本発明者は、上述の課題を解決するにあたり、示差走査熱量計(DSC)で昇温速度及び降温速度を100℃/minで測定したときの吸熱曲線において、1度目及び2度目の昇温過程における吸熱ピークの半値幅を所定の範囲に制御することにより、解決できることを見出し、本発明に至った。
本発明における吸熱ピークは、離型剤及び結晶性ポリエステルに由来する吸熱ピークを意味する。さらに、離型剤及び結晶性ポリエステルの総称として、結晶性物質とする。
一般的なDSCの測定方法は、例えばJIS K 7121(国際規格はASTM D3418−82)に準拠する方法の場合、昇温速度を10℃/minとして測定する場合が多い。ここで、プリンターの印字速度を向上させた場合の白抜けという問題に着目すると、トナーが定着器に付着しないためには、例えば、数ミリ秒から数十ミリ秒という非常に短い時間で、トナーが溶融し、紙に結着する必要がある。そこで、本発明者らは、結晶性物質が結着樹脂を可塑する能力に着目し検討を行ったところ、DSCの昇温・降温速度を一般の10℃/minから100℃/minへ変更することが有効であることを見出した。
10℃/minで測定した場合、1度目の昇温により、結晶性物質が溶融した際の吸熱カーブが得られ、昇温が完了した時点では、結晶性物質が結着樹脂を可塑した状態となっている。その後、冷却を行うことにより、結晶性物質は結晶化し、結着樹脂と結晶性物質は、再び分離した状態に戻る。そして、2度目の昇温により、結晶性物質が再度溶融した際の吸熱カーブが得られる。この一連の測定では、測定の速度が結晶性物質の移動に対して十分に遅い速度である。このため、10℃/minの測定条件で得られるパラメーターは、トナーが定着器から直接熱を受け取ることができる時間である、数ミリ秒から数十ミリ秒を想定した画像欠陥である白抜けを説明できない。
一方、1度目の昇温、降温、2度目の昇温を全て100℃/minで行った場合について、説明する。
1度目の昇温は、より実際の時間スケールに近い、DSCを測定する際の昇温速度のため、シャープメルト性の高い結着樹脂及び結晶性物質の組み合わせでのみ、吸熱ピークがシャープである半値幅を示す。ここで、昇温が完了した温度では、結晶性物質が結着樹脂を可塑した状態となっている。この時、十分なシャープメルト性を有していないトナーは、結晶性物質の溶融や結着樹脂への可塑が、高速昇温の速度に追従できないため、吸熱ピークが発現しなかったり、吸熱ピークがブロードになってしまったりする。
続いて、降温を行う。結晶性物質が結着樹脂を可塑した状態から、100℃/minで冷却することで、結晶性物質が十分に結晶化する時間がないため、先ほどの昇温後の可塑状態を維持したまま、冷却が完了する。
そして、上述の可塑状態を維持した状態で、再度、100℃/minという高速で昇温を行う。結晶性物質が結着樹脂を十分に可塑した状態で昇温することにより、結晶性物質独自の吸熱ピークではなく、両者が混ざり合った状態の吸熱ピークとなるため、ブロードになり、その結果、半値幅L2がブロードになる。
本発明は、示差走査熱量計(DSC)で昇温速度及び降温速度100℃/minで測定したときの吸熱曲線において、1度目の昇温過程、2度目の昇温過程における吸熱ピークの半値幅をそれぞれL1、L2としたとき、
L1が4.0℃以上8.0℃以下
L2/L1が1.30以上4.00以下
である。
即ち、1度目の昇温過程における吸熱ピークの半値幅がある程度シャープであることと、1度目の昇温過程における吸熱ピークの半値幅L1よりも、2度目の昇温過程における吸熱ピークの半値幅L2が、ブロードであることを意味する。前者は、上述のように、高速昇温に対して、結晶性樹脂の溶融及び結着樹脂に対する可塑が、十分に追従できるといった、溶融・可塑の「速度」を示す。後者は、このような高速昇温においても、結晶性物質が結着樹脂を分子レベルまで十分に可塑できているといった、溶融・可塑の「質」を示す。
本発明において、上述の画像欠陥である白抜けを解決するためには、数ミリ秒から数10ミリ秒という非常に短い時間でトナーを溶融し、紙に結着する必要があるため、L1及びL2/L1を所定の範囲に制御することが重要である。
本発明において、1度目の昇温過程における吸熱カーブの半値幅L1が、4.0℃以上8.0℃以下である。L1が上述の範囲を満たす場合、高速昇温においても、結晶性物質が溶融し、結着樹脂を可塑できることを示す。L1が4.0℃未満となるトナーに関しては、本発明者らの検討によると、製造することが困難である。L2が8.0℃より高い場合、結晶性物質の溶融または結着樹脂への可塑が、高速昇温に対して十分に追従することができないことを示し、白抜けが悪化してしまう。
本発明において、2度目の昇温過程における吸熱ピークの半値幅をL2としたとき、L2/L1が1.30以上4.00以下である。L2/L1が上述の範囲を満たす場合、一連の高速の昇温・降温測定においても、結晶性物質が結着樹脂を分子レベルまで十分に可塑できていることを示す。L2/L1が1.30未満の場合、十分な可塑が得られず、白抜けを解決できない。L2/L1が4.00より高いトナーに関しては、本発明者らの検討によると、製造することが困難である。
このように、L1及びL1/L2を上述の範囲に制御することにより、結晶性物質の溶融・可塑の速度及び質を同時に向上することができ、数ミリ秒から数10ミリ秒という非常に短い時間でトナーを溶融することができる。その結果、白抜けという課題を解決することができる。
本発明において、L1及びL1/L2を上述の範囲に制御するためには、後述するように、結晶性物質の制御及び結着樹脂との組み合わせの最適化、結晶性物質のドメインの制御などにより達成することが可能である。
本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤、離型剤及び結晶性ポリエステルを含有するトナー粒子を有するトナーであって、該結晶性ポリエステルの融点P(p)が65.0℃以上85.0℃以下であり、該離型剤の融点P(r)が65.0℃以上85.0℃以下である。
結晶性物質として離型剤及び結晶性ポリエステルを併用することにより、トナーの溶融変形及び紙への結着、定着器に対する離型性能といった、定着性に必要な幅広いトナー特性を得ることができる。特に、本発明におけるL1およびL1/L2の半値幅を所定の範囲に制御するためには、離型剤及び結晶性ポリエステルのトナー内部における存在状態を好ましい状態に制御することが好ましい。
本発明においては、高速昇温に対して追従するために、結晶性物質である離型剤及び結晶性ポリエステルが微小なドメインを形成した状態で、トナー内部に分散していることが好ましい。具体的には、結晶性物質のドメインの長径の個数平均径を5nm以上500nm以下に制御することが好ましい。ドメインの長径を上述の範囲に制御した場合、高速の昇温においても、迅速に溶融することが出来るとともに、周囲の結着樹脂を可塑し易くなる。
本発明においては、上述の結晶性物質のドメインにおいて、離型剤が上述の微小なドメインを形成した状態であり、かつ、結晶性ポリエステルが、離型剤を被覆率70%以上で覆ったドメインであることが好ましい。結晶性ポリエステルはシャープメルト性に優れるが、高分子であるため、結着樹脂を可塑する速度が劣る。一方、離型剤は分子量が比較的小さいため、結着樹脂を可塑する速度に優れる。このため、離型剤のドメインの周囲を結晶性ポリエステルが被覆した状態の場合、離型剤の押し出し効果により結晶性ポリエステルが結着樹脂の分子鎖にしみこんでいき、分子レベルで結着樹脂を可塑しやすくなる。その結果、白抜けをさらに改善しやすくなり、非常に好ましい。
本発明においては、結着樹脂が、スチレンアクリル系樹脂を主成分とすると、離型剤や結晶性ポリエステルの数nmオーダーのドメインを安定的に作り易いため、好ましい。
さらに、上述の結晶性ポリエステルが離型剤のドメインを被覆した結晶性物質のドメインと組み合わせることにより、白抜け等の画像欠陥が非常に発生し難い低温定着性を有するとともに、高温高湿環境における良好な保存性を有するトナーを得ることができ、非常に好ましい。具体的には、結晶性ポリエステルは、スチレンアクリル系樹脂と相分離しやすい傾向にあり、良好な保存性を得られやすい。さらに、結晶性ポリエステルが離型剤のドメインを被覆した結晶性物質のドメインの効果により、分子レベルで結着樹脂を可塑することも可能である。このため、低温定着性と保存性を高度に両立したトナーを製造することができるため、非常に好ましい。
本発明に好適な離型剤及び結晶性ポリエステルの存在状態に制御する手法としては、トナーを懸濁重合法で製造するとともに、後述する冷却工程を行うことが好ましい。これにより、離型剤を結晶性ポリエステルが覆った際の結晶性物質のドメインの大きさ、上述の被覆を達成しやすい。このため、本発明の100℃/minにおけるDSCの測定において、L1およびL1/L2を所定の範囲に制御しやすくなる。
本発明で使用出来る結晶性ポリエステルについて述べる。
本発明の結晶性ポリエステルは公知のものを使用出来る。更に、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、更に脂肪族モノカルボン酸の縮合物であることが好ましい。脂肪族モノカルボン酸は分子量や水酸基価の調整がし易くなることに加えて、離型剤との親和性を制御出来るため、好ましい形態である。さらに、結着樹脂がスチレンアクリル系樹脂を主成分とする場合、結晶性ポリエステルが結着樹脂の分子鎖にさらに分子レベルで可塑し易くなり、数m秒から数10m秒という非常に短い時間におけるシャープメルト性に優れるため、好ましい。下記には結晶性ポリエステルが脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族モノカルボン酸の縮合物であり、且つ飽和ポリエステルである場合について使用出来るモノマーを例示する。
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール等が挙げられる。
脂肪族モノカルボン酸としては、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸(リグノセリン酸)等が挙げられる。
本発明で使用する結晶性ポリエステルは、炭素数10以上30以下の直鎖脂肪族モノアルコール及び/又は、炭素数11以上31以下の直鎖脂肪族モノカルボン酸に由来する部位であることが好ましい。
離型剤および離型剤を覆う結晶性ポリエステルのドメインが熱的に安定化傾向であるため、好ましい。また、後述するように、本発明における結着樹脂は、スチレンアクリル系樹脂であることが好ましいが、スチレンアクリル系樹脂に対して、上述の部位を有する結晶性ポリエステルを使用することが非常に好ましい。その理由であるが、上述の部位がスチレンアクリル系樹脂との相溶性が高く、迅速に結着樹脂を可塑することができるためである。
結晶性ポリエステルの結晶性の点で、カルボン酸成分のうち、直鎖型脂肪族ジカルボン酸の含有量が80mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましい。また、結晶性ポリエステルの結晶性の点で、ポリオール成分のうち、直鎖型脂肪族ジオールの含有量が80モル%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましく、100mol%であることがさらに好ましい。
本発明で使用する結晶性ポリエステルの融点は、65.0℃以上85.0℃以下である。融点は、使用するカルボン酸成分、アルコール成分の組み合わせで決まるため、上記範囲に入るよう、適宜選択する。
結晶性ポリエステルの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
本発明に用いられる結晶性ポリエステルは、通常のポリエステル合成法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸成分とジアルコ−ル成分をエステル化反応、又はエステル交換反応せしめた後、減圧下又は窒素ガスを導入して常法に従って重縮合反応させることによって得ることができる。
エステル化又はエステル交換反応の時には、必要に応じて硫酸、ターシャリーブチルチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウム等の通常のエステル化触媒又はエステル交換触媒を用いることができる。また、重合に関しては、通常の重合触媒、例えば、ターシャリーブチルチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム等の公知のものを使用することができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、必要に応じて任意に選択すればよい。
前記触媒としてはチタン触媒を用いると望ましく、キレート型チタン触媒であると更に望ましい。これはチタン触媒の反応性が適当であり、本発明において望ましい分子量分布のポリエステルが得られるためである。
結晶性ポリエステルは重量平均分子量(Mw)が10000以上60000以下であることが好ましく、15000以上50000以下であることがより好ましく、25000以上45000以下であることがさらに好ましい。その理由であるが、トナー製造工程において、結晶性ポリエステルを結着樹脂と相分離させやすく、現像性に優れる傾向があるとともに、保存性に優れるためである。
結晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は、結晶性ポリエステルの種々の製造条件によって制御可能である。
また、結晶性ポリエステルの酸価は、トナー内への分散性を考えた場合に低く制御しておくことが好ましく、具体的には8.0mgKOH/g以下である。より好ましくは、5.0mgKOH/g以下であり、更に好ましくは4.5mgKOH/g以下である。
結晶性ポリエステルの水酸基価に関しては、吸湿性の観点からも低く制御しておくことが好ましく、具体的には40.0mgKOH/g以下である。より好ましくは30.0mgKOH/g以下であり、更に好ましくは10.0mgKOH/g以下である。
次に、離型剤について述べる。
本発明に用いる離型剤の融点は、65.0℃以上85.0℃以下である。また、本発明に用いる離型剤の重量平均分子量(Mw)は400以上4000以下であることが好ましく、500以上2500以下であることがより好ましい。離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
離型剤としては、以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、またはそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したもの;パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
本発明においては、脂肪酸エステルを主成分とするワックス(以下、エステルワックス)を離型剤として使用すると、結晶性ポリエステルとの親和性を制御しやすく、好ましい。
以下に、本発明に好適に用いることの出来るエステルワックスを挙げる。なお、以下で述べる官能数は、1分子中に含まれるエステル基の数を示している。例えば、ベヘン酸ベヘニルであれば1官能のエステルワックスであり、ジペンタエリスリトールヘキサベヘネートであれば6官能のエステルワックス、と呼ぶ。
1官能のエステルワックスとしては、炭素数6〜12の脂肪族アルコールと長鎖カルボン酸の縮合物や、炭素数4〜10の脂肪族カルボン酸と長鎖アルコールの縮合物が使用出来る。ここで、長鎖カルボン酸や長鎖アルコールは、任意のものが使用出来るが、本発明の融点を満たし得るようなモノマーを組み合わせる必要がある。
脂肪族アルコールの例としては、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコールが挙げられる。また、脂肪族カルボン酸の例としては、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸が挙げられる。
2官能のエステルワックスとしては、ジカルボン酸とモノアルコール、ジオールとモノカルボン酸の組み合わせが使用出来る。
ジカルボン酸としてアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸が挙げられる。
ジオールとしては、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールが挙げられる。
ジカルボン酸と縮合させるアルコールとしては、脂肪族アルコールが好ましい。具体的には、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール等が挙げられる。中でも、ドコサノールは定着性や現像性の観点で好ましい。
ジオールと縮合させるカルボン酸としては、脂肪族カルボン酸が好ましい。具体的には、脂肪酸としてラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸等が挙げられる。中でも、ベヘン酸は定着性や現像性の観点で好ましい。
なお、ここでは直鎖脂肪酸、直鎖アルコールを例示したが、分岐構造を有していても構わない。
3官能以上のエステルワックスも使用出来る。ここでは、3官能以上のエステルワックスを得る場合の例を挙げる。
3官能のエスエルワックスとしては、グリセリン化合物と1官能の脂肪族カルボン酸の縮合物が挙げられる。4官能のエステルワックスとしては、ペンタエリスリトールと1官能の脂肪族カルボン酸の縮合物、ジグリセリンとカルボン酸の縮合物が挙げられる。5官能のエステルワックスとしては、トリグリセリンと1官能の脂肪族カルボン酸の縮合物が挙げられる。6官能のエステルワックスとしては、ジペンタエリスリトールと1官能の脂肪族カルボン酸の縮合物、テトラグリセリンと1官能の脂肪族カルボン酸の縮合物が挙げられる。
エステルワックスとしては、2官能〜6官能のものを用いることにより、結晶性物質のドメインにおいて、離型剤が結晶性ポリエステルに被覆された時の被覆率を高める事ができ、好ましい。
本発明において、トナーの示差走査熱量分析装置(DSC)で測定される昇温速度100℃/分で測定したときの吸熱曲線において、1度目の昇温過程における吸熱ピークの吸熱量ΔHが15.0J/g以上25.0J/g以下であることが好ましい。昇温速度100℃で昇温する際においても、十分な吸熱量を有することにより、トナーの溶融変形が一定以上となるため、白抜けをさらに改良出来る。
本発明において、該結晶性ポリエステルの融点P(p)と、該離型剤の融点P(r)が、下記式1を満足することが好ましい。
P(p)≦P(r)+5(℃) (式1)
上述の範囲を満足する場合、結晶性ポリエステルが溶融する前に離型剤の溶融が開始し、離型剤による結晶性ポリエステルの押し出し効果がさらに向上する。さらに好ましい範囲は、下記式2を満足する範囲である。
P(p)≦P(r)+10(℃) (式2)
本発明で用いる結晶性ポリエステルの構造および含有量、離型剤の含有量は下記のような分析方法があるため、例として述べる。まず、トナーをテトラヒドロフランによって抽出して、大部分の樹脂成分を除去する。ここで、外添剤等、樹脂分以外のものは比重差を利用して遠心分離で除去しておく。残った樹脂分は、結晶性ポリエステルと離型剤の混合物であるため、分取型LCにより結晶性ポリエステルおよび離型剤をそれぞれ単離し、核磁気共鳴分光分析(1H−NMR)等の構造解析することで、構造を特定する。また、重量を測定することで離型剤と結晶性ポリエステルの総量を知ることができる。
結晶性ポリエステルの含有量を得るには、トナーと分取後の結晶性ポリエステルそれぞれの核磁気共鳴分光分析結果を見比べ、結晶性ポリエステル特有のピークと結着樹脂由来のピークの面積比を取ることで得られる。
本発明のトナーに用いられる結着樹脂としては、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂を用いることができ、これらは単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。この中でも特にスチレン−アクリル酸ブチルに代表されるスチレン系共重合体が現像特性、定着性等の点で好ましい。さらに、L1およびL1/L2を本発明の範囲に制御するために、結着樹脂全量に対するスチレン系共重合体の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。また、結着樹脂はその他公知の樹脂を組み合わせて使用することもできる。スチレン系共重合体の含有量を上述の範囲に制御した場合、本発明のL1及びL1/L2を所望の範囲に制御しやすくなる。その理由であるが、筆者らは以下のように考えている。スチレン系重合体は離型剤と比較的相溶しづらい傾向にある。その結果、熱を受けた際、離型剤が結着樹脂を可塑することにのみ使用されずに、結晶性ポリエステルを押し出す作用が発生し、結晶性ポリエステルが結着樹脂を可塑することを助けることにも使用される傾向にある。また、結晶性ポリエステルが、離型剤を被覆率70%以上で覆ったドメインである場合、上記押し出し効果がさらに顕著に働き、白抜けをさらに改善しやすくなるため、好ましい。
上記スチレン系共重合体を形成する重合性単量体としては、以下のものが例示できる。
スチレン系重合性単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンの如きスチレン系重合性単量体が挙げられる。
アクリル系重合性単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体が挙げられる。
メタクリル系重合性単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体が挙げられる。
なお、スチレン系共重合体の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
本発明に用いられる着色剤としては、以下の有機顔料、有機染料、及び、無機顔料が挙げられる。
シアン系着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、及び、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。
マゼンタ系着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及び、ペリレン化合物。 イエロー系着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及び、アリルアミド化合物が挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、及び、上記イエロー系着色剤、マゼンタ系着色剤、シアン系着色剤、および磁性粉体を用いて黒色に調色されたものが挙げられる。
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本発明に用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、及び、トナー粒子中の分散性の点から選択される。
本発明のトナーに関しては、上記の中でもトナー製法への適用し易さの観点及び、トナーの熱伝導率を高めに制御することができるという観点により磁性粉体が好ましい。本発明のトナーは、公知のいずれの方法によっても製造することが可能であるが、水系媒体中で製造することが好ましい。
本発明のトナーに磁性粉体を用いる場合、磁性粉体は、四三酸化鉄やγ−酸化鉄などの磁性酸化鉄を主成分とするものであり、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、珪素などの元素を含んでもよい。これら磁性粉体は、窒素吸着法によるBET比表面積が2から30m2/gであることが好ましく、3から28m2/gであることがより好ましい。また、モース硬度が5から7のものが好ましい。磁性粉体の形状としては、多面体、8面体、6面体、球形、針状、鱗片状などがあるが、多面体、8面体、6面体、球形等の異方性の少ないものが、画像濃度を高める上で好ましい。
磁性粉体は、個数平均粒径が0.10から0.40μmであることが好ましい。一般に磁性粉体の粒径は小さい方が着色力は上がるものの磁性粉体が凝集しやすくなるため、上記範囲が着色力と凝集性のバランスの観点で好ましい。
なお、磁性粉体の個数平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定できる。具体的には、エポキシ樹脂中へ観察すべきトナー粒子を十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を得る。得られた硬化物をミクロトームにより薄片状のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)において1万倍ないしは4万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の磁性粉体粒子径を測定する。そして、磁性粉体の投影面積に等しい円の相当径を基に、個数平均粒径の算出を行う。また、画像解析装置により粒径を測定することも可能である。
本発明のトナーに用いられる磁性粉体は、例えば下記の方法で製造することができる。第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウム等のアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHをpH7以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄粉体の芯となる種晶をまず生成する。
次に、種晶を含むスラリー状の液に前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを5から10に維持しながら空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粉体を成長させる。この時、任意のpH及び反応温度、撹拌条件を選択することにより、磁性粉体の形状及び磁気特性をコントロールすることが可能である。酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは5未満にしない方が好ましい。このようにして得られた磁性体を定法によりろ過、洗浄、乾燥することにより磁性粉体を得ることができる。
また、本発明において水系媒体中でトナーを製造する場合、磁性粉体表面を疎水化処理することが非常に好ましい。乾式にて表面処理をする場合、洗浄・ろ過・乾燥した磁性粉体にカップリング剤処理を行う。湿式にて表面処理を行う場合、酸化反応終了後、乾燥させたものを再分散させる、又は酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化鉄体を乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させ、カップリング処理を行う。本発明においては、乾式法及び湿式法どちらも適宜選択出来る。
本発明における磁性粉体の表面処理において使用できるカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。より好ましく用いられるのはシランカップリング剤であり、一般式(I)で示されるものである。
RmSiYn (I)
[式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1から3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基などの官能基を示し、nは1から3の整数を示す。但し、m+n=4である。]
本発明においては、一般式(I)のYがアルキル基であるものが好ましく用いることが出来る。中でも好ましいのは、炭素数3以上6以下のアルキル基であり、特に好ましくは3又は4である。
上記シランカップリング剤を用いる場合、単独で処理する、或いは複数の種類を併用して処理することが可能である。複数の種類を併用する場合、それぞれのカップリング剤で個別に処理してもよいし、同時に処理してもよい。
用いるカップリング剤の総処理量は磁性粉体100質量部に対して0.9質量部以上3.0質量部以下であることが好ましく、磁性粉体の表面積、カップリング剤の反応性等に応じて処理剤の量を調整することが重要である。
本発明では、磁性粉体以外に他の着色剤を併用しても良い。併用し得る着色剤としては、上記した公知の染料及び顔料の他、磁性又は非磁性の無機化合物が挙げられる。具体的には、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属粒子、又はこれらにクロム、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、希土類元素などを加えた合金。ヘマタイトなどの粒子、チタンブラック、ニグロシン染料/顔料、カーボンブラック、フタロシアニン等が挙げられる。これらもまた、表面を処理して用いることが好ましい。
なお、トナー中の磁性粉体の含有量の測定は、パーキンエルマー社製熱分析装置、TGA7を用いて測定することができる。測定方法は以下の通りである。窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃までトナーを加熱する。100℃から750℃まで間の減量質量%を結着樹脂量とし、残存質量を近似的に磁性粉体量とする。
本発明において、トナーの熱伝導率が0.220W/(m・K)以上であることが好ましい。トナーの熱伝導率は、定着器の熱をトナーが受けたとき、その熱が周囲のトナーに伝達する速度を示す。本発明のトナーは、一粒一粒が非常に良好なシャープメルト性を有しており、さらに、トナーの熱伝導率が高いことで、定着器の熱を効率よくトナー一粒へ伝達することが可能となる。そのため、非常に低温定着性が良好となるため、好ましい。
熱伝導率は、伝熱性の高い金属粉や金属酸化物をトナーに含有することで制御できる。加えて、それらのトナー中における存在状態の制御も必要である。本発明の好ましい形態としては、後述する懸濁重合法を用いてトナーを製造することにより、トナー一粒で考えると表面近傍に分散させやすく、熱伝導率の高いトナーを得やすいため、好ましい。
本発明のトナーは、必要に応じて荷電制御剤を用いることもできる。荷電制御剤としては公知のものが利用できるが、摩擦帯電速度が速く、かつ一定の摩擦帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を懸濁重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が求められる。
荷電制御剤としてはトナーを負荷電性に制御するものと正荷電性に制御するものがある。トナーを負荷電性に制御するものとしては、例えば以下のものが挙げられる。モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸およびダイカルボン酸系の金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノおよびポリカルボン酸およびその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールのようなフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、および、荷電制御樹脂が挙げられる。
トナーを正荷電性に制御する荷電制御剤としては、例えば以下のものが挙げられる。グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような4級アンモニウム塩、および、これらの類似体であるホスホニウム塩のようなオニウム塩およびこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料およびこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、および、フェロシアン化物);高級脂肪酸の金属塩;荷電制御樹脂。
上記の荷電制御剤は、単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。
これら荷電制御剤の中でも、含金属サリチル酸系化合物が好ましく、特にその金属がアルミニウムもしくはジルコニウムであるものが好ましい。
荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100.0質量部に対して0.01質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上10.0質量部以下である。
また、荷電制御樹脂としては、スルホン酸基、スルホン酸塩基またはスルホン酸エステル基を有する重合体または共重合体を用いることが好ましい。スルホン酸基、スルホン酸塩基またはスルホン酸エステル基を有する重合体としては、特にスルホン酸基含有アクリルアミド系モノマーまたはスルホン酸基含有メタクリルアミド系モノマーを共重合比で2質量%以上含有することが好ましい。より好ましくは共重合比で5質量%以上含有することである。荷電制御樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が35℃以上90℃以下、ピーク分子量(Mp)が10,000以上30,000以下、重量平均分子量(Mn)が25,000以上50,000以下であるものが好ましい。この荷電制御樹脂を用いた場合、トナー粒子に求められる熱特性に影響を及ぼすことなく、好ましい摩擦帯電特性を付与することができる。さらに、荷電制御樹脂がスルホン酸基を含有しているため、着色剤の分散液中の荷電制御樹脂自身の分散性、および、着色剤の分散性が向上し、着色力、透明性、および、摩擦帯電特性をより向上させることができる。
本発明によって製造されるトナーの重量平均粒径(D4)は3.0μm以上12.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは4.0μm以上10.0μm以下である。重量平均粒径(D4)が3.0μm以上12.0μm以下であると良好な流動性が得られ、潜像に忠実に現像することが出来る。
本発明のトナーは、公知のいずれの方法によっても製造することが可能であるが、本発明のトナーは結晶性ポリエステルや離型剤の存在状態を制御する上でも水系媒体中でトナーを製造することが好ましい。ただし、乳化凝集法の場合、樹脂粒子の大きさは1.0μm以下で安定化することが多いため、例えば、一度粉として取り出し、湿式分級等で上記粒径の粒子を取り出して再度製造工程に戻す等の工夫が必要である。一方、懸濁重合法は結晶性物質の分散状態の制御や数nmオーダーのドメインの形成に関する制御を行いやすく、好ましい。
以下に、懸濁重合法について述べる。
懸濁重合法とは、重合性単量体及び着色剤(更に必要に応じて重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤)を均一に溶解又は分散させて重合性単量体組成物を得る。その後、この重合性単量体組成物を分散剤を含有する連続層(例えば水相)中に適当な撹拌器を用いて分散し同時に重合反応を行なわせ、所望の粒径を有するトナーを得るものである。この懸濁重合法で得られるトナー(以後「重合トナー」ともいう)は、個々のトナー粒子形状がほぼ球形に揃っているため、帯電量の分布も比較的均一となるために画質の向上が期待できる。
本発明に関わる重合トナーの製造において、重合性単量体組成物を構成する重合性単量体としては以下のものが挙げられる。
重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類;その他のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の単量体が挙げられる。これらの単量体は単独で、又は混合して使用し得る。上述の単量体の中でも、スチレンを単独で、或いは他の単量体と混合して使用することがトナーの現像特性及び耐久性の点から好ましい。
本発明のトナーの重合法による製造において使用される重合開始剤としては、重合反応時における半減期が0.5から30時間であるものが好ましい。また、重合性単量体100質量部に対して0.5から20質量部の添加量で用いて重合反応を行うと、分子量5,000から50,000の間に極大を有する重合体を得、トナーに望ましい強度と適当な溶融特性を与えることができる。
具体的な重合開始剤例としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート等の過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
本発明のトナーを重合法により製造する際は、架橋剤を添加しても良く、好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.001質量部以上15質量部以下である。
ここで架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のような芳香族ジビニル化合物;例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物;が単独で、又は2種以上の混合物として用いられる。
本発明のトナーを重合法で製造する方法では、一般に上述のトナー組成物等を適宜加えて、ホモジナイザー、ボールミル、超音波分散機等の分散機に依って均一に溶解又は分散させた重合性単量体組成物を、分散剤を含有する水系媒体中に懸濁する。この時、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになる。重合開始剤添加の時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体又は溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
造粒後は、通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行なえば良い。
本発明のトナーを製造する場合には、分散剤として公知の界面活性剤や有機分散剤・無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤は、有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いため、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸三カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、ヒドロキシアパタイト等の燐酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機化合物が挙げられる。
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.2質量部以上20質量部以下を使用することが望ましい。また、上記分散剤は単独で用いても良いし、複数種を併用してもよい。更に、0.001質量部以上0.1質量部以下の界面活性剤を併用しても良い。
これら無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用しても良いが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させて用いることができる。例えば、燐酸三カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。この時、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合による超微粒トナーが発生し難くなるので、より好都合である。
界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等が挙げられる。
上記重合性単量体を重合する工程において、重合温度は40℃以上、一般には50から90℃の温度に設定される。
上記重合性単量体の重合終了して着色粒子を得た後、着色粒子が水系媒体に分散した状態で、結晶性ポリエステル及び離型剤の融点を超える温度まで、昇温させる。重合温度が上述の融点を超えている場合、この操作は必要ない。
結晶性ポリエステルを結晶化させる目的でのトナーの製造方法に関して述べる。例えば粉砕法や懸濁重合、乳化重合によってトナーを製造する場合、一度結晶性ポリエステルやエステルワックスが融解するような温度まで昇温し、その後常温まで冷却する工程を含むことが多い。冷却工程について考えると、昇温によって液化した結晶性ポリエステルは温度が下がるにつれて分子運動が鈍くなり、結晶化温度付近に到達すると結晶化が始まる。更に冷却すると結晶化が進み、常温では完全に固化する。本発明者らの検討によると、冷却速度によって結晶性ポリエステルが最終的に結晶化する量が異なることが分かった。具体的には、結晶性ポリエステルの融点以上の温度から50℃±5℃まで5.0℃/分以上の速度で冷却すると結晶量が高まる傾向であった。さらに、50℃付近の温度で保持することにより、離型剤の周囲に結晶性ポリエステルが成長を促すことができ、本発明の効果をさらに高める事ができる被覆率を向上させることができ、好ましい。さらに、離型剤及び結晶性ポリエステルの結晶化度を高めることができ、保存性をさらに改善することが可能となる。そのため、低温定着性と保存性の両立を高度に達成することが可能となる。冷却速度の好ましい範囲は、30.0℃/分以上であり、さらに好ましい範囲は、70.0℃/分以上である。また、好ましい保持時間は、1時間以上であり、さらに好ましい範囲は2時間以上である。
得られた重合体粒子を公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥することによりトナー粒子が得られる。このトナー粒子に、後述するような無機微粉体を必要に応じて混合して該トナー粒子の表面に付着させることで、本発明のトナーを得ることができる。また、製造工程(無機微粉体の混合前)に分級工程を入れ、トナー粒子中に含まれる粗粉や微粉をカットすることも可能である。
本発明のトナーは上述したような製造方法によって得たトナー粒子に対して、必要に応じて流動化剤等の添加剤を混合し、トナーとする。混合方法に関しては、公知の手法を用いることが出来、例えばヘンシェルミキサは好適に用いることのできる装置である。
本発明のトナーは、流動化剤として個数平均1次粒径が4から80nm、より好ましくは6から40nmの無機微粉体がトナー粒子に添加されることが好ましい形態である。無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー粒子の帯電均一化のために添加されるが、無機微粉体を疎水化処理するなどの処理によってトナーの帯電量の調整、環境安定性の向上等の機能を付与することも好ましい形態である。無機微粉体の個数平均1次粒径の測定法は、走査型電子顕微鏡により拡大撮影したトナーの写真を用いて行う。
本発明で用いられる無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナなどが使用できる。シリカ微粉体としては、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能である。しかし、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2-等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、それらも包含する。
個数平均1次粒径が4から80nmの無機微粉体の添加量は、トナー粒子に対して0.1から3.0質量%であることが好ましく、添加量が0.1質量%未満ではその効果が十分ではなく、3.0質量%超では定着性が悪くなる。無機微粉体の含有量は、蛍光X線分析を用い、標準試料から作成した検量線を用いて定量できる。
本発明において無機微粉体は疎水化処理された物であることが、トナーの環境安定性を向上させることができるため好ましい。トナーに添加された無機微粉体が吸湿すると、トナー粒子の帯電量が著しく低下し、帯電量が不均一になり易く、トナー飛散が起こり易くなる。無機微粉体の疎水化処理に用いる処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物等の処理剤を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のトナーには、実質的な悪影響を与えない範囲内で更に他の添加剤、例えばフッ素樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末;酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤;例えば酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末などの流動性付与剤;ケーキング防止剤;または逆極性の有機微粒子及び無機微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。これらの添加剤の表面を疎水化処理して用いることも可能である。
次に、本発明のトナーを好適に用いることのできる画像形成装置の一例を図1に沿って具体的に説明する。図1において、100は感光ドラムであり、その周囲に一次帯電ローラー117、現像スリーブ102を有する現像器140、転写帯電ローラー114、クリーナー116、レジスタローラー124等が設けられている。感光ドラム100は一次帯電ローラー117によって例えば−600Vに帯電される(印加電圧は例えば交流電圧1.85kVpp、直流電圧−620Vdc)。そして、レーザー発生装置121によりレーザー光123を感光体100に照射することによって露光が行われ、目的の画像に対応した静電潜像が形成される。感光ドラム100上の静電潜像は現像器140によって一成分トナーで現像されてトナー画像を得、トナー画像は転写材を介して感光体に当接された転写ローラー114により転写材上へ転写される。トナー画像を載せた転写材は搬送ベルト125等により定着器126へ運ばれ転写材上に定着される。また、一部感光体上に残されたトナーはクリーナー116によりクリーニングされる。
なお、ここでは磁性一成分ジャンピング現像の画像形成装置を示したが、ジャンピング現像又は接触現像のいずれの方法に用いられるものであってもよい。
次に、本発明のトナーに係る各物性の測定方法に関して記載する。
(1)結晶性物質の融点の測定
結晶性ポリエステル及び離型剤の融点はDSCにて測定した際の、吸熱ピークのピークトップ温度として求めることが出来る。測定はASTM D 3417−99に準じて行う。これらの測定には、例えばパーキンエルマー社製DSC−7、TAインストルメント社製DSC2920、TAインストルメント社製Q1000を用いることができる。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを用い、対照用に空パンをセットし測定する。
(2)DSCの測定における吸熱ピークの半値幅及び吸熱量の測定
本発明の示差走査熱量計(DSC)の測定は、例えばパーキンエルマー社製DSC−7、TAインストルメント社製DSC2920、TAインストルメント社製Q1000を用いることができる。
昇温・降温速度を100/minとした時の一度目の昇温過程における吸熱ピークの半値幅L1及び二度目の昇温過程における吸熱ピークの半値幅L2、一度目の昇温過程における吸熱ピークの吸熱量ΔHは次のようにして測定する。
トナー3mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いる。一度目の昇温価値得では、測定資料を20℃から150℃まで100℃/minで昇温しながら測定を行う。その後、150℃まで100℃/minで降温しながら測定を行う。さらに、20℃で10分間保持した後に、二度目の昇温を行う。この時も同様に、20℃から150℃まで100℃/minで昇温しながら測定を行う。この測定条件によって得られるDSC曲線に基づいて、吸熱ピークのベースラインからピーク最大高さにおける2分の1高さにおけるピークの温度幅を半値幅とする。また、吸熱ピークのベースラインからの積分値により、吸熱量を得ることが出来る。
昇温・降温速度を10℃/minに変更することにより、10℃/minで測定した時の吸熱ピークの半値幅を得ることも可能である。
(3)(トナー(粒子)の重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)の測定)
トナー(粒子)の重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー(粒子)約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー(粒子)を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
(4)結晶性物質の分子量の測定方法
結晶性ポリエステル及び離型剤の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。以下に、結晶性ポリエステルを例に挙げて、測定方法を記載する。
まず、室温で結晶性ポリエステルをテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置「HLC−8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:LF−604の2連
溶離液:THF
流速:0.6ml/min
オーブン温度:40℃
試料注入量:0.020ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
(5)ルテニウム染色処理された透過型電子顕微鏡(TEM)におけるトナー断面の観察方法
トナーの透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察は以下のようにして実施することができる。
本発明のトナーは、トナー断面をルテニウム染色することによって観察を行う。本発明のトナーに含有される結晶性ポリエステルおよび離型剤は結晶性を有するために、結着樹脂のような非晶樹脂よりもルテニウムで染色される。そのため、コントラストが明瞭になり、観察が容易となる。染色の強弱によって、ルテニウム原子の量が異なるため、強く染色される部分は、これらの原子が多く存在し、電子線が透過せずに、観察像上では黒くなり、弱く染色される部分は、電子線が透過されやすく、観察像上では白くなる。
まず、カバーガラス(松波硝子社、角カバーグラス 正方形 No.1)上にトナーを一層となるように散布し、オスミウム・プラズマコーター(filgen社、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs膜(5nm)およびナフタレン膜(20nm)を施す。次に、PTFE製のチューブ(Φ1.5mm×Φ3mm×3mm)に光硬化性樹脂D800(日本電子社)を充填し、チューブの上に前記カバーガラスをトナーが光硬化性樹脂D800に接するような向きで静かに置く。この状態で光を照射して樹脂を硬化させた後、カバーガラスとチューブを取り除くことで、最表面にトナーが包埋された円柱型の樹脂を形成する。超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度0.6mm/sで、円柱型の樹脂の最表面からトナーの半径(重量平均粒径(D4)が8.0・mの場合は4.0・m)の長さだけ切削して、トナーの断面を出す。次に、膜厚250nmとなるように切削し、トナー断面の薄片サンプルを作製した。このような手法で切削することで、トナー中心部の断面を得ることができる。
得られた薄片サンプルを真空電子染色装置(filgen社、VSC4R1H)を用いて、RuO4ガス500Pa雰囲気で15分間染色し、TEM(JEOL社、JEM2800)を用いてSTEM観察を行った。
STEMのプローブサイズは1nm、画像サイズ1024×1024pixelにて画像を取得した。また、明視野像のDetector ControlパネルのContrastを1425、Brightnessを3750、Image ControlパネルのContrastを0.0、Brightnessを0.5、Gammmaを1.00に調整して、画像を取得した。
(6)結晶性ポリエステルおよび離型剤ドメインの同定
トナーの断面のTEM画像をもとに、結晶性物質のドメインの同定を、以下の手順により行う。
結晶性物質を原材料として入手できる場合、それらの結晶構造を、上述のルテニウム染色処理された透過型電子顕微鏡(TEM)におけるトナー断面の観察方法と同様にして、観察し、原材料それぞれの結晶のラメラ構造の画像を得る。それらと、トナーの断面におけるドメインのラメラ構造を比較し、ラメラの層間隔が誤差10%以下であった場合、トナーの断面におけるドメインを形成している原材料を特定することができる。
(7)結晶性物質のドメインの個数平均径(D1)の測定
本発明において、結晶性物質のドメインの個数平均径(D1)としては、TEM画像をもとに、結晶性物質のドメインの長径から求められる個数平均径を意味する。また、本発明において、結晶性物質のドメインの個数平均径(D1)は、1.0μm以下のドメインを意味する。即ち、1.0μmより大きい結晶性物質のドメインが形成しているが、1.0μm以下のドメインを有しないトナーに対しては、ドメインが形成していないと判定する。
ルテニウム染色処理された透過型電子顕微鏡(TEM)におけるトナー断面の観察により得られたTEM画像をもとに、結晶性物質のドメインの長径の個数平均径を計測する。その際、100個以上のトナーの断面を観察する。観察するトナーは重量平均粒径(D4)に対して、0.9≦R/D4≦1.1の関係を満たす長径R(μm)を呈するものとする。全てのドメインを計測し、個数平均径(D1)を算出する。
(8)結晶性物質のドメインにおける結晶性ポリエステルの離型剤に対する被覆率の測定
被覆率はTEM画像を用いて、下記のように算出した。まず、上述したようなTEM観察において、結晶性物質のドメインのうち、離型剤と結晶性ポリエステルをコントラストの差により判別する。続いて、離型剤の周囲長を測定するとともに、結晶性ポリエステルと離型剤の界面に沿っての周囲長をフリーハンドで測定した。これらの比から、被覆率を算出することができる。同様の計算を0.9≦R/D4≦1.1の関係を満たすトナー100個以上について行い、本発明における離型剤に対する結晶性ポリエステルの被覆率とした。
(9)結晶性ポリエステルの末端構造の同定
樹脂サンプルを2mg精秤し、クロロホルム2mlを加えて溶解させてサンプル溶液を作製する。樹脂サンプルとしては結晶性ポリエステル樹脂Aを用いるが、樹脂Aを含有するトナーをサンプルとして代用することも可能である。次に、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)20mgを精秤し、クロロホルム1mlを添加して溶解させてマトリックス溶液を調製する。また、トリフルオロ酢酸Na(NaTFA)3mgを精秤した後、アセトンを1ml添加して溶解させてイオン化助剤溶液を調製する。
このようにして調製したサンプル溶液25μl、マトリックス溶液50μl、イオン化助剤溶液5μlを混合して、MALDI分析用のサンプルプレート上に滴下させ、乾燥させることで測定サンプルとする。分析機器として、MALDI−TOFMS(Bruker Daltonics製 ReflexIII)を用い、マススペクトルを得る。得られたマススペクトルにおいて、オリゴマー領域(m/Zが2000以下)の各ピークの帰属を行い、分子末端にモノカルボン酸が結合した構造に対応するピークが存在するか否かを確認する。
(10)熱伝導率の測定
測定装置:ホットディスク法熱物性測定装置TPS2500S
試料ホルダ:室温用試料ホルダ
センサ:標準付属(RTK)センサ
ソフトウェア:Hot disk analysis 7
測定試料を室温用試料ホルダの取りつけテーブル台におき、測定試料表面がセンサと同じ高さになるようにテーブルの高さを調整する。
センサの上に2個目の測定試料、さらに付属の金属片を置き、センサの上にあるネジを使用し圧力を加える。圧力はトルクレンチにて30cN・mに調整する。測定試料およびセンサの中心がネジの真下にあることを確認する。
Hot disk analysisを起動し、実験タイプをBulk(Type I)を選択する。
入力項目に以下の通り入力する。
Available Probing Depth:6mm
Measurement time:40s
Heating Power:60mW
Sample Temperrature:23℃
TCR:0.004679K-1
Sesor Type:Disk
Senor Material Type:Kapton
Sensor Design:5465
Sensor Radius:3.189mm
上記入力後、測定を開始する。測定終了後、Calculateボタンを選択し、Start Point:10、End Point:200を入力し、Standard Analysisボタンを選択し、Thermal Conductivity[W/mK]を算出し、この値を本件における熱伝導率とする。
以下、本発明を製造例及び実施例により更に具体的に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。なお、以下の配合における部数は全て質量部を示す。
<結晶性ポリエステル1の製造>
窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した反応槽中に、カルボン酸モノマー1としてセバシン酸(デカン二酸)100.0部、カルボン酸モノマー2としてステアリン酸1.6部、アルコールモノマーとして1,12−ドデカンジオール89.3部、を投入した。撹拌しながら140℃に昇温し、窒素雰囲気下で140℃に加熱して常圧下で水を留去しながら8時間反応させた。次いで、ジオクチル酸スズを0.57部添加加えた後、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させた。更に、200℃に到達してから2時間反応させた後、反応槽内を5kPa以下に減圧して200℃で分子量を見ながら反応させて結晶性ポリエステル1を得た。結晶性ポリエステル1の融点は83℃、重量平均分子量は40000であった。得られた結晶性ポリエステル1の物性を表1に示す。
<結晶性ポリエステル2〜7の製造>
結晶性ポリエステル1の製造において、アルコールモノマーとカルボン酸モノマー1および2を表1のように変更し、反応時間および温度を所望の物性になるように調整したこと以外は同様にして、結晶性ポリエステル2〜7を得た。得られた結晶性ポリエステルの物性および構造を表1に付記した。
<磁性酸化鉄の製造例>
Fe2+を2.0mol/L含有する硫酸鉄第一水溶液50リットルに、4.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液55リットルを混合撹拌し、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩水溶液を得た。この水溶液を85℃に保ち、20L/minで空気を吹き込みながら酸化反応を行い、コア粒子を含むスラリーを得た。
得られたスラリーをフィルタープレスにてろ過・洗浄した後、コア粒子を水中に再度分散させ、リスラリーした。このリスラリー液に、コア粒子100部あたり珪素換算で0.20質量%となる珪酸ソーダを添加し、スラリー液のpHを6.0に調整し、撹拌することで珪素リッチな表面を有する磁性酸化鉄粒子を得た。得られたスラリーをフィルタープレスにてろ過、洗浄、更にイオン交換水にてリスラリーを行った。このリスラリー液(固形分50g/L)に500g(磁性酸化鉄に対して10質量%)のイオン交換樹脂SK110(三菱化学製)を投入し、2時間撹拌してイオン交換を行った。その後、イオン交換樹脂をメッシュでろ過して除去し、フィルタープレスにてろ過・洗浄し、乾燥・解砕して個数平均径が0.23μmの磁性酸化鉄を得た。
<シラン化合物の製造>
iso−ブチルトリメトキシシラン30部をイオン交換水70部に撹拌しながら滴下した。その後、この水溶液をpH5.5、温度55℃に保持し、ディスパー翼を用いて、周速0.46m/sで120分間分散させて加水分解を行った。その後、水溶液のpHを7.0とし、10℃に冷却して加水分解反応を停止させた。こうしてシラン化合物を含有する水溶液を得た。
<磁性体1の製造>
磁性酸化鉄の100部をハイスピードミキサー(深江パウテック社製 LFS−2型)に入れ、回転数2000rpmで撹拌しながら、シラン化合物を含有する水溶液8.0部を2分間かけて滴下した。その後5分間混合・撹拌した。次いで、シラン化合物の固着性を高めるために、40℃で1時間乾燥し、水分を減少させた後に、混合物を110℃で3時間乾燥し、シラン化合物の縮合反応を進行させた。その後、解砕し、目開き100μmの篩を通して磁性体を得た。
<磁性体2の製造>
磁性体1の製造において、シラン化合物を含有する水溶液の量を4.0部に変更すること以外は、同様にして、磁性体2を製造した。
<トナー1の製造>
イオン交換水720部に0.1モル/L−Na3PO4水溶液450部を投入して60℃に加温した後、1.0モル/L−CaCl2水溶液67.7部を添加して、分散安定剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン 76.0部
・n−ブチルアクリレート 24.0部
・ジビニルベンゼン 0.2部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土ヶ谷化学社製) 1.5部
・磁性体1 110.0部
・非晶性飽和ポリエステル樹脂 3.0部
(ビスフェノールAのエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド付加物とテレフタル酸との縮合反応により得られる非晶性飽和ポリエステル樹脂;Mw=9500、酸価=2.2mgKOH/g、ガラス転移温度=68℃)
上記処方をアトライタ(日本コークス工業株式会社製)を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を63℃に加温し、そこに表1に記載の結晶性ポリエステル1(融点83℃、重量平均分子量40000)を10部、離型剤としてセバシン酸ジベヘニル(融点73℃、重量平均分子量820)を10部を混合し、溶解した。
上記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてT.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)にて12000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ重合開始剤t−ブチルパーオキシピバレート8.0部を投入し、70℃に昇温して4時間反応させた。反応終了後、懸濁液を100℃まで昇温させ、2時間保持した。その後、冷却工程として、懸濁液に0℃の水を投入し、150℃/分の速度で懸濁液を100℃から50℃まで冷却した後、50℃で6時間保持した。その後、25℃まで室温で自然冷却して冷やした。その際の冷却速度は、1℃/分であった。その後、懸濁液に塩酸を加えて十分洗浄することで分散安定剤を溶解させ、濾過・乾燥してトナー粒子1を得た。
さらに、100部のトナー粒子1と、BET値が300m2/gであり、一次粒子の個数平均粒径が8nmの疎水性シリカ微粒子0.8部とをFMミキサ(日本コークス工業株式会社製)で混合してトナー1を得た。
トナー1を分析したところ、トナー1は結着樹脂を100部含有しており、結着樹脂の主成分はスチレンアクリル樹脂であった。トナー1の半値幅L1及びL2は、4.0℃及び16.0℃、L2/L1は4.00であった。トナー1の製造条件及び物性を表2に示す。
<トナー2〜17、比較トナー1〜5の製造>
表2に記載の通りの条件に変更する以外はトナー1の製造と同様にして、トナー2〜17、比較トナー1〜5を製造した。変更の内容としては、結晶性ポリエステル、離型剤、顔料としての磁性体の種類及び冷却工程等である。冷却工程は、冷却工程を開始する温度を100℃とし、停止する温度を表2に記載の保持温度と同じとした。保持時間は、保持温度における懸濁液の温度を一定に保つように制御した時間を示す。冷却速度は、0℃の水を懸濁液に投入する速度を制御し、表2に記載の速度になるように調整した。比較トナー5の冷却工程は、100℃の懸濁液を室温25℃で自然に冷却を行い、50℃における保持を行わずに、25℃まで冷却をした。その時の冷却速度は1℃/minであった。比較トナー4,5をTEMで観察したところ、1μm以下の結晶性物質のドメインは観察されなかった。トナー2〜17、比較トナー1〜5の物性を表2に示す。
<比較トナー6の製造>
(結着樹脂の製造)
結着樹脂である非晶質ポリエステルの製造に係る原料モノマーのモル比を下記とする。
BPA−PO:BPA−EO:TPA:TMA=50:45:70:12
ここで、それぞれ、BPA−PO:ビスフェノールA プロピレンオキサイド2.2モル付加物、BPA−EO:ビスフェノールA エチレンオキサイド2.2モル付加物、TPA:テレフタル酸、TMA:無水トリメリット酸、を示す。
上記に示す原料モノマーのうち、TMA以外の原料モノマーと、触媒としてテトラブチルチタネート0.1質量%を脱水管、撹拌羽根、窒素導入管などを備えたフラスコに入れ、220℃で10時間縮重合させた。さらにTMAを添加し、210℃で所望の酸価に達するまで反応させて、非晶性ポリエステル樹脂(ガラス転移温度Tgが55℃、酸価が17mgKOH/g、重量平均分子量が9000、結着樹脂の重量平均分子量(Mw)の結晶性物質の重量平均分子量(Mw)に対する比が19.2)を得た。
(トナーの製造)
・非晶性ポリエステル樹脂 100.0部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土ヶ谷化学社製) 1.5部
・カーボンブラック(CB) 5.0部
・ペンタエリスリトールテトラベヘネート 16.0部
・結晶性ポリエステル5 16.0部
上記原材料をFMミキサ(日本コークス工業株式会社製)で予備混合した。続いて、回転数200rpmに設定した二軸混練押し出し機(PCM−30:池貝鉄工所社製)により、混練物の出口付近における直接温度が140℃となるように設定温度を調節し、溶融混練した。続いて、冷却された溶融混練物をカッターミルで粗粉砕した。続いて、得られた粗粉砕物を、ターボミルT−250(ターボ工業社製)を用いて微粉砕し着色粒子を得た。
イオン交換水720部に0.1モル/L−Na3PO4水溶液450部を投入して60℃に加温した後、1.0モル/L−CaCl2水溶液67.7部を添加して、分散剤を含む水系媒体を得た。
該水系媒体に上述の着色粒子100部を投入し、パドル撹拌翼で撹拌し、着色粒子が水系媒体中に分散された分散液を得た。この時、着色粒子表面には無機分散剤として、リン酸カルシウムが付着していることを確認した。
続いて、着色粒子が水系媒体中に分散された分散液を、100℃まで昇温させ、30分間保持した。0℃の水を混合し、5℃/分の速度で懸濁液を100℃から50℃まで冷却した後、50℃で6時間保持した。その後、25℃まで室温で自然冷却して冷やした。その際の冷却速度は、1℃/分であった。その後、懸濁液に塩酸を加えて十分洗浄することで分散安定剤を溶解させ、濾過・乾燥して比較トナー粒子6を得た。
その後、分散液に、塩酸を加えてリン酸カルシウムを洗浄して除去した後に、濾過及び乾燥して、重量平均粒径(D4)が8.0μmの比較トナー粒子6を得た。
さらに、100部の比較トナー粒子6と、BET値が300m2/gであり、一次粒子の個数平均粒径が8nmの疎水性シリカ微粒子0.8部とをFMミキサ(日本コークス工業株式会社製)で混合して比較トナー6を得た。
比較トナー6を分析したところ、比較トナー6は結着樹脂を100部含有しており、比較トナー6の製造条件及び物性を表3に示す。
<比較トナー7、8の製造>
結晶性ポリエステル、冷却工程等を表2に記載の通りに変更すること以外は比較トナー6の製造と同様にして、比較トナー7、8の製造を行った。
比較トナー8の冷却工程は、100℃の懸濁液を室温25℃で自然に冷却を行い、50℃における保持を行わずに、25℃まで冷却をした。その時の冷却速度は1℃/minであった。比較トナー及び8をTEMで観察したところ、1μm以下の結晶性物質のドメインは観察されなかった。比較トナー7,8の物性を表2に示す。
<比較トナー9の製造>
(結着樹脂の製造)
結着樹脂である非晶質ポリエステルの製造に係る原料モノマーのモル比を下記とする。
BPA−PO:BPA−EO:TPA:TMA=50:45:70:12
ここで、それぞれ、BPA−PO:ビスフェノールA プロピレンオキサイド2.2モル付加物、BPA−EO:ビスフェノールA エチレンオキサイド2.2モル付加物、TPA:テレフタル酸、TMA:無水トリメリット酸、を示す。
上記に示す原料モノマーのうち、TMA以外の原料モノマーと、触媒としてテトラブチルチタネート0.1質量%を脱水管、撹拌羽根、窒素導入管などを備えたフラスコに入れ、220℃で10時間縮重合させた。さらにTMAを添加し、210℃で所望の酸価に達するまで反応させて、非晶性ポリエステル樹脂(ガラス転移温度Tgが55℃、酸価が17mgKOH/g、重量平均分子量が9000、結着樹脂の重量平均分子量(Mw)の結晶性物質の重量平均分子量(Mw)に対する比が19.2)を得た。
(トナーの製造)
・非晶性ポリエステル樹脂 100.0部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土ヶ谷化学社製) 1.5部
・カーボンブラック(CB) 90.0部
・ペンタエリスリトールテトラベヘネート 16.0部
・結晶性ポリエステル1 16.0部
上記原材料をFMミキサ(日本コークス工業株式会社製)で予備混合した。続いて、回転数200rpmに設定した二軸混練押し出し機(PCM−30:池貝鉄工所社製)により、混練物の出口付近における直接温度が140℃となるように設定温度を調節し、溶融混練した。
得られた溶融混練物に−100℃の冷風を吹き付けて、冷却速度150℃/minで室温の25℃まで冷却した。この時、50℃の温度で、混錬物を保持しなかった。続いて、冷却された溶融混練物をカッターミルで粗粉砕した。続いて、得られた粗粉砕物を、ターボミルT−250(ターボ工業社製)を用いて微粉砕し、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級して、重量平均粒径(D4)が8.0μmの比較トナー粒子9を得た。
さらに、100部の比較トナー粒子9と、BET値が300m2/gであり、一次粒子の個数平均粒径が8nmの疎水性シリカ微粒子0.8部とをFMミキサ(日本コークス工業株式会社製)で混合して比較トナー9を得た。
比較トナー9の製造条件及び物性を表3に示す。
<比較トナー10の製造>
(着色剤分散液の調製)
・カーボンブラック(CB)1部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンRK):15部
・イオン交換水:3部
以上の材料を混合し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックス75)を用いて10分間分散した後、循環式超音波分散機(日本精機製作所製、RUS−600TCVP)にかけて着色剤分散液を調製した。着色剤分散液における着色剤(シアン顔料)の体積平均粒径は、0.16μm固形分比率は25質量%であった。
(結晶性ポリエステル樹脂分散液の調製)
結晶性ポリエステル6 180部及び脱イオン水585部をステンレスビーカーに入れ、温浴につけ、95℃に加熱した。結晶性ポリエステル6が溶融した時点で、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて8000rpmで撹拌し、同時に希アンモニア水を添加しPHを7.0に調整した。ついでアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK)0.8部を希釈した水溶液20部を滴下しながら、乳化分散を行ない、体積平均粒径が0.25μmの結晶性ポリエステル分散液〔樹脂粒子濃度:12.3質量%〕を調製した。
(プリコート離型剤分散液の調製)
・ポリアルキレンワックスFNP92(融点92℃日本精鑞社製):180部
・アニオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬(株)製):7部
・イオン交換水:800部
以上の成分を110℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)にて十分分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、エマルジョンを得た。
得られたエマルジョンを固液分離し、コア離型剤ケーキ1(含水率20質量%)を得た。
酢酸エチル200部に、結晶性ポリエステル6を126部投入し、撹拌溶解させた。得られた溶液にコア離型剤ケーキ1を投入し、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)にて十分分散し、コア離型剤分散樹脂溶液を調製した。
別途、イオン交換水724部に対してアニオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬(株)製):7.0部を溶解させた水溶液を調整し、撹拌しながら、前述のコア離型剤分散樹脂溶液を滴下し、分散液を得た。
得られた分散液から、ロータリーエバポレーターを用いて酢酸エチルを留去し、体積平均粒径0.37μm、固形分比率30.2%のプリコート離型剤分散液1を得た。
(トナーの製造)
・結晶性ポリエステル分散液:847部
・着色剤分散液:32.7部
・プリコート離型剤分散液:130部
上記材料を丸型ステンレス製フラスコに入れ、撹拌混合した。ついで、混合分散液のpHを3.0に調整した後、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)にて十分に混合・分散した。
次いで、これにポリ塩化アルミニウム0.13部を加え、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)で分散作業を継続した。
フラスコを撹拌しながら、加熱用オイルバスにて50℃まで加熱した。50℃で2時間保持した後、0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液でフラスコのpHを8.5とした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁気シールを用いて撹拌を継続しながら95℃まで加熱し、2.0時間保持した。
反応終了後、冷却工程は、95℃の懸濁液を室温25℃で自然に冷却を行い、50℃における保持を行わずに、25℃まで冷却をした。その時の冷却速度は1℃/minであった。その後、ろ過し、イオン交換水にて十分洗浄した後、ヌッチェ式吸引ろ過にて固液分離を実施した。これをさらに40℃のイオン交換水1.5Lに再分散し、20分間280rpmで撹拌・洗浄した。
この作業を更に5回繰り返した後、ヌッチェ式吸引ろ過にて固液分離を行い、得られたケーキの真空乾燥を12時間行い、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級して、重量平均粒径(D4)が8.0μmの比較トナー粒子10を得た。
さらに、100部の比較トナー粒子10と、BET値が300m2/gであり、一次粒子の個数平均粒径が8nmの疎水性シリカ微粒子0.8部とをFMミキサ(日本コークス工業株式会社製)で混合して比較トナー10を得た。
比較トナー10の製造条件及び物性を表3に示す。
<比較トナー11の製造>
(非晶質ポリエステル樹脂の分散液の作製)
加熱乾燥した三口フラスコに、下記組成の化合物と、触媒としてジブチルスズオキシド0.12部とを投入後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械撹拌により180℃で6時間還流処理した。その後、減圧蒸留にて200℃まで昇温を徐々に行いながら5時間撹拌処理し、粘稠状態になったところでGPCにて分子量測定を行い、重量平均分子量が13700になったところで、減圧蒸留を停止して空冷し、非晶質ポリエステル樹脂1を作製した。
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(平均付加モル数2):140部
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数2):60部
イソフタル酸ジメチル:40部
テレフタル酸:70部
次に、非晶質ポリエステル樹脂を溶融状態のまま、「キャビトロンCD1010」(ユーロテック社製)に毎分100gの速度で移送した。一方、試薬アンモニア水をイオン換水で希釈して濃度0.37質量%に調整した希アンモニア水を、別途準備した水性媒体タンクに投入し、熱交換器で120℃に加熱した。そして、この加熱した希アンモニア水を非晶質ポリエステル樹脂と同時にキャビトロンCD1010に移送した。移送速度は毎分0.1リットルである。この状態で、回転子の回転周波数を60Hz、圧力を4.9×105Paの条件に設定してキャビトロンCD1010を運転することにより、体積基準のメジアン径が0.28μmの非晶質ポリエステルの分散液を作製した。その後、非晶質ポリエステルの分散液の樹脂濃度が20質量%となるように分散液の水分量を調整した。
(離型剤を内包する結晶性ポリエステルの分散液の作製)
加熱乾燥した三口フラスコに、結晶性ポリエステル7を投入し、機械撹拌により180℃で5時間還流処理を行った。その後、減圧蒸留下にて200℃まで昇温を行ったのち、離型剤としてペンタエリスリトールテトラベヘネート160部を添加し、結晶性ポリエステル7を溶融状態のまま、キャビトロンCD1010に毎分100gの速度で移送した。また、試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈して濃度0.37質量%に調整した希アンモニア水を、別途準備した水性媒体タンクに投入し、熱交換機で120℃に加熱した。加熱した希アンモニア水を、結晶性ポリエステル樹脂7の溶融体と同時に毎分0.1リットルの速度でキャビトロンCD1010に移送した。この状態で回転子の回転周波数を60Hz、圧力を4.9×105Paの条件に設定してキャビトロンCD1010を運転することにより、離型剤を内包する結晶性ポリエステル樹脂7の分散液を調製した。また、当該離型剤を内包する結晶性ポリエステル樹脂7の体積基準のメジアン径は0.26μmであった。また、樹脂粒子濃度が20質量%となるように分散液の水分量を調整した。
(着色剤分散液の作製)
カーボンブラック(CB):50部
イオン性界面活性剤(n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム):8部
イオン交換水:250部
上記成分を混合溶解させ、ホモジナイザー「ウルトラタラックスT50」(IKA社製)により10分間分散処理した後、超音波分散機で20分間処理して、体積基準のメジアン径が180nmの着色剤粒子を分散させてなる着色剤の分散液を調製した。
(トナーの作製)
非晶質ポリエステル樹脂の分散液:560部
離型剤を内包する結晶性ポリエステル7の分散液:340部
着色剤分散液:80部
上記成分を丸型ステンレス製フラスコ内に投入し、300部のイオン交換水とともに撹拌しながら20℃に調製した。その後、ウルトラタラックスT50により十分に混合、分散処理して分散液を調製した。次に、分散液中にポリ塩化アルミニウム0.1部を添加し、ウルトラタラックスT50により分散処理を継続した。分散処理後、フラスコを加熱用オイルバスに投入し、撹拌を行いながらフラスコを45℃まで加熱した。フラスコを45℃で60分間保持した後、分散液中に非晶質ポリエステルの分散液200部を緩やかに添加した。
0.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを8に調整した。その後、ステンレス製フラスコを密閉して磁力シールにより撹拌を継続しながら90℃まで加熱し、さらに0.5モル/リットルの硝酸を用いて系内のpHを7に調整し、30分保持して反応を継続させた。
反応終了後、多管式熱交換機を使用(冷媒は5℃の冷水)し、25℃/分の冷却速度となるように冷水の流量を調整して30℃まで冷却した。冷却後、濾過処理してイオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。さらに、分離した粒子を43℃のイオン交換水3リットル中に再分散させ、300rpmの条件で15分間撹拌して洗浄処理した。
この操作を5回繰り返し、濾液のpHが6.6、電気伝導度12μS/cmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo5A濾紙を用いて固液分離を行った。次に、真空乾燥を12時間継続してトナー粒子11を作製した。コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級して、重量平均粒径(D4)が8.0μmの比較トナー粒子11を得た。
BET値が300m2/gであり、一次粒子の個数平均粒径が8nmの疎水性シリカ微粒子0.8部とをFMミキサ(日本コークス工業株式会社製)で混合して比較トナー11を得た。
比較トナー11の製造条件及び物性を表2に示す。
<比較トナー12の製造>
(溶解工程)
下記材料を、60℃に加温し30分間溶解混合した。
・スチレン 70部
・n−ブチルアクリレート 30部
・飽和ポリエステル樹脂(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物
)とテレフタル酸との重縮合物(重合モル比10:12)、Tg=68℃、Mw=100
00、Mw/Mn=5.12) 8部
・表2に記載のパラフィンワックス 9部
・カーボンブラック(CB) 8部
・E−88(オリエント化学工業(株)製) 1部
・亜鉛フタロシアニン 0.1部
(重合性単量体組成物の調製工程)
溶解工程で得られた溶解液に下記材料を混合し、重合性単量体組成物を調製した。
・重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 10部
(造粒工程)
イオン交換水332部にNa3PO4・12H2Oを5質量部投入し60℃に加温した後、クレアミックス(エム・テクニック(株)製)を用いて3500rpmにて撹拌した。これに1.0モル/リットル−CaCl2水溶液27部を添加し、Ca3(PO4)2を含む水系媒体を得た。
前記水系媒体中に前記重合性単量体組成物を投入し、60℃,N2雰囲気下において、クレアミックスにて4500rpmで15分間撹拌し、重合性単量体組成物を造粒した。
(重合工程)
重合容器に前記重合性単量体組成物の造粒液を投入して、フルゾーン撹拌翼(神鋼パンテック(株)製)で撹拌しつつ、70℃に昇温して10時間反応させた。重合反応終了後、フルゾーン撹拌翼で撹拌を続けながら飽和水蒸気(ピュアスチーム/スチーム圧力205kPa/温度120℃)を導入した。容器内の内容物の温度が100℃に達し、蒸留留分が出始めた。所定量の留分が得られるまで100℃で240分間熱処理を行うことで、残存モノマーを留去しながら熱処理を行った。
続いて、100℃から0.5℃/分で冷却を行った。温度が64.0℃に到達したところで、64.0℃を中心として、温度変動幅が2.0℃となるように制御しながら、180分間の熱処理を行った。その後、30℃まで毎分0.25℃で冷却を行った。
(洗浄・固液分離・乾燥工程)
得られたトナー粒子分散液に塩酸を添加して撹拌し、トナー粒子を覆った無機微粒子を溶解した後に加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これを水中に投入して撹拌し、再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。トナーケーキの水への再分散と固液分離とを、無機微粒子が十分に除去されるまで繰り返し行った後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。得られたトナーケーキは気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー((株)セイシン企業製)にて乾燥を行い、トナー粒子を得た。乾燥の条件は吹き込み温度90℃、乾燥機出口温度40℃、トナーケーキの供給速度はトナーケーキの含水率に応じて出口温度が40℃から外れない速度に調整した。
コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級して、重量平均粒径(D4)が8.0μmの比較トナー粒子12を得た。
さらに、100部の比較トナー粒子12と、BET値が300m2/gであり、一次粒子の個数平均粒径が8nmの疎水性シリカ微粒子0.8部とをFMミキサ(日本コークス工業株式会社製)で混合して比較トナー12を得た。比較トナー12をTEMで観察したところ、1.0μm以下の結晶性物質のドメインの形成は観察されなかった。
比較トナー12の製造条件及び物性を表3に示す。
〔実施例1〕
(低温定着性の評価)
トナー1を用いて、以下の評価を行った。
評価は、23℃、50%RHの環境で実施した。定着メディアにはFOX RIVER BOND紙(110g/m2)を用いた。メディアを比較的表面の凹凸が大きく、厚紙であるメディアを用いることで、後述の白抜けが発生しやすくなり、低温定着性を厳しく評価することができる。画像形成装置としては、市販のLBP―3100(キヤノン製)を用い、印字速度を16枚/分を30枚/分に改造した改造機を使用した。さらに、メディアが定着器を通過する際の、メディアが定着器に触れている時間を150m秒から50m秒になるように、定着器のサイズを小さく改造した。この条件は、高速プリントや定着器の小型化を両立できる一方で、トナーに対しては、非常に定着性が厳しい評価となる。
定着器は室温(25℃)に冷えた状態で、ベタ黒を100枚、連続で印字し、95〜100枚におけるベタ黒画像における白抜けの個数の平均値を計測した。ベタ黒を連続で印刷することにより、定着器の熱がメディアに奪われ、十分な熱を保持していない状態となるため、トナーの低温定着性について厳しい評価となる。白抜けは、上述のように設定した50m秒以内にトナーが紙に結着しなければ、発生してしまう評価である。このため、トナーの低温定着性について厳しい評価となる。
白抜けした個数により評価結果の判断を行う。その際、10倍以上に拡大できる顕微鏡等を用いて、目視により、発生した白抜けの平均個数により行う。少ないほど、トナーの低温定着性が良好であることを示す。
なお、白抜けの判断基準は以下の通りである。評価結果を表3に記載する。
10個未満 非常に良好
10個以上30個未満 良好
30個以上60個未満 やや良好
60個以上100個未満 普通
100個以上 悪い
(カブリの評価)
トナー1を用いて、以下の評価を行った。
画像形成装置としては、市販のLBP−3100(キヤノン製)を用い、印字速度を16枚/分を32枚/分に改造した。これにより、より厳しい評価を行うことができる。
使用した紙種はA4のカラーレーザーコピー用紙(キヤノン製、80g/m2)を用いた。
白画像を出力して、その反射率を東京電色社製のREFLECTMETER MODEL TC−6DSを使用して測定した。一方、白画像形成前の転写紙についても同様に反射率を測定した。フィルターは、グリーンフィルターを用いた。白画像出力前後の反射率から、下記式を用いてカブリを算出した。
カブリ(反射率)(%)=転写紙の反射率(%)−白画像の反射率(%)
なお、カブリの判断基準は以下の通りである。評価結果を表3に記載する。
1.0%未満 非常に良好
1.0%以上3.0%未満 良好
3.0%以上5.0%未満 普通
5.0%以上 悪い
(苛酷環境放置の手順)
22℃、90%RHに調整された恒温槽にトナー1を置き、24時間エージング処理を行う。その後、1時間当り17.5℃のペースで昇温させ、2時間かけて、57℃、90%RHに調整する。その状態で、2時間保持した後、1時間当たり17.5℃のペースで降温させ、57℃、90%RHに戻す。そして、2時間保持した後に、再び昇温させる。このようにして、22℃、90%RHと、57℃、90%RHの温度と湿度で、図2のように、10回昇温と降温を繰り返した。
このモードを用いることで、急激な熱変動をトナーに付与し、高温、低温を何度も繰り返すことにより、トナー内部の物質移動を促し、結晶性物質がトナー表面に染み出させやすくする、苛酷環境放置に係る評価の中ではトナーに対して厳しいものである。
(苛酷環境放置後のカブリの評価)
上記苛酷環境放置を実施したトナー1について、上述の手法でカブリ測定を行い、上記評価基準で評価した。評価結果を表3に示す。
〔実施例2〜17、比較例1〜12〕
トナーを変更すること以外は同様にして、実施例2〜17、比較例1〜12を評価した。評価した結果を表3及び表4に示す。