JP2017184862A - 基礎床形成用シートおよびそれを用いた基礎床、有床義歯の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】無開りん法による有床義歯の製造を可能とし得る新規な基礎床形成用シートおよびそれを用いた基礎床、ならびに、それを用いた無開りん法を利用した有床義歯の製造方法を提供する。
【解決手段】有床義歯の製造に用いられる基礎床を形成するためのシートであって、シート状の繊維集合体に、光硬化性成分および光重合開始剤を含む液状物が含浸された基礎床形成用シート、およびそれを用いた基礎床、ならびに、それを用いた無開りん法を利用した有床義歯の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、有床義歯の製造における基礎床を形成するためのシートおよびそれを用いて形成された基礎床、ならびに、それを用いた有床義歯の製造方法に関する。
有床義歯とは、人工の歯茎(床)と人工の歯とを備える義歯であり、たとえば特開2003−159261号公報(特許文献1)には、その一般的な製造方法が記載されている。まず、歯科医院にて患者の歯型をとり(印象採得)、印象に石膏を流して患者の口腔内の模型(顎模型)を作製する。次に、作製された模型上に蝋(ワックス)を盛り上げて咬合堤(蝋堤/ロウ堤)を形成して咬合床を得る。得られた咬合床に、樹脂などで形成された人工歯を植え付け、蝋義歯を作製する。その後、歯科医院にて、蝋義歯(人工歯が設置された咬合床)を実際に患者の口腔内に適用し、蝋義歯の歯並び、噛み合わせなどのチェック(試適)を行なう。試適を行なった後の蝋義歯を模型と共に歯科用フラスコ内に収容し、石膏などの埋没材を流し込んで固定し(埋没)、埋没材が硬化したら歯科用フラスコ内の咬合床を熱で溶かし(脱蝋)、歯科用フラスコから流し出す。その後、咬合床を流し出した後の歯科用フラスコに、加熱重合レジン、熱可塑性レジンなどの有床義歯形成用樹脂などを充填/重合した後、歯科用フラスコから取り出す。その後、研磨などの仕上げ作業を経て、有床義歯が製造される。また部分床義歯を製造する場合には、上述の製造手順に準じて行われるが、クラスプ(部分床義歯を固定するための金属の留め具)、バー(部分床義歯を固定するための金属の連結装置)などの作製工程が加わる。
咬合床を歯科分野で一般的に用いられている蝋(たとえば歯科用パラフィンワックス)のみで形成した場合、患者の口腔内での試適の際に蝋義歯が変形してしまうことが多々ある。ここで蝋義歯が変形してしまうと、最終的に変形した義歯が得られ、患者の歯肉の形状に合致せず、いわゆる「合わない入れ歯」となってしまう。したがって精度の高い有床義歯を製造するためには、模型上に、蝋よりも変形しにくい材料で基礎床(ベースプレート)を作製し、この基礎床上に、蝋を盛り上げて咬合堤を形成することで咬合床を作製することが好ましいことが知られている。たとえば、特許文献1には、咬合堤を補強する目的で、この模型と咬合堤との間に、薄く歯科用レジンを塗り、これをレジン床(基礎床)として用いることもできることが記載されている。また、たとえば特開2008−119210号公報(特許文献2)には、熱可塑性プレートを加熱して軟化させた状態で模型に圧力下で密着させて熱可塑性プレートを成形して基礎床とする義歯の製造方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1、2に記載されたような基礎床を用いた場合、脱蝋のために咬合床を熱で溶かそうとしても、基礎床は歯科用フラスコから流れ出ずに残ることになる。基礎床の形成に用いられる一般的な歯科用レジンの例としてポリメタクリル酸メチルが挙げられるが、ポリメタクリル酸メチルは融点が高く、流動性を呈する温度は約200℃である。このため、歯科用フラスコを開け、咬合堤を形成する蝋を溶かし(脱蝋)、基礎床を取り出した後に、再び歯科用フラスコを閉じ、樹脂などを充填する必要がある。この方法は「開りん法」と呼称される方法であるが、歯科用フラスコを開ける作業の他、歯科用フラスコを開けるためのアンダーカット処理、分離剤(離型剤)の塗布、2回に分けて埋没などの作業に加え、開いた歯科用フラスコに有床義歯形成用樹脂などを填入後、プレスおよびバリ取りの作業をバリが発生しなくなるまで行わなければならないなど、操作が煩雑であり、有床義歯の製造に長時間を要する。また、バリなどの除去に伴い、蝋義歯を用いて試適を行なったにも関わらず、人工歯、バー、クラスプの位置関係が変わってしまったり、咬合高径が変わってしまうなど、製造された有床義歯の精度が下がってしまう。
このため、歯科用フラスコを開かずに脱蝋して有床義歯を製造する「無開りん法」と呼称される方法が提案されている。たとえば特開昭60−194944号公報(特許文献3)には、ワックスパターンを配設したフラスコ内に埋没材を注入して固結させ、フラスコを加熱することによりワックスパターンを軟化流出させて埋没材内にパターン空洞を形成する有床義歯用成形型の製造方法において、フラスコの外面に開口する補綴材料注入口内にスプールワックスの一端部を位置させるとともに、スプールワックスの他端部をワックスパターンのワックス床の一側端部に接続し、フラスコの補綴材料注入口形成面とは異なる外面に開口する脱ロウ口内にベントワックスの一端部を位置させるとともに、ベントワックスの他端部をワックスパターンのワックス床の他端部側に接続し、フラスコを加熱してフラスコ内に位置するワックスを軟化させるとともに、補綴材料注入口から蒸気と高温水とを交互に噴出させることによりフラスコ内に蒸気と高温水を通過させて埋没材内のワックスをフラスコ外に排出するようにした有床義歯成形型の製造方法が開示されている。
しかしながら、特許文献3に記載されたような無開りん法を行なう場合、上述のように脱蝋により歯科用フラスコより溶かし出せない基礎床を用いることができない。したがって、無開りん法を行なう場合には、基礎床なしで咬合床を作製せざるを得ず、上述のように試適の際に蝋義歯が変形してしまう虞があった。すなわち、無開りん法という優れた方法があるにも関わらず、その優位性を生かした材料がこれまで存在しなかった。
特開2003−159261号公報 特開2008−119210号公報 特開昭60−194944号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、無開りん法による有床義歯の製造を可能とし得る新規な基礎床形成用シートおよびそれを用いた基礎床、ならびに、それを用いた無開りん法を利用した有床義歯の製造方法を提供することである。
本発明は、有床義歯の製造に用いられる基礎床を形成するためのシートであって、シート状の繊維集合体に、光硬化性成分および光重合開始剤を含む液状物が含浸されたものであることを特徴とする。
本発明の基礎床形成用シートにおいて、光硬化性成分は、少なくとも1個の不飽和二重結合を有する分子量150以上の(メタ)アクリレートであることが好ましい。
本発明の基礎床形成用シートにおいて、光硬化性成分は、トリエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレートおよびウレタンジメタアクリレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、トリエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレートおよびウレタンジメタアクリレートから選ばれる少なくとも2種であることがより好ましい。
本発明の基礎床形成用シートにおいて、繊維集合体は不織布であることが好ましい。
本発明の基礎床形成用シートにおいて、液状物が無機質充填材をさらに含むことが好ましい。
本発明の基礎床形成用シートにおいて、無機充填材はシリカおよびガラス粉末から選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。
本発明の基礎床形成用シートにおいて、基礎床上に形成される咬合堤の底面よりも小さな面積を有することが好ましい。
本発明は、本発明の基礎床形成用シートが光硬化した基礎床についても提供する。
本発明は、印象採得により作製された模型に本発明の基礎床形成用シートを圧接し、基礎床形成用シートに含まれる光硬化性成分を光硬化させて基礎床を形成するステップと、基礎床上に蝋を用いて咬合堤を形成して咬合床を作製し、作製した咬合床に人工歯を設置するステップと、人工歯が設置された咬合床の試適を行なうステップと、試適後の人工歯が設置された咬合床から基礎床を取り外すステップと、基礎床を取り外した咬合床を模型と共に歯科用フラスコ内に収容し、歯科用フラスコ内に埋没材を流し込んで埋没させるステップと、歯科用フラスコを開かずに、蝋を溶融させ、歯科用フラスコから流し出すステップとを含む、有床義歯の製造方法についても提供する。
本発明の有床義歯の製造方法において、基礎床の側部全面を覆うように咬合堤が形成されていない場合、基礎床を取り外した後に咬合床に生じた、咬合堤で覆われていない基礎床の側部に対応する空隙を蝋で埋めた後に、模型と共に歯科用フラスコ内に収容することが好ましい。
本発明の有床義歯の製造方法において、模型に圧接した基礎床形成用シートを減圧させながら、前記光硬化性成分の光硬化を行なうことが好ましい。
本発明によれば、模型上に容易に基礎床を成形でき、成形後は試適に十分に耐え得る強度を有する蝋義歯を作製することができ、試適の後に蝋義歯から基礎床を容易に撤去することができる。これにより、基礎床を利用しながら、無開りん法を利用して有床義歯を製造することができるため、製造された有床義歯において、開りん法の際に生じていた人工歯、バー、クラスプの位置関係、咬合高径の変化がなく、精度が向上された有床義歯を短時間で製造することができる。
本発明の基礎床形成用シートを用いた基礎床の作製を模式的に示す図である。 本発明の基礎床の好ましい一例を模式的に示す図であり、図2(a)は上顎全部床義歯の場合、図2(b)は部分床義歯の場合である。 本発明の基礎床形成用シートを用いた有床義歯の製造方法の好ましい一例を示すフローチャートである。 本発明の基礎床の好ましい他の例を模式的に示す図であり、図4(a)は上顎全部床義歯の場合、図4(b)は部分床義歯の場合である。
〔1〕基礎床形成用シート
本発明の基礎床形成用シートは、有床義歯の製造に用いられる基礎床を形成するためのシートであって、シート状の繊維集合体に、光硬化性成分および光重合開始剤を含む液状物が含浸されたものであることを特徴とする。このような基礎床形成用シートを用いることで、模型上に容易に基礎床を成形でき(良好な操作性を有する)、成形後は試適に十分に耐え得る強度を有する蝋義歯を作製することができ、試適の後に蝋義歯から基礎床を容易に撤去することができる。これにより、基礎床を利用しながら、無開りん法を利用して有床義歯を製造することができるため、製造された有床義歯において、開りん法の際に生じていた人工歯、バー、クラスプの位置関係、咬合高径の変化がなく、精度が向上された有床義歯を短時間で製造することができる。
ここで、図1は、本発明の基礎床形成用シートを用いた基礎床の作製を模式的に示す図である。本発明の基礎床形成用シートを用いた有床義歯の製造方法については後述するが、印象採得により形成された模型をもとに蝋義歯を作製する際に用いられる。図1(a)および図1(b)に模式的に示されるように、印象採得により形成された模型2に、本発明の基礎床形成用シート1を圧接する。次に、光(紫外光または可視光)3を基礎床形成用シート1に照射し、光硬化性成分を硬化させることで、基礎床1’が形成される。この基礎床1’に、従来より広く用いられてきた適宜の蝋(ワックス)を用いて、従来と同様の手順で咬合堤を形成して咬合床を形成する。
本発明の基礎床形成用シートにおけるシート状の繊維集合体は、繊維自体および繊維間に光硬化性成分および光重合開始剤を含む液状物を含浸させ得るものであれば特に制限されるものではなく、織布、不織布のいずれであってもよいが、基礎床形成用シートの模型への密着性、液状物の担持性という理由からは、不織布であることが好ましい。なお、本発明における「シート状」には、比較例として後述するSUSメッシュ、ナイロンメッシュなどのような液状物が染み込まずに流出してしまうようなメッシュ状物(網状物)は包含されない。このように本発明の基礎床形成用シートにおいては、シート状の繊維集合体に光硬化性成分および光重合開始剤を含む液状物を含浸させているため、形成された基礎床の厚みが均一であり、模型への圧接時の操作性が良好であるという利点がある(これに対し、従来の歯科用レジンで基礎床を形成する場合には、通常、粉末製粉と液成分とを混練し、成形性の保てる硬さまで膨潤した後に不定形の状態から圧接するため、厚さにばらつきが発生する。)。
また本発明の基礎床形成用シートでは、シート状の繊維集合体に光硬化性成分および光重合開始剤を含む液状物を含浸させているため、光を積極的に照射するまでは光硬化性成分が重合により硬化しにくい。このため、基礎床形成用シートの圧接などの操作を行なう時間にゆとりが持てるという利点がある(これに対し、従来の歯科用レジンで基礎床を形成する場合には、通常、粉末成分と液成分を混練すると室温で重合が開始する。そのため操作時間にゆとりがなく、特に夏季は圧接が完了するまでに硬化してしまうことが多々ある。)。
さらに、本発明の基礎床形成用シートでは、シート状の繊維集合体に光硬化性成分および光重合開始剤を含む液状物を含浸させているため、光硬化性成分を重合、硬化させて形成された基礎床の表面が滑沢である。このため、患者の口腔内での試適後に基礎床を撤去する際、容易に撤去できる。これにより、基礎床を利用しながら、無開りん法を利用して有床義歯を製造することができる。
本発明におけるシート状の繊維集合体は、その厚みについては特に制限されないが、光硬化性成分および光重合開始剤を含む液状物を十分に含浸させることができ、かつ、光の照射により光硬化性成分を十分に硬化させ得、さらには形成した後の基礎床が試適に耐え得るように機能する観点からは、0.5〜5.0mmの範囲内であることが好ましく、1.0〜3.0mmの範囲内であることがより好ましい。
本発明におけるシート状の繊維集合体は、繊維の形成材料について特に制限されるものではなく、たとえば、ポリエステル−レーヨン系の繊維、ナイロン−ポリエステル系の繊維などポリエステル系の繊維を好適に用いることができる。シート状の繊維集合体は、市販品を好適に用いてもよく、たとえばHP−21(日本バイリーン株式会社製)、345J−420(日本バイリーン株式会社製)、S−300HS(日本バイリーン株式会社製)、KN−7060(日本バイリーン株式会社製)などを好適な例として挙げることができる。
本発明の基礎床形成用シートにおける光硬化性成分は、紫外光、可視光などの光により硬化し得る成分であれば、公知の光硬化性成分を特に制限なく用いることができる。このような光硬化性成分としては、たとえば、少なくとも1個の不飽和二重結合をもつ分子量150以上(好ましくは200〜2000)の(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリトリトールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオ−ルジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロ−ルプロパントリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどを挙げることができるが、これらの中でも、重合時の収縮が小さく、これにより模型上で光を照射して重合、硬化させたときの変形が極めて小さく、模型との密着性が高い基礎床を形成することができ、有床義歯の適合精度の向上を図ることができるという観点から、少なくとも1個の不飽和二重結合をもつ分子量150以上の(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
少なくとも1個の不飽和二重結合をもつ分子量150以上の(メタ)アクリレートとしては、下記構造式
Figure 2017184862
を有するトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA、CAS No.109−16−0、分子量:286)、下記構造式
Figure 2017184862
を有するビスフェノールAジグリシジルメタクリレート(Bis−GMA、CAS No.1565−94−2、分子量:513)、下記構造式
Figure 2017184862
を有するウレタンジメタアクリレート(UDMA、CAS No.72869−86−4、分子量:471)、ジエチレングリコールメタアクリレート(CAS No.2358−84−1、分子量:242)、1,6−ヘキサンジオールジメタアクリレート(CAS No.6606−59−3、分子量:254)、トリメチロ−ルプロパントリメタアクリレート(CAS No.3290−92−4、分子量338)などが挙げられる。
中でも、光硬化後の基礎床が指摘に耐えうる十分な強度を維持するためには、光硬化性成分としてトリエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレートおよびウレタンジメタアクリレートから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。また、シャープな硬化性を得る(短い硬化時間で硬化できる)ためには、光硬化性成分としてトリエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレートおよびウレタンジメタアクリレートから選ばれる少なくとも2種を含むことが好ましい。特に、光硬化性成分としてトリエチレングリコールジメタクリレートを用いる場合には、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレートおよびウレタンジメタアクリレートの少なくともいずれかと組み合わせた2種以上を用いることが好ましい。
なお、本発明において、光硬化性成分および光重合開始剤を含む液状物は、分子量150未満の(メタ)アクリレートの含有量が、光硬化性成分を100重量部とした場合に15重量部以下であることが好ましく、4重量部以下であることがより好ましく、分子量150未満の(メタ)アクリレートを含まないことが特に好ましい。分子量150未満の(メタ)アクリレートとしては、たとえば粘性の低い通常液体であるメチルメタクリレート(MMA、分子量:100)などが挙げられる。シート状の繊維集合体に含浸させる液状物に、光硬化性成分100重量部に対し、たとえばメチルメタクリレートが15重量部より多く配合された場合には、シート状の繊維集合体からのしみ出しがあり操作性が悪くなり、また、重合により収縮しやすいため適合性(製造された有床義歯の精度)が悪くなってしまう虞がある。
本発明において、シート状の繊維集合体に含浸させる液状物に含まれる光硬化性成分の量については特に制限されないが、液状物100重量部に対し60〜99.9重量部の範囲内であることが好ましく、80〜90重量部の範囲内であることがより好ましい。光硬化性成分の量が液状物100重量部に対し60重量部未満である場合には、光硬化した基礎床の強度が不十分となる傾向にあるためであり、また、光硬化性成分の量が液状物100重量部に対し99.9重量部を超える場合には、基礎床形成用シートを模型に圧接するときに液状物がしみ出し手指へ付着しやすくなる傾向にあるためである。
シート状の繊維集合体に含浸させる液状物は、上述の光硬化性成分以外に光重合開始剤をさらに含む。光重合開始剤としては、通常、光増感剤と光重合促進剤(還元剤)とが併用され、具体的には、光増感剤として、カンファーキノン、ベンジル、α−ナフチル、p,p'−ジメトキシベンジル、ペンタジオン、1,4−フェナントレンキノン、ナフトキノン、トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、アシルフォスフィンオキサイド、光重合促進剤としては三級アミンが一般に使用される。三級アミンとしてはN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、メタクリル酸(2−ジメチルアミノ)エチル、トリエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルなど、当分野における光重合型コンポジットレジンなどに用いられる公知の適宜の光重合開始剤を特に制限なく用いることができる。
また、シート状の繊維集合体に含浸させる液状物は、上述の光硬化性成分および光重合開始剤以外に、紫外線吸収剤、重合禁止剤、着色顔料、香料、抗菌剤など、当分野における光重合型コンポジットレジンなどに用いられる公知の適宜の成分をさらに含んでいてもよい。紫外線吸収剤の具体例としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,5−ビス(5’−t−ブチルベンゾオキサゾリル−2’)チオフェンなどが挙げられる。
本発明における液状物は、無機質充填材をさらに含んでいてもよい。無機質充填材を含んでいることで、本発明の基礎床形成用シートを用いて形成された基礎床において滑沢性が向上し、取扱い性が向上するとともに、患者の口腔内での試適後の基礎床の撤去がより容易となる。無機質充填材としては、たとえばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ガラス粉末(フッ素ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムガラス、ソーダガラス)、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、カオリン、雲母などが挙げられ、中でも、光硬化性成分内での分散性、均一性という理由から、シリカおよびガラス粉末から選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。無機質充填材の含有量としては特に制限されないが、上述した無機質充填材を含んでいることによる効果を奏する観点からは、光硬化性成分100重量部に対し5〜40重量部の範囲内であることが好ましく、10〜20重量部の範囲内であることがより好ましい。
なお、無機質充填材をさらに含む場合、光硬化性成分との接着性を高める目的で、シランカップリング剤などの表面処理剤で無機質充填材に予め表面処理を施してもよい。
本発明の基礎床形成用シートは、基礎床上に形成される咬合堤の底面よりも小さな面積を有することが好ましい。ここで、図2は、本発明の基礎床の好ましい一例を模式的に示す図であり、図2(a)は上顎全部床義歯の場合、図2(b)は部分床義歯の場合である。図2は、咬合床(基礎床と咬合堤とで構成)を基礎床1’側から見た状態を示している。部分床義歯の場合には、たとえば2つの咬合床がバー5で連結され、さらにクラスプ6も備える(図2(b))。図2(a)、図2(b)にそれぞれ示されるように、基礎床1’は、基礎床1’に当接して形成された咬合堤4,4’の底面よりも小さな面積を有している。本発明の基礎床形成用シートは、たとえば遮光性のアルミニウムなどで形成された包装体中に収容され、用時、歯科技工士などが包装体から基礎床形成用シートを取り出し、必要な面積に応じて切り出すようにして提供されるが、このときに、設計しようとする咬合堤の底面よりも小さな面積となるように(図2(a)、図2(b)に示すように、咬合堤の底面よりはみ出さない大きさとなるように)切り出すようにする。本発明の基礎床形成用シートは、基礎床上に形成される咬合堤の底面よりも小さな面積を有することで、基礎床の大きさを想定される有床義歯よりも小さく設計でき、基礎床を撤去した後の蝋義歯を模型上に戻してもその高さは変わらず、試適時に調整した歯の位置関係、噛み合わせにずれが生じることがないという利点がある。
〔2〕基礎床
本発明の基礎床は、上述した本発明の基礎床形成用シートが光硬化したものである。本発明の基礎床は、滑沢性を有することで、上述のように試適後に蝋義歯から容易に撤去することができるものであるが、このような滑沢性を有する基礎床自体がこれまで当分野において知られていないものである。
〔3〕有床義歯の製造方法
図3は、本発明の基礎床形成用シートを用いた有床義歯の製造方法の好ましい一例を示すフローチャートである。本発明の有床義歯の製造方法は、印象採得により作製された模型に本発明の基礎床形成用シートを圧接し、基礎床形成用シートに含まれる光硬化性成分を光硬化させて基礎床を形成するステップと、基礎床上に蝋を用いて咬合堤を形成して咬合床を作製し、作製した咬合床に人工歯を設置するステップと、人工歯が設置された咬合床(蝋義歯)の試適を行なうステップと、試適後の人工歯が設置された咬合床から基礎床を取り外すステップと基礎床を取り外した咬合床を模型と共に歯科用フラスコ内に収容し、歯科用フラスコ内に埋没材を流し込んで埋没させるステップと、歯科用フラスコを開かずに、蝋を溶融させ、歯科用フラスコから流し出すステップとを少なくとも含む。
まず、義歯を受入れる土台となる患者の顎の状態である床基底面と床周辺部を機能的に形成するように、印象材をトレーに盛り、上顎又は下顎に押圧して形状を取得することにより、上顎用並びに下顎用の概略の印象を得る(印象採得)。この印象採得は従来公知の適宜の手法で、通常歯科医院で行われる。
次に、採取した印象の概略模型に泥状石膏を流し込み、これを硬化させて石膏による上顎用並びに下顎用の模型を作成する。この模型の作製も従来公知の適宜の手法で、通常歯科技工士の手作業により行われる。
次に、図1に示したように、本発明の基礎床形成用シートを模型に圧接し、石膏模型を母型に塑性変形させ、基礎床形成用シートに含まれる光硬化性成分を光硬化させて、上顎用並びに下顎用の基礎床を形成する。なお、本発明の基礎床形成用シートは、上述のように、設計しようとする咬合堤の底面よりも小さな面積となるように切り出されることが好ましい。この光硬化性成分の硬化に用いられる光源(可視光源または紫外光源)は、歯科技工士が光重合型コンポジットレジンの光硬化に通常用いているような照射用光源をそのまま用いることができる。
本発明の有床義歯の製造方法においては、模型に圧接した基礎床形成用シートを減圧させながら、前記光硬化性成分の光硬化を行なうようにしてもよい。これにより形成された基礎床と模型との密着性が向上する。減圧の方法は特に制限されるものではなく、従来公知の適宜の気密性の袋に基礎床形成用シートを圧接した状態の模型を収容し、真空吸引することなどによって行なうことができる。
この基礎床上に、従来より広く用いられてきた適宜の蝋(ワックス)を用いて、従来と同様の手順で咬合堤を形成して咬合床を形成する。ここで、咬合堤を形成するための蝋(ワックス)としては、たとえばCNパラフィンワックス(株式会社カム・ネッツ製)、パラフィンワックス(山八歯材工業株式会社製)、パラフィンワックス(株式会社クエスト製)などが好適な例として挙げられる。作製された咬合床に、人工歯を設置し、蝋義歯を作製する。人工歯としては、従来より広く用いられている樹脂製のレジン歯、陶材からなる陶歯などを用いることができ、特に制限されるものではない。この蝋義歯の作製は、本発明の基礎床形成用シートを用いること以外は、従来公知の適宜の手法で、通常歯科技工士の手作業により行われる。
次に、歯科医院にて、患者の口腔内に蝋義歯を装着し、蝋義歯の歯並び、噛み合わせなどのチェック(試適)を行なう。上述のように、本発明の有床義歯の製造方法では、基礎床を本発明の基礎床形成用シートを用いて形成しているため、この試適の際に蝋義歯の変形が起こらない。
次に、試適後の蝋義歯(人工歯が設置された咬合床)から基礎床を取り外す。本発明の基礎床は上述のように滑沢性を有しているので、蝋義歯からの撤去を容易に行なうことができる。また、好ましくは、本発明の基礎床形成用シートが基礎床上に形成される咬合堤の底面よりも小さな面積を有するようにすることで、基礎床の大きさを想定される有床義歯よりも小さく設計でき、基礎床を撤去した後の蝋義歯を模型上に戻してもその高さは変わらず、試適時に調整した歯の位置関係、噛み合わせにずれが生じることがない。
次に、基礎床を取り外した咬合床を模型と共に歯科用フラスコ内に収容し、埋没材を流し込んで固定する(埋没)。ここで、図4は、本発明の基礎床の好ましい他の例を模式的に示す図であり、図4(a)は上顎全部床義歯の場合、図4(b)は部分床義歯の場合である。図4に示す例の基礎床1’’は、その側部全面を覆うように咬合堤が形成されていない点で、図2に示した基礎床1’と異なる。図2に示した例の場合、基礎床の側部全面を覆うように咬合堤が形成されているため、基礎床を取り外したとしても、咬合床の基礎床があった箇所の全周囲は咬合堤の蝋が残存している。これに対し、図4に示す例のように基礎床の側部全面を覆うように咬合堤が形成されていない場合、基礎床を取り外した後の咬合床には、咬合堤で覆われていない基礎床の側部に対応する空隙(開口部)が生じ、そのまま歯科用フラスコ内に埋没させると、口蓋部が欠如した義歯となってしまう。このため、図4に示すように、基礎床の側部全面を覆うように咬合堤が形成されていない場合、基礎床を取り外した後に咬合床に生じた、咬合堤で覆われていない基礎床の側部に対応する空隙を蝋で埋めた後に、模型と共に歯科用フラスコ内に収容するようにすることが好ましい。
埋没材としては歯科用普通石膏、歯科用硬石膏など、従来より用いられている埋没材を特に制限なく用いることができる。歯科用フラスコも、従来より市販されている適宜の製品を特に制限なく用いることができ、具体的には床射出成形用耐圧フラスコ「ドリームフラスコ」(デンケン・ハイデンタル株式会社製)が好適な例として挙げられる。本発明の有床義歯の製造方法では、無開りん法で行なうため、開りん法のために必要であったアンダーカット処理、分離剤(離型剤)の塗布、2回に分けて埋没などの作業の必要がなく、作業効率が格段に改善され、作業時間も大幅に短縮される。なお、無開りん法で行なうため、歯科用フラスコを開かずに脱蝋を行なうための、溶融した蝋の通り道となるスプールワックスを歯科用フラスコの開口部分と蝋義歯を連通するように形成しておく必要がある(上述の特許文献3などを参照)。この埋没の作業も、通常歯科技工士の手作業によって行われる。
石膏などの埋没材を硬化させた後、歯科用フラスコを開かずに咬合床(基礎床の側部全面を覆うように咬合堤が形成されていない場合の基礎床を取り外した跡の蝋で埋めた部分を含む)を溶融させ、歯科用フラスコから流し出す(脱蝋)。この脱蝋の作業は、従来公知の適宜の手法で、通常歯科技工士の手作業によって行われる。脱蝋を効率的に行なう観点からは、市販の製品、たとえば加圧脱蝋機「だつろう君」(デンケン・ハイデンタル株式会社製)が好適な例として挙げられる。
その後、咬合床(基礎床の側部全面を覆うように咬合堤が形成されていない場合の基礎床を取り外した跡の蝋で埋めた部分を含む)を流し出した後の歯科用フラスコに、加熱重合レジン、熱可塑性レジンなどの有床義歯形成用樹脂などを填入/重合した後、歯科用フラスコから取り出す。その後、歯科用フラスコの割り出し、研磨などの仕上げ作業を経て、有床義歯が製造される。これらの手順、材料は、従来公知と同様であり、特に制限されるものではない。溶融した状態のレジンを歯科用フラスコに流し込んで歯科用フラスコ内で固化させてもよい(射出成形)し、加熱重合レジンのように、原料を歯科用フラスコ内に流し込んだ後、歯科用フラスコ内で重合・硬化させるようにしてもよい。本発明の有床義歯の製造方法では、無開りん法によって行われるため、開りん法の場合に必要なプレスおよびバリ取りの作業など煩雑な操作が不要でありながら、位置精度の高い有床義歯を効率よく製造することができる。
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
<実施例1>
50重量部のトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、50重量部のビスフェノールAジグリシジルメタクリレート(Bis−GMA)、0.1重量部のカンファーキノン、0.1重量部のメタクリル酸(2−メチルアミノ)エチル、0.05重量部の2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンを混合して、光硬化性成分を含む液状物を調製した。液状物を厚み2.5mmの不織布(HP−21(日本バイリーン株式会社製))に含浸させ、基礎床形成用シートのサンプルを作成した。作成した基礎床形成用シートのサンプルを用いて、図3に示したフローチャートに従って有床義歯を製造した。実施例1で作成された基礎床形成用シートは、模型上に容易に基礎床を成形することができ(操作性が良好)、成形後は試適に十分に耐え得る強度を有する蝋義歯を作製することができ、また、試適の後に蝋義歯から基礎床を容易に撤去することができた。また、基礎床を利用しながら、無開りん法を利用して有床義歯を製造することができ、位置精度の高い(適合性が良好)有床義歯を短時間で製造することができた。
<実施例2>
50重量部のTEGDMA、50重量部のウレタンジメタクリレート(UDMA)、0.1重量部のカンファーキノン、0.1重量部のメタクリル酸(2−メチルアミノ)エチル、0.05重量部の2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンを混合して、光硬化性成分を含む液状物を調製した。液状物を厚み2.5mmの不織布(HP−21(日本バイリーン株式会社製))に含浸させ、基礎床形成用シートのサンプルを作成した。作成した基礎床形成用シートのサンプルを用いて、図3に示したフローチャートに従って有床義歯を製造した。実施例2で作成された基礎床形成用シートは、模型上に容易に基礎床を成形することができ(操作性が良好)、成形後は試適に十分に耐え得る強度を有する蝋義歯を作製することができ、また、試適の後に蝋義歯から基礎床を容易に撤去することができた。また、基礎床を利用しながら、無開りん法を利用して有床義歯を製造することができ、位置精度の高い(適合性が良好)有床義歯を短時間で製造することができた。
<実施例3>
45重量部のTEGDMA、45重量部のBis−GMA、0.1重量部のカンファーキノン、0.1重量部のメタクリル酸(2−メチルアミノ)エチル、0.05重量部の2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、10重量部のコロイダルシリカ(アエロジルRM50(日本アエロジル株式会社製))を混合して、光硬化性成分を含む液状物を調製した。液状物を厚み2.5mmの不織布(HP−21(日本バイリーン株式会社製))に含浸させ、基礎床形成用シートのサンプルを作成した。作成した基礎床形成用シートのサンプルを用いて、図3に示したフローチャートに従って有床義歯を製造した。実施例3で作成された基礎床形成用シートは、模型上に容易に基礎床を成形することができ(操作性が良好)、成形後は試適に十分に耐え得る強度を有する蝋義歯を作製することができ、また、試適の後に蝋義歯から基礎床を容易に撤去することができた。また、基礎床を利用しながら、無開りん法を利用して有床義歯を製造することができ、位置精度の高い(適合性が良好)有床義歯を短時間で製造することができた。
<実施例4>
45重量部のTEGDMA、45重量部のBis−GMA、0.1重量部のカンファーキノン、0.1重量部のメタクリル酸(2−メチルアミノ)エチル、0.05重量部の2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、10重量部のガラス粉末(CY0069(日本フリット株式会社製))を混合して、光硬化性成分を含む液状物を調製した。液状物を、厚み2.5mmの不織布(HP−21(日本バイリーン株式会社製))に含浸させ、基礎床形成用シートのサンプルを作成した。作成した基礎床形成用シートのサンプルを用いて、図3に示したフローチャートに従って有床義歯を製造した。実施例4で作成された基礎床形成用シートは、模型上に容易に基礎床を成形することができ(操作性が良好)、成形後は試適に十分に耐え得る強度を有する蝋義歯を作製することができ、また、試適の後に蝋義歯から基礎床を容易に撤去することができた。また、基礎床を利用しながら、無開りん法を利用して有床義歯を製造することができ、位置精度の高い(適合性が良好)有床義歯を短時間で製造することができた。
<実施例5>
100重量部のUDMA、0.1重量部のカンファーキノン、0.1重量部のメタクリル酸(2−メチルアミノ)エチル、0.05重量部の2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンを混合して、光硬化性成分を含む液状物を調製した。液状物を、厚み2.5mmの不織布(HP−21(日本バイリーン株式会社製))に含浸させ、基礎床形成用シートのサンプルを作成した。作成した基礎床形成用シートのサンプルを用いて、図3に示したフローチャートに従って有床義歯を製造した。実施例5で作成された基礎床形成用シートは、模型上に容易に基礎床を成形することができ(操作性が良好)、成形後は試適に十分に耐え得る強度を有する蝋義歯を作製することができ、また、試適の後に蝋義歯から基礎床を容易に撤去することができた。また、基礎床を利用しながら、無開りん法を利用して有床義歯を製造することができ、位置精度の高い(適合性が良好)有床義歯を短時間で製造することができた。
<比較例1>
50重量部のTEGDMA、50重量部のBis−GMA、0.1重量部のカンファーキノン、0.1重量部のメタクリル酸(2−メチルアミノ)エチル、0.05重量部の2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンを混合して、光硬化性成分を含む液状物を調製した。液状物を、厚み0.1mmのSUS316メッシュ(100メッシュ)(関西金網株式会社製)に含浸させようとしたところ、液状物の流出が生じた。また、模型への圧接の際に、弾性のため圧接が困難であった。
<比較例2>
50重量部のTEGDMA、50重量部のBis−GMA、0.1重量部のカンファーキノン、0.1重量部のメタクリル酸(2−メチルアミノ)エチル、0.05重量部の2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンを混合して、光硬化性成分を含む液状物を調製した。液状物を厚み0.1mmのナイロンメッシュ(100メッシュ)(NY190−HC(株式会社セミテック製))に含浸させようとしたところ、液状物の流出が生じた。
<比較例3>
厚み2.5mmの不織布(HP−21(日本バイリーン株式会社製))をそのまま基礎床形成用シートのサンプルとして用いたところ、強度が弱く、基礎床として用いることができなかった。
<比較例4>
50重量部のTEGDMA、50重量部のBis−GMA、0.5重量部の過酸化ベンゾイル、0.1重量部のN,N−ジメチル−p−トルイジン、0.05重量部の2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンを混合して、光硬化性成分を含む液状物を調製した。液状物を、厚み2.5mmの不織布(HP−21(日本バイリーン株式会社製))に含浸させ、基礎床形成用シートのサンプルを作成した。比較例4で作成した基礎床形成用シートは光硬化しなかった。
<比較例5>
ポリメタクリル酸メチルを主成分とする従来より当分野で用いられているベースプレート(オストロンII(株式会社ジーシー製)を用いて基礎床を形成し、有床義歯を製造した。比較例5で用いたベースプレートは、咬合堤を脱蝋しても基礎床は歯科用フラスコ内に残ってしまうため、開りんして基礎床を撤去した。
<比較例6>
特許文献1に記載された方法のように基礎床自体を用いずに有床義歯を製造した。咬合堤の形成に用いた歯科用パラフィンワックスでは強度が十分ではないため、試適時に蝋義歯が変形してしまうことがある。また、部分床義歯を製造する場合には、同じく歯科用パラフィンワックスでは強度が十分ではないため、バーやクラスプが移動してしまう可能性がある。
1 基礎床形成用シート、1’,1’’ 基礎床、2 模型、4,4’ 咬合堤、5 バー、6 クラスプ。

Claims (12)

  1. 有床義歯の製造に用いられる基礎床を形成するためのシートであって、
    シート状の繊維集合体に、光硬化性成分および光重合開始剤を含む液状物が含浸された、基礎床形成用シート。
  2. 前記光硬化性成分が、少なくとも1個の不飽和二重結合を有する分子量150以上の(メタ)アクリレートである、請求項1に記載の基礎床形成用シート。
  3. 前記光硬化性成分が、トリエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレートおよびウレタンジメタアクリレートから選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載の基礎床形成用シート。
  4. 前記光硬化性成分が、トリエチレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルメタクリレートおよびウレタンジメタアクリレートから選ばれる少なくとも2種である、請求項3に記載の基礎床形成用シート。
  5. 前記繊維集合体が不織布である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の基礎床形成用シート。
  6. 前記液状物が無機質充填材をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の基礎床形成用シート。
  7. 前記無機充填材はシリカおよびガラス粉末から選ばれる少なくともいずれかである、請求項6に記載の基礎床形成用シート。
  8. 基礎床上に形成される咬合堤の底面よりも小さな面積を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の基礎床形成用シート。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の基礎床形成用シートが光硬化したものである、基礎床。
  10. 印象採得により作製された模型に請求項1〜8のいずれか1項に記載の基礎床形成用シートを圧接し、基礎床形成用シートに含まれる光硬化性成分を光硬化させて基礎床を形成するステップと、
    基礎床上に蝋を用いて咬合堤を形成して咬合床を作製し、作製した咬合床に人工歯を設置するステップと、
    人工歯が設置された咬合床の試適を行なうステップと、
    試適後の人工歯が設置された咬合床から基礎床を取り外すステップと、
    基礎床を取り外した咬合床を模型と共に歯科用フラスコ内に収容し、歯科用フラスコ内に埋没材を流し込んで埋没させるステップと、
    歯科用フラスコを開かずに、蝋を溶融させ、歯科用フラスコから流し出すステップとを含む、有床義歯の製造方法。
  11. 基礎床の側部全面を覆うように咬合堤が形成されていない場合、基礎床を取り外した後に咬合床に生じた、咬合堤で覆われていない基礎床の側部に対応する空隙を蝋で埋めた後に、模型と共に歯科用フラスコ内に収容する、請求項10に記載の有床義歯の製造方法。
  12. 模型に圧接した基礎床形成用シートを減圧させながら、前記光硬化性成分の光硬化を行なう、請求項11に記載の有床義歯の製造方法。
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