<脈波測定の原理>
図1は、手首での脈波測定の原理を説明するための模式図であり、図2は、生体内における光の減衰量(吸光度)が時間的に変化する様子を示す波形図である。
容積脈波法による脈波測定では、例えば、図1に示したように、測定窓に押し当てられた生体の一部(図1では手首)に向けて発光部(LED[Light Emitting Diode]など)から光が照射され、体内を透過して体外に出てくる光の強度が受光部(フォトダイオードやフォトトランジスタなど)で検出される。ここで、図2に示したように、生体組織や静脈血(脱酸素化ヘモグロビンHb)による光の減衰量(吸光度)は一定であるが、動脈血(酸素化ヘモグロビンHbO2)による光の減衰量(吸光度)は拍動によって時間的に変動する。従って、可視領域から近赤外領域にある「生体の窓」(光が生体を透過しやすい波長領域)を利用して、末梢動脈の吸光度変化を測定することにより、非侵襲で容積脈波を測定することができる。
なお、図1では、図示の便宜上、脈波センサ(発光部と受光部)を手首の背側(外側)に装着した様子が描写されているが、脈波センサの装着位置についてはこれに限定されるものではなく、手首の腹側(内側)であってもよいし、他の部位(指先、指の第3関節、額、眉間、鼻先、頬、眼下、こめかみ、耳たぶなど)であってもよい。
<脈波から分かること>
なお、心臓及び自立神経の支配を受けている脈波は、常に一定の挙動を示すものではなく、被験者の状態によって様々な変化(揺らぎ)を生じるものである。従って、脈波の変化(揺らぎ)を解析することにより、被験者の様々な身体情報を得ることができる。例えば、心拍数からは、被験者の運動能力や緊張度などを知ることができ、心拍変動からは、被験者の疲労度、快眠度、及び、ストレスの大きさなどを知ることができる。また、脈波を時間軸で2回微分することにより得られる加速度脈波からは、被験者の血管年齢や動脈硬化度などを知ることができる。
<脈波センサ(第1実施形態)>
図3は、脈波センサの第1実施形態を示すブロック図である。第1実施形態の脈波センサ1は、本体ユニット10と、本体ユニット10の両端部に取り付けられて生体2(具体的には手首)に巻き回されるベルト20とを備えた腕輪構造(腕時計型構造)とされている。ベルト20の素材としては、皮革、金属、樹脂などを用いることができる。
本体ユニット10は、光センサ部11と、フィルタ部12と、制御部13と、表示部14と、通信部15と、電源部16と、を含む。
光センサ部11は、本体ユニット10の裏面(生体2と対向する側の面)に設けられており、発光部から生体2に光を照射して、生体内を透過した光の強度を受光部で検出することにより、脈波データを取得する。第1実施形態の脈波センサ1において、光センサ部11は、発光部と受光部が生体2を挟んで互いに反対側に設けられた構成(いわゆる透過型、図1の破線矢印を参照)ではなく、発光部と受光部が生体2に対していずれも同じ側に設けられた構成(いわゆる反射型、図1の実線矢印を参照)とされている。なお、本願の発明者らは、手首での脈波測定について、十分に脈波の測定が可能であることを実際に実験で確認済みである。光センサ部11の具体的な構造については、後ほど詳細に説明する。
フィルタ部12は、光センサ部11の出力信号(受光部の検出信号)にフィルタ処理、及び、増幅処理を施して制御部13に伝達する。なお、フィルタ部12の具体的な回路構成については、後ほど詳細に説明する。
制御部13は、脈波センサ1全体の動作を統括的に制御するほか、フィルタ部12の出力信号に各種の信号処理を施すことにより、脈波に関する種々の情報(脈波の揺らぎ、心拍数、心拍変動、及び、加速度脈波など)を取得する。なお、制御部13としては、CPU[central processing unit]などを好適に用いることができる。
表示部14は、本体ユニット10の表面(生体2と対向しない側の面)に設けられており、表示情報(日付や時間に関する情報のほか、脈波の測定結果なども含まれる)を出力する。すなわち、表示部14は、腕時計の文字盤面に相当する。なお、表示部14としては、液晶表示パネルなどを好適に用いることができる。
通信部15は、脈波センサ1の測定データを外部機器(パーソナルコンピュータや携帯電話機など)に無線または有線で送信する。特に、脈波センサ1の測定データを外部機器に無線で送信する構成であれば、脈波センサ1と外部機器とを有線で接続する必要がなくなるので、例えば、被験者の行動を制約せずに測定データのリアルタイム送信を行うことが可能となる。また、脈波センサ1を防水構造とする際には、外部端子を完全に排除するという観点から、測定データの外部送信方式として無線送信方式を採用することが望ましい。なお、無線送信方式を採用する場合、通信部15としては、Bluetooth(登録商標)無線通信モジュールICなどを好適に用いることができる。
電源部16は、バッテリとDC/DCコンバータを含み、バッテリからの入力電圧を所望の出力電圧に変換して脈波センサ1の各部に供給する。このように、バッテリ駆動方式の脈波センサ1であれば、脈波の測定時に外部からの給電ケーブルを接続する必要がないので、被験者の行動を制約せずに脈波の測定を行うことが可能となる。なお、上記のバッテリとしては、繰り返して充電を行うことが可能な二次電池(リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなど)を用いることが望ましい。このように、バッテリとして二次電池を用いる構成であれば、煩わしい電池交換作業が不要となるので、脈波センサ1の利便性を高めることができる。また、バッテリ充電時における外部からの電力供給方式としては、USB[universal serial bus]ケーブルなどを用いる接触給電方式であってもよいし、或いは、電磁誘導方式、電界結合方式、及び、磁界共鳴方式などの非接触給電方式であってもよい。ただし、脈波センサ1を防水構造とする際には、外部端子を完全に排除するという観点から、外部からの電力供給方式として非接触給電方式を採用することが望ましい。
上記のように、腕輪構造を有する脈波センサ1であれば、被験者が意図的に脈波センサ1を手首から外さない限り、脈波の測定中に脈波センサ1が手首から脱落してしまうおそれは殆どないので、被験者の行動を制約せずに脈波の測定を行うことが可能となる。
また、腕輪構造を有する脈波センサ1であれば、被験者に対して脈波センサ1を装着していることをあまり意識させずに済むので、長期間(数日〜数ヶ月)に亘る継続的な脈波測定を行う場合であっても、被験者に過度のストレスを与えずに済む。
特に、脈波の測定結果だけでなく、日時情報なども表示することのできる表示部14を備えた脈波センサ1(すなわち、腕時計構造の脈波センサ1)であれば、被験者は脈波センサ1を腕時計として日常的に装着することができるので、脈波センサ1の装着に対する抵抗感をさらに払拭することが可能となり、延いては、新規ユーザ層の開拓に寄与することが可能となる。
また、脈波センサ1は、防水構造としておくことが望ましい。このような構成とすることにより、水(雨)や汗などに濡れても故障せずに脈波を測定することが可能となる。また、脈波センサ1を多人数で共用する場合(例えばスポーツジムでの貸し出し用として使用する場合)には、脈波センサ1を丸ごと水洗いすることにより、脈波センサ1を清潔に保つことが可能となる。
<光センサ部(構造)>
図4は、光センサ部11の第1構成例を模式的に示す断面図である。第1構成例の光センサ部11は、ケース11aと、遮光壁11bと、透光板11zと、発光部xと、受光部yと、を有する。
ケース11aは、発光部xと受光部yを収納する枡形状の部材である。なお、ケース11aは、その開口面を塞ぐ透光板11zが本体ユニット10の表面(生体2と対向する側の面)と面一になるように、本体ユニット10に埋設されている。
遮光壁11bは、ケース11aを発光部xが載置される第1領域と受光部yが載置される第2領域に分割する部材である。遮光壁11bを設けることにより、発光部xから受光部yへ直接的に入射される光を遮ることができるので、脈波データの検出精度を高めることが可能となる。なお、ケース11aと遮光壁11bは、一体成形することが望ましい。
透光板11zは、ケース11aの開口面を塞ぐ透光性の部材である。透光板11zを設けることにより、発光部x及び受光部yの汚損(埃などの付着)を防止することができるので、発光部x及び受光部yとして、樹脂などで封止されていないベアチップ(発光チップ及び受光チップ)を用いることが可能となる。
第1構成例の光センサ部11であれば、発光部xから生体2に光を照射した後、生体2内を透過した光の強度を受光部yで検出することによって、被験者の脈波データを取得することが可能である。
しかしながら、第1構成例の光センサ部11では、生体2と発光部x及び受光部yとの間に透光板11zが存在するので、生体2を介することなく透光板11zを介して発光部xから受光部yへ直接的に光が入射されるおそれがある。また、第1構成例の光センサ部11では、光センサ部11と生体2との密着性が損なわれたときに、外光が受光部yに漏れ入るおそれもある。生体2を透過していない光が受光部yに入射されると、脈波データの検出精度(S/N)が低下するので、脈波データの検出精度を向上させるためには、上記の問題を解消しておくことが重要となる。
図5は、光センサ部11の第2構成例を模式的に示す断面図である。第2構成例の光センサ部11は、ケース11aと、遮光壁11bと、発光部Xと、受光部Yと、を有する。すなわち、第2構成例の光センサ部11では、先述の透光板11zが除外されている。
ケース11aは、発光部Xと受光部Yを収納する枡形状の部材である。ケース11aの外形寸法(高さH0、幅W0、奥行D0)は、例えば、H0=1.5mm、W0=4.5mm、D0=3.0mmに設計されている。なお、ケース11aは、本体ユニット10から所定寸法H4(例えばH4=0.3mm)だけ突出する形で本体ユニット10に埋設されている。このような構成であれば、ケース11aの突出部分によって受光部Yに漏れ入る外光を遮ることができるので、脈波データの検出精度を向上することが可能となる。
遮光壁11bは、ケース11aを発光部Xが載置される第1領域と受光部Yが載置される第2領域に分割する部材である。先述の第1実施形態と同じく、遮光壁11bを設けることにより、発光部Xから受光部Yへ直接的に入射される光を遮ることができるので、脈波データの検出精度を高めることが可能となる。なお、ケース11aと遮光壁11bは、一体成形することが望ましい。
発光部Xは、基板X1と、発光チップX2と、封止体X3と、ワイヤX4と、導電体X5と、を有する。基板X1は、その表面上に発光チップX2が載置される部材である。発光チップX2は、所定波長の光を出力する発光素子(例えば、緑色LEDのベアチップ)である。封止体X3は、発光チップX2を封止する透光性の部材である。ワイヤX4は、発光チップX2と導電体X5とを電気的に接続する部材である。導電体X5は、基板X1の上面から下面にわたって形成された導電性の部材であり、ケース11aの底面に形成された配線パターンと半田付けされる。
受光部Yは、基板Y1と、受光チップY2と、封止体Y3と、ワイヤY4と、導電体Y5と、を有する。基板Y1は、その表面上に受光チップY2が載置される部材である。受光チップY2は、所定の波長領域に属する光を電気信号に変換する光電変換素子(例えば近赤外領域〜可視領域の光感受性を持つフォトトランジスタのベアチップ)である。封止体Y3は、受光チップY2を封止する透光性の部材である。ワイヤY4は、受光チップY2と導電体Y5とを電気的に接続する部材である。導電体Y5は、基板Y1の上面から下面にわたって形成された導電性の部材であり、ケース11aの底面に形成された配線パターンと半田付けされる。
このように、第2構成例の光センサ部11では、発光部X及び受光部Yとして、ベアチップではなくパッケージ型の半導体装置が用いられている。従って、ケース11aの開口面を透光板で被覆する必要がなくなるので、透光板を介して発光部Xから受光部Yへ直接的に光が入射される懸念を払拭することが可能となり、延いては、脈波データの検出精度を高めることが可能となる。
また、第2構成例の光センサ部11において、遮光壁11bの高さH1と発光部Xの高さH2との間には、H1>H2という関係が成立している。なお、遮光壁11bの高さH1は、ケース11aの底面から遮光壁11bの上端部までの距離(例えば、H1=1.4mm)を指している。また、発光部Xの高さH2は、ケース11aの底面から発光チップX2の発光面までの距離(例えば、H2=0.5mm)を指している。ただし、発光チップX2が基板X1に比べて非常に薄いことを鑑みると、基板X1の厚みを発光部Xの高さH2として取り扱うこともできる。
上記の関係式を満たした寸法設計を行えば、発光部Xから受光部Yへ直接的に入射される光を遮光壁11bで効果的に遮ることができるので、脈波データの検出精度を高めることが可能となる。
ただし、遮光壁11bの高さH1に比べて、発光部Xの高さH2を小さく設計し過ぎると、発光部Xから出射された光が生体2に到達するまでに散乱ないし減衰してしまい、受光部Yで検出される光の強度が小さくなって脈波データの検出精度が低下する。従って、遮光壁11bの高さH1から発光部Xの高さH2を差し引いたオフセット距離ΔH(=H1−H2)には、最適な設計範囲が存在する。
図6は、オフセット距離ΔHと信号強度(受光信号のピークトゥピーク値)との相関関係を示す波形図であり、上から順に、ΔH=0.6mm、0.7mm、0.9mm、1.1mm、及び、2.1mmであるときの受光波形が描写されている。図6から、オフセット距離ΔHが0.9mmであるときに信号強度が最大となることが分かる。この実験結果を鑑みると、オフセット距離ΔHは、0mm<ΔH<2mm(より好ましくは、0.6mm≦ΔH≦1.4mm)の設計範囲に収めることが望ましいと言える。
例えば、厚み0.6mmの封止体X3を備えた発光部Xを用いて、オフセット距離ΔHを0.9mmに設計する場合には、封止体X3の上面が遮光壁11bの上端部から0.3mmだけ奥まった高さ位置となるように、基板X1の厚みを設計すればよい。
また、第2構成例の光センサ部11において、発光部Xの高さH2と受光部Yの高さH3との間には、H2>H3という関係が成立している。なお、受光部Yの高さH3は、ケース11aの底面から受光チップY2の受光面までの距離(例えば、H3=0.3mm)を指している。ただし、受光チップY2が基板Y1に比べて非常に薄いことを鑑みると、基板Y1の厚みを受光部Yの高さH3として取り扱うこともできる。
上記の関係式を満たした寸法設計を行えば、外光が受光部Yに届き難くなるので、脈波データの検出精度を向上することが可能となる。
次に、図7を参照しながら、発光部Xと受光部Yとの素子間距離W1に応じて信号強度がどのように変化するかを考察する。図7は、素子間距離W1と信号強度との相関関係を示す波形図であり、上から順に、W1=0.1mm、0.5mm、1.0mm、3.0mm、及び、5.0mmであるときの受光波形が描写されている。図7から、素子間距離W1が0.5mmであるときに信号強度が最大となることが分かる。この実験結果を鑑みると、素子間距離W1は、0.1mm≦W1≦3.0mm(より好ましくは、0.2mm≦W2≦0.8mm)の設計範囲に収めることが望ましいと言える。
次に、図8A〜図8Dを参照しながら、光センサ部11の変形例について説明する。図8A〜図8Dは、それぞれ、光センサ部11の第3構成例〜第6構成例を模式的に示す断面図である。なお、第3構成例〜第6構成例は、先出の第2構成例とほぼ同様の構成であり、脈波データの検出精度をさらに向上するために種々の構成要素が追加されている。
例えば、第3構成例(図8A)の光センサ部11は、発光部Xの上部に集光レンズ11cを有する。集光レンズ11cを設けることにより、発光部Xから出射される光を生体2に集めて照射することができるので、受光部Yで検出される光の強度を高めて脈波データの検出精度を向上することが可能となる。
また、第4構成例(図8B)の光センサ部11において、発光部Xが載置される第1領域は、発光部Xの発光領域よりも小さい開口部d1を備えた蓋部材11dによって被覆されている。例えば、発光部Xの発光領域が0.7mm四方の矩形領域である場合、開口部d1は、直径0.5mmの円形状や0.5mm四方の矩形状に形成すればよい。蓋部材11dを設けることにより、発光部Xから出射される光の拡散を防止して、発光部Xから受光部Yへ直接的に入射される光を遮ることができるので、脈波データの検出精度を高めることが可能となる。
また、第5構成例(図8C)の光センサ部11において、受光部Yが載置される第2領域は、受光部Yの受光領域よりも大きい開口部d2を備えた蓋部材11eによって被覆されている。例えば、受光部Yの発光領域が0.7mm四方の矩形領域である場合、開口部d2は、直径1.0mmの円形状や1.0mm四方の矩形状に形成すればよい。蓋部材11eを設けることにより、受光部Yに漏れ入る外光を遮ることができるので、脈波データの検出精度を高めることが可能となる。
また、第6構成例(図8D)の光センサ部11において、発光部X及び受光部Yの少なくとも一方は、所定の波長成分のみ(発光部Xの出力ピーク波長近傍)を選択的に通過させるカラーフィルタX6及びY6を有する。カラーフィルタX6及びY6を設けることにより、不要な波長成分を除去することができるので、脈波データの検出精度を高めることが可能となる。
次に、図9を参照しながら光センサ部11のさらなる変形例について説明する。図9は光センサ部11の第7構成例を模式的に示す断面図である。なお、第7構成例は、先出の第2構成例とほぼ同様の構成であり、脈波データの検出精度をさらに向上するための工夫が凝らされている。
第7構成例の光センサ部11は、本体ユニット10とケース11aとの間に緩衝部材11fを有する。緩衝部材11fとしては、ゴムや合成スポンジなどを好適に用いることができる。このような構成とすることにより、光センサ部11と生体2との密着性を高めることができるので、脈波の測定を安定して行うことが可能となる。
なお、上記した第3構成例(図8A)〜第6構成例(図8D)、及び、第7構成例(図9)で各々追加された構成要素については、各々を単独で適用してもよいし、任意に組み合わせて適用してもよい。
<光センサ部(配置)>
図10は腕時計型の脈波センサ1における光センサ部11の配置レイアウト図である。腕時計型の脈波センサ1において、光センサ部11を担持する本体ユニット10(例えば直径28mm)は、その両端にベルト20が接続されるものであり、生体2(手首)への装着時には、ベルト20の締め付けによって生体2側への押圧力(図10中の太い矢印を参照)が与えられる部材である。
このような腕時計構造の脈波センサ1について、本願の発明者らは、本体ユニット10に与えられる生体2側への押圧力が所定の分布を有しており、光センサ部11の配設位置に応じて、光センサ部11と生体2との密着性(延いては受光信号の信号強度)が異なるという知見を得た。
そして、本願の発明者らは、鋭意研究の末、生体2側への押圧力が最大となる着力点の近傍、より具体的には、本体ユニット10とベルト20との接続点から光センサ部11の配設位置(光センサ部11の中心位置)までの距離をDとしたときに、D≦10mmという関係が成立する領域内(図10のハッチング領域内)に光センサ部11を配置すれば、受光信号の信号強度を向上し得ることを見出した。
図11は、光センサ部11の配置と信号強度との相関関係を示す波形図であり、上段には、本体ユニット10の端部(図10のハッチング領域内)に配置された光センサ部11の受光波形が示されており、下段には、本体ユニット10の中央部(図10のハッチング領域外)に配置された光センサ部11’の受光波形が示されている。両波形を比較すれば分かるように、本体ユニット10の端部に配置された光センサ部11は、生体2との密着性が向上した結果、被験者の安静時における脈波はもちろん、被験者の運動時における脈波についても、これを精度良く測定することが可能である。
なお、上記で得られた知見は、腕時計型の脈波センサ1のみならず、図12で示すように、イヤリング型の脈波センサ1にも適用が可能である。
図12は、イヤリング型の脈波センサ1における光センサ部11の配置レイアウト図である。イヤリング型の脈波センサ1において、光センサ部11を担持する本体ユニット10(例えば第1端から第2端までの全長が24mm)は、第1端にバネ蝶番30が接続されて第2端が開放端とされるものであり、生体2(耳朶)への装着時には、バネ蝶番30によって生体2側への押圧力(図12中の太い矢印を参照)が与えられる部材である。
この場合、生体2側への押圧力が最大となる着力点は、本体ユニット10の第2端(開放端)となる。従って、本体ユニット10の第2端(開放端)から光センサ部11の配設位置(光センサ部11の中心位置)までの距離をDとしたときに、D≦10mmという関係が成立する領域内に光センサ部11を配置すれば、光センサ部11と生体2との密着性を高めて、受光信号の信号強度を向上することができる。
なお、図10及び図12では、本体ユニット10の表面上に光センサ部11を一つだけ設けた構成を例に挙げたが、光センサ部11の設置数についてはこれに限定されるものではなく、生体2側への押圧力が最大となる着力点の近傍領域内に、光センサ部11を複数設けても構わない。
<フィルタ部>
図13は、フィルタ部12の第1構成例を示す回路図である。第1構成例のフィルタ部12は、電流/電圧変換回路100と、1次CRハイパスフィルタ回路110(以下、HPF[high pass filter]回路110と呼ぶ)と、増幅回路120と、1次CRローパスフィルタ回路130(以下、LPF[low pass filter]回路130と呼ぶ)と、増幅回路140と、を有する。
電流/電圧変換回路100は、光センサ部11から出力される電流信号を電圧信号に変換する回路であり、抵抗R1(例えば200kΩ)を含む。光センサ部11を形成する発光ダイオード11Aのアノードは、電源電圧VDDの印加端に接続されている。発光ダイオード11Aのカソードは、接地端に接続されている。光センサ部11を形成するフォトトランジスタ11Bのコレクタは、抵抗R1を介して電源電圧VDDの印加端に接続されている。フォトトランジスタ11Bのエミッタは、接地端に接続されている。
HPF回路110は、電流/電圧変換回路100の出力信号に重畳した低周波成分を除去する回路であり、キャパシタC1(例えば0.1μF)と、抵抗R2(例えば4.7MΩ)とを含む。キャパシタC1の第1端は、フォトトランジスタ11Bのコレクタに接続されている。キャパシタC1の第2端は、抵抗R2を介して接地端に接続されている。なお、上記構成から成るHPF回路110のカットオフ周波数は、0.34Hzに設計されている。
増幅回路120は、HPF回路110の出力信号を増幅する回路であり、オペアンプOP1と、抵抗R3(例えば100kΩ)と、抵抗R4(例えば10kΩ)と、キャパシタC2(例えば0.01μF)と、キャパシタC3(例えば0.1μF)と、を含む。オペアンプOP1の非反転入力端(+)は、キャパシタC1の第2端に接続されている。オペアンプOP1の反転入力端(−)は、抵抗R3を介してオペアンプOP1の出力端に接続される一方、抵抗R4を介して接地端にも接続されている。オペアンプOP1の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP1の第2電源端は、接地端に接続されている。キャパシタC2は、抵抗R3と並列に接続されている。キャパシタC3は、オペアンプOP1の第1電源端と接地端との間に接続されている。
LPF回路130は、増幅回路120の出力信号に重畳した高周波成分を除去する回路であり、抵抗R5(例えば100kΩ)と、キャパシタC4(例えば1.0μF)と、を含む。抵抗R5の第1端は、オペアンプOP1の出力端に接続されている。抵抗R5の第2端は、キャパシタC4を介して接地端に接続されている。なお、上記構成から成るLPF回路130のカットオフ周波数は、1.6Hzに設定されている。
増幅回路140は、LPF回路130の出力信号を増幅する回路であり、オペアンプOP2と、可変抵抗R6(例えば500kΩ)と、抵抗R7(例えば10kΩ)と、キャパシタC5(例えば0.01μF)と、キャパシタC6(例えば0.1μF)と、を含む。オペアンプOP2の非反転入力端(+)は、抵抗R5の第2端に接続されている。オペアンプOP2の反転入力端(−)は、可変抵抗R6を介してオペアンプOP2の出力端に接続される一方、抵抗R7を介して接地端にも接続されている。オペアンプOP2の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP2の第2電源端は、接地端に接続されている。キャパシタC5は、可変抵抗R6と並列に接続されている。キャパシタC6は、オペアンプOP2の第1電源端と接地端との間に接続されている。
第1構成例のフィルタ部12であれば、簡易な回路構成により、光センサ部11の出力信号に重畳するノイズ成分を除去して、脈波データの検出精度を高めることができる。
ただし、第1構成例のフィルタ部12では、被験者の体動ノイズ(運動によって生じる6.0Hz程度のノイズ成分)を十分に除去し切れない場合があり、被験者の運動時における脈波を高精度に検出するためには、さらなる改善の余地を残していた(図15の下段を参照)。
図14は、フィルタ部12の第2構成例を示す回路図である。第2構成例のフィルタ部12は、電流/電圧変換回路200と、1次CRハイパスフィルタ回路210(以下、HPF回路210と呼ぶ)と、ボルテージフォロワ回路220と、2次CRローパスフィルタ回路230(以下、LPF回路230と呼ぶ)と、増幅回路240と、6次バンドパスフィルタ回路250(以下、BPF[band pass filter]回路250と呼ぶ)と、増幅回路260と、中間電圧生成回路270と、を有する。
電流/電圧変換回路200は、光センサ部11から出力される電流信号を電圧信号に変換する回路であり、抵抗R8(例えば200kΩ)と、抵抗R9(例えば430Ω)とを含む。光センサ部11を形成する発光ダイオード11Aのアノードは、電源電圧VDDの印加端に接続されている。発光ダイオード11Aのカソードは、抵抗R9を介して接地端に接続されている。光センサ部11を形成するフォトトランジスタ11Bのコレクタは、抵抗R8を介して電源電圧VDDの印加端に接続されている。フォトトランジスタ11Bのエミッタは、接地端に接続されている。
HPF回路210は、電流/電圧変換回路200の出力信号に重畳した低周波成分を除去する回路であり、キャパシタC7(例えば1.0μF)と、抵抗R10(例えば240kΩ)とを含む。キャパシタC7の第1端は、フォトトランジスタ11Bのコレクタに接続されている。キャパシタC7の第2端は、抵抗R10を介して中間電圧VMの印加端に接続されている。なお、上記構成から成るHPF回路210のカットオフ周波数は、0.66Hzに設計されている。
ボルテージフォロワ回路220は、HPF回路110の出力信号を後段に伝達する回路であり、オペアンプOP3と、キャパシタC8(例えば0.1μF)と、を含む。オペアンプOP3の非反転入力端(+)は、キャパシタC7の第2端に接続されている。オペアンプOP3の反転入力端(−)は、オペアンプOP3の出力端に接続されている。オペアンプOP3の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP3の第2電源端は、接地端に接続されている。キャパシタC8は、オペアンプOP3の第1電源端と接地端との間に接続されている。
LPF回路230は、ボルテージフォロワ回路220の出力信号に重畳した高周波成分を除去する回路であり、抵抗R11(例えば620kΩ)と、抵抗R12(例えば620kΩ)と、キャパシタC9(例えば1.0μF)と、キャパシタC10(例えば1.0μF)と、を含む。抵抗R11の第1端は、オペアンプOP3の出力端に接続されている。抵抗R11の第2端は、抵抗R12の第1端に接続される一方、キャパシタC9を介して中間電圧VMの印加端に接続されている。抵抗R12の第2端は、キャパシタC10を介して中間電圧VMの印加端に接続されている。なお、上記構成から成るLPF回路230のカットオフ周波数は、0.26Hzに設定されている。
増幅回路240は、LPF回路230の出力信号を増幅する回路であり、オペアンプOP4と、抵抗R13(例えば10kΩ)と、抵抗R14(例えば1kΩ)と、キャパシタC11(例えば0.1μF)と、を含む。オペアンプOP4の非反転入力端(+)は、抵抗R12の第2端に接続されている。オペアンプOP4の反転入力端(−)は、抵抗R13を介してオペアンプOP4の出力端に接続される一方、抵抗R14を介して中間電圧VMの印加端にも接続されている。オペアンプOP4の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP4の第2電源端は、接地端に接続されている。キャパシタC11は、オペアンプOP4の第1電源端と接地端との間に接続されている。
BPF回路250は、増幅回路240の出力信号に重畳した低周波成分と高周波成分を共に除去するための回路であり、オペアンプOP5〜OP7と、抵抗R15(例えば75kΩ)と、抵抗R16(例えば2MΩ)と、抵抗R17(例えば150kΩ)と、抵抗R18(例えば130kΩ)と、抵抗R19(例えば91kΩ)と、抵抗R20(例えば620kΩ)と、抵抗R21(例えば43kΩ)と、抵抗R22(例えば30kΩ)と、抵抗R23(例えば200kΩ)と、キャパシタC12(例えば1μF)と、キャパシタC13(例えば1μF)と、キャパシタC14(例えば0.1μF)と、キャパシタC15(例えば1μF)と、キャパシタC16(例えば1μF)と、キャパシタC17(例えば0.1μF)と、キャパシタC18(例えば1μF)と、キャパシタC19(例えば1μF)と、キャパシタC20(例えば0.1μF)と、を含む。
抵抗R15の第1端は、オペアンプOP4の出力端に接続されている。抵抗R15の第2端は、抵抗R16を介して中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP5の非反転入力端(+)は、中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP5の反転入力端(−)は、キャパシタC12を介して抵抗R15の第2端に接続される一方、抵抗R17を介してオペアンプOP5の出力端にも接続されている。オペアンプOP5の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP5の第2電源端は、接地端に接続されている。キャパシタC13は、抵抗R15の第2端とオペアンプOP5の出力端との間に接続されている。キャパシタC14は、オペアンプOP5の第1電源端と接地端との間に接続されている。
抵抗R18の第1端は、オペアンプOP5の出力端に接続されている。抵抗R18の第2端は、抵抗R19を介して中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP6の非反転入力端(+)は、中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP6の反転入力端(−)は、キャパシタC15を介して抵抗R18の第2端に接続される一方、抵抗R20を介してオペアンプOP6の出力端にも接続されている。オペアンプOP6の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP6の第2電源端は、接地端に接続されている。キャパシタC16は、抵抗R18の第2端とオペアンプOP6の出力端との間に接続されている。キャパシタC17は、オペアンプOP6の第1電源端と接地端との間に接続されている。
抵抗R21の第1端は、オペアンプOP6の出力端に接続されている。抵抗R21の第2端は、抵抗R22を介して中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP7の非反転入力端(+)は、中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP7の反転入力端(−)は、キャパシタC18を介して抵抗R21の第2端に接続される一方、抵抗R23を介してオペアンプOP7の出力端にも接続されている。オペアンプOP7の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP7の第2電源端は、接地端に接続されている。キャパシタC19は、抵抗R21の第2端とオペアンプOP7の出力端との間に接続されている。キャパシタC20は、オペアンプOP7の第1電源端と接地端との間に接続されている。
なお、上記構成から成るBPF回路250は、0.80〜2.95Hzの通過周波数帯域を持つ。
増幅回路260は、BPF回路250の出力信号を増幅する回路であり、オペアンプOP8と、可変抵抗R24(例えば1MΩ)と、抵抗R25(例えば1kΩ)と、キャパシタC21(例えば0.1μF)と、を含む。オペアンプOP8の非反転入力端(+)は、オペアンプOP7の出力端に接続されている。オペアンプOP8の反転入力端(−)は、可変抵抗R24を介してオペアンプOP8の出力端に接続される一方、抵抗R25を介して中間電圧VMの印加端にも接続されている。オペアンプOP8の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP8の第2電源端は、接地端に接続されている。キャパシタC21は、オペアンプOP8の第1電源端と接地端との間に接続されている。
中間電圧生成回路260は、電源電圧VDDを1/2に分圧して中間電圧VM(=VDD/2)を生成する回路であり、抵抗R26(例えば1kΩ)と、抵抗R27(例えば1kΩ)と、キャパシタC22(0.1μF)と、を含む。抵抗R26の第1端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。抵抗R26の第2端と抵抗R27の第1端は、いずれも中間電圧VMの印加端に接続されている。抵抗R27の第2端は、接地端に接続されている。キャパシタC22は、抵抗R27に対して並列に接続されている。
第2構成例のフィルタ部12であれば、被験者の体動ノイズを適切に除去することができるので、被験者の安静時における脈波はもちろん、被験者の運動時(例えば歩行時)における脈波についても高精度に検出することが可能となる(図15の上段を参照)。
また、第2構成例のフィルタ部12において、HPF回路210、LPFフィルタ回路230、増幅回路240、BPF回路250、及び、増幅回路260は、いずれも中間電圧VM(=VDD/2)を基準電圧として動作するので、フィルタ部12の出力信号は、中間電圧VMに対して上下に振幅変動する波形となる。従って、第2構成例のフィルタ部12であれば、出力信号の飽和(電源電圧VDDや接地電圧への張り付き)を防止して、脈波データを正しく検出することが可能となる。
<脈波センサ(第2実施形態)>
図16は、脈波センサの第2実施形態を示すブロック図である。第2実施形態の脈波センサ1は、基本的に第1実施形態と同様の構成であるが、運動時や屋外での脈波計測をより精度良く実施すべく、体動ノイズ抑制構造を採用すると共に、光センサ部11の駆動方式が変更されている。なお、光センサ部11の駆動方式を変更するに際して、本体ユニット10には、光センサ部11の発光部を外来光よりも高い輝度でパルス駆動するパルス駆動部17が含まれており、また、フィルタ部12には、光センサ部11の出力信号に検出処理(復調処理)を施す検波回路が内蔵されている。なお、パルス駆動部17やフィルタ部12の具体的な構成については、後ほど詳細に説明する。
<運動時計測技術開発>
先にも述べたように、腕輪型の脈波センサ1であれば、被験者の静止時はもちろん、被験者が比較的軽い運動(歩行など)を行っている場合であっても、脈波の測定を正しく行うことが可能である。しかしながら、被験者が比較的激しい運動(ジョギングやランニングなど)を行っている場合には、体動ノイズの影響で脈波の測定を正しく行うことができない場合もあり、さらなる改善の余地が残されていた。
上記の体動ノイズについて、図17を参照しながら考察する。図17は、体動ノイズの発生メカニズムを模式的に示す断面図である。後述の体動ノイズ抑制構造を採用していない脈波センサ1(以下、説明の便宜上、旧型の脈波センサ1と呼ぶことがある)では、被験者の運動に伴う微小な身体変化(皮膚表面の張りやしわの具合/筋肉の動きなど)により、生体(手首)2に巻き回されたベルト20を介して脈波センサ1の本体部10aに振動が伝わると、この振動が殆ど減衰されることなく本体部10aに取り付けられたプリント配線基板10bにそのまま伝播される。その結果、プリント配線基板10bに搭載された光センサ部11と生体(手首)2との光学距離が上記の振動に起因して大きく変化してしまうので、これが体動ノイズとして光センサ部11の出力信号に現れる。
図18及び図19は、それぞれ体動ノイズ抑制構造を採用した脈波センサ1(以下、説明の便宜上、新型の脈波センサ1と呼ぶことがある)の一構成例を模式的に示す断面図及び平面図(脈波センサ1を光センサ部11が搭載される下面側から見た平面図)である。
新型の脈波センサ1において、本体ユニット10は、本体部10aと、プリント配線基板10bと、緩衝部材10cと、粘着部材10dと、保護部材10eと、を含む。
本体部10aは、脈波センサ1の構成要素(光センサ部11など)を担持する筐体である。ベルト20は、本体部10aの両端に取り付けられており、生体(手首)2に巻き回される。なお、本体部10aは、多層構造を避けたり、比較的重量が大きい部材(バッテリなど)を生体(手首)2に近い側に配置することにより、低重心構造にするとよい。このような低重心構造を採用すれば、被験者の運動時においても本体部10aが振動しにくくなるので、光センサ部11と生体(手首)2との光学距離変化が小さくなり、体動ノイズの発生を低減することが可能となる。
プリント配線基板10bは、光センサ部11などの電子回路部品が搭載される部材であり、本体部10aの下面(生体(手首)2と対向する面)に取り付けられる。なお、プリント配線基板10bは、その平面視において、本体部10aよりも一回り小さいサイズに設計されており、ベルト20とプリント配線基板10bは、互いに接触しない程度の隙間(5mm程度)を空けて本体部10aに取り付けられている。このような構造を採用することにより、被験者の運動時においてもベルト20からプリント配線基板10bに振動が直接伝播しにくくなるので、光センサ部11と生体(手首)2との光学距離変化が小さくなり、体動ノイズの発生を低減することが可能となる。
緩衝部材10cは、プリント配線基板10bと本体部10aとの間(延いては光センサ部11と本体部10aとの間)に設けられた振動吸収性(柔軟性ないしは弾力性)の高い部材である。緩衝部材10cとしては、衝撃吸収ゲルのようなゲル素材のほか、スポンジやゴムなどを用いることができる。緩衝部材10cを設けることにより、本体部10aから光センサ部11への振動伝播を和らげることができるので、光センサ部11と生体(手首)2との光学距離変化が小さくなり、体動ノイズの発生を低減することが可能となる。
粘着部材10dは、光センサ部11の周囲に設けられて生体(手首)2と密着する粘着性の高い部材である。粘着部材10dとしては、両面テープや粘着パッドなどを用いることができる。粘着部材10dの厚さは、光センサ部11と同程度か、或いは、光センサ部11よりも低めに設計されている。粘着部材10dを設けることにより、光センサ部11と生体(手首)2との密着性を向上させることができるので、光センサ部11と生体(手首)2との光学距離変化が小さくなり、体動ノイズの発生を低減することが可能となる。なお、粘着部材10dは、光センサ部11との間に隙間(5mm程度)を空けて設けることが望ましい。このような構造を採用することにより、光センサ部11は、生体(手首)2から戻ってくる光を受光し易くなるので、脈波の測定精度を高めることが可能となる。また、粘着部材10dは、外光が光センサ部11に漏れ入ることを防止するための遮光部材としても機能する。遮光機能に着目した場合、粘着部材10dは、外光を吸収しやすい黒色としておくことが望ましい。
保護部材10eは、プリント配線基板10bの表面及び裏面の少なくとも一方を被覆して、電子回路部品(光センサ部11など)を衝撃や汚損から保護するための部材である。保護部材10eとしては、絶縁テープや樹脂コーティングなどを用いることができる。保護部材10eは、粘着部材10dと同じく黒色としておくことが望ましい。
図20は、フィルタ部12の第3構成例を示す回路図である。第3構成例のフィルタ部12は、電流/電圧変換回路300と、検波回路310と、増幅回路320と、6次のオペアンプ多重帰還型バンドパスフィルタ330(以下、BPF[band pass filter]回路330と呼ぶ)と、1次のローパスフィルタ回路340(以下、LPF回路[low pass filter]340と呼ぶ)と、増幅回路350と、中間電圧生成回路360と、を有する。
電流/電圧変換回路300は、光センサ部11から出力される電流信号を電圧信号に変換する回路であり、抵抗R28(例えば430Ω)と、抵抗R29(例えば200kΩ)とを含む。光センサ部11を形成する発光ダイオード11A(発光部に相当)のアノードは、パルス駆動部17を介して電源電圧VDD(例えば+3.3V)の印加端に接続されている。発光ダイオード11Aのカソードは、抵抗R28を介して接地電圧GND2の印加端に接続されている。光センサ部11を形成するフォトトランジスタ11B(受光部に相当)のコレクタは、抵抗R29を介して電源電圧VDDの印加端に接続されている。フォトトランジスタ11Bのエミッタは、接地電圧GNDの印加端に接続されている。
検波回路(復調回路)310は、電流/電圧変換回路300の出力信号に検波処理(復調処理)を施す回路であって、オペアンプOP9と、抵抗R30(例えば10kΩ)と、抵抗R31(例えば160kΩ)と、抵抗R32(例えば16kΩ)と、抵抗R33(例えば10kΩ)と、抵抗R34(例えば10kΩ)と、抵抗R35(例えば620kΩ)と、キャパシタC23(例えば1.0μF)と、キャパシタC24(例えば10nF)とキャパシタC25(例えば0.1μF)と、キャパシタC26(例えば1.0μF)と、キャパシタC27(例えば1.0μF)と、ダイオードD1及びD2と、を含む。フォトトランジスタ11Bのコレクタは、抵抗R30を介して中間電圧VMの印加端に接続されている。キャパシタC23の第1端は、フォトトランジスタ11Bのコレクタに接続されている。キャパシタC23の第2端は、抵抗R31を介して中間電圧VMの印加端に接続されている。抵抗R32の第1端は、キャパシタC23の第2端に接続されている。抵抗R32の第2端は、キャパシタC24を介して中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP9の反転入力端(−)は抵抗R33を介して抵抗R32の第2端に接続されている。オペアンプOP9の非反転入力端(+)は、中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP9の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP9の第2電源端は、接地電圧GNDの印加端に接続されている。ダイオードD1のアノード及び抵抗R34の第1端は、いずれも、オペアンプOP9の反転入力端(−)に接続されている。ダイオードD1のカソードとダイオードD2のアノードは、いずれもオペアンプOP9の出力端に接続されている。抵抗R34の第2端は、ダイオードD2のカソードに接続されている。キャパシタC25は、オペアンプOP9の第1電源端と接地電圧GNDの印加端との間に接続されている。キャパシタC26は、ダイオードD2のカソードと中間電圧VMの印加端との間に接続されている。抵抗R35の第1端は、ダイオードD2のカソードに接続されている。抵抗R35の第2端は、キャパシタC27を介して中間電圧VMの印加端に接続されている。検波回路310の動作については、後ほどパルス駆動部17の動作と合わせて詳細に説明する。
増幅回路320は、検波回路310の出力信号を増幅する回路であり、オペアンプOP10と、抵抗R36(例えば100kΩ)と、抵抗R37(例えば10kΩ)と、キャパシタC28(例えば0.1μF)と、を含む。オペアンプOP10の非反転入力端(+)は、抵抗R35の第2端に接続されている。オペアンプOP10の反転入力端(−)は、抵抗R36を介してオペアンプOP10の出力端に接続される一方、抵抗R37を介して中間電圧VMの印加端にも接続されている。オペアンプOP10の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP10の第2電源端は、接地電圧GNDの印加端に接続されている。キャパシタC28は、オペアンプOP10の第1電源端と接地電圧GNDの印加端との間に接続されている。
BPF回路330は、増幅回路320の出力信号から低周波成分と高周波成分をいずれも除去するための回路であり、オペアンプOP11〜OP13と、抵抗R38(例えば75kΩ)と、抵抗R39(例えば2MΩ)と、抵抗R40(例えば150kΩ)と、抵抗R41(例えば130kΩ)と、抵抗R42(例えば91kΩ)と、抵抗R43(例えば620kΩ)と、抵抗R44(例えば43kΩ)と、抵抗R45(例えば30kΩ)と、抵抗R46(例えば200kΩ)と、キャパシタC29(例えば1.0μF)と、キャパシタC30(例えば1.0μF)と、キャパシタC31(例えば0.1μF)と、キャパシタC32(例えば1.0μF)と、キャパシタC33(例えば1.0μF)と、キャパシタC34(例えば0.1μF)と、キャパシタC35(例えば1.0μF)と、キャパシタC36(例えば1.0μF)と、キャパシタC37(例えば0.1μF)とを含む。
抵抗R38の第1端は、オペアンプOP10の出力端に接続されている。抵抗R38の第2端は、抵抗R39を介して中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP11の非反転入力端(+)は、中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP11の反転入力端(−)は、キャパシタC29を介して抵抗R38の第2端に接続される一方、抵抗R40を介してオペアンプOP11の出力端にも接続されている。オペアンプOP11の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP11の第2電源端は、接地電圧GNDの印加端に接続されている。キャパシタC30は、抵抗R38の第2端とオペアンプOP11の出力端との間に接続されている。キャパシタC31は、オペアンプOP11の第1電源端と接地電圧GNDの印加端との間に接続されている。
抵抗R41の第1端は、オペアンプOP11の出力端に接続されている。抵抗R41の第2端は、抵抗R42を介して中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP12の非反転入力端(+)は、中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP12の反転入力端(−)は、キャパシタC32を介して抵抗R41の第2端に接続される一方、抵抗R43を介してオペアンプOP12の出力端にも接続されている。オペアンプOP12の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP12の第2電源端は、接地電圧GNDの印加端に接続されている。キャパシタC33は、抵抗R41の第2端とオペアンプOP12の出力端との間に接続されている。キャパシタC34は、オペアンプOP12の第1電源端と接地電圧GNDの印加端との間に接続されている。
抵抗R44の第1端は、オペアンプOP12の出力端に接続されている。抵抗R44の第2端は、抵抗R45を介して中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP13の非反転入力端(+)は、中間電圧VMの印加端に接続されている。オペアンプOP13の反転入力端(−)は、キャパシタC35を介して抵抗R44の第2端に接続される一方、抵抗R46を介してオペアンプOP13の出力端にも接続されている。オペアンプOP13の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP13の第2電源端は、接地電圧GNDの印加端に接続されている。キャパシタC36は、抵抗R44の第2端とオペアンプOP13の出力端との間に接続されている。キャパシタC37は、オペアンプOP13の第1電源端と接地電圧GNDの印加端との間に接続されている。
なお、上記構成から成るオペアンプ多重帰還型のBPF回路330は、0.7〜3.0Hzの通過周波数帯域を持つ。
LPF回路340は、BPF回路330の出力信号から高周波成分を除去する回路であり、抵抗R47(例えば110kΩ)と、キャパシタC38(例えば1.0μF)と、を含む。抵抗R47の第1端は、オペアンプOP13の出力端に接続されている。抵抗R47の第2端は、キャパシタC38を介して、中間電圧VMの印加端に接続されている。上記構成から成るLPF回路340のカットオフ周波数は1.45Hzに設定されている。
増幅回路350は、LPF回路340の出力信号を増幅する回路であり、オペアンプOP14と、可変抵抗R48(例えば1MΩ)と、抵抗R49(例えば1kΩ)と、キャパシタC39(例えば0.1μF)と、を含む。オペアンプOP14の非反転入力端(+)は、抵抗R47の第2端に接続されている。オペアンプOP14の反転入力端(−)は、可変抵抗R48を介してオペアンプOP14の出力端に接続される一方、抵抗R49を介して中間電圧VMの印加端にも接続されている。オペアンプOP14の第1電源端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。オペアンプOP14の第2電源端は、接地電圧GNDの印加端に接続されている。キャパシタC39は、オペアンプOP14の第1電源端と接地電圧GNDの印加端との間に接続されている。
中間電圧生成回路360は、電源電圧VDDを1/2に分圧して中間電圧VM(=VDD/2)を生成する回路であり、抵抗R50(例えば1kΩ)と、抵抗R51(例えば1kΩ)と、キャパシタC40(1.0μF)と、を含む。抵抗R50の第1端は、電源電圧VDDの印加端に接続されている。抵抗R50の第2端と抵抗R51の第1端は、いずれも中間電圧VMの印加端に接続されている。抵抗R51の第2端は、接地電圧GNDの端に接続されている。キャパシタC40は、抵抗R51に対して並列に接続されている。
第3構成例のフィルタ部12であれば、光センサ部11の出力信号(脈波データ)から体動ノイズを効果的に除去することが可能となる。
また、第3構成例のフィルタ部12において、検波回路310、増幅回路320、BPF回路330、LPF回路340、及び、増幅回路350は、いずれも中間電圧VM(=VDD/2)を基準電圧として動作するので、フィルタ部12の出力信号は、中間電圧VMに対して上下に振幅変動する波形となる。従って、第3構成例のフィルタ部12であれば、出力信号の飽和(電源電圧VDDや接地電圧GNDへの張り付き)を防止して、脈波データを正しく検出することが可能となる。
上記の体動ノイズ抑制構造(図18及び図19)とフィルタ部12(図20)を組み合わせて採用した新型の脈波センサ1であれば、被験者の安静時における脈波はもちろん、被験者の運動時(歩行時/ジョギング時/ランニング時)における脈波についても高精度に検出することが可能となる。
図21〜図26は、それぞれ、歩行時(6km/h)、ジョギング時(8km/h、10km/h)、及び、ランニング時(12km/h、14km/h、16km/h)の測定結果(上:旧型、下:新型)を示すグラフである。図中の実線は、脈波センサ1(新/旧)の測定結果を示しており、図中の破線は、胸ベルト装着型心拍計(市販品)の測定結果を比較参照用として示している。なお、上記の運動(歩行/ジョギング/ランニング)は、いずれも屋内のトレッドミルを用いて実施されたものである。
旧型の脈波センサ1を用いた場合、被験者の歩行時には胸ベルト装着型心拍計と相関のある測定結果が得られていたが(図21の上段)、被験者のジョギング時やランニング時には体動ノイズの影響が大きくなって胸ベルト装着型心拍計と乖離した測定結果となっていた(図22〜図26の各上段)
一方、新型の脈波センサ1を用いた場合、被験者の歩行時のみならず、被験者のジョギング時やランニング時にも、胸ベルト装着型心拍計と相関のある測定結果を得られることが確認された(図21〜図26の各下段)。
<屋外計測技術開発>
上記した新型の脈波センサ1は、屋外(外乱光となる太陽光の下)でも脈波を正しく測定できるように、光センサ部11の発光部(発光ダイオード11A)を外来光よりも高い輝度でパルス駆動させるパルス駆動部17を有し、かつ、フィルタ部12は、光センサ部11の出力信号に検波処理を施して脈波信号を抽出する検波回路230を含む構成とされている(先の図20を参照)。
光センサ部11の発光方法を常時点灯法からパルス点灯法(デューティ駆動法)に変更したことの意義について、図27を参照しながら詳細に説明する。図27は、常時点灯法とパルス点灯法との比較テーブルであり、上から順に、発光部の明るさ、信号強度S(脈波信号)、ノイズ強度N(外乱光)、及び、S/Nが示されている。
常時点灯法における単位時間当たりの信号強度Sは、発光部の明るさをL(例えば1.5mA駆動)とした場合、S=L(=L×1)と表すことができる。一方、ノイズ強度Nは、外乱光の明るさを(α×L)とした場合、N=(α×L)と表される。従って、α>1である場合には、信号強度Sよりもノイズ強度Nの方が大きい状態(S<N)となり、S/Nを確保することができなくなる。
一方、パルス点灯法(例えば、駆動周波数:100Hz、デューティ:1/50)における発光時間当たりの信号強度Sは、発光部の明るさを(50×L)(例えば75mA駆動)とした場合、S=L(=(50×L)×(1/50))と表すことができる。一方、ノイズ強度Nは、外乱光の明るさを(α×L)とした場合、N=(α×L)/50と表される。このように、パルス点灯法と発光部の高輝度化を組み合わせることにより、信号強度Sを従前と同様のレベルに維持しつつ、ノイズ強度Nを発光部のデューティに応じて低減することができるので、結果としてS/Nを向上させることが可能となる。なお、デューティについては、1/10〜1/100に設定すればよく、例えば、上記で示したように、デューティを1/50に設定することが望ましい。なお、デューティを1/10に設定した場合には、発光部の明るさを(10×L)とすればよいし、デューティを1/100に設定した場合には、発光部の明るさを(100×L)とすればよい。
図28は、パルス駆動部17の一構成例を示す回路図である。本構成例のパルス駆動部17は、半導体装置IC1と、Pチャネル型MOS[metal oxide semiconductor]電界効果トランジスタP1と、抵抗R52〜R55と、キャパシタC41〜C43とを含む。
半導体装置IC1は、3つのシュミットトリガST1〜ST3と、8本の外部端子(1ピン〜8ピン)と、を有する。1ピンは、シュミットトリガST1の入力端に接続されている。2ピンは、シュミットトリガST2の出力端に接続されている。3ピンは、シュミットトリガST3の入力端に接続されている。4ピンは接地端子であり、半導体装置IC1の外部において、接地電圧GND2の印加端に接続されている。5ピンは、シュミットトリガST3の出力端に接続されている。6ピンは、シュミットトリガST2の入力端に接続されている。7ピンは、シュミットトリガST1の出力端に接続されている。8ピンは電源端子であり、半導体装置IC1の外部において、電源電圧VDDの印加端に接続されている。
トランジスタP1のソースは、電源電圧VDDの印加端に接続されている。トランジスタのドレインは、発光ダイオード11Aのアノードに接続されている。トランジスタP1のゲートは、抵抗R52を介して電源電圧VDDの印加端に接続される一方、抵抗R53を介して半導体装置IC1の5ピンにも接続されている。抵抗R54の第1端は、半導体装置IC1の3ピンに接続されている。抵抗R54の第2端は、接地電圧GND2の印加端に接続されている。抵抗R55の第1端は、半導体装置IC1の1ピンに接続されている。抵抗R55の第2端は、半導体装置IC1の6ピンと7ピンに接続されている。キャパシタC41は、電源電圧VDDの印加端と接地電圧GND2の印加端との間に接続されている。キャパシタC42は、半導体装置IC1の1ピンと接地電圧GND2の印加端との間に接続されている。キャパシタC43は、半導体装置IC1の2ピンと3ピンとの間に接続されている。
上記構成から成るパルス駆動部17は、所定の駆動周波数及びデューティでトランジスタP1のオン/オフを繰り返して、光センサ部11の発光ダイオード11Aに流れる電流のパルス駆動を行う。なお、発光ダイオード11Aとしては、高輝度対応素子(ピーク順方向電流:100mA)が用いられている。
図29は、検波回路310における脈波信号の復調処理(検波処理)を説明するための模式図である。なお、図28の上段には検波回路310への入力信号が描写されており、図29の下段には検波回路310の出力信号が描写されている。先の図20で示したように、フィルタ部12に組み込まれた検波回路310は、いわゆる反転型の半波整流検波回路であり、パルス駆動される入力信号からその包絡線のみを抽出した出力信号を生成し、これを後段回路に出力する。
図30は、光センサ部11の発光特性及び受光特性を示すグラフである。図30の横軸は波長を示しており、縦軸は相対感度を示している。なお、図中の実線は新型フォトトランジスタの波長特性(受光特性)を示しており、図中の小破線は旧型フォトトランジスタの波長特性(受光特性)を示している。また、図中の大破線は発光ダイオードの波長特性(発光特性)を示している。図30で示したように、新型の脈波センサ1において、受光部として用いられる新型フォトトランジスタの波長特性(受光特性)は、発光部として用いられる発光ダイオードの波長特性(発光特性)と合致するように設計されている。このように、発光部と受光部の波長特性を最適化すれば、不要帯域の感度をカットすることができるので、外来光(太陽光)の影響を低減することが可能となる。
上記のパルス点灯法(図20、図27〜図29)と波長特性最適化(図30)を組み合わせて採用した新型の脈波センサ1であれば、屋内はもちろん、外乱光の多い屋外でも脈波を高精度に検出することが可能となる。
図31は、屋外での静止状態(立位状態)における脈波測定結果の新旧比較テーブルである。図31の上段には、旧型の脈波センサ1による屋外(4万ルクス)での脈波測定結果が示されており、図31の下段には、新型の脈波センサ1による屋外(8万ルクス)での脈波測定結果が示されている。図31で示したように、旧型の脈波センサ1では、外来光(太陽光)の影響で脈波信号が飽和してしまい、脈波を正しく測定することができないのに対して、新型の脈波センサ1であれば、脈波信号の飽和を回避して脈波を正しく測定することが可能である。
図32は、新型の脈波センサ1による屋内外での脈波測定結果を示すグラフである。なお、図中の実線は、新型の脈波センサ1の測定結果を示しており、図中の破線は、胸ベルト装着型心拍計(市販品)の測定結果を比較参照用として示している。図31で示したように、新型の脈波センサ1を用いることにより、屋内はもちろん、屋外(8万ルクス)であっても、静止時(座位/立位)と歩行時の双方において、胸ベルト装着型心拍計と相関のある測定結果を得られることが確認された。
なお、上記で説明した屋外計測技術(パルス点灯法と波長特性最適化)については、腕輪型の脈波センサ1に限らず、その他構造(指輪型、アイマスク型、耳栓型など)の脈波センサにも広く適用することが可能である。
<耳での脈波測定>
図33は、耳での脈波測定の原理を説明するための模式図である。先の第1、第2実施形態では、主として手首で脈波測定を行う構成を例に挙げたが、脈波センサは、手首以外の部位にも装着することができる。そこで、次の第3実施形態では、耳で脈波測定を行う構成を例に挙げて説明を行う。なお、耳での脈波測定を行う場合、脈波センサ(発光部と受光部)の装着位置は、外耳Eのいかなる部位(舟状窩E1、耳輪E2、対耳輪E3、対耳珠E4、外耳道E5、上対耳輪脚E6、三角窩E7、下対耳輪脚E8、耳甲介E9、耳珠E10、珠間切痕E11、及び、耳垂E12)であってもよい。
<脈波センサ(第3実施形態)>
図34及び図35は、それぞれ、脈波センサの第3実施形態を示す外観図及びブロック図である。第3実施形態の脈波センサ401は、イヤホン(ヘッドホン)401Xと本体ユニット401Yを有し、脈波測定機能を備えた携帯型のオーディオプレーヤとして提供される。なお、オーディオプレーヤという概念には、オーディオ再生専用機だけでなく、オーディオ再生機能を備えた携帯電話端末、スマートフォン、及び、携帯ゲーム端末なども含まれる。
イヤホン401Xは、ユーザの外耳E(特に耳介(耳殻))に装着して使用されるインナーイヤー型であり、筐体410と、光センサ部411と、スピーカ412と、ドライバ413と、コード414と、コネクタ415と、を含む。
筐体410は、光センサ部411、スピーカ412、及び、ドライバ413が搭載される部材である。筐体410は、耳珠E10と対耳珠E4に囲まれた窪み部分(耳甲介E9の艇部)にフィットする形状を有する。筐体410は、開放型であっても密閉型であってもよい。
光センサ部411は、筐体410の側面に設けられており、発光部411Aから外耳Eの所定部位に光を照射し、生体内を透過して戻ってくる光の強度を受光部411Bで検出することにより、脈波データを取得する。なお、図34では、右耳用筐体と左耳用筐体のうち、片方の筐体410に光センサ部411を1つ搭載した構成が示されているが、光センサ部411の搭載数はこれに限定されるものではなく、片方の筐体410に光センサ部411を複数搭載してもよいし、或いは、両方の筐体にそれぞれ光センサ部411を1つまたは複数搭載してもよい。光センサ部411を1つだけ搭載する構成であれば、光センサ部411を複数搭載する構成と比べて、消費電力の低減やコストダウンなどを優先することができる。一方、光センサ部411を複数搭載する構成であれば、各々のセンサ出力を足し合わせてS/Nを高めたり、最もS/Nの高いセンサ出力を選択して用いることにより、脈波の検出精度を向上することが可能となる。なお、複数の光センサ部411を選択的に用いる場合には、使用されない光センサ部411への電力供給を遮断することにより、電力の浪費を防止することが可能となる。
なお、第3実施形態の脈波センサ401において、光センサ部411は、発光部411Aと受光部411Bとが生体を挟んで互いに反対側に設けられた構成(いわゆる透過型、図33の破線矢印を参照)ではなく、発光部411Aと受光部411Bが生体に対していずれも同じ側に設けられた構成(いわゆる反射型、図33の実線矢印を参照)とされている。また、本願の発明者らは、外耳Eでの脈波測定について、十分に脈波の測定が可能であることを実際に実験で確認済みである。光センサ部411の具体的な構造については、第1、第2実施形態の光センサ部11と同一の構成を採用すればよいので、重複した説明は割愛する。
スピーカ412は、本体ユニット401Yからドライバ413を介して伝達されるオーディオ信号(電気信号)を音波に変えて出力する。スピーカ412の駆動方式としては、ダイナミック型が一般的であるが、その他の駆動方式(マグネティック型、バランスドアーマチュア型、圧電型、クリスタル型、静電型など)を採用しても構わない。
ドライバ413は、本体ユニット401Yから伝達されるオーディオ信号(電気信号)に基づいてスピーカ412の駆動信号を生成する。
コード414は、イヤホン401Xの筐体410と本体ユニット401Yとの間を電気的に接続するための部材である。コード414には信号伝達線や電力供給線が含まれる。
コネクタ415は、コード414の一端に取り付けられており、イヤホン401Xと本体ユニット401Yとを着脱するための部材である。
なお、コード414及びコネクタ415に代えて、イヤホン401Xの筐体410と本体ユニット401Yの双方に無線通信モジュールを設けることにより、両者の間を無線で接続することも可能である。特に、本体ユニット401Yを防水構造とする際には、本体ユニット401Yの外部端子を完全に排除するという観点から、両者の間を無線で接続する構成とすることが望ましい。その場合、本体ユニット401Yからイヤホン401Xの筐体410側に電力を供給することができなくなるので、イヤホン401Xの筐体410側にも電源部を別途用意する必要がある。
本体ユニット401Yは、筐体420と、制御部421と、操作部422と、表示部423と、記憶部424と、通信部425と、電源部426と、フィルタ部427と、を含む。なお、本体ユニット401Yがオーディオ再生機能を備えた携帯電話端末である場合には、上記構成要素のほかに、マイク、スピーカ、及び、電話回線接続部などがさらに追加される。
筐体420は、制御部421、操作部422、表示部423、記憶部424、通信部425、電源部426、及び、フィルタ部427を収納する部材である。なお、筐体420は、水没等による故障を防止するために防水構造としておくことが望ましい。
制御部421は、オーディオ再生機能と脈波測定機能の双方を個別的に実現するだけでなく、両機能を複合的に組み合わせて新たな付加価値を産み出すことができるように、脈波センサ401全体の動作を統括的に制御する。なお、制御部421としては、CPUなどを好適に用いることができる。制御部421の具体的な動作については、後ほど詳細に説明する。
操作部422は、ユーザ(被験者)の入力操作(電源オン/オフ、音量調節、及び、選曲など)を受け付けるヒューマンインタフェイスである。操作部422としては、各種キーやボタンのほか、タッチパネルなどを好適に用いることができる。
表示部423は、本体ユニット401Yの表面に設けられており、表示情報(オーディオ再生に関する情報のほか、脈波の測定結果などを含む)を出力する。表示部423としては、液晶表示パネルなどを好適に用いることができる。
記憶部424は、制御部421に読み込まれて実行される各種プログラムを不揮発的に格納するROM[read only memory]や、制御部421のプログラム実行領域として使用される揮発性のRAM[random access memory]、及び、ユーザ(被験者)が任意の楽曲データを不揮発的に格納するための内蔵型(或いは着脱型)フラッシュメモリを含む。
また、記憶部424は、制御部421で得られた脈波データ(生データ、或いは、種々の処理が施された処理済みデータ)を揮発的ないしは不揮発的に格納するRAMやEEPROM[electrically erasable programmable ROM]なども含む。このように、脈波データの格納手段を有する構成であれば、例えば、所定期間毎に記憶部424の蓄積データを一括して外部送信することができるようになるので、通信部425を間欠的に待機状態とすることが可能となり、延いては、脈波センサ401のバッテリ駆動時間を延ばすことが可能となる。
通信部425は、脈波センサ401の測定データ(生データ、種々の処理が施された処理済みデータ、或いは、記憶部424の格納データ)を外部の情報端末402(データサーバやパーソナルコンピュータなど)に無線または有線で送信する。特に、脈波センサ401の測定データを情報端末402に無線で送信する構成であれば、脈波センサ401と情報端末402とを有線で接続する必要がなくなるので、例えば、ユーザ(被験者)の行動を制約せずに測定データのリアルタイム送信を行うことが可能となる。特に、本体ユニット401Yを防水構造とする際には、本体ユニット401Yの外部端子を完全に排除するという観点から、測定データの外部送信方式として無線送信方式を採用することが望ましい。なお、近距離(数m〜数十m)の情報端末2に測定データを無線送信する場合には、通信部425としてBluetooth(登録商標)無線通信モジュールなどを好適に用いることができる。また、インターネットなどを介して遠隔地の情報端末402に測定データを送信する場合には、通信部425として無線LAN[local area network]モジュールなどを好適に用いることができる。
電源部426は、バッテリとDC/DCコンバータを含み、バッテリからの入力電圧を所望の出力電圧に変換して脈波センサ401の各部に供給する。このように、バッテリ駆動方式の脈波センサ401であれば、脈波の測定時に外部からの給電ケーブルを接続する必要がないので、ユーザ(被験者)の行動を制約せずに脈波の測定を行うことが可能となる。なお、上記のバッテリとしては、繰り返して充電を行うことが可能な二次電池(リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなど)を用いることが望ましい。このようにバッテリとして二次電池を用いる構成であれば、煩わしい電池交換作業が必要なくなるので、脈波センサ401の利便性を高めることができる。また、バッテリ充電時における外部からの電力供給方式としては、USBケーブルなどを用いる接触給電方式であってもよいし、或いは、電磁誘導方式、電界結合方式、及び、磁界共鳴方式などの非接触給電方式であってもよい。ただし、脈波センサ401を防水構造とする際には、本体ユニット401Yの外部端子を完全に排除するという観点から、外部からの電力供給方式として非接触給電方式を採用することが望ましい。
フィルタ部427は、光センサ部411の出力信号(受光部の検出信号)にフィルタ処理や増幅処理を施して制御部421に伝達する。なお、イヤホン401Xの筐体410側にフィルタ部を設けても構わないが、イヤホン401Xの筐体410からコード414を介して本体ユニット401Yに信号を伝送する途中でノイズが重畳しやすいことを鑑みると、フィルタ部427は、本体ユニット401Y側に設けておくことが望ましい。なお、フィルタ部427の具体的な回路構成については、第1、第2実施形態のフィルタ部12と同一の構成を採用すればよいので、重複した説明は割愛する。
上記したように、第3実施形態の脈波センサ401は、外耳Eに装着される筐体410と、筐体410に設けられて発光部411Aから外耳Eに光を照射し生体内を透過して戻ってくる光の強度を受光部411Bで検出することにより脈波データを取得する光センサ部411とを有する。
このような構成であれば、ユーザ(被験者)が意図的に脈波センサ401を外耳Eから外さない限り、脈波の測定中に脈波センサ401が外耳Eから脱落してしまうおそれは少ないので、ユーザ(被験者)の行動を制約せずに脈波の測定を行うことが可能となる。
特に、外耳Eは、指や腕に比べて体動の少ない部位であるので、光センサ部411の出力信号が体動ノイズの影響を受けにくく、高精度に脈波の測定を行うことが可能となる。
また、音声の聴取を主たる目的として外耳Eに装着されるイヤホン401Xに光センサ部411を搭載した脈波センサ401であれば、ユーザ(被験者)は、脈波センサ401を脈波測定機能付きの携帯型オーディオプレーヤとして日常的に装着することができるので、脈波センサ401の装着に対する抵抗感を払拭することが可能となり、延いては、利用シーンの拡大や新規ユーザ層の開拓に寄与することが可能となる。
また、脈波センサ401全体の動作を統括的に制御する制御部421は、オーディオ再生機能と脈波測定機能の双方を個別的に実現するだけでなく、両機能を複合的に組み合わせて新たな付加価値を産み出すべく、脈波データに応じてスピーカ412の出力動作を制御する機能を備えている。
具体的に述べると、制御部421は、フィルタ部427の出力信号に各種の信号処理を施すことによって、脈波に関する種々の情報(脈波の揺らぎ、心拍数、心拍変動、及び、加速度脈波など)を取得し、その解析結果をオーディオ再生動作にフィードバックする。
例えば、制御部421は、脈波データの解析結果に基づいてユーザ(被験者)の体調や精神状態、或いは、睡眠状態などを判定し、その判定結果に基づいて音量調節や選曲、或いは、電源オン/オフなどを自動的に実施する。このような構成とすることにより、携帯型オーディオプレーヤ単体では実現することのできないオーディオ再生動作を実現することが可能となる。
なお、図34及び図35では、イヤホン401Xと本体ユニット401Yを別体とした構成を例に挙げたが、脈波センサ401の構成はこれに限定されるものではなく、イヤホン401Xと本体ユニット401Yを一体とした構成にしても構わない。その場合、コード414やプラグ415は不要となる。
また、イヤホン401Xの形態や外耳Eへの装着例についても、図36A〜図36Dで示すように、種々のバリエーションが考えられる。図36A〜図36Dは、それぞれ、イヤホン401Xの第1形態〜第4形態と、各形態における外耳Eへの装着例を模式的に示す正面図である。
例えば、第1形態(図36A)のイヤホン401Xは、先出の図34と同様、外耳Eに装着して使用されるインナーイヤー型であり、その筐体410は、耳珠E10と対耳珠E4に囲まれた窪み部分(耳甲介E9の艇部)にフィットする形状(例えば球状や円柱状)を有する。第1形態のイヤホン401Xでは、上記の窪み部分に光センサ部411が当接される。
第2形態(図36B)のイヤホン401Xは、シリコンや発泡ウレタンなどで形成されたイヤーピースを外耳道E5に深く押し込んで使用される耳栓型(カナル型)であり、その筐体410は、先出の第1形態(図36A)と同様、耳珠E10と対耳珠E4に囲まれた窪み部分(耳甲介E9の艇部)にフィットする形状を有する。第2形態のイヤホン401Xでは、第1形態と同様、上記の窪み部分に光センサ部411が当接される。
第3形態(図36C)のイヤホン401Xは、耳介E全体を覆う形状の筐体410を備えたヘッドホン型である。左右(右耳用/左耳用)の筐体410は、頭上に跨るヘッドバンドまたは首の後ろ側に跨るネックバンド(いずれも不図示)によって頭部を挟み込む形となる。第3形態のイヤホン401Xにおいて、筐体410は、耳介Eとの対向面(内側面)に光センサ部411を担持する突起部材410xを有する。突起部材410xは、耳介Eに向けて突出しており、例えば、その先端に光センサ部411が搭載されている。従って、第3形態のイヤホン401Xでは、突起部材410xの先端と対向する部位(例えば耳垂E12)に光センサ部411が当接される。なお、第3形態のイヤホン401Xでは、耳介E全体を覆う筐体410が光センサ部411を被覆する遮光部材としても機能する。このような構成とすることにより、外光の影響を受けることなく脈波の測定を安定して行うことが可能となる。
第4形態(図36D)のイヤホン401Xは、耳介Eに懸架されるクリップ部材410yを有する耳掛け型である。クリップ部材410yは、耳介Eと当接する箇所に光センサ部411を担持する。従って、第4形態のイヤホン401Xでは、上対耳輪脚E6、三角窩E7、下対耳輪脚E8、若しくは、耳甲介E9の裏側辺りに光センサ部411が当接される形となる。
なお、上記では、イヤホンやヘッドホンに光センサ部411を設ける構成を例に挙げて説明を行ったが、脈波センサ401の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、図37の変形例で示すように、耳栓構造を有する筐体410に光センサ部411を搭載し、外耳道E5の内部で脈波を測定する形態も考えられる。この場合、筐体410は外耳道E5を塞いで奥深くに挿入され、光センサ部411は外耳道E5の内壁面に当接される形となる。このような耳栓構造を有する脈波センサ401であれば、耳栓本来の機能を利用して被験者をリラックスさせることができるので、脈波測定中の被験者に過度のストレスを与えずに済む。このような特長から、耳栓構造を有する脈波センサ401は、快眠センサ(脈波情報から被験者の睡眠状態に関する知見を得るセンサ)として好適に利用することが可能である。
また、上記いずれの構成を採用する場合であっても、受光部411Bは、発光部411Aよりも外耳道E5に近い側(ないしは外耳道E5の奥側)に配置するとよい。このような構成とすることにより、受光部411Bに外光が漏れ入りにくくなるので、脈波データの検出精度を高めることが可能となる。
<補聴器への応用>
図38は、補聴器への応用例を示すシステム図である。図38の脈波センサ401は、脈波測定機能を備えた補聴器として提供される。なお、脈波センサ401の具体的な構成については、基本的に先出の図35と同様であるが、携帯型オーディオプレーヤではなく補聴器として機能するための構成要素(集音マイクなど)を適宜組み込む必要がある。
また、脈波データやその解析結果(安否情報など)の送信先となる情報端末402は、遠隔地に設置されていることが想定される。従って、補聴器への応用を行う場合、脈波センサ401には、ネットワーク403を介して情報端末402(医療機関のデータサーバや遠隔地の家族が所有するパーソナルコンピュータなど)との接続を確立するための通信部(無線LANモジュールなど)を設けることが望ましい。
補聴器を必要とするユーザ(被験者)の中には、遠隔地からの健康管理や安否確認などを必要とする高齢者が多く含まれている。しかし、高齢者にとって複数の電子機器(ここでは補聴器と脈波センサ)を個別にかつ適切に装着ないし保守管理することは必ずしも容易なことではない。
これに対して、脈波測定機能を備えた補聴器として提供される脈波センサ401は、ユーザ(被験者)にとって補聴器そのものであり、脈波の測定を意識させるものではないので、その装着や保守管理の負担を軽減することが可能となる。また、脈波センサ401から送信されてくる脈波データやその解析結果を遠隔地の情報端末402で監視することにより、ユーザ(被験者)の健康状態に異常が生じた場合であっても迅速に対処することが可能となる。
なお、当然のことながら、外耳Eで脈波を測定するための構成については、オーディオ再生機能や補聴機能などの付加機能を具備しない脈波センサ単体にも適用することが可能である。
<睡眠センサ>
図39は、睡眠センサの一構成例(体調管理システムとしての適用例)を示したブロック図である。本構成例の睡眠センサ501は、光センサ部511と、温度センサ部512と、加速度センサ部513と、マイクロフォン514と、制御部515と、表示部516と、スピーカ517と、操作部518と、記憶部519と、通信部520と、電源部521と、を有する。
光センサ部511は、被験者の生体に光を照射した後、生体内を透過して戻ってくる光の強度を検出することにより、被験者の脈波や血中酸素飽和度に関する測定データを取得する。なお、光センサ部511については、先出の第1〜第3実施形態と同様の構成を採用すればよいので、重複した説明は割愛する。
温度センサ部512は、被験者の体温や体表面温度に関する測定データを取得する。
加速度センサ部513は、被験者の体動に関する測定データを取得する。
マイクロフォン514は、被験者が発する音や声及び被験者の周囲音に関する測定データを取得する。
制御部515は、睡眠センサ501全体の動作を統括的に制御する。なお、制御部515としては、CPUなどを好適に用いることができる。
表示部516は、被験者の睡眠状態に応じて画像(文字などを含む)の出力を行う。表示部516としては、液晶表示パネルなどを好適に用いることができる。
スピーカ517は、被験者の睡眠状態に応じて音声(警告音等を含む)の出力を行う。
操作部518は、被験者の入力操作(電源オン/オフなど)を受け付けるヒューマンインタフェイスである。操作部518としては、各種キーやボタンのほか、タッチパネルなどを好適に用いることができる。
記憶部519は、制御部515に読み込まれて実行される各種プログラムを不揮発的に格納するROMや、制御部515のプログラム実行領域として使用される揮発性のRAMを含む。
また、記憶部519は、睡眠センサ1で得られた測定データ(生データ、或いは、種々の処理が施された処理済みデータ)を揮発的または不揮発的に格納するRAMやEEPROMなども含む。このように、測定データの格納手段を有する構成であれば、例えば、所定期間毎に記憶部519の蓄積データを一括して外部送信することができるようになるので、通信部520を間欠的に待機状態とすることが可能となり、延いては、睡眠センサ501のバッテリ駆動時間を延ばすことが可能となる。
通信部520は、睡眠センサ501で得られた測定データ(生データ、種々の処理が施された処理済みデータ、若しくは、記憶部519の格納データ)を外部の情報端末502(データサーバやパーソナルコンピュータなど)に無線または有線で送信する。特に、睡眠センサ501で得られた測定データを情報端末502に無線で送信する構成であれば、睡眠センサ501と情報端末502とを有線で接続する必要がなくなるので、例えば、被験者の行動を制約せずに測定データのリアルタイム送信を行うことが可能となる。特に、睡眠センサ501を防水構造とする際には、睡眠センサ501の外部端子を完全に排除するという観点から、測定データの外部送信方式として無線送信方式を採用することが望ましい。なお、近距離(数m〜数十m)の情報端末502に測定データを無線送信する場合には、通信部520として、Bluetooth(登録商標)無線通信モジュールなどを好適に用いることができる。また、インターネットなどを介して遠隔地の情報端末502に測定データを送信する場合には、通信部520として無線LANモジュールなどを好適に用いることができる。
電源部521は、バッテリとDC/DCコンバータを含み、バッテリからの入力電圧を所望の出力電圧に変換して睡眠センサ501の各部に供給する。このようにバッテリ駆動方式の睡眠センサ501であれば、睡眠状態の測定時に外部からの給電ケーブルを接続する必要がないので、被験者の行動を制約せずに睡眠状態の測定を行うことが可能となる。なお、上記のバッテリとしては、繰り返して充電を行うことが可能な二次電池(リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなど)を用いることが望ましい。このようにバッテリとして二次電池を用いる構成であれば、煩わしい電池交換作業が不要となるので、睡眠センサ501の利便性を高めることができる。また、バッテリ充電時における外部からの電力供給方式としては、USBケーブルなどを用いる接触給電方式であってもよいし、或いは、電磁誘導方式、電界結合方式、及び、磁界共鳴方式などの非接触給電方式であってもよい。ただし、睡眠センサ501を防水構造とする際には、睡眠センサ501の外部端子を完全に排除するという観点から、外部からの電力供給方式として非接触給電方式を採用することが望ましい。
上記のように、被験者に装着される睡眠センサ501と、睡眠センサ501で取得された測定データの解析やログ取得を行う情報端末502と、を有する体調管理システムを構築すれば、睡眠センサ501自体を不要に高機能化することなく、被験者の日々の睡眠状態を監視して適切な体調管理を行うことが可能となる。また、多数の被験者から得られるデータを情報端末502で集約すれば、統計的な解析などを行うことも可能となる。
なお、睡眠センサ501で取得された測定データの詳細な解析は、上記の理由から、外部の情報端末502に委ねることが望ましいが、睡眠センサ501で取得された測定データから被験者の睡眠状態を解析して表示部516やスピーカ517を駆動する機能を制御部515に具備することは非常に有益である。
例えば、制御部515は、被験者の脈波に関する測定データ(脈拍数や脈拍変動など)から被験者のレム睡眠/ノンレム睡眠を判定し、表示部516やスピーカ517を駆動する構成にするとよい。例えば、被験者のレム睡眠に合わせてスピーカ517から目覚まし用の音楽や環境音(鳥のさえずり音や水のせせらぎ音など)を出力することにより、被験者に心地の良い寝覚めを提供することが可能となる。また、制御部515は、被験者の脈波に関する測定データから被験者の睡眠深度を判定し、表示部516やスピーカ517を駆動する構成としてもよい。
また、制御部515は、被験者の血中酸素飽和度に関する測定データから被験者の無呼吸症候群(睡眠の質)を判定し、表示部516やスピーカ517を駆動する構成にするとよい。例えば、無呼吸症候群の発症時にスピーカ517からアラーム音を出力すれば、被験者を強制的に覚醒させたり、被験者の異常を周囲に報知したりすることができる。
また、制御部515は、被験者の体温または体表面温度に関する測定データから被験者の睡眠深度を判定して、表示部516やスピーカ517を駆動する構成にするとよい。例えば、被験者の睡眠状態が浅くなり体温が上昇したときにスピーカ517から目覚まし用の音楽や環境音を出力することにより、被験者に心地の良い寝覚めを提供することが可能となる。
また、制御部515は、被験者の体動に関する測定データから被験者の睡眠深度を判定てし、表示部516やスピーカ517を駆動する構成にするとよい。例えば、被験者の睡眠状態が浅くなり体動が多くなったときにスピーカ517から目覚まし用の音楽や環境音を出力することにより、被験者に心地の良い寝覚めを提供することが可能となる。
また、制御部515は、被験者の発する音や声及び被験者の周囲音に関する測定データから被験者の状態(いびきや歯ぎしりなど)を判定し、表示部516やスピーカ517を駆動する構成にするとよい。例えば、被験者のいびきがひどくなったときにスピーカ517からアラーム音を出力することにより、被験者を強制的に覚醒させたり、被験者の異常を周囲に報知したりすることができる。
なお、上記の例では、被験者の睡眠状態に応じて睡眠センサ501に組み込まれた表示部516やスピーカ517の駆動制御を行う構成を例に挙げたが、制御部515による駆動制御の対象はこれらに限定されるものではなく、睡眠センサ501の外部に設けられた家電機器を遠隔制御することも考えられる。
図40は睡眠センサ501を用いた家電制御システムの一構成例を示す模式図である。本構成例の家電制御システムでは、睡眠センサ501を用いて判定された被験者の睡眠状態に応じて、電動カーテンA1、オーディオ機器A2、照明機器A3、テレビA4、空気調和器A5、及び、寝具(電動ベッドや空気マットなど)A6が制御される。
本構成例の家電制御システムによれば、例えば、被験者の起床に合わせて、電動カーテンA1を開き、オーディオ機器A2から目覚まし用音楽を流し、照明機器A3を点灯し、テレビA4でニュースチャンネルを選局し、空気調和器A5で寝室内を適切な温度に設定し、かつ、寝具A6を被験者が起床しやすい状態に調整(電動ベッドのリクライニング調整や空気マットの圧力調整など)することができる。
このように、本構成例の家電制御システムによれば、睡眠センサ501と種々の家電製品A1〜A6を連携させて、被験者に心地の良い寝覚めを提供することが可能となる。
なお、図40では、睡眠センサ501から家電製品A1〜A6が直接的に制御される構成例を挙げて説明したが、家電制御システムの構成はこれに限定されるものではなく、例えば、睡眠センサ501で取得された種々の測定データを解析する情報端末502(図39を参照)が用意されている場合には、この情報端末502から家電製品A1〜A6を制御してもよい。
図41Aは、睡眠センサ501の第1装着例(額装着型)を示す模式図である。図41Aでは、アイマスク型筐体501X(図中の破線を参照)の中央部(被験者の眉間に当接される位置)に睡眠センサ501の本体が配置されている。このように、毛細血管が集中している眉間に睡眠センサ501を配置すれば、光センサ部511で脈波や血中酸素飽和度の測定を安定して行うことができるので、睡眠状態の測定精度を高めることが可能となる。また、アイマスク型筐体501Xは、睡眠センサ501を被覆する遮光部材としても機能する。このような構成とすることにより、光センサ部511が外光の影響を受けにくくなるので、睡眠状態の測定を安定して行うことが可能となる。また、アイマスク型筐体501Xは、その本来の機能として被験者をリラックスさせることができるので、睡眠状態の測定中において被験者に過度のストレスを与えずに済む。
図41Bは、睡眠センサ501の第2装着例(耳装着型)を示す模式図である。図41Bでは、被験者の外耳に装着されるセンサユニット501Yと、被験者の襟や胸に装着される本体ユニット501Zが別個に分離して設けられている。センサユニット501Yには、各種センサ部511〜514が収納されており、本体ユニット501Zには、その余の構成要素515〜521が収納されている。このような構成とすることにより、被験者の外耳に装着されるセンサユニット501Yを小型化することができるので、被験者に違和感を与えずに済む。特に、外耳は、指や腕に比べて体動の少ない部位であるので、光センサ部511の出力信号が体動ノイズの影響を受けにくく、高精度に脈波や血中酸素飽和度の測定を行うことが可能となる。なお、センサユニット501Yの形態については、一般的なイヤホンの形態(インナーイヤー型、カナル型、クリップ型など)を採用してもよいし、或いは、外耳道に挿入される耳栓型を採用しても構わない(図36A〜図36D、及び、図37を参照)。
<出力波長についての考察>
実験では、いわゆる反射型の脈波センサにおいて、発光部の出力波長をλ1(赤外:940nm)、λ2(緑:630nm)、及び、λ3(青:468nm)とし、発光部の出力強度(駆動電流値)を1mA、5mA、10mAに変化させたときの挙動を各々調査した。その結果、およそ波長600nm以下の可視光領域において、酸素化ヘモグロビンHbO2の吸収係数が大きくなり、測定される脈波のピーク強度が大きくなるため、脈波の波形を比較的取得しやすいことが分かった。
なお、動脈血の酸素飽和度を検出するパルスオキシメータでは、酸素化ヘモグロビンHbO2の吸収係数(実線)と脱酸素化ヘモグロビンHbの吸収係数(破線)との差違が最大となる近赤外領域の波長(700nm前後)が発光部の出力波長として広く一般的に用いられているが、脈波センサ(特に、いわゆる反射型の脈波センサ)としての利用を考えた場合には、上記の実験結果で示したように、波長600nm以下の可視光領域を発光部の出力波長として用いることが望ましいと言える。
ただし、単一の光センサ部を用いて、脈波と血中酸素飽和度の両方を検出する場合には従前と同様、近赤外領域の波長を用いても構わない。
<脈波センサ(第4実施形態)>
図42は、脈波センサの第4実施形態を示すブロック図である。第4実施形態の脈波センサ600は、第3実施形態と同様の耳装着型(例えば、図36Bのカナル型)であり、筐体610と、光センサ部620と、緩衝部材630と、密着部材640と、を有する。
特に、脈波センサ600では、運動時や屋外での脈波計測をより精度良く実施すべく、耳装着型への適用を前提として開発された新規の体動ノイズ抑制構造や外来光抑制構造が採用されている。そこで、以下では、脈波センサ600で採用された新規の構造について重点的な説明を行い、その他の部分については、これまでに説明してきた構成や動作を適宜適用することが可能であるものと理解して、重複した説明を割愛する。
筐体610は、外耳E(図33を参照)に装着される部材である。筐体610は、脈波データの解析処理や記録処理を行う本体ユニット(不図示)と有線または無線で接続されている。また、脈波センサ600を脈波測定機能付きイヤホンとして提供する場合には、筐体610に音声出力手段(スピーカやドライバなど)が適宜組み込まれる。
光センサ部620は、筐体610(例えば外耳道E5に挿入される突起部)に設けられており、発光部から外耳Eの所定部位(例えば外耳道E5の内壁)に光を照射し、生体内を透過して戻ってくる光の強度を受光部で検出することにより、脈波データを取得する。なお、外来光の影響を受けにくいように、受光部は、発光部よりも外耳道E5に近い側に配置することが望ましい。
緩衝部材630は、筐体610と光センサ部620との間に設けられた振動吸収性(柔軟性ないしは弾力性)の高い部材である。緩衝部材630としては、ウレタンスポンジを好適に用いることができる。ただし、緩衝部材630の素材については、これに限定されるものではなく、ゲル素材やゴム素材などを用いることもできる。緩衝部材630を設けることにより、筐体610から光センサ部620への振動伝播を和らげることができるので、光センサ部620と外耳Eとの光学距離変化が小さくなり、体動ノイズの発生を低減することが可能となる。従って、被験者の安静時はもちろん、運動時においても安定した脈波測定を行うことが可能となる。
特に、緩衝部材630は、その振動伝播の抑制効果を高めるために、その高さ方向に圧縮された状態で、筐体610と光センサ部620との間に設けることが望ましい。なお、脈波測定の精度(具体的な測定結果は後述)と外耳Eへの装着性を総合的に考慮すると、緩衝部材630は、圧縮前の高さが2.5±1.0cmであるように設計するとよい。
なお、緩衝部材630の圧縮手法としては、例えば、光センサ部620を被覆する密着部材640の収縮力によって緩衝部材630を圧縮する手法(図43を参照)、光センサ部620の両端から引き出されている配線650の束縛力によって緩衝部材630を圧縮する手法(図44を参照)、筐体610と光センサ部620とを連結する弾性部材660(例えばバネ)の収縮力によって緩衝部材630を圧縮する手法(図45を参照)、筐体610と光センサ部620とを連結する突起部材670の係止力によって緩衝部材630を圧縮する手法(図46を参照)、ないしは、これらの組み合わせを用いればよい。
密着部材640は、外耳Eへの装着性を高めるための部材(いわゆるイヤーピース)である。密着部材640としては、生体との密着性が高いシリコーンゴムなどを好適に用いることができる。特に、脈波センサ600では、密着部材640が発光波長の透光性(光センサ部620の出射光と入射光を透過する性質)を備えており、光センサ部620は、密着部材640によって被覆される位置に設けられている。このような構成とすることにより、光センサ部620と外耳Eとの密着性を向上させることができるので、光センサ部620と外耳Eとの光学距離変化が小さくなり、体動ノイズの発生を低減することが可能となる。従って、被験者の安静時はもちろん、運動時においても安定した脈波測定を行うことが可能となる。
図47〜図49は、いずれも、イヤーピース(密着部材640)なし、かつ、スポンジ(緩衝部材630)なし、という第1条件の下、それぞれ異なる走行速度(8km/h、12km/h、16km/h)で脈波を測定した結果を示している。
図50〜図52は、いずれも、イヤーピースあり、かつ、スポンジなし、という第2条件の下、それぞれ異なる走行速度(8km/h、12km/h、16km/h)で脈波を測定した結果を示している。
図53〜図55は、いずれも、イヤーピースあり、かつ、スポンジ1cmあり、という第3条件の下、それぞれ異なる走行速度(8km/h、12km/h、16km/h)で脈波を測定した結果を示している。
図56〜図58は、いずれも、イヤーピースあり、かつ、スポンジ2cmあり、という第4条件の下、それぞれ異なる走行速度(8km/h、12km/h、16km/h)で脈波を測定した結果を示している。
なお、いずれの図面においても、図中の実線は、脈波センサ600の測定結果を示しており、図中の丸印は、胸ベルト装着型心拍計(市販品)の測定結果を比較参照用として示している。なお、脈波測定時の運動(ランニング)は、いずれも屋内のトレッドミルを用いて実施されたものである。
図47〜図49で示したように、第1条件では、被験者の安静時(座位)やジョギング時(8km/h)には、安定した脈波測定を行うことができたが、ランニング時(12km/h、16km/h)には、安定した脈波測定を行うことができなかった。
また、図50〜図52で示したように、第2条件では、被験者の安静時(座位)やジョギング時(8km/h)には、安定した脈波測定を行うことができたが、ランニング時(12km/h、16km/h)には、第1条件と比べてやや改善は見られたものの、未だ安定した脈波測定を行うことができなかった。
また、図53〜図55で示したように、第3条件では、被験者の安静時(座位)やジョギング時(8km/h)はもちろん、ランニング時(12km/h)においても、安定した脈波測定を行うことができた。ただし、さらに速度を高めたランニング時(16km/h)には、脈波測定の安定性がやや損なわれるという結果となった。
また、図56〜図58で示したように、第4条件では、被験者の安静時(座位)やジョギング時(8km/h)はもちろん、ランニング時(12km/h、16km/h)においても、安定した脈波測定を行うことができた。
図60は、異なる条件下で実施された上記の測定結果をまとめたテーブルである。本図に示すように、緩衝部材630や密着部材640を設けることにより、被験者の安静時はもちろん、運動時においても安定した脈波測定を行い得ることが実証された。
図60は、第4実施形態の第1変形例を示す外観図である。第1変形例の脈波センサ600は、光センサ部620に対する外来光の侵入を遮断する遮光部材680(例えば黒色シート)をさらに有する。このような構成とすることにより、外来光が光センサ部620に漏れ入ることを防止することができるので、屋内はもちろん、外乱光の多い屋外でも脈波を高精度に検出することが可能となる。
なお、遮光部材680としては、図60で示したように、光センサ部620よりも外側(外耳道E5から見て遠い側)で密着部材640の開放端を塞ぐように設けることが望ましい。また、光センサ部620の周囲を黒色シートで囲むことも効果的である。ただし、遮光部材680が筐体610から光センサ部620への振動伝播経路となってはいけないので、筐体610と遮光部材680とは固定しない方がよい。
図61は、第4実施形態の第2変形例を示す外観図である。第2変形例の脈波センサ600は、先出の第1変形例をさらに発展させた形態であり、密着部材640は、光センサ620を被覆する測定窓641の部分だけが透光性を備えており、他の部分が遮光部材として機能するように黒色とされている。このような構成とすることにより、密着部材640に遮光部材としての機能を併せ持たせることができるので、部品点数を削減することが可能となる。
図62は、第4実施形態の第3変形例を示す外観図である。第3変形例の脈波センサ600は、イヤーピースとして供される密着部材640によって光センサ部620を被覆した構成ではなく、光センサ部620と外耳Eとの密着性を高めるための密着部材690を光センサ部620の表面に設けた構成とされている。このような構成とすることにより、例えば、光センサ部620がイヤーピースによって被覆しにくい位置に設けられている場合であっても、光センサ部620と外耳Eとの密着性を高めて、体動ノイズの発生を低減することが可能となる。なお、密着部材690の形成手法としては、シリコーン樹脂の塗布やシリコーン樹脂シートの貼付など、様々な手法が考えられる。
なお、上記で説明した緩衝部材630、遮光部材680、及び、密着部材690については、全てを複合的に適用することが最も望ましいが、脈波センサ600の用途によっては、各々を単独ないしは一部のみを組み合わせて適用することも当然に可能である。
<総括>
以下では、本明細書中に開示されている種々の発明について、総括的に述べる。
[第1の発明]
本明細書中に開示された種々の発明のうち、第1の発明に係る脈波センサは、発光部から生体に光を照射して前記生体内を透過した光の強度を受光部で検出することにより脈波データを取得する光センサ部を備えた脈波センサであって、前記光センサ部は、枡形状のケースと、前記ケースを前記発光部が載置される第1領域と前記受光部が載置される第2領域に分割する遮光壁と、を有する構成(第1−1の構成)とされている。
なお、第1−1の構成から成る脈波センサにおいて、前記遮光壁の高さH1と前記発光部の高さH2との間には、H1>H2という関係が成立している構成(第1−2の構成)にするとよい。
また、第1−2の構成から成る脈波センサにおいて、前記遮光壁の高さH1から前記発光部の高さH2を差し引いたオフセット距離ΔH(=H1−H2)は、0mm<ΔH<2mmである構成(第1−3の構成)にするとよい。
また、第1−2または第1−3の構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部の高さH2と前記受光部の高さH3との間には、H2>H3という関係が成立している構成(第1−4の構成)にするとよい。
また、第1−1〜第1−4いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部と前記受光部との素子間距離W1は、0.2mm≦W1≦0.8mmである構成(第1−5の構成)にするとよい。
また、第1−1〜第1−5いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記光センサ部は前記発光部の上部に集光レンズを有する構成(第1−6の構成)にするとよい。
また、上記第1−1〜第1−6いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記第1領域は、前記発光部の発光領域よりも小さい第1開口部を備えた第1蓋部材によって被覆されている構成(第1−7の構成)にするとよい。
また、第1−1〜第1−7いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記第2領域は、前記受光部の受光領域よりも大きい第2開口部を備えた第2蓋部材によって被覆されている構成(第1−8の構成)にするとよい。
また、第1−1〜第1−8いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部及び前記受光部の少なくとも一方は、所定の波長成分のみを選択的に通過させるカラーフィルタを有する構成(第1−9の構成)にするとよい。
また、第1−1〜第1−9いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部及び前記受光部は、それぞれ、基板と、前記基板上に載置された発光チップ及び受光チップと、前記発光チップ及び受光チップを封止する封止体と、を有する構成(第1−10の構成)にするとよい。
また、第1−1〜第1−10いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記ケースは、前記光センサ部を担持する本体部から突出する形で前記本体部に埋設されている構成(第1−11の構成)にするとよい。
また、第1−1〜第1−11いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部の出力波長はおよそ600nm以下の可視光領域に属する構成(第1−12の構成)にするとよい。
[第2の発明]
また、本明細書中に開示された種々の発明のうち、第2の発明に係る脈波センサは、発光部から生体に光を照射して前記生体内を透過した光の強度を受光部で検出することにより脈波データを取得する光センサ部と、前記光センサ部を担持する本体部と、を有する脈波センサであって、前記本体部は、前記生体への装着時に前記生体側への押圧力が与えられる部材であり、前記光センサ部は、前記本体部の表面上において、前記生体側への押圧力が最大となる着力点の近傍に設けられている構成(第2−1の構成)とされている。
なお、第2−1の構成から成る脈波センサにおいて、前記本体部は、両端にベルトが接続されるものであり、前記光センサ部は、前記本体部と前記ベルトとの接続点から10mm以内に設けられている構成(第2−2の構成)にするとよい。
また、第2−1の構成から成る脈波センサにおいて、前記本体部は、第1端にバネ蝶番が接続されて第2端が開放端とされるものであり、前記光センサ部は、前記本体部の第2端から10mm以内に設けられている構成(第2−3の構成)にするとよい。
また、第2−1〜第2−3いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記光センサ部は、前記本体部の表面上において、前記生体側への押圧力が最大となる着力点の近傍領域内に複数設けられている構成(第2−4の構成)にするとよい。
また、第2−1〜第2−4いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部の出力波長は、およそ600nm以下の可視光領域に属する構成(第2−5の構成)にするとよい。
[第3の発明]
また、本明細書中に開示された種々の発明のうち、第3の発明に係る脈波センサは、発光部から生体に光を照射して前記生体内を透過した光の強度を受光部で検出することにより脈波データを取得する光センサ部と、前記光センサ部の出力信号にフィルタ処理を施すフィルタ部と、を有する脈波センサであって、前記フィルタ部は、前記光センサ部の出力信号に重畳した低周波成分を除去するハイパスフィルタ回路と、前記ハイパスフィルタ回路の出力信号を後段に伝達するボルテージフォロワ回路と、前記ボルテージフォロワ回路の出力信号に重畳した高周波成分を除去するローパスフィルタ回路と、前記ローパスフィルタ回路の出力信号を増幅する第1増幅回路と、前記第1増幅回路の出力信号に重畳した低周波成分と高周波成分を除去するバンドパスフィルタ回路と、前記バンドパスフィルタ回路の出力信号を増幅する第2増幅回路を有する構成(第3−1の構成)とされている。
なお、第3−1の構成から成る脈波センサにおいて、前記ハイパスフィルタ回路は0.66Hzのカットオフ周波数を持つ1次のCRハイパスフィルタ回路である構成(第3−2の構成)にするとよい。
また、第3−1または第3−2の構成から成る脈波センサにおいて、前記ローパスフィルタ回路は、0.26Hzのカットオフ周波数を持つ2次のCRローパスフィルタ回路である構成(第3−3の構成)にするとよい。
また、第3−1〜第3−3いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記バンドパスフィルタ回路は、0.80〜2.95Hzの通過周波数帯域を持つ6次のバンドフィルタ回路である構成(第3−4の構成)にするとよい。
また、第3−1〜第3−4いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記フィルタ部は、電源電圧を分圧して中間電圧を生成する中間電圧生成回路を有し、前記ハイパスフィルタ回路、前記ローパスフィルタ回路、前記第1増幅回路、前記バンドパスフィルタ回路、及び、前記第2増幅回路は、いずれも、前記中間電圧を基準電圧として動作する構成(第3−5の構成)にするとよい。
また、第3−1〜第3−5いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部の出力波長は、およそ600nm以下の可視光領域に属する構成(第3−6の構成)にするとよい。
[第4の発明]
また、本明細書中に開示された種々の発明のうち、第4の発明に係る脈波センサは、外耳に装着される筐体と、前記筐体に設けられて発光部から前記外耳に光を照射し生体内を透過して戻ってくる光の強度を受光部で検出することにより脈波データを取得する光センサ部と、を有する構成(第4−1の構成)とされている。
なお、第4−1の構成から成る脈波センサにおいて、前記筐体は、スピーカを有する構成(第4−2の構成)にするとよい。
また、第4−2の構成から成る脈波センサは、前記脈波データに応じて前記スピーカの出力動作を制御する制御部を有する構成(第4−3の構成)にするとよい。
また、第4−1〜第4−3いずれかの構成から成る脈波センサは、情報端末に前記脈波データを送信する通信部を有する構成(第4−4の構成)にするとよい。
また、第4−1〜第4−4いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記筐体は、耳珠と対耳珠に囲まれた窪み部分にフィットする形状を有する構成(第4−5の構成)にするとよい。
また、第4−5の構成から成る脈波センサにおいて、前記受光部は、前記発光部よりも外耳道に近い側に配置されている構成(第4−6の構成)にするとよい。
また、第4−1〜第4−4いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記筐体は、耳介を覆う形状を有する構成(第4−7の構成)にするとよい。
また、第4−7の構成から成る脈波センサにおいて、前記筐体は、前記耳介との対向面に前記光センサ部を担持する突起部材を有する構成(第4−8の構成)にするとよい。
また、第4−1〜第4−4いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記筐体は、耳介に懸架されるクリップ部材を有する構成(第4−9の構成)にするとよい。
また、第4−9の構成から成る脈波センサにおいて、前記クリップ部材は、前記耳介と当接する箇所に前記光センサ部を担持する構成(第4−10の構成)にするとよい。
また、第4−1の構成から成る脈波センサにおいて、前記筐体は、外耳道の内部で脈波を測定するための耳栓構造を有する構成(第4−11の構成)にするとよい。
また、第4−1〜第4−11いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記光センサ部は、枡形状のケースと、前記ケースを前記発光部が載置される第1領域と前記受光部が載置される第2領域に分割する遮光壁と、を有する構成(第4−12の構成)にするとよい。
また、第4−12の構成から成る脈波センサにおいて、前記遮光壁の高さH1と前記発光部の高さH2と前記受光部の高さH3との間には、H1>H2>H3という関係が成立する構成(第4−13の構成)にするとよい。
また、第4−13の構成から成る脈波センサにおいて、前記ケースは、前記筐体から突出する形で埋設されている構成(第4−14の構成)にするとよい。
また、第4−1〜第4−14いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記光センサ部は、前記筐体との間に緩衝部材を有する構成(第4−15の構成)にするとよい。
また、第4−1〜第4−15いずれかの構成から成る脈波センサにて、前記発光部の出力波長は、およそ600nm以下の可視光領域に属する構成(第4−16の構成)にするとよい。
[第5の発明]
また、本明細書中に開示された種々の発明のうち、第5の発明に係る睡眠センサは、被験者の脈波に関する測定データまたは脈波と血中酸素飽和度に関する測定データを取得する光センサ部と、前記被験者の体温または体表面温度に関する測定データを取得する温度センサ部と、前記被験者の体動に関する測定データを取得する加速度センサ部と、前記被験者が発する音や声ないしは周囲環境の音に関する測定データを取得するマイクロフォンと、睡眠センサ全体の動作を統括的に制御する制御部と、画像の出力を行う表示部と、音声の出力を行うスピーカと、入力操作を受け付ける操作部と、各測定データを記憶する記憶部と、前記被験者の睡眠状態を解析する情報端末に各測定データを送信する通信部と、前記睡眠センサの各部に電力供給を行う電源部と、を有する構成(第5−1の構成)とされている。
なお、第5−1の構成から成る睡眠センサにて、前記制御部は、各測定データを解析して前記被験者の睡眠状態を解析する機能を備えた構成(第5−2の構成)にするとよい。
また、第5−2の構成から成る睡眠センサにおいて、前記制御部は、前記被験者の脈波に関する測定データから前記被験者のレム睡眠/ノンレム睡眠及び睡眠深度の少なくとも一方を判定し、前記表示部、前記スピーカ、または、外部の家電機器を駆動する構成(第5−3の構成)にするとよい。
また、第5−2または第5−3の構成から成る睡眠センサにおいて、前記制御部は、前記被験者の血中酸素飽和度に関する測定データから前記被験者の無呼吸症候群を判定し、前記表示部、前記スピーカ、または、外部の家電機器を駆動する構成(第5−4の構成)にするとよい。
また、第5−2〜第5−4いずれかの構成から成る睡眠センサにおいて、前記制御部は前記被験者の体温または体表面温度に関する測定データから前記被験者の睡眠深度を判定して、前記表示部、前記スピーカ、または、外部の家電機器を駆動する構成(第5−5の構成)にするとよい。
また、第5−2〜第5−5いずれかの構成から成る睡眠センサにおいて、前記制御部は前記被験者の体動に関する測定データから前記被験者の睡眠深度を判定し、前記表示部、前記スピーカ、または外部の家電機器を駆動する構成(第5−6の構成)にするとよい。
また、第5−2〜第5−6いずれかの構成から成る睡眠センサにおいて、前記制御部は前記被験者の発する音や声ないしは周囲環境の音に関する測定データから前記被験者の状態を判定し、前記表示部、前記スピーカ、または、外部の家電機器を駆動する構成(第5−7の構成)にするとよい。
また、第5−1〜第5−7いずれかの構成から成る睡眠センサにおいて、前記光センサ部は発光部から前記被験者の生体に光を照射した後、前記生体内を透過して戻ってくる光の強度を受光部で検出することにより、前記被験者の脈波に関する測定データまたは脈波と血中酸素飽和度に関する測定データを取得する構成(第5−8の構成)にするとよい。
また、第5−8の構成から成る睡眠センサにおいて、前記光センサ部は、枡形状のケースと、前記ケースを前記発光部が載置される第1領域と前記受光部が載置される第2領域に分割する遮光壁と、を有する構成(第5−9の構成)にするとよい。
また、第5−9の構成から成る睡眠センサにおいて、前記遮光壁の高さH1と前記発光部の高さH2と前記受光部の高さH3との間には、H1>H2>H3という関係が成立する構成(第5−10の構成)にするとよい。
また、第5−10の構成から成る睡眠センサにおいて、前記ケースは、前記光センサ部を担持する筐体から突出する形で埋設された構成(第5−11の構成)にするとよい。
また、第5−11の構成から成る睡眠センサにおいて、前記光センサ部は、前記筐体との間に緩衝部材を有する構成(第5−12の構成)にするとよい。
また、第5−8〜第5−12いずれかの構成から成る睡眠センサにおいて、前記発光部の出力波長は、約600nm以下の可視光領域に属する構成(第5−13の構成)にするとよい。
また、第5の発明に係る体調管理システムは、第5−1〜第5−13いずれかの構成から成る睡眠センサと、前記睡眠センサで取得された測定データの解析やログ取得を行う情報端末とを有する構成(第5−14の構成)とされている。
また、第5の発明に係る家電制御システムは、第5−1〜第5−13いずれかの構成から成る睡眠センサと、前記睡眠センサまたは前記情報端末を用いて判定された被験者の睡眠状態に応じて駆動される家電機器とを有する構成(第5−15の構成)とされている。
なお、第5−15の構成から成る家電制御システムにおいて、前記家電機器は、電動カーテン、オーディオ機器、照明機器、テレビ、空気調和器、及び、寝具の少なくとも一つである構成(第5−16の構成)にするとよい。
[第6の発明]
また、本明細書中に開示された種々の発明のうち、第6の発明に係る脈波センサは、発光部から生体に光を照射して前記生体内を透過した光の強度を受光部で検出する光センサ部と、前記光センサ部を担持する本体部と、前記本体部に取り付けられて前記生体に巻き回されるベルトと、前記光センサ部と前記本体部との間に設けられた緩衝部材と、を有する構成(第6−1の構成)とされている。
なお、第6−1の構成から成る脈波センサは、前記光センサ部が搭載されるプリント配線基板をさらに有し、前記緩衝部材は、前記プリント配線基板と前記本体部との間に設けられている構成(第6−2の構成)にするとよい。
また、第6−1または第6−2の構成から成る脈波センサは、前記光センサ部の周囲に設けられて前記生体と密着する密着部材をさらに有する構成(第6−3の構成)にするとよい。
また、第6−3の構成から成る脈波センサにおいて、前記密着部材は、前記光センサ部との間に隙間を空けて設けられている構成(第6−4の構成)にするとよい。
また、第6−2〜第6−4いずれかの構成から成る脈波センサは、前記プリント配線基板の表面及び裏面の少なくとも一方を被覆する保護部材をさらに有する構成(第6−5の構成)にするとよい。
また、上記第6−5の構成から成る脈波センサにおいて、前記密着部材及び前記保護部材の少なくとも一方は、黒色である構成(第6−6の構成)にするとよい。
また、第6−2〜第6−6いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記ベルトと前記プリント配線基板は、互いに接触しない程度の隙間を空けて前記本体部に取り付けられている構成(第6−7の構成)にするとよい。
また、第6−1〜第6−7いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記本体部は低重心構造とされている構成(第6−8の構成)にするとよい。
また、第6−1〜第6−8いずれかの構成から成る脈波センサは、前記光センサ部の出力信号にフィルタ処理を施すフィルタ部を有する構成(第6−9の構成)にするとよい。
また、第6−9の構成から成る脈波センサにおいて、前記フィルタ部は、前記光センサ部の出力信号から低周波成分と高周波成分を除去するバンドパスフィルタ回路を有する構成(第6−10の構成)にするとよい。
また、第6−10の構成から成る脈波センサにおいて、前記バンドパスフィルタ回路は0.7〜3.0Hzの通過周波数帯域を持つ6次のオペアンプ多重帰還型バンドフィルタ回路である構成(第6−11の構成)にするとよい。
また、第6の発明に係る脈波センサは、発光部から生体に光を照射して前記生体内を透過した光の強度を受光部で検出する光センサ部と、前記発光部を外来光よりも高い輝度でパルス駆動させるパルス駆動部と、前記光センサ部の出力信号に検波処理を施して脈波信号を抽出するフィルタ部と、を有する構成(第6−12の構成)とされている。
なお、第6−12の構成から成る脈波センサにて、前記受光部の波長特性は、前記発光部の波長特性と合致するように設計されている構成(第6−13の構成)にするとよい。
また、第6−12または第6−13の構成から成る脈波センサにおいて、前記パルス駆動部は、1/10〜1/100のデューティで前記発光部をパルス駆動させる構成(第6−14の構成)にするとよい。
また、第6−12〜第6−14いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記フィルタ部は前記光センサ部の出力信号に検波処理を施す検波回路と、前記検波回路の出力信号を増幅する第1増幅回路と、前記第1増幅回路の出力信号から低周波成分と高周波成分を除去するバンドパスフィルタ回路と、前記バンドパスフィルタ回路の出力信号から高周波成分を除去するローパスフィルタ回路と、前記ローパスパスフィルタ回路の出力信号を増幅する第2増幅回路と、を有する構成(第6−15の構成)にするとよい。
また、第6−15の構成から成る脈波センサにおいて、前記バンドパスフィルタ回路は0.7〜3.0Hzの通過周波数帯域を持つ6次のオペアンプ多重帰還型バンドフィルタ回路である構成(第6−16の構成)にするとよい。
また、第6−15または第6−16の構成から成る脈波センサにおいて、前記ローパスフィルタ回路は、1.45Hzのカットオフ周波数を持つ1次のCRローパスフィルタ回路である構成(第6−17の構成)にするとよい。
また、第6−15〜第6−17いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記フィルタ部は、電源電圧を分圧して中間電圧を生成する中間電圧生成回路を有し、前記検波回路、前記第1増幅回路、前記バンドパスフィルタ回路、前記ローパスフィルタ回路、及び前記第2増幅回路は、いずれも、前記中間電圧を基準電圧として動作する構成(第6−18の構成)にするとよい。
また、第6−1〜第6−18いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部の出力波長は、およそ600nm以下の可視光領域に属する構成(第6−19の構成)にするとよい。
[第7の発明]
また、本明細書中に開示された種々の発明のうち、第7の発明に係る脈波センサは、外耳に装着される筐体と、前記筐体に設けられて発光部から前記外耳に光を照射し生体内を透過して戻ってくる光の強度を受光部で検出することにより脈波データを取得する光センサ部と、前記筐体と前記光センサ部との間に設けられた緩衝部材と、を有する構成(第7−1の構成)とされている。
なお、第7−1の構成から成る脈波センサは、前記外耳への装着性を高める密着部材をさらに有する構成(第7−2の構成)にするとよい。
また、第7−2の構成から成る脈波センサにおいて、前記光センサ部は、透光性を備えた前記密着部材によって被覆される位置に設けられている構成(第7−3の構成)にするとよい。
また、第7−3の構成から成る脈波センサにおいて、前記緩衝部材は、高さ方向に圧縮された状態で前記筐体と前記光センサ部との間に設けられている構成(第7−4の構成)にするとよい。
また、第7−4の構成から成る脈波センサにおいて、前記緩衝部材は、前記光センサ部を被覆する前記密着部材の収縮力によって圧縮されている構成(第7−5の構成)にするとよい。
また、第7−4または第7−5の構成から成る脈波センサにおいて、前記緩衝部材は、前記光センサ部の両端から引き出されている配線の束縛力により圧縮されている構成(第7−6の構成)にするとよい。
また、第7−4〜第7−6いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記緩衝部材は、前記筐体と前記光センサ部とを連結する弾性部材の収縮力によって圧縮されている構成(第7−7の構成)にするとよい。
また、第7−4〜第7−7いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記緩衝部材は、前記筐体と前記光センサ部とを連結する突起部材の係止力によって圧縮されている構成(第7−8の構成)にするとよい。
また、第7−4〜第7−8いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記緩衝部材は、圧縮前の高さが2.5±1.0cmである構成(第7−9の構成)にするとよい。
また、第7−4〜第7−9いずれかの構成から成る脈波センサは、前記光センサ部に対する外来光の侵入を遮断する遮光部材をさらに有する構成(第7−10の構成)にするとよい。
また、第7−10の構成から成る脈波センサにおいて、前記密着部材は、前記光センサを被覆する測定窓の部分だけが発光波長の透光性を備えており、他の部分が前記遮光部材として機能する構成(第7−11の構成)にするとよい。
また、第7−1〜第7−11いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記緩衝部材は、ウレタンスポンジである構成(第7−12の構成)にするとよい。
また、第7−1〜第7−12いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記受光部は、前記発光部よりも外耳道に近い側に配置されている構成(第7−13の構成)にするとよい。
また、第7−1〜第7−13いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部の出力波長は、およそ600nm以下の可視光領域に属する構成(第7−14の構成)にするとよい。
また、第7の発明に係る脈波センサは、外耳に装着される筐体と、前記筐体に設けられて発光部から前記外耳に光を照射し生体内を透過して戻ってくる光の強度を受光部で検出することにより脈波データを取得する光センサ部と、前記光センサ部と前記外耳との密着性を高める密着部材と、を有する構成(第7−15の構成)とされている。
また、第7の発明に係る脈波センサは、外耳に装着される筐体と、前記筐体に設けられて発光部から前記外耳に光を照射し生体内を透過して戻ってくる光の強度を受光部で検出することにより脈波データを取得する光センサ部と、前記光センサ部に対する外来光の侵入を遮断する遮光部材と、を有する構成(第7−16の構成)とされている。
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示された種々の発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。