以下、本発明による成形装置及び成形方法の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
〈成形装置の構成〉
図1は、成形装置の概略構成図である。図1に示されるように、金属パイプ100(図5参照)を成形する成形装置10は、互いに対となる上型(第1の金型)12及び下型(第2の金型)11からなるブロー成形金型13と、上型12及び下型11の少なくとも一方を移動させる駆動機構80と、上型12と下型11との間で金属パイプ材料14を保持するパイプ保持機構30と、パイプ保持機構30で保持されている金属パイプ材料14に通電して加熱する加熱機構50と、上型12及び下型11の間に保持され加熱された金属パイプ材料14内に高圧ガス(気体)を供給するための気体供給部60と、パイプ保持機構30で保持された金属パイプ材料14内に気体供給部60からの気体を供給するための一対の気体供給機構40,40と、ブロー成形金型13を強制的に水冷する水循環機構72とを備える。また、成形装置10は、上記駆動機構80の駆動、上記パイプ保持機構30の駆動、上記加熱機構50の駆動、及び上記気体供給部60の気体供給をそれぞれ制御する制御部70と、を備えて構成されている。
下型(第2の金型)11は、大きな基台15に固定されている。下型11は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、その上面にキャビティ16を備える。更に下型11の左右端(図1における左右端)近傍には電極収納スペース11aが設けられる。成形装置10は、当該電極収納スペース11a内に、アクチュエータ(図示しない)によって上下に進退動可能に構成された第1電極17及び第2電極18を備えている。これら第1電極17、第2電極18の上面には、金属パイプ材料14の下側外周面に対応した半円弧状の凹溝17a,18aがそれぞれ形成されていて(図3(c)参照)、当該凹溝17a,18aの部分に丁度金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能とされている。また、第1電極17の正面(金型の外側方向の面)には凹溝17aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17bが形成されており、第2電極18の正面(金型の外側方向の面)には凹溝18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面18bが形成されている。また、下型11には冷却水通路19が形成され、略中央に下から差し込まれた熱電対21を備えている。この熱電対21はスプリング22により上下移動自在に支持されている。
なお、下型11側に位置する一対の第1,第2電極17,18はパイプ保持機構30を構成しており、金属パイプ材料14を、上型12と下型11との間で昇降可能に支えることができる。また、熱電対21は測温手段の一例を示したに過ぎず、輻射温度計又は光温度計のような非接触型温度センサであってもよい。なお、通電時間と温度との相関が得られれば、測温手段は省いて構成することも十分可能である。
上型(第1の金型)12は、下面にキャビティ24を備え、冷却水通路25を内蔵した大きな鋼鉄製ブロックである。上型12は、上端部をスライド82に固定されている。そして、上型12が固定されたスライド82は、加圧シリンダ26によって吊られる構成とされ、ガイドシリンダ27によって横振れしないようにガイドされている。
上型12の左右端(図1における左右端)近傍には、下型11と同様な電極収納スペース12aが設けられる。成形装置10は、この電極収納スペース12a内に、下型11と同じく、アクチュエータ(図示しない)で上下に進退動可能に構成された第1電極17と第2電極18を備えている。これら第1、第2電極17,18の下面には、金属パイプ材料14の上側外周面に対応した半円弧状の凹溝17a,18aがそれぞれ形成されていて(図3(c)参照)、当該凹溝17a,18aに丁度金属パイプ材料14が嵌合可能とされている。また、第1電極17の正面(金型の外側方向の面)は凹溝17aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17bが形成されており、第2電極18の正面(金型の外側方向の面)は凹溝18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面18bが形成されている。よって、上型12側に位置する一対の第1,第2電極17,18もパイプ保持機構30を構成しており、上下一対の第1,第2電極17,18で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができるように構成されている。
駆動機構80は、上型12及び下型11同士が合わさるように上型12を移動させるスライド82と、上記スライド82を移動させるための駆動力を発生する駆動部81と、上記駆動部81に対する流体量を制御するサーボモータ83とを備えている。駆動部81は、加圧シリンダ26を駆動させる流体(加圧シリンダ26として油圧シリンダを採用する場合は動作油)を当該加圧シリンダ26へ供給する流体供給部によって構成されている。
制御部70は、駆動部81のサーボモータ83を制御することによって、加圧シリンダ26へ供給する流体の量を制御することにより、スライド82の移動を制御することができる。なお、駆動部81は、上述のように加圧シリンダ26を介してスライド82に駆動力を付与するものに限られない。例えば、駆動部81は、スライド82に駆動機構を機械的に接続させてサーボモータ83が発生する駆動力を直接的に又は間接的にスライド82へ付与するものであってもよい。例えば、偏心軸と、偏心軸を回転させる回転力を付与する駆動源(例えば、サーボモータ及び減速機等)と、偏心軸の回転運動を直線運動に変換してスライドを移動させる変換部(例えば、コネクティングロッド又は偏心スリーブ等)と、を有する駆動機構を採用してもよい。なお、本実施形態では、駆動部81がサーボモータ83を備えていなくともよい。
図2は、図1に示すII-II線に沿ったブロー成形金型13の断面図である。図2に示されるように、下型11の上面及び上型12の下面には、いずれも段差が設けられている。
下型11の上面には、下型11の中央のキャビティ16表面を基準ラインLV2とすると、第1突起11b、第2突起11c、第3突起11d、第4突起11eによる段差が形成されている。キャビティ16の右側(図2において右側、図1において紙面奥側)に第1突起11b及び第2突起11cが形成され、キャビティ16の左側(図2において左側、図1において紙面手前側)に第3突起11d及び第4突起11eが形成されている。第2突起11cは、キャビティ16と第1突起11bとの間に位置している。第3突起11dは、キャビティ16と第4突起11eとの間に位置している。第2突起11c及び第3突起11dのそれぞれは、第1突起11b及び第4突起11eよりも上型12側に突出している。第1突起11b及び第4突起11eにおいて基準ラインLV2からの突出量は略同一であり、第2突起11c及び第3突起11dにおいて基準ラインLV2からの突出量は略同一である。
一方、上型12の下面には、上型12の中央のキャビティ24表面を基準ラインLV1とすると、第1突起12b、第2突起12c、第3突起12d、第4突起12eによる段差が形成されている。キャビティ24の右側(図2において右側)に第1突起12b及び第2突起12cが形成され、キャビティ24の左側(図2において左側)に第3突起12d及び第4突起12eが形成されている。第2突起12cは、キャビティ24と第1突起12bとの間に位置している。第3突起12dは、キャビティ24と第4突起12eとの間に位置している。第1突起12b及び第4突起12eのそれぞれは、第2突起12c及び第3突起12dよりも下型11側に突出している。第1突起12b及び第4突起12eにおいて基準ラインLV1からの突出量は略同一であり、第2突起12c及び第3突起12dにおいて基準ラインLV1からの突出量は略同一である。
また、上型12の第1突起12bは下型11の第1突起11bと対向しており、上型12の第2突起12cは下型11の第2突起11cと対向しており、上型12のキャビティ24は下型11のキャビティ16と対向しており、上型12の第3突起12dは、下型11の第3突起11dと対向しており、上型12の第4突起12eは下型11の第4突起11eと対向している。そして、上型12において第2突起12cに対する第1突起12bの突出量(第3突起12dに対する第4突起12eの突出量)は、下型11において第1突起11bに対する第2突起11cの突出量(第4突起11eに対する第3突起11dの突出量)よりも大きくなっている。これにより、上型12の第2突起12cと下型11の第2突起11cとの間、及び上型12の第3突起12dと下型11の第3突起11dとの間のそれぞれには、上型12及び下型11が嵌合した際に空間が形成される(図6(c)参照)。また、上型12のキャビティ24と、下型11のキャビティ16との間には、上型12及び下型11が嵌合した際に空間が形成される(図6(c)参照)。
より詳細に説明すると、ブロー成形時に下型11と上型12とが合わさっていき嵌合する前の時点で、図6(b)に示されるように、上型12のキャビティ24の表面(基準ラインLV1となる表面)と、下型11のキャビティ16の表面(基準ラインLV2となる表面)との間には、メインキャビティ部(第1のキャビティ部)MCが形成される。また、上型12の第2突起12cと下型11の第2突起11cとの間には、メインキャビティ部MCに連通し、当該メインキャビティ部MCよりも容積が小さいサブキャビティ部(第2のキャビティ部)SC1が形成される。同様に、上型12の第3突起12dと下型11の第3突起11dとの間には、メインキャビティ部MCに連通し、当該メインキャビティ部MCよりも容積が小さいサブキャビティ部(第2のキャビティ部)SC2が形成される。メインキャビティ部MCは金属パイプ100におけるパイプ部100aを成形する部分であり、サブキャビティ部SC1,SC2は金属パイプ100におけるフランジ部100b,100cをそれぞれ成形する部分である(図6(c),(d)参照)。そして、図6(c),(d)に示されるように、下型11と上型12とが合わさって完全に閉じられた場合(嵌合した場合)、メインキャビティ部MC及びサブキャビティ部SC1,SC2は、下型11及び上型12内に密閉される。
図1に示されるように、加熱機構50は、電源51と、この電源51からそれぞれ延びて第1電極17及び第2電極18に接続している導線52と、この導線52に介設したスイッチ53とを有してなる。制御部70は、上記加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14を焼入れ温度(AC3変態点温度以上)まで加熱することができる。
一対の気体供給機構40の各々は、シリンダユニット42と、シリンダユニット42の作動に合わせて進退動するシリンダロッド43と、シリンダロッド43におけるパイプ保持機構30側の先端に連結されたシール部材44とを有する。シリンダユニット42はブロック41を介して基台15上に載置固定されている。それぞれのシール部材44の先端には、先細となるようにテーパー面45が形成されている。一方のテーパー面45には、第1電極17のテーパー凹面17bに丁度嵌合当接することができる形状に構成され、他方のテーパー面45は、第2電極18のテーパー凹面18bに丁度嵌合当接することができる形状に構成されている(図3参照)。シール部材44は、シリンダユニット42側から先端に向かって延在する。詳しくは図3(a),(b)に示されるように、気体供給部60から供給された高圧ガスが流れるガス通路46が設けられている。
図1に戻って、気体供給部60は、ガス源61と、このガス源61によって供給されたガスを溜めるアキュムレータ62と、このアキュムレータ62から気体供給機構40のシリンダユニット42まで延びている第1チューブ63と、この第1チューブ63に介設されている圧力制御弁64及び切替弁65と、アキュムレータ62からシール部材44内に形成されたガス通路46まで延びている第2チューブ67と、この第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68及び逆止弁69とを備えている。圧力制御弁64は、シール部材44の金属パイプ材料14に対する押力に適応した作動圧力のガスをシリンダユニット42に供給する役割を果たす。逆止弁69は、第2チューブ67内で気体が逆流することを防止する役割を果たす。
また、制御部70は、図1に示す(A)から情報が伝達されることによって、熱電対21から温度情報を取得し、加圧シリンダ26及びスイッチ53等を制御する。水循環機構72は、水を溜める水槽73と、この水槽73に溜まっている水を汲み上げ、加圧して下型11の冷却水通路19及び上型12の冷却水通路25へ送る水ポンプ74と、配管75とからなる。省略したが、水温を下げるクーリングタワーや水を浄化する濾過器を配管75に介在させることは差し支えない。
〈成形装置を用いた金属パイプの成形方法〉
次に、成形装置10を用いた金属パイプの成形方法について説明する。図4は材料としての金属パイプ材料14を投入するパイプ投入工程から、金属パイプ材料14に通電して加熱する通電加熱工程までを示す。最初に焼入れ可能な鋼種の金属パイプ材料14を準備する。図4(a)に示すように、この金属パイプ材料14を、例えばロボットアーム等を用いて、下型11側に備わる第1,第2電極17,18上に載置(投入)する。第1,第2電極17,18には凹溝17a,18aがそれぞれ形成されているので、当該凹溝17a,18aによって金属パイプ材料14が位置決めされる。次に、制御部70(図1参照)は、パイプ保持機構30を制御することによって、当該パイプ保持機構30に金属パイプ材料14を保持させる。具体的には、図4(b)のように、第1電極17、第2電極18を進退動可能としているアクチュエータ(図示しない)を作動させ、各上下に位置する第1,第2電極17,18を接近・当接させる。この当接によって、金属パイプ材料14の両方の端部は、上下から第1,第2電極17,18によって挟持される。また、この挟持は第1,第2電極17,18にそれぞれ形成される凹溝17a,18aの存在によって、金属パイプ材料14の全周に渡って密着するような態様で挟持されることとなる。ただし、金属パイプ材料14の全周に渡って密着する構成に限られず、金属パイプ材料14の周方向における一部に第1,第2電極17,18が当接するような構成であってもよい。
続いて、図1に示されるように、制御部70は、加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14を加熱する。具体的には、制御部70は、加熱機構50のスイッチ53をONにする。そうすると、電源51から電力が金属パイプ材料14に供給され、金属パイプ材料14に存在する抵抗により、金属パイプ材料14自体が発熱する(ジュール熱)。この時、熱電対21の測定値が常に監視され、この結果に基づいて通電が制御される。
図5は、成形装置によるブロー成形工程の概要とその後の流れを示している。図5に示されるように、加熱後の金属パイプ材料14に対してブロー成形金型13を閉じ、金属パイプ材料14を当該ブロー成形金型13のキャビティ内に配置密閉する。その後、気体供給機構40のシリンダユニット42を作動させることによってシール部材44で金属パイプ材料14の両端をシールする(図3も併せて参照)。シール完了後、ブロー成形金型13を閉じると共に、ガスを金属パイプ材料14内へ吹き込んで、加熱により軟化した金属パイプ材料14をキャビティの形状に沿うように成形する(具体的な金属パイプ材料14の成形方法については後述する)。
金属パイプ材料14は高温(950℃前後)に加熱されて軟化しているので、金属パイプ材料14内に供給されたガスは、熱膨張する。このため、例えば供給するガスを圧縮空気又は圧縮窒素ガスとし、950℃の金属パイプ材料14を、熱膨張した圧縮空気によって容易に膨張させ、金属パイプ100を得ることができる。
具体的には、ブロー成形されて膨らんだ金属パイプ材料14の外周面が下型11のキャビティ16に接触して急冷されると同時に、上型12のキャビティ24に接触して急冷(上型12と下型11は熱容量が大きく且つ低温に管理されているため、金属パイプ材料14が接触すればパイプ表面の熱が一気に金型側へと奪われる。)されて焼き入れが行われる。このような冷却法は、金型接触冷却又は金型冷却と呼ばれる。急冷された直後はオーステナイトがマルテンサイトに変態する(以下、オーステナイトがマルテンサイトに変態することをマルテンサイト変態とする)。冷却の後半は冷却速度が小さくなったので、復熱によりマルテンサイトが別の組織(トルースタイト、ソルバイトなど)に変態する。従って、別途焼戻し処理を行う必要がない。また、本実施形態においては、金型冷却に代えて、あるいは金型冷却に加えて、冷却媒体を金属パイプ100に供給することによって冷却が行われてもよい。例えば、マルテンサイト変態が始まる温度までは金型(上型12及び下型11)に金属パイプ材料14を接触させて冷却を行い、その後型開きすると共に冷却媒体(冷却用気体)を金属パイプ材料14へ吹き付けることにより、マルテンサイト変態を発生させてもよい。
次に、ブロー成形金型13の構成について、図2及び図7を参照して詳細に説明する。なお、説明の便宜上、図7には金属パイプ材料14も図示している。なお、図2は上型12及び下型11が開いた状態であるため、厳密にはメインキャビティ部MC、サブキャビティ部SC1,SC2は形成されていない状態であるが、これらのキャビティ部を形成する金型形状に対応する部分に符号「MC」「SC1」「SC2」を付しておく。
図2及び図7に示すように、ブロー成形金型13には、当該ブロー成形金型13中の渦電流RCの発生を抑制する渦電流抑制部110が形成される。本実施形態では、一対の電極17,18は、通電時における金属パイプ材料14の延伸方向D1における一端側及び他端側にそれぞれ配置される。従って、図7に示すように、金属パイプ材料14には、延伸方向D1に沿って電極18から電極17へ電流Cが流れる。電磁誘導効果により、下型11及び上型12内では渦電流RCが発生する。渦電流は、金属を強い磁場内で動かしたり、金属の近傍の磁界を急激に変化させた際に、電磁誘導効果により金属内で生じる渦状の誘導電流のことである。磁場内での金属の移動速度が大きいほど、又は金属近傍の磁界変化が大きいほど、渦電流は大きくなる。このような渦電流が発生すると、電気抵抗により発熱し、金属の温度が上昇することになる。渦電流抑制部110は、ブロー成形金型13中で延伸方向に流れる渦電流RCの発生を抑制することができる。
渦電流抑制部110は、ブロー成形金型13を構成する金属材料に比して抵抗が高い高抵抗部120A,120B,125A,125Bによって構成される。高抵抗部120A,120B,125A,125Bは、例えば、ブロー成形金型13の金属材料中に絶縁体を配置することによって、構成される。絶縁体は、金属材料よりも抵抗が高ければよく、例えば、樹脂、セラミックス、耐火物、FRPなどの材料から構成される。
図2に示すように、延伸方向D1から見た場合、ブロー成形金型13の上型12及び下型11は、高抵抗部120A,120Bによって分割された複数(ここでは二つ)の分割部材130A,130Bと、複数の分割部材130A,130Bを支持するベース部材135A,135Bと、を備える。
分割部材130A,130Bは、金属パイプ材料14の延伸方向D1に対して直交する水平方向である横方向D2における中央位置にて、上型12及び下型11が高抵抗部120A,120Bでそれぞれ分割されることで構成されている。本実施形態では、高抵抗部120A,120Bは、上下方向及び延伸方向D1へ真っ直ぐに延びる板状の形状をなしている。また、高抵抗部120A,120Bは、上型12及び下型11のキャビティ側の端部からベース部材135A,135Bに至るまで上下方向に延びている。高抵抗部120A,120Bは、上型12及び下型11の延伸方向D1の一端部から他端部に至るまで延伸方向D1に延びている。
ベース部材135A,135Bは、上型12及び下型11のうち上下のホルダ140A,140Bとの取り付け部側に設けられる。なお、ホルダ140Aは上型12を上側から支持する部材であり、ホルダ140Bは下型11を下側から支持する部材である。ベース部材135A,135Bは、金属材料によって、一体的に構成された部材である。すなわち、ベース部材135A,135Bは、途中で高抵抗部120A,120B及び後述の高抵抗部125A,125Bによって分割されることなく、連続した一枚の板状部材として構成されている。すなわち、ベース部材135A,135Bは、上型12及び下型11の延伸方向D1における一端部から他端部まで延びており(図7参照)、横方向D2における一端部から他端部まで延びている。
ベース部材135A,135Bと、分割された複数の分割部材130A,130Bとの間には、高抵抗部123A,123Bの層が設けられている。高抵抗部123A,123Bは、ベース部材135A,135Bの略全面に対応して形成されている。すなわち、高抵抗部123A,123Bは、上型12及び下型11の延伸方向D1における一端部から他端部まで延びており(図7参照)、横方向D2における一端部から他端部まで延びている。ただし、高抵抗部123A,123Bは、ベース部材135A,135Bの略全面に対応して形成されていなくともよく、一部に対応して形成されるのみであってもよい。また、ベース部材135A,135B及び高抵抗部123A,123Bは、ネジ部150をホルダ140A,140B側から分割部材130A,130Bにねじ込むことによって、分割部材130A,130Bと固定されている。
図7に示すように横方向D2から見た場合、ブロー成形金型13の上型12及び下型11は、高抵抗部125A,125Bによって分割された複数(ここでは二つ)の分割部材131A,131Bと、複数の分割部材131A,131Bを支持するベース部材135A,135Bと、を備える。なお、説明の便宜上、延伸方向D1から見た場合の分割部材130A,130Bと、横方向D2から見た場合の分割部材131A,131Bとで異なる符号を付しているが、実体的には同一の部分を指している。
分割部材131A,131Bは、金属パイプ材料14の延伸方向D1における中央位置にて、上型12及び下型11が高抵抗部125A,125Bでそれぞれ分割されることで構成されている。本実施形態では、高抵抗部125A,125Bは、上下方向及び横方向D2へ真っ直ぐに延びる板状の形状をなしている。また、高抵抗部125A,125Bは、上型12及び下型11のキャビティ側の端部からベース部材135A,135Bに至るまで上下方向に延びている。高抵抗部125A,125Bは、上型12及び下型11の横方向D2の一端部から他端部に至るまで横方向D2に延びている。なお、上型12及び下型11の延伸方向D1における両端部と電極17,18との間には、高抵抗部124A,124Bが形成されていてもよい。
次に、本実施形態に係る成形装置の作用・効果について説明する。
電極で金属パイプ材料を通電加熱する際に、成形プロセスに要する時間を短縮するために急速に通電を行う場合がある。単位時間当たりの電流変化が大きくなると、従来の成形装置では、成形金型内に発生する渦電流が大きくなるという問題が生じる。渦電流が大きくなった場合、例えば、金型温度が上昇し、当該状態で通電を繰り返すことで熱が蓄積され、場合によっては金型焼き入れができなくなる可能性なども生じる。従って、渦電流を低減することが要請される。
本実施形態に係る成形装置10によれば、一対の電極17,18が金属パイプ材料14へ通電することで加熱を行い、加熱された金属パイプ材料14内に気体供給機構40が気体を供給することによって、金属パイプ材料14が膨張してブロー成形金型13と接触することによって金属パイプ100が成形される。ここで、一対の電極17,18が金属パイプ材料14へ通電することにより、ブロー成形金型13内には渦電流RC(図7参照)が発生する。しかし、ブロー成形金型13は、当該ブロー成形金型13中の渦電流RCの発生を抑制する渦電流抑制部110を有するため、ブロー成形金型13内での渦電流RCの発生が抑制される。以上によって、ブロー成形金型13内の渦電流RCを低減することができる。
また、一対の電極17,18は、通電時における金属パイプ材料14の延伸方向D1における一端側及び他端側にそれぞれ配置され、渦電流抑制部110は、ブロー成形金型13中で延伸方向D1に流れる渦電流の発生を抑制する。この場合、一対の電極17,18は金属パイプ100の延伸方向D1における一端側及び他端側にそれぞれ配置されているため、ブロー成形金型13中では渦電流RCは延伸方向D1に発生し易くなる。従って、渦電流抑制部110がブロー成形金型13中で延伸方向D1に流れる渦電流RCの発生を抑制することで、ブロー成形金型13内の渦電流RCを効率よく低減することができる。本実施形態では、上型12及び下型11を延伸方向D1に分割する高抵抗部125A,125Bが、特に延伸方向D1に流れる渦電流RCの発生を抑制することができる。なお、上型12及び下型11を横方向D2に分割する高抵抗部120A,120Bは、高抵抗部125A,125Bに比して渦電流RCを直接低減する効果は少ないが、ブロー成形金型13内の磁力線の広がりを抑制できるという効果が大きい。
また、渦電流抑制部110は、ブロー成形金型13を構成する金属材料に比して抵抗が高い高抵抗部120A,120B,125A,125Bによって構成されている。この場合、高抵抗部120A,120B,125A,125Bで渦電流RCがせき止められることによって、渦電流RCが流れにくくなり、渦電流RCの発生を抑制することができる。例えば、図7において、高抵抗部125A,125Bが設けられていない場合、上型12及び下型11内において、渦電流RCは延伸方向D1における一端側から他端側の全域に亘って、せき止められることなく大きな流れを形成することができる。従って、渦電流RCが大きくなってしまう。一方、高抵抗部125A,125Bが渦電流RCをせき止めることで、渦電流RCは限られた範囲内での小さな流れを形成することとなるため、渦電流RCを低減することができる。
また、成形装置10は、ブロー成形金型13を支持するホルダ140A,140Bを更に備える。ブロー成形金型13は、高抵抗部120A,120B,125A,125Bで分割された複数の分割部材130A,131A,130B,131Bと、ホルダ140A,140Bとブロー成形金型13との取り付け部側に設けられ、複数の分割部材130A,131A,130B,131Bを支持するベース部材135A,135Bと、を備えている。この場合、高抵抗部120A,120B,125A,125Bで分割された複数の分割部材130A,131A,130B,131Bが、ホルダ140A,140Bとブロー成形金型13との取り付け部側にて金属材料によって一体的に構成されたベース部材135A,135Bで支持される。従って、分割部材130A,131A,130B,131B同士の位置精度を向上することができる。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
上述の実施形態では、高抵抗部120A,120Bは、上型12及び下型11のキャビティ側の面から露出していた。これに代えて、例えば、図8及び図9に示すような構成を採用してもよい。すなわち、図8及び図9に示すように、高抵抗部120A,120B,125A,125Bは、上型12及び下型11のキャビティ側においては、金属材料に覆われていてよい。図8に示すように、高抵抗部120A,120Bのキャビティ側の端部120Aa,120Baは、上型12及び下型11内部に配置されており、上型12及び下型11のキャビティ側の面から内側へ離間している。図9に示すように、高抵抗部125A,125Bのキャビティ側の端部125Aa,125Baは、上型12及び下型11内部に配置されており、上型12及び下型11のキャビティ側の面から内側へ離間している。この場合、ブロー成形金型13のキャビティ側には高抵抗部120A,120B,125A,125Bが露出した部分が設けられないため、金型の表面に段差等が形成されない。従って、ブロー成形金型13による金属パイプ100の成形時に、当該金属パイプ100が高抵抗部120A,120B,125A,125Bと接触することを回避し、成形性を向上することができる。
なお、高抵抗部120A,120B,125A,125Bの構成は上述のような構成に限定されない。例えば、高抵抗部120A,120Bの横方向D2における位置、及び数量は限定されず、上下方向及び延伸方向D1に対する角度も垂直でなくともよい。また、高抵抗部120A,120Bは、図8に示すようにキャビティ側の端部が金型表面から離間するのみならず、反対側の端部がベース部材から離間していてもよい。また、高抵抗部120A,120Bは、上下方向又は延伸方向D1における中途位置で分断されていてもよい。同様に、高抵抗部125A,125Bの延伸方向D1における位置、及び数量は限定されず、上下方向及び横方向D2に対する角度も垂直でなくともよい。また、高抵抗部125A,125Bは、図9に示すようにキャビティ側の端部が金型表面から離間するのみならず、反対側の端部がベース部材から離間していてもよい。また、高抵抗部125A,125Bは、上下方向又は横方向D2における中途位置で分断されていてもよい。なお、高抵抗部120A,120B,125A,125Bの少なくとも何れかが設けられていればよく、一部を省略してもよい。
また、上述の実施形態では、絶縁体を用いて高抵抗部を構成していたが、空隙を形成することによって高抵抗部を構成してもよい。この場合であっても、空気の抵抗が金属材料よりも高いため、高抵抗部として機能する。
また、上記実施形態に係る駆動機構80は、上型12のみを移動させているが、上型12に加えて、または上型12に代えて下型11が移動するものであってもよい。下型11が移動する場合、当該下型11は基台15に固定されず、駆動機構80のスライドに取り付けられる。
また、上記実施形態に係る金属パイプは、その片側にフランジ部を有していてもよい。この場合、上型12及び下型11によって形成されるサブキャビティ部は一つとなる。また、金属パイプはフランジ部を有していなくともよい。その場合はサブキャビティ部が設けられない。