JP2017145429A - α+β型チタン合金部材およびその製造方法 - Google Patents

α+β型チタン合金部材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高価な添加元素であるVを使用せず、複雑な加工熱処理が不要でありながら、Ti−6Al−4V合金と同等以上の室温強度を有し、かつ、低温・高歪速度での超塑性特性を発現するα+β型チタン合金部材を提供する。【解決手段】化学組成が、Al:4.4%以上5.5%未満、Fe:1.4%以上2.1%未満、Mo:1.5%以上5.5%未満、残部:Tiおよび不純物からなり、前記不純物のうちのSi:0.1%未満、C:0.01%未満であり、かつ、前記不純物の総量:0.3%未満であり、金属組織が、針状マルテンサイト粒および針状α粒の短軸方向の幅が平均3μm以下の微細針状組織、および、等軸α粒の平均粒径が5μm以下の微細等軸状組織のいずれか一方または両方である、α+β型チタン合金部材である。素材を、β変態点以上の温度域から、β変態点での冷却速度が50〜100℃/秒となるように冷却することにより、製造される。【選択図】図1

Description

本発明はα+β型チタン合金部材およびその製造方法に関する。
チタン合金は、軽量かつ高強度であり、耐食性にも優れることから、様々な分野で活用されている。特に、最汎用合金であるTi−6Al−4V合金(6質量%Alおよび4質量%含有Ti合金)は、以前から航空宇宙分野で活用されており、近年では自動車分野などへも適用され始めている。
その一方で、Ti−6Al−4V合金などのチタン合金は、加工性や切削性に乏しく加工が難しいとともに複雑な形状を有する部品は削り出しにより製造せざるを得ないため、歩留りが低いことに起因して製造コストが高いという問題がある。
この問題を解決する方法の一つとして、相変態に起因する変態超塑性現象、または結晶粒が微細であることに起因する微細結晶粒(構造)超塑性現象を活用した超塑性加工法が知られる。
超塑性とは、材料をある特定の条件下で加工した際に、低流動応力を維持したままネッキングを生じることなく、金属材料では数100〜数1000%に及ぶ破断伸びを示す性質である。超塑性加工法は、この性質を利用して複雑な形状を有する部品を精密に塑性加工する。
しかし、超塑性加工法によりTi−6Al−4V合金を加工するには、一般に約900℃以上の高温、および1×10−3−1以下の低歪速度の加工条件を選択する必要がある。このため、超塑性加工に用いる金型の寿命が短くなることや生産性が低いことなど、いまだに多くの問題がある。
また、超塑性加工に供する素材は、5〜10μmの微細等軸組織を有する必要もあるが、Ti−6Al−4V合金ではこの微細等軸組織を得ることが難しいことも生産性を低下させる要因の一つになっている。
さらに、Ti−6Al−4V合金では、β相安定化元素として高価なVを用いており、材料コストが高いという問題もある。
特許文献1には、質量%で、Al:4.4%以上5.5%未満、Fe:1.4%以上2.1%未満、Mo:1.5%以上5.5%未満を含有し、不純物であるSi:0.1%未満およびC:0.01%未満、残部がTiおよび不純物からなる化学組成を有するチタン合金であって、Ti−6Al−4V合金と同等以上の室温強度、室温延性および疲労強度を有するとともに熱間加工性および冷間加工性に優れるα+β型チタン合金が開示されている。
特許文献2には、質量%で、Al:3.0%以上5.0%以下、V:2.1%以上3.7%以下、Mo:0.85%以上3.15%以下、O:0.15%以下、さらに、Fe、Ni、CoおよびCrのうちの1種または2種以上を含有し、かつ、0.85%≦Fe+Ni+Co+0.9×Cr≦3.15%、および、7%≦2×Fe+2×Ni+2×Co+1.8×Cr≦13%を満足し、残部Tiおよび不純物からなり、Ti−6Al−4V合金よりも低温で超塑性を発現する高強度チタン合金が開示されている。
特開2005−320618号公報 特開平3−274238号公報
CAMP−ISIJ,Vol.26,(2013),1065頁 CAMP−ISIJ,Vol.26,(2013),440頁
特許文献1に開示された発明は、Ti−6Al−4V合金と同等以上の室温強度、室温延性および疲労強度を有するとともに熱間加工性および冷間加工性に優れるα+β型チタン合金を提供することを目的とするが、このα+β型チタン合金の超塑性に関する開示はない。
特許文献2により開示されたチタン合金は、Ti−6Al−4V合金と同様にβ相安定化元素として高価なVを2.1〜3.7質量%含有しており、材料コストが高い。また、このチタン合金を製造するには、超塑性特性を発現させるために、50%以上の圧下量で熱間加工を行った後に(β変態点−250℃)以上β変態点未満の温度で熱処理を行うという複雑な加工熱処理を行う必要があり、この点からも製造コストが嵩む。
本発明は、従来の技術が有するこのような課題に鑑みてなされたものであり、高価な元素であるVを使用せず、複雑な加工熱処理が不要で単純な熱処理や熱間加工などの加工熱処理により、Ti−6Al−4V合金と同等以上の室温強度を有し、かつ、比較的低温で高歪速度でもくびれを生じず、数100%以上の塑性伸びを得られる超塑性特性を発現可能なα+β型チタン合金部材とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、
(A)特許文献1により開示された化学組成を有するチタン合金(代表組成:Ti−5Al−2Fe−3Mo合金)をβ変態点以上の温度域に加熱および保持した後に高速冷却すると、極めて微細な針状組織となり、この微細な針状組織は、一般に超塑性特性を発現する条件とされる微細等軸組織とは異なるにもかかわらず、その後の加工中に微細等軸組織に変化して超塑性特性を発現すること、および、
(B)このTi−5Al−2Fe−3Mo合金の超塑性特性は、Ti−6Al−4V合金よりも低温かつ高歪速度で発現すること
を知見し、これらの知見A,Bに基づいてさらに検討を重ねて、本発明を完成した。本発明は以下に列記の通りである。
(1)化学組成が、質量%で、Al:4.4%以上5.5%未満、Fe:1.4%以上2.1%未満、Mo:1.5%以上5.5%未満、残部:Tiおよび不純物からなり、前記不純物のうちのSi:0.1%未満およびC:0.01%未満であり、かつ、前記不純物の総量:0.3%未満であり、
金属組織が、針状マルテンサイト粒および針状α粒の短軸方向の幅が平均3μm以下である微細針状組織、および、等軸α粒の平均粒径が5μm以下である微細等軸状組織のいずれか一方または両方である、α+β型チタン合金部材。
(2)超塑性加工用である、1項に記載のα+β型チタン合金部材。
(3)粒界α相の体積率が1%以下であり、かつ、粒界α相の短軸方向の幅が平均3μm以下である、1または2項に記載のα+β型チタン合金部材。
(4)質量%で、Al:4.4%以上5.5%未満、Fe:1.4%以上2.1%未満、Mo:1.5%以上5.5%未満、残部:Tiおよび不純物からなり、前記不純物のうちのSi:0.1%未満およびC:0.01%未満であり、かつ、前記不純物の総量:0.3%未満である化学組成を有する素材を、β変態点以上の温度域から、β変態点での冷却速度が50〜100℃/秒となるように冷却する、1〜3項のいずれかに記載の、α+β型チタン合金部材の製造方法。
本発明により、高価な添加元素であるVを使用せず、複雑な加工熱処理が不要でありながら、Ti−6Al−4V合金と同等以上の室温強度を有し、かつ、Ti−6Al−4V合金において超塑性を得られる通常の条件(加工温度900℃以上、歪速度1×10−3−1以下)よりも低い加工温度および高い歪速度で超塑性特性を発現するα+β型チタン合金部材が提供される。
本発明に係るα+β型チタン合金部材は、低温での超塑性の発現による金型の高寿命化、生産コストの低下、高歪速度での超塑性発現による生産性の向上、さらには安価汎用元素の活用による素材コストの低減など、その産業上の効果は計り知れないほど大きい。
図1は、本発明に係るα+β型チタン合金部材の光学顕微鏡写真の一例であり、微細針状組織を示す。 図2は、本発明に係るα+β型チタン合金部材の光学顕微鏡写真の一例であり、微細針状組織および微細等軸状組織の混合組織を示す。
以下、本発明を詳しく説明する。以降の説明では、化学組成または濃度に関する「%」は特に断りがない限り「質量%」を意味する。
1.本発明に係るα+β型チタン合金部材
(1−1)化学組成
(1−1−1)Al:4.4%以上5.5%未満
Alは、固溶強化能が高いα相安定化元素であり、Al含有量が増加すると室温での引張強度が上昇する。Alは、安価な元素であるが、その固溶強化能は大きく、室温でTi−6Al−4V合金と同等以上の引張強度(1000MPa以上)を得るために、Al含有量は、4.4%以上であり、好ましくは4.7%以上であり、さらに好ましくは4.8%以上である。
一方、Alを過剰に含有すると、高温および室温での延性や冷間加工性が低下する。室温延性および冷間加工性が低下する理由は、Alが積層欠陥エネルギーを上げ、双晶変形を抑制するためであり、Al含有量が5.5%以上になると、双晶変形の抑制が顕著になる。そこで、Al含有量は、5.5%未満であり、好ましくは5.3%以下であり、さらに好ましくは5.1%以下である。
(1−1−2)Fe:1.4%以上2.1%未満
Feは、比較的安価なβ相安定化置換型固溶元素であり、Fe含有量にしたがって引張強度が上昇する。また、Feは高いβ相安定化能を示す元素であるため、その含有量を少なくすることが可能である。室温で1000MPa以上の引張強度を得るために、Fe含有量は、1.4%以上であり、好ましくは1.6%以上であり、さらに好ましくは1.8%以上である。
一方、Feは、Ti中で凝固偏析し易く、数百kg以上の大型インゴットでは2.1%以上含有するとFeの偏析が顕著になる。このため、Fe含有量は、2.1%未満であり、好ましくは2.0%以下である。
(1−1−3)Mo:1.5%以上5.5%未満
Moは、β相安定化置換型固溶元素であり、Feと同様に、室温強度を向上させるだけでなく、熱間加工性および冷間加工性を向上させる。冷間加工性を向上させるために、Mo含有量は、1.5%以上であり、好ましくは2.4%以上であり、さらに好ましくは2.9%以上である。
一方、Moを5.5%以上含有すると大型インゴットでの凝固偏析が問題になるため、Mo含有量は、5.5%未満であり、好ましくは4.9%以下であり、さらに好ましくは4.0%以下である。
(1−1−4)残部
上記以外の残部は、Tiおよび不純物であり、不純物のうちのSi:0.1%未満、C:0.01%未満であり、かつ、前記不純物の総量:0.3%未満である。
不純物としてのSiを0.1%以上含有し、不純物としてのCを0.01%以上含有すると、室温延性、熱間加工性および冷間加工性に悪影響を及ぼす。このため、Si含有量は0.1%未満であるとともにC含有量は0.01%未満である。
Si,C以外のその他の不純物元素は、本効果を阻害しない範囲であれば含有してもよい。その他の不純物元素としては、O、N、H、P、S、Cl、Mg、Cr、Ni、Sn等が例示される。
さらに、SiおよびCを含めた不純物元素の総量は、室温延性、熱間加工性および冷間加工性を維持する観点から、0.3%未満である。
(1−1−5)Mo当量
本発明では、β相安定度の指標であり、下記(1)式により求められるMo当量を、0.5〜7.0の範囲とすることが望ましい。
[Mo]eq=[Mo]+2.9[Fe]−[Al] ・・・・・(1)
Mo当量が0.5未満であると、焼入れ性が低く、加工熱処理の際に高温でβ→α相変態が生じ、針状α粒や等軸α粒が粗大化することがある。一方、Mo当量が7.0を超えると、β相分率が高くなり、室温での強度が1000MPa未満に低下するおそれがある。このため、Mo当量は0.5以上7.0以下であることが好ましい。
(1−2)金属組織
図1は、本発明に係るα+β型チタン合金部材の光学顕微鏡写真の一例であり、微細針状組織を示す。図2は、本発明に係るα+β型チタン合金部材の光学顕微鏡写真の一例であり、微細針状組織および微細等軸状組織の混合組織を示す。
金属組織は、針状マルテンサイト粒および針状α粒の短軸方向の幅が平均3μm以下である微細針状組織、および、等軸α粒の平均粒径が5μm以下である微細等軸状組織のいずれか一方または両方である。
針状組織の場合、針状マルテンサイト粒および針状α粒の短軸方向の幅が平均3μmを超えると、高温保持後の加工中に針状α粒の分断が生じ難くなり、大きな伸びを得られない。したがって、針状マルテンサイト粒および針状α粒の短軸方向の幅は平均3μm以下である。
一方、等軸α粒の場合、周囲をβ相で覆われており、このβ粒が変形することにより、針状α粒よりも変形が容易である。このため、等軸α粒の場合、平均粒径が5μmまで許容される。したがって、等軸α粒の平均粒径は5μm以下である。
また、粒界α相が存在すると伸びが低下することがあり、粒界α相の体積率が1%を超えると加工時の伸びの低下が大きくなる。このため、粒界α相の体積率は1%以下であることが望ましい。
また、粒界α相の短軸方向の幅が平均3μmを超えると、同様に加工率の低下が顕著になることがあるため、粒界α相の短軸方向の幅は平均3μm以下であることが望ましい。
針状マルテンサイト粒および針状α粒(針状粒)の平均幅、等軸α粒(等軸粒)の平均粒径、粒界α相の短軸方向の平均幅は、いずれも、光学顕微鏡観察用の試験片を採取し、CもしくはT断面(長手方向に垂直な断面)を観察面とする埋め込み研磨試料を作製し、硝フッ酸水溶液(硝酸濃度:約12%、フッ酸濃度:約1.5%)を用いて室温でエッチングした後に、500倍の倍率で各視野からランダムに10カ所測定し、計20視野測定した際の平均値を算出することにより、求める。
さらに、粒界α相が確認できた素材については、光学顕微鏡観察用の埋め込み試料から、500倍の倍率で画像解析することで面積率を測定し、3視野の平均値を粒界α相の面積率とする。
(1−3)形状
丸棒や角棒、さらには板が例示される。
(1−4)超塑性の発現機構
超塑性は、上述したように、微細結晶粒超塑性と変態超塑性の2つに大別される。本発明に係るα+β型チタン合金部材において発現する超塑性は微細結晶粒超塑性である。以下、微細結晶粒超塑性の発現機構を説明する。
微細結晶粒超塑性は、加工前組織が微細等軸状組織を有する材料を約0.5T以上の一定温度で、比較的低歪速度で変形させる際に生じる現象である。微細等軸状組織については、組織が微細なほど超塑性が生じ易く、また微細組織を維持し易い二相合金の方が超塑性に適する。本発明に係るα+β型チタン合金では、α/β相比が1に近いほど超塑性を発現し易い。したがって、加工温度でα/β相比が1に近くなるように、合金の化学組成を設定することが好ましい。
最近、例えば非特許文献1,2に、本発明に係るα+β型チタン合金系のTi−5Al−2Fe−3Mo合金において、特定の熱処理条件で熱処理を施すと、短軸方向の幅が数十nm〜数μmの針状マルテンサイト粒や針状α粒からなる微細針状組織を得られることが報告された。
従来、超塑性特性の発現には、微細等軸状組織が必要であるとされてきた。しかし、この文献に記載されたTi−5Al−2Fe−3Mo合金、すなわち本発明に係るα+β型チタン合金の針状組織は極めて微細である。さらに、本発明に係るα+β型チタン合金に適した超塑性加工温度域である700〜900℃で数十分間保持しても、α+β二相域となるため、針状α粒(針状マルテンサイト粒も高温保持でα相に変態)の粒成長が抑制され、針状α粒の短軸方向の幅が平均3μm以下に維持される。このため、本発明に係るα+β型チタン合金の加工中に加工歪が導入されると、針状α粒の組織分断や動的再結晶を生じ、針状α粒が等軸α粒に変化することにより、α相を取り囲むβ相が連結して塑性流動性が向上し、大きな塑性伸びを得られる。
このように、本発明に係るα+β型チタン合金は、加工中に、微細針状組織から微細等軸組織へと変化することにより、超塑性特性を発現する。本発明で規定する化学組成と、後述する加工熱処理条件とをともに満足することにより、上記微細針状組織を得ることができ、超塑性を発現できる。
このため、上記のような微細針状組織のみからなる組織であってもよいが、微細針状組織と微細等軸組織とが混合した混合組織であってもよい。旧β粒界に生じる粒界α相は、針状α粒よりも短軸方向の幅が太くなり易く、旧β粒界部分に連続して生じる。このため、組織分断が生じ難く、十分に分断されないと、α相に隣接するβ相に変形が集中し、延性限界に達したところでボイドが発生し、それが連結することにより破断に至ってしまい、大きな伸びが得られないことがある。
なお、超塑性加工の実加工条件は、伸びが200%程度であるので、本発明では、200%以上の伸びが発現される場合を超塑性と定義する。
2.本発明に係る製造方法
本発明に係るα+β型チタン合金部材は、上述した化学組成を有する素材を、β変態点以上の温度域から、β変態点での冷却速度が50〜100℃/秒となるように冷却することにより、製造される。
(2−1)加工熱処理条件
本発明の効果を得られる加工熱処理の一例を以下に述べる。
本発明では、比較的単純な加工熱処理により非常に微細な組織を得られる。例えば、β変態点以上へ加熱し、試験片全体の組織をβ相へ変態させた後、水冷などの高速冷却(β変態点での冷却速度は50〜100℃/秒)を行うことにより、微細針状組織とすることができる。
この方法では、熱処理前の加工量によらずに微細な組織を得ることができる。もしくは、β域加熱圧延後に同様に高速冷却することにより、微細針状組織および微細等軸組織の混合組織を得ることができる。
(2−2)加工条件の範囲
本発明で、超塑性特性が得られる加工条件は、概ね、加工温度:700℃以上(好ましくは700〜900℃)、歪速度:1×10−2−1以下(好ましくは1×10−4〜1×10−2−1)であり、Ti−6Al−4V合金などのチタン合金において超塑性を得られる通常の条件(加工温度900℃、歪速度1×10−3−1以下)と比較すると、より低い加工温度およびより高い歪速度で超塑性を発現することができる。
このため、本発明によれば、低温での超塑性の発現による金型の高寿命化、生産コストの低下、さらには、高歪速度での超塑性発現による生産性の向上が図られる。
本発明を、実施例を参照しながらさらに具体的に説明する。
表1に示す化学組成No.1〜11を有するチタン合金No.1〜11をプラズマ溶解した鋳塊をβ域加熱鍛造した後、β域加熱圧延を行い、直径20mmの丸棒とした。
得られた素材をそのまま、もしくは、β変態点以上の1050℃まで加熱および30分間保持し、β変態点での冷却速度:70℃/秒で高速冷却した後、平行部の直径3mm、長さ6mmの試験片を作製した。
なお、引張試験片の採取時に、その部位近傍から光学顕微鏡観察用の試験片を採取し、C断面(長手方向に垂直な断面)を観察面とする埋め込み研磨試料を作製し、硝フッ酸水溶液(硝酸濃度:約12%、フッ酸濃度:約1.5%)を用いて室温でエッチングした後に観察した。
この際、金属組織の形態を確認するとともに、針状マルテンサイト粒および針状α粒(針状粒)の平均幅、等軸α粒(等軸粒)の平均粒径、粒界α相の短軸方向の平均幅(いずれも500倍の倍率で各視野からランダムに10カ所測定し、計20視野測定した際の平均値を算出)を計測した。
なお、針状粒の幅や等軸粒の平均粒径が1μm未満の場合、分解能の低い光学顕微鏡では正確な数値が測定できなかったため、表中には1μm未満と記載している。さらに、粒界α相が確認できた素材については、光学顕微鏡観察用の埋め込み試料から、粒界α相の面積率(500倍の倍率で画像解析することで面積率を測定し、3視野の平均値を面積率とした)を算出した。
採取した引張試験片については、昇温速度45℃/分で700〜800℃まで加熱し、10分間保持した後、歪速度1×10−3〜1×10−2−1の条件で引張特性(引張強度、絞り、突き合わせ伸び)を評価した。
表2に、チタン合金No.1〜11の素材をそのまま引張試験片に加工し、試験温度800℃、歪速度1×10−2−1の条件で引張試験した結果と、その素材の金属組織の観察結果を示す。
合金No.A−1〜11は、いずれも、針状粒および等軸粒の混合組織であり、粒界α相は確認できなかった。
合金A−1〜7の本発明例では、いずれも針状粒の平均幅が3μm以下であり、かつ等軸粒の平均粒径が5μm以下であり、突き合わせ伸びは200%以上であった。また、破断試験片の破断部近傍の断面組織でもボイドは確認されなかった。
合金A−8の比較例は、Al,Fe,Mo含有量がいずれも本発明の範囲の下限を下回るため、針状粒の短軸方向の平均幅が大きくなり、突き合わせ伸びが不芳になった。
合金A−9の比較例は、Mo含有量が本発明の範囲の下限を下回るため、針状粒の短軸方向の平均幅が大きくなり、突き合わせ伸びが不芳になった。
合金A−10の比較例は、不純物であるSi,C含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、突き合わせ伸びが不芳になった。
さらに、合金A−10の比較例は、本発明の化学成分系(Ti−5Al−2Fe−3Mo合金)とは異なる化学成分系(Ti−6Al−4V合金)であるため、合金コストが高い。
表3には、表2と同様に、チタン合金No.1〜11の素材をそのまま引張試験片に加工し、試験温度700℃、歪速度1×10−3−1の条件で引張試験した結果を示す。
A−12〜18の本発明例は、いずれも、突き合わせ伸びは200%以上であった。また、破断試験片の破断部近傍の断面組織でもボイドは確認されなかった。
合金A−19の比較例は、Al,Fe,Mo含有量がいずれも本発明の範囲の下限を下回るため、針状粒の短軸方向の平均幅が大きくなり、突き合わせ伸びが不芳になった。
合金A−20の比較例は、Mo含有量が本発明の範囲の下限を下回るため、針状粒の短軸方向の平均幅が大きくなり、突き合わせ伸びが不芳になった。
合金A−21の比較例は、不純物であるSi,C含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、突き合わせ伸びが不芳になった。
さらに、合金A−22の比較例は、本発明の化学成分系(Ti−5Al−2Fe−3Mo合金)とは異なる化学成分系(Ti−6Al−4V合金)であるため、合金コストが高い。
表4には、チタン合金No.1〜11の素材を、β変態点以上まで加熱した後に高速冷却してから引張試験片に加工し、試験温度800℃、歪速度1×10−2−1の条件で引張試験した結果と、その素材の金属組織の観察結果とを示す。
合金No.B−1〜11は、いずれも、針状粒からなる針状組織であり、等軸粒は確認できなかった。
合金No.B−1〜7の本発明例では、いずれも針状粒および粒界α相の平均幅は3μm以下であり、かつ粒界α相の体積率が1%以下であり、突き合わせ伸びは200%以上であった。また、破断試験片の破断部近傍の断面組織でもボイドは確認されなかった。
合金B−8の比較例は、Al,Fe,Mo含有量がいずれも本発明の範囲の下限を下回るため、粒界α相の面積率が大きくなり、突き合わせ伸びが不芳になった。
合金B−9の比較例は、Mo含有量が本発明の範囲の下限を下回るため、粒界α相の面積率が大きくなり、突き合わせ伸びが不芳になった。
合金B−10の比較例は、不純物であるSi,C含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、突き合わせ伸びが不芳になった。
さらに、合金B−11の比較例は、本発明の化学成分系(Ti−5Al−2Fe−3Mo合金)とは異なる化学成分系(Ti−6Al−4V合金)であるためにこの加工条件では超塑性を発現できず、突き合わせ伸びが不芳になったとともに、合金コストが高い。
表5には、表4と同様に、チタン合金No.1〜11の素材を、β変態点以上まで加熱した後に高速冷却してから引張試験片に加工し、試験温度700℃、歪速度1×10−3−1の条件で引張試験した結果を示す。
合金No.B−12〜18は、いずれも、突き合わせ伸びは200%以上であった。また、破断試験片の破断部近傍の断面組織でもボイドは確認されなかった。
合金B−19の比較例は、Al,Fe,Mo含有量がいずれも本発明の範囲の下限を下回るため、突き合わせ伸びが不芳になった。
合金B−20の比較例は、Mo含有量が本発明の範囲の下限を下回るため、突き合わせ伸びが不芳になった。
合金B−21の比較例は、不純物であるSi,C含有量が本発明の範囲の上限を上回るため、突き合わせ伸びが不芳になった。
さらに、B−22の比較例は、本発明の化学成分系(Ti−5Al−2Fe−3Mo合金)とは異なる化学成分系(Ti−6Al−4V合金)であるため、突き合わせ伸びが不芳になった。

Claims (4)

  1. 化学組成が、質量%で、Al:4.4%以上5.5%未満、Fe:1.4%以上2.1%未満、Mo:1.5%以上5.5%未満、残部:Tiおよび不純物からなり、前記不純物のうちのSi:0.1%未満およびC:0.01%未満であり、かつ、前記不純物の総量:0.3%未満であり、
    金属組織が、針状マルテンサイト粒および針状α粒の短軸方向の幅が平均3μm以下である微細針状組織、および、等軸α粒の平均粒径が5μm以下である微細等軸状組織のいずれか一方または両方である、α+β型チタン合金部材。
  2. 超塑性加工用である、請求項1に記載のα+β型チタン合金部材。
  3. 粒界α相の体積率が1%以下であり、かつ、粒界α相の短軸方向の幅が平均3μm以下である、請求項1または2に記載のα+β型チタン合金部材。
  4. 質量%で、Al:4.4%以上5.5%未満、Fe:1.4%以上2.1%未満、Mo:1.5%以上5.5%未満、残部:Tiおよび不純物からなり、前記不純物のうちのSi:0.1%未満およびC:0.01%未満であり、かつ、前記不純物の総量:0.3%未満である化学組成を有する素材を、β変態点以上の温度域から、β変態点での冷却速度が50〜100℃/秒となるように冷却する、請求項1〜3のいずれかに記載の、α+β型チタン合金部材の製造方法。

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