JP2017145318A - 熱可塑性樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物及びその成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】耐面衝撃性、耐衝撃性、耐傷付き性、耐熱性、発色性に優れ、耐候性にも優れる熱可塑性樹脂組成物と、この熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品を提供する。【解決手段】樹脂成分100質量部中に、イソソルバイド類に由来する構造を含むポリカーボネート樹脂(A)45〜75質量部と、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体混合物(b)を重合して得られたメタクリル酸エステル樹脂(B)20〜50質量部と、ゴム質重合体(c)に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びメタクリル酸エステル系単量体から選ばれる少なくとも1種を含む単量体(d)をグラフト重合したグラフト重合体(C)4.9〜25質量部とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、該メタクリル酸エステル樹脂(B)のガラス転移温度が100℃〜150℃であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。この熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品【選択図】図1

Description

本発明は、耐面衝撃性、耐衝撃性、耐傷付き性、耐熱性、発色性に優れ、耐候性にも優れる熱可塑性樹脂組成物と、この熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品に関する。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、機械的物性、電気的特性に優れた樹脂であり、自動車部品類、電気・電子機器、住宅材料、その他の工業分野における部品、製造用材料等に幅広く利用されている。しかしながら、芳香族ポリカーボネート樹脂は、表面硬度が低く傷が付きやすく、また屋外で使用した場合、長時間紫外線に晒されることにより黄変し、透明性が損なわれるという欠点がある。
一方で、メタクリル酸エステルを主成分とするアクリル樹脂は、寸法安定性、耐面衝撃性などに問題があるものの、耐候性や表面硬度などに優れることから、これを芳香族ポリカーボネート樹脂に配合することで、表面硬度を改善することができる。しかしながら、アクリル樹脂は芳香族ポリカーボネート樹脂と完全相溶せず、屈折率が異なることから、成形品表面に真珠光沢が発生し、外観不良を引き起こす。また、アクリル樹脂を配合することで、耐熱性が低下する。
耐候性を改良したポリカーボネート樹脂として、イソソルバイト骨格を有するポリカーボネート樹脂が知られているが、表面硬度が低く、耐傷付き性に劣る問題は解決されていない(特許文献1)。また、屋外で長時間使用した場合、光沢の低下が生じる。
特開2012-214665号公報
本発明は、耐面衝撃性、耐衝撃性、耐傷付き性、耐熱性、発色性に優れ、耐候性にも優れる熱可塑性樹脂組成物と、この熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、イソソルバイド類に由来する構造を含むポリカーボネート樹脂(A)と、特定のガラス転移温度のメタクリル酸エステル樹脂(B)と、ゴム質重合体(c)に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びメタクリル酸エステル系単量体から選ばれる少なくとも1種を含む単量体(b)をグラフト重合したグラフト重合体(C)とを所定の割合で配合することにより、上記課題を解決することができることを見出した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 樹脂成分100質量部中に、イソソルバイド類に由来する構造を含むポリカーボネート樹脂(A)45〜75質量部と、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体混合物(b)を重合して得られたメタクリル酸エステル樹脂(B)20〜50質量部と、ゴム質重合体(c)に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びメタクリル酸エステル系単量体から選ばれる少なくとも1種を含む単量体(d)をグラフト重合したグラフト重合体(C)4.9〜25質量部とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、該メタクリル酸エステル樹脂(B)のガラス転移温度が100℃〜150℃であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
[2] イソソルバイド類に由来する構造を含むポリカーボネート樹脂(A)は、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物及びシクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位を含み、イソソルバイド類に由来する構造を含むポリカーボネート樹脂(A)に含まれる全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位中、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を95〜30モル%、シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位を5〜70モル%含むことを特徴とする[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
Figure 2017145318
[3] ビニル系単量体混合物(b)が、メタクリル酸エステルと、メタクリル酸エステルと共重合可能なその他のビニル系単量体を含み、ビニル系単量体混合物(b)中のメタクリル酸エステルの含有量が50〜99.5質量%であることを特徴とする[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4] 単量体(d)が芳香族ビニル系単量体70〜82質量%とシアン化ビニル系単量体18〜30質量%とを含む[1]ないし[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5] ゴム質重合体(c)が、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、及びエチレン・α−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種である[1]ないし[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6] ゴム質重合体(c)の体積平均粒子径が80〜500nmであり、ゴム質重合体(c)のゲル含有量が40〜99質量%であり、グラフト重合体(C)のグラフト率が23〜100%であることを特徴とする[1]ないし[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[7] グラフト重合体(C)は、ゴム質重合体(c)40〜80質量%と、単量体(d)20〜60質量%とをグラフト重合してなることを特徴とする[1]ないし[6]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[8] [1]ないし[7]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品。
本発明によれば、耐面衝撃性、耐衝撃性、耐傷付き性、耐熱性、発色性に優れ、耐候性にも優れる熱可塑性樹脂組成物及びその成形品が提供される。
実施例における耐傷付き性(耐ガーゼ摩耗性)の評価方法の説明図である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本発明の熱可塑性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と称す場合がある。)は、樹脂組成物中の樹脂成分として、その樹脂成分100質量部に対して、イソソルバイド類に由来する構造を含むポリカーボネート樹脂(A)45〜75質量部と、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体混合物(b)を重合して得られたメタクリル酸エステル樹脂(B)20〜50質量部と、ゴム質重合体(c)に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びメタクリル酸エステル系単量体から選ばれる少なくとも1種を含む単量体(d)をグラフト重合したグラフト重合体(C)4.9〜25質量部とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、該メタクリル酸エステル樹脂(B)のガラス転移温度が100℃〜150℃であることを特徴とする。
[イソソルバイド類に由来する構造を含むポリカーボネート樹脂(A)]
本発明で使用するイソソルバイド類に由来する構造を含むポリカーボネート樹脂(A)(以下「イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)」と称す場合がある。)とは、好ましくは、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂、又は下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物及びシクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂である。
Figure 2017145318
上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、成形性、耐熱性、耐衝撃性、表面硬度、カーボンニュートラルの面から最も好ましい。
一方、シクロヘキサンジメタノールとしては、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられ、入手の容易さより1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
本発明に使用するイソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)は、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物やシクロヘキサンジメタノール以外のジヒドロキシ化合物(以下「その他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構造単位を含んでいてもよく、その他のジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオールのなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物;トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール等の脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン等の芳香族ビスフェノール類が挙げられる。
イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)が、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とシクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位を含む場合、イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)に含まれる全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位中、シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位の割合は70モル%以下、例えば5〜70モル%であることが好ましい。イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)がシクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位を含むことにより着色が生じにくく、高分子量化、衝撃強度の向上、ガラス転移温度の向上という効果が奏されるが、この割合が多過ぎると、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことによるこのような効果が損なわれ、好ましくない。
特に、イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)は、イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)に含まれる全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位中、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を95〜30モル%、特に60〜40モル%、シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位を5〜70モル%、特に40〜60モル%含むことが、着色が生じにくく、高分子量化、衝撃強度の向上、ガラス転移温度の向上の点で好ましい。
また、イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)がその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む場合、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位は、イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)中の全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましい。イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)がその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことにより、耐衝撃性が向上するが、この割合が過度に多いと耐熱性が低下する。また、イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)がその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位として芳香族ビスフェノール類に由来する構造単位を含む場合は、耐熱性が向上するが、この割合が過度に多いと耐候性が悪化する。
本発明に使用するイソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)は、一般に用いられる製造方法で製造することができ、その製造方法は、ホスゲンを用いた溶液重合法、炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法のいずれの方法でも良いが、重合触媒の存在下に、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物を、より環境への毒性の低い炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法が好ましい。
溶融重合法で用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記一般式(2)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
Figure 2017145318
(一般式(2)において、A、Aは、置換基を有していてもよい炭素数1〜18の脂肪族基又は置換基を有していてもよい芳香族基であり、AとAは同一であっても異なっていてもよい。)
上記一般式(2)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示される。
これらの中でも、ジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートが好ましく、ジフェニルカーボネートが特に好ましい。
また、溶融重合における重合触媒(エステル交換触媒)としては、公知のアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が使用される。アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物と共に補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能である。
重合反応の形式は、公知の形式を用いることができ、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよい。
本発明において、イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは25,000〜60,000の範囲であるが、より好ましくは30,000〜60,000、特に好ましくは35,000〜58,000であることが、得られる成形品の外観や、耐衝撃性の点において好ましい。この範囲よりも、イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)の重量平均分子量が大きい場合は、流動性が低下し、小さい場合は、得られる成形品の耐衝撃性、耐熱性が低下し、外観が悪くなる。
本発明の樹脂組成物におけるイソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)の配合量は、得られる樹脂組成物やその成形品の耐面衝撃性、耐傷付き性が優れることから、樹脂成分100質量部において45〜75質量部であり、好ましくは50〜70質量部である。この範囲よりもイソソルバイト系ポリカーボネート(A)が多いと、耐衝撃性、耐候性、硬いものによる耐傷付き性が低下し、少ないと耐面衝撃性が低下する。
[メタクリル酸エステル樹脂(B)]
本発明におけるメタクリル酸エステル樹脂(B)とは、メタクリル酸エステルと、メタクリル酸エステルと共重合可能なその他のビニル系単量体(以下、「その他のビニル系単量体」と称す場合がある。)とを含むビニル系単量体混合物(b)を重合したものである。
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニルなどが挙げられ、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ビニル系単量体混合物(b)中のメタクリル酸エステルの含有量は、50〜99.5質量%が好ましく、60〜99.5質量%がより好ましい。メタクリル酸エステルの含有量が50質量%未満では得られる樹脂組成物やその成形品の発色性が劣り、さらには、耐傷付き性に劣るものとなる傾向がある。一方、メタクリル酸エステルの含有量が99.5質量%を超えると溶融混練時や成形時にメタクリル酸エステル樹脂(B)の分解が発生しやすく、変色や外観不良(シルバー)の原因となるおそれがある。
ビニル系単量体混合物(b)に含まれるその他のビニル系単量体としては、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、アクリル酸エステル、マレイミド類や無水マレイン酸などが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−もしくはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレンなどが挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。なかでもスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
シアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
マレイミド類としては、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。これらのうち、耐熱性等の点から、好ましくはN−フェニルマレイミドが特に好ましい。
メタクリル酸エステル樹脂(B)の製造方法としては特に制限されず、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合などの公知の方法が挙げられる。得られる樹脂組成物や成形品の耐熱性の点からは、懸濁重合、塊状重合が好ましい。
メタクリル酸エステル樹脂(B)の重量平均分子量は、50,000〜300,000であることが好ましく、65,000〜200,000であることがより好ましい。メタクリル酸エステル樹脂(B)の重量平均分子量が上記範囲内にあると、得られる樹脂組成物や成形品の耐衝撃性、耐熱性、耐傷付き性が良好となる傾向にある。
本発明において、用いるメタクリル酸エステル樹脂(B)のガラス転移温度は、100〜150℃であることを必須の要件とする。メタクリル酸エステル樹脂(B)のガラス転移温度が上記下限よりも低いと、得られる樹脂組成物や成形品の耐熱性が劣る傾向があり、上記上限よりも高いと、耐面衝撃性、耐衝撃性、発色性が劣る傾向にある。メタクリル酸エステル樹脂(B)のガラス転移温度は好ましくは130〜145℃である。
本発明の樹脂組成物におけるメタクリル酸エステル樹脂(B)の配合量は、得られる樹脂組成物やその成形品の発色性に優れ、硬く尖ったものによる傷が付きにくくなることから、樹脂成分100質量部において20〜50質量部であり、好ましくは25〜45質量部である。メタクリル酸エステル樹脂(B)が上記下限よりも少ないと、硬いもので付く引掻き傷に対する耐傷付き性、耐候性が劣る傾向にあり、上記上限よりも多いと、柔らかいもので付く擦り傷に対する耐傷付き性が劣る傾向にある。
[グラフト重合体(C)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるグラフト重合体(C)は、ゴム質重合体(c)に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びメタクリル酸エステル系単量体から選ばれる少なくとも1種を含む単量体(d)をグラフト重合したものである。
グラフト重合体(C)を形成するゴム質重合体(c)としては、例えば、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、天然ゴム等のジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体等のオレフィン系ゴム、ポリオルガノシロキサン等のシリコン系ゴム等が挙げられ、これらは1種を単独で、あるいは2種以上を混合して使用できる。また、ゴム質重合体(c)の構造が複合形態をとっているものでもよく、例えば、ポリブタジエンにアクリル酸エステルを重合したものや、ポリオルガノシロキサンにアクリル酸エステルを重合したものでもよい。これらゴム質重合体(c)の中でも、得られる樹脂組成物の耐候性に優れることから、アクリル系ゴム、シリコン系ゴム、オレフィン系ゴムが好ましく、さらには、得られる樹脂組成物の成形品に擦り傷が付きにくいことから、オレフィン系ゴムが好ましく、例えばエチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムがより好ましい。ここで、エチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンとα−オレフィンとの共重合体である。α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンなどや、これらの共重合体などの1種以上を使用できる。
エチレン・α−オレフィン共重合体は、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の非共役ジエン成分からなる単位を1種以上含むエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体であってもよい。
ゴム質重合体(c)の体積平均粒子径は、80〜500nmであることが好ましく、80〜400nmであることがより好ましく、80〜260nmであることがさらに好ましい。ゴム質重合体(c)の体積平均粒子径が上記範囲であると、得られる樹脂組成物や成形品の耐衝撃性、発色性が良好となる。
ゴム質重合体(c)の粒子径を制御する方法としては、特に制限はなく公知のものが使用できる。特に、ゴム質重合体(c)の乳化ラテックスの製造時に用いる乳化剤の種類または使用量、混練時に加える剪断力、温度条件、水分率等を調整する方法などが、容易に粒子径を制御できることから好ましく、乳化剤の使用量を増量する、混練時に加える剪断力を強くする、温度を高くする、水分率を高くすることでゴム質重合体(c)の粒子径が小さくなる傾向がある。
ゴム質重合体(c)の乳化ラテックスの製造方法としては特に制限がなく公知の方法を使用できる。例えば、水媒体中での乳化重合方法、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機などの公知の溶融混練手段でゴム質重合体(c)と乳化剤とを溶融混練し、機械的剪断力を与えて分散させ、水性媒体に添加する方法;ゴム質重合体(c)をペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素溶媒に乳化剤とともに溶解させ、水性媒体に添加して乳化させた後、十分に攪拌し、炭化水素溶媒を留去する方法;などが挙げられる。粒子径を制御しやすい点から、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコン系ゴムおよびこれらの複合形態をとるゴム等では水媒体中での乳化重合方法が好ましく、シリコン系ゴム、オレフィン系ゴムおよびこれらの複合形態をとるゴム等ではニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機などの公知の溶融混練手段でゴム質重合体(c)と乳化剤とを溶融混練し、機械的剪断力を与えて分散させ、水性媒体に添加する方法が好ましい。また、溶融混練時には、混練性の観点から、乳化剤とともに、無水マレイン酸変性ポリエチレンなどのワックス成分を用いてもよい。
ゴム質重合体(c)を乳化する際に用いることができる乳化剤としては、通常に用いられるものであればよく、例えば、長鎖アルキルカルボン酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等の公知のものが挙げられる。
ゴム質重合体(c)の架橋の有無は特に制限はされないが、耐衝撃性、発色性に優れることから架橋されていることが好ましく、ゴム質重合体(c)のゲル含有量は40〜99質量%であることが好ましく、50〜88質量%であることがより好ましい。
なお、ゴム質重合体(c)のゲル含有量はゴム質重合体(c)の架橋度を示し、具体的には、秤量したゴム質重合体(c)を適当な溶剤に40時間かけて溶解させ、次いで、200メッシュ金網で分取し、金網に残った不溶分を乾燥させたのち秤量し、溶剤に溶解させる前のゴム質重合体(c)に対する乾燥させた不溶分の割合(質量%)で求められる。ゴム質重合体(c)の溶解に用いる溶剤としては、例えば、ジエン系ゴムやオレフィン系ゴムではトルエンを、アクリル系ゴムではアセトンを用いると測定しやすい。
ゴム質重合体(c)を架橋する方法としては特に制限はなく公知のものを使用できる。例えば、ジエン系ゴムの乳化重合時に用いる有機過酸化物や連鎖移動剤の添加量で調整する方法、ジエン系ゴムやアクリル系ゴムの重合時に多官能性化合物と共重合する方法、ジエン系ゴム、シリコン系ゴム、オレフィン系ゴムに有機過酸化物と必要に応じて多官能性化合物を加えて加熱する方法などが架橋度を調整しやすいことから好ましい。
有機過酸化物は、特に制限はないが、例えば、パーオキシエステル化合物、パーオキシケタール化合物、ジアルキルパーオキサイド化合物などが挙げられ、これらの1種以上を使用できる。
パーオキシエステル化合物の具体例としては、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエイト、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエイト、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエイト、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ヘキシルパーオキシピバレイト、t−ブチルパーオキシピバレイト、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、t−ヘキシルパーオキシ−2−ヘキシルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシ−2−ヘキシルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシイソブチレイト、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネイト、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレイト、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネイト、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネイト、t−ヘキシルパーオキシベンゾエイト、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテイト、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエイト、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレイトなどが挙げられる。
パーオキシケタール化合物の具体例としては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレイト、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンなどが挙げられる。
ジアルキルパーオキサイド化合物の具体例としては、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などが挙げられる。
多官能性化合物は、分子内に2〜4のラジカル重合性部位を有するものであれば特に制限はなく、例えばジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどが挙げられ、これらの1種以上を使用できる。
有機過酸化物、多官能性化合物の添加量は、ゴム質重合体(c)のゲル含有量を40〜99質量%の範囲に調整しやすく、耐衝撃性、発色性を発現させやすい点から、有機過酸化物はゴム質重合体(c)100質量部に対して0.01〜5質量部、多官能性化合物はゴム質重合体(c)100質量部に対して10質量部以下の範囲で使用することが好ましい。
ゴム質重合体(c)に、単量体(d)をグラフト重合することにより、グラフト重合体(C)が得られる。単量体(d)は、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びメタクリル酸エステル系単量体から選ばれる少なくとも1種を含むものである。
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−もしくはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレンなどが挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。なかでもスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
シアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
メタクリル酸エステル系単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニルなどが挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
単量体(d)は、上記の芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体およびメタクリル酸エステル系単量体の他に、これらと共重合可能な他の単量体を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。
他の単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド類等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。これらのうち、耐熱性等の点から、好ましくはアクリル酸メチルである。
単量体(d)として芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体を用いる場合、単量体(d)100質量%中、芳香族ビニル系単量体を70〜82質量%、シアン化ビニル系単量体を18〜30質量%とすることが好ましい。単量体(d)中の芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体の含有量が上記範囲内であれば、得られる樹脂組成物やその成形品の発色性、耐衝撃性がより向上する。
単量体(d)としてメタクリル酸エステル系単量体を用いる場合には、溶融混練時の分解を抑制できることから、単量体(d)100質量%中に芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、および上記の共重合可能な他の単量体のうちの1種以上を0.1〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%、さらに好ましくは1〜5質量%含むことが好ましい。
グラフト重合体(C)は、ゴム質重合体(c)の存在下に単量体(d)をグラフト重合させることで得られる。グラフト重合時のゴム質重合体(c)の割合は、40〜80質量%であり、単量体(d)の割合は20〜60質量%であることが好ましい(ただし、ゴム質重合体(c)と単量体(d)の合計を100質量%とする。)。一般的に、ゴム質重合体(c)の割合が上記範囲内であれば、グラフト重合体(C)の生産性が良好であるとともに、得られる樹脂組成物やその成形品の発色性、耐衝撃性が向上する。
グラフト重合体(C)は、得られる樹脂組成物やその成形品の発色性、耐衝撃性が良好となることから、グラフト率が23〜100%であることが好ましく、より好ましくは25〜35%である。
本明細書におけるグラフト率(G)は、下記式より求められる。
G=100(P−E)/E
P:アセトン不溶分の質量(グラフト重合体(C)または樹脂組成物をメタノールで洗浄した後、アセトンで抽出し、遠心分離機でアセトン可溶分とアセトン不溶分に分離し、得られたアセトン不溶分を真空乾燥した後の質量(g))
E:グラフト重合体(C)の製造に用いたゴム質重合体(c)の質量(g)
グラフト重合体(C)は、塊状重合法、溶液重合法、塊状懸濁重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法により製造される。粒子径を制御しやすく、容易に重合できる点では、乳化重合法が好ましい。
本発明の樹脂組成物におけるグラフト重合体(C)の配合量は、得られる樹脂組成物やその成形品の発色性、耐衝撃性、耐傷付き性が優れることから、樹脂成分100質量部において4.9〜25質量部であり、好ましくは8〜13質量部である。グラフト重合体(C)が上記下限より少ないと、耐面衝撃性、耐衝撃性、柔らかいもので付く擦り傷に対する耐傷付き性が劣る傾向にあり、上記上限より多いと、成形外観、硬いもので付く引掻き傷に対する耐傷付き性、耐候性が劣る傾向にある。
[他の樹脂]
本発明の樹脂組成物には、上記のイソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)、メタクリル酸エステル樹脂(B)及びグラフト重合体(C)以外のその他の樹脂を含有してもよい。
その他の樹脂としては、AS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ナイロン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ乳酸樹脂等のポリエステルなどが挙げられる。また、これらを2種類以上ブレンドしたものでも良く、さらに、相溶化剤や官能基などにより変性された上記樹脂を配合しても良い。
ただし、本発明の樹脂組成物がこれらのその他の樹脂を含む場合、上記のイソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル酸エステル樹脂(B)とグラフト重合体(C)を含むことによる効果を確実に得るために、その他の樹脂は、樹脂成分(即ち、イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル酸エステル樹脂(B)とグラフト重合体(C)とその他の樹脂の合計)100質量部中20質量部以下であることが好ましい。
[添加剤]
本発明の樹脂組成物には、イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A)、メタクリル酸エステル樹脂(B)及びグラフト重合体(C)の他に、樹脂組成物や成形品の物性を損なわない範囲において、樹脂組成物の製造時(混合時)、成形時に、慣用の他の添加剤、例えば滑材、顔料(カーボンブラック、酸化チタン等)、染料、充填剤(シリカ、マイカ、ワラストナイト、タルク、ガラス繊維、炭素繊維等)、耐熱剤、酸化劣化防止剤、耐候剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤等を配合することができる。
〔樹脂組成物の製造方法〕
本発明の樹脂組成物は、公知の装置を使用した公知の方法で製造することができる。例えば、一般的な方法として溶融混合法があり、この方法で使用する装置としては、押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等が挙げられる。混合には回分式、連続式のいずれを採用してもよい。また、各成分の混合順序などにも特に制限はなく、全ての成分が均一に混合されればよい。
〔成形品〕
本発明の成形品は、上記の本発明の樹脂組成物を成形してなるものである。その成形方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出法、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、カレンダー成形法及びインフレーション成形法等が挙げられる。これらのなかでも、量産性に優れ、高い寸法精度の成形品を得ることができるため、射出成形法、射出圧縮成形法が好ましい。
以下に、製造例、実施例、及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら制限されるものではない。
<メタクリル酸エステル樹脂(B)のガラス転移温度の測定方法>
メタクリル酸エステル樹脂(B)のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により、試料を窒素雰囲気下、10℃/minで、35℃から250℃まで昇温した後、35℃まで冷却し、再度250℃まで昇温した場合に観測されるガラス転移温度を測定した。
<質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)の測定方法>
GPC(GPC:Waters社製「GPC/V2000」、カラム:昭和電工社製「Shodex AT−G+AT−806MS」)を用い、o−ジクロロベンゼン(145℃)を溶媒として、ポリスチレン換算での質量平均分子量(Mw)、数平均分子量分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
[製造例1:イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A1)]
撹拌翼、100℃に制御された還流冷却器、及びジャケット式加熱器を具備した重合反応装置に、イソソルビド(ISB)と1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたジフェニルカーボネート(DPC)及び酢酸カルシウム1水和物を、モル比率でISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.5/0.5/1.00/1.3×10−6になるように仕込み、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005体積%〜0.001体積%)。続いて熱媒で内容物の加温を行った。
内温が100℃になった時点で撹拌を開始し、内温が100℃になるように制御しながら内容物を融解させ均一にした。その後、昇温を開始し、40分で内温を210℃にした。
内温が210℃に到達した時点でこの温度を保持するように制御すると同時に、減圧を開始し、210℃に到達してから90分で13.3kPa(絶対圧力、以下同様)にして、この圧力を保持するようにしながら、さらに60分間保持した。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を、還流冷却器に導いた。還流冷却器で凝縮した成分を重合反応装置に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は続いて45℃の温水を冷媒として用いた凝縮器に導いて回収した。
上記重合反応装置でオリゴマー化させた内容物を、一旦大気圧にまで復圧させた後、撹拌翼及び上記同様に制御された還流冷却器を具備した別の重合反応装置に移し、昇温及び減圧を開始して、60分で内温220℃、圧力200Paにした。その後、20分かけて内温228℃、圧力133Pa以下にして、所定撹拌動力になった時点で復圧し、重合反応装置出口より溶融状態のポリカーボネート共重合体を得た。
更に3つのベント口及び注水設備を供えた二軸押出機に連続的に前記溶融状態のポリカーボネート共重合体を供給し、酸化防止剤及び離型剤を連続的に添加するとともに、二軸押出機に具備された各ベント部にてフェノールなどの低分子量物を減圧脱揮したのち、ペレタイザーによりペレット化を行い、イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A1)を得た。
[製造例2:イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A2)]
製造例1において、ISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物のモル比率を0.7/0.3/1.00/1.3×10−6に変えた以外は、製造例1と同様の条件で反応させてイソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A2)を得た。
[製造例3:イソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A3)]
製造例1において、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を用いず、ISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物のモル比率を1.00/0.0/1.00/1.3×10−6に変えた以外は、製造例1と同様の条件で反応させてイソソルバイド系ポリカーボネート樹脂(A3)を得た。
[製造例4:メタクリル酸エステル樹脂(B1)]
耐圧反応容器に蒸留水150質量部と、メタクリル酸メチル99質量部、アクリル酸メチル1質量部と、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2質量部、n−オクチルメルカプタン0.25質量部、カルシウムハイドロオキシアパタイト0.47質量部、アルケニルコハク酸カリウム0.003質量部を仕込み、内温を75℃まで昇温し、3時間反応を行った。その後、90℃まで昇温し、60分間保持することで反応を完結させた。内容物を遠心脱水機で洗浄、脱水を繰り返し、乾燥させてメタクリル酸エステル樹脂(B1)を得た。得られたメタクリル酸エステル樹脂(B1)のガラス転移温度は105℃であった。分子量は77,000であった。
[製造例5:メタクリル酸エステル樹脂(B2)]
耐圧反応容器に蒸留水150質量部と、N−フェニルマレイミド15質量部、スチレン5質量部、α−メチルスチレン5質量部、メタクリル酸メチル75質量部の混合物と、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2質量部、n−オクチルメルカプタン0.25質量部、ポリビニルアルコール0.7質量部を仕込み、内温を75℃まで昇温し、3時間反応を行った。その後、90℃まで昇温し、60分間保持することで反応を完結させた。内容物を遠心脱水機で洗浄、脱水を繰り返し、乾燥させてメタクリル酸エステル樹脂(B2)を得た。得られたメタクリル酸エステル樹脂(B2)のガラス転移温度は131℃であった。分子量は135,000であった。
[製造例6:メタクリル酸エステル樹脂(B3)]
N−フェニルマレイミド25質量部、スチレン10質量部、α−メチルスチレン10質量部、メタクリル酸メチル55質量部とした以外は、製造例5と同様の条件で反応させてメタクリル酸エステル樹脂(B3)を得た。得られたメタクリル酸エステル樹脂(B3)のガラス転移温度は147℃であった。分子量は130,000であった。
[製造例7:メタクリル酸エステル樹脂(B4)]
メタクリル酸メチル90質量部、アクリル酸メチル10質量部とした以外は、製造例4と同様の条件で反応させてメタクリル酸エステル樹脂(B4)を得た。得られたメタクリル酸エステル樹脂(B4)のガラス転移温度は90℃であった。分子量は70,000であった。
[製造例8:グラフト重合体(C1)]
<エチレン・プロピレン共重合体(c1)の乳化ラテックスの製造>
EPDM(三井化学(株)製「TP3180」)100質量部、低分子量変性ポリエチレン(三井化学(株)製「ハイワックス2203A」)9質量部、更に、オレイン酸カリウム3.1質量部を混合した。次いで、それらの混合物を2軸スクリュー押出機(池貝鉄鋼(株)製「PCM−30型」、L/D=40)のホッパーより6kg/時間で供給し、水酸化カリウム15質量%水溶液を110g/時間で連続的に供給しながら、加熱温度200℃で溶融混練して溶融物を押出した。引き続き、溶融物を同押出機先端に取り付けた冷却用一軸押出機に連続的に供給し、90℃まで冷却した。取り出した固体を80℃の温水中に投入し、連続的に分散させて、体積平均粒子径250nmのゴム質重合体ラテックスを得た。
このラテックスの固形分100質量部に対してt−ブチルクミルパーオキサイドを1.2質量部、ジビニルベンゼンを1.0質量部添加し、135℃で5時間反応させて、エチレン・プロピレン共重合体(c1)のラテックスを調製した。
このエチレン・プロピレン共重合体(c1)のゲル含有量は72質量%であった。なお、ゲル含有量は、共重合体ラテックスを希硫酸にて凝固させ、水洗乾燥した後、これを1g採取して200mlのトルエン中40時間浸漬し、次いで、200メッシュ金網にて濾過し、残渣を乾燥し、その質量を測定して求めた。
<グラフト重合体(C1)の製造>
ゲル含有量72質量%、体積平均粒子径250nmであるエチレン・プロピレン共重合体(c1)の乳化ラテックス70質量部(固形分換算)に、ピロリン酸ナトリウム0.15質量部、硫酸第一鉄七水塩0.006質量部、およびフラクトース0.35質量部を仕込み、内温を80℃に保った。これに、スチレン25.2質量部およびアクリロニトリル4.8質量部からなる単量体混合物と、クメンハイドロパーオキサイド0.6質量部とを、各々別の供給口から140分かけて同時に滴下して重合を行った。この間、内温は80℃で一定に制御した。滴下終了後、さらに100分間、80℃のまま保持した後に冷却してグラフト重合を完結させた。反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト重合体(C1)を得た。グラフト重合体(C1)のグラフト率は29%であった。
[製造例9:グラフト重合体(C2)]
単量体混合物をスチレン24質量部およびアクリルニトリル6質量部とした以外は、製造例8と同様の条件で反応させてグラフト重合体(C2)を得た。グラフト重合体(C2)のグラフト率は30%であった。
[製造例10:グラフト重合体(C3)]
単量体混合物をスチレン21.6質量部およびアクリルニトリル8.4質量部とした以外は、製造例8と同様の条件で反応させてグラフト重合体(C3)を得た。グラフト重合体(C2)のグラフト率は29%であった。
[製造例11:グラフト重合体(C4)]
単量体混合物をスチレン20.4質量部およびアクリルニトリル9.6質量部とした以外は、製造例8と同様の条件で反応させてグラフト重合体(C4)を得た。グラフト重合体(C4)のグラフト率は30%であった。
[製造例12:グラフト重合体(C5)]
ゲル含有量が84質量%、体積平均粒子径170nmあるポリアクリル酸ブチル系ゴム(c2)の乳化ラテックス70質量部(固形分換算)に、不均化ロジン酸カリウム1質量部、水酸化カリウム0.03質量部を加え、60℃に加熱し、ピロリン酸ナトリウム0.1質量部、硫酸第一鉄七水塩0.007質量部、およびフラクトース0.3質量部を仕込み、内温を60℃に保った。これに、スチレン23質量部、およびアクリロニトリル7質量部からなる単量体混合物とクメンハイドロパーオキサイド0.5質量部とを、各々別の供給口から120分かけて同時に滴下して重合を行った。滴下終了後、さらに100分間、70℃のまま保持した後に冷却してグラフト重合を完結させた。反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト重合体(C5)を得た。グラフト重合体(C5)のグラフト率は32%であった。
[製造例13:グラフト重合体(C6)]
ゲル含有量95%、体積平均粒子径320nmであるポリブタジエンゴム(c3)の乳化ラテックス70質量部(固形分換算)に、スチレン23質量部、およびアクリロニトリル7質量部と、不均化ロジン酸カリウム1質量部、水酸化ナトリウム0.01質量部、ピロリン酸ナトリウム0.45質量部、硫酸第一鉄七水塩0.01質量部、デキストローズ0.57質量部、t−ドデシルメルカプタン0.08質量部及びクメンハイドロパーオキサイド1.0質量部とを仕込み、60℃から反応を開始し、途中で75℃まで昇温後、120分間保持し、冷却してグラフト重合を完結させた。反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト重合体(C6)を得た。グラフト重合体(C6)のグラフト率は31%であった。
[製造例14:グラフト重合体(C7)]
単量体混合物をメタクリル酸メチル29質量部およびアクリル酸メチル1質量部とした以外は、製造例8と同様の条件で反応させてグラフト重合体(C7)を得た。グラフト重合体(C7)のグラフト率は30%であった。
[製造例15:グラフト重合体(C8)]
ゴム質重合体として、ゲル含有量74質量%、体積平均粒子径420nmであるエチレン・α−オレフィン共重合体(α−オレフィンは1−ブテン)(c4)を用いた以外は、製造例9と同様の条件で反応させてグラフト重合体(C8)を得た。グラフト重合体(C8)のグラフト率は34%であった。
[製造例16:グラフト重合体(C9)]
ゴム質重合体として、ゲル含有量48質量%、体積平均粒子径250nmであるエチレン・α−オレフィン共重合体(α−オレフィンは1−ブテン)(c5)を用いた以外は、製造例9と同様の条件で反応させてグラフト重合体(C9)を得た。グラフト重合体(C9)のグラフト率は36%であった。
[製造例17:グラフト重合体(C10)]
ゲル含有量72質量%、体積平均粒子径250nmであるエチレン・プロピレン共重合体(c1)の乳化ラテックスを60質量部(固形分換算)用い、単量体混合物としてスチレン33.6質量部およびアクリロニトリル6.4質量部を用いた以外は、製造例8と同様の条件で反応させてグラフト重合体(C10)を得た。グラフト重合体(C10)のグラフト率は41%であった。
[参考例1〜12、実施例1〜20、比較例1〜6]
表1〜4に示す配合で各成分を混合し、28mm二軸押出機(日本製鋼所製「TEX−28V」)を用いて260℃で溶融混練し、ペレット状の樹脂組成物を得た。
<射出成形1>
溶融混練して得られた樹脂組成物のペレットを射出成型機(東芝機械社製、「IS55FP−1.5A」)によりシリンダー温度200〜270℃、金型温度60℃の条件で、縦80mm、横10mm、厚さ4mmの成形品を成形し、耐衝撃性評価用成形品、耐熱性評価(荷重たわみ温度測定)用成形品(成形品(1))として用いた。
<射出成形2>
溶融混練して得られた樹脂組成物のペレットを射出成型機(東芝機械社製、「IS55FP−1.5A」)によりシリンダー温度200〜270℃、金型温度80℃の条件で、縦100mm、横100mm、厚さ3mmの成形品を成形し、耐面衝撃性評価用成形品、耐傷付き性評価(鉛筆硬度測定、耐ガーゼ摩耗性測定)用成形品、透明性評価用成形品(成形品(2))として用いた。
<射出成形3>
溶融混練時にカーボンブラック0.8質量部を添加した以外は、射出成形2と同様の条件で成形し、耐傷付き性評価(耐ガーゼ摩耗性測定)用成形品、発色性評価用成形品、耐候性評価用成形品(成形品(3))として用いた。
<耐面衝撃性>
成形品(2)を用いて落球衝撃強度を測定した。成形品の中心部に所定の高さより230gの剛球を落下させ、割れや亀裂発生の有無を確認した。10枚について試験を行った後、高さを10cm変更して同様の試験を行い、5枚以上の成形品が破壊した高さを求めた。150cm以上のものは150と表記する。100cm以上を合格とした。
<耐衝撃性>
成形品(1)について、ISO 179規格にしたがい、23℃の条件でシャルピー衝撃試験(ノッチ付)を行い、シャルピー衝撃強度を測定した。
<鉛筆硬度>
JIS K5600に準拠し、750gの荷重において、成形品(2)の鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度が硬いほど、耐傷付き性に優れる。HB以上を合格とした。
<耐ガーゼ摩耗性>
図1に示すように、先端部1が半球形に形成された棒状の治具2を用意し、先端部1に、ガーゼを8枚重ねた積層シートSを被せた。成形品(3)Mの表面に対して、棒状の治具2が直角になるように、積層シートSが被せられた先端部1を接触させ、先端部1を成形品(3)の表面において水平方向(図中矢印方向)に摺動させ、100回往復させた。その際、加える荷重は1kgとした。100回往復させた後、傷を付けた成形品(4)の表面における擦り傷を目視で観測し、以下の4段階で評価した。
ガーゼ摩耗が良好なほど、軍手、ガーゼや布などで成形品の表面を拭いた場合や、衣類などが擦れた場合に傷が付きにくく、耐擦り傷性が良好となる。○以上を合格とした。
◎:ほとんど傷が付かない
○:目立たない傷が付く
△:目立つ傷が付く
×:手で触ってわかるほど削れた傷が付く
<耐熱性>
成形品(1)について、ISO試験法75に準拠し、1.83MPa、4mm、フラットワイズ法で荷重たわみ温度(℃)を測定した。
<透明性>
成形品(2)について、JIS K 7361に準じ、全光線透過率を測定した。
<発色性>
成形品(3)について、分光測色計(コニカミノルタオプティプス社製「CM−3500d」)を用いて明度Lを、SCE方式にて測定した。こうして測定されたLを「L(ma)」とする。Lが低いほど黒色となり、発色性が良好と判定した。
「明度(L)」とは、JIS Z 8729において採用されているL表色系における色彩値のうちの明度の値(L)を意味する。
「SCE方式」とは、JIS Z 8722に準拠した分光測色計を用い、光トラップによって正反射光を除去して色を測る方法を意味する。
<耐候性>
成形品(3)について、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機(株)製)を用い、ブラックパネル温度63℃、サイクル条件60分(降雨12分)の条件で1500時間処理した。処理前後の成形品(3)の表面の60°光沢度をデジタル変角光沢計(スガ試験機(株)製)により測定し、処理前の60°光沢度に対する処理後の60°光沢度の割合(百分率)を処理後の光沢保持率として算出した。70%以上を合格とした。
[結果]
これらの評価結果を表1〜4に示す。
Figure 2017145318
Figure 2017145318
Figure 2017145318
Figure 2017145318
[考察]
表1の参考例1〜12では、イソソルバイト系ポリカーボネート樹脂(A)とメタクリル酸エステル樹脂(B)から成る熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品の評価を実施したものであり、特に、耐衝撃性、耐ガーゼ摩耗性が低く、本発明の目的とする効果が得られないことが確認された。
表2,3の実施例1〜20に示すように、本発明の熱可塑性樹脂組成物より得られた成形品は、耐面衝撃性、耐衝撃性、耐傷付き性、耐熱性、発色性に優れる上に、耐候性にも優れ、これらの特性をすべてバランスよく兼ね備えていた。
比較例1〜4、6はイソソルバイト系ポリカーボネート樹脂(A)、メタクリル酸エステル樹脂(B)、グラフト重合体(C)のいずれかの配合量が本発明の範囲より少ない、または多いことから、所望の特性を満たさなかった。比較例5はメタクリル酸エステル樹脂(B)のガラス転移温度が本発明の範囲より低いことから、耐熱性に劣るものであった。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品は、耐面衝撃性、耐傷付き性、耐熱性、透明性に優れ、耐候性にも優れることから、車輌内外装部品用、電気・電子機器用、住宅用等の材料として有用である。
1 先端部
2 治具
S 積層シート
M 成形品

Claims (8)

  1. 樹脂成分100質量部中に、イソソルバイド類に由来する構造を含むポリカーボネート樹脂(A)45〜75質量部と、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体混合物(b)を重合して得られたメタクリル酸エステル樹脂(B)20〜50質量部と、ゴム質重合体(c)に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びメタクリル酸エステル系単量体から選ばれる少なくとも1種を含む単量体(d)をグラフト重合したグラフト重合体(C)4.9〜25質量部とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、該メタクリル酸エステル樹脂(B)のガラス転移温度が100℃〜150℃であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. イソソルバイド類に由来する構造を含むポリカーボネート樹脂(A)は、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物及びシクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位を含み、イソソルバイド類に由来する構造を含むポリカーボネート樹脂(A)に含まれる全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位中、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を95〜30モル%、シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位を5〜70モル%含むことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 2017145318
  3. ビニル系単量体混合物(b)が、メタクリル酸エステルと、メタクリル酸エステルと共重合可能なその他のビニル系単量体を含み、ビニル系単量体混合物(b)中のメタクリル酸エステルの含有量が50〜99.5質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 単量体(d)が芳香族ビニル系単量体70〜82質量%とシアン化ビニル系単量体18〜30質量%とを含む請求項1ないし3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. ゴム質重合体(c)が、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、及びエチレン・α−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種である請求項1ないし4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. ゴム質重合体(c)の体積平均粒子径が80〜500nmであり、ゴム質重合体(c)のゲル含有量が40〜99質量%であり、グラフト重合体(C)のグラフト率が23〜100%であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. グラフト重合体(C)は、ゴム質重合体(c)40〜80質量%と、単量体(d)20〜60質量%とをグラフト重合してなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. 請求項1ないし7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品。
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