以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお本件明細書に添付する図面では、図示及び理解を容易にするために便宜的に、各要素の縮尺及び寸法比等が、実物の縮尺及び寸法比等から誇張及び変更されている。また本明細書において、「板」、「シート」及び「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されるものではない。例えば「板」という用語は、シートやフィルムと呼ばれうるような部材も含む概念である。また、本明細書において用いられる形状、幾何学的条件、及びそれらの程度を特定する用語(例えば「平行」、「直交」及び「同一」等の用語や長さや角度の値等)は、厳密な意味に縛られず、実質的に同等及び同様の機能を期待しうる程度の範囲を意味しうるものとして解釈される。
図1は、調光システム5の一例を示す概念図である。
本例の調光セル10は、後述のように液晶分子を含んだ液晶材料からなる層を有し、光の遮断及び透過を切り換えたり光の透過度(透過率)を変えたりすることができる。調光セル10の適用対象は特に限定されず、典型的には窓及びドア等に対して調光セル10を適用できる。とりわけ、後述の柱状のスペーサーは、位置固定性能に優れており、振動等の外力によって位置が変動しにくい。したがって、後述の柱状スペーサーを有する調光セル10は、振動等の外力が加えられる環境下でも好適に使用可能であり、例えば家に設置される窓(例えば天窓)等に対しても適用されうる。
調光セル10は調光コントローラ12に接続され、調光コントローラ12にはセンサ装置14及びユーザ操作部16が接続される。調光コントローラ12は、調光セル10の調光状態を制御し、調光セル10による光の遮断及び透過を切り換えたり、調光セル10における光の透過度を変えたりすることができる。具体的には、調光コントローラ12は、調光セル10の液晶層に印加する電界を調整して液晶層中の液晶分子の配向を変えることで、調光セル10による光の遮断及び透過を切り換えたり、光の透過度を変えたりすることができる。
調光コントローラ12は、任意の手法に基づいて液晶層に印加する電界を調整できる。例えばセンサ装置14の測定結果やユーザ操作部16を介してユーザにより入力される指示(コマンド)に応じて、調光コントローラ12は、液晶層に印加する電界を調整し、調光セル10による光の遮断及び透過を切り換えたり、光の透過度を変えたりすることができる。したがって調光コントローラ12は、液晶層に印加する電界を、センサ装置14の測定結果に応じて自動的に調整してもよいし、ユーザ操作部16を介したユーザの指示に応じて手動的に調整してもよい。なおセンサ装置14による測定対象は特に限定されず、例えば使用環境の明るさを測定してもよく、この場合、調光セル10による光の遮断及び透過の切り換えや光の透過度の変更が使用環境の明るさに応じて行われる。また調光コントローラ12には、必ずしもセンサ装置14及びユーザ操作部16の両方が接続されている必要はなく、センサ装置14及びユーザ操作部16のうちのいずれか一方のみが接続されていてもよい。
図2は、調光セル10の断面の一例を示す図である。
本例の調光セル10は、一対の偏光板(第1偏光板21及び第2偏光板22)と、一対の偏光板間に配置される一対の透明電極(第1透明電極25及び第2透明電極26)と、一対の透明電極間に配置される一対の配向膜(第1配向膜27及び第2配向膜28)とを備える。また本例では、一対の偏光板(第1偏光板21及び第2偏光板22)間であって一対の透明電極(第1透明電極25及び第2透明電極26)の外側に、一対のフィルム基材(第1フィルム基材23及び第2フィルム基材24)が配置される。すなわち、一対の透明電極(第1透明電極25及び第2透明電極26)が一対のフィルム基材(第1フィルム基材23及び第2フィルム基材24)間に配置され、一対の偏光板(第1偏光板21及び第2偏光板22)が一対のフィルム基材(第1フィルム基材23及び第2フィルム基材24)の外側に配置される。
さらに本例では、一対の配向膜の少なくともいずれか一方(本例では第1配向膜27)を支持し、一対の配向膜の少なくともいずれか一方(本例では第1配向膜27)と二次元的に接触する、すなわち面接触する複数の柱状のスペーサー30が設けられる。また一対の配向膜(第1配向膜27及び第2配向膜28)間において、複数のスペーサー30間に液晶層29が充填配置される。
なお複数のスペーサー30は、少なくとも「第1配向膜27と液晶層29との間の境界面Sb2」と「第2配向膜28と液晶層29との間の境界面Sb1」との間に延在していればよい。したがって例えば、第1配向膜27と第2配向膜28との間にのみ複数のスペーサー30が配置されてもよい。また図2において符号「30a」で示すように、第2透明電極26(図2に示す例では「第2透明電極26と第2配向膜28との間の境界面Sb3」)から第2配向膜28及び液晶層29を貫通して第1配向膜27に接するように複数のスペーサーが設けられてもよい。なお第1配向膜27と第2配向膜28との間においてのみスペーサー30が設けられる場合にも、図2の符号30aによって示されるスペーサーが設けられる場合にも、本発明を同様に適用できる。
第1偏光板21及び第2偏光板22は、それぞれ固有の偏光軸及び吸収軸を有し、ある特定の方向に偏光した光のみを通過させる。例えば、第2偏光板22から第1偏光板21に向かう方向(図2の矢印「L」参照)に進行する光が調光セル10に入射する場合、当該光のうち第2偏光板22の偏光軸と同じ方向に偏光した光のみが第2偏光板22を通過して第2フィルム基材24に進入し、また第1フィルム基材23から第1偏光板21に向かって進行する光のうち第1偏光板21の偏光軸と同じ方向に偏光した光のみが第1偏光板21を通過し外部に向かって進行する。第1偏光板21及び第2偏光板22の配置形態は特に限定されず、液晶層29に含まれる液晶分子の配向状態と関連して第1偏光板21及び第2偏光板22の配置形態は決定される。代表的には、偏光軸が互いに直交するように第1偏光板21及び第2偏光板22が配置される「クロスニコル」と呼ばれる状態、或いは偏光軸が互いに平行になるように第1偏光板21及び第2偏光板22が配置される「パラレルニコル」と呼ばれる状態がある。
例えば、調光セル10の剛性を向上させたい場合には、剛性に優れた透明部材によって第1フィルム基材23及び第2フィルム基材24が構成される。また、柔軟性に富んだフィルム状の第1フィルム基材23及び第2フィルム基材24を使用することで、ガラス基材を用いる場合では難しかった「曲面への調光セル10の貼り合わせ」が容易になる。
第1透明電極25及び第2透明電極26は、調光コントローラ12(図1参照)によって電圧が印加されることで、液晶層29に所望の電界を印加する。第1透明電極25及び第2透明電極26を構成する部材や、第1透明電極25及び第2透明電極26の配置形態は特に限定されない。例えば酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)等の可視光透過率及び導電性に優れた部材によって、第1透明電極25及び第2透明電極26を構成できる。
第1配向膜27及び第2配向膜28は、液晶層29に含まれる液晶分子群を所望方向に配向させるための部材である。第1配向膜27及び第2配向膜28による液晶層29の配向方式は特に限定されないが、本例では、分子配列(分子配向)が90度捩れたTN(Twisted Nematic)型液晶が使われる。なお、第1配向膜27及び第2配向膜28の配向機能の付与方式は特に限定されず、例えばナイロンなどの部材を用いたラビングにより第1配向膜27及び第2配向膜28の配向方向を規定してもよいし、直線偏光紫外線の照射により第1配向膜27及び第2配向膜28の配向方向を規定してもよい。
複数のスペーサー30の各々は、一対の配向膜の少なくともいずれか一方(本例では第1配向膜27)と面で接触し、一対の配向膜の一方(本例では第2配向膜28)から他方(本例では第1配向膜27)に向かって先細りするテーパー形状を有する。本例では、複数のスペーサー30の各々は、一対の配向膜の一方(本例では第1配向膜27)と接触する平坦状の第1底部31と、第1底部31と対向する第2底部32とを有する。なお図2では、便宜的に第2配向膜28と液晶層29との境界面Sb1上の各スペーサー30の部分を第2底部32として示しているが、符号「30a」で示されるように各スペーサー30が第2配向膜28と第2透明電極26との境界面Sb3から延在している場合には、第2配向膜28と第2透明電極26との境界面Sb3上の各スペーサー30の部分を第2底部32とみなしてもよい。
図2に示すスペーサー30は、第2配向膜28からの距離に応じて径が線形に変化し、側面の角度がほぼ一定の円錐台形状を有するが、これに限定されない。スペーサー30は、第2配向膜28からの距離に応じて径が非線形に変化してもよく、例えば第2配向膜28からの距離に対して径が指数関数的に変わってもよいし、第2配向膜28からの距離の平方根に比例して径が変わってもよい。また図2示す例では、スペーサー30は、第2配向膜28から第1配向膜27に向かって先細りするテーパー形状(順テーパー形状)であるが、第1配向膜27から第2配向膜28に向かって先細りするテーパー形状(逆テーパー形状)であってもよい。
なお、スペーサーとしての機能を確保しつつ液晶層29の所望配向を実現する観点からは、複数のスペーサー30の各々のテーパー角度θは75°以上85°以下の範囲にあることが好ましい。
図3は、各スペーサー30のテーパー角度θを説明するための図である。ここでいう各スペーサー30のテーパー角度θは、各スペーサー30の断面において、積層方向に関し、各スペーサー30の両端部間(図3では、各スペーサー30の最も上側の位置(第1底部31)と最も下側の位置(第2底部32)との間)の距離の3分の1(1/3)だけ、各スペーサー30の最も下側の位置から離間した位置における各スペーサー30の側部Lpの接線Ltが、積層方向と垂直を成す水平方向へ延びるラインHとの間で成す角度によって表される。すなわち、各スペーサー30の側面のうち、積層方向に関する各スペーサー30の全長の3分の1に相当する距離だけ第2底部32から離間した箇所Lpの接線Ltと、水平方向へ延びるラインHとの間で形成される角度によって、各スペーサー30のテーパー角度θが表される。
また本実施形態では、複数のスペーサー30のうちの少なくとも一部は、最も距離が近い他のスペーサー30までの距離が一定ではない。すなわち図2に示す例において、「中央のスペーサー30と左側のスペーサー30との間の距離(間隔)D1」と「中央のスペーサー30と右側のスペーサー30との間の距離D2」とは「D1≠D2」の関係を満たす。
「最も距離が近い他のスペーサー30までの距離」を示すスペーサー30間の距離は、典型的にはスペーサー30間の最短距離によって表される。例えば図2に示す順テーパー形状のスペーサー30(すなわち第1底部31のサイズ<第2底部32のサイズ)の場合、第2底部32間の距離によって「スペーサー30間の距離」が表される。一方、逆テーパー形状のスペーサー30(すなわち第1底部31のサイズ>第2底部32のサイズ)の場合には、第1底部31間の距離によって「スペーサー30間の距離」が表される。
図4は、スペーサー30が規則的に配置される場合における回折光の干渉の影響を説明するための図である。なお図4では、光の進行方向L及び当該進行方向Lと直交する方向の2方向に関して二次元的に複数のスペーサー30が配置されるケースが示されているが、光の進行方向Lと直交する方向に一次元的にスペーサー30が配置されるケースにおいても、同様の影響がもたらされる。
図4に示すようにスペーサー30が規則的に配置され隣接するスペーサー30間の距離(とりわけ光の進行方向Lと直交する方向に関する距離)が一定の場合、回折光の干渉が周期的に生じ、視認可能な光の領域が拡大される。そのため点光源からの光を想定した場合、隣接するスペーサー30間の距離が一定だと、回折光同士が一定周期で強めあうため、回折光の干渉の影響が大きくなり、点光源からの光が大きくぼやけた状態で見えてしまう。
図5は、スペーサー30が不規則的(ランダム)に配置される場合における回折光の干渉の影響を説明するための図である。なお図5では、光の進行方向L及び当該進行方向Lと直交する方向の2方向に関して二次元的に複数のスペーサー30が配置されるケースが示されているが、光の進行方向Lと直交する方向に一次元的にスペーサー30が配置されるケースにおいても、同様の影響がもたらされる。
図5に示すようにスペーサー30が不規則的に配置され隣接するスペーサー30間の距離(とりわけ光の進行方向Lと直交する方向に関する距離)が一定ではない場合、回折光の干渉が周期的には生じず、視認可能な光の領域は変わらない。そのため点光源からの光を想定した場合、隣接するスペーサー30間の距離が不均一だと、回折光の干渉地帯がランダムになり、回折光の干渉の影響が視認できない程度の光強度となって具現されるため、点光源からの光を本来の大きさで見ることができる。
したがって、本実施形態に係る「複数のスペーサー30のうちの少なくとも一部は、最も距離が近い他のスペーサー30までの距離が一定ではない」調光セル10を用いることによって、複数のスペーサー30による回折光の干渉の影響を低減して視認性に優れた観察光をもたらすことができる。
「最も距離が近い他のスペーサー30までの距離が一定ではない複数のスペーサー30」の具体的な位置の決め方は特に限定されず、任意の手法に基づいて適宜決定されうる。例えばボロノイ図の母点を定める手法に倣って、複数のスペーサー30の具体的な位置が決められてもよい。また例えば、相互に隣接する二つのスペーサー30の間の距離の最大値及び最小値を定めて拘束条件として使用することで、複数のスペーサー30の具体的な位置が決められてもよい。
なお、調光セル10に設けられる全てのスペーサー30が「最も距離が近い他のスペーサー30までの距離が一定ではない」という条件を満たす必要はなく、一部のスペーサー30のみが「最も距離が近い他のスペーサー30までの距離が一定ではない」という条件を満たす場合にも、回折光の干渉の影響を低減して視認性に優れた観察光をもたらすことが可能である。
また、調光セル10に設けられる全てのスペーサー30が相互に関連性なくランダムに配置されてもよいが、所定の相対的な位置関係で配置される複数のスペーサー30(3以上のスペーサー30)によって構成される単位パターンが繰り返し配置されることで、調光セル10に設けられる複数のスペーサー30が構成されてもよい。
図6は、スペーサー30の配置例(変形例)の概念を示す平面図である。図6に示す例では、所定の単位パターンエリア50に含まれる複数のスペーサー30(単位パターン34)に関しては「最も距離が近い他のスペーサー30までの距離が一定ではない」という条件が満たされる。そして、単位パターンエリア50に含まれる複数のスペーサー30(単位パターン34)が繰り返し配置されることで、調光セル10に設けられる複数のスペーサー30が構成されている。なお単位パターンエリア50の形状及び大きさは特に限定されないが、スペーサー30が設けられる全体エリアに応じて定められる矩形状のエリアを単位パターンエリア50として定めることが好ましく、例えば10mm四方の正方形エリアを単位パターンエリア50として定めることも可能である。また、単位パターンエリア50に含まれるスペーサー30の具体的な数及び配置も、特に限定されない。
このように単位パターンエリア50に含まれる複数のスペーサー30(単位パターン34)を繰り返し配置することによって、各スペーサー30による回折光の干渉の影響が効果的に低減しつつ、多数のスペーサー30を簡便に設けることができる。したがって本変形例は、例えばスペーサー30が設けられるエリアが広範な場合に好適である。
なお本実施形態に係るスペーサー30は、上述のように柱状形状を有しており、位置固定性に優れるだけではなく、光の配向性にも優れる。
図7は、液晶層29及びスペーサー30の拡大断面形状を示し、(a)は球状のスペーサー30を示し、(b)は図2に示す柱状(円錐台形状)のスペーサー30を示す。一般に、スペーサー30は液晶層29の配向性に影響を及ぼすため、スペーサー30の近傍において液晶層29の配向が乱される傾向がある。したがって、図7(a)及び(b)において符号「35」で示されるスペーサー30の近傍領域が液晶層29の配向性に関する不安定エリアとなり、当該不安定エリア35を通過する光は意図しない方向に偏光されることがある。球状のスペーサー30(図7(a)参照)と柱状のスペーサー30(図7(b)参照)とを比較すると、一般に、球状のスペーサー30よりも柱状のスペーサー30の方が不安定エリア35の影響(図7(a)及び(b)における符号「S」参照)が小さい。すなわち不安定エリア35はスペーサー30の表面形状に応じて定まり、「(光の進行方向と同じ方向の接線を持つ)球状のスペーサー30」の方が「(光の進行方向と同じ方向の接線を持たない)テーパー形状の柱状のスペーサー30」よりも「光が不安定エリア35を通過する範囲(図7(a)及び(b)の符号「S」参照)」が大きくなる傾向がある。
このように位置固定性及び光の配向性に優れる柱状のスペーサー30によれば、振動等の外力が加わる環境下であっても、配向膜(第1配向膜27及び第2配向膜28)間のスペースの確保というスペーサー本来の機能を精度良く果たすことができるだけではなく、液晶層29を通過する光の偏光状態を精度良く制御することができる。したがって、例えば窓(例えば家の天窓)等において上述の本実施形態に係る調光セル10(スペーサー30(図7参照))を好適に使用することができる。特に、家の天窓等は設計上必ずしも平面構造とはならず、湾曲構造であることが求められることもある。そのような場合であっても上述の本実施形態に係る調光セル10(スペーサー30)によれば、一対の偏光板(第1偏光板21及び第2偏光板22)のうちの少なくともいずれか一方の全部又は一部を湾曲させることも可能であり、他の部材(図2の符号「23」〜「30」参照)を湾曲させることも可能であり、調光セル10全体を湾曲させることも可能である。
<他の構成例>
調光セル10の具体的な構成は上述の例に限定されず、一対のフィルム基材(第1フィルム基材23及び第2フィルム基材24)、一対の透明電極(第1透明電極25及び第2透明電極26)、一対の配向膜(第1配向膜27及び第2配向膜28)、複数のスペーサー30及び液晶層29を備える他の調光セル10に対しても本発明を適用可能である。
図8は、調光セル10の断面の他の例を示す図である。本例の複数のスペーサー30の各々は、多層構造(本例では2層構造)を有し、第2配向膜28及び液晶層29を貫通するように設けられる。
すなわち各スペーサー30は、円錐台状のコア部40と、当該コア部40の少なくとも一部を覆う被覆部41と含み、一対の配向膜のうちの一方(本例では第2配向膜28)及び液晶層29を貫通する。本例の被覆部41は、図8に示すように、コア部40の第1配向膜27側の上面(上底面)とコア部40の側面(外側面)とを覆い、コア部40と第1配向膜27との間、コア部40と液晶層29との間及びコア部40と第2配向膜28との間に介在する。なお本例の被覆部41は、第2配向膜28と同じ部材によって構成され、第2配向膜28と一体的に形成されている。したがって「コア部40と第2配向膜28との間に介在する被覆部41(図10の点線部参照)」は実質的には第2配向膜28の一部を構成し、実際には被覆部41と第2配向膜28との間に境界面は存在しない。一方、コア部40の第2透明電極26側の下面(下底面)は第2透明電極26に接触し、コア部40と第2透明電極26との間には被覆部41が介在しない。
したがって本例の各スペーサー30は、一対の配向膜のうちの他方(本例では第1配向膜27)と二次元的に接触する第1支持面42と、一対の透明電極のうちの一方(本例では第2透明電極26)と二次元的に接触する第2支持面43とを有する。第1支持面42は、被覆部41によって形成され、上述の第1底部31を構成する。また第2支持面43は、コア部40及び被覆部41(第2配向膜28と一体的に構成される被覆部41)によって形成され、上述の第2底部32を構成する。なお本例では、コア部40及び被覆部41によってスペーサー30の第2支持面43(第2底部32)が形成されており、第2支持面43の一部のみがコア部40によって形成されるが、第2支持面43の全部がコア部40によって形成されてもよい。
他の構成は、図2に示す調光セル10と同様であり、図2に示す調光セル10と同一又は類似の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本例の調光セル10によれば、後述のフォトリソグラフィ技術に基づいてスペーサー30を高精度且つ簡単に形成することができる。特に、各スペーサー30の被覆部41を第2配向膜28と同じ部材によって構成し、第1配向膜27と第2配向膜28とを同じ部材によって構成することで、被覆部41(第1支持面42)と第1配向膜27とを同じ部材によって構成することができる。
また第2配向膜28及び液晶層29を貫通するように各スペーサー30を設けることによって、位置固定性に優れたスペーサー30を提供することができる。すなわち、各スペーサー30は第2配向膜28によっても支持され、外力等によって各スペーサー30が移動してしまうことを効果的に防ぐことができる。なお図中では、第1配向膜27及び第2配向膜28が液晶層29と同程度の厚みを有するように図示されているが、実際の第1配向膜27及び第2配向膜28は非常に薄く形成される。
また各スペーサー30を多層構造とすることで、各スペーサー30に多様な特性を簡単に持たせることができる。例えば、剛性に優れた部材によって各スペーサー30のコア部40を構成しつつ、液晶層29に対する影響が小さい部材によって被覆部41を構成することで、高い耐力性能を確保しつつ表面特性に優れたスペーサー30を実現できる。なお、上述の例では各スペーサー30が2層構造を有するが、3以上の層によって各スペーサー30が構成されてもよい。
本例においても、スペーサー30間の距離を一定にしないことで、各スペーサー30による回折光同士の干渉に周期性がなくなり、複数のスペーサー30による回折光の干渉の影響を低減して視認性に優れた観察光をもたらすことができる。
<ゲストホスト液晶>
本発明は、ゲスト・ホスト型の液晶を用いる調光セル10にも適用可能である。すなわち、液晶層29は、二色性色素(ゲスト)及び液晶(ホスト)を含んでいてもよい。液晶層29が含有する二色性色素は、遮光性を有し、所望の可視光を遮断(吸収)可能な着色材であることが好ましい。
本発明を適用可能なゲスト・ホスト型の液晶を用いた調光セル10の具体的な構成は特に限定されない。例えば、一対の偏光板(図2の第1偏光板21及び第2偏光板22参照)を設ける代わりに、後述の図9及び図10に示すように1つの偏光板のみが設けられてもよいし、後述の図11及び図12に示すように偏光板が設けられなくてもよい。以下に、ゲスト・ホスト型の液晶を用いた調光セル10の典型例について説明する。
図9は、ゲスト・ホスト型の液晶を用いる調光セル10の一例(遮光状態)を説明するための概念図であり、図9(a)は調光セル10の断面図であり、図9(b)は吸収軸方向が矢印「A」で示された第1偏光板21の平面図である。図10は、図9と同じ調光セル10(光透過状態)を説明するための概念図であり、図10(a)は調光セル10の断面図であり、図10(b)は吸収軸方向が矢印「A」で示された第1偏光板21の平面図である。なお、第1偏光板21の吸収軸と偏光軸(光透過軸)とは互いに垂直な方向に延在する。
本例の調光セル10は図2に示す調光セル10と基本的に同様の構成を有する。すなわち図9及び図10に示す調光セル10も、図2に示す調光セル10と同様に、一対のフィルム基材(第1フィルム基材23及び第2フィルム基材24)と、一対のフィルム基材間に配置される一対の透明電極(第1透明電極25及び第2透明電極26)と、一対の透明電極間に配置される一対の配向膜(第1配向膜27及び第2配向膜28)と、一対の配向膜の少なくともいずれか一方を支持し、一対の配向膜の少なくともいずれか一方と二次元的に接触する複数のスペーサー30と、一対の配向膜間において複数のスペーサー30間に配置される液晶層29と、を備え、複数のスペーサー30のうちの少なくとも一部は、最も距離が近い他のスペーサー30までの距離が一定ではない。ただし、図9及び図10に示す調光セル10では、一対のフィルム基材のうちのいずれか一方(本例では第1フィルム基材23)を介して一対の透明電極とは反対側において偏光板が1つ(本例では第1偏光板21)のみ設けられる。また液晶層29が二色性色素(染料)51及び液晶52を含むゲスト・ホスト型液晶によって構成されている。
二色性色素51は、液晶52中に分散状態で存在し、液晶52と同様の配向を持ち、基本的には液晶52と同じ向きに並ぶ。
本例では、一対の透明電極(第1透明電極25及び第2透明電極26)間の電圧がOFFの場合には、二色性色素51及び液晶52が、光の進行方向L(すなわち調光セル10の積層方向)と垂直を成す水平方向(特に第1偏光板21の吸収軸方向Aとは垂直な方向(すなわち第1偏光板21の偏光軸と同じ方向))に並ぶ(図9(a)参照)。一方、一対の透明電極(第1透明電極25及び第2透明電極26)間の電圧がONの場合には二色性色素51及び液晶52が垂直方向(すなわち光の進行方向L)に並ぶ(図10(a)参照)。なお図9(a)及び図10(a)では、二色性色素51及び液晶52の配向方向を示すために、二色性色素51及び液晶52が概念的に図示されている。
例えば、調光コントローラ12(図1参照)によって第1透明電極25及び第2透明電極26に電圧が印加されていない場合には、液晶層29に所望の電界が印加されず、二色性色素51及び液晶52は水平方向に並ぶ(図9(a)参照)。この場合、第1偏光板21の吸収軸方向Aと直交する方向に振動する光は二色性色素51によって遮光され、他の方向に振動する光は第1偏光板21によって遮光される。したがって、第2フィルム基材24から第1偏光板21に向かう方向(矢印「L」参照)へ進行する光は、二色性色素51及び第1偏光板21によって遮光される。
なお、上述の図2に示す調光セル10と同様に、本例のスペーサー30も不規則的に配置され、隣接するスペーサー30間の距離(とりわけ光の進行方向Lと直交する方向に関する距離)が一定ではない。そのため、各スペーサー30による回折光の干渉が周期的には生じず、複数のスペーサー30による回折光の干渉の影響を低減して視認性に優れた観察光をもたらすことができる。
一方、調光コントローラ12(図1参照)によって第1透明電極25及び第2透明電極26に電圧が印加される場合には、液晶層29に所望の電界が印加され、二色性色素51及び液晶52は垂直方向に並ぶ(図10(a)参照)。この場合、液晶層29を通過する光に対する二色性色素51の遮光性能は光の振動方向によらずあまり発揮されず、液晶層29に進入した光は高い確率で液晶層29(二色性色素51及び液晶52)を通過する。また、第1偏光板21の偏光軸(光透過軸)と平行に振動する光(本例では第1偏光板21の吸収軸方向Aと垂直を成す方向に振動する光)は第1偏光板21を通過して調光セル10から出射する。
上述のように図9及び図10に示すゲスト・ホスト型の液晶層29を使う場合にも、第1透明電極25及び第2透明電極26に印加する電圧を制御することで、調光セル10の透光性を適宜変えることができる。
なお、本例の調光セル10のその他の構成は、図2に示す調光セル10と同様としうる。例えば各スペーサー30は、光硬化性樹脂によって構成され、一対の配向膜の一方(例えば第1配向膜27)と接触する平坦状の第1底部31と、当該第1底部31と対向する第2底部32とを有し、テーパー形状(例えば75°以上85°以下の範囲のテーパー角度)を有することができる。また所定の相対的な位置関係で配置される3以上のスペーサー30によって構成される単位パターン(図6の符号「50」参照)が繰り返し配置されることで、複数のスペーサー30が構成されてもよい。また一対のフィルム基材(第1フィルム基材23及び第2フィルム基材24)のうちの少なくともいずれか一方は、全部又は一部が湾曲していてもよい。また各スペーサー30は、コア部40と、コア部40の少なくとも一部を覆う被覆部41とを含み、一対の配向膜のうちの一方(例えば第2配向膜28)及び液晶層29を貫通し、一対の配向膜のうちの他方(例えば第1配向膜27)と二次元的に接触する第1支持面42と、一対の電極のうちの一方(例えば第2透明電極26)と二次元的に接触する第2支持面43とを有し、第1支持面42は被覆部41によって形成され、第2支持面43の少なくとも一部はコア部40によって形成されてもよい。
なお図9及び図10に示す調光セル10に関し、上述では、いわゆるノーマリーブラック型の配向膜27、28及び液晶層29が用いられる場合を説明したが、いわゆるノーマリーホワイト型の配向膜27、28及び液晶層29が用いられてもよい。すなわち、ノーマリーブラックの場合には、上述のように、電極25、26間に電圧を印加して液晶層29に電界を作用させた際に二色性色素51及び液晶52を垂直方向へ配向させる必要あるため、配向膜27、28として水平配向膜が用いられ、液晶層29にはポジ型液晶が用いられる。一方、ノーマリーホワイトの場合には、電極25、26間に電圧を印加して液晶層29に電界を作用させた際に二色性色素51及び液晶52を図9(a)に示すように水平方向へ配向させる必要あるため、配向膜27、28として垂直配向膜が用いられ、液晶層29にはネガ型液晶が用いられる。スペーサー30を不規則的に配置することでスペーサー30による回折光の影響を低減することができるという上述の作用効果は、ノーマリーブラック型のゲストホスト液晶を用いる調光セル10においてだけではなく、ノーマリーホワイト型のゲストホスト液晶を用いる調光セル10においても有効である。
図11は、ゲスト・ホスト型の液晶を用いる調光セル10の他の例(遮光状態)を説明するための概念図であり、調光セル10の断面を示す。図12は、図11と同じ調光セル10(光透過状態)を説明するための概念図であり、調光セル10の断面を示す。
本例の調光セル10は図2に示す調光セル10と基本的に同様の構成を有するが、偏光板(第1偏光板21及び第2偏光板22)が設けられておらず、液晶層29が二色性色素(染料)51及び液晶52を含むゲスト・ホスト型である。すなわち、二色性色素51は、液晶52中に分散状態で存在し、液晶52と同様の配向を持ち、基本的には液晶52と同じ向きに並ぶ。
本例において一対の透明電極(第1透明電極25及び第2透明電極26)間の電圧がOFFの場合には二色性色素51及び液晶52が水平方向(すなわち光の進行方向Lと垂直を成す方向)に並ぶ(図11参照)。特に本例の二色性色素51及び液晶52の配向は、電界が印加されていない状態で水平方向に関して180度以上捩られ、あらゆる水平方向に二色性色素51が向けられることが好ましい。一方、一対の透明電極(第1透明電極25及び第2透明電極26)間の電圧がONの場合には二色性色素51及び液晶52が垂直方向(すなわち光の進行方向L)に並ぶ(図12参照)。なお図11及び図12では、二色性色素51及び液晶52の配向方向を示すために、二色性色素51及び液晶52が概念的に図示されている。
例えば、調光コントローラ12(図1参照)によって第1透明電極25及び第2透明電極26に電圧が印加されていない場合には、液晶層29に所望の電界が印加されず、二色性色素51及び液晶52は水平方向に並ぶ(図11参照)。これにより、液晶層29に進入した光が、二色性色素51によって遮光(吸収)される。なお、上述の図2に示す調光セル10と同様に、本例のスペーサー30も不規則的に配置され、隣接するスペーサー30間の距離(とりわけ光の進行方向Lと直交する方向に関する距離)が一定ではない。そのため、各スペーサー30による回折光の干渉が周期的には生じず、複数のスペーサー30による回折光の干渉の影響を低減して視認性に優れた観察光をもたらすことができる。
一方、調光コントローラ12(図1参照)によって第1透明電極25及び第2透明電極26に電圧が印加される場合には、液晶層29に所望の電界が印加され、二色性色素51及び液晶52は垂直方向に並ぶ(図12参照)。この場合、液晶層29を通過する光に対する二色性色素51の遮光性能は光の振動方向によらずあまり発揮されず、液晶層29に進入した光は高い確率で液晶層29(二色性色素51及び液晶52)を通過する。また本例では偏光板が設けられていないため、液晶層29を通過して第1フィルム基材23から出射する光の全てが、調光セル10から出射される。
上述のように図11及び図12に示すゲスト・ホスト型の液晶層29を使う場合にも、第1透明電極25及び第2透明電極26に印加する電圧を制御することで、調光セル10の透光性を変えることができる。
なお図11及び図12に示す調光セル10に関し、上述では、配向膜27、28として水平配向膜を用いるとともに液晶層29にポジ型液晶を用いたノーマリーブラック型のゲスト・ホスト型調光セル10について説明したが、ノーマリーホワイト型のゲスト・ホスト型調光セル10が使用されてもよい。すなわち、配向膜27、28として垂直配向膜を用いるとともに液晶層29にネガ型液晶を用いて、電極25、26間に電圧を印加して液晶層29に電界を作用させた際に二色性色素51及び液晶52を図11に示すように水平方向へ配向させてもよい。このノーマリーホワイト型のゲストホスト液晶を用いる調光セル10においても、スペーサー30を不規則的に配置することで、スペーサー30による回折光の影響を低減することができるという上述の作用効果が奏される。
<調光セル10の製造方法>
本実施形態に係る調光セル10を製造する方法は特に限定されず、任意の貼り合わせ技術やフォトリソグラフィ技術等を使って調光セル10を製造することができる。特にテーパー形状の柱状のスペーサー30は、フォトリソグラフィ技術によって好適に製造可能である。フォトリソグラフィ技術に基づいて各スペーサー30を形成する場合、各スペーサー30の配置に応じて定められるパターンが形成されたマスクを使用して、レジストに対する光照射(露光工程)が行われる。なおマスクにおいて上記のパターンを形成する手法は特に限定されず、例えば正方格子のパターンを基準とし、各格子点(各スペーサー30の配置点)のX−Y座標を任意の手法でずらすことで格子点全体(スペーサー30全体)をランダム配置とすることができる。
本件発明者は、各スペーサー30の配置を決定するために正方格子の各格子点のずらし範囲を変えて、ずらし範囲の異なる複数種類の「スペーサー30群」の各々に関して光の回折状態を観察した。具体的には、図13に示すように、正方格子において各格子点(すなわち「注目格子点L1(注目スペーサー30)」)を中心とした対角線上に配置される4つの格子点(すなわち「対角格子点L2(対角スペーサー30))によって形成される正方形の一辺を「対角ピッチP」とする。注目格子点L1(注目スペーサー30)のX−Y座標に関するずらし範囲の限界Rを、この対角ピッチPの10%〜50%の大きさに制限し、乱数を使って注目格子点L1(注目スペーサー30)の配置をランダムにずらした。ここでいう「注目スペーサー30」は全スペーサー30のうちの特定のスペーサー30のみを指すのではなく、全てのスペーサー30の各々がここでいう「注目スペーサー30」として扱われる。すなわち、各スペーサー30に割り当てられる対角格子点L2(対角スペーサー30)の位置に基づいて各スペーサー30の配置を上述のようにして決めることで、全てのスペーサー30の配置がランダムにずらされる。このように「対角格子点L2の位置に基づいて注目スペーサー30の配置をずらす手法」を用いて全てのスペーサー30の配置をずらすことで、スペーサー30全体をランダム配置とすることができる。その結果、「各スペーサー30のX−Y座標に関するずらし範囲の限界Rの一辺の長さが対角ピッチPの10%以上30%未満の範囲」では回折現象が多少目立ったが、「各スペーサー30のX−Y座標に関するずらし範囲の限界Rの一辺の長さが対角ピッチPの30%以上50%以下の範囲」では回折現象がほとんど目立たず、良好な結果が得られた。
例えば、スペーサー30を構成する感光性樹脂(光硬化性樹脂)を第2透明電極26上にコートし、フォトリソグラフィ技術によって当該感光性樹脂からテーパー形状のスペーサー30を形成し、その後、第2透明電極26上に第2配向膜28を形成し、当該第2配向膜28に対してラビング等によって配向規制力を付与する処理を行ってもよい。この場合、スペーサー30が形成された状態で第2配向膜28に対する配向付与処理が行われる。なお、各スペーサー30のうち第1配向膜27側の底部(第1底部31)が第2配向膜28側の底部(第2底部32)よりも大きい「逆テーパー形状のスペーサー30」が形成された状態で第2配向膜28に対する配向付与処理が行われると、スペーサー30の近傍における第2配向膜28に対して十分な配向性を付与することが難しい場合がある。したがって、第2配向膜28に対する配向性付与の観点からは、各スペーサー30のうち第1配向膜27側の底部(第1底部31)が第2配向膜28側の底部(第2底部32)よりも小さい「順テーパー形状のスペーサー30」が好ましい。
次に、具体例について説明する。
<具体例1(比較例)>
本例の調光セル10は、液晶を利用して透過光を制御する調光セル10である。液晶配向層用フィルム(第1配向膜27及び第2配向膜28)により液晶層29を挟み込んで液晶セルが作製され、この液晶セルをパラレルニコルの状態で配置される直線偏光板(第1偏光板21及び第2偏光板22)により挟み込むことで本例の調光セル10を作製した。
具体的には、本例の調光セル10は、図2に示す調光セル10と同じ層構造(すなわち第1偏光板21、第2偏光板22、第1フィルム基材23、第2フィルム基材24、第1透明電極25、第2透明電極26、第1配向膜27、第2配向膜28、液晶層29及びスペーサー30(特にスペーサー30a))を含む。
本例における液晶層29にはTN型液晶を用いており、電界が作用しない状態では、通過する光の偏光面を90°回転させる。液晶層29(液晶材料)の厚みを一定に保持するためのスペーサー30が液晶配向層用フィルム(具体的には第1配向膜27及び第2配向膜28(厳密には第2透明電極26))間に設けられる。本例のスペーサー30は透明材により構成され、可視光に対する遮光性を持たない。各スペーサー30は、最も距離が近い他のスペーサー30までの距離が一定となるように配置された。また第1透明電極25を支持する第1フィルム基材23及び第2透明電極26を支持する第2フィルム基材24として、フィルム状の樹脂基材(特に本例ではポリカーボネート製のフィルム基材)を使用した。液晶配向層用フィルムは、フィルム材(基材)に対して電極(第1透明電極25及び第2透明電極26)及び配向層(第1配向膜27及び第2配向膜28)を順次作製することで形成した。
本例の調光セル10を通過した光(点光源からの光)を視覚により確認したところ、点光源からの光は各スペーサー30による回折光の干渉の影響を受け、点光源の周りに光の干渉領域が生じた。
<具体例2(実施例)>
本例の調光セル10で用いられる各スペーサー30(全スペーサー30)は、最も距離が近い他のスペーサー30までの距離が一定にはならないように配置された。本例の調光セル10の他の構成は、上述の具体例1(比較例)と同じである。
本例の調光セル10を通過した光(点光源からの光)を視覚により確認したところ、スペーサー30をランダムに配置にすることで、点光源からの光に対する各スペーサー30による回折光の干渉の影響(光強度)は視認できない程度にまで低減され、点光源の周りに光の干渉領域は生じなかった。
以上説明したように複数のスペーサー30のうちの少なくとも一部に関しては最も距離が近い他のスペーサー30までの距離を一定にしないことで、複数のスペーサー30による回折光の干渉の影響を低減して視認性に優れた観察光をもたらすことができる。
本発明の実施態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。