベクター(1μg/ml)を形質移入させ、さらに2日間増殖させた。細胞を回収し、アリコート化し(0.3ml、約310個の細胞)、アリコートを、発現を調べるためのH3HA(Protein Sciences Corp,Meriden,CT,USA)に対して生じたポリクローナル血清またはHA特異的モノクローナル抗体(5マイクログラム/ml)のいずれかおよび染色に使用される二次抗体により処理した。次いで、発現を調べるためのH3HAまたはH1HAに対して生じたポリクローナル血清を使用して細胞を本発明の膜付着HAステムドメインポリペプチドの発現について蛍光結合細胞選別(FACS)により分析した。全長タンパク質に結合する公知の特異性のモノクローナル抗体のパネル(CR8020、CR8043およびCR9114)を使用して保存エピトープの存在、ならびに推論により全長HAおよび本発明のmini−HAポリペプチドの正確なフォールディングを調べた。モノクローナル抗体CR6261(H3HAに結合しないことが公知)およびCR8057(A/Wisconsin/67/2005からのHAの頭部ドメインに結合する)も実験に含めた。結果を陽性細胞の割合として表現し、A/Wisconsin/67/2005のH3HAベース配列については図9に示し、A/HongKong/1/1968のH3HAベース配列については図10に示す。
結果は、全てのA/Wisconsin/67/2005ベース構築物(図9)が細胞表面上で発現されることを示す。それというのも、H3ポリクローナル血清との反応が、未形質移入細胞についての5%未満と比較して全ての分析細胞の約80%以上が陽性であることをもたらすためである。標識抗ヒトまたは抗ウサギIgGのみを使用するIgGの
不存在下の対照実験は、全て陰性である。A/Wisconsin/67/2005全長HAは、このタンパク質に結合し得ることが公知のモノクローナル抗体CR8020、CR8043、CR8057(一部のH3株にのみ結合する、国際公開第2010/130636号パンフレットに記載)およびCR9114により認識されるが、mAbのCR6261により認識されない。対照的に、ステムドメインポリペプチドのほとんどが、CR8020によっても、CR8043によっても、CR9114によっても認識されないが、いくつかの明らかな例外がある。cluster12突然変異を含むポリペプチドは、CR8020および/またはCR8043により認識された。H3−mini2−cl9+10+11+12(配列番号111)、H3−mini2−cl9+10+12(配列番号112)、H3−mini2−cl9+10+11+12−GCN4(配列番号113)およびH3−mini2−cl9+10+11+12−tri(配列番号114)は、CR8020(約10〜60%の範囲の陽性細胞の割合)およびCR8043(40〜70%)(矢印により示す)による認識を示す。4つの陽性構築物のうち、このアッセイにおいてH3−mini2−cl9+10+11+12−GCN4(配列番号113)が最大応答を示す。同一の結果が、パネルBにおいて示される平均蛍光強度から得られる(図9)。H3−mini2−cl9+10+11+12(配列番号111)、H3−mini2−cl9+10+12(配列番号112)、H3−mini2−cl9+10+11+12−GCN4(配列番号113)およびH3−mini2−cl9+10+11+12−tri(配列番号114)は、CR8020およびCR8043への曝露および染色後にバックグラウンドを十分上回る平均蛍光強度を示し、H3−mini2−cl9+10+11+12−GCN4(配列番号113)について最大応答を示す。A/Wisconsin/67/2005からのHAをベースとするポリペプチドはいずれも、CR9114を認識し得ない。
図10は、全てのA/HongKong/1/1968ベース構築物(図10)が細胞表面上で発現されることを示す。それというのも、ほとんどの構築物についてのH3ポリクローナル血清との反応が、未形質移入細胞についての5%未満と比較して全ての分析細胞の約40〜60%が陽性であることをもたらすためである。標識抗ヒトまたは抗ウサギIgGのみを使用するIgGの不存在下の対照実験は、全て陰性である。ポリクローナル血清による処理後のA/HongKong/1/1968からの全長タンパク質についての陽性細胞の割合は低い(約10%)が、CR8020、CR8043およびCR9114の結合から得られる強力なシグナルは、タンパク質が細胞表面上に存在することを示す。CR8057は、A/HongKong/1/1968ベース配列を認識せず、A/Wisconsin/67/2005からの全長タンパク質のみを認識する。4つの構築物(cluster12突然変異を含有)、すなわち、HK68 H3m2−cl9+10+12(配列番号125)、HK68H3m2−cl9+10+11+12(配列番号126)、HK68H3m2−cl9+10+11+12−tri(421〜435位における短縮tri配列を含有する配列番号128)およびHK68H3m2−cl9+10+11+12−GCN4(421〜435位における短いGCN4配列を含有する配列番号130)が、%陽性細胞(15%以上)およびバックグラウンドを明確に上回るMFIにより示されるとおり、CR8020およびCR8043により認識される。最大シグナル(MFI)は、HK68H3m2−cl9+10+11+12−GCN4(配列番号130)について得られ;このステムドメインポリペプチド構築物もCR9114への検出可能な結合を示す。
まとめると、本発明者らは、上記の方法に従って、本発明のステムドメインポリペプチドをグループ2の血清型、特にH3亜型のインフルエンザAウイルスについて得ることができることを示した。
実施例13
保存ステムドメインエピトープを含む可溶性ステムドメインポリペプチドの設計、発現および部分精製
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、得られるポリペプチドが細胞中での発現時に細胞表面上に提示されるようにHAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有する。他の実施形態において、HA2の523、524、525、526、527、528、529または530位(配列番号1による番号付与)(の相当物)からC末端の細胞質配列および膜貫通配列は、細胞中での発現が、例えば、ワクチンにおいて使用することができる分泌(可溶性)ポリペプチドをもたらすように除去した。可溶性ポリペプチドは、三量体構造を形成することが公知の配列(「foldon」としても公知)、すなわち、AYVRKDGEWVLL(配列番号143)を場合によりリンカー(例えば、GSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL)を介して連結させて導入することによりさらに安定化させることができる。リンカーは、当業者に周知のプロトコルに従って精製後に処理するための開裂部位を場合により含有し得る。可溶性形態の精製を容易にするため、短いリンカー、例えば、EGRを介して連結されたタグ配列、例えば、ヒスチジンタグ(6または7つの連続ヒスチジン)を付加することができる。一部の実施形態において、リンカーおよびヒスチジンタグは、foldon配列を存在させることなく付加する。
本発明によれば、H1N1A/Brisbane/59/2007からの全長HAのHA2ドメインの530位(配列番号1による番号付与)からC末端アミノ酸のアミノ酸配列を除去し、短いリンカーおよびヒスチジンタグを含む以下の配列EGRHHHHHHH(配列番号81)により置き換えた。この交換を、配列番号44:H1−mini2−cluster1+5+6−trim(配列番号144:s−H1−mini2−cluster1+5+6−trimをもたらす)、配列番号45:H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145:s−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4をもたらす)、配列番号46:mini2−cluster1+5+6(A/Brisbane/59/2007)(配列番号146:s−H1−mini2−cluster1+5+6をもたらす)、配列番号47:mini2−cluster11+5+6(A/Brisbane/59/2007)(配列番号147:s−H1−mini2−cluster11+5+6をもたらす)、配列番号48:mini2−cluster1+5(A/Brisbane/59/2007)(配列番号148:s−H1−mini2−cluster1+5をもたらす)に適用した。
同様に、比較の理由のため、交換を配列番号1:H1 Full length(A/Brisbane/59/2007)に適用し、さらにアルギニン343をグルタミンに改変(R343Q突然変異)して配列番号149:s−H1 Full length R343Qを生じさせることによりHA開裂部位を損傷させた。さらに、本発明の2つのポリペプチドを、HA1のN末端およびC末端部分間に異なるリンカーを用いて作出した:s−H1−mini2−cluster1+5+6−nl(配列番号150)およびs−H1−mini2−cluster1+5+6−nl2(配列番号151)。
一般に当業者に公知の方法を使用して上記のタンパク質配列をコードする遺伝子を合成し、発現ベクターpcDNA2004neo中にクローニングした。当分野において周知のプロトコルに従って形質移入剤として\293transfectinを使用してHEK293F(Invitrogen)懸濁細胞に発現ベクターを形質移入させ、さらに7日間増殖させた。細胞を遠心分離により培養培地から分離し、廃棄した一方、本発明の可溶性ポリペプチドを含有する上清をさらなる処理のために回収した。上清をNi−NTAカラム上での固定化金属親和性クロマトグラフィーにより精製して本発明のHisタグ化ポリペプチドを樹脂に結合させ、フロースルーを回収した。カラムを3〜10カラム容量の20mMのリン酸ナトリウムpH7.4、500mMのNaCl、10mMのイミダゾ
ール(「洗浄液」)、5〜15カラム容量の20mMのリン酸ナトリウムpH7.4、500mMのNaCl、100mMのイミダゾール(「ストリンジェント洗浄液」)により洗浄し、20mMのリン酸ナトリウムpH7.4、500mMのNaCl、500mMのイミダゾールにより溶出させた。個々の場合において、緩衝組成物または使用容量を、純度もしくは収量を増加させるように適合させ、または段階勾配に代えて線形勾配を使用した。フラクションを完全に回収し、ポリクローナル抗H1HA血清を検出に使用してSDS−PAGEおよびウエスタンブロット上で分析した(図11a〜h参照)。結果は、出発物質と比較して溶出物中の本発明のポリペプチドの明確な濃縮を示す。
本発明の精製ポリペプチドの適切なフォールディングおよび機能性を確認するため、調製物をモノクローナル抗体CR9114の結合について試験した。この目的のため、タンパク質のC末端におけるHisタグ(6または7つの連続ヒスチジン)に結合し得るモノクローナル抗体を標準的な96ウェルプレート上に、100マイクロリットルの1μg/ml抗体溶液をそれぞれのウェルにアプライし、4℃において一晩インキュベートすることによりコートした。過剰溶液の除去および洗浄後、プレートを150マイクロリットルの2%スキムミルク溶液により室温において1時間ブロッキングした。ブロッキング剤の除去および洗浄後、100マイクロリットルの本発明ポリペプチドの1μg/ml溶液、および対応する全長タンパク質(配列番号149)のエクトドメインを添加し、室温において2時間インキュベートした。本発明の過剰ポリペプチドの除去後、mAbのCR9114、mAbのCR8020(陰性対照)またはウサギ中でH1HAに対して生じたポリクローナル血清(陽性対照)を、2および20μg/ml間で変動する濃度において添加し、室温において2時間インキュベートした。結合は、当分野において周知のプロトコルを使用してHRPコンジュゲート抗ヒト抗体を介して検出した。
結果(図12)は、モノクローナル抗体CR9114が本発明の精製可溶性ポリペプチドおよび全長エクトドメインに結合している(図12a)一方、モノクローナル抗体CR8020が結合していない(図12b)ことを示す。ポリクローナル抗H1血清も本発明のポリペプチドおよび全長エクトドメインに極めて類似して結合する(図12c)。したがって、CR9114の広域中和エピトープは、本発明のポリペプチド中で保存されること、ならびにこのエピトープの不連続および立体構造的性質を考慮すると、ステムドメインは、適切にフォールドされ、天然全長HAの立体構造と同等または極めて類似の三次元立体構造を採用することが結論づけられる。
本発明のポリペプチドの調製物は、SDS−PAGEおよびウエスタンブロット結果から決定されるとおり、サイズが不均一であった。本発明者らは、このバリエーションが個々のタンパク質分子間のタンパク質グリコシル化パターンのバリエーションに起因すると仮定した。これを確認するため、タンパク質調製物の小さいアリコートを3単位のN−グリコシダーゼF(N−結合炭水化物部分をアスパラギン残基から除去する酵素)により37℃において18時間処理し、SDS−PAGEおよびウエスタンブロットにより分析した。結果(図13aおよび13b)は、N−グリコシダーゼによる処理が本発明のポリペプチドの拡散バンドをアミノ酸配列から計算された予測分子量における単一バンドに集めることを示す。これは、観察されたサイズ不均一性が実際にグリコシル化パターンのバリエーションから生じる明確な証拠である。
本発明のポリペプチドの調製物をHP−SECによりさらに特性決定した。この目的のため、約40μgの本発明のポリペプチドを、43〜63μlの容量(0.64〜0.93mg/mlのポリペプチドの濃度)で、多角度光散乱検出器に連結されたTosoh TSK−gel G2000 SWxlカラムにアプライした。結果を図14に示す。メインピーク(滞留時間約8分間)は、本発明のポリペプチドから生じ、より大きい種から十分に分離され、このことは、さらなる精製を達成することができることを示す。多角度
光散乱検出器のデータに基づくと、メインピークは、試験される本発明のポリペプチドに応じて50〜80キロダルトンの分子量を有する分子種に対応する(表9参照)。上記のポリペプチドグリコシル化のサイズ不均一性およびバリエーション、ならびに分子の流体力学的形状に対する結果の依存性に照らし、これらの数字は単なる表示として解釈すべきである。
実施例14
モノクローナル抗体CR9114、CR6261およびFI6v3の保存ステムドメインエピトープを含む可溶性ステムドメインポリペプチドの発現および部分精製
本発明のポリペプチドの高度に純粋な調製物を得るため、HEK293F細胞に、s−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)をコードする遺伝子を含有する発現ベクターpcDNA2004を形質移入させた。産生の間にタンパク質の輸送を指向するリーダー配列(またはシグナル配列)(配列番号145のアミノ酸1〜17に対応)は、分泌最終ポリペプチド中に存在しないことが当業者により理解される。この目的のため、HEK293F細胞(Invitrogen)を300gにおいて5分間スピンダウンさせ、SF1000を介して300mLの予備加温Freestyle(商標)培地中で再懸濁することにより1.010vc/mLを播種した。この培養物をmultitronインキュベーター中で37℃、10%のCO、110rpmにおいて1時間インキュベートした。1時間後、プラスミドDNAを9.9mLのOptimem培地中で300mLの培養容量中1.0μg/mLの濃度にピペッティングした。並行して、440μLの293fectin(登録商標)を9.9mLのOptimem培地中でピペッティングし、室温において5分間インキュベートした。5分後、プラスミドDNA/Optimem混合物を293fectin(登録商標)/Optimem混合物に添加し、室温において20分間インキュベートした。インキュベーション後、プラスミドDNA/293fectin(登録商標)混合物を細胞懸濁液に滴加した。形質移入培養物をmultitronインキュベーター中で37℃、10%のCOおよび110rpmにおいてインキュベートした。7日目、細胞を培養培地から遠心分離(3000gにおいて30分間)により分離した一方、本発明の可溶性ポリペプチドを含有する上清をさらなる処理のために0.2μmボトルトップフィルター上で濾過した。
本発明のポリペプチドの存在を確認するため、上清の小アリコートを、検出のためのhisタグに対して指向されるモノクローナル抗体を使用してウエスタンブロットにより分析した(図15a)。37〜50kDaの見かけの分子量においていくつかのバンドが観察され、それはタンパク質のアミノ酸組成に基づき計算された分子量に近く、またはそれを上回る。サイズ不均一性は、グリコシル化パターンのバリエーションにより引き起こされる。それというのも、N−グリコシダーゼFによりこのタンパク質を処理して付着N−結合グリカンをタンパク質から除去することが、予測分子量におけるバンドの集合をもたらすことをより早期実験が示しているためである。
本発明のポリペプチド上の広域中和エピトープの存在は、広域中和抗体CR6261、CR9114およびFI6v3をプローブとして使用してELISAにより確認した。比較の理由のため、モノクローナル抗体CR8020も陰性対照として実験に含め;この抗体は、グループ2ウイルスからのHA分子(例えば、H3およびH7HA)に結合し得るが、グループ1からのHA分子(例えば、H1およびH5HA)には結合し得ない。この目的のため、タンパク質のC末端におけるHisタグ(6または7つの連続ヒスチジン)に結合し得るモノクローナル抗体を、標準的な96ウェルプレート上に、100マイクロリットルの1μg/ml抗体溶液をそれぞれのウェルにアプライし、4℃において一晩インキュベートすることによりコートした。過剰溶液の除去および洗浄後、プレートを150マイクロリットルの2%スキムミルク溶液により室温において1時間ブロッキングした。ブロッキング剤の除去および洗浄後、100マイクロリットルの上清を添加し、室温に
おいて2時間インキュベートした。本発明の過剰のポリペプチドの除去後、mAbのCR9114を添加し、5μg/ml濃度において出発する1:2希釈系列で添加し、室温において2時間インキュベートした。結合は、当分野において周知のプロトコルを使用してHRPコンジュゲート抗ヒト抗体を介して検出した。本発明のポリペプチドへのCR9114、FI6v3およびより小程度でCR6261の明確な結合が観察される一方、CR8020について応答は観察されず、このことは、観察される結合が試験モノクローナル抗体に特異的であることを示す(図15b)。
精製目的のため、250mlの培養上清を5mlのHisトラップカラムにアプライし、75mlの洗浄緩衝液(20mMのTRIS、500mMのNaCl、pH7.8)により洗浄し、段階的勾配のイミダゾール(洗浄緩衝液中10、50、100、200、300および500mM)により溶出させた。クロマトグラム(図16)は、複数のピークを示し、本発明のポリペプチドは、100mMのイミダゾール(ピークA)および200mMのイミダゾール(ピークB)において溶出する。両方のピークを回収し、濃縮し、さらなる精製のためにサイズ排除カラム(Superdex 200)にアプライした。溶出プロファイルを図17aおよび17bに示す。フラクションを回収し、SDS−PAGE上で分析した(図17cおよびd)。ピークAおよびBの両方に由来するフラクション3は、本発明の高度に純粋なポリペプチドを含有する。最終収量は、約10μg/mlの培養上清であった。精製バッチは、エンドトキシン不含であり(5mg/kgにおいて投与;<1EU/mg)において投与;ChromogenicLAL);バイオバーデンは1CFU/50μg未満である。
実施例15
インフルエンザBHAをベースとするCR9114の保存ステムドメインエピトープを含むステムドメインポリペプチドの設計
本発明のポリペプチドを設計する上記の手順をインフルエンザBにも適用した。この実施例において、公知の系統、すなわち、B/Florida/4/2006(B/Yamagata系統)およびB/Malaysia/2506/2004(B/Victoria系統)の両方のウイルス株から採取されるHA配列に基づく本発明のポリペプチドを記載する。当業者は、他のインフルエンザBHA配列の使用も可能であることを理解する。それというのも、この配列は、特にステム領域が十分保存されるためである。したがって、下記による他のインフルエンザBHA配列に由来するポリペプチドも本発明により包含される。
B/Florida/4/2006のHA配列の第1の改変は、R(または限定数の場合においてK)をQに突然変異(R361Q)させることにより361位(番号付与は、配列番号132を指す)における開裂部位を除去してHA0からのHA1およびHA2の形成を防止することである。場合により、残基363から367(GFGAI、融合ペプチドの一部)をさらに欠失させて水性溶媒への疎水性残基の曝露を最小化することができる。開裂における陽性電荷はインフルエンザBからのHAにおいて100%保存され、したがって、この突然変異は全ての配列中に適用することができる。
第2の改変は、HA1配列の大部分を欠失させ、NおよびC末端配列を短いリンカーを介して再連結させることにより頭部ドメインを除去することである。欠失は、長さを変えることができるが、結合配列を介する歪みの導入を回避するため、HA1のN末端配列の最後の残基およびC末端配列の最初の残基が空間的に近接することが好ましい。B配列において、欠失は、B/Florida/4/2006(配列番号132)中のP51〜I336(m2;配列番号133)(の相当位置)において導入することができる。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、ClustalまたはMuscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。配列の残留部分を
直接的に結合させることができ、またはフレキシブルリンカーを導入することができる。リンカー配列は、1〜50アミノ酸長であり得る。限定された長さ(10アミノ酸以下)のフレキシブルリンカー、例えば、GGG、GGGG、GSA、GSAG、GSAGSA、GSAGSAGまたは類似物が好ましい。
配列番号133は、欠失P51〜I332(m2;配列番号133)を含有するこのような本発明のポリペプチドを記載する。上記の欠失は、P51およびN58間ならびにE306〜I337の残基により形成される非構造化領域も除去されることを確保し;これは、本発明のポリペプチドの全安定性に有益である。類似の効果がH1配列に由来する本発明のポリペプチドについて観察された(上記参照)。
頭部ドメインの欠失により、残基416〜436のループが水性溶媒に目下曝露されたままとなる。BHAにおいて、このループは高度に保存される(表10参照)。コンセンサス配列は:LSELEVKNLQRLSGAMDELHNである。
融合前立体構造の本発明のポリペプチドのためにこのループの溶解度を増加させ、融合後立体構造を脱安定化させるため、いくつかの疎水性残基を極性(S、T、N、Q)、荷電アミノ酸(R、H、K、D、E)に改変し、またはGへの突然変異によりフレキシビリティを増加させなければならない。具体的には、421、424、427、434位(番号付与は、配列番号132を指す)における突然変異は、本発明のポリペプチドの安定性に寄与する。
V421およびL427について、Tへの突然変異が好ましいが、他の極性(S、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)および高度にフレキシブルなアミノ酸(G)が同一効果を有する。424位について、Sへの突然変異が好ましい。他の極性(N、T、Q)、荷電(R、H、K、D、E)および高度にフレキシブルなアミノ酸(G)は、同一効果を有する。L434位について、Gへの突然変異が好ましい。他の極性(S、T、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)は、同一効果を有する。上記の突然変異の少なくとも1つを含有するポリペプチドを作製した。例えば、配列番号134〜136に示されるとおり、2つ以上の突然変異の組合せも可能である。
本発明のポリペプチドの融合前立体構造を安定化させるため、一次配列中で遠位であるがフォールドした融合前立体構造中で近い2つの部分間に共有結合を導入した。この目的のため、ジスルフィド架橋をポリペプチド中で、好ましくは、B/Florida/4/2006(配列番号134〜136)からのHA中のK340およびS454位間(の相当物)で遺伝子操作する。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、Clustal、Muscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。遺伝子操作ジスルフィド架橋は、少なくとも一方(他方が既にシステインである場合)、しかし通常、空間的に近い2つの残基をシステインに突然変異させ、それが自発的にまたは活性酸化によりそれらの残基の硫黄原子間の共有結合を形成することにより作出される。
ステムドメインにおいて、三量体化は、三量体コイルドコイルモチーフの形成により媒介される。このモチーフの増強により、より安定な三量体を作出することができる。GCN4に由来する三量体コイルドコイルの形成を支持する配列、RRMKQIEDKIEEILSKIを436〜452位(配列番号135)(の相当物)において、またはRMKQIEDKIEEILSKIを436〜451位(配列番号136)において導入する。
同一の手順をB/Malaysia/2506/2004(配列番号137)からのHAについて行ってポリペプチドを提供した。B/Florida/4/2006からのH
Aと比較して、このHAは、178位において挿入された追加のアスパラギン残基を有し、それは2つの配列のアラインメントにおいて容易に把握することができる。結果的に、開裂部位は362位において存在し、開裂を防止するための対応する突然変異はR362Qである。この場合における頭部領域を除去するための欠失は、例えば、P51〜I337(m2;配列番号138)である。ここでも、配列の残留部分を直接的に結合させることができ、またはフレキシブルリンカーを導入することができる。リンカー配列は、1〜50アミノ酸長であり得る。限定された長さ(10アミノ酸以下)のフレキシブルリンカー、例えば、GGG、GGGG、GSA、GSAG、GSAGSA、GSAGSAGまたは類似物が好ましい。
配列番号138は、欠失P51〜I332(m2;配列番号138)を含有するこのようなポリペプチドを記載する。上記の欠失は、P51〜N58ならびにE307〜I338の残基により形成される非構造化領域も除去されることを確保し;これは、本発明のポリペプチドの全安定性に有益である。類似の効果がH1配列に由来する本発明のポリペプチドについて観察された(上記参照)。
頭部ドメインの欠失により、残基L420〜H436のループが水性溶媒に目下曝露されたままとなる。BHAにおいて、このループは高度に保存される(表x参照)。コンセンサス配列は:LSELEVKNLQRLSGAMDELHNである。
融合前立体構造のこのループの溶解度を増加させ、融合後立体構造を脱安定化させるため、いくつかの疎水性残基を極性(S、T、N、Q)、荷電アミノ酸(R、H、K、D、E)に改変し、またはGへの突然変異によりフレキシビリティを増加させなければならない。具体的には、422、425、428、435位(番号付与は、配列番号137を指す)における突然変異を試験した。
V422およびL428位について、Tへの突然変異が好ましいが、他の極性(S、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)および高度にフレキシブルなアミノ酸(G)が同一効果を有する。425位について、Sへの突然変異が好ましい。他の極性(N、T、Q)、荷電(R、H、K、D、E)および高度にフレキシブルなアミノ酸(G)は、同一効果を有する。L435位について、Gへの突然変異が好ましい。他の極性(S、T、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)は、同一効果を有する。上記の突然変異の少なくとも1つを含有するポリペプチドを作製した。例えば、配列番号139〜141に示されるとおり、2つ以上の突然変異の組合せも可能である。
本発明のポリペプチドの融合前立体構造を安定化させるため、一次配列中で遠位であるがフォールドした融合前立体構造中で近い2つの部分間に共有結合を導入する。この目的のため、ジスルフィド架橋を本発明のポリペプチド中で、好ましくは、B/Malaysia/2506/2004(配列番号139〜141)からのHA中のK341およびS455位(の相当物)間で遺伝子操作する。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、Clustal、Muscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。遺伝子操作ジスルフィド架橋は、少なくとも一方(他方が既にシステインである場合)、しかし通常、空間的に近い2つの残基をシステインに突然変異させ、それが自発的にまたは活性酸化によりそれらの残基の硫黄原子間の共有結合を形成することにより作出される。
上記のとおり、天然HAは、細胞表面上の三量体として存在する。三量体を一緒に保持する個々の単量体間の相互作用のほとんどは、頭部ドメイン中に局在する。したがって、頭部の除去後、三次構造は脱安定化され、したがって、トランケート分子中の単量体間の相互作用の強化は安定性を増加させる。ステムドメインにおいて、三量体化は、三量体コ
イルドコイルモチーフの形成により媒介される。このモチーフの増強により、より安定な三量体を作出することができる。GCN4に由来する三量体コイルドコイルの形成を支持する配列、RRMKQIEDKIEEILSKIを437〜453位(配列番号135)(の相当物)において、またはRMKQIEDKIEEILSKIを437〜452位(配列番号136)において導入する。
インフルエンザBヘマグルチニンをベースとするポリペプチド配列番号133〜136および138〜141を、CR9114のエピトープの存在について上記の蛍光結合細胞選別により試験した。しかしながら、これらの構築物についてmAbのCR9114の結合は観察されなかった。
実施例16
第3世代HAステムドメインポリペプチドの免疫原性
ステムドメインポリペプチドの免疫原性を評価するため、マウスをA/Brisbane/59/2007からの全長H1(配列番号1)、Mini3−cluster11(配列番号11)、Mini2−cluster11+5(配列番号14)、mini2−cluster1+5(配列番号48)、mini2−cluster1+5+6(配列番号46)、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)およびmini2−cluster1+5+6−nl(配列番号152)をコードする発現ベクターによりマウスを免疫化した。cM2をコードする発現ベクターも陰性対照として含めた。
4匹のマウス(BALB\c)の群を、50μgの構築物+50μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)により筋肉内で1、21および42日目に免疫化した。49日目、最後の採血を実施し、血清を回収した。血清を、A/Brisbane/59/2007およびA/California/07/2009株からの全長HAの組換えエクトドメイン(Protein Sciences Corporation,Meriden,CT,USAから入手)を抗原として使用してElisaにより分析した。手短に述べると、96ウェルプレートを50ngのHAにより4℃において一晩コートし、次いでブロック緩衝液(100μlのPBS、pH7.4+2%のスキムミルク)と室温において1時間インキュベートした。プレートを、PBS+0.05%のTween−20により洗浄し、血清の20倍希釈から出発するブロック緩衝液中の100μlの2倍希釈系列を添加する。結合抗体は、HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgGを使用して、当分野において十分確立された標準的プロトコルを使用して結合抗体を検出する。mAbの3AH1InA134(Hytest,Turku,Finland)を使用して力価を標準曲線と比較してElisa単位/ml(EU/ml)を導く。
上記の免疫化スケジュールにより誘導された同種全長タンパク質のエクトドメインに対するIgG応答の時間経過を図18に示す。高い応答は、4週間後に全長タンパク質をコードするDNA(配列番号1)により免疫化されたマウスについて既に観察することができる。応答は、7週間における力価の増加から示されるとおり、ブースト注射により増加される。本発明のポリペプチドmini2−cluster11+5(配列番号14)、mini2−cluster1+5(配列番号48)、mini2−cluster1+5+6(配列番号46)、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)およびmini2−cluster1+5+6−nl(配列番号152)をコードするDNAによる免疫化は、7週目における力価から証明されるとおり、ブースター免疫化時にさらに増加される中間力価をもたらす。Mini3−cluster11(配列番号11)および陰性対照cM2をコードするDNAによる免疫化は、このアッセイにおいて検出可能な応答をもたらさない。
図19は、同種株H1N1A/Brisbane/59/2007(パネルA)および異種株H1N1A/California/07/2009からの全長ヘマグルチニンのエクトドメインに対する個々のマウスについての最初の免疫化後7週目におけるIgG応答を示す。本発明のポリペプチドをコードするDNA本発明のポリペプチドをコードするmini2−cluster11+5(配列番号14)、mini2−cluster1+5(配列番号48)、mini2−cluster1+5+6(配列番号46)、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)およびmini2−cluster1+5+6−nl(配列番号152)をコードするDNAにより誘導された抗体は、同種および異種株に由来するヘマグルチニンのエクトドメインに同等に十分結合する。対照的に、全長タンパク質(配列番号1)をコードするDNAによる免疫化は、同種ヘマグルチニンに対しては高い力価をもたらす(本発明のポリペプチドをコードするDNAによる免疫化について観察される力価よりも1桁を超えて高い)が、異種ヘマグルチニンのエクトドメインに対しては低い力価をもたらす。Mini3−cluster11(配列番号11)および陰性対照cM2をコードするDNAによる免疫化は、このアッセイにおいてヘマグルチニンエクトドメインのいずれに対しても検出可能な応答をもたらさない。
まとめると、本発明のポリペプチドmini2−cluster11+5(配列番号14)、mini2−cluster1+5(配列番号48)、mini2−cluster1+5+6(配列番号46)、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)およびmini2−cluster1+5+6−nl(配列番号152)に対して生じた抗体は、全長ヘマグルチニンを認識し得る。これらのエピトープは、ヘマグルチニンステムドメイン上に局在し、H1N1A/Brisbane/59/2007およびH1N1A/California/07/2009からの全長ヘマグルチニン間で保存されることが必要である。
実施例17
第3世代HAステムドメインポリペプチドmini2−cluster1+5+6−GCN4の免疫原性
本発明のステムドメインポリペプチドの免疫原性をさらに評価するため、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)コードする発現ベクターによりマウスを1回免疫化し(プライム)、精製タンパク質s−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)により3週間間隔において2回ブーストした。比較の理由のため、別個の群を、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)およびA/Brisbane/59/2007からの全長H1(配列番号1)をコードする発現ベクターによる3週間間隔の免疫化において3回免疫化した。cM2をコードする発現ベクターも陰性対照として含めた。
4匹のマウス(BALB\c)の群を、1日目に、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)をコードする1000μgの構築物+100μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)により、および21および42日目に、s−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145;100μgの精製タンパク質)により10μgのMatrix−Mをアジュバント添加して筋肉内(i.m.)免疫化した。1つの群は、第2および第3の免疫化を皮下で受けた一方、別の群は、第2および第3の免疫化を筋肉内で受けた。さらに第3の群を、上記のとおり1日目に、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)をコードする100μgの構築物+100μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)によりプライミングし、21および41日目に、s−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145;100μgの精製タンパク質)にMontanide ISA−720(1:1v/v)をアジュバント添加するブースター免疫化を受けた。比
較のため、1、21および42日目に、4匹のマウス(BALB\c)の群を、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)、A/Brisbane/59/2007からの全長H1(配列番号1)またはcM2をコードする100μgの構築物により筋肉内で免疫化し、100μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)によりアジュバント添加した。
49日目、最後の採血を実施し、血清を回収した。血清を、H1N1A/Brisbane/59/2007、H1N1A/California/07/2009、H5N1A/Vietnam/1203/2004およびH3N2A/HongKong//1968株からの組換え全長HA(Protein Sciences Corporation,Meriden,CT,USAから入手)を抗原として使用してELISAにより分析した。手短に述べると、96ウェルプレートを50ngのHAにより4℃において一晩コートし、次いでブロック緩衝液(100μlのPBS、pH7.4+2%のスキムミルク)と室温において1時間インキュベートした。プレートを、PBS+0.05%のTween−20により洗浄し、血清の20倍希釈から出発するブロック緩衝液中の100μlの2倍希釈系列を添加する。結合抗体は、HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgGを使用して、当分野において十分確立された標準的プロトコルを使用して結合抗体を検出する。力価を、HA抗原に結合するマウスモノクローナル抗体の系列希釈物から構成される標準曲線と比較し、1ml当たりのELISA単位(EU/ml)として表現する。図20は、同種株H1N1A/Brisbane/59/2007(パネルA)、異種株H1N1A/California/07/2009(パネルB)異種亜型株H5N1A/Vietnam/1203/2004(パネルC)および異種亜型株H3N2A/HongKong/1/1968(パネルD)からの全長ヘマグルチニンのエクトドメインに対する個々のマウスについての最初の免疫化後7週目におけるIgG応答を示す。本発明のポリペプチドmini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)をコードするDNAによる免疫化により誘導された抗体は、H1N1A/Brisbane/59/2007、H1N1A/California/07/2009およびより少程度でH5N1A/Vietnam/1203/2004のHAを認識し得る。A/Brisbane/59/2007からの全長H1(配列番号1)をコードするDNAによる免疫化により誘発された抗体は、同種タンパク質を極めて十分に認識するが、図17BおよびCにおいてより低い力価により証明されるとおり、H1N1A/California/07/2009からの異種HA、およびH5N1A/Vietnam/1203/2004からの異種亜型HAをそれほど認識しない。mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45;プライム)をコードするDNAにより免疫化され、次いでs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)タンパク質によりブースター免疫化されたマウスの群は、同種H1N1A/Brisbane/59/2007、異種H1N1A/California/07/2009および異種亜型H5N1A/Vietnam/1203/2004に由来するHAのエクトドメイン対して高い力価を示す。
図20Dは、H3N2A/HongKong/1/1968からのHAのエクトドメインに対する7週目におけるIgG応答を示す。インフルエンザグループ1に属する株のH1N1A/Brisbane/59/2007のHAに由来するmini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)およびs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)とは異なり、H3N2A/HongKong/1/1968はインフルエンザグループ2に属し、したがって、この実験において使用される本発明のポリペプチドを設計するために使用される親配列から系統発生的に遠い。mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)またはH1N1A/Brisbane/59/2007からの全長HA(配列番号1)をコードするDNAによる3回の免疫化は、この抗原に対するELISAにより検出可能なIgGレベルをもた
らさない。対照的に、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)をコードするDNAにより免疫化し、次いで精製タンパク質s−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)により2回ブースター免疫化することは、H3N2A/HongKong/1/1968からのHAに対して高い力価をもたらす。この結果は、使用される免疫化経路(すなわち、筋肉内と皮下)ともタンパク質ブースト免疫化に添加されるアジュバント(Matrix−MまたはMontanide
ISA−720)とも無関係に得られる。
まとめると、本発明のポリペプチドによる免疫化は、広範のインフルエンザ株、例としてインフルエンザグループ1からの同種、異種、および異種亜型株ならびにインフルエンザグループ2からの株からのHAを認識し得るIgGを誘発し得る。対照的に、全長HAによる免疫化は、同種株のHAに対する高い力価、異種および異種亜型株に対する低減された力価ならびにインフルエンザグループ2からの株についての検出限界未満のIgGレベルをもたらす。
実施例18
CR6261およびCR9114の保存ステムドメインエピトープを含むさらなるステムドメインポリペプチドの設計
上記の手順に従って設計された本発明のポリペプチドは、安定性を増加させるためにさらに改変することができる。このような改変は、単量体および/または二量体種と比べて本発明のポリペプチドの三量体形態の形成を向上させるために導入することができる。上記のとおり、天然HAは、細胞表面上の三量体として存在する。三量体を一緒に保持する個々の単量体間の相互作用のほとんどは、頭部ドメイン中に局在する。したがって、頭部の除去後、三次構造は脱安定化され、したがって、トランケート分子中の単量体間の相互作用の強化は三量体形態の安定性を増加させる。ステムドメインにおいて、三量体化は、三量体の形成により媒介される。ステムドメイン中のコイルドコイルモチーフの増強により、より安定な三量体形態を達成することができる。
本発明によれば、三量体コイルドコイルの形成のためのコンセンサス配列、IEAIEKKIEAIEKKIE(配列番号83)を、本発明のポリペプチド中にH1A/Brisbane/59/2007中の418〜433位(配列番号44)(配列番号1による番号付与)(の相当物)において導入する。あるいは、IEAIEKKIEAIEKKI(配列番号85)を419〜433(配列番号49)において、またはIEAIEKKIEAIEKK(配列番号86)を420〜433(配列番号50)において導入することができる。代替例は、GCN4に由来し、三量体化することが公知の配列MKQIEDKIEEIESKQ(配列番号84)を、419〜433位(配列番号45)において導入することである。あるいは、MKQIEDKIEEIESK(配列番号87)を420〜433位(配列番号51)において、またはRMKQIEDKIEEIESKQK(配列番号88)を417〜433位(配列番号52)において導入することができる。同様に、三量体界面は、M420、L423、V427、G430をイソロイシンに改変することにより増強することができる(配列番号53)。
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、H1HAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有する。他の実施形態において、HA2の523、524、525、526、526、527、528、529、または530位(配列番号1による番号付与)(またはそれらの相当物)からHA2のC末端の細胞質配列および膜貫通配列は、分泌(可溶性)ポリペプチドが産生されるように除去する。可溶性ポリペプチドは、上記のとおりさらに安定化することができる。
リンカーバリアントの説明
一般に当業者に公知の方法を使用して上記のタンパク質配列(配列番号44〜46;配列番号49〜53および配列番号152〜157をコードする遺伝子を合成し、発現ベクターpcDNA2004中にクローニングした。比較の理由のため、全長配列(配列番号1)およびcM2をコードする発現ベクターを実験に含めた。
形質移入剤として40μlの293−transfectinを使用してHEK293F(Invitrogen)懸濁細胞(10個の細胞/ml、30ml)に発現ベクター(1μg/ml)を形質移入させ、さらに2日間増殖させた。細胞を回収し;アリコート化し(0.3ml、約310個の細胞)、アリコートを、発現を調べるためのH1HAに対して生じたポリクローナル血清またはHA特異的モノクローナル抗体(5マイクログラム/ml)のいずれかおよび染色に使用される二次抗体により処理した。次いで、発現を調べるためのH1HAに対して生じたポリクローナル血清を使用して細胞を本発明の膜付着HAステムドメインポリペプチドの発現について蛍光結合細胞選別(FACS)により分析した。全長タンパク質に結合する公知の特異性のモノクローナル抗体のパネル(CR6261、CR9114、CR9020およびCR8020)を使用して保存エピトープの存在、ならびに推論により全長HAおよび本発明のmini−HAポリペプチドの正確なフォールディングを調べた。結果を、陽性細胞の割合および平均蛍光強度として表現し、図21に示す。
結果は、ポリクローナル抗H1血清からの陽性応答により証明されるとおり、全ての試験バリアントが細胞表面上で発現されることを示す。H3HA特異的抗体CR8020は、実験に含まれる構築物のいずれも認識しない一方、H1HAの頭部ドメインに結合するCR9020は、全長タンパク質のみに明確に認識する。本発明の全てのポリペプチド、および全長タンパク質はCR6261およびCR9114により認識され、このことは、対応するエピトープが本発明のポリペプチド中に野生型タンパク質と同一の立体構造で存在することを示す。へリックスCD(図1参照)中に含まれる追加の三量体モチーフを有する本発明のポリペプチドのうち、GCN4由来配列の配列番号84、87および88を含有する配列番号45、51および52は、それぞれ、配列番号83、85および86のコンセンサス三量体配列を含有する配列番号44、49および50と同等以上の応答(MFI)をもたらす。
本発明のポリペプチド中のアミノ酸52および321(番号付与は、配列番号1を指す)を連結するリンカーの組成のバリエーションは、モノクローナル抗体CR6261およびCR9114の認識の大きい変化をもたらさない。最大変化は、配列番号46中のGGGGをHNGKにより置き換えた場合(配列番号152をもたらす)に観察され、それは、CR6261に対するいくぶん低い応答をもたらすが、CR9114に対する応答に影響しない。リンカーの除去および配列番号1のアミノ酸53〜56(SHNG)の導入、すなわち、リンカーを配列番号46(配列番号153をもたらす)、配列番号45(配列番号154をもたらす)または配列番号50(配列番号155をもたらす)中に有さない本発明のポリペプチドの作出は、FACSアッセイにおける応答に影響を与えず、このことはリンカー配列が重要でないことを示す。
配列番号156は、配列番号46から、突然変異I337N、I340NおよびF352Yを導入することによりに誘導する一方、配列番号157は、353位における追加の突然変異、すなわち、I353Nを含有する。これらの突然変異は、図21に示されるFACSアッセイにおけるCR6261およびCR9114に対する応答の改善をもたらさない。
ある実施形態において、本発明のポリペプチドは、HAの細胞内配列および膜貫通ドメインを含有する。他の実施形態において、HA2の523、524、525、526、5
26、527、528、529、または530位(配列番号1による番号付与)(またはそれらの相当物)からHA2のC末端の細胞質配列および膜貫通配列を除去し、三量体構造を形成することが公知の配列、すなわち、AYVRKDGEWVLL(配列番号143)を場合によりリンカーを介して連結させて導入することにより場合により置き換える。リンカーは、当業者に周知のプロトコルに従って後で処理するための開裂部位を場合により含有し得る。可溶性形態の精製を容易にするため、短いリンカー、例えば、EGRを介して連結されたタグ配列、例えば、HisタグHHHHHHHを付加することができる。本発明によれば、アミノ酸配列は、HA2ドメインの530位(配列番号1による番号付与)からC末端アミノ酸のアミノ酸配列を除去し、配列番号81または配列番号82により置き換えた。
実施例19
第3世代HAステムドメインポリペプチドの免疫原性
ステムドメインポリペプチドの免疫原性を評価するため、A/Brisbane/59/2007からの全長H1(配列番号1)、Mini3−cluster11(配列番号11)、Mini2−cluster11+5(配列番号14)、mini2−cluster1+5+6(配列番号46)、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)、mini2−cluster1+5+6−nl(配列番号152)、mini2−cluster1+5+6−nl2(配列番号153)、mini2−cluster1+5+6−nl2s−GCN4(配列番号154)、mini2−cluster1+5+6−GCN4t2(配列番号51)、mini2−cluster1+5+6−GCN4t3(配列番号52)、mini2−cluster1+5+6+12(配列番号156)およびmini2−cluster1+5+6+12+13(配列番号157)をコードする発現ベクターによりマウスを免疫化した。cM2をコードする発現ベクターも陰性対照として含めた。
4匹のマウス(BALB\c)の群を、100μgの構築物+100μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)により筋肉内で1、21および42日目に免疫化した。49日目、最後の採血を実施し、血清を回収した。血清を、H1N1A/Brisbane/59/2007、H1N1A/California/07/2009およびH5N1A/Vietnam/1203/2004株からの組換え全長HA(Protein
Sciences Corporation,Meriden,CT,USAから入手)を抗原として使用してELISAにより分析した。手短に述べると、96ウェルプレートを50ngのHAにより4℃において一晩コートし、次いでブロック緩衝液(100μlのPBS、pH7.4+2%のスキムミルク)と室温において1時間インキュベートした。プレートをPBS+0.05%のTween−20により洗浄し、血清の50倍希釈から出発するブロック緩衝液中の100μlの2倍希釈系列を添加する。結合抗体は、HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgGを使用して、当分野において十分確立された標準的プロトコルを使用して検出する。力価を、HA抗原に結合するマウスモノクローナル抗体の系列希釈物から構成される標準曲線と比較し、1ml当たりのELISA単位(EU/ml)として表現する。
図22は、同種株H1N1A/Brisbane/59/2007(パネルA)、異種株H1N1A/California/07/2009(パネルB)および異種亜型株H5N1A/Vietnam/1203/2004(パネルC)からの全長ヘマグルチニンに対する個々のマウスについての最初の免疫化後7週目におけるIgG応答を示す。本発明のポリペプチドMini2−cluster11+5(配列番号14)、mini2−cluster1+5+6(配列番号46)、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)、mini2−cluster1+5+6−nl(配列番号152)、mini2−cluster1+5+6−nl2(配列番号153)、mini
2−cluster1+5+6−nl2s−GCN4(配列番号154)、mini2−cluster1+5+6−GCN4t2(配列番号51)、mini2−cluster1+5+6−GCN4t3(配列番号52)、mini2−cluster1+5+6+12(配列番号156)およびmini2−cluster1+5+6+12+13(配列番号157)をコードするDNAによる免疫化により誘導された抗体は、同種H1N1A/Brisbane/59/2007および異種H1N1A/California/07/2009株に由来するヘマグルチニンのエクトドメインに同等に十分結合する(図22AおよびB)。最大力価は、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)、mini2−cluster1+5+6−GCN4t2(配列番号51)およびmini2−cluster1+5+6−nl2s−GCN4(配列番号154)について観察される。対照的に、全長タンパク質(配列番号1)をコードするDNAによる免疫化は、同種ヘマグルチニンに対しては高い力価をもたらす(本発明のポリペプチドをコードするDNAによる免疫化について観察される力価よりも1桁を超えて高い)が、異種ヘマグルチニンのエクトドメインに対しては低い力価をもたらす(1桁を超える)。Mini3−cluster11(配列番号11)および陰性対照cM2をコードするDNAによる免疫化は、このアッセイにおいてヘマグルチニンエクトドメインのいずれに対しても検出可能な応答をもたらさない。
H5N1A/Vietnam/1203/2004からの異種亜型ヘマグルチニンのエクトドメインに対する力価(図22C)は、mini2−cluster1+5+6−GCN4t2(配列番号51)についての明確な応答を示す。観察可能な力価はまた、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)をコードするDNAによる免疫化後の4匹のマウスのうち2匹について、およびmini2−cluster1+5+6−nl(配列番号152)、mini2−cluster1+5+6−nl2(配列番号153)、mini2−cluster1+5+6−nl2s−GCN4(配列番号154)について4匹のマウスのうち1匹について得られる。驚くべきことに、本発明者らは、Mini3−cluster11(配列番号11)およびMini2−cluster11+5(配列番号14)をコードするDNAによる免疫化後に検出可能な力価も見出す。最初の構築物は、同種および異種H1HAに対するいかなる検出可能な抗体力価も誘導しなかった一方、最後のものは、穏やかな応答のみを誘導した(図22AおよびB)。この実験における全ての構築物の配列およびH5HAの比較は、長いCDへリックスの膜遠位末端において局在する推定直鎖エピトープを示す(図1参照)。配列番号11中の175位および配列番号14中の156位におけるメチオニンのイソロイシンへの突然変異は、直鎖配列ERRIENLNKK(配列番号11中の172〜181位;配列番号14中の153〜162位)をもたらす。この配列は、H5N1A/Vietnam/1203/2004からのHA中にも存在するが、H1N1A/Brisbane/59/2007およびH1N1A/California/07/2009からのHA中には存在せず、そこで対応する配列はそれぞれERRMENLNKKおよびEKRIENLNKKである。
まとめると、本発明のポリペプチドmini2−cluster11+5(配列番号14)、mini2−cluster1+5+6(配列番号46)、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)、mini2−cluster1+5+6−nl(配列番号152)、mini2−cluster1+5+6−nl2(配列番号153)、mini2−cluster1+5+6−nl2s−GCN4(配列番号154)、mini2−cluster1+5+6−GCN4t3(配列番号52)、mini2−cluster1+5+6−GCN4t2(配列番号51)、mini2−cluster1+5+6+12(配列番号156)およびmini2−cluster1+5+6+12+13(配列番号157)に対して生じた抗体は、全長ヘマグルチニンを認識し得る。これらの抗体のエピトープは、ヘマグルチニンステムドメイン上に局在するはず
であり、H1N1A/Brisbane/59/2007およびH1N1A/California/07/2009からの全長ヘマグルチニン間で保存される。mini2−cluster1+5+6−GCN4t2(配列番号51)、およびより小程度でmini2−cluster11+5(配列番号14)、mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号45)、mini2−cluster1+5+6−nl(配列番号152)、mini2−cluster1+5+6−nl2(配列番号153)、mini2−cluster1+5+6−nl2s−GCN4(配列番号154)およびmini2−cluster1+5+6+12(配列番号156)をコードするDNAによる免疫化を介して誘発された抗体も、H5N1A/Vietnam/1203/2004からのHAのエクトドメインを認識し得る。本発明のポリペプチドは、Mini3−cluster11(配列番号11)は、H5N1A/Vietnam/1203/2004からのHAのエクトドメインを認識する抗体を誘導し得る。
実施例20
CR6261およびCR9114の保存ステムドメインエピトープを含むステムドメインポリペプチドを設計する一般的方法
上記の結果に基づき、本発明のポリペプチドをインフルエンザウイルスHA0配列から、特に血清型H1のインフルエンザHA0配列から作出する一般的方法を定義する。この方法は、以下のステップを含む:
1.HA1〜HA2の開裂部位の除去。この除去は、P1位におけるR(わずかな場合においてK)のQへの突然変異により達成することができる(例えば、開裂部位(配列番号1中の343位)の命名法の説明については、Sun et al,2010参照。Qへの突然変異が好ましいが、S、T、N、DまたはEも代替例である。
2.配列番号1からのアミノ酸53〜320、または他のインフルエンザウイルスからのHA中の相当位置を欠失させることによる頭部ドメインの除去。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、ClustalまたはMuscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。配列の残留部分を直接的に、またはフレキシブルリンカーを導入することにより結合させることができる。リンカー配列は、1〜50アミノ酸長であり得る。限定された長さ(10アミノ酸以下)のフレキシブルリンカー、例えば、GGG、GGGG、GSA、GSAG、GSAGSA、GSAGSAGまたは類似物が好ましい。欠失の長さは、例えば、欠失を54、55、56、57もしくは58位(の相当物)において開始することにより、または欠失の長さを増加させるため、47、48、49、50、51、もしくは52位において切断することにより変えることもできる。同様に、欠失させるべき最後のアミノ酸は、315、316、317、318もしくは319位(の相当物)におけるもの、または欠失の長さを増加させるため、321、322、323、324、もしくは325位(の相当物)におけるものであり得る。欠失の長さの変化は、リンカー配列の長さを合致させることにより部分的に補うことができることを理解することは重要であり、すなわち、より大きい欠失はより長いリンカーと合致させることができ、逆もまた同様である。これらのポリペプチドも本発明により包含される。
3.H1A/Brisbane/59/2007(配列番号1)中の残基402〜418(の相当物)により形成されるループ(AへリックスおよびCDへリックス間)の溶解度を増加させて改変HAの融合前立体構造の安定性を増加させ、融合後立体構造を脱安定化させること。このループは、以下の表6において確認することができるとおり、H1配列中で高度に保存される。これは、例えば、前記ループ中のアミノ酸I、L、FまたはV残基を親水性相当物により置き換えることにより達成することができる。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、ClustalまたはMuscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。グリシンへの突然変異は、融合後立体構造を脱安定化させる。それというのも、このアミノ酸の高いフレキシビリティがこのHA配列の一部により形成され得る融合後へリックスの安定性の減少をもたらすた
めである。血清型H1のインフルエンザHAの残基402〜418のループを記載するコンセンサス配列は、(配列番号17)MNTQFTAVGKEFN(H/K)LE(K/R)である。本発明のポリペプチドにおいて、406、409、413位および/または416位におけるアミノ酸(または配列アラインメントから決定されたそれらの相当物)は、極性(S、T、N、Q)、荷電(R、H、K、D、E)またはフレキシブル(G)アミノ酸である。L416のSまたはTのいずれかへの突然変異もコンセンサスN−グリコシル化部位(コンセンサス配列は、NX(S/T)である)を導入することに留意すべきである。この位置におけるアスパラギンのグリコシル化は、この領域の溶解度をさらに増加させる。これらの部位における突然変異の組合せも可能であり、例えば、配列番号10および配列番号14中のF406S、V409T、L416Sである。一部の場合、コンセンサスアミノ酸を回復させるための突然変異が好ましく、例えば、VもしくはMが404位(Tへ)、Vが408位(Aへ)もしくは410位(Gへ)またはIが414位(Nへ)における場合であり;これらの特定のアミノ酸を有する配列の発生率は極めて低い。本発明のポリペプチドを特性決定する上記の突然変異の概要を表6に挙げる。
4.ジスルフィド架橋を本発明のポリペプチド中に、好ましくは、H1A/Brisbane/59/2007中の324および436位(の相当物)のアミノ酸間に導入すること;配列番号13〜16。相当位置は、当業者が好適なアルゴリズム、例えば、Clustal、Muscleなどを使用して配列をアラインすることにより容易に決定することができる。遺伝子操作ジスルフィド架橋は、少なくとも一方(他方が既にシステインである場合)、しかし通常、空間的に近い2つの残基をシステインに突然変異させ、それが自発的にまたは活性酸化によりそれらの残基の硫黄原子間の共有結合を形成することにより作出される。
上記の本発明による一般的方法を使用して、本発明のポリペプチドをH1N1A/California/04/2009(配列番号159)、H1N1A/California/07/2009(配列番号56)、H1N1A/Puerto Rico/8/1934(配列番号78)、およびH1N1A/Texas/36/1991(配列番号64)のHA0配列をベースとして作出した。さらに、この方法をグループ1の一部である別の亜型、すなわち、H5からのHAに、H5N1A/Vietnam/1203/2004からのHA(配列番号158)を使用して適用した。
H1mini−HAA/California/07/2009(配列番号160)を、以下によりH1FLHAA/California/07/2009(配列番号56)から作出する。
1.開裂部位を除去すること:突然変異R344Q(番号付与は、配列番号56を指す。2.残基K53からP321を欠失させ、GGGGリンカーをD52およびK322(番号付与は、配列番号56を指す)間に導入すること
3.Aへリックス〜CDへリックスのループ(配列番号56中の残基403〜419)中でセリン残基を407、417位において(F407S、L417S;番号付与は、配列番号2を指す)、トレオニンを410位において(V410T;番号付与は、配列番号56を指す)およびグリシン残基を414位において(F414G;番号付与は、配列番号2を指す)導入すること
4.ジスルフィド架橋を、残基リジン325およびトレオニン437をシステインに突然変異させることにより導入すること(K325C、T437C;番号付与は、配列番号56を指す)
5.追加の安定化エレメントを、419KRIENLNKKVDDGFLD434(番号付与は、配列番号56を指す)を配列RMKQIEDKIEEIESKQにより置き換えることにより導入した。
A/California/04/2009からの全長HA(配列番号159)をベー
スとするmini−HA配列は、同一の様式で作出することができ、H1mini−HAA/California/07/2009(配列番号160)の配列と同一である。
同様に、H1mini−HAA/Puerto Rico/8/1934(配列番号161)を、以下によりH1FLHAA/Puerto Rico/8/1934(配列番号78)から作出する。
1.開裂部位を除去すること:突然変異R343Q(番号付与は、配列番号78を指す)2.残基K53からP320を欠失させ、GGGGリンカーをD52およびK321(番号付与は、配列番号78を指す)間に導入すること
3.Aへリックス〜CDへリックスのループ(配列番号78中の残基402〜418)中でセリン残基を406、416位において(F406S、L416S;番号付与は、配列番号78を指す)トレオニンを409位において(V409T;番号付与は、配列番号78を指す)およびグリシン残基を413位において(F413G;番号付与は、配列番号78を指す)導入すること
4.ジスルフィド架橋を、残基アルギニン324およびトレオニン436をシステインに突然変異させることにより導入すること(R324C、T436C;番号付与は、配列番号78を指す)
5.追加の安定化エレメントを、418KRMENLNNKVDDGFLD433(番号付与は、配列番号78を指す)を配列RMKQIEDKIEEIESKQにより置き換えることにより導入した。
H1mini−HAA/Puerto Rico/8/1934(配列番号161)とH1FLHAA/Puerto Rico/8/1934(配列番号78)との間の追加の差は、397位であり、全長タンパク質(配列番号78)中でセリンであるが、配列番号161の本発明のポリペプチド中でトレオニンである(S397T突然変異)。これは、A/Puerto Rico/8/1934配列中の天然変異であり、したがって、この突然変異を含有する配列も本発明に含まれる。
H1mini−HAA/Texas/36/1991(配列番号162)を、以下によりH1FLHAA/Texas/36/1991(配列番号64)から作出する。
1.開裂部位を除去すること:突然変異R344Q(番号付与は、配列番号64を指す)2.残基S53からP321を欠失させ、GGGGリンカーをD52およびK322(番号付与は、配列番号64を指す)間に導入すること
3.Aへリックス〜CDへリックスのループ(配列番号64中の残基403〜419)中でセリン残基を407、417位において(F407S、L417S;番号付与は、配列番号64を指す)、トレオニンを410位において(V410T;番号付与は、配列番号64を指す)およびグリシン残基を414位において(F414G;番号付与は、配列番号64を指す)導入すること
4.ジスルフィド架橋を、残基アルギニン325およびトレオニン437をシステインに突然変異させることにより導入すること(R325C、T437C;番号付与は、配列番号64を指す)
5.追加の安定化エレメントを、419RRMENLNKKVDDGFLD434(番号付与は、配列番号64を指す)を配列RMKQIEDKIEEIESKQにより置き換えることにより導入した。
H5mini−HAA/Vietnam/1203/2004(配列番号163)を、以下によりH5FLHAA/Vietnam/1203/2004(配列番号158)から作出する。
1.開裂部位の除去。H5FLHAA/Vietnam/1203/2004(配列番号158)は、多塩基開裂部位(341RRRKKR346)を含有するため、単一部位突
然変異は、タンパク質開裂を防止するため十分でない。代わりに341RRRKK345を欠失させ、R346Q突然変異を導入する。
2.残基K52からP319を欠失させ、GGGGリンカーをK51およびK320(番号付与は、配列番号158を指す)間に導入すること
3.Aへリックス〜CDへリックスのループ(配列番号158中の残基405〜421)中でセリン残基を409、419位において(F409S、L419S;番号付与は、配列番号158を指す)、トレオニンを412位において(V412T;番号付与は、配列番号158を指す)およびグリシン残基を416位において(F416G;番号付与は、配列番号158を指す)導入すること
4.ジスルフィド架橋を、残基リジン323およびトレオニン439をシステインに突然変異させることにより導入すること(K323C、T439C;番号付与は、配列番号158を指す)
5.追加の安定化エレメントを、421RRIENLNKKMEDGFLDV437(番号付与は、配列番号158を指す)を配列RMKQIEDKIEEIESKQIにより置き換えることにより導入した。
当業者に一般に公知の方法を使用して配列番号56、160、78、161、162、158および163のタンパク質配列をコードする遺伝子を合成し、発現ベクターpcDNA2004中にクローニングした。比較の理由のため、H3A/HongKong/1/1968の全長HA配列(配列番号121)、および追加の開裂部位突然変異R343Qを有するH1A/Brisbane/59/2007(配列番号1)の全長HA配列を実験に含めた。
形質移入剤として40μlの293transfectinを使用してHEK293F(Invitrogen)懸濁細胞(10個の細胞/ml、30ml)に発現ベクター(1μg/ml)を形質移入させ、さらに2日間増殖させた。細胞を回収し;アリコート化し(0.3ml、約310個の細胞)、アリコートを、発現を調べるためのH1HA(Sino Biological Inc.Beijing,China)に対して生じたポリクローナル血清またはHA特異的モノクローナル抗体(5マイクログラム/ml)のいずれかおよび染色に使用される二次抗体により処理した。次いで、細胞を細胞表面上の本発明の膜付着HAステムドメインポリペプチドの発現について蛍光結合細胞選別(FACS)により分析した。全長タンパク質中のステムドメインに結合する公知の特異性のモノクローナル抗体のパネル(CR6261、CR9114)を使用して保存エピトープの存在、ならびに推論により全長HAおよび本発明のmini−HAポリペプチドの正確なフォールディングを調べた。モノクローナル抗体CR8020(H1およびH5HAに結合しないことが公知)およびCR9020(H1A/Brisbane/59/2007からのHAの頭部ドメインに結合する)も実験に含めた。結果を、陽性細胞の割合および平均蛍光強度(MFI)として表現し、図23に示す。
ポリクローナル抗H1血清による形質移入細胞の処理は、全長HA(黒色のバー)について20〜80%の陽性細胞およびmini−HAについて40〜50%の陽性細胞をもたらす。陰性対照FLH3A/HongKong/1/1968およびcM2は、極めて少数の陽性細胞を示すにすぎない。このことは、全てのH1全長HAタンパク質について明確に検出可能なシグナルを示す平均蛍光強度(下パネル)により反映される。全長H5HAについてのシグナルは低いままであり;しかしながら、このことは、ポリクローナルH1血清による認識の低減との組合せでのより少数の形質移入細胞により説明することができる。陰性対照FLA/HongKong/1/1968およびcM2は、バックグラウンドレベルにおける強度を示す。
強力なグループ1ステムバインダーであることが公知のCR6261およびCR911
4は両方とも、多数の陽性細胞(約50〜約95%)および高いMFIにより示されるとおり、全てのグループ1全長HAおよびmini−HAタンパク質を認識する。このことは、これらの抗体の中和エピトープがmini−HAタンパク質中に存在する強力な証拠であり、このことは、全長HA中のHAステムドメインの天然構造に強く共通する三次元構造を示す。予測されるとおり、陰性対照CR8020(グループ2HAに特異的)は、H1およびH5全長HAにもH1およびH5mini−HAにも結合せず、このことは、mini−HAタンパク質へのCR6261/CR9114中和抗体の観察される結合がa特異的タンパク質−タンパク質相互作用から生じないことを示す。A/HongKong/1/1968からの全長H3HAとCR9114またはCR8020との間の結合は、陽性細胞の割合およびMFIの両方から明確に観察され、より早期の観察と一致し、これらのモノクローナル抗体の機能性を証明する。同様に、陰性対照抗体CR9020(A/Brisbane/59/2007についてのHA頭部バインダー)は、A/Brisbane/59/2007からのHAを除きmini−HAも全長HAタンパク質も認識せず、このことは、CR6261およびCR9114間で観察される結合の特異性をさらに裏付ける。
まとめると、HA頭部ドメインの不存在下で中和CR6261およびCR9114抗体により認識されるエピトープを含有することが示された本発明の4つの新規HA由来ポリペプチドを作出した。
実施例21
本発明のポリペプチドによるマウスにおける致死インフルエンザチャレンジに対する保護
本発明のポリペプチドがマウスを他の場合に致死性のインフルエンザウイルスへの曝露時の死亡から保護する免疫応答を誘導し得るか否かを決定するため、インフルエンザチャレンジ実験を実施した。配列番号78、161、45および6、ならびに開裂部位を除去するための追加のR343Q突然変異を含有するA/Brisbane/59/2007からの全長HA(配列番号1)をコードする発現ベクターによりマウスを筋肉内で免疫化した。cM2をコードする発現ベクターを陰性対照として含めた。免疫化は、50μgの発現構築物+50μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)を使用して以下の試験プロトコルに従って実施した。
試験プロトコル
1日目 採血。
0日目 ワクチンの投与(筋肉内)。
21日目 ワクチンの投与(筋肉内)。
28日目 採血。
42日目 ワクチンの投与(筋肉内)。
47日目 採血。
48日目 体重、体温、臨床スコアおよび致死率の計測。
49日目 致死用量のインフルエンザウイルス感染によるチャレンジ(経鼻)。
49日目 残留接種材料をウイルスの逆力価測定(back titration)に利用する。
49〜70日目 体重、体温、臨床スコアおよび致死率の毎日の計測。
臨床スコア≧3を有する動物を1日2回モニタリングする。
臨床スコア≧4または体温’’32℃を有する動物を、どの動物が最初に該当しようとも、試験から直ちに除去する。
70日目 全てのマウスの安楽死。
群1〜6:PR8(A/Puerto Rico8/34、H1N1)によるチャレンジ群1:配列番号78
群2:配列番号161
群3:配列番号1R343Q
群4:配列番号45
群5:配列番号6
群6:空のベクター
1群当たり10匹のマウス。合計60匹のマウス。BALB/c。
材料および方法:
ウイルス株および源:
インフルエンザウイルス株PR8(A/Puerto Rico8/34、H1N1)は、Virapur(San Diego)から供給された。原液1×10e8 pfu/ml バッチ#E2004B。
貯蔵条件:−75℃±10℃。フリーザー:−86℃UCTフリーザー。Thermo Form.Fisher Scientific。
動物:
マウス、BALB/c(特定病原体不在;SPF)、雌、試験0日目に6〜8週齢約17〜19グラム。Charles River Laboratoriesから供給され、「耳識別」により識別する。全ての動物を馴化させ、実験の開始前11日間維持した。
DNA投与
接種材料再構成の方法
上記列記の適切なDNA配合物を調製し、アリコート化し、−20℃において貯蔵した。1つの構築物当たり1つのアリコートを注射直前に室温に解凍し、注射器中に抜き取り、注射した。それぞれのアリコートの残部は、それぞれの免疫化ラウンドの全ての注射の完了後に廃棄した。
用量レベルおよび投与方法
マウスを、体重1kg当たり9.75mgのXylasol(Graeub E Dr.AG(www.graeub.com);カタログ番号:763.02)および48.75mgのKetasol(Graeub E Dr.AG(www.graeub.com);カタログ番号:668.51)を用いて腹腔内注射により麻酔した。G29針を有する0.5mlの注射器を使用して50μlのDNA溶液をそれぞれの後足の大腿四頭筋中に筋肉内(i.m.)注射し、1匹のマウス当たり100μlの注射合計容量を生じさせた。それぞれのアリコートの残部は、それぞれの免疫化ラウンドの全ての注射の完了後に廃棄した。
ウイルス投与:
接種材料再構成の方法
ウイルス材料を−75℃±10℃において貯蔵し、投与前に解凍した。解凍したら、材料を低温PBS(4℃)中で、A/PR/8/34チャレンジについて5LD50/50μlに対応させて希釈した。希釈ウイルスをマウスへの投与まで氷上で保持した。
用量レベルおよび投与方法
動物を、1kgの体重当たり9.75mgのXylasolおよび48.75mgのKetasolを用いて腹腔内注射により麻酔し、それぞれの動物は50μlのウイルス溶液を鼻腔内により受けた。未使用材料は逆力価測定のために実験室に戻した。
採血および血清調製
上記の試験プロトコルに規定された日数において、血液試料を採取した(中間採血:眼窩後カニューレ挿入を介する100〜150μl、心臓穿刺を介する最終採血:約300
〜500μl)。血清を、この血液から14000gにおける5分間の遠心分離により単離し、輸送までドライアイス上で−20℃において貯蔵した。
臨床スコアリング
ウイルスチャレンジ後の臨床徴候を、スコアリング系(健常マウスについて1点;不快感の徴候、例として、わずかな立毛、歩容のわずかな変化および歩行の増加を示すマウスについて2点;強い立毛、腹部収縮、歩容変化、不活動期間、呼吸速度の増加および時々の水泡音(弾発音/有響ノイズ)の徴候を示すマウスについて3点;前述の群の特徴の増大を有するが、活動をほとんど示さず、瀕死になるマウスについて4点;死亡マウスについて5点)によりスコアリングした。動物を、それらが3のスコアを受ける限り1日2回調査した。スコアリングは単一調査者により実施し、部分的に2つのスコアにより表わされる症状を有するマウスはスコア+/−0.5であった。
秤量
全ての動物を、48日目から開始して毎日秤量した(確認番号2216)。動物を、死亡の場合において試験終了前、すなわち、試験からの除去時においても秤量した。体重をグラム(g)で記録した。
ウイルス逆力価測定
投与されるウイルスの用量は、動物の接種が完了した後に残留する接種材料からの8つのレプリケート試料を力価測定することにより決定した。ウイルス逆力価測定のため、「Current Protocols in Immunology,Animal Models of Infectious Disease 19.11.7」に概略されたプロトコルに従ってTCID50計測を利用した。
結果:
試験を、技術的困難なしで、定義された試験プロトコルと一致させて実施した。インフルエンザウイルス株PR8(A/Puerto Rico8/34,H1N1)の接種材料の逆力価測定は、以下のTCID50:PR8(A/Puerto Rico8/34、H1N1):3.2×104TCID50/mlをもたらした。
図24Aは、この実験についてのカプラン・マイヤー生存曲線を示す。本発明のポリペプチド配列番号45、6および161をコードするDNAによる免疫化は、致死用量のインフルエンザにより感染されたマウスの50、40および40%の生存率をそれぞれもたらし、このことは、本発明のポリペプチドによる免疫化が保護免疫応答を実際に誘導し得ることを示す。対照的に、空のベクター対照により免疫化されたマウスは全て、ウイルスチャレンジから8日後に感染により死亡する。チャレンジ株と同種の全長HA(配列番号78)をコードするDNAによる免疫化は、致死チャレンジから全ての動物を完全に保護する(すなわち、100%の生存率)一方、追加の開裂部位突然変異(R343Q;番号付与は、配列番号1を指す)を含有する異種株A/Brisbane/59/2007に由来する全長HA(配列番号1)をコードするDNAによる免疫化は、感染動物の90%の生存率をもたらす。
生存曲線から得られる結果は、図24Bおよび24Cにおいて示されるそれぞれの群についての平均体重変化および臨床スコア中央値においても反映される。本発明のポリペプチド配列番号45、6および161により免疫化された動物は、最大25〜30%の体重損失を示すが、感染後9日後に生存する動物は体重増加を示す。配列番号45により免疫化された動物については、4から3への臨床スコアの降下も観察される。チャレンジ株と同種の全長HA(配列番号78)をコードするDNAにより免疫化された動物は体重損失を示さない一方、追加の開裂部位突然変異(R343Q;番号付与は、配列番号1を指す
)を含有する異種株A/Brisbane/59/2007に由来する全長HA(配列番号1)をコードするDNAにより免疫化された動物は体重損失および臨床症状を経験するが、生存動物は完全にカバーする。最大体重損失および臨床症状は、空のベクターにより免疫化された対照群について観察され、それらの動物の生存の欠落と一致する。
まとめると、本発明のポリペプチド配列番号6、45および78は、マウスにおけるH1N1A/Puerto Rico/8/1934による致死チャレンジに対する保護応答を誘導し得る。本発明のポリペプチド配列番号6および45はチャレンジ株と異種のHA分子に由来する一方、配列番号78は、同種インフルエンザ株に由来することに留意される。したがって、本発明のポリペプチドは、同種および異種のインフルエンザ感染の両方に対する保護を誘導し得る。
実施例22
代表的なH1N1HA配列のパネルの選択およびそれらの配列をベースとする本発明のポリペプチドの設計
実施例20に記載の設計方法の広い適用可能性を示すため、この方法を、H1N1ウイルスにおいて見出される天然配列変異の大部分をカバーする選択HA0配列のパネルに適用した。この実施例における公知のヒトH1N1HA配列のプールからの代表的なHA配列のパネルの選択は、最大の代表性を有する最少数の株を選択する目的を有する。この目的を達成するため、インフルエンザウイルス配列データベース中に存在するヒトH1N1インフルエンザウイルスのHA配列間の全ての差を定量し、これらの差の構造を調査し、均一な下位群を同定した。このような群のそれぞれから、パネルに寄与する最も代表的な配列を選択した。
この手順の初期ステップは、考慮される配列データベース中のそれぞれのペアまたは配列間の差の定量である。逆PAM250(rPAM250)行列(Xu,2004)を使用してそれぞれのアミノ酸位置における差を定量する。次いで、ユークリッド加算を使用してそのペアについての合計差を定量する。全てのペアワイズ差を使用して差の対称n×n行列(nは、考慮されるウイルス株の数と等しい)を形成する。
主座標分析(PCA)を使用して差の行列を構造化する(Higgins,1992)。PCAは、次元縮小に基づく。入力行列は、n次元空間(nは、考慮される株の数と等しい)中の分布とみなす。次いで、変異性を分析し、ほとんど(または全て)の変異性をカバーするために最少の次元が要求されるように構造化する。結果は、m次元座標系(mは、ほとんどまたは全ての変異性をカバーするための次元数である)であり、最大変異は第1の軸上であり、次いで減少する。全ての考慮される配列をその座標系内に配置する。二または三次元のみが必要とされる場合、結果は、完全に2Dまたは3Dグラフでそれぞれプロットすることができ、そこで株間の差を可視化することができる。より多くの次元が必要とされる場合、さらに3Dプロットを第1の3つの軸から構築することができるが、そのグラフは全ての変異性をカバーするものではない。それというのも、変異の一部は第四およびより高次元中に存在するためである。
次いで、階層およびk平均クラスタリングの両方を使用してm次元空間中の配列をクラスタリングする。群内の平均連結を使用して類似の内部変異性を有する群を得、単一株クラスターの大部分を回避する。クラスタリングは、1(1つのクラスター中の全ての株)において開始し、n(それ自体のクラスターを形成するそれぞれの株)まで全てのレベルにおいて行う。それぞれのクラスターから、最も中心的な株を最も代表的なものとして選択する。次いで、最も中心的な株の組は、そのレベルクラスタリングについての代表株のパネルを形成する。クラスタリングのそれぞれのレベルについて、カバレッジ(または説明される変異の割合)を、それぞれの株の座標系の中心までの平方距離の合計と比較して
それぞれの株のその中心株までの平方距離の合計をコンピュータ処理することにより推定する。次いで、達成すべきカバレッジの最少レベルを、代表パネルの最少要求サイズになるように設定する。
さらに、XuのrPAM250行列に、(挿入または欠失に起因して)2つの配列の一方がある位置上にギャップを有した場合、小さい値を差について割り当てた。さらに、重み因子を手順に含めて年間を通した分離株の数の大きい差を説明した。この変異は、部分的には真の発生変異であり、部分的にはサーベイランス/認識の異なるレベルにより駆動されるとみなした。したがって、重み因子を、特定の年の観察の数の平方根により割ったものにおいて設定した。この重み因子は、クラスター分析および中心点の選択の間に、およびカバーされる変異のレベルの推定においてm次元空間を構築する場合に考慮した。
この実施例においては、本発明のポリペプチドをコードするHAの一部からなる構築配列を使用する。構築配列の2つの異なる組を作出した。第1の組において、シグナル配列(例えば、アミノ酸1〜18)、アミノ酸53〜320(HA頭部ドメイン)、膜貫通配列(アミノ酸530からC末端アミノ酸)(番号付与は、配列番号1を指す)または他の配列中のこれらの位置の相当物を除外して天然配列を考慮した。第2の組において、406、409、416、324、436、413位(またはそれらの相当位置)におけるアミノ酸も考慮しなかった。それというのも、これらは実施例20に記載の一般的方法に従って改変されるためである。さらに、実施例9に記載の本発明のポリペプチド中のGCN4ベース安定化配列の付加を反映する419〜433位(の相当物)も第2の組において考慮しなかった。
上記の方法を使用して、配列変異の75%をカバーする7つのHA配列を構築配列組1から選択し、配列変異の74%をカバーする8つのHA配列を構築配列組2から選択した。株を表10に列記する。選択配列の3つが両方の組において現れるため、13のユニークHA配列が残留する。これらの配列を使用して実施例20に記載の方法に従って本発明のポリペプチドを設計した。さらに、安定化GCN4配列MKQIEDKIEEIESKQ(配列番号84)を、実施例9に記載のとおり、419〜433位(番号付与は、配列番号1を指す)の相当物において導入する。H1N1A/Memphis/20/1978およびH1N1A/USSR/92/1977のHA配列に基づき設計された本発明のポリペプチドは同一であり、A/Wisconsin/629−D01415/2009およびH1N1A/Sydney/DD3−55/2010のHA配列に基づき設計された本発明のポリペプチドと同様である。したがって、合計10の本発明のユニークポリペプチドを設計し、これらの配列のアラインメントを図25に示す。
本発明のポリペプチド配列番号164〜配列番号173、ならびにA/Brisbane/59/2007のHA配列をベースとする本発明のポリペプチド配列番号45および追加の開裂部位R343Qを有する対応する全長HA配列番号1をコードするDNAを発現ベクターpcDNA2004中で含有する発現ベクターをHEK293F細胞の形質移入に使用し、細胞を上記のとおりFACSにより分析した。ヒトモノクローナル抗体CR6261、CR9114およびCR8020に加え、さらにインフルエンザAH1およびH2株を中和することが公知(Okuna et al.,1993)のマウスモノクローナル抗体C179を実験に含めた。結果を図26に示す。
本発明の全てのポリペプチドおよびA/Brisbane/59/2007の全長配列は、細胞表面上で発現され、広域中和抗体CR6261、CR9114およびC179により認識されるが、CR8020により認識されない。最後のものは、インフルエンザAグループ2からのHAにのみ結合することが公知である。抗体CR6261、CR9114およびC179の結合は、広域中和エピトープが本発明のポリペプチド中で十分保存さ
れることを示す。これらの配列中でカバーされる配列変異を考慮すると、このことは、広域中和エピトープを含有する本発明のポリペプチドを生成する本発明者らの設計方法の一般的な適用可能性の明確な証拠である。
実施例23
本発明のポリペプチドs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)の特性決定
本発明の精製ポリペプチドs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)を、実施例13に記載のとおりに得た。CR6261およびCR9114の立体構造的エピトープの存在を確認するため、これらの抗体と精製タンパク質との結合をバイオレイヤー干渉法(Octet Red384,Forte Bio)により試験した。この目的のため、ビオチン化CR6261、CR9114およびCR8020をストレプトアビジンコートセンサ上で固定化し、センサを最初に本発明の精製ポリペプチド(250nM)の溶液に曝露させて会合速度を計測し、次いで洗浄溶液に曝露させて解離速度を計測した。比較の理由のため、実験を全長タンパク質(配列番号149)を用いてその三量体および単量体形態の両方で繰り返した。結果を図27に示す。
固定化されたCR6261は、溶液中のこれらのタンパク質への曝露後の明確な応答により証明されるとおり、H1N1A/Brisbane/59/2007からの全長HAのエクトドメインの単量体および三量体形態の両方を認識する(図27A)。三量体タンパク質について観察される応答は、同一配列を有する単量体について観察されるものよりも大きく(約1.3nmと0.9)、三量体と比較して小さいサイズの単量体により(少なくとも部分的に)引き起こされる効果である。s−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)へのCR6261の結合は、約0.25nmの最大応答をもたらす。洗浄溶液への曝露時、複合体の解離が3つ全ての分析物について観察され、本発明のポリペプチドs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)について観察される放出最速であり、H1N1A/Brisbane/59/2007からの全長HA(配列番号149)のエクトドメインの三量体形態について最も遅い。
CR6261と同様に、固定化CR9114も、H1N1A/Brisbane/59/2007からの全長HAのエクトドメインの三量体および単量体形態の両方、ならびに本発明のポリペプチドs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)を認識する。応答は、3つ全ての分析物についてCR6261(三量体、単量体全長HA(配列番号149)およびステムドメインポリペプチドs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)について、それぞれ1.5、1.4および0.8nm)と比較して強力であり、3つ全ての場合において洗浄緩衝液への複合体の曝露時に抗原の放出は最小または検出不可能である。CR8020について、応答は、分析物のいずれについても観察されず、この抗体のインフルエンザグループ2ステムドメイン特異性と一致した。
精製ステムドメインポリペプチドへのCR6261およびCR9114の結合をさらに特性決定するため、力価測定を実施した。この目的のため、固定化CR6261含有センサを、それぞれ500、250、125、63、31、16および8nMの濃度におけるs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)溶液に曝露させ、14000s後の最終応答を記録した。応答をステムドメインポリペプチド濃度の関数としてプロットし、定常状態1:1結合モデルへのフィットを実施し、CR6261/ステムドメインポリペプチド複合体について約190nMの解離定数Kを生じさせた、図28A。同様に、固定化CR9114により改変されたセンサを、それぞれ80、40、20、10、5、2.5および1.3nMの濃度におけるs−H1−mini2
−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)に曝露させ、10800s後の最終応答を記録した。ステムドメインポリペプチド濃度の関数としての最終応答のフィッティングにより、CR9114/ステムドメインポリペプチド複合体について5.4nMのK値を生じさせた(図28B)。
まとめると、本発明のポリペプチドs−H1−mini2−cluster1+5+6−GCN4(配列番号145)は、広域中和モノクローナル抗体CR6261およびCR9114に結合し得、このことは、このステムドメインポリペプチド中の対応する中和エピトープの存在を裏付ける。
実施例24
本発明のポリペプチドによるマウスにおける致死インフルエンザチャレンジに対する保護
本発明のポリペプチドがマウスを他の場合に致死性のインフルエンザウイルスへの曝露時に死亡から保護する免疫応答を誘導し得るか否かを決定するため、インフルエンザチャレンジ実験を実施した。H3全長A/HongKong/1/1968(配列番号121)、HK68H3m2−cl9+10+11(配列番号124)およびHK68H3m2−cl9+10+11+12−GCN4配列番号130をコードする発現ベクターによりマウスを筋肉内で免疫化した。免疫化を、50μgの発現構築物+50μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)を以下の試験プロトコルに従って使用して実施した。
試験プロトコル
1日目 採血。
0日目 ワクチンの投与(筋肉内)。
21日目 ワクチンの投与(筋肉内)。
28日目 採血。
42日目 ワクチンの投与(筋肉内)。
47日目 採血。
48日目 体重、体温、臨床スコアおよび致死率の計測。
49日目 致死用量のインフルエンザウイルス感染によるチャレンジ(経鼻)。
49日目 残留接種材料をウイルスの逆力価測定に利用する。
49〜70日目 体重、体温、臨床スコアおよび致死率の毎日の計測。
臨床スコア≧3を有する動物を1日2回モニタリングする。
臨床スコア≧4または体温’’32℃を有する動物を、どの動物が最初に該当しようとも、試験から直ちに除去する。
70日目 全てのマウスの安楽死。
群7〜10:HK68(A/HongKong/1/68、H3N2)によるチャレンジ群7:配列番号121
群8:配列番号130
群9:配列番号124
群10:空のベクター
1群当たり10匹のマウス。合計40匹のマウス。BALB/c。
材料および方法:
ウイルス株および源
インフルエンザウイルス株HK68(A/HongKong/1/68)を、Prof
J.Katz(Center for Disease Control and Prevention,Atlanta,GA,USA)により提供し、次いでVirapur(San Diego)により増殖させた。ウイルスをマウス肺中で複数回継代してマウスにおける病原性を向上させた。このウイルスについての好適な参照は、Frace
et al.,Vaccine 1999;17:2237である。原液3×10e8
pfu/ml。バッチ#F1109A。
貯蔵条件:−75℃±10℃。フリーザー:−86℃UCTフリーザー。Thermo Form.Fisher Scientific。
動物:
マウス、BALB/c(特定病原体不在;SPF)、雌、試験0日目に6〜8週齢約17〜19グラム。Charles River Laboratoriesから供給され、「耳識別」により識別する。全ての動物を馴化させ、実験の開始前11日間維持した。
DNA投与
接種材料再構成の方法
上記列記の適切なDNA配合物を調製し、アリコート化し、−20℃において貯蔵した。1つの構築物当たり1つのアリコートを注射直前に室温に解凍し、注射器中に抜き取り、注射した。それぞれのアリコートの残部は、それぞれの免疫化ラウンドの全ての注射の完了後に廃棄した。
用量レベルおよび投与方法
マウスを、体重1kg当たり9.75mgのXylasol(Graeub E Dr.AG(www.graeub.com);カタログ番号:763.02)および48.75mgのKetasol(Graeub E Dr.AG(www.graeub.com);カタログ番号:668.51)を用いて腹腔内注射により麻酔した。G29針を有する0.5mlの注射器を使用して50μlのDNA溶液をそれぞれの後足の大腿四頭筋中に筋肉内(i.m.)注射し、1匹のマウス当たり100μlの注射合計容量を生じさせた。それぞれのアリコートの残部は、それぞれの免疫化ラウンドの全ての注射の完了後に廃棄した。
ウイルス投与:
接種材料再構成の方法
ウイルス材料を−75℃±10℃において貯蔵し、投与前に解凍した。解凍したら、材料を低温PBS(4℃)中で、A/HK/1/68チャレンジについて10LD50/50μlに対応させて希釈した。希釈ウイルスをマウスへの投与まで氷上で保持した。
用量レベルおよび投与方法
動物を、1kgの体重当たり9.75mgのXylasolおよび48.75mgのKetasolを用いて腹腔内注射により麻酔し、それぞれの動物は50μlのウイルス溶液を鼻腔内により受けた。未使用材料は逆力価測定のために実験室に戻した。
採血および血清調製
上記の試験プロトコルに規定された日数において、血液試料を採取した(中間採血:眼窩後カニューレ挿入を介する100〜150μl、心臓穿刺を介する最終採血:約300〜500μl)。血清を、この血液から14000gにおける5分間の遠心分離により単離し、輸送までドライアイス上で−20℃において貯蔵した。
臨床スコアリング
ウイルスチャレンジ後の臨床徴候を、スコアリング系(健常マウスについて1点;不快感の徴候、例として、わずかな立毛、歩容のわずかな変化および歩行の増加を示すマウスについて2点;強い立毛、腹部収縮、歩容変化、不活動期間、呼吸速度の増加および時々の水泡音(弾発音/有響ノイズ)の徴候を示すマウスについて3点;前述の群の特徴の増大を有するが、活動をほとんど示さず、瀕死になるマウスについて4点;死亡マウスについて5点)によりスコアリングした。動物を、それらが3のスコアを受ける限り1日2回
調査した。スコアリングは単一調査者により実施し、部分的に2つのスコアにより表わされる症状を有するマウスはスコア+/−0.5であった。
秤量
全ての動物を、48日目から開始して毎日秤量した(確認番号2216)。動物を、死亡の場合において試験終了前、すなわち、試験からの除去時においても秤量した。体重をグラム(g)で記録した。
ウイルス逆力価測定
投与されるウイルスの用量は、動物の接種が完了した後に残留する接種材料からの8つのレプリケート試料を力価測定することにより決定した。ウイルス逆力価測定のため、「Current Protocols in Immunology,Animal Models of Infectious Disease 19.11.7」に概略されたプロトコルに従ってTCID50計測を利用した。
結果:
試験を、技術的困難なしで、定義された試験プロトコルと一致させて実施した。インフルエンザウイルス株HK68(A/HongKong/1/68、H3N2)の接種材料の逆力価測定は、以下のTCID50:HK68(A/HongKong/1/68):1×10TCID50/mlをもたらした。
図29は、ELISAにより測定された49日目におけるA/HongKong/1/1968からのHAのエクトドメインに対するIgG応答を示す。本発明のポリペプチドを配列番号124および配列番号130をコードするDNAによる免疫化は、H3HAHK68エクトドメインに対する明確に検出可能な応答を誘導する一方、空のベクター陰性対照について応答は検出されない。予測されるとおり、最大応答は、H3全長A/HongKong/1/1968(配列番号121)による免疫化について観察される。
図30Aは、この実験についてのカプラン・マイヤー生存曲線を示す。本発明のポリペプチド配列番号124および130をコードするDNAによる免疫化は、致死用量のインフルエンザにより感染されたマウスの40および20%の生存率をそれぞれもたらし、このことは、本発明のポリペプチドによる免疫化が保護免疫応答を実際に誘導し得ることを示す。対照的に、空のベクター対照により免疫化されたマウスは全て、ウイルスチャレンジから10日後に感染により全て死亡する。チャレンジ株と同種の全長HA(配列番号121)をコードするDNAによる免疫化は、致死チャレンジから全ての動物を完全に保護する(すなわち、100%の生存率)。
生存曲線から得られる結果は、図30Bおよび30Cにおいて示されるそれぞれの群についての平均体重変化および臨床スコア中央値においても反映される。本発明のポリペプチド配列番号124および130をコードするDNAにより免疫化された動物は、最大20%の体重損失を示すが、感染後9日後に生存する動物は体重増加を示す。全長HA(配列番号121)をコードするDNAにより免疫化されたマウスは、体重損失を示さない。最大体重損失および臨床症状は、空のベクターにより免疫化された対照群について観察され、それらの動物の生存の欠落と一致する。
まとめると、本発明のポリペプチド配列番号124および130は、免疫原性であり、マウスにおけるH3N2A/HongKong/1/1968による致死チャレンジに対する保護応答を誘導し得る。
実施例25
H3HAをベースとするステムドメインポリペプチドの設計および特性決定
実施例12に記載のステムドメインポリペプチドをさらに改善するため、構築物の追加の組を設計した。53および334位(T53C、G334C;cluster16)ならびに39および51位(G39C−E51C;cluster17)(番号付与は、配列番号121を指す)における安定化ジスルフィド架橋の形成を可能とするシステイン突然変異の2つの追加の組を設計した。さらに420〜421位の間、すなわち、長いCDへリックス(図1参照)のN末端側において挿入すべき2つの配列を設計した。挿入配列を、それらが三量体分子中の個々の単量体間の単量体間ジスルフィド架橋の形成を容易にするように設計した。2つの異なる配列、すなわち、NATGGCCGG(Cluster18)およびGSGKCCGG(Cluster19)を設計した。cluster18の配列は、ステムドメインポリペプチド中にグリコシル化部位(すなわち、NAT)を導入する配列も含む。一部の場合、グリコシル化部位は、417〜419位においてもNATへの突然変異により導入する。A/HongKong/1/1968からの全長HAの配列を出発点として使用して、上記の改変をS62〜P322欠失と組み合わせて以下のステムドメインポリペプチドを得た:
配列番号174:H3HKmini2a−linker+cl9+10+11+12+GCN4T−CG7−1
配列番号175:HK68H3mini2a−linker+cl9_+10+12+18+GCN4T
配列番号176:HK68H3mini2a−linker+cl9_+10+12+16+CG7−GCN4T
配列番号177:HK68H3mini2a−linker+cl9_+10+12+19+GCN4T
配列番号178:HK68H3mini2a−linker+cl9_+10+12+17+CG7−GCN4T
配列番号179:H3HK68mini2a−linker2+cl9_+10+12+GCN4T
一般に当業者に公知の方法を使用して上記のタンパク質配列をコードする遺伝子を合成し、発現ベクターpcDNA2004中にクローニングした。細胞表面上での発現およびモノクローナル抗体の結合を、上記のとおり蛍光結合細胞選別により分析した。比較の理由のため、さらに、開裂部位中のR345Q突然変異をさらに含有するH3N2A/HongKong/1/1968(配列番号121)の全長HA、および配列番号130(HK68H3m2−cl9+10+11+12−GCN4)ならびに陰性対照cM2も実験に含めた。
図31は、この実験の結果を示す。ポリクローナル抗H3血清について観察される応答(MFI、パネルA;陽性細胞の割合、パネルB)により証明されるとおり、全ての構築物が細胞表面上で発現される。CR8043およびCR8020の結合は、配列番号174、175、176、177、178、179、121および130について観察され、このことは、cluster16の突然変異がそれらの抗体の立体構造的エピトープの安定化に寄与しないことを示す。mAbのCR9114について、バックグラウンドを上回る結合は、配列番号174:H3HKmini2a−linker+cl9+10+11+12+GCN4T−CG7−1およびより小程度で配列番号177:HK68H3mini2a−linker+cl9_+10+12+17+CG7−GCN4Tについてのみ観察することができる。両方の配列は、Bループ中の追加のグリコシル化部位を含有し、このことは、CR9114の立体構造的中和エピトープに対するこの改変の安定化効果を示す。
まとめると、本発明者らは、上記の方法に従って、本発明のステムドメインポリペプチ
ドをグループ2の血清型、特にH3亜型について得ることができることを示した。これらのステムドメインポリペプチドのさらなる安定化は、Bループ中のグリコシル化部位を導入することにより達成することができる。これらの配列も本発明により包含される。
実施例26
H3HAをベースとするHAステムドメインポリペプチドの免疫原性
ステムドメインポリペプチドの免疫原性を評価するため、A/Wisconsin/67/2005(配列番号89)からの全長H3、配列番号105:H3−mini2、配列番号108:H3−mini2−cl9+10+11、配列番号112:H3−mini2−cl9+10+12、配列番号111:H3−mini2−cl9+10+11+12、配列番号114:H3−mini2−cl9+10+11+12−tri、配列番号113:H3−mini2−cl9+10+11+12−GCN4、配列番号119:H3−mini3−cl9+10+11+12+14、配列番号120:H3−mini4−cl9+10+11+12+14をコードする発現ベクターによりマウスを免疫化した。cM2をコードする発現ベクターも陰性対照として含めた。
4匹のマウス(BALB\c)の群を、50μgの構築物+50μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)により筋肉内で1、21および42日目に免疫化した。49日目、最後の採血を実施し、血清を回収した。陰性対照プラスミドcM2を、約10μgの構築物+約2μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)および同一の免疫化スキームを使用して遺伝子銃により投与した。A/Wisconsin/67/2005およびA/HongKong/1/1968からの組換え全長HA(Protein Sciences Corporation,Meriden,CT,USAから入手)を抗原として使用して血清をELISAにより分析した。手短に述べると、96ウェルプレートを50ngのHAにより4℃において一晩コートし、次いでブロック緩衝液(100μlのPBS、pH7.4+2%のスキムミルク)と室温において1時間インキュベートした。プレートをPBS+0.05%のTween−20により洗浄し、血清の50倍希釈から出発するブロック緩衝液中の100μlの2倍希釈系列を添加する。結合抗体は、HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgGを使用して、当分野において十分確立された標準的プロトコルを使用して検出する。力価を、HA抗原に結合するマウスモノクローナル抗体の系列希釈物から構成される標準曲線と比較し、1ml当たりのELISA単位(EU/ml)として表現する。49日後のA/Wisconsin/67/2005、A/HongKong/1/1968およびA/Perth/16/2009からのHAを使用するELISAの結果を図32A、BおよびCにそれぞれ示す。この実験に含められるステムドメインポリペプチドをコードするDNAにより免疫化されたマウスから得られた血清は、A/Wisconsin/67/2005からの同種全長HAおよび類似の程度でA/HongKong/1/1968からの異種全長HAを認識し得る。対照的に、A/Wisconsin/67/2005からの全長HA(配列番号89)により免疫化されたマウスから得られた血清は、A/HongKong/1/1968およびA/Perth/16/2009からの異種HAよりも同種HAに対する高い応答を示す。
まとめると、データは、H3HAに由来する本発明のポリペプチドが全長HAに対して指向される免疫応答を誘導し得ることを示す。
実施例27
A/HongKong/1/1968のH3HAをベースとするHAステムドメインポリペプチドの免疫原性
ステムドメインポリペプチドの免疫原性を評価するため、A/HongKong/1/1968からの全長H3(配列番号121)、配列番号124:HK68H3m2−cl9+10+11、配列番号125:HK68H3m2−cl9+10+12、配列番号1
26:HK68H3m2−cl9+10+11+12、配列番号128:HK68H3m2−cl9+10+11+12−tri、配列番号130:HK68H3m2−cl9+10+11+12−GCN4をコードする発現ベクターによりマウスを免疫化した。cM2をコードする発現ベクターも陰性対照として含めた。
4匹のマウス(BALB\c)の群を、100μgの構築物+100μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)により筋肉内で1、21および42日目に免疫化した。49日目、最後の採血を実施し、血清を回収した。陰性対照プラスミドcM2を、約10μgの構築物+約2μgのアジュバント(pUMCV1−GM−CSF)および同一の免疫化スキームを使用して遺伝子銃により投与した。血清を、A/HongKong/1/1968からの組換え全長HA(Protein Sciences Corporation,Meriden,CT,USAから入手)を抗原として使用してELISAにより分析した。手短に述べると、96ウェルプレートを50ngのHAにより4℃において一晩コートし、次いでブロック緩衝液(100μlのPBS、pH7.4+2%のスキムミルク)と室温において1時間インキュベートした。プレートをPBS+0.05%のTween−20により洗浄し、血清の50倍希釈から出発するブロック緩衝液中の100μlの2倍希釈系列を添加する。結合抗体は、HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgGを使用して、当分野において十分確立された標準的プロトコルを使用して検出する。力価を、HA抗原に結合するマウスモノクローナル抗体の系列希釈物から構成される標準曲線と比較し、1ml当たりのELISA単位(EU/ml)として表現する。
49日後のA/HongKong/1/1968からのHAを使用するELISAの結果を図33に示す。この実験に含められるステムドメインポリペプチドをコードするDNAにより免疫化されたマウスから得られた血清は、A/HongKong/1/1968からの同種全長HAを認識し得る。予測されるとおり、全長HAをコードするDNAによる免疫化は、同種HAタンパク質に対しては高い抗体力価をもたらす一方、cM2をコードする陰性対照発現ベクターによる免疫化は、A/HongKong/1/1968の全長HAを認識する抗体を誘導しない。
まとめると、データは、H3HAに由来する本発明のポリペプチドが全長H3HAに対して指向される免疫応答を誘導し得ることを示す。
実施例28
グループ1およびグループ2インフルエンザウイルスを中和する抗体を誘発し得るH1HAをベースとする別のステムドメインポリペプチドの設計
実施例4および6は、広域中和CR6261抗体のエピトープを安定的に曝露させるH1配列をベースとするポリペプチドを開示する。CR6261がもっぱら系統発生グループ1からのインフルエンザウイルスを中和するという事実を考慮すると、このエピトープに対して設計されたポリペプチドは、系統発生グループ2インフルエンザウイルスに対する強力な反応を誘発し得ない。このような広域交差中和抗体を誘導する本発明によるポリペプチドを設計する別の手法は、エピトープ中の重要なアミノ酸の構造および生化学的特徴に関してH3HA配列により密接に類似するH1HA配列バリアントを使用することである。グループ特異的抗体および分子(CR6261、F10およびHB36)ならびに結晶化panインフルエンザ抗体FI6(Corti et al,2011)の構造間の比較に基づき、本発明者らは、グループ1−グループ2T49N(HA2)突然変異を立体衝突の導入なしでFI6によってのみ提供することができることを見出した。HA2の49位におけるアスパラギンは、NCBIインフルエンザデータベース:A/swine/Hubei/S1/2009(ACY06623)およびA/swine/Haseluenne/IDT2617/2003(ABV60697)の2つのグループ1ウイルス中に存在する。したがって、一実施形態において、実施例4、6および9に開示され
る本発明の基礎を構成するH1配列は、それらのN49含有HA配列のものである。あるいは、実施例4、6および9に記載の本発明による配列は、TをNアミノ酸に変化させるためのHA2中の49位における追加の突然変異を有する。表7は、本発明のポリペプチドのための出発配列として使用することができる例示的H1HA配列の配列アラインメントを示す。
配列番号180は、突然変異T392N(番号付与は、配列番号1を指す)により配列番号45に由来する。配列番号1中のT392は、上記のとおりHA2中の49位におけるトレオニンに対応する。当業者に周知の方法を使用して、本発明のこのポリペプチドをコードする遺伝子を合成し、発現ベクターpcDNA2004中にクローニングした。CR9114およびCR6261の中和エピトープの存在を、上記のとおり蛍光結合細胞選別により確認した。結果を図34に示す。配列番号180についてのMFIは、CR6261およびCR9114結合について配列番号45および配列番号1について観察されるMFIと同等である一方、CR9020(全長HA分子の頭部領域に結合することが公知)は、配列番号1のみを認識し、CR8020(インフルエンザAグループ2のHAに特異的)は、配列番号180も、配列番号1も、配列番号45も認識しない。陰性対照cM2は、この実験において使用されるモノクローナル抗体のいずれによっても認識されない。
まとめると、突然変異T392Nを含有する配列番号180は、CR6261およびCR9114の中和エピトープを含む。
実施例29
膜貫通配列を欠く本発明の追加のポリペプチドの設計
天然形態のインフルエンザHAは、細胞またはウイルス膜上で三量体として存在する。ある実施形態において、分泌(可溶性)ポリペプチドが細胞中での発現後に生成されるように細胞内および膜貫通配列を除去する。HAの分泌エクトドメインを発現させ、精製する方法は記載されている(例えば、Dopheide et al 2009;Ekiert et al 2009,2011;Stevens et al 2004,2006;Wilson et al 1981参照)。当業者は、これらの方法を本発明のステムドメインポリペプチドに直接適用して分泌(可溶性)ポリペプチドの発現を達成することもできることを理解する。したがって、これらのポリペプチドも本発明に包含される。例えば、グループ1インフルエンザウイルスのHA配列に由来する本発明のポリペプチドの場合、本発明の可溶性ポリペプチドは、残基514(の相当物)からC末端(番号付与は、配列番号1を指す)のポリペプチド配列の欠失により作出することができる。あるいは、追加の残基を本発明のポリペプチド中に、例えば、残基515、516、517、518、519、520、521または522から配列を欠失させることにより含めることができる。場合によりhisタグ配列(HHHHHHまたはHHHHHHH)を精製目的のため、場合によりリンカーを介して連結させて付加することができる。場合により、リンカーは、精製後にhisタグを除去するためのタンパク質分解開裂部位を含有し得る。可溶性ポリペプチドは、三量体構造を形成することが公知の配列、例えば、foldon配列を導入することによりさらに安定化させることができる。上記のとおり得られたポリペプチドも本発明に包含される。
配列番号181〜185は、H1N1A/Brisbane/59/2007のHA配列に由来する本発明の可溶性ポリペプチドの配列を示す。同様に、配列番号186〜187は、H3N2A/HongKong/1/1968のHA配列に由来する本発明の可溶性ポリペプチドの配列を示す。当業者は、例えば、H1、H3、H5亜型の他のインフルエンザAワクチン株の他のHA配列に由来する本発明のポリペプチドについての相当配列を設計することができることを理解する。C末端の6つのヒスチジンを精製目的のために
付着させることも当業者には明確である。このタグを使用しない他の精製方法が存在するため、6つのヒスチジン配列は任意選択であり、この精製タグを欠く配列も本発明に包含される。
References
































































































































































































































































































本発明によるポリペプチドの種々の実施形態および使用は、以下の本発明の詳細な説明
から明確になる。
また、本発明は以下を提供する。
[1] (a)HA1C末端ステムセグメントに0〜50アミノ酸残基の結合配列により共有結合しているHA1N末端ステムセグメントを含むインフルエンザヘマグルチニンHA1ドメイン、および(b)インフルエンザヘマグルチニンHA2ドメインを含むインフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドであって、前記ヘマグルチニンステムドメインポリペプチドはHA1およびHA2間の連結部におけるプロテアーゼ開裂に耐性であり、HA2のAへリックスおよびへリックスCDを連結するアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸が野生型インフルエンザHA2ドメインと比較して突然変異しており、前記HA1およびHA2ドメインは、H1、H5およびH3からなる群から選択されるインフルエンザAウイルス亜型に由来するインフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチド。
[2] 全長HA1ドメインを含まない、[1]に記載のポリペプチド。
[3] グリコシル化されている、[1]または[2]に記載のポリペプチド。
[4] (a)HA1のアミノ酸y〜末端を含むHA1C末端ステムセグメントに0〜50アミノ酸残基の結合配列により共有結合しているHA1のアミノ酸1〜xを含むHA1N末端セグメント、および(b)インフルエンザヘマグルチニンHA2ドメインを含む、[1]、[2]または[3]に記載のポリペプチド。
[5] H1亜型のHAを含むインフルエンザAウイルスからのインフルエンザヘマグルチニンをベースとするインフルエンザヘマグルチニンHA1および/またはHA2ドメインを含み、x=46〜60の任意のアミノ酸であり、y=290〜325の任意のアミノ酸である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のポリペプチド。
[6] 表7のインフルエンザAウイルスからなる群から選択されるH1亜型のHAを含むインフルエンザAウイルスからのインフルエンザヘマグルチニンをベースとするインフルエンザヘマグルチニンHA1および/またはHA2ドメインを含む、[5]に記載のポリペプチド。
[7] H3亜型のHAを含むインフルエンザAウイルスからのインフルエンザヘマグルチニンをベースとするインフルエンザヘマグルチニンHA1および/またはHA2ドメインを含み、x=56〜69の任意のアミノ酸であり、y=292〜325の任意のアミノ酸である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のポリペプチド。
[8] 前記HA1C末端ステムセグメントの前記C末端アミノ酸残基は、アルギニン(R)またはリジン(K)以外の任意のアミノ酸、好ましくは、グルタミン(Q)である、[1]〜[7]のいずれか一項に記載のポリペプチド。
[9] 前記HA1ドメインおよび/または前記HA2ドメイン中の1つ以上のさらなる突然変異を含む、[1]〜[8]のいずれか一項に記載のポリペプチド。
[10] 1つ以上のジスルフィド架橋を含む、[1]〜[9]のいずれか一項に記載のポリペプチド。
[11] シグナル配列を含まない、[1]〜[10]のいずれか一項に記載のポリペプチド。
[12] HA1のアミノ酸y〜末端を含むHA1C末端ステムセグメントに0〜50アミノ酸残基の結合配列により共有結合しているHA1のアミノ酸p〜xを含むHA1N末端セグメント、および(b)インフルエンザヘマグルチニンHA2ドメインを含み、p=成熟HAの最初のアミノ酸である、[11]に記載のポリペプチド。
[13] HAの細胞内および膜貫通配列を含まない、[1]〜[12]のいずれか一項に記載のポリペプチド。
[14] H1HA2のアミノ酸残基520、521、522、523、524、525、526、527、528、529または530からC末端アミノ酸に及ぶインフルエンザH1HA2ドメインのC末端部分を含まない、[13]に記載のポリペプチド。
[15] 抗体CR6261および/またはCR9114に選択的に結合し、抗体CR8057に結合しない、[1]〜[14]のいずれか一項に記載のポリペプチド。
[16] 抗体CR8020、CR843および/またはCR9114に選択的に結合し、抗体CR8057に結合しない、[1]〜[15]のいずれか一項に記載のポリペプチド。
[17] (a)インフルエンザHA0アミノ酸配列を提供するステップ;
(b)HA1〜HA2の開裂部位を除去するステップ;
(c)球状頭部ドメインのアミノ酸配列を前記HA0配列から除去するステップ;
(d)へリックスAのC末端残基をへリックスCDのN末端残基に連結するアミノ酸配列中に1つ以上の突然変異を導入するステップ;および
(e)HAステムドメインポリペプチド中に1つ以上のジスルフィド結合を導入するステップ
を含むインフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドを提供する方法。
[18] [17]に記載の方法により得られるインフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチド。
[19] [1]〜[16]のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸。
[20] [1]〜[16]のいずれか一項に記載のポリペプチド、および/または[19]に記載の核酸分子を含む免疫原性組成物。
[21] 医薬品として使用され、特にワクチンとして使用される、[1]〜[16]のいずれか一項に記載のポリペプチド、[19]に記載の核酸、および/または[20]に記載の免疫原性組成物。

Claims (21)

  1. (a)HA1C末端ステムセグメントに0〜50アミノ酸残基の結合配列により共有結合しているHA1N末端ステムセグメントを含むインフルエンザヘマグルチニンHA1ドメイン、および(b)インフルエンザヘマグルチニンHA2ドメインを含むインフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドであって、前記ヘマグルチニンステムドメインポリペプチドはHA1およびHA2間の連結部におけるプロテアーゼ開裂に耐性であり、HA2のAへリックスおよびへリックスCDを連結するアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸が野生型インフルエンザHA2ドメインと比較して突然変異しており、前記HA1およびHA2ドメインは、H1、H5およびH3からなる群から選択されるインフルエンザAウイルス亜型に由来するインフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチド。
  2. 全長HA1ドメインを含まない、請求項1に記載のポリペプチド。
  3. グリコシル化されている、請求項1または2に記載のポリペプチド。
  4. (a)HA1のアミノ酸y〜末端を含むHA1C末端ステムセグメントに0〜50アミノ酸残基の結合配列により共有結合しているHA1のアミノ酸1〜xを含むHA1N末端セグメント、および(b)インフルエンザヘマグルチニンHA2ドメインを含む、請求項1、2または3に記載のポリペプチド。
  5. H1亜型のHAを含むインフルエンザAウイルスからのインフルエンザヘマグルチニンをベースとするインフルエンザヘマグルチニンHA1および/またはHA2ドメインを含み、x=46〜60の任意のアミノ酸であり、y=290〜325の任意のアミノ酸である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  6. 表7のインフルエンザAウイルスからなる群から選択されるH1亜型のHAを含むインフルエンザAウイルスからのインフルエンザヘマグルチニンをベースとするインフルエンザヘマグルチニンHA1および/またはHA2ドメインを含む、請求項5に記載のポリペプチド。
  7. H3亜型のHAを含むインフルエンザAウイルスからのインフルエンザヘマグルチニンをベースとするインフルエンザヘマグルチニンHA1および/またはHA2ドメインを含み、x=56〜69の任意のアミノ酸であり、y=292〜325の任意のアミノ酸である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  8. 前記HA1C末端ステムセグメントの前記C末端アミノ酸残基は、アルギニン(R)またはリジン(K)以外の任意のアミノ酸、好ましくは、グルタミン(Q)である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  9. 前記HA1ドメインおよび/または前記HA2ドメイン中の1つ以上のさらなる突然変異を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  10. 1つ以上のジスルフィド架橋を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  11. シグナル配列を含まない、請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  12. HA1のアミノ酸y〜末端を含むHA1C末端ステムセグメントに0〜50アミノ酸残
    基の結合配列により共有結合しているHA1のアミノ酸p〜xを含むHA1N末端セグメント、および(b)インフルエンザヘマグルチニンHA2ドメインを含み、p=成熟HAの最初のアミノ酸である、請求項11に記載のポリペプチド。
  13. HAの細胞内および膜貫通配列を含まない、請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  14. H1HA2のアミノ酸残基520、521、522、523、524、525、526、527、528、529または530からC末端アミノ酸に及ぶインフルエンザH1HA2ドメインのC末端部分を含まない、請求項13に記載のポリペプチド。
  15. 抗体CR6261および/またはCR9114に選択的に結合し、抗体CR8057に結合しない、請求項1〜14のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  16. 抗体CR8020、CR843および/またはCR9114に選択的に結合し、抗体CR8057に結合しない、請求項1〜15のいずれか一項に記載のポリペプチド。
  17. (a)インフルエンザHA0アミノ酸配列を提供するステップ;
    (b)HA1〜HA2の開裂部位を除去するステップ;
    (c)球状頭部ドメインのアミノ酸配列を前記HA0配列から除去するステップ;
    (d)へリックスAのC末端残基をへリックスCDのN末端残基に連結するアミノ酸配列中に1つ以上の突然変異を導入するステップ;および
    (e)HAステムドメインポリペプチド中に1つ以上のジスルフィド結合を導入するステップ
    を含むインフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチドを提供する方法。
  18. 請求項17に記載の方法により得られるインフルエンザヘマグルチニンステムドメインポリペプチド。
  19. 請求項1〜16のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸。
  20. 請求項1〜16のいずれか一項に記載のポリペプチド、および/または請求項19に記載の核酸分子を含む免疫原性組成物。
  21. 医薬品として使用され、特にワクチンとして使用される、請求項1〜16のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項19に記載の核酸、および/または請求項20に記載の免疫原性組成物。
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