本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。以下では、図1の左下方、右上方、左上方、右下方、上方、下方を、各々、印刷装置1の前方、後方、左方、右方、上方、下方と定義する。図7の右上方、左下方、右下方、左上方、上方、下方を、各々、リボンカセット100の前方、後方、左方、右方、上方、下方と定義する。
(1.印刷装置1の構造説明)
図1〜図6を参照し、印刷装置1を説明する。印刷装置1は、筒状の印刷媒体であるチューブ9を搬送しながら印刷し、且つ印刷後のチューブ9を切断する装置である。図1に示すように、印刷装置1は、本体ケース11及びカバー12を含む筐体10を備える。本体ケース11は、左右方向に長い直方体状の箱状部材である。カバー12は、本体ケース11の上側に配置された板状部材である。カバー12の後端部は、本体ケース11の後端部上側で回転可能に支持される。ロック機構13は、本体ケース11の前端部上側に設けられる。ロック機構13は、本体ケース11に対して閉じられたカバー12の前端部を係止して、カバー12の開放を規制する。
カバー12が本体ケース11に対して閉じられた場合(図1参照)、カバー12は装着面11A(図2参照)を覆う。装着面11Aは、本体ケース11の上面である。ユーザはカバー12を開く場合、ロック機構13を操作してカバー12の係止を解除し、カバー12をロック機構13から上側に回動させる。カバー12が本体ケース11に対して開かれた場合、装着面11Aは上方に露出する。
カバー12の上面には、キーボード7が取り外し可能に装着される。キーボード7は、複数のキーを有する操作部7Aと、各種情報を含む画面を表示する表示部7Bを備える。ユーザは操作部7Aを操作することで、表示部7Bに表示される画面上で、チューブ9に印刷するキャラクタを編集できる。キャラクタは、文字、図形、及び記号等を含む。キーボード7内の基板(図示略)には、USB(Universal Serial Bus)ケーブル79が接続されている。USBケーブル79は、キーボード7の右側面から右方に引き出される。
筐体10の側面には、操作部17、チューブ挿入口15、及びチューブ排出口16(図2参照)が設けられる。操作部17は、本体ケース11の前面右側に設けられた、電源ボタン及びスタートボタンを含む複数の操作ボタンである。チューブ挿入口15は、本体ケース11の右面の後側上部に設けられた、チューブ9を筐体10の内部に案内するための開口である。チューブ排出口16は、本体ケース11の左面の後側上部に設けられた、チューブ9を筐体10の外部に排出するための開口である。チューブ排出口16は、チューブ挿入口15よりも若干前側にある。
図2に示すように、装着面11Aには、リボン装着部30及びチューブ装着部40等が設けられる。リボン装着部30は、リボンカセット100を着脱可能な部位である。リボン装着部30は、平面視でリボンカセット100よりも若干大きい開口形状で形成された、上方に開口する凹部である。リボン装着部30の後部は、後述のチューブ装着部40と前後方向に連通している。本例のリボン装着部30は、装着面11Aの左部、且つチューブ装着部40の前側に設けられる。ユーザは、リボンカセット100の上下左右前後の各方向が、印刷装置1の上下左右前後の各方向と一致するように、リボンカセット100をリボン装着部30に上方から装着する。
リボン装着部30の内部には、位置決めピン31,32、支持ピン33,34、支持部35が設けられる。位置決めピン31,32及び支持ピン33,34は、何れもリボン装着部30の底面30Aから上方に延びる円柱状の軸体である。位置決めピン31,32及び支持ピン33,34の上端部は、何れも等しい上下方向位置(即ち、高さ位置)にある。位置決めピン31,32は、互いに同径である。支持ピン33,34は、互いに同径であり、且つ位置決めピン31,32よりも小径である。
位置決めピン31,32は、リボン装着部30に装着されたリボンカセット100の位置決め穴121,122(図9参照)と夫々対応する位置に設けられる。支持ピン33,34は、リボン装着部30に装着されたリボンカセット100のピン穴123,124(図9参照)と夫々対応する位置に設けられる。本例では、位置決めピン31及び支持ピン33は、後述の検出用回転軸71の右後側及び右前側に夫々設けられ、且つ互いに略前後方向に並ぶ。位置決めピン32及び支持ピン34は、後述のリボン巻取軸63の左前側及び左後側に夫々設けられ、且つ互いに略前後方向に並ぶ。位置決めピン32及び支持ピン34の前後方向距離は、位置決めピン31及び支持ピン33の前後方向距離よりも若干大きい。
支持部35は、底面30Aから上方に突出する段差部である。支持部35の上端面は、位置決めピン31,32及び支持ピン33,34の各上端部と等しい上下方向位置(即ち、高さ位置)にある。支持部35は、リボン装着部30に装着されたリボンカセット100の前側凹部125(図9参照)と対応する位置に設けられる。本例では、支持部35は、印刷ヘッド61と前後方向に並ぶ位置、且つ位置決めピン32及び支持ピン33とを結ぶ線上に設けられる。支持部35の上端面は、平面視で前側凹部125に対応する形状の平面である。
チューブ装着部40は、チューブ9を着脱可能な部位である。チューブ装着部40は、チューブ挿入口15からチューブ排出口16の右側近傍まで延びる、上方に開口する溝部である。チューブ排出口16はチューブ挿入口15よりも若干前側にあるため、チューブ装着部40は若干左前側に傾いて略左右方向に延びる。チューブ挿入口15からチューブ排出口16に向けてチューブ装着部40が延びる方向を、チューブ搬送方向という。ユーザは、チューブ9がチューブ挿入口15からチューブ排出口16まで延びるように、チューブ9をチューブ搬送方向に沿ってチューブ装着部40に装着する。
図2〜図5を参照し、制御基板19、印刷機構60、搬送量検出部70、指標検出部80、及び切断機構90を説明する。図2に示すように、制御基板19は印刷装置1の動作制御を司る基板である。本例の制御基板19は、本体ケース11の内部における右後部に設けられ、且つUSB接続部18(図6参照)と接続する。USB接続部18は、筐体10(図1参照)の右面下部に形成されたプラグ収容部10A(図1参照)から、本体ケース11の外部に露出する。キーボード7から引き出されたUSBケーブル79(図1参照)は、プラグ収容部10Aを介してUSB接続部18に接続される。
印刷機構60は、印刷ヘッド61、可動搬送ローラ62、リボン巻取軸63、搬送モータ64(図6参照)等を含む。印刷ヘッド61及びリボン巻取軸63は、底面30Aから上方に向けて夫々立設される。印刷ヘッド61及びリボン巻取軸63は、位置決めピン31,32、支持ピン33,34、支持部35よりも上方まで延びる。
印刷ヘッド61は、発熱体(図示外)を備えるサーマルヘッドである。印刷ヘッド61は、リボン装着部30に装着されたリボンカセット100のヘッド挿入部109(図7参照)と対応する位置に設けられる。本例では、印刷ヘッド61はリボン装着部30の後部の略中央に設けられる。
リボン巻取軸63は、後述の巻取スプール300(図4参照)と共に回転可能な軸である。リボン巻取軸63の外周面には、リボン巻取軸63の軸線を中心として放射状且つ等間隔で配置された、複数の突出片63Aが設けられている(図4参照)。各突出片63Aは、リボン巻取軸63の外周面から半径方向外側に突出し、且つリボン巻取軸63の上端部近傍から下方に延びる。リボン巻取軸63は、リボン装着部30に装着されたリボンカセット100の第一支持孔111(図7参照)と対応する位置に設けられる。本例では、リボン巻取軸63は、リボン装着部30の左部において、支持ピン34よりも前側、且つ位置決めピン32よりも後側にある。
可動搬送ローラ62は、印刷ヘッド61に相対して回転可能なローラである。可動搬送ローラ62は、リボン装着部30の後側に配置され、カバー12(図1参照)の開閉に伴って退避位置と作動位置とに変位可能である。可動搬送ローラ62が退避位置にある場合、可動搬送ローラ62はチューブ装着部40の後側に配置されて、印刷ヘッド61から離隔する(図2参照)。可動搬送ローラ62が作動位置にある場合、可動搬送ローラ62の一部はチューブ装着部40の内側に配置されて、印刷ヘッド61に近接する(図3参照)。
搬送モータ64は、可動搬送ローラ62及びリボン巻取軸63を回転駆動するモータである。図4に示すように、リボン巻取軸63の下端近傍には、リボン巻取軸63を中心として回転可能な円盤状のギア65が設けられる。ギア65は、ワンウェイクラッチ66を介して、リボン巻取軸63の周囲に固定された固定部材67と連結される。ワンウェイクラッチ66は、クラッチバネの弾性力によって、リボン巻取軸63を安定的に回転させると共に、リボン巻取軸63が所定の巻取り方向(本例では、平面視で反時計回り方向)とは反対方向に回転するのを規制する。
搬送モータ64は、ギア65を平面視で反時計回り方向に回転させることによって、ワンウェイクラッチ66及び固定部材67を介して、リボン巻取軸63を巻取り方向に回転させる。搬送モータ64がギア65を回転するのに伴って、ギア65と連動するギア群(図示外)を介して、可動搬送ローラ62(図2参照)が平面視で時計回り方向に回転する。これにより、可動搬送ローラ62及びリボン巻取軸63は同期して回転する。
図4に示すように、搬送量検出部70は、印刷動作時におけるインクリボン8の搬送量を検出するための部材である。搬送量検出部70は、検出用回転軸71、検出板72、及びセンサ73を含む。検出用回転軸71は、底面30Aから上方に向けて立設される(図2参照)。検出用回転軸71は、位置決めピン31,32、支持ピン33,34、支持部35よりも上方まで延びる。検出用回転軸71の上端部は、印刷ヘッド61及びリボン巻取軸63の各上端部よりも下方にある。検出用回転軸71は、後述のリボンスプール200と共に回転可能な軸である。
図2に示すように、検出用回転軸71は、リボン装着部30に装着されたリボンカセット100の第二支持孔112(図9参照)と対応する位置に設けられる。本例では、検出用回転軸71は、リボン装着部30の右部において、位置決めピン31よりも前側、且つ支持ピン33よりも後側にある。検出用回転軸71の軸線は、リボン巻取軸63の軸線よりも若干前側にある。
図4及び図5に示すように、検出用回転軸71は、複数の突出片71A、円筒部71B、検出板72を有する。円筒部71Bは、検出用回転軸71の周囲に設けられ、且つ検出用回転軸71と共に回転可能な円筒状の部材である。複数の突出片71Aは、円筒部71Bの外周面に設けられ、且つ検出用回転軸71の軸線を中心として放射状且つ等間隔で配置される。各突出片71Aは、円筒部71Bの外周面から半径方向外側に突出し、且つ円筒部71Bの上端部近傍から下方に延びる。
検出板72は、円筒部71Bの下端近傍から半径方向外側に突出する円盤状である。検出板72の平面視中心は、検出用回転軸71の軸線と一致する。検出板72には、複数の検出孔72Aが設けられる。複数の検出孔72Aは、検出板72の平面視中心の周囲に放射状且つ等間隔で配置された、検出板72を上下方向に貫通する孔である。
センサ73は、発光部73A及び受光部73Bを有する透過型フォトセンサである。発光部73A及び受光部73Bは、検出板72を挟んだ上下両側に対向配置される。CPU41(図6参照)は印刷動作時に、発光部73Aから受光部73Bに向けて光を照射させる。発光部73Aから照射された光は、複数の検出孔72Aの何れかを通過すると、受光部73Bによって受光される。このときセンサ73は、ON信号をCPU41に出力する。一方、発光部73Aから照射された光は、検出板72で反射されると、受光部73Bによって受光されない。このときセンサ73は、OFF信号をCPU41に出力する。なお、センサ73は、検出板72で反射された光を検出可能な反射型フォトセンサでもよい。
図2に示すように、指標検出部80は、リボンカセット100の種類指標部190(図9参照)を検出するための部材である。指標検出部80は、図示外の基板上に設けられた五つの検出スイッチ81を有する。各検出スイッチ81は、上下方向に進退可能な機械式スイッチである。五つの検出スイッチ81は夫々、支持部35の上端面に形成された穴の内側で、上下方向に移動可能である。五つの検出スイッチ81は、リボン装着部30に装着されたリボンカセット100の指標部191〜195(図9参照)と対応する位置に設けられる。本例では、四つの検出スイッチ81が互いに左右方向に並んで配置される。これら四つの検出スイッチ81のうちで左から二番目の検出スイッチ81の後側に、残り一つの検出スイッチ81が配置される。
各検出スイッチ81は、図示外のバネによって上方に付勢されている。外力が加えられていない検出スイッチ81は、図示外のバネの付勢力によって、支持部35から基準位置まで上方に移動する。指標検出部80は、基準位置にある検出スイッチ81に対応するOFF信号を、後述のCPU41(図6参照)に出力する。一方、上方から付勢された検出スイッチ81は、基準位置よりも下方にある押下位置まで移動する。指標検出部80は、押下位置にある検出スイッチ81に対応するON信号を、CPU41に出力する。五つの検出スイッチ81のON信号及びOFF信号の組み合わせを、種類検出パターンという。
切断機構90は、チューブ9の切断動作を実行する機構である。切断機構90は、本体ケース11におけるチューブ装着部40の左端部近傍に設けられる。つまり切断機構90は、印刷ヘッド61よりもチューブ搬送方向の下流側にある。切断機構90は、受台91、切断刃92、及び切断モータ93(図6参照)を含む。受台91は、チューブ装着部40の左端部前側に設けられた直方体状である。切断刃92は、チューブ装着部40を挟んで、受台91に対して後側から対向する。切断モータ93は、切断刃92を前後方向に移動させることで、切断刃92を受台91に対して接近又は離隔させる。
図6を参照し、印刷装置1の電気的構成を説明する。制御基板19は、CPU41、ROM42、RAM44、フラッシュメモリ45、及び入出力インターフェース49等を備え、これらがデータバスを介して接続される。ROM42は、CPU41が印刷動作を含む各種制御を実行するためのプログラムを記憶する。RAM44は、各種データを一時的に記憶する。フラッシュメモリ45は、種類検出パターンに対応するリボン種類を定めたテーブルを記憶する。例えばリボン種類は、リボンカセット100に収容されているインクリボン8の色及び幅である。
印刷装置1は、電源部48を有する。電源部48は、本体ケース11内に装着された電池(図示外)に接続され、又はコードを介して外部電源(図示外)に接続され、制御基板19に電源を供給する。操作部17、USB接続部18、駆動回路51〜53、センサ73、指標検出部80は、入出力インターフェース49に夫々接続される。USB接続部18は、USBケーブル79(図1参照)を介してキーボード7と接続する。CPU41は、操作部17を介して入力された各種情報を受付ける。CPU41は、操作部7A(図1参照)を介して入力された各種指示を受付け、且つ表示部7Bの画面を表示制御する。CPU41は、センサ73から出力されたON/OFF信号、及び指標検出部80から出力された種類検出パターンを受付ける。
駆動回路51〜53は、印刷ヘッド61、搬送モータ64、及び切断モータ93と夫々接続する。CPU41は、駆動回路51に制御信号を送信することによって、印刷ヘッド61を駆動制御する。CPU41は、駆動回路52にパルス信号を送信することによって、搬送モータ64を駆動制御する。CPU41は、駆動回路53に制御信号を送信することによって、切断モータ93を駆動制御する。
(2.リボンカセット100の構造説明)
図7〜図11を参照し、リボンカセット100を説明する。図7〜図10は、印刷動作に使用されていない初期状態のリボンカセット100を例示する。初期状態のリボンカセット100では、インクリボン8が全て未使用である。リボンスプール200には、予め定められた上限量のインクリボン8が巻かれている。巻取スプール300には、インクリボン8が巻かれていない(先述の図4も同様)。
図7〜図9に示すように、リボンカセット100は、インクリボン8を収容するケース101を有する。ケース101の形状は、左右方向に長く且つ上下方向に短い箱状である。ケース101は、下ケース103と、下ケース103の上側に組み付けられる上ケース102とからなる。上ケース102の外面及び下ケース103の外面は夫々、ケース101の上面104及び下面105である。上面104及び下面105は、互いに上下方向に対向し、且つ平面視で略同形である。なお、ケース101の左右方向中心を通って前後方向に延びる仮想線は、中心線C1である。ケース101の前後方向中心を通って左右方向に延びる仮想線は、中心線C2である。
ケース101の側面106は、上面104と下面105とに亘って上下方向に延び、且つ上面104及び下面105の各外縁部に沿って延びる。側面106は、前面106A、右面106B、左面106C、ヘッド周面106D、及び接続面106E,106Fを含む。前面106Aは、左右方向に延びる。右面106B及び左面106Cは夫々、前面106Aの右端部及び左端部から平行に後方へ延びる。右面106B及び左面106Cは、互いに左右方向に並んで配置され、且つ各々の前後方向長さが略等しい。
ヘッド周面106Dは、側面106のうちで、平面視で中心線C1を跨いで設けられた、ケース101の後端側から前方に凹む部位である。接続面106Eは、ヘッド周面106Dの右後端部から右前方向に延び、右面106Bの後端部と接続する。接続面106Fは、ヘッド周面106Dの左後端部から左前方向に延び、左面106Cの後端部と接続する。接続面106Eの延伸方向長さは、接続面106Fの延伸方向長さよりも大きい。
ヘッド周面106Dに囲まれた内側領域は、ヘッド挿入部109である。ヘッド挿入部109は、ケース101を上下方向に貫通し、且つケース101の後方に開口する。ヘッド挿入部109は、平面視で左右方向に長い略矩形状であり、且つ中心線C1を跨いで左右方向に延びる。ヘッド挿入部109の左右方向中心は、中心線C1よりも若干左側にある。
ケース101のうちでヘッド挿入部109の右側にある部位は、第一案内部107である。第一案内部107は、ヘッド周面106Dの右面と接続面106Eとで囲まれた、平面視で三角形状である。第一案内部107の左後端部には、ヘッド挿入部109と連通する開口であるリボン出口107Aが設けられる。ケース101のうちでヘッド挿入部109の左側にある部位は、第二案内部108である。第二案内部108は、ヘッド周面106Dの左面と接続面106Fとで囲まれた、平面視で三角形状である。第二案内部108の右後端部には、ヘッド挿入部109と連通する開口であるリボン入口108Aが設けられる。
ケース101には、巻取スプール300を回転支持する第一支持孔111と、リボンスプール200を回転支持する第二支持孔112(図9参照)とが設けられる。第一支持孔111は、ケース101の左部に設けられ、第二案内部108よりも前側、且つ後述の前側凹部125よりも後側にある。第一支持孔111は、上ケース102を上下方向に貫通する円孔である上孔111A(図8参照)と、下ケース103を上下方向に貫通する円孔である下孔111B(図9参照)とからなる。上孔111A及び下孔111Bは、互いに上下方向に並んで配置された同径の孔である。第一支持孔111で支持された巻取スプール300の回転中心を通る回転軸線を、軸線Jという。
第二支持孔112は、ケース101の右部に設けられ、第一案内部107よりも前側、且つ前側凹部125よりも後側にある。第二支持孔112は、下ケース103を上下方向に貫通する円孔である。第二支持孔112で支持されたリボンスプール200の回転中心を通る回転軸線を、軸線Pという。軸線P,Jは中心線C2よりも前側にある。軸線Pは軸線Jよりも前側にある。
図9に示すように、下ケース103には、位置決め穴121,122、ピン穴123,124、及び前側凹部125が設けられる。位置決め穴121,122、ピン穴123,124は、何れも下面105から上方に凹む凹部である。位置決め穴121,122及びピン穴123,124の各上端部は、ケース101において予め定められた上下方向位置である高さ基準位置にある。高さ基準位置は、ケース101の上下方向中心から規定距離だけ下方にある。規定距離は、ケース101の上下方向長さ(即ち、ケース101の厚み)に関わらず一定である。
本例では、位置決め穴121及びピン穴123は、第二支持孔112の右後側及び右前側に夫々設けられ、且つ互いに略前後方向に並ぶ。位置決め穴121及びピン穴123は、何れも右面106Bの近傍にある。位置決め穴122及びピン穴124は、下孔111Bの左前側及び左後側に夫々設けられ、且つ互いに略前後方向に並ぶ。位置決め穴122及びピン穴124は、何れも左面106Cの近傍にある。位置決め穴122及びピン穴123は、中心線C2よりも後側にある。位置決め穴121及びピン穴124は、中心線C2よりも後側にある。位置決め穴122及びピン穴124の前後方向距離は、位置決め穴121及びピン穴123の前後方向距離よりも大きい。
位置決め穴121の下部は、円形の開口形状を有する。位置決め穴121の下部の開口幅は、位置決めピン31(図2参照)の軸径よりも若干大きい。位置決め穴121の上部である係止部121Aは、高さ基準位置にある天面(図示外)によって閉じられた、下方に開口する丸穴である。係止部121Aの開口幅は、位置決め穴121の下部よりも小径であって、位置決めピン31の軸径と同径である。
位置決め穴122の下部は、位置決め穴121の下部と同様に円形の開口形状を有する。位置決め穴122の下部の開口幅は、位置決めピン32(図2参照)の軸径よりも若干大きい。位置決め穴122の上部である係止部122Aは、高さ基準位置にある天面(図示外)によって閉じられた、下方に開口する穴である。係止部122Aは、右後方向及び左前方向に延びる長穴である。係止部122Aの最小開口幅(即ち、係止部122Aの短手方向長さ)は、位置決めピン32の軸径と同径である。係止部122Aの長手方向の延長線上に、係止部121Aが配置されている。係止部121A,122Aの各中心を結ぶ仮想直線は、連結線C3である。連結線C3は、係止部122Aの長手方向と略平行に延びる。軸線Jは連結線C3よりも左側にある。軸線Pは連結線C3よりも右側にある。
ピン穴123,124は、各々の上端部が高さ基準位置にある天面(図示外)によって閉じられた、下方に開口する丸穴である。ピン穴123,124の開口幅は夫々、支持ピン33,34の軸径よりも若干大きい。ピン穴123,124の開口幅は、互いに同径であり、且つ位置決め穴121,122の各下部の開口幅よりも小さい。
前側凹部125は、下面105から上方に凹む段差部である。前側凹部125の上端面は、高さ基準位置にある。本例の支持部35は、ヘッド挿入部109と前後方向に並ぶ位置、且つ位置決め穴122及びピン穴123とを結ぶ線上にある。詳細には、前側凹部125は、下ケース103の前端部に設けられ、中心線C1を跨いで左右方向に延びる。前側凹部125の左端部は、左右方向において、ヘッド挿入部109の左端部と略等しい位置にある。前側凹部125の右端部は、左右方向において、ヘッド挿入部109の右端部よりも若干右側にある。前側凹部125の左右方向中心は、中心線C1よりも若干左側にある。前側凹部125は、底面視で中心線C1に沿って後方に延びる。前側凹部125の後端部は、前後方向において、ピン穴123と略等しい位置にある。
前側凹部125の上端面には、リボン種類を示す種類指標部190が設けられる。軸線J,Pと交差する仮想直線は、連結線C4である。種類指標部190は、連結線C4よりも前側にあり、且つヘッド周面106Dと前後方向に並ぶ。本例の種類指標部190は、五つの指標部191〜195を含む。指標部191〜194は、前面106Aに沿って左右方向に並んで配置される。指標部195は、指標部191〜194のうちで左から二番目の指標部193の後側に配置される。各指標部191〜195は、リボンカセット100のリボン種類に応じたパターンで、面部又は孔部の何れかで構成される。本例では、指標部191〜193,195が孔部、指標部194が面部である。
図5及び図10に示すように、インクリボン8は、その幅方向(短手方向)が上下方向と略平行となる姿勢で、ケース101内に収容される。ケース101の内部には、リボンスプール200及び巻取スプール300が設けられる。インクリボン8は、その幅方向が上下方向と略平行となる姿勢で、所定の搬送経路(以下、リボン搬送経路)を経由してリボンスプール200から巻取スプール300まで搬送される。リボン搬送経路に沿ってインクリボン8が搬送される方向を、リボン搬送方向という。リボンスプール200は、上下方向に延びる円筒状の部材であって、インクリボン8の長手方向の一端側(即ち、リボン搬送方向の上流側)が巻かれる。巻取スプール300は、上下方向に延びる円筒状の部材であって、インクリボン8の長手方向の他端側(即ち、リボン搬送方向の下流側)が連結される。
リボンスプール200の内部には、上下方向に貫通する装着孔200Aが設けられる。リボンスプール200の外周面は、未使用のインクリボン8が巻かれる供給面200Bである。詳細には、インクリボン8が有する両面のうちでインクが塗布されたインク面が内側となるように、供給面200Bに未使用のインクリボン8が巻かれる。リボンスプール200では、上限量のインクリボン8を供給面200Bに巻くことができる。以下の説明では、供給面200Bに巻かれた状態のインクリボン8を、第一リボンロール8Aという。第一リボンロール8Aの外径は、供給面200Bに上限量のインクリボン8が巻かれた状態で最大値となる。リボンスプール200に巻かれた上限量のインクリボン8を、最大径の第一リボンロール8Aという。
リボンスプール200の上端部及び下端部には、突出部200C,200Dが夫々設けられる。突出部200Cは、供給面200Bよりも上方に突出する。突出部200Dは、供給面200Bよりも下方に突出する。上ケース102の内面102Aには、第二支持孔112と上下方向に対向する支持部140が設けられる(図11参照)。突出部200Cは、支持部140に下方から装着されて、支持部140によって回転支持される。突出部200Dは、第二支持孔112に上方から嵌め込まれて、第二支持孔112によって回転支持される。即ちリボンスプール200は、第二支持孔112及び支持部140によって回転自在に支持される。従って軸線Pは、平面視で第二支持孔112の中心と略一致する。
装着孔200Aの上部には、クラッチバネ280が巻回された円筒状の回転部材290が装着される。クラッチバネ280の端部は、支持部140に係止される。回転部材290は、リボンスプール200と共に回転可能である。リボンスプール200が所定の引出し方向(本例では、平面視で時計回り方向)に回転する場合、クラッチバネ280が拡径されるため、回転部材290を介してリボンスプール200に付与される回転負荷は相対的に小さい。回転負荷は、部材の回転を妨げるように作用する負荷である。回転負荷は、リボンスプール200に回転トルクを付与する。回転トルクは、第一リボンロール8Aの外径の大小によって変化せず、安定して発生する。
一方、リボンスプール200が引出し方向とは反対方向に回転する場合、クラッチバネ280が縮径されるため、回転部材290を介してリボンスプール200に付与される回転負荷は相対的に大きい。つまり回転部材290は、クラッチバネ280の弾性力によって、リボンスプール200を引出し方向に安定的に回転させると共に、リボンスプール200が引出し方向とは反対方向に回転するのを規制する。
巻取スプール300は、本体部301、複数の係合突起302、上支持板303、下支持板304等を有する。本体部301は、上下方向に延びる円筒体である。本体部301の内部には、上下方向に貫通する装着孔300Aが設けられる。複数の係合突起302は夫々、本体部301の内周面から軸線Jに向けて突出する。複数の係合突起302は、軸線Jを中心として放射状且つ等間隔で配置されている。
本体部301の外周面は、使用済みのインクリボン8が巻かれる巻取面300Bである。詳細には、インクリボン8が有する両面のうちでインク面が外側となるように、巻取面300Bに使用済みのインクリボン8が巻かれる。巻取スプール300では、上限量のインクリボン8を巻取面300Bに巻くことができる。以下の説明では、巻取面300Bに巻かれた状態のインクリボン8を、第二リボンロール8Bという(図3参照)。第二リボンロール8Bの外径は、巻取面300Bに上限量のインクリボン8が巻かれた状態で最大値となる。巻取スプール300に巻かれた上限量のインクリボン8を、最大径の第二リボンロール8Bという。
上支持板303は、本体部301の上端近傍から半径方向外側に延びる円盤状である。下支持板304は、本体部301の下端近傍から半径方向外側に延びる円盤状である。上支持板303及び下支持板304は、上下方向に対向配置された同径の板状部材である。上支持板303と下支持板304との上下方向距離は、インクリボン8の幅方向長さよりも若干大きい。上支持板303と下支持板304と巻取面300Bとで囲まれた領域は、第二リボンロール8Bを収容可能な収容部305である。収容部305の外径は、最大径の第二リボンロール8Bの外径よりも大きい。
本例では、上支持板303は、供給面200Bよりも上側にある。下支持板304は、供給面200Bよりも下側にある。上支持板303及び下支持板304の各右端部は、中心線C1とリボンスプール200との間にある。つまり、収容部305は供給面200Bに対して左側から近接する。所定量以上のインクリボン8が供給面200Bに巻かれている場合、第一リボンロール8Aの一部が収容部305に右側から進入する。換言すると、第一リボンロール8Aの半径が軸線Pから収容部305までの距離を超える場合、第一リボンロール8Aの一部が収容部305内に配置される。
このように、第一リボンロール8Aの外径が所定長さよりも大きい場合には、第一リボンロール8Aの一部が収容部305に収容される。リボンスプール200と巻取スプール300とをより近い位置に配置できるため、ケース101をより小型化できる。なお、インクリボン8の搬送に伴って、第二リボンロール8Bの外径が増加すると共に、第一リボンロール8Aの外径は減少する。そのため、第一リボンロール8A及び第二リボンロール8Bが互いに干渉することを抑制できる。
巻取スプール300の上端部及び下端部には、突出部300C,300Dが夫々設けられる。突出部300Cは、上支持板303よりも上方に突出する。突出部300Dは、下支持板304よりも下方に突出する。突出部300Cは、上孔111Aに下方から嵌め込まれて、上孔111Aによって回転支持される。突出部300Dは、下孔111Bに上方から嵌め込まれて、下孔111Bによって回転支持される。即ち巻取スプール300は、第一支持孔111によって回転自在に支持される。従って軸線Jは、平面視で第一支持孔111の中心と略一致する。
図10に示すように、ケース101の内部には、複数の屈曲部131〜137が設けられる。屈曲部131〜137は、リボン搬送経路を設定するための部材であり、且つリボン搬送経路を蛇行させるための部材である。各屈曲部131〜137は、下ケース103の内面103Aに立設され、上ケース102まで上方に延びる。屈曲部131,132,136は、下ケース103に固定された円柱体である。詳細には、屈曲部131,132,136は、下ケース103と一体に形成されている。屈曲部133〜135,137は、上下方向に延びる軸を中心に回転可能な円筒状の回転体である。
屈曲部131〜134は、ケース101の右後部に設けられる。屈曲部131は、平面視で、第二支持孔112(図9参照)の右後側にある。位置決め穴121は、前後方向において屈曲部131とリボンスプール200との間にある。屈曲部131は、左右方向において位置決め穴121とリボンスプール200との間にある。屈曲部131は、前後方向においてヘッド周面106Dとリボンスプール200との間にある。軸線Pから屈曲部131までの距離は、最大径の第一リボンロール8Aの半径よりも大きい。屈曲部132〜134は、第一案内部107にある。屈曲部132は、屈曲部131の左後側にある。屈曲部133は、屈曲部132の左側にある。屈曲部134は、屈曲部133の左後側にあり、且つ第一案内部107の左後部にある。
屈曲部135〜137は、ケース101の左後部に設けられる。屈曲部135〜137は、第一案内部107にある。屈曲部137は、第一支持孔111(図8参照)の左後側にある。軸線Jから屈曲部137までの距離は、最大径の第二リボンロール8B(図3参照)の半径よりも大きい。屈曲部136は、屈曲部137の左後側にある。屈曲部135は、屈曲部136の右後側にあり、且つ第二案内部108の右後部にある。
図8及び図11に示すように、上ケース102における支持部140の周囲には、窓部160及び少なくとも一つの弾性体180が設けられる。窓部160は、上ケース102を上下方向に貫通し、且つ支持部140を中心として半径方向に延びる長穴である。本例の窓部160は、支持部140の後側から後方に延びる。窓部160の後端部は、平面視で最大径の第一リボンロール8Aの外側にある。ユーザは、窓部160を介して第一リボンロール8Aの外径位置を目視することで、未使用のインクリボン8の残量を認識できる。
各弾性体180は、内面102Aに設けられた板状スポンジである。各弾性体180は、支持部140を中心として半径方向に延びる。各弾性体180は、平面視で、支持部140の外縁から最大径の第一リボンロール8Aの外側まで延びる。図4に示すように、各弾性体180はケース101の内部において、第一リボンロール8Aに対して上方から弾性接触する。即ち各弾性体180、第一リボンロール8Aの上面における半径方向全体に亘って面接触して、第一リボンロール8Aを下方に付勢する。本例では、二つの弾性体180が、支持部140の前側及び右前側に配置される。各弾性体180は、何れも4mm厚の扇形をなす同一の板状スポンジであり、図示外の両面テープによって内面102Aに貼り付けられる。各弾性体180が第一リボンロール8Aに弾性接触した状態で、各弾性体180の厚みは2mm程度である。
(3.印刷装置1及びリボンカセット100の動作態様)
図2〜図4、図9、及び図10を参照し、印刷装置1及びリボンカセット100の動作態様を説明する。印刷装置1では、カバー12が開かれるのに伴って、可動搬送ローラ62は退避位置に変位する。リボン装着部30にリボンカセット100が装着されると、印刷ヘッド61はヘッド挿入部109に挿入される。リボン巻取軸63は下孔111Bを介して、巻取スプール300の装着孔300Aに挿入される。複数の突出片63Aは、複数の係合突起302に係合される。検出用回転軸71は第二支持孔112を介して、リボンスプール200の装着孔200Aに挿入される。複数の突出片71Aは、複数の突出片63Aと同様に、装着孔200A内でリボンスプール200に係合される。
リボン装着部30に装着されるリボンカセット100は、以下のようにリボン装着部30における適正な位置に位置決めされる。位置決めピン31,32及び支持ピン33,34は、位置決め穴121,122及びピン穴123,124に夫々挿入される。支持ピン33の上端部は、ピン穴123の天面に接触して、リボンカセット100の上下方向を位置決めする。支持ピン34の上端部は、ピン穴124の天面に接触して、リボンカセット100の上下方向を位置決めする。位置決めピン31の上端部は、係止部121Aに緊密に嵌め込まれて、リボンカセット100の上下左右前後の各方向を位置決めする。位置決めピン32の上端部は、係止部122Aに緊密に嵌め込まれて、リボンカセット100の上下左右前後の各方向を位置決めする。支持部35は前側凹部125を下方から支持して、リボンカセット100の上下方向を位置決めする。
前側凹部125が支持部35によって支持されると、五つの検出スイッチ81が種類指標部190によって選択的に押圧される。本例では、各指標部191〜195が、五つの検出スイッチ81の何れかと夫々対向する。指標部191〜193,195と対向する各検出スイッチ81は、孔部内に挿入されて基準位置に保持される。指標部194と対向する検出スイッチ81は、面部で付勢されて押下位置に変位する。
指標検出部80は、基準位置の各検出スイッチ81に対応するOFF信号と、押下位置の検出スイッチ81に対応するON信号との組み合わせを、種類検出パターンとしてCPU41(図6参照)に出力する。CPU41は、受付けた種類検出パターンに対応するリボン種類を、フラッシュメモリ45(図6参照)のテーブルを参照して特定する。これにより印刷装置1は、リボン装着部30に装着されたリボンカセット100のリボン種類を特定できる。
リボンカセット100がリボン装着部30に装着され、且つチューブ9がチューブ装着部40に装着された状態で、カバー12が閉じられる。カバー12が閉じられると、可動搬送ローラ62は作動位置に変位する。可動搬送ローラ62は、チューブ装着部40にあるチューブ9と未使用のインクリボン8とを重ねて、印刷ヘッド61に向けて付勢する。このときチューブ9は、可動搬送ローラ62の付勢力によって弾性変形して、インクリボン8を介して印刷ヘッド61と面接触する。
CPU41は、キーボード7又は操作部17を介して印字開始指示が入力されると、搬送モータ64を駆動して可動搬送ローラ62及びリボン巻取軸63を回転させる。チューブ装着部40内にあるチューブ9は、可動搬送ローラ62の回転に伴って、チューブ搬送方向の下流側に搬送される。このとき、筐体10の外部にある印刷前のチューブ9は、チューブ挿入口15を介してチューブ装着部40内に引き込まれる。
リボン巻取軸63の回転に伴って、巻取スプール300が巻取り方向に回転する。巻取スプール300の回転に伴って、リボンスプール200が引出し方向に回転する。これによりインクリボン8は、第一リボンロール8Aの後端近傍から引き出され、以下のリボン搬送経路に沿って搬送される。先述したように、リボンスプール200が引出し方向に回転する場合、クラッチバネ280の弾性力によって、リボンスプール200に相対的に小さい回転負荷が付与される。これにより、搬送されるインクリボン8に適度なテンションが付与されるため、インクリボン8の弛みが生じにくい。
未使用のインクリボン8は、第一リボンロール8Aから引き出されたのち、屈曲部131の右前面側、屈曲部132の右後面側、屈曲部133の左前面側、屈曲部134の右後面側を順に経由する。次いで未使用のインクリボン8は、リボン出口107Aからケース101の外部に排出され、ヘッド挿入部109内を左方向に進む。このとき未使用のインクリボン8は、チューブ9と印刷ヘッド61との間を通る。
CPU41は印刷ヘッド61を駆動して、チューブ9と印刷ヘッド61との間を通るインクリボン8を加熱して、チューブ9にキャラクタを印刷する。本例の印刷ヘッド61は、その後側を経由するチューブ9の前部にキャラクタを正像印刷する。その後、CPU41は切断モータ93を駆動して、切断刃92を受台91に対して接近させることで、印刷済みのチューブ9を切断する。切断されたチューブ9は、チューブ排出口16を介して筐体10の外部に排出される。
使用済みのインクリボン8は、リボン入口108Aからケース101の内部に進入して、屈曲部135の左後面側、屈曲部136の左面側、屈曲部137の右後面側を経由する。最後に、使用済みのインクリボン8は、巻取スプール300の左側から巻き取られ、第二リボンロール8Bとして保持される。このように、インクリボン8は、複数の屈曲部131〜137を経由することで、蛇行したリボン搬送経路に沿って搬送される。リボン搬送経路に沿って搬送されるインクリボン8に、適度な搬送負荷が付与される。搬送負荷は、インクリボン8の搬送を妨げるように作用する負荷である。搬送されるインクリボン8に適度なテンションが付与されるため、インクリボン8の弛みが更に生じにくい。
二つの弾性体180は、第一リボンロール8Aに対して軸線P方向に弾性接触する。未使用のインクリボン8が第一リボンロール8Aから引き出される場合、回転する第一リボンロール8Aと各弾性体180との間に摺動摩擦が生じる。この摺動摩擦によって、第一リボンロール8Aに適度な回転負荷が付与される。第一リボンロール8Aから引き出されるインクリボン8に、適度な搬送負荷が付与される。搬送されるインクリボン8に適度なテンションが付与されるため、インクリボン8の弛みが更に生じにくい。
本例では、二つの弾性体180は、平面視で上支持板303(図4及び図10参照)と重複しない位置に設けられる。これにより、巻取スプール300及び各弾性体180が互いに干渉することを防止できる。二つの弾性体180は、窓部160とは異なる位置に設けられる。これにより、窓部160が各弾性体180によって塞がれることを防止できる。二つの弾性体180は、第一リボンロール8Aの互いに異なる周方向位置に弾性接触する。これにより、弾性体180が第一リボンロール8Aの一部分に偏って弾性接触する場合と比べて、第一リボンロール8Aの全体に適度な回転負荷を付与できる。二つの弾性体180は互いに同一部材であるため、各弾性体180の製造が容易である。
第一リボンロール8Aの外径が最も小さい状態である場合に、弾性体180が第一リボンロール8Aに弾性接触すると、第一リボンロール8Aが幅方向に撓むおそれがある。本例では、二つの弾性体180は、第一リボンロール8Aの外径が最も小さい状態で、リボンスプール200と屈曲部131との間にあるインクリボン8とは異なる位置にある。第一リボンロール8Aの外径が最も小さい状態である場合、各弾性体180は第一リボンロール8Aと接触しない。これにより、第一リボンロール8Aから引き出されるインクリボン8が各弾性体180の弾性力で幅方向に撓むことを抑制できる。
なお、リボンスプール200の回転に伴って、検出用回転軸71も引出し方向に回転する。このときセンサ73は、発光部73Aの照射光が受光部73Bによって断続的に検出されることに応じて、ON信号及びOFF信号をCPU41に出力する。CPU41は、入力されたON/OFF信号に基づいて、印刷動作中における検出用回転軸71の回転量に相当するインクリボン8の搬送量を特定する。即ち印刷装置1は、印刷動作の開始時から起算したインクリボン8の使用量を特定できる。
(4.リボンスプール200に関する詳細説明)
図12〜図16を参照して、リボンスプール200に関する詳細構造を説明する。以下では、図12の上方及び下方を、各々、リボンスプール200、クラッチバネ280、及び回転部材290の上方及び下方と定義する。
図12及び図13を参照して、リボンスプール200を説明する。リボンスプール200は、外筒201、内筒202、及び複数の連結部203を有する。外筒201及び内筒202は、何れも軸線Pと同軸であり、且つ軸線P方向(本例では、上下方向)に延びる筒状部材である。装着孔200Aにおける軸線P上の中心位置は、スプール中心点Qである。軸線Pと直交し且つスプール中心点Qを通る仮想面は、中心面Rである。
内筒202は、外筒201よりも小径であり、且つ外筒201の内側に配置される。内筒202の直径は、第二支持孔112の開口径よりも若干小さい。外筒201の軸線P方向長さは、インクリボン8(図4参照)の幅方向長さより若干大きい。外筒201の直径は、第二支持孔112(図4参照)の開口径よりも若干大きい。先述の供給面200Bは、外筒201の外周面である。
内筒202の軸線P方向長さは、外筒201の軸線P方向長さよりも大きく、且つ上ケース102の内面102A(図4参照)と下ケース103の内面103A(図4参照)との距離よりも大きい。内筒202の軸線P方向中心は、外筒201の軸線P方向中心と一致する。従って、内筒202の軸線P方向の両端部は、軸線Pに沿って外筒201の外側に突出する。先述の突出部200Cは、内筒202のうちで外筒201よりも上方に突出する部分である。先述の突出部200Dは、内筒202のうちで外筒201よりも下方に突出する部分である。突出部200C,200Dの各突出幅(即ち、上下方向長さ)は互いに等しい。
複数の連結部203は、外筒201と内筒202との間に設けられ、且つ軸線Pを中心として放射状且つ等間隔で設けられる。各接続部201Aは、外筒201の内周面に沿って軸線P方向に延び、且つ外筒201の内周面と内筒202と外周面との間に架設される。複数の連結部203によって、外筒201と内筒202とは一体に連結される。先述の装着孔200Aは、内筒202の内面204によって囲まれた、軸線P方向に延びる空間である。内面204は、内面204の下側部分である下側内面241と、内面204の上側部分である上側内面242とを含む。
下側内面241の下縁部には、テーパ面243が設けられる。テーパ面243は、下側内面241の下縁部の全周において、下方に向かって軸線Pから離れる方向に傾斜する面である。上側内面242の上縁部には、テーパ面244が設けられる。テーパ面244は、上側内面242の上縁部の全周において、上方に向かって軸線Pから離れる方向に傾斜する面である。本例では、テーパ面243,244は、中心面Rを中心として上下対称である。従って、装着孔200Aの開口径は、その上端部及び下端部で最大となる。
リボンスプール200は、内面204から軸線Pと交差する方向(本例では、軸線Pと直交する半径方向の内側)に延びる凸部として、少なくとも一つの第一凸部211、少なくとも一つの第二凸部212、及び少なくとも一つの第三凸部213を有する。本例では、六つの第一凸部211が下側内面241に設けられる。六つの第二凸部212が上側内面242に設けられる。一つの第三凸部213が、内面204における下側内面241と上側内面242との間に設けられる。
六つの第一凸部211は、軸線Pを中心として放射状且つ等間隔で設けられた、互いに合同の凸部である。各第一凸部211は、下側内面241から軸線Pに向けて突出し、且つ軸線P方向に延びる。各第一凸部211は、下側内面241の下端部近傍(本例では、テーパ面243の上端部近傍)まで下方に延びる。下側内面241には、互いに合同である六つの第一溝部221が、軸線Pを中心として放射状且つ等間隔で設けられる。各第一溝部221は、隣り合う二つの第一凸部211の間に形成された溝部である。
各第一凸部211の下縁部は、下方に向けて周方向長さが漸減するように、軸線P方向に対して傾斜する面を有する。各第一凸部211の下縁部は、軸線P側から見て下方に突出する三角形状である。逆に、各第一溝部221の下縁部では、下方に向けて周方向長さが漸増する。各第一溝部221の周方向長さは、その下端部で最大となる。
六つの第二凸部212は、軸線Pを中心として放射状且つ等間隔で設けられた、互いに合同の凸部である。各第二凸部212は、上側内面242から軸線Pに向けて突出し、且つ軸線P方向に延びる。各第二凸部212は、上側内面242の上端部近傍(本例では、テーパ面244の下端部近傍)まで上方に延びる。上側内面242には、互いに合同である六つの第二溝部222が、軸線Pを中心として放射状且つ等間隔で設けられる。各第二溝部222は、隣り合う二つの第二凸部212の間に形成された溝部である。
各第二凸部212の上縁部は、上方に向けて周方向長さが漸減するように、軸線P方向に対して傾斜する面を有する。各第二凸部212の上縁部は、軸線P側から見て上方に突出する三角形状である。逆に、各第二溝部222の上縁部では、上方に向けて周方向長さが漸増する。各第二溝部222の周方向長さは、その上端部で最大となる。
本例では、各第一凸部211及び各第二凸部212は、互いに合同である。六つの第一凸部211と六つの第二凸部212とは、互いに等しい周方向位置にあるため、軸線P方向に重なる。六つの第一凸部211は、スプール中心点Qからの最短距離が互いに等しい。六つの第二凸部212は、スプール中心点Qからの最短距離が互いに等しい。スプール中心点Qから各第一凸部211までの最短距離と、スプール中心点Qから各第二凸部212までの最短距離とは、互いに等しい。
隣り合う二つの第一凸部211の間にある各第一溝部221の周方向の両端部と、軸線Pとを夫々最短距離で結んだ二つの直線のなす角は、少なくとも100°以下である。本例では、第一凸部211及び第一溝部221は、平面視で、軸線Pを中心として30°間隔で交互に配置されている。同様に、第二凸部212及び第二溝部222は、平面視で、軸線Pを中心として30°間隔で交互に配置されている。
第三凸部213は、内面204から軸線Pに向けて突出し、内面204の全周に亘って周方向に延びる。第三凸部213は、中心面Rを跨いで上下対称に延びる。各第一凸部211の上端部は、第三凸部213の下面に連結される。各第二凸部212の下端部は、第三凸部213の上面に連結される。第三凸部213の突出幅(即ち、半径方向長さ)は、各第一凸部211の突出幅及び各第二凸部212の突出幅と等しい。換言すると、各第一凸部211の突出端(即ち、半径方向内側の端部)、各第二凸部212の突出端、及び第三凸部213の突出端は、何れも軸線Pからの最短距離が等しい。従って、第三凸部213の突出面(即ち、半径方向内側の端面)は、各第一凸部211の突出面及び各第二凸部212の突出面と面一である。
上記の物理的関係により、本例のリボンスプール200は、中心面Rを中心として対称である。従って、六つの第一凸部211及び六つの第二凸部212も、中心面Rを中心として対称である。リボンスプール200が中心面Rを中心として反転された場合、中心面Rを中心として対称な各部位の位置が入れ替わるだけで、リボンスプール200の外観に変化を生じない。例えばリボンスプール200が中心面Rを挟んで上下方向に鏡像反転された場合、六つの第一凸部211と六つの第二凸部212とが互いに入れ替わる。
更に、本例のリボンスプール200は、スプール中心点Qを中心として対称である。従って、六つの第一凸部211及び六つの第二凸部212も、スプール中心点Qを中心として対称である。リボンスプール200がスプール中心点Qを中心として反転された場合、スプール中心点Qを中心として対称な各部位の位置が入れ替わるだけで、リボンスプール200の外観に変化を生じない。例えばリボンスプール200がスプール中心点Qを中心として180°回転された場合、六つの第一凸部211と六つの第二凸部212とが互いに入れ替わる。
図12を参照して、クラッチバネ280及び回転部材290を説明する。クラッチバネ280を説明する。クラッチバネ280は、コイル状の円環部281と、円環部281の上端から半径方向外側に延設された延設部282とを有する。
回転部材290は、下筒291及び上筒292を有する。下筒291及び上筒292は、互いに同軸で上下方向に並ぶ円筒状である。上筒292は、下筒291の上面から上方に延びる。上筒292の外径は、下筒291の外径よりも小さく、且つ円環部281の内径と略等しい。下筒291の外周面には、二つの係止突起293が設けられている。二つの係止突起293は、回転部材290の回転軸線を中心として対称に設けられる。各係止突起293は、下筒291の外周面から半径方向外側に突出し、且つ上下方向に延びる。
回転部材290の内部には、回転部材290を上下方向に貫通する軸孔294が設けられる。軸孔294は、互いに同軸で上下方向に延びる下穴294A及び上穴294Bを含む(図15参照)。下穴294Aは、下筒291の内周面によって囲まれた、回転部材290の下方に開口する凹部である。上穴294Bは、下穴294Aよりも小径であり、下穴294Aから上方に延びる孔である。上穴294Bは、上筒292の内部を貫通して、回転部材290の上方に開口する。
図14及び図15を参照して、リボンスプール200に対するクラッチバネ280及び回転部材290の組み付け構造を説明する。クラッチバネ280は、回転部材290に装着される。詳細には、上筒292が円環部281の巻回中心を貫通するように、且つ、延設部282が上筒292の上端近傍に配置されるように、クラッチバネ280が上筒292の外周側に配置される。クラッチバネ280が装着された回転部材290は、二つの係止突起293が六つの第二溝部222の何れかに嵌まるように、装着孔200Aに上方から挿入される。なお、テーパ面244によって装着孔200Aの上端部の開口径は相対的に大きいため、回転部材290は装着孔200Aの上方から挿入しやすい。各第二溝部222の周方向長さはその上端部で最も大きいため、二つの係止突起293は夫々対応する第二溝部222に上方から嵌めやすい。
回転部材290が装着孔200Aに挿入された場合、下筒291の下端部は第三凸部213の内周側に挿入され、且つ、二つの係止突起293は第三凸部213に対して上方から接触する。即ち第三凸部213は、二つの係止突起293を下方から支持しつつ、下筒291の下端部を保持する。各係止突起293は、その周方向の両側にある二つの第二凸部212と係合する。即ち回転部材290は、装着孔200A内で上側内面242に係合し、且つリボンスプール200と共に回転可能である。延設部282は、装着孔200Aの内部で、円環部281の上端から軸線Pと直交する方向に延びる。延設部282の先端部は各第二凸部212の突出端よりも軸線Pに近い位置にあるため、延設部282は各第二凸部212に接触しない。
図16を参照して、リボンカセット100に対するリボンスプール200の装着構造を説明する。クラッチバネ280及び回転部材290が組み付けられたリボンスプール200は、以下のようにリボンカセット100に装着される。先述したように、リボンスプール200の突出部200C,200Dは夫々、支持部140及び第二支持孔112によって回転支持される。
より詳細には、突出部200Dが第二支持孔112の上側部分に上方から挿入された状態で、外筒201の下端部が第二支持孔112の周縁部によって下方から支持される。第二支持孔112は、突出部200Dの半径方向への移動を規制しつつ、突出部200Dを周方向に回転自在に支持する。第二支持孔112の少なくとも一部は、各第一凸部211の突出端の回転軌跡によって囲まれた円形状の領域の全部と、軸線P方向に重なる。本例では、各第一凸部211の突出端の回転軌跡によって囲まれた円形状の領域の全体が、底面視で第二支持孔112の内側に配置される。
支持部140は、第二支持孔112の上方に設けられ、支持軸141、複数の係合部142、及び支持凹部143を有する(図11参照)。支持凹部143は、上ケース102の内面102Aから上方に凹む部位である。支持凹部143は、第二支持孔112の上方に設けられ、且つ底面視で第二支持孔112と略対応する円形である。支持軸141は、支持凹部143の中央部から下方に延びる円柱体である。支持軸141の軸心は、底面視で第二支持孔112の開口中心と一致する。複数の係合部142は、支持凹部143における支持軸141の半径方向外側から下方に延びる複数の柱状体である。複数の係合部142は、支持軸141を中心として放射状且つ等間隔で配置されている。
ケース101の内部では、支持部140が次のように突出部200Cを回転支持する。支持軸141は、回転部材290の上穴294Bに上方から挿入される。複数の係合部142は、装着孔200Aに上方から挿入され、且つ上筒292と上側内面242との間に配置される。複数の係合部142は、クラッチバネ280の延設部282の回転軌跡上に配置される。延設部282は、装着孔200Aの内部で、複数の係合部142の何れかに係合する。突出部200Dが支持凹部143に下方から挿入される。支持凹部143は、突出部200Cの半径方向への移動を規制しつつ、突出部200Cを周方向に回転自在に支持する。
本構造によれば、リボンスプール200を引出し方向に回転させる外力が作用した場合、装着孔200Aの内部で円環部281が拡径される。この場合、円環部281が上筒292に付与する回転負荷は相対的に小さい。従ってリボンスプール200は、支持軸141を中心に回転する回転部材290と共に引出し方向に回転する。このとき、クラッチバネ280が付与する相対的に小さい回転負荷によって、リボンスプール200は安定的に回転する。第一リボンロール8Aから引き出されるインクリボン8に、適度なテンションが付与される。
一方、リボンスプール200を引出し方向とは反対方向に回転させる外力が作用した場合、装着孔200Aの内部で円環部281が縮径される。この場合、円環部281が上筒292に付与する回転負荷は相対的に大きいため、回転部材290の回転が規制される。従ってリボンスプール200は、回転部材290を介して、引出し方向とは反対方向への回転が規制される。
先述したように、リボンスプール200がリボン装着部30に装着されると、検出用回転軸71は第二支持孔112を介して装着孔200Aに下方から挿入される。このとき複数の突出片71Aは夫々、六つの第一溝部221の何れかに嵌まるように、装着孔200Aに挿入される。なお、テーパ面243によって装着孔200Aの下端部の開口径は相対的に大きいため、検出用回転軸71は装着孔200Aの下方から挿入しやすい。各第一溝部221の周方向長さはその下端部で最も大きいため、複数の突出片71Aは夫々対応する第一溝部221に下方から嵌めやすい。
検出用回転軸71が装着孔200Aに挿入された場合、各突出片71Aはその周方向の両側にある二つの第一凸部211に係合する。即ち検出用回転軸71は、装着孔200A内で下側内面241に係合し、且つリボンスプール200と共に回転可能である。先述したように、リボン装着部30に装着されたリボンスプール200は、リボン装着部30における適正な高さ位置に位置決めされる。これにより、装着孔200Aに挿入された検出用回転軸71の上端部は、下穴294A内に配置される。従って検出用回転軸71は、回転部材290に干渉しないため、リボンスプール200の回転を妨げない。
(5.リボンスプール200に関する構造的特徴)
図12〜図16を参照して、本例のリボンカセット100の構造的特徴のうち、主にリボンスプール200に関係する構造的特徴の一部を例示する。
(5−1)リボンカセット100は、箱状のケース101を備える。インクリボン8は、ケース101の内部に収容される。円筒状のリボンスプール200は、ケース101内で回転自在に支持され、且つインクリボン8の一端側が巻かれる。円筒状の巻取スプール300は、ケース101内で回転自在に支持され、且つインクリボン8の他端側が巻かれる。回転部材290は、リボンスプール200の内部である装着孔200Aに配置され、且つ、リボンスプール200の内面204の一部である上側内面242に係合する。クラッチバネ280は、回転部材290に装着されたコイル状の円環部281と、円環部281から延設された延設部282を有する。係合部142は、ケース101に設けられ、延設部282の回転軌跡上に配置される。
リボンスプール200は、下側内面241に設けられた第一凸部211を有する。下側内面241は、リボンスプール200の内面204の一部であり、リボンスプール200の回転軸線である軸線Pが延びる軸線P方向において、上側内面242とは異なる位置にある。第一凸部211は、リボンスプール200の軸線Pと交差する半径方向に延びる凸部である。
ケース101は、第二支持孔112を有する。第二支持孔112は、リボンスプール200の両端部である突出部200C,200Dのうち、下側内面241に近い方の突出部200Dが嵌まる孔である。より詳細には、第二支持孔112は、上側内面242よりも下側内面241に近い位置にあり、且つ装着孔200Aと通じる孔である。第二支持孔112の少なくとも一部は、第一凸部211の半径方向の端部の回転軌跡によって囲まれた円形状の領域の全部と軸線P方向に重なる。
本構造によれば、クラッチバネ280及び回転部材290は、リボンスプール200に回転負荷を付与する部品(以下、回転負荷部品という。)である。回転負荷部品によってリボンスプール200に回転負荷が付与されるため、リボンスプール200からインクリボン8が安定的に引き出され、且つ引き出されるインクリボン8に適度なテンションが付与される。更に、装着孔200Aは第二支持孔112を介してケース101の外部に露出するため、リボンカセット100の製造工程において以下の利点がある。
例えば作業者が製造済みのリボンカセット100を検査する場合に、第二支持孔112を介して装着孔200Aを目視する。これにより作業者は、装着孔200Aに回転部材290が装着されているかを確認できる。作業者は、例えば指又はドライバを、第二支持孔112を介して装着孔200Aに挿入する。作業者は、挿入した指又は検査道具で第一凸部211を回転させたときの負荷の大きさに応じて、クラッチバネ280が適正に装着されているかを確認できる。従って作業者は、リボンスプール200に回転負荷部品が正しく装着されているかを、リボンカセット100単体で容易に検査できる。
なお、例えば検出用回転軸71が第二支持孔112を介して装着孔200Aに挿入された場合、検出用回転軸71は第一凸部211と係合される。これにより検出用回転軸71は、リボンスプール200と共に回転可能である。印刷装置1は、検出用回転軸71の回転量によって、印刷動作時におけるインクリボン8の使用量を特定できる。
(5−2)リボンスプール200は、上側内面242に設けられ、回転部材290に対して係合する凸部である第二凸部212を有する。本構造によれば、上側内面242に凸部を設けた簡易な構造で、回転部材290を上側内面242に係合できる。
(5−3)第一凸部211からスプール中心点Qまでの距離と、第二凸部212からスプール中心点Qまでの距離とは互いに等しい。スプール中心点Qは、装着孔200Aにおける軸線P上の中心位置である。
本構造によれば、リボンスプール200が軸線P方向に反転した状態でケース101に装着された場合、第一凸部211の軸線P方向位置と第二凸部212の軸線P方向位置とが互いに入れ替わる。この場合、回転部材290は第一凸部211と係合することで、下側内面241に係合できる。従って、回転部材290が上側内面242に係合した場合と同様に、回転負荷部品によってリボンスプール200に回転負荷を付与できる。作業者は、第二支持孔112を介して装着孔200Aを目視したり、第二支持孔112を介して第二凸部212を回転操作したりすることで、回転負荷部品の装着状態を検査できる。
なお、例えば検出用回転軸71が第二支持孔112を介して装着孔200Aに挿入された場合、検出用回転軸71は第二凸部212と係合することで、リボンスプール200と共に回転可能である。印刷装置1は、検出用回転軸71の回転量によって、印刷動作時におけるインクリボン8の使用量を特定できる。
(5−4)第一凸部211及び第二凸部212は、軸線P方向に重なる。本構造によれば、第一凸部211及び第二凸部212は互いに等しい周方向位置にある。従って、第一凸部211及び第二凸部212を互いに異なる周方向位置に設ける場合と比べて、リボンスプール200を簡易且つ正確に製造できる。
(5−5)第一凸部211及び第二凸部212は、互いの中心にある仮想点又は仮想面を中心として対称である。本構造によれば、第一凸部211及び第二凸部212が対称形状である。そのため、ケース101に装着されているリボンスプール200が軸線P方向に反転している場合でも、回転部材290は第二凸部212と円滑に係合でき、且つ作業者は回転負荷部品の装着状態を検査できる。例えば検出用回転軸71は、第一凸部211と円滑に係合できる。
(5−6)第一凸部211の半径方向の端部から軸線Pまでの最短距離と、第二凸部212の端部から軸線Pまでの最短距離とは互いに等しい。本構造によれば、第一凸部211及び第二凸部212は互いに軸線Pからの最短距離が等しい。そのため、ケース101に装着されているリボンスプール200が軸線P方向に反転している場合でも、回転部材290は第二凸部212と円滑に係合でき、且つ作業者は回転負荷部品の装着状態を検査できる。同様に、例えば検出用回転軸71は第一凸部211と円滑に係合できる。
(5−7)第一凸部211は、下側内面241のうちで上側内面242とは反対側の端部の近傍まで延びる。第二凸部212は、上側内面242のうちで下側内面241とは反対側の端部の近傍まで延びる。本構造によれば、回転部材290は装着孔200Aに挿入された場合に、第一凸部211と係合しやすい。指、検査道具、又は検出用回転軸71は、第二支持孔112を介して装着孔200Aに挿入された場合に、第二凸部212と係合しやすい。
(5−8)リボンスプール200は、内面204における下側内面241と上側内面242との間に設けられた凸部であって、回転部材290に対して軸線P方向に接触する第三凸部213を有する。本構造によれば、装着孔200Aに挿入された回転部材290が、第三凸部213を超えて軸線P方向に移動することを抑制できる。
(5−9)第三凸部213は、リボンスプール200における軸線P方向の中心位置にある。本構造によれば、ケース101に装着されているリボンスプール200が軸線P方向に反転している場合でも、第三凸部213は装着孔200Aに挿入された回転部材290を軸線P方向の適正位置で支持できる。
(5−10)第三凸部213の半径方向の端部は、リボンスプール200における軸線P方向の中心位置を跨いで、軸線P方向に延びる。本構造によれば、装着孔200Aに挿入された回転部材290が、下側内面241側に移動することを抑制できる。
(5−11)回転部材290は、第二支持孔112の少なくとも一部と軸線P方向に重なる軸孔294を有する。本構造によれば、例えば検出用回転軸71が第二支持孔112を介して装着孔200Aに挿入された場合、検出用回転軸71が軸孔294内に配置されることで、検出用回転軸71が回転部材29に干渉することを抑制できる。
(5−12)リボンスプール200は、軸線P方向に対称形状である。本構造によれば、作業者はリボンスプール200の軸線P方向の向きに配慮することなく、リボンスプール200及びリボンカセット100を容易且つ正確に製造できる。
(5−13)第一凸部211は、リボンスプール200における軸線P方向の中心位置よりも、第二支持孔112に近い位置にある。本構造によれば、第二支持孔112を介して挿入された指又は検査道具が第二凸部212に係合しやすいため、作業者は回転負荷部品の装着状態を容易に検査できる。
(5−14)リボンスプール200は、周方向に並ぶ複数の第一凸部211を有する。隣り合う二つの第一凸部211の間にある領域の周方向の両端部と、軸線Pとを夫々最短距離で結んだ二つの直線のなす角は、少なくとも100°以下である。本構造によれば、第二支持孔112を介して挿入された指又は検査道具が複数の第一凸部211の何れかと係合されるため、作業者は回転負荷部品の装着状態を容易に検査できる。
(5−15) 第一凸部211は、第二支持孔112に向かって周方向長さが漸減するように、軸線P方向に対して傾斜する面を有する。本構造によれば、第二支持孔112を介して挿入された指又は検査道具が第一凸部211に係合しやすいため、作業者は回転負荷部品の装着状態を容易に検査できる。
(6.リボン搬送経路に関する構造的特徴)
図10及び図17を参照して、本例のリボンカセット100の構造的特徴のうち、主にリボン搬送経路に関係する構造的特徴の一部を例示する。
(6−1)屈曲部131の前端部は、リボンスプール200の後端部よりも後側にある。屈曲部131の右端部は、リボンスプール200の右端部よりも右側にある。屈曲部131の右端部は、リボンスプール200に予め定められた上限量のインクリボン8が巻かれている状態で、第一リボンロール8Aの右端部よりも左側にある。換言すると、屈曲部131の右端部は、最大径の第一リボンロール8Aの右端部よりも左側にある。屈曲部131の周面のうちでリボン搬送経路が通る部分と、屈曲部132の周面のうちでリボン搬送経路が通る部分との二点に対する接線は、仮想線K1である。上下方向及び仮想線K1に対して直交し、且つ屈曲部131の周面のうちでリボン搬送経路が通る部分に対する接線は、仮想線K2である。仮想線K2は、リボンスプール200の外周(即ち、供給面200B)と最大径の第一リボンロール8Aの外周との間を通る。
本構造によれば、リボン搬送経路に含まれる経路L1,L2は、以下のように位置関係を有する。経路L1は、第一リボンロール8Aと屈曲部131の周面とを直線状に結ぶ経路部分である。経路L2は、屈曲部131,132の各周面を直線状に結ぶ経路部分であり、仮想線K2上にある。経路L1,L2のなす角のうちで屈曲部131の含む領域の角度を、角度α1という。第一リボンロール8Aからインクリボン8が引き出される位置を、引出位置βという。
図10及び図17に示すように、第一リボンロール8Aが最大径である場合、角度α1は鋭角である。このとき、複数の屈曲部131〜137のうちでリボン搬送経路の最上流側にある屈曲部131では、インクリボン8が鋭角状に屈曲して搬送されるため、搬送されるインクリボン8に相対的に大きな搬送負荷が付与される。これにより、例えばリボンスプール200の振動等によって、インクリボン8が第一リボンロール8Aから不適切に引き出されることを抑制できる。
第一リボンロール8Aからインクリボン8が引き出されるのに伴って、第一リボンロール8Aの直径は漸減する。これにより引出位置βが前側に移動するため、角度α1は漸増する。引出位置βが仮想線K1よりも前側に移動すると、角度α1は鈍角になる。第一リボンロール8Aが最小径である場合、引出位置βは最も前側まで移動し、且つ角度α1は最大となる(図17の仮想線を参照)。このように第一リボンロール8Aの外径が減少するほど(即ち、角度α1が増加するほど)、屈曲部131を経由するインクリボン8に付与される搬送負荷が減少する。
本例のリボンカセット100では、第一リボンロール8Aの外径が減少するほど、インクリボン8が引出位置βから引き出される際に発生する張力が増加する。リボンスプール200は、クラッチバネ280が拡径される際に発生する回転負荷によって回転トルクが付与される。引出位置βから引き出される際に発生する張力は、第一リボンロール8Aの外径が小さくなるほど大きくなる。張力が大きくなるのは、回転トルクは張力と回転半径の積で表されため、第一リボンロール8Aの外径の減少に反比例して増加するからである。
インクリボン8は、第一リボンロール8Aの外径が減少すると屈曲部131を経由するインクリボン8に付与される搬送負荷が減少するのに対して、引出位置βで発生する張力が減少する。従って、屈曲部132よりも下流位置におけるインクリボン8の張力は、第一リボンロール8Aの外径が変化しても安定する。
更に本例では、屈曲部131は、左右方向において、リボンスプール200の右端部と最大径の第一リボンロール8Aの右端部との間にある。これにより、本例の屈曲部131は、仮に屈曲部131を最大径の第一リボンロール8Aよりも右側に配置した場合と対比して、インクリボン8の搬送に伴う角度α1の角度変化量を増大できる。その理由は、仮に屈曲部131を最大径の第一リボンロール8Aよりも右側に配置した場合と対比して、本例の屈曲部131が引出位置βに対して近い位置に配置されるためである。また、本例の屈曲部131は、仮に屈曲部131を最大径の第一リボンロール8Aよりも右側に配置した場合と対比して、ケース101の左右方向サイズを抑制できる。
(6−2)屈曲部131の周面のうちでリボン搬送経路が通る部分と、最大径の第一リボンロール8Aの外周の一部との二点に対する接線は、仮想線K3である。仮想線K1,K3のなす角のうちで屈曲部131を含む領域の角度は、鋭角である。屈曲部131の周面のうちでリボン搬送経路が通る部分と、リボンスプール200の外周の一部との二点に対する接線は、仮想線K4である。仮想線K1,K4のなす角のうちで屈曲部131を含む領域の角度は鈍角である。
本構造によれば、第一リボンロール8Aが最大径であるときの経路L1は、仮想線K3上にある。仮想線K1,K3のなす角のうちで屈曲部131を含む領域の角度は、第一リボンロール8Aが最大径であるときの角度α1に相当する。第一リボンロール8Aが最小径であるときの経路L1は、仮想線K4上にある。仮想線K1,K4のなす角のうちで屈曲部131を含む領域の角度は、第一リボンロール8Aが最小径であるときの角度α1に相当する。従って、インクリボン8の搬送に伴って、角度α1を鋭角から鈍角まで大きく変化させることで、屈曲部131がインクリボン8に付与する搬送負荷を変化させることができる。
(6−3)屈曲部132の周面のうちでリボン搬送経路が通る部分と、屈曲部133の周面のうちでリボン搬送経路が通る部分との二点に対する接線は、仮想線K5である。仮想線K1,K5のなす角のうちで屈曲部132を含む領域の角度は、鋭角である。
本構造によれば、リボン搬送経路に含まれる経路L2,L3は、以下のように位置関係を有する。経路L3は、屈曲部132,133の各周面を直線状に結ぶ経路部分であり、仮想線K5上にある。経路L2,L3のなす角のうちで屈曲部132の含む領域の角度を、角度α2という。仮想線K1,K5のなす角のうちで屈曲部132を含む領域の角度は、角度α2に相当する。屈曲部132では、鋭角状に屈曲して搬送されるインクリボン8に相対的に大きな搬送負荷が付与される。インクリボン8が第一リボンロール8Aから不適切に引き出されることを更に抑制できる。
(6−4)屈曲部133の周面のうちでリボン搬送経路が通る部分と、屈曲部134の周面のうちでリボン搬送経路が通る部分との二点に対する接線は、仮想線K6である。仮想線K5,K6のなす角のうちで屈曲部133を含む領域の角度は、鋭角である。
本構造によれば、リボン搬送経路に含まれる経路L3,L4は、以下のように位置関係を有する。経路L4は、屈曲部133,134の各周面を直線状に結ぶ経路部分であり、仮想線K6上にある。経路L3,L4のなす角のうちで屈曲部133の含む領域の角度を、角度α3という。仮想線K5,K6のなす角のうちで屈曲部133を含む領域の角度は、角度α3に相当する。屈曲部133では、鋭角状に屈曲して搬送されるインクリボン8に相対的に大きな搬送負荷が付与される。インクリボン8が第一リボンロール8Aから不適切に引き出されることを更に抑制できる。
(6−5)屈曲部131,132は、ケース101に固定されている。屈曲部133は、軸線P方向に延びる軸線を中心に回転可能な回転体である。本構造によれば、リボン搬送経路の最上流側にある屈曲部131,132は、ケースに固定された柱状体であるため、インクリボン8に相対的に大きな搬送負荷を付与する。インクリボン8が第一リボンロール8Aから不適切に引き出されることを更に抑制できる。一方、屈曲部131,132よりもリボン搬送経路の下流側にある屈曲部133は、インクリボン8のインク面側が直接接触するため回転体である。インクリボン8のインク面と、屈曲部133との摺動負荷を相対的に小さな搬送負荷にすることができる。従って、第一リボンロール8Aから適正に引き出されたインクリボン8をより安定的に搬送できる。
(6−6)屈曲部131,132は、ケース101と一体に形成されている。本構造によれば、物理的強度が高い屈曲部131,132を容易に設けることができる。
(6−7)インクリボン8は、インクリボン8が有する両面のうち、インクが塗布されたインク面が内側となるように、リボンスプール200に巻かれている。屈曲部131,132は、インクリボン8のインク面とは反対面に接触する。屈曲部133は、インクリボン8のインク面に接触する。本構造によれば、屈曲部131,132は、搬送されるインクリボン8のインク面とは反対面に接触する。屈曲部133は、搬送されるインクリボン8のインク面に接触しながら回転する。従って、屈曲部131〜133がインクリボン8のインク面を傷つけることを抑制できる。
(7.ケース101に関する構造的特徴)
図8〜図10を参照して、本例のリボンカセット100の構造的特徴のうち、主にケース101に関係する構造的特徴の一部を例示する。
(7−1)リボンスプール200の回転軸線である軸線Pは、ケース101の左右方向の中心を通って前後方向に延びる中心線C1よりも右側にある。巻取スプール300の回転軸線である軸線Jは、中心線C1よりも左側にある。本構造によれば、重量物であるリボンスプール200及び巻取スプール300が、ケース101内で左右方向に並んで配置されるため、リボンカセット100の重量バランスを改善できる。
(7−2)ケース101は、位置決め穴121,122を有する。位置決め穴121は、ケース101の前後方向の中心を通って左右方向に延びる中心線C2よりも後側に設けられた開口である。位置決め穴122は、中心線C2よりも前側に設けられた開口である。本構造によれば、ユーザ及び作業者は、位置決め穴121,122の位置関係によって、ケース101の各方向を把握しやすい。
(7−3)位置決め穴121,122の何れか一つは、長穴である。位置決め穴121,122は、長穴の長手方向に並ぶ。本例では、位置決め穴122が長穴である。本構造によれば、ユーザ及び作業者は、例えば長穴である位置決め穴122を基準として、長穴でない位置決め穴121を目視で特定できる。例えば、位置決め穴121,122間の距離と支持ピン33,34間の距離とに若干の寸法誤差がある場合でも、支持ピン33,34を位置決め穴121,122に適切に挿入できるため、リボンカセット100の製造負担が軽減する。
(7−4)軸線Pは、位置決め穴121,122を結ぶ直線である連結線C3よりも右側にある。軸線Jは、連結線C3よりも左側にある。本構造によれば、重量物であるリボンスプール200及び巻取スプール300の各回転軸線が連結線C3を挟んで配置されるため、例えば位置決め穴121,122に挿入された支持ピン33,34は、リボンカセット100をバランスよく支持できる。
(7−5)位置決め穴121は、前後方向において屈曲部131と軸線Pとの間にある。本構造によれば、例えば位置決め穴121を屈曲部131よりも後側又は軸線Pよりも前側に配置した場合と対比して、ケース101の前後方向サイズを抑制できる。
(7−6)屈曲部131は、左右方向において位置決め穴121と軸線Pとの間にある。本構造によれば、例えば屈曲部131を位置決め穴121よりも右側又は軸線Pよりも左側に配置した場合と対比して、ケース101の左右方向サイズを抑制できる。
(7−7)屈曲部131は、前後方向においてヘッド周面106Dと軸線Pとの間にある。本構造によれば、例えば屈曲部131をヘッド周面106Dよりも後側又は軸線Pよりも前側に配置した場合と対比して、ケース101の前後方向サイズを抑制できる。
(7−8)ケース101は、少なくとも一つの貫通孔を有する。本例では、種類指標部190に含まれる孔部が、少なくとも一つの貫通孔である。少なくとも一つの貫通孔は、左右方向においてリボンスプール200と巻取スプール300との間にある。本構造によれば、例えば少なくとも一つの貫通孔をリボンスプール200よりも右側又は巻取スプール300よりも左側に配置した場合と対比して、ケース101の前後方向サイズを抑制できる。
(7−9)少なくとも一つの貫通孔は、軸線J,Pと交差する連結線C4よりも前側に設けられ、且つヘッド周面106Dと前後方向に並ぶ。本構造によれば、少なくとも一つの貫通孔は、連結線C4を挟んで前後方向に並ぶ。従って、ユーザ又は作業者は、軸線J,P及びヘッド周面106Dを基準として、少なくとも一つの貫通孔を目視で特定しやすい。
(7−10)軸線Pは軸線Jよりも前側にある。本構造によれば、ユーザ又は作業者は、リボンスプール200及び巻取スプール300の各回転軸線の前後方向位置によって、リボンスプール200及び巻取スプール300を目視で容易に特定できる。
(7−11)リボンカセット100は、弾性体180を備える。弾性体180は、リボンスプール200に巻かれた状態のインクリボン8である第一リボンロール8Aに対して、軸線P方向に弾性接触する。本構造によれば、弾性体180の弾性力によって生じる回転負荷によって、第一リボンロール8Aを安定的に回転させることができ、且つ第一リボンロール8Aから引き出されるインクリボン8に適度なテンションを付与できる。
(7−12)複数の弾性体180は、第一リボンロール8Aの互いに異なる周方向位置に弾性接触する。本構造によれば、第一リボンロール8Aの全体に適度な回転負荷を付与できる。
(7−13)複数の弾性体180は、互いに同一部材である。本構造によれば、複数の弾性体180を容易に製造できる。
(8.備考)
本発明は、上記実施形態に限定されず、以下に例示するように各種変形が可能である。なお、以下の説明では、上記実施形態と対応する構成要素に同一符号を付して説明を省略し、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
(8−1.リボンスプールに関する変形例の例示)
リボンスプールは、上記実施形態のリボンスプール200に限定されず、各種変形が可能である。図18(A)に示すリボンスプール251では、一つの第一凸部211が、下側内面241に設けられている。リボンスプール251の第一凸部211は、リボンスプール200の第一凸部211(図13参照)と同じ形状である。リボンスプール251では、第二凸部212及び第三凸部213が設けられていない。
本変形例に示すように、リボンスプールは、少なくとも一つの第一凸部211を備えればよい。リボンスプール200は、軸線P方向に非対称形状でもよい。リボンスプールは、第二凸部212及び第三凸部213を備えなくてもよい。この場合、例えば作業者は接着剤又はネジ等を用いて、回転部材290を上側内面242に装着すればよい。
図18(B)に示すリボンスプール252では、周方向に等間隔で並ぶ三つの第一凸部211が、下側内面241に設けられる。周方向に等間隔で並ぶ三つの第二凸部212が、上側内面242に設けられる。リボンスプール252の第一凸部211及び第二凸部212は、リボンスプール200の第一凸部211及び第二凸部212(図13参照)と夫々同じ形状である。リボンスプール252では、第三凸部213が設けられていない。三つの第一凸部211と、三つの第二凸部212とは、互いに異なる周方向位置にある。なお、図18(B)では、三つの第一凸部211のうちの一つが図示され、且つ、三つの第二凸部212のうちの二つが図示されている。
本変形例に示すように、第一凸部211及び第二凸部212は、軸線P方向に重ならなくてもよい。リボンスプールは、第三凸部213を備えなくてもよい。この場合、回転部材290が装着孔200Aに上方から挿入されると、各係止突起293は、第一凸部211の上端部によって下方から支持される。これにより、回転部材290は装着孔200A内で軸線P方向に位置決めされてもよい。
なお、リボンスプール252において、周方向に等間隔で並ぶ二つの第一凸部211が、下側内面241に設けられてもよい。周方向に等間隔で並ぶ二つの第二凸部212が、上側内面242に設けられてもよい。この場合、隣り合う二つの第一凸部211の間にある領域(即ち、第一溝部221)の周方向の両端部と、軸線Pとを夫々最短距離で結んだ二つの直線のなす角は、100°以上である。このように、複数の第一凸部211を備えたリボンスプールでは、隣り合う二つの第一凸部211の周方向の間隔は100°以下に限定されない。
図18(C)に示すリボンスプール253では、二つの第一凸部211が、下側内面241に設けられる。二つの第一凸部211は、軸線P方向から見て楕円形及び菱形の柱状である。各第一凸部211は、何れも装着孔200Aの下端近傍よりも上側にある。互いに異なる軸線P方向位置にある。一つの第二凸部212が、上側内面242に設けられる。一つの第二凸部212は、軸線P方向から見て円形の柱状であり、且つ装着孔200Aの上端近傍よりも下側にある。周方向に等間隔で並ぶ複数の第三凸部213が、下側内面241と上側内面242との間に設けられる。各第三凸部213は、軸線P方向から見て矩形、且つ周方向から見て三角形の柱状である。各第三凸部213は、中心面Rよりも上方にある。各第一凸部211、第二凸部212、及び各第三凸部213は、各々の突出幅が互いに異なる。
本変形例に示すように、複数の第一凸部211は互いに異なる形状でもよい。第一凸部211、第二凸部212、及び第三凸部213は、互いに異なる形状でもよい。第一凸部211からスプール中心点Qまでの距離と、第二凸部212からスプール中心点Qまでの距離とは互いに異なってもよい。第一凸部211及び第二凸部212は、互いの中心にある仮想点又は仮想面を中心として非対称でもよい。第一凸部211の半径方向の端部から軸線Pまでの最短距離と、第二凸部212の端部から軸線Pまでの最短距離とは互いに異なってもよい。第一凸部211は、下側内面241の下端近傍まで延びなくてもよい。第二凸部212は、上側内面242の上端近傍まで延びなくてもよい。
第三凸部213は、リボンスプールにおける軸線P方向の中心位置になくてもよい。第三凸部213の半径方向の端部は、リボンスプールにおける軸線P方向の中心位置を跨いで、軸線P方向に延びなくてもよい。第一凸部211は、軸線P方向に対して傾斜する面を有さなくてもよい。なお、回転部材290及びクラッチバネ280も、上記実施形態に限定されない。例えば、回転部材290は軸孔294(図12参照)を備えなくてもよい。この場合、回転部材290は支持軸141(図16参照)を挿入可能な凹部を備えてもよい。
(8−2.回転負荷部品に関する変形例の例示)
回転負荷部品は、上記実施形態のクラッチバネ280及び回転部材290に限定されず、各種変形が可能である。図19(A)〜(C)に示す例では、クラッチバネ280及び回転部材290を用いることなく、以下の構造によってリボンスプール200に回転負荷を付与する。なお、図19(A)〜(C)は、上ケース102、下ケース103、リボンスプール200、及び本変形例に係る回転負荷部品を、上下方向に部品展開して示す。
図19(A)に示すリボンカセット501では、支持部140(図16参照)に代えて、摩擦部材401が設けられている。摩擦部材401は、上ケース102の内面102Aから下方に延びる円柱状の弾性体であり、例えば伸縮性のあるフェルト材である。摩擦部材401の直径は、装着孔200Aの直径よりも若干大きい。リボンカセット501の内部において、突出部200Dは第二支持孔112によって回転支持される。摩擦部材401は装着孔200Aに上方から挿入される。摩擦部材401は、内面204の形状に合わせて弾性変形することで、内面204と密接する。
上記の構造により、リボンスプール200は、装着孔200Aに挿入された摩擦部材401を中心として回転支持される。リボンスプール200が回転された場合、内面204と摩擦部材401との間に摺動摩擦が生じる。この摺動摩擦によって、リボンスプール200に適度な回転負荷が付与される。作業者は、第二支持孔112を介して装着孔200Aを目視したり、第二支持孔112を介して第一凸部211を回転操作したりすることで、摩擦部材401の装着状態を検査できる。
図19(B)に示すリボンカセット502では、第二支持孔112が上孔112Aと下孔112Bとからなる。上孔112Aは、支持部140に代えて設けられた、上ケース102を上下方向に貫通する円孔である。下孔112Bは、上記実施形態の第二支持孔112に相当する。上孔112A及び下孔112Bは、互いに上下方向に並んで配置された同径の孔である。クラッチバネ402は、クラッチバネ280(図12参照)と同様の構造である。クラッチバネ402の円環部402Aは、その弾性力によって突出部200Cの外周面に装着される。
リボンカセット501の内部において、突出部200Dは下孔112Bに挿入されて回転支持される。突出部200Cは上孔112Aに挿入されて回転支持される。クラッチバネ402は、上孔112Aの周縁部と外筒201との間に配置される。クラッチバネ402の延設部402Bは、上孔112Aの周縁部に設けられた柱状の係合部113に係合される。
上記の構造により、リボンスプール200が引出し方向に回転する場合、円環部402Aが拡径されるため、リボンスプール200に相対的に小さい回転負荷が付与される。リボンスプール200が引出し方向とは反対方向に回転する場合、円環部402Aが縮径されるため、リボンスプール200に相対的に大きい回転負荷が付与される。作業者は、下孔112Bを介して第一凸部211を回転操作することで、又は上孔112Aを介して第二凸部212を回転操作することで、クラッチバネ402の装着状態を検査できる。
図19(C)に示すリボンカセット503は、上記のリボンカセット502と同様に、第二支持孔112が上孔112Aと下孔112Bとからなる。突出部200Cの外周側には、皿バネ403が配置される。皿バネ403は、平面視で円環状であり、且つ弾性を有する薄板である。皿バネ403は、正面視で下方に若干突出するように湾曲している。リボンカセット503の内部において、突出部200Dは下孔112Bに挿入されて回転支持される。突出部200Cは上孔112Aに挿入されて回転支持される。皿バネ403は、上孔112Aの周縁部と外筒201との間に配置される。皿バネ403は、上孔112Aの周縁部と外筒201とに弾性接触する。
上記の構造により、リボンスプール200が回転された場合、外筒201と皿バネ403との間に摺動摩擦が生じる。この摺動摩擦によって、リボンスプール200に適度な回転負荷が付与される。作業者は、下孔112Bを介して第一凸部211を回転操作することで、又は上孔112Aを介して第二凸部212を回転操作することで、皿バネ403の装着状態を検査できる。
上記実施形態で説明した各種の構造的特徴は、クラッチバネ280及び回転部材290を本変形例に係る回転負荷部品に置き換えても成立する。例えば(5−1)の記載内容は、以下のように置き換え可能である。
リボンカセット501〜503は、箱状のケース101(図7参照)を備える。インクリボン8は、ケース101の内部に収容される。円筒状のリボンスプール200は、ケース101内で回転自在に支持され、且つインクリボン8の一端側が巻かれる。円筒状の巻取スプール300は、ケース101内で回転自在に支持され、且つインクリボン8の他端側が巻かれる。弾性部材(摩擦部材401、クラッチバネ402、及び皿バネ403)は、ケース101及びリボンスプール200に接触している。より詳細には、弾性部材は、ケース101及びリボンスプール200のうちの少なくとも一方に弾性変形した状態で接触している。
リボンスプール200は、リボンスプール200の内面204に設けられた第一凸部211を有する。第一凸部211は、リボンスプール200の軸線Pと交差する半径方向に延びる凸部である。ケース101は、第二支持孔112を有する。第二支持孔112は、リボンスプール200が嵌まる孔である。より詳細には、第二支持孔112は、装着孔200Aと通じる孔である。第二支持孔112の少なくとも一部は、第一凸部211の半径方向の端部の回転軌跡によって囲まれた円形状の領域の全部と軸線P方向に重なる。
本構造によれば、回転負荷部品である弾性部材によって、リボンスプール200に回転負荷が付与される。リボンスプール200からインクリボン8が安定的に引き出され、且つ引き出されるインクリボン8に適度なテンションが付与される。更に、装着孔200Aは第二支持孔112を介してケース101の外部に露出する。作業者は、リボンスプール200に回転負荷部品が正しく装着されているかを、リボンカセット501〜503単体で容易に検査できる。例えば検出用回転軸71が第二支持孔112を介して装着孔200Aに挿入された場合、検出用回転軸71は第一凸部211と係合される。印刷装置1は、検出用回転軸71の回転量によって、印刷動作時におけるインクリボン8の使用量を特定できる。
なお、摩擦部材401は、リボンスプール200及びケース101の一方に固定され、且つリボンスプール200及びケース101の他方に摺動可能に接触している弾性部材を例示する。クラッチバネ402は、リボンスプール200及びケース101の一方に固定され、且つリボンスプール200及びケース101の他方に弾性変形した状態で接触している弾性部材を例示する。皿バネ403は、リボンスプール200及びケース101の両方に弾性変形した状態で接触している弾性部材を例示する。
(8−3.弾性体に関する変形例の例示)
第一リボンロール8Aに弾性接触する弾性体は、上記実施形態の二つの弾性体180に限定されず、各種変形が可能である。例えば、第一リボンロール8Aに弾性接触する弾性体を、上ケース102に代えて、下ケース103に設けてもよい。第一リボンロール8Aに弾性接触する弾性体を、上ケース102及び下ケース103の両方に設けてもよい。この場合、上ケース102に設けた弾性体と、下ケース103に設けた弾性体とは、互いに上下方向に対称及び非対称の何れでもよい。
図20(A)に示すように、二つの弾性体180に代えて、三つの弾性体181を設けてもよい。三つの弾性体181は、何れも弾性体180と同様の板状スポンジであるが、以下の点で弾性体180とは異なる。三つの弾性体181は、支持部140の左前側、右前側、及び右後側に配置される。三つの弾性体181は、互いに形状が異なる。支持部140の左前側にある弾性体181は、三つの弾性体181のうちで、最も周方向長さが小さい扇状である。支持部140の右後側にある弾性体181は、三つの弾性体181のうちで、最も周方向長さが大きい扇状である。
図20(B)に示すように、二つの弾性体180に代えて、一つの弾性体182を設けてもよい。本例では、窓部160が設けられていない。弾性体182は、弾性体180と同様の板状スポンジであるが、以下の点で弾性体180とは異なる。弾性体182は、底面視で支持部140を中心として、支持部140の左前側から左後側まで時計回り方向に延びる扇状である。
(8−4.その他)
上記実施形態及び変形例において、リボンカセット100は本発明の「リボンカセット」の一例である。リボンスプール200の軸線P方向は、本発明の「第一方向」の一例である。リボンスプール200の半径方向は、本発明の「第二方向」の一例である。リボンスプール200の軸線P方向は、本発明の「第一方向」の一例である。リボンスプール200の半径方向は、本発明の「第二方向」の一例である。ケース101の前後方向は、本発明の「第三方向」の一例である。ケース101の左右方向は、本発明の「第四方向」の一例である。ケース101の前方向、後方向、左方向、及び右方向は、夫々、本発明の「第五方向」、「第六方向」、「第七方向」、及び「第八方向」の一例である。
ケース101は、本発明の「ケース」の一例である。インクリボン8は、本発明の「インクリボン」の一例である。リボンスプール200は、本発明の「第一スプール」の一例である。巻取スプール300は、本発明の「第二スプール」の一例である。回転部材290は、本発明の「回転部材」の一例である。クラッチバネ280は、本発明の「クラッチバネ」の一例である。係合部142は、本発明の「係合部」の一例である。下側内面241は、本発明の「第一内面」の一例である。上側内面242は、本発明の「第二内面」の一例である。第一凸部211は、本発明の「特定凸部」の一例である。第二支持孔112は、本発明の「ケース孔」の一例である。
第二凸部212は、本発明の「係合凸部」の一例である。第三凸部213は、本発明の「接触凸部」の一例である。軸孔294は、本発明の「部材孔」の一例である。ヘッド周面106Dは、本発明の「凹部」の一例である。ヘッド挿入部109は、本発明の「開口部」の一例である。リボン出口107Aは、本発明の「連通口」の一例である。屈曲部131〜137は、本発明の「複数の屈曲部」の一例である。屈曲部131〜134は、夫々、本発明の「第一屈曲部」、「第二屈曲部」、「第三屈曲部」、及び「第四屈曲部」の一例である。仮想線K1〜K6は、夫々、本発明の「第一仮想線」、「第二仮想線」、「第三仮想線」、「第四仮想線」、「第五仮想線」、及び「第六仮想線」の一例である。
中心線C1,C2は、夫々、本発明の「第一中心線」及び「第二中心線」の一例である。位置決め穴121,122は、夫々、本発明の「第一開口部」及び「第二開口部」の一例である。連結線C3は、本発明の「第一開口部及び第二開口部を結ぶ直線」の一例である。指標部191〜193、195は、本発明の「少なくとも一つの貫通孔」の一例である。連結線C4は、本発明の「第一スプールの回転軸線及び第二スプールの回転軸線と交差する直線」の一例である。指標部191〜193は、本発明の「第一孔」の一例である。指標部195は、本発明の「第二孔」の一例である。弾性体180〜182は、本発明の「弾性体」の一例である。