以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1から図3を参照して、本発明の実施形態に係るストローク検出装置100について説明する。図1に示されるシリンダ10は、図示しない油圧ポンプから吐出される作動油によって作動する油圧シリンダである。ストローク検出装置100は、このシリンダ10に設けられる。
シリンダ10は、シリンダ10の本体である第1部材としてのシリンダチューブ20と、シリンダチューブ20に対して進退自在に設けられる第2部材としてのピストンロッド30と、を備える。つまり、シリンダ10は、シリンダチューブ20に対してピストンロッド30が進退運動する直動部品である。
シリンダチューブ20は円筒形であり、シリンダチューブ20の内部には軸方向に摺動自在であるピストン31が設けられる。また、シリンダチューブ20の端部には、ピストンロッド30が摺動自在に挿通するシリンダヘッド20aが設けられる。シリンダチューブ20の内部は、ピストン31によって二つの油室11,12に区画される。
二つの油室11,12は、図示しない切換弁を通じて図示しない油圧ポンプ又はタンクに接続される。二つの油室11,12の一方が油圧ポンプに接続された場合には、他方がタンクに接続される。シリンダ10は、油圧ポンプから二つの油室11,12の何れかに作動油が導かれてピストンロッド30が軸方向に移動することによって伸縮作動する。シリンダ10は複動式のシリンダであるが、単動式であってもよい。また、シリンダ10は、油圧式に限定されず、空気式,水圧式または電動機械式等であってもよい。
ピストンロッド30は、基端部30aがピストン31に固定され、先端部30bがシリンダチューブ20から露出する円柱形の磁性部材である。ピストンロッド30は、ピストン31に作用する油圧の力によって作動する。
次に、シリンダ10に設けられるストローク検出装置100について説明する。
ストローク検出装置100は、ピストンロッド30が挿通するシリンダヘッド20aに配設される検出素子としての磁気センサ50と、ピストンロッド30の側面30cにピストンロッド30の進退方向に沿って形成される複数のスケール60と、磁気センサ50の出力値に応じてシリンダチューブ20に対するピストンロッド30の絶対的なストローク量を演算する演算装置70と、を備える。
磁気センサ50は、磁気の強弱によって電気抵抗が変化するMR(Magneto−Resistive:磁気抵抗)素子を有する。磁気センサ50は、ピストンロッド30の外周と対向するように、シリンダヘッド20aの内周側に配設される。磁気センサ50のピストンロッド30に対向する面とは反対側には、磁気発生源である永久磁石(図示省略)が配設される。
磁気センサ50は、永久磁石から発せられる磁気を検出し、検出された磁気に応じた電圧を演算装置70へ出力する。永久磁石から発せられる磁気は、磁性体には作用するが、非磁性体には作用しない。つまり、磁気センサ50は、永久磁石から発せられる磁気が、磁気センサ50に対向する部材の磁性によってどのように変化したかを検出する。
磁気センサ50としては、MR素子を用いたセンサに代えて、より感度のよいGMR(Giant Magneto−Resistive:巨大磁気抵抗)センサや、MI(Magneto−Impedance:磁気インピーダンス)効果を利用したMIセンサ、ホール効果を利用したホール素子などが採用されてもよい。また、スケール60に向かい合うようにコイルを設け、このコイルを励磁することによってピストンロッド30の変位を検出してもよい。この場合、励磁されたコイルのインピーダンスは、対向するスケール60に応じて変化する。
スケール60は、磁性体であるピストンロッド30の外周に溝状に形成される非磁性体である。スケール60は、ピストンロッド30の外周面を局所加熱装置としてのレーザー装置によって照射されるレーザーにより溶融するとともにNiやMnを添加してオーステナイト化することによって形成される。
なお、ピストンロッド30は、非磁性体からなるものであってもよく、この場合、スケール60は、ピストンロッド30をレーザー装置によって溶融するとともにSn等を添加することにより磁性体として形成される。局所的に加熱する手段は、レーザーに限定されず、電子ビームや高周波誘導加熱,アーク放電など、局所的に加熱可能な手段であればどのような手段であってもよい。
スケール60は、図2に拡大して示すように、ピストンロッド30の進退方向に沿って所定の間隔Pで設けられる。スケール60間の間隔Pは、スケール60の幅Wの2倍に設定される。このため、スケール60に対向して配置される磁気センサ50の出力波形は、図2に示すように、スケール60の中央に対向したときに最大値となる正弦波状となる。
スケール60は、ピストンロッド30がシリンダチューブ20内に最も進入したときに磁気センサ50と対向する最進入端と、ピストンロッド30がシリンダチューブ20から最も退出したときに磁気センサ50と対向する最退出端と、を含むストローク全体にわたって等間隔に配置される。
最進入端と最退出端とには、他のスケール60よりも深さが深く形成された基準スケール61が設けられる。基準スケール61に磁気センサ50が対向したときの磁気センサ50の出力の変化は、他のスケール60に対向したときよりも大きくなる。このような出力の変化の違いによって、ピストンロッド30がシリンダチューブ20に対して最も進入または退出した位置(基準位置)にあることを判別することが可能である。なお、基準スケール61が設けられる位置は、最進入端と最退出端とに限定されず、ストロークの中間点や使用頻度の高いストローク位置であってもよい。また、基準スケール61は、単数であってもよいし、3つ以上設けられてもよい。
図3に示すように、演算装置70は、シリンダチューブ20に対するピストンロッド30の絶対的なストローク量である絶対位置を演算する演算部71と、絶対的なストローク量を演算するにあたって基準となる基準位置を検出する基準位置検出部72と、演算部71で演算された結果や基準位置検出部72で検出された基準位置等を記憶する記憶部73と、演算部71や基準位置検出部72で必要とされる磁気センサ50等の出力値が入力されるとともに演算部71で演算された結果を外部に出力可能な入出力インターフェイス75と、を有する。
基準位置検出部72は、磁気センサ50が基準スケール61に対向したときの磁気センサ50の出力の変化、具体的には出力信号の振幅の変化に基づいて、ピストンロッド30がシリンダチューブ20に対して基準位置にあることを検出する。基準位置検出部72において検出された基準位置は、記憶部に記憶されるとともに演算部71へと出力される。
また、基準位置検出部72は、オペレータによって入力される信号に基づいて基準位置を検出してもよい。具体的には、オペレータがシリンダ10を最伸張操作または最収縮操作したときに、図示しない基準位置スイッチがオペレータによって操作されると、基準位置検出部72は、基準位置スイッチからの信号に基づいてピストンロッド30がシリンダチューブ20に対して基準位置にあることを検出する。
演算部71は、磁気センサ50の出力から演算されるストローク変化量を、基準位置検出部72で検出された基準位置に対して、加算または減算することにより絶対的なストローク量を演算する。ストローク変化量は、磁気センサ50から出力される正弦波に基づいて演算され、具体的には、基準位置が検出されてからカウントされる正弦波の数、ピストンロッド30のストローク方向、及び、磁気センサ50の出力値と、に基づいて演算される。
演算部71で演算された絶対的なストローク量は、入出力インターフェイス75を介して図示しないシリンダコントローラ等に出力され、シリンダ10の伸縮量を制御するために用いられる。
記憶部73には、基準位置検出部72で検出された基準位置や演算部71で演算された絶対的なストローク量が記憶されるとともに、演算部71でストローク量を演算するために必要なプログラムやマップ等が記憶される。
上記構成のストローク検出装置100では、電源が遮断され、再び電源が投入される際に、以下に示す方法によって、電源が再び投入されてからの絶対的なストローク量が検出される。
装置への電源の供給が遮断されると、演算部71で演算された電源遮断時の絶対的なストローク量が記憶部73に記憶される。ここで、電源遮断時の絶対的なストローク量とは、電源の供給が遮断されたことでシリンダ10が伸縮作動を停止した状態におけるシリンダ10のストローク量を意味する。
記憶部73に記憶された絶対的なストローク量は、装置へ再び電源が供給された時に、基準位置として演算部71に読み込まれる。つまり、電源が再び供給されてからの絶対的なストローク量は、記憶部73に記憶された絶対的なストローク量、すなわち、電源遮断時に演算された絶対的なストローク量を基準位置として演算される。このように、電源が再び投入されてからの絶対的なストローク量は、電源遮断時に演算された絶対的なストローク量に対して、磁気センサ50の出力値に基づくストローク変化量を加算または減算することにより演算される。なお、演算装置70は、電源が遮断された後に記憶部73への記憶を可能とするために、図示しない電源遮断遅延リレーを有する。
このように、ストローク検出装置100によれば、電源が投入される度に、基準位置が検出されなくとも、シリンダチューブ20に対するピストンロッド30の絶対的なストローク量を検出することができる。
上述のような絶対的なストローク量の検出は、装置への電源の供給が遮断された時の絶対的なストローク量と装置へ再び電源が供給された時の絶対的なストローク量とが同じである場合、すなわち、電源が遮断されている間にシリンダチューブ20に対してピストンロッド30が変位しない場合には可能である。しかしながら、装置への電源の供給が遮断されている間に、油漏れなどによりシリンダチューブ20に対してピストンロッド30が変位することによって、電源遮断時の絶対的なストローク量と電源再投入時の絶対的なストローク量との間に差が生じるおそれがある。
このため、ストローク検出装置100の演算装置70は、電源再投入時のシリンダチューブ20に対するピストンロッド30の絶対的なストローク量を推定する推定部74をさらに有する。
推定部74は、記憶部73に記憶された基準位置B、すなわち、電源遮断時に演算部71で演算された絶対的なストローク量と、電源が再び投入された時の磁気センサ50の出力値V1と、に基づいて電源再投入時の絶対的なストローク量を推定する。
電源が再び投入された時の磁気センサ50の出力値V1からは、例えば、図2中に、第1推定基準位置E1及び第2推定基準位置E2として示されるように、記憶部73に記憶された基準位置Bの近傍において複数の基準位置(電源が再び投入された時の絶対的なストローク量)が推定される。
推定部74は、これら推定基準位置E1,E2のうち、記憶された基準位置Bの最も近くに位置する第1推定基準位置E1を電源再投入時の絶対的なストローク量として推定する。これは、装置への電源の供給が遮断された時の絶対的なストローク量に対して、装置へ再び電源が供給された時の絶対的なストローク量は、あまり変化しないことを前提としている。
推定部74で推定された推定基準位置は、演算部71に出力され、演算部では、この推定基準位置を基準位置として、電源が再び供給されてからの絶対的なストローク量が演算される。
このように、推定部74を備えることによってストローク検出装置100は、装置への電源の供給が遮断されている間にシリンダチューブ20に対してピストンロッド30が変位したとしても、電源が投入される度に、基準位置を検出することなく、シリンダチューブ20に対するピストンロッド30の絶対的なストローク量を検出することができる。
次に、図4に示すフローチャートに基づいて、演算装置70により絶対的なストローク量を演算する手順について説明する。
ステップS10において、演算部71は、装置への電源の供給の遮断を検知する。電源が遮断されることが検知されるとステップS11に進み、電源遮断時における磁気センサ50の出力値と、電源遮断時に演算部71によって演算されたシリンダチューブ20に対するピストンロッド30の絶対的なストローク量と、が記憶部73に記憶される。
電源が遮断された後、ステップS12において、演算部71は、装置への電源の再供給を検知する。電源が再投入されたことが検知されるとステップS13に進み、記憶部73に記憶された電源遮断時に演算部71によって演算された絶対的なストローク量が演算部71と推定部74とに読み込まれ、記憶部73に記憶された電源遮断時における磁気センサ50の出力値が演算部71に読み込まれる。さらに、ステップS14では、電源が再投入された時の磁気センサ50の出力値が演算部71と推定部74とに読み込まれる。
続くステップS15では、演算部71において、電源遮断時における磁気センサ50の出力値と電源再投入時における磁気センサ50の出力値との比較が行われる。上述のように、電源が遮断されている間に、油漏れなどが生じ、シリンダチューブ20に対してピストンロッド30が変位するおそれがある。電源遮断時と電源再投入時とにおいて磁気センサ50の出力値が同じであれば、変位が生じていないと推定される。
なお、厳密には、磁気センサ50の出力値は正弦波状に変化するため、出力値が同じであってもストローク量が同じであるとは必ずしもいえない。しかしながら、変位したにも関わらず電源遮断時と電源再投入時との出力値が同じになる可能性よりも変位が生じなかったために電源遮断時と電源再投入時との出力値が同じになる可能性の方が高いことは明白である。このため、電源遮断時と電源再投入時とにおいて磁気センサ50の出力値が同じであれば、変位が生じていないと推定される。
ステップS15で、電源遮断時と電源再投入時とにおける磁気センサ50の出力値が一致した場合にはステップS16へ進み、一致しない場合にはステップS17へ進む。
ステップS16では、ステップS13で記憶部73から読み込まれた電源遮断時の絶対的なストローク量に基づいて、演算部71において、上述のように、電源が再投入されてからの絶対的なストローク量の演算が行われる。
一方、ステップS17では、ステップS13で記憶部73から読み込まれた電源遮断時の絶対的なストローク量と、ステップS14で読み込まれた電源が再投入された時の磁気センサ50の出力値と、に基づいて、推定部74において、上述のように、電源再投入時の絶対的なストローク量の推定が行われる。
続くステップS18では、推定部74で推定された電源再投入時の絶対的なストローク量に基づいて、演算部71において、上述のように、電源が再投入されてからの絶対的なストローク量の演算が行われる。
ステップS19では、ステップS16またはステップS18において、演算部71によって、電源が再投入されてからの絶対的なストローク量の演算が行われている間に、基準位置検出部72において基準位置が検出されたか否かが判定される。
基準位置検出部72により基準位置が検出されると、ステップS20に進み、基準位置検出部72により検出された基準位置に基づいて、演算部71において、上述のように、絶対的なストローク量の演算が行われる。このように、基準位置が検出された時点で演算部71による絶対的なストローク量の演算は、記憶部73から読み込まれた絶対的なストローク量や推定部74で推定された絶対的なストローク量に基づく演算から、基準位置検出部72により検出された基準位置に基づく演算へと移行される。
このように、演算部71による絶対的なストローク量の演算は、基準位置が検出された時点で、より正確な絶対的なストローク量を演算することが可能な基準位置に基づく演算へと移行される。このため、ステップS15において電源遮断時と電源再投入時とにおける磁気センサ50の出力値が同じであれば変位が生じていないとする推定やステップS17において推定部74により行われた推定に誤りがあったとしても、基準位置検出部72により基準位置が検出されれば、シリンダチューブ20に対するピストンロッド30の絶対的なストローク量を正確に検出することができる。
以上の実施形態によれば、以下に示すような効果を奏する。
ストローク検出装置100では、電源が遮断される時に演算部71で演算された絶対的なストローク量が、電源再投入時に基準位置として演算部71に読み込まれる。そして、電源が再投入されてからの絶対的なストローク量は、電源遮断時に演算された絶対的なストローク量に基づいて演算部71により演算される。このように、ストローク検出装置100では、電源が投入される度に、基準位置を検出することなく、シリンダチューブ20に対するピストンロッド30の絶対的なストローク量を検出することができる。
次に、図5を参照して、本発明の実施形態に係るストローク検出装置100の変形例について説明する。
上記実施形態では、磁気センサ50の出力値の波形は正弦波状である。これに代えて、図5に示すように、磁気センサ50の出力値の波形を鋸歯状の鋸波としてもよい。鋸波は、例えば、出力波形の位相が90°差がある二つの磁気センサ50から出力される正弦波をパルス幅変調処理することによって生成される。鋸波の生成方法は、これに限定されず、磁気センサ50から出力される正弦波から鋸波が生成されればどのような方法であってもよく、また、磁気センサ50の個数は、2個以外の複数であってもよいし単数であってもよい。
磁気センサ50の出力値の波形を鋸歯状の鋸波とすることによって、例えば、電源再投入時の磁気センサ50の出力値V1から推定される第1推定基準位置E1と第2推定基準位置E2との間隔は、磁気センサ50の出力値の波形が正弦波状である場合と比較して拡がる。
具体的には、波形が鋸波の場合、記憶部73に記憶された基準位置Bを中心とするスケール60間の間隔Pの範囲内には、1つの推定基準位置E1のみが推定される。これに対して、波形が正弦波状の場合、図2に示すように、間隔Pの範囲内には、2つの推定基準位置E1,E2が推定される。このように、波形を鋸波とした場合の方が、記憶部73に記憶された基準位置Bの最も近くに位置する推定基準位置が明確になるため、推定部74による電源再投入時の絶対的なストローク量の推定精度を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
ストローク検出装置100は、シリンダチューブ20に対して進退自在に設けられるピストンロッド30の表面に、ピストンロッド30の進退方向に沿って所定の間隔で設けられる複数のスケール60と、スケール60に対向するようにシリンダチューブ20に設けられ、スケール60によって変化する磁界に応じた信号を出力する磁気センサ50と、磁気センサ50の出力値に基づいてシリンダチューブ20に対するピストンロッド30の絶対位置を演算する演算部71と、電源が遮断される時に、演算部71で演算された電源遮断時の絶対位置を記憶する記憶部73と、を備え、演算部71は、電源が遮断された後、再び電源が投入された時に、記憶部73に記憶された電源遮断時の絶対位置を読み込み、読み込まれた絶対位置と磁気センサ50の出力値とに基づいて、電源が再び投入された後の絶対位置を演算することを特徴とする。
この構成では、電源が遮断される時に演算部71で演算された絶対的なストローク量が、電源再投入時に基準位置として演算部71に読み込まれる。そして、電源が再投入されてからの絶対的なストローク量は、電源遮断時に演算された絶対的なストローク量に基づいて演算部71により演算される。このように、ストローク検出装置100では、電源が投入される度に、基準位置を検出することなく、シリンダチューブ20に対するピストンロッド30の絶対的なストローク量を検出することができる。
また、ストローク検出装置100は、記憶部73に記憶された絶対位置と電源が再び投入された時の磁気センサ50の出力値とに基づいて、電源再投入時の絶対位置を推定する推定部74をさらに備え、推定部74は、磁気センサ50の出力値から推定される複数の絶対位置のうち、記憶部73に記憶された電源遮断時の絶対位置に最も近い絶対位置を電源再投入時の絶対位置として推定し、演算部71は、電源遮断時の磁気センサ50の出力値と電源再投入時の磁気センサ50の出力値とが一致しない場合、推定部74で推定された電源再投入時の絶対位置と磁気センサ50の出力値とに基づいて、電源が再び投入された後の絶対位置を演算することを特徴とする。
この構成では、電源遮断時の磁気センサ50の出力値と電源再投入時の磁気センサ50の出力値とが一致しない場合、電源が再投入されてからの絶対的なストローク量は、推定部74で推定された電源再投入時の絶対位置と磁気センサ50の出力値とに基づいて、演算部71により演算される。このように、電源再投入時の絶対的なストローク量を推定する推定部74を備えることによって、ストローク検出装置100は、装置への電源の供給が遮断されている間にシリンダチューブ20に対してピストンロッド30が変位したとしても、電源が投入される度に、基準位置を検出することなく、シリンダチューブ20に対するピストンロッド30の絶対的なストローク量を検出することができる。
また、磁気センサ50は複数設けられ、推定部74は、複数の磁気センサ50から出力される複数の正弦波を合成することによって生成される鋸波に基づいて、電源再投入時の絶対位置を推定することを特徴とする。
この構成では、電源再投入時の絶対的なストローク量は、鋸波とされた磁気センサ50の出力値に基づいて推定される。磁気センサ50の出力値の波形は鋸波である場合の方が、記憶部73に記憶された基準位置Bの最も近くに位置する推定基準位置が明確になる。このため、推定部74による電源再投入時の絶対的なストローク量の推定精度を向上させることができる。
また、ストローク検出装置100は、磁気センサ50の出力値またはオペレータの入力信号に基づいて基準位置を検出する基準位置検出部72をさらに備え、演算部71は、電源が遮断され、再び電源が投入された後に基準位置検出部72で基準位置が検出された場合、基準位置検出部72で検出された基準位置と磁気センサ50の出力値とに基づいて、電源が再び投入された後の絶対位置を演算することを特徴とする。
この構成では、基準位置検出部72により基準位置が検出された時点で演算部71による絶対的なストローク量の演算は、基準位置に基づく演算へと移行される。このため、電源遮断時と電源再投入時とにおける磁気センサ50の出力値が同じであれば変位が生じていないとする推定や推定部74により行われた推定に誤りがあったとしても、演算部71による絶対的なストローク量の演算は、基準位置が検出された時点で、より正確な絶対的なストローク量を演算することが可能な基準位置に基づく演算へと移行される。この結果、電源が投入される度に、基準位置を検出することなく、シリンダチューブ20に対するピストンロッド30の絶対的なストローク量を検出することができるとともに、基準位置が検出された場合には、基準位置に基づいて正確な絶対的なストローク量を演算することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、本実施形態では、スケール60は、非磁性体または磁性体からなるものである。これに代えて、スケールは、ピストンロッド30と誘電率が異なるものであってもよい。この場合、スケールを検出するセンサとしては、スケールに向かい合って設けられるコイルが用いられる。励磁されたコイルのインピーダンスは、対向するスケールの変位、すなわち、ピストンロッド30のストロークに応じて変化する。
また、本実施形態では、スケール60に対向して1つの磁気センサ50が設けられる。これに代えて、スケール60に対向して一対の磁気センサを設けてもよい。この場合、二つの磁気センサから出力される正弦波の間に位相差が生じるように各磁気センサを配置すれば、ピストンロッド30の進退方向を容易に判別することができる。