[本願発明の実施形態の説明]
本発明の実施の形態に係る充電量算出装置は、二次電池の充電量を算出する充電量算出装置であって、二次電池の電圧を取得する電圧取得部と、前記二次電池の電流を取得する電流取得部と、該電流取得部で取得した電流を積算して前記二次電池の第1充電量を算出する第1算出部と、前記電圧取得部で取得した電圧、前記電流取得部で取得した電流及び前記二次電池の等価回路モデルに基づいて前記二次電池の第2充電量を算出する第2算出部と、前記電流取得部で取得した電流に基づいて前記二次電池の充放電の切り替えの有無を判定する切替判定部とを備え、前記切替判定部で充放電の切り替えがないと判定した場合、前記第1充電量を前記二次電池の充電量とし、前記切替判定部で充放電の切り替えがあったと判定した場合、前記第2充電量を前記二次電池の充電量とする。
本発明の実施の形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、二次電池の充電量を算出させるためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、二次電池の電圧を取得する電圧取得部と、前記二次電池の電流を取得する電流取得部と、取得した電流を積算して前記二次電池の第1充電量を算出する第1算出部と、取得した電圧及び電流並びに前記二次電池の等価回路モデルに基づいて前記二次電池の第2充電量を算出する第2算出部と、取得した電流に基づいて前記二次電池の充放電の切り替えの有無を判定する切替判定部として機能させ、充放電の切り替えがないと判定した場合、前記第1充電量を前記二次電池の充電量とし、充放電の切り替えがあったと判定した場合、前記第2充電量を前記二次電池の充電量として処理する。
本発明の実施の形態に係る充電量算出方法は、二次電池の充電量を算出する充電量算出方法であって、二次電池の電圧を電圧取得部が取得し、前記二次電池の電流を電流取得部が取得し、取得された電流を積算して前記二次電池の第1充電量を第1算出部が算出し、取得された電圧及び電流並びに前記二次電池の等価回路モデルに基づいて前記二次電池の第2充電量を第2算出部が算出し、取得された電流に基づいて前記二次電池の充放電の切り替えの有無を切替判定部が判定し、充放電の切り替えがないと判定された場合、前記第1充電量を前記二次電池の充電量とし、充放電の切り替えがあったと判定された場合、前記第2充電量を前記二次電池の充電量とする。
電圧取得部は二次電池の電圧を取得し、電流取得部は二次電池の電流(充電電流及び放電電流を含む)を取得する。第1算出部は、電流取得部で取得した電流を積算して二次電池の第1充電量を算出する。第1充電量は、電流積算に基づく充電量である。電流積算は、電流を時間で積分したものであり、例えば、電流取得のサンプリング間隔をΔtとし、サンプリングの都度、取得した電流値をIbi(i=1、2、…)とすると、電流積算は、ΣIbi×Δt(i=1、2、…)に基づいて算出することができる。直近に求めた充電量をSOCinとし、第1充電量をSOC1とすると、第1充電量は、SOC1=SOCin±{ΣIbi×Δt(i=1、2、…)/満充電容量FCC}という式で算出することができる。なお、当該式において、符号±は、充電時は+、放電時は−を用いる。
第2算出部は、電圧取得部で取得した電圧、電流取得部で取得した電流及び二次電池の等価回路モデルに基づいて二次電池の第2充電量を算出する。第2充電量は、二次電池の等価回路モデルに基づく充電量である。第2充電量は、電流積算を採用しないので、電流を積算する過程で徐々に増加する電流値の誤差の影響を受けない。等価回路モデルは、二次電池のインピーダンスを表す等価回路であり、例えば、開放電圧OCVを有する電圧源、抵抗、抵抗とキャパシタとの並列回路などの組み合わせで構成されるインピーダンスで表すことができる。なお、電圧、電流は、二次電池が充電又は放電しているときの値であり、二次電池は、無負荷状態ではない。
切替判定部は、電流取得部で取得した電流に基づいて二次電池の充放電の切り替えの有無を判定する。例えば、充電又は放電の一方を正と定めておき、電流が正から負になった場合、あるいは電流が負から正になった場合、充放電の切り替えが有ったと判定することができる。
切替判定部で充放電の切り替えがないと判定した場合、第1充電量を二次電池の充電量とし、充放電の切り替えがあったと判定した場合、第1充電量を補正すべく、第2充電量を二次電池の充電量とする(第1充電量を第2充電量で置き換える)。
充電から放電、あるいは放電から充電に切り替わると、二次電池の内部インピーダンスが一旦リセットされ、等価回路モデルの精度が高くなると考えられる。これにより、二次電池の充放電の切り替えがない場合には、電流積算に基づく第1充電量を充電量とし、二次電池の充放電の切り替えがあった場合には、電流積算の影響を受けない等価回路モデルに基づく第2充電量を充電量とすることができ、二次電池に充放電電流が流れている場合でも二次電池の充電量を精度よく算出することができる。
本発明の実施の形態に係る充電量算出装置は、前記第1算出部で算出した第1充電量及び前記第2算出部で算出した第2充電量の差分を算出する差分算出部を備え、前記切替判定部で充放電の切り替えがあったと判定した場合に、前記差分算出部で算出した差分が所定値以上でないときは、前記第1充電量を前記二次電池の充電量とし、前記切替判定部で充放電の切り替えがあったと判定した場合に、前記差分算出部で算出した差分が前記所定値以上であるときは、前記第2充電量を前記二次電池の充電量とする。
差分算出部は、第1算出部で算出した第1充電量及び第2算出部で算出した第2充電量の差分を算出する。第1充電量をSOC1、第2充電量をSOC2とすると、差分ΔSOCは、ΔSOC=SOC2−SOC1という式で表すことができる。
切替判定部で充放電の切り替えがあったと判定した場合に、差分算出部で算出した差分が所定値以上でないときは、第1充電量を二次電池の充電量とする。また、切替判定部で充放電の切り替えがあったと判定した場合に、差分算出部で算出した差分が所定値以上であるときは、第2充電量を二次電池の充電量とする。
二次電池の充放電の切り替えがあった場合に、充電量の差分が所定値以上でないときは、電流積算の誤差が許容範囲を超えないと考えられるので、電流積算に基づく第1充電量を充電量とする。一方、二次電池の充放電の切り替えがあった場合に、充電量の差分が所定値以上であるときは、電流積算の誤差が許容範囲を超えていると考えられるので、電流積算の影響を受けない等価回路モデルに基づく第2充電量を充電量とする。これにより、二次電池に充放電電流が流れている場合でも二次電池の充電量を精度よく算出することができる。
本発明の実施の形態に係る充電量算出装置は、前記第2算出部は、前記切替判定部で充放電の切り替えがあると判定した場合、充放電の切替時点から所定時間経過後に、前記電圧取得部で取得した電圧及び前記電流取得部で取得した電流に基づいて前記二次電池の第2充電量を算出する。
第2算出部は、切替判定部で充放電の切り替えがあると判定した場合、充放電の切替時点から所定時間経過後に、電圧取得部で取得した電圧及び電流取得部で取得した電流に基づいて二次電池の第2充電量を算出する。充放電の切替後の通電時間に応じて二次電池のインピーダンスが安定し、過電圧の影響を少なくすることができるので、等価回路モデルに基づく第2充電量の精度を高くすることができる。
本発明の実施の形態に係る充電量算出装置は、前記電圧取得部で取得した電圧、前記電流取得部で取得した電流及び前記二次電池の等価回路モデルに基づいて前記二次電池の開放電圧を算出する開放電圧算出部を備え、前記第2算出部は、前記開放電圧算出部で算出した開放電圧及び前記二次電池の開放電圧と充電量との対応関係に基づいて、前記二次電池の第2充電量を算出する。
開放電圧算出部は、電圧取得部で取得した電圧Vb、電流取得部で取得した電流Ib及び二次電池の等価回路モデルに基づいて二次電池の開放電圧OCVを算出する。例えば、等価回路モデル(等価回路モデルで表されるインピーダンス)に流れる電流Ibにより生じる過電圧、取得(検出)される電圧Vb、及び開放電圧OCVの間には、(OCV=Vb−過電圧)、という関係が成り立つ。ここで、電流Ibは、充電時には正、放電時には負とすると、過電圧も充電時は正、放電時は負となる。
第2算出部は、開放電圧算出部で算出した開放電圧OCV及び二次電池の開放電圧と充電量との対応関係に基づいて、二次電池の第2充電量を算出する。二次電池の開放電圧OCVと充電量SOCとの対応関係は、予め記憶部に記憶する構成でもよく、対応関係を演算回路で演算する構成でもよい。これにより、無負荷時の二次電池の電圧を検出する必要がなく、二次電池に充放電電流が流れている場合でも、電流積算に基づく第1充電量を補正するための第2充電量を算出することができる。
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本発明に係る充電量算出装置の実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本実施の形態の充電量算出装置としての電池監視装置100を搭載した車両の要部の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、車両は、電池監視装置100の他に、二次電池ユニット50、リレー61、63、発電機(ALT)62、スタータモータ(ST)64、電池65、電気負荷66などを備える。
二次電池ユニット50は、例えば、リチウムイオン電池であり、複数のセル51が直列又は直並列に接続されている。二次電池ユニット50には、電圧センサ52、電流センサ53、温度センサ54を備える。電圧センサ52は、各セル51の電圧、二次電池ユニット50の両端の電圧を検出し、電圧検出線50aを介して検出した電圧を電池監視装置100へ出力する。電流センサ53は、例えば、シャント抵抗又はホールセンサ等で構成され、二次電池ユニット50の充電電流及び放電電流を検出する。電流センサ53は、電流検出線50bを介して検出した電流を電池監視装置100へ出力する。温度センサ54は、例えば、サーミスタで構成され、セル51の温度を検出する。温度センサ54は、温度検出線50cを介して検出した温度を電池監視装置100へ出力する。
電池65は、例えば、鉛電池であり、車両の電気負荷66への電力供給を行うとともに、リレー63がオンした場合には、スタータモータ64を駆動するための電力供給を行う。発電機62は、車両のエンジンの回転により発電し、内部に設けられた整流回路により直流を出力して電池65を充電する。また、発電機62は、リレー61がオンしている場合、電池65及び二次電池ユニット50を充電する。なお、リレー61、63のオン・オフは不図示のリレー制御部が行う。
図2は本実施の形態の電池監視装置100の構成の一例を示すブロック図である。電池監視装置100は、装置全体を制御する制御部10、電圧取得部11、電流取得部12、第1充電量算出部13、第2充電量算出部14、開放電圧算出部15、切替判定部16、差分算出部17、記憶部18、及び計時のためのタイマ19などを備える。
電圧取得部11は、二次電池ユニット50の電圧(例えば、二次電池ユニット50の両端電圧)を取得する。また、電流取得部12は、二次電池ユニット50の電流(充電電流及び放電電流)を取得する。なお、電圧、電流の取得頻度、取得するサンプリング周期は、制御部10が制御することができる。サンプリング周期は、例えば、10msとすることができるが、これに限定されるものではない。
第1充電量算出部13は、第1算出部としての機能を有し、電流取得部12で取得した電流を積算して二次電池ユニット50の第1充電量を算出する。第1充電量は、電流積算に基づく充電量であり、電流積算SOCとも称する。なお、本実施の形態において、充電量は、SOC(State Of Charge)又は充電率とも称し、満充電容量に対する充電されている容量の比率を表す。電流積算は、電流を時間で積分したものであり、例えば、電流取得のサンプリング間隔をΔtとし、サンプリングの都度、取得した電流値をIbi(i=1、2、…)とすると、電流積算は、ΣIbi×Δt(i=1、2、…)に基づいて算出することができる。直近に求めた充電量をSOCinとし、第1充電量をSOC1とすると、第1充電量は、SOC1=SOCin±{ΣIbi×Δt(i=1、2、…)/満充電容量FCC}という式で算出することができる。なお、当該式において、符号±は、充電時は+、放電時は−を用いる。
第2充電量算出部14は、第2算出部としての機能を有し、電圧取得部11で取得した電圧、電流取得部12で取得した電流及び二次電池ユニット50の等価回路モデルに基づいて二次電池ユニット50の第2充電量を算出する。第2充電量は、二次電池ユニット50の等価回路モデルに基づく充電量であり、電池等価回路モデルSOCとも称する。第2充電量は、電流積算を採用しないので、電流を積算する過程で徐々に増加して累積する電流値の誤差(例えば、電流センサ53の誤差)の影響を受けない。なお、電圧、電流は、二次電池ユニット50が充電又は放電しているときの値であり、二次電池ユニット50は、無負荷状態ではない。
図3は本実施の形態の二次電池ユニット50の等価回路モデルの一例を示す説明図である。等価回路モデル(電池等価回路モデルとも称する)は、二次電池ユニット50のインピーダンスを表す等価回路であり、例えば、図3に示すように、開放電圧OCVを有する電圧源、抵抗R1、抵抗とキャパシタとの並列回路(図3では、抵抗R2〜R5それぞれとキャパシタC2〜C5それぞれとの並列回路が4個直列に接続された構成を示す)などの組み合わせで構成されるインピーダンスで表すことができる。二次電池ユニット50は、開放電圧OCVを有する電圧源、内部インピーダンスの直列抵抗などで決定される。開放電圧OCVは、正極、負極及び電解質の静的なつり合いで決まり、内部インピーダンスは動的なメカニズムで決まる。
より具体的には、抵抗R1は、例えば、電解液バルクの抵抗を表し、抵抗R2〜R5は、例えば、界面電荷移動抵抗及び拡散インピーダンスを表し、キャパシタC2〜C5は、例えば、電気二重層キャパシタンスを表す。電解液バルクの抵抗は、電解液中でのリチウム(Li)イオンの伝導抵抗、正極及び負極での電子抵抗などを含む。界面電荷移動抵抗は、活物質表面における電荷移動抵抗及び被膜抵抗などを含む。拡散インピーダンスは、活物質粒子内部へのリチウム(Li)イオンの拡散過程に起因するインピーダンスである。なお、二次電池ユニット50の等価回路モデルは一例であって、図3の例に限定されない。
切替判定部16は、電流取得部12で取得した電流に基づいて二次電池ユニット50の充放電の切り替えの有無を判定する。例えば、充電又は放電の一方を正と定めておき、電流が正から負になった場合、あるいは電流が負から正になった場合、充放電の切り替えが有ったと判定することができる。
制御部10は、切替判定部16で充放電の切り替えがないと判定した場合、第1充電量を二次電池ユニット50の充電量とする。また、制御部10は、切替判定部16で充放電の切り替えがあったと判定した場合、第1充電量を補正すべく、第2充電量を二次電池ユニット50の充電量とする(第1充電量を第2充電量で置き換える)。
充電から放電、あるいは放電から充電に切り替わると、二次電池ユニット50の内部インピーダンスが一旦リセットされ、等価回路モデルの精度が高くなると考えられる。これにより、二次電池ユニット50の充放電の切り替えがない場合には、電流積算に基づく第1充電量を充電量とし、二次電池ユニット50の充放電の切り替えがあった場合には、電流積算の影響を受けない等価回路モデルに基づく第2充電量を充電量とすることができ、二次電池ユニット50に充放電電流が流れている場合でも二次電池ユニット50の充電量を精度よく算出することができる。
第2充電量算出部14は、切替判定部16で充放電の切り替えがあると判定した場合、充放電の切替時点から所定時間経過後に、電圧取得部11で取得した電圧及び電流取得部12で取得した電流に基づいて二次電池ユニット50の第2充電量を算出する。所定時間は、充電から放電に切り替わった場合と、放電から充電に切り替わった場合とで異なる値を用いてもよく、同じ値を用いてもよい。所定時間は、例えば、0.1秒〜2秒程度とすることができるが、これらの数値に限定されない。
充放電の切替後の通電時間(充電時間又は放電時間)に応じて二次電池ユニット50のインピーダンスが安定し、過電圧の影響を少なくすることができるので、等価回路モデルに基づく第2充電量の精度を高くすることができる。なお、過電圧は、二次電池ユニット50の電圧(端子電圧)と開放電圧OCV(開回路電圧とも称する)との差をいう。
次に、第2充電量の算出方法について、より具体的に説明する。
開放電圧算出部15は、電圧取得部11で取得した電圧Vb、電流取得部12で取得した電流Ib及び二次電池ユニット50の等価回路モデルに基づいて二次電池ユニット50の開放電圧OCVを算出する。
図4は本実施の形態の二次電池ユニット50の充電開始後の電圧の推移の一例を示す模式図である。図4の上段の図は、充電も放電を行われていない状態から充電が開始された以降の、二次電池ユニット50の電流Ibを模式的に示す。図4の下段の図は、充電が開始された以降の、二次電池ユニット50の開放電圧OCV、端子電圧である電圧Vb、及び過電圧の関係を模式的に示す。過電圧は、二次電池ユニット50の電圧Vbと開放電圧OCVとの差の電圧をいう。開放電圧OCVは、二次電池ユニット50の端子電圧の静的な状態を示し、電極間に外部電源を接続し、電流を0Aにして自己放電しない時間範囲内で長時間緩和させたときの平衡電位である。図4に示すように、充電電流Ibが流れると、二次電池ユニット50の電圧Vbは、ステップ的な電圧上昇に続いて、様々な電気化学反応の遅れにより緩やかに上昇する。図4に示すように、取得(検出)される電圧Vb、過電圧及び開放電圧OCVの間には、(OCV=Vb−過電圧)、という関係が成り立つ。充電時には、電流Ibは正、過電圧も正となる。
図5は本実施の形態の二次電池ユニット50の放電開始後の電圧の推移の一例を示す模式図である。図5の上段の図は、充電も放電を行われていない状態から放電が開始された以降の、二次電池ユニット50の電流Ibを模式的に示す。図5の下段の図は、充電が開始された以降の、二次電池ユニット50の開放電圧OCV、端子電圧である電圧Vb、及び過電圧の関係を模式的に示す。図5に示すように、放電電流Ibが流れると、二次電池ユニット50の電圧Vbは、ステップ的な電圧降下に続いて、様々な電気化学反応の遅れにより緩やかに低下する。取得(検出)される電圧Vb、過電圧及び開放電圧OCVの間には、OCV=Vb−過電圧、という関係が成り立つ。放電時には、電流Ibは負、過電圧も負となるので、(OCV=Vb−過電圧)、という関係は、図5に示すように、(OCV=Vb+過電圧)、と表すことができる。
上述のように、等価回路モデルに流れる電流Ibにより生じる過電圧、取得(検出)される電圧Vb、及び開放電圧OCVの間には、(OCV=Vb−過電圧)、という関係が成り立つ。ここで、電流Ibは、充電時には正、放電時には負とすると、過電圧も充電時は正、放電時は負となる。
第2充電量算出部14は、開放電圧算出部15で算出した開放電圧OCV、及び二次電池ユニット50の開放電圧OCVと充電量SOCとの対応関係に基づいて、二次電池ユニット50の第2充電量を算出する。
図6は本実施の形態の二次電池ユニット50の開放電圧と充電量との相関関係の一例を示す説明図である。図6において、横軸は開放電圧OCVを示し、縦軸は充電量SOCを示す。図6に示すように、二次電池ユニット50の開放電圧が大きいほど充電量が増加する。なお、図6に例示する開放電圧と充電量との相関関係は、記憶部18に記憶してもよく、あるいは演算回路で演算するようにしてもよい。
上述の構成により、無負荷時の二次電池ユニット50の電圧を検出する必要がなく、二次電池ユニット50に充放電電流が流れている場合でも、電流積算に基づく第1充電量を補正するための第2充電量を算出することができる。
図7は本実施の形態の電池監視装置100による二次電池ユニット50の充電量の算出処理の要部を示す模式図である。二次電池ユニット50の電圧Vb、及び電流Ibが、所定のサンプリング周期(例えば、10ms)で取得されると、第1充電量算出部13は、電流積算の処理を行って、当該サンプリング周期で第1充電量を算出する。制御部10は、算出された第1充電容量を二次電池ユニット50の充電量SOCとして出力する。
第2充電量算出部14は、二次電池ユニット50の電流Ib及び電池等価回路モデルに基づいて二次電池ユニット50の過電圧を算出し、二次電池ユニット50の電圧Vbから算出した過電圧を減算して開放電圧OCVを算出する。第2充電量算出部14は、算出した開放電圧OCVを、図6に例示したようなOCV−SOC特性に基づいて変換することにより、第2充電量を算出する。第2充電量の算出頻度は、前述のサンプリング周期(例えば、10ms)の都度でもよく、後述のトリガが生成される都度でもよい。
切替判定部16は、二次電池ユニット50の電流Ibに基づいて、ゼロクロス判定処理(電流ゼロクロスの有無の判定処理、すなわち、充放電の切替の有無の判定処理)を行い、電流ゼロクロスがあった時点(充放電の切替時点)から所定時間(例えば、0.1秒〜2秒程度など)経過した時点でトリガ(所定時間経過トリガとも称する)を生成する、所定時間経過トリガ生成処理を行う。
制御部10は、所定時間経過トリガが生成された時点で、第1充電量を第2充電量に置き換えることにより第1充電量を補正する。すなわち、制御部10は、所定時間経過トリガが生成された時点で第2充電量算出部14が算出した第2充電量を二次電池ユニット50の充電量SOCとして出力する。
図8は本実施の形態の二次電池ユニット50の電流波形の一例を示す説明図である。図8において、横軸は時間を示し、縦軸は電流を示す。電流が正の場合は充電状態であり、電流が負の場合は放電状態である。図8の例では、数時間程度の間での電流の推移を表しており、充電から放電、及び放電から充電に切り替わるタイミングで電流ゼロクロスが発生していることが分かる。なお、電流波形は一例であり、これに限定されない。
図9は本実施の形態の電池監視装置100が算出する各充電量の一例を示す説明図である。図9において、横軸は時間を示し、縦軸は充電量SOCを示す。図9中、「電流積算(電流誤差あり)」で示すグラフは、図8に例示した電流に基づいて算出した第1充電量の時刻0からの推移を示す。また、「電池等価回路モデル」で示すグラフは、図8に例示した電流に基づいて算出した第2充電量の時刻0からの推移を示す。また、「電流積算(電流誤差なし)」で示すグラフは、図8に例示した電流を誤差がない状態で積算した場合の時刻0からの推移を示し、電流積算の真値を表す。
図9から分かるように、時刻0からの時間経過が短い間では、電流積算に基づく第1充電量と電流積算の真値との差が小さく、第1充電量が二次電池ユニット50の充電量を精度よく表していることがわかる。また、充放電の切替が発生したタイミングで、第2充電量が電流積算の真値に近づく傾向があることも分かる。
図10は本実施の形態の電池監視装置100による二次電池ユニット50の充電量の一例を示す説明図である。図10において、横軸は時間を示し、縦軸は充電量SOCを示す。図10では、充放電の切り替えがあった都度、所定時間経過トリガが生成されている。そして、所定時間経過トリガが生成されるタイミングで、二次電池ユニット50の充電量が補正されていることが分かる。また、充放電の切り替えがあった都度、二次電池ユニット50の充電量を補正することができ、頻繁に充放電が繰り返される車両において、二次電池ユニット50の充電量の算出精度を向上することができる。
図11は本実施の形態の電池監視装置100による二次電池ユニット50の充電量の誤差の一例を示す説明図である。図11において、横軸は時間を示し、縦軸は充電量SOCの誤差を示す。図11中、電流積算の真値は、誤差0%の横軸により表される。「補正前誤差」で示すグラフは、電流積算の真値に対する第1充電量と電流積算の真値との差の割合(誤差)を示す。また、「補正後誤差」で示すグラフは、電流積算の真値に対する補正後の充電量の割合(誤差)を示す。図11に示すように、所定時間経過トリガが生成されるタイミングで、補正前誤差に比べて、誤差が小さくなるように二次電池ユニット50の充電量が補正されていることが分かる。
次に、本実施の形態の電池監視装置100の動作について説明する。図12は本実施の形態の電池監視装置100による充電量算出の処理手順の第1例を示すフローチャートである。以下では便宜上、処理の主体を制御部10として説明する。制御部10、電流積算SOC(第1充電量)を算出する(S11)。電流積算SOCの算出頻度は、二次電池ユニット50の電流検出のサンプリング周期と同期させることができ、たとえば、10msとすることができる。電流積算SOCの算出処理の詳細は後述する。
制御部10は、電流ゼロクロスの有無を判定し(S12)、電流ゼロクロスがあった場合(S12でYES)、充電から放電への切替であるか否かを判定する(S13)。充電から放電への切替である場合(S13でYES)、制御部10は、電流ゼロクロスが発生した時点から所定時間Tcdが経過したか否かを判定する(S14)。所定時間Tcdは、例えば、0.1秒〜2秒程度とすることができる。
所定時間Tcdが経過していない場合(S14でNO)、制御部10は、ステップS14の処理を続ける。充電から放電への切替でない場合(S13でNO)、すなわち、放電から充電への切替である場合、制御部10は、電流ゼロクロスが発生した時点から所定時間Tdcが経過したか否かを判定する(S15)。所定時間Tdcは、例えば、0.1秒〜2秒程度とすることができる。所定時間Tdcが経過していない場合(S15でNO)、制御部10は、ステップS15の処理を続ける。
所定時間Tcdが経過した場合(S14でYES)、あるいは、所定時間Tdcが経過した場合(S15でYES)、制御部10は、電池等価回路モデルSOC(第2充電量)を算出する(S16)。電池等価回路モデルSOCの算出処理の詳細は後述する。
制御部10は、電流積算SOCの補正を行う(S17)。電流積算SOCの補正は、所定時間Tcd又はTdcが経過した時点において、直近に算出された電流積算SOCを電池等価回路モデルSOCで置き換える処理である。
制御部10は、置き換えた電池等価回路モデルSOCを二次電池ユニット50の充電量SOCとして出力し(S18)、処理を終了する。電流ゼロクロスがない場合(S12でNO)、制御部10は、算出した電流積算SOCを二次電池ユニット50の充電量SOCとして出力し(S18)、処理を終了する。なお、図12に示す処理は、二次電池ユニット50の充電又は放電が続く場合、繰り返し行うことができる。
図13は本実施の形態の電池監視装置100による電流積算SOC算出の処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部10は、所定のサンプリング周期(例えば、10ms)で二次電池ユニット50の電流Ibを取得し(S101)、取得した電流値を積算する(S102)。制御部10は、積算した電流値を満充電容量で除算して、電流積算SOCを算出し(S103)、処理を終了する。なお、SOCの初期値は、例えば、イグニッションがオフ時、あるいはイグニッションのオン直後、つまり二次電池ユニット50の電流が流れていないときに取得した電圧をOCVとし、当該OCVから求めたSOCを初期値とすればよい。
図14は本実施の形態の電池監視装置100による電池等価回路モデルSOC算出の処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部10は、二次電池ユニット50の電圧Vbを取得し(S111)、電流Ibを取得する(S112)。電圧Vb及び電流Ibの取得のタイミングは、所定のサンプリング周期(例えば、10ms)の都度でもよく、あるいは、複数回サンプリングした値を平均化した後でもよい。
制御部10は、取得した電流Ib及び電池等価回路モデルに基づいて過電圧を算出し(S113)、取得した電圧Vb及び算出した過電圧に基づいて開放電圧OCVを算出する(S114)。制御部10は、算出した開放電圧OCVを変換して、電池等価回路モデルSOCを算出し(S115)、処理を終了する。
上述の例では、充放電の切り替えがあった場合に、電流積算SOCを補正する構成であったが、これに限定されるものではない。例えば、第2例として、充放電の切り替えがあった場合に、電流積算SOCと電池等価回路モデルSOCとの差分に応じて、電流積算SOCを補正するか否かを決定することもできる。以下、詳細に説明する。
差分算出部17は、第1充電量算出部13で算出した第1充電量(電流積算SOC)及び第2充電量算出部14で算出した第2充電量(電池等価回路モデルSOC)の差分を算出する。第1充電量をSOC1、第2充電量をSOC2とすると、差分ΔSOCは、ΔSOC=SOC2−SOC1という式で表すことができる。
制御部10は、切替判定部16で充放電の切り替えがあったと判定した場合に、差分算出部17で算出した差分が所定値以上でないときは、第1充電量を二次電池ユニット50の充電量とする。また、制御部10は、切替判定部16で充放電の切り替えがあったと判定した場合に、差分算出部17で算出した差分が所定値以上であるときは、第2充電量を二次電池ユニット50の充電量とする。所定値は、判定時点のSOCの5%〜10%程度とすることができるが、これらの数値に限定されるものではない。
二次電池ユニット50の充放電の切り替えがあった場合に、充電量の差分が所定値以上でないときは、電流積算の誤差が許容範囲を超えないと考えられるので、電流積算に基づく第1充電量を充電量とする。一方、二次電池ユニット50の充放電の切り替えがあった場合に、充電量の差分が所定値以上であるときは、電流積算の誤差が許容範囲を超えていると考えられるので、電流積算の影響を受けない等価回路モデルに基づく第2充電量を充電量とする。これにより、二次電池ユニット50に充放電電流が流れている場合でも二次電池ユニット50の充電量を精度よく算出することができる。
図15は本実施の形態の電池監視装置100による充電量算出の処理手順の第2例を示すフローチャートである。制御部10、電流積算SOC(第1充電量)を算出する(S31)。電流積算SOCの算出頻度は、二次電池ユニット50の電流検出のサンプリング周期と同期させることができ、たとえば、10msとすることができる。電流積算SOCの算出処理は、図13の処理と同様である。
制御部10は、電流ゼロクロスの有無を判定し(S32)、電流ゼロクロスがあった場合(S32でYES)、充電から放電への切替であるか否かを判定する(S33)。充電から放電への切替である場合(S33でYES)、制御部10は、電流ゼロクロスが発生した時点から所定時間Tcdが経過したか否かを判定する(S34)。所定時間Tcdは、例えば、0.1秒〜2秒程度とすることができる。
所定時間Tcdが経過していない場合(S34でNO)、制御部10は、ステップS34の処理を続ける。充電から放電への切替でない場合(S33でNO)、すなわち、放電から充電への切替である場合、制御部10は、電流ゼロクロスが発生した時点から所定時間Tdcが経過したか否かを判定する(S35)。所定時間Tdcは、例えば、0.1秒〜2秒程度とすることができる。所定時間Tdcが経過していない場合(S35でNO)、制御部10は、ステップS35の処理を続ける。
所定時間Tcdが経過した場合(S34でYES)、あるいは、所定時間Tdcが経過した場合(S35でYES)、制御部10は、電池等価回路モデルSOCを算出する(S36)。電池等価回路モデルSOCの算出処理は、図14の処理と同様である。
制御部10は、電流積算SOCと電池等価回路モデルSOCとの差分を算出する(S37)。なお、ステップS37で用いる電流積算SOCは、電池等価回路モデルSOCを算出したタイミングに最も近いタイミングで算出された電流積算SOCとすることができ、例えば、所定時間Tcd又はTdcが経過した時点において、直近に算出された電流積算SOCとすることができる。
制御部10は、算出した差分が所定値以上であるか否かを判定し(S38)、差分が所定値以上である場合(S38でYES)、電流積算SOCの補正を行う(S39)。電流積算SOCの補正は、所定時間Tcd又はTdcが経過した時点において、直近に算出された電流積算SOCを電池等価回路モデルSOCで置き換える処理である。
制御部10は、置き換えた電池等価回路モデルSOCを二次電池ユニット50の充電量SOCとして出力し(S40)、処理を終了する。電流ゼロクロスがない場合(S32でNO)、あるいは、差分が所定値以上でない場合(S38でNO)、制御部10は、算出した電流積算SOCを二次電池ユニット50の充電量SOCとして出力し(S40)、処理を終了する。なお、図15に示す処理は、二次電池ユニット50の充電又は放電が続く場合、繰り返し行うことができる。
本実施の形態の充電量算出装置(電池監視装置100)は、CPU(プロセッサ)、RAM(メモリ)などを備えた汎用コンピュータを用いて実現することもできる。すなわち、図12から図15に示すような、各処理の手順を定めたコンピュータプログラムをコンピュータに備えられたRAM(メモリ)にロードし、コンピュータプログラムをCPU(プロセッサ)で実行することにより、コンピュータ上で充電量算出装置(電池監視装置100)を実現することができる。
上述のように、本実施の形態の電池監視装置100(充電量算出装置)によれば、二次電池ユニットが無負荷状態である必要がなく、二次電池ユニットに電流が流れている場合でも、電流積算に基づく充電量を電池等価回路モデルに基づく充電量に置き換えて、電流積算に基づく充電量を補正することができ、二次電池ユニットの充電量を精度よく算出することができる。
また、比較例として、二次電池の端子電圧及び電流から一次回帰演算して得られる特性直線から開放電圧を算出し、当該開放電圧に基づいて算出される充電量と電流積算に基づく充電量との差が所定値以上となった場合に、開放電圧に基づいて算出される充電量に置き換える方法がある。しかし、かかる方法では、一次回帰演算して精度の高い特性直線を得るためには、電圧及び電流のサンプリングを多くする必要があるとともに、サンプリングした電圧及び電流にある程度のばらつきが必要となり、例えば、車両が一定の速度で走行する機会が多い場合には、精度良く開放電圧を求めることができず、充電量の補正を行うことができない。しかし、本実施の形態の電池監視装置100によれば、一次回帰演算を得る必要がなく、二次電池ユニットの充放電の切替タイミング(正確には、充放電の切替後所定時間経過時点)で二次電池ユニットの充電量を補正することができる。
また、比較例として、二次電池の端子電圧、電流、及び内部抵抗から開放電圧を算出し、当該開放電圧算出される充電量と電流積算に基づく充電量との差が所定値以上となった場合に、開放電圧に基づいて算出される充電量に置き換える方法がある。しかし、かかる方法では、開放電圧を算出する場合に、二次電池の分極の影響が考慮されていないため、精度良く開放電圧を求めることができず、充電量の補正を行うことができない。しかし、本実施の形態の電池監視装置100によれば、電池等価回路モデルの中に分極の影響も含んでいるので、電池等価回路モデルを用いることにより、分極による誤差は生じない。
上述の実施の形態では、二次電池をリチウムイオン電池として説明したが、二次電池はリチウムイオン電池に限定されるものではなく、例えば、ニッケル水素電池、ニッカド電池などにも提供することができる。
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。