JP2018013453A - 抗がん剤感受性測定方法及び、抗がん剤感受性測定装置 - Google Patents

抗がん剤感受性測定方法及び、抗がん剤感受性測定装置 Download PDF

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隆 武部
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Abstract

【課題】高精度または容易に、抗がん剤の感受性陽性判定の実施が可能な技術を提供する。
【解決手段】抗がん剤のがん細胞に対する感受性を測定する抗がん剤感受性測定方法であって、前記抗がん剤が投与されたがん細胞に所定波長のレーザー光を照射するステップと、前記レーザー光の照射に起因する前記がん細胞からのラマン散乱光を受光するステップと、前記受光されたラマン散乱光の強度を周波数分解するステップと、前記ラマン散乱光の強度を周波数分解して得られたラマンスペクトルに基づいて、前記がん細胞の前記抗がん剤に対する感受性を判定するステップと、を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、病理医がヒト組織検体で抗がん剤感受性を判定するために用いる抗がん剤感受性測定方法及び、抗がん剤感受性測定装置に関する。
がんの化学療法には、(1)効果の個人差(2)強い副作用(3)薬剤耐性出現(4)治療の長期化という4つの問題点がある。これに対し、抗がん剤の投与前に抗がん剤の効果(抗がん剤感受性)を判定し、最適な抗がん剤を選定・投与することができれば上記の問題は大幅に軽減し、がん患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)は向上し、医療費削減
にも繋がることが分かっている。
現在、患者本人のがん組織切片を用いて行う「抗がん剤感受性試験法」(例えば、SD
I法、HDRA法、CD−DST法等)が、治療費削減、患者のクオリティ・オブ・ライ
フの向上に役立つものとして先進医療の認可を受け、一部の病院で実施されている。例えば、SDI(succinate dehydrogenase inhibition)法では、がん患者から手術等によって摘出した腫瘍組織等を酵素処理して単離浮遊細胞を作製し、この腫瘍細胞を各種抗悪性腫瘍剤とともに数日間混合培養する。
そして、培養終了時の生残腫瘍細胞の活性をミトコンドリアのsuccinate dehydrogenase (SD)活性を測定することにより抗悪性腫瘍剤に対する感受性を判定する。すなわち腫瘍細胞とSDの基質であるテトラゾリウム塩(MTT)とを反応させ、析出するフォルマザン結晶をDMSOで溶解し、紫色の発色をマイクロプレートリーダーにより吸光度を測定する。このようにして抗悪性腫瘍剤曝露後の生細胞活性を測定することで、薬剤の殺細胞効果を判定するのである。
ここで、抗がん剤感受性試験には、抗がん剤がどれくらい効くのかを測定する、抗がん剤感受性陽性試験と、抗がん剤が効かないことを確認する抗がん剤感受性陰性試験とがある。この抗がん剤は、その強い副作用で逆に寿命を縮めたり生活が困難になったりする場合がある。また、投与を続けるとがん細胞の薬品耐性が上がり抗がん剤が効かなくなる場合がある。さらに、抗がん剤は高価であるため、何種類もの抗がん剤を感受性試験に使用することはできない。
このような事情から、医療現場では、上記の抗がん剤感受性陰性試験ではなく、抗がん剤感受性陽性試験が真に必要とされている。ところが、現行の抗がん剤感受性陽性試験の精度は、熟練者でも50%未満と極めて低くなっている。また、前処理が複雑であり、各工程において高度な手技が必要とされ、検査技師のスキルに大きく左右されてしまうという不都合がある。例えば、試験中の細胞死が、抗がん剤ではなく培養の状況に起因するといったことが頻発している。このように、抗がん剤感受性陽性試験は、充分に普及しているとは言えない状態であり、がんの化学療法においては、従前通りのレジュメとスケジュールに従った治療が行われているのが現状である。従って、医療現場においては、高精度且つ容易に、抗がん剤の感受性陽性判定の実施が可能な技術が望まれている。
特開2010−151801号公報
本発明は、上記のような状況を鑑みて発明されたものであり、その目的は、高精度または容易に、抗がん剤の感受性陽性判定の実施が可能な技術を提供することである。
上記した課題を解決するための本発明は、抗がん剤のがん細胞に対する感受性を測定する抗がん剤感受性測定方法であって、
前記抗がん剤が投与されたがん細胞に所定波長のレーザー光を照射するステップと、
前記レーザー光の照射に起因する前記がん細胞からのラマン散乱光を受光するステップと、
前記受光されたラマン散乱光の強度を周波数分解するステップと、
前記ラマン散乱光の強度を周波数分解して得られたラマンスペクトルに基づいて、前記がん細胞の前記抗がん剤に対する感受性を判定するステップと、
を有する、抗がん剤感受性測定方法である。
本発明によれば、抗がん剤のがん細胞に対する感受性をラマン分光法を用いて測定するので、サンプルとしてのがん細胞に対し前処理が必要なく、誰でも簡単に測定が可能である。
また、本発明においては、がん細胞が抗がん剤の投与により変質する各過程におけるラマンスペクトルを予め基準スペクトルとして取得し、
前記ラマン散乱光を周波数分解して得られたラマンスペクトルと基準スペクトルを比較することで前記がん細胞の前記抗がん剤に対する感受性を判定するようにしてもよい。
これによれば、測定対象に応じて、予め基準スペクトルを準備して、スペクトルライブラリを構築することができ、混合物を含めた複雑な物質を含め、スペクトル測定対象の自由度を高めることが可能である。
また、本発明においては、前記ラマン散乱光を周波数分解して得られたラマンスペクトルと基準スペクトルを比較することで前記がん細胞の前記抗がん剤に対する感受性を判定する際に、多変量解析を行うようにしてもよい。
これによれば、多くの基準スペクトルのデータから、がん細胞が抗がん剤の投与により変質する過程とラマンスペクトルの関連性をより精度よく求めることができ、結果として試料から得られたラマンスペクトルに基づき、より精度よく、該がん細胞に対する抗がん剤の感受性を測定することが可能となる。
また、本発明は、がん細胞からのラマン散乱光によって、該がん細胞に対する抗がん剤の感受性を測定する抗がん剤感受性測定装置であって、
ラマン励起光を出射する光源と、
前記光源から出射されたラマン励起光を前記がん細胞における所定の測定領域に照射する照射光学系と、
前記測定領域における前記がん細胞から散乱されたラマン散乱光を受光する受光光学系と、
前記受光光学系によって受光したラマン散乱光を波長に応じて分光する分光器と、
前記分光器によって分光されたラマン散乱光の強度を電気信号に変換する光検出素子と、
前記光検出素子からの電気信号から前記ラマン散乱光のラマンスペクトルを導出する解析部と、
前記解析部によって導出されたラマンスペクトルを表示する表示部と、を備え、
前記受光光学系は、並列された複数の光ファイバーによって前記測定領域内の複数個所において散乱されたラマン散乱光を別個に前記分光器まで導くマルチファイバー導光部を有することを特徴とする抗がん剤感受性測定装置であってもよい。
本発明によれば、ラマン散乱光の集光量を増やすことができ、測定の感度を高めることが可能である。また、測定領域を分割した点における個々のラマンスペクトルを得ることが可能となる。さらに、測定領域全体の平均ラマンスペクトルを得ることも可能となる。また、本発明においては、デジタルデータとしてラマンスペクトルの結果を得ることができるので、遠隔地の施設等で測定したデータを病理医の居る施設に転送して判定を行うことが可能となる。
また、本発明においては、前記照射光学系または前記受光光学系は、構成光学素子を切換えることで、前記測定領域の範囲を切換える切換え機構を有するようにしてもよい。これによれば、簡単な操作で測定領域を切換えることが可能となり、より容易に所望の対象に対して、抗がん剤の感受性の測定を行うことが可能である。
また、本発明においては、前記がん細胞を培養しつつ前記ラマン励起光の照射が可能なように維持する培養部をさらに備え、
前記培養部は、
底部に開口が設けられたシャーレ部と、前記開口部を塞ぐように設置されるとともに前記がん細胞の培養のための培地が設けられた培養プレートと、を有し、
前記培養プレートはフッ化カルシウムによって形成されるようにしてもよい。
これによれば、ラマン励起光及びラマン散乱光に対する透過率が高く吸収率の低い培養プレートを得ることが可能で、より精度よく、高効率で試料のラマンスペクトルを得ることが可能となる。また、ラマンスペクトルの取得に関連のない部分については、廉価な樹脂材料で構成することが可能となり、試料培養のための環境をより低コストで整えることが可能となる。
なお、上述した、課題を解決するための手段は適宜組み合わせて使用することが可能である。
本発明によれば、高精度または容易に、抗がん剤の感受性陽性判定の実施が可能である。
がん細胞に各種抗がん剤を投与した際の、未処理時及び処理後12時間後と24時間後のラマンスペクトルである。 実施例1における倒立型の抗がん剤感受性測定装置の概略構成を示す図である。 実施例1における集光用光ファイバーの配置及び、各光ファイバーによって得られる情報について説明するための図である。 実施例1におけるマクロ測定用培養器の概略構成を示す図である。 実施例2における正立型の抗がん剤感受性測定装置の概略構成を示す図である。
<実施例1>
以下、本願発明の実施形態について図を参照しながら説明する。以下に示す実施形態は
、本願発明の一態様であり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。
光が物質に入射して分子と衝突すると、その一部は散乱される。この散乱光の成分の大部分は入射光と同じ波長(レイリー散乱光)であるが、極わずかな成分として、入射光と異なった波長の光が含まれている。この入射光と異なった波長をもつ光の振動数は、分子の固有振動数に関連して決定される。
ラマン分光法とは、上記したような入射光と異なった波長をもつ光(ラマン散乱光)の性質を調べることにより、物質の分子構造や結晶構造などを知る手法である。より具体的には、レーザー光を試料に照射した時に分子固有の振動によって生じるラマン散乱光の強度を測定し、分子の構造解析を行う。
上記のラマン分光法によれば、赤外・近赤外分光法とは異なり水の影響を受けることなく、生体組織や細胞の分子動態を非破壊・非接触・非侵襲・非染色でラマンスペクトルデータ(ラマン散乱光の波長ごとの強度分布)として取得することができる。また、試料をすりつぶしたり溶かしたりする必要もない。
ここで、数年前までは、微弱なラマン散乱光を高感度で検出する汎用検出器が存在しなかった。そのため有効な測定データを取得するには照射するレーザーのパワーを上げるか照射時間を延ばすしかなく、前者の場合には生体試料が損傷し、後者の場合には測定時間が長すぎて測定途中に細胞が変化してしまい正確なデータが得られないという不都合が生じ、結果として医療分野への適用は困難であった。
しかしながら近年は検出器の高感度化が進み、さらにコンピュータの性能向上によりパーソナルコンピュータレベルでラマンスペクトル(ラマン散乱光の波長ごとの強度分布)を多変量解析のような統計処理計算によって短時間でデータ解析できるようになったため、医療分野への適用が可能なレベルに到達した。
がん細胞は細胞死の過程で細胞の特定部分において分子構造の変化が起こり、ラマンスペクトルも変化する。本実施例においては、細胞内のすべての生体物質(タンパク質、脂質、DNA、RNAなど)のC−H結合変角振動由来のピークを基準として、ラマンスペクトルにおいて形状または強度が変化する複数のピークを比較することで、抗がん剤感受性判定を行うこととした。
図1には、本実施例におけるラマン散乱分光法によって、抗がん剤を投与したがん細胞からのラマン散乱光を周波数分解したラマンスペクトルを示す。図1(a)は、フィラデルフィア染色体の遺伝子産物Bcr−Ablを標的とした分子標的治療薬として開発された抗がん剤でありアポトーシス(細胞自殺)を誘導する、イマニチブ(登録商標)を単独でがん細胞に投与した場合の投与後12時間と24時間におけるラマンスペクトルである。
また、図1(b)は、がん細胞にイマニチブ(登録商標)と、アポトーシスを抑制する効果のあるZ−VADを同時に投与した場合の投与後12時間と24時間のラマンスペクトルである。ちなみに、イマニチブ(登録商標)とZ−VADを同時に投与した場合には、細胞はアポトーシスではなくオートファジー(細胞自食)へと誘導されることが分かっている。
図1において矢印Aは、基準となるC−H結合の変革振動由来のスペクトルで、矢印B、Cは判定基準となるスペクトルの一部である。アポトーシスとオートファジーでは24時間以内のスペクトルの変化のパターンが異なり、ラマン散乱光を測定することによって
、アポトーシス誘導とオートファジー誘導の判別が可能であることが分かる。
なお、本実施例では、ラマンスペクトル内の分子結合情報を反映したピークによる判定だけでなく、これらの情報を多変量解析で用いることにより、抗がん剤が効いている細胞と効かない細胞それぞれから得られたラマンスペクトルの形状の違いを客観的に抽出する。このことにより、抗がん剤感受性判定モデル(基準スペクトル)を構築することが可能となる。そして、試料から得られたラマンスペクトルと、予め蓄積した基準スペクトルとを比較することで、より正確に、がん細胞の抗がん剤感受性を判定することができる。
図2には、本実施例における抗がん剤感受性測定装置1の概略構成を示す。図2において、抗がん剤感受性測定装置1は、光源としてのラマン励起レーザー2を備える。本実施例においては、ラマン励起レーザー2としては波長785nmのレーザーを使用する。ラマン励起レーザー2は、プローブヘッド3に光学的に結合されている。このプローブヘッド3内には、不図示の光学系が収納されておりラマン励起レーザー2からのラマン励起光を顕微鏡装置4に導く。顕微鏡装置4には、ミクロ測定用対物レンズ6と、マクロ測定用対物レンズ7とが設けられており、ターレット5を回転させることにより、ラマン励起レーザー2からの励起光を、ミクロ測定用対物レンズ6から出射させるか、マクロ測定用対物レンズ7から出射させるかを切換えることが可能になっている。
ここで、ミクロ測定用対物レンズ6から出射された励起光は、ミクロ測定用培養器8において培養中のがん細胞に照射される。一方、マクロ測定用対物レンズ7から出射された光は、マクロ測定用培養器9において培養中のがん細胞に照射される。すなわち、ミクロ測定用対物レンズ6から出射された励起光は小さく絞られ、ミクロ測定用培養器8内のがん細胞に対し一細胞単位で照射することが可能となっている。また、マクロ測定用対物レンズ7から出射された励起光についてはマクロ測定用培養器9内のがん細胞の比較的広範囲に照射することが可能となっており、組織切片においてがん細胞及び周囲の健康な細胞を含めた測定が可能となっている。なお、ミクロ測定用培養器8及び、マクロ測定用培養器9は、小型インキュベータ内に収納されており、生きたままの細胞についての測定が可能となっている。なお、この小型インキュベータは必ずしも必須の構成ではない。また、ミクロ測定用培養器8及び、マクロ測定用培養器9は、本発明における培養部に相当する。
本実施例のプローブヘッド3には、256本の光ファイバーの束からなる集光用光ファイバー10の一端が光学的に結合されている。また、集光用光ファイバー10の他端は、分光装置11に光学的に結合されている。分光装置11には、グレーティング11a及び光検出素子12が備えられている。また、光検出素子12からの出力は演算装置13及び表示装置14に電気的に結合されている。
ここで、ミクロ測定用対物レンズ6または、マクロ測定用対物レンズ7から出射された励起光の一部は、ミクロ測定用培養器8またはマクロ測定用培養器9において培養中のがん細胞によってラマン散乱される。そして、そのラマン散乱光は、ミクロ測定用対物レンズ6またはマクロ測定用対物レンズ7から顕微鏡装置4に入射され、受光光学系(不図示)を介して、集光用光ファイバー10に導かれる。さらに、集光用光ファイバー10に導入されたラマン散乱光は分光装置11に入射される。
次に、分光装置11に入射されたラマン散乱光はグレーティング11aによって波長毎に分光されて光検出素子12に照射される。光検出素子12においては、各光ファイバーからのラマン散乱光について波長毎の強度が検出され演算装置13に出力信号が送られる。演算装置13においては、光検出装置12からの出力信号に基づいて集光用光ファイバー10を構成する各々の光ファイバー毎にラマンスペクトルが作成され、表示装置14に
おいて表示される。また、集光用光ファイバー10全体に対する平均ラマンスペクトルも作成され、表示装置14において表示することも可能である。
次に、図3について説明する。図3は、抗がん剤感受性測定装置1におけるラマンスペクトルの測定の詳細を模式的に表した図である。図3においては、簡単のため、256本の光ファイバーの代わりに9本の光ファイバーを使用したと仮定して説明を行う。
ミクロ測定用培養器8またはマクロ測定用培養器9において培養されている試料において散乱されたラマン散乱光は、顕微鏡装置4及びプローブヘッド3における受光光学系を介して集光用光ファイバー10の各光ファイバー(1)〜(9)に入射する。各光ファイバー(1)〜(9)は、プローブヘッド3においてラマン散乱光を受光する際には、2次元的に並べられており、測定領域の各(1)〜(9)に相当する位置からのラマン散乱光が入射するようになっている。一方、集光用光ファイバー10の各光ファイバー(1)〜(9)は、分光装置11において光検出器にラマン散乱光を出射する際には、一次元的に並べて配置されている。
そして、各光ファイバー(1)〜(9)を通過したラマン散乱光が各々グレーティング11aで分光されて、直線状に光検出装置12上に一列に照射される。このことで、結果として9列の光線が光検出装置12上に照射され、光線上の各位置における光強度が検出される。ここで、光検出装置12の受光面において縦軸は光ファイバー9本(実際には256本)に対応した測定領域の位置情報に相当する。また、横軸はラマンシフトに相当し、測定領域内の9点(実際には256点)のスペクトルとマッピングイメージが短時間で同時に取得できる。
そして、演算装置13においては、9個の個別ラマンスペクトル15が導出されるとともに、9個のラマンスペクトルの平均をとることにより、測定領域全体の平均ラマンスペクトル16が導出される。さらに、演算装置13においては、多変量解析によってデータ解析が行われ、がん細胞の抗がん剤感受性の測定がなされる。演算装置13においては、個別ラマンスペクトル15または平均ラマンスペクトル16と、予め記憶された基準スペクトルとを比較することで、がん細胞の抗がん剤感受性の判定が行われるようにしても構わない。
なお、表示装置14においては、各測定点における個別ラマンスペクトル15、平均ラマンスペクトル16のみを表示してもよいし、それらの他、可視用観察画像、任意ラマンバンドをイメージ化した画像や、所定の測定パラメータを表示することとしてもよい。さらに、試料におけるがん細胞の状態や、がん細胞の抗がん剤感受性の判定に関する情報についても表示するようにしても構わない。
次に、図4には、本実施例におけるマクロ測定用培養器9について示す。図4(a)はマクロ測定用培養器9の構成を示す斜視図であり、図4(b)は断面図である。ここでは、マクロ測定用培養器9について示すが、ミクロ測定用培養器8についても略同様の構成を有する。マクロ測定用培養器9は、ポリスチレンなどの樹脂から形成されるシャーレ部19と、フッ化カルシウムによって形成された培養プレート20とからなる。シャーレ部19の底面には、開口19aが形成されており、培養プレート20は、開口19aを塞ぐように設置される。この培養プレート20には培地が形成され試料としての細胞が培養されている。
図2に示した抗がん剤感受性測定装置1においては、マクロ測定用培養器9の下側から開口19aを通過するようにラマン励起光が照射される。ここで、ポリスチレンなどの樹脂にラマン励起光を照射した場合には、ポリスチレン自体の分子振動がラマンスペクトル
に含まれてしまいノイズとなり、測定精度が低下する虞がある。一方、フッ化カルシウムは785nmのラマン励起光に対して非常に高い透過率を示し、ノイズの発生を抑制することが可能となる。従って、本実施例のようにサンプルをフッ化カルシウム製の培養プレート20上で培養することで、試料中の細胞のラマンスペクトルをより精度よく取得することが可能である。
以上、説明したように、本実施例における抗がん剤感受性測定装置1は、がん細胞が細胞死の過程において、細胞の特定部分で分子構造の変化が生じ、その部分から得られるラマンスペクトルが変化する現象を利用したものである。そして、本実施例における抗がん剤感受性測定装置1により、細胞内のすべての生体物質(タンパク質、脂質、DNA、RNAなど)のC−H結合変角振動由来のピークを基準として、ラマンスペクトルにおける形状または強度が変化する複数のピークを比較することで半定量的な情報を得ることができる。これにより、従来方法より正確で客観的な多くの情報に基づいて、病理医ががん細胞の抗がん剤感受性の判定を行うことが可能となった。その結果、前処理不要の分子構造解析で、誰でも簡単且つ精度よく、測定者によるバラつきの少ない、がん細胞の抗がん剤感受性測定を行うことが可能となった。実際の測定では、ほぼ100%に近い陽性判定精度が得られている。
また、本実施例における抗がん剤感受性測定装置1は、上述のように256本の光ファイバーの束である集光用光ファイバー10を用いることでラマン散乱光の集光量を増やし高感度なデータを得ることを可能にしていると同時に、測定領域の画像を取得することも可能にしている。また、この集光用光ファイバー10を用いることによって測定範囲全体(細胞一個全体あるいは組織の一部)の平均ラマンスペクトルと同時に、測定範囲を256分割した点(細胞内あるいは組織内の任意の箇所)の個々のラマンスペクトルを得ることを可能にしている。これにより、がん細胞のみならず、周囲の正常細胞の測定も同時に行うことができ、抗がん剤の副作用の強さに関する情報も得ることが可能となった。
また、本実施例においては、ミクロ測定用培養器8または、マクロ測定用培養器9において、組織をそのまま培養しつつ、測定を行うので、体内と同様の環境下で、より実際に近い情報を得ることが可能となった。また、本実施例における抗がん剤感受性測定装置1を使用することで、短時間で測定することが可能となった。具体的には、従来、10日〜2週間要したがん細胞の抗がん剤感受性の判定時間が24〜36時間程度に短縮できた。このことにより、より迅速な治療が可能になったとともに、測定中に培地の途中交換をする必要がなくなるなど、測定コストを低減することが可能になった。
また、本実施例によれば、例えば考古学試料の測定を行うために開発されたラマン分光分析装置を流用することも可能で、装置コストを低下させ、装置構成上の自由度を高めることも可能となった。
<実施例2>
次に、本発明における実施例2について説明する。実施例2においては、正立型に構成した場合の、抗がん剤感受性測定装置について説明する。
図5には、本実施例における抗がん剤感受性測定装置21の構成を示す。図2において、抗がん剤感受性測定装置21においても、波長785nmの光源であるラマン励起レーザー22がプローブヘッド23に結合されている。このプローブヘッド23内に設けられた投光光学系が、ラマン励起レーザー22からのラマン励起光を、プローブヘッド23の下側に配置された顕微鏡装置24に導く。顕微鏡装置24に設けられたミクロ測定用対物レンズ26と、マクロ測定用対物レンズ27とは、実施例1と同様、ターレット25を回転させることにより切換え可能である。
本実施例においては、ミクロ測定用対物レンズ26またはマクロ測定用対物レンズ27から出射されたラマン励起光は、それぞれ、ミクロ測定用培養器26またはマクロ測定用培養器27において培養中のがん細胞に上側から照射される。
ミクロ測定用対物レンズ26から出射された光は小さく絞られ、ミクロ測定用培養器26内のがん細胞の一細胞単位で照射が可能となっており、マクロ測定用対物レンズ27から出射された光はより大きな領域にラマン励起光を照射することが可能となっている点は、実施例1と同様である。また、ミクロ測定用培養器26及び、マクロ測定用培養器27は、小型インキュベータ内に収納されており、生きたままのサンプルについての測定が可能となっている点も実施例1と同様である。なお、この小型インキュベータは必ずしも必須の構成ではない。また、ミクロ測定用培養器26及び、マクロ測定用培養器27は、本発明における培養部に相当する。
プローブヘッド23には、256本の光ファイバーの束からなる集光用光ファイバー10の一端が結合されている。この集光用光ファイバー10、分光装置11、光検出素子12、演算装置13及び表示装置14については、実施例1と同様の構成であるので、ここでは説明は省略する。
なお、上記の実施例においては、プローブヘッド及び顕微鏡装置と分光装置とを、集光用光ファイバーで結合したマルチファイバー型の抗がん剤感受性測定装置について説明したが、本発明に係る抗がん剤感受性測定方法が適用される装置は、マルチファイバー型の装置に限られない。例えば、光ファイバーを用いず、測定領域の各点に励起光を走査させながら照射する顕微ラマン型の装置に適用しても構わない。
1、21・・・抗がん剤感受性測定装置
2、22・・・ラマン励起レーザー
3、23・・・プローブヘッド
4、24・・・顕微鏡装置
5、25・・・ターレット
6、26・・・ミクロ測定用対物レンズ
7、27・・・マクロ測定用対物レンズ
8、28・・・ミクロ測定用培養器
9、29・・・マクロ測定用培養器
10・・・・・集光用光ファイバー
11・・・・・分光器
11a・・・・グレーティング
12・・・・・光検出器
13・・・・・演算装置
14・・・・・表示装置

Claims (6)

  1. 抗がん剤のがん細胞に対する感受性を測定する抗がん剤感受性測定方法であって、
    前記抗がん剤が投与されたがん細胞に所定波長のレーザー光を照射するステップと、
    前記レーザー光の照射に起因する前記がん細胞からのラマン散乱光を受光するステップと、
    前記受光されたラマン散乱光の強度を周波数分解するステップと、
    前記ラマン散乱光の強度を周波数分解して得られたラマンスペクトルに基づいて、前記がん細胞の前記抗がん剤に対する感受性を判定するステップと、
    を有する、抗がん剤感受性測定方法。
  2. がん細胞が抗がん剤の投与により変質する各過程におけるラマンスペクトルを予め基準スペクトルとして取得し、
    前記ラマン散乱光を周波数分解して得られたラマンスペクトルと基準スペクトルを比較することで前記がん細胞の前記抗がん剤に対する感受性を判定することを特徴とする請求項1に記載の抗がん剤感受性測定方法。
  3. 前記ラマン散乱光を周波数分解して得られたラマンスペクトルと基準スペクトルを比較することで前記がん細胞の前記抗がん剤に対する感受性を判定する際に、多変量解析を行うことを特徴とする、請求項2に記載の抗がん剤感受性測定方法。
  4. がん細胞からのラマン散乱光によって、該がん細胞に対する抗がん剤の感受性を測定する抗がん剤感受性測定装置であって、
    ラマン励起光を出射する光源と、
    前記光源から出射されたラマン励起光を前記がん細胞における所定の測定領域に照射する照射光学系と、
    前記測定領域における前記がん細胞から散乱されたラマン散乱光を受光する受光光学系と、
    前記受光光学系によって受光したラマン散乱光を波長に応じて分光する分光器と、
    前記分光器によって分光されたラマン散乱光の強度を電気信号に変換する光検出素子と、
    前記光検出素子からの電気信号から前記ラマン散乱光のラマンスペクトルを導出する解析部と、
    前記解析部によって導出されたラマンスペクトルを表示する表示部と、を備え、
    前記受光光学系は、並列された複数の光ファイバーによって前記測定領域内の複数個所において散乱されたラマン散乱光を別個に前記分光器まで導くマルチファイバー導光部を有することを特徴とする抗がん剤感受性測定装置。
  5. 前記照射光学系または前記受光光学系は、構成光学素子を切換えることで、前記測定領域の範囲を切換える切換え機構を有することを特徴とする請求項4に記載の抗がん剤感受性測定装置。
  6. 前記がん細胞を培養しつつ前記ラマン励起光の照射が可能なように維持する培養部をさらに備え、
    前記培養部は、
    底部に開口が設けられたシャーレ部と、前記開口部を塞ぐように設置されるとともに前記がん細胞の培養のための培地が設けられた培養プレートと、を有し、
    前記培養プレートはフッ化カルシウムによって形成されることを特徴とする、請求項4または5に記載の抗がん剤感受性測定装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN112461915A (zh) * 2020-12-08 2021-03-09 杭州汇健科技有限公司 一种与药物敏感相关的特征分子筛选、药敏程度检测、细胞亚型检测的方法
WO2023239121A1 (ko) * 2022-06-09 2023-12-14 엠비디 주식회사 항암제 감수성 예측 방법 및 시스템
CN111912826B (zh) * 2020-06-22 2024-03-01 上海氘峰医疗科技有限公司 一种在细胞水平上进行抗肿瘤药物药效评估的方法

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