JP2017145318A - 熱可塑性樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の熱可塑性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と称す場合がある。)は、樹脂組成物中の樹脂成分として、その樹脂成分100質量部に対して、イソソルバイド類に由来する構造を含むポリカーボネート樹脂(A)45〜75質量部と、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体混合物(b)を重合して得られたメタクリル酸エステル樹脂(B)20〜50質量部と、ゴム質重合体(c)に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びメタクリル酸エステル系単量体から選ばれる少なくとも1種を含む単量体(d)をグラフト重合したグラフト重合体(C)4.9〜25質量部とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、該メタクリル酸エステル樹脂(B)のガラス転移温度が100℃〜150℃であることを特徴とする。
本発明で使用するイソソルバイド類に由来する構造を含むポリカーボネート樹脂(A)(以下「イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)」と称す場合がある。)とは、好ましくは、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂、又は下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物及びシクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂である。
中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、成形性、耐熱性、耐衝撃性、表面硬度、カーボンニュートラルの面から最も好ましい。
特に、イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)は、イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)に含まれる全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位中、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を95〜30モル%、特に60〜40モル%、シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位を5〜70モル%、特に40〜60モル%含むことが、着色が生じにくく、高分子量化、衝撃強度の向上、ガラス転移温度の向上の点で好ましい。
重合反応の形式は、公知の形式を用いることができ、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよい。
本発明におけるメタクリル酸エステル樹脂(B)とは、メタクリル酸エステルと、メタクリル酸エステルと共重合可能なその他のビニル系単量体(以下、「その他のビニル系単量体」と称す場合がある。)とを含むビニル系単量体混合物(b)を重合したものである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるグラフト重合体(C)は、ゴム質重合体(c)に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びメタクリル酸エステル系単量体から選ばれる少なくとも1種を含む単量体(d)をグラフト重合したものである。
エチレン・α−オレフィン共重合体は、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の非共役ジエン成分からなる単位を1種以上含むエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体であってもよい。
なお、ゴム質重合体(c)のゲル含有量はゴム質重合体(c)の架橋度を示し、具体的には、秤量したゴム質重合体(c)を適当な溶剤に40時間かけて溶解させ、次いで、200メッシュ金網で分取し、金網に残った不溶分を乾燥させたのち秤量し、溶剤に溶解させる前のゴム質重合体(c)に対する乾燥させた不溶分の割合(質量%)で求められる。ゴム質重合体(c)の溶解に用いる溶剤としては、例えば、ジエン系ゴムやオレフィン系ゴムではトルエンを、アクリル系ゴムではアセトンを用いると測定しやすい。
他の単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド類等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。これらのうち、耐熱性等の点から、好ましくはアクリル酸メチルである。
G=100(P−E)/E
P:アセトン不溶分の質量(グラフト重合体(C)または樹脂組成物をメタノールで洗浄した後、アセトンで抽出し、遠心分離機でアセトン可溶分とアセトン不溶分に分離し、得られたアセトン不溶分を真空乾燥した後の質量(g))
E:グラフト重合体(C)の製造に用いたゴム質重合体(c)の質量(g)
本発明の樹脂組成物には、上記のイソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)、メタクリル酸エステル樹脂(B)及びグラフト重合体(C)以外のその他の樹脂を含有してもよい。
本発明の樹脂組成物には、イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)、メタクリル酸エステル樹脂(B)及びグラフト重合体(C)の他に、樹脂組成物や成形品の物性を損なわない範囲において、樹脂組成物の製造時(混合時)、成形時に、慣用の他の添加剤、例えば滑材、顔料(カーボンブラック、酸化チタン等)、染料、充填剤(シリカ、マイカ、ワラストナイト、タルク、ガラス繊維、炭素繊維等)、耐熱剤、酸化劣化防止剤、耐候剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤等を配合することができる。
本発明の樹脂組成物は、公知の装置を使用した公知の方法で製造することができる。例えば、一般的な方法として溶融混合法があり、この方法で使用する装置としては、押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等が挙げられる。混合には回分式、連続式のいずれを採用してもよい。また、各成分の混合順序などにも特に制限はなく、全ての成分が均一に混合されればよい。
本発明の成形品は、上記の本発明の樹脂組成物を成形してなるものである。その成形方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出法、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、カレンダー成形法及びインフレーション成形法等が挙げられる。これらのなかでも、量産性に優れ、高い寸法精度の成形品を得ることができるため、射出成形法、射出圧縮成形法が好ましい。
メタクリル酸エステル樹脂(B)のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により、試料を窒素雰囲気下、10℃/minで、35℃から250℃まで昇温した後、35℃まで冷却し、再度250℃まで昇温した場合に観測されるガラス転移温度を測定した。
GPC(GPC:Waters社製「GPC/V2000」、カラム:昭和電工社製「Shodex AT−G+AT−806MS」)を用い、o−ジクロロベンゼン(145℃)を溶媒として、ポリスチレン換算での質量平均分子量(Mw)、数平均分子量分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
撹拌翼、100℃に制御された還流冷却器、及びジャケット式加熱器を具備した重合反応装置に、イソソルビド(ISB)と1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたジフェニルカーボネート(DPC)及び酢酸カルシウム1水和物を、モル比率でISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.5/0.5/1.00/1.3×10−6になるように仕込み、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005体積%〜0.001体積%)。続いて熱媒で内容物の加温を行った。
内温が100℃になった時点で撹拌を開始し、内温が100℃になるように制御しながら内容物を融解させ均一にした。その後、昇温を開始し、40分で内温を210℃にした。
内温が210℃に到達した時点でこの温度を保持するように制御すると同時に、減圧を開始し、210℃に到達してから90分で13.3kPa(絶対圧力、以下同様)にして、この圧力を保持するようにしながら、さらに60分間保持した。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を、還流冷却器に導いた。還流冷却器で凝縮した成分を重合反応装置に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は続いて45℃の温水を冷媒として用いた凝縮器に導いて回収した。
製造例1において、ISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物のモル比率を0.7/0.3/1.00/1.3×10−6に変えた以外は、製造例1と同様の条件で反応させてイソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A2)を得た。
製造例1において、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を用いず、ISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物のモル比率を1.00/0.0/1.00/1.3×10−6に変えた以外は、製造例1と同様の条件で反応させてイソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A3)を得た。
耐圧反応容器に蒸留水150質量部と、メタクリル酸メチル99質量部、アクリル酸メチル1質量部と、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2質量部、n−オクチルメルカプタン0.25質量部、カルシウムハイドロオキシアパタイト0.47質量部、アルケニルコハク酸カリウム0.003質量部を仕込み、内温を75℃まで昇温し、3時間反応を行った。その後、90℃まで昇温し、60分間保持することで反応を完結させた。内容物を遠心脱水機で洗浄、脱水を繰り返し、乾燥させてメタクリル酸エステル樹脂(B1)を得た。得られたメタクリル酸エステル樹脂(B1)のガラス転移温度は105℃であった。分子量は77,000であった。
耐圧反応容器に蒸留水150質量部と、N−フェニルマレイミド15質量部、スチレン5質量部、α−メチルスチレン5質量部、メタクリル酸メチル75質量部の混合物と、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2質量部、n−オクチルメルカプタン0.25質量部、ポリビニルアルコール0.7質量部を仕込み、内温を75℃まで昇温し、3時間反応を行った。その後、90℃まで昇温し、60分間保持することで反応を完結させた。内容物を遠心脱水機で洗浄、脱水を繰り返し、乾燥させてメタクリル酸エステル樹脂(B2)を得た。得られたメタクリル酸エステル樹脂(B2)のガラス転移温度は131℃であった。分子量は135,000であった。
N−フェニルマレイミド25質量部、スチレン10質量部、α−メチルスチレン10質量部、メタクリル酸メチル55質量部とした以外は、製造例5と同様の条件で反応させてメタクリル酸エステル樹脂(B3)を得た。得られたメタクリル酸エステル樹脂(B3)のガラス転移温度は147℃であった。分子量は130,000であった。
メタクリル酸メチル90質量部、アクリル酸メチル10質量部とした以外は、製造例4と同様の条件で反応させてメタクリル酸エステル樹脂(B4)を得た。得られたメタクリル酸エステル樹脂(B4)のガラス転移温度は90℃であった。分子量は70,000であった。
<エチレン・プロピレン共重合体(c1)の乳化ラテックスの製造>
EPDM(三井化学(株)製「TP3180」)100質量部、低分子量変性ポリエチレン(三井化学(株)製「ハイワックス2203A」)9質量部、更に、オレイン酸カリウム3.1質量部を混合した。次いで、それらの混合物を2軸スクリュー押出機(池貝鉄鋼(株)製「PCM−30型」、L/D=40)のホッパーより6kg/時間で供給し、水酸化カリウム15質量%水溶液を110g/時間で連続的に供給しながら、加熱温度200℃で溶融混練して溶融物を押出した。引き続き、溶融物を同押出機先端に取り付けた冷却用一軸押出機に連続的に供給し、90℃まで冷却した。取り出した固体を80℃の温水中に投入し、連続的に分散させて、体積平均粒子径250nmのゴム質重合体ラテックスを得た。
このエチレン・プロピレン共重合体(c1)のゲル含有量は72質量%であった。なお、ゲル含有量は、共重合体ラテックスを希硫酸にて凝固させ、水洗乾燥した後、これを1g採取して200mlのトルエン中40時間浸漬し、次いで、200メッシュ金網にて濾過し、残渣を乾燥し、その質量を測定して求めた。
ゲル含有量72質量%、体積平均粒子径250nmであるエチレン・プロピレン共重合体(c1)の乳化ラテックス70質量部(固形分換算)に、ピロリン酸ナトリウム0.15質量部、硫酸第一鉄七水塩0.006質量部、およびフラクトース0.35質量部を仕込み、内温を80℃に保った。これに、スチレン25.2質量部およびアクリロニトリル4.8質量部からなる単量体混合物と、クメンハイドロパーオキサイド0.6質量部とを、各々別の供給口から140分かけて同時に滴下して重合を行った。この間、内温は80℃で一定に制御した。滴下終了後、さらに100分間、80℃のまま保持した後に冷却してグラフト重合を完結させた。反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト重合体(C1)を得た。グラフト重合体(C1)のグラフト率は29%であった。
単量体混合物をスチレン24質量部およびアクリルニトリル6質量部とした以外は、製造例8と同様の条件で反応させてグラフト重合体(C2)を得た。グラフト重合体(C2)のグラフト率は30%であった。
単量体混合物をスチレン21.6質量部およびアクリルニトリル8.4質量部とした以外は、製造例8と同様の条件で反応させてグラフト重合体(C3)を得た。グラフト重合体(C2)のグラフト率は29%であった。
単量体混合物をスチレン20.4質量部およびアクリルニトリル9.6質量部とした以外は、製造例8と同様の条件で反応させてグラフト重合体(C4)を得た。グラフト重合体(C4)のグラフト率は30%であった。
ゲル含有量が84質量%、体積平均粒子径170nmあるポリアクリル酸ブチル系ゴム(c2)の乳化ラテックス70質量部(固形分換算)に、不均化ロジン酸カリウム1質量部、水酸化カリウム0.03質量部を加え、60℃に加熱し、ピロリン酸ナトリウム0.1質量部、硫酸第一鉄七水塩0.007質量部、およびフラクトース0.3質量部を仕込み、内温を60℃に保った。これに、スチレン23質量部、およびアクリロニトリル7質量部からなる単量体混合物とクメンハイドロパーオキサイド0.5質量部とを、各々別の供給口から120分かけて同時に滴下して重合を行った。滴下終了後、さらに100分間、70℃のまま保持した後に冷却してグラフト重合を完結させた。反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト重合体(C5)を得た。グラフト重合体(C5)のグラフト率は32%であった。
ゲル含有量95%、体積平均粒子径320nmであるポリブタジエンゴム(c3)の乳化ラテックス70質量部(固形分換算)に、スチレン23質量部、およびアクリロニトリル7質量部と、不均化ロジン酸カリウム1質量部、水酸化ナトリウム0.01質量部、ピロリン酸ナトリウム0.45質量部、硫酸第一鉄七水塩0.01質量部、デキストローズ0.57質量部、t−ドデシルメルカプタン0.08質量部及びクメンハイドロパーオキサイド1.0質量部とを仕込み、60℃から反応を開始し、途中で75℃まで昇温後、120分間保持し、冷却してグラフト重合を完結させた。反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト重合体(C6)を得た。グラフト重合体(C6)のグラフト率は31%であった。
単量体混合物をメタクリル酸メチル29質量部およびアクリル酸メチル1質量部とした以外は、製造例8と同様の条件で反応させてグラフト重合体(C7)を得た。グラフト重合体(C7)のグラフト率は30%であった。
ゴム質重合体として、ゲル含有量74質量%、体積平均粒子径420nmであるエチレン・α−オレフィン共重合体(α−オレフィンは1−ブテン)(c4)を用いた以外は、製造例9と同様の条件で反応させてグラフト重合体(C8)を得た。グラフト重合体(C8)のグラフト率は34%であった。
ゴム質重合体として、ゲル含有量48質量%、体積平均粒子径250nmであるエチレン・α−オレフィン共重合体(α−オレフィンは1−ブテン)(c5)を用いた以外は、製造例9と同様の条件で反応させてグラフト重合体(C9)を得た。グラフト重合体(C9)のグラフト率は36%であった。
ゲル含有量72質量%、体積平均粒子径250nmであるエチレン・プロピレン共重合体(c1)の乳化ラテックスを60質量部(固形分換算)用い、単量体混合物としてスチレン33.6質量部およびアクリロニトリル6.4質量部を用いた以外は、製造例8と同様の条件で反応させてグラフト重合体(C10)を得た。グラフト重合体(C10)のグラフト率は41%であった。
表1〜4に示す配合で各成分を混合し、28mm二軸押出機(日本製鋼所製「TEX−28V」)を用いて260℃で溶融混練し、ペレット状の樹脂組成物を得た。
溶融混練して得られた樹脂組成物のペレットを射出成型機(東芝機械社製、「IS55FP−1.5A」)によりシリンダー温度200〜270℃、金型温度60℃の条件で、縦80mm、横10mm、厚さ4mmの成形品を成形し、耐衝撃性評価用成形品、耐熱性評価(荷重たわみ温度測定)用成形品(成形品(1))として用いた。
溶融混練して得られた樹脂組成物のペレットを射出成型機(東芝機械社製、「IS55FP−1.5A」)によりシリンダー温度200〜270℃、金型温度80℃の条件で、縦100mm、横100mm、厚さ3mmの成形品を成形し、耐面衝撃性評価用成形品、耐傷付き性評価(鉛筆硬度測定、耐ガーゼ摩耗性測定)用成形品、透明性評価用成形品(成形品(2))として用いた。
溶融混練時にカーボンブラック0.8質量部を添加した以外は、射出成形2と同様の条件で成形し、耐傷付き性評価(耐ガーゼ摩耗性測定)用成形品、発色性評価用成形品、耐候性評価用成形品(成形品(3))として用いた。
成形品(2)を用いて落球衝撃強度を測定した。成形品の中心部に所定の高さより230gの剛球を落下させ、割れや亀裂発生の有無を確認した。10枚について試験を行った後、高さを10cm変更して同様の試験を行い、5枚以上の成形品が破壊した高さを求めた。150cm以上のものは150と表記する。100cm以上を合格とした。
成形品(1)について、ISO 179規格にしたがい、23℃の条件でシャルピー衝撃試験(ノッチ付)を行い、シャルピー衝撃強度を測定した。
JIS K5600に準拠し、750gの荷重において、成形品(2)の鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度が硬いほど、耐傷付き性に優れる。HB以上を合格とした。
図1に示すように、先端部1が半球形に形成された棒状の治具2を用意し、先端部1に、ガーゼを8枚重ねた積層シートSを被せた。成形品(3)Mの表面に対して、棒状の治具2が直角になるように、積層シートSが被せられた先端部1を接触させ、先端部1を成形品(3)の表面において水平方向(図中矢印方向)に摺動させ、100回往復させた。その際、加える荷重は1kgとした。100回往復させた後、傷を付けた成形品(4)の表面における擦り傷を目視で観測し、以下の4段階で評価した。
ガーゼ摩耗が良好なほど、軍手、ガーゼや布などで成形品の表面を拭いた場合や、衣類などが擦れた場合に傷が付きにくく、耐擦り傷性が良好となる。○以上を合格とした。
◎:ほとんど傷が付かない
○:目立たない傷が付く
△:目立つ傷が付く
×:手で触ってわかるほど削れた傷が付く
成形品(1)について、ISO試験法75に準拠し、1.83MPa、4mm、フラットワイズ法で荷重たわみ温度(℃)を測定した。
成形品(2)について、JIS K 7361に準じ、全光線透過率を測定した。
成形品(3)について、分光測色計(コニカミノルタオプティプス社製「CM−3500d」)を用いて明度L*を、SCE方式にて測定した。こうして測定されたL*を「L*(ma)」とする。L*が低いほど黒色となり、発色性が良好と判定した。
「明度(L*)」とは、JIS Z 8729において採用されているL*a*b*表色系における色彩値のうちの明度の値(L*)を意味する。
「SCE方式」とは、JIS Z 8722に準拠した分光測色計を用い、光トラップによって正反射光を除去して色を測る方法を意味する。
成形品(3)について、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機(株)製)を用い、ブラックパネル温度63℃、サイクル条件60分(降雨12分)の条件で1500時間処理した。処理前後の成形品(3)の表面の60°光沢度をデジタル変角光沢計(スガ試験機(株)製)により測定し、処理前の60°光沢度に対する処理後の60°光沢度の割合(百分率)を処理後の光沢保持率として算出した。70%以上を合格とした。
これらの評価結果を表1〜4に示す。
表1の参考例1〜12では、イソソルバイト系ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル酸エステル樹脂(B)から成る熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品の評価を実施したものであり、特に、耐衝撃性、耐ガーゼ摩耗性が低く、本発明の目的とする効果が得られないことが確認された。
表2,3の実施例1〜20に示すように、本発明の熱可塑性樹脂組成物より得られた成形品は、耐面衝撃性、耐衝撃性、耐傷付き性、耐熱性、発色性に優れる上に、耐候性にも優れ、これらの特性をすべてバランスよく兼ね備えていた。
比較例1〜4、6はイソソルバイト系ポリカーボネート樹脂(A)、メタクリル酸エステル樹脂(B)、グラフト重合体(C)のいずれかの配合量が本発明の範囲より少ない、または多いことから、所望の特性を満たさなかった。比較例5はメタクリル酸エステル樹脂(B)のガラス転移温度が本発明の範囲より低いことから、耐熱性に劣るものであった。
2 治具
S 積層シート
M 成形品
Claims (8)
- 樹脂成分100質量部中に、イソソルバイド類に由来する構造を含むポリカーボネート樹脂(A)45〜75質量部と、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体混合物(b)を重合して得られたメタクリル酸エステル樹脂(B)20〜50質量部と、ゴム質重合体(c)に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びメタクリル酸エステル系単量体から選ばれる少なくとも1種を含む単量体(d)をグラフト重合したグラフト重合体(C)4.9〜25質量部とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、該メタクリル酸エステル樹脂(B)のガラス転移温度が100℃〜150℃であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- ビニル系単量体混合物(b)が、メタクリル酸エステルと、メタクリル酸エステルと共重合可能なその他のビニル系単量体を含み、ビニル系単量体混合物(b)中のメタクリル酸エステルの含有量が50〜99.5質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 単量体(d)が芳香族ビニル系単量体70〜82質量%とシアン化ビニル系単量体18〜30質量%とを含む請求項1ないし3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ゴム質重合体(c)が、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、及びエチレン・α−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種である請求項1ないし4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- ゴム質重合体(c)の体積平均粒子径が80〜500nmであり、ゴム質重合体(c)のゲル含有量が40〜99質量%であり、グラフト重合体(C)のグラフト率が23〜100%であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- グラフト重合体(C)は、ゴム質重合体(c)40〜80質量%と、単量体(d)20〜60質量%とをグラフト重合してなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1ないし7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品。
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