JP2017171011A - パーキング機構の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両の駆動輪と連動して回転するパーキングギヤ11にパーキングポール12を噛み合わせて、その回転を規制するようにしたパーキング機構1において、坂道で停車状態を維持するという機能を担保する。【解決手段】所定のパーキング操作に応じてパーキング機構1のアクチュエータ13を動作させ、ロッド15およびカム17を介してパーキングポール12をロック位置(噛み合い位置)に駆動する(ステップS4:第1駆動制御手段)。停車中の車両が路面の勾配によって前後いずれかに移動する「ずり下がり」を判定すれば(ステップS5:判定手段)、再びアクチュエータ13を動作させ、パーキングポール12をロック位置に駆動する(ステップS6:第2駆動制御手段)。【選択図】図7
Description
本発明は、車両の駆動輪と連動して回転するパーキングギヤにパーキングポールを噛み合わせて、その回転を規制するようにしたパーキング機構の制御装置に関し、特に、停車中の車両が路面の勾配によって移動する「ずり下がり」への対策に係る。
従来より一般的に自動車などの車両においては、駆動系のカウンタシャフトにパーキングギヤを取り付け、その歯間にパーキングポールの突起を噛み込ませることによって、駆動輪の回転を規制するパーキング機構が装備されている。例えば特許文献1に記載のハイブリッド車両では、運転者がパーキングレンジへのシフト操作を行うことに応じて、電動アクチュエータによりロッドが進退駆動され、その先端のテーパ部(カム)がパーキングポールを押し上げて、パーキングギヤに噛み合わせるようになっている。
ところで、車両の運転者は、坂道などにおいてフットブレーキにより車両を停止させた後に、パーキングレンジへのシフト操作を行うことがあり、このときにはパーキングギヤの位置(回転位相)によって、その歯間にパーキングポールの突起が噛み合わない場合がある。この点について後述する実施の形態の図4を参照すると、パーキングギヤ11の歯先面にパーキングポール12の突起12aが当接するような状態(以下、噛み込み不能状態という)では、この突起12aが歯間に噛み込めないからである。
そして、その噛み込み不能状態にあるときに運転者がフットブレーキの踏み込みを解除すると、路面の勾配によって車両が前後いずれかに移動することになり(いわゆる「ずり下がり」)、これに伴いパーキングギヤ11が半歯から一歯分ほど回動すると、その歯間にパーキングポール12の突起12aが噛み込むようになる。すなわち、まず、前記図4の噛み込み不能状態になると、それ以上、パーキングポール12を押し上げることができないので、カム17も動けなくなる。
但し、カム17は通常、ロッド15の先端側にコイルスプリング16を介して外装されており、コイルスプリング16の伸縮によってロッド15の軸方向(図4の左右方向)に変位可能になっている。そのため、前記のようにパーキングポール12を押し上げることができなくなり、カム17が動けなくなっていても、ロッド15はパーキングポール12に近づくように進出するようになって、図4に表れているようにコイルスプリング16が圧縮される。
こうしてコイルスプリング16が圧縮されている状態で、前記のように「ずり下がり」が発生し、パーキングギヤ11の回動によってその歯間にパーキングポール12の突起12aが位置するようになると、圧縮されているコイルスプリング16のばね力によって、カム17がパーキングポール12を押し上げるようになり、その突起12aがパーキングギヤ11の歯間に噛み込むことになる(図3を参照)。
しかしながら、例えば車載バッテリの電圧が低下しているときには、電動のアクチュエータの出力トルクが不足することがあり、この場合は、前記のようにカム17が動けなくなったときにアクチュエータが動作しても、コイルスプリング16のばね力に負けてしまい、ロッド15を十分に進出させることはできない。この結果、図5に表れているように(図4に比べて)コイルスプリング16が十分に圧縮されない。
こうなると、その後に「ずり下がり」が発生して、前記のようにパーキングギヤ11の歯間にパーキングポール12の突起12aが位置するようになっても、コイルスプリング16が伸長するだけではパーキングポール12を十分に押し上げることができない場合がある。この結果として、図6に一例を示すようにパーキングギヤ11の歯間への突起12aの噛み込みが浅くなってしまい、坂道でもずり下がらないように車両を保持することができなくなるおそれがある。
このような実状を考慮して本発明の目的は、仮にアクチュエータの出力トルクが不足していても、パーキングポールをパーキングギヤにしっかりと噛み合わせ、その回転を規制することで、坂道で停車状態を維持するというパーキング機構の機能を担保することにある。
前記の目的を達成するために本発明では、停車中の車両が路面の勾配によって「ずり下がり」することを判定したときに、アクチュエータを動作させ、パーキングポールを噛み合い位置に向かって駆動するようにした。
すなわち本発明は、車両の駆動輪と連動して回転するパーキングギヤにパーキングポールを噛み合わせて、その回転を規制するようにしたパーキング機構の制御装置が対象であり、前記パーキング機構は、アクチュエータによって進退駆動されるロッドと、このロッドにスプリングを介して連結され、前記パーキングポールをパーキングギヤとの噛み合い位置および非噛み合い位置の間で移動させるカムと、を備えている。
そして、本発明の制御装置は、所定のパーキング操作に応じて前記アクチュエータを動作させ、前記ロッドおよびカムを介してパーキングポールを前記噛み合い位置に向かうように駆動する第1駆動制御手段と、停車中の車両が路面の勾配によって前後いずれかに移動することを判定する判定手段と、前記移動の判定に応じて前記アクチュエータを動作させ、パーキングポールを噛み合い位置に向かうように駆動する第2駆動制御手段と、を備えている。
前記のパーキング機構においては、まず、車両の運転者が、坂道などにおいてフットブレーキにより車両を停止させた後に、パーキングレンジへのシフト操作など所定のパーキング操作を行うと、これに応じて第1駆動制御手段がアクチュエータを動作させ、パーキング機構のロッドおよびカムを介して、パーキングポールを噛み合い位置に向かうように駆動する。これによりパーキングポールがパーキングギヤと噛み合い、その回転を規制しようとする。
但し、図4を参照して上述したようにパーキングギヤの位置によっては、その歯間にパーキングポールの突起が噛み込まず、パーキングギヤの回転を規制できないことがある。この状態で運転者がフットブレーキの踏み込みを解除すると、路面の勾配によって車両が前後いずれかに移動することになり(いわゆる「ずり下がり」)、このことが判定手段によって判定される。
そして、その「ずり下がり」の判定に応じて第2駆動制御手段によりアクチュエータが動作され、パーキングポールが噛み合い位置に向かうように駆動される。このときには、前記の「ずり下がり」によってパーキングギヤが半歯から一歯分ほど回動し、その歯間にパーキングポールの突起が位置するようになるので、この突起をパーキングギヤの歯間にしっかりと噛み込ませることができる。
こうして「ずり下がり」のタイミングに合わせて再度、パーキングポールを駆動すれば、その突起をパーキングギヤの歯間にしっかりと噛み込ませることができ、仮にアクチュエータの出力トルクが不足していても、パーキングギヤの回転を規制することができるので、坂道で停車状態を維持するというパーキング機構の機能が担保される。
前記の「ずり下がり」の判定は、例えば車両の車速センサからの信号に基づいて行うようにすればよい。すなわち、停車中はほぼ零である車速の絶対値が予め設定した閾値以上になれば、「ずり下がり」が発生していると判定できる。また、運転者によって踏み込まれるフットブレーキなど、車両の制動装置による制動力が予め設定した閾値以下になれば、「ずり下がり」が発生すると判定することもできる。
そうして車両の制動力に基づいて「ずり下がり」を判定する場合は、判定の閾値を路面勾配に応じて変更し、勾配が大きいほど判定の閾値を大きくするのが好ましい。路面勾配は、例えば車両の加速度センサからの信号に基づいて判定することができる。また、路面勾配が所定以下であれば、「ずり下がり」は発生しないと考えられるので、この場合は前記第2駆動制御手段によるアクチュエータの動作を実施しなくてもよい。
以上、説明したように本発明に係るパーキング機構の制御装置によると、車両の「ずり下がり」の判定に応じてアクチュエータを動作させることで、パーキングポールの突起をパーキングギヤの歯間にしっかりと噛み込ませることができるので、仮にアクチュエータの出力トルクが不足していても、車両の駆動輪の回転を規制して、坂道で停車状態を維持するというパーキング機構の機能を担保することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態は、一例としてハイブリッド車両に本発明を適用したものであり、図1および図2に示すようにパーキング機構1は、図示しない車両の駆動輪への動力伝達軸2を回転不能にロックするパーキング(P)状態と、それを回転可能とする非パーキング(NP)状態とに切り替わるものである。なお、動力伝達軸2としては例えばカウンタシャフトなどが挙げられる。
−パーキング機構の構成−
図1、2に表れているようにパーキング機構1は、動力伝達軸2と一体に回転するように設けられ、車両の駆動輪と連動して回転するパーキングギヤ11と、その回転を規制するために噛み合わせられるパーキングポール12と、を備えている。なお、図2(b)は、図2(a)のb−b線断面を示す。パーキングポール12は金属製の帯板状とされ、パーキングギヤ11の下方に上下に揺動可能に配置されており、その上辺には、パーキングギヤ11の複数の歯11aの間に噛み込む突起12aが設けられている。
図1、2に表れているようにパーキング機構1は、動力伝達軸2と一体に回転するように設けられ、車両の駆動輪と連動して回転するパーキングギヤ11と、その回転を規制するために噛み合わせられるパーキングポール12と、を備えている。なお、図2(b)は、図2(a)のb−b線断面を示す。パーキングポール12は金属製の帯板状とされ、パーキングギヤ11の下方に上下に揺動可能に配置されており、その上辺には、パーキングギヤ11の複数の歯11aの間に噛み込む突起12aが設けられている。
このパーキングポール12は、その長手方向の一端部(図1の左奥の端部であり、以下、基端部という)が支軸12bを介して図示しないケースに支持されており、この支軸12bの周りを上下に揺動するようになっている。また、支軸12bにはパーキングポール12を下方(パーキングギヤ11から引き離す方向)に付勢するようにねじりバネ12c(図1には示さず)が取り付けられている。一方、パーキングポール12の長手方向の他端側(先端側)の下辺には、カム17が当接して押し上げるようになっている。
すなわち、パーキング機構1は、アクチュエータ13によって揺動されるディテントプレート14と、このディテントプレート14と連動して進退するロッド15と、このロッド15にコイルスプリング16を介して連結されたカム17と、を備えている。そして、以下に説明するようにアクチュエータ13によって、ディテントプレート14を介してロッド15を進退させ、カム17によってパーキングポール12を押し上げることで、その突起12aをパーキングギヤ11に噛み合わせるようになっている。
言い換えるとパーキング機構1は、アクチュエータ13によってロッド15を進退駆動し、パーキングポール12をパーキングギヤ11と噛み合うロック位置と、非噛み合い位置であるアンロック位置との間で移動させるものである。例えば前記アクチュエータ13は、図示しないモータの回転力を減速ギヤなどにより減速して、出力軸13aから出力するものであり、図1には模式的に示すSBW−ECU100(後述)からの制御信号を受けて所定角度、ディテントプレート14を揺動させる。
前記ディテントプレート14は、概略的には扇状とされ、その揺動中心となる領域を略垂直に貫通する状態でアクチュエータ13の出力軸13aが固定されている。ディテントプレート14の上辺は波形状とされ、パーキング用のP谷14aと、非パーキング用のNP谷14bとがディテントプレート14の揺動する方向に並んでいる。そして、これらP谷14aおよびNP谷14bに板ばね18のローラ18aが嵌ることによって、ディテントプレート14の姿勢を位置決め保持するようになっている。
すなわち、板ばね18の長手方向一端部(図1では上端部)は、図示しないがケースに固定されており、反対側の他端部(図1では下端部)には、ローラ18aが回転自在に取り付けられている。このローラ18aは、非パーキング状態ではディテントプレート14のNP谷14bに嵌り込み、また、パーキング状態ではディテントプレート14の回動に伴ってNP谷14bから抜け出して、P谷14aに嵌り込むようになる。
そのように揺動するディテントプレート14に、前記ロッド15の長手方向の一端側(図1の左手前側であり、以下、基端側という)が連結されている。例えばロッド15の屈曲端がディテントプレート14の貫通孔に挿入され、図示しないスナップリングや係止ピン等により抜け止めされている。図2にも示すようにロッド15は、動力伝達軸2の軸心Xの方向に延びており、前記のようなディテントプレート14の揺動に追従して自身の軸方向に進退される。
そして、そのように進退されるロッド15の先端側(図1の右奥側)に設けられたカム17が、パーキングポール12の先端側の下辺に当接して押し上げるようになっている。カム17は例えばテーパコーン形状とされ、ロッド15の外周に軸方向に変位可能に外装されている。また、ロッド15の途中にはストッパ15aが設けられており、このストッパ15aとカム17との間にコイルスプリング16が配設されている。
このコイルスプリング16の一端はストッパ15aに、また、他端はカム17にそれぞれ固定されており、通常は圧縮状態になるコイルスプリング16のばね力によって、カム17がロッド15の先端側に付勢されている。これによりカム17の外周面がパーキングポール12の先端側の下辺を押圧し、当該パーキングポール12を上向きに付勢することで、後述するようにパーキングギヤ11との噛み合いの安定化が図られる。
−基本的な動作−
上述した構造のパーキング機構1は、SBW−ECU100からの制御信号を受けてアクチュエータ13が動作されることにより、以下に説明するような基本的な動作を行う。SBW−ECU100は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等を含んだ公知のコンピュータ装置であり、例えばシフト位置センサ101、車速センサ102、ブレーキ圧センサ103、加速度センサ104などからの信号が入力されるようになっている。
上述した構造のパーキング機構1は、SBW−ECU100からの制御信号を受けてアクチュエータ13が動作されることにより、以下に説明するような基本的な動作を行う。SBW−ECU100は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等を含んだ公知のコンピュータ装置であり、例えばシフト位置センサ101、車速センサ102、ブレーキ圧センサ103、加速度センサ104などからの信号が入力されるようになっている。
そして、図2の非パーキング状態において車両の運転者がシフトレバー(図示せず)をパーキング(P)レンジに操作すると、シフト位置センサ101からのPレンジ信号を入力したSBW−ECU100は、アクチュエータ13によってディテントプレート14を図2の矢印A1のように所定角度だけ回動させる。これによりロッド15がパーキングポール12に近づくように進出し、カム17の外周面の大径部分がパーキングポール12を押し上げるようになる。
こうして押し上げられたパーキングポール12の突起12aが、パーキングギヤ11の歯間に噛み込むことで、即ちパーキングポール12がパーキングギヤ11と噛み合うことで、このパーキングギヤ11および動力伝達軸2が回転不能にロックされ、図3に示すパーキング状態になる。このとき、ディテントプレート14のP谷14aには板ばね18のローラ18aが嵌り込んで、その姿勢を保持するようになる。
一方、前記図3のパーキング状態においてシフトレバーが操作され、パーキングレンジ以外になると、シフト位置センサ101からのNPレンジ信号を入力したSBW−ECU100は、アクチュエータ13によってディテントプレート14を図3の矢印A2のように所定角度だけ回動させる。これによりロッド15がパーキングポール12から遠ざかるように後退し、カム17の外周面の小径部分がパーキングポール12に当接するようになる。
こうしてカム17による押し上げが解除されるとパーキングポール12は、ねじりバネ12cによって下向きに揺動され、その上辺の突起12aがパーキングギヤ11の歯間から抜け出すようになる(図2に示すアンロック位置)。これにより、パーキングギヤ11および動力伝達軸2が回転可能な非パーキング状態になる。なお、ディテントプレート14のNP谷14aには板ばね18のローラ18aが嵌り込んで、その姿勢を保持するようになる。
−ずり下がりへの対策−
ところで、上述のようなパーキング機構1を備えた車両の運転者が、坂道などにおいてフットブレーキにより車両を停止させた後に、パーキングレンジへのシフト操作を行うことがある。このとき、パーキングギヤ11の位置(回転位相)によっては、前記のようにその歯間にパーキングポール12の突起12aが噛み込むことができない場合がある。
ところで、上述のようなパーキング機構1を備えた車両の運転者が、坂道などにおいてフットブレーキにより車両を停止させた後に、パーキングレンジへのシフト操作を行うことがある。このとき、パーキングギヤ11の位置(回転位相)によっては、前記のようにその歯間にパーキングポール12の突起12aが噛み込むことができない場合がある。
すなわち、前記図2(b)や図3(b)に表れているように、パーキングギヤ11の外周には複数の歯11aが間隔を空けて並んでおり、動力伝達軸2の回転が停止した位置(パーキングギヤ11の回転位相)によっては、図4に一例を示すようにパーキングギヤ11の歯先面にパーキングポール12の突起12aが当接して、歯間には噛み込めない状態(噛み込み不能状態)になる。こうなると、パーキングポール12をそれ以上、押し上げることはできず、カム17も動けなくなる。
そうして動けなくなったカム17は、ロッド15の外周に軸方向に変位可能に外装されているので、カム17が動けなくなってもアクチュエータ13によりロッド15を進出させれば、さらにパーキングポール12に近づくようになる。これにより、図4に表れているように、ロッド15のストッパ15aとカム17との間でコイルスプリング16が圧縮されるようになり、アクチュエータ13には過大な反力が加わらずに済む。
そして、このような噛み込み不能状態において運転者がフットブレーキの踏み込みを解除すると、路面の勾配によって車両が前後いずれかに移動する「ずり下がり」が発生する。これにより駆動輪が少しだけ回動して、動力伝達軸2およびパーキングギヤ11が当該パーキングギヤ11の半歯から一歯分ほど回動すると、パーキングギヤ11の歯間にパーキングポール12の突起12aが位置するようになる。
こうなると、前記のように圧縮されているコイルスプリング16のばね力によって、カム17がパーキングポール12を押し上げるようになり、図3に表れているように、その突起12aがパーキングギヤ11の歯間に噛み込むことになる。つまり、パーキングポール12がパーキングギヤ11と噛み合って(パーキング機構1がパーキング状態になって)、それ以上の車両の「ずり下がり」を阻止するようになる。
−パーキング機構の制御−
しかしながら、例えばアクチュエータ13のモータが経年劣化していたり、これに電力を供給する車載バッテリの電圧が低下していたりすると、アクチュエータ13の出力するトルクが不足することがある。この場合は、前記の噛み込み不能状態においてカム17が不動になったときに、アクチュエータ13によりロッド15が進出されても、コイルスプリング16は十分には圧縮されない。
しかしながら、例えばアクチュエータ13のモータが経年劣化していたり、これに電力を供給する車載バッテリの電圧が低下していたりすると、アクチュエータ13の出力するトルクが不足することがある。この場合は、前記の噛み込み不能状態においてカム17が不動になったときに、アクチュエータ13によりロッド15が進出されても、コイルスプリング16は十分には圧縮されない。
すなわち、アクチュエータ13の出力不足によって、コイルスプリング16のばね力に負けてしまい、ロッド15が十分に進出されないことから、図5に表れているようにコイルスプリング16の圧縮量は(図4に比べて)少なくなってしまう。このため、その後、前記のように「ずり下がり」が発生し、パーキングギヤ11の歯間にパーキングポール12の突起12aが位置するようになっても、コイルスプリング16が伸長するだけではパーキングポール12を十分に押し上げることができない場合がある。
すなわち、図6に示すようにコイルスプリング16が伸長しても、カム17は十分に進出しないので、これによりパーキングポール12が押し上げられ、その上辺の突起12aがパーキングギヤ11の歯間に噛み込んでいても、その噛み込みが浅くなってしまうのである。このため、パーキングギヤ11の回転を十分には規制できず、坂道で停車状態を維持するというパーキング機構1の機能を担保することができないので、車両の「ずり下がり」を阻止できないおそれがあった。
このような実状を考慮して本実施の形態では、前記のように車両の「ずり下がり」を判定したときにアクチュエータ13を再び動作させて、パーキングポール12をロック位置へ駆動するようにした。こうすれば、パーキングギヤ11の歯間に突起12aが位置する状態で、図3に表れているようにパーキングポール12の突起12aを歯間にしっかりと噛み込ませることができる。
以下、図7のフローチャートに沿って、また、図8のタイミングチャートを参照して、SBW−ECU100により行われるパーキング機構1の動作制御のルーチンについて説明する。このルーチンは、車両の停車中に所定のタイミング(例えば所定の時間間隔)で繰り返し実行される。
まず、スタート後のステップS1でSBW−ECU100は、シフト位置センサ101からの信号を入力して、パーキング(P)レンジへのシフト操作の有無を、即ち車両の運転者によってシフトレバーがパーキングレンジに操作されたか否かを判定する。そして、否定判定(NO)であればステップS2に進んで、今度は非パーキング(NP)レンジへのシフト操作の有無を、即ちシフトレバーがパーキングレンジからそれ以外に操作されたか否かを判定する。
この判定も否定判定(NO)であれば一旦、制御ルーチンを終了する(エンド)一方、NPレンジ信号を入力して肯定判定(YES)すればSBW−ECU100は、パーキングポール12をアンロック位置に移動させるために、ディテントプレート14を図3の矢印A2のように回動させる制御信号をアクチュエータ13に出力して(ステップS3)、制御ルーチンを終了する(エンド)。
これにより、図2および図3を参照して上述したようにディテントプレート14およびロッド15が駆動され、パーキングポール12が下向きに揺動して、その突起12aがパーキングギヤ11の歯間から抜け出す。つまり、パーキング機構1が非パーキング状態になって、パーキングポール12によるパーキングギヤ11および動力伝達軸2の回転の規制が解除され、車両の駆動輪が回転できるようになる。
これに対し、前記のステップS1においてPレンジ信号を入力すればSBW−ECU100は、シフトレバーがパーキングレンジに操作されたと肯定判定(YES)して、ステップS4に進む。そして、パーキングポール12をロック位置に移動させるために、ディテントプレート14を図2の矢印A1のように回動させる制御信号をアクチュエータ13に出力する。
これを受けてアクチュエータ13が動作すると(図8の時刻t1でアクチュエータトルクが増大)、図2を参照して上述したようにディテントプレート14が揺動して、ロッド15がパーキングポール12に近づくように進出し、カム17によってパーキングポール12が押し上げられる。これにより、図3に示すようにパーキングポール12の上辺の突起12aがパーキングギヤ11の歯間に噛み込めば、パーキングギヤ11の(即ち駆動輪の)回転を規制するパーキング状態になる。
しかしながら、図4を参照して上述したようにパーキングギヤ11の歯先面にパーキングポール12の突起12aが当接して、歯間には噛み込めないこともあり(噛み込み不能状態)、こうなると、パーキングギヤ11の(即ち駆動輪の)回転を規制することができないので、坂道などでは路面の勾配によって、車両が前後いずれかに移動することになる(ずり下がり)。
すなわち、車両が坂道などにおいて停車され、運転者がフットブレーキを踏み込んだ状態で前記のシフト操作を行ったときに、前記の噛み込み不能状態になったとする。この状態で運転者がフットブレーキの踏み込みを解除すると(図8における時刻t2)、これにより制動力が低下して、予め設定した閾値以下になったときに(時刻t3)、車両の「ずり下がり」が発生する(図8では車速が負の向きに増大する)。
そこで、ステップS5においてSBW−ECU100は、例えばブレーキ圧センサ103からの信号に基づいて、フットブレーキによる制動力が前記の閾値以下になったときに「ずり下がり」が発生していると判定する。なお、前記の閾値は、車両の重量などに応じて予め実験などにより適合すればよく、また、加速度センサ104によって検出される路面の勾配に応じて、勾配が大きいほど大きな値に変更するようにすればよい。
前記のステップS5において制動力が閾値よりも大きい間は、「ずり下がり」が発生しないと否定判定(NO)して待機する。一方、制動力が閾値以下になって肯定判定(YES)すれば、即ち前記図8の時刻t3において「ずり下がり」が発生すれば、SBW−ECU100は、再びパーキングポール12をロック位置に移動させるような制御信号を、アクチュエータ13に出力する(ステップS6)。
これによりアクチュエー13が再び動作し(図8の時刻t3でアクチュエータトルクが増大)、前記したようにディテントプレート14が揺動して、ロッド15を進出させることで、カム17がパーキングポール12を押し上げる。このときには、前記の「ずり下がり」によって車両の駆動輪が回動し、パーキングギヤ11がその半歯から一歯分ほど回動することで、その歯間にパーキングポール12の突起12aが位置するようになる。
このため、前記のようにパーキングポール12が押し上げられることによって、図3を参照して上述したように、その突起12aがパーキングギヤ11の歯間にしっかりと噛み込むようになり、これにより、図8の時刻t4において車速が零に戻る。つまり、パーキング機構1がパーキング状態に切り替えられて、坂道でも停車状態を維持することができるようになる。
前記図7のフローのステップS1,S4を実行することによってSBW−ECU100は、シフトレバーのパーキングレンジへの操作(所定のパーキング操作)に応じて、パーキング機構1のアクチュエータ13を動作させ、ロッド15およびカム17を介してパーキングポール12を上方のロック位置に向かうように駆動する、第1駆動制御手段を構成する。
また、ステップS5を実行することによってSBW−ECU100は、車両が路面の勾配によって前後いずれかに移動する「ずり下がり」の判定を行う判定手段を構成し、さらにステップS6を実行することによって、「ずり下がり」の判定に応じてアクチュエータ13を動作させ、パーキングポール12をロック位置に向かうように駆動する第2駆動制御手段を構成する。
以上、説明したように本実施の形態に係るパーキング機構の制御装置によると、運転者が坂道などにおいて車両を停車させ、パーキングレンジへのシフト操作を行ったときに、パーキングポール12の突起12aがパーキングギヤ11の歯間に噛み込めない噛み込み不能状態になったとしても、その後、車両の「ずり下がり」の判定に応じてアクチュエータ13を動作させ、パーキングポール12の突起12aをパーキングギヤ11の歯間にしっかりと噛み込ませることができる。
つまり、「ずり下がり」のタイミングに合わせてアクチュエータ13を動作させることで、仮にその出力トルクが不足していても、パーキングギヤ11の歯間にパーキングポール12の突起12aが位置する状態で、パーキングポール12を押し上げ、その突起12aをパーキングギヤ11の歯間にしっかりと噛み込ませることができる。よって、坂道で停車状態を維持するというパーキング機構1の機能が担保される。
−他の実施の形態−
以上、説明した実施の形態の記載はあくまで例示に過ぎず、本発明の構成や用途などについても限定することを意図しない。例えば前記実施の形態では、図7のフローのステップS5において、ブレーキ圧センサ103からの信号に基づいて、車両の制動力が閾値以下になったときに、「ずり下がり」が発生すると判定するようにしているが、これには限定されない。
以上、説明した実施の形態の記載はあくまで例示に過ぎず、本発明の構成や用途などについても限定することを意図しない。例えば前記実施の形態では、図7のフローのステップS5において、ブレーキ圧センサ103からの信号に基づいて、車両の制動力が閾値以下になったときに、「ずり下がり」が発生すると判定するようにしているが、これには限定されない。
すなわち、前記ステップS5において「ずり下がり」の判定を、車速センサ102からの信号に基づいて行うようにしてもよい。この場合、停車中はほぼ零である車速の絶対値が予め設定した閾値以上になれば、「ずり下がり」が発生していると判定することができる。また、車速については車速センサ102からの信号に限定されず、それ以外の回転センサ、例えば車輪速センサからの信号によって車速を検出してもよい。
さらに、前記ステップS5の「ずり下がり」の判定やステップS6のアクチュエータ13の駆動といった手順は、路面の勾配が小さく、「ずり下がり」の起き得ない状況では行わないようにしてもよい。すなわち、路面の勾配は、加速度センサ104からの信号に基づいて算出することができ、それが予め設定した値以下であれば、前記ステップS5,S6を行わずにルーチンを終了する。
また、前記ステップS4でアクチュエータ13を動作させ、これを所定時間は継続させるようにしてもよい。この場合は、ステップS5で前記実施の形態と同じく「ずり下がり」の判定を行い、例えば数秒程度の時間が経過しても「ずり下がり」を判定しなければ、アクチュエータ13を停止させる一方、「ずり下がり」を判定すれば、さらに所定時間、アクチュエータ13の動作を継続させる。
本発明によると、坂道で停車状態を維持するというパーキング機構の機能を担保することができるので、特に乗用車に適用して効果が高い。
1 パーキング機構
2 動力伝達軸
11 パーキングギヤ
12 パーキングポール
12a パーキングポールの突起
13 アクチュエータ
14 ディテントプレート
15 ロッド
16 コイルスプリング
17 カム
100 SBW−ECU(第1駆動制御手段、判定手段、第2駆動制御手段)
2 動力伝達軸
11 パーキングギヤ
12 パーキングポール
12a パーキングポールの突起
13 アクチュエータ
14 ディテントプレート
15 ロッド
16 コイルスプリング
17 カム
100 SBW−ECU(第1駆動制御手段、判定手段、第2駆動制御手段)
Claims (1)
- 車両の駆動輪と連動して回転するパーキングギヤにパーキングポールを噛み合わせて、その回転を規制するようにしたパーキング機構の制御装置であって、
前記パーキング機構は、アクチュエータによって進退駆動されるロッドと、このロッドにスプリングを介して連結され、前記パーキングポールをパーキングギヤとの噛み合い位置および非噛み合い位置の間で移動させるカムと、を備えており、
所定のパーキング操作に応じて前記アクチュエータを動作させ、前記ロッドおよびカムを介してパーキングポールを前記噛み合い位置に向かうように駆動する第1駆動制御手段と、
停車中の車両が路面の勾配によって前後いずれかに移動することを判定する判定手段と、
前記移動の判定に応じて前記アクチュエータを動作させ、パーキングポールを噛み合い位置に向かうように駆動する第2駆動制御手段と、を備えることを特徴とするパーキング機構の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016057032A JP2017171011A (ja) | 2016-03-22 | 2016-03-22 | パーキング機構の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016057032A JP2017171011A (ja) | 2016-03-22 | 2016-03-22 | パーキング機構の制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017171011A true JP2017171011A (ja) | 2017-09-28 |
Family
ID=59971611
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016057032A Pending JP2017171011A (ja) | 2016-03-22 | 2016-03-22 | パーキング機構の制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2017171011A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN115046007A (zh) * | 2022-06-17 | 2022-09-13 | 安徽江淮汽车集团股份有限公司 | 变速器电子驻车机构 |
JP7166736B2 (ja) | 2019-06-28 | 2022-11-08 | ダイハツ工業株式会社 | 変速機 |
Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008290562A (ja) * | 2007-05-24 | 2008-12-04 | Toyota Motor Corp | 車両用制御装置 |
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-
2016
- 2016-03-22 JP JP2016057032A patent/JP2017171011A/ja active Pending
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