本明細書では、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」を指す。従って、例えば(メタ)アクリル酸には、アクリル酸とメタクリル酸が含まれ、(メタ)アクリル酸エステルにはアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルが含まれる。その他の「(メタ)アクリル」が用いられている化合物についても同様である。
本発明の光学透明粘着シートは、{(初期の硬度−10分後の硬度)}/(初期の硬度)×100で計算される押し込み硬度の緩和率が70%以上である感圧型粘着剤層を少なくとも1層以上有することを特徴とする。
上記押し込み硬度の緩和率の条件を満たしてさえいれば、粘着剤の組成に関しては特に限定されるものではないが、耐白化性や耐湿熱発泡性など光学用粘着剤のその他の物性を満足させるため、好ましくは感圧型粘着剤層を構成する粘着剤組成物は、該粘着剤組成物を構成する(メタ)アクリル共重合体のモノマー成分の全量に対し、(A)50〜95重量%の (メタ)アクリル酸エステルモノマー、(B)4.9〜49.9重量%の親水性モノマー、および(C)0.1〜30重量%の極性基含有モノマーをモノマー成分として含有する(メタ)アクリル共重合体を含有する。
(A)の (メタ)アクリル酸エステルモノマーは、アクリル系粘着剤におけるベースポリマーを構成するモノマー主成分であり、1種のみを使用することもできるし、2種以上の(メタ)アクリル酸エステルを組み合わせて使用することもできる。(メタ)アクリル酸エステルを組み合わせた場合の各々の(メタ)アクリル酸エステルの割合は任意に選択し得る。
(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば炭素数1〜15の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーが挙げられ、炭素数1〜15の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、および芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル等が挙げられる。好ましい(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルが挙げられる。
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。好ましい脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸イソボルニルが挙げられる。
芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸としては、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのみであってもよいし、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、脂環式(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の他の(メタ)アクリル酸エステルとの組み合わせであってもよいが、好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステルと脂環式(メタ)アクリル酸エステルとの組み合わせである。
(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、(メタ)アクリル共重合体を構成するモノマー成分全量に対し、50重量%以上95重量%以下である。(メタ)アクリル酸エステルの含有量が50重量%(下限)以上であると、被着体に対する十分な接着力が得られ、95重量%(上限)以下であると、他の5%の親水性モノマーや極性基含有モノマーにより耐白化性又は耐湿熱発泡性等の特性を付与することが出来る。粘着シートに、応力緩和性および液晶ムラの抑制という本発明の効果を発揮するために必要な他の成分の添加が可能である。(メタ)アクリル酸エステル中が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと脂環式(メタ)アクリル酸エステルとの組み合わせである場合、それぞれの成分の割合は特に限定されないが、例えば30〜85重量%の(メタ)アクリル酸アルキルエステルがと10〜65重量%の脂環式(メタ)アクリル酸エステルとを含むことができる。
(B)の親水性モノマーは、本発明の光学透明粘着シートが高温高湿下に曝された後でも白化しない性能を付与する役割を有するモノマー成分である。親水性モノマー成分を含む(メタ)アクリル共重合体を用いることにより、得られる光学透明粘着シートは、高温高湿下に曝された後に室温に戻された場合にでも、水を微分散させることができ、その結果、白化するのを抑制することができる。
親水性モノマーとしては、分子内に1つの(メタ)アクリロイル基とポリエチレンオキサイド鎖とを有する親水性モノマーおよび分子内に1つの(メタ)アクリロイル基と水酸基とを有する親水性モノマーが挙げられる。
分子内に1つの(メタ)アクリロイル基と水酸基とを有する親水性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記分子内に1つの(メタ)アクリロイル基とポリエチレンオキサイド鎖とを有する親水性モノマーとしては、例えば、ブレンマーPME−1000(エチレンオキサイドの繰り返し数=23、末端メチル基、日油社製)、ブレンマーPME−400(エチレンオキサイドの繰り返し数=9、末端メチル基、日油社製)、ブレンマーPME−2000(エチレンオキサイドの繰り返し数=45、末端メチル基、日油社製)、NKエステルAM−130G(エチレンオキサイドの繰り返し数=13、末端メチル基、新中村化学工業社製)、ライトエステル041MA(エチレンオキサイドの繰り返し数=30、末端メチル基、共栄社化学社製)、ブレンマーPSE−1300(エチレンオキサイドの繰り返し数=30、末端オクタデシル基、日油社製)、ブレンマーAE−400(エチレンオキサイドの繰り返し数=10、末端水酸基、日油社製)、ブレンマーANE−1300(エチレンオキサイドの繰り返し数=30、末端ノニルフェニル基、日油社製)等が市販されている。
(B)の親水性モノマーは、1種のみを使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
親水性モノマーの含有量は、(メタ)アクリル共重合体を構成するモノマー成分全量に対し、4.9〜49.9重量%である。この範囲にあることにより、粘着剤組成物に白化抑制性及び発泡抑制性が付与される。含有量が4.9重量%以上であると加熱及び加湿時の粘着剤組成物の白化が抑制され、また、含有量が49.9重量%以下であると、粘着剤の粘着性が良好であり、取り扱いや加工性に優れている。
(C)の極性基含有モノマーは、光学透明粘着シートの凝集力または粘着力を増強するために添加されるモノマー成分である。
極性基含有モノマーは、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アミド基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び、アミノ基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選択される少なくとも1種であり、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイル酢酸、(メタ)アクリロイルプロピオン酸、(メタ)アクリロイル酪酸、(メタ)アクリロイルペンタン酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルフォリン、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。これらの極性基含有モノマーは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
極性基含有モノマーの含有量は、(メタ)アクリル共重合体を構成するモノマー成分全量に対し、0.1重量%以上30重量%以下である。含有量が0.1重量%以上であると、光学透明粘着シートの凝集力または粘着力を増強され粘着剤の信頼性は増し、含有量が30重量%以下であると、低極性の被着体への密着力をも保持する程度に、適度な極性が付与される。
上記のモノマー成分を共重合して、(メタ)アクリル共重合体が得られる。
(メタ)アクリル共重合体を得るための重合方法としては、重合開始剤を用いて行う公知の重合方法(溶液重合、懸濁重合や塊状重合等)を採用することができる。
上記溶液重合に用いる溶媒としては、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル等が挙げられる。
重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩、有機過酸化物(過酸化物系開始剤)又はアゾ系化合物(アゾ系開始剤)等が挙げられる。なかでも、ITO等の金属又は金属酸化物を含有する金属薄膜を被着体とする場合に該金属薄膜に与える影響を考慮すると、有機過酸化物又はアゾ化合物が好ましい。
上記過硫酸塩としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。
アゾ系化合物としては、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライド等が挙げられる。
重合開始剤の使用量は、特に制限されず、例えば、単量体成分の総量に対して、0.001〜50重量%、好ましくは0.01〜10重量%程度である。
さらに、任意選択で、重合反応に、重合体の分子量を調節するために連鎖移動剤を用いてもよい。粘着剤の緩和性を向上させるためのひとつの手法として、アクリル共重合体の分子量を低減させる方法が考えられるため、連鎖移動剤を用いて任意の分子量に調整することができる。連鎖移動剤としては、例えば1−ドデカンチオール、t−ドデカンチオール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルへキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノール等のメルカプタン類等が挙げられる。これら連鎖移動剤は、適宜、1種又は2種以上が用いられる。連鎖移動剤の含有量は、単量体成分の合計量100重量部に対して、例えば、0.001〜0.5重量部である。
本発明では、各モノマー成分を用いて重合させて得られた(メタ)アクリル共重合体はそのまま乾燥させて用いてもよく、また、(メタ)アクリル共重合体をさらに架橋剤で架橋させることにより硬化させて用いてもよい。(メタ)アクリル共重合体を架橋させることにより、剥離材または基材の剥離性および粘着性に加えて、(メタ)アクリル共重合体に耐熱性等の耐久性も付与される。なお、(メタ)アクリル共重合体の架橋は、アクリル系粘着剤層の形成の際、または形成後に行うことができる。
上記の架橋剤としては、従来公知のものを用いることができるが、ポリイソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、金属キレート系化合物、メラミン系化合物が好ましく、特にポリイソシアネート系化合物が好適である。架橋剤は単独で又は2種以上混合して使用することができる。なお、ポリイソシアネート系化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートの二重体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネート系化合物の使用量は、例えば、(メタ)アクリル共重合体を構成するモノマー成分全量に対して0.01〜20重量%(好ましくは0.05〜15重量%)程度である。一実施形態では、上記(メタ)アクリル共重合体を含有する粘着剤組成物は、架橋剤を含む。別の実施形態では、上記(メタ)アクリル共重合体を含有する粘着剤組成物は、架橋剤を含まない。
アクリル共重合体のモノマー成分の全量は、粘着剤組成物の量に対し通常50重量%以上であり、好ましくは60重量%、より好ましくは70重量%、さらに好ましくは80重量%である。一実施形態では、アクリル共重合体のモノマー成分は、 (メタ)アクリル酸エステルモノマー(A)、親水性モノマー(B)、及び極性基含有モノマー(C)からなり、これら(A)〜(C)の合計量が上記の割合を満たす。
上記の粘着剤組成物には、必要に応じて各種添加剤が添加されていてもよい。このような添加剤としては、例えば、粘着付与樹脂(例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂等)、熱安定剤、酸化防止剤、静電気防止剤、増粘剤、充填剤、着色剤(顔料又は染料等)、紫外線吸収剤、界面活性剤等の公知の各種添加剤が挙げられる。このような添加剤は、添加される場合、通常、粘着剤組成物の質量に対して0.01〜10重量%程度である。
上記粘着剤組成物からなるアクリル系粘着剤としては、その調製過程でいかなる形態も取りうるが、取り扱い性の面で、溶剤系、エマルション系、ホットメルト系、光重合系等の形態で用いることが好ましい。アクリル系粘着剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
次に、本発明の光学透明粘着シートおよびその製造方法について説明する。
本発明の光学透明粘着シートは、{(初期の硬度−10分後の硬度)}/(初期の硬度)×100で計算される押し込み硬度の緩和率が70%以上である上記の粘着剤組成物からなるアクリル系粘着剤から形成された感圧型粘着剤層を少なくとも1層以上有することを特徴とする。
粘着剤層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。粘着剤層の厚みとしては、高透明性等を損なわない範囲であれば特に制限されないが、例えば、1〜数千μm程度、好ましくは、1〜500μm、より好ましくは25〜300μm、さらに好ましくは100〜250μm程度の範囲から選択することができる。
なお、粘着剤層の形成方法は、特に制限されない。例えば、慣用のコーター(グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等)を用いて、アクリル系粘着剤を所定の面(例えば、基材表面等)に塗布することにより、粘着剤層を形成することができる。
光学透明粘着シートとしては、前記粘着剤層を有していれば、その構成は特に制限されない。具体的には、光学透明粘着シートとしては、例えば、(1)粘着剤層のみから形成された構成の基材レス両面粘着シート、(2)基材の少なくとも一方の面に粘着剤層が形成され且つ基材の両面側に粘着面が形成された構成の基材付き両面粘着シート、(3)基材の一方の面に粘着剤層が形成された構成の基材付き粘着シート等が挙げられる。なお、光学透明粘着シートが基材付き両面粘着シートである場合、基材の両面に形成された粘着剤層(粘着剤層)が粘着剤層であってもよく、基材の一方の面に形成された粘着剤層が粘着剤層であり且つ基材の他方の面に形成された粘着剤層が粘着剤層以外の粘着剤層(「非粘着剤層」と称する場合がある)であってもよい。
基材としては、紙等の紙系の基材、布、不織布、ネット等の繊維系の基材;金属箔、金属板等の金属系の基材;プラスチックのフィルムやシート等のプラスチック系の基材;ゴムシート等のゴム系の基材;等の適宜な薄層体を用いることができる。基材として、プラスチックのフィルムやシート等のプラスチック系基材を好適に用いることができる。
また、本発明の光学透明粘着シートには、離型紙又は離型フィルム等の剥離材が取り付けられていてもよい。剥離材としては、粘着シート又はテープ用の公知の剥離材を用いることができる。
光学透明粘着シートは、ロール状に巻回された形態で形成されていてもよく、シートが積層された形態で形成されていてもよい。すなわち、本発明の粘着シートは、テープ状、シート状等の形態を有することができる。従って、粘着シートには、粘着シートまたは粘着テープが含まれる。
本発明の光学透明粘着シートを製造する方法は特に限定されない。基材レスの光学透明粘着シートを製造する方法として、例えば、上記粘着剤組成物を離型材の離型処理面に塗工することによって塗膜を形成し、得られた塗膜の上に、離型処理面が塗膜に接するようにして新たに用意した離型材を重ね合わせて積層体を得た後、得られた積層体をゴムローラ等により加圧する方法等が挙げられる。
また、本発明の光学透明粘着シートを製造する方法として、上記(メタ)アクリル共重合体の原料となる上記混合モノマーを、塊状重合によってラジカル重合させ、上記(メタ)アクリル系共重合体を製造すると同時にシート化まで行う方法も好適である。
上記塊状重合は、重合熱の除去がしやすく、反応制御がしやすいことから、光重合であることが好ましい。
特に、本発明の光学透明粘着シートを製造する方法として、上記混合モノマー、光重合開始剤、及び、必要に応じて添加剤等を含有し、かつ、溶剤を含有しないモノマー組成物を、一方の面が離型処理された透明な合成樹脂フィルムの離型処理面に塗工してモノマー層を形成した後、このモノマー層上に、一方の面が離型処理された別の透明な合成樹脂フィルムの離型処理面を重ね合わせ、合成樹脂フィルムを透してモノマー層に紫外線照射等の光照射を行うことにより、上記混合モノマーをラジカル重合させる方法が好適に用いられる。なお、上記透明な合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。
本発明の光学透明粘着シートを光重合によって製造する場合には、重合と同時に架橋構造を形成できることから、上記混合モノマーは、重合性官能基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、得られる光学透明粘着シートの応力分散性の低下が小さく粘着性能に優れる点から、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、水添ポリブタジエンジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート、ポリエステルジアクリレートが好ましい。
上記混合モノマーが上記多官能(メタ)アクリレートを含有する場合、上記多官能(メタ)アクリレートの配合量としては、上記混合モノマー中の好ましい上限が5重量%である。上記多官能(メタ)アクリレートの配合量が5重量%以下であると、得られる光学透明粘着シートは、被着体に対する粘着力及び初期接着性が得られ、信頼性が維持される。上記多官能(メタ)アクリレートは含有量が増えることにより粘着剤の架橋度が増し粘着剤の緩和性が低下するため、粘着剤の取り扱いに問題がなければ出来る限り少ない量で用いるほうが好ましい。混合モノマー中の多官能(メタ)アクリレートの配合量のより好ましい上限は3重量%である。好ましい一つの実施形態では、多官能(メタ)アクリレートの配合量は、混合モノマー100重量部に対し0.1重量部以下である。
上記光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(メルク社製、商品名「ダロキュア2959」)等のケトン系光重合開始剤、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチル−アセトフェノン(メルク社製、商品名「ダロキュア1173」)、メトキシアセトフェン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェン(チバガイギー社製、商品名「イルガキュア651」)、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン(チバガイギー社製、商品名「イルガキュア184」)等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンジルジメチルケタール等のケタール系光重合開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナート等が挙げられる。
上記光重合開始剤の配合量としては、上記混合モノマー100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部である。上記光重合開始剤の配合量が0.01重量部以上であると、上記混合モノマーの重合が進行し、得られる光学透明粘着シートは、凝集力を有し必要な物性が得られる。本発明では、粘着剤の緩和性を向上させるためのひとつの手法として光重合開始剤の配合量を増加させ、アクリル共重合体の分子量を低減させる方法が考えられるため、一般的に用いられる配合量に対して多量の光重合開始剤を用いても良い。
上記光重合開始剤の配合量が10重量部以下であると、光照射時にラジカル発生量が低く維持され、得られる(メタ)アクリル共重合体の分子量が良好となる。上記光重合開始剤の配合量のより好ましい下限は0.03重量部、より好ましい上限は8重量部である。多官能(メタ)アクリレートの配合量が混合モノマー100重量部に対し0.05重量部以下の場合、光重合始剤の配合量は6重量部以上であることが好ましい。また、混合モノマーが後述の連鎖移動剤を含まない場合、光重合開始剤の配合量が5重量部以上であることが好ましい。
上記光照射に用いられるランプとしては、例えば、波長400nm以下に発光分布を有するランプ等が挙げられる。上記波長400nm以下に発光分布を有するランプとしては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウエーブ励起水銀ランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。なかでも、上記光重合開始剤の活性波長領域の光を効率よく発光するとともに、上記モノマー層に含まれる上記光重合開始剤以外の成分の光吸収が少なく、上記モノマー層の内部にまで光が充分に到達して上記混合モノマーを効果的に重合させることができることから、ケミカルランプが好ましい。
上記光照射における光照射強度および照射時間は、(メタ)アクリル共重合体の重合度又は光学透明粘着シートの性能等に合わせて、当業者により適宜選択することができる。粘着剤の緩和性を向上させるためのひとつの手法として光照射強度を増加させ、アクリル共重合体の分子量を低減させる方法が考えられるため、より強い光照射強度で照射を行っても良い。
本発明の光学透明粘着シートは、応力緩和性に優れている。
応力緩和性は、押し込み硬度の緩和率の測定により評価される。具体的には、押し込み硬度の緩和率とは、光学透明粘着シートの感圧型粘着剤層を1.5cm×1.5cmの寸法で厚さ4mm〜4.5mm積層させたサンプルを作製し、サンプルの上を硬度計の真下に置いて1kgの荷重を加えたときの硬度計が示す値とそのまま10分間保持したときの値とを読み取り、
{(初期の硬度−10分後の硬度)}/(初期の硬度)×100
で計算される値である。
本発明の光学透明粘着シートは、感圧型粘着剤層の押し込み硬度の緩和率が70%以上であるため、応力緩和性に優れている。上述したように、当業者には、多官能アクリレートの量、光重合開始剤の量、連鎖移動剤の量、及び光照射強度等を調整することにより、望ましい応力緩和率を得ることができることが理解される。
また、本発明の光学透明粘着シートは、液晶のムラが抑制されている。液晶のムラは観察者が肉眼により評価することができる。
さらに、本発明の光学透明粘着シートの感圧型粘着剤層は、粘着剤として、ガラス転移点Tgが−30℃〜20℃の範囲であることが好ましい。
本発明の光学透明粘着シートの用途は特に限定されず、携帯電話、スマートフォン、パソコン、電子ペーパー、タブレット型パーソナルコンピューターおよびゲーム機等の等の画像表示装置を製造する際に、表面を保護するためのカバーパネルとタッチパネルモジュールとを接着したり、カバーパネルとディスプレイパネルモジュールとを接着したり、タッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとを接着したりするのに好適に用いることができる。上記粘着シートはこれら以外の光学用途にも適用可能である。
本発明の光学透明粘着シートを介して基材同士が積層された光学積層体もまた、本発明に包含される。
本発明に係る光学積層体は、光学透明粘着シートと、光学透明粘着シートの第1の表面に積層された第1の被着体と、光学透明粘着シートの第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第2の被着体とを備える。第1の被着体が、カバーパネル、金属もしくは金属酸化物薄膜付フィルム、または、タッチパネルモジュールであることが好ましい。第2の被着体が、金属もしくは金属酸化物薄膜付フィルム、金属もしくは金属酸化物薄膜付ガラス、偏光板、タッチパネルモジュール、または、ディスプレイパネルモジュールであることが好ましい。
カバーパネルが、カバーガラス、ポリカーボネート板、または、ポリメチルメタクリレート板であり、第1の被着体が、カバーガラス、ポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板、金属もしくは金属酸化物薄膜付フィルム、または、タッチパネルモジュールであることが好ましい。
光学積層体の具体例としては、光学透明粘着シートを介してカバーパネルとタッチパネルモジュールとが接着されたカバーパネル−タッチパネルモジュール積層体や、光学透明粘着シートを介してカバーパネルとディスプレイパネルモジュールとが接着されたカバーパネル−ディスプレイパネルモジュール積層体や、光学透明粘着シートを介してタッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとが接着されたタッチパネルモジュールディスプレイパネルモジュール積層体等が挙げられる。上記カバーパネルとしては、ガラス板や樹脂板が好適に用いられる。
また、上記光学透明粘着シートを介して金属または金属酸化物により形成された透明電極層付フィルムの2つが積層された透明電極層付フィルム積層体も、光学用積層体として好ましい。
上記光学積層体と画像表示部とを備える画像表示装置に、上記光学積層体は好適に用いられる。
図1は、本発明の一実施形態に係る光学積層体を含む画像表示装置1を示す斜視図およびその一部の分解斜視図である。
画像表示装置10は、表面を保護するためのカバーパネル13が、タッチパネルモジュール14上に、光学透明粘着シート12を介して貼り合わされた構造を有する。タッチパネルモジュール14は、金属薄膜付フィルム16と、光学透明粘着シート17と、金属薄膜付フィルム16と、光学透明粘着シート17と、支持体18とがこの順で積層された構造を有する。光学透明粘着シート12と、金属薄膜付フィルム16と、光学透明粘着シート17と、金属薄膜付フィルム16とがこの順で積層された部分は、金属薄膜付フィルム積層体19である。この金属薄膜付フィルム積層体19と、光学透明粘着シート17と、支持体18とがこの順で積層された部分は、タッチパネルモジュール20である。
図1において、上記タッチパネルモジュールは、光学透明粘着シート17を介してディスプレイパネルモジュールに貼り合わされるが、その際には、タッチパネルモジュールから支持体18を剥離した状態で貼り合わされる。
上記画像表示装置10としては、携帯電話および携帯情報端末等が挙げられる。上記支持体18としては、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(実施例1)
(1)アクリルモノマー混合物の製造
攪拌機を備えた反応器内に、ブチルアクリレート10重量部、2−エチルヘキシルアクリレート40重量部、イソボルニルアクリレート20重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート29重量部、及びアクリル酸1重量部を加え、30分攪拌を行いアクリルモノマー混合物を得た。
(2)光学透明粘着シートの製造
得られたアクリルモノマー混合物100重量部に、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートを0.1重量部、Irgacure651を0.5重量部、1-ドデカンチオールを0.5重量部添加し、窒素バブリングを行いながら15分攪拌して、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含む粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を、離型ポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面上に設置した180μm高さのシリコン製枠の中に流し込み、新たに用意した離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを重ね合わせて、得られた粘着剤組成物層の片面側からUVランプを用いて2mW/cm2の紫外線を1000s照射することによって硬化させ、離型ポリエチレンテレフタレートフィルムが両面に貼り付けられた両面粘着シートを得た。
(実施例2)
得られたアクリルモノマー混合物100重量部に、Irgacure651を8重量部添加し、窒素バブリングを行いながら15分攪拌して、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含む粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を、離型ポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面に塗工し180μmのスペーサーを挟んで新たに用意した離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを重ね合わせて、厚み180μmの粘着剤層を形成した。得られた粘着剤層の片面側からUVランプを用いて8mW/cm2の紫外線を1000s照射することによって硬化させ、離型ポリエチレンテレフタレートフィルムが両面に貼り付けられた両面粘着シートを得た。
(実施例3)
1,6-ヘキサンジオールジアクリレートの量を0.01重量部に変更し、Irgacure651の量を6重量部添加に変更した以外は、実施例
2と同様の製造方法で両面粘着シートを得た。
(実施例4,5)
アクリルモノマー混合物の配合を表1のように変更した以外は、実施例1と同様の製造方法で両面粘着シートを得た。
(比較例1)
1,6-ヘキサンジオールジアクリレートの量を0.2重量部に変更し、1-ドデカンチオールの量を0.3重量部に変更した以外は、実施例1と同様の製造方法で両面粘着シートを得た。(比較例2)
1,6-ヘキサンジオールジアクリレートの量を0.05重量部に変更し、Irgacure651の量を3重量部添加に変更した以外は実施例2と同様の製造方法で両面粘着シートを得た。
(比較例3)
1,6-ヘキサンジオールジアクリレートの量を0.5重量部に変更し、1-ドデカンチオールの量を0.02重量部に変更した以外は実施例1と同様の製造方法で両面粘着シートを得た。
(比較例4)
アクリルモノマー混合物の配合を表1のように変更し、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートの量を0.2重量部、1-ドデカンチオールの量を0.05部に変更した以外は実施例1と同様の方法で両面粘着シートを得た。
(比較例5)
アクリルモノマー混合物の配合を表1のように変更し、1-ドデカンチオールの量を0.1部に変更した以外は実施例1と同様の方法で両面粘着シートを得た。
(比較例6)
アクリルモノマー混合物の配合を表1のように変更し、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートの量を0.1重量部とした以外は実施例3と同様の方法で両面粘着シートを得た。
(評価)
実施例1〜5及び比較例1〜6で得られた光学透明粘着シートについて、下記の評価を行った。結果を表1に示した。
(1)押し込み硬度の緩和率の評価
1.5cm×1.5cmの寸法に切り出した粘着シートから片方の離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、同じ寸法で切り出し同様に片面の離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した両面粘着シートと気泡なく重ね合わせた。同様にして両面が接着したシートを積層させ、厚み4cm〜4.5cmのサンプルを作成した。作成したサンプルを硬度計(株式会社テクロック製、TYPE00、GS754)の真下に置き1kgの荷重をかけ、押し込み直後および10分後の硬度計の表示する値を読み取り、緩和率を算出した。なお、粘着剤は実際には単層で用いることが多いが、測定装置の都合上、4cm〜4.5cmに積層したサンプルで測定した。
緩和率 = {(初期の硬度−10分後の硬度)}/(初期の硬度)×100
(2)液晶ムラの評価
得られた粘着シートの片面の離型PETフィルムを剥離し、印刷段差(30μm)の縁取りをつけたソーダガラス(サイズ86mm×56mm、厚み0.7mm)に貼り合わせる。もう一方の面の離型PETフィルムを剥離し、市販の液晶パネルの液晶表示装置に貼り合せることで試験体を作成した。得られた試験体をオートクレーブにて0.45MPa、45度、30分の条件で圧着させた。その後、液晶パネルのスイッチを入れ液晶を白色点灯させ表示にムラが見えないかを目視で、オートクレーブの終了直後と2日間放置した後に観察をおこなった。表示ムラが全くない状態を○、少しでも色ムラが確認できる場合は×とした。