JP2017142215A - ぜんまい、香箱車、ムーブメント、時計及びぜんまいの製造方法 - Google Patents

ぜんまい、香箱車、ムーブメント、時計及びぜんまいの製造方法 Download PDF

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祥太郎 神山
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Abstract

【課題】ぜんまい、香箱車、ムーブメント、時計及びぜんまいの製造方法を提供する。
【解決手段】ぜんまい50は、弾性を有する細長い板状体からなるぜんまい本体51を備える。ぜんまい本体51は、香箱車に収納される前の状態で、一端側に形成された第1巻部52と、他端側に形成された第2巻部53と、第1巻部52と第2巻部53とを接続する接続部54と、を備える。ぜんまい本体51は、ぜんまい本体主材と、本体主材接続部54Aにおけるぜんまい本体51が香箱車内で巻かれた状態の外側面に接合された保護箔54Bと、を備える。
【選択図】図4

Description

本発明は、ぜんまい、香箱車、ムーブメント、時計及びぜんまいの製造方法に関する。
例えば、動力ぜんまいを用いた時計は、香箱車に収納されたぜんまいを備えている。ぜんまいは、香箱車内で巻き上げられており、巻き上げられたぜんまいが巻きほぐされることによって香箱車が回転する。香箱車に収容されるぜんまいは、弾性を有し、渦巻状に巻かれて香箱車に収納される板状体からなる。また、香箱車に収容される前の状態では、略S字形状とされており、一端部に形成された第1巻部と、他端に形成された第2巻部と、第1巻部と前記第2巻部とを接続する接続部と、を有している。このうち、ぜんまいは、第1巻部が香箱真に取り付けられ、第2巻部に近い側の接続部が癖付けされた湾曲方向とは逆方向にそらされて香箱車に収納される。
香箱車に収容されたぜんまいを長期間使用していると、繰返し応力を受けることによる疲労、ぜんまいが金属製であれば金属疲労等により、ぜんまいが破断することがある。このようなぜんまいが破断するまでの耐用年数を極力長くするため、従来、耐久性、耐食性に優れたぜんまいが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平9−13136号公報
しかし、上記特許文献1に開示されたぜんまいでは、ぜんまいが破断するまでの耐用年数を極力長くするにあたり、ぜんまいを構成する材料についての工夫がなされているものの、ぜんまいが破断する態様は考慮されていなかった。このため、ぜんまいが破断するまでの耐用年数の長期化を図る余地があった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ぜんまいが破断するまでの耐用年数の長期化を図ることができるぜんまい、香箱車、ムーブメント、時計及びぜんまいの製造方法を提供することである。
本発明に係るぜんまいは、弾性を有し、渦巻状に巻かれて香箱車に収納される板状体からなるぜんまい本体を備え、前記ぜんまい本体は、前記香箱車に収納される前の状態で、一端側に形成された第1巻部と、他端側に形成された第2巻部と、前記第1巻部と前記第2巻部とを接続する接続部と、を有しており、前記ぜんまい本体は、ぜんまい本体主材と、前記ぜんまい本体主材の接続部における前記ぜんまい本体が前記香箱車内で巻かれた状態の外側に配置される面に接合された保護箔と、を備えて構成されていることを特徴とする。
本発明に係るぜんまいにおいて、ぜんまい本体主材の接続部におけるぜんまい本体が香箱車内で巻かれた状態の外側に配置される面は、引張応力が大きくかかる部分であり、ぜんまい本体のうちで最も破断しやすい部分である。この接続部におけるぜんまい本体が香箱車内で巻かれた状態の外側に配置される面に保護箔が設けられていることにより、ぜんまいが最も破断しやすい部分における応力振幅を小さくすることができ、破断の抑制に寄与することができる。したがって、ぜんまいが破断するまでの耐用年数の長期化を図ることができる。
上記ぜんまいにおいて、前記保護箔は、前記ぜんまい本体主材に用いられる材料に圧縮応力を付与した圧縮応力付与材料で構成されていてもよい。
保護箔は、ぜんまい本体主材に用いられる材料に圧縮応力を付与した圧縮応力付与材料で構成されていることにより、ぜんまい本体の応力振幅を小さくすることができる。このため、ぜんまいが破断するまでの耐用年数の長期化を図ることができる。
本発明に係る香箱車は、上記のぜんまいが収納されていることを特徴とする。また、発明に係るムーブメントは、上記の香箱車を備えることを特徴とする。また、本発明に係る時計は、上記のムーブメントを備えることを特徴とする。
本発明に係る香箱車、ムーブメント、時計によれば、ぜんまいが破断するまでの耐用年数の長期化を図ることができる。
本発明に係るぜんまいの製造方法は、前記ぜんまい本体主材に対して前記保護箔を拡散接合させて前記ぜんまい本体を成形することを特徴とする。
上記のぜんまいの製造方法において、複数の前記ぜんまい本体主材を拡散接合させて前記ぜんまい本体を成形している。このため、ぜんまい本体主材に対して保護箔を容易に接合することができる。したがって、ぜんまいが破断するまでの耐用年数の長期化を図ったぜんまいを提供することができる。
上記のぜんまいの製造方法において、前記ぜんまい本体主材の接続部における前記ぜんまい本体が前記香箱車内で巻かれた状態での湾曲方向に反する方向に湾曲しているようにしてもよい。
保護箔は、ぜんまい本体主材の接続部におけるぜんまい本体が香箱車内で巻かれた状態での湾曲方向に反する方向に湾曲していることにより、ぜんまいが破断するまでの耐用年数の長期化を図ることができる。
本発明に係るぜんまい、香箱車、ムーブメント、時計及びぜんまいの製造方法によれば、ぜんまいが破断するまでの耐用年数の長期化を図ることができる。
本発明の実施形態におけるムーブメント表側の平面図である。 ぜんまいの全体図である。 (A)は、ぜんまいが巻きほどかれた香箱車内の平面図、(B)は、ぜんまいが巻き付けられた香箱車内の平面図である。 ぜんまいの要部を拡大して説明する説明図である。 ぜんまいにおける応力振幅と、破断回数のlog値との関係を示すグラフである。 第2の実施形態におけるぜんまいの要部を拡大して説明する説明図である。 第3の実施形態及び比較例に係るぜんまいのS/N曲線を示す図である。 第4の実施形態及び比較例に係るぜんまいのS/N曲線を示す図である。
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
<第1の実施形態>
まず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態を説明するにあたり、はじめに、機械式時計1について説明する。図1は、本発明の実施形態におけるムーブメント表側の平面図である。なお、以下の説明では、発明を理解し易くするために、適宜構成部品の一部を省略したり、形状を単純化したり、縮尺を変更したりする等、図示を簡略化している。
図1に示すように、本実施形態の機械式時計1は、ムーブメント10と、このムーブメント10を収納する図示しないケーシングと、により構成されている。ムーブメント10は、基板を構成する地板11を有している。この地板11の裏側には図示しない文字板が配されている。なお、ムーブメント10の表側に組み込まれる輪列を表輪列と称し、ムーブメント10の裏側に組み込まれる輪列を裏輪列と称する。地板11には、巻真案内穴11aが形成されており、ここに巻真12が回転自在に組み込まれている。この巻真12は、おしどり13、かんぬき14、かんぬきばね15及び裏押さえ16を有する切換装置により、軸方向の位置が決められている。また、巻真12の案内軸部には、きち車17が回転自在に設けられている。
このような構成のもと、巻真12が、回転軸方向に沿ってムーブメント10の内側に一番近い方の第1の巻真位置(0段目)にある状態で巻真12を回転させると、図示しないつづみ車の回転を介してきち車17が回転する。そして、このきち車17が回転することにより、これと噛合う丸穴車20が回転する。そして、この丸穴車20が回転することにより、これと噛合う角穴車21が回転する。さらに、この角穴車21が回転することにより、香箱車22に収納された図示しないぜんまい(動力源)を巻き上げる。
ムーブメント10の表輪列は、上述した香箱車22の他に、二番車25、三番車26及び四番車27により構成されており、香箱車22の回転力を伝達する機能を果している。また、ムーブメント10の表側には、表輪列の回転を制御するための脱進機構30及び調速機構31が配置されている。
二番車25は、香箱車22に噛合う歯車とされている。三番車26は、二番車25に噛合う歯車とされている。四番車27は、三番車26に噛合う歯車とされている。脱進機構30は、上述した表輪列の回転を制御する機構であって、四番車27と噛み合うがんぎ車35と、このがんぎ車35を脱進させて規則正しく回転させるアンクル36と、を備えている。調速機構31は、上述した脱進機構30を調速する機構であって、てんぷ40を具備している。
図2は、ぜんまいの全体図、図3(A)は、ぜんまいが巻きほどかれた香箱車内の平面図、(B)は、ぜんまいが巻き付けられた香箱車内の平面図である。ぜんまい50は、香箱車22に収容される前は、図2に示すように、略S字形状をなしている。ぜんまい50はいわゆる動力ぜんまいであり、ぜんまい本体51を備えている。ぜんまい本体51は、弾性を有する細長い板状体が塑性変形によって癖付けをされて構成されている。また、ぜんまい本体51は、ぜんまい本体主材と、ぜんまい本体主材に接合された後に説明する保護箔54Bによって構成されている。ぜんまい本体主材は、例えばCo−Ni合金などによって構成されている。
ぜんまい50におけるぜんまい本体51の一端側には第1巻部52が形成され、他端側には第2巻部53が形成されている。第1巻部52と第2巻部53との間には、接続部54が設けられており、第1巻部52と第2巻部53とは接続部54によって接続されている。これらの第1巻部52、接続部54、及び第2巻部53は、1本の板状の部材からなるぜんまい本体を湾曲させ、塑性変形に近い変形による癖付けを行うことで形成されている。さらに、第2巻部53の先端には、外掛け55が溶接されて取り付けられている。外掛け55は、例えばぜんまい本体主材と同様にCo−Ni合金などによって構成されている。
第1巻部52及び第2巻部53はいずれも反時計回り方向に巻かれている。第1巻部52と第2巻部53とを接続する接続部54はわずかに湾曲するが、ほぼ直線に近い形状を成している。接続部54における湾曲方向は、第1巻部52側では左が凸となり、第2巻部53側では、右が凸となる。
また、ぜんまい本体51は、図3(A)(B)に示すように、香箱車22に収納されている。香箱車22は、香箱真22A及び香箱ケース22Bを備えている。ぜんまい本体51は、香箱ケース22Bに収納され、香箱真22Aに対して反時計回り方向に渦巻状に巻き付けられている。
香箱ケース22Bは、円盤状の底面部及び底面部の側縁に沿って立設された円周部を備えている。ぜんまい50は、香箱ケース22Bの底面部に接触し、円周部に囲まれて香箱ケース22Bに収納されている。香箱ケース22Bの底面部における円周部を超えた反対側の面は、開口面とされている。この開口面には、香箱ふたが設けられていてもよいし、蓋部などが設けられることなく開口面は開放されたままとされていてもよい。香箱ふたが設けられている場合には、図1に示す角穴車21が香箱ふたの上に取り付けられる。また、香箱ふたが取り付けられず開口面が開放されたままの場合には、開口面の中央部分を覆うようにして、角穴車21が取り付けられている。
ぜんまい本体51が香箱車22に収納される際には、第1巻部52の端部から接続部54の中点までの間では、香箱車22に対するぜんまい本体51の巻き付け方向は第1巻部52の巻き付け方向のままとされている。また、接続部54の中点から第2巻部53の端部までの間では、香箱車22に対するぜんまい本体51の巻き付け方向は第1巻部52の巻き付け方向と逆方向とされている。したがって、接続部54の中点から第2巻部53までの間では、香箱車22に収納される前に癖付けされた巻き付け方向(湾曲方向)と異なる方向で香箱車22に巻き付けられて収納される。外掛け55は、香箱ケース22Bの内側に形成された係合部に係合している。
香箱車22に収納されたぜんまい50は、図3(A)に示すように、巻きほどかれた状態となっており、図1に示す巻真12に取り付けられた図示しない竜頭を巻くと、香箱真22Aにぜんまい50が巻き付けられる。そして、図3(B)に示すように、ぜんまい50が香箱真22Aに最も巻き付けられた状態となる。ぜんまい50が香箱真22Aに巻き付けられた状態となると、香箱真22Aに巻き付けられたぜんまい50の外側には、ぜんまい50を巻きほどく力が働き、ぜんまい50を巻きほどく力によって香箱ケース22Bを回転させる。
ぜんまい50が香箱真22Aに巻き付けられたとき、ぜんまい50の内側は外側よりも強く曲げられるため、ぜんまい50の内側には大きなエネルギーが蓄えられ、ほどけるときに早くほどけようとする。このとき、ぜんまい50の外側との間で摩擦を生じ、ぜんまいとして十分な性能を発揮できないことがある。
そこで、ぜんまい本体51における香箱ケース22Bの外側で巻き付けられる第2巻部53側を、第1巻部52と反対側に癖付けしている。こうして、ぜんまい本体51が香箱真22Aに巻き付けられたときに、ぜんまい50の全長にかかる応力が均等になるようにしている。
さらに、図4に示すように、ぜんまい本体主材の接続部54に相当する本体主材接続部54Aにおけるぜんまい本体51が香箱車22内で巻かれた状態の外側に配置される面(以下「外側面」という)には、保護箔54Bが接合されている。なお、図4では、接続部54の厚さを誇張して描いているが、ぜんまい本体51における接続部54と他の部分との間の肉厚はほぼ共通である。保護箔54Bは、予め圧縮応力が付与された圧縮応力付与材料となる金属箔を用いることができる。具体的には、ステンレス鋼や炭素鋼などに予め圧縮応力を付与した金属箔を用いてもよい。
接続部54は、保護箔54Bが本体主材接続部54Aの外側面に対して拡散接合によって接合されて成形されている。本体主材接続部54Aに保護箔54Bが拡散接合によって接合されていることで、保護箔54Bを本体主材接続部54Aに対して強固に接合することができる。また、ぜんまい本体51における接続部54と、他の部分の肉厚がほぼ同じ厚さとすることができる。
次に、本実施形態に係るぜんまい50を備える機械式時計1の作用効果について説明する。本実施形態に係る機械式時計1においては、香箱車22内におけるぜんまい50を巻き付け、ぜんまい50が巻きほどかれる際に香箱車22を回転させる。そして、ぜんまい50が巻きほどかれると、再びぜんまい50を巻き付ける。この作業を繰り返すことで機械式時計1が作動される。
ぜんまい50の巻き付け及び巻きほどきを繰り返すと、ぜんまい50が徐々に金属疲労を起こし、ついにはぜんまい50の破断に至る。ぜんまい50の破断は、ぜんまい50に最も引張応力がかかる位置か、その近傍で生じることが多い。ぜんまい50に最も引張応力がかかる位置は、接続部54の外側面である。
このため、ぜんまい本体51における接続部54がぜんまい本体51の他の部分と同じ強度である場合には、ぜんまい50は、接続部54から破断することとなる。ぜんまい50の破断は、ぜんまい50におけるどの位置で生じたとしてもぜんまい50としては利用できなくなるので、ぜんまい50は、全体として、破断しやすい位置が生じないようにすることが好適となる。
また、ぜんまい50が破断する指標の一つとして、応力振幅を挙げることができる。図5は、ぜんまいにおける応力振幅と、破断回数のlog値との関係を示すグラフである。破断回数とは、ぜんまいが破断に至るまでにぜんまいが巻き付けられる回数である。図5に示すように、応力振幅が大きいぜんまいでは、破断回数がN1回で破断に至るところ、応力振幅が小さいぜんまいでは、破断回数がN2回で破断に至る。ここで、破断回数N1<N2であることから、応力振幅が小さいぜんまいの方が、応力振幅が大きいぜんまいよりも破断回数が多くなり、ぜんまいが破断するまでの耐用年数が長期化することとなる。
本実施形態に係るぜんまい50では、ぜんまい本体51における引張応力が最も大きくかかる部分である接続部54において、本体主材接続部54Aの外側面に対して保護箔54Bを接合している。このため、接続部54の外側面に圧縮応力が付与され、接続部54における応力振幅を小さくすることができるので、破断回数を多くすることができる。よって、ぜんまい50が破断するまでの耐用年数の長期化を図ることができる。
また、保護箔54Bは、圧縮応力が付与された金属箔であり、ぜんまい本体51におけるぜんまい本体主材よりもじん性が低くされている。このため、ぜんまい本体51が固くなることによる弾力性の低下を抑制しながら、振幅応力を小さくすることができ、ぜんまいが破断するまでの耐用年数が長期化を図ることができる。
次に、ぜんまい50の製造方法について説明する。ぜんまい50におけるぜんまい本体51のぜんまい本体主材は、箔状のぜんまい本体基材を複数積層して形成されている。複数のぜんまい本体基材を積層するにあたり、本実施形態では拡散接合を行っている。拡散接合によるぜんまい本体51の製造は、例えば3Dプリンタを用いて行うことができる。
ぜんまい本体主材を製造する際には、複数枚のぜんまい本体基材を用意する。複数のぜんまい本体基材を配置したら、複数のぜんまい本体基材を拡散接合する。複数のぜんまい本体基材の拡散接合は、次の手順で行われる。まず、複数のぜんまい本体基材を一定圧力で固定材に押し付けておく。その一方で、超音波発振器からの電気エネルギーを超音波振動子で振動エネルギーに変換し、ホーンによって所定の振幅に拡大する。
ホーンによって拡大された振動は、固定材に押し付けられた複数のぜんまい本体基材に対して、ホーンチップ部で印加される。振動が印加された複数のぜんまい本体基材では、金属間で摩擦熱が発生し、ぜんまい本体基材の表面における酸化物や有機被膜などが振動エネルギーによって破壊され、飛散し、ぜんまい本体基材は、表面が清浄な金属面となった部材となる。この振動を継続して複数のぜんまい本体基材に付与することにより、ぜんまい本体基材同士が接合され、1つのぜんまい本体主材となって生成される。
拡散接合は、融点よりもかなり低温での固相接合が行われる接合であり、接合対象となる相互金属に熱の発生による組織変化が生じにくくなるので、相互金属を強固に接合することができる。したがって、ぜんまい本体基材を拡散接合してぜんまい本体主材とすることにより、複数のぜんまい本体基材を強固に接合させた状態でぜんまい本体主材を製造することができる。なお、固相接合とは、原子拡散を誘起させることによる相互金属の原子結合による接合である。
また、拡散接合では、異種材料の接合が可能である。本実施形態では、1種類の材料、具体的には、Co−Ni合金等のみを用いてぜんまい本体主材を形成しているが、複数の材料を用いてぜんまい本体主材を形成することもできる。また、ぜんまい本体主材を構成する材料としては、金属以外の材料、例えば樹脂などを用いることもできる。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態は、上記第1の実施形態で説明したぜんまい50の接続部54において、本体主材接続部54Aに接合される保護箔54Bが主に異なる。以下、上記第1の実施形態との相違点を中心として、本実施形態について説明する。なお、以下の第3の実施形態以降の実施形態においても、上記第1の実施形態と比較して、ぜんまい50の接続部の構成が異なっており、上記第1の実施形態との相違点を中心として、各実施形態を説明する。
図6は、第2の実施形態におけるぜんまいの要部を拡大して説明する説明図である。図6に示すように、第2の実施形態に係るぜんまい60は、略S字形状をなしており、ぜんまい本体61、第1巻部62、第2巻部63、接続部64、及び外掛け65を備えている。また、接続部64において、本体主材接続部64Aの外側面には、保護箔64Bが接合されている。なお、図6では、接続部64の厚さを誇張して描いているが、ぜんまい本体61における接続部64と他の部分との間の肉厚はほぼ共通である。
保護箔64Bとしては、例えばCo−Ni合金などのぜんまい本体主材と共通の金属を用いることができる。保護箔64Bは、他の材料、例えばステンレス鋼や炭素鋼などを用いてもよい。また、保護箔64Bは、上記第1の実施形態と同様、拡散接合によってぜんまい本体基材に接合されている。
ぜんまい本体主材に接合される前の保護箔64Bは、図6に示すように、湾曲した形状をなしている。保護箔64Bが湾曲する方向は、接続部64におけるぜんまい本体61が香箱車22内で巻かれた状態での湾曲方向に反する方向とされている。保護箔64Bは、予め湾曲した形状とされていることにより、湾曲した部分の内側に圧縮応力が生じている。
本実施形態に係るぜんまい60を備える機械式時計では、ぜんまい60の巻き付け、巻きほどきの繰り返しにより、ぜんまい60における接続部64の外側面に大きな応力がかかり、ぜんまい60の破断の原因となりえる。ここで、接続部64は、本体主材接続部64Aに保護箔64Bが接合されて形成されていることにより、応力振幅が小さくされている。このため、ぜんまい60の破断回数を多くすることができ、ぜんまい60が破断するまでの耐用年数の長期化を図ることができる。
また、接続部64において本体主材接続部64Aに接合される保護箔64Bは、ぜんまい本体61が香箱車22内で巻かれた状態での湾曲方向に反する方向に湾曲している。このため、保護箔64Bが本体主材接続部64Aに接合された接続部64を含むぜんまい本体61を香箱車22における香箱真22Aに巻き付けた際、ぜんまい60の接続部64の外側面には、圧縮応力が付与された状態となっている。したがって、接続部64における外側面に圧縮応力を容易に付与することができる。
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態に係るぜんまいでは、図2に示す第1の実施形態に係る保護箔54Bに代えて、ぜんまい本体主材の破断ひずみ量よりも大きいひずみ量を持つ材料で構成された保護箔を用いている。本実施形態における保護箔は、金属製の金属箔でもよいし、樹脂性の保護箔でもよい。
保護箔として用いることができる金属としては、具体的に、ステンレス鋼、銅合金、アルミニウム合金(ジュラルミン)等を挙げることができる。また、保護箔として用いることができる樹脂としては、ゴム樹脂、テフロン(登録商標)などのフッ素樹脂などを挙げることができる。
本実施形態に係るぜんまいを備える機械式時計において、本体主材接続部に保護箔が接合されて接続部が形成されていることにより、応力振幅が小さくされている。このため、ぜんまいの破断回数を多くすることができ、ぜんまいが破断するまでの耐用年数の長期化を図ることができる。
また、接続部において本体主材接続部に接合される保護箔は、ぜんまい本体主材の破断ひずみ量よりも破断ひずみ量が大きい保護箔とされている。このため、本発明例に係るぜんまいでは、ぜんまいが破断するまでの耐用年数の長期化を図ることができる。この点について、図7を参照して説明する。
図7は、ぜんまいのS/N曲線を示す図である。図7においては、比較例に係るぜんまいのS/N曲線を実線で示し、本実施例に係るぜんまいのS/N曲線を一点鎖線で示している。比較例に係るぜんまいは、接続部に保護箔が設けられていないぜんまいであり、本実施例に係るぜんまいは、接続部に保護箔が設けられたぜんまいである。
図7において、ぜんまいが香箱車22内で完全にほどかれたときのひずみ量を第1ひずみ量ε1とし、ぜんまいが香箱車22内でいっぱいに巻かれたときのひずみ量を第2ひずみ量ε2とする。比較例及び本実施例に係るぜんまいにおいて、応力振幅は、第2ひずみ量ε2に対応する応力と、第1ひずみ量ε1に対応する応力との差で表される。
比較例に係るぜんまいでは、第2ひずみ量ε2に対応する応力は第4応力量σ4であり、第1ひずみ量ε1に対応する応力は第2応力量σ2である。このため、応力振幅は(σ4−σ2)で表される。一方、本発明例に係るぜんまいでは、第2ひずみ量ε2に対応する応力は第3応力量σ3であり、第1ひずみ量ε1に対応する応力は第1応力量σ1である。このため、応力振幅は(σ3−σ1)で表される。ここで、比較例に係るぜんまいの応力振幅(σ4−σ2)は、本発明例に係るぜんまいの応力振幅(σ3−σ1)よりも大きくなっている。この結果から、本発明例に係るぜんまいでは、比較例に係るぜんまいよりも応力振幅が小さくなっていることがわかる。
また、破断点を比較すると、比較例に係るぜんまいの破断点ε3は、本発明例に係るぜんまいの破断点ε4よりも小さくなっている。この結果から、本発明例に係るぜんまいは、比較例に係るぜんまいよりも破断点が大きいことがわかる。したがって、本発明例に係るぜんまいでは、ぜんまいが破断するまでの耐用年数の長期化を図ることができる。
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について説明する。第3の実施形態に係るぜんまいでは、図4に示す第1の実施形態に係る保護箔54Bに代えて、ぜんまい本体主材よりも加工率が低い材料で構成された保護箔を用いている。本実施形態における保護箔としては、ぜんまい本体主材で用いた材料が用いられる。加工率とは、材料を加工する際の加工の進み度合いをいい、例えば冷間加工のように、変形が進むほど硬化が進む加工硬化の程度をいう。
また、接続部において本体主材接続部に接合される保護箔は、ぜんまい本体主材よりも加工率が低い保護箔とされている。このため、本発明例に係るぜんまいでは、ぜんまいが破断するまでの耐用年数の長期化を図ることができる。この点について、図8を参照して説明する。
図8は、ぜんまいのS/N曲線を示す図である。図8においては、比較例に係るぜんまいのS/N曲線を実線で示し、本実施例に係るぜんまいのS/N曲線を一点鎖線で示している。比較例に係るぜんまいは、接続部に保護箔が設けられていないぜんまいであり、本実施例に係るぜんまいは、接続部に保護箔が設けられたぜんまいである。
図8において、ぜんまいが香箱車22内で完全にほどかれたときのひずみ量を第1ひずみ量ε11とし、ぜんまいが香箱車22内でいっぱいに巻かれたときのひずみ量を第2ひずみ量ε12とする。比較例及び本実施例に係るぜんまいにおいて、応力振幅は、第2ひずみ量ε12に対応する応力と、第1ひずみ量ε11に対応する応力との差で表される。
比較例に係るぜんまいでは、第2ひずみ量ε12に対応する応力は第3応力量σ13であり、第1ひずみ量ε11に対応する応力は第1応力量σ11である。このため、応力振幅は(σ13−σ11)で表される。一方、本発明例に係るぜんまいでは、第2ひずみ量ε12に対応する応力は第2応力量σ12であり、第1ひずみ量ε11に対応する応力は第1応力量σ11である。このため、応力振幅は(σ12−σ11)で表される。ここで、比較例に係るぜんまいの応力振幅(σ13−σ11)は、本発明例に係るぜんまいの応力振幅(σ12−σ11)よりも大きくなっている。この結果から、本発明例に係るぜんまいでは、比較例に係るぜんまいよりも応力振幅が小さくなっていることがわかる。したがって、本発明例に係るぜんまいでは、ぜんまいが破断するまでの耐用年数の長期化を図ることができる。
1…機械式時計(時計)
10…ムーブメント
22…香箱車
50,60…ぜんまい
51,61…ぜんまい本体
52,62…第1巻部
53,63…第2巻部
54,64…接続部
54A,64A…本体主材接続部
54B,64B…保護箔
55,65…外掛け

Claims (7)

  1. 弾性を有し、渦巻状に巻かれて香箱車に収納される板状体からなるぜんまい本体を備え、
    前記ぜんまい本体は、前記香箱車に収納される前の状態で、一端側に形成された第1巻部と、他端側に形成された第2巻部と、前記第1巻部と前記第2巻部とを接続する接続部と、を有しており、
    前記ぜんまい本体は、
    ぜんまい本体主材と、
    前記ぜんまい本体主材の接続部における前記ぜんまい本体が前記香箱車内で巻かれた状態の外側に配置される面に接合された保護箔と、
    を備えて構成されていることを特徴とするぜんまい。
  2. 前記保護箔は、前記ぜんまい本体主材に用いられる材料に圧縮応力を付与した圧縮応力付与材料で構成されている請求項1に記載のぜんまい。
  3. 請求項1または2に記載のぜんまいが収納されていることを特徴とする香箱車。
  4. 請求項3に記載の香箱車を備えることを特徴とするムーブメント。
  5. 請求項4に記載のムーブメントを備えることを特徴とする時計。
  6. 請求項1または2に記載のぜんまいを製造する方法であって、
    前記ぜんまい本体主材に対して前記保護箔を拡散接合させて前記ぜんまい本体を成形することを特徴とするぜんまいの製造方法。
  7. 前記保護箔は、前記ぜんまい本体主材の接続部における前記ぜんまい本体が前記香箱車内で巻かれた状態での湾曲方向に反する方向に湾曲している請求項6に記載のぜんまいの製造方法。
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