JP2017109485A - インクセット、記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数のインクを重ね打ちして得られる画像であって、滲み及びひび割れが抑制された画像を形成することのできるインクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係るインクジェット記録方法は、記録媒体に、水と、水溶性有機溶剤と、色材を少なくとも含む固形分と、を含む第1インク組成物を、インクジェット法で吐出して第1インク層を形成する工程と、第1インク層における第1インク組成物に含有していた水の80質量%以上を蒸発させる第1乾燥工程と、第1乾燥工程を経た第1インク層の上に、水と、水溶性有機溶剤と、色材を少なくとも含む固形分と、を含む第2インク組成物をインクジェット法で吐出して第2インク層を形成する工程と、第2インク層を形成する工程の後に、記録媒体上の揮発成分を蒸発させる第2乾燥工程と、を備え、第1インク組成物の「水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量」を「r1」とし、第2インク組成物の「水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量」を「r2」とした場合、「r2/r1」の値が2以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法は、微細なノズルからインクの小滴を吐出して、記録媒体に付着させて記録を行う方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度かつ高品位な画像を、高速で記録できるという特徴を有する。
近年、PETフィルムなどの軟包装フィルムに対して、インクジェット記録方法により、軟包装フィルムに商品のラベル等を直接記録(印刷)することが検討されている。また、軟包装フィルムは、食品等を包装する用途があり、そのような用途では、高い安全性が求められるため、上述の印刷には水系インクを用いることが望ましい。水系インクを用いた場合にはさらに、印刷後、加熱乾燥プロセスを行う場合がある。
また、軟包装フィルムの被記録面は、例えば、ポリオレフィン、ナイロン、ポリエステル等のプラスチック材料からなるため、透明であったり半透明であることが多い。そのため、インクジェット記録を行う際には、背景を隠蔽する下地層と呼ばれる白色系のインクで形成した層の上に、カラーインクによる所定の画像を形成することがある(例えば特許文献1参照)。特許文献2には、そのような下地層に適用可能なインクジェット記録用白色系インクが提案されている。
特開2014−094495号公報 特開2013−177526号公報
白色インクを用いて下地層を形成し、その上にカラーインクを用いて画像を形成するようなインクを重ねて記録(重ね打ち)する場合には、下層のインクの溶媒が多い状態で上層のインクを付着させると、画像に滲みが生じることがある。そのため、下層を乾燥させた後、上層のインクを付着させることが考えられる。ところが、下層のインクを乾燥させることにより、滲みは改善されるものの得られる画像にひび割れや剥がれが生じる場合があった。
発明者の検討により、係るひび割れは、形成した重ね打ち画像を最終的に乾燥させる際に、下層の画像の収縮率と上層の画像の収縮率が異なることが一因となっていることが分かってきた。各層の画像の収縮率は、重ね打ち工程が終了した時点で各層の画像に残った溶媒の量に依存すると考えられる。したがって、各層に残存する溶媒の量を調節することにより、ひび割れを低減することが期待できる。
しかしながら、重ね打ち画像は、2層以上の画像の積層構造となっており、単純な構造ではない。そのため、単に各層の乾燥によって各層の残存溶媒量を調節するだけでは、安定してひび割れを起こさないようにすることは難しかった。このような知見を基にした発明者の検討により、重ね打ち画像のひび割れを抑制するには、各層を形成するインクの組成、上層を形成する際の下層の残存溶媒量の制御などを含め、多くの要素をバランスさせることが重要であることが分かってきた。
本発明の幾つかの態様に係る目的の一つは、複数のインクを重ね打ちして得られる画像であって、滲み及びひび割れが抑制された画像を形成することのできるインクジェット記録方法を提供することにある。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
本発明に係るインクジェット記録方法の一態様は、
記録媒体に、水と、水溶性有機溶剤と、色材を少なくとも含む固形分と、を含む第1インク組成物を、インクジェット法で吐出して第1インク層を形成する工程と、
前記第1インク層における前記第1インク組成物に含有していた水の80質量%以上を蒸発させる第1乾燥工程と、
前記第1乾燥工程を経た前記第1インク層の上に、水と、水溶性有機溶剤と、色材を少なくとも含む固形分と、を含む第2インク組成物をインクジェット法で吐出して第2インク層を形成する工程と、
前記第2インク層を形成する工程の後に、前記記録媒体上の揮発成分を蒸発させる第2乾燥工程と、
を備え、
前記第1インク組成物の「水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量」を「r1」とし、前記第2インク組成物の「水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量」を「r2」とした場合、「r2/r1」の値が2以下である。
このようなインクジェット記録方法では、「r2/r1」の値が2以下であるため、第1インク組成物及び第2インク組成物の組成のバランスが良好であり、耐ひび割れ性などが優れる。そして、第1乾燥工程により、第1インク層における水の量が80質量%以上除去された状態で、当該第1インク層上に第2インク層が形成されるとともに、第1インク層及び第2インク層の積層構造における溶媒の分布及び残存量が良好となる。そのため、係るインクジェット記録方法によれば、第2インク層を形成する際の滲みが抑制され、かつ、第2乾燥工程おける画像のひび割れが抑制される。係るインクジェット記録方法によれば、複数のインクを重ね打ちして得られる画像であって、滲み及びひび割れが抑制された画像を形成することができる。
本発明に係るインクジェット記録方法において、
前記記録媒体は、インク低吸収性又はインク非吸収性の記録媒体であってもよい。
このようなインクジェット記録方法によれば、例えば軟包装フィルムに対して滲みやひび割れの抑制された画像を容易に形成することができる。
本発明に係るインクジェット記録方法において、
前記第1インク組成物は、色材として金属化合物粒子及び金属粒子の少なくとも一方を含む、背景画像用インク組成物であり、
前記第2インク組成物は、非白色の色材を含む着色インク組成物であってもよい。
このようなインクジェット記録方法によれば、金属化合物粒子及び金属粒子の少なくとも一方の背景隠蔽性により、画質の良好な画像を形成することができる。
本発明に係るインクジェット記録方法において、
前記第1乾燥工程は、前記記録媒体の表面温度が25℃以上50℃以下で行われてもよい。
このようにすれば、より容易に第1インク層の水を蒸発させることができる。
本発明に係るインクジェット記録方法において、
前記第1インク組成物は、固形分として樹脂粒子を含んでもよい。
このようなインクジェット記録方法によれば、より記録媒体への密着性が良好な画像を形成することができる。
本発明に係るインクジェット記録方法において、
前記第2インク組成物は、固形分として樹脂粒子を含んでもよい。
このようなインクジェット記録方法によれば、第1インク層と第2インク層との密着性がより良好な画像を形成することができる。
本発明に係るインクジェット記録方法において、
前記樹脂粒子は、ウレタン系樹脂粒子、エステル系樹脂粒子及びアクリル系樹脂粒子の少なくとも一種であってもよい。
このようなインクジェット記録方法によれば、記録媒体への密着性及び積層されるインク層間の密着性の少なくとも一方をより向上させることができる。
本発明に係るインクジェット記録方法において、
前記第1インク組成物が、ウレタン系樹脂粒子及びエステル系樹脂粒子の少なくとも一種を含み、
前記第2インク組成物が、エステル系樹脂粒子及びアクリル系樹脂粒子の少なくとも一種を含んでもよい。
このようなインクジェット記録方法によれば、記録媒体への密着性及び積層されるインク層間の密着性の少なくとも一方をより向上させることができる。
本発明に係るインクジェット記録方法において、
前記エステル系樹脂粒子は、
ポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなる側鎖セグメント(A2)からなるグラフトポリマーであるポリエステル樹脂を含んでもよい。
このようなインクジェット記録方法によれば、記録媒体への密着性及び積層されるインク層間の密着性の少なくとも一方をさらに向上させることができる。
本発明に係るインクジェット記録方法において、
前記「r2/r1」が、0.5以上2以下であってもよい。
このようなインクジェット記録方法によれば、第1インク組成物及び第2インク組成物の組成のバランスがさらに良好であるので、滲みやひび割れがさらに抑制された画像を容易に形成することができる。
本発明に係るインクジェット記録方法において、
前記第1乾燥工程は、前記第1インク層における前記第1インク組成物に含有していた水溶性有機溶剤の蒸発量が20質量%以下で、行われてもよい。つまり、そのような状態となるように行われる。
このようなインクジェット記録方法によれば、さらに滲みが抑制された画像を容易に形成することができる。
本発明に係るインクジェット記録方法において、
前記第1乾燥工程は、熱伝導、輻射線照射及び送風の少なくとも一種により行われてもよい。
このようなインクジェット記録方法によれば、より容易に第1インク層における水の量を低減することができる。
本発明に係るインクジェット記録方法において、
前記第2乾燥工程は、前記記録媒体の表面温度が、70℃以上で行われてもよい。
このようなインクジェット記録方法によれば、記録された画像をより短時間で使用するのに十分な状態に乾燥させることができる。
本発明に係るインクジェット記録方法において、
前記第2乾燥工程を行った後、前記第2インク層に、樹脂粒子と、水溶性有機溶剤と、水と、を含むクリアインク組成物をインクジェット法で吐出して第3インク層を形成する工程を有してもよい。
このようなインクジェット記録方法によれば、記録される画像の耐擦性をさらに向上させることができる。
本発明に係るインクジェット記録方法において、
前記クリアインク組成物の「水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量」を「r3」とした場合、「r3/r1」の値が2以下であってもよい。
このようなインクジェット記録方法によれば、第1インク組成物及びクリアインク組成物の組成のバランスがさらに良好であるので、滲みやひび割れがさらに抑制された画像を容易に形成することができる。
本発明に係るインクジェット記録方法において、
前記第2乾燥工程で前記第1インク組成物と前記第2インク組成物とに含有していた合計の水の80質量%以上を蒸発させた後に、前記第3インク層を形成する工程を行ってもよい。
このようなインクジェット記録方法によれば、水の80質量%以上が除去された第1インク層及び第2インク層の積層構造に対してクリアインク組成物を付着させるので、滲みがさらに抑制された画像を形成することができる。
本発明に係るインクジェット記録方法において、
前記第3インク層を形成する工程の後に、前記記録媒体上の揮発成分を蒸発させる第3乾燥工程を行ってもよい。
このようなインクジェット記録方法によれば、滲みやひび割れが抑制され、さらに耐擦性が良好な画像をより短時間で形成することができる。
本発明に係るインクジェット記録方法において、
前記第1インク組成物及び前記第2インク組成物が、樹脂粒子を1質量%以上15質量%以下、水溶性有機溶剤を3質量%以上40質量%以下、色材を0.5質量%以上15質量%以下含んでもよい。
このようなインクジェット記録方法によれば、第1インク組成物及び第2インク組成物の組成のバランスがさらに良好であるので、滲みやひび割れがさらに抑制された画像を容易に形成することができる。
本発明に係るインクジェット記録方法において、
前記水溶性有機溶剤は、沸点が250℃以下である水溶性有機溶剤を含んでもよい。
このようなインクジェット記録方法によれば、乾燥性が良好で、かつ、滲みやひび割れがさらに抑制された画像を容易に形成することができる。
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、第1インク層を形成する工程と、第1乾燥工程と、第2インク層を形成する工程と、第2乾燥工程と、を備える。これにより、記録媒体の記録面に画像の記録された記録物が得られる。
1.第1インク層を形成する工程
第1インク層を形成する工程は、記録媒体に、水と、水溶性有機溶剤と、色材を少なくとも含む固形分と、を含む第1インク組成物を、インクジェット法で吐出して行われる。本実施形態に係る第1インク層を形成する工程は、インクジェット法を用いて第1インク組成物を記録媒体に吐出して行われる。そして記録媒体の記録領域に第1インク層(画像)が形成される。記録媒体における記録領域は、特に限定されないが、第2インク組成物による第2インク層(画像)の形成を予定している領域であり、当該領域内に第2インク組成物が付着される。以下、記録媒体、第1インク組成物の順に説明し、インクジェット法についてはさらに別項にて後述する。
1.1.記録媒体
本実施形態に係るインクジェット記録方法で画像を形成する記録媒体は、インクを吸収する記録面を有するものであっても、インクを吸収する記録面を有しないものであってもよい。したがって記録媒体としては、特に制限はなく、例えば、紙、フィルム、布等のインク吸収性記録媒体、印刷本紙などのインク低吸収性記録媒体、金属、ガラス、高分子等のインク非吸収性記録媒体などが挙げられる。しかし、本実施形態のインクジェット記録方法の優れた効果は、インク低吸収性又はインク非吸収性の記録媒体に対して画像を記録する場合により顕著となる。
インク低吸収性又は非吸収性の記録媒体とは、インク組成物を全く吸収しない、又はほとんど吸収しない性質を有する記録媒体を指す。定量的には、インク非吸収性又は低吸収性の記録媒体とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である記録媒体」を指す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。これに対して、インク吸収性の記録媒体とは、インク非吸収性及び低吸収性に該当しない記録媒体のことを示す。
インク非吸収性の記録媒体としては、例えば、インク吸収層を有していないプラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
また、インク低吸収性の記録媒体としては、表面にインクを受容するための塗工層が設けられた記録媒体が挙げられ、例えば、基材が紙であるものとしては、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられ、基材がプラスチックフィルムである場合には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の表面に、親水性ポリマーが塗工されたもの、シリカ、チタン等の粒子がバインダーとともに塗工されたものが挙げられる。
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、軟包装フィルムに対して好適に使用できる。軟包装フィルムは、上述したインク非吸収性の記録媒体の一態様である。より詳細には、軟包装フィルムとは、食品包装やトイレタリー、化粧品の包装等に用いられる柔軟性に富んだフィルム材料であり、防曇性や帯電防止性を有する材料、酸化防止剤等がフィルム表面に存在し、5〜70μm(好ましくは10〜50μm)の範囲の厚みを有するフィルム材料である。このフィルムにインク組成物を記録する場合、通常の厚みのプラスチックフィルムと比較しインクが定着しづらく、定着をしてもフィルムの柔軟性にインクが対応できず剥離が起きやすい。本実施形態に係るインクジェット記録方法は、軟包装フィルムに一層好適である。
軟包装フィルムの記録面を構成する材料には、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、エステル系樹脂(ポリエステルなど)、塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニルなど)、及びアミド系樹脂(ポリアミドなど)から選択される少なくとも1種の樹脂を含むものを用いることができる。軟包装フィルムの記録面を含むフィルム基材は、これらの樹脂をフィルムないしシ−ト状に加工したものを用いる事が出来る。樹脂を用いたフィルムないしシ−トの場合は、未延伸フィルム、あるいは一軸方向又は二軸方向に延伸した延伸フィルム等のいずれのものでも使用することができ、二軸方向に延伸されたものを用いるのが好ましい。また、必要に応じて、これら各種樹脂からなるフィルムやシートを貼り合わせた積層状態で用いることもできる。
なお、記録媒体は、無色透明、半透明、着色透明、有彩色不透明、無彩色不透明等であってもよい。また、記録媒体は、それ自体が着色されていたり、半透明や透明であることがある。このような場合に、第1インク組成物を背景画像用インク組成物とすることで、第1インク層を、記録媒体自体の色を隠蔽する隠蔽層として機能させることができる。例えば、第2インク組成物を用いて第2インク層としてカラー画像を記録する際には、カラー画像を記録する領域にあらかじめ背景画像用インク組成物によって背景画像を記録しておけば、カラー画像の発色性を向上できる場合がある。
1.2.第1インク組成物
第1インク組成物は、少なくとも、水と、水溶性有機溶剤と、色材を含む固形分と、を含有する。第1インク組成物を背景画像用インク組成物とする場合には、例えば、白色系インク組成物や光輝性インク組成物とすることができる。
白色系インク組成物とは、社会通念上「白」と呼称される色を記録できるインク(インキ)であり、微量着色されているものも含む。また、その顔料を含有するインク(インキ)が「白色インク(インキ)、ホワイトインク(インキ)」などといった名称で呼称、販売されるインク(インキ)を含む。さらに、例えば、インク(インキ)が、エプソン純正写真用紙<光沢>(セイコーエプソン株式会社製)に100%duty以上又は写真用紙の表面が十分に被覆される量で記録された場合に、インクの明度(L*)及び色度(a*、b*)が、分光測光器Spectrolino(商品名、GretagMacbeth社製)を用いて、測定条件をD50光源、観測視野を2°、濃度をDIN NB、白色基準をAbs、フィルターをNo、測定モードをReflectance、として設定して計測した場合に、70≦L*≦100、−4.5≦a*≦2、−6≦b*≦2.5、の範囲を示す、インク(インキ)を含む。
光輝性インク組成物とは、記録媒体に付着したときに、光輝性を呈するもののことをいう。また、光輝性とは、例えば、得られる画像の鏡面光沢度(日本工業規格(JIS)Z8741を参照。)によって特徴付けられる性質のことを指す。例えば、光輝性の種類としては、光を鏡面反射するような光輝性や、いわゆるマット調の光輝性などがあり、それぞれ、例えば鏡面光沢度の高低によって特徴付けることができる。
1.2.1.水
第1インク組成物は、水を含有する。水は、第1インク組成物の主となる媒体であり、乾燥により蒸発飛散する成分である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、インクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を抑制できるので好適である。
第1インク組成物は、水を主溶媒として含む、いわゆる水系インクであることが好ましい。水系インクは、臭気も抑えられており、かつ、その組成の40質量%以上が水であるので環境にも良いという利点がある。水のインクに対する含有量は40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。上限は限るものではないが95質量%以下が好ましい。
1.2.2.水溶性有機溶剤
第1インク組成物は、水溶性有機溶剤を含有する。水溶性有機溶剤としては、特に限定されないが、例えばアルキルポリオール類、ピロリドン誘導体、グリコールエーテル類などが挙げられる。これらの水溶性有機溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。なお、本明細書において「水溶性」とは、20℃の水100gに対する溶解度が0.1g以上である性質を備えることをいう。
アルキルポリオール類としては、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,3−ブチレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等が挙げられる。アルキルポリオール類は、記録媒体に対するインクの濡れ性を高めたり、インクの固化乾燥を抑制するという機能を有する。アルキルポリオール類を含有する場合には、その含有量を、第1インク組成物の全質量に対して、1質量%以上50質量%以下とすることができる。
ピロリドン誘導体としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。ピロリドン誘導体は、樹脂成分の良好な溶解剤として作用することができる。ピロリドン誘導体を含有する場合には、その含有量が、第1インク組成物の全質量に対して、0.5質量%以上30質量%以下とすることができる。
グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノイソオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独か又は2種以上を混合して使用することができる。グリコールエーテル類は、インクの記録媒体に対する濡れ性や浸透速度を制御することできる。グリコールエーテル類を含有する場合には、その含有量を、第1インク組成物の全質量に対して、0.05質量%以上6質量%以下とすることができる。
水溶性有機溶剤の合計の含有量は、第1インク組成物の全質量に対して、1質量%以上50質量%以下、好ましくは2質量%以上45質量%以下、より好ましくは3質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上35質量%以下とすることができる。
なお、第1インク組成物は、標準沸点が280℃以上の水溶性有機溶剤の含有量が3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。この場合において、標準沸点が280℃以上の水溶性有機溶剤をインクに含んでも含まなくて良く、含む場合であっても上記の含有量以下である。標準沸点が280℃以上の水溶性有機溶剤の含有量が上記の範囲以下であることで、インクの乾燥性が大幅に低下してしまうことを防止でき、その結果、例えば、軟包装フィルムに対する記録を行った際に、画像の定着性が低下することを防止できる。また、乾燥工程の記録媒体の温度を比較的低くしても十分な乾燥をおこなうことができる。標準沸点が280℃以上の水溶性有機溶剤としては、例えばグリセリン(標準沸点290℃)が挙げられる。
また、第1インク組成物に含まれる水溶性有機溶剤は、1種単独であっても2種以上併用した場合でもよく、そのうち、標準沸点が250℃以下の水溶性有機溶剤を含むことが好ましい。また、インクに含有する水溶性有機溶剤のうち標準沸点が250℃超の水溶性有機溶剤の含有量が3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。この場合、インクの乾燥性を高く保持することができる。標準沸点が250℃超の水溶性有機溶剤の含有量の下限は好ましくは0質量%以上であり、つまり含まなくてもよい。
1.2.3.色材
色材としては、例えば、白色系色材や、光輝性顔料などが挙げられる。
白色系色材としては、例えば金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属化合物が挙げられる。金属化合物としては、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等が挙げられる。また、白色系色材には、中空構造を有する粒子をみ、中空構造を有する粒子としては、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。中空構造を有する粒子としては、例えば、米国特許第4,880,465号などの明細書に記載されている粒子を好ましく用いることができる。白色系色材としては、これらの中でも、白色度及び耐擦性が良好であるという観点から、二酸化チタンを用いることが好ましい。
白色系色材を用いる場合には、白色系色材の含有量(固形分)は、第1インク組成物の全質量に対して、0.5質量%以上20質量%以下、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは7質量%以上15質量%以下である。白色系色材の含有量が上記範囲内であれば、インクジェット記録装置のノズル詰まり等が発生しにくく、白色度等の色濃度を十分に満足できる。
また、白色系色材の体積基準の平均粒子径(以下、「平均粒子径」という。)は、好ましくは30nm以上600nm以下であり、より好ましくは200nm以上400nm以下である。白色系色材の平均粒子径が前記範囲であれば、粒子が沈降しにくく、分散安定性を良好にすることができ、また、インクジェット記録装置に適用した際にノズルの目詰まり等を生じにくくすることができる。また、白色系色材の平均粒子径が前記範囲内であれば、白色度等の色濃度を十分に満足できる。
白色系色材の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)が挙げられる。
光輝性顔料としては、媒体に付着させたときに光輝性を呈しうるものであれば特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、及び銅からなる群より選択される1種又は2種以上の合金(金属顔料ともいう)の金属粒子や、パール光沢を有するパール顔料を挙げることができる。パール顔料の代表例としては、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。また、光輝性顔料は、水との反応を抑制するための表面処理が施されていてもよい。インクに光輝性顔料を含有させることで、優れた光輝性を有する画像を形成することができる。
光輝性顔料を用いる場合には、光輝性顔料の含有量は、第1インク組成物の全質量に対して、0.5質量%以上30質量%以下が好ましく、1質量%以上15質量%以下がより好ましい。光輝性顔料の含有量が上記範囲内にあると、インクジェット記録装置のノズルからの吐出安定性、光輝性インク組成物の保存安定性を優れたものとすることができる。
1.2.4.樹脂粒子
第1インク組成物は、樹脂粒子を含んでもよい。樹脂粒子は、形成される画像の密着性や耐擦性を向上させるという機能を備える。
第1インク組成物に含まれる樹脂粒子のTg(ガラス転移温度)は、特に限定されないが、上限は150℃以下であることが好ましい。樹脂粒子のTgが25℃以上であれば、画像の記録媒体への密着性を十分に確保しつつ、良好な耐擦性を得ることができる。また、樹脂粒子のTgが150℃以下であることで、第1インク層を乾燥させた際にクラック等が生じることを抑制できたり、樹脂の皮膜化を促進できるので、密着性や耐擦性の良好な画像を得ることができる。
第1インク組成物に含まれる樹脂粒子を構成する樹脂としては、アクリル系樹脂、フルオレン系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル系樹脂などを用いることができる。これらの樹脂は、1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらの樹脂のうち、第1インク組成物に含まれる樹脂粒子の材質は、第1インク層の記録媒体との密着性を一層向上できるという観点から、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂及びアクリル系樹脂から選択される少なくとも一種であることがより好ましい。なお、ウレタンーアクリル樹脂やエステルーウレタン樹脂は、主となる成分や特性から、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂の何れかに分類すればよい。好ましくはこれらはウレタン樹脂に分類すればよい。
ウレタン系樹脂は、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて合成されるポリマーである。ウレタン系樹脂の合成は、公知の方法で実施できる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の鎖状の脂肪族イソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の環状構造を有する脂肪族イソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネートが挙げられる。ウレタン系樹脂を合成する際には、上記のポリイソシアネートは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオール等があげられる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、あるいは、ポリテトラメチレングリコール等のようなジオール類と、ホスゲン、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、あるいは、エチレンカーボネート等の環式カーボネートとの反応生成物等が挙げられる。
ウレタン系樹脂は、エマルジョンタイプのものを用いることが好ましい。ウレタン系樹脂を含む樹脂エマルジョンには、市販品を使用することができ、例えば、スーパーフレックス 740(Tg:−34℃)、(商品名、第一工業製薬株式会社製)、ボンディック 1940NE(Tg:5℃未満)(商品名、DIC株式会社製)、タケラックW−6061(Tg:25℃)(商品名、三井化学株式会社製)等が挙げられる。
エステル系樹脂は、エマルジョンタイプであるとより好ましい。エステル系樹脂を含む樹脂エマルジョンには、市販品を用いてもよく、例えば、エリーテル KA−5034(Tg:67℃)、KA−5071S(Tg:67℃)、KZA−1734(Tg:66℃)、KZA−6034(Tg:72℃)、KZA−3556(Tg:80℃)(以上全て商品名、ユニチカ株式会社製)等が挙げられる。なお、括弧内の数値は、ガラス転移温度(Tg)である。
さらに、第1インク組成物に用いる樹脂粒子としてのエステル系樹脂は、吐出性、記録媒体への密着性及び高温での画像保存性の観点から、ポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント(A1)(以下、「ポリエステル樹脂セグメント(A1)」又は「セグメント(A1)」ともいう)及び付加重合系樹脂からなる側鎖セグメント(A2)(以下、「付加重合系樹脂セグメント(A2)」又は「セグメント(A2)」ともいう)からなるグラフトポリマーであることがより好ましい。エステル系樹脂の合成は、公知の方法で実施できるが、例えば以下のように行う。
ポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント(A1)とは、主鎖セグメント(A1)がポリエステル樹脂に由来することを意味する。また、付加重合系樹脂からなる側鎖セグメント(A2)とは、側鎖セグメント(A2)が付加重合系樹脂に由来することを意味する。さらに、当該グラフトポリマーは、セグメント(A1)及びセグメント(A2)の他に、他のセグメントを有していてもよい。しかし、当該グラフトポリマー中における、セグメント(A1)及びセグメント(A2)の含有量は、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは実質的に100質量%である。
グラフトポリマーを構成するセグメント(A1)とセグメント(A2)との質量比[セグメント(A1)/セグメント(A2)]は、インクの吐出性、記録媒体への密着性及び高温での画像保存性の観点から、好ましくは50/50以上であり、より好ましくは55/45以上であり、さらに好ましくは65/35以上であり、また、インクの乾燥後定着性の観点から、好ましくは95/5以下であり、より好ましくは85/15以下である。また、好ましくは50/50〜95/5、より好ましくは55/45〜95/5、さらに好ましくは65/35〜85/15であり、さらに好ましくは65/35〜75/25である。
グラフトポリマーを構成するポリエステル樹脂セグメント(A1)は、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られる樹脂セグメントである。セグメント(A1)の原料モノマーであるアルコール成分は、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むことが好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物とは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンにオキシアルキレン基を付加した構造全体を意味するものである。ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物及びビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物が好ましく、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物がより好ましく、これらを併用することがさらに好ましい。
セグメント(A1)の原料モノマーであるアルコール成分中におけるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは60モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上である。また、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、好ましくは90モル%以下であり、より好ましくは85モル%以下であり、さらに好ましくは80モル%以下である。
セグメント(A1)の原料モノマーであるアルコール成分には、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物以外に以下のアルコール成分を含有することができる。
具体的には、セグメント(A1)の構成単位の由来する原料モノマー(以下、単に「セグメント(A1)の原料モノマー」ともいう)のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド付加物(平均付加モル数1〜16)等が挙げられる。前記アルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、初期定着性の観点から、好ましくは1,2−プロパンジオール及び水素添加ビスフェノールAの1種又は2種であり、吐出性の観点から、より好ましくは1,2−プロパンジオールであり、高温での画像保存性の観点から、より好ましくは水素添加ビスフェノールAである。以上のアルコール成分の中でも、定着性の観点から、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物と水素添加ビスフェノールAを併用することが好ましく、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物と水素添加ビスフェノールAを併用することがより好ましく、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物及びビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物と水素添加ビスフェノールAを併用することがさらに好ましい。
セグメント(A1)はポリエステル樹脂であり、原料モノマーとして、アルコール成分以外にカルボン酸成分が用いられる。セグメント(A1)の原料モノマーであるカルボン酸成分には、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、コハク酸、アルキル基及び/又はアルケニル基を有するコハク酸、アリルアルコール等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸類、デカリンジカルボン酸類等の脂環族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸、並びにそれらの酸の無水物及びそれらのアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
インクの吐出性、記録媒体への定着性及び高温での画像保存性の向上の観点から、芳香族ジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸が好ましく、シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸がより好ましい。これらの中でも、インクの高温での画像保存性及び乾燥後の定着性の観点から、芳香族ジカルボン酸が好ましく、イソフタル酸がより好ましい。前記カルボン酸成分は、単独で又は2種以上が含まれていてもよい。
また、カルボン酸成分は、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸、例えば不飽和脂肪族カルボン酸及び/又は不飽和脂環式カルボン酸を含むことが好ましい。
該炭素−炭素不飽和結合の部分は、グラフトポリマー中でセグメント(A2)との結合部分となることができ、その場合、該不飽和結合は、飽和結合となる。
非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸(不飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂環式カルボン酸)としては、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタアクリル酸等の不飽和脂肪族カルボン酸;テトラヒドロフタル酸等の不飽和脂環式カルボン酸等が挙げられる。反応性の観点から、フマル酸、マレイン酸及びテトラヒドロフタル酸が好ましく、フマル酸がより好ましい。
カルボン酸成分中、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸の含有量は、インクの乾燥後の定着性の観点から、好ましくは5モル%以上、より好ましくは7モル%以上、さらに好ましくは8モル%以上、よりさらに好ましくは12モル%以上であり、インクの初期定着性の観点から、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下、よりさらに好ましくは18モル%以下であり、セグメント(A1)による定着性を向上させる効果を保持しつつ、セグメント(A2)を十分にグラフトさせてセグメント(A2)による吐出性と高温での画像保存性を向上させる効果を発現させる観点から、好ましくは5〜30モル%、より好ましくは7〜25モル%、さらに好ましくは8〜20モル%、よりさらに好ましくは12〜18モル%である。
カルボン酸成分中、芳香族ジカルボン酸の含有量は、インクの高温での画像保存性及び乾燥後の定着性を向上させる観点から、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、よりさらに好ましくは82モル%以上であり、また、好ましくは95モル%以下、より好ましくは92モル%以下、さらに好ましくは88モル%以下である。
セグメント(A1)において、樹脂粒子の粒径を調整し、密着性及び高温での画像保存性を向上させる観点から、アルコール成分の水酸基とカルボン酸成分のカルボキシ基とのモル比(水酸基/カルボキシ基)は、好ましくは100/90〜100/120であり、より好ましくは100/95〜100/110、さらに好ましくは100/100〜100/105である。
グラフトポリマーを構成するセグメント(A2)は、付加重合性モノマー(a2)(以下、「モノマー(a2)」ともいう)に由来する構成単位からなる付加重合系樹脂からなるセグメントである。セグメント(A2)は、グラフトポリマーにおける側鎖である。付加重合性モノマー(a2)としては、スチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩等のスチレン類;(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜18)、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のハロゲン化ビニリデン;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物等の1種又は2種以上が挙げられる。
これらの中で、記録媒体への定着性及び高温での画像保存性を向上させる観点から、スチレン類及び(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種が好ましく、2種がより好ましい。
芳香族基を有する付加重合性モノマーは、スチレン、メチルスチレン、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジルメタクリレート、及びベンジルアクリレートの1種又は2種以上が好ましい。これらの中でも、スチレン及びフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレートの1種又は2種が好ましく、モノマーの原料価格の観点からは、スチレンを含むことがより好ましく、スチレンがさらに好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルは、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリルアクリレート等が挙げられ、好ましくは2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びラウリルアクリレートの1種又は2種である。
付加重合性モノマー(a2)は、好ましくは上記の(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種とスチレンとの併用が好ましく、より好ましくは2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びラウリルアクリレートの1種又は2種とスチレンとの併用である。
芳香族基を有する付加重合性モノマーに由来する構成単位の含有量は、吐出性、記録媒体への定着性及び高温での画像保存性の観点から、セグメント(A2)中、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、より好ましくは51質量%以上、であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下、よりさらに好ましくは80質量%以下である。
また、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位は、初期定着性及び乾燥後定着性の観点からスチレンと併用されることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量は、吐出性、記録媒体への定着性及び高温での画像保存性の観点から、セグメント(A2)中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
セグメント(A2)と、セグメント(A1)の原料モノマーのうち不飽和脂肪族カルボン酸及び不飽和脂環式カルボン酸の合計量の質量比[セグメント(A2)/セグメント(A1)の不飽和基を有する前記成分の合計]は、初期定着性及び乾燥後定着性の観点から、好ましくは1/1〜40/1、より好ましくは5/1〜30/1、さらに好ましくは10/1〜15/1である。
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレート、アクリルアミドの少なくとも一種をモノマー(以下「アクリル系モノマー」ともいう。)として用いて得られるポリマーのことをいう。アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーの単独重合体であっても、アクリル系モノマー以外のモノマー(例えば、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、及び塩化ビニリデン等)との共重合体であってもよい。なお、上記の共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、及びグラフト共重合体のうちいずれの形態であってもよい。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びそれに対応するメタクリルのうち少なくとも一方を意味する。アクリル系樹脂の合成は、公知の方法で実施できる。
上記の中でも、アクリル系樹脂は、第1インク層の密着性を一層向上できるという観点から、(メタ)アクリル系樹脂及びスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体系樹脂のうち少なくともいずれかが好ましく、アクリル系樹脂及びスチレン−アクリル酸共重合体系樹脂のうち少なくともいずれかがより好ましく、スチレン−アクリル酸共重合体系樹脂がさらに好ましい。また、アクリル系樹脂はエマルジョンタイプで供給されることがより好ましい。
アクリル系樹脂を含む樹脂エマルジョンには、市販品を用いてもよく、例えば、モビニール 972(Tg:101℃)、7180(Tg:53℃)(以上全て商品名、日本合成化学工業株式会社製)、Joncryl 530(Tg:75℃)、538(Tg:64℃)、1908(Tg:98℃)、1925(Tg:75℃)、1992(Tg:78℃)(以上全て商品名、BASF社製)などが挙げられる。なお、括弧内の数値は、ガラス転移温度(Tg)である。
樹脂粒子の含有量(固形分)は、複数種を用いる場合が合計量として、第1インク組成物の全質量に対して、0.5質量%以上20質量%以下とすることが好ましく、1質量%以上15質量%以下とすることがより好ましい。樹脂粒子の含有量が0.5質量%以上であることで、第1インク層の記録媒体との密着性及び第2インク層との密着性が一層良好となる。また、樹脂粒子の含有量が20質量%以下であることで、第1インク組成物の記録ヘッドからの吐出性が良好になる傾向にある。
1.2.5.その他の成分
<ワックス>
第1インク組成物は、ワックスを含有してもよい。ワックスは、第1インク層に滑沢を付与する機能を備えるので、第1インク層の剥がれ等を低減できる。
前記ワックスを構成する成分としては、例えばカルナバワックス、キャンデリワックス、みつろう、ライスワックス、ラノリン等の植物・動物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト等の鉱物系ワックス;カーボンワックス、ヘキストワックス、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸アミド等の合成ワックス類、α−オレフィン・無水マレイン酸共重合体等の天然・合成ワックスエマルジョンや配合ワックス等を単独あるいは複数種を混合して用いることができる。これらの中でも、後述する軟包装フィルムに対する定着性を高める効果により優れるという観点から、ポリオレフィンワックス(特に、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス)及びパラフィンワックスを用いることが好ましい。
ワックスとしては市販品をそのまま利用することもでき、例えば、ノプコートPEM−17(商品名、サンノプコ株式会社製)、ケミパールW4005(商品名、三井化学株式会社製)、AQUACER515、539、593(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
乾燥工程においてワックスが溶融しすぎて、その性能が低下することを抑制するという観点から、好ましくは融点が50℃以上200℃以下、より好ましくは融点が70℃以上180℃以下、さらに好ましくは融点が100℃以上180℃以下のワックスを用いることが好ましい。
ワックスは、エマルジョンの形態で供給されてもよく、その場合には、一種の樹脂粒子とみなすことができる。ワックスの含有量は、第1インク組成物の全質量に対して、固形分換算で0.1質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上4質量%以下であることが好ましい。ワックスの含有量が上記範囲内にあると、上記ワックスの機能を良好に発揮できる。
<樹脂分散剤>
第1インク組成物は色材として白色系色材や、光輝性顔料を含有するので、インクジェット法に適用するために、白色系色材や、光輝性顔料が水中で安定的に分散保持できるようにすることが好ましい。その方法としては、水溶性樹脂及び/又は水分散性樹脂等の樹脂分散剤にて分散させる方法、分散剤にて分散させる方法、色材粒子表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入し、前記の樹脂あるいは分散剤なしで水中に分散及び/又は溶解可能とする方法等が挙げられるが、その中でも樹脂分散剤を用いて分散させる方法(樹脂分散顔料)がインク組成物中での分散安定性、インクジェット法によるヘッドノズル孔からの吐出安定性、得られた画像の密着性・耐擦性等の耐久性等において優れているため好ましい。
樹脂分散剤としては、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等及びこれらの塩が挙げられる。これらの中でも、疎水性官能基を有するモノマーと親水性官能基を持つモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
樹脂分散剤の含有割合は、分散すべき色材によって適宜選択することができるが、第1インク組成物中の色材の含有量100質量部に対して、好ましくは5質量部以上200質量部以下、より好ましくは20質量部以上120質量部以下である。
<界面活性剤>
第1インク組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、表面張力を低下させ記録媒体との濡れ性を向上させる機能を有する。界面活性剤の中でも、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−348(以上全て商品名、ビックケミー・ジャパン社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上全て商品名、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK−340(商品名、ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
界面活性剤を含有する場合には、その含有量は、第1インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上2質量%以下、好ましくは0.2質量%以上1.5質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上1.2質量%以下である。
<その他の成分>
第1インク組成物は、必要に応じて、pH調整剤、防腐剤・防かび剤、キレート化剤、防錆剤等を含有してもよい。pH調整剤としては、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。防腐剤・防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。市販品では、プロキセルXL2、プロキセルGXL(以上全て商品名、アビシア社製)や、デニサイドCSA、NS−500W(以上全て商品名、ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。キレート化剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸塩、イミノジコハク酸塩等が挙げられる。防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
1.3.固形分
第1インク組成物における固形分は、インク組成物中に存在する色材・樹脂分散剤・樹脂粒子・キレート化剤・防錆剤等であり、ただし後述する後乾燥工程としての第2乾燥工程で蒸発揮散しない成分を表す。すなわち水・水溶性有機溶剤等である揮発成分以外の成分を表す。一方、揮発成分は、固形分ではない成分であるが、後乾燥工程としての第2乾燥工程で蒸発揮散する成分であり、水、水溶性有機溶剤、界面活性剤やpH調整剤などのその他の成分のうち後乾燥工程としての第2乾燥工程で蒸発揮散する成分である。
1.4.水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量r1
上記の通り、本実施形態の第1インク組成物は、水溶性有機溶剤と固形分とを含む。そのため、「水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量」として「r1」を定義することができる。「r1」は、後述の第2インク組成物の「r2」と後述する特定の関係を有する。
2.第1乾燥工程
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、第1インク層を乾燥させる第1乾燥工程を有する。
第1乾燥工程は、第1インク層を形成する工程の後、記録媒体上の第1インク組成物(画像)を乾燥させる工程である。第1乾燥工程では、記録媒体上に付着させた第1インク組成物(第1インク層)中に含有される水を80質量%以上蒸発させる工程である。第1乾燥工程における第1インク層中に含有される水の蒸発量(蒸発させた量)は、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。また、第1乾燥工程における第1インク層中に含有される水の蒸発量は、100質量%以下であり、100質量%未満であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましい。またヘッドの吐出安定性が優れる点や第1乾燥工程の時間の短縮ができる点では、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましい。
第1乾燥工程における第1インクの水分蒸発率が高い場合、耐ひび割れ性が優れる点で好ましい。反面、第1乾燥工程における第1インクの水分蒸発率が低い場合、第1乾燥工程における記録媒体の表面温度を比較的低くできインクジェットヘッドの吐出不良の低減ができることや、第1乾燥工程に要する時間の短縮化の点で好ましい。従って、インクジェットヘッドの吐出不良の低減や、第1乾燥工程に要する時間の短縮化を図る場合に、本実施形態の記録方法が特に有用である。
ここで、本実施形態における水や水溶性有機溶剤の蒸発量は、例えば、以下のように測定できる。すなわち、第1インク層を形成するために吐出した第1インク組成物のインク滴の質量を100%とし、形成された第1インク層に対して第1乾燥工程が終了した直後に、サンプルを採取して、例えば、熱重量分析(TGA)、ガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー(LC)、水の場合、水分量計等を単独あるいは組み合わせて用いる分析を行うことにより、測定することができる。
第1乾燥工程では、水以外の揮発成分、具体的には、第1インク組成物中の水溶性有機溶剤などを蒸発させてもよい。例えば、第1乾燥工程は、第1インク層における第1インク組成物に含有していた水溶性有機溶剤の蒸発量が50質量%以下となるように行うことが好ましい。また、このようにする場合には、第1乾燥工程は、第1インク層における第1インク組成物に含有していた水溶性有機溶剤の蒸発量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下、一層好ましくは10質量%以下、増々好ましくは5質量%以下、より特に好ましくは3質量%以下とするとよい。なお、第1乾燥工程における、第1インク層における第1インク組成物に含有していた水溶性有機溶剤の蒸発量の下限は0質量%であり、この場合、水等の水溶性有機溶剤等以外の揮発成分が揮発することになる。これにより、インク吸収層を有しないプラスチックフィルムのようなインク非吸収性の記録媒体上においても高画質な画像を短時間で得ることができる。また、第1乾燥工程における記録媒体の表面温度を比較的低くした場合でも水の蒸発量は80質量%以上にし易い傾向があり、この場合、第1インク層を形成する工程において、記録ヘッドのノズル孔が記録媒体から熱を受けて目詰りなどの悪影響を受けることが低減でき好ましい。
第1乾燥工程は、インク中に存在する水の蒸発を促進させる方法であれば特に限定されない。第1乾燥工程に用いられる方法として、記録媒体に熱を加える方法、第1インク層を形成する工程の後に記録媒体上の画像に風を吹きつける方法、さらにそれらを組み合わせる方法等が挙げられる。具体的には、これらの方法に用いられる手段としては、強制空気加熱、輻射加熱、電導加熱、高周波乾燥、マイクロ波乾燥等が好ましく用いられる。放置による乾燥でもよい。
また、第1乾燥工程は、加熱を伴う送風(すなわち、温風)によって行ってもよいし、送風手段と上記の加熱手段とを組み合わせて行ってもよい。送風を行う手段としては、例えばドライヤー等の公知の乾燥装置が挙げられる。
また、第1乾燥工程は、記録面を必要に応じて加熱しつつ送風を行うようにしてもよい。第1乾燥工程における送風は、風速0.1m/秒以上5m/秒以下、好ましくは風速0.2m/秒以上3m/秒以下、より好ましくは風速0.3m/秒以上2m/秒以下、より好ましくは風速0.5m/秒以上1m/秒以下である。この範囲であれば、乾燥を進行させつつ風による画像の乱れを低減できる。このような範囲であれば、第1インク層中に含有される水を80質量%以上、容易に蒸発させることができる。
また、本実施形態における「送風」には、記録面に設けられたインク層に風を吹き付けるものも含まれるし、インク層に風を直接吹き付けずに、記録面の表面に風を通過させるもの(すなわち、記録面の表面付近に気流を発生させるもの)も含まれる。
第1乾燥工程は、第1インク組成物の吐出前、吐出中、及び吐出後のうち少なくとも一のタイミングで行うことができる。
第1乾燥工程は、送風を含むことが好ましく、これにより、第1インク層に含まれる水を効果的に蒸発(揮発)させることができる。
第1乾燥工程における記録媒体の表面温度は、50℃以下で行われることが好ましく、より好ましくは45℃以下、さらに好ましくは40℃以下である。また、第1乾燥工程における記録媒体の表面温度は、25℃以上で行われることが好ましく、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは35℃以上である。このような範囲であれば、第1インク層中に含有される水を80質量%以上、容易に蒸発させることができる。さらに、第1乾燥工程における記録媒体の表面温度は、後述の第2乾燥工程における記録媒体の表面温度よりも低い温度であることが好ましい。このようにすることで、第2乾燥工程における樹脂成分の流動を抑制することができる。なお、本実施形態では、強制空気加熱、輻射加熱、電導加熱、高周波乾燥、マイクロ波乾燥等を複数組み合わせる場合のように、複数の機構を用いて第1乾燥工程を行う場合、それぞれの機構によって達成される温度を異なるように設定することもできる。そのような場合には、最も高い記録媒体の表面温度を、当該第1乾燥工程の温度と定義する。第2乾燥工程、第3乾燥工程においても同様である。
また、第1乾燥工程における乾燥時間(すなわち、送風および加熱を実施する時間)は、各層の乾燥率が後述する範囲になるように設定されればよく、特に限定されるものではない。しかし、第1乾燥工程の乾燥時間(すなわち、送風、加熱等を実施する時間)は、第1インク組成物の組成に依存するが、例えば、0.1秒以上100秒以下、好ましくは0.2秒以上50秒以下、より好ましくは0.5秒以上30秒以下、さらに好ましくは1秒以上10秒以下の範囲である。このような範囲であれば、第1インク層中に含有される水を80質量%以上、容易に蒸発させることができる。
なお、第1乾燥工程では、「水の80質量%以上を蒸発させる」が、このとき水溶性有機溶剤はほとんどが蒸発せず残っている場合がある。特に、50℃以下の比較的低温の条件、好ましくは40℃以下の条件で、第1乾燥工程が行われる場合には、水が水溶性有機溶剤よりも主として蒸発し、水溶性有機溶剤はわずかしかあるいは全く蒸発しない場合が多い。しかし、第1乾燥工程を上記温度、時間で行うことで、装置に設けられる乾燥機構の簡略化や記録のための所要時間の短縮の点で有利である。
3.第2インク層を形成する工程
第2インク層を形成する工程は、第1乾燥工程を経た第1インク層の上に、水と、水溶性有機溶剤と、色材を少なくとも含む固形分と、を含む第2インク組成物を、インクジェット法で吐出して行われる。
第1乾燥工程を経た第1インク層は、水の含有量が20質量%未満となっている。そのため、第2インク組成物を付着させても、得られる画像が滲みにくくなっている。本工程では第2インク組成物は、インクジェット法にて吐出される。インクジェット法は上述の第1インク層を形成する工程と同様であるので説明を省略する。なお、第2インク組成物を付着させるインクジェット記録装置と、第1インク組成物を付着させるインクジェット記録装置は、同一であってもよいし異なってもよい。また、同一とする場合には、用いるインクジェット記録装置の異なる記録ヘッド、及び/又は、ノズルから各インク組成物を適宜のタイミングで吐出することができる。以下、第2インク組成物について説明する。
3.1.第2インク組成物
第2インク組成物は、少なくとも、水と、水溶性有機溶剤と、色材を含む固形分と、を含有する。第2インク組成物を非白色の色材を含む着色用インク組成物とする場合には、例えば、カラーインク組成物やブラックインク組成物とすることができる。
3.1.1.水
第2インク組成物は、水を含有する。水は、第2インク組成物の主となる媒体であり、乾燥により蒸発飛散する成分である。水の説明については、第1インク組成物と同様であるので、その記載を省略する。
第2インク組成物は、前述の水系インクとしても好ましく用いることができる。
3.1.2.水溶性有機溶剤
第2インク組成物は、水溶性有機溶剤を含有する。水溶性有機溶剤としては、特に限定されないが、例えばアルキルポリオール類、ピロリドン誘導体、グリコールエーテル類などが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。なお、各有機溶剤の具体例、効果、含有量の範囲等については、第1インク組成物で示した内容と同様であるので、その説明を省略する。
第2インク組成物は、第1インク組成物と同様に、標準沸点が280℃以上の水溶性有機溶剤の含有量が3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。標準沸点が280℃を越える水溶性有機溶剤の含有量が上記範囲であることで、インク層の乾燥性を高く保持することができる。
3.1.3.色材
第2インク組成物は、非白色(カラー)色材を含有する。非白色色材とは、前述の白色系色材や、光輝性顔料以外の色材のことを指す。非白色色材としては、例えば、染料、顔料等が挙げられる。
染料及び顔料は、米国特許出願公開2010/0086690号明細書、米国特許出願公開2005/0235870号明細書、国際公開第2011/027842に記載されているもの等を好適に用いることができる。染料及び顔料のうち、顔料を含むことが一層好ましい。顔料は、耐光性、耐候性、耐ガス性などの保存安定性の観点から有機顔料であることが好ましい。
具体的には、顔料は、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料などの多環式顔料、染料キレート、染色レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料、カーボンブラックなどが用いられる。上記顔料は、1種単独でも、2種以上併用して用いることもできる。
また、染料としては、例えば、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料等の通常インクジェット記録に使用する各種染料を使用することができる。
非白色色材の含有量は、第2インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.3質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下である。
3.1.4.樹脂粒子
第2インク組成物は、第1インク組成物において説明した樹脂粒子の少なくとも一種を含有してもよい。第2インク組成物に含まれる樹脂粒子を構成する樹脂としては、アクリル系樹脂、フルオレン系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル系樹脂などを用いることができる。これらの樹脂は、1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらの樹脂のうち、第2インク組成物に含まれる樹脂粒子の材質は、第2インク層の第1インク層との密着性、及び、第2インク層の耐擦性の少なくとも一方を一層向上できるという観点から、エステル系樹脂及びアクリル系樹脂から選択される少なくとも一種であることがより好ましい。さらに、第1インク組成物に含まれる樹脂粒子の材質と、第2インク層に含まれる樹脂粒子の材質とが同じであると、第2インク層の第1インク層との密着性を一層向上できるという観点から、より好ましい。
3.1.5.その他の成分
第2インク組成物は、樹脂分散剤、ワックス、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤・防かび剤、キレート化剤、防錆剤等を含有してもよい。なお、第2インク組成物では、樹脂分散剤は、顔料に対して有効に用いられる。また、第2インク組成物は、樹脂分散顔料、分散剤分散顔料、表面処理顔料のいずれも用いることができ、必要に応じて複数種混合した形で用いることもできるが、樹脂分散顔料を含有していることが好ましい。
第2インク組成物に用いられ得る樹脂分散剤、ワックス、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤等の成分の具体例、各剤の効果、含有量の範囲等については、第1インク組成物で示した内容と同様であるので、その説明を省略する。
3.2.固形分
第2インク組成物における固形分は、上述した第1インク組成物と同様に、インク組成物中に存在する色材・樹脂分散剤・樹脂粒子・キレート化剤・防錆剤等であり、後述する後乾燥工程としての第2乾燥工程で蒸発揮散しない成分、すなわち水・水溶性有機溶剤等の揮発成分以外の成分を表す。
3.3.水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量r2
上記の通り、本実施形態の第2インク組成物は、水溶性有機溶剤と固形分とを含む。そのため、「水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量」として「r2」を定義することができる。「r2」は、上述の第1インク組成物の「r1」と後述する特定の関係を有する。
4.第2乾燥工程
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、第2インク層を形成する工程の後に、記録媒体上の揮発成分を蒸発させる第2乾燥工程を有する。第2乾燥工程では、第1インク層及び第2インク層に含まれる揮発成分(水、アルキルポリオール、グリコールエーテルなど)を蒸発させるが、その他のインク層(例えば後述の第3インク層)を形成した後に、記録媒体上の全体に残存する揮発成分を蒸発させる最終的な乾燥工程としてもよい。例えば、第2乾燥工程は、第1乾燥工程と同様の乾燥機能を有してもよく、第1乾燥工程と同じ条件で行われてもよい。また、例えば、第2乾燥工程は、最終的な乾燥工程として機能してもよく、第1乾燥工程よりも乾燥させやすい条件、例えば、記録媒体の表面温度がより高い条件や、乾燥工程の時間がより長い条件、で行われてもよい。すなわち、第2乾燥工程は、第2の第1乾燥工程(本明細書では「第1乾燥工程その2」と言うことがある。)であってもよいし、最終乾燥工程(本明細書では「後乾燥工程」と言うことがある。)であってもよい。
4.1.後乾燥工程
第2乾燥工程が後乾燥工程である場合、第2乾燥工程では、第1インク層及び第2インク層に含まれる揮発成分(水、アルキルポリオール、グリコールエーテルなど)を蒸発させ、記録物を使用できる状態まで乾燥させる。
第2乾燥工程が後乾燥工程である場合であっても、第2乾燥工程で行われる乾燥は、少なくとも第1インク層が第1乾燥工程により所定の水分量まで乾燥されているので、第2インク層を形成するインク滴の流動を抑制できる。これにより、第2インク組成物のインク滴を付着させた箇所に留めておくことができるので、各層に含まれる成分が混ざり合いすぎることで生じる画像のブリード(滲み)を抑制できる。
第2乾燥工程が後乾燥工程である場合には、第2乾燥工程は、第1乾燥工程よりも揮発成分をより乾燥させやすい条件で行われる。この場合、第2乾燥工程に用いられる方法、用いられる手段は、インク中に存在する揮発成分の蒸発を促進させる方法であれば特に限定されないが、第1乾燥工程に用いられる方法と同様の方法(例えば、記録媒体に熱を加える方法、記録媒体上の画像に風を吹きつける方法、さらにそれらを組み合わせる方法等)を用いる場合には、第1加熱工程よりも、高い温度、及び/又は、高い風量で行われることが好ましい。
例えば、第2乾燥工程が後乾燥工程である場合は、記録面を加熱しつつ送風を行うようにしてもよい。この場合の第2乾燥工程における送風は、風速5m/秒以上で行うことが好ましく、風速6m/秒以上50m/秒以下、好ましくは風速6m/秒以上40m/秒以下、より好ましくは風速7m/秒以上30m/秒以下で行うことが好ましい。風速6m/秒以上で乾燥を行うことで液媒体の蒸発速度を向上でき、50m/秒以下で行うことにより乾燥性を維持しつつ風による画像の乱れを低減できる。さらにこの場合、第2乾燥工程における記録媒体の表面温度は、60℃以上で行われることが好ましく、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。さらに、この場合、第2乾燥工程における記録媒体の表面温度は、上述の第1乾燥工程における記録媒体の表面温度よりも高い温度であることが好ましい。また、第2乾燥工程が後乾燥工程である場合は、第2乾燥工程における記録媒体の表面温度は、150℃以下で行われることが好ましく、より好ましくは130℃以下である。
第2乾燥工程が後乾燥工程である場合は、第2乾燥工程の乾燥時間(すなわち、送風及び加熱を実施する時間)は、第1乾燥工程における乾燥時間の2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましく、3倍以上30倍以下であることがさらに好ましい。このように、第2乾燥工程の乾燥時間を第1乾燥工程の乾燥時間の2倍以上とすることで、揮発成分の蒸発が十分に行われるので、耐擦性に優れた画像を得ることができる。また、30倍以下とすることで、液媒体の蒸発を十分に行いつつ、乾燥時間の短縮を図ることができる。
4.2.第1乾燥工程その2
第2乾燥工程が第2の第1乾燥工程(第1乾燥工程その2)である場合、第2乾燥工程では、第1インク層及び第2インク層に含まれる揮発成分(水、アルキルポリオール、グリコールエーテルなど)を蒸発させ、その他のインク層(例えば後述の第3インク層)を形成する際の滲みを抑制し、ひび割れが生じにくくなる程度まで、記録媒体上の全体に残存する揮発成分を蒸発させる。
第2乾燥工程が第1乾燥工程その2である場合であっても、第2乾燥工程で行われる乾燥は、少なくとも第1インク層が第1乾燥工程により所定の水分量まで乾燥されているので、第2インク層を形成するインク滴の流動を抑制できる。これにより、第2インク組成物のインク滴を付着させた箇所に留めておくことができるので、各層に含まれる成分が混ざり合いすぎることで生じる画像のブリード(滲み)を抑制できる。
第2乾燥工程が第1乾燥工程その2である場合、第2乾燥工程は、第1乾燥工程と同様の条件で行われてもよい。すなわち、第2インク層を形成する工程の後、記録媒体上の第1インク組成物及び第2インク組成物(画像)を乾燥させて、第3インク組成物の付着に備える工程とすることができる。この場合、第2乾燥工程では、記録媒体上に付着させた第1インク組成物と第2インク組成物と含有していた水を80質量%以上蒸発させるようにすることが好ましい。この場合の第2乾燥工程における第1インク層及び第2インク層中に含有される水の蒸発量は、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。また、この場合であっても、第2乾燥工程における第1インク層及び第2インク層中に含有される水の蒸発量は、100%未満であることが好ましい。
第2乾燥工程が第1乾燥工程その2である場合、第2乾燥工程では、水以外の揮発成分、具体的には、第1インク組成物及び第2インク組成物中の水溶性有機溶剤などを蒸発させてもよい。例えば、第2乾燥工程が第1乾燥工程その2である場合、上述の第1乾燥工程と同様に、第2乾燥工程は、第1インク層及び第2インク層における第1インク組成物及び第2インク組成物に含有していた合計の水溶性有機溶剤の蒸発量が50質量%以下となるように行うことが好ましい。また、このようにする場合には、第2乾燥工程は、第1インク組成物及び第2インク組成物に含有していた合計の水溶性有機溶剤の蒸発量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下、一層好ましくは10質量%以下、増々好ましくは5質量%以下、より特に好ましくは3質量%以下とするとよい。なお、この場合においても第2乾燥工程における、第1インク組成物及び第2インク組成物に含有していた合計の水溶性有機溶剤の蒸発量の下限は0質量%であり、この場合、水等の水溶性有機溶剤等以外の揮発成分が揮発することになる。これにより、インク吸収層を有しないプラスチックフィルムのようなインク非吸収性の記録媒体上においても高画質な画像を短時間で得ることができる。
また、第2乾燥工程が第1乾燥工程その2である場合であっても、第2乾燥工程は、インク中に存在する水の蒸発を促進させる方法であれば特に限定されない。第1乾燥工程に用いられる方法として、記録媒体に熱を加える方法、第1インク層を形成する工程の後に記録媒体上の画像に風を吹きつける方法、さらにそれらを組み合わせる方法等が挙げられる。具体的には、これらの方法に用いられる手段としては、強制空気加熱、輻射加熱、電導加熱、高周波乾燥、マイクロ波乾燥等が好ましく用いられる。
また、第2乾燥工程が第1乾燥工程その2である場合、第2乾燥工程は、加熱を伴う送風(すなわち、温風)によって行ってもよいし、送風手段と上記の加熱手段とを組み合わせて行ってもよい。送風を行う手段としては、例えばドライヤー等の公知の乾燥装置が挙げられる。この場合、第2乾燥工程は、記録面を必要に応じて加熱しつつ送風を行うようにしてもよい。風速、記録媒体の表面温度、乾燥時間等は、上述の第1乾燥工程と同様である。
なお、第2乾燥工程が第1乾燥工程その2である場合は、「水の80質量%以上を蒸発させる」が、このとき水溶性有機溶剤はほとんどが蒸発せず残っている場合がある。特に、50℃以下、好ましくは40℃以下の比較的低温の条件で第2乾燥工程(第1乾燥工程その2)が行われる場合には、水が水溶性有機溶剤よりも主として蒸発し、水溶性有機溶剤はわずかしかあるいは全く蒸発しない場合が多い。しかし、第2乾燥工程を上記温度、時間で行うことで、装置に設けられる乾燥機構の簡略化や記録のための所要時間の短縮の点で有利である。
また、第2乾燥工程が第1乾燥工程その2である場合、これを最終的な乾燥工程としてもよく、その後は、自然乾燥させて記録物を使用できる状態まで乾燥させてもよいし、さらに後乾燥工程を行って記録物を使用できる状態まで乾燥させてもよい。
5.「r2/r1」の値
本実施形態のインクジェット記録方法では、第1インク組成物の「水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量」を「r1」とし、第2インク組成物の「水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量」を「r2」とした場合、「r2/r1」の値が2以下である。このようにすることで、第1インク組成物及び第2インク組成物の組成のバランスが良好となっている。すなわち、「r2/r1」の値が2以下であるため、下層の画像(例えば第1インク層)及び上層(例えば第2インク層)の積層構造における溶媒の分布及び残存量が良好になり、形成した画像を最終的に乾燥させる際(例えば第2乾燥工程の際)に、下層の画像(例えば第1インク層)の収縮率と上層(例えば第2インク層)の画像の収縮率が、大きく異ならないようになっている。これにより、得られる画像におけるひび割れが抑制される。
このような効果は、「r2/r1」の値が2以下である場合に得られるが、「r2/r1」の値は、1.8以下が好ましく、より好ましくは1.5以下である。また、「r2/r1」の値の下限値は、0超の値であればよく、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは1以上である。
6.作用効果
このようなインクジェット記録方法では、「r2/r1」の値が2以下であるため、第1インク組成物及び第2インク組成物の組成のバランスが良好である。そして、第1乾燥工程により、第1インク層における水の量が低減され、当該第1インク層上に第2インク層が形成されるとともに、第1インク層及び第2インク層の積層構造における溶媒の分布及び残存量が良好となる。そのため、係るインクジェット記録方法によれば、第2インク層を形成する際の滲みが抑制され、かつ、第2乾燥工程おける画像のひび割れが抑制される。係るインクジェット記録方法によれば、複数のインクを重ね打ちして得られる画像であって、滲み及びひび割れの両方が抑制された画像を形成することができる。
7.その他の工程
7.1.第3インク層を形成する工程
本実施形態のインクジェット記録方法は、第2乾燥工程(上述の「第2の第1乾燥工程(第1乾燥工程その2)」を行った後、第2インク層に、樹脂粒子と、水溶性有機溶剤と、水と、を含むクリアインク組成物をインクジェット法で吐出して第3インク層を形成する工程を含んでもよい。第3インク層は、第2インク層の上に形成されるが、第1インク層のうち、第2インク層が形成されていない領域の上に形成されてもよいし、記録媒体上であって、第1インク層の形成されていない領域の上に形成されてもよい。
第3インク層は、クリアインク組成物によって形成され、記録媒体上に形成された画像を保護する保護層の機能を有する。第3インク層が形成されることにより、画像の耐擦性をさらに向上することができる。
本工程を行う場合には、クリアインク組成物は、インクジェット法にて吐出される。インクジェット法は上述の第1インク層を形成する工程と同様であるので説明を省略する。なお、クリアインク組成物を付着させるインクジェット記録装置と、第1インク組成物及び/又は第2インク組成物を付着させるインクジェット記録装置は、同一であってもよいし異なってもよい。また、同一とする場合には、用いるインクジェット記録装置の異なる記録ヘッド、及び/又は、ノズルから各インク組成物を適宜のタイミングで吐出することができる。
また、第3インク層を形成する工程を行う場合には、第2乾燥工程を第2の第1乾燥工程(第1乾燥工程その2)とし、第1インク組成物と第2インク組成物とに含有していた合計の水の80質量%以上を蒸発させた後に行われてもよい。このようにすることで、クリアインクを付着させる対象(記録媒体、第1インク層及び第2インク層の少なく一種)は、水の含有量が20質量%未満となる。そのため、クリアインク組成物を付着させても、得られる画像が滲みにくくなる。
7.1.1.クリアインク組成物
クリアインク組成物は、少なくとも、樹脂粒子と、水溶性有機溶剤と、水とを含有する。クリアインク組成物は、色材を含有しないトップコート用インク組成物とすることができる。クリアインク組成物は、記録媒体へ着色して用いるインク組成物ではなく、記録物の光沢性、耐擦性、密着性などの品質の調整のために用いるインク組成物であり、色材の含有量は0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましい。最も好ましくは0質量%、すなわち全く色材を含まない形態である。
7.1.2.樹脂粒子
クリアインク組成物は、第1インク組成物において説明した樹脂粒子の少なくとも一種を含有する。クリアインク組成物に含まれる樹脂粒子を構成する樹脂としては、アクリル系樹脂、フルオレン系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル系樹脂などを用いることができる。これらの樹脂は、1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらの樹脂のうち、クリアインク組成物に含まれる樹脂粒子の材質は、第3インク層の記録媒体、第1インク層及び第2インク層の少なくとも一層との密着性、及び、第3インク層の耐擦性の少なくとも一方を一層向上できるという観点から、エステル系樹脂及びアクリル系樹脂から選択される少なくとも一種であることがより好ましい。さらに、クリアインク組成物に含まれる樹脂粒子の材質と、第3インク層と接する第1インク層又は第2インク層に含まれる樹脂粒子の材質とが同じであると、第3インク層と接するインク層との密着性を一層向上できるという観点からより好ましい。
7.1.3.水溶性有機溶剤
クリアインク組成物は、水溶性有機溶剤を含有する。水溶性有機溶剤としては、特に限定されないが、例えばアルキルポリオール類、ピロリドン誘導体、グリコールエーテル類などが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。なお、各有機溶剤の具体例、効果、含有量の範囲等については、第1インク組成物で示した内容と同様であるので、その説明を省略する。
クリアインク組成物は、第1インク組成物と同様に、標準沸点が280℃以上の水溶性有機溶剤を実質的に含有しないことが好ましい。また、クリアインク組成物に含まれる水溶性有機溶剤は、1種単独であっても2種以上併用した場合でも、その全てが標準沸点が250℃以下の水溶性有機溶剤であることが好ましい。標準沸点が250℃を越える水溶性有機溶剤を含まないことで、インクの乾燥性を高く保持することができる。
7.1.4.水
クリアインク組成物は、水を含有する。水は、クリアインク組成物の主となる媒体であり、乾燥により蒸発飛散する成分である。水の説明については、第1インク組成物と同様であるので、その記載を省略する。
クリアインク組成物は、前述の水系インクとしても好ましく用いることができる。
7.1.5.その他の成分
クリアインク組成物は、ワックス、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤・防かび剤、キレート化剤、防錆剤等を含有してもよい。これらの成分の具体例、各剤の効果、含有量の範囲等については、第1インク組成物で示した内容と同様であるので、その説明を省略する。
7.1.6.固形分
クリアインク組成物における固形分は、上述した第1インク組成物と同様に、インク組成物中に存在する樹脂粒子・キレート化剤・防錆剤等であり、後述する第3乾燥工程で蒸発揮散しない成分、すなわち水・水溶性有機溶剤等の揮発成分以外の成分を表す。
7.1.7.水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量r3
上記の通り、クリアインク組成物は、水溶性有機溶剤と固形分としての樹脂粒子等とを含む。そのため、「水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量」として「r3」を定義することができる。「r3」は、上述の第1インク組成物の「r1」と後述する特定の関係を有することが好ましい。
7.1.8.「r3/r1」の値
本実施形態のインクジェット記録方法で、第3インク層を形成する工程を行う場合には、第1インク組成物の「水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量」を「r1」とし、クリアインク組成物の「水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量」を「r3」とした場合、「r3/r1」の値が2以下であることが好ましい。このようにすることで、第1インク組成物及びクリアインク組成物の組成のバランスが良好となっている。すなわち、「r3/r1」の値が2以下であるため、下層の画像(例えば第1インク層)及び最も上層(例えば第3インク層)の積層構造における溶媒の分布及び残存量が良好になり、形成した画像を最終的に乾燥させる際(例えば第2乾燥工程の際)に、下層の画像(例えば第1インク層)の収縮率と最も上層(例えば第2インク層)の画像の収縮率が、大きく異ならないようになっている。これにより、得られる画像におけるひび割れが抑制される。
このような効果は、「r3/r1」の値が2以下である場合に得られるが、「r3/r1」の値は、1.8以下が好ましく、より好ましくは1.5以下である。また、「r3/r1」の値の下限値は、0.5以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは1以上である。
7.2.第3乾燥工程
本実施形態のインクジェット記録方法が第3インク層を形成する工程を含む場合には、さらに第3乾燥工程を含んでもよい。第3乾燥工程では、第1インク層、第2インク層及び第3インク層に含まれる揮発成分(水、アルキルポリオール、グリコールエーテルなど)を蒸発させる。
第3乾燥工程に用いられる方法、用いられる手段、については、第2乾燥工程で述べた後乾燥工程と同様である。すなわち、第3乾燥工程では、第1インク層、第2インク層及び第3インク層に含まれる揮発成分(水、アルキルポリオール、グリコールエーテルなど)を蒸発させ、記録物を使用できる状態まで乾燥させる。
第3乾燥工程で行われる乾燥は、第2乾燥工程(第1乾燥工程その2)を経ることにより、少なくとも第1インク層及び第2インク層が所定の水分量まで乾燥されているので、第1インク層、第2インク層及び第3インク層を形成するインク滴の流動を抑制できる。これにより、第3インク組成物のインク滴を付着させた箇所に留めておくことができるので、各層に含まれる成分が混ざり合いすぎることで生じる画像のブリード(滲み)を抑制できる。
8.インクジェット法
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、記録ヘッドを有するインクジェット記録装置を用いて行うことができる。本実施形態に係るインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置について説明する。
インクジェット記録装置は、シリアル型及びライン型のいずれでも使用することができる。これらの型のインクジェット記録装置には、記録ヘッドが搭載されており、記録媒体と記録ヘッドとの相対的な位置関係を変化させながら、記録ヘッドのノズル孔からインク組成物の液滴を所定のタイミングでかつ所定の体積(質量)で吐出させ、記録媒体に第1インク組成物を付着させて所定の画像を形成することができる。
本実施形態で用いられるインクジェット記録装置には、例えば、乾燥ユニット、ロールユニット、巻き取り装置などの公知の構成を制限無く採用することができる。また、インクジェット記録装置は、記録媒体を搬送する搬送手段、インク組成物を用いて画像(インク層)を記録するインク層形成手段、インク層乾燥手段、記録面の加熱および送風を行う全体乾燥手段等を有することができる。
搬送手段は、例えば、ローラーによって構成されることができる。搬送手段は、複数のローラーを有してもよい。搬送手段は、記録媒体が搬送できる限り、設けられる位置や個数は任意である。搬送手段は、給紙ロール、給紙トレイ、排紙ロール、排紙トレイ、及び各種のプラテンなどを備えてもよい。
インク層形成手段は、記録媒体の記録面に対して、本実施形態の第1インク組成物、第2インク組成物、必要に応じてクリアインク組成物を吐出して、第1ないし第3インク層を記録する。インク層形成手段は、ノズルを備えた記録ヘッドを備えており、各インク毎に記録ヘッドを異ならせてもよいし、各インク毎にノズル列を割り当ててもよい。
インク層乾燥手段は、第1ないし第3乾燥工程の少なくとも1つを行うことができる。インク層乾燥手段は、記録面に形成されるインク層の乾燥又は記録媒体上の揮発成分の除去のために使用される。インク層乾燥手段は、第1ないし第3乾燥工程を行うタイミングと、記録媒体の搬送経路等を考慮していずれの位置に設けてもよいし、いくつ設けてもよい。インク層乾燥手段としては、プラテン加熱等により記録媒体に熱を加える方法、記録媒体上の画像に風を吹きつける方法、さらにそれらを組み合わせる方法等が挙げられる。具体的には、これらの方法に用いられる手段としては、強制空気加熱、輻射加熱、電導加熱、高周波乾燥、マイクロ波乾燥等であってもよい。
9.インクの調製方法
上述した第1インク組成物、第2インク組成物及びクリアインク組成物は、前述した成分を任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
10.インクの物性
上述した第1インク組成物、第2インク組成物及びクリアインク組成物は、画像品質とインクジェット用インクとしての信頼性とのバランスの観点から、20℃における表面張力が15mN/m以上50mN/mであることが好ましく、20mN/m以上40mN/m以下であることがより好ましい。なお、表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインク組成物で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
また、同様の観点から、上述した各インク組成物の20℃における粘度は、2mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上10mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR−300(商品名、Pysica社製)を用いて、20℃の環境下での粘度を測定することができる。
11.実施例及び比較例
以下、本発明の実施形態を実施例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
11.1.第1インク組成物、第2インク組成物及びクリアインク組成物の調製
表1に示す材料組成にて、材料組成の異なる第1インク組成物1−(1)〜1−(4)、第2インク組成物2−(1)〜2−(5)、及びクリアインク組成物3−(1)〜1−(5)を得た。各インク組成物は、表1に示す材料を容器中に入れ、マグネチックスターラーにて2時間撹拌混合した後、孔径5μmのメンブランフィルターにて濾過してゴミや粗大粒子等の不純物を除去することにより調製した。なお、表1中の数値は、全て質量%を示し、イオン交換水はクリアインク組成物の全質量が100質量%となるように添加した。なお、顔料分散液はあらかじめ以下のように調製した。また、表中の括弧内の数字は、顔料分散液中の固形分量、エマルジョン形態で供給する樹脂粒子の固形分量を示している。表1に記載のr1、r2、r3は、各インク組成物を後述する記録物の作成に用いた記録媒体に10mg/inch2の付着量で付着させて実施例1の後乾燥工程で乾燥させた後の質量分析からインク組成物の固形分含有量を求め、これとインク組成の水溶性有機溶剤の含有量とから計算した値である。なお、シアン顔料分散液に含む樹脂分散剤には実際には低分子量の分散剤も含まれており、これは固形分として残らないものもある可能性がある。
なお、表1のr1、r2、r3の値は、r1、r2、r3の小数点以下2桁目を四捨五入した値である。一方、表2〜6のr2/r1、r3/r1の値は、小数点以下3桁目まで有するr1、r2、r3の値を用いて、これの少数点以下3桁目の値を四捨五入して得た小数点以下2桁目まで有する値からr2/r1、r3/r1を算出し、これの小数点以下2桁目を四捨五入して得た値である。
<顔料分散液の調製>
実施例及び比較例で使用する第1インク組成物(白色系インク組成物)は、着色剤として水不溶性の顔料(白色系色材)を使用した。また、実施例及び比較例で使用する第2インク組成物は、着色剤として水不溶性のカラー顔料(シアン顔料)を使用した。顔料を各インク組成物に添加する際には、あらかじめ該顔料を樹脂分散剤で分散させた樹脂分散顔料を用いた。具体的には、以下のようにして顔料分散液を調製した。
<白色系色材分散液の調製>
まず、30%アンモニア水溶液(中和剤)1質量部を溶解させたイオン交換水155質量部に、樹脂分散剤としてアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:25,000、酸価:180)4質量部を加えて溶解させた。そこに、白色系顔料である酸化チタン(C.I.ピグメントホワイト6)を40質量部加えてジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散処理を行った。その後、遠心分離機による遠心濾過を行って粗大粒子やゴミ等の不純物を除去して、白色系顔料の濃度が20質量%となるように調整し、白色系色材分散液を得た。白色系顔料の粒子径は、平均粒子径で350nmであった。
<シアン顔料分散液の調製>
まず、30%アンモニア水溶液(中和剤)2質量部を溶解させたイオン交換水160.5質量部に、樹脂分散剤としてアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:25,000、酸価:180)7.5質量部を加えて溶解させた。そこに、シアン顔料としてC.I.ピグメントブルー15:3を30質量部加えてジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散処理を行なった。その後、遠心分離機による遠心濾過を行って粗大粒子やゴミ等の不純物を除去し、シアン顔料濃度が15質量%となるように調整して、シアン顔料分散液を得た。その際のシアン顔料の粒子径は、平均粒子径で100nmであった。
なお、表1中、化合物名以外で記載した材料は次の通りである。
・JONCRYL1992(商品名、BASFジャパン株式会社製、スチレン−アクリル酸共重合体エマルジョン、Tg:78℃、43%分散液)
・タケラックW−6061(商品名、三井化学株式会社製、ポリウレタン樹脂エマルジョン、Tg:25℃、30%分散液)
・エステル系樹脂粒子エマルジョンA
エステル系樹脂粒子エマルジョンAは、以下のように作成した。ポリエステル樹脂の原料モノマーとして、ビスフェノールAのポリオキシプロピレン(2.2)付加物、ビスフェノールAのポリオキシエチレン(2.0)付加物、水素化ビスフェノールA、イソフタル酸、フマル酸、及び酸化ジブチルスズを、混合して重合し、ポリエステル樹脂を得た。
係るポリエステル樹脂をアニオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:「ネオペレックスG−15」)を固形分として10gをメチルエチルケトン200gと混合し、25℃にて溶解させた。その後、イオン交換水600g、25%アンモニア水3.0gを、2000mLのSUS304製ステンレスビーカー中で混合し、超音波ホモジナイザー(ドクターヒールッシャー社製 製品名:UP−400S)を用い、30℃で分散処理した。その後50℃に昇温し、メチルエチルケトンを減圧留去した。その後、イオン交換水にて固形分30質量%に調整し、エステル系樹脂粒子エマルジョンA(Tg:60℃)を得て、これを用いた。
・モビニール972(商品名、日本合成化学工業株式会社製、Tg101℃、50%分散液)
・AQUACER515(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリエチレンワックスエマルジョン、融点135℃、35%分散液)
・ノプコートPEM−17(商品名、サンノプコ株式会社製、ポリエチレンワックスエマルジョン、融点103℃、40%分散液)
・BYK−348(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、シリコーン系界面活性剤)
・サーフィノール DF−110D(商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製、アセチレングリコール系界面活性剤)
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11.2.記録物の作成
各評価に使用する記録物は、次のようにして作製した。
インクジェットプリンターSC−S30650(商品名、セイコーエプソン株式会社製)の改造機に記録媒体(軟包装用フィルム:二軸延伸OPP<ポリプロピレンフィルム>、フタムラ化学株式会社製、商品名:FOS−BT、膜厚60μm)をセットし、記録ヘッドに第1インク組成物、第2インク組成物、クリアインク組成物を充填した。プリンターには、乾燥機構として、送風機構、熱伝導機構及び輻射加熱機構(具体的には、それぞれ、送風ファン、背面プラテンヒーター、赤外線照射装置)を取り付けた。
第1インク層を、表2〜表6に記載のインク組成物(表1参照)にて、720×720dpiの解像度、10.0mg/inch2の付着量で、記録媒体にインクジェット塗布しパターンを形成した。吐出中及び吐出後、表2〜表6に記載する乾燥条件で第1インク層を加熱乾燥させた。なお、実施例10については、第1インク層に第2インク組成物(カラーインク組成物)を用い、第2インク層に第1インク組成物(白色系インク組成物)を用いた。
第1乾燥工程により第1インク層の水分蒸発率(水分乾燥率)が表中の値になった時点で、第1インク層のパターンよりも内側に小さく、重ねて第2インク層を形成した。なお、水分蒸発率は、第1乾燥工程時の記録媒体上のインク層を、熱質量分析(TGA:TAインスツルメンツ製、商品名:Q500)で分析した。さらに、記録媒体から採集したインク層の試料の液体クロマトグラフィーによる分析(商品名:XevoG2−SQTof、Waters社製)も行った。このようにして、記録に用いたインク組成物に含有する水や水溶性有機溶剤を定量し、当初のインク組成との比較から、水や水溶性有機溶剤の蒸発量を算出した。なお、この時点の第1インク層における水溶性有機溶剤の蒸発率(乾燥率)は水分蒸発率が90質量%以下の場合は約0質量%、それ以上の場合は約3質量%であった。なお、比較例11については、第1乾燥工程の温度を70℃としたことで、水溶性有機溶剤の30質量%が蒸発していた。
第2インク層の記録解像度と付着量は第1インク層と同じとした。付着後、全ての実施例及び比較例について、実施例3の第1乾燥工程と同じ加熱乾燥条件で、第1乾燥工程その2(上記実施形態の第2乾燥工程の一態様に相当する)を行った。
このようにして乾燥させた、第1インク層と第2インク層の積層体からなるパターンにおける、第1インク層と第2インク層の合計の水分の蒸発率は、測定したところ95質量%であった。
また、第3インク層を形成する例では、第1インク層と第2インク層の合計の水溶性有機溶剤の蒸発率が、3質量%となった時点で、表3〜表6に記載のクリアインク組成物(表1参照)の塗布を行った。塗布量は、720×720dpiの解像度、7.0mg/inch2の付着量とした。そして実施例3の第1乾燥工程と同じ加熱条件で、第1乾燥工程その2(上記実施形態の第2乾燥工程の一態様に相当する)を行った。
第3インク層を形成していない例では、第1乾燥工程及び第2乾燥工程(第1乾燥工程その2)を上記のように行った後、プリンターから記録媒体を排出した。
第3インク層を形成した例では、上記のように第1乾燥工程及び2回の第2乾燥工程(第1乾燥工程その2)を行った後に、プリンターから記録媒体を排出した。
そして、第3インク層を形成していない例では、第2乾燥工程(後乾燥工程:上記実施形態の第2乾燥工程の一態様に相当する)を行い、第3インク層を形成した例では、第3乾燥工程(後乾燥工程)を、表中の条件で行った。
なお、表中の記録媒体の表面温度は、非接触式温度計にて測定した。複数の機構を用いる場合は、各機構により加熱を受ける場所ごとに温度を測り、それぞれ表に記載した。
また、表中の第1乾燥工程の送風の条件は、記録中の記録物に対して40℃の温度の風を、記録媒体の記録面での風速が0.5m/秒又は1m/秒となるように調整して送風した。また、実施例2では、記録時のプリンター紙案内部(プラテン)のヒーター設定を「記録面の表面温度が40℃となる設定」とした。さらに、赤外線照射は、照射装置の設定を「記録面の表面温度が50℃又は70℃となる設定」とした。
表中の第2乾燥工程(後乾燥工程)及び第3乾燥工程の送風の条件は、記録中の記録物に対して90℃の温度の風を、記録媒体の記録面での風速が約20m/秒となるように調して送風した。また、赤外線照射は、照射装置の設定を「記録面の表面温度が80℃となる設定」とした。
Figure 2017109485
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11.3.記録物の評価
得られた各実施例及び比較例の記録物を以下の基準で評価した。また、その結果を表2〜表6に示した。
11.3.1.滲みの評価
記録物の記録面側から目視することにより、画質評価の一つとして滲みを評価した。評価基準は以下のとおりである。
A:各インク層間のいずれにも、滲み・混色がない
B:各インク層間のいずれかに、わずかに滲み・混色がある
C:各インク層間のいずれかに、滲み・混色が目立つ
D:各インク層間のいずれかにおける、滲み・混色が著しい
11.3.2.ひび割れの評価
記録物の記録面側から目視により、画質評価の一つとしてひび割れを評価した。評価基準は以下のとおりである。なお、実施例10は、第1インク層が色画像部、第2インク層が白画像部となっているため、以下の評価基準の「第2インク層(色画像部)」を「第2インク層(白画像部)」と、「第1インク層(白画像部)」を「第1インク層(色画像部)」と読み替えて評価した結果を示した。
A:第2インク層(色画像部)のひび割れが全くない
B:第2インク層(色画像部)の表面のひび割れにより、その下の第1インク層(白画像部)が見えている個所がわずかにある
C:第2インク層(色画像部)の表面のひび割れにより、その下の第1インク層(白画像部)が見えている個所がかなりある
D:第2インク層(色画像部)の下の第1インク層(白画像部)もひび割れて記録媒体が見えている箇所がある
11.3.3.密着性評価
記録物を20℃〜25℃/40%RH〜60%RH環境の実験室にて5時間放置した後、記録物の記録面(画像の形成部分)に透明粘着テープ(商品名:透明美色、住友スリーエム株式会社製)を貼り付けた。そして、貼り付けたテープを手で剥がして、記録面のインク剥がれやテープへのインク移り状態を確認することにより、テープ剥離性(耐剥離性)に基づいて密着性(耐久性)を評価した。密着性の評価基準は、以下のとおりである。
A:画像剥がれがなくテープにもインク付着がない
B:画像剥がれがなくテープにわずかにインク付着がある
C:画像剥がれ・テープへのインク付着が認められる
D:画像が全部剥がれる
11.3.4.耐擦性評価
記録物を20℃〜25℃/40%RH〜60%RH環境の実験室にて5時間放置した後、記録物の記録面(画像の形成部分)を学振型摩擦堅牢度試験機AB−301(商品名、テスター産業株式会社製)を用いて、荷重200g下・綿布にて20回擦ったときの記録面のインク剥がれ状態や綿布へのインク移り状態を確認することにより、耐擦性(耐久性)を評価した。耐擦性の評価基準は、以下のとおりである。
A:画像に擦り跡なく布へのインク付着がない
B:画像の擦り跡・布へのインク付着がわずかにある
C:画像の擦り跡・布へのインク付着が認められる
D:画像が剥がれて布へのインク付着が著しい
11.4.評価結果
以上の評価結果を表2〜表6に示す。
表2〜表5の実施例の評価結果の通り、全ての実施例に係る記録物は、いずれも、滲み、及び、ひび割れの評価において、優れていた。このことは、「r2/r1」の値が2以下であり、第1インク組成物及び第2インク組成物の組成のバランスが良好であることと、第1乾燥工程及び/又は第2乾燥工程(第1乾燥工程その2)の終了時点での記録媒体上の水を、80質量%以上蒸発させたこと、の両者に起因していると考えられる。
実施例10では、「r2/r1」の値が0.6と小さいが、ひび割れ評価が若干劣るものの、高画質な記録物が得られることが分かった。
また、実施例38では、ひび割れ評価が若干劣るものの、高画質な記録物が得られるが、これは、第1インク組成物の水溶性有機溶剤(とともに固形分)の含有量が増加しているが、第1インク層上の第2インク層との「r2/r1」の値が0.5以上2以下の範囲であるためひび割れが良好であったものと考えられる。
また、実施例1〜3を比較すると、第1乾燥工程における第1インクの水分蒸発率が比較的低い場合、耐ひび割れ性がやや低下することがわかったが、一方で、第1乾燥工程における記録媒体の表面温度を低くすることができることがわかった。また、実施例1、2、3の順で、第一インク層形成工程に用いた記録ヘッドの吐出安定性に優れていることがわかった。吐出安定性は、記録物作成試験を60分間連続して行った後に第1インク層形成工程に用いた記録ヘッドの飛行曲りや不吐出ノズルの不良ノズルの発生の確認の試験を行い不良ノズル発生率から判断した。このことから、記録媒体表面温度を比較的低くする場合、第1乾燥工程で記録媒体へ与える熱が少なく、第1乾燥工程で発生する熱をノズルへ及ぼすことにより吐出不良を発生させるという弊害が少なく好ましいことがわかった。また、第1乾燥工程に要する時間も短縮できる傾向があることがわかった。このことから、第1乾燥工程における第1インクの水分蒸発率が比較的低い場合であっても、耐ひび割れ性が優れた記録が行える点で本実施例の記録方法が優れていることがわかった。
これに対して、表6の比較例1〜比較例10に係る記録物では、「r2/r1」の値が2超であるか、第1乾燥工程の終了時点での記録媒体上の水が、80質量%未満しか蒸発されていないため、滲み、及び、ひび割れ(特にひび割れ)の評価において、不十分であった。
なお、比較例11に係る記録物では、インク組成物そのものでの「r2/r1」の当初の値が2超であるが、第1インク層を印刷した後の第1乾燥工程で、水の蒸発量が他の例と比べて高く、液成分が減ったため、第2インク層の滲みは良好となったが、一方で、一部の水溶性有機溶剤の蒸発も他の例と比べてより進んでおり、第1乾燥工程後のr1の値は第1インク自身の当初の値よりも低くなっていることが予想され、よって、記録媒体上での各インク層間における「r2/r1」の値は当初より高くなり、第2乾燥工程(後乾燥工程)においてひび割れがさらに著しく発生したと推測する。
次に、耐久性の評価結果をみると、実施例4、10の比較から、第2インク層にアクリル系樹脂を用いたインク組成物を用いることで耐擦性試験結果が特に向上した。
また、第3インク層を有する記録物とすることで、耐擦性試験結果が、第3インク層を有さない記録物に比較して、総じてさらに良好となっていた。
また、実施例のうち、実施例3、4、7の比較から、第1インク層に用いるインク組成物に、ウレタン系樹脂粒子、又はエステル系樹脂粒子を用いている例では、耐擦性が非常に良好であった。
比較例10は、実施例第1インク層に用いるインク組成物にウレタン系樹脂粒子を用いているため、第3乾燥工程(後乾燥工程)を経た記録物の密着性は良好であるものの、第1乾燥工程で第1インク層の乾燥が不十分(水分蒸発率が5質量%)である段階で第2インク層の印刷を行なったため、滲みが著しく発生した。
また、実施例中3、4、7の比較から、実施例中の第1インク層に用いるインク組成物に、ウレタン系樹脂粒子又はエステル系樹脂粒子が含まれているものは、密着性がB以上となることが分かった。これは、これらの樹脂粒子が、軟包装用フィルムに対して、優れた密着性を示し、画像全体の密着性が良好となったことによると考えられる。
さらに、Tgが低い樹脂粒子が含まれる第1インク層(第1インク組成物1−(2))に対して、第2インク層を重ね打ちした場合、又は、第2インク層及び第3インク層を重ね打ちした場合、第2インク層又は第3インク層をTgの高い樹脂粒子が含まれるインク組成物によって形成することにより、耐擦性が向上する傾向が見られた(実施例4、5、6、12、15、18、21、24、27、30、33、36及び比較例10を参照)。
このような傾向は、Tgが低い樹脂粒子が含まれる第1インク層(第1インク組成物1−(3)、1−(4))に対して、第2インク層又は第3インク層をよりTgの高い樹脂粒子が含まれるインク組成物によって形成する場合にも同様の傾向が見られ、耐擦性が向上することがわかった(実施例7、13、16、19、22、31、38を参照)。
これらのことから、より高いTgを有する樹脂粒子により表面側のインク層を形成することにより、耐擦性が向上することを示唆している。
さらに、第1インク層の樹脂粒子をエステル系樹脂粒子とし、こてれに対して、第2インク層又は第3インク層を同種のエステル系樹脂粒子が含まれるインク組成物によって形成する場合にも、耐久性が向上する傾向が見られた(実施例8、9、16、19、22、25、28、31、34、37を参照)。このことから、エステル系樹脂粒子を含むインク組成物同士を重ね打ちすることにより、インク層間の結合力が強くなっていることが示唆された。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

Claims (19)

  1. 記録媒体に、水と、水溶性有機溶剤と、色材を少なくとも含む固形分と、を含む第1インク組成物を、インクジェット法で吐出して第1インク層を形成する工程と、
    前記第1インク層における前記第1インク組成物に含有していた水の80質量%以上を蒸発させる第1乾燥工程と、
    前記第1乾燥工程を経た前記第1インク層に、水と、水溶性有機溶剤と、色材を少なくとも含む固形分と、を含む第2インク組成物をインクジェット法で吐出して第2インク層を形成する工程と、
    前記第2インク層を形成する工程を経た記録媒体に、前記記録媒体の揮発成分を蒸発させる第2乾燥工程と、
    を備え、
    前記第1インク組成物の「水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量」を「r1」とし、前記第2インク組成物の「水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量」を「r2」とした場合、「r2/r1」の値が2以下である、インクジェット記録方法。
  2. 請求項1において、
    前記記録媒体は、インク低吸収性又はインク非吸収性の記録媒体である、インクジェット記録方法。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    前記第1インク組成物は、色材として金属化合物粒子及び金属粒子の少なくとも一方を含む、背景画像用インク組成物であり、
    前記第2インク組成物は、非白色の色材を含む着色インク組成物である、インクジェット記録方法。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
    前記第1乾燥工程は、前記記録媒体の表面温度が25℃以上50℃以下で行われる、インクジェット記録方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
    前記第1インク組成物は、前記固形分として樹脂粒子を含む、インクジェット記録方法。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
    前記第2インク組成物は、前記固形分として樹脂粒子を含む、インクジェット記録方法。
  7. 請求項5又は請求項6において、
    前記樹脂粒子は、ウレタン系樹脂粒子、エステル系樹脂粒子、アクリル系樹脂粒子の少なくとも一種である、インクジェット記録方法。
  8. 請求項5ないし請求項7のいずれか一項において、
    前記第1インク組成物が、ウレタン系樹脂粒子及びエステル系樹脂粒子の少なくとも一種を含み、
    前記第2インク組成物が、エステル系樹脂粒子及びアクリル系樹脂粒子の少なくとも一種を含む、インクジェット記録方法。
  9. 請求項7又は請求項8において、
    前記エステル系樹脂粒子は、
    ポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなる側鎖セグメント(A2)からなるグラフトポリマーであるポリエステル樹脂を含む、インクジェット記録方法。
  10. 請求項1ないし請求項9のいずれか一項において、
    前記「r2/r1」が、0.5以上2以下である、インクジェット記録方法。
  11. 請求項1ないし請求項10のいずれか一項において、
    前記第1乾燥工程は、前記第1インク層における前記第1インク組成物に含有していた水溶性有機溶剤の蒸発量が20質量%以下で行われる、インクジェット記録方法。
  12. 請求項1ないし請求項11のいずれか一項において、
    前記第1乾燥工程は、熱伝導、輻射線照射及び送風の少なくとも一種により行われる、
    インクジェット記録方法。
  13. 請求項1ないし請求項12のいずれか一項において、
    前記第2乾燥工程は、前記記録媒体の表面温度が、70℃以上で行われる、インクジェット記録方法。
  14. 請求項1ないし請求項12のいずれか一項において、
    前記第2乾燥工程を行った後、前記第2インク層に、樹脂粒子と、水溶性有機溶剤と、水と、を含むクリアインク組成物をインクジェット法で吐出して第3インク層を形成する工程を有する、インクジェット記録方法。
  15. 請求項14において、
    前記クリアインク組成物の「水溶性有機溶剤含有量/固形分含有量」を「r3」とした場合、「r3/r1」の値が2以下である、インクジェット記録方法。
  16. 請求項14又は請求項15において、
    前記第2乾燥工程で前記第1インク組成物と前記第2インク組成物とに含有していた合計の水の80質量%以上を蒸発させた後に、前記第3インク層を形成する工程を行う、インクジェット記録方法。
  17. 請求項14ないし請求項16のいずれか一項において、
    前記第3インク層を形成する工程の後に、前記記録媒体上の揮発成分を蒸発させる第3乾燥工程を行う、インクジェット記録方法。
  18. 請求項1ないし請求項17のいずれか一項において、
    前記第1インク組成物及び前記第2インク組成物が、樹脂粒子を1質量%以上15質量%以下、水溶性有機溶剤を3質量%以上40質量%以下、色材を0.5質量%以上15質量%以下含む、インクジェット記録方法。
  19. 請求項1ないし請求項18のいずれか一項において、
    前記水溶性有機溶剤は、沸点が250℃以下である水溶性有機溶剤を含む、インクジェット記録方法。
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