JP2016520321A - 骨髄異形成症候群又は関連障害を有する患者においてキナーゼ阻害剤の治療効能を予測するための方法及び組成物 - Google Patents
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Abstract
本発明は、難治性がんを有する対象における広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測するための診断方法であって、対象の遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルを決定する工程を含み、遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルが、難治性がんを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測する方法を開示している。
Description
関連出願の相互参照
本出願は、2013年5月31日に出願された米国仮出願第61/829,754号、及び2013年12月6日に出願された米国仮出願第61/913,189号の優先権を主張し、これらそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
本出願は、2013年5月31日に出願された米国仮出願第61/829,754号、及び2013年12月6日に出願された米国仮出願第61/913,189号の優先権を主張し、これらそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
発明の分野
本発明は、骨髄異形成症候群を有する患者における患者選択及びキナーゼ阻害剤の治療効能の予測のための方法に関する。具体的には、診断及び予後予測方法は、キナーゼ阻害剤に応答する患者を同定するための、DNAメチル化生物学的マーカーのパネルの使用を対象とする。
本発明は、骨髄異形成症候群を有する患者における患者選択及びキナーゼ阻害剤の治療効能の予測のための方法に関する。具体的には、診断及び予後予測方法は、キナーゼ阻害剤に応答する患者を同定するための、DNAメチル化生物学的マーカーのパネルの使用を対象とする。
I.発明の背景
一般的に、がんを早期診断して疾患経過の早期に処置を開始させれば、がんの処置はより高率の成功をもたらす。ほとんどの場合、あらゆるがんの形態に関して、予後の改善と診断時の病期との間に直接的な関係がある。相当数の腫瘍が、現行の治療薬物又は放射線治療に不十分にしか応答しないか、又は応答しないと分類される。化学療法剤の投薬量又は放射線量を増加させることは、治療応答を改善できないことに加えて、副作用の発生及び療法への耐性の一因にもなる。
一般的に、がんを早期診断して疾患経過の早期に処置を開始させれば、がんの処置はより高率の成功をもたらす。ほとんどの場合、あらゆるがんの形態に関して、予後の改善と診断時の病期との間に直接的な関係がある。相当数の腫瘍が、現行の治療薬物又は放射線治療に不十分にしか応答しないか、又は応答しないと分類される。化学療法剤の投薬量又は放射線量を増加させることは、治療応答を改善できないことに加えて、副作用の発生及び療法への耐性の一因にもなる。
骨髄悪性疾患は、造血幹又は前駆細胞の新生物性形質転換の結果として生じるクローン性の障害である。形質転換した血液を形成する細胞は、それらの正常な対応物と同様に、生存及び増殖のために造血を調節する間質の環境からのシグナルへの依存性を保持している。白血病、骨髄異形成症候群、及び多発性骨髄腫における間質の異常に関する文献の総論によれば、間質の乱れが腫瘍性疾患の進展に寄与する可能性がある3つの主要なメカニズムが解明されている。最も単純な場合では、腫瘍性の血液を形成する細胞は、間質の機能又は組成に可逆的な変化を誘導し、それにより悪性細胞の成長条件の向上をもたらす。第2の場合では、悪性クローンに由来する機能的に異常な終末細胞は、間質系と一体化して、新生細胞を選択的に刺激して正常な血液細胞形成を阻害する。第3の状態では、規則的な血液細胞形成の制御不能(悪性疾患を誘導する微環境)を特徴とする一次的な間質障害の結果として、新生細胞集団の出現が起こる。
造血器腫瘍に関するWHO分類は、急性骨髄性白血病(AML)、MDS(骨髄異形成症候群)、MPN(骨髄増殖性新生物)、MDS/MPN重複、及び好酸球増加症を伴うPDGFR/FGFR1の再構成を伴う骨髄性/リンパ性新生物を包含する骨髄悪性疾患の5つのカテゴリーを認めている。骨髄異形成症候群(MDS)及びMPNは、骨髄悪性疾患群における2つの疾患グループである。MDS及びMPNは単一の疾患ではないが、それぞれ一群の造血細胞及び幹細胞の障害を包含する。
骨髄異形成症候群(MDS、以前は前白血病として公知)は、骨髄クラスの血液細胞の非効率的産生(又は異形成)を含む多様な一群の血液学的な医学的状態である。WHOのMDS疾患カテゴリーは、不応性貧血(RA)、鉄芽球性不応性貧血(RARS)、芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB)、移行期の芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB-T)、及び慢性骨髄単球性白血病(CMML)を包含する。MDSを有する患者は重度の貧血を発症することが多く、頻繁な輸血を必要とする。ほとんどの場合、この疾患は悪化して、患者は、進行性の骨髄不全によって引き起こされる血球減少症(血球数の低下)を発症する。MDSを有する患者の約3分の1において、この疾患は、通常数カ月から数年以内に急性骨髄性白血病(AML)に変わる。
米国では、毎年少なくとも15,000人の患者がMDSと診断されている(Goldbergら、2010; Rollisonら、2006)。診断された大多数の患者の年齢は、60歳から75歳の間である。MDSを有する患者の生存は彼らの疾患の重症度によって決まり、平均して最初の診断を受けてから3から5年である(Maら、2007)。大多数の患者は、血球減少症の合併症(制御不能な出血又は感染)のために死亡する。またこの疾患は、AMLに進行することもある。先行のMDSに起因するAMLの症例は、化学療法にはあまりよく応答せず、予後不良である。
MDS、AML及びMPN等の数々の血液学的な状態は、病理学及び原因となる事象の両方に関して共通の特色を有する。またこれらは、共通の遺伝学的決定因子も共有する。例えば、これらの疾患は、共通の特色として貧血を共有する。また、MDS/MPNが重複する症例も多く存在する。MDS/MPNの重複障害は、最初の発現時における、細胞成分の異形成と骨髄増殖性の要因(例えば線維症、細胞過形成、又は臓器巨大症)との所見が見られる真の重複状態として;時間が経つにつれMPNの特色を帯びるMDSとして;又はそれとは逆に進行性の骨髄異形成が進展するMPNとして多くのバリエーションで現れる。これらの障害は、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、異型(BCR-ABL1陰性)慢性骨髄性白血病、若年性骨髄単球性白血病、及びMDS/MPNu1を包含する。いくつかのMDS/MPNの症例は、JAK2突然変異(例えば暫定的病型、環状鉄芽球を伴う不応性貧血及び血小板増加症)を有する。これらの障害の増殖性の要因はRAS/MAPKシグナル伝達経路における異常に関し、およそ50パーセントがTET2突然変異と関連がある。
治験薬療法は存在するものの、現在のところ大多数の血液系がんのための治療薬を用いた処置はない。現在の造血系がんのための処置戦略としては、同種幹細胞移植、化学療法、エリスロポエチン刺激剤(ESA)、輸血、及びDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤が挙げられる。
ヒトのがん細胞は、典型的には、重要な遺伝子の突然変異、増幅、又は欠失を特徴とする体細胞変異したゲノムを含有する。加えて、ヒトがん細胞からのDNAテンプレートは、DNAメチル化における体細胞変化を示すことが多い。例えば、E. R. Fearonら、Cell 61: 759 (1990);P. A. Jonesら、Cancer Res. 46:461 (1986);R. Holliday、Science 238: 163 (1987);A. De Bustrosら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5693 (1988);P. A. Jonesら、Adv. Cancer Res. 54: 1 (1990);S. B. Baylinら、Cancer Cells 3:383 (1991);M. Makosら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1929 (1992);N. Ohtani-Fujitaら、Oncogene 8: 1063 (1993)を参照されたい。
DNAメチラーゼは、普遍的なメチル供与体であるS-アデノシルメチオニンからDNAの特定部位にメチル基を移動させる。いくつかの生物学的機能は、DNAにおけるメチル化塩基に起因している。最もよく確立された生物学的機能は、同種の制限酵素による消化からのDNAの保護である。この制限修飾現象は、これまで細菌でしか観察されていなかった。
しかしながら、哺乳動物細胞は、グアニンの5'側に隣接するDNA上のシトシン残基(CpG)を独占的にメチル化する異なるメチラーゼを有する。このメチル化は、遺伝子活性、細胞分化、腫瘍形成、X染色体不活性化、ゲノムインプリンティング及び他の主要な生物学的プロセスにおいて役割を果たすことを示す多方向からの証拠により示されてきた(Razin, A., H.、及びRiggs, R. D.編. DNA Methylation Biochemistry and Biological Significance、Springer-Verlag、N.Y.、1984に記載)。
真核細胞において、グアノシンの5'側に隣接するシトシン残基のメチル化は、CpGが少ない遺伝子座で優勢に起こる[Bird, A.、Nature 321:209 (1986)]。対照的に、X染色体不活性化及び親の特異的なインプリンティングの間を除いては、CpGアイランド(CGi)と呼ばれるCGジヌクレオチドの個別の領域は、正常細胞において非メチル化のままであり[Liら、Nature 366:362 (1993)]、この場合、5'調節領域のメチル化は転写抑制をもたらす可能性がある。例えば、Rb遺伝子のデノボメチル化は、ごく一部の網膜芽細胞腫で実証されており[Sakaiら、Am. J. Hum. Genet.、48:880 (1991)]、VHL遺伝子のより詳細な分析から、散在性腎細胞癌の部分集合における異常なメチル化が示された[Hermanら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、91:9700 (1994)]。また腫瘍抑制遺伝子の発現は、通常非メチル化の5'CpGアイランドのデノボDNAメチル化によって停止させることもできる。例えば、Issaら、Nature Genet. 7:536 (1994); Merloら、Nature Med. 1 :686 (1995); Hermanら、Cancer Res.、56:722 (1996); Graffら、Cancer Res.、55:5195 (1995); Hermanら、Cancer Res. 55:4525 (1995)を参照されたい。近年の総論では、臨床腫瘍学におけるがんの配列決定を実行しようとする挑戦のいくつかが概説されている(その全体が参照により組み入れられる、Implementing personalized cancer genomics in clinical trials Richard Simon及びSameek Roychowdhury、Nature Reviews Drug Discovery 12巻、2013年5月、358〜369)。
近年における数々の候補遺伝子及び全エキソームアプローチは、可能性のあるMDSの遺伝学的原因への新しい識見をもたらした。それには、EZH2突然変異(Ernst Tら: Nat Genet 42:722〜726、2010; Nikoloski Gら Nat Genet 42:665〜667、2010)及びスプライセオソーム機構における突然変異(Yoshida Kら Nature 478:64〜69、2011 ; Papaemmanuil Eら N Engl J Med 365: 1384〜1395、2011 ; Graubert TAら Nat Genet 44:53〜57、2012)が包含される。しかしながら、MDSを有する患者のケアについての知見を得るためにどのようにしてこの知識を使用できるのかを明らかにすることが課題となっている。将来性のある論文において、Bejarら(Bejar Rら N Engl J Med 364:2496〜2506、2011)は、MDSを有する患者の大きいコホートの大規模な突然変異のプロファイリングを行い、5つの遺伝子、具体的にはASXL1、EZH2、TP53、ETV6、及びRUNX1における突然変異が、MDSにおいて有害転帰を有すると予測したことを見出した。更に近年、彼らは、MDSの危険がより低い患者にも彼らの遺伝学的研究を拡張したところ、同じ遺伝子(ただしETV6を除く)における突然変異が、危険がより低いMDSでは独立した予後不良の関連性に関連することを見出した(Bejar Rら J Clin Oncol 30:3376〜3382、2012)。その結果として、現在、臨床医及びMDSを有する患者が利用できるこれらの特定の遺伝子における突然変異のための臨床試験が行われている。
MDSにおけるDNA構造の後成的変化の認識から、適正なDNAメチル化は、増殖遺伝子の調節において重要であり、DNAメチル化制御が失われると、制御不能な細胞成長、及び血球減少症が生じる可能性があることが示されてきた。近年承認されたDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、造血幹細胞核においてより規則正しいDNAメチル化プロファイルを作り出して、血球数を正常に戻し、MDSから急性白血病への進行を遅らせることによってこのメカニズムを利用している。
造血系がんの処置における最も重要な目標は、生存の延長に加えて、より高度な血液学的な応答の開発及び生活の質の改善である。造血系がんは生物学的に複雑な不均質な疾患であるため、単一の処置方針では全ての患者に作用しない可能性がある。したがって、公知の療法は治癒的ではなく、最終的に患者は時間が経つにつれて応答しなくなる。この応答の失敗により予後不良が起こり、その場合平均寿命は数か月以内である。それゆえに、所与の骨髄異形成症候群を有する患者が、キナーゼ阻害剤処置に対して治療耐性であるか又は応答する見込みがあるかどうかを予測する方法があれば、それは極めて有益であると予想される。
過去20年にわたる多くの研究者の研究によれば、骨髄異形成症候群(MDS)及び急性骨髄性白血病(AML)の症例を含めて、ヒトがん細胞ではDNAメチル化パターンが変更されることが明白に確立された。このような変更は、がん検出のためのバイオマーカーとして利用されている。しかしながら、抗がん薬又は抗MDS薬への患者特異的な応答を強く予測する示差的にメチル化された遺伝子のパネルの能力を示す研究は未だない。この状況は、このような薬物の2つのクラス、すなわちDNAメチル化阻害剤(例えば、デシタビン;5アザ-dC)及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えば、ボリノスタット)は抗がん作用を有し、デシタビンの場合では、後成的なメカニズムが介在すると考えられる前がん状態の骨髄異形成症候群において有益な作用を有するという事実にもかかわらずである。
E. R. Fearonら、Cell 61: 759 (1990)
P. A. Jonesら、Cancer Res. 46:461 (1986)
R. Holliday、Science 238: 163 (1987)
A. De Bustrosら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5693 (1988)
P. A. Jonesら、Adv. Cancer Res. 54: 1 (1990)
S. B. Baylinら、Cancer Cells 3:383 (1991)
M. Makosら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1929 (1992)
N. Ohtani-Fujitaら、Oncogene 8: 1063 (1993)
Razin, A., H.、及びRiggs, R. D.編. DNA Methylation Biochemistry and Biological Significance、Springer-Verlag、N.Y.、1984
Bird, A.、Nature 321:209 (1986)
Liら、Nature 366:362 (1993)
Sakaiら、Am. J. Hum. Genet.、48:880 (1991)
Hermanら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、91:9700 (1994)
Issaら、Nature Genet. 7:536 (1994)
Merloら、Nature Med. 1 :686 (1995)
Hermanら、Cancer Res.、56:722 (1996)
Graffら、Cancer Res.、55:5195 (1995)
Hermanら、Cancer Res. 55:4525 (1995)
Implementing personalized cancer genomics in clinical trials Richard Simon及びSameek Roychowdhury、Nature Reviews Drug Discovery 12巻、2013年5月、358〜369
Ernst Tら: Nat Genet 42:722〜726、2010
Nikoloski Gら Nat Genet 42:665〜667、2010
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したがって、骨髄異形成症候群を有する患者においてキナーゼ阻害剤の治療効能を事前に予測するための新規の診断方法を発見することが長年にわたり切実に求められている。
本明細書で開示され説明される本発明は、骨髄異形成症候群を有する患者においてキナーゼ阻害剤の治療効能を予測するのに使用することができる診断及び治療方法並びに組成物を提供する。
II.発明の概要
本発明は、がんを有する対象における広域特異性キナーゼ阻害剤(broad specificity kinase inhibitor)の治療効能を予測するための診断方法及び組成物を提供する。
本発明は、がんを有する対象における広域特異性キナーゼ阻害剤(broad specificity kinase inhibitor)の治療効能を予測するための診断方法及び組成物を提供する。
一態様において、本発明は、広域特異性キナーゼ阻害剤に耐性であるか又は応答する対象を識別するための診断方法における、がんを有する対象の試料のDNAメチル化プロファイルを決定するための、DNAメチル化生物学的マーカーの個別パネルを含む組成物を提供する。
一実施形態において、難治性血液系がんを有する対象の試料のDNAメチル化プロファイルを決定するためのポリヌクレオチド組成物であって、広域特異性キナーゼ阻害剤に耐性であるか又は応答する対象を識別するためのDNAメチル化生物学的マーカーの個別パネルを含み、DNAメチル化生物学的マーカーの個別パネルは、下記のTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、若しくはTable 4(表4)に列挙された50種の示差的にメチル化された遺伝子の生物学的マーカー又はそれらの任意の下位組合せ、又は少なくとも16個の連続した塩基を含むそれらのフラグメントを含むポリヌクレオチド組成物が提供される。
別の態様において、本発明はまた、がんを有する対象の試料のDNAメチル化プロファイルを決定する工程と、DNAメチル化プロファイルを、広域特異性キナーゼ阻害剤に耐性であるか又は応答する対象を識別するためのDNAメチル化生物学的マーカーの個別パネルと比較する工程とを含む診断方法も提供する。
一実施形態において、本発明は、難治性血液系がんを有する対象における広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測するための診断方法であって、難治性血液系がんを有する対象の試料のDNAメチル化プロファイルを決定する工程と、DNAメチル化プロファイルを、広域特異性キナーゼ阻害剤に耐性であるか又は応答する対象を識別するためのDNAメチル化生物学的マーカーの個別パネルと比較する工程とを含む方法を提供する。
更に別の実施形態において、本発明は、難治性がんを有する対象における広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測するための診断方法であって、(a)組織から単離された試験ゲノムDNA試料を得る工程と;(b)試験ゲノムDNA試料をDNAメチル化分析に供することにより、1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列のDNAメチル化プロファイルを決定する工程と;(c)試験ゲノムDNA試料の1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列のDNAメチル化プロファイルを、DNAメチル化生物学的マーカーの個別パネルの対応する配列のDNAメチル化プロファイルと比較することにより、難治性がんを有する対象の処置に関するキナーゼ阻害剤の治療効能を事前に予測する工程とを含む方法を提供する。
好ましい実施形態において、本発明は、難治性血液系がんを有する対象における広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測するための診断方法であって、(a)組織から単離された試験ゲノムDNA試料を得る工程と;(b)試験ゲノムDNA試料をDNAメチル化分析に供することにより、1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列のDNAメチル化プロファイルを決定する工程と;(c)試験試料の1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列のDNAメチル化プロファイルを、下記のTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、又はTable 4(表4)に列挙された示差的にメチル化された遺伝子(又はそれらの任意の下位組合せ)を含むDNAメチル化バイオマーカーの個別パネルの対応する配列のDNAメチル化プロファイルと比較することにより、難治性血液系がんを有する対象の処置に関する広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を事前に予測する工程とを含む方法を提供する。
診断方法の一実施形態において、広域特異性キナーゼ阻害剤は、少なくとも1種の式1
[式中、R1は、-NH2、-NH-CH2-COOH、-NH-CH(CH3)-COOH、-NH-C(CH3)2-COOH、-NH-CH2-CH2-OH及び-N-(CH2CH2OH)2からなる群から選択される]の化合物、このような化合物の医薬的に許容される塩、抗がん剤、又はそれらの組合せを含む医薬組成物である。
診断方法の好ましい実施形態において、造血系がんは、骨髄異形成症候群(MDS)である。
診断方法の好ましい実施形態において、造血系がんは、難治性骨髄異形成症候群(MDS)である。
診断方法の好ましい実施形態において、広域特異性キナーゼ阻害剤は、本明細書において式1Aで示されるリゴサチブである。
診断方法の一実施形態において、DNAメチル化プロファイル分析は、下記のTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、若しくはTable 4(表4)に列挙された示差的にメチル化された遺伝子又はそれらの任意の下位組合せを含む予測的遺伝子座のDNAメチル化生物学的マーカーの個別パネルを発見するために、ゲノム規模でのメチル化パターン分析に基づくIllumina Infiniumヒトメチル化450ビーズチップアレイを利用する。
一実施形態において、DNAメチル化プロファイル分析は、難治性MDSを有する患者の骨髄のゲノムDNAをスクリーニングするために、Illumina Infiniumヒトメチル化450ビーズチップを利用しており、難治性MDSに関連すると同定された示差的にメチル化された遺伝子の具体的なリストは、下記のTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、又はTable 4(表4)に列挙されており、又はそれらの任意の下位組合せである。
診断方法の好ましい実施形態において、下記のTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、若しくはTable 4(表4)に列挙された示差的にメチル化された遺伝子又はそれらの任意の下位組合せを含む予測的遺伝子座のDNAメチル化生物学的マーカーの個別パネルは次いで、亜硫酸水素塩DNA配列決定を用いて検証され、この検証された予測的遺伝子座のDNAメチル化生物学的マーカーは次いで、1つ又は複数の臨床試験で使用することができ、難治性MDSを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能が、事前に予測される。
診断方法の所定の実施形態において、DNAメチル化プロファイリングは、リゴサチブ投与の前に、それと共に、及び/又はその後に決定される。
診断方法の一実施形態において、DNAメチル化プロファイル分析は、(a)試験ゲノムDNA試料を亜硫酸水素ナトリウムと反応させて、任意の5-メチルシトシン残基を不変のまま残しつつ非メチル化シトシン残基をウラシル残基に変換して、亜硫酸水素塩変換DNA試料に特異的なプライマーのための結合部位を有する露出した亜硫酸水素塩変換DNA試料を作り出す工程と;(b)トップ鎖又はボトム鎖に特異的なプライマーを使用してPCR増幅手順を行う工程と;(c)PCR増幅産物を単離する工程と;(d)下記のTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、又はTable 4(表4)に列挙された示差的にメチル化された遺伝子の1つ又は複数に対する遺伝子特異的なプライマー、dNTP及びTaqポリメラーゼを使用してプライマー伸長反応を行う工程であって、該プライマーが、亜硫酸水素塩変換DNA試料に相補的であり、アッセイしようとする1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列のシトシン残基の5'に隣接して終結する約15-merから約22-merの長さのプライマー配列を含む工程と;(e)DNAメチル化バイオマーカーのパネルに対する第1のプライマーによって伸長した塩基の同一性を決定することによって、1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列の遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルを決定する工程であって、遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルが、難治性がんを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を事前に予測する工程とを含む。
診断方法の一実施形態において、dNTPは、放射標識及び蛍光標識からなる群から選択される標識で標識され、第1のプライマーによって伸長した塩基の同一性を決定することは、標識されたdNTPの取り込みを測定することによってなされる。
さらなる態様において、診断に加えて、難治性血液系がんを有する対象の処置に関する広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を事前に予測して、本発明の診断方法を、がんの予後又は転帰を決定することに更に使用することができる。
一般的な態様において、本発明は、難治性がんを有する対象の選択、難治性がんの診断、難治性がんの予後予測、難治性がんの処置、又はそれらの任意の組合せを含む方法を提供する。
更に別の実施形態において、併用療法プロトコール等の適切な処置レジメンを選択するための本発明の方法、患者集団を選択及び同定するための本発明の方法を提供する。
更に別の実施形態において、本発明は、キナーゼ阻害剤をメチル化経路に干渉する薬剤と組み合せて、本発明の方法によって同定されたような患者の部分集合において最適な効能を達成するために提供される。
さらなる態様において、本発明は、難治性がんを有する対象の処置についての広域スペクトルキナーゼ阻害剤に対する対象の耐性又は応答性を事前に予測して識別するための、コンピューターにより実現される診断方法を提供する。
さらなる態様において、本発明は、難治性がんを有する対象の処置についての広域スペクトルキナーゼ阻害剤に対する耐性又は応答性を事前に予測するための成分及びアッセイを含有する、診断方法ベースのキットを提供する。
III.図面の簡単な説明
Illumina Infiniumヒトメチル化450Kビーズチップアレイを使用した、臨床的によく特徴付けられたシリーズの難治性骨髄異形成症候群を有する患者からの骨髄試料のDNAメチル化プロファイリングから得られたヒートマップを表す図である。
難治性MDSを有するリゴサチブ不応答患者におけるFOSB遺伝子の高メチル化状態の亜硫酸水素塩DNA配列決定の検証を表す図である。
難治性MDSを有するリゴサチブ応答患者におけるCASZ1遺伝子の高メチル化状態の亜硫酸水素塩DNA配列決定の検証を表す図である。
IV.発明の詳細な説明
定義
「抗がん剤」は、本明細書で使用される場合、概して、がんの成長及び/若しくは転移を調節する、がんの1つ若しくは複数の症状を処置若しくは緩和する、並びに/又はがんの二次的な合併症の1つ若しくは複数の症状を処置若しくは緩和する薬剤を包含すると定義される。
定義
「抗がん剤」は、本明細書で使用される場合、概して、がんの成長及び/若しくは転移を調節する、がんの1つ若しくは複数の症状を処置若しくは緩和する、並びに/又はがんの二次的な合併症の1つ若しくは複数の症状を処置若しくは緩和する薬剤を包含すると定義される。
用語「処置する」及び「処置」は、本明細書で使用される場合、同義的に使用され、疾患の根絶、障害の進展の延期及び/又は進展すると予測される症状の重症度の低減を示すことが意図されている。この用語は更に、現存する症状を緩和すること、追加の症状を予防すること、及び根底にある生物学的/医学的な症状の原因を緩和又は予防することも包含する。
「医薬組成物」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1種の式1の化合物、又は少なくとも1種の式1の化合物のアゴニスト、アンタゴニスト、生物学的に活性なフラグメント、変異体、類似体、異性体(構造異性体及び立体異性体並びにラセミ混合物)、改変された類似体、及び機能的な類似体を含有する組成物を指す。本発明の医薬組成物はまた、本明細書で定義されるような追加の抗がん剤を含有していてもよい。
「応答」は、本明細書で使用される場合、重要なものとしては骨髄異形成症候群(MDS)の主要な特徴である輸血依存性貧血の緩和等の、標準的な臨床基準によって定義される。
本発明者らは、最先端の個別医薬アプローチで採用することができるDNAメチル化生物学的マーカーの個別パネルを発見した。具体的には、本発明者らは、難治性MDSを有する対象におけるキナーゼ阻害剤の治療効能を予測するのに有用な、高感度で特異的なDNAメチル化生物学的マーカーの個別パネルを同定した。
したがって本発明は、DNAメチル化生物学的マーカーの個別パネルが、難治性血液系がんを有する対象におけるキナーゼ阻害剤の治療効能を予測することができるという発見に一部基づいている。具体的には、本発明者らは、キナーゼ阻害剤に耐性であるか又はそれに応答する対象を事前に予測してそれらを識別するための診断方法において、DNAメチル化生物学的マーカーの特異的なパネルを、難治性血液系がんを有する対象の試料に使用できることを発見した。
特定のがんのためのDNAメチル化生物学的マーカーの個別パネルは、そのがんのための予測的なDNAメチル化シグネチャーと集合的に称する場合もある。
I.診断方法
本発明の一態様において、難治性がんを有する対象におけるキナーゼ阻害剤の治療効能を予測するための診断方法であって、難治性がんを有する対象からのゲノムDNA試料をアッセイする工程と、そのDNA試料を、遺伝子座特異的なDNAメチル化生物学的マーカーのパネルに対してスクリーニングして、遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルパターンを決定する工程であって、遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルが、難治性がんを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測する工程とを含む方法が提供される。
本発明の一態様において、難治性がんを有する対象におけるキナーゼ阻害剤の治療効能を予測するための診断方法であって、難治性がんを有する対象からのゲノムDNA試料をアッセイする工程と、そのDNA試料を、遺伝子座特異的なDNAメチル化生物学的マーカーのパネルに対してスクリーニングして、遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルパターンを決定する工程であって、遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルが、難治性がんを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測する工程とを含む方法が提供される。
一実施形態において、難治性がんを有する対象における広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測するための診断方法であって、(a)対象の試験組織から試験ゲノムDNA試料を得る工程と;(b)試験ゲノムDNA試料のDNAメチル化プロファイルを分析することによって1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列のDNAメチル化プロファイルを決定する工程と;(c)試験ゲノムDNA試料の1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列のDNAメチル化プロファイルを、DNAメチル化バイオマーカーの個別パネルの対応する配列と比較して、遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルパターンを決定する工程であって、試験ゲノムDNAの遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルが、難治性がんを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測する工程とを含む方法が提供される。
好ましい一実施形態において、本発明は、難治性がんを有する対象におけるキナーゼ阻害剤の治療効能を予測するための診断方法であって、(a)対象の試験組織から試験ゲノムDNA試料を得る工程と;(b)試験ゲノムDNA試料のDNAメチル化プロファイルを分析することによって1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列のDNAメチル化プロファイルを決定する工程と;(c)試験ゲノムDNA試料の1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列のDNAメチル化プロファイルを、下記のTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、若しくはTable 4(表4)に列挙された示差的にメチル化された遺伝子又はそれらの任意の下位組合せを含むDNAメチル化バイオマーカーの個別パネルの対応する配列と比較して、遺伝子座特異的なDNAメチル化パターンを決定する工程であって、試験ゲノムDNAの遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルが、難治性がんを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測する工程とを含む方法を提供する。
一実施形態において、DNAメチル化は、グアノシンの5'に隣接するシトシン残基のメチル化(すなわち、5-meC)を含む。別の実施形態において、DNAメチル化は、グアノシンの5'に隣接するシトシン残基の改変されたメチル化[すなわち、5-ヒドロキシMeC(5-HyroxyMeC)、5-ホルミルMeC及び5-カルボキシMeC、3-メチルシトシン(3-mC)、又はそれらの任意の組合せを含む。
一実施形態において、広域特異性キナーゼ阻害剤は、PI3-キナーゼ、ポロ様キナーゼ1(PLK-1)、又はその両方を含む。
本発明の診断方法の一実施形態において、キナーゼ阻害剤は、少なくとも1種の式1
[式中、R1は、-NH2、-NH-CH2-COOH、-NH-CH(CH3)-COOH、-NH-C(CH3)2-COOH、-NH-CH2-CH2-OH及び-N-(CH2CH2OH)2からなる群から選択される]の化合物、このような化合物の医薬的に許容される塩、抗がん剤、又はそれらの組合せを含む医薬組成物である。
診断方法の好ましい実施形態において、キナーゼ阻害剤は、リゴサチブである。またリゴサチブは、ON01910.Na及び/又はEstybonとしても知られている。
診断方法の一実施形態において、試験組織は、対象に由来するがん組織又は推定上のがん組織であり、参照DNAメチル化バイオマーカープロファイルは、MDSの骨髄生検試料に由来し、遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルが、難治性がんを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測する。
診断方法の一実施形態において、難治性がんは、造血系がん、膵臓がん、頭頸部がん、皮膚の腫瘍、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)における微小残存病変(MRD)、急性骨髄性白血病(AML)、肺がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、結腸がん、黒色腫又は他の血液学的疾患及び固形腫瘍を含む。
診断方法の好ましい実施形態において、難治性造血系がんは、骨髄異形成症候群である。
診断方法の更に別の好ましい実施形態において、難治性造血系がんは、急性骨髄性白血病(AML)、MPN(骨髄増殖性新生物)、MDS/MPN重複、及び好酸球増加症を伴うPDGFR/FGFR1の再構成を伴う骨髄性/リンパ性新生物、関連障害、又はそれらの任意の組合せを含む。
診断方法の別の実施形態において、がんは、骨髄異形成症候群を含み、少なくとも1つのDNAメチル化プロファイルFOSB遺伝子マーカーは、難治性MDSを有するリゴサチブ不応答患者において高メチル化されており、DNAメチル化プロファイルFOSB遺伝子マーカーの高メチル化状態は、亜硫酸水素塩DNA配列決定によって検証される(図2を参照)。
診断方法の更に別の実施形態において、がんは、骨髄異形成症候群を含み、少なくとも1つのDNAメチル化プロファイルであるCASZ1遺伝子マーカーは、難治性MDSを有するリゴサチブ応答患者において高メチル化されており、DNAメチル化プロファイルであるCASZ1遺伝子マーカーの高メチル化状態は、亜硫酸水素塩DNA配列決定によって検証される(図3を参照)。
さらなる態様において、本発明は、診断方法ベースのキットであって、試験ゲノムDNA試料のDNAメチル化プロファイルを決定し、試験ゲノムDNA試料の1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列のDNAメチル化プロファイルを、下記のTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、若しくはTable 4(表4)に列挙された示差的にメチル化された遺伝子の1つ若しくは複数又はそれらの任意の下位組合せを含むDNAメチル化バイオマーカーの個別パネルの対応する配列と比較するためのアッセイ及び成分を含有し、遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルが、難治性がんを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測するキットを提供する。
更に別の実施形態において、本発明は、難治性血液系がんを有する対象における広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測するための診断方法であって、難治性がんを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能に関して事前にスクリーニングして予測するためのDNAメチル化生物学的マーカーの個別パネルとしての、所定の血液系がん又は造血器障害の罹患率の増加と関連がある遺伝子、突然変異、又は発現の変更のDNAメチル化プロファイルの使用を含む方法を提供する。
一実施形態において、本キットは、下記のTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、若しくはTable 4(表4)に列挙された示差的にメチル化された遺伝子の1つ若しくは複数又はそれらの任意の下位組合せを含むDNAメチル化バイオマーカーの個別パネルと、試験ゲノムDNA試料のDNA領域の少なくとも一部を特異的に増幅することができるポリヌクレオチドプライマーの1つ又は複数の対であって、該プライマーが、下記のTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、又はTable 4(表4)に列挙された示差的にメチル化された遺伝子の1つ又は複数に基づき設計されている対と、使用説明書とを含む。
さらなる態様において、本発明は、試験ゲノムDNA試料のDNAメチル化プロファイルを決定して、試験ゲノムDNA試料の1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列のDNAメチル化プロファイルを、下記のTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、若しくはTable 4(表4)に列挙された示差的にメチル化された遺伝子の1つ若しくは複数又はそれらの任意の下位組合せを含むDNAメチル化バイオマーカーの個別パネルの対応する配列と比較するためのコンピューターにより実現される診断方法であって、遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルが、難治性がんを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測する方法を提供する。
別の態様において、本発明は、試験ゲノムDNA試料のDNAメチル化プロファイルを表すメチル化値を受け取るためのプログラムコードと;試験ゲノムDNA試料の1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列のDNAメチル化プロファイルを、下記のTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、若しくはTable 4(表4)に列挙された示差的にメチル化された遺伝子の1つ若しくは複数又はそれらの任意の下位組合せを含むDNAメチル化バイオマーカーの個別パネルの対応する配列と比較するためのプログラムコードをコードしたコンピューターで読取り可能な媒体とを含むコンピュータープログラム製品であって、遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルが、難治性がんを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測するコンピュータープログラム製品を提供する。
II.DNAメチル化バイオマーカー
DNAメチル化プロファイルの状況を決定するためのアッセイしようとするDNA領域は、難治性がんを有する対象からの試料から得られる。
DNAメチル化プロファイルの状況を決定するためのアッセイしようとするDNA領域は、難治性がんを有する対象からの試料から得られる。
診断方法の一実施形態において、生体試料は、難治性がんを有する対象の任意の体液又は組織からのものであってもよい。
診断方法のいくつかの実施形態において、生体試料は、血清、血漿、***の穿刺吸引物、***生検、乳管液(ductal fluid)、乳管洗浄液(ductal lavage)、便、尿、痰、唾液、***、洗浄液、又は組織生検、例えば肺がんの場合では肺生検、気管支洗浄液又は気管支擦過物から得られる。いくつかの実施形態において、試料は、腫瘍又はポリープからのものである。
診断方法の更に他の実施形態において、生体試料は、末梢血液試料から得られる(すなわちCD34分離後に)。
いくつかの実施形態において、試料は、肺、腎臓、肝臓、卵巣、頭、頸部、甲状腺、膀胱、子宮頸部、結腸、子宮内膜、食道、前立腺又は皮膚組織からの生検である。いくつかの実施形態において、試料は、皮膚のパンチ生検、細胞切屑、洗浄液、又は切除された組織からのものである。更に他の実施形態において、生体試料は、全血、バフィーコート、単離された単核細胞、血漿、血清、又は骨髄から選択される。
診断方法の一実施形態において、DNAメチル化プロファイルの状況を決定するためにアッセイしようとするDNA領域は、難治性がんを有する対象からの試料から得られ、該試料は、1つ又は複数の目的とするメチル化部位[例えば、シトシン、「マイクロアレイフィーチャ(microarray feature)」、又は選択プライマーから増幅したアンプリコン]、及びアンプリコンから3'又は5'方向のいずれか又は両方の最大4キロベース(kb)のフランキング核酸配列[すなわち、「ウィングスパン(wingspan)」]を包含する核酸を含む。この範囲は、2つ又はそれより多くの試料中のDNA間で示差的なメチル化に関してスクリーニングする前にDNAをランダムに断片化することにより得られるDNAフラグメントの長さに対応する。
診断方法のいくつかの実施形態において、1つ又は複数のDNA領域のウィングスパンは、マイクロアレイフィーチャによって表された配列にとって3'及び5'方向の両方において、約0.5kb、0.75kb、1.0kb、1.5kb、2.0kb、2.5kb、3.0kb、3.5kb又は4.0kbである。DNA領域中のメチル化部位は、非コード転写制御配列(例えば、プロモーター、エンハンサー等)に、又は下記のTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、又はTable 4(表4)に列挙された示差的にメチル化された遺伝子のイントロン及びエクソンを包含するコード配列に存在していてもよい。
診断方法のいくつかの実施形態において、本方法は、下記のTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、又はTable 4(表4)に列挙されたDNAメチル化バイオマーカー遺伝子の1つ又は複数のプロモーター領域(例えば、転写開始部位から5'に、転写開始部位を通って約1.0kb、1.5kb、2.0kb、2.5kb、3.0kb、3.5kb又は4.0kbの核酸配列を含む)におけるメチル化状態を検出することを含む。また下記のTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、又はTable 4(表4)に列挙されたDNAメチル化バイオマーカー遺伝子のDNA領域は、天然に存在する変異体、例えば、異なる対象集団中で発生する変異体、及び単一ヌクレオチド多型(SNP)に起因する変異体等も包含する。SNPは、多様なサイズの単純反復配列、例えばジヌクレオチド及びトリヌクレオチド反復配列における挿入及び欠失を含む。変異体は、少なくとも90%、95%、98%、99%の配列同一性を共有する、すなわち、本明細書で説明されるDNA領域に対して1つ又は複数の欠失、付加、置換、逆配列等を有する、同じDNA領域からの[例えば、下記のTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、又はTable 4(表4)に記載されているような、又はDNAメチル化バイオマーカー遺伝子それぞれに応じた染色体及び物理的位置から同定することができる]核酸配列を包含する。
診断方法のいくつかの実施形態において、難治性がんを有する対象からの試料中の1個より多くのDNA領域(又はそれらの一部)のDNAメチル化状況が検出される。いくつかの実施形態において、難治性がんを有する対象からの試料中で、DNA領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、又は97のDNAメチル化状態が、決定される。
診断方法のいくつかの実施形態において、選択されたDNA領域内の染色体DNA又はそれらの一部(例えば、少なくとも1つのシトシン)のDNAメチル化の存在若しくは非存在又は量を、難治性がんを有する対象からの試料中で検出して、難治性がんを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測するためのDNAメチル化生物学的マーカーのパネルと比較する。本明細書で説明される示差的にメチル化されたDNA領域の一部は、少なくとも1つの可能性のあるDNAメチル化部位(すなわち、シトシン)を含むと予想され、いくつかの実施形態において、一般的に、2、3、4、5、10、又はそれより多くの可能性のあるメチル化部位を含んでいてもよい。
診断方法のいくつかの実施形態において、示差的にメチル化されたDNA領域の少なくとも20、50、100、200、500個又はそれより多くの連続した塩基対内の全てのシトシンのメチル化状態が決定される。
DNAメチル化生物学的マーカーの個別パネルの一実施形態において、難治性がんを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測するのに使用されるDNAメチル化生物学的マーカーのパネルは、下記のTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、又はTable 4(表4)に列挙されたDNAメチル化バイオマーカー遺伝子の1つ又は複数を含む。
本発明の診断方法の好ましい実施形態において、急性骨髄性白血病(AML)、MDS(骨髄異形成症候群)、MPN(骨髄増殖性新生物)、MDS/MPN重複、及び好酸球増加症を伴うPDGFR/FGFR1の再構成を伴う骨髄性/リンパ性新生物、又は関連障害からなる群から選択される難治性がんを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測するのに使用されるDNAメチル化生物学的マーカーのパネルは、示差的にメチル化された遺伝子である、RERE、CASZ1、KIAA1026、ID3、ADCY10、RNASEL、PGBD5、AKT3、SLC8A1、PLEKHH2、SGPP2、GNAT1、ALDH1L1、AGTR1、MSX1、KCNIP4、G3BP2、FLJ44606、PCDHA1、PCDHGA4、ARSI、CPEB4、SCAND3、BAT2、HLA-DRB1、MOCS1、SPACA1、LOC389458、EVX1、WNT16、SNAI2、HEY1、CRTAC1、HCCA2、C11orf58、AHNAK、ASAM、GALNT6、GALNT9、FLT1、DZIP1、ALOX12P2、CCDC144B、TANC2、ONECUT3、MRI1、FOSB、CDH22、CLDN14、及びSEC14L4、それらの任意の変異体、又はそれらの任意の組合せ[下記の図1及びTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、又はTable 4(表4)を参照]に関連するDNAメチル化生物学的マーカーを含む。
本発明の診断方法の更に別の好ましい実施形態において、難治性がんを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測するのに使用されるDNAメチル化生物学的マーカーのパネルは、亜硫酸水素塩DNA配列決定によって検証した場合、CASZ1及びFOSB遺伝子[下記の図1及びTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、又はTable 4(表4)を参照]に特異的に結合するDNAメチル化生物学的マーカーを含む。
III DNAメチル化プロファイルを決定する方法
がん細胞におけるDNAメチル化プロファイルを決定するために、様々なゲノムスキャニング法を使用することができる。例えば、1つの方法は、制限ランドマークゲノムスキャニング(Kawaiら、Mol. Cell. Biol. 14:7421〜7427、1994)を含み、別の例は、メチル化感受性任意プライムPCR(Gonzalgoら、Cancer Res. 57:594〜599、1997)を含む。特異的なCpG部位におけるメチル化パターンの変化は、メチル化感受性制限酵素を用いたゲノムDNAの消化、それに続く目的とする領域のサザン分析(消化-サザン法)によってモニターされてきた。ゲノム配列決定は、DNAメチル化パターン及び5-メチルシトシン分布の分析に関しては、亜硫酸水素塩処理を使用することによって簡単になってきている(Frommerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1827〜1831、1992)。加えて、メチル化分析の開始点としてDNAの亜硫酸水素塩処理を利用する他の技術も報告されている。このような技術としては、メチル化特異的PCR(MSP)(Hermanら Proc. Natl. Acad Sci. USA 93:9821〜9826、1992);及び亜硫酸水素塩変換DNAから増幅されたPCR産物の制限酵素消化(Sadri及びHornsby、Nucl. Acids Res. 24: 5058〜5059、1996;並びにXiong及びLaird、Nucl. Acids Res. 25: 2532〜2534、1997)が挙げられる。
がん細胞におけるDNAメチル化プロファイルを決定するために、様々なゲノムスキャニング法を使用することができる。例えば、1つの方法は、制限ランドマークゲノムスキャニング(Kawaiら、Mol. Cell. Biol. 14:7421〜7427、1994)を含み、別の例は、メチル化感受性任意プライムPCR(Gonzalgoら、Cancer Res. 57:594〜599、1997)を含む。特異的なCpG部位におけるメチル化パターンの変化は、メチル化感受性制限酵素を用いたゲノムDNAの消化、それに続く目的とする領域のサザン分析(消化-サザン法)によってモニターされてきた。ゲノム配列決定は、DNAメチル化パターン及び5-メチルシトシン分布の分析に関しては、亜硫酸水素塩処理を使用することによって簡単になってきている(Frommerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1827〜1831、1992)。加えて、メチル化分析の開始点としてDNAの亜硫酸水素塩処理を利用する他の技術も報告されている。このような技術としては、メチル化特異的PCR(MSP)(Hermanら Proc. Natl. Acad Sci. USA 93:9821〜9826、1992);及び亜硫酸水素塩変換DNAから増幅されたPCR産物の制限酵素消化(Sadri及びHornsby、Nucl. Acids Res. 24: 5058〜5059、1996;並びにXiong及びLaird、Nucl. Acids Res. 25: 2532〜2534、1997)が挙げられる。
PCR技術は、遺伝子の突然変異の検出(Kuppuswamyら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 1143〜1147、1991)及び対立遺伝子特異的な発現の定量化(Szabo及びMann、Genes Dev. 9:3097〜3108、1995;並びにSinger-Samら、PCR Methods Appl. 1: 160〜163、1992)に使用することができる。このような技術は、PCRで生成されたテンプレートにアニールし、アッセイしようとする単一のヌクレオチドの5'に隣接して終結する内部プライマーを使用する。
DNA領域のDNAメチル化状態を検討するために、DNAメチル化マイクロアレイ、例えば1,505CpG(Illumina GoldenGate DNAメチル化ビーズアレイ)(Bibikova Mら Genome Res 2006; 16:383〜93; Christensen BCら PLoS Genet 2009; 5: 1000602; Byun HMら Hum Mol Genet 2009; 18:4808〜17; Martinez Rら Epigenetics 2009; 4:255〜64)、及び27,000CpG(Illumina Infiniumヒトメチル化27ビーズチップ)(Kanduri Mら Blood 2010; 115:296〜305; Bork Sら Aging Cell 2010; 9:54〜63; Teschendorff AEら Genome Res 2010; 20:440〜6; Rakyan VKら Genome Res 2010; 20:434〜9)、及びDNAメチル化研究(Illumina Infiniumヒトメチル化450ビーズチップ)マイクロアレイのための新規の450,000CpG部位プラットフォームの台を使用することができる。近年、450K DNAメチル化マイクロアレイが、結腸直腸がん及びDNAメチル化モデルを使用して、生物学的、機能的及び技術的な観点から検証されている(Sandovalら Epigenetics 6:6、692〜702;2011年6月)。
したがって、診断方法の一実施形態において、本発明の診断方法のDNAメチル化プロファイルの検証は、亜硫酸水素塩処理を使用したDNA配列決定、制限ランドマークゲノムスキャニング、メチル化感受性任意プライムPCR、メチル化感受性制限酵素を使用したサザン分析、メチル化特異的PCR、亜硫酸水素塩変換DNAから増幅したPCR産物の制限酵素消化、及びそれらの組合せからなる群から選択される検証方法を含む。
V.実施例
以下の実施例によって本発明を更に例示するが、それらは決して本発明の範囲に限定を課すものと解釈されないものとする。それとは逆に、様々な他の実施形態、改変、及びそれらの等価物も考慮することができ、当業者であれば、本明細書に記載の説明を読むことにより本発明の本質及び/又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなくそれらに想到し得ることが明確に理解されるものとする。
以下の実施例によって本発明を更に例示するが、それらは決して本発明の範囲に限定を課すものと解釈されないものとする。それとは逆に、様々な他の実施形態、改変、及びそれらの等価物も考慮することができ、当業者であれば、本明細書に記載の説明を読むことにより本発明の本質及び/又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなくそれらに想到し得ることが明確に理解されるものとする。
(実施例1)
MDSの骨髄生検試料の予測的遺伝子座のDNAメチル化シグネチャープロファイル(Illumina 450Kビーズチップ)
方法:
この研究は、様々な、加えてよりいっそう広範に適用できる抗がん薬のクラス、すなわち広範な特異性を有するチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)又は広域特異性キナーゼ阻害剤に対する治療応答を予測することができるDNAメチル化マーカーの同定を試みたものである。「応答」は、本明細書で使用される場合、重要なものとしては骨髄異形成症候群(MDS)の主要な特徴である輸血依存性貧血の緩和等の標準的な臨床基準によって定義される。
MDSの骨髄生検試料の予測的遺伝子座のDNAメチル化シグネチャープロファイル(Illumina 450Kビーズチップ)
方法:
この研究は、様々な、加えてよりいっそう広範に適用できる抗がん薬のクラス、すなわち広範な特異性を有するチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)又は広域特異性キナーゼ阻害剤に対する治療応答を予測することができるDNAメチル化マーカーの同定を試みたものである。「応答」は、本明細書で使用される場合、重要なものとしては骨髄異形成症候群(MDS)の主要な特徴である輸血依存性貧血の緩和等の標準的な臨床基準によって定義される。
難治性MDSを有する患者の生検を採取し、それらの骨髄前駆体の生検試料を、下記の図1及びTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、又はTable 4(表4)に列挙された示差的にメチル化された遺伝子からなる群から選択される1つ又は複数の遺伝子を含むDNAメチル化バイオマーカーの個別パネルを使用したDNAメチル化プロファイル分析に供した。次いで、FOSB及びCASZ1遺伝子のDNAメチル化プロファイルマーカーの高メチル化された状態を、亜硫酸水素塩DNA配列決定によって独立して検証した。
結果:
下記のTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、又はTable 4(表4)に列挙された示差的にメチル化された遺伝子の1つ又は複数を含むDNAメチル化バイオマーカーのDNAメチル化パーセントの決定は、難治性骨髄異形成症候群を有する患者においてTKI/キナーゼ阻害剤であるリゴサチブに対する応答の予測に役立つことが示された。これらの結果は、図1に表されたようなメチル化ヒートマップで、更にそれぞれ図2及び図3に表されたような亜硫酸水素塩DNA配列決定による検証で実証された。上記のTable 1(表1)に、DNAメチル化プロファイル遺伝子の特異的遺伝子座のそれぞれに関するInfiniumの相互参照番号、染色***置、塩基対位置、遺伝子名称、ベースライン平均、実験平均、変化倍数、平均の差、t統計値及びp値を列挙する。
下記のTable 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、又はTable 4(表4)に列挙された示差的にメチル化された遺伝子の1つ又は複数を含むDNAメチル化バイオマーカーのDNAメチル化パーセントの決定は、難治性骨髄異形成症候群を有する患者においてTKI/キナーゼ阻害剤であるリゴサチブに対する応答の予測に役立つことが示された。これらの結果は、図1に表されたようなメチル化ヒートマップで、更にそれぞれ図2及び図3に表されたような亜硫酸水素塩DNA配列決定による検証で実証された。上記のTable 1(表1)に、DNAメチル化プロファイル遺伝子の特異的遺伝子座のそれぞれに関するInfiniumの相互参照番号、染色***置、塩基対位置、遺伝子名称、ベースライン平均、実験平均、変化倍数、平均の差、t統計値及びp値を列挙する。
結論:
この実施例において、臨床的によく特徴付けられたシリーズの骨髄異形成症候群(MDS)を有する患者からの骨髄試料にDNAメチル化プロファイリング(Illumina 450Kビーズチップ)を適用することによって、本発明者らは、驚くべきことに、代表的な亜硫酸水素塩を用いた配列決定によりビーズチップデータ結果を検証することで、小さい個別の遺伝子パネルのメチル化パターンが、一般的なキナーゼ阻害薬、すなわちリゴサチブに対する治療応答の存在又は非存在を効果的に予測できることを見出した。
この実施例において、臨床的によく特徴付けられたシリーズの骨髄異形成症候群(MDS)を有する患者からの骨髄試料にDNAメチル化プロファイリング(Illumina 450Kビーズチップ)を適用することによって、本発明者らは、驚くべきことに、代表的な亜硫酸水素塩を用いた配列決定によりビーズチップデータ結果を検証することで、小さい個別の遺伝子パネルのメチル化パターンが、一般的なキナーゼ阻害薬、すなわちリゴサチブに対する治療応答の存在又は非存在を効果的に予測できることを見出した。
したがって、Table 1(表1)に列挙されたDNAメチル化バイオマーカー又はそれらの任意の具体的な下位組合せの個別パネルは、診断方法に使用することができ、対象の試料のDNA領域におけるDNAメチル化プロファイルマーカーのメチル化の程度が、対象の難治性がんを処置するための広域特異性キナーゼ阻害剤の耐性又は応答性の予測に役立つ。したがって、このメチル化プロファイリングは、治療耐性になるか、又はリゴサチブに治療的に応答する可能性がある患者を識別することができる。
このような難治性MDSを有する患者におけるキナーゼ阻害剤の治療有効性の事前通告は、有用な時間の節約になると予想され、及び/又は潜在的にこの衰弱性のがんの処置における救命診断ツールにもなると予想される。
(実施例2)
高メチル化遺伝子とMDSの骨髄生検試料の応答者予測的遺伝子座のDNAメチル化シグネチャープロファイル(Illumina 450Kビーズチップ)との結合は、リゴサチブに対する応答の予測に役立つ
方法:
32人の患者からの治療前の骨髄単核細胞を、Illumina 450Kメチル化アレイプラットフォームを使用して分析した。
高メチル化遺伝子とMDSの骨髄生検試料の応答者予測的遺伝子座のDNAメチル化シグネチャープロファイル(Illumina 450Kビーズチップ)との結合は、リゴサチブに対する応答の予測に役立つ
方法:
32人の患者からの治療前の骨髄単核細胞を、Illumina 450Kメチル化アレイプラットフォームを使用して分析した。
結果:
MDS患者のシリーズに更に1人の完全応答者(CR)及び更に9人の不応答者(NR)患者を追加し、この拡張した試料セットでDNAメチル化プロファイリング(Illumina 450Kビーズチップ)を用いて治療前骨髄生検試料を分析して、メチル化値を分析した後、元のセットからの17種のマーカー遺伝子座[(それぞれ試料番号1〜17(太字で強調表示)]は、応答の予測性能を保ち、下記のTable 2(表2)に表されるように、個々の(マーカーごとの)t検定のp値は<0.01であり、部分的なメチル化における絶対差は>0.10であった。また下記のTable 2(表2)に表されるように、追加の可能性のあるマーカー遺伝子座[それぞれ試料番号18〜137(太字ではない)]もこの拡張したシリーズで検出される。
MDS患者のシリーズに更に1人の完全応答者(CR)及び更に9人の不応答者(NR)患者を追加し、この拡張した試料セットでDNAメチル化プロファイリング(Illumina 450Kビーズチップ)を用いて治療前骨髄生検試料を分析して、メチル化値を分析した後、元のセットからの17種のマーカー遺伝子座[(それぞれ試料番号1〜17(太字で強調表示)]は、応答の予測性能を保ち、下記のTable 2(表2)に表されるように、個々の(マーカーごとの)t検定のp値は<0.01であり、部分的なメチル化における絶対差は>0.10であった。また下記のTable 2(表2)に表されるように、追加の可能性のあるマーカー遺伝子座[それぞれ試料番号18〜137(太字ではない)]もこの拡張したシリーズで検出される。
まとめると、32人のMDS患者のうち7人が、完全応答又はCR[輸血非依存性(TI)と2g/dLを超えるヘモグロビン(Hb)増加]を示し、10人が、部分的な応答又はPR(Hb増加を伴わないTI)を示し、15人が、不応答であるか又はNRを示した。メチル化強度による教師あり階層的クラスタリングから、完全応答者に関連する個別のプロファイルが実証された。数々の示差的にメチル化された遺伝子座の亜硫酸水素塩を用いた配列決定(これは、アンプリコン中の複数の連続したCpGの定量化を可能にする)により、Illumina 45OKデータが確認された。
下記のTable 3(表3)は、上記のTable 2(表2)において太字で示されたようなリゴサチブ処置した拡張したシリーズのMDS症例における薬物応答の強力な予測性能を保ったCpGジヌクレオチドに関する配列関係(それぞれ配列番号1〜17)を示す。予測的CpGは、それぞれ配列番号1〜17の各配列において[CG]として示される。これらのCpGのメチル化状態は、Illumina 450Kビーズチップにより製造元のプロトコールに従って、又は標準的な亜硫酸水素塩を用いた配列決定若しくはメチル化感受性ピロシーケンス等の関連方法によってスコア付けされる。
下記のTable 4(表4)は、CASZ1及びFOSB応答者並びに不応答者予測的遺伝子座のDNAメチル化シグネチャープロファイルに関するCpGジヌクレオチドの配列関係(それぞれ配列番号18〜20)を示す。
全般的に、遺伝子グループの高メチル化と応答者とは関連を有していた。NRからCRを最もよく識別した低及び高メチル化された遺伝子の機能的注釈から、最もメチル化の影響を受けた遺伝子が、転写調節、それに続いて細胞間接着、炎症性反応、アポトーシス及び増殖に関与する遺伝子と関連していたことが示された。
この分析において、観察された血液学的応答とゲノムのメチル化状態との相関から、リゴサチブ処置によって利益を得る可能性が高い輸血依存性の低危険度MDS患者を事前に選択する可能性が示唆された。
結論:
本明細書で説明される典型的な診断及び予後予測に関する有用性以外にも、追加の可能性のある使用としては、MDSを処置するための、最先端の個別医薬アプローチにおけるこのDNAメチル化バイオマーカーのパネルの適用が挙げられる。
本明細書で説明される典型的な診断及び予後予測に関する有用性以外にも、追加の可能性のある使用としては、MDSを処置するための、最先端の個別医薬アプローチにおけるこのDNAメチル化バイオマーカーのパネルの適用が挙げられる。
本発明の背景、詳細な説明、及び実施例で引用された各文書(特許、特許出願、ジャーナルの論文、抄録、実験室マニュアル、書籍、又は他の開示を包含する)の全開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
前述したいくつかの具体的な実施形態の説明は、他者が、現在の知見を適用することにより、このような具体的な実施形態を容易に改変したり又は全体的な概念から逸脱することなく様々な適用に適合させたりすることができる程度の十分な情報を提供するものであり、それゆえに、このような適合及び改変は、開示された実施形態の意味及び等価物の範囲内に包含されるべきであり、そのように意図されている。本明細書で採用されている表現又は用語は、説明のためであって限定のためではないと理解されるものとする。図面及び説明には典型的な実施形態が開示されており、具体的な用語が採用されていたかもしれないが、特に他の指定がない限り、それらは限定の目的のためではなく総称的及び説明的な意味でのみ使用され、したがって特許請求の範囲はそれにより限定されない。更に当業者は、本明細書で論じられた方法の所定の工程は代替の順番で並べられてもよいし、又は工程は組み合わされてもよいことを理解していると予想される。それゆえに、添付の特許請求の範囲は本明細書で開示された特定の実施形態に限定されないことが意図される。当業者は、わずかな慣例的実験を使用しさえすれば、本明細書で説明した本発明の実施形態の多くの等価物を認識し、又は確認することができると予想される。このような等価物は、以下の特許請求の範囲に包含される。
Claims (22)
- 難治性がんを有する対象における広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測するための診断方法であって、(a)対象の組織から試験ゲノムDNA試料を得る工程と;(b)試験ゲノムDNA試料のDNAメチル化プロファイルを分析する工程と;(c)試験ゲノムDNA試料の1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列のDNAメチル化プロファイルを、Table 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、若しくはTable 4(表4)に列挙された示差的にメチル化された遺伝子の1つ若しくは複数の遺伝子又はそれらの任意の下位組合せを含むDNAメチル化プロファイルバイオマーカーの個別パネルの対応する配列と比較して、試験ゲノムDNA試料の遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルパターンを決定することにより、難治性がんを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測する工程とを含む方法。
- 対象の組織が、がん組織、又は推定上のがん組織に由来する、請求項1に記載の方法。
- 難治性がんが、血液系がんである、請求項1に記載の方法。
- 難治性血液系がんが、骨髄異形成症候群である、請求項3に記載の方法。
- 試験ゲノムDNA試料が、骨髄異形成症候群患者の骨髄に由来する、請求項1に記載の方法。
- DNAメチル化プロファイルバイオマーカーの個別パネルが、Table 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、若しくはTable 4(表4)に列挙された示差的にメチル化された遺伝子の1つ若しくは複数、それらの任意の変異体又はそれらの任意の下位組合せを含む遺伝子のDNAメチル化プロファイルを含む、請求項5に記載の方法。
- 広域特異性キナーゼ阻害剤が、PI3-キナーゼ、ポロ様キナーゼ1(PLK-1)、又はその両方を含む、請求項1に記載の方法。
- 広域特異性キナーゼ阻害剤が、リゴサチブである、請求項1に記載の方法。
- 難治性がんが、造血系がん、膵臓がん、頭頸部がん、皮膚の腫瘍、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)における微小残存病変(MRD)、急性骨髄性白血病(AML)、肺がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、結腸がん、黒色腫又は他の血液系がん及び固形腫瘍を含む、請求項1に記載の方法。
- 造血系がんが、骨髄異形成症候群である、請求項10に記載の方法。
- 遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルの決定が、亜硫酸水素塩処理を使用したDNA配列決定、制限ランドマークゲノムスキャニング、メチル化感受性任意プライムPCR、メチル化感受性制限酵素を使用したサザン分析、メチル化特異的PCR、亜硫酸水素塩変換DNAから増幅したPCR産物の制限酵素消化、及びそれらの組合せからなる群から選択される方法を含む、請求項1に記載の方法。
- 遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルの決定が、(a)試験ゲノムDNA試料を亜硫酸水素ナトリウムと反応させて、任意の5-メチルシトシン残基を不変のまま残しつつ非メチル化シトシン残基をウラシル残基に変換して、亜硫酸水素塩変換DNA試料に特異的なプライマーのための結合部位を有する露出した亜硫酸水素塩変換DNA試料を作り出す工程と;(b)トップ鎖又はボトム鎖に特異的なプライマーを使用してPCR増幅手順を行う工程と;(c)PCR増幅産物を単離する工程と;(d)Table 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、又はTable 4(表4)に列挙された示差的にメチル化された遺伝子の1つ又は複数に対する遺伝子特異的なプライマー、dNTP及びTaqポリメラーゼを使用してプライマー伸長反応を行う工程であって、該遺伝子特異的なプライマーが、亜硫酸水素塩変換DNA試料に相補的であり、1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列のシトシン残基の5'に隣接して終結する約15-merから約22-merの長さの配列を含む工程と;(e)DNAメチル化バイオマーカーの個別パネルに対する第1のプライマーによって伸長した塩基の同一性を決定することによって、1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列の遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルを決定する工程であって、遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルが、難治性がんを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測する工程とを含む、請求項1に記載の方法。
- dNTPが、放射標識及び蛍光標識からなる群から選択される標識で標識され、第1のプライマーによって伸長した塩基の同一性を決定することが、標識されたdNTPの取り込みを測定することによってなされる、請求項13に記載の方法。
- 試験ゲノムDNA試料が、全血、バフィーコート、単離された単核細胞、血漿、血清、骨髄、便、結腸流出液、尿、唾液、又はそれらの組合せに由来する、請求項1に記載の方法。
- 難治性がんが、骨髄異形成症候群を含み、少なくとも1つのDNAメチル化プロファイルバイオマーカーが、RERE、CASZ1、KIAA1026、ID3、ADCY10、RNASEL、PGBD5、AKT3、SLC8A1、PLEKHH2、SGPP2、GNAT1、ALDH1L1、AGTR1、MSX1、KCNIP4、G3BP2、FLJ44606、PCDHA1、PCDHGA4、ARSI、CPEB4、SCAND3、BAT2、HLA-DRB1、MOCS1、SPACA1、LOC389458、EVX1、WNT16、SNAI2、HEY1、CRTAC1、HCCA2、C11orf58、AHNAK、ASAM、GALNT6、GALNT9、FLT1、DZIP1、ALOX12P2、CCDC144B、TANC2、ONECUT3、MRI1、FOSB、CDH22、CLDN14、及びSEC14L4、それらの任意の変異体、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
- 難治性がんが、骨髄異形成症候群を含み、少なくとも1つのDNAメチル化プロファイルバイオマーカーが、不応答者において高メチル化されているFOSB遺伝子又はその変異体である、請求項1に記載の方法。
- 難治性がんが、骨髄異形成症候群を含み、少なくとも1つのDNAメチル化プロファイルバイオマーカーが、応答者において高メチル化されているCASZ1遺伝子又はその変異体である、請求項1に記載の方法。
- 遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルの決定が、式1の化合物の投与の前に、それと共に、又はその後になされる、請求項1に記載の方法。
- 難治性がんの診断、予後予測、若しくは処置、又はそれらの組合せを達成する、請求項1に記載の方法。
- 難治性がんを有する対象を処置するための方法であって、(a)対象の組織から試験ゲノムDNA試料を得る工程と;(b)試験ゲノムDNA試料のDNAメチル化プロファイルを分析する工程と;(c)試験ゲノムDNA試料の1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列のDNAメチル化プロファイルを、Table 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、若しくはTable 4(表4)に列挙された示差的にメチル化された遺伝子の1つ若しくは複数又はそれらの任意の下位組合せを含むDNAメチル化プロファイルバイオマーカーの個別パネルの対応する配列と比較して、試験ゲノムDNA試料の遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルを決定して、難治性がんを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を事前に予測する工程と;(d)広域特異性キナーゼ阻害剤で対象を処置する工程とを含む方法。
- 難治性がんを有する対象における広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測するための試験キットであって、試験ゲノムDNA試料のDNAメチル化プロファイルを決定し、試験ゲノムDNA試料の1つ又は複数のCpGジヌクレオチド配列のDNAメチル化プロファイルを、Table 1(表1)、Table 2(表2)、Table 3(表3)、若しくはTable 4(表4)に列挙された示差的にメチル化された遺伝子の1つ若しくは複数又はそれらの任意の下位組合せを含むDNAメチル化プロファイルバイオマーカーの個別パネルの対応する配列と比較するための成分及びアッセイを含み、遺伝子座特異的なDNAメチル化プロファイルが、難治性がんを有する対象の処置についての広域特異性キナーゼ阻害剤の治療効能を予測するキット。
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