JP2018020487A - 多層フィルム及び成形体 - Google Patents

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Ryota Hashimoto
涼太 橋本
圭佑 榎本
Keisuke Enomoto
圭佑 榎本
貴理博 中野
Kirihiro Nakano
貴理博 中野
芳朗 近藤
Yoshiro Kondo
芳朗 近藤
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Yoshiki Kobi
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Abstract

【課題】三次元被覆成形に好適であり、被着体に接着した際の表面が平滑である多層フィルム及び該多層フィルムが接着した外観に優れる成形体を提供すること。【解決手段】少なくとも層(A)及び層(B)を有する多層フィルムであって、層(A)が、芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(a1)及び共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(a2)を含有するブロック共重合体またはその水素添加物である熱可塑性エラストマー(a)100質量部に対してポリプロピレン系樹脂(b)1〜50質量部を含有する熱可塑性重合体組成物から構成され、該熱可塑性重合体組成物の動的粘弾性測定により周波数1Hz、温度250℃で測定した損失正接(tanδ)が1.0以上であり、層(B)が(メタ)アクリル系樹脂により構成される、多層フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性重合体組成物から構成される層を有する多層フィルム及び該多層フィルムが接着した成形体に関する。
家電製品の外装・壁紙、自動車の内装などには、木目調などの絵柄による加飾や、メタリック調やピアノブラック調などの意匠性の付与及び耐傷つき性や耐候性といった機能性の付与などを目的として、樹脂製加飾フィルムが用いられている。
これらのフィルムを用いた三次元形状への加飾方法としては、例えば、フィルムを金型内にインサートして射出成形するフィルムインサート成形法が用いられる。この方法では、金型形状に合うようにフィルムを事前にプレス賦形する必要がある。また、別の加飾方法として、三次元形状品にフィルムを被覆する三次元被覆成形がある。この方法では、フィルムに対して事前にプレス賦形をする必要は無いが、フィルムを被着体に接着する場合、別途、接着剤の塗布が必要となる場合がある。この作業には溶剤の塗工工程や乾燥工程、養生工程が必要であり接着性の付与に長い時間を要したり、VOCによる作業環境の悪化が懸念されたりするため接着剤を必要とせずに接着できる加飾フィルムが求められている。
特許文献1には、少なくとも2個のモノアルケニルアレーンブロックが飽和共役ジエンブロックで分離された1種以上のブロックコポリマー、ポリオレフィン、水素化炭化水素樹脂などの粘着付与樹脂からなる組成物及び前記組成物からなる感圧接着剤シートが提案されている。また、特許文献2ではビニル芳香族化合物から主として作られる少なくとも2つの重合体ブロックA と、共役ジエン化合物から主として作られる少なくとも1つの重合体ブロックBとから成るブロック共重合体、及び/または、これを水素添加して得られるブロック共重合体、シアン化ビニル化合物単量体成分、ゴム成分、芳香族ビニル化合物単量体成分及び任意的なその他の共重合可能な単量体成分からなる共重合体、非芳香族系ゴム用軟化剤からなる熱融着用樹脂組成物が開示されている。
特許文献3には、芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロックと共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロックとを有するブロック共重合体またはその水素添加物である熱可塑性エラストマー、ポリビニルアセタール樹脂及び/または極性基含有ポリプロピレン系樹脂を含有する熱可塑性重合体組成物からなるフィルムをインサート部材に貼り合わせ、次いで樹脂部材をインサート成形する接着体の製造方法が開示されている。
特開2005−48195号公報 特許第4428793号公報 特開2014−168940号公報
特許文献1に記載の感圧接着剤シートは、粘着付与物質により表面粘着性が高いため取扱い性が悪く生産性が低くなるとともに、粘着付与物質のブリードアウトにより接着性能がばらついてしまうという問題がある。特許文献2に記載の熱融着用樹脂組成物からなるフィルムも同様に、含有される非芳香族系ゴム用軟化剤による問題がある。
特許文献3に記載の熱可塑性重合体組成物及び該熱可塑性重合体組成物からなるフィルムについて本発明者らが検討したところ、前記熱可塑性重合体組成物の表面に荒れが発生し、平滑なフィルムを得ることが困難であった。また、係るフィルムを三次元被覆成形に供したところ、熱可塑性重合体組成物表面の荒れがフィルム基材の表面に伝播し、基材の表面が平滑にならず、意匠性が悪化するという問題があった。
以上より、本発明の目的は、三次元被覆成形に好適であり、被着体に接着した際の表面が平滑であり表面性に優れる多層フィルムを提供することである。また、本発明の更なる目的は、前記多層フィルムが接着した外観に優れる成形体を提供することである。
本発明によれば、上記の目的は、
[1]少なくとも層(A)及び層(B)を有する多層フィルムであって、層(A)が、芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(a1)及び共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(a2)を含有するブロック共重合体またはその水素添加物である熱可塑性エラストマー(a)100質量部に対してポリプロピレン系樹脂(b)1〜50質量部を含有する熱可塑性重合体組成物から構成され、該熱可塑性重合体組成物の動的粘弾性測定により周波数1Hz、温度250℃で測定した損失正接(tanδ)が1.0以上であり、層(B)が(メタ)アクリル系樹脂により構成される、多層フィルム、
[2]前記熱可塑性エラストマー(a)の秩序−無秩序転移温度(ODT)が300℃以下である、[1]に記載の多層フィルム。
[3]前記熱可塑性重合体組成物が(メタ)アクリル系樹脂を含まないものである、[1]または[2]に記載の多層フィルム、
[4]成形温度240〜260℃で共押出成形法により製造される、[1]〜[3]のいずれかに記載の多層フィルム、
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の多層フィルムが被着体の表面に接着した成形体、
[6]前記多層フィルムを真空成形及び/または圧空成形を用いて被着体に接着させることを特徴とする[5]に記載の成形体の製造方法、
[7]前記多層フィルムを100〜160℃の範囲で加熱して軟化させる工程をさらに有する、[6]に記載の成形体の製造方法、
を提供することにより達成される。
本発明の多層フィルムは、三次元被覆成形に好適であり、被着体に接着した際の表面が平滑であり表面性に優れる。また、前記多層フィルムが接着した本発明の成形体は、該フィルムの表面性により、外観に優れる。
[層(A)]
本発明の多層フィルムにおける層(A)は、芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(a1)及び共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(a2)を含有するブロック共重合体またはその水素添加物である熱可塑性エラストマー(a)及びポリプロピレン系樹脂(b)を含有する熱可塑性重合体組成物から構成されるものである。多層フィルムにおいて、層(A)は主として接着層として機能する。
<熱可塑性エラストマー(a)>
前記熱可塑性エラストマー(a)に含まれる芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(a1)を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンなどが挙げられる。芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロックは、これらの芳香族ビニル化合物の1種のみに由来する構造単位からなっていてもよいし、2種以上に由来する構造単位からなっていてもよい。中でも、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレンが好ましい。
芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(a1)は、好ましくは芳香族ビニル化合物単位80質量%以上、より好ましくは芳香族ビニル化合物単位90質量%以上、さらに好ましくは芳香族ビニル化合物単位95質量%以上を含有する重合体ブロックである。重合体ブロック(a1)は、芳香族ビニル化合物単位のみを有していてもよいが、本発明の効果を損なわない限り、芳香族ビニル化合物単位と共に、他の共重合性単量体単位を有していてもよい。他の共重合性単量体としては、例えば、1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテルなどが挙げられる。他の共重合性単量体単位を有する場合、その割合は、芳香族ビニル化合物単位及び他の共重合性単量体単位の合計量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
前記熱可塑性エラストマー(a)に含まれる共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(a2)を構成する共役ジエン化合物としては、炭素数4〜20の共役ジエン化合物であることが好ましい。炭素数4〜20の共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、2−メチル−1,3オクタジエン、1,3,7−オクタトリエン、ミルセン、テルペン類などが挙げられる。
共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロック(a2)は、これらの共役ジエン化合物の1種のみに由来する構造単位からなっていてもよいし、2種以上に由来する構造単位からなっていてもよい。特に、ブタジエンまたはイソプレンに由来する構造単位、またはブタジエン及びイソプレンに由来する構造単位からなっていることが好ましい。
共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(a2)は、好ましくは共役ジエン化合物単位80質量%以上、より好ましくは共役ジエン化合物単位90質量%以上、さらに好ましくは共役ジエン化合物単位95質量%以上を含有する重合体ブロックである。前記重合体ブロック(a2)は、共役ジエン化合物単位のみを有していてもよいが、本発明の妨げにならない限り、共役ジエン化合物単位と共に、他の共重合性単量体単位を有していてもよい。他の共重合性単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレンなどが挙げられる。他の共重合性単量体単位を有する場合、その割合は、共役ジエン化合物単位及び他の共重合性単量体単位の合計量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
重合体ブロック(a2)を構成する共役ジエンの結合形態は特に制限されない。例えば、ブタジエンの場合には、1,2−結合、1,4−結合を、イソプレンの場合には、1,2−結合、3,4−結合、1,4−結合をとることができる。
なお、1,2−結合量及び3,4−結合量の合計量は、H−NMR測定によって算出できる。具体的には、1,2−結合及び3,4−結合単位に由来する4.2〜5.0ppmに存在するピークの積分値及び1,4−結合単位に由来する5.0〜5.45ppmに存在するピークの積分値との比から算出できる。
重合体ブロック(a1)及び重合体ブロック(a2)の結合形態は特に制限されず、直線状、分岐状、放射状またはそれらの2つ以上の組み合わせであってもよい。中でも、各ブロックが直線状に結合した形態が好ましく、重合体ブロック(a1)をa1、重合体ブロック(a2)をa2で表したときに、(a1−a2)、a1−(a2−a1)またはa2−(a1−a2)で表される結合形態が好ましい。なお、前記l、m及びnはそれぞれ独立して1以上の整数を表す。
中でも熱可塑性エラストマー(a)としては、重合体ブロック(a1)を2個以上、及び重合体ブロック(a2)を1個以上含むブロック共重合体であることが好ましく、製膜性及び柔軟性の観点から、トリブロック共重合体、またはペンタブロック共重合体がより好ましい。
熱可塑性エラストマー(a)における芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(a1)の含有量は、その柔軟性、力学特性の観点から、熱可塑性エラストマー(a)全体に対して、好ましくは5〜75質量%、より好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。
熱可塑性エラストマー(a)は、耐熱性及び耐候性を向上させる観点から、重合体ブロック(a2)の一部または全部が水素添加(以下、「水添」と略称することがある)された水素添加物であってもよい。その際の水添率は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。ここで、本明細書において、水添率は、水素添加反応前後のブロック共重合体のヨウ素価を測定して得られる値である。
また、熱可塑性エラストマー(a)の重量平均分子量は、その力学特性、成形加工性の観点から、好ましくは30,000〜500,000、より好ましくは50,000〜400,000、より好ましくは60,000〜300,000である。ここで、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
熱可塑性エラストマー(a)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性エラストマー(a)は、その秩序−無秩序転移温度(ODT)が300℃以下であることが好ましく、より好ましくは280℃以下であり、さらに好ましくは250℃以下である。熱可塑性エラストマー(a)のODTが300℃以下であると、得られる多層フィルムの表面平滑性がより向上する。熱可塑性エラストマー(a)の秩序−無秩序転移温度(ODT)は、熱可塑性エラストマー(a)の重量平均分子量もしくは分子量分布(Mw/Mn)を、または重合体ブロック(a1)及び重合体ブロック(a2)の構成割合を、調整することなどにより所望の値とすることができる。なお、熱可塑性エラストマー(a)を2種以上組み合わせて用いる場合、ODTが300℃以下である熱可塑性エラストマー(a)を50質量%以上含むものが好ましく、70質量%以上含むものがより好ましい。なお、本明細書においてODTは実施例に記載の方法で求めた値とする。
熱可塑性エラストマー(a)の製造方法としては、特に限定されないが、例えばアニオン重合法により製造することができる。具体的には、(i)アルキルリチウム化合物を開始剤として用い、前記芳香族ビニル化合物、前記共役ジエン化合物、次いで前記芳香族ビニル化合物を逐次重合させる方法;(ii)アルキルリチウム化合物を開始剤として用い、前記芳香族ビニル化合物、前記共役ジエン化合物を逐次重合させ、次いでカップリング剤を加えてカップリングする方法;(iii)ジリチウム化合物を開始剤として用い、前記共役ジエン化合物、次いで前記芳香族ビニル化合物を逐次重合させる方法などが挙げられる。
さらに、上記で得られた未水添の熱可塑性エラストマー(a)を水素添加反応に付すことによって、熱可塑性エラストマー(a)の水素添加物を製造することができる。水素添加反応は、反応及び水素添加触媒に対して不活性な溶媒に上記で得られた未水添の熱可塑性エラストマー(a)を溶解させるか、または、未水添の熱可塑性エラストマー(a)を前記の反応液から単離せずにそのまま用い、水素添加触媒の存在下、水素と反応させることにより行うことができる。
また、熱可塑性エラストマー(a)としては、市販品を使用することもできる。
<ポリプロピレン系樹脂(b)>
ポリプロピレン系樹脂(b)としては、公知のポリプロピレン系樹脂を用いることができるが、プロピレンに由来する構造単位の含有量(以下、プロピレン含有量と略称することがある。)が60モル%以上であるものが好ましい。プロピレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは95〜99モル%である。プロピレン以外に由来する構造単位としては、例えば、エチレンに由来する構造単位、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ノネン、1−デセン等のα−オレフィンに由来する構造単位のほか、後述の変性剤に由来する構造単位なども挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂(b)としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−オクテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセンランダム共重合体、及びこれらの変性物等が挙げられる。該変性物としては、ポリプロピレン系樹脂に変性剤をグラフト共重合して得られるものや、ポリプロピレン系樹脂の主鎖に変性剤を共重合させて得られるものなどが挙げられる。
これらの中でも、ポリプロピレン系樹脂(b)としては、極性官能基を有しない非極性ポリプロピレン系樹脂であることが好ましく、比較的安価、かつ容易に入手できるという観点から、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体が好ましい。
ポリプロピレン系樹脂(b)は、従来公知の方法で合成することができ、例えば、チーグラー・ナッタ型触媒やメタロセン型触媒を用いて、プロピレン単独重合体、ランダム、もしくはブロックのプロピレンとα−オレフィンとの共重合体を合成することができる。
ポリプロピレン系樹脂(b)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、ポリプロピレン系樹脂(b)は市販品を使用することもできる。
<熱可塑性重合体組成物>
層(A)を構成する熱可塑性重合体組成物は、前記熱可塑性エラストマー(a)100質量部に対して前記ポリプロピレン系樹脂(b)1〜50質量部を含有する。ポリプロピレン系樹脂(b)を当該範囲で含有することにより、熱可塑性重合体組成物は強い接着力、優れた柔軟性及び力学特性を示す。これにより得られる多層フィルムの接着力、取り扱い性がより向上する。より好ましい範囲は熱可塑性エラストマー(a)100質量部に対してポリプロピレン系樹脂(b)1〜30質量部であり、更に好ましくは、熱可塑性エラストマー(a)100質量部に対してポリプロピレン系樹脂(b)5〜25質量部である。
本発明において、層(A)を構成する熱可塑性重合体組成物の、動的粘弾性測定により周波数1Hz、温度250℃で測定した損失正接(tanδ)が1.0以上である。損失正接(tanδ)が1.0以上であることにより、多層フィルムの製膜時に発生しうる熱可塑性重合体組成物の弾性回復による凹凸を抑制することができる。これにより、前記熱可塑性重合体組成物からなる層(A)の表面が平滑になることで、被着体に接着した際の表面が平滑であり表面性に優れるものとなり、得られる成形体の外観も優れたものとなる。一方、損失正接(tanδ)が1.0未満であると熱可塑性樹脂組成物からなる層(A)の面状が荒れるため、被着体に接着した際に、多層フィルムの表面にオレンジピール様の凹凸が発生し、得られる成形体は外観に劣るものとなる。上記観点から、熱可塑性重合体組成物の、動的粘弾性測定により周波数1Hz、温度250℃で測定した損失正接(tanδ)が2.0以上であることがより好ましい。損失正接(tanδ)の上限は特に限定されないが、通常10以下である。
層(A)を構成する熱可塑性重合体組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で必要に応じて、前記熱可塑性エラストマー(a)及び前記ポリプロピレン系樹脂(b)以外に、オレフィン系重合体、スチレン系重合体、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエチレングリコールなど他の熱可塑性重合体を含有していてもよい。オレフィン系重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、プロピレンとエチレンや1−ブテンなどの他のα−オレフィンとのブロック共重合体やランダム共重合体などが挙げられる。
他の熱可塑性重合体を含有させる場合、その含有量は、熱可塑性エラストマー(a)100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。
なお、層(A)を構成する熱可塑性重合体組成物は、(メタ)アクリル系樹脂を含まないものが好ましい。
層(A)を構成する熱可塑性重合体組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、酸化防止剤、滑剤、光安定剤、加工助剤、顔料や色素などの着色剤、難燃剤、帯電防止剤、艶消し剤、シリコンオイル、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、発泡剤、抗菌剤、防カビ剤、香料などを含有していてもよい。
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系、リン系、ラクトン系、ヒドロキシル系の酸化防止剤などが挙げられる。
層(A)を構成する熱可塑性重合体組成物の調製方法に特に制限はなく、前記成分を均一に混合し得る方法であればいずれの方法で調製してもよく、通常は溶融混練法が用いられる。溶融混練は、例えば、単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、バッチミキサー、ローラー、バンバリーミキサーなどの溶融混練装置を用いて行うことができ、通常、好ましくは170〜270℃で溶融混練することにより、熱可塑性重合体組成物を得ることができる。
[層(B)]
本発明の多層フィルムにおける層(B)は、(メタ)アクリル系樹脂により構成されるものである。多層フィルムにおいて、層(B)は主として基材層として機能する。かかる(メタ)アクリル系樹脂としては、メタクリル樹脂(F)及び弾性体(R)を含む(メタ)アクリル系樹脂組成物がより好ましい。
メタクリル樹脂(F)はメタクリル酸メチルに由来する構造単位を好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上有する。換言すると、メタクリル樹脂(F)はメタクリル酸メチル以外の単量体に由来する構造単位を好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下有し、メタクリル酸メチルのみを単量体とする重合体であってもよい。
係るメタクリル酸メチル以外の単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−へキシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルネニル、アクリル酸イソボニルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−へキシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルネニル、メタクリル酸イソボニルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテンなどのオレフィン;ブタジエン、イソプレン、ミルセンなどの共役ジエン;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
メタクリル樹脂(F)の立体規則性は特に制限されず、例えばイソタクチック、ヘテロタクチック、シンジオタクチックなどの立体規則性を有するものを用いてもよい。
メタクリル樹脂(F)の重量平均分子量は好ましくは20,000〜180,000の範囲であり、より好ましくは30,000〜150,000の範囲である。重量平均分子量が20,000未満だと耐衝撃性や靭性が低下する傾向となり、180,000より大きいとメタクリル樹脂(F)の流動性が低下し成形加工性が低下する傾向となる。
メタクリル樹脂(F)の製造方法は特に限定されず、メタクリル酸メチルを80質量%以上含む単量体(混合物)を重合するか、メタクリル酸メチル以外の単量体と共重合して得られる。また、メタクリル樹脂(F)として市販品を用いてもよい。
弾性体(R)としてはブタジエン系ゴム、クロロプレン系ゴム、ブロック共重合体、多層構造体などが挙げられ、これらを単独でまたは組み合わせて用いてもよい。これらの中でも透明性、耐衝撃性、分散性の観点からブロック共重合体または多層構造体が好ましく、アクリル系ブロック共重合体(G)または多層構造体(E)がより好ましい。
アクリル系ブロック共重合体(G)はメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)及びアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)を有する。アクリル系ブロック共重合体(G)はメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)及びアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)をそれぞれ1つのみ有していてもよいし、複数有していてもよい。
メタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)はメタクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構成単位とするものである。メタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)におけるメタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、延伸性、表面硬度の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。
係るメタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリルなどが挙げられ、これらを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて重合できる。これらの中でも、透明性、耐熱性の観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。
メタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)はメタクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよく、延伸性及び表面硬度の観点から、その割合は好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
前記メタクリル酸エステル以外の単量体としては、例えばアクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられ、これらを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
アクリル系ブロック共重合体(G)がメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)を複数有する場合、それぞれのメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)を構成する構造単位の組成比や分子量は相互に同じであってもよいし、異なっていてもよい。
アクリル系ブロック共重合体(G)におけるメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)の割合は、透明性、柔軟性、成形加工性及び表面平滑性の観点から、好ましくは10質量%〜70質量%の範囲であり、より好ましくは25質量%〜60質量%の範囲である。アクリル系ブロック共重合体(G)にメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)が複数含まれる場合、前記の割合はすべてのメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)の合計質量に基づいて算出する。
アクリル酸エステル重合体ブロック(g2)はアクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構成単位とするものである。アクリル酸エステル重合体ブロック(g2)におけるアクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、三次元被覆成形性及び延伸性の観点から好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
係るアクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリルなどが挙げられ、これらを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて重合できる。
アクリル酸エステル重合体ブロック(g2)は、延伸性、透明性の観点から、アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸芳香族エステルからなることが好ましい。アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシルなどが挙げられる。これらのうち、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
(メタ)アクリル酸芳香族エステルはアクリル酸芳香族エステルまたはメタクリル酸芳香族エステルを意味し、芳香環を含む化合物が(メタ)アクリル酸にエステル結合してなる。係る(メタ)アクリル酸芳香族エステルとしては、例えばアクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸スチリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸スチリルなどが挙げられる。中でもメタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ベンジルが好ましい。
アクリル酸エステル重合体ブロック(g2)がアクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸芳香族エステルからなる場合、該アクリル酸エステル重合体ブロック(g2)はアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位50〜90質量%及び(メタ)アクリル酸芳香族エステルに由来する構造単位50〜10質量%を含むことが好ましく、アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位60〜80質量%及び(メタ)アクリル酸芳香族エステルに由来する構造単位40〜20質量%を含むことがより好ましい。
アクリル酸エステル重合体ブロック(g2)はアクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよく、アクリル酸エステル重合体ブロック(g2)においてその含有量は好ましくは55質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。
アクリル酸エステル以外の単量体としては、例えばメタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられ、これらを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
アクリル系ブロック共重合体(G)がアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)を複数有する場合、それぞれのアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)を構成する構造単位の組成比や分子量は相互に同じであってもよいし、異なっていてもよい。
アクリル系ブロック共重合体(G)におけるアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)の割合は、三次元被覆成形に好適な多層フィルムが得られる観点から、好ましくは30〜90質量%の範囲であり、より好ましくは40〜75質量%の範囲である。ブロック共重合体(G)にアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)が複数含まれる場合、係る割合はすべてのアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)の合計質量に基づいて算出する。
アクリル系ブロック共重合体(G)におけるメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)とアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)の結合形態は特に限定されず、例えばメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)の一末端にアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)の一末端が繋がった構造((g1)−(g2)構造);メタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)の両末端にアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)の一末端が繋がった構造((g2)−(g1)−(g2)構造);アクリル酸エステル重合体ブロック(g2)の両末端にメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)の一末端が繋がった構造((g1)−(g2)−(g1)構造)など、メタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)及びアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)が直列に繋がった構造が挙げられる。これらの中でも、(g1)−(g2)構造のジブロック共重合体または(g1)−(g2)−(g1)構造のトリブロック共重合体が特に好ましい。
アクリル系ブロック共重合体(G)は、分子鎖中または分子鎖末端に水酸基、カルボキシル基、酸無水物、アミノ基などの官能基を有してもよい。
アクリル系ブロック共重合体(G)の重量平均分子量は好ましくは60,000〜400,000の範囲であり、より好ましくは60,000〜200,000の範囲である。アクリル系ブロック共重合体(G)の分子量分布は好ましくは1.0〜2.0の範囲であり、より好ましくは1.0〜1.6の範囲である。なお、重量平均分子量及び数平均分子量はGPCで測定した標準ポリスチレン換算の分子量である。
アクリル系ブロック共重合体(G)の屈折率は好ましくは1.485〜1.495の範囲であり、より好ましくは1.487〜1.493の範囲である。屈折率がこの範囲内であると、層(B)の透明性が高くなり、多層フィルムの外観に優れる。なお、屈折率は波長587.6nm(d線)で測定した値である。
アクリル系ブロック共重合体(G)の製造方法は特に限定されず、公知の手法に準じた方法を採用でき、例えば各重合体ブロックを構成する単量体をリビング重合する方法が一般に使用される。このようなリビング重合の手法としては、例えば有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩などの鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法;有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法;有機希土類金属錯体を重合開始剤として用い重合する方法;α−ハロゲン化エステル化合物を開始剤として用い銅化合物の存在下でラジカル重合する方法などが挙げられる。また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いて各ブロックを構成するモノマーを重合させ、アクリル系ブロック共重合体(G)を含有する混合物として製造する方法なども挙げられる。これらの方法のうち、アクリル系ブロック共重合体(G)を高純度で得られ、また分子量や組成比の制御が容易であり、かつ経済的であることから、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法が好ましい。
多層構造体(E)は内層及び外層の少なくとも2層を含有し、内層及び外層が中心層から最外層方向へこの順に配されている層構造を少なくとも一つ有している。多層構造体(E)は内層の内側または外層の外側にさらに架橋性樹脂層を有してもよい。
上記内層は、アクリル酸アルキルエステル及び架橋性単量体を有する単量体混合物を共重合してなる架橋弾性体から構成される層である。係るアクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が2〜8の範囲であるアクリル酸アルキルエステルが好ましく用いられ、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが挙げられる。内層の共重合体を形成させるために使用される全単量体混合物におけるアクリル酸アルキルエステルの割合は、耐衝撃性の点から、好ましくは70〜99.8質量%の範囲であり、より好ましくは80〜90質量%である。
上記内層に用いられる架橋性単量体は一分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有するものであればよく、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレートなどグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルなど不飽和カルボン酸のアルケニルエステル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなど多塩基酸のポリアルケニルエステル、トリメチロールプロパントリアクリレートなど多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル、ジビニルベンゼンなどが挙げられ、不飽和カルボン酸のアルケニルエステルや多塩基酸のポリアルケニルエステルが好ましい。全単量体混合物における架橋性単量体の量は、0.2〜30質量%の範囲が好ましく、0.2〜10質量%の範囲がより好ましい。
上記内層を形成する単量体混合物は他の単官能性単量体をさらに有してもよい。係る単官能性単量体は、例えばメタクリル酸メチル、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレートなどのアルキルメタクリレート;フェニルメタクリレートなどのメタクリル酸とフェノール類のエステル、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸と芳香族アルコールとのエステルなどのメタクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレンなどの芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系単量体などが挙げられる。全単量体混合物における他の単官能性単量体の量は、好ましくは24.5質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である。
上記外層はメタクリル酸メチルを80質量%以上、好ましくは90質量%以上含有する単量体混合物を重合してなる硬質熱可塑性樹脂から構成される。また、硬質熱可塑性樹脂は他の単官能性単量体を20質量%以下、好ましくは10質量%以下含んでいてもよい。他の単官能性単量体としては、例えばメチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸;メタクリル酸などが挙げられる。
多層構造体(E)における内層及び外層の含有率は、溶融混練の容易さ等の観点から、多層構造体(E)の質量(例えば2層からなる場合は内層及び外層の総量)を基準として、内層の含有率が40〜80質量%の範囲から選ばれ、外層の含有率が20〜60質量%の範囲から選ばれることが好ましい。
多層構造体(E)を製造するための方法は特に限定されないが、多層構造体(E)の層構造の制御の観点から乳化重合により製造されることが好ましい。
層(B)が、メタクリル樹脂(F)及び弾性体(R)を含む(メタ)アクリル系樹脂組成物から構成される場合、各成分の含有量は、三次元被覆成形に好適な多層フィルムが得られる観点から、メタクリル樹脂(F)と弾性体(R)との合計100質量部に対して、メタクリル樹脂(F)の含有量が10〜99質量部であり、弾性体(R)の含有量が90〜1質量部であることが好ましい。より好ましくは、メタクリル樹脂(F)と弾性体(R)との合計100質量部に対して、メタクリル樹脂(F)の含有量が55〜90質量部であり、弾性体(R)の含有量が45〜10質量部である。さらに好ましくは、メタクリル樹脂(F)の含有量が70〜90質量部であり、弾性体(R)の含有量が30〜10質量部である。
層(B)は各種の添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、高分子加工助剤着色剤、耐衝撃助剤などを含有してもよい。また、層(B)は、(メタ)アクリル系樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂及びポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂により構成されるものであり、これらの樹脂とその他の重合体(例えばポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド、他の熱可塑性エラストマー)とを混合して使用してもよい。
層(B)を構成する樹脂を調製する方法は特に制限されないが、各成分の分散性を高めるため、溶融混練して混合する方法が好ましい。混合操作は、例えばニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの既知の混合または混練装置を使用でき、混練性、相溶性を向上させる観点から、二軸押出機を使用することが好ましい。混合・混練時の温度は使用する樹脂の溶融温度などに応じて適宜調節すればよく、通常110〜300℃の範囲である。二軸押出機を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し、減圧下で及び/または窒素雰囲気下で溶融混練することが好ましい。
[多層フィルム]
本発明の多層フィルムは、本発明の効果を損ねない範囲で、層(A)及び層(B)以外に他の層を有していてもよい。例えば、最表層や中間層に意匠層(印刷層、金属層)、ハードコート層、無機粒子配合層などを有してもよい。
本発明の多層フィルムは、層(A)及び/または層(B)に絵柄、文字、図形などの模様または色彩が印刷されていてもよい。模様は有彩色のものであっても無彩色のものであってもよい。印刷の方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、転写印刷、インキジェット印刷など公知の印刷法が挙げられる。印刷においては、係る印刷方法で一般的に使用される、ポリビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、セルロース樹脂などの樹脂をバインダーとして、顔料または染料を着色剤として含有する樹脂組成物を使用することが好ましい。
本発明の多層フィルムに用いられる層(B)は、着色されていてもよい。着色法としては、層(B)を構成する樹脂自体に、顔料または染料を含有させ、フィルム化前の樹脂自体を着色する方法;層(B)の樹脂フィルムを、染料が分散した液中に浸漬して着色させる染色法などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明の多層フィルムは、層(B)に金属または金属酸化物が蒸着されてもよい。係る金属または金属酸化物としてはスパッタや真空蒸着などに使用される金属または金属酸化物を特に制限なく使用でき、例えば金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、クロム、インジウムやこれらの酸化物などが挙げられる。また、これらの金属または金属酸化物は単独で使用してもよく、2以上の混合物として使用してもよい。層(B)に金属または金属酸化物を蒸着する方法としては、蒸着やスパッタなどの真空成膜法や、電解メッキ、無電解メッキなどが挙げられる。
本発明の多層フィルムの層(B)側の表面は、鉛筆硬度でHBまたはそれよりも硬いことが好ましく、Hまたはそれよりも硬いことがより好ましい。鉛筆硬度がHBよりも硬いと多層フィルムが傷つき難く、意匠性の要求される成形品の表面の加飾兼保護フィルムとして好適に用いられる。
本発明の多層フィルムの全厚さは好ましくは20〜1,000μmの範囲が好ましく、50〜500μmの範囲がより好ましい。多層フィルムの厚さが20μm以上であれば製造が容易となり、耐衝撃性及び加熱時の反り低減に優れ、着色時に隠蔽性を有する。多層フィルムの厚さが1,000μm以下であれば、三次元被覆成形性がよりよくなる。
本発明の多層フィルムにおいて、層(A)の厚さは30〜500μmであることが好ましい。層(A)がこれより厚いと成形性が低下する。また、層(A)がこれより薄いと接着性能が低下する。上記観点から、層(A)の厚みは50μm〜300μmであることがより好ましい。
本発明の多層フィルムにおいて、層(B)の厚さは500μm以下であることが好ましい。500μmより厚くなると、ラミネート性、ハンドリング性、切断性・打抜き性などの二次加工性が低下し、フィルムとしての使用が困難になるとともに、単位面積あたりの単価も増大し、経済的に不利であるため好ましくない。層(B)の厚さとしては40〜300μmがより好ましく、100〜300μmがさらに好ましい。
本発明の多層フィルムの製造方法としては、層(B)に層(A)を構成する熱可塑性重合体組成物の溶液を塗布する方法;層(B)に層(A)を構成する熱可塑性重合体組成物のフィルムを熱ラミネートする方法;層(B)及び層(A)をプレスで熱圧着する方法;圧空成形または真空成形またはTOM成形すると同時に積層する方法;粘接着層を介在させてラミネートする方法(ウェットラミネーション);層(B)を構成する樹脂及び層(A)を構成する熱可塑性重合体組成物をダイ内で積層する共押出成形法などが挙げられる。これらの方法のうち、層(B)を別に成形する工程が不要である点から、共押出成形法が好ましい。
共押出成形法は、Tダイ法、インフレーション法等の公知の方法を用いて行うことができる。Tダイ法にはマルチマニホールド法、フィードブロック法が挙げることができる。特に、厚み精度の観点から、マルチマニホールド法による共押出成形が好ましい。成形温度に関しては、240〜260℃とすることで、フィルムの破断や端部の包み込みといった製膜不良が発生することなく、多層フィルムを製造することができるため好ましい。また、共押出成形した後に、良好な表面平滑性のフィルムが得られるという観点から、溶融混練物をTダイから溶融状態で押し出し、その両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形する工程を含む方法も好ましい。この際に用いるロールまたはベルトは、いずれも金属製またはシリコーンゴム製であることが好ましい。
本発明の多層フィルムは、良好な伸び特性及び接着力を有することから、接着剤を用いることなく、被着体に対して真空成形及び/または圧空成形(すなわち、真空成形、圧空成形、真空圧空成形)を用いて好適に接着させることができる。また、前記多層フィルムは、前記被着体に接着させた際にフィルム表面が平滑な状態で被着体を被覆することができる。これにより外観に優れる成形体を得ることができる。
[成形体]
本発明の成形体は、前記多層フィルムが被着体の表面に接着したものである。被着体としては特に限定されるものではないが、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属部材、木質基材または非木質繊維基材等が挙げられる。
被着体として用いられる前記熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合)樹脂などが挙げられる。前記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。前記金属部材としては、例えばアルミニウム、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、鉄、クロム、銅などが挙げられる。また、成形体は、本発明の多層フィルムが、木製基材やケナフなどの非木質繊維の表面に設けられてなるものであってもよい。
[成形体の製造方法]
本発明の成形体を得る方法としては、例えば射出成形法、真空成形法、圧空成形法、圧縮成形法等が挙げられる。中でも多様な被着体に精度よく賦形及び接着できる点から真空成形及び/または圧空成形が好ましく、真空成形と圧空成形を組み合わせた真空圧空成形の一種である三次元表面加飾成形(Three dimension Overlay Method:TOM成形)がより好ましい。以下、製造方法の一例としてTOM成形による製造について詳細に説明する。
多層フィルムをTOM成形するための真空成形装置は、例えば特開2002−067137号公報に記載の真空成形装置または特開2005−262502号公報に記載の被覆装置を好適に用いることができ、該真空成形装置または該被覆装置は多層フィルム及び被着体を設置して閉塞し減圧することが可能なチャンバーボックスを備える。
TOM成形により成形体を製造する方法は、多層フィルム及び被着体をチャンバーボックスに収容する工程;前記チャンバーボックス内を減圧する工程;前記多層フィルムで前記チャンバーボックス内を二分する工程;及び前記被着体を有しない方のチャンバーボックス内の圧力を前記被着体を有する方のチャンバーボックス内の圧力よりも高くして前記被着体を前記多層フィルムで被覆する工程;を有する。なお、多層フィルム及び被着体をチャンバーボックスに収容する工程において、多層フィルムでチャンバーボックス内を二分する工程を同時に実施してもよい。
チャンバーボックス内を減圧する工程において、チャンバーボックス内の圧力は0.1〜20kPaの範囲であることが好ましく、0.1〜10kPaの範囲であることがより好ましい。圧力が20kPaよりも高いと被着体を多層フィルムで被覆する工程において正確に多層フィルムを賦形することが困難となり、圧力が0.1kPaよりも低いと成形に要する時間が増加し生産性が低下する傾向となる。
前記TOM成形による成形体の製造方法は、前記多層フィルムを加熱して軟化させる工程をさらに有することが好ましい。この工程において、多層フィルムを100〜160℃の範囲で加熱することが好ましく、110〜140℃の範囲で加熱することがより好ましい。多層フィルムの温度が100℃未満の場合、十分に多層フィルムが軟化せず成形不良となったり、成形体における多層フィルムの接着力が低下する傾向となる。一方160℃を超える場合、多層フィルムの過剰軟化や変質が生じ、成形体の品位が低下する傾向となる。なお、チャンバーボックス内を減圧する工程及び多層フィルムを加熱して軟化させる工程は同時に実施してもよい。
被着体を有しない方のチャンバーボックス内の圧力を被着体を有する方のチャンバーボックス内の圧力よりも高くして被着体を多層フィルムで被覆する工程において、被着体を有しない方のチャンバーボックス内の圧力は50〜500kPaの範囲にすることが好ましく、100〜400kPaの範囲にすることがさらに好ましい。被着体を有しない方のチャンバーボックス内の圧力が50kPaよりも低い場合、被着体を多層フィルムで被覆する工程において多層フィルムを正確に賦形することが困難となる。被着体を有しない方のチャンバーボックス内の圧力が500kPaよりも高い場合、成形体をチャンバーボックスから取り出す際に大気圧(約100kPa)とする時間が掛かり、生産性が低下する傾向となる。
被着体を有しない方のチャンバーボックス内の圧力を被着体を有する方のチャンバーボックス内の圧力よりも高くする方法としては、例えば被着体を有しない方のチャンバーボックスを大気圧に開放したり、被着体を有しない方のチャンバーボックスに圧縮空気を供給する方法などが挙げられる。圧縮空気を供給することにより、多層フィルムを被着体により密接させて成形することができ、被着体の形をさらに正確に多層フィルムへ転写することができる。
[用途]
本発明の多層フィルム及び該多層フィルムが接着した成形体は、意匠性の要求される物品に適用することができる。例えば、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板等の看板部品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイ等のディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリア等の照明部品;家具、ペンダント、ミラー等のインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根等の建築用部品、自動車内外装部材、バンパーなどの自動車外装部材等の輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、自動販売機、携帯電話、パソコン等の電子機器部品;保育器、定規、文字盤、温室、大型水槽、箱水槽、浴室部材、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、壁紙;マーキングフィルム、各種家電製品の加飾用途に好適に用いられる。
以下、実施例などにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。実施例及び比較例中の試験サンプルの作製及び各物性の測定または評価は、以下のようにして行った。
[tanδの測定方法]
実施例及び比較例で得られた熱可塑性重合体組成物をプレス成形機により200℃で成形した厚み1mmのシートを、直径25mmの円状に切り出すことで測定サンプルを作製し、回転型レオメーター「ARES」(レオメトリック・サイエンティフィック社製)を用いて、平行円板(直径25mm)で挟み、歪み:5%、昇温速度:5℃/分、測定温度:170℃〜250℃の条件で測定したときの250℃、せん断速度10(1/s)におけるtanδの値を測定した。
[秩序−無秩序転移温度(ODT)の測定方法]
製造例1〜3で得られた熱可塑性エラストマーについて、Rheometric Scientific社製 ARES粘弾性測定システムを用い、平行平板モード、振動周波数10ラジアン/秒、印加歪0.5%、昇温速度3℃/分で、150℃〜300℃の温度範囲の貯蔵弾性率G’を測定し、急激にG’の値が低下する温度を秩序−無秩序転移温度(ODT)とした。
[熱可塑性重合体組成物の表面平滑性(キャピログラフのストランド面状)]
キャピラリーレオメーター(CAPIROGRAPH 1C,TOYOSEIKI社製)に長方形(8×0.5mm)のスリット形状キャピラリーを取り付け、250℃、ピストンスピード50mm/分の条件で、実施例及び比較例で得られた熱可塑性重合体組成物を押し出し、フィルム状のストランドを得た。得られたストランドの表面を目視観察し、表面平滑性を評価した。
○:表面に凹凸が無く平滑であった
△:凹凸が小さかった
×:表面に皺状の凹凸が容易に認められた
[成形体の表面性評価]
実施例1で得られた多層フィルムを真空圧空成形機(布施真空社製NGF0406成形機)内に挿入し、板状ガラスに対して真空下で圧空する三次元表面加飾成形を行うことにより、多層フィルムが板状ガラスに接着した成形体を作製した。該成形体から評価用サンプルを取得し、表面性を評価した。評価はスタイラス形状測定器(Bruker社製Dektak―150)を用いて算術平均荒さ(Ra)を12.5μmの触針により測定した。
○:Raが0.08μm未満
×:Raが0.08μm以上
<製造例1> 熱可塑性エラストマー(a−1)
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)125.0gを仕込み、50℃に昇温した後、スチレン(1)1.12kgを加えて1時間重合させ、引き続いてイソプレン10.25kgを加えて2時間重合を行い、更にスチレン(2)1.12kgを加えて1時間重合することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン)−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン)−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、「熱可塑性エラストマー(a−1)」という。)を得た。
得られた熱可塑性エラストマー(a−1)の水素添加率は97.2%であり、スチレンブロック含有量は18.0質量%、スチレンブロックのピークトップ分子量は5,500、熱可塑性エラストマー(a−1)のピークトップ分子量は99,000、分子量分布は1.04、ポリイソプレンブロックに含まれる1,2−結合及び3,4−結合量の合計は7モル%、ODTは220℃であった。
<製造例2> 熱可塑性エラストマー(a−3)
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)94.1gを仕込み、50℃に昇温した後、スチレン(1)1.25kgを加えて1時間重合させ、次いで、この反応混合物にルイス塩基としてテトラヒドロフラン277gを加えた後、イソプレン10.00kgを加えて2時間重合を行い、さらにスチレン1.25kgを加えて1時間重合することにより、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。引き続いてイソプレン10.25kgを加えて2時間重合を行い、更にスチレン(2)1.25kgを加えて1時間重合することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン)−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン)−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、「熱可塑性エラストマー(a−3)」という。)を得た。
得られた熱可塑性エラストマー(a−3)の水素添加率は93.2%であり、スチレンブロック含有量は20.0質量%、スチレンブロックのピークトップ分子量は8,100、熱可塑性エラストマー(a−3)のピークトップ分子量は107,000、分子量分布は1.06、ポリイソプレンブロックに含まれる1,2−結合及び3,4−結合量の合計は60モル%、ODTは320℃であった。
<製造例3> 熱可塑性エラストマー(a−4)
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)40.1gを仕込み、50℃に昇温した後、スチレン(1)1.25kgを加えて1時間重合させ、引き続いてイソプレン10.00kgを加えて2時間重合を行い、更にスチレン(2)1.25kgを加えて1時間重合することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン)−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得た。この反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を前記ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン)−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(以下、「熱可塑性エラストマー(a−4)」という。)を得た。
得られた熱可塑性エラストマー(a−4)の水素添加率は98.1%であり、スチレンブロック含有量は20.0質量%、スチレンブロックのピークトップ分子量は18,500、熱可塑性エラストマー(a−4)のピークトップ分子量は275,000、分子量分布は1.05、ポリイソプレンブロックに含まれる1,2−結合及び3,4−結合量の合計は8モル%、ODTは360℃であった。
<製造例4> 多層構造体(E−1)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管及び還流冷却器を備えた反応器に、イオン交換水1050質量部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.5質量部及び炭酸ナトリウム0.7質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換した後、内温を80℃に設定した。同反応器に過硫酸カリウム0.25質量部を投入して5分間攪拌した後、メタクリル酸メチル:アクリル酸メチル:メタクリル酸アリル=94:5.8:0.2(質量比)からなる単量体混合物245質量部を50分かけて連続的に滴下し、滴下終了後、さらに30分間重合反応を行った。
次いで同反応器にペルオキソ2硫酸カリウム0.32質量部を投入して5分間攪拌した後、アクリル酸ブチル80.6質量%、スチレン17.4質量%及びメタクリル酸アリル2質量%からなる単量体混合物315質量部を60分間かけて連続的に滴下し、滴下終了後、さらに30分間重合反応を行った。
続いて同反応器にペルオキソ2硫酸カリウム0.14質量部を投入して5分間攪拌した後、メタクリル酸メチル:アクリル酸メチル=94:6(質量比)からなる単量体混合物140質量部を30分間かけて連続的に滴下し、滴下終了後、さらに60分間重合反応を行って、多層構造体(E−1)を得た。
<製造例5> メタクリル樹脂組成物(B−1)
メタクリル樹脂「パラペットEH」(MFR:1.3g/10分(230℃、37.3N)、クラレ社製)88質量部及び製造例4で得た多層構造体(E−1)12質量部を二軸押出機を用いて230℃で溶融混練した後、ストランド状に押出して切断し、メタクリル樹脂組成物(B−1)のペレットを製造した。
<実施例1>
製造例1で得た熱可塑性エラストマー(a−1)80重量部と、ポリプロピレン系樹脂(b−1)として、ウィンテック WFX4TA(ランダムポリプロピレン、日本ポリプロ社製)20重量部とを用いて、二軸押出機(KRUPP WERNER&PFLEIDERER製ZSK−25))を用いて225℃、250rpmで溶融混練した後、ストランド状に押出し、切断することによって、熱可塑性重合体組成物のペレットを製造した。
続いて、得られた熱可塑性重合体組成物のペレット及び製造例5で得たメタクリル樹脂組成物(B−1)のペレットをそれぞれL/Dが32のスクリューを有する単軸押出機(G.M.ENGINEERING社製;VGM25−28EX)のホッパーに投入し、押出温度を250℃に設定したマルチマニホールドダイを用いた共押出法により、層(A)(熱可塑性重合体組成物層)及び層(B)(メタクリル樹脂組成物層)を有する幅30cm、厚さ380μmの多層フィルムを得た。多層フィルムの各層の厚さは押出流量により制御し、層(A)の厚さを130μm、層(B)の厚さを250μmとした。
得られた多層フィルムを用いて前述した方法により三次元表面加飾成形し、成形体を作成した。
得られた熱可塑性重合体組成物及び成形体について前述した方法で評価した。結果を表1に示す。
<実施例2>
熱可塑性エラストマー(a−2)としてSIS5229(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、JSR社製)80重量部と、ポリプロピレン系樹脂(b−1)20重量部とを用いて、実施例1と同様の方法で熱可塑性重合体組成物のペレットを製造した。得られた熱可塑性重合体組成物について前述した方法で評価した。結果を表1に示す。
<実施例3>
熱可塑性エラストマー(a−1)70重量部及び製造例2で得た熱可塑性エラストマー(a−3)10重量部と、ポリプロピレン系樹脂(b−1)20重量部とを用いて、実施例1と同様の方法で熱可塑性重合体組成物のペレットを製造した。得られた熱可塑性重合体組成物について前述した方法で評価した。結果を表1に示す。
<実施例4>
製造例3で得た熱可塑性エラストマー(a−4)80重量部と、ポリプロピレン系樹脂(b−1)20重量部とを用いて、実施例1と同様の方法で熱可塑性重合体組成物のペレットを製造した。得られた熱可塑性重合体組成物について前述した方法で評価した。結果を表1に示す。
<比較例1>
熱可塑性エラストマー(a−1)10重量部及び熱可塑性エラストマー(a−3)70重量部と、ポリプロピレン系樹脂(b−1)20重量部とを用いて、実施例1と同様の方法で熱可塑性重合体組成物のペレットを製造した。得られた熱可塑性重合体組成物について前述した方法で評価した。結果を表1に示す。
実施例1は、層(A)を構成する熱可塑性重合体組成物のキャピログラフのストランド面状が平滑であった。また、該多層フィルムを用いて三次元被覆成形した成形体においても、多層フィルムの表面性が維持され、外観に優れていた。これにより、本発明の多層フィルムは、三次元被覆成形に好適であり、被着体に接着した際の表面が平滑であり、外観に優れる成形体が得られることが分かった。実施例2〜4についても同様に、層(A)を構成する熱可塑性重合体組成物のキャピログラフのストランド面状が平滑であるかまたは凹凸が小さいため、得られる多層フィルムが接着した成形体においても表面性が維持され、外観に優れると考えられる。
一方、層(A)を構成する熱可塑性重合体組成物のtanδが1未満である比較例1では、キャピログラフのストランド面状の表面に皺状のざらつきが容易に認められた。これにより三次元被覆成形後の成形体においても表面が平滑ではなく、外観に劣ると考えられる。

Claims (7)

  1. 少なくとも層(A)及び層(B)を有する多層フィルムであって、層(A)が、芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(a1)及び共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(a2)を含有するブロック共重合体またはその水素添加物である熱可塑性エラストマー(a)100質量部に対してポリプロピレン系樹脂(b)1〜50質量部を含有する熱可塑性重合体組成物から構成され、該熱可塑性重合体組成物の動的粘弾性測定により周波数1Hz、温度250℃で測定した損失正接(tanδ)が1.0以上であり、層(B)が(メタ)アクリル系樹脂により構成される、多層フィルム。
  2. 前記熱可塑性エラストマー(a)の秩序−無秩序転移温度(ODT)が300℃以下である、請求項1に記載の多層フィルム。
  3. 前記熱可塑性重合体組成物が(メタ)アクリル系樹脂を含まないものである、請求項1または2に記載の多層フィルム。
  4. 成形温度240〜260℃で共押出成形法により製造される、請求項1〜3のいずれかに記載の多層フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の多層フィルムが被着体の表面に接着した成形体。
  6. 前記多層フィルムを真空成形及び/または圧空成形を用いて被着体に接着させることを特徴とする請求項5に記載の成形体の製造方法。
  7. 前記多層フィルムを100〜160℃の範囲で加熱して軟化させる工程をさらに有する、請求項6に記載の成形体の製造方法。

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