以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る液体吐出装置10の一例を示す。図1(a)は、液体吐出装置10の要部の構成の一例を示す。図1(b)は、液体吐出装置10におけるインクジェットヘッド12の構成の一例を示す。
本例において、液体吐出装置10は、インクジェット方式で印刷を行う印刷装置(インクジェットプリンタ)であり、印刷対象のメディアである媒体50に対して、インク滴と吐出することで2次元の画像を印刷する。この場合、インク滴は、インクジェット方式で吐出する液滴の一例である。また、以下に説明をする点を除き、液体吐出装置10は、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の特徴を有してよい。また、液体吐出装置10は、図示した構成以外に、印刷の動作に必要な各種構成を更に備えてよい。例えば、液体吐出装置10は、使用するインクの種類に応じて、媒体50にインクを定着させる手段等を更に備えてよい。
本例において、液体吐出装置10は、インクジェットヘッド12、プラテン14、走査駆動部16、駆動信号出力部18、吐出ノズル設定部20、タイミング設定部22、補正データ記憶部24、及び制御部26を有する。インクジェットヘッド12は、インクジェット方式で液滴を吐出する吐出ヘッドの一例である。インクジェットヘッド12としては、例えば、公知のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。
また、本例において、インクジェットヘッド12は、ピエゾ方式でインク滴を吐出するインクジェットヘッドであり、インクジェット方式でインク滴をそれぞれ吐出する複数のノズル102と、それぞれのノズル102からインク滴をそれぞれ吐出させる複数のピエゾ素子104とを有する。この場合、複数のノズル102は、例えば図1(b)に示すように、所定のノズル列方向(例えば、図中のX方向)に並び、ノズル列を構成する。また、複数のピエゾ素子104のそれぞれは、インクジェットヘッド12の内部において、それぞれのノズル102に対応する位置に配設される。また、ピエゾ素子104は、駆動素子の一例であり、走査駆動部16を介して駆動信号出力部18から受け取る駆動信号に応じて変位することにより、対応するノズル102からインク滴を吐出させる。
尚、図示は省略したが、インクジェットヘッド12は、例えば、ノズル102の前段でインクを貯留するインク室(圧力室)等を更に有する。この場合、ピエゾ素子104は、変位によりインク室内のインクを圧縮して押し出すことにより、ノズル102からインクを吐出させる。また、駆動信号に応じてノズル102からインク滴を吐出させる動作については、後に更に詳しく説明をする。
また、図1(a)においては、図示を簡略化するため、液体吐出装置10の構成として、1個のインクジェットヘッド12のみを図示している。しかし、液体吐出装置10は、複数のインクジェットヘッド12を備えてもよい。この場合、例えば、それぞれ異なる色のインク滴を吐出する複数のインクジェットヘッド12を備えることが考えられる。
プラテン14は、媒体50を保持する台状部材であり、インクジェットヘッド12と対向する位置において上面に媒体50を載置する。走査駆動部16は、媒体50に対して相対的にインクジェットヘッド12を移動させる駆動部である。本例において、走査駆動部16は、例えば、駆動信号出力部18から受け取る駆動信号をインクジェットヘッド12へ供給しつつ予め設定された主走査方向(例えば、図中のY方向)へインクジェットヘッド12を移動させることにより、主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作をインクジェットヘッド12に行わせる。また、例えば主走査動作の合間に、主走査方向と直交する副走査方向(例えば図中のX方向)へ媒体50に対して相対的にインクジェットヘッド12を移動させることにより、副走査動作をインクジェットヘッド12に行わせる。この場合、副走査動作とは、例えば、媒体50においてインクジェットヘッド12と対向する位置を変更する動作のことである。
駆動信号出力部18は、ピエゾ素子104を駆動する駆動信号を出力する信号出力部である。本例において、駆動信号出力部18は、例えば、インクジェットヘッド12の各ピエゾ素子104に対し、走査駆動部16を介して、駆動信号を供給する。本例において用いる駆動信号については、後に更に詳しく説明をする。
吐出ノズル設定部20は、インクジェットヘッド12において駆動信号を受け取るピエゾ素子104を選択する。本例において、吐出ノズル設定部20は、例えば、主走査動作においてインク滴を吐出するタイミング毎に、印刷すべき画像を示す画像データに基づき、インク滴を吐出すべき画素の位置に合わせて、駆動信号を受け取るピエゾ素子104を選択する。また、これにより、画像データに基づき、インク滴を吐出するノズル102を設定する。
また、吐出ノズル設定部20は、選択したピエゾ素子104を示す信号を、例えばタイミング設定部22を介して、走査駆動部16へ伝達してよい。これにより、走査駆動部16は、例えば、吐出ノズル設定部20により選択されているピエゾ素子104に対し、駆動信号出力部18から受け取る駆動信号を供給する。
タイミング設定部22は、それぞれのピエゾ素子104が駆動信号を受け取るタイミングを設定する。この場合、タイミング設定部22は、例えば、少なくとも、インク滴を吐出するノズル102として吐出ノズル設定部20に設定されたノズル102に対応するピエゾ素子104について、駆動信号を受け取るタイミングを設定する。
また、タイミング設定部22は、設定したタイミングを示す信号を、走査駆動部16へ伝達してよい。これにより、走査駆動部16は、タイミング設定部22により設定されているタイミングに基づき、それぞれのピエゾ素子104へ駆動信号を供給する。また、本例において、タイミング設定部22は、補正データ記憶部24に記憶されている補正データに基づき、それぞれのピエゾ素子104が駆動信号を受け取るタイミングを設定する。この場合、補正データ記憶部24に記憶されている補正データとは、ノズル102の吐出特性の補正に用いるデータである。また、タイミング設定部22によるタイミングの設定については、後に更に詳しく説明をする。
補正データ記憶部24は、補正データを記憶する記憶部である。本例において、補正データ記憶部24は、補正データとして、吐出特性の補正が必要なノズル102について、ピエゾ素子104が電圧変化信号を受け取るタイミングを記憶する。また、このタイミングとして、より具体的に、それぞれのノズル102の吐出特性に対応して予め設定されたタイミングを記憶する。
制御部26は、液体吐出装置10の各部の動作を制御する。制御部26は、例えば液体吐出装置10のCPUであってよい。本例によれば、例えば、媒体50に対する印刷の動作を適切に行うことができる。
ここで、上記においては、液体吐出装置10が印刷装置である場合について、液体吐出装置10の構成の一例を説明した。しかし、液体吐出装置10の構成の変形例において、液体吐出装置10は、インクジェットプリンタ以外の装置であってもよい。例えば、液体吐出装置10は、機能性の液体の液滴を吐出することで画像の印刷以外の動作を行う装置であってよい。より具体的に、この場合、液体吐出装置10は、例えば、導電性の液体の液滴を吐出することで導電性の配線を形成する装置等であってよい。また、液体吐出装置10は、例えば、液滴の吐出により立体物を造形する造形装置であってもよい。この場合、液体吐出装置10は、例えば、液滴の吐出により形成する層を複数層重ねることにより、積層造形法で立体物を形成する。また、これらの場合、液体吐出装置10は、例えば、用途に応じた各種の構成を更に有してよい。また、上記において説明をした各部は、用途に応じて適宜変更をした特徴を有してよい。
また、液体吐出装置10における走査駆動部16、駆動信号出力部18、吐出ノズル設定部20、タイミング設定部22、補正データ記憶部24等の各部について、上記においては、インクジェットヘッド12の外部に配設される構成として説明をした。しかし、これらの各部の全体又は一部は、インクジェットヘッド12内に配設されてもよい。
続いて、本例において用いる駆動信号や、タイミング設定部22によるタイミングの設定等について、更に詳しく説明をする。説明の便宜上、先ず、従来の構成において用いていた駆動信号の一例を示す。
図2は、従来の駆動信号の一例を示す図であり、ピエゾ方式インクジェットヘッドにおいてプル、プッシュ、プルの3段階からなる動作でインク滴を吐出する場合の原理的な駆動信号(駆動電圧)の波形をモデル化して示す。この動作は、例えば、公知のプッシュ・プル方式の動作であり、インク室にインクを引き入れる動作モード(プル1モード;pull 1 mode)、インク室からインクをノズルを通して外部に押し出す動作モード(プッシュモード;push mode )、プッシュモードで変形中のピエゾ素子を素早く引き戻す動作モード(プル2モード;pull 2 mode)、及びゼロを含む直流電圧をかけてピエゾの変位を一定に保つ待機モードの4つのモードからなっている。また、この場合、ゼロを含む直流電圧は、インクジェットヘッドの音響共鳴周波数に対応する周期よりも長時間一定で変化しない電圧を用いる。
また、図2においては、横方向の中心線がゼロであり、上方が正の電圧を示し、下方が負の電圧に示している。また、より具体的に、図示した場合において、インク滴を吐出するノズルに対応するピエゾ素子に供給される駆動信号は、波形A、波形B及び波形Cの3つの波形部分からなっている。
尚、以下においては、説明を簡単化するため、駆動信号を構成するパルスについて、全て瞬時に変化する矩形波で示している。しかし、実際の構成においては、例えば、インクジェットヘッドの音響共鳴周波数周期より短い時間で電圧変化が完了すればよい。そのため、例えば、立ち上がりや立下りが訛った時間変化をする波形を用いてもよい。
また、図2に示した波形の駆動信号を用いた場合、波形Aに応じて行うプル1モード時において、ピエゾ素子は、インク室を拡大し膨張する方向に変位する。また、この膨張により、インク室にインク供給路(図示しない)からインクが引き込まれ充填される。また、この場合、ピエゾ素子の撓み量は、印加電圧VpullAにほぼ比例して大きくなる。
また、この引き込み動作は、ノズルの位置においてインクにより形成されたメニスカスを破壊しないように行うことが好ましい。より具体的に、この場合、例えば、大気圧との差圧で定義される負圧が百分の数気圧を超えない程度になるように、インクの供給によりインク室の負圧上昇が抑制できる程度にゆっくりと行うことが好ましい。
また、この動作に続いて、波形Bに応じて行うプッシュの動作(プッシュモード)に移る。このプッシュの動作は、一気にノズルからインクを押し出す動作である。この場合、インクを押し出す量は、引き込み量と、押し出し量の合計値になる。そのため、図示した場合においては、VpushB−VpullAに等しいVpush1にほぼ比例して吐出するインク滴の容量(インクボリューム)が決まる。すなわち、図2に示した駆動信号を用いる場合、例えば波形Aについて波形a1又はa2のいずれかを選ぶことでVpullA(=VpushA)を変化させたり、波形Bについて波形b1又はb2のいずれかを選んでVpushBを変化させれば、VpullA又はVpushBのいずれかの変化により押し出すインクの量が変化するので、ノズルから吐出されるインク液滴の容量(サイズ)が変化することになる。
また、プッシュの動作に続いて、波形Cに応じて行うプル2モードの動作を行う。この動作では、インクを引き込むプル方向へ、例えばC1,C2として示した例のように電圧を下げる。この場合、例えば吐出するインクの量を小さくしたい場合には、C1の例のように、プル電圧変量を小さくする。これにより、吐出方向へ移動中のインクに対し、引き戻す方向の小さな力が働くことになる。また、吐出するインクの量を大きくしたい場合には、C2の例のようにプル電圧変量を大きくする。この場合、吐出方向へ移動中のインクに対し、引き戻す方向の大きな力が働くことになる。そのため、波形Cの電圧を異ならせることによっても、インク滴の容量(吐出量)を変化させることができる。
このように、従来の駆動信号を用いる場合にも、波形A、B、Cのそれぞれの電圧を変化させることにより、インク滴の容量を変化させることができる。図3は、ピエゾ素子の駆動の仕方により様々な容量のインク滴を吐出する方法の一例を示す。
図2を用いて説明をしたように、例えば従来の駆動信号を用いる場合、プル1モードでの電圧(VpullA=VpushA)、プッシュモードでの電圧(Vpush1=VpushB−VpushA)、又はプル2モードでの電圧(Vpull2=VpullB−VpullC)のいずれかの電圧を変えることにより、インク滴の容量を様々に変化させることができる。また、図3においては、このようにして行うインク滴の容量(インク液滴サイズ)の変化について、モデル化して示している。
この図からわかるように、例えば各ピエゾ素子に対してプル1モード、プッシュモード、プル2モードでの電圧を制御できれば、各ノズルから吐出されるインク滴の容量を制御することができる。また、これにより、例えば、吐出するインク滴の容量が標準のノズルから外れたノズルが存在する場合等にも、インク滴の容量が所定の一定値になるように、吐出量の補正等を行うことができる。
しかし、従来の駆動信号を用いる場合、このような補正を行うためには、例えば、各ノズルに対して電圧レギュレータ回路を設けること等が必要になる。そのため、このような制御について、現実的な回路規模で実現することは困難である。
これに対し、本例においては、従来とは異なる駆動信号を用い、かつ、それぞれのピエゾ素子104へ駆動信号を供給するタイミングを制御することで、より小さな現実的な回路規模で、インク滴の容量等の補正を行う。以下、この点について、更に詳しく説明をする。先ず、補正に先立って行う測定の動作等について、説明をする。
上記においても説明をしたように、本例において、タイミング設定部22(図1参照)は、補正データ記憶部24(図1参照)に記憶されている補正データに基づき、それぞれのピエゾ素子104(図1参照)が駆動信号を受け取るタイミングを設定する。また、補正データ記憶部24は、補正データとして、ノズル102の吐出特性の補正に用いるデータを記憶する。
そして、このようなタイミングの調整を行うために、本例においては、予め、例えば、インクジェットヘッド12における各ノズル102(図1参照)の吐出特性を取得するための測定を行う。また、より具体的に、この場合、例えば、予め設定された基準の駆動信号を用いた場合のそれぞれのノズル102の吐出特性を予め測定することにより、それぞれのノズル102の吐出特性を示すノズル特性データを予め取得する。そして、取得したノズル特性データに基づき、必要な補正データを生成し、補正データ記憶部24に記憶させる。
また、基準の駆動信号を用いた場合のそれぞれのノズル102の吐出特性を予め測定する動作については、より具体的に、例えば、基準の駆動信号を用いてそれぞれのノズル102に直線を描かせ、直線の線幅を測定することにより、ノズル102の吐出特性を測定することが考えられる。このように構成すれば、例えば、線幅の測定により、それぞれのノズル102から吐出される液滴の容量を間接的に検知することができる。また、これにより、例えばインク滴の容量を直接確認する場合等と比べ、それぞれのノズル102の吐出特性を容易かつ適切に測定することができる。そこで、以下、線幅の測定によりノズル102の吐出特性を測定する動作について、説明をする。
図4は、線幅の測定方法(検出方法)について説明をする図であり、測定された線幅に基づいてインク滴の容量を検出する方法の一例を示す。図4(a)は、インクジェットヘッド12の構成を簡略化して示す図である。
以下においては、説明を容易にするために、副走査方向(X方向)へ12個のノズル102の並んだインクジェットヘッド12を用いる場合の動作を説明する。このインクジェットヘッド12は、例えば、少数のノズル102が副走査方向へ600dpiのピッチ(ノズル列解像度ピッチ)で並ぶ高解像度ヘッドである。また、この場合、副走査方向におけるピッチとは、例えば、副走査方向へ延伸する直線上に投影したノズル102間の間隔(ピッチ)であってよい。そのため、複数のノズル102は、例えば副走査方向と交差する斜め方向に並んでもよく、また、千鳥構造に配置されていてもよい。
また、線幅に基づいてインク滴の容量を検出するとは、例えば、印刷されたインクのドットサイズを検出することであってよい。また、この場合、線幅に基づいてドットサイズを検出する動作は、例えば公知の方法で行ってよい。そのため、以下においては、本例における特徴部分を中心に、説明をする。
尚、インク滴により媒体上の形成されるインクのドットのサイズは、通常、印刷の様々な条件(プリント条件)に応じて決まる。また、このような条件としては、例えば、印刷の解像度、主走査動作時のインクジェットヘッドの移動速度、使用する媒体の種類、使用するインク、環境温度等が考えられる。そして、これらの条件が一定の場合、インク滴の容量と、描かれる直線の幅との関係は、一義的に決まると考えられる。そのため、測定の困難なインク滴の容量を直接測定しなくても、線幅が同じ値であればインク滴の容量も同じであると考えられる。そして、本例においては、このような関係を利用して、ノズル102の吐出特性の補正を行う。
図4(b)、(c)は、線幅の測定対象となる直線の一例を示す。本例においては、例えば、図4(a)に示した構成のインクジェットヘッド12を主走査方向(Y方向)へ移動させつつ、主走査方向へインクのドットが連続して並ぶように、インクジェットヘッド12にインク滴を吐出させる。また、この場合、主走査方向におけるインクのドットの間隔について、副走査方向におけるノズルピッチよりも細かい間隔(例えば、1200dpi等)に設定する。また、これにより、インクジェットヘッド12における少なくとも一部のノズル102により、主走査方向へ延伸する直線(連続線)を描かせる。この場合、それぞれのノズル102に直線を描かせる動作は、例えば、主走査方向(Y軸方向)へインクジェットヘッド12を移動させる主走査動作時にノズル102から連続的にインク滴を吐出させることで実質的な連続性をプリントする動作であってよい。
また、この場合、インクジェットヘッド12の全てのノズル102について、それぞれの回で一部のノズルのみを用い、複数回の主走査動作を行うことが好ましい。より具体的に、この場合、直線を描かせるノズル102について、例えば副走査方向において連続して並ぶノズル102を同時に選択しないようにして、副走査方向において隣接する直線が接触しないようにすることが好ましい。また、この場合、インクジェットヘッド12における全てのノズル102について、描いた直線の線幅を全て測定できるように、選択するノズル102を変更しつつ直線を描かせる動作を複数回行うことが好ましい。
例えば、図4(b)、(c)においては、インクジェットヘッド12のノズル列の一端側から数えた奇数番目のノズル102(奇数列)と、偶数番目のノズル102(偶数列)との二組にノズル102を分け、直線を描く動作を2回に分けた場合の例を示している。また、図4(b)には、インク滴の容量が小さくなる不良(吐出異常)のノズル102により描かれた線が含まれている場合を示している。より具体的に、この不良のノズル102は、図4(a)に示した構成において、上から3番目のノズル102である。
尚、インクのドットがインクジェットヘッド12におけるノズルピッチに比べて更に大きい場合には、例えばノズル2個分や、ノズルn個分(nは3以上の整数)の間隔を開けてノズル102を選択し、3回又はn+1回に分けて直線を描く動作を行うことで、全てのノズル102により主走査方向へ延伸する直線を描くことが考えられる。このように構成すれば、例えば、副走査方向における線間の接続や接触等を防ぎつつ、全てのノズルでより適切に直線を描くことができる。
また、各ノズル102により直線を描いた後には、線幅の測定(検出)を行う。この場合、例えば、描いた直線に対し、所定の位置での光学反射光強度や濃度分布を測定することが考えられる。より具体的に、例えば、図4(a)に示した奇数列のノズル102で描いた複数の直線に対し、図中にX1−X1線で示した位置において、副走査方向における光学反射光強度又は濃度の分布を測定することが考えられる。この場合、例えば、レーザー光走査式、リニアイメージセンサー、又は2次元イメージセンサー等による反射光分布測定方法を用いることが考えられる。また、この測定は、例えば液体吐出装置10(図1参照)に内蔵された光学読み取り手段で行ってもよく、イメージスキャナーやドラムスキャナー等の外部機器等で行ってもよい。また、図4(b)に示した偶数列のノズル102で描いた複数の直線に対しては、例えば、図中にX2−X2線で示した位置において、同様の測定を行うことが考えられる。
図5は、線幅の測定結果の一例を示す図であり、上記に説明をした方法で検出された光学反射濃度曲線を示す。図5(a)は、奇数列のノズル102で描いた複数の直線に対する線幅の測定結果の例を示す。図5(b)は、偶数列のノズル102で描いた複数の直線に対する線幅の測定結果の例を示す。尚、図5(a)、(b)において、縦軸は、相対的なプリント濃度を示している。
上記においても説明をしたように図4(b)おいては、インク滴の容量が小さくなる不良(吐出異常)のノズル102により描かれた線が含まれている場合を示している。また、その他のノズル102は、全て正常である。そのため、図5(a)においては、この吐出異常のノズル102により描かれた線に対応する線幅の測定結果(ΔX2c)が、他の正常のノズル102に対する測定結果(ΔX7c等)と異なっている。そのため、光学反射濃度分布曲線の測定結果に基づき、吐出インク量が不足しているノズル102において、他の正常なノズル102と比べ、光学反射濃度が不足していることがわかる。
また、線幅の測定においては、より具体的に、例えば、ノズル102毎の分布曲線から、一定の閾値レベルや、図中に示した各波形の半値幅の位置等に基づき、各ノズル102により描かれた直線の線幅を検知する。そして、検知された線幅が所定の値を超える場合や、下回る場合には、インク滴の容量が正常な範囲から外れていると判断する。このように構成すれば、例えば、それぞれのノズル102の吐出特性を容易かつ適切に測定することができる。
また、本例においては、更に、インク滴の容量が正常な範囲から外れているノズル102の少なくとも一部に対し、吐出特性の補正を行う。また、これにより、それぞれのノズル102により形成されるインクのドットサイズを補正する。
図6は、ノズルの吐出特性のバラツキの一例を示す。本例のように、ピエゾ素子104(図1参照)によりノズル102からインク滴を吐出させるピエゾ方式のインクジェットヘッドの場合、ピエゾ素子104の加工精度による機械的構造や材質のバラツキ、又はノズルやインク室の機械的なバラツキ等が生じることになる。また、その結果、同一駆動条件でピエゾ素子104を駆動した場合にも、ノズルから吐出されるインク滴の容量は、吐出設計値の中心値(吐出中心吐出量V0)に対して前後にばらつくことになる。また、インク滴の容量のバラツキに伴い、各ノズルで描く直線の線幅にもバラツキが生じることになる。
また、図6においては、多数のインクジェットヘッドを使用して、各インクジェットヘッドが有する各ノズルにより描かれる線幅について、横軸に検出された線幅を、縦軸に出現したノズルの数を示している。また、図示した場合においては、吐出中心吐出量に対応する線幅X0の前後にほぼ正規分布で吐出量(線幅)がばらついている状態を示している。
尚、実際のインクジェットヘッドにおいて、ノズルの吐出特性のバラツキは、正規分布から外れることも多い。しかし、吐出特性の補正の原理の説明には支障がないため、上記及び以下においては、バラツキが正規分布になる場合について説明する。
ここで、1回の主走査動作(1パス)で、ノズルのバラツキにより発生する筋ムラ等がないきれいな画像を印刷するためには、通常、ノズルからの吐出するインク滴の容量を一定に保つ必要がある。より具体的に、例えば、高画質のプリントを実現するには、図6に範囲Aで示したような、線幅の中心値X0になる容量(吐出量)の中心値に対し、±5%以下(0.95X0〜1.05X0)のバラツキ範囲に収める必要があることが実験的に確認されている。
しかし、実際のインクジェットヘッドにおいては、図6に示すように、多くのノズルが±5%を超えるインク滴の容量のバラツキを示す。そのため、このままでは、例えばノズルの走査方向に筋等が現れ、画質が大きく低下することになる。また、その結果、例えば、1パス又は少ないパス数での印刷動作等に使用することが難しくなる。また、例えば、バラツキの小さなヘッドのみを選択し使用すると、このようなバラツキを有するインクジェットヘッドの場合には、インクジェットヘッドの不良率が90%以上と極めて高くなり、大幅なコスト上昇を招くことになる。
そのため、そのままでは不良品になるインクジェットヘッドを救済して、不良率を小さく(例えば5%程度以下)下げるためには、例えば図6に示した場合において、範囲Bとして示した範囲のノズルを有するインクジェットヘッドまでは良品になるように、吐出特性の補正を行うことが望まれる。また、この場合、例えば、インク滴の容量(又は重量)について少なくとも20%程度のバラツキが生じているインクジェットヘッドに対し、補正により救済を行うことが必要になる。
また、この場合、吐出特性が標準から大きくずれているノズルに対してまで補正を行うとすると、例えば補正のための構成が複雑になり、適切に補正を行えなくなるおそれがある。そのため、吐出特性が予め設定された範囲内であるノズルに対してのみ、そのノズルの吐出特性を調整することが好ましい。この場合、吐出特性がこの範囲の外にあるノズルに対しては、不良のノズルであると判定してよい。また、そのような不良のノズルを有するインクジェットヘッドについても、同様に、不良のインクジェットヘッドであると判定してよい。また、この場合、より具体的に、例えば、ノズルの吐出特性について、予め設定された中心値からのズレを算出し、所定の一定値の範囲内のズレなら補正を行い、一定値を超えた場合には吐出とヘッドの不良と判別することが考えられる。
このように構成すれば、例えば、補正が可能な範囲内で吐出特性がずれているノズルに対し、より適切に補正を行うことができる。また、これにより、不良品になるインクジェットヘッドの個数を適切に低減することができる。また、この場合、例えば吐出特性が大きくずれているノズルに対しては、不良のノズルと判定することにより、過剰な補正を行う必要を無くしている。また、これにより、一定の範囲内の吐出特性のノズルに対してのみ補正が可能な構成を用いることが可能になり、より簡易な構成で適切な補正を行うことができる。
続いて、本例において吐出特性を補正する動作について、更に詳しく説明をする。本例においては、線幅として検出したノズルの吐出特性のバラツキの結果に基づき、例えば、所定のバラツキ範囲内にあるノズルに対して、吐出特性の調整を行う。また、この場合、例えば、各ピエゾ素子へ与える信号のパルス幅を異ならせることでピエゾ素子が受ける実効電圧(実効駆動電圧)を変化させるパルス幅駆動実効電圧制御方式により、ピエゾ素子104が受け取る実効電圧について、ノズル毎のバラツキを軽減する方向に切り替える。
図7は、本例において用いる駆動信号の一例を示す図であり、Pull−Push−Pull方式でノズルからインク滴を吐出させる場合の駆動信号の一例を示す。本例においては、ピエゾ方式のインクジェットヘッドを用いた構成において、図2等を用いてモデル化して示した場合と基本的には同様に、ピエゾ素子への電圧印加によりインクをインク室へ引き込むpull動作用の波形(波形A)と、インク室からインクを押し出すPush動作用の波形(波形B)と、インクをインク室に引き戻すPull動作用の波形(波形C)との3つの波形の組み合わせた駆動信号を用いることにより、各ノズルからのインク滴の吐出量を制御している。
この場合、駆動信号における波形Aの部分は、ノズルの前段のインク室内に液体(インク)を引き込むようにピエゾ素子を変位させる電圧の信号である第1プル信号の一例である。また、波形Bの部分は、第1プル信号に応じて引き込まれた液体をノズルから押し出すようにピエゾ素子を変位させる電圧の信号であるプッシュ信号の一例である。波形Cの部分は、プッシュ信号に応じてノズルから押し出された液体の一部をノズル内に押し戻すようにピエゾ素子を変位させる信号である第2プル信号の一例である。また、この場合、液体吐出装置10(図1参照)において、駆動信号出力部18(図1参照)は、駆動信号の少なくとも一部として、第1プル信号、プッシュ信号、及び第2プル信号を出力する。また、タイミング設定部22(図1参照)は、それぞれのピエゾ素子について、第1プル信号、プッシュ信号、及び第2プル信号を受け取るタイミングを設定する。そして、それぞれのピエゾ素子は、第1プル信号、プッシュ信号、及び第2プル信号を順次受け取ることにより、対応するノズルからインク滴を吐出させる。
また、図からわかるように、本例において、駆動信号出力部18は、駆動信号の少なくとも一部として、時間の経過と共に電圧が変化する信号である電圧変化信号を出力する。より具体的に、図示した場合においては、波形Aに対応する第1プル信号が、電圧変化信号になっている。
また、図7に示した駆動信号は、液体吐出装置10において予め設定された所定の容量のインク滴を吐出させるための駆動信号である。この場合、吐出ノズル設定部20は、例えば、この駆動信号に応じてインク滴を吐出するノズルとして、例えば印刷すべき画像を示す画像データに基づき、同一の容量の液滴を吐出させる複数のノズルを選択してよい。また、駆動信号出力部18は、これらの複数のノズルに対して共通に、電圧変化信号を含む駆動信号を出力する。
尚、同一の容量の液滴を吐出させる複数のノズルとは、設計上の液滴の容量について、同じ容量の液滴を吐出させる複数のノズルのことである。より具体的に、例えば、一のノズルにより1種類の容量の液滴のみを吐出する構成の場合、同一の容量の液滴とは、この1種類の容量の液滴のことである。また、例えば、液滴の容量として互いに容量の異なる複数段階の容量を設定可能な構成(例えばバリアブルドットの構成)のように、複数種類の容量から選択した容量の液滴を一のノズルにより吐出する構成の場合、同一の容量の液滴とは、例えば、複数段階の容量のうちのいずれかの容量の液滴であってよい。
また、本例において、タイミング設定部22は、ピエゾ素子が電圧変化信号(波形A、第1プル信号)を受け取る期間について、それぞれのピエゾ素子毎に個別に設定する。そして、それぞれのノズルは、対応するピエゾ素子において電圧変化信号を受け取る期間が個別に設定された駆動信号に応じて、インクジェット方式で液滴を吐出する。
より具体的に、この場合、タイミング設定部22は、例えば、それぞれのノズルに対応するピエゾ素子に対し、ピエゾ素子が電圧変化信号を受け取るタイミングを設定する。また、この場合、タイミング設定部22は、補正データ記憶部24に記憶されている補正データに基づき、吐出特性の補正が必要なノズルに対応するピエゾ素子に電圧変化信号を受け取らせるタイミングを設定する。また、これにより、各ピエゾ素子が電圧変化信号を受け取るタイミング(期間)について、線幅の測定等により予め取得されたノズル特性データに基づいて、ピエゾ素子毎に個別に設定する。このように構成すれば、例えば、予め用意した補正データに基づき、それぞれのノズルによるインク滴の吐出特性の調整を適切に行うことができる。
また、更に具体的に、図7に示した駆動信号の場合、正常なノズルに対し、波形A、波形B、及び波形Cのそれぞれの信号として、それぞれTA0、TB、及びTCのパルス幅の3つの波形の信号を用いる。また、電圧変化信号である波形Aの信号として、図中に波形a(パルス幅TA)として示した鋸歯状波を用いる。鋸歯状波とは、例えば、電圧が鋸歯状に変化する信号のことである。
また、この場合、この電圧変化信号について、印加パルス幅により電圧が変化する信号と考えることができる。そのため、電圧変化信号に応じてピエゾ素子が受ける実効的な電圧は、電圧変化信号である波形Aの信号をピエゾ素子が受け取るタイミングに応じて変化する。
例えば、ピエゾ素子に波形Aの信号を供給する期間を図中にTA0の期間にした場合、ピエゾ素子が受け取る最大の電圧(絶対値)は、VpushA0になる。また、ピエゾ素子に波形Aの信号を供給する期間を短くして、TA1に変化させた場合、ピエゾ素子が受け取る最大の電圧は、VpushA0からVpushA1へ低下する。また、これにより、第1プル信号に応じてピエゾ素子が変位する量も変化する。
このように構成した場合、例えば、時間変化する鋸歯状波(a0)を全てのノズルに対して共通に用い、各ピエゾ素子に供給するパルス幅をノズル毎に個別にタイミング設定部22で設定することにより、第1プル信号の実効的な電圧を変化させることができる。また、これにより、駆動信号の電圧について、直接変化させるにではなく、より簡易な構成で実効的に変化させることができる。
そのため、本例によれば、例えば、各ノズルに対応するピエゾ素子へ供給する駆動信号の実効的な電圧を、個別に適切に調整することができる。また、上記においても説明をしたように、インクジェットヘッドのノズルから吐出する容量のバラツキは、多くの場合、20%程度以下である。そして、この場合、上記の方法により、インク滴の容量のバラツキを適切に補正することができる。そのため、本例によれば、各ノズルの吐出容量のバラツキについて、回路規模が複雑になりすぎない簡単な方法を用いて、適切に補正をすることができる。
また、より具体的に、本例においては、例えば、駆動信号の電圧の調整のための電圧レギュレータ回路をノズル毎に設ける場合と比べ、必要な回路構成の規模を大幅に低減することができる。また、これにより、例えば、実用的な範囲の回路規模により、駆動信号の実効電圧をノズル毎に個別に設定することができる。そのため、本例によれば、例えば、ノズルの吐出特性のバラツキの影響について、実用上問題ない範囲により適切に抑えることができる。
また、上記においては、駆動信号について、第1プル信号に対応する波形Aの部分を鋸歯状波にする場合について、説明をした。しかし、より一般化して考えた場合、波形Aの部分に限らず、他の部分(例えば波形B又は波形Cの部分)について、鋸歯状波等の時間と共に電圧値が変わる信号にしてもよい。すなわち、電圧変化信号は、第1プル信号、プッシュ信号、及び第2プル信号のうちの少なくともいずれかの信号であってよい。
この場合も、鋸歯状波等を用いる部分を電圧変化信号と考え、それぞれのピエゾ素子が電圧変化信号を受け取る期間(パルス幅等)をピエゾ素子毎に個別に設定することにより、電圧変化信号に基づいてそれぞれのピエゾ素子が受け取る実効的な電圧を個々のノズル毎に個別に設定することができる。また、これにより、各ピエゾ素子の変位量を個別に変化させて、対応するノズルからのインク滴の吐出量を個別に制御することができる。
また、この場合も、同じ駆動信号を受け取った場合に吐出するインク滴の容量が互いに異なる複数のノズルに対して、ピエゾ素子が電圧変化信号を受け取る期間を異ならせることにより、インク滴の容量がより近くなるように調整を行う。このように構成すれば、例えば、それぞれのノズルによる液滴の吐出特性の調整を適切に行うことができる。
また、電圧変化信号について、より一般化して考えた場合、予め設定された周期で繰り返される信号であり、かつ、周期内で時間の経過に応じて電圧が徐々に一方向へ変化する信号であるともいえる。この場合、周期内で時間の経過に応じて電圧が徐々に一方向へ変化する信号とは、例えば、周期内で電圧が徐々に上昇する信号、又は、周期内で電圧が徐々に下降する信号である。また、この場合、周期の境界部分では、例えば、電圧をステップ状に変化させてよい。このように構成すれば、例えば、電圧変化信号の電圧をより適切に変化させることができる。また、この場合、例えば、周期内のどの期間の電圧をそれぞれのピエゾ素子へ供給するかをピエゾ素子毎に設定することにより、電圧変化信号に基づいてそれぞれのピエゾ素子が受け取る実効電圧を適切に調整することができる。また、これにより、それぞれのノズルによる液滴の吐出特性の調整をより適切に行うことができる。
また、各ピエゾ素子へ電圧変化信号を供給するタイミングに関し、タイミング設定部22は、例えば、ピエゾ素子が電圧変化信号を受け取る期間として、予め設定された複数種類の期間を設定可能であってよい。この場合、タイミング設定部22は、例えば、複数種類の期間からいずれかの期間を選択することにより、それぞれのピエゾ素子が電圧変化信号を受け取る期間を設定する。
続いて、本例において行う吐出特性の補正に関連して、インク滴の着弾位置との関係を説明する。上記において説明をしたように、本例によれば、各ノズルから吐出される滴の容量について、ノズル毎に個別に適切に調整を行うことができる。しかし、ノズルの吐出特性のバラツキについては、インク滴の容量以外に、着弾位置のバラツキについても考慮することが望まれる。この点に関し、インク滴の着弾位置のバラツキは、インク滴の容量のバラツキと無関係ではなく、通常、両者の間には相関関係がある。
図8は、インク滴の容量と着弾位置との関係について説明をする図である。図8(a)は、インク滴の容量の応じて決まる直線の線幅と着弾位置のズレ量(着弾ズレ)との関係の一例を示す表であり、吐出特性が正常なノズルからインク滴を吐出する場合について、駆動信号の電圧と、線幅(線径)及び着弾ズレとの関係を示す。
表中に示すように、正常なノズルに対応するピエゾ素子に供給する駆動信号の電圧が適正な場合、形成されるインクのドットの径は、解像度ピッチに応じた所定の範囲の大きさになる。また、これにより、正常なノズルで直線を描いた場合、所定の正常範囲の線幅の直線が描かれる。また、着弾位置は、解像度に応じて設定された所定の位置(設定中心位置)になる。
一方、駆動信号の電圧を変化させた場合、インクのドットの径及び着弾位置は、駆動信号の電圧に応じて変化する。例えば、駆動信号の電圧を低下させて、過小な電圧を印加した場合、インク滴の容量(液滴容量)が小さくなり、描かれる線幅は狭くなる。また、液滴容量の低下により空気抵抗の影響を受けやすくなるため、着弾位置は、中心設定位置よりプラス方向に大きくなる。また、反対に、駆動信号の電圧を上昇させて、過大な電圧を印加した場合、インク滴の容量が大きくなり、描かれる線幅は太くなる。また、液滴容量の増大により空気抵抗の影響を受けにくくなるため、着弾位置は、中心設定位置よりマイナス方向に小さくなる。
図8(b)は、吐出特性が正常のノズルからインク滴を吐出する場合について、線幅(線径)と着弾ズレとの関係を示す図であり、駆動信号において波形Aの実効電圧を変えるパルス幅Tを様々に変化させた場合について、描かれる直線の太さである線径Xと、着弾位置のズレ量Xpとを示す。また、この図において、符号Aを付した直線は、線径Xと、パルス幅Tとの関係を示す。符号Bを付した直線は、着弾位置のズレ量Xpと、パルス幅Tとの関係を示す。
この図から明らかなように、線径Xと、着弾位置のズレ量Xpとは、独立に変化するものではなく、駆動信号の実効電圧の変化に対し、相関性を持って変化する。そのため、駆動信号の実効電圧を変化させることにより、線径Xと、着弾位置のズレ量Xpとを同時に変化させることができる。より具体的に、図8からわかるように、インク滴の容量(線幅)を中心値X0に戻す補正を行うと、同時に、着弾位置のズレも中心値xp0に戻す方向に動くことになる。そして、この場合、例えば吐出特性が不良のノズルに対し、パルス幅Tを変化させて駆動信号の実効電圧を変化させることで吐出特性を補正すると、線径(インク滴の容量)と、着弾位置について、同時に補正(改善)をし得ることになる。
尚、上記においては、本例において行う吐出特性の補正について、主に、描かれる直線の線幅を一定の範囲内に調整することでインク滴の容量を補正する方法について、説明をした。しかし、上記のように、インク滴の容量の補正を行う場合、同時に、着弾位置のズレ量についても補正を行うことができる。そのため、吐出特性の補正時には、描かれる直線の線幅と着弾位置のズレ量の双方を考慮して補正を行ってもよい。この場合、例えば、線幅のズレ量と着弾位置のズレ量との和や平均値が最小になるように制御すること等が考えられる。
また、本例においては、例えば、パルス幅駆動実効電圧制御方式を採用することで、駆動信号の実効電圧について補正できる範囲について、中心電圧V0に対し、±25%(α=0.25)程度の補正が可能になる。また、これにより、例えば、描かれる直線の線幅について、所定の中心値に対して±25%程度の範囲での補正を適切に行うことができる。そのため、本例によれば、例えば、インクジェットヘッドの製造時において、補正により正常な吐出特性になるインクジェットヘッドの数を適切に増加させ、高い歩留まりでより適切にインクジェットヘッドを製造することができる。
また、より具体的に、図7に示した駆動信号を用いる場合、以下の手順でインク滴の容量等のバラツキを補正することができる。この場合、例えば、全てのノズルに対し、設定中心値に相当する一定のパルス幅TA0を加えた場合に描かれる直線の線幅(ノズル毎のプリント線幅)を測定する。そして、測定されたノズル毎のプリント線幅に基づき、線幅の設定中心値からのズレ量(インク滴の容量のズレ量)を算出する。また、各々のノズルにおける線幅のズレ量に基づき、線幅を設定中心値X0に戻すことのできる印加パルス幅TAnを求める。例えば、図8において、線幅がずれた位置が符号kを付した位置にある場合、パルス幅をαToだけ小さくすると、中心値X0の点k0に戻り、線径すなわち吐出されるインクの容量(サイズ)を設定中心値に戻せると考えられる。
そして、ノズル毎に求めた線幅の中心値からのズレ量に基づき、設定中心値の戻す印加パルス幅TAnを各々のノズルに加える。そして、再度、線幅のバラツキを測定する。そして、この再度の測定において、線幅のバラツキが一定値以下になっていれば、補正を完了する。また、所定の範囲を超えて線幅がずれているノズルが存在する場合、そのノズルに対し、上記と同様の補正を再度行い、再補正後のパルス幅TXxを加えて、線幅を再測定する。そして、線幅のバラツキが一定値以下になっていれば、補正を完了する。
また、このような補正を所定の回数繰り返しても補正が完了しない場合には、インクジェットヘッドのクリーニング等の復旧作業を行うことが好ましい。また、復旧作業後に上記の補正を行っても補正が完了しない場合、不良のインクジェットヘッドであると判定して、補正の動作を終了してよい。
続いて、インク滴の着弾位置のズレ量の変化について、補足説明をする。上記においても説明をしたように、インクジェット方式でインク滴を吐出した場合、インク滴が受ける空気抵抗の影響は、インク滴の容量によって変化する。また、その結果、着弾位置のズレ量も、インク滴の容量によって変化する。
図9及び図10は、インク滴の着弾位置のズレ量の変化について説明をする図である。図9は、インク滴の容量の変化により着弾位置が変化する様子の一例を示す図であり、インクジェットヘッドと媒体との間の距離(プリントギャップ)を大きくしたワイドギャップ時における着弾位置のずれ方をモデル化して示す。図10は、飛翔中のインク滴の速度成分の一例を示す図である。
インク滴の容量が変化すると、例えば図9に示すように、インク適の着弾位置が変化することになる。これは、例えば、インク滴の容量が変化するとインク滴の運動エネルギー及び空気抵抗が変化し、インク適の平均速度Viが変化するためである。より具体的に、例えば、図10に示すように、平均速度ViがVi0からVi1へ変化すると、主走査動作時のインクジェットヘッドにおける主走査方向(Y方向)への移動速度Vhとの合成速度の方向(Vh+Vi)は、(Vh+Vi0)から(Vh+Vi1)に変化する。また、これにより、インク適の飛行方向が変わり、着位置が変化することになる。従って、例えば、インク滴の飛翔速度が減速した場合、飛行曲りが増大し、着弾位置がより大きくずれることになる。
尚、着弾位置の変化量は、インク滴の速度ViがVhより十分大きい場合(Vi≫Vhの場合)には十分に小さくなる。しかし、Vi≫Vhの状態から、インク滴の速度Viが小さくなり、Vi≒Vhの条件に近づくと、着弾位置のズレが一層顕著となる。そのため、ノズルの吐出特性のバラツキの影響は、例えばプリントギャップの大きい条件や、主走査動作時のインクジェットヘッドの移動速度が大きな条件の場合、強調されて、一層顕著に現れることになる。
これに対し、本例においては、例えば駆動信号を与えるタイミングを制御するパルス幅を変化させて、駆動信号の実効電圧を変化させることで、液体吐出装置の使用条件(印刷条件)に応じて、描かれる直線の線幅を適切に調整することができる。また、これにより、インク滴の容量と、着弾位置のバラツキについて、同時に適切に補正をすることができる。そのため、本例によれば、例えば、様々な条件で印刷を行う場合にも、高い精度でより適切に印刷を行うことができる。
続いて、本例においてピエゾ素子を駆動するより具体的な回路構成や、駆動信号の変形例等について、説明をする。先ず、本例においてピエゾ素子を駆動するより具体的な回路構成の例について、説明をする。
図11は、インクジェットヘッドにおけるピエゾ素子104を駆動する駆動回路の等価回路を簡略化して示す図である。ピエゾ方式のインクジェットヘッドにおいて、ピエゾ素子104を駆動する駆動回路については、図11に示す構成のように、ピエゾ素子104をコンデンサに置き換えた等価回路を考えることができる。そして、本例においては、例えば複数のピエゾ素子104の共通電極に対し、例えば図7に示したような、パルス幅TAの鋸歯状波の波形Aを含む駆動信号の電圧が印加される。
そして、この場合、タイミング設定部22(図1参照)におけるタイマーの機能により、各ピエゾ素子104へ波形Aの信号を供給する通電時間について、必要な任意の値に設定する。この場合、例えば図7に示したTA0やTA1に設定することが考えられる。そして、その設定した時間(Ta)の間のみに、各ピエゾ素子104に対し、波形Aの信号の電圧を印加する。このように構成すれば、例えば、通電時間を変化させることにより、鋸歯状波のピーク電圧を連続的に変化させることができる。
また、波形Aの信号の供給終了後、波形Aの電圧がスイッチング回路で遮断されて立下り、立下りに同期して、図7に示した駆動信号における波形Bが立ち上がる。また、波形Bが終了すると、終了に同期して波形Cが立ち上がり、図7に示した波形の一つが完成する。本例によれば、例えば、電圧変化信号を含む駆動信号を各ピエゾ素子104に適切に供給できる。
図12は、ピエゾ素子104へ駆動信号を供給する構成について更に具体的に示す図である。本例において、駆動信号出力部18は、複数のピエゾ素子104に対して共通の電極に対し、駆動信号を供給する。また、吐出ノズル設定部20は、例えば、ラッチ部及びシフトレジスタ部を含み、制御部26から受け取る指示に応じて、インク滴を吐出すべきノズルを選択する。また、タイミング設定部22は、各ピエゾ素子104へ駆動信号を供給するタイミングを制御するタイマー機能を有しており、補正データ記憶部24から受け取る補正データに基づき、制御部26の指示に応じて、各ピエゾ素子104へ駆動信号を供給するタイミングを制御する。
また、吐出ノズル設定部20及びタイミング設定部22等は、例えばピエゾ素子104の動作を制御する公知の構成と同一又は同様の回路構成等を介して、ピエゾ素子104と接続されてよい。例えば、図示した場合において、吐出ノズル設定部20及びタイミング設定部22は、各種の論理回路やスイッチング用のトランジスタ等を介して、ピエゾ素子104と接続されている。本例によれば、各ピエゾ素子104に対して適切に駆動信号を供給できる。
尚、図12に示した回路構成は、公知の回路構成に対して簡単な変更を行うことにより、本例において用いる回路構成の一例を参考として示したものである。より具体的な回路構成においては、使用する駆動信号の特性や、ピエゾ素子104の特性等に合わせて、更なる変更を適宜行うことが好ましい。このように構成すれば、例えば、各ピエゾ素子104に対してより適切に駆動信号を供給できる。
続いて、本例において用いる駆動信号の変形例について、説明をする。上記においては、主に、駆動信号が含む電圧変化信号として、鋸歯状波を用いる場合について、説明をした。しかし、電圧変化信号としては、鋸歯状波に限らず、他の波形の信号を用いてもよい。この場合、例えば、パルス幅を制御することで電圧のピーク値が変化する信号を用いることが好ましい。
図13は、駆動信号の変形例を示す図であり、電圧変化信号に相当する波形Aの部分について、鋸歯状波以外の様々な信号を用いる場合の例を示す。図示したように、電圧変化信号としては、例えば図中に符号a1〜a4を付して示したような、様々な信号を用いることができる。また、波形B又は波形Cの部分について、同様に変化する電圧変化信号を用いてもよい。
また、駆動信号については、例えば、反転コンバータ回路等を用いて、所定のタイミングで極性を反転させる信号を用いることも考えられる。この場合、電圧変化信号を含む駆動信号について、例えば入力電流で制御する反転コンバータ回路により極性を反転させることで、ピエゾ素子に加わる実効電圧を変化させることが考えられる。また、この場合も、反転させるタイミングをピエゾ素子毎に変化させることにより、電圧変化信号のパルス幅を個別に制御し、実効電圧を適切に調整することができる。
また、この場合、より具体的に、タイミング設定部22(図1参照)は、例えば、周期の途中に電圧変化信号の極性を反転させ、かつ、極性を反転させるタイミングを駆動素子毎に個別に設定する。また、これにより、例えば、極性の反転前及び反転後の電圧変化信号について、それぞれのピエゾ素子が信号を受け取る期間を個別に設定する。このように構成すれば、例えば、電圧変化信号の電圧をより適切に変化させることができる。
図14は、駆動信号の更なる変形例を示す図であり、所定のタイミングで極性を反転させる場合の駆動信号の一例を示す。この場合、入力する鋸歯状波に対し、一定時間経過後に反転コンバータ回路を使って極性を反転させることにより、図中に示す波形の駆動信号を得ることができる。また、この場合、補正を行わない状態での当初の(基準の)反転のタイミングをTA0(線a0)として、TA0とは異なるタイミングであるTA1(線a1)又はTA2(線a2)等のタイミングで極性を反転することにより、当初のプッシュ電圧であるVpush−t0について、Vpush−t1のように小さく変化させることも、Vpush−t2のように大きく変化させることも可能である。そのため、この場合も、ピエゾ素子に供給される駆動信号の実効電圧を適切に変化させることができる。
また、この場合も、電圧変化信号として、鋸歯状波以外の波形の信号を用いてもよい。図15は、駆動信号の更なる変形例を示す図であり、鋸歯状波以外の波形の信号を用い、所定のタイミングで極性を反転させる場合の駆動信号の一例を示す。この場合も、図14を用いて説明をした場合と同様に、ピエゾ素子に供給される駆動信号の実効電圧を適切に変化させることができる。
また、この場合、例えば鋸歯状波の入力電圧を反転させる場合と比べて入力電圧の変化がなだらかであるため、鋸歯状波を用いる場合よりも、電圧をより細かく変化させることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、一定の時間の範囲において、より小さな幅の電圧の変化を適切に制御することができる。
また、上記においては、電圧変化信号として入力する信号について、主に、電圧が直線状に変化する場合を図示及び説明をした。しかし、入力する信号の電圧については、例えば曲線状に変化させてもよい。また、入力電圧を反転させる回路については、特に限定されず、所定のタイミングに電圧を切り替えられる各種の構成を用いることができる。また、電圧の正負の関係は、相対的な関係であってよく、ピエゾ素子の電極にかかる実効電圧が変わればよい。
以上のように、本例によれば、例えば、各ノズルにより描かれる直線の副走査方向における線幅を測定し、補正することで、インク滴の容量のバラツキや着弾位置のバラツキを適切に補正し、インク滴の容量を適切に均一化して、適切な位置に着弾させることができる。また、これにより、例えば、筋ムラ等の発生等を適切に抑えることができる。そのため、本例によれば、例えば、印刷の品質を適切に高画質化して、より適切に印刷を行うことができる。
また、この場合、インク滴の容量のバラツキ等を抑えることにより、例えば、マルチパス方式で印刷を行わなくても、高い品質での印刷を適切に行うことができる。また、マルチパス方式で印刷を行う場合にも、必要なパス数を適切に低減することができる。そのため、本例によれば、例えば、印刷の速度を高速化することも可能である。
また、インク滴の容量等の補正について、駆動信号の実効電圧をノズル毎に個別に設定する方法を用いることにより、回路規模の増大を抑えることができる。また、これにより、コストの増大を抑えつつ、より適切に補正を行うことができる。
尚、上記において説明をしたインク滴の容量等の補正については、例えば、液体吐出装置10(図1参照)の工場出荷時や、インクジェットヘッドの製造時等に行うことが考えられる。また、ユーザが液体吐出装置10を使用する場所等で行うことも考えられる。また、液体吐出装置10の構成としては、例えば、複数の印刷条件(プリントモード)が設定可能であり、プリントモードによって印刷速度やインク滴の容量変化させる構成も考えられる。このような場合、例えば、プリントモードによって補正範囲や補正値を変化させてもよい。
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。