JP2017071805A - 高強度鋼板及びその製造方法 - Google Patents

高強度鋼板及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2017071805A
JP2017071805A JP2015197636A JP2015197636A JP2017071805A JP 2017071805 A JP2017071805 A JP 2017071805A JP 2015197636 A JP2015197636 A JP 2015197636A JP 2015197636 A JP2015197636 A JP 2015197636A JP 2017071805 A JP2017071805 A JP 2017071805A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
strength
mass
strength steel
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2015197636A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6536331B2 (ja
Inventor
皆川 昌紀
Masanori Minagawa
昌紀 皆川
仁秀 吉村
Hitohide Yoshimura
仁秀 吉村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp filed Critical Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp
Priority to JP2015197636A priority Critical patent/JP6536331B2/ja
Publication of JP2017071805A publication Critical patent/JP2017071805A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6536331B2 publication Critical patent/JP6536331B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)
  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Abstract

【課題】建産機に好適な高強度鋼板及びその製造方法を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.03〜0.09%、Ti:0.10〜0.20%を含有し、下記式(1)のJS値が1.8以上であり、板厚が4.5〜25mmであることを特徴とする高強度鋼板。下記式(2)、(3)及び(4)を同時に満足する温度TCRの範囲内での累積圧下率を40〜60%とする仕上圧延を行って板厚を4.5〜25mmとし、そのまま、700℃以上の温度から100℃以下の温度まで水冷する製造方法。JS=5.5[C]+1.2[Si]+0.5[Mn]+0.8[Ni]+0.2[Cr]+1.8[Mo]+0.6[Nb]+[B]…(1)、TCR≦900℃ …(2)、TCR≧800×[Ti]+720 …(3)、TCR≦2250×[Ti]+590 …(4)、[X]は各元素Xの含有量[質量%]である。【選択図】図1

Description

本発明は、高強度鋼板及びその製造方法に関するものである。
建造物の高層化などに伴って、クレーン車等の建設機械や産業機械の大型化が進められている。建設機械や産業機械に使用される鋼板は、構造部材を軽量化するために、高強度化が要求されており、引張強さが780MPa以上、更には950MPaの高強度鋼板の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1、参照)。
また、高強度鋼板を建設機械や産業機械の部材に使用する際には、塑性変形しないように高い降伏強さが要求されるが、その一方で、曲げ加工の負荷の問題などから、引張強さの上限は制限される。そのため、建設機械や産業機械など(以下、総称して建産機という場合がある。)に使用される高強度鋼板には、高い降伏比が求められる。
一般に、鋼材の降伏比を高めるには、析出強化が有利である。Tiは、従来から析出強化元素として利用されており、0.12%以上のTiを含有する高強度鋼板が提案されている(例えば、特許文献2、3、参照)。これらは、熱間圧延後、コイル状に巻き取って製造される熱延鋼板である。
特開2009−287081号公報 特開平5−230529号公報 特開平8−73985号公報
建産機に使用される高強度鋼板には高い降伏比が要求されるが、降伏比が高過ぎると加工性が低下するという問題がある。また、曲げなどの加工性を高めるには、延性も必要である。また、建産機の部材を製造する際には、高強度鋼板に溶接が施されるため、熱影響による軟化を抑制することが必要である。
本発明は、このような実情に鑑み、特に建産機に好適に使用できる、高強度鋼板及びその製造方法の提供を課題とするものである。
本発明者らは、鋼中に固溶した状態の炭素の量を極力少なくすることにより、降伏比を高めることができるという知見を得た。一方、Tiの添加は、析出強化及び固溶炭素量の低減に有利であるが、強度を高めるためにCを過剰に添加すると、降伏比が高くなり過ぎ、また、延性が低下する。更に、鋼板の引張特性の方向による差異を考慮して、最適な熱間圧延の条件を見出した。
更に、焼入れ、焼戻しなどの調質熱処理を施さず、水冷ままで製造された高強度鋼板は、溶接時に熱の影響を受けた部分の強度が、調質処理を施した場合に比べて低下しやすい。溶接継手では、最も硬さの低い箇所が溶接継手全体の強度を支配することから、溶接継手の最軟化部の硬さと合金成分との関係を調査し、溶接継手の強度とJS値との間に良い相関関係があることがわかった。
本発明は、以上のような知見に基づいてなされたものであって、その要旨は以下のとおりである。
[1]質量%で、
C :0.03〜0.09%、
Mn:1.30〜2.50%、
Nb:0.005〜0.03%、
Mo:0.05〜0.3%、
Al:0.01〜0.05%、
Ti:0.10〜0.20%
を含有し、
Si:0.50%以下、
P :0.02%以下、
S :0.006%以下、
N :0.005%以下、
B :0.003%以下
に制限し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、下記式(1)で求められるJS値が1.8以上であり、板厚が4.5〜25mmであることを特徴とする高強度鋼板。
JS=5.5[C]+1.2[Si]+0.5[Mn]+0.8[Ni]+0.2[Cr]+1.8[Mo]+0.6[Nb]+[B] ・・・ (1)
ここで、[X]は、各元素Xの質量%であり、上記(1)式において、その元素を含有しない場合は0とする。
[2]更に、質量%で、
Cu:0.5%以下、
Ni:0.5%以下、
Cr:1.0%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[1]に記載の高強度鋼板。
[3]更に、質量%で、
Ca:0.01%以下、
Mg:0.01%以下、
REM:0.01%以下
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の高強度鋼板。
[4]ラス状組織からなる金属組織を有することを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の高強度鋼板。
[5]質量%で、
C :0.03〜0.09%、
Mn:1.30〜2.50%、
Nb:0.005〜0.03%、
Mo:0.05〜0.3%、
Al:0.01〜0.05%、
Ti:0.10〜0.20%
を含有し、
Si:0.50%以下、
P :0.02%以下、
S :0.006%以下、
N :0.005%以下、
B :0.003%以下
に制限し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、下記式(1)で求められるJS値が1.8以上である成分組成を有する鋼片を、1000℃以上に加熱し、900℃以上で粗圧延を施した後、下記式(2)、(3)及び(4)を同時に満足する温度TCRの範囲内での累積圧下率を40〜60%とする仕上圧延を行って板厚を4.5〜25mmとし、そのまま、700℃以上の温度から100℃以下の温度まで水冷することを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
JS=5.5[C]+1.2[Si]+0.5[Mn]+0.8[Ni]+0.2[Cr]+1.8[Mo]+0.6[Nb]+[B] ・・・ (1)
CR≦900℃ ・・・ (2)
CR≧800×[Ti]+720 ・・・ (3)
CR≦2250×[Ti]+590 ・・・ (4)
ここで[X]は各元素Xの含有量[質量%]であり、上記(1)式において、その元素を含有しない場合は0として求める。
[6]更に、質量%で、
Cu:0.5%以下、
Ni:0.5%以下、
Cr:1.0%以下、
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[5]に記載の高強度鋼板の製造方法。
[7]更に、質量%で、
Ca:0.01%以下、
Mg:0.01%以下、
REM:0.01%以下、
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[5]又は[6]のいずれかに記載の高強度鋼板の製造方法。
本発明によれば、高強度化ニーズの強い建設機械、産業機械などの溶接構造物の構造部材に好適な高強度鋼板を、調質処理を必要としない非調質プロセスで提供することができる。特に、本発明によれば、好ましくは引張強さが765MPa以上、降伏比が0.75〜0.90、伸びが16%以上で、溶接継手の強度が母材の強度の85%以上、より好ましくは降伏強さが685MPa以上、引張強さが780〜930MPaである、板厚4.5〜25mmの高強度鋼板を低コストで提供することが可能になる。したがって、本発明は産業上の貢献が極めて顕著である。
鋼の固溶炭素量と降伏比との関係を示すグラフである。 圧延方向の降伏強さ(YS−L)、及び、幅方向の引張強さ(TS−C)と、Ti添加量との関係を示すグラフである。
建産機には、板厚が4.5〜25mmの高強度鋼板が使用される。製造コストの観点から、調質熱処理などの製造工程を省略することが望ましく、本発明者らは、引張強さが765MPa以上の鋼板を、熱間圧延後にそのまま水冷して製造し、降伏比、伸びを向上させる方法について検討を行った。その結果、まず、鋼中のC量を少なくすることにより、降伏比が大きくなることを見出した。更に検討を進めた結果、図1に示すように、降伏比に影響を及ぼす本質的な要因が、固溶炭素量であることをつきとめた。
図1の縦軸は、Cの含有量を0.05%とし、Tiの添加量を変化させた種々の組成の鋼に熱間圧延及び水冷を施し、引張試験を行って測定した降伏強さ及び引張強さから求めた降伏比である。図1の横軸は、降伏比の測定に使用した鋼の組成から、熱科学計算によって求めた920℃での平衡状態での固溶炭素量である。固溶炭素量が減少すると、降伏強さの上昇が引張強さの上昇に対して相対的に大きくなり、降伏比が高くなる。
このように、Tiを添加してTiCを析出させ、炭素を炭化物として固定すると、固溶炭素量が少なくなり、降伏比を高めることが可能になる。更に、鋼板の強度は圧延方向(L方向)と圧延方向に垂直な幅方向(C方向)とで変化し、特に、圧延方向の降伏強さ(YS−L)を高めた場合、幅方向の引張強さ(TS−C)の制御が困難であるという知見を得た。
そして、本発明者らは、圧延方向の降伏強さ(YS−L)を685MPa以上、幅方向の引張強さ(TS−C)を930MPa以下にするための条件を検討し、以下の式(2)〜(4)を満足することが好ましいという知見を得た。式(2)〜(4)は、図2に示すように、実験によって求めた、(YS−L)≧685MPa、(TS−C)≦930MPaを満足する、Tiの含有量[%Ti]と熱間圧延の仕上温度TCRとの関係を表す式である。図2に示す線分のうち、YS−Lは圧延方向の降伏強さが685MPaとなる条件、TS−Cは幅方向の引張強さ930MPaとなる条件で、線分よりも上部では低強度、線分よりも下部では高強度になる。
CR≦900℃ ・・・(2)
CR≧800×[%Ti]+720 ・・・(3)
CR≦2250×[%Ti]+590 ・・・(4)
更に、これらの関係式から求められるTCRの範囲内での累積圧下率が40〜60%になるように仕上圧延を行うことによって、降伏強さが685MPa以上、引張強さが930MPa以下という、好ましい引張特性が得られることがわかった。
ところで、焼入れ、焼戻しなどの調質熱処理を施さず、水冷ままで製造された高強度鋼板は、溶接時に熱の影響を受けた部分の強度が、調質処理を施した場合に比べて、低下しやすい。溶接継手では、最も硬さの低い箇所が溶接継手全体の強度を支配することから、溶接継手の最軟化部の硬さと合金成分との関係を調査した。
その結果、最軟化部の硬さは合金成分の影響を大きく受け、下記式(1)で算出されるJS値とよい相関関係があることを見出した。なお、溶接熱影響部の合金組成は、溶接金属による希釈等の影響を受けておらず、母材である高強度厚鋼板の合金組成と同じである。
JS=5.5[C]+1.2[Si]+0.5[Mn]+0.8[Ni]+0.2[Cr]+1.8[Mo]+0.6[Nb]+[B] ・・・(1)
ここで、[X]はそれぞれ、各元素Xの質量%である。
更に、JS値と溶接継手の強度(継手強度)との関係を統計的に検討したところ、下記式(5)で近似できることを見出した。
継手強度=705×JS−491 (MPa) ・・・(5)
即ち、JS値が適正になるように高強度厚鋼板の合金成分を設計すれば継手強度を調整することができ、溶接構造物として十分な継手強度を確保することができる。ただし、実際に溶接継手の引張試験を行った場合は、最も強度が弱い部分で破断が生じる。したがって、上記式(5)の推定値が母材の引張強さを超える場合は母材で破断が生じるため、継手強度は母材の引張強さと同等になる。
以下に、本発明における各成分及び製造方法の限定理由を説明する。まず、成分について説明するが、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味する。
[C:0.03〜0.09%]
Cは、強度、降伏比だけでなく、製鋼工程での製造性にも影響を及ぼす元素である。C量が0.03%を下回ると、製鋼での工程負荷が大きくなりすぎるので、0.03%以上とする。一方、C量が0.09%を超えると、降伏比が大きくなり、降伏強さに対して引張強さが高くなりすぎるので、0.09%以下とする。好ましくは0.06%以下とする。
[Si:0.50%以下]
Siは、脱酸元素であり、強度の上昇にも寄与する元素である。Si量は0%でもよいが、0.01%以上が好ましい。一方、Siを過剰に添加すると靭性が低下するため、Si量の上限を0.50%以下とする。好ましくは0.40%以下とする。
[Mn:1.30〜2.50%]
Mnは、焼入れ性を高める元素であり、強度を確保のために、Mn量を1.30%以上とする。好ましくは1.50%以上とする。一方、Mnを過剰に添加すると靭性が低下するため、Mn量の上限を2.50%以下とする。好ましくは2.00%以下とする。
[P:0.02%以下]
[S:0.006%以下]
P、Sは、不純物であり、母材及び継手の低温靭性を低下させるため、P量及びS量を、それぞれ、0.02%以下及び0.006%以下に制限する。好ましくは、それぞれ、0.01%以下及び0.004%以下である。P量及びS量の下限は0でもよいが、製造コストの観点から、P量を0.001%以上、S量を0.0001%以上とすることができる。
[Nb:0.005〜0.03%]
Nbは、焼入れ性の確保や、組織の微細化による強靭化に有効であり、Nb量を0.005%以上とする。好ましくは0.010%以上とする。一方、多量のNbを添加すると溶接部の靭性が低下するため、Nb量の上限を0.03%以下とする。好ましくは0.02%以下とする。
[Mo:0.05〜0.3%]
Moは、焼入れ性確保のために有効な元素であり、Mo量を0.05%以上とし、好ましくは0.10%以上とする。一方、Moを過剰に添加すると靭性の低下が懸念されるため、Mo量の上限を0.3%以下とする。好ましくはMo量を0.25%以下とする。
[Al:0.01〜0.05%]
Alは、脱酸元素であり、Tiの酸化物の形成を抑制して、TiCを析出させるために、Al量を0.01%以上とする。一方、Al量が0.05%を超えると、粗大なアルミナ介在物が生成し、靭性を低下させるので、Al量の上限を0.05%以下とする。
[Ti:0.10〜0.20%]
Tiは、本発明で最も重要な元素である。TiCを形成して炭素を固定し、降伏比を大きくするとともに引張強さの上昇を抑制するために、Ti量を0.10%以上とする。一方、Tiを過度に添加すると、固溶炭素量が過剰に減少して強度が低下するため、Ti量の上限を0.20%以下とする。
[B:0.003%以下]
Bは、焼入れ性を向上させる元素であり、好ましくはB量を0.0003%以上とする。しかし、B量が0.003%を超えても焼入れ性は飽和するので、上限を0.003%以下に制限する。好ましくはB量を0.002%以下とする。
[N:0.005%以下]
Nは、TiNを形成して、TiCの生成を阻害するため、N量を0.005%以下に制限する。好ましくはN量を0.004%以下とする。N量は0%でもよいが、製造コストの観点から、0.001%以上であってもよい。
[Cu:0.5%以下]
[Ni:0.5%以下]
[Cr:1.0%以下]
Cu、Ni、Crは、焼入れ性を高めて強度の上昇に寄与する元素であり、1種又は2種以上を含有させることができる。効果を得るためには、それぞれの元素の含有量を0.10%以上にすることが好ましい。一方、Cu、Ni、Crは、何れも過度に添加すると母材及び継手の靭性が低下することがあり、含有量の上限を、それぞれ0.5%以下、0.5%以下、1.0%以下とすることが好ましい。
[Ca:0.01%以下]
[Mg:0.01%以下]
[REM:0.01%以下]
上記の元素の他、酸化物や硫化物の形態を制御するために、Ca、Mg、REMの1種又は2種以上を含有させてもよい。効果を得るためには、それぞれの元素の含有量を0.0005%以上にすることが好ましい。一方、Ca、Mg、REMは、何れも過度に添加すると粗大な介在物を生じて、母材及び継手の靭性が低下することがあり、含有量の上限を、それぞれ0.01%以下、0.01%以下、0.01%以下とすることが好ましい。
[JS値:1.8以上]
更に、本発明に係る高強度鋼板を用いて製作した溶接継手の強度を母材の強度と同等以上にするため、溶接熱影響部の最軟化部の硬さと良い相関関係を示す(1)式で表わされるJS値を1.8以上とする。JS値の上限は高いほど好ましいため、特に制限せず、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、Nb、Bの含有量の上限値で決定される3.1であってもよい。JS値を高めるには合金元素の含有量を増加させることが必要になるので、製造コストの観点から、JS値を好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.0以下とすることができる。
JS=5.5[C]+1.2[Si]+0.5[Mn]+0.8[Ni]+0.2[Cr]+1.8[Mo]+0.6[Nb]+[B] ・・・(1)
ここで、[C]、[Si]、[Mn]、[Ni]、[Cr]、[Mo]、[Nb]、[B]はそれぞれ、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、Nb、Bの質量%である。
本発明の高強度鋼板は、ラス状組織からなる金属組織を有することが好ましい。ラス状組織は、光学顕微鏡で観察した際に、針状の形態を呈する金属組織であり、粒状の形態を呈するポリゴナルフェライト、パーライト、島状マルテンサイトは含まれない。ラス状組織のうち、マルテンサイト、下部ベイナイトの一方又は両方からなる金属組織がより好ましい。
マルテンサイトはセンタイトを含まず、下部ベイナイトは微細なセメンタイトを含むという点で、両者は相違する金属組織である。光学顕微鏡ではマルテンサイトと下部ベイナイトとの判別は困難であるが、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察で、セメンタイトの生成の有無によって判別することができる。
ラス状組織は、熱間圧延後、水冷を行って生成する金属組織である。特に、マルテンサイト及び下部ベイナイトは、熱間圧延後、金属組織がオーステナイトである温度、即ち、フェライト変態が開始する温度であるAr3点以上から100℃以下まで水冷することによって生成することから、低温変態組織とも称される。
次に、本発明の高強度鋼板の製造方法について述べる。本発明の高強度鋼板は、常法で鋼を溶製し、鋳造して得られた鋼片に、板厚が4.5〜25mmになるように熱間圧延を施して製造することができる。以下に、好ましい製造方法について説明する。
熱間圧延の加熱温度は、変形抵抗を低下させるために、1000℃以上とすることが好ましい。本発明ではC含有量が少ないため、NbCによるオーステナイト粒成長抑制効果が小さく加熱時の初期オーステナイト粒が粗大化しやすいので、あまり高温に加熱することは好ましくない。
熱間圧延は、オーステナイト再結晶温度域での粗圧延を行なった後、900℃以下のオーステナイト未再結晶温度域での仕上圧延を行なうことが好ましい。なお、900℃を超える温度での粗圧延については、特に制限する必要はない。未再結晶温度域での圧延は、Ti量[%Ti](質量%)に応じて(2)、(3)、(4)式を同時に満足する温度TCRでの累積圧下率を40〜60%とすることが好ましい。
CR≦900℃ ・・・(2)
CR≧800×[%Ti]+720 ・・・(3)
CR≦2250×[%Ti]+590 ・・・(4)
上記(2)式は、未再結晶圧延を施すための上限温度を規定しており、上述の成分範囲では、未再結晶温度域が900℃以下であることを意味している。(3)式は引張強さの過度な上昇を抑制させるための条件であり、仕上圧延温度の下限値を規定している。圧延温度の低下により、強度は上昇し、仕上圧延の終了温度が(3)式の右辺の数値よりも低くなると引張強さが過度に上昇し、930MPaを超える場合がある。(4)式は、降伏強さの低下を抑制するための条件であり、仕上圧延の開始温度の上限値を規定している。(4)式の右辺の数値が900℃を超える場合は、(2)式による制限のため、仕上圧延の上限を900℃とする。仕上温度が高くなると強度は低下し、開始温度が(4)式の右辺の数値又は900℃の何れか低い方を超えた場合、降伏強さが低下し、685MPaに満たなくなることがある。
圧延後の水冷の開始温度は、700℃未満の場合、局所的にポリゴナルフェライト、島状マルテンサイトやセメンタイトが生成し、母材の強度や靭性が低下することがあるため、700℃以上とすることが好ましい。
水冷の停止温度は、安定してラス状組織、特に、マルテンサイト、下部ベイナイトの一方又は両方からなる金属組織を得るために100℃以下とすることが好ましく、室温まで水冷を行ってもよい。水冷後は、そのまま室温まで放冷し、その後は熱処理を施さず、優れた引張特性及び靭性を有する高強度鋼板を得ることができる。
表1に示す成分組成の鋼を溶製して得られた鋼片を、表2に示す製造条件で熱間圧延し、水冷して鋼板を製造した。鋼板の金属組織を光学顕微鏡で観察し、また、試験片を採取して、母材の引張特性(降伏強さ、引張強さ、伸び)、靭性、溶接継手の引張強さ(溶接継手強度)の評価を行った。母材の引張特性は、JIS Z 2241に準拠して、1A号試験片(板状)又は4号試験片(棒状)を採取し、降伏強さ、引張強さ、伸びを測定した。引張試験片は板厚20mm以下では1A号全厚引張試験片を採取し、板厚20mm超では4号丸棒引張試験片を板厚の1/4部(t/4部)と板厚中心部(t/2部)より採取した。
母材の靭性は、板厚中心部から圧延方向に直角な方向にJISZ 2242に準拠して、Vノッチ試験片を採取し、−20℃でのシャルピー吸収エネルギー(vE−20)を求めて評価した。溶接継手強度は、突き合わせ溶接継手を作製し、JIS Z 3121に準拠し、1A号試験片(板状)又は5号試験片(棒状)を用いて測定した。引張試験片は板厚20mm以下では1A号全厚引張試験片を採取し、板厚20mm超では5号丸棒引張試験片を板厚の1/4部(t/4部)と板厚中心部(t/2部)より採取した。結果を表2に示す。
Figure 2017071805
Figure 2017071805
母材の引張特性の目標値は、降伏強さが650MPa以上(好ましくは685MPa以上)、母材の引張強さが765〜930MPa(好ましくは780MPa以上)、降伏比が0.75〜0.90、伸びが16%以上である。母材の靭性(vE−20)の目標値は47J以上(好ましくは60J以上)、溶接継手強度が765MPa以上(好ましくは780MPa以上)である。
本発明例1〜15は、いずれも、母材の引張特性、靱性、溶接継手強度が目標値を満足しており、ラス状組織からなる金属組織を有していた。特に、本発明例1〜10は、母材の降伏強さが685MPa以上、引張強さが780MPa以上、母材の靭性(vE−20)が60J以上、溶接継手強度が780MPa以上であり、好ましい目標値をも満足している。また、光学顕微鏡による観察で、これらはラス状組織からなる金属組織を有しており、更に、セメンタイトが見られないことから、マルテンサイト、下部ベイナイトの一方又は両方からなる金属組織を有していると判定した。
一方、比較例16はC量が、比較例21はNb量が、比較例22はMn量が、それぞれ、不足しており、母材の降伏強さや引張強さが低下している。比較例17はC量が多く、引張強さが過剰に高くなっている。比較例18はTi量が少なく、比較例19はTi量が多いため、降伏比が低下している。比較例20はMo量が多いため、母材の靭性が低下している。比較例23はJS値が低いため、母材の引張特性は良好であるが、溶接継手強度が低下している。なお、光学顕微鏡による観察で、これらもラス状組織からなる金属組織を有していると判定した。
本発明に係る高強度鋼板は、高強度化ニーズの強い建設機械、産業機械などの溶接構造物の構造部材に好適であり、調質処理を必要としない非調質プロセスで製造することが可能である。したがって、本発明は、板厚4.5〜25mmの建産機用高強度鋼板を低コストで提供することができる。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C :0.03〜0.09%、
    Mn:1.30〜2.50%、
    Nb:0.005〜0.03%、
    Mo:0.05〜0.3%、
    Al:0.01〜0.05%、
    Ti:0.10〜0.20%
    を含有し、
    Si:0.50%以下、
    P :0.02%以下、
    S :0.006%以下、
    N :0.005%以下、
    B :0.003%以下
    に制限し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、下記式(1)で求められるJS値が1.8以上であり、板厚が4.5〜25mmであることを特徴とする高強度鋼板。
    JS=5.5[C]+1.2[Si]+0.5[Mn]+0.8[Ni]+0.2[Cr]+1.8[Mo]+0.6[Nb]+[B] ・・・(1)
    ここで、[X]は、各元素Xの質量%であり、上記(1)式において、その元素を含有しない場合は0とする。
  2. 更に、質量%で、
    Cu:0.5%以下、
    Ni:0.5%以下、
    Cr:1.0%以下
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼板。
  3. 更に、質量%で、
    Ca:0.01%以下、
    Mg:0.01%以下、
    REM:0.01%以下
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の高強度鋼板。
  4. ラス状組織からなる金属組織を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度鋼板。
  5. 質量%で、
    C :0.03〜0.09%、
    Mn:1.30〜2.50%、
    Nb:0.005〜0.03%、
    Mo:0.05〜0.3%、
    Al:0.01〜0.05%、
    Ti:0.10〜0.20%
    を含有し、
    Si:0.50%以下、
    P :0.02%以下、
    S :0.006%以下、
    N :0.005%以下、
    B :0.003%以下
    に制限し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、下記式(1)で求められるJS値が1.8以上である成分組成を有する鋼片を、1000℃以上に加熱し、900℃以上で粗圧延を施した後、下記式(2)、(3)及び(4)を同時に満足する温度TCRの範囲内での累積圧下率を40〜60%とする仕上圧延を行って板厚を4.5〜25mmとし、そのまま、700℃以上の温度から100℃以下の温度まで水冷することを特徴とする高強度鋼板の製造方法。
    JS=5.5[C]+1.2[Si]+0.5[Mn]+0.8[Ni]+0.2[Cr]+1.8[Mo]+0.6[Nb]+[B] ・・・(1)
    CR≦900℃ ・・・(2)
    CR≧800×[Ti]+720 ・・・(3)
    CR≦2250×[Ti]+590 ・・・(4)
    ここで[X]は各元素Xの含有量[質量%]であり、上記(1)式において、その元素を含有しない場合は0として求める。
  6. 更に、質量%で、
    Cu:0.5%以下、
    Ni:0.5%以下、
    Cr:1.0%以下、
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項5に記載の高強度鋼板の製造方法。
  7. 更に、質量%で、
    Ca:0.01%以下、
    Mg:0.01%以下、
    REM:0.01%以下、
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項5又は6のいずれかに記載の高強度鋼板の製造方法。
JP2015197636A 2015-10-05 2015-10-05 高強度鋼板及びその製造方法 Active JP6536331B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015197636A JP6536331B2 (ja) 2015-10-05 2015-10-05 高強度鋼板及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015197636A JP6536331B2 (ja) 2015-10-05 2015-10-05 高強度鋼板及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017071805A true JP2017071805A (ja) 2017-04-13
JP6536331B2 JP6536331B2 (ja) 2019-07-03

Family

ID=58538105

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015197636A Active JP6536331B2 (ja) 2015-10-05 2015-10-05 高強度鋼板及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6536331B2 (ja)

Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0711382A (ja) * 1993-06-28 1995-01-13 Kobe Steel Ltd 伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板とその製造方法
JPH07138715A (ja) * 1993-09-20 1995-05-30 Nippon Steel Corp 溶接歪が小さくかつ線状加熱による曲げ加工性の良い鋼板およびその製造方法
JP2003313631A (ja) * 2002-04-25 2003-11-06 Jfe Steel Kk 加工性および材質均一性に優れた高強度鋼及びその製造方法
JP2004156095A (ja) * 2002-11-06 2004-06-03 Nippon Steel Corp 母材および溶接熱影響部の靱性に優れた鋼板およびその製造方法
JP2007009270A (ja) * 2005-06-30 2007-01-18 Jfe Steel Kk 高張力鋼板の製造方法
JP2014205889A (ja) * 2013-04-15 2014-10-30 Jfeスチール株式会社 靭性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP2015004081A (ja) * 2013-06-19 2015-01-08 新日鐵住金株式会社 コイル幅方向の強度ばらつきが少なく靭性に優れた高降伏比高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP2017504722A (ja) * 2013-12-24 2017-02-09 ポスコPosco 溶接熱影響部の靱性に優れた超高強度溶接構造用鋼材及びその製造方法
US20170081739A1 (en) * 2014-02-07 2017-03-23 Thyssenkrupp Steel Europe Ag High-strength flat steel product having a bainitic-martensitic microstructure and method for producing such a flat steel product

Patent Citations (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0711382A (ja) * 1993-06-28 1995-01-13 Kobe Steel Ltd 伸びフランジ性に優れた高強度熱延鋼板とその製造方法
JPH07138715A (ja) * 1993-09-20 1995-05-30 Nippon Steel Corp 溶接歪が小さくかつ線状加熱による曲げ加工性の良い鋼板およびその製造方法
JP2003313631A (ja) * 2002-04-25 2003-11-06 Jfe Steel Kk 加工性および材質均一性に優れた高強度鋼及びその製造方法
JP2004156095A (ja) * 2002-11-06 2004-06-03 Nippon Steel Corp 母材および溶接熱影響部の靱性に優れた鋼板およびその製造方法
JP2007009270A (ja) * 2005-06-30 2007-01-18 Jfe Steel Kk 高張力鋼板の製造方法
JP2014205889A (ja) * 2013-04-15 2014-10-30 Jfeスチール株式会社 靭性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP2015004081A (ja) * 2013-06-19 2015-01-08 新日鐵住金株式会社 コイル幅方向の強度ばらつきが少なく靭性に優れた高降伏比高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP2017504722A (ja) * 2013-12-24 2017-02-09 ポスコPosco 溶接熱影響部の靱性に優れた超高強度溶接構造用鋼材及びその製造方法
US20170081739A1 (en) * 2014-02-07 2017-03-23 Thyssenkrupp Steel Europe Ag High-strength flat steel product having a bainitic-martensitic microstructure and method for producing such a flat steel product

Also Published As

Publication number Publication date
JP6536331B2 (ja) 2019-07-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4538094B2 (ja) 高強度厚鋼板およびその製造方法
JP5037744B2 (ja) 高強度鋼板及びその製造方法
JP5439973B2 (ja) 優れた生産性と溶接性を兼ね備えた、pwht後の落重特性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法
JP2013104124A (ja) 曲げ加工性に優れた直接焼入れ焼戻し型高張力鋼板およびその製造方法
JP2014029003A (ja) 耐遅れ破壊特性に優れた高張力鋼板の製造方法
JP6426621B2 (ja) 高強度鋼板及びその製造方法
JP6578728B2 (ja) 高強度熱延鋼板及びその製造方法
WO2018020660A1 (ja) 高強度鋼板
JP4207334B2 (ja) 溶接性と耐応力腐食割れ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法
JP5692305B2 (ja) 大入熱溶接特性と材質均質性に優れた厚鋼板およびその製造方法
JP5509654B2 (ja) 耐pwht特性および一様伸び特性に優れた高強度鋼板並びにその製造方法
JP2007113100A (ja) 熱間プレス用鋼板
JP2013139610A (ja) 引張強さ780MPa以上の高張力厚鋼板およびその製造方法
JP5194572B2 (ja) 耐溶接割れ性が優れた高張力鋼材の製造方法
JP5565102B2 (ja) 機械構造用鋼およびその製造方法
CA3094517C (en) A steel composition in accordance with api 5l psl-2 specification for x-65 grade having enhanced hydrogen induced cracking (hic) resistance, and method of manufacturing the steel thereof
JP5151693B2 (ja) 高張力鋼の製造方法
JP6418418B2 (ja) 大入熱溶接用鋼材
JP6056236B2 (ja) 溶接性および耐遅れ破壊特性に優れた引張強さ780MPa以上の高張力鋼板の製造方法
JP6277679B2 (ja) 耐ガス切断割れ性および大入熱溶接部靭性が優れた高張力鋼板
JP4770415B2 (ja) 溶接性に優れた高張力厚鋼板およびその製造方法
JP2014198873A (ja) 低温靱性、伸び、および溶接性に優れた高強度鋼板、並びにその製造方法
JP6051735B2 (ja) 溶接性および耐遅れ破壊特性に優れた高張力鋼板の製造方法
JP5477457B2 (ja) 板厚40mm以下の鋼構造用高強度低降伏比鋼材
JPWO2019050010A1 (ja) 鋼板およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180606

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190412

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190507

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190520

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6536331

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151