JP2018000072A - ノボスフィンゴビウム属細菌、微生物製剤、及びシクロプロパンカルボン酸誘導体の分解方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】シクロプロパンカルボン酸誘導体を分解しうる細菌、該細菌を含む微生物製剤、及びシクロプロパンカルボン酸誘導体の分解方法を提供することを課題とする。【解決手段】本発明は、以下の(a)及び(b)からなる群より選ばれる1つの塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有し、且つ、シクロプロパンカルボン酸誘導体分解能を有する、ノボスフィンゴビウム属細菌を提供する。(a)配列番号1に記載の塩基配列(b)配列番号2に記載の塩基配列と比較し、塩基の相違数が25塩基以下の塩基配列【選択図】なし
Description
本発明は、シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解能を有するノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌、該細菌を含む微生物製剤、及びシクロプロパンカルボン酸誘導体の分解方法に関する。
化学工業及び鉄鋼工業等の重化学工業等の活動から生じる排水は、有機物を除去し、ヒト及び環境生物に対する影響を十分に低下させた状態で自然環境中に排出されることが望まれている。
排水に含まれる有機物は工場等によって様々であるが、例えば、シクロプロパンカルボン酸誘導体が含まれることがある。
有機物を除去するための排水処理方法としては、例えば、有機物を含む排水を600℃以上に加熱したチャンバー内に噴霧して有機物を熱分解・燃焼する排水の処理方法が報告されている(特許文献1)。
しかしながら、近年、地球環境に対する意識が社会全体で高まってきており、より環境に与える影響の少ない生物学的処理方法が求められている。
本発明は、シクロプロパンカルボン酸誘導体を分解しうる細菌、該細菌を含む微生物製剤、及びシクロプロパンカルボン酸誘導体の分解方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[10]に関する。
[1]以下の(a)及び(b)からなる群より選ばれる1つの塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有し、且つ、シクロプロパンカルボン酸誘導体分解能を有する、ノボスフィンゴビウム属細菌。
(a)配列番号1に記載の塩基配列
(b)配列番号2に記載の塩基配列と比較し、塩基の相違数が25塩基以下の塩基配列
[2](a)の塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有する、[1]に記載のノボスフィンゴビウム属細菌。
[3](b)の塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有する、[1]に記載のノボスフィンゴビウム属細菌。
[4]配列番号2に記載の塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有する、[1]又は[3]に記載のノボスフィンゴビウム属細菌。
[5]受託番号NITE BP−02266として寄託された、ノボスフィンゴビウム属細菌。
[6]受託番号NITE BP−02267として寄託された、ノボスフィンゴビウム属細菌。
[7][1]〜[6]のいずれか一つに記載のノボスフィンゴビウム属細菌を含む、微生物製剤。
[8]シクロプロパンカルボン酸誘導体に、ノボスフィンゴビウム属細菌、又はノボスフィンゴビウム属細菌を含む微生物製剤を作用させる工程を有する、シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解方法。
[9]シクロプロパンカルボン酸誘導体に、[1]〜7のいずれか一つに記載のノボスフィンゴビウム属細菌、若しくは以下A群より選ばれるいずれかのノボスフィンゴビウム属細菌、又はこれらのノボスフィンゴビウム属細菌を含む微生物製剤を作用させる工程を有する、シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解方法。
A群:Novosphingobium tardaugens、Novosphingobium naphthalenivorans、Novosphingobium sediminis、Novosphingobium lentum、Novosphingobium aquiterrae
[10]シクロプロパンカルボン酸誘導体に、[1]〜[7]のいずれか一つに記載のノボスフィンゴビウム属細菌、又はこれらのノボスフィンゴビウム属細菌を含む微生物製剤を作用させる工程を有する、シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解方法。
[1]以下の(a)及び(b)からなる群より選ばれる1つの塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有し、且つ、シクロプロパンカルボン酸誘導体分解能を有する、ノボスフィンゴビウム属細菌。
(a)配列番号1に記載の塩基配列
(b)配列番号2に記載の塩基配列と比較し、塩基の相違数が25塩基以下の塩基配列
[2](a)の塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有する、[1]に記載のノボスフィンゴビウム属細菌。
[3](b)の塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有する、[1]に記載のノボスフィンゴビウム属細菌。
[4]配列番号2に記載の塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有する、[1]又は[3]に記載のノボスフィンゴビウム属細菌。
[5]受託番号NITE BP−02266として寄託された、ノボスフィンゴビウム属細菌。
[6]受託番号NITE BP−02267として寄託された、ノボスフィンゴビウム属細菌。
[7][1]〜[6]のいずれか一つに記載のノボスフィンゴビウム属細菌を含む、微生物製剤。
[8]シクロプロパンカルボン酸誘導体に、ノボスフィンゴビウム属細菌、又はノボスフィンゴビウム属細菌を含む微生物製剤を作用させる工程を有する、シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解方法。
[9]シクロプロパンカルボン酸誘導体に、[1]〜7のいずれか一つに記載のノボスフィンゴビウム属細菌、若しくは以下A群より選ばれるいずれかのノボスフィンゴビウム属細菌、又はこれらのノボスフィンゴビウム属細菌を含む微生物製剤を作用させる工程を有する、シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解方法。
A群:Novosphingobium tardaugens、Novosphingobium naphthalenivorans、Novosphingobium sediminis、Novosphingobium lentum、Novosphingobium aquiterrae
[10]シクロプロパンカルボン酸誘導体に、[1]〜[7]のいずれか一つに記載のノボスフィンゴビウム属細菌、又はこれらのノボスフィンゴビウム属細菌を含む微生物製剤を作用させる工程を有する、シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解方法。
本発明によれば、環境に与える影響の少ないシクロプロパンカルボン酸誘導体の分解方法を提供する、シクロプロパンカルボン酸誘導体分解能を有するノボスフィンゴビウム属細菌、該細菌を含む微生物製剤、及び当該シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解方法を提供することが可能となる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
(共通する用語の説明)
本明細書において、「シクロプロパンカルボン酸誘導体」とは、シクロプロパンカルボン酸のシクロプロパン環の化学変化によって生成する化合物であって、シクロプロパンカルボン酸のシクロプロパン環を構成する少なくとも1つの炭素原子が置換基を有する化合物を意味する。
シクロプロパン環の化学変化としては、シクロプロパン環を構成する炭素原子への置換反応、付加反応等が挙げられる。
シクロプロパンカルボン酸誘導体のシクロプロパン環を構成する炭素原子が有する置換基としては、炭素原子数1〜4のアルキル基、及び炭素原子数1〜4のアルケニル基が挙げられる。
ここで、アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
シクロプロパンカルボン酸誘導体のシクロプロパン環を構成する炭素原子が有する置換基は、シクロプロパン環の2位の炭素原子に結合する置換基が、いずれもメチル基であり、3位の炭素原子に結合する置換基が、2-メチル-1-プロペニル基であることが好ましい。 シクロプロパンカルボン酸誘導体としては、例えば、(1R,3R)−2,2−ジメチル−3−(2−メチルプロップ−1−エン−1−イル)シクロプロパン−1−カルボン酸が挙げられる。
本明細書において、「シクロプロパンカルボン酸誘導体」とは、シクロプロパンカルボン酸のシクロプロパン環の化学変化によって生成する化合物であって、シクロプロパンカルボン酸のシクロプロパン環を構成する少なくとも1つの炭素原子が置換基を有する化合物を意味する。
シクロプロパン環の化学変化としては、シクロプロパン環を構成する炭素原子への置換反応、付加反応等が挙げられる。
シクロプロパンカルボン酸誘導体のシクロプロパン環を構成する炭素原子が有する置換基としては、炭素原子数1〜4のアルキル基、及び炭素原子数1〜4のアルケニル基が挙げられる。
ここで、アルキル基及びアルケニル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
シクロプロパンカルボン酸誘導体のシクロプロパン環を構成する炭素原子が有する置換基は、シクロプロパン環の2位の炭素原子に結合する置換基が、いずれもメチル基であり、3位の炭素原子に結合する置換基が、2-メチル-1-プロペニル基であることが好ましい。 シクロプロパンカルボン酸誘導体としては、例えば、(1R,3R)−2,2−ジメチル−3−(2−メチルプロップ−1−エン−1−イル)シクロプロパン−1−カルボン酸が挙げられる。
本明細書において、「シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解能」とは、シクロプロパンカルボン酸誘導体を代謝して、シクロプロパンカルボン酸誘導体とは異なる化合物に変換する能力を指す。
(ノボスフィンゴビウム属細菌)
本発明に係るノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌は、以下の(a)及び(b)からなる群より選ばれる1つの塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有し、且つ、シクロプロパンカルボン酸誘導体分解能を有する。
(a)配列番号1に記載の塩基配列
(b)配列番号2に記載の塩基配列と比較し、塩基の相違数が25塩基以下の塩基配列
本発明に係るノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌は、以下の(a)及び(b)からなる群より選ばれる1つの塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有し、且つ、シクロプロパンカルボン酸誘導体分解能を有する。
(a)配列番号1に記載の塩基配列
(b)配列番号2に記載の塩基配列と比較し、塩基の相違数が25塩基以下の塩基配列
本発明に係るノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌の一実施形態としては、配列番号1に記載の塩基配列を有する16S rRNA遺伝子を有し、且つ、シクロプロパンカルボン酸誘導体分解能を有する。
配列番号1に記載の塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有するノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌の代表的な菌株としては、Novosphingobium sp.(受託番号NITE BP−02266、原寄託日:2016年5月26日)として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD、住所:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 122号室)にブダペスト条約に基づいて寄託されている菌株を挙げることができる。該菌株の菌学的性質については、後述する表1〜4に示す。
本発明のノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌の別の実施形態としては、配列番号2に記載の塩基配列と比較し、塩基の相違数が25塩基以下の塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有し、且つ、シクロプロパンカルボン酸誘導体分解能を有する。
本実施形態のノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌の16S rRNA遺伝子は、配列番号2に記載の塩基配列と比較したときの塩基の相違数が20塩基以下の塩基配列を有していてもよく、塩基の相違数が10塩基以下の塩基配列を有していてもよく、塩基の相違数が5塩基以下の塩基配列を有していてもよい。また、本実施形態のNovosphingobium属細菌の16S rRNA遺伝子は、配列番号2に記載の塩基配列を有していてもよい。
本実施形態のノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌の16S rRNA遺伝子は、配列番号2に記載の塩基配列と比較したときの塩基の相違数が20塩基以下の塩基配列を有していてもよく、塩基の相違数が10塩基以下の塩基配列を有していてもよく、塩基の相違数が5塩基以下の塩基配列を有していてもよい。また、本実施形態のNovosphingobium属細菌の16S rRNA遺伝子は、配列番号2に記載の塩基配列を有していてもよい。
配列番号2に記載の塩基配列を有する16S rRNA遺伝子を有するNovosphingobium属細菌の代表的な菌株としては、Novosphingobium sp.(受託番号NITE BP−02267、原寄託日:2016年5月26日)として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD、住所:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8 122号室)にブダペスト条約に基づいて寄託されている菌株を挙げることができる。該菌株の菌学的性質については、後述する表5〜8に示す。
本発明に係るノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌は、シクロプロパンカルボン酸誘導体分解能を有している。
本発明に係るノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌のシクロプロパンカルボン酸誘導体分解活性は、反応条件(シクロプロパンカルボン酸誘導体の種類及び濃度、反応液の組成、温度、pH、菌体数等)によって変化する。
例えば、上述の本発明に係るノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌の代表的菌株(NITE BP−02266)を、100mg/mLの湿菌体濃度、20〜35℃の温度条件下、6.5〜8.0のpH条件下で用いることで、100ppm(mg/Lを意味する。以下同様とする。)のシクロプロパンカルボン酸誘導体を2日間で、80%程度分解することができる。
例えば、上述の本発明に係るノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌の代表的菌株(NITE BP−02266)を、100mg/mLの湿菌体濃度、20〜35℃の温度条件下、6.5〜8.0のpH条件下で用いることで、100ppm(mg/Lを意味する。以下同様とする。)のシクロプロパンカルボン酸誘導体を2日間で、80%程度分解することができる。
本発明のノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌は、対象微生物の16S rRNA遺伝子の塩基配列の解析、及びシクロプロパンカルボン酸誘導体の分解能の測定により、特定することができる。
具体的には、対象微生物が、以下の(a)及び(b)からなる群より選ばれる1つの塩基配列を有する16S rRNA遺伝子を有し、且つ、シクロプロパンカルボン酸誘導体分解能を有していれば、その対象微生物は、本発明のNovosphingobium属細菌であると特定できる。
(a)配列番号1に記載の塩基配列
(b)配列番号2に記載の塩基配列と比較し、塩基の相違数が25塩基以下の塩基配列
具体的には、対象微生物が、以下の(a)及び(b)からなる群より選ばれる1つの塩基配列を有する16S rRNA遺伝子を有し、且つ、シクロプロパンカルボン酸誘導体分解能を有していれば、その対象微生物は、本発明のNovosphingobium属細菌であると特定できる。
(a)配列番号1に記載の塩基配列
(b)配列番号2に記載の塩基配列と比較し、塩基の相違数が25塩基以下の塩基配列
塩基配列の解析において、対象微生物のDNAから16S rRNA遺伝子を増幅させる方法としては、特に制限されるものではなく、当業者が通常用いることができるユニバーサルプライマーを用いるPCR法等が挙げられる。PCR法により得られた増幅産物を、DNAシークエンサー等に供し、塩基配列を解析することができる。
シクロプロパンカルボン酸誘導体分解能を調べる方法としては、例えば、対象微生物と、シクロプロパンカルボン酸誘導体とを、適切な培地又は緩衝液中で一定時間反応させた後、培地又は緩衝液中におけるシクロプロパンカルボン酸誘導体の分解を調べる方法が挙げられる。分解を調べる方法としては、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析法(MS)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、核磁気共鳴(NMR)、ガスクロマトグラフィー(GC)等を用いてシクロプロパンカルボン酸誘導体量の減少を検出する方法等が挙げられる。
これらの塩基配列解析及びシクロプロパンカルボン酸誘導体分解能の測定の結果に基づき、対象微生物が本発明のNovosphingobium属細菌であるかを判断できる。
本発明に係るノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌は、シクロプロパンカルボン酸誘導体分解能を有することから、シクロプロパンカルボン酸誘導体を多く含む排水の処理等に有用である。
(微生物製剤)
本発明に係る微生物製剤は、上記ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌を含む。
本発明に係る微生物製剤は、上記ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌を含む。
微生物製剤は、本発明のノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌の他に、必要に応じて、各種添加剤や担体を含むことができる。また、微生物製剤は、本発明のノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌以外の他の細菌を含む微生物製剤でもよいし、実質的に本発明のノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌からなる微生物製剤でもよい。
ここで、実質的に本発明のノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌からなる微生物製剤とは、シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解に影響を与えない他の細菌を含むが、シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解に影響を与える他の細菌を含まない微生物製剤を意味する。シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解に影響を与える他の細菌であることを確認方法する方法としては、例えば、100mg/mLの湿菌体濃度、20〜35℃の温度、6.5〜8.0のpH条件下、100ppmのシクロプロパンカルボン酸誘導体の減少をHPLC、MS、TLC、NMR、GC等を用いて検出する方法が挙げられる。当該方法により、シクロプロパンカルボン酸誘導体が減少していれば、シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解に影響を与える他の細菌と判定し、シクロプロパンカルボン酸誘導体が減少していなければ、シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解に影響を与えない他の細菌と判定する。
微生物製剤の具体例としては、本発明に係るノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌、添加剤、及び担体を含む微生物製剤を挙げることができる。
ここで、実質的に本発明のノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌からなる微生物製剤とは、シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解に影響を与えない他の細菌を含むが、シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解に影響を与える他の細菌を含まない微生物製剤を意味する。シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解に影響を与える他の細菌であることを確認方法する方法としては、例えば、100mg/mLの湿菌体濃度、20〜35℃の温度、6.5〜8.0のpH条件下、100ppmのシクロプロパンカルボン酸誘導体の減少をHPLC、MS、TLC、NMR、GC等を用いて検出する方法が挙げられる。当該方法により、シクロプロパンカルボン酸誘導体が減少していれば、シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解に影響を与える他の細菌と判定し、シクロプロパンカルボン酸誘導体が減少していなければ、シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解に影響を与えない他の細菌と判定する。
微生物製剤の具体例としては、本発明に係るノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌、添加剤、及び担体を含む微生物製剤を挙げることができる。
担体としては、例えば、無機微粒子担体が挙げられる。
無機微粒子担体としては、金属及びその無機塩類又は酸化物であってもよく、炭素を含有するものであっても化学的に無機物に分類されるものであってもよく、又は有機態炭素の含有量が1%程度未満の純物質又は混合物であってもよい。
無機微粒子担体としては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)、ヒドロキシアパタイト(カルシウムリン酸ヒドロキシド)等の工業製品(規格外品や副産物、廃品を含む)、活性汚泥等の有機性廃棄物の焼却灰、及び火力発電又はコークス炉の燃えかすである石炭焼却灰等が挙げられる。
無機微粒子担体としては、金属及びその無機塩類又は酸化物であってもよく、炭素を含有するものであっても化学的に無機物に分類されるものであってもよく、又は有機態炭素の含有量が1%程度未満の純物質又は混合物であってもよい。
無機微粒子担体としては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)、ヒドロキシアパタイト(カルシウムリン酸ヒドロキシド)等の工業製品(規格外品や副産物、廃品を含む)、活性汚泥等の有機性廃棄物の焼却灰、及び火力発電又はコークス炉の燃えかすである石炭焼却灰等が挙げられる。
無機微粒子担体としては、中でも、安価であり、簡便な操作で得ることができ、また微生物の活性発現が短期間で生じるといった観点から、石炭焼却灰が好ましい。石炭焼却灰の中でも、クリンカアッシュ又はフライアッシュが好ましく、ふるい分け等を行わなくても中心粒子径が100μm以下であることから、フライアッシュがより好ましい。無機微粒子担体としては、クリンカアッシュも粉砕して中心粒子径を調整することで、フライアッシュと同様に用いることができる。クリンカアッシュ又はフライアッシュの組成は、特に制限されるものではない。
無機微粒子担体の中心粒子径は、1μm〜100μmが好ましく、4μm〜75μmがより好ましく、13μm〜25μmが更に好ましい。中心粒子径がこのような範囲の場合、シクロプロパンカルボン酸誘導体分解能を有する、ノボスフィンゴビウム属細菌を含むバイオマス(活性汚泥等)及び無機微粒子担体を混合した際に、両者が凝集しやすくなり、好適な量のクロプロパンカルボン酸誘導体分解能を有する、ノボスフィンゴビウム属細菌を含むバイオマス(活性汚泥等)が無機微粒子担体に担持されやすくなる傾向にある。
無機微粒子担体の比重は、特に制限されないが、1.2〜3.5が好ましい。
無機微粒子担体は、培養初期の歩留まりを向上させることを目的として、必要に応じて、各種凝集剤を用いて凝集させてもよい。凝集剤としては、例えば、ノニオン性、カチオン性、アニオン性の高分子凝集剤等が挙げられる。
微生物製剤の製造方法としては、例えば、本発明のノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌を含む培養液又はバイオマス(活性汚泥等)と無機微粒子担体とを混合し、無機微粒子担体上に本発明のノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌を担持させ、これを培養して得られる微生物製剤を回収する方法が挙げられる。
培養方法としては、回分、半回分、流加、連続のいずれの方式を用いてもよい。培養方法としては、例えば、増殖が遅く菌体収率の低い微生物を効率的に調製するという観点から、特開平9−187272号公報に記載されるように、微生物を培養する容器(以下、反応槽という)へ供給する対象化合物の濃度を培養時間の経過に伴い、対数増加させる連続培養方式を用いてもよい。
(シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解方法)
本発明に係るシクロプロパンカルボン酸誘導体の分解方法は、シクロプロパンカルボン酸誘導体に、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌又はノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌を含む微生物製剤を作用させる工程を含む。
本発明に係るシクロプロパンカルボン酸誘導体の分解方法は、シクロプロパンカルボン酸誘導体に、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌又はノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌を含む微生物製剤を作用させる工程を含む。
シクロプロパンカルボン酸誘導体に、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌又はノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌を含む微生物製剤を作用させることによって、シクロプロパンカルボン酸誘導体が分解する。
シクロプロパンカルボン酸誘導体に、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌又はノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌を含む微生物製剤を作用させる工程は、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌が死滅しない、又は当該細菌が有するシクロプロパンカルボン酸誘導体分解能が失われない条件であれば、特に制限されるものではない。
当該工程は、例えば、温度が20〜35℃の条件下であってもよく、25〜30℃の条件下であってもよく、pHが6.5〜8.0の条件下であってもよく、7.0〜7.5の条件下であってもよい。
当該工程は、例えば、温度が20〜35℃の条件下であってもよく、25〜30℃の条件下であってもよく、pHが6.5〜8.0の条件下であってもよく、7.0〜7.5の条件下であってもよい。
当該分解方法におけるノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌は、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌であれば特に制限されず、シクロプロパンカルボン酸誘導体のみ分解が可能なノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌であってもよいし、シクロプロパンカルボン酸誘導体、及びシクロプロパンカルボン酸誘導体以外の化合物の分解が可能なノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌であってもよい。
本発明に係る分解方法において用いるノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌としては、シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解活性が良好であることから、上述のノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌、又は以下A群より選ばれるいずれかのノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌であることが好ましく、上述のノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌であることがより好ましい。
A群:Novosphingobium tardaugens、Novosphingobium naphthalenivorans、Novosphingobium sediminis、Novosphingobium lentum、Novosphingobium aquiterrae
A群:Novosphingobium tardaugens、Novosphingobium naphthalenivorans、Novosphingobium sediminis、Novosphingobium lentum、Novosphingobium aquiterrae
シクロプロパンカルボン酸誘導体に作用させる際のノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌又は微生物製剤の量は、シクロプロパンカルボン酸誘導体の濃度、反応系の容積等を考慮し、適宜設定することができる。
本発明に係る分解方法において、分解がおこなわれていることの確認方法は、特に制限されるものではなく、当業者が通常用いることができる方法により行われる。このような確認方法としては、例えば、HPLC、MS、TLC、NMR、GC等を用いてシクロプロパンカルボン酸誘導体量の減少を検出する方法等が挙げられる。
実施例1.(1R,3R)−2,2−ジメチル−3−(2−メチルプロップ−1−エン−1−イル)シクロプロパン−1−カルボン酸(以下、化合物1又は基質と呼ぶことがある)の分解能を有する微生物群の探索
(方法)
化合物1を炭素源とした培地を用いて、活性汚泥中に存在する微生物群を培養することにより、化合物1を分解する微生物を集積培養した。次に、集積培養された微生物群から、数菌株を単離し、単離した数菌株の化合物1分解能を評価した。
化合物1を炭素源とした培地を用いて、活性汚泥中に存在する微生物群を培養することにより、化合物1を分解する微生物を集積培養した。次に、集積培養された微生物群から、数菌株を単離し、単離した数菌株の化合物1分解能を評価した。
(結果)
単離した数菌株のうち、2つの菌株に化合物1分解能が認められた。
単離した数菌株のうち、2つの菌株に化合物1分解能が認められた。
実施例2.化合物1の分解能を有するノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌の16S rRNA遺伝子のクローニング及び塩基配列解析
(材料)
・LB液体培地:500mLの超純水に対し、LB Broth,1.1G PER TABLET(SIGMA社製)を10個の割合で溶解し、高圧蒸気滅菌をしたもの。
・LB寒天培地:LB Agar(SIGMA社製)を10個の割合で溶解し、高圧蒸気滅菌し、これをプラスチックシャーレに約25mLずつ分注したもの。
・クローニング用フォワードプライマー(27f:配列番号3)
・クローニング用リバースプライマー(1492r:配列番号4)
・シークエンス解析用プライマー(M13F:配列番号5、M13R:配列番号6、339F:配列番号7、536R:配列番号8、907F:配列番号9)
(材料)
・LB液体培地:500mLの超純水に対し、LB Broth,1.1G PER TABLET(SIGMA社製)を10個の割合で溶解し、高圧蒸気滅菌をしたもの。
・LB寒天培地:LB Agar(SIGMA社製)を10個の割合で溶解し、高圧蒸気滅菌し、これをプラスチックシャーレに約25mLずつ分注したもの。
・クローニング用フォワードプライマー(27f:配列番号3)
・クローニング用リバースプライマー(1492r:配列番号4)
・シークエンス解析用プライマー(M13F:配列番号5、M13R:配列番号6、339F:配列番号7、536R:配列番号8、907F:配列番号9)
(方法)
実施例1で化合物1分解能が認められた2つの菌株からDNAを抽出し、クローニングの鋳型DNAとして用いた。
実施例1で化合物1分解能が認められた2つの菌株からDNAを抽出し、クローニングの鋳型DNAとして用いた。
25.0μLの2×PCR buffer for KOD FX(東洋紡社製)、10.0μLのdNTP mix(2mM)、1.5μLのクローニング用フォワードプライマー及びクローニング用リバースプライマー(それぞれ10pmol/μL)、0.58μLの鋳型DNA、10.4μLの滅菌水、1.0μLのDNAポリメラーゼ(KOD FX、1U/μL、東洋紡社製)を、マイクロチューブに加え、混合した。マイクロチューブをPCR装置に供し、鋳型DNAの増幅反応を行った。
反応は、(1)94℃、2分間、(2)98℃、10秒間、(3)50℃、30秒間、(4)68℃、1.5分間で行い、(2)〜(4)の工程は35サイクル繰り返し行った。PCR後の増幅産物を精製し、クローニングに用いた。
反応は、(1)94℃、2分間、(2)98℃、10秒間、(3)50℃、30秒間、(4)68℃、1.5分間で行い、(2)〜(4)の工程は35サイクル繰り返し行った。PCR後の増幅産物を精製し、クローニングに用いた。
増幅産物とZero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(Invitrogen社製)を用いて、クローニングを行った。1μLのpCRII−Blunt−TOPO、1μLの増幅産物、1μLのSalt solution、3μLの滅菌超純水を加えた反応液を室温で5分間混合後し、これを氷中に保存した。2μLの上記反応液と50μLの大腸菌DH5α(Takara社製)とを混合し、これを氷中に30分間静置した。静置後、42℃で30秒間インキュベートし、これを氷中に保存した。
この反応液にSOC培地を450μL加えた後、得られた混合物を37℃、200rpm、1時間振盪培養した。LBプレート(カナマイシン終濃度50μg/mL)に培養液を塗布し、これを培養(37℃、20時間)した。
この反応液にSOC培地を450μL加えた後、得られた混合物を37℃、200rpm、1時間振盪培養した。LBプレート(カナマイシン終濃度50μg/mL)に培養液を塗布し、これを培養(37℃、20時間)した。
得られた大腸菌DH5αのコロニーをピックアップし、ピックアップされた大腸菌DH5αを4mLのLB培地(カナマイシン終濃度50μg/mL)で37℃、16時間培養した。得られた大腸菌DH5αからプラスミド抽出装置(QIAcube、QIAGEN社製)を用いてプラスミドを抽出することにより、プラスミド溶液を得た。
得られたプラスミド溶液3.0μLと、EcoRIを5U相当量と、10×H buffer 1μLとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を10.0μLとした混合液を調製した。この混合液を、37℃にて2時間インキュベーションした。インキュベーションを行った後、EcoRI処理したサンプルを1.0%アガロースゲル電気泳動に供し、16S rRNA遺伝子断片がEcoRIにより切り出されていることを確認した。
プラスミド溶液150ng相当量と、シークエンス解析用プライマー(10μM)0.32μLと、BigDye Terminator v3.1 (Applied Biosystems社製)8.0μLとを混合し、これに滅菌超純水を加えて液量を20.0μLとした反応液を調製した。この反応液をPCR装置に供し、増幅反応を行った。反応は、(1)96℃、1分間、(2)96℃、10秒間、(3)50℃、5秒間、(4)60℃、4分間で行い、(2)〜(4)の工程は25サイクル繰り返し行った。
得られた反応液をDNAシーケンス解析に供して、化合物1の分解能を有する微生物から抽出した鋳型DNAの塩基配列を決定した。決定した塩基配列はRDP Classifierを用いて属レベルで由来を決定した。
得られた反応液をDNAシーケンス解析に供して、化合物1の分解能を有する微生物から抽出した鋳型DNAの塩基配列を決定した。決定した塩基配列はRDP Classifierを用いて属レベルで由来を決定した。
(結果)
塩基配列解析の結果、シークエンス解析に供したサンプルは、いずれもノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌由来の16S rRNA遺伝子であることが示唆された。
このときの16S rRNA遺伝子の塩基配列を配列番号1及び2に示す。このことから、配列番号1及び2に記載の塩基配列を有する16S rRNA遺伝子を有する細菌は、化合物1の分解能を持つことが示唆された。以下、配列番号1に記載の塩基配列を有する16S rRNA遺伝子を有する細菌を菌株A、配列番号2に記載の塩基配列を有する16S rRNA遺伝子を有する細菌を菌株Bと表すこともある。
塩基配列解析の結果、シークエンス解析に供したサンプルは、いずれもノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌由来の16S rRNA遺伝子であることが示唆された。
このときの16S rRNA遺伝子の塩基配列を配列番号1及び2に示す。このことから、配列番号1及び2に記載の塩基配列を有する16S rRNA遺伝子を有する細菌は、化合物1の分解能を持つことが示唆された。以下、配列番号1に記載の塩基配列を有する16S rRNA遺伝子を有する細菌を菌株A、配列番号2に記載の塩基配列を有する16S rRNA遺伝子を有する細菌を菌株Bと表すこともある。
実施例3.配列番号1に記載の塩基配列を有する16S rRNA遺伝子を有するNovosphingobium属細菌の同定試験
(方法)
菌株Aについて、16S rRNA遺伝子の塩基配列解析、形態観察及び生理・生化学的性状試験を行った。これらの試験は、光学顕微鏡による形態観察、BARROWらの方法(Cowan and Steel’s Manual for the Identification of Medical Bacteria 3rd Edition 1993、Cambridge University Press.)及びAPI20NE(bioMerieux社製、Lyon、France)によって行った。
(方法)
菌株Aについて、16S rRNA遺伝子の塩基配列解析、形態観察及び生理・生化学的性状試験を行った。これらの試験は、光学顕微鏡による形態観察、BARROWらの方法(Cowan and Steel’s Manual for the Identification of Medical Bacteria 3rd Edition 1993、Cambridge University Press.)及びAPI20NE(bioMerieux社製、Lyon、France)によって行った。
(結果)
表1〜4に、形態観察及び生理・生化学的性状試験の試験結果を示す。配列番号1に記載の塩基配列は、基準株の中では、Novosphingobium resinovorum NCIMB8767の16S rRNA遺伝子の塩基配列に対し、99.9%と高い相同性を示した。しかし、配列番号1に記載の塩基配列と完全に一致する16S rRNA遺伝子を持つ微生物は存在しなかった。
表1〜4に、形態観察及び生理・生化学的性状試験の試験結果を示す。配列番号1に記載の塩基配列は、基準株の中では、Novosphingobium resinovorum NCIMB8767の16S rRNA遺伝子の塩基配列に対し、99.9%と高い相同性を示した。しかし、配列番号1に記載の塩基配列と完全に一致する16S rRNA遺伝子を持つ微生物は存在しなかった。
菌株Aは、N−アセチル−D−グルコサミンを資化せず、バリンアリルアミダーゼ及びα―グルコシダーゼ活性を示さないが、16S rRNA遺伝子の相同性が最も高いN.resinovorum NCIMB8767にはこのような特徴がみられなかった。そのため、菌株Aは、従来のNovosphingobium resinovorumとは異なる、新規の株であることが示唆された。菌株AをNovosphingobium sp.NITE BP−02266として寄託した。
実施例4.配列番号2に記載の塩基配列を有する16S rRNA遺伝子を有するノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌の同定試験
(方法)
菌株Bについて、上記同様に16S rRNA遺伝子の塩基配列解析、形態観察及び生理・生化学的性状試験を行った。
(方法)
菌株Bについて、上記同様に16S rRNA遺伝子の塩基配列解析、形態観察及び生理・生化学的性状試験を行った。
(結果)
表5〜8に、形態観察及び生理・生化学的性状試験の試験結果を示す。配列番号2に記載の塩基配列は、基準株の中では、Novosphingobium soli CC−TPE−1 の16S rRNA遺伝子の塩基配列に対し、98.2%と最も高い相同性を示した。しかし、配列番号2に記載の塩基配列と完全に一致する16S rRNA遺伝子を持つ微生物は存在しなかった。
表5〜8に、形態観察及び生理・生化学的性状試験の試験結果を示す。配列番号2に記載の塩基配列は、基準株の中では、Novosphingobium soli CC−TPE−1 の16S rRNA遺伝子の塩基配列に対し、98.2%と最も高い相同性を示した。しかし、配列番号2に記載の塩基配列と完全に一致する16S rRNA遺伝子を持つ微生物は存在しなかった。
菌株Bは、硝酸塩を還元せず、インドールを産生せず、ウレアーゼ活性を示さず、エスクリン及びゼラチンを加水分解せず、各基質を資化しなかった。また、菌株Bは、4℃及び嫌気条件下で生育せず、アルカリホスファターゼ、リパーゼ(C14)、バリン アリルアミダーゼなどの活性を示さず、エステラーゼ(C4)やエステラーゼリパーゼ(C8)などの活性を示した。これらの性状は、16S rRNA遺伝子の相同性が最も高いNovosphingobium soliと多くの相違点が認められた。また、菌株Bの性状と一致する既知種は認められず、菌株Bは、新規の種であることが示唆された。菌株BをNovosphingobium sp.NITE BP−02267として寄託した。
実施例6.Novosphingobium sp.NITE BP−02266及びNovosphingobium sp.NITE BP−02267の化合物分解能解析
(材料)
・LB液体培地:500mLの超純水に対し、LB Broth,1.1G PER TABLET(SIGMA社製)を10個の割合で溶解し、高圧蒸気滅菌をしたもの。
・化合物1:ALDRICH社製
・LB液体培地:500mLの超純水に対し、LB Broth,1.1G PER TABLET(SIGMA社製)を10個の割合で溶解し、高圧蒸気滅菌をしたもの。
・化合物1:ALDRICH社製
(方法)
Novosphingobium sp.NITE BP−02266及びNovosphingobium sp.NITE BP−02267をLB液体培地4.0mLに植菌し、30℃で前培養した。前培養液4.0mLを100mLの培地に添加し、本培養を行った。
Novosphingobium sp.NITE BP−02266及びNovosphingobium sp.NITE BP−02267をLB液体培地4.0mLに植菌し、30℃で前培養した。前培養液4.0mLを100mLの培地に添加し、本培養を行った。
培養終了後、培養液を6,000×g、4℃で5分間遠心分離し、菌体を回収した。回収した菌体を生理食塩液20mLで洗浄後、湿菌体濃度が100mg/mLとなるように50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)に懸濁した。懸濁液1.0mLと200ppmの化合物1を含むリン酸緩衝液1.0mLとをねじ口試験管に添加して、30℃、200rpmにて反応させた。
反応液200μLをサンプリングし、遠心分離により沈殿物を除去し、上清を回収した。回収した上清をフィルターろ過した。得られたろ液100μLを、下記の条件による高速液体クロマトグラフィーを用いて解析した。
HPLC条件
カラム:SUMIPAX ODS A−211(4.6mmφ×25cm、5μm、住化分析センター社製)
移動相:A液0.01%TFA、B液アセトニトリル
溶出方法:アイソクラティック
溶出条件:A液(%):B液(%)
0分、40:60
20分、40:60
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
検出:220nm
カラム:SUMIPAX ODS A−211(4.6mmφ×25cm、5μm、住化分析センター社製)
移動相:A液0.01%TFA、B液アセトニトリル
溶出方法:アイソクラティック
溶出条件:A液(%):B液(%)
0分、40:60
20分、40:60
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
検出:220nm
(結果)
図1には、湿菌体濃度100mg/mLのNovosphingobium sp.NITE BP−02266を用いて、終濃度100ppmの化合物1を分解した時の、化合物1の残存率(基質残存率)の経時変化を示す。基質残存率は、(各時間経過後における化合物1の濃度[ppm])/100[ppm])×100の値を意味する。基質残存率は、反応開始から65時間後には18%になった。
図1には、湿菌体濃度100mg/mLのNovosphingobium sp.NITE BP−02266を用いて、終濃度100ppmの化合物1を分解した時の、化合物1の残存率(基質残存率)の経時変化を示す。基質残存率は、(各時間経過後における化合物1の濃度[ppm])/100[ppm])×100の値を意味する。基質残存率は、反応開始から65時間後には18%になった。
図2には、湿菌体濃度100mg/mLのNovosphingobium sp.NITE BP−02267を用いて、終濃度100ppmの化合物1を分解した時の、基質残存率の経時変化を示す。基質残存率は、反応開始から65時間後には24%になった。
実施例7.ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌の化合物分解能解析
(材料)
・R2A培地:1000mLの超純水に対し、R2A Broth, DAIGO (日本製薬株式会社製) を3.2gの割合で溶解し,高圧蒸気滅菌をしたもの。
・802培地:10gポリペプトン、2 g酵母エキス、1g硫酸マグネシウム七水和物を超純水に溶解し、pHを7.0に調節した後、1000mLに調製し、高圧蒸気滅菌したもの。
(材料)
・R2A培地:1000mLの超純水に対し、R2A Broth, DAIGO (日本製薬株式会社製) を3.2gの割合で溶解し,高圧蒸気滅菌をしたもの。
・802培地:10gポリペプトン、2 g酵母エキス、1g硫酸マグネシウム七水和物を超純水に溶解し、pHを7.0に調節した後、1000mLに調製し、高圧蒸気滅菌したもの。
(方法)
ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌の湿菌体を調製する際に、表9記載の培地、培養温度を用いたこと以外は、実施例6と同様の方法で化合物分解能解析を行った。
ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌の湿菌体を調製する際に、表9記載の培地、培養温度を用いたこと以外は、実施例6と同様の方法で化合物分解能解析を行った。
(結果)
表10には、湿菌体濃度100mg/mLのノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌と化合物1とを1週間反応させた時の基質残存率を示す。ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌であれば特に制限されず、化合物1の分解が可能であった。
表10には、湿菌体濃度100mg/mLのノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌と化合物1とを1週間反応させた時の基質残存率を示す。ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)属細菌であれば特に制限されず、化合物1の分解が可能であった。
Claims (10)
- 以下の(a)及び(b)からなる群より選ばれる1つの塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有し、且つ、シクロプロパンカルボン酸誘導体分解能を有する、ノボスフィンゴビウム属細菌。
(a)配列番号1に記載の塩基配列
(b)配列番号2に記載の塩基配列と比較し、塩基の相違数が25塩基以下の塩基配列 - (a)の塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有する、請求項1に記載のノボスフィンゴビウム属細菌。
- (b)の塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有する、請求項1に記載のノボスフィンゴビウム属細菌。
- 配列番号2に記載の塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有する、請求項1又は3に記載のノボスフィンゴビウム属細菌。
- 受託番号NITE BP−02266として寄託された、ノボスフィンゴビウム属細菌。
- 受託番号NITE BP−02267として寄託された、ノボスフィンゴビウム属細菌。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載のノボスフィンゴビウム属細菌を含む、微生物製剤。
- シクロプロパンカルボン酸誘導体に、ノボスフィンゴビウム属細菌、又はノボスフィンゴビウム属細菌を含む微生物製剤を作用させる工程を有する、シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解方法。
- シクロプロパンカルボン酸誘導体に、請求項1〜7のいずれか一項に記載のノボスフィンゴビウム属細菌若しくは以下A群より選ばれるいずれかのノボスフィンゴビウム属細菌、又はこれらのノボスフィンゴビウム属細菌を含む微生物製剤を、作用させる工程を有する、シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解方法。
A群:Novosphingobium tardaugens、Novosphingobium naphthalenivorans、Novosphingobium sediminis、Novosphingobium lentum、Novosphingobium aquiterrae - シクロプロパンカルボン酸誘導体に、請求項1〜7のいずれか一項に記載のノボスフィンゴビウム属細菌又はこれらのノボスフィンゴビウム属細菌を含む微生物製剤を、作用させる工程を有する、シクロプロパンカルボン酸誘導体の分解方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2016129923A JP2018000072A (ja) | 2016-06-30 | 2016-06-30 | ノボスフィンゴビウム属細菌、微生物製剤、及びシクロプロパンカルボン酸誘導体の分解方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN114214228A (zh) * | 2021-12-08 | 2022-03-22 | 江苏富泰天塬生物科技有限公司 | 一种复合微生物菌剂及其制备方法 |
-
2016
- 2016-06-30 JP JP2016129923A patent/JP2018000072A/ja active Pending
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