JP2017057455A - 電磁鋼板とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電磁特性と熱伝導性を劣化させずに強度を向上させた電磁鋼板とその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、Si:2〜4%、Al:1〜3%、Ni:1.5〜4%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、面積基準で求められる円相当径の平均値が1〜10nmで、標準偏差が1以下であるAl−Niの金属間化合物が、30000個/μm以上析出している、電磁鋼板である。上記成分の鋼スラブを、熱間圧延、冷間圧延および焼鈍をした後、転位密度を1×1014/m以上とする塑性変形を加え、さらに400〜600℃で時効処理を行うことにより製造される。
【選択図】図1

Description

本発明は、強度を向上させた電磁鋼板とその製造方法に関し、特に高強度の無方向性電磁鋼板とその製造方法に関する。
近年、ハイブリッド電気自動車(HEV)や電気自動車(EV)に使用される駆動モータの高速回転化が著しく、それらの駆動モータの鉄心などに用いられる無方向性電磁鋼板については、低鉄損などの電磁特性に加えて、高強度化の要求が高くなっている。鋼板の高強度化には、固溶強化、析出強化、結晶粒微細化強化、転位強化、変態強化等が適用されるが、固溶強化以外は磁気特性を劣化させるため、電磁鋼板には好ましくない。また、固溶強化は磁気特性劣化を回避した高強度化には大きな効果があるが、同時に圧延荷重増大や脆性破断の課題もあり、生産性の観点から添加量に上限がある。
従来、このような無方向性電磁鋼板の高強度化に関し、特許文献1に示すように、質量%で、C:0.0400%以下、Si:0.2〜4.0%、Mn:0.05〜5.0%、P:0.30%以下、S:0.020%以下、Al:8.0%以下、N:0.0400%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、組織が体積率でフェライト相:50%以上、マルテンサイト相:50%以下を満足する範囲で主としてフェライト相からなる電磁鋼板について、鋼材内部に直径0.050μm以下の金属間化合物を20個/μm3以上の密度で含有させることで強度を向上させる技術を開示している。
特開2005−264315号公報
しかしながら、金属間化合物を鋼材内部に析出させて高強度化をはかった電磁鋼板は熱伝導性が劣化しやすいという課題があった。上述のように近年の高速回転化に伴い発熱も大きくなるため、モータコアには優れた熱伝導性が求められており、駆動モータを高速回転化させるためには、熱伝導性を劣化させずに高強度化をはかった電磁鋼板の出現が望まれる。
本発明は電磁特性と熱伝導性を劣化させずに強度を向上させた電磁鋼板とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、電磁特性と熱伝導性を劣化させずに強度を向上させた電磁鋼板を得るために種々実験し検討を重ねてきた。本発明者らは上記課題を解決するために主としてAl、Niからなる微細な金属間化合物を鋼中に析出させ、その円相当径の平均値と標準偏差、および、析出密度を適正に制御することで、電磁特性と熱伝導性を劣化させずに強度を向上できることを知見した。本発明の技術の要点は、焼鈍後において鋼板中に転位を生じさせ、その転位を析出サイトとして、鋼板中に大きさがなるべく均一なAl−Niの金属間化合物を分散させて析出させることで、電磁鋼板の電磁特性と熱伝導性を劣化させずに強度を向上させることにある。本発明によれば以下の電磁鋼板とその製造方法が提供される。
(1)
質量%で、Si:2〜4%、Al:1〜3%、Ni:1.5〜4%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、
面積基準で求められる円相当径の平均値が1〜10nmで、標準偏差が1以下であるAl−Niの金属間化合物が、30000個/μm以上析出している、電磁鋼板。
(2)
さらに質量%で、Cr:0.01〜4%、Cu:0.01〜4%、Sn:0.01〜0.2%の1または2以上を含有する、(1)に記載の電磁鋼板。
(3)
質量%で、Si:2〜4%、Al:1〜3%、Ni:1.5〜4%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、熱間圧延、冷間圧延および焼鈍をした後、転位密度を1×1014/m以上とする塑性変形を加え、さらに400〜600℃で時効処理を行う、電磁鋼板の製造方法。
(4)
前記鋼スラブは、さらに質量%で、Cr:0.01〜4%、Cu:0.01〜4%、Sn:0.01〜0.2%の1または2以上を含有する、(3)に記載の電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、磁気特性と熱伝導性に優れ、強度や疲労強度、耐磨耗性が向上した無方向性電磁鋼板を得ることができる。これにより、近年のハイブリッド電気自動車(HEV)や電気自動車(EV)などで求められている特性を満足する高速回転モータやロータに磁石を組み込んだモータが得られる。また、本発明によれば、モータ以外についても、例えば電磁開閉器用材料の高効率化、小型化、長寿命化などが達成される。
実施例の粒内析出物TEM観察写真である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
先ず、本発明の電磁鋼板における成分組成について説明する。本発明の電磁鋼板は、質量%で、Si:2〜4%、Al:1〜3%以下、Ni:1.5〜4%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることを基本とする。
Si:2〜4%
Siは鋼の固有抵抗を高めて渦電流を減らし、鉄損を低下せしめるとともに、抗張力を高めるが、添加量が2.0%未満ではその効果が小さい。また、添加により加工硬化能が高まるため、時効熱処理前に実施する加工による転位密度を効果的に増加させる効果もある。一方、Siが4%を超えると鋼を脆化させ、さらに製品の磁束密度を低下させるため4%以下とする。
Al:1〜3%
本発明ではAlは金属間化合物の構成元素として積極的に添加される重要な元素であるが、3%を超えると脆化が問題になるため、上限を3%とする。Alは通常、脱酸剤として添加されるが、Alの添加を抑えSiにより脱酸を図ることも可能である。一方、金属間化合物の析出強化の効果を得るためには少なくとも1%は含有する。また、固溶Alは電気抵抗を高め鉄損を改善する効果が知られており、この目的でAl−Ni析出物を形成する以上のAlを含有させることは有効である。
Ni:1.5〜4%
従来一般的には、Niは主として固溶体強化元素または炭化物、窒化物等による析出強化元素として利用されていた。本発明では、NiはAlとの金属間化合物を形成し、Al−Niの金属間化合物による析出強化を発現させるために含有させられる。Al−Niの金属間化合物による析出強化を発現させるためには、1.5%以上のNiが必要である。一方、過剰な添加は鋼板の延性を劣化させ通板性が低下する他、磁束密度を低下させるとともに製造工程での金属間化合物の好ましい形成抑制が困難となる場合がある。添加コストも考え上限を4%とする。
また、本発明の電磁鋼板は、任意含有成分として、さらに質量%で、Cr:0.01〜4%、Cu:0.01〜4%、Sn:0.01〜0.2%の1または2以上を含有しても良い。これらの元素は、本発明が対象とする電磁鋼板において金属間化合物を形成する元素として知られており、必要に応じて1または2以上を含有することができる。しかし、過剰な含有は鋼板の延性を劣化させ通板性が低下する他、製造工程での金属間化合物の好ましい形成抑制が困難になる場合がある。また、添加コストを考え、Crについては0.01〜4%、Cuについては0.01〜4%、Snについては0.01〜0.2%とする。
本発明の電磁鋼板は以上の成分組成を基本とし、残部Feおよび不可避的不純物からなる。
Cは磁気特性を劣化させる場合があるので0.0400%以下とすることが好ましい。一方、加工硬化能を高め、時効熱処理前に実施する加工による転位密度を効果的に増加させる効果もある。製造コストの観点からは溶鋼段階で脱ガス設備によりC量を低減しておくことが有利で、0.0030%以下とすれば磁気時効抑制の効果が著しく、高強度化の主たる手段として炭化物等の非金属析出物を用いない本発明鋼においては0.0020%以下とすることがさらに好ましく、0.0015%以下がさらに好ましい。0%であっても構わない。
Mnは、固溶による高強度化や電気抵抗を高め鉄損を改善する元素としても有効であり、本発明鋼でも公知技術に準じた使用が可能である。また、加工硬化能を高め、時効熱処理前に実施する加工による転位密度を効果的に増加させる効果もある。高強度化の観点では、微細金属間化合物を活用する本発明では特に必要としない。0%でも構わないが、鉄鉱石を原料とする工業的製法では、0.01%程度は不可避的に含有される。
NはCと同様に磁気特性を劣化させるので0.0400%以下とすることが好ましい。含有により加工硬化能を高め、時効熱処理前に実施する加工による転位密度を効果的に増加させる効果もある。特に本発明ではAlとの強い窒化物の生成を避けるためNは低い方が好ましく、0.0027%以下とすれば磁気時効や微細な窒化物形成による特性劣化の抑制効果は顕著で、さらに好ましくは0.0022%、さらに好ましくは0.0015%以下、0%であっても構わない。
Cuは鉄の飽和磁束密度Bsを大幅に低下させ、B50(磁化力が5000[A/m]における磁束密度[T])も大幅に低下させる。BsやB50の低下はモータトルクの低下につながるため、本発明ではCuの含有を必須とすることなく、BsやB50の低下を伴わずに、高強度かつ低鉄損な無方向性電磁鋼板及びその製造方法を実現できる。一方でCu析出による高強度化なども知られており、本発明鋼でも公知技術に準じた使用が可能である。
Nbは、NbCなどの析出物は高強度化には有効であるが、これら析出物が磁壁移動を阻害し、鉄損を大幅に劣化させるため、この目的であえて添加する必要はない。一方で、固溶Nbは固溶強化のみならず結晶粒微細化による高強度化や高周波特性改善にも有効であり、本発明鋼でも公知技術に準じた使用が可能である。
Pは固溶体強化により抗張力を高める効果の著しい元素であるが、この目的ではあえて添加する必要はない。0%であっても構わない。一方、添加により加工硬化能を高め、時効熱処理前に実施する加工による転位密度を効果的に増加させる効果もある。0.3%を超えると脆化が激しく、工業的規模での熱延、冷延等の処理が困難になるため、上限を0.30%とすることが好ましく、さらに好ましくは0.10%以下である。
Sは硫化物を形成し磁気特性、特に鉄損を劣化させる場合があるので、Sの含有量はできるだけ低いことが好ましく0%であっても構わない。本発明では0.020%以下が好ましく、さらに好ましくは0.0040%以下、さらに好ましくは0.0020%以下、さらに好ましくは0.0010%以下である。
次に、本発明の電磁鋼板の製造方法について説明する。先ず、前記成分を含む鋼を、通常の電磁鋼板と同様に転炉で溶製し、連続鋳造で鋼スラブとし、ついで熱間圧延、冷間圧延および焼鈍をした後、転位密度を1×1014/m以上とする塑性変形を加え、さらに400〜600℃で時効処理を行う。これらの工程に加え絶縁皮膜の形成や脱炭工程などを経ることも本発明の効果を何ら損なうものではない。
焼鈍後の鋼板を転位密度1×1014/m以上とする塑性変形は、例えばスキンパス圧延、レベラー矯正によって行うことができる。また、モータコア形状に打抜く際の加工により、転位密度1×1014/m以上とすることもできる。そして、これらスキンパス圧延、レベラー矯正、打抜き加工などによって鋼板を転位密度1×1014/m以上とした後、さらに400〜600℃で時効処理を行う。このような塑性変形と時効処理を行うことにより、面積基準で求められる円相当径の平均値が1〜10nmで、標準偏差が1以下であるAl−Niの金属間化合物が、30000個/μm以上析出した、低鉄損、高磁束密度といった優れた電磁特性と高強度を兼ね備え、熱伝導性も劣化していない無方向性電磁鋼板を得ることができる。
従来、電磁鋼板で高強度化のために利用されている殆どの元素は添加コストが問題視されるだけではなく磁気特性に少なからず悪影響を及ぼす割に、高強度化効果が小さくコストパフォーマンスに問題があった。本発明でも高強度化の目的のためにSi、Al、Niを含有するが、その技術的効果および技術的目的は従来とは全く異なる。つまり、従来の添加元素は主として固溶体強化元素または炭化物、窒化物等による析出強化元素として利用されていたのに対し、本発明ではAl−Niの金属間化合物を形成し、それによる析出強化効果を発現させるために含有するのである。
なお、Niによる固溶強化や結晶粒の微細化では、鉄損が少なからず劣化する。また、結晶粒を微細化させずに、固溶強化のみで顧客の満足する強度を確保するためには、Si、Al、Niの含有量を増加しなければならず、合金コストが上昇し、さらに圧延荷重の増加、脆化に伴う生産性低下等の課題がある。
塑性加工後の鋼板の転位密度を1×1014/m以上とするのは、塑性加工によって鋼板中に転位を十分に生じさせ、その転位を析出サイトとして、鋼板中に大きさがなるべく均一なAl−Niの金属間化合物を分散させて析出させるためである。転位密度が1×1014/m未満では、金属間化合物の析出サイトが不十分であり、時効後において個数密度が30000個/μm以上のAl−Niの金属間化合物が得られなくなってしまう。また、Al−Niの金属間化合物の個数密度が少ないと、金属間化合物の円相当径の平均値が10nmよりも大きくなり、さらに個々の金属間化合物の大きさのばらつきも大きくなり、標準偏差が1を超えてしまう。なお、焼鈍後の鋼板の転位密度が3×1016/mを超えてしまうと却って電磁特性が劣化し、さらに時効後においてAl−Niの金属間化合物の大きさや標準偏差、個数密度が本発明の範囲内から外れる恐れがある。そのため、焼鈍後の鋼板の転位密度は3×1016/m以下であることが望ましい。
また時効処理は、400〜600℃で行う。400℃未満では、十分な金属間化合物が得られず、一方、600℃を超えると形成される金属間化合物が粗大となってしまう。この際の保持時間は1〜120分とすることが好ましい。短過ぎると十分な金属間化合物が得られず、一方、長過ぎると形成される金属間化合物が粗大となってしまう。この他、加熱速度や冷却速度なども、本発明の特徴である析出物の状態に影響を及ぼす可能性がある。これらの熱処理条件は目的とする特性に応じて成分や生産性なども考慮して決定される。当業者であれば、本発明の技術思想に従い、数度の試行により適切な条件を決定することは容易である。
以上のような製造工程を経ることで、面積基準で求められる円相当径の平均値が1〜10nmで、標準偏差が1以下であるAl−Niの金属間化合物が、30000個/μm以上析出し、磁気特性と熱伝導性を殆ど損なわず高強度の電磁鋼板を得ることができる。本発明の電磁鋼板は硬質化のための時効熱処理により引張強度が100MPa以上上昇し、または硬度が1.1倍以上増加する。また、時効処理後の最終的な強度は600MPa以上となるものを本発明の対象とする。
金属間化合物の円相当径の平均値が10nmを超える粗大な化合物が多量に生成すると高強度化の効率が低下し、磁気特性も劣化させる恐れがある。本発明ではサイズの細かい金属間化合物を高密度に生成させることで、優れた磁気特性と熱伝導性を維持しつつ、電磁鋼板の強度を向上させる。一方、金属間化合物の円相当径の平均値が1nm未満と微細では強化能が小さくなる。さらに高強度化を確実に達成するためには、円相当径の標準偏差が1以下となるように個々の金属間化合物の大きさが揃っていることが必要である。この標準偏差が1を超えると、金属間化合物の大きさが不均一となり、磁気特性と熱伝導性を維持しつつ、電磁鋼板の強度を向上させることが困難となる。なお、鉄鋼材料中に形成するAl−Niの金属間化合物としては、NiAl、NiAlなどが通常知られている。また、これらの化合物の元素比は相当に変動することは知られており、また何らかの不純物元素を含んだものも本発明に相当する。
高強度化の観点から、金属間化合物の数密度は30000個/μm以上の析出が必要である。金属間化合物サイズと数密度の制御は、優れた高強度化と磁気特性を両立し、熱伝導性の劣化を防ぐ観点から非常に重要である。その理由は、これらが強度および磁気特性と熱伝導性にそれぞれ影響するのみならず、これらを変化させたときの強度、磁気特性および熱伝導性が変化する挙動がそれぞれ異なるためである。すなわち、強度上昇効果が高く、磁気特性劣化と熱伝導性の劣化が少ない領域に制御する必要がある。このためには前述のように成分および熱処理条件、さらには時効処理前の転位密度を適切に制御し、金属間化合物のサイズと数密度を所望の範囲とすることが有効である。
本発明では高強度化の主要な手段として結晶組織の微細化を利用しないため、結晶粒径は磁気特性の観点から最適な範囲に調整が可能である。高強度化に寄与する金属間化合物のサイズや密度は成分のみならず、最終的な熱処理により制御が可能であるため結晶粒径はこの熱処理以前の、例えば再結晶焼鈍の最高到達温度およびその温度域での保持時間等により金属間化合物の制御とは独立に制御が可能となる。結晶粒径は通常は300μm以下であり、好ましくは30〜250μmに制御される。さらに好ましくは60〜200μmである。一般的には鋼板を使用する際の励磁電流の周波数が高い場合には結晶粒は微細にしておくことが好ましい。また、方向性電磁鋼板のように二次再結晶等を利用して数cmにまで結晶粒径を粗大化させても本発明の効果は何ら損なわれるものではない。
なお、本発明の効果は通常電磁鋼板の表面に形成されている表面皮膜の有無および種類によらず、さらに製造工程にはよらないため無方向性または方向性の電磁鋼板に適用できる。また、用途も特に限定されるものではなく、家電または自動車等で用いられるモータのロータ用途の他、強度と磁気特性が求められる全ての用途に適用される。
表1に示す真空溶解した熱延鋼板を、酸洗後、0.20mm厚に冷延し、焼鈍した。その後、転位密度を表1に示す条件とする塑性変形を加え、350〜750℃×2時間の時効処理を行い、磁気特性、機械特性を評価した。その結果を表1に示す。なお、表1において、本発明の範囲外の数値には下線を付した。
成分が本発明範囲の材料は、通常の仕上焼鈍後に550℃×2時間の時効処理を行うことで、YP:140〜160MPa、TS:160〜180MPaの上昇を、鉄損劣化なしに得た(到達YP:570〜910MPa、TS:710〜1130MPa)。図1に示すように、高分解能TEMを用いて、α−Feとβ’−NiAlの結晶構造の違いを考慮した暗視野TEM観察を行うことで、結晶粒内に5nm程度の微細析出物が3,000個/μmの密度で大量に観察され、これが強度上昇の原因である事が分かった。図1中、白く見える析出物は直径約5nmのAl−Ni金属間化合物であり、個数密度は約3,000個/μmであった。これは、本観察技術を用いることで初めて判明した強度上昇のメカニズムである。なお、暗視野TEM観察の観察部位の厚さは約0.1μmであり、3,000個/μmは30,000個/μmに相当する。
塑性変形後の転位密度が約5×1013/mの場合には、析出物の円相当平均径は約3nmと小さかったが標準偏差が1よりも大きく、個数密度は約5000個/μmと非常に少なくなった。この場合、時効処理後の強度上昇は得られず、YP=480MPaであった。塑性変形後の転位密度が約1×1014/mの場合でも、時効処理温度が350℃の場合には、Al−Ni析出物はほとんど観察されず、時効処理後の強度上昇が得られなかった。一方で、塑性変形後の転位密度が約1×1014/mで、時効処理温度が750℃の場合、円相当平均径10nm以上の析出物が増加し、個数密度は約20000個/μmと少なかった。この場合、時効処理後の強度上昇が得られなかっただけではなく、鉄損W10/800も32.0W/kgと大きく劣化した。
各材料から直径10mmの円板試料をそれぞれ10枚切り出し、レーザフラッシュ法にて熱伝導率を測定したところ、本発明の材料に比べて、比較例では熱伝導率測定値のばらつきが大きくなった。これは析出物のサイズ分布が大きいためと推定され、特に標準偏差が1を超えるものは、熱伝導率測定値のばらつきが平均値±10%程度と大きくなった。
さらに、Cuを質量%で0.01%以上添加することでYPが向上し、本発明例では1%または2%の添加でYP830MPa以上が得られた。Cr添加は鉄損W10/800低減に効果があり、Sn添加は磁束密度B50が向上した。それぞれ質量%で0.01%以上添加することで効果が得られた。

Claims (4)

  1. 質量%で、Si:2〜4%、Al:1〜3%、Ni:1.5〜4%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、
    面積基準で求められる円相当径の平均値が1〜10nmで、標準偏差が1以下であるAl−Niの金属間化合物が、30000個/μm以上析出している、電磁鋼板。
  2. さらに質量%で、Cr:0.01〜4%、Cu:0.01〜4%、Sn:0.01〜0.2%の1または2以上を含有する、請求項1に記載の電磁鋼板。
  3. 質量%で、Si:2〜4%、Al:1〜3%、Ni:1.5〜4%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、熱間圧延、冷間圧延および焼鈍をした後、転位密度を1×1014/m以上とする塑性変形を加え、さらに400〜600℃で時効処理を行う、電磁鋼板の製造方法。
  4. 前記鋼スラブは、さらに質量%で、Cr:0.01〜4%、Cu:0.01〜4%、Sn:0.01〜0.2%の1または2以上を含有する、請求項3に記載の電磁鋼板の製造方法。
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