JP2017038566A - エクソソームの精製用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、エクソソームの表面に発現している抗原分子の種類や発現量の制限を受けずにエクソソーム全般を捕捉することが可能であり、かつ、操作が容易なエクソソームの精製方法を提供することである。【解決手段】本発明は、エクソソームへの結合活性を有する特定のペプチドを含有するエクソソームの精製用組成物を提供することにより、前記課題を解決する。【選択図】図1

Description

本発明は、エクソソームの精製用組成物に関し、具体的には、エクソソームへの結合活性を有するペプチドを利用したエクソソームの精製技術等に関するものである。
エクソソームは、細胞から分泌される直径20〜120nmの膜で覆われた粒子である。エクソソームは、血液、唾液、尿、脳脊髄液等の広範な生体液中に存在しており、その内部には、タンパク質、mRNA、microRNA(以下、「miRNA」と言う。)等の様々な物質が含まれていることが知られている。最近では、エクソソームは、その内部に包含する物質を介した細胞間の情報伝達機能を有することが示唆されており、各種疾患や生命現象のバイオマーカーとして注目されている。
エクソソームに内包される物質の中でも、特に、miRNAは、疾患のバイオマーカーとして注目されている。miRNAは、エクソソームに内包されることにより、血液中でも長期間安定に存在している。現在までに700種余りのmiRNAが確認されており、これらのうちの比較的少数のmiRNAの発現パターンを解析することによって、例えば、腫瘍が発生している臓器を高精度に特定することができる。このように、生体内において極めて重要な情報を有するmiRNAを内包したエクソソームを回収する技術は、医療等の分野において極めて重要である。
エクソソームを回収・精製する技術としては、これまでにいくつかの方法が報告されており、例えば、(1)超遠心法、(2)遠心によるペレットダウン、(3)粒子のサイズによる分画、(4)免疫沈降法等が知られている(非特許文献1)。
超遠心法は、試料を超遠心する(具体的には、100000×gで70分間の遠心操作を2〜3回行う)ことによって、エクソソームを沈殿させて回収したり(沈降速度分画法)、ショ糖などの密度勾配溶液を用いることで、大きさや密度に基づいてより厳密に分画したりする技術(密度勾配分画法)であり、特に前者は、最も一般的に利用されている標準的な方法である。
遠心によるペレットダウンは、試料に試薬(ポリマー)を添加し、遠心機を用いてエクソソームを沈殿させることにより濃縮する技術であり、遠心機のみでエクソソームを濃縮することができ、操作が容易であるという利点を有する。
粒子のサイズによる分画は、試料を複数(通常、2〜3つ)のフィルターに通して、エクソソームを捕捉する技術であり、操作が容易であるという利点を有する。例えば、2つのフィルターが使用される場合、1つ目の約200nmのポアサイズのトップフィルターを用いて大きな粒子を取り除き、2つ目の約20nmのポアサイズのボトムフィルターを用いてエクソソームを捕捉することができる。
免疫沈降法は、特定のタンパク質が表面に存在するエクソソームを、当該タンパク質に対する抗体が固定化された磁性ビーズを用いて回収する技術である。免疫沈降法では、特定のエクソソーム抗原(例えば、CD9、CD63、CD81等)が表面に存在するエクソソームを捕捉することができ、また、使用する抗体を変えることで、種々のエクソソーム膜表面抗原を標的とした免疫沈降が行えるという利点を有する。また、免疫沈降法の操作は、他の技術に比して容易に行うことができる。
落谷孝広編(2014)「エクソソーム解析マスターレッスン(miRNA研究からがん診断まで応用∞!研究戦略とプロトコールが本と動画でよくわかる、実験医学別冊 最強のステップUPシリーズ)」羊土社
しかしながら、これまでに報告されたエクソソームの回収技術は、各々利点を有するものの、なお解決が望まれる問題点を有している。
すなわち、超遠心法は、当該方法で使用される超遠心機が高価であり、また遠心操作に時間がかかる。また、超遠心法は、多くの試料を処理するには不向きであり、さらには、血清試料を用いた際にアルブミン、IgG、プロテオソーム等のタンパク質が精製物中に混入する等の欠点を有している。
遠心によるペレットダウンは、あくまでも濃縮方法であるため、用いる試料によっては、著しく多くの夾雑タンパク質が混入することがある。また、培養上清、血清、尿等の試料ごとに試薬の組成を最適化することが必要であり、操作が煩雑である。
粒子のサイズによる分画は、エクソソームを溶解する必要があるため、解析対象は核酸のみとなるという問題点を有している。
免疫沈降法は、ある特定の抗原分子を標的とする方法であるため、その抗原分子が発現しているエクソソームは捕捉できるが、発現していないエクソソームは補足できないという問題を有している。すなわち、当該方法は、試料中の一部のエクソソームしか捕捉できないという問題点を有している。
したがって、上記の問題点を克服できるような新たなエクソソームの回収技術の開発が求められている。
本発明は、上記に鑑み、エクソソームの表面に発現している抗原分子の種類や発現量の制限を受けずにエクソソーム全般を捕捉することが可能であり、かつ、操作が容易なエクソソームの精製方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、前記の課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、(1)Mastoparan−X、Hemolysin、LL37等の特定のペプチドがエクソソームへの結合活性を有すること、および(2)当該ペプチドを用いることにより、エクソソーム膜を破壊することなくエクソソームを効率的に回収できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれかのペプチドを含有していることを特徴とする、エクソソームの精製用組成物:
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド、
(c)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド。
(2)前記ペプチドが結合する担体をさらに含むことを特徴とする、(1)に記載のエクソソームの精製用組成物。
(3)前記担体が磁性支持体であることを特徴とする、(2)に記載のエクソソームの精製用組成物。
(4)ペプチドと生物学的試料とを接触させる工程を含むエクソソームの精製方法であって、
前記ペプチドが、以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれかのペプチドであることを特徴とする、エクソソームの精製方法:
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド、
(c)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド。
(5)前記ペプチドが担体に結合したものであることを特徴とする、(4)に記載のエクソソームの精製方法。
(6)前記担体が磁性支持体であることを特徴とする、(5)に記載のエクソソームの精製方法。
(7)ペプチドを含むエクソソームの精製用キットであって、
前記ペプチドが、以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれかのペプチドであることを特徴とする、エクソソームの精製用キット:
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド、
(c)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド。
(8)被験者が疾患を有するか否かを判定するためのデータ取得方法であって、
(a)(4)〜(6)のいずれかに記載の方法を用いて生物学的試料からエクソソームを精製する精製工程、および
(b)前記(a)で精製されたエクソソームに内包されるmiRNAのレベルを検出する検出工程
を含むことを特徴とする、データ取得方法。
(9)以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれかのペプチドを含有していることを特徴とする、エクソソームを標識するための組成物:
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド、
(c)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド。
本発明におけるペプチドは、エクソソームの特定の抗原分子に結合するものではなく、エクソソームの脂質二重膜に結合する性質を有するため、抗原分子の種類や発現量に左右されることなく、広くエクソソームを捕捉することができる。
また、本発明のペプチドを磁性支持体に結合させる態様では、ペプチドに結合したエクソソームを磁石により回収することができるため、操作が極めて容易である。
試験例1の実験操作手順を示す図である。 試験例2の実験操作手順を示す図である。
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
本明細書中で使用される場合、用語「ペプチド」は、「タンパク質」または「ポリペプチド」と交換可能に使用される。本明細書において使用される場合、アミノ酸の表記は、適宜IUPACおよびIUBの定める1文字表記または3文字表記を使用する。
〔1.エクソソームの精製用組成物〕
本発明の第1の実施形態において、特定のペプチドを含有していることを特徴とする、エクソソームの精製用組成物を提供する。本発明は、エクソソームの脂質二重膜に結合できるペプチドを初めて見出したことに基づくものであり、それ故、当該ペプチドを含有する本発明の組成物は、エクソソームを極めて効率的に精製することができる。
以下、本発明の組成物について詳述する。
〔1−1.ペプチド〕
本発明において「ペプチド」は、アミノ酸がペプチド結合により結合した縮合重合体を意味し、エクソソームへの結合活性を有している限り別段限定されない。本発明におけるペプチドとしては、例えば、エクソソームの効率的な回収の観点から、Mastoparan−X、Hemolysin、またはLL37が好ましく、Mastoparan−Xがより好ましい。
上記に列挙したペプチドについては、従来、特定の生物種の細胞の細胞膜に、特異的または非特異的に結合してその細胞膜を破壊し、結果としてその細胞自体を破壊することが報告されていた(Y. Shai, Biochimica et Biophysica Acta 1462, 55-70, 1999)。したがって、これらのペプチドは、エクソソームという特定の膜構造体への結合活性を有することが知られていなかったことはもとより、そもそも結合先の細胞(より具体的には、細胞膜)を破壊する活性を有していたことから、エクソソームの回収に利用されることは全く想定されないものであった。よって、本発明のペプチドが、エクソソームへの結合活性を有すると共に、エクソソームを破壊することなく効率的に回収できるとの知見は極めて驚くべきことである。
なお、本発明のペプチドが、エクソソームを破壊することなく回収できることは、エクソソームに内包されたmiRNAを検出する下記の実施例の結果より明らかである。
本実施形態において使用されるペプチドとしては、以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれかのペプチドが用いられることが好ましい:
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド、
(c)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド。
前記(a)のペプチドについて具体的に説明する。配列番号1は、Mastoparan−Xと呼ばれるキイロスズメバチ(Vespa xanthoptera)由来のペプチドであり、全長14アミノ酸残基から構成されるペプチドである。配列番号2は、Hemolysinと呼ばれるstaphylococcus由来のペプチド(配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるペプチド)の一部であり、全長16アミノ酸残基から構成されるペプチドである(「Hemolysin(n−16)」ともいう。)。本ペプチドは、Hemolysinの機能ドメインにより構成されている。配列番号3は、LL37と呼ばれるヒト(Homo sapiens)由来のペプチドであり、全長37アミノ酸残基から構成されるペプチドである。LL37は、抗菌ペプチドであるカテリシジン(Cathelicidin)の一種であり、具体的には、hCAP-18のC末端領域がタンパク質切断により遊離したペプチドである。
前記(b)のペプチドは、配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等であって、エクソソームへの結合活性を有するタンパク質をコードする限り、その具体的な配列については限定されない。ここで欠失、置換または付加されてもよいアミノ酸の数は、前記機能を失わせない限り、限定されてないが、部位特異的突然変異誘発法等の公知の導入法によって欠失、置換または付加できる程度の数をいい、好ましくは5アミノ酸以内であり、より好ましくは3アミノ酸以内(例えば、3、2または1アミノ酸)である。また、明細書中において「変異」とは、部位特異的突然変異誘発法等によって人為的に導入された変異を主に意味するが、天然に存在する同様の変異であってもよい。
変異するアミノ酸残基は、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されていることが好ましい。例えば、アミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸およびアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ酸(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)が挙げられる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字表記を表す)。あるアミノ酸配列に対する1または複数個のアミノ酸残基の欠失、付加および/または他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することはすでに知られている。さらに、標的アミノ酸残基は、共通した性質をできるだけ多く有するアミノ酸残基に変異させることがより好ましい。
本明細書において「機能的に同等」とは、対象となるペプチドが、目的とするペプチドと同等(同一および/または類似)の生物学的機能や生化学的機能を有することを意図する。生物学的な性質には発現する部位の特異性や、発現量等も含まれ得る。変異を導入したペプチドが所望の機能を有するかどうかは、その変異ペプチドがエクソソームへの結合活性を有するかどうか調べることにより判断できる。
ペプチドが、エクソソームへの結合活性を有するペプチドであるか否かを判定するためには、ペプチドと、エクソソーム(または、エクソソームを含む試料)とを接触させたときに、ペプチドがエクソソームと複合体を形成しているか否かを試験すればよい。すなわち、ペプチドと、エクソソーム(または、エクソソームを含む試料)とを接触させたときに、ペプチドがエクソソームと複合体を形成していれば、当該ペプチドを、エクソソームへの結合活性を有するペプチドであると判定することができる。
具体的な判定方法は特に限定されず、適宜、周知の方法を用いることができる。例えば、所望のペプチドを磁性ビーズ上に固定化させ、当該ビーズとエクソソームとを接触させる。次いで、磁気によって磁性ビーズを回収し、当該回収物中にエクソソームのマーカー(例えば、miRNA、CD9等)が含まれていれば、当該ペプチドを、エクソソームへの結合活性を有するペプチドであると判定することができる。さらに具体的な判定方法は、後述する実施例に記載の方法に従えばよい。
前記(c)のペプチドも、配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の、機能的に同等の変異体、誘導体、バリアント、アレル、ホモログ、オルソログ、部分ペプチド、または他のタンパク質・ペプチドとの融合タンパク質等を意図しており、エクソソームへの結合活性を有するタンパク質をコードする限り、その具体的な配列については限定されない。アミノ酸配列の相同性とは、アミノ酸配列全体(または機能発現に必要な領域)で、少なくとも80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上(例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上)の配列の同一性を有することを意味する。アミノ酸配列の相同性は、BLASTN(核酸レベル)やBLASTX(アミノ酸レベル)のプログラム(Altschul et al. J. Mol. Biol., 215: 403-410, 1990) を利用して決定することができる。該プログラムは、KarlinおよびAltschulによるアルゴリズムBLAST (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:2264-2268, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877, 1993) に基づいている。BLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore =100、wordlength =12とする。また、BLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore =50、wordlength =3とする。また、Gapped BLASTプログラムを用いて、アミノ酸配列を解析する場合は、Altschulら(Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402, 1997)に記載されているように行うことができる。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である。比較対象の塩基配列またはアミノ酸配列を最適な状態にアラインメントするために、付加または欠失(例えば、ギャップ等)を許容してもよい。
本明細書において「相同性」とは、性質が類似のアミノ酸残基数の割合(homology、positive等)を意図しているが、より好ましくは、同一のアミノ酸残基数の割合、すなわち同一性(identity)である。なお、アミノ酸の性質については上述したとおりである。
本発明におけるペプチドは、アミノ酸がペプチド結合しているものであればよいが、これに限定されるものではなく、糖鎖やイソプレノイド基などのペプチド以外の構造を含む複合ペプチドであってもよい。アミノ酸の官能基は修飾されていてもよい。アミノ酸はL型であることが好ましいが、これに限定されない。
本発明におけるペプチドは、当該分野において公知の任意の手法に従って容易に作製され得、例えば、ペプチドの発現ベクターが導入された形質転換体によって発現されても、化学合成されてもよい。すなわち、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドもまた、本発明の範囲内である。化学合成法としては、固相法または液相法を挙げることができる。固相法において、例えば、市販の各種ペプチド合成装置(Model MultiPep RS(Intavis AG)など)を利用することができる。
〔1−2.担体〕
本発明の組成物はまた、前記ペプチドが結合する担体を包含し得る。本発明の組成物は、前記ペプチドと共に担体を含むことで、エクソソームの回収をより効率的に、かつ、簡便に行うことができる。
本発明において「担体」とは、ペプチドの足場となる支持体を意味し、ペプチドを保持できる構造物であれば別段限定されない。本発明における担体は、それに結合するペプチドの機能を弱めない支持体であることが好ましい。かかる担体としては、例えば、ガラス、ナイロンメンブレン、半導体ウェハー、ラテックス粒子、マイクロビーズ、シリカビーズ、磁性支持体等が挙げられる。その中でも、エクソソームの回収の容易性の観点から、磁性支持体が好ましい。磁性支持体は、磁性体を含んでいる担体であれば別段限定されないが、好ましくは、磁性ビーズが用いられる。
〔1−3.ペプチドと担体の結合方法〕
本発明の組成物が、ペプチドおよび担体を含有している場合、ペプチドと担体とは結合した状態で(すなわち、複合体として)、組成物中に含有されていることが好ましい。
本発明において「ペプチド」と「担体」の結合方法は、別段限定されず、適宜、周知の方法を用いることができる。また、ペプチドと担体との結合は直接的であっても間接的であってもよい。例えば、ビオチンと結合したペプチドと、担体と結合したストレプトアビジンとを混合することによって、ペプチドと担体との間接的な結合を形成することが可能である。ストレプトアビジンは4量体を形成しているので、1つの「担体と結合したストレプトアビジン」に対して4つの「ビオチンと結合したペプチド」が結合して複合体を形成する。1つの複合体は、4つのペプチドを介してエクソソームに結合することができるので、複合体とエクソソームとの間の結合力が極めて高くなる。当該複合体を用いれば、極めて高収率にてエクソソームを回収することができる。
ビオチンと結合したペプチドを作製する方法は特に限定されない。例えば、ビオチンとペプチドとを直接結合させても間接的に結合させてもよい。ペプチドの構造およびそれに基づく機能をできるだけ正常に維持するという観点からは、ビオチンとペプチドとを間接的に結合させることが好ましい。ビオチンとペプチドとを間接的に結合させる場合には、例えば、本発明のペプチドに任意のリンカーを連結した後に、ペプチドと連結したリンカーに対してビオチンを結合させればよい。
リンカーは、ポリペプチドからなるリンカー(「ペプチドリンカー」ともいう。)であってもよいし、タンパク質同士を連結することが可能な周知の架橋剤やスペーサーアームであってもよい。
ペプチドリンカーの場合、リンカーの長さやそれを構成するアミノ酸の種類は、当業者により適宜設定され得る。ペプチドリンカーの長さは、別段限定されるものではなく、通常、1〜20個、好ましくは、1〜10個(例えば、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、1個)のアミノ酸からなるリンカーが使用される。また、ペプチドリンカーに用いられるアミノ酸の種類も、別段限定されるものではないが、例えば、グリシン(G)、セリン(S)、スレオニン(T)等が使用され得る。とりわけ、GGS、GGGS(配列番号7)、GGGGS(配列番号8)等のペプチドリンカーや、これらが複数回繰り返されたペプチドリンカー(例えば、GGGSGGGS(配列番号9)等)が好ましく用いられる。
タンパク質同士を連結することが可能な周知の架橋剤としては、例えば、N−スクシンイミジルアミド、N−マレインイミド、イソチオシアネート、ブロモアセトアミド等が挙げられるがこれらに限定されない。
スペーサーアームとしては、周知のものであれば別段限定されないが、例えば、炭素鎖を含むスペーサーアームが用いられ、より好ましくは、炭素数6個の炭素鎖を有するhexanonateが用いられる。
担体と結合したストレプトアビジンを作製する方法は特に限定されない。例えば、担体とストレプトアビジンとを直接結合させてもよく、担体とストレプトアビジンとを間接的に結合させてもよい。適宜、公知の手法に従って、担体と結合したストレプトアビジンを作製すればよい。
担体と結合するペプチドの種類は、一種類であってもよいし、複数種類の組み合わせであってもよい。複数種類のペプチドが組み合わせて用いられる場合、その組み合わせは別段限定されないが、例えば、下記の組み合わせであり得る。
(1)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるペプチドと配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(2)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるペプチドと配列番号3で示されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(3)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるペプチドと配列番号3で示されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(4)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるペプチドと配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるペプチドと配列番号3で示されるアミノ酸配列からなるペプチド。
担体と結合する物質として、上記のペプチドまたはペプチドの組み合わせに加えて、さらに、エクソソームの細胞表面抗原に対する抗体を組み合わせることもできる。エクソソームの細胞表面抗原としては、例えば、CD9、CD63、CD81等が挙げられる。これらの抗体と組み合わせることで、エクソソームの捕捉の漏れを減らし、精製効率を高めることが可能となる。
〔その他〕
本発明の組成物は、上記のペプチドおよび担体に加えて、さらなる物質を含んでいてもよい。かかる物質は、別段限定されることなく、例えば、組成物中でペプチドを安定させる物質やペプチドの機能を促進する物質等が含まれ得る。
なお、本明細書において、上記ペプチドと担体が結合した複合体のことを、「ペプチドを備える担体」や「ペプチド固定化担体」等と呼ぶことがある。これらの用語は、本明細書においては、同義で用いられる。
〔2.エクソソームの精製方法〕
本発明の第2の実施形態において、特定のペプチドと生物学的試料とを接触させる工程を含むエクソソームの精製方法を提供する。
本実施形態においては、上記ペプチドは担体に結合したものであってもよい。つまり、本実施形態においては、上記のペプチド固定化担体を生物学的試料と接触させて、生物学的試料からエクソソームの精製を行ってもよい。
本実施形態において使用されるペプチドとしては、以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれかのペプチドが用いられることが好ましい:
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド、
(c)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド。
本実施形態におけるペプチドの詳細については、上述のとおりである。
本実施形態において、「生物学的試料」とは、生物の体内から採取された検体を意味し、エクソソームを包含した検体である。生物学的試料としては、例えば、血液、血漿、血清、唾液、尿、涙液、汗、母乳、羊水、脳脊髄液(髄液)、骨髄液、胸水、腹水、関節液、眼房水、硝子体液等が含まれるがこれらに限定されない。生物学的試料の選択は、目的に応じて、当業者により適宜設定され得る。例えば、採取の容易さの観点からは、血液、血漿、血清、唾液、尿等が好ましく用いられる。
本発明における生物学的試料の由来は、エクソソームを保有する生物種由来であれば別段限定されない。生物学的試料の由来となる生物種としては、例えば、マウス(Mus musculus)、ウシ(Bos Taurus)、ヒト(Homo sapiens)等が挙げられる。生物学的試料の由来は、使用されるペプチドとの相性によって、適宜設定される。例えば、本発明において使用されるペプチドが上記の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれかのペプチドである場合、生物学的試料の由来となる生物種は、好ましくは、哺乳類であり、より好ましくは、ヒトである。これは、上記の(a)〜(c)のペプチドが、哺乳類(とりわけ、ヒト)のエクソソームに対して高い親和性を有していることに基づくものである。
本実施形態において、ペプチド(または、ペプチド固定化担体)と生物学的試料との接触は、ペプチド(または、ペプチド固定化担体)が生物学的試料中のエクソソームと結合できるような条件下で行われるものであれば、その方法は別段限定されない。ペプチド(または、ペプチド固定化担体)と生物学的試料との接触は、例えば、ペプチド(または、ペプチド固定化担体)と生物学的試料とを混合することにより行われ、好ましくは、ペプチド(または、ペプチド固定化担体)と生物学的試料中のエクソソームが結合するために十分な時間の間、混合状態が保持される。
本実施形態において、生物学的試料との接触に供されるペプチド(または、ペプチド固定化担体)の濃度は、使用される生物学的試料の種類等に基づき、当業者により適宜設定される。すなわち、ペプチド(または、ペプチド固定化担体)の濃度は、エクソソームとの結合が適当に行える濃度であれば別段限定されない。例えば、生物学的試料が血清であり、血清とペプチド固定化担体とが接触される場合、血清とペプチド固定化担体の割合(血清/ペプチド固定化担体(体積比))は、例えば、1〜20、好ましくは、5〜15(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15等)であり得る。より好ましくは、血清とペプチド固定化担体の割合は、10である。
ペプチド(または、ペプチド固定化担体)と生物学的試料との接触が行われた後、さらに洗浄工程が行われることが好ましい。洗浄工程は、適当な溶液を用いて、適当な回数洗浄することにより行われる。洗浄工程は、前記接触工程で得られたペプチド(または、ペプチド固定化担体)とエクソソームの複合体が解離しない条件下で行われるものであれば、その方法(例えば、使用される溶液の種類や洗浄回数等)は別段限定されない。本洗浄工程において、担体が磁性支持体(好ましくは、磁性ビーズ)である場合、外部から磁力を与えることで容易にエクソソームの結合した磁性支持体(好ましくは、磁性ビーズ)を分離することができる。洗浄工程において、ペプチド(または、ペプチド固定化担体)に対して未結合の物質(不純物を含む)を除去した後、適当な溶液、例えば、リン酸緩衝液(PBS)等に再懸濁して、精製されたエクソソームの濃縮物を得ることができる。
〔3.エクソソームの精製用キット〕
本発明の第3の実施形態において、特定のペプチドを含むエクソソームの精製用キットを提供する。本実施形態のエクソソームの精製用キットは、ペプチドおよび担体を含むものであってもよいし、担体に結合したペプチドを含むものであってもよい。
本発明において「キット」とは、特定の材料を内包する容器(例えば、ボトル、プレート、チューブ、ディッシュ等)を備えた包装が意図されるが、組成物としての一物質中に材料を含有している形態もまた、「キット」に包含される。キットは、各材料を使用するための指示書を備えていることが好ましい。本明細書においてキットの局面において使用される場合、「備えた(備えている)」は、キットを構成する個々の容器のいずれかの中に内包されている状態が意図される。本発明のキットはまた、希釈剤、溶媒、洗浄液またはその他の試薬を内包した容器を備え得る。
本実施形態において使用されるペプチドとしては、以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれかのペプチドが用いられることが好ましい:
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド、
(c)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド。
また、本発明の別の態様では、以下の(d)〜(f)からなる群より選択されるいずれかのペプチドが好ましく使用される:
(d)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列からなり、かつ、そのN末端側にビオチンが結合しているペプチド、
(e)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、そのN末端側にビオチンが結合しており、さらに、エクソソームへの結合活性を有するペプチド、
(f)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、そのN末端側にビオチンが結合しており、さらに、エクソソームへの結合活性を有するペプチド。
(d)〜(f)の態様の場合、ペプチドと共にキットに内包されている担体は、その表面にストレプトアビジンが結合していることが好ましい。それにより、ペプチドと担体は、それぞれに結合しているビオチンとストレプトアビジンとを介して容易に結合することができる。
さらなる態様では、上記(d)〜(f)のペプチドにおいて、配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるペプチドとビオチンとの間にリンカーを有し得る。ペプチドとビオチンとの間にリンカーを配することにより、ペプチドの構造およびそれに基づく機能をできるだけ正常に維持することが可能となる。リンカーに関しては、上述したとおりであるが、例えば、グリシン(G)およびセリン(S)を用いた、GGGS(配列番号7)、GGGSGGGS(配列番号9)等のリンカーが使用される。
本発明のキットにおいて、ペプチドが担体に結合した状態で含まれている場合は、キットの開封後、エクソソームの精製にすぐに使用することができる。一方、ペプチドと担体とが別々の状態で含まれている場合は、キットの開封後、ペプチドと担体の結合処理を行った後で、エクソソームの精製に使用することができる。ペプチドと担体の結合は、当分野における通常の知識に基づいて行うことができるが、ペプチドと担体の結合方法が記載された指示書がキットに含まれていることが好ましい。
〔4.データ取得方法〕
本発明の第4の実施形態において、被験者が疾患を有するか否かを判定するためのデータ取得方法を提供する。
本実施形態においては、上述したエクソソームの精製方法によりエクソソームを精製し、精製されたエクソソームに内包されるmiRNAのレベルを検出することにより、判定のためのデータを取得する。
エクソソームに内包されるmiRNAは、疾患のバイオマーカーとして注目されており、例えば、腫瘍(例えば、頭頸部がん、膀胱がん、前立腺がん、肺がん、大腸がん、食道がん、肝臓がん、脳腫瘍、卵巣がん、白血病等)や肝疾患(例えば、慢性C型肝炎等)等の疾患を高精度で特定することができる。それらの疾患の中でも、とりわけ、腫瘍については、その疾患と関連する多くのmiRNAが知られている。腫瘍を示すバイオマーカーとしてのmiRNAとしては、例えば、miR−200a、miR−125a(以上、頭頸部がん)、miR−126、miR−188(以上、膀胱がん)、miR−141(前立腺がん)、miR−17−3p、miR−21、miR−223、miR−155(以上、肺がん)、miR−17−3p、miR−92(以上、大腸がん)、miR−184a(食道がん)、miR−500(肝臓がん)、miR−21(脳腫瘍)、miR−141、miR−200(卵巣がん)、miR−98(白血病)等が挙げられる。
また、特定のmiRNAは、特定の生物学的試料中のエクソソームに内包される傾向がある。例えば、頭頸部がんを示すmiR−200a、miR−125aは、唾液中のエクソソームに多く内包されており、膀胱がんを示すmiR−126、miR−188は、尿中のエクソソームに多く内包されている。また、前立腺がん、肺がん、大腸がん、食道がん、肝臓がん、脳腫瘍、卵巣がん、白血病等を示すmiR−141、miR−17−3p、miR−21、miR−223、miR−155、miR−17−3p、miR−92、miR−184a、miR−500、miR−21、miR−141、miR−200、miR−98は、血液(血漿)中のエクソソームに多く内包されている。したがって、データ取得の目的に応じて、生物学的試料を適宜選択することが好ましい。
エクソソームからmiRNAの抽出方法としては、当分野で既知である任意の方法が用いられる。容易にmiRNAの抽出が行えるという観点からキットが用いられてもよく、例えば、PureLink miRNA isolation kit(Life Technologies社製)が使用される。
miRNAの検出方法としては別段限定されず、生物学的試料中から特定の配列を有するmiRNAを検出・測定できる方法であれば何でもよい。かかる方法としては、例えば、ノーザンハイブリダイゼーション法、RNaseプロテクションアッセイ法、RT−PCRやリアルタイムPCR等の定量的PCR法、DNAマイクロアレイを用いた方法等が挙げられる。操作の簡便さの観点からは、リアルタイムPCRが用いられることが好ましく、一度に多くのmiRNAについてのアッセイを行う場合には、DNAマイクロアレイを用いた方法を用いることが好ましい。
被験者が疾患を有するか否かの判定は、上記miRNAのレベルを基準として行うことができる。例えば、被験者のmiRNAレベルと正常な対象のmiRNAレベルとを比較したとき、被験者のmiRNAレベルが正常な対象のmiRNAレベルよりも高い場合、被験者は当該miRNAに関連する疾患を有する可能性が高いと判定することができる。あるいは、被験者のmiRNAレベルと正常な対象のmiRNAレベルとを比較したとき、被験者のmiRNAレベルが正常な対象のmiRNAレベルよりも低い場合、被験者は当該miRNAに関連する疾患を有する可能性が高いと判定することができる。あるいは、被験者のmiRNAレベルと正常な対象のmiRNAレベルとを比較したとき、被験者のmiRNAレベルが正常な対象のmiRNAレベルよりも高い場合、被験者は当該miRNAに関連する疾患を有する可能性が低いと判定することができる。あるいは、被験者のmiRNAレベルと正常な対象のmiRNAレベルとを比較したとき、被験者のmiRNAレベルが正常な対象のmiRNAレベルよりも低い場合、被験者は当該miRNAに関連する疾患を有する可能性が低いと判定することができる。
なお、本発明における「被験者が疾患を有する」とは、被験者が現時点で疾患を発症している場合を示すだけでなく、被験者が潜在的に疾患を発症する可能性を有している場合(被験者が現時点では疾患を発症していないが、将来的に疾患を発症する可能性を有する場合)も含む。
〔5.エクソソームを標識するための組成物〕
本発明の第5の実施形態において、特定のペプチドを含有していることを特徴とする、エクソソームを標識するための組成物を提供する。本発明の組成物は、エクソソームを極めて効果的に標識することができる。
本実施形態において使用されるペプチドとしては、以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれかのペプチドが用いられることが好ましい:
(a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド、
(c)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド。
本実施形態におけるペプチドの詳細については、上述のとおりである。
本発明の組成物では、上記ペプチドが標識化合物と結合していることが好ましい。本発明に利用可能な標識化合物としては別段限定されず、適宜、公知の標識化合物を用いることが可能である。標識化合物としては、例えば、蛍光物質(例えば、FITC、Cy3、Cy5、Alexa488等)、放射性同位体、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ(例えばHRP)、アルカリホスファターゼ等)、蛍光タンパク質(例えば、GFP、CFP、YFP等)を用いることが可能である。
ペプチドと標識化合物とを結合させる方法は特に限定されず、適宜、周知の方法を用いることが可能である。また、ペプチドと標識化合物との結合は直接的であっても間接的であってもよい。例えば、ビオチンと結合したペプチドと、標識化合物と結合したストレプトアビジンとを混合することによって、ペプチドと標識化合物との間接的な結合が可能である。
ビオチンと結合したペプチドを作製する方法は特に限定されない。例えば、ビオチンとペプチドとを直接結合させても間接的に結合させてもよい。ビオチンとペプチドとを間接的に結合させる場合には、例えば、本発明のペプチドを任意のタンパク質と結合させた後に、ペプチドと結合させたタンパク質に対してビオチンを結合させるか、あるいは、任意のタンパク質にビオチンを結合させた後に、ビオチンと結合させたタンパク質に対して本発明のペプチドを結合させればよい。
上述したタンパク質としては特に限定されないが、例えば、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等)、蛍光タンパク質(例えば、GFP、CFP、YFP等)、標識タンパク質(例えば、GST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、MBP(マルトース結合タンパク質)等)を用いることが可能である。
標識化合物と結合したストレプトアビジンを作製する方法は特に限定されない。例えば、標識化合物とストレプトアビジンとを直接結合させてもよく、標識化合物とストレプトアビジンとを間接的に結合させてもよい。適宜、公知の手法に従って、標識化合物と結合したストレプトアビジンを作製すればよい。
上述した本発明のペプチドは、エクソソームの脂質二重膜に対して高い結合能を示す。したがって、本発明の組成物は、特定の抗原分子を発現したエクソソームのみならず、広くエクソソーム全般を標識するのに好ましいといえる。本発明の組成物は、例えば、エクソソームを蛍光で標識することで、エクソソームを可視化し、細胞内への取り込みを観察する分野等において有用である。
その他、前記〔1〕〜〔5〕の各項目で記載した内容は、他の項目においても適宜援用できることを付言する。また、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
〔1.本発明の方法によるエクソソームの回収とmiRNAの抽出〕
〔1−1.ペプチドを固定化した磁性ビーズの調製〕
磁性ビーズとしてDynabeads M-280 streptavidin(VERITAS社製)を用いた。この磁性ビーズには、ストレプトアビジンが固定化されており、ビオチン−ストレプトアビジンの相互作用を利用して、ビオチン修飾されたペプチドを磁性ビーズに固定化できる。まず磁性ビーズの洗浄を行なった後、ビオチン修飾されたペプチドを固定化し、未結合のペプチドを洗浄により取り除くことで、ペプチド固定化磁性ビーズを調製した。
具体的には、50μlの磁性ビーズを、1.5mlのマイクロチューブに移し、当該チューブをマグネットスタンドにセットして1分静置し、上清を捨てた。チューブをマグネットスタンドから外し、0.5mlのPBSを加えて撹拌した。チューブをマグネットスタンドにセットして1分間静置し、上清を捨て洗浄した。この洗浄操作を合計で、3回行なった。洗浄した磁性ビーズを、200μlのPBSで再懸濁した。
ビオチン修飾されたペプチドを50mMのトリス緩衝液(pH7.4)で溶解し、ペプチドの濃度が100μMとなるように調整した。ビオチン修飾されたペプチドとして、Biotinylated Mastoparan−X(配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるペプチドのN末端をビオチンで修飾したものを受託合成)、Biotinylated-Hemolysin(n−16)(配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるペプチドのN末端をビオチンで修飾したものを受託合成)、LC-LL37,biotin conjugate(フナコシ社製、AS−63693)を用いた。
マイクロチューブに、180μlのPBS、20μlのビオチン修飾されたペプチド(100μM)、200μlの上記で洗浄した磁性ビーズを加え(合計で400μl)、室温で30分撹拌し、ビオチン修飾したペプチドを磁性ビーズに固定化した。チューブをマグネットスタンドにセットして1分静置し、上清を捨てた。チューブをマグネットスタンドから外し、0.5mlのPBSを加えて撹拌した。チューブをマグネットスタンドにセットして1分静置し、上清を捨て洗浄した。この洗浄操作を合計で、3回行なった。このように洗浄したペプチド固定化磁性ビーズを、最終的に50μlのPBSで再懸濁した。
〔1−2.ペプチド固定化磁性ビーズを用いたエクソソームの回収とmiRNAの抽出〕
血清として、Human Serum Type AB(Lonza社)を用いた。血清を、遠心分離機を用いて、14000gで10分間、4℃で遠心を行い、血球などの成分を沈殿させた。沈殿物を吸わないように、血清上清を回収した。このように前処理した血清上清のうち0.5mlを、1.5mlのマイクロチューブに加え、さらに上記〔1−1.〕で作製したペプチド固定化磁性ビーズ(50μlのMastoparan−X、50μlのLL37または50μlのHemolysin(n−16))を加え、室温で30分間撹拌し、エクソソームをペプチド固定化磁性ビーズに結合させた。チューブをマグネットスタンドにセットして1分間静置し、上清を捨てた。チューブをマグネットスタンドから外し、0.5mlのPBSを加えて撹拌した。チューブをマグネットスタンドにセットして1分間静置し、上清を捨て洗浄した。この洗浄操作を合計で、2回(試験例1)または3回(試験例2)行なった。
回収したエクソソームからのmiRNAの抽出は、PureLink miRNA Isolation kit(ライフテクノロジーズ社製)を用いて行なった。具体的には、上記のエクソソームが結合している磁性ビーズに、キット付属の300μlのBinding Buffer(L3)を添加して、5分間振盪し、エクソソーム内のmiRNAを溶出した。チューブをマグネットスタンドにセットして1分間静置して上清(miRNA画分)を回収し、付属のスピンカラムを用いて同社のプロトコールに従ってmiRNAの抽出を行なった。スピンカラムに結合したmiRNAは、50μlのRNase-free Waterで溶出し回収した。
〔2.超遠心法によるエクソソームの回収とmiRNAの抽出〕
血清としてHuman Serum Type AB(Lonza社)を用いた。血清を、遠心分離機を用いて、14000gで10分間、4℃で遠心を行い、血球などの成分を沈殿させた。沈殿物を吸わないように、上清を回収し、0.2μmのフィルターで濾過を行なった。このように前処理した血清上清のうち2mlを、超遠心分離機 Optima TLX(ベックマン・コールター社製)を用いて110000gで70分間、4℃で遠心を行ない、エクソソームを沈殿させた。上清を取り除き、再び2mlの前処理した血清上清を加え、超遠心分離機 Optima TLX(ベックマン・コールター社製)を用いて110000gで70分間、4℃で遠心を行なった。合計で4mlの血清からエクソソームを沈殿させた後、上清を取り除いて、2mlのPBSを加えて撹拌後、超遠心分離機 Optima TLX(ベックマン・コールター社製)用いて110000gで70分間、4℃で遠心を行ない洗浄した。この洗浄操作をもう一度行ない、合計で2回の洗浄を行なった。最終的に、沈殿したエクソソームを0.2mlのPBSで再懸濁した。
回収したエクソソームからmiRNAの抽出を行なった。miRNAの抽出は、PureLink miRNA Isolation kit(ライフテクノロジーズ社製)を用いて行なった。具体的には、25μlの回収したエクソソーム溶液(血清0.5ml相当)に、キット付属の300μlのBinding Buffer(L3)を混合し、付属のスピンカラムを用いて同社のプロトコールに従ってmiRNAの抽出を行なった。スピンカラムに結合したmiRNAは、50μlのRNase-free Waterで溶出し回収した。
〔3.血清からのmiRNAの直接抽出〕
血清として、Human Serum Type AB(Lonza社)を用いた。血清を、遠心分離機を用いて、14000gで10分間、4℃で遠心を行い、血球などの成分を沈殿させた。沈殿物を吸わないように、上清を回収し、0.2μmのフィルターで濾過を行なった。このように前処理した血清上清から直接、miRNAの抽出を行なった。miRNAの精製は、RNAzol RT(MOLECULAR RESEARCH CENTER社製)とPureLink miRNA Isolation kit(ライフテクノロジーズ社製)とを組み合わせて行なった。前処理した血清上清(0.5ml)を、1.5mlのマイクロチューブに加え、1mlのRNAzol RT(MOLECULAR RESEARCH CENTER社製)と混合し、15秒間撹拌した後、10分間静置した。12000gで15分間、4℃で遠心を行ない、DNA、多糖、タンパク質などを沈殿させた。400μlの上清(RNA画分)と215μlの99.5%エタノールとを混合し、付属のスピンカラムを用いて同社のプロトコールに従ってmiRNAの抽出を行なった。スピンカラムに結合したmiRNAを、50μlのRNase-free Waterで溶出し回収した。
〔4.免疫沈降法を用いたエクソソームの回収とmiRNAの抽出〕
血清として、Human Serum Type AB(Lonza社)を用いた。血清を、遠心分離機を用いて、14000gで10分間、4℃で遠心を行い、血球などの成分を沈殿させた。沈殿物を吸わないように、血清上清を回収した。このように前処理した上清から、エクソソームをExoCap CD63 Capture kit(JSRライフサイエンス社製)を用いて、同社のプロトコールに従って回収した。具体的には、前処理した血清上清のうち0.5mlを、1.5mlのマイクロチューブに加え、キット付属の100μlのCD63 Capture Beadsと、キット付属のWashing/Binding Buffer(400μl)とを加え、室温で30分間撹拌し、エクソソームをCD63 Capture Beadsに結合させた。チューブをマグネットスタンドにセットして1分間静置し、上清を捨てた。チューブをマグネットスタンドから外し、キット付属のWashing/Binding Buffer(0.5ml)を加えて撹拌した。チューブをマグネットスタンドにセットして1分間静置し、上清を捨て洗浄した。この洗浄操作を合計で、3回行なった。
回収したエクソソームからのmiRNAの抽出は、PureLink miRNA Isolation kit(ライフテクノロジーズ社製)を用いて行なった。具体的には、上記のエクソソームが結合したCD63 Capture Beadsに、キット付属の300μlのBinding Buffer(L3)を添加して、5分間振盪し、エクソソーム内のmiRNAを溶出した。チューブをマグネットスタンドにセットして1分間静置して上清(miRNA画分)を回収し、付属のスピンカラムを用いて同社のプロトコールに従ってmiRNAの抽出を行なった。スピンカラムに結合したmiRNAは、50μlのRNase-free Waterで溶出し回収した。
〔5.RT-PCR法によるmiRNAの定量〕
エクソソームに含まれるmiRNAをRT-PCR法を用いて定量した。RT-PCR法は、まず(a)RNAを、逆転写反応(Reverse Transcription:RT)によりDNAに変換し、(b)変換されたDNA(cDNA)をリアルタイムPCRにより定量する方法である。miRNAとして、エクソソームに特異的に含まれることが知られているmiR142-3pを定量した。(a)の逆転写反応には、RT反応試薬としてTaqMan MicroRNA Reverse Transcription kit(ライフテクノロジーズ社製)を、プライマーとしてTaqMan MicroRNA Assays:hsa-miR-142-3p(Assay ID:000464)(ライフテクノロジーズ社製)を用い、同社のプロトコールに従って行なった。(b)のリアルタイムPCRは、PCR反応試薬としてTaqMan Universal Master Mix II, no UNG(ライフテクノロジーズ社製)を、プライマーとしてTaqMan MicroRNA Assays:hsa-miR-142-3p(Assay ID:000464)(ライフテクノロジーズ社製)を用い、同社のプロトコールに従って行なった。
〔6.試験例1〕
エクソソームの回収方法として最も標準的な方法は、超遠心法である。この超遠心法と本発明の方法、および血清からmiRNAを直接抽出する方法について、エクソソームの回収効率について比較を行なった。エクソソームの回収量は、エクソソームに含まれているmiRNAを定量することによって評価した。
超遠心法は、上記〔2.〕のとおりに行い、これを比較例1とした。
一方、本発明の方法は、上記〔1.〕のとおりに行い、Mastoparan−Xを用いた場合を実施例1とした。
また、血清からmiRNAを直接抽出する方法は、上記〔3.〕のとおりに行い、これを比較例2とした。
それぞれの抽出したmiRNA試料を用いてRT-PCRを行ない、miR142-3pを定量した。RT-PCRにより得られたCt値に基づき、血清からmiRNAを直接抽出した場合のmiR142-3pの量を1として、それぞれの相対濃度を算出した(表1)。表1中、Ct値は、PCR産物が一定量に達するサイクル数を示し、ΔCtは、各例のCt値から基準とした例のCt値を引いた値を示し、具体的には、各例のCt値から比較例2のCt値を引いた値を示す。
Figure 2017038566
その結果、比較例1のmiR142-3pの相対濃度は、739.29、実施例1のmiR142-3pの相対濃度は、34.3となった(表1)。本発明の方法は、超遠心法と比べるとmiR142-3pの量は低い収量であったが、血清からmiRNAを直接抽出した場合と比べると約34倍と高い収量であった。すなわち、本発明の方法は、血清からmiRNAを直接抽出する場合と比べると収率が極めて高く、miRNAを効率的に回収できることが分かった。
〔7.試験例2〕
エクソソームを回収する方法として、超遠心法以外にも種々の方法が開発されている。その中でも、本発明の手法と同じように磁性ビーズを用いてエクソソームを回収する免疫沈降法が知られている。この免疫沈降法は、エクソソームの表面に存在する特定の抗原タンパク質に結合する抗体を磁性ビーズに固定化し、この抗体を介して磁性ビーズにエクソソームを結合させる。この免疫沈降法、本発明の方法、および超遠心法について、エクソソームの回収効率について比較を行なった。エクソソームの回収量は、エクソソームに含まれているmiRNAを定量することによって評価した。
免疫沈降法は、上記〔4.〕のとおりに行い、これを比較例3とした。
一方、本発明の方法は、上記〔1.〕のとおりに行い、Mastoparan−Xを用いた場合を実施例2、LL37を用いた場合を実施例3、Hemolysin(n−16)を用いた場合を実施例4とした。
また、超遠心法は、上記〔2.〕のとおりに行い、これを比較例4とした。
それぞれの抽出したmiRNAサンプルを用いてRT-PCRを行ない、miR142-3pを定量した。RT-PCRにより得られたCt値に基づき、免疫沈降法でエクソソームを回収してmiRNAを抽出した場合のmiR142-3pの量を1として、それぞれの相対濃度を算出した(表2)。表2中、Ct値は、PCR産物が一定量に達するサイクル数を示し、ΔCtは、各例のCt値から基準とした例のCt値を引いた値を示し、具体的には、各例のCt値から比較例3のCt値を引いた値を示す。
Figure 2017038566
その結果、比較例4のmiR142-3pの相対濃度は、14.3、本発明の方法である実施例2、3および4のmiR142-3pの相対濃度は、それぞれ0.75、0.49、0.13であった(表2)。miR142-3pの収量の比較から、本発明の方法におけるエクソソームとの親和性の高さは、Mastoparan−X(実施例2)>LL37(実施例3)>Hemolysin(n−16)(実施例4)の順で高く、Mastoparan−Xがエクソソームに対して最も高い親和性を有することが分かった。
また、Mastoparan−Xを利用した磁性ビーズの方法は、免疫沈降法のanti-CD63抗体を利用した磁性ビーズの方法に比べ、miR142-3pの収量は、約75%であった。この結果から、Mastoparan−Xのエクソソームに対する親和性は、抗体のエクソソームに対する親和性と同程度の極めて高い親和性を有することが分かった。
本発明によると、エクソソームにおける抗原分子の発現状態に関わらず、広くエクソソームを捕捉し、回収することができる。したがって、本発明によると、エクソソームの回収が容易となり、またその内部に包含される物質の解析を詳細に行うことができるようになるため、種々の技術分野、とりわけ、製薬や医療分野において有用である。

Claims (9)

  1. 以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれかのペプチドを含有していることを特徴とする、エクソソームの精製用組成物:
    (a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
    (b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド、
    (c)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド。
  2. 前記ペプチドが結合する担体をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のエクソソームの精製用組成物。
  3. 前記担体が磁性支持体であることを特徴とする、請求項2に記載のエクソソームの精製用組成物。
  4. ペプチドと生物学的試料とを接触させる工程を含むエクソソームの精製方法であって、
    前記ペプチドが、以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれかのペプチドであることを特徴とする、エクソソームの精製方法:
    (a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
    (b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド、
    (c)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド。
  5. 前記ペプチドが担体に結合したものであることを特徴とする、請求項4に記載のエクソソームの精製方法。
  6. 前記担体が磁性支持体であることを特徴とする、請求項5に記載のエクソソームの精製方法。
  7. ペプチドを含むエクソソームの精製用キットであって、
    前記ペプチドが、以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれかのペプチドであることを特徴とする、エクソソームの精製用キット:
    (a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
    (b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド、
    (c)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド。
  8. 被験者が疾患を有するか否かを判定するためのデータ取得方法であって、
    (a)請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法を用いて生物学的試料からエクソソームを精製する精製工程、および
    (b)前記(a)で精製されたエクソソームに内包されるmiRNAのレベルを検出する検出工程
    を含むことを特徴とする、データ取得方法。
  9. 以下の(a)〜(c)からなる群より選択されるいずれかのペプチドを含有していることを特徴とする、エクソソームを標識するための組成物:
    (a)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるペプチド、
    (b)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド、
    (c)配列番号1〜3のいずれかで示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、エクソソームへの結合活性を有するペプチド。
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