背景
サイレント情報レギュレーター(Silent Information Regulator)(SIR)ファミリーの遺伝子は、始原細菌から真核生物までに及ぶ生物のゲノムに存在する保存性の高い遺伝子群である。コードされているSIRタンパク質は、遺伝子サイレンシングの調節からDNA修復までの多様なプロセスに関与する。このファミリーの中で十分に特徴付けられている遺伝子はS.セレビシエ(S. cerevisiae)SIR2であり、これは、酵母接合型、テロメア位置効果および細胞老化を特定する情報を含むサイレンシングHM遺伝子座に関与する。酵母Sir2タンパク質は、ヒストン脱アセチル化酵素のファミリーに属す。SIR遺伝子ファミリーのメンバーによりコードされているタンパク質は、250アミノ酸のコアドメインに高い配列保存を示す。ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)におけるSir2ホモログであるCobBは、NAD(ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド)依存性ADPリボシルトランスフェラーゼとして機能する。
Sir2タンパク質は、共通基質としてNADを使用するクラスIII脱アセチル化酵素である。多くが遺伝子サイレンシングに関与する他の脱アセチル化酵素とは違い、Sir2は、トリコスタチンA(TSA)のようなクラスIおよびIIヒストン脱アセチル化酵素阻害剤に不感受性である。
Sir2によるアセチル−リシンの脱アセチル化は、NAD加水分解と強く共役しており、ニコチンアミドと新規なアセチル−ADPリボース化合物を産生する。その機能にはSir2のNAD依存性脱アセチル化酵素活性が不可欠であり、このことは酵母においてその生物学的役割を細胞代謝と結びつけ得る。哺乳動物のSir2ホモログは、NAD依存性ヒストン脱アセチル化酵素活性を有する。
生化学的研究では、Sir2がヒストンH3およびH4のアミノ末端テールを容易に脱アセチル化して、2’/3’−O−アセチル−ADP−リボース(OAADPR)とニコチンアミドの形成をもたらし得ることが示されている。SIR2の余分なコピーを有する系統は、rDNAサイレンシングの増強と30%長い寿命を示す。また、C.エレガンス(C. elegans)SIR2ホモログであるsir−2.1、およびキイロショウジョウバエ(D. melanogaster)dSir2遺伝子の余分なコピーはこれらの生物において寿命を延長することも示されている。このことは、老化に関するSIR2依存性調節経路が進化の早期に発生し、よく保存されていることを意味する。今日、Sir2遺伝子は、生物の健康およびストレス耐性を増進して逆境に生き残る機会を高めるために進化してきたと考えられる。
ヒトでは、Sir2の保存された触媒ドメインを共通に持つ数種のSir2様遺伝子(SIRT1〜SIRT7)が存在する。SIRT1は、Sir2と最も高い程度の配列類似性を有する核タンパク質である。SIRT1は、腫瘍抑制因子p53、細胞シグナル伝達因子NF−κB、およびFOXO転写因子を含む、脱アセチル化による複数の細胞標的を調節する。
SIRT3は、原核生物および真核生物で保存されているSIRT1のホモログである。SIRT3タンパク質は、N末端に位置するユニークなドメインによりミトコンドリアのクリスタに標的化される。SIRT3は、NAD+依存性タンパク質脱アセチル化酵素活性を有し、特に、代謝活性のある組織で遍在発現する。ミトコンドリアに移行すると、SIRT3は、ミトコンドリアマトリックスプロセシングペプチダーゼ(MPP)により切断されて、より小さな活性型になると考えられている。
70年の間、カロリー制限は哺乳動物の健康を改善し、寿命を延長することが知られていた。酵母の寿命も、後生動物の寿命と同様に、低グルコースなどのカロリー制限を模した介入により延長される。SIR2遺伝子を欠く酵母およびハエの両方は、カロリー制限しても長く生きないという発見は、SIR2遺伝子が、制限されたカロリー食の有益な健康効果に介在するという証拠を提供する。さらに、酵母グルコース応答性cAMP(アデノシン3’,5’−一リン酸)依存性(PKA)経路の活性を低下させる突然変異は、野生型細胞における寿命を延長するが変異型sir2株では延長せず、このことはSIR2がおそらくカロリー制限経路の重要な下流成分であることを示す。
治療的可能性に加え、SIRT1活性および小分子サーチュイン調節剤による活性化の構造的および生物物理学的研究は、サーチュインの生物学的機能の理解、さらにサーチュイン活性化の作用機序の理解を進めるため、および新規なサーチュイン調節剤を同定するアッセイの開発を助けるために有用であろう。
概要
本明細書では、新規なサーチュイン調節化合物およびその使用方法が提供される。
一面において、本発明は、以下に詳細に記載されるような構造式(I)、(IIa)、(IIb)、(IIIa)、(IIIb)および(IV)のサーチュイン調節化合物を提供する。
別の面では、本発明は、サーチュイン調節化合物、またはサーチュイン調節化合物を含んでなる組成物を使用するための方法を提供する。特定の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、例えば、細胞寿命の延長、ならびに、例えば、老化またはストレスに関連する疾患または障害、糖尿病、肥満、神経変性疾患、化学療法薬誘発性神経障害、虚血イベントに関連する神経障害、眼疾患および/または障害、心血管疾患、血液凝固障害、炎症、および/または潮紅などを含む多様な疾患および障害の治療および/または予防を含む、様々な治療適用に使用することができる。サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物はまた、ミトコンドリア活性の増強から利益を受けると思われる対象における疾患もしくは障害を治療するため、筋肉性能を向上させるため、筋肉のATPレベルを高めるため、または低酸素もしくは虚血に関連する筋肉組織損傷を治療もしくは予防するために使用してもよい。他の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、例えば、ストレスに対する細胞の感受性の増強、アポトーシスの増加、癌の治療、食欲の刺激、および/または体重増加の刺激などを含む、様々な治療適用のために使用してもよい。以下にさらに記載されるように、本方法は、それを必要とする対象に薬学上有効な量のサーチュイン調節化合物を投与することを含んでなる。
特定の面では、サーチュイン調節化合物は、単独で投与してもよいし、または他のサーチュイン調節化合物もしくは他の治療薬を含む他の化合物と組み合わせて投与してもよい。
図1は、化合物1の1H−NMRスペクトルを示す。
図2は、化合物1の13C−NMRおよびAPT NMRスペクトルを示す。
図3は、(A)全長SIRT1のHDX−MS、(B)SIRT1cc活性に対するCBSの効果の酵素的特徴、(C)ミニhSIRT1(ΔN)とミニhSIRT1のSTAC活性化のピボットプロット、(D)ミニhSIRT1(ΔCBS)とミニhSIRT1のSTAC活性化のピボットプロット、および(E)ミニhSIRT1(E230K)とミニhSIRT1のSTAC活性化のピボットプロットを示す。
図4は、合成SIRT1活性剤(1、4〜9)、阻害剤(2)、および蛍光偏光アッセイプローブ(3)の化学構造を示す。
図5は、STACの不在下または存在下でのミニhSIRT1のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を示す。
図6は、(A)CBSペプチドに結合した際のSIRT1ccのHDX−MSプロファイルの示差的摂動、(B)ミニhSIRT1/1複合体とySIR2の構造比較、(C)ミニhSIRT1/1複合体、ミニhSIRT1/1/2複合体およびミニhSIRT1/1/Ac−p53−7mer/CarbaNAD四元複合体のN末端SBDの構造比較を示す。
図7は、Ac−p53(W5)基質とともにOAcADPrアッセイを用いて野生型と(A)I223Aまたは(B)E230K SIRT1を比較する活性化用量反応曲線を示す。
図8は、野生型と変異型全長hSIRT1の活性化比較を示す。
図9は、(A)ミニhSIRT1/Ac−p53相互作用の界面、(B)ミニhSIRT1/carbaNAD相互作用の界面、(C)ミニhSIRT1/2相互作用の界面を示す。
図10は、(A)SIRT1に対するFPプローブ3の結合、(B)SIRT1/3複合体に対する4の競合を示す。
図11は、全長I223R hSIRT1によるSTAC結合の障害を示す。
図12は、ミニhSIRT1(R446A)とミニhSIRT1のSTAC活性化のピボットプロットを示す。
発明の具体的説明
1.定義
本明細書で使用する場合、以下の語句は下記に示す意味を有するものとする。そうではないことが定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者に一般に理解されているのと同じ意味を有する。
用語「薬剤」は、本明細書では、化学化合物、化学化合物の混合物、生体高分子(例えば、核酸、抗体、タンパク質もしくはその一部、例えば、ペプチド)、または細菌、植物、真菌、もしくは動物(特に、哺乳動物)細胞もしくは組織などの生体材料から形成される抽出物を表して使用される。
化合物に関して言う場合の用語「生物学的に利用可能な(bioavailable)」は技術分野で認識されており、投与された化合物の全部または一部が、それが投与される対象または患者に吸収されるか、組み込まれるか、またはそうでなければ生理学的に利用可能であることを可能とする化合物の形態を意味する。
「サーチュインの生物学的に活性な部分」は、脱アセチル化能などの生物活性を有する(「触媒活性のある」)サーチュインタンパク質の部分を意味する。サーチュインの触媒活性部分は、サーチュインのコアドメインを含んでなり得る。例えば、NAD+結合ドメインと基質結合ドメインを包含する、GenBank受託番号NP_036370のSIRT1の触媒活性部分は、限定されるものではないが、GenBank受託番号NM_012238のポリヌクレオチドによりコードされる、GenBank受託番号NP_036370のアミノ酸240〜664または240〜505を含み得る。従って、この領域は、コアドメインと呼ばれる場合がある。SIRT1の他の触媒活性部分もまたコアドメインと呼ばれることがあり、GenBank受託番号NM_012238のヌクレオチド834〜1394によりコードされる、GenBank受託番号NP_036370の約アミノ酸261〜447;GenBank受託番号NM_012238のヌクレオチド777〜1532によりコードされる、GenBank受託番号NP_036370の約アミノ酸242〜493;またはGenBank受託番号NM_012238のヌクレオチド813〜1538によりコードされる、GenBank受託番号NP_036370の約アミノ酸254〜495を含む。SIRT1の別の「生物学的に活性な」部分は、化合物結合部位に重要なコアドメインのN末端側のドメインを含んでなる、GenBank受託番号NP_036370のアミノ酸62〜293または183〜225である。
用語「伴侶動物」は、ネコおよびイヌを意味する。本明細書で使用する場合、用語「イヌ」は、カニス・ファミリアス(Canis familiaris)種の任意のメンバーを表し、それには多数の異なる品種が存在する。用語「ネコ」は、飼いネコおよびネコ科(Felidae)ネコ属(Felis)の他のメンバーを含むネコ動物を意味する。
「糖尿病」は、高血糖またはケトアシドーシス、ならびに長期高血糖状態から生じる慢性遺伝的代謝異常または糖耐性における疾患を意味する。「糖尿病」は、疾患のI型およびII型(非インスリン依存性真性糖尿病またはNIDDM)の両形態を包含する。糖尿病のリスク因子としては以下の因子が含まれる:男性では40インチもしくは女性では35インチを超える胴囲、130/85mmHg以上の血圧、150mg/dlを超えるトリグリセリド、100mg/dlを超える空腹時血糖、または男性では40mg/dlもしくは女性では50mg/dl未満の高密度リポタンパク質。
用語「ED50」は技術分野で認識されており、有効用量の尺度を意味する。特定の実施態様では、ED50は、その最大応答または効果を50%引き下げる薬物の用量、あるいは、被験者または摘出組織もしくは細胞などの調製物の50%に所定の応答をもたらす用量を意味する。用語「LD50」は、技術分野で認識されている致死用量の尺度である。特定の実施態様では、LD50は、被験体の50%が死に至る薬物の用量を意味する。用語「治療係数」は、LD50/ED50として定義される薬物の治療係数を意味する、技術分野で認識されている用語である。
用語「高インスリン血症」は、ある個体における血中のインスリンレベルが正常より高い状態を意味する。
用語「インスリン抵抗性」は、正常な量のインスリンが、インスリン抵抗性を有さない対象の生物学的応答に比べて正常以下の生物学的応答をもたらす状態を意味する。
本明細書に述べるような「インスリン抵抗性障害」は、インスリン抵抗性により引き起こされる、または寄与される任意の疾患または病態を意味する。例としては、糖尿病、肥満、代謝症候群、インスリン抵抗性症候群、X症候群、インスリン抵抗性、高血圧、高血圧症、高血中コレステロール、異脂肪血症、高脂血症、アテローム性動脈硬化性疾患(脳卒中、冠動脈疾患または心筋梗塞を含む)、高血糖症、高インスリン血症および/または高プロインスリン血症、耐糖能異常、インスリン放出遅延、糖尿病性合併症(冠動脈性心疾患、狭心症、鬱血性心不全、脳卒中、認知症における認知機能、網膜症、末梢神経障害、腎症、糸球体腎炎、糸球体硬化症、ネフローゼ症候群、高血圧性腎硬化症、数種の癌(例えば、子宮内膜癌、乳癌、前立腺癌、および結腸癌)、妊娠合併症、女性の生殖に関する健康の不全(poor female reproductive health)(例えば、生理不順、不妊症、***不順、多嚢性卵巣症候群(PCOS))、脂肪異栄養症、コレステロール関連障害(例えば、胆石、胆嚢炎および胆石症)、痛風、閉塞性睡眠時無呼吸および呼吸器系障害、骨関節炎、ならびに骨欠損(例えば、特に、骨粗鬆症)が挙げられる。
用語「家畜動物」は、例えば、ウシ類動物(ウシおよびウシ属(Bos)の他のメンバーを含む)、ブタ類動物(飼育ブタおよびイノシシ属(Sus)の他のメンバーを含む)、ヒツジ類動物(ヒツジおよびヒツジ属(Ovis)の他のメンバーを含む)、飼育ヤギおよびヤギ属(Capra)の他のメンバーなどの、食肉および様々な副産物のために飼養されるものを含む家畜化された四足動物、荷物運搬としての飼養などの特殊作業のために飼養される家畜化された四足動物、例えば、ウマ科(Equidae)ウマ属(Equus)の飼育ウマおよび他のメンバーを含むウマ類動物を意味する。
用語「哺乳動物」は当技術分野で公知であり、例示的哺乳動物としては、ヒト、霊長類、家畜動物(ウシ、ブタなどを含む)、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコなど)および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)が挙げられる。
「肥満」個体または肥満症に罹患している個体は一般に、少なくとも25以上の体格指数(BMI)を有する個体である。肥満はインスリン抵抗性に関連する場合も関連しない場合もある。
用語「非経口投与」および「非経口投与される」とは、技術分野で認識されており、経腸投与および局所投与以外の、通常には注射による投与様式を意味し、限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、および胸骨内注射および注入が含まれる。
「患者」、「対象」、「個体」または「宿主」は、ヒトまたは非ヒト動物のいずれかを意味する。
用語「薬学的に許容可能な担体」は、技術分野で認識されており、任意の対象組成物またはその成分の運搬または輸送ににかかわる、薬学的に許容可能な材料、組成物またはビヒクル、例えば、液体または固体増量剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入剤を意味する。各担体は、対象組成物およびその成分と適合し、かつ、患者に害がないという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容可能な担体として働き得る材料のいくつかの例としては、(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類;(2)コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン類;(3)セルロース、およびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよびセルロースアセテート;(4)粉末トラガカントガム;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオ脂および坐剤ワックスなどの賦形剤;(9)落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油などの油類;(10)プロピレングリコールなどのグリコール類;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール類;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル類;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱性物質除去水;(17)等張性生理食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;および(21)医薬製剤に使用される他の無毒な適合性物質が含まれる。
用語「予防する」は、技術分野で認識されており、局部的再発(例えば、疼痛)などの病態、癌などの疾患、心不全などの複合症候群(syndrome complex)、または他の任意の医学的状態に関して使用する場合、当技術分野で十分に理解されており、組成物を受容していない対象に比べて、対象の医学的状態の症状の頻度を少なくするまたは発症を遅延させる組成物の投与を含む。よって、癌の予防には、例えば、統計学的および/または臨床的に有意な量まで、非処置対照集団に比べて予防的処置を受けた患者集団において検出可能な癌増殖の数を低減すること、および/または非処置対照集団に比べて処置集団において検出可能な癌増殖の出現を遅延させることが含まれる。感染の予防としては、例えば、非処置対照集団に比べて処置集団において感染の診断数を低減すること、および/または非処置対照集団に比べて処置集団において感染の症状の発症を遅延させることが含まれる。疼痛の予防には、例えば、非処置対照集団に比べて処置集団の対象が受ける疼痛感覚の大きさを軽減すること、あるいはまた、遅延させることが含まれる。
用語「予防的処置」または「治療的処置」は技術分野で認識されており、宿主への薬物の投与を意味する。薬物が望ましくない病態(例えば、宿主動物の疾患または他の望ましくない状態)の臨床徴候の前に投与されれば、その処置は予防的であり、すなわち、望ましくない病態の発症からの宿主の保護であり、一方、望ましくない病態の徴候後に投与されれば、その処置は治療的である(すなわち、既存の望ましくない病態のまたはそれからの副作用を軽減、改善または維持することを意図される)。
組成物に関して用語「発熱物質不含」は、組成物が投与された対象において、有害な作用(例えば、刺激作用、発熱、炎症、下痢、呼吸困難、内毒素ショックなど)をもたらすような量で発熱物質を含有しない組成物を意味する。例えば、この用語は、例えばリポ多糖類(LPS)などの内毒素を含まないか、または実質的に含まない組成物を包含するものとする。
細胞の「複製寿命」は、一個の「母細胞」により産生される娘細胞の数を意味する。他方、「生活加齢(chronological aging)」または「生活寿命(chronological lifespan)」は、非***細胞の集団が、栄養素が奪われた際に生残し続ける時間を意味する。「細胞の寿命を延長する」または「細胞の寿命を引き延ばす」とは、細胞または生物に適用される場合、一細胞により産生される娘細胞の数を増やすこと;細胞もしくは生物の、ストレスに対処し、例えば、DNA、タンパク質に対する損傷に対抗する能力を高めること;および/または細胞もしくは生物の、例えば、ストレス(例えば、ヒートショック、浸透圧ストレス、高エネルギー放射線、化学的に誘導されるストレス、DNA損傷、不適当な塩レベル、不適当な窒素レベル、または不適当な栄養素レベル)などの特定の条件下でより長期間生残する、および生きた状態で存在する能力を高めることを意味する。寿命は、本明細書に記載の方法を使用すると、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%または20%〜70%、30%〜60%、40%〜60%の間、またはそれを超える程度まで延長可能である。
「サーチュイン調節化合物」は、サーチュインタンパク質のレベルを増すおよび/またはサーチュインタンパク質の少なくとも1つの活性を増強する化合物を意味する。例示的実施態様では、サーチュイン調節化合物は、サーチュインタンパク質の少なくとも1つの生物活性を少なくとも約10%、25%、50%、75%、100%、またはそれを超える程度で増強し得る。サーチュインタンパク質の例示的生物活性としては、例えばヒストンおよびp53の脱アセチル化;寿命の延長;ゲノム安定性の増強;サイレンシング転写;および母細胞と娘細胞の間の酸化タンパク質の分離の制御が含まれる。
タンパク質は、例えばアセチル化ペプチド基質の脱アセチル化を含む。
「サーチュインタンパク質」は、サーチュイン脱アセチル化酵素タンパク質ファミリーのメンバー、または好ましくは、酵母Sir2(GenBank受託番号P53685)、C.エレガンスSir−2.1(GenBank受託番号NP_501912)、およびヒトSIRT1(GenBank受託番号NM_012238およびNP_036370(またはAF083106))およびSIRT2(GenBank受託番号NM_012237、NM_030593、NP_036369、NP_085096、およびAF083107)タンパク質を含むsir2ファミリーを意味する。他のファミリーメンバーとしては、「HST遺伝子」(Sir2ホモログ(homologues of Sir two))と呼ばれる4つのさらなる酵母Sir2様遺伝子HST1、HST2、HST3およびHST4、ならびに5つの他のヒトホモログhSIRT3、hSIRT4、hSIRT5、hSIRT6およびhSIRT7(Brachmann et al. (1995) Genes Dev. 9:2888 and Frye et al. (1999) BBRC 260:273)が含まれる。
「SIRT1タンパク質」は、サーチュイン脱アセチル化酵素のsir2ファミリーのメンバーを意味する。特定の実施態様では、SIRT1タンパク質は、酵母Sir2(GenBank受託番号P53685)、C.エレガンスSir−2.1(GenBank受託番号NP_501912)、ヒトSIRT1(GenBank受託番号NM_012238またはNP_036370(またはAF083106))、マウスSIRT1(GenBank受託番号NM_019812またはNP_062786)、ならびにその等価物および断片を含む。別の実施態様では、SIRT1タンパク質は、GenBank受託番号NP_036370、NP_501912、NP_085096、NP_036369、またはP53685で示されるアミノ酸配列からなるか、またはから本質的になる配列を含んでなるポリペプチドを含む。SIRT1タンパク質は、GenBank受託番号NP_036370、NP_501912、NP_085096、NP_036369、またはP53685で示されるアミノ酸配列;1〜約2、3、5、7、10、15、20、30、50、75個またはそれを超える保存的アミノ酸置換を有する、GenBank受託番号NP_036370、NP_501912、NP_085096、NP_036369、またはP53685で示されるアミノ酸配列;GenBank受託番号NP_036370、NP_501912、NP_085096、NP_036369、またはP53685と少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列の全部または一部を含んでなるポリペプチド、およびその機能的断片を含む。本発明のポリペプチドはまた、GenBank受託番号NP_036370、NP_501912、NP_085096、NP_036369、またはP53685のホモログ(例えば、オーソログおよびパラログ)、変異体、または断片も含む。
本明細書で使用する場合、「SIRT2タンパク質」、「SIRT3タンパク質」、「SIRT4タンパク質」、「SIRT5タンパク質」、「SIRT6タンパク質」、および「SIRT7タンパク質」は、SIRT1タンパク質、特に、およそ275アミノ酸の保存された触媒ドメインにおいて相同である、他の哺乳動物、例えば、ヒトのサーチュイン脱アセチル化酵素タンパク質を意味する。例えば、「SIRT3タンパク質」は、SIRT1タンパク質と相同なサーチュイン脱アセチル化酵素タンパク質ファミリーのメンバーを意味する。特定の実施態様では、SIRT3タンパク質は、ヒトSIRT3(GenBank受託番号AAH01042、NP_036371、またはNP_001017524)およびマウスSIRT3(GenBank受託番号NP_071878)タンパク質、ならびにその等価物および断片を含む。特定の実施態様では、SIRT4タンパク質は、ヒトSIRT4(GenBank受託番号NM_012240またはNP_036372)を含む。特定の実施態様では、SIRT5タンパク質は、ヒトSIRT5(GenBank受託番号NM_012241またはNP_036373)を含む。特定の実施態様では、SIRT6タンパク質は、ヒトSIRT6(GenBank受託番号NM_016539またはNP_057623)を含む。別の実施態様では、SIRT3タンパク質は、GenBank受託番号AAH01042、NP_036371、NP_001017524、またはNP_071878で示されるアミノ酸配列からなるか、またはから本質的になる配列を含んでなるポリペプチドを含む。SIRT3タンパク質は、GenBank受託番号AAH01042、NP_036371、NP_001017524、またはNP_071878で示されるアミノ酸配列;1〜約2、3、5、7、10、15、20、30、50、75個またはそれを超える保存的アミノ酸置換を有する、GenBank受託番号AAH01042、NP_036371、NP_001017524、またはNP_071878で示されるアミノ酸配列;GenBank受託番号AAH01042、NP_036371、NP_001017524、またはNP_071878と少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列の全部または一部を含んでなるポリペプチド、ならびにその機能的断片を含む。本発明のポリペプチドはまた、GenBank受託番号AAH01042、NP_036371、NP_001017524、またはNP_071878のホモログ(例えば、オーソログおよびパラログ)、変異体、または断片も含む。特定の実施態様では、SIRT3タンパク質は、ミトコンドリアマトリックスプロセシングペプチダーゼ(MPP)および/またはミトコンドリア中間ペプチダーゼ(MIP)での切断により産生されるSIRT3タンパク質の断片を含む。
用語「立体異性体」は、本明細書で使用する場合、技術分野で認識されており、同じ分子構成を有し、それらの原子団の三次元空間配置だけが異なる、2以上の異性体のいずれもを意味する。本明細書で化合物または化合物属を記載するために使用される場合、立体異性体は、化合物の任意の一部または化合物全体を含む。例えば、ジアステレオマーおよび鏡像異性体は立体異性体である。
用語「全身投与」および「全身投与される」とは、技術分野で認識されており、対象組成物、治療薬または他の物質を経腸的または非経口的投与を意味する。
用語「互変異性体」は、本明細書で使用する場合、技術分野で認識されており、ある構造が互変異性(特に酸素に結合している水素の位置に関して2以上の構成配置で存在し得る構造異性の形態を意味する)の結果として存在し得る、可能性のある選択的構造のいずれか1つを意味する。本明細書で化合物または化合物属を記載するために使用する場合、「互変異性体」は容易に相互変換し、平衡状態で存在するものとさらに理解される。例えば、ケトおよびエノール互変異性体は、任意の所与の条件または条件群に関する平衡位置によって決定される割合で存在する。
用語「治療薬」は、技術分野で認識されており、対象において局所的または全身的に作用する任意の生物学的に、生理学的に、または薬理学的に活性な物質を意味する。この用語はまた、動物またはヒトにおける、疾患の診断、治癒、緩和、治療もしくは予防において、または望ましい心身の発達および/もしくは状態の増進において使用することを意図した任意の物質も意味する。
用語「治療効果」は、技術分野で認識されており、動物、特に、哺乳動物、より詳しくは、ヒトにおいて、薬理学的に活性な物質によって引き起こされる有益な局所的または全身的効果を意味する。「治療上有効な量」という句は、任意の処置に適用可能な合理的利益/リスク比で何らかの望まれる局所的または全身的効果をもたらすような物質の量を意味する。このような物質の治療上有効な量は、治療される対象および病態、対象の体重および齢、病態の重篤度、投与様式などによって異なり、当業者により容易に決定され得る。例えば、本明細書に記載の特定の組成物は、処置に適用可能な合理的利益/リスク比で望まれる効果をもたらす十分な量で投与することができる。
病態または疾患を「治療する」とは、病態または疾患の少なくとも1つの症状を治癒することならびに改善することを意味する。
用語「視力障害」は、治療(例えば、手術)で部分的にしか逆転できない、または逆転できない場合が多い視力の減退を意味する。特に重篤な視力障害は、「失明」または「視力喪失」と呼ばれ、完全な視力喪失、矯正レンズでは改善できない20/200より悪い視力、または20°直径(10°半径)未満の視野を意味する。
2.化合物
一面において、本発明は、例えば、老化またはストレスに関連する疾患または障害、糖尿病、肥満、神経変性疾患、眼疾患および障害、心血管疾患、血液凝固障害、炎症、癌、および/または潮紅などを含む多様な疾患および障害を治療および/または予防するための新規な化合物を提供する。サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物などの対象化合物はまた、ミトコンドリア活性の増強から利益を受けると思われる対象における疾患もしくは障害を治療するため、筋肉性能を向上させるため、筋肉のATPレベルを高めるため、または低酸素もしくは虚血に関連する筋肉組織損傷を治療もしくは予防するために使用してもよい。本明細書に開示される化合物は、本明細書に開示される医薬組成物および/または1以上の方法において使用するために好適であり得る。
特定の実施態様では、本発明の化合物は構造式(I)により表される。
本発明は、構造式(I)、(IIa)、(IIb)、(IIIa)、(IIIb)、および(IV)の、またはそうでなければ上記で示される化合物のいずれかの医薬組成物を含む。構造式(I)、(IIa)、(IIb)、(IIIa)、(IIIb)、および(IV)の化合物の医薬組成物は、1種類以上の薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含んでなり得る。
一実施態様では、本発明のサーチュイン調節化合物は構造式(I):
[式中、
mは、1または2であり;
nは、2または3であり;
pは、0〜4であり;
R1は、炭素環および複素環から選択され、ここで、R1は、ハロ、C1−C4アルキル、フルオロ置換C1−C4アルキル、−C≡N、−Y、−X−C(=O)−Y、−X−O−Y、−X−OR4、−X−C(=O)−NR3R3、−X−NH−C(=O)−Y−NR3R3、−X−NH−C(=O)−O−Y、−X−NR3R3、=O、−NH−S(=O)2−R3、−S(=O)2−R3、−S−R3、−(C3−C7)シクロアルキル、−C(=N)−NR3R3、−C(=N)−NH−X−NR3R3、−X−NH−C(=O)−Y、−C(=O)−NH−X、−NH−X、フェニル、−O−フェニル、3〜6員飽和または不飽和複素環および−O−(5〜6員飽和複素環)から独立に選択される1以上の置換基で置換されていてもよく、ここで、R1の任意のフェニル、3〜6員飽和もしくは不飽和複素環または−O−5〜6員飽和複素環置換基は、ハロ、−OR4、−X−O−Y、−CF3、−Y、−X−R3R3、−X−NH−C(=O)−Y−NR3R3、−X−NH−C(=O)−O−Y−(5〜6員飽和複素環または炭素環)、−X−C(=N)−NR3R3および−S−Yから選択される1以上の置換基で置換されていてもよく、かつ、置換可能な任意の窒素原子において、−Y、−C(=O)−Y、−C(=O)−O−Y、−C(=O)−OR4、−Y−C(=O)−Y−NR3R3、−Y−NH−C(=O)−O−Y、−Y−NH−C(=O)−OR4、−Y−NH2、−C(=O)−NH−Yまたは−C(=O)−3〜5員飽和炭素環で置換されていてもよく;
R2は、炭素環および複素環から選択され、ここで、R2は、ハロ、C1−C4アルキル、フルオロ置換C1−C4アルキル、−C≡N、−Y、−X−OR4、−X−O−Y、−SO2−R3、−X-NR3R3、−NH−S(=O)2R3、−C(=O)−NR3R3、−C(=O)−Y、−C(=O)−O−Y、−SO2−Ry、−SO2−NH−Ry、−SO2−NR3R3、3〜6員飽和炭素環または複素環およびフェニルから独立に選択される1以上の置換基で置換されていてもよく、ここで、R2の任意の3〜6員飽和複素環置換基は、任意の炭素原子において、ハロ、−CF3、−Y、−X−O−Y、−NH−Yおよび−N(Y)2から選択される1以上の置換基で置換されていてもよく、かつ、任意の窒素原子において、−C(=O)−O−Y、−Yおよび−C(=O)−Yから選択される1以上の置換基で置換されていてもよく、かつ、R2がN結合5〜7員飽和または不飽和複素環である場合、それは任意の窒素原子において、−C(=O)−O−Y、−Yおよび−C(=O)−Yから選択される1以上の置換基でさらに置換され;
各R3は、水素、−C(=N)−NH2、−C(=O)−Y、−Y、−Y−NH−C(=O)−O−Y、−Y−NH−C(=O)−OH、−Y−NH−C(=O)−CF3、−C(=O)−Y−3〜5員飽和複素環、−C(=O)−O−Y−(3〜5員飽和複素環)、−C(=O)−CF3、−C(=O)−O−Y、−C(=O)−OH、−C(=O)−O−CF3、−S(=O)2−Y、−S(=O)2−OHから独立に選択され;
2つのR3は、それらが結合されている窒素または炭素原子と一緒に、N、S、S(=O)、S(=O)2、およびOから独立に選択される1個の付加的ヘテロ原子を含んでなってもよい4〜8員飽和複素環を形成し、ここで、2つのR3により形成される複素環は、任意の炭素原子において、OH、ハロ、Y、NH2、NH−Y、N(Y)2、O−Yの1以上で置換されていてもよく、かつ、置換可能な任意の窒素原子において、C(=O)−O−Y、YまたはC(=O)−Yで置換されていてもよく;
各R4は、水素、Y、−CF3、−C(=O)−Y、−C(=O)−O−Y、−Y−C(=O)−Yまたは−Y−C(=O)−O−Yから独立に選択され;
R5およびR6は、水素、−OH、−OCF3、−O−Y、−O−C(=O)−Y、−O−C(=O)−O−Y、−O−C(=O)−NH−Y、−O−C(=O)−N(Y)2、−O−C(=O)−5〜6員飽和または不飽和複素環または炭素環(-O-C(=O)-5- to 6- membered saturated or unsaturated heterocycle or carbocycle)から独立に選択され、ここで、R5およびR6の一方だけがO−C(=O)−5〜6員飽和または不飽和複素環または炭素環であり、かつ、R5またはR6がO−C(=O)−5〜6員飽和または不飽和複素環または炭素環である場合、それはハロ、−OH、Y、−O−Y、−OCF3または−O−C(=O)−Yでさらに置換され;あるいは
R5およびR6は、それらが結合されている炭素原子と一緒に、=Oを形成し;
R7およびR8は、水素、ハロ、−OH、−O−YおよびYから独立に選択され;
R9は、水素、ハロ、−OH、−OCF3、−O−Y、Y、−O−C(=O)−Y、−NH−Yおよび−N(Y)2から選択され;
各Xは、C0−C5直鎖または分岐アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり;かつ、
各Yは、C1−C5直鎖または分岐アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり;
ここで、任意のYまたはXは、−OH、−C1−C4直鎖または分岐アルキル、−C1−C4アルケン、−C1−C4アルキニル、−O−(C1−C4アルキル)、−O−(C1−C4アルケン)、−O−(C1−C4アルキニル)、−C(=O)−C1−C4直鎖または分岐アルキル、−C(=O)−C1−C4アルケン、−C(=O)−C1−C4アルキニル、−C(=O)−O−C1−C4直鎖または分岐アルキル、−C(=O)−O−C1−C4アルケン、−C(=O)−O−C1−C4アルキニル、ハロ、−NH2、−NH(C1−C4アルキル)、−N(C1−C4アルキル)2、−(C1−C3直鎖または分岐アルキル)−NH−(=NH)−NH2、−NH(アルコキシ−置換C1−C4アルキル)、−NH(ヒドロキシ−置換C1−C4アルキル)、−N(アルコキシ−置換C1−C4アルキル)(ヒドロキシ−置換C1−C4アルキル)、−N(ヒドロキシ−置換C1−C4アルキル)2または−N(アルコキシ−置換C1−C4アルキル)2の1以上で置換されていてもよい]
で表され、またはその塩である。
特定の実施態様では、構造式(I)の化合物または塩は構造式(IIa):
で表される構造により特徴付けられる。
特定の実施態様では、構造式(I)の化合物または塩は、構造式(IIIa):
で表される構造により特徴付けられる。
特定の実施態様では、構造式(I)の化合物または塩は、構造(IIb)または(IIIb):
で表される構造により特徴付けられる。
特定の実施態様では、構造式(I)の化合物または塩は、構造式(IV):
で表される構造により特徴付けられる。
特定の実施態様では、構造式(I)の化合物または塩は、p=0を有する(すなわち、C(O)−NHとR1の間にメチレンが無い)ことを特徴とする。
特定の実施態様では、構造式(I)の化合物または塩は、p=1〜4を有する(すなわち、C(O)−NHとR1の間に1〜4個のメチレンがある)ことを特徴とする。
特定の実施態様では、構造式(I)の化合物または塩は、
から選択される−(CH2)p−R1基を有することを特徴とする。
特定の実施態様では、構造式(I)の化合物または塩は、フェニル、飽和もしくは不飽和5〜6員複素環、または縮合二環式8〜11員飽和もしくは不飽和炭素環もしくは複素環であるR1基を特徴とする。
特定の実施態様では、構造式(I)の化合物または塩は、縮合二環式8〜11員飽和または不飽和複素環であるR1を特徴とする。
特定の実施態様では、構造式(I)の化合物または塩は、
のいずれか1つから選択されるR1基を特徴とする。
特定の実施態様では、構造式(I)の化合物または塩は、
のいずれか1つから選択されるR1基を特徴とする。
特定の実施態様では、構造式(I)の化合物または塩は、5〜7員飽和炭素環または複素環、N結合複素環、および8〜11員飽和または不飽和複素環から選択されるR2基を特徴とする。
特定の実施態様では、構造式(I)の化合物または塩は、N結合5〜7員飽和または不飽和複素環であるR2基を特徴とする。
上記の特定の実施態様では、本化合物は、
のいずれか1つから選択される。
特定の実施態様では、構造式(I)の化合物または塩は、縮合二環式8〜11員飽和または不飽和複素環であるR2基を特徴とする。
上記の特定の実施態様では、本化合物は、
のいずれか1つから選択される。
特定の実施態様では、構造式(I)の化合物または塩は、
のいずれか1つから選択されるR2基を特徴とする。
特定の実施態様では、構造式(I)の化合物または塩は、
のいずれか1つから選択されるR2基を特徴とする。
特定の実施態様では、構造式(I)の化合物または塩は、
のいずれか1つから選択される。
特定の実施態様では、構造式(IIa)の化合物または塩は、
のいずれか1つから選択される。
特定の実施態様では、構造式(IIIa)の化合物または塩は、
のいずれか1つから選択される。
特定の実施態様では、構造式(IIb)の化合物または塩は、
から選択される。
特定の実施態様では、構造式(IIIb)の化合物または塩は、
から選択される。
特定の実施態様では、構造式(IV)の化合物または塩は、
のいずれか1つから選択される。
新規な本発明の化合物を含む本発明の化合物はまた、本明細書に記載の医薬組成物および方法において使用することもできる。
前記実施態様のいずれにおいても、C1−C4アルコキシ置換基は、例えば、1、2もしくは3個のメトキシ基、または1個のメトキシ基と1個のエトキシ基などの1以上のアルコキシ置換基を含み得る。例示的C1−C4アルコキシ置換基としては、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、およびtert−ブトキシが挙げられる。
前記実施態様のいずれにおいても、ヒドロキシ置換基は、2または3個のヒドロキシ基などの1以上のヒドロキシ置換基を含み得る。
前記実施態様のいずれにおいても、「ハロ置換」基は、1個のハロ置換基からペルハロ置換までを含む。例示的ハロ置換C1−C4アルキルとしては、CFH2、CClH2、CBrH2、CF2H、CCl2H、CBr2H、CF3、CCl3、CBr3、CH2CH2F、CH2CH2Cl、CH2CH2Br、CH2CHF2、CHFCH3、CHClCH3、CHBrCH3、CF2CHF2、CF2CHCl2、CF2CHBr2、CH(CF3)2、およびC(CF3)3が挙げられる。ペルハロ置換C1−C4アルキルとしては、例えば、CF3、CCl3、CBr3、CF2CF3、CCl2CF3およびCBr2CF3が挙げられる。
前記実施態様のいずれにおいても、「炭素環」基は、単環式炭素環具体例および/または多環式炭素環具体例、例えば、縮合式、架橋式または二環式炭素環具体例を意味し得る。本発明の「炭素環」基は、さらに、芳香族炭素環具体例および/もしくは非芳香族炭素環具体例、または、多環式具体例の場合には、1以上の芳香環および/もしくは1以上の非芳香環の両方を有する炭素環も意味し得る。多環式炭素環具体例は、二環式環、縮合環または架橋式二環であり得る。限定されない例示的炭素環としては、フェニル、シクロヘキサン、シクロペンタン、またはシクロヘキセン、アマンタジン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,5−シクロオクタジエン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.2.0]オクト−3−エン、ナフタレン、アダマンタン、デカリン、ナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、ノルボルナン、デカリン、スピロペンタン、メマンチン、ビペリデン、リマンタジン、カンファー、コレステロール、4−フェニルシクロヘキサノール(4-phenylcyclcohexanol)、ビシクロ[4.2.0]オクタン、メマンチンおよび4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−インデンおよびビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−エンが挙げられる。
前記実施態様のいずれにおいても、「複素環」基は、単環式複素環具体例および/または 多環式複素環式具体例、例えば、縮合式、架橋式または二環式複素環具体例を意味し得る。本発明の「複素環」基は、さらに、芳香族複素環具体例および/もしくは非芳香族複素環具体例、または多環式具体例の場合には、1以上の芳香環および/もしくは1以上の非芳香環の両方を有する複素環も意味し得る。多環式複素環具体例は、二環式環、縮合環または架橋式二環であり得る。限定されない例示的複素環としては、ピリジル、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ピリミジン、ベンゾフラン、インドール、キノリン、ラクトン、ラクタム、ベンゾジアゼピン、インドール、キノリン、プリン、アデニン、グアニン、4,5,6,7−テトラヒドロベンゾ[d]チアゾール、ヘキサミンおよびメテナミンが挙げられる。
本発明の特定の化合物は、特定の幾何異性形または立体異性形で存在し得る。本発明は、本発明の範囲内に入るものとして、シス−およびトランス−異性体、(R)−および(S)−鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、それらのラセミ混合物、およびそれらの他の混合物を含む、このような総ての化合物を企図する。アルキル基などの置換基に付加的不斉炭素原子が存在してもよい。このような異性体ならびにそれらの混合物は総て本発明に含まれることが意図される。
本明細書に記載の化合物およびそれらの塩はまた、対応する水和物(例えば、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物)または溶媒和物として存在することもできる。溶媒和物および水和物の調製に好適な溶媒は、当業者ならば一般に選択可能である。
本化合物およびそれらの塩は、非晶質形態または結晶形態(共結晶および多形体を含む)で存在することができる。
本発明のサーチュイン調節化合物は有利には、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性、特に、サーチュインタンパク質脱アセチル化酵素活性を調節する。
上記の特性とは別にまたは加えて、本発明の特定のサーチュイン調節化合物は、サーチュインタンパク質(例えば、SIRT1および/またはSIRT3タンパク質)の脱アセチル化活性の調節に有効な化合物濃度では下記の活性のうち1以上を実質的に持たない:PI3キナーゼの阻害、アルドレダクターゼの阻害、チロシンキナーゼの阻害、EGFRチロシンキナーゼのトランス活性化、冠動脈拡張、または鎮痙活性。
「アルキル」基または「アルカン」は、完全に飽和している直鎖または分岐非芳香族炭化水素である。一般に、直鎖または分岐アルキル基は、それ以外の定義がされない限り、1〜約20個、好ましくは、1〜約10個の炭素原子を有する。直鎖および分岐アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ペンチルおよびオクチルが挙げられる。C1−C4直鎖または分岐アルキル基はまた、「低級アルキル」基とも呼ばれる。
用語「アルケニル」(「アルケン」)および「アルキニル」(「アルキン」)は、それぞれ少なくとも1つの二重結合または三重結合を含むこと以外は、長さおよび可能性のある置換が上記アルキル基に類似する不飽和脂肪族基を意味する。
用語「芳香族炭素環」は、少なくとも1つの芳香環を含有する芳香族炭化水素環系を意味する。この環は他の芳香族炭素環または非芳香族炭素環と縮合またはそうでなければ結合していてもよい。芳香族炭素環基の例としては、炭素環式芳香族基、例えば、フェニル、ナフチル、およびアントラシルが挙げられる。
「アザビシクロ」は、環骨格中に窒素原子を含む二環式分を意味する。このビシクルの2環は、2つの相互結合原子で縮合されているか(例えば、インドール)、原子の配列で縮合されているか(例えば、アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン)、または1つの原子で連結されている(例えば、スピロ環)。
「ビシクル」または「二環式」は、2環の間で1、2または3個またはそれを超える原子が共有されている二環系を意味する。ビシクルには、2個の隣接する原子が2環のそれぞれに共有されている縮合ビシクル、例えば、デカリン、インドールが含まれる。ビシクルにはまた、2環が1個の原子を共有するスピロビシクル、例えば、スピロ[2.2]ペンタン、1−オキサ−6−アザスピロ[3.4]オクタンが含まれる。ビシクルにはさらに、2環の間で少なくとも3個の原子が共有される架橋式ビシクル、例えば、ノルボルナンが含まれる。
「架橋式ビシクル」化合物は、その系の両環により少なくとも3個の原子が共有される二環式環系であり、すなわち、それらは、2個のブリッジヘッド原子を接続する1以上の原子の少なくとも1つの架橋を含む。架橋アザビシクロは、それらの環のうち少なくとも1つに窒素原子を含む架橋二環式分子を意味する。
用語「Boc」は、tert−ブチルオキシカルボニル基(一般的なアミン保護基)を意味する。
用語「炭素環」、および「炭素環式」、本明細書で使用する場合、環の各原子が炭素である、飽和または不飽和環を意味する。用語炭素環は、芳香族炭素環と非芳香族炭素環の両方を含む。非芳香族炭素環は、総ての炭素原子が飽和しているシクロアルカン環と、少なくとも1つの二重結合を含むシクロアルケン環の両方を含む。「炭素環」は、5〜7員の単環式環および8〜12員の二環式環を含む。二環式炭素環の各環は、非芳香環および芳香環から選択され得る。炭素環は、2環の間で1、2または3個またはそれを超える原子が共有される二環式分子を含む。用語「縮合炭素環」は、各環が他の環と2個の隣接する原子を共有する二環式炭素環を意味する。縮合炭素環の各環は、非芳香環および芳香環(fromnon-aromaticaromatic rings)から選択され得る。例示的実施態様では、芳香環、例えば、フェニルは、非芳香族または芳香環、例えば、シクロヘキサン、シクロペンタン、またはシクロヘキセンと縮合されてよい。非芳香族(non-aromtatic)と芳香族二環式環のいずれの組合せも、原子価が許す限り、炭素環式の定義に含まれる。例示的「炭素環」としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,5−シクロオクタジエン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.2.0]オクト−3−エン、ナフタレンおよびアダマンタンが挙げられる。例示的縮合炭素環としては、デカリン、ナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.2.0]オクタン、4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−インデンおよびビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−エンが挙げられる。「炭素環」は、水素原子担持能のあるいずれの1以上の位置で置換されてもよい。
「シクロアルキル」基は、完全に飽和している(非芳香族)、環式炭化水素である。一般に、シクロアルキル基は、それ以外の定義がされない限り、3〜約10個の炭素原子、より一般には3〜8個の炭素原子を有する。「シクロアルケニル」基は、1以上の二重結合を含有する環式炭化水素である。
「ハロゲン」は、F、Cl、BrまたはIを表す。
「ハロゲン置換」または「ハロ」置換は、1以上の水素のF、Cl、BrまたはIでの置換を表す。
用語「ヘテロアリール」または「芳香族複素環」は、その構造が少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは、1〜4個のヘテロ原子、より好ましくは、1または2個のヘテロ原子を含む置換または非置換芳香族一環構造、好ましくは、5〜7員環、より好ましくは、5〜6員環を含む。用語「ヘテロアリール」はまた、1環、またはそれらの管のうち少なくとも1つが例えば複素芳香族であり、他の環式環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、芳香族炭素環、ヘテロアリール、および/もしくはヘテロシクリルであり得る2環を有する環系を含む。ヘテロアリール基としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジンが挙げられる。
用語「複素環」、および「複素環式」は、本明細書で使用する場合、例えば、N、O、BおよびS原子、好ましくは、N、O、またはSから選択される1以上のヘテロ原子を含んでなる非芳香環または芳香環を意味する。用語「複素環」は、「芳香族複素環」と「非芳香族複素環」の両方を含む。複素環は、4〜7員の単環式および8〜12員の二環式環を含む。複素環は、2環の間で1、2または3個またはそれを超える原子が共有される二環式分子を含む。二環式複素環の各環は、非芳香環および芳香環から選択され得る。用語「縮合複素環」は、それらの環のそれぞれが他の環と2個の隣接する原子を共有する二環式複素環を意味する。縮合複素環の各環は、非芳香環および芳香環から選択され得る。例示的実施態様では、芳香環、例えば、ピリジルは、非芳香族または芳香環、例えば、シクロヘキサン、シクロペンタン、ピロリジン、2,3−ジヒドロフランまたはシクロヘキセンと縮合されてよい。「複素環」基としては、例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ピリミジン、ベンゾフラン、インドール、キノリン、ラクトン、およびラクタムが挙げられる。例示的「縮合複素環」としては、ベンゾジアゼピン、インドール、キノリン、プリン、および4,5,6,7−テトラヒドロベンゾ[d]チアゾールが挙げられる。「複素環」は、水素原子担持能のあるいずれの1以上の位置で置換されてもよい。
「単環式環」としては、5〜7員芳香族炭素環またはヘテロアリール、3〜7員シクロアルキルまたはシクロアルケニル、および5〜7員非芳香族ヘテロシクリルが含まれる。例示的単環式基としては、置換または非置換複素環または炭素環、例えば、チアゾリル、オキサゾリル、オキサジニル、チアジニル、ジチアニル、ジオキサニル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、フラニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、ピラニル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、イミダゾリル、ピリジニル、ピロリル、ジヒドロピロリル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピリミジニル、モルホリニル、テトラヒドロチオフェニル、チオフェニル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘプタニル、アゼチジニル、オキセタニル、チイラニル、オキシラニル、アジリジニル、およびチオモルホリニルが挙げられる。
本明細書で使用する場合、「置換」は、構造中の水素原子を水素以外の原子または分子に置き換えることを意味する。置換可能な原子、例えば、「置換可能な窒素」は、少なくとも1つの共鳴形態で水素原子を担持する原子である。水素原子は、CH3またはOH基などの別の原子または基に関しても置換可能である。例えば、ピペリジン分子中の窒素は、その窒素が水素原子と結合していれば置換可能である。例えば、ピペリジンの窒素が水素以外の原子と結合していれば、その窒素は置換可能でない。水素原子をいずれの共鳴形態でも担持できない原子は置換可能でない。
本発明により想定される置換基および変数の組合せは、安定な化合物の形成をもたらすもののみである。本明細書で使用する場合、用語「安定な」とは、製造を可能とするに十分な安定性を有し、かつ、本明細書に詳細に示される目的に有用である十分な期間、化合物の完全性を維持する化合物を意味する。
本明細書に開示される化合物はまた、部分的および完全に重水素化された変種も含む。特定の実施態様では、重水素化変種は、動態研究のために使用可能である。当業者ならば、このような重水素原子が存在する部位を選択することができる。
本発明にはまた、本明細書に記載の化合物の塩、特に、薬学的に許容可能な塩も含まれる。十分に酸性の官能基、十分に塩基性の官能基、または両官能基を有する本発明の化合物は、いくつかの無機塩基、ならびに無機酸および有機酸のいずれかと反応して塩を形成することができる。あるいは、第四級窒素を有するものなどの、本質的に荷電している化合物は、適当な対イオン(例えば、臭化物イオン、塩化物イオン、またはフッ化物イオンなどのハロゲン化物イオン、特に、臭化物イオン)とともに塩を形成することができる。
酸付加塩を形成するために一般に使用される酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸、ならびにp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモフェニル−スルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸などの有機酸である。このような塩の例としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−二酸塩、ヘキシン−1,6−二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩などが挙げられる。
塩基付加塩としては、水酸化、炭酸、重炭酸アンモニウムまたはアルカリ金属またはアルカリ土類金属などの、無機塩基に由来するものが含まれる。このような塩基は、本発明の塩を作製する上で有用であり、従って、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウムなどを含む。
別の実施態様によれば、本発明は、上記で定義された化合物を生産する方法を提供する。これらの化合物は、従来の技術を用いて合成され得る。有利には、これらの化合物は、好都合にも、容易に入手可能な出発材料から合成される。
本明細書に記載の化合物の合成に有用な合成化学変換および方法は当技術分野で公知であり、例えば、R. Larock, Comprehensive Organic Transformations (1989); T. W. Greene and P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 2d. Ed. (1991); L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis (1994); and L. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis (1995)に記載されているものが含まれる。
例示的実施態様では、治療化合物は、細胞の細胞質膜を通過するができる。例えば、化合物は、少なくとも約20%、50%、75%、80%、90%または95%の細胞透過性を持ち得る。
本明細書に記載の化合物はまた、以下の特徴のうち1以上を持ち得る:本化合物は、細胞または対象にとって本質的に非毒性であり得る;本化合物は、2000amu以下、1000amu以下の有機分子または小分子であり得る;本化合物は、通常の大気条件下で、少なくとも約30日、60日、120日、6か月または1年の半減期を持ち得る;本化合物は、溶液中で、少なくとも約30日、60日、120日、6か月または1年の半減期を持ち得る;化合物は、溶液中でレスベラトロールよりも少なくとも約50%、2倍、5倍、10倍、30倍、50倍または100倍の倍率の高い安定性であり得る;化合物は、DNA修復因子Ku70の脱アセチル化を促進し得る;化合物は、RelA/p65の脱アセチル化を促進し得る;化合物は、全般的なターンオーバー速度を高め、TNFにより誘導されるアポトーシスに対する細胞の感受性を高め得る。
特定の実施態様では、サーチュイン調節化合物は、サーチュインの脱アセチル化酵素活性を調節するのに有効な濃度(例えば、in vivo)では、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)クラスI、および/またはHDACクラスIIの実質的阻害能を持たない。例えば、好ましい実施態様では、サーチュイン調節化合物はサーチュイン調節化合物であり、サーチュイン脱アセチル化酵素活性の活性化に関するEC50が、HDAC Iおよび/またはHDAC IIの阻害に関するEC50の多くとも5分の1(at least 5 fold less than the EC50)、いっそうより好ましくは多くとも10分の1、100分の1またはさらには1000分の1となるように選択される。HDAC Iおよび/またはHDAC II活性をアッセイするための方法は当技術分野で周知であり、このようなアッセイを実施するためのキットは商業的に購入可能である。例えば、BioVision,Inc.(マウンテンビュー、CA;world wide web at biovision.com)およびThomas Scientific(スウェズボロ、NJ;world wide web at tomassci.com)参照。
特定の実施態様では、サーチュイン調節化合物は、サーチュインホモログの実質的調節能を持たない。特定の実施態様では、ヒトサーチュインタンパク質の活性剤は、ヒトサーチュインの脱アセチル化酵素活性を活性化するのに有効な濃度(例えば、in vivo)では、下等真核生物、特に、酵母またはヒト病原体由来のサーチュインタンパク質の実質的活性化能を持ち得ない。例えば、サーチュイン調節化合物は、SIRT1および/またはSIRT3などのヒトサーチュイン脱アセチル化酵素活性の活性化に関するEC50が、Sir2などの酵母(例えば、カンジダ、S.セレビシエなど)サーチュインの活性化に関するEC50の多くとも5分の1、いっそうより好ましくは多くとも10分の1、100分の1またはさらには1000分の1となるように選択され得る。別の実施態様では、下等真核生物、特に、酵母またはヒト病原体由来のサーチュインタンパク質の阻害剤は、下等真核生物由来のサーチュインタンパク質の脱アセチル化酵素活性を阻害するのに有効な濃度(例えば、in vivo)では、ヒト由来のサーチュインタンパク質の実質的活性化能を持たない。例えば、サーチュイン阻害化合物は、SIRT1および/またはSIRT3などのヒトサーチュイン脱アセチル化酵素活性の阻害に関するIC50が、Sir2などの酵母(例えば、カンジダ、S.セレビシエなど)サーチュインの阻害に関するIC50の多くても5分の1、いっそうより好ましくは多くても10分の1、100分の1またはさらには1000分の1となるように選択され得る。
特定の実施態様では、サーチュイン調節化合物は、1以上のサーチュインタンパク質ホモログ、例えば、ヒトSIRT1、SIRT2、SIRT3、SIRT4、SIRT5、SIRT6、またはSIRT7の1以上の調節能を持ち得る。いくつかの実施態様では、サーチュイン調節化合物は、SIRT1タンパク質とSIRT3タンパク質の両方の調節能を有する。
他の実施態様では、SIRT1調節剤は、ヒトSIRT1の脱アセチル化酵素活性の調節に有効な濃度(例えば、in vivo)では、他のサーチュインタンパク質ホモログ、例えば、ヒトSIRT2、SIRT3、SIRT4、SIRT5、SIRT6、またはSIRT7の1以上の実質的調節能を持たない。例えば、サーチュイン調節化合物は、ヒトSIRT1脱アセチル化酵素活性の調節に関するED50が、ヒトSIRT2、SIRT3、SIRT4、SIRT5、SIRT6、またはSIRT7の1以上の調節に関するED50の多くとも5分の1、いっそうより好ましくは多くとも10分の1、100分の1またはさらには1000分の1となるように選択され得る。いくつかの実施態様では、SIRT1調節剤は、SIRT3タンパク質の実質的調節能を持たない。
他の実施態様では、SIRT3調節剤は、ヒトSIRT3の脱アセチル化酵素活性の調節に有効な濃度(例えば、in vivo)では、他のサーチュインタンパク質ホモログ、例えば、ヒトSIRT1、SIRT2、SIRT4、SIRT5、SIRT6、またはSIRT7の1以上の実質的調節能を持たない。例えば、サーチュイン調節化合物は、ヒトSIRT3脱アセチル化酵素活性の調節に関するED50が、ヒトSIRT1、SIRT2、SIRT4、SIRT5、SIRT6、またはSIRT7の1以上の調節に関するED50の多くとも5分の1、いっそうより好ましくは多くとも10分の1、100分の1またはさらには1000分の1となるように選択され得る。いくつかの実施態様では、SIRT3調節剤は、SIRT1タンパク質の実質的調節能を持たない。
特定の実施態様では、サーチュイン調節化合物は、サーチュインタンパク質に対して約10−9M、10−10M、10−11M、10−12Mまたはそれ未満の結合親和性を持ち得る。サーチュイン調節化合物は、その基質またはNAD+(または他の補因子)に対するサーチュインタンパク質の見かけのKmを少なくとも約2、3、4、5、10、20、30、50または100倍、低下させる(活性剤)または増大させる(阻害剤)。特定の実施態様では、Km値は、本明細書に記載の質量分析アッセイを用いて決定される。好ましい活性化は、その基質または補因子に対するサーチュインのKmを、同等の濃度で、レスベラトロールにより引き起こされる程度よりも高い程度で低下させるか、またはその基質または補因子に対するサーチュインのKmを、より低い濃度で、レスベラトロールにより引き起こされる程度と同等に低下させる。サーチュイン調節化合物は、サーチュインタンパク質の最大反応速度を、少なくとも約2、3、4、5、10、20、30、50または100倍増大させ得る。サーチュイン調節化合物は、SIRT1および/またはSIRT3タンパク質の脱アセチル化酵素活性の調節に関するED50が、約1nM未満、約10nM未満、約100nM未満、約1μM未満、約10μM未満、約100μM未満、または約1〜10nM、約10〜100nM、約0.1〜1μM、約1〜10μMまたは約10〜100μMであり得る。サーチュイン調節化合物は、細胞アッセイまたは細胞に基づくアッセイにおいて測定した場合に、SIRT1および/またはSIRT3タンパク質の脱アセチル化酵素活性を、少なくとも約5、10、20、30、50、または100倍調節し得る。サーチュイン調節化合物は、同濃度のレスベラトロールに比べて、サーチュインタンパク質の脱アセチル化酵素活性の少なくとも約10%、30%、50%、80%、2倍、5倍、10倍、50倍または100倍高い誘導をもたらし得る。サーチュイン調節化合物は、SIRT5の調節に関するED50が、SIRT1および/またはSIRT3の調節に関するそれよりも少なくとも約10倍、20倍、30倍、50倍大きいものであり得る。
3.例示的使用
特定の面では、本発明は、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を調節するための方法、ならびにその使用方法を提供する。
特定の実施態様では、本発明は、サーチュイン調節化合物がサーチュインタンパク質を活性化する、例えば、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強する、サーチュイン調節化合物の使用方法を提供する。サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、例えば、細胞寿命の延長、ならびに例えば、老化またはストレスに関連する疾患または障害、糖尿病、肥満、神経変性疾患、心血管疾患、血液凝固障害、炎症、癌、および/または潮紅などを含む多様な疾患および障害の治療および/または予防を含む、様々な治療適用に有用であり得る。これらの方法は、それを必要とする対象に薬学的に有効な量のサーチュイン調節化合物、例えば、サーチュイン調節化合物を投与することを含んでなる。
特定の理論に縛られることを望むものではないが、本発明の活性剤群は、サーチュインタンパク質内の同じ場所(例えば、活性部位または活性部位のKmまたは最大反応速度に影響を及ぼす部位)でサーチュインと相互作用し得ると考えられる。これは特定種のサーチュイン活性剤および阻害剤が実質的な構造類似性を持ち得るからであると考えられる。
特定の実施態様では、本明細書に記載のサーチュイン調節化合物は、単独で摂取してもまたは他の化合物と組み合わせて摂取してもよい。特定の実施態様では、2種類以上のサーチュイン調節化合物の混合物を、それを必要とする面に投与し得る。別の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物を、以下の化合物:レスベラトロール、ブテイン、フィセチン、ピセアタンノール、またはケルセチンの1以上とともに投与し得る。例示的実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物を、ニコチン酸またはニコチンアミドリボシドと組み合わせて投与し得る。別の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を低下させるサーチュイン調節化合物を、以下の化合物:ニコチンアミド(NAM)、スラミン;NF023(Gタンパク質アンタゴニスト);NF279(プリン受容体アンタゴニスト);トロロクス(6−ヒドロキシ−2,5,7,8,テトラメチルクロマン−2−カルボン酸);(−)−エピガロカテキン(3,5,7,3’,4’、5’部位におけるヒドロキシ);(−)−没食子酸エピガロカテキン(ヒドロキシ部位5,7,3’,4’,5’および3位の没食子酸エステル);シアニジンクロリド(3,5,7,3’,4’−ペンタヒドロキシフラビリウムクロリド);デルフィニジンクロリド(3,5,7,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシフラビリウムクロリド);ミリセチン(カンナビスセチン;3,5,7,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシフラボン);3,7,3’,4’,5’−ペンタヒドロキシフラボン;ゴシペチン(3,5,7,8,3’,4’−ヘキサヒドロキシフラボン)、サーチノール;およびスプリトマイシンの1以上とともに投与し得る。さらに別の実施態様では、1以上のサーチュイン調節化合物を、例えば、癌、糖尿病、神経変性疾患、心血管疾患、血液凝固、炎症、潮紅、肥満、老化、ストレスなどを含む様々な疾患の治療または予防のための1以上の治療薬とともに投与し得る。種々の実施態様では、サーチュイン調節化合物を含んでなる併用療法は、(1)1以上のサーチュイン調節化合物を1以上の治療薬(例えば、本明細書に記載の1以上の治療薬)と組み合わせて含んでなる医薬組成物;および(2)サーチュイン調節化合物と治療薬が同じ組成物中に処方されない(しかしながら、同じキットまたはパッケージ、例えば、ブリスターパックまたは他のマルチチャンバーパッケージ;使用者によって分離され得る連結し、個別に封止された容器(例えば、ホイルポーチ);または1または複数の化合物と1または複数の他の治療薬が別の容器内にあるキット内に存在し得る)、1以上のサーチュイン調節化合物と1以上の治療薬との併用投与を意味し得る。個別の処方を用いる場合、サーチュイン調節化合物は、別の治療薬の投与と同時に、間欠的に、時間差で、その前に、その後に、またはそれらの組合せで投与することができる。
特定の実施態様では、本明細書に記載の化合物を用いて疾患または障害を軽減、予防または治療するための方法はまた、ヒトSIRT1、SIRT2および/またはSIRT3、またはそのホモログなどのサーチュインのタンパク質レベルを増大させることも含んでなり得る。タンパク質レベルの増大は、サーチュインをコードする1コピー以上の核酸を細胞に導入することによって達成することができる。例えば、サーチュインのレベルは、サーチュインをコードする核酸を哺乳動物細胞に導入することによって哺乳動物細胞において増大させることができ、例えば、GenBank受託番号NP_036370で示されるアミノ酸配列をコードする核酸を導入することによってSIRT1のレベルが増大され、および/またはGenBank受託番号AAH01042で示されるアミノ酸配列をコードする核酸を導入することによりSIRT3のレベルが増大される。
サーチュインのタンパク質レベルを増大させるために細胞に導入される核酸は、サーチュイン、例えば、SIRT1および/またはSIRT3タンパク質の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一のタンパク質をコードし得る。例えば、このタンパク質をコードする核酸は、SIRT1タンパク質(例えば、GenBank受託番号NM_012238)および/またはSIRT3(例えば、GenBank受託番号BC001042)タンパク質をコードする核酸と少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一であり得る。この核酸はまた、好ましくは、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で、野生型サーチュイン、例えば、SIRT1タンパク質および/またはSIRT3タンパク質をコードする核酸とハイブリダイズする核酸であってもよい。ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、0.2×SSC中、65℃でのハイブリダイゼーションおよび洗浄を含み得る。野生型サーチュインタンパク質とは異なるタンパク質、例えば、野生型サーチュインの断片であるタンパク質をコードする核酸を用いる場合には、このタンパク質は好ましくは生物学的に活性であり、例えば、脱アセチル化能がある。サーチュインの生物学的に活性な部分を細胞で発現させることだけが必要である。例えば、GenBank受託番号NP_036370を有する野生型SIRT1とは異なるタンパク質は、好ましくは、そのコア構造を含む。コア構造は、GenBank受託番号NM_012238のヌクレオチド237〜932によりコードされる、GenBank受託番号NP_036370のアミノ酸62〜293を意味する場合があり、これはNAD結合ドメインならびに基質結合ドメインを包含する。SIRT1のコアドメインはまた、GenBank受託番号NM_012238のヌクレオチド834〜1394によりコードされる、GenBank受託番号NP_036370の約アミノ酸261〜447;GenBank受託番号NM_012238のヌクレオチド777〜1532によりコードされる、GenBank受託番号NP_036370の約アミノ酸242〜493;またはGenBank受託番号NM_012238のヌクレオチド813〜1538によりコードされる、GenBank受託番号NP_036370の約アミノ酸254〜495を意味する場合もある。タンパク質が生物学的機能、例えば、脱アセチル化能を保持するかどうかは、当技術分野で公知の方法に従って決定することができる。
特定の実施態様では、サーチュイン調節化合物を用いて疾患または障害を、軽減、予防または治療するための方法はまた、サーチュイン、例えば、ヒトSIRT1、SIRT2および/またはSIRT3、またはそのホモログのタンパク質レベルを低下させることも含んでなる。サーチュインタンパク質レベルの低下は、当技術分野で公知の方法に従って達成することができる。例えば、サーチュインにターゲティングされるsiRNA、アンチセンス核酸、またはリボザイムを細胞で発現させることができる。ドミナントネガティブサーチュイン突然変異体、例えば、脱アセチル化能のない突然変異体も使用可能である。例えば、Luo et al. (2001) Cell 107:137に記載されているSIRT1の突然変異体H363Yが使用可能である。あるいは、転写を阻害する薬剤が使用可能である。
サーチュインタンパク質レベルを調節するための方法はまた、サーチュインをコードする遺伝子の転写を調節するための方法、対応するmRNAを安定化/脱安定化するための方法、および当技術分野で公知の他の方法も含み得る。
老化/ストレス
一面において、本発明は、細胞を、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強する本発明のサーチュイン調節化合物と接触させることにより、細胞の寿命を延長する、細胞の増殖能を拡張する、細胞の老化を緩慢にする、細胞の生残を促進する、細胞において細胞老化を遅延させる、カロリー制限の効果を模倣する、細胞のストレス耐性を高める、または細胞のアポトーシスを防ぐ方法を提供する。例示的実施態様では、これらの方法は、細胞をサーチュイン調節化合物と接触させることを含んでなる。
本明細書に記載の方法は、細胞、特に、初代細胞(すなわち、生物、例えばヒトから得た細胞)が細胞培養において生きた状態で維持され得る時間を延長するために使用できる。胚性幹(ES)細胞および多能性細胞、ならびにそれらから分化した細胞も、細胞、またはその後代をより長い期間、培養維持するために、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を像去するサーチュイン調節化合物で処理することができる。このような細胞はまた、例えばex vivoで改質した後に対象に移植するために使用することができる。
一面において、長期間保存することが意図される細胞を、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物で処理することができる。これらの細胞は懸濁液(例えば、血液細胞、血清、生物学的増殖培地など)または組織もしくは器官中にあってよい。例えば、輸血の目的で個体から採取した血液を、血液細胞を長期間保存するために、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物で処理してもよい。さらに、法医学目的で使用される血液もまた、 サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物を用いて保存してよい。寿命を延長するためまたはアポトーシスから保護するために処理可能な他の細胞としては、消費のための細胞、例えば、非ヒト哺乳動物由来細胞(例えば、食肉)または植物細胞(例えば、野菜)が含まれる。
サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物はまた、哺乳動物、植物、昆虫または微生物の発達期および成長期の間に、例えば、発達期および/または成長期を変化させる、遅延させるもしくは加速させるために適用してもよい。
別の面では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、例えば、充実組織移植、臓器移植、細胞懸濁液、幹細胞、骨髄細胞などを含む、移植または細胞療法に有用な細胞を処理するために使用してもよい。これらの細胞または組織は、自家移植片、同種移植片、同系移植片または異種移植片であり得る。これらの細胞または組織を、対象への投与/移植前に、投与/移植と同時に、および/または投与/移植後にサーチュイン調節化合物で処理してもよい。これらの細胞または組織は、それらの細胞をドナー個体から取り出す前に、これらの細胞または組織をドナー個体から取り出した後にex vivoで、またはレシピエントに移植した後に処理してもよい。例えば、ドナー個体もしくはレシピエント個体は、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物で全身処置してもよいし、またはサーチュイン調節化合物で局所処置した細胞/組織のサブセットを有してもよい。特定の実施態様では、これらの細胞または組織(またはドナー/レシピエント個体)はさらに、移植片の生残を延長するために有用な別の治療薬、例えば、免疫抑制剤、サイトカイン、血管新生因子などで処置してもよい。
さらに他の実施態様では、細胞を、例えば、それらの寿命を延長するかまたはアポトーシスを防ぐために、vivoにおいてサーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物で処理してもよい。例えば、皮膚は、皮膚または上皮細胞をサーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物で処理することにより老化(例えば、しわの発生、弾性の低下など)から保護することができる。例示的実施態様では、皮膚を、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物を含んでなる医薬組成物または化粧用組成物と接触させる。本明細書に記載の方法に従って処置可能な例示的皮膚疾病または皮膚病態としては、炎症、日焼けによる損傷または自然老化に関連する、またはそれらにより引き起こされる障害または疾患が含まれる。例えば、組成物は、接触性皮膚炎(刺激物接触性皮膚炎およびアレルギー性接触性皮膚炎を含む)、アトピー性皮膚炎(アレルギー性湿疹としても知られる)、日光角化症、角化障害(湿疹を含む)、表皮水疱性疾患(天疱瘡を含む)、剥脱性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、紅斑(多形性紅斑および結節性紅斑を含む)、日光または他の光源により引き起こされる損傷、円板状紅斑性狼瘡、皮膚筋炎、乾癬、皮膚癌および自然老化の作用の予防または治療に有用性を見出す。別の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、創傷および/または火傷(例えば、1度、2度または3度火傷および/または熱火傷、化学火傷また電気火傷を含む)の治療に、治癒を促進するために使用することができる。これらの製剤(formulation)は、皮膚または粘膜組織へ局所投与してもよい。
サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強する1種類以上のサーチュイン調節化合物を含んでなる局所用製剤はまた、予防用組成物、例えば、化学予防用組成物としても使用可能である。化学予防法において使用する場合、特定の個体において病態において視認病態の前に敏感皮膚が処置される。
サーチュイン調節化合物は、対象に局所送達または全身送達することができる。特定の実施態様では、サーチュイン調節化合物は、注射、局所用製剤などにより対象の組織または器官に局所送達される。
別の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、対象において細胞老化により誘発されたまたは増悪した疾患または病態を治療または予防するために;例えば老化の発現後に対象の老化の速度を低下させるための方法;対象の寿命を延長するための方法;寿命に関する疾患または病態を治療または予防するための方法;細胞の増殖能に関する疾患または病態を治療または予防するための方法;および細胞損傷または細胞死をもたらす疾患または病態を治療または予防するための方法に使用することができる。特定の実施態様では、本方法は、対象の寿命を短縮する疾患の発生率を低減することによって作用しない。特定の実施態様では、方法は、癌などの疾患により引き起こされる致死を低減することによって作用しない。
さらに別の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、一般に、その細胞の寿命を延長するため、その細胞をストレスおよび/またはアポトーシスから保護するために、対象に投与することができる。対象を本明細書に記載の化合物で処置することは、対象をホルメシス、すなわち、生物に有益であってそれらの寿命を延長し得る軽いストレスに曝すことと類似していると考えられる。
サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、老化および老化関連の結果または疾患、例えば、脳卒中、心疾患、心不全、関節炎、高血圧、およびアルツハイマー病を予防するために対象に投与することができる。処置可能な他の病態としては、眼障害、例えば、眼の老化に関する障害、例えば、白内障、緑内障、および黄斑変性が含まれる。サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物はまた、細胞死に関連する疾患、例えば、慢性疾患の処置に、細胞を細胞死から保護するために対象に投与することもできる。例示的疾患としては、神経系細胞死、ニューロン機能不全、または筋肉細胞死もしくは機能不全に関連するもの、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、および筋ジストロフィー;AIDS;劇症肝炎;脳の変性に関連する疾患、例えば、クロイツフェルト・ヤコブ病、色素性網膜炎および小脳変性症;脊髄形成異常、例えば、再生不良性貧血;虚血性疾患、例えば、心筋梗塞および脳卒中;肝疾患、例えば、アルコール性肝炎、B型肝炎およびC型肝炎;関節疾患、例えば、骨関節炎;アテローム性動脈硬化症;脱毛症;UV光による皮膚損傷;扁平苔癬;皮膚の萎縮;白内障;および移植片拒絶が含まれる。細胞死はまた、手術、薬物療法、化学暴露または放射線暴露によっても引き起こされることがある。
サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物はまた、急性疾患、例えば、器官または組織の損傷に苦しむ対象、例えば、脳卒中もしくは心筋梗塞に苦しむ対象、または脊髄損傷に苦しむ対象に投与することもできる。サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物はまた、アルコール性肝臓を修復するためにも使用し得る。
心血管疾患
別の実施態様では、本発明は、必要とする対象にサーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物を投与することにより、心血管疾患を治療および/または予防するための方法を提供する。
サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物を用いて治療または予防することできる心血管疾患としては、心筋症または心筋炎;例えば、特発性心筋症、代謝性心筋症、アルコール性心筋症、薬剤性心筋症、虚血性心筋症、および高血圧性心筋症が含まれる。また、本明細書に記載の化合物および方法を用いて治療可能または予防可能なものとしては、主要血管(大血管疾患)、例えば、大動脈、冠動脈、頸動脈、脳動脈、腎臓動脈、回腸動脈、大腿動脈、および膝窩動脈のアテローム性障害もある。治療または予防可能な他の血管疾患としては、血小板凝集、網膜細動脈、糸球体細動脈、神経脈管、心細動脈、ならびに眼、腎臓、心臓、および中枢神経系および末梢神経系に関連する毛細血管床に関連するものが含まれる。サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物はまた、個体の血漿中のHDLレベルを増大させるために使用することができる。
サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物で処置可能なさらに他の障害としては、再狭窄、例えば、冠動脈介入後の再狭窄、および異常なレベルの高密度および低密度コレステロールに関連する障害が含まれる。
特定の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、別の心血管薬との併用療法の一部として投与することができる。特定の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、抗不整脈薬との併用療法の一部として投与することができる。別の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、別の心血管薬との併用療法の一部として投与することができる。
細胞死/癌
サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、放射線または毒素の暴露を最近受けた、または受けた可能性のある対象に投与することができる。特定の実施態様では、放射線または毒素の暴露は業務関連または医療行為の一部として受けたものであり、例えば、予防処置として投与される。別の実施態様では、この放射線または毒素暴露は、意図せずに受けたものである。このような場合、本化合物は好ましくは、アポトーシスおよび続いての急性放射線症候群の発生を阻害するために、暴露後できるだけ早く投与する。
サーチュイン調節化合物はまた、癌を治療および/または予防するためにも使用することができる。特定の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、癌を治療および/または予防するために使用することができる。カロリー制限は、癌を含む加齢性障害の発生の低減に関連付けられている。従って、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性の増強は、例えば癌などの加齢性障害の発生を治療および/または予防するために有用であり得る。サーチュイン調節化合物を用いて治療可能な例示的癌は、脳および腎臓の癌;乳癌、前立腺癌、精巣癌、および卵巣癌を含むホルモン依存性癌;リンパ腫、および白血病がある。固形腫瘍に関連する癌では、調節化合物を腫瘍に直接投与してもよい。血液細胞の癌、例えば白血病は、血流中または骨髄中に調節化合物を投与することによって処置することができる。良性細胞増殖、例えば疣贅も処置可能である。処置可能な他の疾患としては、自己免疫疾患、例えば、全身性紅斑性狼瘡、硬皮症、および関節炎が含まれ、この場合には、自己免疫細胞が除去されるべきである。ウイルス感染,例えば、ヘルペス、HIV、アデノウイルス、およびHTLV−1関連の悪性および良性障害もまた、サーチュイン調節化合物の投与によって処置することができる。あるいは、細胞を対象から得、特定の望ましくない細胞、例えば癌細胞を除去するためにex vivoで処理し、同じまたは異なる対象に再び投与することもできる。
化学療法薬を、抗癌活性を有するとして本明細書に記載された調節化合物、例えば、アポトーシスを誘発する化合物、寿命を引き下げる化合物、または細胞をストレス感受性とする化合物と併用投与してもよい。化学療法薬は、それ自体を、細胞死を誘導する、または寿命を引き下げる、またはストレス感受性を増強するとして本明細書に記載されたサーチュイン調節化合物と併用してもよいし、および/または他の化学療法薬と組み合わせて使用してもよい。従来の化学療法薬に加え、本明細書に記載のサーチュイン調節化合物はまた、望ましくない細胞増殖に寄与する細胞成分の発現を阻害するための、アンチセンスRNA、RNAiまたは他のポリヌクレオチドと併用してもよい。
サーチュイン調節化合物と従来の化学療法薬を含んでなる併用療法は、その組合せが、従来の化学療法薬がより低用量でより大きな効果を発揮することを可能とするので、当技術分野で公知の併用療法よりも有利であり得る。好ましい実施態様では、化学療法薬、または従来の化学療法薬の組合せの有効用量(ED50)は、サーチュイン調節化合物と組み合わせて使用した場合、化学療法薬単独のED50の多くても2分の1、いっそうより好ましくは5分の1、10分の1またはさらには25分の1となる。逆に、このような化学療法薬またはこのような化学療法薬の組合せの治療係数(TI)は、本明細書に記載のサーチュイン調節化合物と組み合わせて使用した場合、従来の化学療法薬レジメン単独のTIの少なくとも2倍、いっそうより好ましくは、5倍、10倍またはさらには25倍となり得る。
ニューロン疾患/障害
特定の面では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、神経変性疾患、および中枢神経系(CNS)、脊髄または末梢神経系(PNS)の外傷性もしくは機械的損傷に苦しむ患者を処置するために使用することができる。神経変性疾患は一般に、脳細胞の萎縮および/または死滅によるものであり得るヒト脳の質量および容積の減少を含み、健常者の老化に起因するものよりもはるかに顕著である。神経変性疾患は、長期間の正常な脳機能の後に、特定の脳領域の進行性の変性(例えば、神経細胞の機能不全および死滅)のために徐々に進行し得る。あるいは、神経変性疾患は、外傷または毒素に関連するものなど、急発生する場合がある。脳変性の実際の発症には、臨床発現までに長年かかることがある。神経変性疾患の例としては、限定されるものではないが、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルー・ゲーリック病)、びまん性レビー小体病、有棘赤血球舞踏病、原発性側索硬化症、眼疾患(視神経炎)、化学療法誘発性神経障害(例えば、ビンクリスチン、パクリタキセル、ボルテゾミブ由来)、糖尿病誘発性神経障害およびフリードライヒ運動失調症が挙げられる。サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、これらの障害および以下に記載される他の障害を処置するために使用することができる。
ADは、記憶喪失、異常行動、人格変化、および思考力の低下をもたらすCNS障害である。これらの喪失は、特定の種類の脳細胞の死滅、ならびにそれらの間の接続およびそれらの補助ネットワーク(例えば、グリア細胞)の破断に関連する。最初期症状としては、近時記憶の喪失、誤った判断、および人格変化が含まれる。PDは、制御されない身体の動き、筋強剛、振戦、およびジスキネジアをもたらし、ドーパミンを産生する脳の領域における脳細胞の死滅に関連するCNS障害である。ALS(運動ニューロン疾患)は、脳と骨格筋を接続するCNS成分である運動ニューロンを攻撃するCNS障害である。
HDは、制御されない動き、知力の低下、および情緒障害を引き起こす神経変性疾患である。テイ−サックス疾患およびサンドホッフ疾患は、β−ヘキサミニダーゼの基質であるGM2ガングリオシドおよび関連の糖脂質が神経系に蓄積し、急性神経変性を誘発する糖脂質蓄積疾患である。
アポトーシスが免疫系におけるAIDSの病因に役割を果たすことは周知である。しかしながら、HIV−1はまた神経疾患も誘発し、これは本発明のサーチュイン調節化合物で処置可能である。
ニューロン欠損は、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病、ウシのBSE(狂牛病)、ヒツジおよびヤギのスクレイピー病、ならびにネコの猫海綿状脳症(FSE)などのプリオン疾患の顕著な特徴でもある。サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、これらのプリオン疾患(prior diseases)によるニューロン欠損を治療または予防するために有用であり得る。
別の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、軸策変性症を含む任意の疾患または障害を治療または予防するために使用することができる。遠位端軸策変性症は、何らかの代謝性のまたは有毒な末梢神経系(PNS)ニューロンの混乱から起こる一種の末梢神経障害である。それは代謝性のまたは有毒な混乱に対する最も一般的な神経の応答であり、従って、糖尿病などの代謝性疾患、腎不全、栄養不良などの欠乏症候群、およびアルコール依存症、または毒素もしくは薬物の作用により引き起こされ得る。遠位端軸策変性症を有する者は、通常、対称性手袋靴下型感覚−運動障害を呈する。罹患領域では深部腱反射および自律神経系(ANS)機能も失われるかまたは低下する。
糖尿病性神経障害は、真性糖尿病に関連する神経因性障害である。糖尿病性神経障害に関連し得る比較的一般的な病態としては、第3脳神経麻痺;単神経障害;多発性単神経炎;糖尿病性筋萎縮;有痛性多発神経障害;自律神経障害;および胸腹部神経障害が含まれる。
末梢神経障害は、神経の疾患によりまたは全身性疾患の副作用から起こり得る、末梢神経系の神経損傷に対する医学用語である。末梢神経障害の主要な原因としては、発作、栄養欠乏、およびHIVが含まれるが、糖尿病が最も可能性の高い原因である。
例示的実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、多発性硬化症(MS)(再発性MSおよび単発症候性MSを含む)、および他の脱髄病態、例えば、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、またはそれに関連する症状を治療または予防するために使用することができる。
さらに別の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、疾患による外傷、傷害(手術的介入を含む)、または環境的外傷(例えば、神経毒、アルコール依存症など)を含む、神経に対する外傷を治療するために使用することができる。
サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物はまた、種々のPNS障害の症状を予防、治療および緩和するために有用であり得る。用語「末梢神経障害」は、脳および脊髄の外側の神経、すなわち末梢神経が損傷を受けている広範囲の障害を包含する。末梢神経障害はまた末梢神経炎とも呼ばれ、または多くの神経が関与する場合には、多発神経障害または多発神経炎という用語が使用することができる。
サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物で処置可能なPNS疾患としては、糖尿病、らい病、シャルコー・マリー・トゥース病、ギラン−バレー症候群および腕神経叢神経障害(頸部および第1胸椎神経根、神経幹、脊髄、および腕神経叢の末梢神経成分の疾患)が含まれる。
別の実施態様では、サーチュイン調節化合物は、ポリグルタミン疾患を治療または予防するために使用することができる。例示的ポリグルタミン疾患としては、球脊髄性筋萎縮症(ケネディー病)、ハンチントン病(HD)、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(ハウリバー症候群)、脊髄小脳失調症1型、脊髄小脳失調症2型、脊髄小脳失調症3型(マシャド・ジョセフ病)、脊髄小脳失調症6型、脊髄小脳失調症7型、および脊髄小脳失調症17型が含まれる。
特定の実施態様では、本発明は、細胞への血流の低下に応答した損傷を予防するために中枢神経系細胞を処置するための方法を提供する。一般に、予防可能な損傷の重篤度は、大部分は、細胞への血流の低下の程度および低下の持続時間に依存する。特定の実施態様では、アポトーシスまたはネクローシス細胞死が予防することができる。なおさらなる実施態様では、虚血媒介損傷、例えば、細胞傷害性浮腫または中枢神経系組織無酸素血症が予防することができる。各実施態様では、中枢神経系細胞は、脊髄細胞または脳細胞であり得る。
別の面は、中枢神経系虚血性病態を処置するためのサーチュイン調節化合物を対象に投与することを包含する。いくつかの中枢神経系虚血性病態が、本明細書に記載のサーチュイン調節化合物により治療することができる。特定の実施態様では、虚血性病態は、アポトーシスまたはネクローシス細胞死、細胞傷害性浮腫または中枢神経系組織無酸素症などの任意の種類の虚血性中枢神経系損傷をもたらす脳卒中である。脳卒中はいずれの脳領域にも影響を及ぼし得、または脳卒中の発生をもたらすことが一般に知られるいずれの病因論によっても起こり得る。この実施態様の1つの別法において、脳卒中は脳幹脳卒中である。この実施態様のもう1つの別法では、脳卒中は小脳脳卒中である。さらにもう1つの実施態様では、脳卒中は塞栓性脳卒中である。さらに別の別法では、脳卒中は出血性脳卒中であり得る。さらなる実施態様では、脳卒中は血栓性脳卒中である。
さらに別の面では、サーチュイン調節化合物は、中枢神経系虚血性病態の後に、虚血コアの梗塞サイズを低減するために投与することができる。さらに、サーチュイン調節化合物はまた、中枢神経系虚血性病態後に虚血性ペナンブラ(ischemic penumbra)または移行帯(transitional zone)の大きさを低減するために有益に投与することができる。
特定の実施態様では、併用薬物療法は、神経変性疾患またはこれら病態に関連する続発性病態の治療または予防のための薬物または化合物を含み得る。よって、併用薬物療法は、1種類以上のサーチュイン活性剤と1種類以上の抗神経変性薬剤を含み得る。
血液凝固障害
他の面では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、血液凝固障害(または止血障害)を治療または予防するために使用することができる。本明細書で互換的に使用されるように、用語「止血」、「血液凝固(blood coagulation)」、および「血液凝固(blood clotting)」は、血管収縮および凝固の生理学的特性を含む出血の制御を意味する。血液凝固は、傷害、炎症、疾患、先天性欠損、機能不全または他の障害後に、哺乳動物の循環の健全性の維持を助ける。さらに、血餅の形成は、傷害の場合に出血を制限(止血)するだけでなく、重要な動脈または静脈の閉塞によりアテローム性動脈硬化性疾患関連の重篤な臓器損傷および死をもたらす場合がある。従って、血栓症は、誤った時機および場所での血餅形成である。
よって、本発明は、血液凝固障害、例えば、心筋梗塞、脳卒中、抹消動脈疾患による四肢喪失または肺塞栓を予防または治療するために血餅の形成を阻害することを目的とする抗凝固および抗血栓処置を提供する。
本明細書互換的に使用されるように、「止血の変調」および「止血の調節」には、止血の誘導(例えば、刺激または増強)、ならびに止血阻害(例えば、低減または低下)が含まれる。
一面において、本発明は、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物を投与することにより、対象において止血を低減または阻害するための方法を提供する。本明細書に開示される組成物および方法は、血栓性障害の治療または予防に有用である。本明細書で使用する場合、用語「血栓性障害」には、過剰なもしくは望ましくない凝固もしくは止血活性、または血液凝固亢進状態を特徴とする任意の障害または病態が含まれる。血栓性障害には、血小板粘着および血栓形成を含む疾患または障害が含まれ、血栓形成特性の増大、例えば、血栓の数の増大、若年の血栓症、家族性の血栓症傾向、および異常な部位での血栓症として発現し得る。
別の実施態様では、併用薬物療法は、血液凝固障害またはこれらの病態に関連する続発性病態の治療または予防のための薬物または化合物を含み得る。よって、併用薬物療法は、1種類以上の、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物と1種類以上の抗凝固または抗血栓薬を含み得る。
体重管理
別の面では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、対象において体重増加または肥満を治療または予防するために使用することができる。例えば、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、例えば、遺伝性肥満、食事性肥満、ホルモン関連肥満、薬物の投与に関連する肥満を治療または予防するため、対象の体重を減らすため、または対象の体重増加を減らすもしくは防ぐために使用することができる。このような処置を必要とする対象は、肥満の対象、肥満となる可能性のある対象、過体重の対象、または過体重となる可能性のある対象であり得る。肥満または過体重となる可能性のある対象は、例えば、家族歴、遺伝学、食習慣、活動レベル、薬物摂取、またはそれらの様々な組合せに基づいて特定することができる。
さらに他の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、対象において体重減少を促進することにより治療または予防可能な様々な他の疾患および病態に苦しむ対象に投与することができる。このような疾患には、例えば、高血圧、高血圧症、高血中コレステロール、異脂肪血症、2型糖尿病、インスリン抵抗性、グルコース不耐症、高インスリン血症、冠動脈性心疾患、狭心症、鬱血性心不全、脳卒中、胆石、胆嚢炎および胆石症、痛風、骨関節炎、閉塞性睡眠時無呼吸および呼吸器系障害、数種の癌(例えば、子宮内膜癌、乳癌、前立腺癌、および結腸癌)、妊娠合併症、女性の生殖に関する健康の不全(poor female reproductive health)(例えば、生理不順、不妊症、***不順)、膀胱調節障害(例えば、緊張性尿失禁);尿酸腎結石症;精神障害(例えば、鬱病、摂食障害、身体醜形障害(distorted body image)、および低い自尊心)が含まれる。最後に、AIDS患者は、AIDSに対する併用療法に応答して脂肪異栄養症またはインスリン抵抗性を発症することがある。
別の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、in vitroまたはin vivoに関わらず、脂肪生成または脂肪細胞分化を阻害するために使用することができる。このような方法は、肥満を治療または予防するために使用することができる。
他の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、食欲を抑えかつ/または満腹感を高め、それにより、体重減少を引き起こす、または体重増加を回避するために使用することができる。このような処置を必要とする対象は、過体重、肥満の対象、または過体重もしくは肥満となる可能性のある対象であり得る。この方法は、毎日、または1日おきに、または1週間に1回、一用量を、例えば丸剤の形態で対象に投与することを含んでなり得る。この用量は、「食欲抑制用量」であり得る。
例示的実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、体重増加または肥満を治療または予防するための併用療法として投与することができる。例えば、1種類以上の、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物が、1種類以上の抗肥満薬と組み合わせて投与することができる。
別の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、薬剤性の体重増加を低減するために投与することができる。例えば、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、食欲を刺激し得る、または体重増加、特に、水分保持以外の要因による体重増加を招き得る薬物との併用療法として投与することができる。
代謝障害/糖尿病
別の面では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、インスリン抵抗性、前糖尿病状態、II型糖尿病、および/またはその合併症などの代謝障害を治療または予防するために使用することができる。サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物の投与は、対象においてインスリン感受性を高め、かつ/またはインスリンレベルを低下させ得る。このような処置を必要とする対象は、インスリン抵抗性またはII型糖尿病の他の前症状を有する対象、II型糖尿病を有する対象、またはこれらの病態のいずれかを発症する可能性のある対象であり得る。例えば、対象は、インスリン抵抗性を有し、例えば、高循環レベルのインスリンを有し、かつ/または高脂血症、脂肪生成不全(dyslipogenesis)、高コレステロール血症、耐糖能異常、高血糖値、X症候群のその他の症状、高血圧症、アテローム性動脈硬化症および脂肪異栄養症などの関連病態を有する対象であり得る。
例示的実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、代謝障害を治療または予防するための併用療法として投与することができる。例えば、1種類以上の、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、1種類以上の抗糖尿病薬と組み合わせて投与することができる。
炎症性疾患
他の面では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、炎症に関連する疾患または障害を治療または予防するために使用することができる。サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、炎症誘発の開始前、誘発時、または誘発後に投与することができる。予防的に使用する場合、この化合物は好ましくは、何らかの炎症性応答または症状に先立って提供される。この化合物の投与により、炎症性応答または症状を予防または軽減することができる。
別の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、喘息、気管支炎、肺線維症、アレルギー性鼻炎、酸素毒性、気腫、慢性気管支炎、急性呼吸窮迫症候群、および任意の慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む、アレルギーおよび呼吸器系病態を治療または予防するために使用することができる。本化合物は、B型肝炎およびC型肝炎を含む慢性肝炎感染を治療するために使用することができる。
さらに、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、自己免疫疾患、および/または自己免疫疾患に関連する炎症、例えば、関節リウマチ、乾癬性関節炎、および強直性脊椎炎を含む関節炎、ならびに臓器組織自己免疫疾患(例えば、レイノー症候群)、潰瘍性大腸炎、クローン病、口腔粘膜炎、硬皮症、重症筋無力症、移植拒絶、内毒素ショック、敗血症、乾癬、湿疹、皮膚炎、多発性硬化症、自己免疫性甲状腺炎、ブドウ膜炎、全身性紅斑性狼瘡、アジソン病、自己免疫性多腺性疾患(自己免疫性多腺性症候群としても知られる)、およびグレーブス病を治療するために使用することができる。
特定の実施態様では、1種類以上の、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、単独で摂取しても、または炎症の治療もしくは予防に有用である他の化合物と組み合わせて摂取してもよい。
潮紅
別の面では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、障害の症状である潮紅および/または顔面紅潮の発生または重篤度を低減するために用いることができる。例えば、本方法には、癌患者における潮紅および/または顔面紅潮の発生または重篤度を低減するための、単独または他の薬剤と組み合わせての、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物の使用が含まれる。他の面では、この方法は、閉経期および閉経後の女性における潮紅、および/または顔面紅潮の発生または重篤度を低減するための、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物の使用を提供する。
別の面では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、別の薬物療法の副作用である潮紅および/または顔面紅潮、例えば、薬剤性潮紅の発生または重篤度を低減するための療法として使用することができる。特定の実施態様では、薬剤性潮紅を治療および/または予防するための方法は、それを必要とする患者に、少なくとも1種類の潮紅誘発化合物と少なくとも1種類の、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物を含んでなる製剤を投与することを含んでなる。他の実施態様では、薬剤性潮紅を処置するための方法は、潮紅を誘発する1種類以上の化合物と1種類以上のサーチュイン調節化合物を別々に投与することを含んでなり、例えば、ここで、サーチュイン調節化合物と潮紅誘発剤は同じ組成物に処方されていない。別々の製剤を用いる場合、サーチュイン調節化合物、(1)潮紅誘発剤の投与と同時に、(2)潮紅誘発剤と間欠的に、(3)潮紅誘発剤の投与との時間差で、(4)潮紅誘発剤の投与の前に、(5)潮紅誘発剤の投与の後に、および(6)これらの種々の組合せによって投与してよい。例としての潮紅誘発剤としては、例えば、ナイアシン、ラロキシフェン、抗鬱薬、抗精神病薬、化学療法薬、カルシウムチャネル遮断薬、および抗生物質が挙げられる。
特定の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、血管拡張薬または抗高脂血症薬(コレステロール低下薬および脂肪作用薬を含む)の潮紅副作用を低減するために使用することができる。例示的実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、ナイアシンの投与に関連する潮紅を低減するために使用することができる。
別の実施態様では、本発明は、潮紅副作用の低減を伴う、高脂血症を治療および/または予防するための方法を提供する。別の代表的実施態様では、この方法は、ラロキシフェンの潮紅副作用を低減するためのサーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物の使用を含む。別の代表的実施態様では、この方法は、抗鬱薬または抗精神病薬の潮紅副作用を低減するためのサーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物の使用を含む。例えば、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、セロトニン再取り込み阻害剤、または5HT2受容体アンタゴニストと併用する(個別にまたは一緒に投与する)ことができる。
特定の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、潮紅を低減するためにセロトニン再取り込み阻害剤(SRI)を用いた処置の一部として使用することができる。さらに別の代表的実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、シクロホスファミドおよびタモキシフェンなどの化学療法薬の潮紅副作用を低減するために使用することができる。
別の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、アムロジピンなどのカルシウムチャネル遮断薬の潮紅副作用を低減するために使用することができる。
別の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、抗生物質の潮紅副作用を低減するために使用することができる。例えば、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、レボフロキサシンと併用することができる。
眼障害
本発明の一面は、本明細書に開示される化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、プロドラッグまたは代謝誘導体から選択される、治療用量のサーチュイン調節剤を患者に投与することにより、視力障害を阻止、低減、またはそうでなければ治療するための方法である。
本発明の特定の面では、視力障害は、視神経または中枢神経系の損傷によって引き起こされる。特定の実施態様では、視神経損傷は、緑内障によって発生するものなどの高い眼圧によって引き起こされる。他の特定の実施態様では、視神経損傷は、神経の膨張によって引き起こされ、これは、視神経炎の場合などの感染症または免疫(例えば、自己免疫)反応に関連する場合が多い。
本発明の特定の面では、視力障害は網膜損傷により引き起こされる。特定の実施態様では、網膜損傷は、眼への血流の妨害によって引き起こされる(例えば、動脈硬化症、血管炎)。特定の実施態様では、網膜損傷は、黄斑の障害によって引き起こされる(例えば、滲出性または非滲出性黄斑変性)。
例示的網膜疾患としては、滲出性加齢性黄斑変性、非滲出性加齢性黄斑変性、電子人工網膜(Retinal Electronic Prosthesis)およびRPE移植による加齢性黄斑変性(RPE Transplantation Age Related Macular Degeneration)、急性多源性板状色素上皮症(Acute Multifocal Placoid Pigment Epitheliopathy)、急性網膜壊死、ベスト病、網膜動脈分枝閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、癌に付随するおよび関連する自己免疫網膜症、網膜中心動脈閉塞症、網膜中心静脈閉塞症、中心性漿液性網脈絡膜症、イールズ病、黄斑上膜、網膜格子状変性、細動脈瘤(Macroaneurysm)、糖尿病性黄斑浮腫、アーヴァイン‐ガス黄斑浮腫、黄斑円孔、網膜下新生血管膜(Subretinal Neovascular Membranes)、びまん性片側性亜急性視神経網膜炎(Diffuse Unilateral Subacute Neuroretinitis)、非偽水晶体嚢胞状黄斑浮腫(Nonpseudophakic Cystoid Macular Edema)、推定眼ヒストプラスマ症候群、滲出性網膜剥離、術後網膜剥離、増殖性網膜剥離、裂孔原性網膜剥離、牽引性網膜剥離、網膜色素変性症、CMV網膜炎、網膜芽細胞腫、未熟児網膜症、散弾状網膜症、背景糖尿病性網膜症(Background Diabetic Retinopathy)、増殖性糖尿病性網膜症、異常ヘモグロビン症性網膜症(Hemoglobinopathies Retinopathy)、プルチェル網膜症、バルサルバ網膜症、若年性網膜分離症、老年性網膜分離症、テルソン症候群、および白点症候群が挙げられる。
他の例示的疾患としては、眼の細菌感染症(例えば、結膜炎、角膜炎、結核、梅毒、淋病)、ウイルス感染症(例えば、眼の単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス網膜炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV))、ならびにHIVまたはその他のHIV関連およびその他の免疫不全関連眼疾患に続発する進行性外側網膜壊死が挙げられる。さらに、眼疾患としては、真菌感染症(例えば、カンジダ脈絡膜炎、ヒストプラスマ症)、原虫感染症(例えば、トキソプラズマ症)、ならびに眼のトキソカラ症およびサルコイドーシスなどのその他の疾患が挙げられる。
本発明の一面は、化学療法薬(例えば、神経毒性薬、またはステロイドなどの眼圧を上昇させる薬物)による治療中の対象における視力障害の阻止、低減、または治療するための、そのような処置を必要とする対象に本明細書に開示されるサーチュイン調節剤の治療用量を投与することによる方法である。
本発明の別の面は、眼の手術、または脊髄手術などの腹臥位で実施されるその他の手術を含む手術を受けている対象における視力障害の阻止、低減、または治療するための、そのような処置を必要とする対象に本明細書に開示されるサーチュイン調節薬の治療用量を投与することによる方法である。眼の手術としては、白内障、虹彩切開術、および水晶体交換が含まれる。
本発明の別の面は、白内障、ドライアイ、加齢性黄斑変性(AMD)、および網膜損傷などを含む加齢性眼疾患の阻止および予防的処置を含む処置であって、そのような処置を必要とする対象に本明細書に開示されるサーチュイン調節薬の治療用量を投与することによる処置である。
本発明の別の面は、ストレス、化学的侵襲、または放射線によって引き起こされる眼の損傷の予防または治療であって、そのような処置を必要とする対象に本明細書に開示されるサーチュイン調節薬の治療用量を投与することによる予防または治療である。放射線または電磁気による眼への損傷としては、CRT、または太陽光線もしくはUVへの曝露によって引き起こされるものを含み得る。
特定の実施態様では、併用薬物療法は、眼障害もしくはこれらの病態に関連する続発性病態の治療または予防のための薬物または化合物を含み得る。従って、併用薬物療法は、1種類以上のサーチュイン活性剤と眼障害の治療のための1種類以上の治療薬を含み得る。
特定の実施態様では、サーチュイン調節剤は、眼圧を低下させるための療法と併用投与することができる。別の実施態様では、サーチュイン調節剤は、緑内障を治療および/または予防するための療法と併用投与することができる。さらに別の実施態様では、サーチュイン調節剤は、視神経炎を治療および/または予防するための療法と併用投与することができる。特定の実施態様では、サーチュイン調節剤は、CMV網膜炎を治療および/または予防するための療法と併用投与することができる。別の実施態様では、サーチュイン調節剤は、多発性硬化症を治療および/または予防するための療法と併用投与することができる。
ミトコンドリア関連疾患および障害
特定の実施態様では、本発明は、ミトコンドリア活性の上昇から利益を受けると思われる疾患または障害を治療するための方法を提供する。この方法は、それを必要とする対象に、治療上有効な量のサーチュイン調節化合物を投与することを含む。ミトコンドリア活性の上昇とは、ミトコンドリアの総数(例えば、ミトコンドリア質量)を維持しつつミトコンドリア活性を上昇させること、ミトコンドリアの数を増加させることによってミトコンドリア活性を上昇させること(例えば、ミトコンドリア生合成を刺激することによる)、またはこれらの組合せを意味する。特定の実施態様では、ミトコンドリア活性の上昇から利益を受けると思われる疾患または障害としては、ミトコンドリア機能不全に関連する疾患または障害が含まれる。
特定の実施態様では、ミトコンドリア活性の上昇から利益を受けると思われる疾患または障害を治療するための方法は、ミトコンドリア機能不全に罹患する対象を識別することを含んでなり得る。ミトコンドリア機能不全を診断するための方法には、分子遺伝学的、病理的、および/または生化学的分析を含み得る。ミトコンドリア機能不全に関連する疾患および障害としては、ミトコンドリア呼吸鎖活性の欠陥が哺乳動物におけるこのような疾患または障害の病態生理の発生に寄与している疾患および障害が含まれる。ミトコンドリア活性の上昇から利益を受けると思われる疾患または障害としては、一般に、例えば、遊離ラジカルが媒介する酸化的損傷が組織の変性をもたらす疾患、細胞が不適切なアポトーシスを受ける疾患、および細胞がアポトーシスを受けることができない疾患が挙げられる。
特定の実施態様では、本発明は、ミトコンドリア活性の上昇から利益を受けると思われる疾患または障害を治療するための方法であって、それを必要とする対象に、1種類異常のサーチュイン活性化化合物を、例えば、ミトコンドリア機能不全の治療に有用な薬剤、またはミトコンドリア機能不全が関与する疾患もしくは障害に付随する症状の低減に有用である薬剤など、別の治療薬と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。
例示的実施態様では、治療上有効な量のサーチュイン調節化合物を対象に投与することによる、ミトコンドリア活性の上昇から利益を受けると思われる疾患または障害を治療するための方法を提供する。例示的疾患または障害としては、例えば、神経筋障害(例えば、フリードライヒ失調症、筋ジストロフィー、多発性硬化症など)、ニューロンの不安定性の障害(例えば、発作性障害、片頭痛など)、発育遅延、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症など)、虚血、腎尿細管性アシドーシス、加齢性神経変性および認知機能低下、化学療法疲労(chemotherapy fatigue)、加齢性もしくは化学療法誘発性の閉経または月経周期もしくは***の不順、ミトコンドリア筋症、ミトコンドリア損傷(例えば、カルシウム蓄積、興奮毒性、一酸化窒素曝露、低酸素など)、およびミトコンドリア調節不全が含まれる。
筋ジストロフィーとは、神経筋構造および機能の劣化が関与する疾患のファミリーを意味し、多くの場合、デュシェンヌ型筋ジストロフィーなどの骨格筋萎縮症および心筋機能不全をもたらす。特定の実施態様では、サーチュイン調節化合物は、筋ジストロフィー患者における筋肉機能の能力低下速度の低減、および筋肉機能の状態の改善のために使用することができる。
特定の実施態様では、サーチュイン調節化合物は、ミトコンドリア筋症の治療に有用であり得る。ミトコンドリア筋症は、軽度の緩やかに進行する外眼筋の弱体化から重度の致死性である小児筋症および多系統脳筋症までに及ぶ。これらの間である程度の重なりを有するいくつかの症候群が定義されている。筋肉に影響する確立された症候群としては、進行性外眼筋麻痺症候群、カーンズ−セイヤー症候群(眼筋麻痺、色素性網膜症、心臓伝導障害、小脳失調、および感音難聴を含む)、MELAS症候群(ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、および脳卒中様症候群)、MERFF症候群(ミオクローヌス癲癇および赤色ぼろ線維)、肢帯筋分布弱体化(limb-girdle distribution weakness)、ならびに小児筋症(良性、または重度および致死性)が挙げられる。
特定の実施形態では、サーチュイン調節化合物は、カルシウム蓄積、興奮毒性、一酸化窒素曝露、薬物誘発性毒性損傷、または低酸素による毒性損傷など、ミトコンドリアへの毒性損傷に罹患する患者を治療するために有用であり得る。
特定の実施形態では、サーチュイン調節化合物は、ミトコンドリアの調節不全に関連する疾患または障害を治療するために有用であり得る。
筋肉性能
他の実施態様では、本発明は、治療上有効な量のサーチュイン調節化合物を投与することにより筋肉性能を向上させるための方法を提供する。例えば、サーチュイン調節化合物は、身体的耐久力(例えば、運動、肉体労働、スポーツ活動などの身体作業を遂行する能力)の改善、身体疲労の阻止もしくは遅延、血中酸素レベルの上昇、健康な個人のエネルギーの増大、作業を行う能力および耐久力の向上、筋肉疲労の低減、ストレスの低減、心機能および心血管機能の向上、性的能力の改善、筋肉ATPレベルの増大、および/または血中乳酸の減少のために有用であり得る。特定の実施態様では、この方法は、ミトコンドリア活性を増強する、ミトコンドリア生合成を増大させる、および/またはミトコンドリア質量を増大させる量のサーチュイン調節化合物を投与することを含む。
スポーツ実行能とは、スポーツ活動に参加した場合の、運動選手の筋肉が性能を発揮する能力を意味する。スポーツ実行能、力、スピード、および耐久力の向上は、筋肉収縮力の増加、筋肉収縮の大きさの増加、刺激と収縮との間の筋肉反応時間の短縮によって測定される。運動選手とは、任意のレベルでスポーツに参加し、その実行能における力、スピード、および耐久力の向上を達成することを求める個人を意味し、例えば、ボディビルダー、自転車選手、長距離ランナー、短距離ランナーなどである。スポーツ実行能の向上は、筋肉疲労を克服する能力、より長時間活動を続ける能力、およびより効果的なトレーニングを行う能力によって表される。
運動選手の筋肉性能に関しては、長時間にわたってより高いレベルの負荷での競技またはトレーニングを可能とする条件を作り出すことが望ましい。
本発明の方法はまた、急性筋肉減少症、例えば、筋萎縮症および/もしくは熱傷に付随する悪液質、床上安静(bed rest)、四肢不動化(limb immobilization)、または胸部、腹腔、および/もしくは整形の大手術を含む病態に関連する筋肉の治療にも効果的であると企図される。
特定の実施態様では、本発明は、サーチュイン調節剤を含んでなる新規な食事組成物、その作製のための方法、およびスポーツ実行能の改善のためにその組成物を使用する方法を提供する。従って、耐久力を必要とするスポーツおよび激しい筋肉活動を繰り返し必要とする労働を含む広義の運動に関与する人に対して、身体的耐久力を改善する、および/または身体疲労を阻止する作用を有する治療組成物、食品、および飲料が提供される。このような食事組成物は、電解質、カフェイン、ビタミン、炭水化物などをさらに含んでなってもよい。
その他の使用
サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、ウイルス感染症(例えば、インフルエンザ、ヘルペス、もしくはパピローマウイルスによる感染症)を治療もしくは予防するために、または抗真菌薬として用いることができる。特定の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、ウイルス性疾患の治療のための別の治療薬との併用薬物療法の一部として投与することができる。別の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、別の抗真菌薬との併用薬物療法の一部として投与することができる。
本明細書に記載のように処置することができる対象としては、哺乳動物、例えば、ヒト、ヒツジ類、ウシ類、ウマ類、ブタ類、イヌ類、ネコ類、非ヒト霊長類、マウス、およびラットなどの真核生物が含まれる。処理可能な細胞としては、真核細胞、例えば上記の対象由来の細胞、または植物細胞、酵母細胞、および原核細胞、例えば、細菌細胞が含まれる。例えば、調節化合物を家畜動物に投与して、飼育条件により長く耐える能力を改善することができる。
サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物はまた、植物の寿命、ストレス耐性、およびアポトーシス耐性を増大させるために使用することができる。特定の実施態様では、化合物は、例えば定期的に植物にまたは真菌に適用される。別の実施態様では、化合物を産生するように植物を遺伝的に改変する。別の実施態様では、植物および果実が、摘果および出荷の前に化合物で処理され、出荷過程での損傷に対する耐性が強化される。植物種子もまた、本明細書に記載の化合物と接触させることにより、例えばそれを保存することができる。
他の実施態様では、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、酵母細胞の寿命を調節するために使用することができる。酵母細胞の寿命を延長することが望ましいと思われる状況としては、酵母が用いられるいずれのプロセスをも含まれ、例えば、ビール、ヨーグルト、およびパン製品、例えば食パンの製造である。寿命が延長された酵母を使用することにより、使用する酵母量の削減、またはより長期間にわたる酵母の活性化を得ることができる。遺伝子組換えによるタンパク質産生のために用いられる酵母またはその他の哺乳類細胞もまた、本明細書に記載するように処理することができる。
サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物はまた、昆虫の寿命、ストレス耐性、およびアポトーシス耐性を増大させるために使用することもできる。この実施態様では、化合物は、益虫、例えば、ハチ、および植物の受粉に関与するその他の昆虫に適用される。特定の実施態様では、化合物は、ハチミツの製造に関与するハチに適用される。一般に、本明細書に記載の方法は、真核生物などの商業的に重要であり得るいずれの生物へも適用可能である。例えば、本化合物は魚類(水産養殖)および鳥類(例えば、ニワトリおよび家禽)に適用することができる。
より高用量の、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物はまた、サイレンシングを受けた遺伝子の調節および発達過程でのアポトーシスの調節に干渉することによる殺虫剤として使用することもできる。この実施態様では、化合物は、この化合物が植物ではなく昆虫の幼生に対して生物学的に利用可能となるような当技術分野で公知の方法を用いて植物に適用することができる。
少なくとも繁殖と長寿命との間のリンクを考慮すると、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するサーチュイン調節化合物は、昆虫、動物、および微生物などの生物の繁殖に影響を与えるために適用することができる。
4.アッセイ
本明細書で企図されるさらに他の方法には、サーチュインを調節する化合物または薬剤を同定するためのスクリーニング方法が含まれる。薬剤は、アプタマーなどの核酸であってよい。アッセイは、細胞基づく形式または無細胞形式で実施してよい。例えば、アッセイは、サーチュインを調節することが知られている薬剤によってサーチュインを調節することができる条件下で、サーチュインを試験薬剤とともにインキュベートすること(または接触させること)、および試験薬剤の不在下に対しての試験薬剤の存在下におけるサーチュインの調節レベルをモニタリングまたは測定することを含んでなり得る。サーチュインの調節レベルは、基質を脱アセチル化するその能力を測定することによって決定することができる。例示的基質は、バイオモル(BIOMOL)(Plymouth Meeting、PA)から入手可能なアセチル化ペプチドである。好ましい基質としては、アセチル化K382を含んでなるものなどのp53のペプチドが挙げられる。特に好ましい基質は、Fluor de Lys−SIRT1(バイオモル)、すなわち、アセチル化ペプチドArg−His−Lys−Lysである。その他の基質は、ヒトヒストンH3およびH4由来のペプチド、またはアセチル化アミノ酸である。基質は、蛍光発性であってよい。サーチュインは、SIRT1、Sir2、SIRT3、またはその一部であってよい。例えば、組換え型SIRT1は、バイオモルから入手可能である。反応は約30分間実施し、例えばニコチンアミドで停止させることができる。HDAC蛍光活性アッセイ/創薬キット(AK−500、BIOMOL Research Laboratories)を用いてアセチル化のレベルを決定することができる。同様のアッセイが、Bitterman et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:45099に記載されている。アッセイにおけるサーチュインの調節レベルは、本明細書に記載の1種類以上の化合物の存在下(個別にまたは同時に)におけるサーチュインの調節レベルと比較してよく、これを、陽性対照または陰性対照として用いてよい。アッセイにおいて使用するためのサーチュインは、全長サーチュインタンパク質であってもその一部であってもよい。活性化化合物がSIRT1のN末端と相互作用すると思われることが本明細書で示されたことから、アッセイにおいて使用するためのタンパク質としては、サーチュインのN末端部分、例えば、SIRT1のおよそアミノ酸1〜176または1〜255;Sir2のおよそアミノ酸1〜174、または1〜252が含まれる。
特定の実施態様では、スクリーニングアッセイは、(i)サーチュインと試験薬剤およびアセチル化基質とを、サーチュインが試験薬剤の不在下で基質を脱アセチル化するのに適切な条件下で接触させること;ならびに(ii)基質のアセチル化のレベルを決定することを含んでなり、ここで、試験薬剤の存在下での基質のアセチル化レベルが試験薬剤の不在下よりも低ければ、その試験薬剤はサーチュインによる脱アセチル化を刺激することを示し、一方、試験剤の存在下での基質のアセチル化レベルが試験薬剤の不在下よりも高ければ、その試験薬剤はサーチュインによる脱アセチル化を阻害することを示す。
別の実施態様では、このスクリーニングアッセイは、サーチュインを介したNAD依存性脱アセチル化の2’/3’−O−アセチル−ADP−リボース産物の形成を検出し得る。このO−アセチル−ADP−リボース産物は、サーチュイン脱アセチル化反応の脱アセチル化ペプチド産物と等モル量で形成される。従って、このスクリーニングアッセイは、(i)サーチュインと試験薬剤およびアセチル化基質とを、サーチュインが試験薬剤の不在下で基質を脱アセチル化するのに適切な条件下で接触させること;ならびに(ii)O−アセチル−ADP−リボースの形成量を決定することを含んでなり、ここで、試験薬剤の存在下でのO−アセチル−ADP−リボースの形成量が増加していれば、その試験薬剤はサーチュインによる脱アセチル化を刺激することを示し、一方、試験剤の存在下でのO−アセチル−ADP−リボース形成が試験薬剤の不在下よりも減少していれば、その試験薬剤はサーチュインによる脱アセチル化を阻害することを示す。
サーチュインを調節する、例えば、刺激する薬剤をin vivoにて同定するための方法は、(i)細胞と試験薬剤、および細胞に進入する能力を有する基質とを、サーチュインが試験薬剤の不在下で基質を脱アセチル化するのに適切な条件下、クラスIおよびクラスII HDACの阻害剤の存在下で接触させること;ならびに(ii)基質のアセチル化のレベルを決定することを含んでなり、ここで、試験薬剤の存在下での基質のアセチル化レベルが試験薬剤の不在下よりも低ければ、その試験剤はサーチュインによる脱アセチル化を刺激することを示し、一方、試験薬剤の存在下での基質のアセチル化レベルが試験薬剤の不在下よりも高ければ、その試験剤はサーチュインによる脱アセチル化を阻害することを示す。好ましい基質はアセチル化ペプチドであり、これはまた、さらに本明細書に記載するように、好ましくは蛍光性でもある。この方法はさらに、基質のアセチル化のレベルを決定するために細胞を溶解することも含んでなり得る。細胞に添加される基質の濃度は、約1μM〜約10mM、好ましくは約10μM〜1mM、いっそうより好ましくは約100μM〜1mMの範囲、例えば、約200μMであってよい。好ましい基質は、ε−アセチルリジン(Fluor de Lys、FdL)またはFluor de Lys−SIRT1などのアセチル化リジンである。クラスIおよびクラスII HDACの好ましい阻害剤は、トリコスタチンA(TSA)であり、これは、約0.01〜100μM、好ましくは約0.1〜10μMの範囲、例えば1μMの濃度で用いてよい。試験化合物および基質と細胞とのインキュベーションは、約10分〜5時間、好ましくは約1〜3時間行ってよい。TSAはすべてのクラスIおよびクラスII HDACを阻害すること、ならびに例えばFluor de Lysなどの特定の基質はSIRT2に対しては不十分な基質であり、SIRT3〜7に対してはさらに弱い基質であることから、このようなアッセイを用いてin vivoにてSIRT1の調節剤を同定することができる。
5.医薬組成物
本明細書に記載の化合物は、1種類以上の生理学的または薬理学的に許容可能な担体または賦形剤を用いて、従来の方法で処方することができる。例えば、化合物ならびにそれらの薬理学的に許容可能な塩および溶媒和物は、例えば注射(例えば、SubQ、IM、IP)、吸入もしくは吹送(口もしくは鼻経由)、または経口、頬側、舌下、経皮、経鼻、非経口、もしくは直腸内投与による投与用として処方することができる。特定の実施態様では、化合物は、標的細胞の存在する部位、すなわち特定の組織、臓器、または体液(例えば、血液、脳脊髄液など)に、局所投与することができる。
本化合物は、全身、および局所または局在投与を含む種々の投与様式用に処方することができる。技術および製剤は一般に、Remington's Pharmaceutical Sciences, Meade Publishing Co., Easton, PAに見出すことができる。非経口投与に関しては、筋肉内、静脈内、腹腔内、および皮下を含む注射が好ましい。注射の場合、本化合物は、溶液中、好ましくはハンクス液またはリンゲル液などの生理学的適合性のあるバッファー中に処方することができる。さらに、本化合物は、固体剤形に処方し、使用の直前に再溶解または懸濁させることもできる。凍結乾燥剤形も含まれる。
経口投与の場合、医薬組成物は、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロース、またはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはグリコール酸ナトリウムデンプン);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容可能な賦形剤を用いた従来の手段よって調製された、例えば、錠剤、ロゼンジ、またはカプセルの形態を採ってよい。錠剤は、当技術分野で周知の方法によってコーティングしてよい。経口投与のための液体製剤は、例えば、溶液、シロップ、もしくは懸濁液の形態を採ってよく、または使用前に水もしくは他の適切なビヒクルで構成する乾燥品として提供してもよい。このような液体製剤は、沈殿防止剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または硬化食用油脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアガム);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分留植物油)、および保存剤(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)などの薬学的に許容可能な添加剤を用いる従来の手段によって調製してよい。この製剤はまた、必要に応じて、緩衝塩、香味剤、着色剤、および甘味剤を含有してもよい。経口投与用の製剤は、活性化合物の制御放出が得られるように適宜処方してもよい。
吸入による投与の場合(例えば、経肺送達)、本化合物は、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、またはその他の適切なガスなどの適切な噴霧剤を使用して、加圧パックまたは噴霧器からエアゾールスプレー剤形の形態で好都合に送達することができる。加圧エアゾールの場合、用量単位は、計量された量を供給するバルブを設けることによって決定され得る。吸入器または吹送器に使用するための、例えばゼラチンなどのカプセルおよびカートリッジは、化合物とラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含むように処方し得る。
本化合物は、例えばボーラス注射または連続注入などの注射による非経口投与用に処方してもよい。注射用製剤は、保存剤を添加して、例えばアンプルまたは多用量容器中の単位投与形として提供してよい。本組成物は、油性もしくは水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルションなどの形態を採ってもよく、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤などの処方剤(formulatory agent)を含有してよい。あるいは、有効成分は、例えば滅菌発熱性物質除去水などの適切な媒体で使用前に構成する粉末の形態であってもよい。
本化合物はまた、例えばカカオバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含有する坐剤または保留浣腸などの直腸用組成物として処方することもできる。
既述の製剤に加えて、化合物はまた、デポー製剤として処方することもできる。このような長期間作用する製剤は、移植(例えば、皮下もしくは筋肉内)、または筋肉内注射によって投与してよい。従って、例えば、化合物は、適切なポリマー性もしくは疎水性物質とともに(例えば、許容される油中のエマルションとして)、もしくはイオン交換樹脂とともに、または、例えば難溶性塩などの難溶性誘導体として処方してよい。制御放出製剤にはパッチも含まれる。
特定の実施態様では、本明細書に記載の化合物は、中枢神経系(CNS)へ送達するために処方することができる(Begley, Pharmacology & Therapeutics 104: 29-45 (2004)に総説)。CNSへの薬物送達の従来の手法としては、神経外科的方法(例えば、脳内注射または脳室内注入);BBBの内在性輸送経路の1つを利用する試みとしての薬剤の分子操作(例えば、それ自体はBBBを通過する能力を持たない薬剤と組み合わせて、内皮細胞表面分子に対して親和性を有する輸送ペプチドを含んでなるキメラ融合タンパク質の作製);薬剤の脂質溶解性を高めるように設計された薬理学的方法(例えば、水溶性薬剤の脂質またはコレステロール担体とのコンジュゲーション):ならびに高浸透圧分断(hyperosmotic disruption)によるBBBの完全性の一時的な分断(頚動脈へのマンニトール溶液の注入、またはアンジオテンシンペプチドなどの生物活性薬剤の使用によって得られる)が挙げられる。
リポソームは、容易に注射可能であるさらなる薬物送達系である。従って、本発明の方法では、活性化合物はまた、リポソーム送達系の形態で投与することもできる。リポソームは当業者に周知である。リポソームは、コレステロール、ホスファチジルコリンのステアリルアミンなどの種々のリン脂質から形成することができる。本発明の方法に使用可能なリポソームは、限定されるものではないが、小単層小胞、大単層小胞、および多層小胞を含むすべての種類のリポソームを包含する。
本明細書に記載の化合物の製剤、特に溶液を作製する別法は、シクロデキストリンの使用を介するものである。シクロデキストリンとは、α−、β−、またはγ−シクロデキストリンを意味する。シクロデキストリンは、引用することにより本明細書の一部とされるPitha et al.の米国特許第4,727,064号に詳細に記載されている。シクロデキストリンは、グルコースの環状オリゴマーであり;これらの化合物は、その分子がシクロデキストリン分子の脂溶性物質を求めるキャビティ(lipophile-seeking cavities)に嵌まり込むことができるいずれの薬物とも包接複合体を形成する。
速やかに崩壊または溶解する剤形は、薬理活性薬剤の迅速な吸収、特に頬側および舌下吸収に有用である。急速融解剤形は、高齢患者および小児患者など、カプレットおよび錠剤などの通常の固体剤形の嚥下が困難である患者にとって有益である。さらに、急速融解剤形により例えば咀嚼剤形に付随する欠点が回避され、この場合、矯味剤の量および患者が活性薬剤の喉のザラザラ感(throat grittiness)を嫌がる程度を決定する上で、活性薬剤が患者の口内に残留する時間の長さが重要な役割を担う。
医薬組成物(美容製剤を含む)は、本明細書に記載の1種類以上の化合物を約0.00001から100重量%、例えば、0.001〜10重量%または0.1重量%〜5重量%の量で含んでなり得る。他の実施態様では、医薬組成物は、(i)0.05〜1000mgの本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩と、(ii)0.1〜2グラムの1種類以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含んでなる。
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の化合物は、一般に局所薬物投与に適する局所用担体を含有し、当技術分野で公知のそのようないずれかの物質を含んでなる局所用製剤に組み込まれる。局所用担体は、例えば、軟膏、ローション、クリーム、マイクロエマルション、ゲル、オイル、または溶液などの所望の形態で組成物を提供するように選択することができ、天然または合成由来の物質からなってよい。選択された担体が、活性薬剤または局所用製剤の他の成分に悪影響を及ぼさないことが好ましい。本明細書における使用のために適切な局所用担体の例としては、水、アルコールおよび他の無毒性有機溶媒、グリセリン、鉱油、シリコーン、石油ゼリー、ラノリン、脂肪酸、植物油、パラベン、ならびにワックスなどが挙げられる。
製剤は、無色、無臭の軟膏、ローション、クリーム、マイクロエマルション、およびゲルであってよい。
本化合物は、軟膏に組み込んでよく、これは一般に、通常にはワセリンまたはその他の石油誘導体に基づく半固体製剤である。用いられる具体的な軟膏基剤は、当業者により理解されているように、最適な薬物送達をもたらし、好ましくは、例えば軟化などの他の所望の特徴も付与するものである。その他の担体またはビヒクルと同様に、軟膏基剤も不活性、安定、無刺激性、および無感作性であるべきである。
本化合物は、ローションに組み込んでよく、これは一般に、摩擦なく皮膚表面に適用される製剤であり、通常は、活性薬剤を含む固体粒子が水もしくはアルコール基剤中に存在する液体または半液体製剤である。ローションは、通常、固体の懸濁液であり、水中油型の液体油性エマルションを含んでなってよい。
本化合物は、クリームに組み込んでよく、これは一般に、水中油型または油中水型の、粘性液体または半固体エマルションである。クリーム基剤は、水洗可能なものであり、油相、乳化剤、および水相を含有する。油相は、一般に、ワセリン、およびセチルもしくはステアリルアルコールなどの脂肪アルコールからなり;水相は、必ずというわけではないが通常は、油相よりも体積が大きく、一般には湿潤剤を含有する。クリーム製剤中の乳化剤は、上記のRemington'sに説明されるように、一般に、非イオン性、アニオン性、カチオン性、または両性界面活性剤である。
本化合物は、マイクロエマルションに組み込んでよく、これは一般に、界面活性剤分子の界面層によって安定化された、熱力学的に安定である、オイルと水などの2つの不混和性液体の透明な等方性分散液である(Encyclopedia of Pharmaceutical Technology (New York: Marcel Dekker, 1992), volume 9)。
本化合物は、ゲル製剤に組み込んでよく、これは一般に、無機小粒子から形成される懸濁液(2相系)、または担体液体全体に実質的に均一に分布した大有機分子(単相ゲル)からなる半固体系である。ゲルは一般に水性単体液体を用いるが、アルコールおよびオイルも単体液体として使用することができる。
その他の活性薬剤を製剤中に含んでもよく、例えば、その他の抗炎症薬、鎮痛薬、抗菌薬、抗真菌薬、抗生物質、ビタミン、抗酸化薬、および日焼け止め製剤でよく見られるサンブロック剤であり、限定されるものではないが、アントラニレート、ベンゾフェノン(特にベンゾフェノン−3)、カンファー誘導体、シンナメート(例えば、オクチルメトキシシンナメート)、ジベンゾイルメタン(例えば、ブチルメトキシジベンゾイルメタン)、p−アミノ安息香酸(PABA)およびその誘導体、ならびにサリチレート(例えば、オクチルサリチレート)が含まれる。
特定の局所製剤では、活性薬剤は、製剤のおよそ0.25重量%〜75重量%の範囲好ましくは製剤のおよそ0.25重量%〜30重量%の範囲、より好ましくは製剤のおよそ0.5重量%〜15重量%の範囲、最も好ましくは製剤のおよそ1.0重量%〜10重量%の範囲の量で存在する。
眼の病態は、化合物の例えば全身、局所、眼内注射により、または化合物を放出する徐放性デバイスの挿入により治療または予防することができる。化合物は、薬学的に許容可能な眼用ビヒクルで送達してよく、それにより、この化合物と眼の表面との接触が、化合物を角膜、および例えば前房、後房、硝子体、眼房水、ガラス体液、角膜、虹彩/毛様体、水晶体、脈絡膜/網膜、および強膜などの眼の内部領域へ浸透させるのに十分な時間にわたって維持される。薬学的に許容可能な眼用ビヒクルは、例えば、軟膏、植物油、またはカプセル化剤であってよい。あるいは、本発明の化合物は、ガラス体液および眼房水へ直接注射してもよい。さらなる別法では、本化合物は、眼の治療のために、静脈内注入または注射によるなどの全身投与を行ってもよい。
本明細書に記載の化合物は、無酸素環境下にて保存してよい。例えば、化合物は、Pfizer,IncからのCapsugelなどの経口投与用気密カプセル内に調製することができる。
例えばex vivoにて本明細書に記載の化合物で処理された細胞は、対象に移植片を投与する方法に従って投与することができ、これは、例えば、シクロスポリンAなどの免疫抑制薬の投与を伴ってよい。医薬製剤の一般的な原理に関しては、読者には、Cell Therapy: Stem Cell Transplantation, Gene Therapy, and Cellular Immunotherapy, G. Morstyn & W. Sheridan eds, Cambridge University Press, 1996;およびHematopoietic Stem Cell Therapy, E. D. Ball, J. Lister & P. Law, Churchill Livingstone, 2000を参照されたい。
化合物の毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって測定することができる。LD50は、集団の50%に対して致死的な用量である。ED50は、集団の50%に対して治療効果を有する用量である。毒性および治療効果の間の用量比(LD50/ED50)が治療指数である。大きな治療指数を示す化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物を用いてもよいが、非感染細胞への損傷の可能性を最小限に抑え、それにより副作用を低減するために、罹患組織の部位へそのような化合物を標的化する送達系を設計するよう注意を払わなければならない。
細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータを、ヒトに用いるための用量範囲の設定に使用することができる。そのような化合物の用量は、ほとんどまたはまったく毒性のないED50を含む循環濃度の範囲内に入っていてよい。用量は、採用される剤形および使用される投与経路に応じてこの範囲内で異なり得る。いずれの化合物に対しても、治療上有効な用量は、最初は細胞培養アッセイから見積もることができる。細胞培養で決定されたIC50(すなわち、症状の最大の半分の抑制を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲を達成する用量を、動物モデルで設定してよい。このような情報を用いて、ヒトに有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定してよい。
6.キット
本明細書では、例えば、治療目的のキット、または細胞寿命の調節もしくはアポトーシスの調節のためのキットなどのキットも提供される。キットは、本明細書に記載の1種類以上の化合物を、例えば、予め計量された用量で含んでなり得る。キットは、場合により、細胞を化合物と接触させるためのデバイス、および使用説明書を含んでなり得る。デバイスとしては、シリンジ、ステント、および化合物を対象(例えば、対象の血管)へ導入するための、またはそれを対象の皮膚に適用するためのその他のデバイスが含まれる。
さらに別の実施態様では、本発明は、本発明の化合物と別の治療薬(併用療法および併用組成物で用いたものと同じ)を、別個の剤形で、互いに連結した形で含んでなる物質の組成物を提供する。本明細書で用いる「互いに連結した形で」という用語は、個別の剤形が一緒に包装されているか、またはそうでなければ互いに結合されている(これにより、個別の剤形が、同一の療法の一部として販売および投与されることが意図されていることが容易に明らかである)ことを意味する。この化合物および他の薬剤は、ブリスターパックもしくはその他の多チャンバーパッケージに一緒に包装されているか、または使用者が分離することができる(例えば、2つの容器間の切り取り線で切り離すことにより)連結されていて別個に封止された容器(ホイルパウチなど)として包装されていることが好ましい。
さらに別の実施態様では、本発明は、a)本発明の化合物;およびb)本明細書の他所に記載されるものなどの別の治療薬を、別個の容器に含んでなるキットを提供する。
本方法の実施に際しては、特に断りのない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来の技術が用いられ、これらは当業者の技量の範囲内である。このような技術は文献で詳細に説明がなされている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual, 第2版, Sambrook, Fritsch and Maniatis編 (Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989); DNA Cloning, Volumes I and II (D. N. Glover ed., 1985); Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait ed., 1984); Mullis et al. 米国特許第号4,683,195号; Nucleic Acid Hybridization (B. D Hames & S. J. Higgins eds. 1984); Transcription And Translation (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984); Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987); Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); the treatise, Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.); Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Miller and M. P. Calos eds., 1987, Cold Spring Harbor Laboratory); Methods In Enzymology, Vols. 154 and 155 (Wu et al.編), Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer an
d Walker, eds., Academic Press, London, 1987); Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell編, 1986); Manipulating the Mouse Embryo, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986)参照。
具体例
以上に本発明を全般的に説明したが、本発明は以下の実施例を参照すればより容易に理解される。これらの実施例は、本発明の特定の面および実施態様を単に説明するために含めるものであり、本発明を何ら限定するものではない。
実施例1.(4S)−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5−(2H)−カルボキサミドの製造:
工程1. 2−((6−クロロ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)コハク酸(S)−ジメチルの合成:
温度計、還流冷却器、および機械的撹拌機を備えた2Lフラスコに、(100g、0.52mol)の2,6−ジクロロ−3−ニトロピリジン、(205g、1.04mol)の(S)−アスパラギン酸ジメチルエステル塩酸塩、(174g、2.07mol)のNaHCO3および1Lのテトラヒドロフランを加えた。この反応物を40℃で16時間撹拌し、HPLCにより2,6−ジクロロピリジンの消失に関してモニタリングした。反応が完了した後、個体を濾去し、酢酸エチル(3×300mL)で洗浄した。合わせた濾液および洗液を濃縮乾固し、残渣を1Lの酢酸エチルに取った。この溶液を200gの木炭とともに周囲温度で2時間撹拌し、木炭を濾去し、さらなる酢酸エチル(3×200mL)で洗浄した。合わせた濾液および洗液を真空濃縮し、粗生成物2−((6−クロロ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)コハク酸(S)−ジメチル(180g)を黄色油状物として得た。これをそれ以上精製せずに次の工程で使用した。MS(ESI)C11H12ClN3O6の理論値:317.0;測定値:318.0(M+H)+。
類似の方法を用い、(R)−アスパラギン酸ジメチルエステル塩酸塩で出発することにより、2−((6−クロロ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)コハク酸(R)−ジメチルを製造することができた。
工程2. 2−(6−クロロ−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)酢酸(S)−メチルの合成:
温度計、還流冷却器、および機械的撹拌機を備えた5L三頚フラスコに、粗2−((6−クロロ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)コハク酸(S)−ジメチル(180g、0.52mol)、鉄粉(146g、2.59mol)、2Lの2−プロパノール、および700mLの水を装填した。この混合物を40℃で撹拌し、酢酸(15.5g、0.259mmol)を、内部温度を70℃より低く保持するために十分な速度で加えた。この反応物を70℃で30分間撹拌したところ、HPLCは反応が完了したことを示した。この混合物を40℃に冷却した後、Na2CO3(165g、1.55mol)を加え、この混合物を1時間撹拌した。固体を濾去した後、それらの固体をテトラヒドロフラン(3×500mL)で洗浄した。合わせた濾液および洗液を真空濃縮した後、残渣を1Lのエタノール中で12時間撹拌した。固体を濾過し、冷エタノールで洗浄した。これを真空乾燥させ、2−(6−クロロ−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)酢酸(S)−メチル(91g、68%)を灰白色固体として得た。MS(ESI)C10H10ClN3O3の理論値:255.0;測定値:256.0(M+H)+。
類似の手順を用い、2−((6−クロロ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)コハク酸(R)−ジメチルで出発することにより、2−(6−クロロ−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)酢酸(R)−メチルを製造することができた。
工程3. (S)−2−(6−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)エタノールの合成:
機械的撹拌機、還流冷却器、および窒素流入口を備えた5L3頚フラスコに、LiAlH4(60g、1.58mol)を装填した。このフラスコを氷浴で冷却した後、500mLのテトラヒドロフランを加えた。この撹拌混合物を0℃に冷却し、内部温度を5℃より低く維持しながら、2Lのテトラヒドロフラン中、2−(6−クロロ−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)酢酸(S)−メチル(81g、0.32mol)の溶液を加えた。添加が完了した後、この反応を16時間還流下で加熱し、HPLCにより生成物の出現に関してモニタリングした。エステルの還元は急速に起こったが、ラクタムの還元は、完全な還元にはより長時間を要した。この反応物を5℃に冷却した後、内部温度を10℃より低く維持しながら60mLの水を加えた。添加が完了した後、この反応物を15分間撹拌した。次に、内部温度を5℃より低く維持しながら60mLの15%(w/w)NaOH(水溶液)を加えた。添加が完了した後、この反応物を15分間撹拌した。後処理を行うため、180mLの水を加えた後、この混合物を周囲温度で1時間撹拌した。固体を濾過し、テトラヒドロフラン(3×150mL)で洗浄した。濾液および洗液を真空濃縮した後、固体残渣を真空乾燥させ、(S)−2−(6−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)エタノール(55g、81%)を褐色固体として得た。MS(ESI)C9H12ClN3Oの理論値:213.1;測定値:214.1(M+H)+。
類似の手順を用い、2−(6−クロロ−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)酢酸(R)−メチルで出発することにより、(R)−2−(6−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)エタノールを製造することができた。
工程4. (4S)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンの合成:
500mLのCH2Cl2中、(S)−2−(6−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)エタノール(50g、0.234mol)の溶液に、トリエチルアミン(95g、0.936mol)を加えた。この混合物を均質となるまで周囲温度で撹拌した後、0℃に冷却した。次に、温度を0℃5(at 0°C 5)に維持しながらPOCl3(54g、0.351mol)を滴下した。冷却を取り除き、この反応物を周囲温度で2時間撹拌し、HPLCにより出発アルコールの消失に関してモニタリングした。反応が完了した後、200mLの1.2M NaHCO3(水溶液)を加えた。層を分離し、水層をCH2Cl2で抽出した。合わせたCH2Cl2層を1M HCl(水溶液)(4×300mL)で抽出し、合わせたHCl層をNaHCO3(飽和)でpH=8に調整した。得られた混合物をCH2Cl2(4×300mL)で抽出し、合わせたCH2Cl2層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、50gの木炭で処理した。この混合物を周囲温度で3時間撹拌し、木炭で濾過し、この木炭をさらに200mLのCH2Clで洗浄した。合わせた濾液および洗浄溶液を濃縮乾固した。固体残渣を真空乾燥させ、(4S)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(30g、66%)を灰白色の結晶性固体として得た。MS(ESI)C9H10ClN3の理論値:195.1;測定値:196.1(M+H)+。
類似の手順を用い、(R)−2−(6−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)エタノールで出発することにより、(4R)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンを製造することができた。
工程5. (4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンの合成:
(4S)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(1.88g、9.6mmol)、(3−トリフルオロメチルフェニル)ボロン酸(2.4g、12.6mmol)、Pd(OAc)2(0.228g、1.02mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル(0.972g、2.04mmol)、およびCs2CO3(6.6g、20.4mmol)の混合物をジオキサン/H2O(50mL、v/v=9:1)に溶かした。この反応混合物を一晩90℃に加熱した。室温まで冷却した後、それをEtOAc(120mL)で希釈し、水で洗浄した。水層をEtOAcで抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(ペンタン中0から100%EtOAcへの勾配)により精製し、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンを淡黄色固体として得た(2.26g、77%)。MS(ESI)C16H14F3N3の理論値:305.1;測定値:306[M+H]。
Pd(OAc)2を用いる類似のカップリング手順を用い、適当な3−置換フェニルボロン酸またはエステルを使用することにより、(4S)−7−(3−置換フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンを製造することができた。(4R)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンで出発し、類似の鏡像異性体を製造することができた。
工程6. (4S)−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
THF(4mL)中、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(0.100g、0.328mmol)およびEt3N(160μL、1.15mmol)の溶液に、トリホスゲン(0.050g、0.164mmol)を加えた。30分間室温で撹拌した後、2−ピリジルアミン(0.092g、0.983mmol)を加えた。この反応混合物を一晩60℃に加熱し、反応混合物を濃縮し、残渣をCH2Cl2(30mL)に取った。この溶液を水およびブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(ペンタン中0から100%EtOAcへの勾配)により精製し、(4S)−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(0.086g、62%)を得た。MS(ESI)C22H18F3N5Oの理論値:425.2;測定値:426.2[M+H]。
類似の手順を用い、2−ピリジルアミンを適当なアミン部分に置き換えることにより、様々な(4S)−7−(3−トリフルオロメチルフェニル(trifluoromethlyphenyl))−N−(アリール)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造することができた。
類似の鏡像異性体が、(4R)−7−(3−トリフルオロメチルフェニル(trifluoromethlyphenyl))−N−(アリール)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドで出発することにより製造できる。同様に、(9S)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N−(アリール)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミドは、(9S)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシンおよび適当なアミン部分から、この一般手順により製造することができた。
実施例2. (4S)−N−フェネチル−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
0℃にて、CH2Cl2(10mL)中、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(0.100g、0.326mmol)の溶液に、ピリジン(0.0775g、0.980mmol)およびクロロギ酸フェニル(0.06117g、0.392mmol)を加えた。2時間後、この混合物を飽和Na2CO3水溶液で急冷し、CH2Cl2(3×75mL)で抽出し、ブラインで洗浄し、Na2SO3で乾燥させ、濃縮した。残渣をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボン酸(4S)−フェニル(0.120g、収率84%)を得た。
MeCN(3mL)中、7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボン酸(4S)−フェニル、2−フェニルエタンアミン(0.057g、0.470mmol)、およびDMAP(0.035g、0.282mmol)を80℃で一晩撹拌した。室温まで冷却した後、この混合物を濃縮し、残渣を、CH2Cl2:MeOH(10:1)で溶出するPrep−TLCにより精製し、(4S)−N−フェネチル−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(0.020g、収率18%)を得た。MS(ESI)C25H23F3N4Oの理論値:452.18;測定値:453[M+H]。
実施例3. (4S)−N−(3−(3−アミノプロプ−1−イン−1−イル)−5−(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
ジオキサン中4NのHCl(10mL)中、(4S)−N−(3−(3−アミノプロプ−1−イン−1−イル)−5−(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(A、0.050g、0.08mmol)の懸濁液を室温で16時間撹拌した。この混合物を減圧下で濃縮し、CH3CNで摩砕した。残渣をCH3CN:H2Oに溶かし、凍結乾燥させ、(4S)−N−(3−(3−アミノプロプ−1−イン−1−イル)−5−(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(0.030g、収率70%)を得た。MS(ESI)C29H23F3N6O2の理論値:544.18;測定値:545[M+H]。
実施例4. (4S)−N−メチル−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
(4S)−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(0.267g、0.63mmol)をジメチルアセトアミドに溶かし、1当量のNaH(0.025g、油中60%)を加えた。この溶液をMeI(39μL)の添加前に5分間撹拌した。この混合物を室温で一晩撹拌した後、酢酸エチルで希釈し、ブライン(2回)、水(2回)、およびブラインで順次洗浄した。この溶液を乾燥させ(Na2SO4)、減圧下で濃縮し、シリカゲルカートリッジ(酢酸エチル:ペンタン溶出剤)にロードした。純粋な画分を濃縮し、純粋な(4S)−N−メチル−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを得た。MS(ESI)C23H20F3N5Oの理論値:439.16;測定値:440.1[M+H]。
実施例5. (4S)−N−(3−フルオロピリジン−4−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
THF(10mL)中、3−フルオロピリジン−4−アミン(1g、8.92mmol)およびピリジン(0.95mL、11.16mmol)の冷却溶液に、クロロギ酸フェニル(1.46g、9.37mmol)を滴下した。この反応物を室温で一晩撹拌した。prep−TLCにより精製し、(3−フルオロピリジン−4−イル)カルバミン酸フェニルを黄色固体として得た。
3mLのアセトニトリル中、フェニル(3−フルオロピリジン−4−イル)カルバメート(72mg、0.31mmol)、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(50mg、0.16mmol)およびDMAP(24mg、0.20mmol)の混合物を60℃で一晩撹拌した。この混合物をそのままprep−TLCにロードし、溶出剤として酢酸エチル/石油エーテル=1:3〜1:8を用いて精製し、(4S)−N−(3−フルオロピリジン−4−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(18mg、25%)を白色固体として得た。MS(ESI)C22H17F4N5Oの理論値:443.1;測定値:444.1[M+H]。
カルバミン酸フェニルを用いるこの一般的尿素形成手順を用い、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンを適当な(4S)−7−(アリール)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンに置き換えることにより、また、3−フルオロピリジン−4−アミンを適当なアミン部分に置き換えることにより、様々な(4S)−7−(アリール)−N−(アリール)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造することができた。鏡像異性体シリーズは、(4R)−7−(アリール)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンで出発することにより製造することができた。
実施例6. (4S)−7−(3−クロロフェニル)−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
工程1. (4S)−7−(3−クロロフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンの合成:
ジオキサン/H2O(10mL/1mL)に、(4S)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(500mg、2.56mmol)、(3−クロロフェニル)ボロン酸(807mg、5.11mmol)、Pd(dppf)Cl2(212mg、0.26mmol)、およびCs2CO3(2.08g、6.4mmol)を加えた。この混合物を90℃で一晩撹拌した。この混合物を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル=1/4)により精製し、(4S)−7−(3−クロロフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(506mg、81%)を得た。MS(ESI)C15H14ClN3の理論値:271.1、測定値:272.1[M+H]。
類似の手順を用い、適当なボロン酸またはエステルに使用することにより、(4S)−7−(3−フルオロフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンまたは(4S)−7−(3−メトキシフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンを製造することができた。鏡像異性体シリーズは、適当な(4R)−7−(3−置換フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンで出発することにより製造することができた。また、この方法により適当な出発クロリドを用いて、(9S)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン、(9R)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン、3−((9R)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−2−イル)ベンゾニトリル、3−((9S)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−2−イル)ベンゾニトリル、(9S)−2−(5−(メチルスルホニル)ピリジン−3−イル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン、(9S)−2−(5−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン、N,N−ジメチル−3−((9R)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−2−イル)アニリン、N,N−ジメチル−3−((9S)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−2−イル)アニリン、(9S)−2−(6−メチルピリジン−3−イル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン、(9S)−2−(ピリジン−3−イル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン、(9S)−2−(3−クロロフェニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシンも製造された。
工程2. (4S)−7−(3−クロロフェニル)−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
THF(50mL)中、2−ピリジルアミン(5g、53.10mmol)およびピリジン(5.65mL、66.41mmol)の冷却溶液に、クロロギ酸フェニル(6.99mL、55.79mmol)を滴下した。この反応物を室温で一晩撹拌した。ブラインをゆっくり加え、この混合物を酢酸エチルで抽出した。層を分離し、有機層を飽和重炭酸ナトリウムおよびブラインで洗浄した。次に、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣を石油エーテルで洗浄し、ピリジン−2−イルカルバミン酸フェニル(2.1g、18%)を得た。
3mLのアセトニトリル中、ピリジン−2−イルカルバミン酸フェニル(66mg,0.30mmol)、(4S)−7−(3−クロロフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(40mg、0.15mmol)およびDMAP(23mg、0.18mmol)の混合物を65℃で一晩撹拌した。反応の進行をTLCおよびLC−MSによりモニタリングした。この混合物を、溶出剤として酢酸エチル/石油エーテル=1:3〜1:8を用いるprep−TLCにそのままロードし、(4S)−7−(3−クロロフェニル)−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(28mg、48%)を白色固体として得た。MS(ESI)C21H18ClN5Oの理論値:391.1;測定値:392.1[M+H]。
カルバミン酸フェニルを用いるこの一般的尿素形成手順を用い、(4S)−7−(3−クロロ、−フルオロまたは−メトキシフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンと適当なアミン部分を使用することにより、様々な(4S)−7−(3−クロロ、−フルオロ、または−メトキシフェニル)−N−(アリール)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造することができた。鏡像異性体シリーズは、適当な4R)−7−(3−置換フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンで出発することにより製造することができた。同様に、(9S)−2−(5−フルオロ−またはクロロピリジン−3−イル)−N−(アリール)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミドも、この尿素形成手順によって製造することができた;出発(9S)−2−(5−フルオロ−またはクロロピリジン−3−イル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシンの製造に関しては以下の実施例を参照。
(4S)−7−(3−クロロフェニル)−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造するために用いたもの(上記の工程1および2)と類似の手順を用いて、市販のボロン酸エステルで出発し、以下の化合物を製造することができる。
実施例7. (9S)−2−(5−クロロピリジン−3−イル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシンの製造:
工程1. 2−((6−クロロ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)グルタル酸(S)−ジメチルの合成:
この部分は、以下のプロトコールを用いて製造した。40.0g(207mmol)の2,6−ジクロロ−3−ニトロピリジン、87.7g(414mmol)のL−グルタミン酸ジメチルエステル塩酸塩、および69.6g(829mmol)のNaHCO3の混合物に600mLのテトラヒドロフランを加えた。この混合物を、HPLCにより2,6−ジクロロ−3−ニトロピリジンの消失に関してモニタリングしながら、40℃で24時間撹拌した。反応が完了した後、固体を濾去し、酢酸エチル(3×100mL)で洗浄した。合わせた濾液および洗液を真空濃縮した後、残渣を、10/1(v/v)ヘキサン/酢酸エチルで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、60g(87%)の生成物を黄色固体として得た。MS(ESI)C12H14ClN3O6の理論値:331.0;測定値:332.1(M+H)+。
工程2. 3−(6−クロロ−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)プロパン酸(S)−メチルの合成:
この部分は、以下のプロトコールを用いて製造した。20g(60.2mmol)の2−((6−クロロ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)ペンタン二酸(S)−ジメチル、および16.8g(301mmol)の鉄粉の混合物、375mLの2−プロパノール、次いで、125mLの水を加えた。この撹拌混合物に5.5g(90.3mmol)の酢酸を加えた後、この反応物を1時間還流下で撹拌した。反応をHPLCにより出発材料の消失に関してモニタリングした。反応が完了した後、固体を濾去し、2−プロパノールで洗浄した(3×50mL)。合わせた濾液および洗液を濃縮乾固した後、残渣を真空乾燥させ、15g(81%)の生成物を暗黄色固体として得た。これをそれ以上精製せずに次の工程で使用した。MS(ESI)C11H12ClN3O3の理論値:269.0;測定値:270.1。
工程3. (S)−3−(6−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)プロパン−1−オールの合成:
この部分は、以下のプロトコールを用いて製造した。260mLのテトラヒドロフラン(THF)中、17.78g(133.3mmol)のAlCl3の溶液に、THF中、200mLの2M LiAlH4をN2下、ガスの発生を制御する速度で滴下した。これにより、THF中、アラン(AlH3)の溶液を得た。別のフラスコで、460mLのTHF中、26.0g(96.4mmol)の3−(6−クロロ−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)プロパン酸(S)−メチルの溶液をN2下で製造した後、ドライアイス/アセトン浴で冷却した。これにアラン溶液を撹拌しながら2時間かけて滴下した。添加が完了した際に、冷却浴を取り除き、この反応物を周囲温度まで温めた。1.5時間後、LCMS分析は反応が完了したことを示した。次に、65mLの水中、17.6gのNaOHの溶液を、H2の発生を制御するようにゆっくり加えた。この懸濁液を18時間撹拌した後、固体を濾去した。沈澱を酢酸エチルで洗浄した後、濾液および洗液を真空濃縮した。生成物を、CH2Cl2、次いで、CH2Cl2中0から10%メタノールへの勾配で溶出するシリカゲルクロマトグラフィー(330gプレパックカラム)により精製し、15.21g(69%)の黄色〜橙色固体を得た。MS(ESI)C10H14ClN3Oの理論値:227.1;測定値:228.1。
工程4. (5R,9S)−2−クロロ−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシンの合成:
12g(52.7mmol)の(S)−3−(6−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)プロパン−1−オールに160mLの48%(w/w)HBr(水溶液)を加えた後、この反応物を90℃で18時間撹拌した。反応をHPLCにより出発アルコールの消失に関してモニタリングした。反応が完了した後、それを周囲温度まで冷却し、その後、1.2MのNaHCO3(水溶液)をpH=8まで加えた。この混合物を酢酸エチル(3×100mL)で抽出した後、有機相をブライン(1×100mL)で逆抽出し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮乾固した。残渣を、2/1(v/v)ヘキサン/酢酸エチルで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、6.0g(55%)の生成物を淡黄色固体として得た。MS(ESI)C10H12ClN3の理論値:209.1;測定値:210.1。
工程5. 2−クロロ−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボン酸(9S)−tert−ブチルの合成:
5mL THF中、(9S)−2−クロロ−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン(1.3g、6.19mmol、注:5R立体化学を意味する)、Boc2O(2.02g、9.28mmol、1.5当量)およびDMAP(1.51g、12.38mmol、2.0当量)を60℃で2時間撹拌した。反応の進行をTLSおよびLC/MSによりモニタリングした。水(30mL)を加え、この混合物をDCM(3×15mL)で抽出した。有機層を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、2−クロロ−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボン酸(9S)−tert−ブチルを白色固体として得た(1.3g、92%)。MS(ESI)C15H20ClN3O2の理論値:309.1。
工程6. 2−(5−クロロピリジン−3−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボン酸(9S)−tert−ブチルの合成:
ジオキサン/水(10mL/1mL)の脱気混合物に、2−クロロ−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボン酸(9S)−tert−ブチル(650mg、2.096mmol)、(5−クロロピリジン−3−イル)ボロン酸(658mg、4.19mmol)、Pd(dppf)Cl2(171mg、0.209mmol)、およびCs2CO3(2.04g、6.29mmol)を加えた。この混合物を110℃で12時間撹拌した後、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(PE/EA=3/1)により精製し、2−(5−クロロピリジン−3−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボン酸(9S)−tert−ブチル(600mg、63%)を得た。MS(ESI)C20H23ClN4O2の理論値:386.2。
2−(5−フルオロピリジン−3−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボン酸(9S)−tert−ブチルは、(5−フルオロピリジン−3−イル)ボロン酸で出発し、同じ方法により製造された。
工程7. (9S)−2−(5−クロロピリジン−3−イル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシンの合成:
この部分は、以下のプロトコールを用いて製造した。2−(5−クロロピリジン−3−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボン酸(9S)−tert−ブチル(600mg、1.55mmol)をHCl/MeOH(1M、20mL)に溶かし、この反応物を室温で1.5時間撹拌した後、真空濃縮した。水(20mL)およびK2CO3(3g)を加え、この混合物を室温で2時間撹拌した後、DCM(3×15mL)で抽出し、(9S)−2−(5−クロロピリジン−3−イル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン(450mg、定量的)を得た。MS(ESI)C15H15ClN4の理論値:286.1。
(9S)−2−(5−フルオロピリジン−3−イル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシンも同じ方法により製造された。
これらの部分を用い、前記実施例に記載されている一般的尿素カップリング手順により尿素化合物を製造した。
実施例8. (9S)−2−(5−メチルピリジン−3−イル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシンの製造:
この部分は、以下のプロトコールを用いて製造した。脱気した1,4−ジオキサン/H2O(20ml、v/v=10/1)に(9S)−2−クロロ−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン(600mg、2.87mmol)、5−メチルピリジン−3−イルボロン酸(1.18g、3.0当量)、PCy3(644mg、0.8当量)およびPd2(dba)3(330mg、0.2当量)を加えた。この混合物を密閉試験管中で110℃に加熱した。110℃で12時間撹拌した後、この黒色懸濁液を室温まで冷却し、減圧下で濃縮した。この濃縮物をEtOAc(300ml)に懸濁させ、水(4×80ml)、ブライン(80ml)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。この濃縮物をカラム(DCM/MeOH=10/1)により精製し、生成物を淡褐色固体(756mg、99%)として得た。MS(ESI)C16H18N4の理論値:266.1;測定値:267.2[M+H]。
また、これらの条件を用い、適当なボロン酸で出発することにより、(9S)−2−(4−メチルピリジン−3−イル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシンおよび4−(3−((9S)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−2−イル)フェニル)モルホリンも製造した。
得られた部分を用い、上記の一般的尿素カップリング手順により尿素化合物を製造した。
実施例9.(9S)−N−(ピリダジン−3−イル)−2−(ピリジン−3−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミドの製造:
この部分は、カルバミン酸フェニルの代わりにカルバミン酸p−クロロフェニルを用い、4S)−7−(3−クロロフェニル)−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドに関して記載されたものと類似のカルバメートプロトコールによって製造した。MS(ESI)C20H19N7Oの理論値:373.2;測定値:374.3[M+H]。
実施例10. (4S)−7−(3−クロロフェニル)−N−(6−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)ピラジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
3mLのTHF中、6−((2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メトキシ)ピラジン−2−アミン(83mg、0.37mmol)およびピリジン(29mg、1.37mmol)の混合物に、トリホスゲン(43mg、0.14mmol)を加えた。上記の混合物を60℃で2時間撹拌した。次に、この反応混合物に(4S)−7−(3−クロロフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(50mg、0.18mmol)を加え、60℃で一晩撹拌した。粗生成物をprep−TLCにより精製し、尿素中間体を黄色固体として得た。THF(3mL)中、この材料の溶液に、濃HClを加え、この反応物を室温で15分間撹拌した。飽和NaHCO3を加えてpHを7〜8に調整した。この反応混合物をEtOAcで抽出し、有機層をブラインで洗浄した。prep−TLCにより精製し、(4S)−7−(3−クロロフェニル)−N−(6−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)ピラジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(8.9mg、40%)を白色固体として得た。MS(ESI)C23H23ClN6O4の理論値:482.2;測定値:483.1[M+H]。
トリホスゲンを用いるこの一般的尿素形成手順を用い、(4S)−7−(3−フルオロフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンおよび適当なアミン部分も使用することにより、様々な(4S)−7−(3−クロロまたは−フルオロフェニル)−N−(アリール)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造することができた。
実施例11. (9S)−2−(3−シアノフェニル)−N−(ピリジン−3−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミドの製造:
室温で、THF(12mL)中、3−((9S)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−2−イル)ベンゾニトリル(50mg、0.18mmol)およびトリホスゲン(27mg、0.10mmol)の混合物に、DIPEA(97μL、0.54mmol)を加えた。この混合物を60℃で30分間加熱した。3−アミノピリジン(102mg、1.09mmol)を加え、この反応混合物を32時間還流下で加熱した。室温まで冷却した後にCH3OHを加えた。この混合物を濃縮し、prep HPLCにより精製した。このTFA塩をCH3CNに懸濁させ、1N HClを加え、この混合物を凍結乾燥させ、(9S)−2−(3−シアノフェニル)−N−(ピリジン−3−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミド(48mg、61%)を塩酸塩として得た。MS(ESI)C23H20N6Oの理論値:396.2;測定値:397.1[M+H]。
実施例12. (9S)−N−(ピリジン−2−イル)−2−(5−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミドの製造:
DMF(3mL)中、ピリジン−2−イルカルバミン酸4−クロロフェニル(325mg、1.31mmol)、(9S)−2−(5−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン(70mg、0.22mmol)およびDMAP(160mg、1.31mmol)の混合物を密閉試験管中、100℃で24時間加熱した。この混合物を室温まで冷却した後、EtOAc/H2O(60mL/30mL)の間で分液した。有機層を分離し、H2O、ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。粗生成物をprep−TLC(CH2Cl2/EtOAc/CH3OH、120:40:2で溶出)により精製し、(9S)−N−(ピリジン−2−イル)−2−(5−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミドを黄褐色固体として得た(80mg、83%)。MS(ESI)C22H19F3N6Oの理論値:440.2;測定値:441.2[M+H]。
実施例13. (4S)−N−(2−メチル−2H−インダゾール−5−イル)−7−(2−メチルピリジン−4−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
工程1. (4S)−7−(2−メチルピリジン−4−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンの合成:
脱気したジオキサン/H2O(14mL、v/v=10/1)中、(4S)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]−ジアゼピン(500mg、2.55mmol)の溶液に、2−メチルピリジン−4−ボロン酸(1.048g、7.65mmol)、PCy3(286mg、1.02mmol)、K3PO4・3H2O(1.698g、6.375mmol)およびPd2(dba)3(234mg、0.255mmol)を加えた。得られた混合物を110℃で一晩撹拌した。この混合物を室温まで冷却した後、濃縮した。残渣をEtOAcと水(各50mL)で分液した。有機層を水およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮乾固した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(CH2Cl2/THF=3/2)により精製し、(4S)−7−(2−メチルピリジン−4−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(418mg、82%)を淡黄色固体として得た。MS(ESI)C15H16N4の理論値:252.1;測定値:253.2[M+H]。
以下の中間体は、適当なボロン酸および2−クロロピリジンを置き換え、上記プロトコールを用いて製造した。2−((9S)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−2−イル)ベンゾニトリル、5−((9S)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−2−イル)ニコチノニトリル
工程2. (4S)−N−(2−メチル−2H−インダゾール−5−イル)−7−(2−メチルピリジン−4−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
CH2Cl2(18mL)中、クロロギ酸フェニル(0.2mL、1.6mmol)およびピリジン(0.16mL、1.95mmol)の溶液に、2−メチル−2H−インダゾール−5−アミン(180mg、1.22mmol)を加えた。この混合物を室温で30分間撹拌した後、飽和NaHCO3溶液(10mL)で急冷した。水相をCH2Cl2(10mL)で抽出した。合わせた有機相をブライン(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮乾固した。残渣をヘキサン(5mL×3)で洗浄し、(2−メチル−2H−インダゾール−5−イル)カルバミン酸フェニル(304mg、93%)を得た。
THF(3mL)中、(4S)−7−(2−メチルピリジン−4−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(90mg、0.36mmol)、(2−メチル−2H−インダゾール−5−イル)カルバミン酸フェニル(285mg、1.07mmol)およびDMAP(130mg、1.07mmol)の混合物を密閉試験管中、80℃で加熱した。80℃で36時間加熱した後、この混合物を室温まで冷却し、濃縮した。残渣をEtOAc(60mL)に懸濁させ、濾過した。濾液を水(20mL×3)、次いで、ブライン(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。この濃縮物をprep−TLC(CH2Cl2/EtOAc/MeOH=23/1/滴)により精製し、(4S)−N−(2−メチル−2H−インダゾール−5−イル)−7−(2−メチルピリジン−4−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(60mg、40%)を褐色固体として得た。MS(ESI)C24H23N7Oの理論値:425.2;測定値:426.3[M+H]。
カルバミン酸フェニルを用いるこの一般的尿素形成手順を用い、適当なアミン部分を使用することにより、様々な(4S)−N−(アリール)−7−(2−メチルピリジン−4−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造することができた。
実施例14: (4S)−N−(2,6−ジエチルフェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
窒素雰囲気下、乾燥THF(3mL)中、2,6−ジエチルアニリン(39.1mg、0.262mmol、2.0当量)およびピリジン(0.5ml、過剰量)の混合物に、トリホスゲン(54.4mg、0.183mmol)を加えた。この混合物を60℃で2時間撹拌し、この反応混合物に(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(40mg、0.131mmol、1.0当量)を加え、さらに18時間撹拌した。この反応混合物に飽和重炭酸ナトリウム溶液(5ml)およびジクロロメタン(10ml)を加え、有機層を水(10mL)およびブラインで順次洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、真空濃縮した。粗生成物を、溶出剤としてCH2Cl2中15:1酢酸エチルを用い、prep−TLCにより精製し、(4S)−N−(2,6−ジエチルフェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを白色固体として得た(5.1mg、収率8%)。MS(ESI)C27H27F3N4Oの理論値:480.21;測定値:481 [M+H]。
トリホスゲンを用いるこの一般的尿素形成手順を用い、2,6−ジエチルアニリンを適当なアミン部分に置き換えることにより、様々な(4S)−7−(3−トリフルオロメチルフェニル(trifluoromethlyphenyl))−N−(アリール)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造することができた。
実施例15. (4S)−7−(2−メチルピリジン−4−イル)−N−(ピラジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
工程1. (4S)−7−クロロ−N−(ピラジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
DMF(8mL)中、(4S)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(400mg、2.04mmol)、ピラジン−2−イルカルバミン酸フェニル(1.32g、6.13mmol)およびDMAP(249mg、2.04mmol)の混合物を、密閉フラスコ内で82℃に加熱した。22時間加熱した後、この混合物を室温まで冷却し、EtOAc(100mL)で希釈した。この混合物を水(8mL×9)、次いで、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/MeOH=50/1)により精製し、(4S)−7−クロロ−N−(ピラジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(600mg、93%)を白色固体として得た。MS(ESI)C14H13ClN6Oの理論値:316.1。
この一般的手順を用い、ピラジン−2−イルカルバミン酸フェニルを適当なカルバメート部分に置き換えることにより、様々な(4S)−7−クロロ−N−(アリール)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造することができた。
工程2. (4S)−7−(2−メチルピリジン−4−イル)−N−(ピラジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
窒素雰囲気下、トルエン/EtOH/H2O(1.9mL、v/v/v=10/6/3)中、(4S)−7−クロロ−N−(ピラジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(40mg、0.126mmol)、2−メチルピリジン−4−ボロン酸(44mg)、およびNaHCO3(32mg)の混合物に、PdCl2(PPh3)2(9mg)を加えた。この反応混合物を6時間還流下で加熱した。さらなる2−メチルピリジン−4−ボロン酸(44mg)、NaHCO3(32mg)、およびPdCl2(PPh3)2(8mg)を追加し、この混合物を脱気した。還流下で一晩撹拌した後、この反応混合物を室温まで冷却し、濃縮した。この濃縮物をEtOAc(30mL)および水(5mL)に懸濁させた。この水性懸濁液をEtOAc(8mL)で抽出した。合わせたEtOAc相をブライン(10mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濃縮した。prep−TLC(CH2Cl2/MeOH=50/1)により精製し、(4S)−7−(2−メチルピリジン−4−イル)−N−(ピラジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(18mg、38%)を灰白色固体として得た。MS(ESI)C20H19N7Oの理論値:373.2;測定値:374.3[M+H]。
PdCl2(PPh3)2を用いるこの一般的手順を用い、適当な(4S)−7−クロロ−N−(アリール)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドおよび適当なボロン酸またはエステルを使用することにより、様々な(4S)−7−(2−メチルピリジン−4−イル)−N−(アリール)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドおよび(4S)−7−(6−メチルピリジン−3−イル)−N−(アリール)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造することができた。
実施例16. (4S)−7−(3−((R)−3−フルオロピロリジン−1−イル)フェニル)−N−(ピラジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
ジオキサン/H2O(1.5mL、v/v=9/1)中、(4S)−7−クロロ−N−(ピラジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(40mg、0.126mmol)、(R)−3−フルオロ−1−(3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)ピロリジン(74mg、0.252mmol)、Pd(OAc)2(2mg、0.0126mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル(12mg、0.0252mmol)、およびCs2CO3(82mg、0.252mmol)の混合物を、密閉フラスコ内で110℃に加熱した。一晩加熱した後、この混合物を冷却し、濾過して不溶性材料を除した。濾液をEtOAc(30mL)で希釈し、H2O(5mL×2)で洗浄し、ブライン(5mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。prep−TLC(CH2Cl2/EtOAc=3/1)により精製し、(4S)−7−(3−((R)−3−フルオロピロリジン−1−イル)フェニル)−N−(ピラジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(18mg、32%)を淡黄色固体として得た。MS(ESI)C24H24FN7Oの理論値:445.2;測定値:446.3[M+H]。
Pd(OAc)2を用いるこの一般的手順を用い、適当な(4S)−7−クロロ−N−(アリール)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドおよび適当なボロン酸またはエステルを使用することにより、様々な(4S)−7−(3−および2−置換フェニル)−N−(アリール)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドおよび(4S)−7−(2−(トリフルオロメチル)ピリジン−4−イル)−N−(アリール)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造することができた。
実施例17. (4S)−7−(3−((S)−2,3−ジヒドロキシプロポキシ)フェニル)−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
工程1. (4S)−7−クロロ−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
DMF(6mL)中、(4S)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(300mg、1.53mmol)、ピリジン−2−イルカルバミン酸フェニル(986mg、4.59mmol)およびDMAP(188mg、1.53mmol)の混合物を脱気し、密閉フラスコ内で80℃に加熱した。80℃で一晩撹拌した後、この反応混合物を室温まで冷却し、EtOAc/H2O(150mL/50mL)で分液した。有機相を水(20mL×6)、ブライン(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。次に、この濃縮物をカラム(CH2Cl2/EtOAc=1/1)により精製し、(4S)−7−クロロ−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(409mg、84%)を灰白色固体として得た。MS(ESI)C15H14ClN5Oの理論値:315.1;測定値:316.1[M+H]。
工程2. (4S)−7−(3−ヒドロキシフェニル)−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド:
ジオキサン/H2O(3mL、v/v=9/1)中、(4S)−7−クロロ−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(80mg、0.284mmol)、(3−ヒドロキシフェニル)ボロン酸(78mg、0.568mmol)、Pd(OAc)2(6mg、0.0384mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル(27mg、0.0568mmol)およびCs2CO3(185mg、0.568mmol)の混合物を脱気し、密閉試験管中、110℃で一晩加熱した後、室温まで冷却し、減圧下で濃縮した。この濃縮物をEtOAc(20mL)に懸濁させ、水(5mL×2)、ブライン(5mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。残渣をカラム(CH2Cl2/EtOAc=1/1)により精製し、(4S)−7−(3−ヒドロキシフェニル)−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(65mg、61%)を灰白色固体として得た。MS(ESI)C21H19N5O2の理論値:373.2;測定値:374.2[M+H]。
工程3. (4S)−7−(3−((S)−2,3−ジヒドロキシプロポキシ)フェニル)−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
DMF(3mL)中、(4S)−7−(3−ヒドロキシフェニル)−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(90mg、0.241mmol)の溶液に、NaH(24mg、0.603mmol)を加えた。室温で30分間撹拌した後、(S)−4−(クロロメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(217mg、1.45mmol)を加え、この混合物を密閉フラスコ内で32時間85℃に加熱した。この混合物を室温まで冷却し、EtOAcで希釈し、水およびブラインで洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濃縮した。この濃縮物をCH2Cl2(3mL)に溶かし、ジオキサン中HCl溶液(6mL)を加えた。次に、このようにして得られた混合物を室温で4時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、濃縮し、飽和NaHCO3(5mL)に懸濁させた。この混合物をCH2Cl2(5mL×3)で抽出し、合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、濃縮した。prep−TLCにより精製し、(4S)−7−(3−((S)−2,3−ジヒドロキシプロポキシ)フェニル)−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(24mg、33%)を灰白色粉末として得た。MS(ESI)C24H25N5O4の理論値:447.2;測定値:448.3[M+H]。
この一般的手順を用い、適当な(4S)−7−(3−ヒドロキシフェニル)−N−(アリール)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを使用することにより、様々な(4S)−7−(3−((S)−2,3−ジヒドロキシプロポキシ)フェニル)−N−(アリール)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造することができた。
実施例18. (4S)−7−(1−プロピル−1H−ピラゾール−4−イル)−N−(ピリジン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
工程1. (4S)−7−クロロ−N−(ピラジル−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
(4S)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(999mg、3.26mmol、1.0当量)を、塩化メチレン(30mL)中でDIEA(1.7mL、9.78mmol、3.0当量)と合わせ(as combined with)、氷浴上で0℃に冷却した。次に、この撹拌溶液にトリホスゲン(482mg、1.63mmol、0.5当量)を数回に分けて少量ずつ加えた。氷浴を取り除き、反応物を室温まで温めた。次に、この反応物を一晩撹拌した。その後、ピリジン−3−アミン(800mg、3.60mmol、1.1当量)を数分かけて少量ずつゆっくり加えた。次に、この混合物を室温で2時間撹拌した。その後、この混合物を水(100mL)で処理し、EtOAc(100mL)で希釈した。相を分離し、有機相をNa2SO4で乾燥させ、濃縮した。残渣を、15〜100%(EtOAc/ペンタン)の勾配を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製し、(4S)−7−クロロ−N−(ピラジル−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(761mg、収率47%)を得た。MS(ESI)C15H14ClN5Oの理論値315.1;測定値:315.7[M+H]。
工程2. (4S)−7−(1−プロピル−1H−ピラゾール−4−イル)−N−(ピリジン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド:
標題化合物は、以下のプロトコールを用いて製造した:ジオキサン/H2O(5mL)中、(4S)−7−クロロ−N−(ピラジル−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(100mg、0.32mmol、1.0当量)、1−エチル−1H−ピラゾール−4−ボロン酸(151mg、0.64mmol、2.0当量)、Pd(dppf)Cl2(26.7mg、0.06mmol、0.2当量)およびCs2CO3(208mg、0.64mmol、2.0当量)の混合物を100℃で6時間撹拌した。水を加え、この混合物をEtOAcで抽出した。有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、濃縮し、pre−TLCより精製し、(4S)−7−(1−プロピル−1H−ピラゾール−4−イル)−N−(ピリジン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(37.1mg、収率30%)を得た。MS(ESI)C21H23N7Oの理論値389.2;測定値:390.3[M+H]。
Pd(dppf)Cl2を用いるこの一般的手順を用い、2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−ボロン酸を適当なボロン酸またはエステル部分に置き換えることにより、様々な(4S)−7−(ピリジン−3−イル)−N−(アリール)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造することができた。
実施例19: (4S)−7−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソl−5−イル)−N−(ピリジン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造(Preperation):
工程1. 3−(ピリジン−2−イル)−2H−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−2,4(3H)−ジオンの合成:
標題化合物を以下のプロトコールを用いて製造した:10.0gのピコリン酸(81.2mmol、1当量)を250mLのトルエンに懸濁させた。20.0mLのジフェニル ホスホリルアジド(92.6mmol、1.14当量)を加えた。13.4mLのトリエチルアミン(95.8mmol、1.18当量)を滴下した。この反応混合物を室温で30分間、次いで、80℃で2時間撹拌した。この反応混合物を室温まで冷却した。固体を濾過し、酢酸エチルおよびペンタンで洗浄した。固体を高真空下で乾燥させた。6.46g(収率66%)の褐色固体が得られた。MS(ESI)C15H14ClN5Oの理論値: 240.06;測定値:241.31[M+H]。
この一般的手順を用い、6員芳香環上の2位に窒素ヘテロ原子を有する適当なヘテロアリールカルボン酸に置き換えることにより、3−(ピリジン−2−イル)−2H−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−2,4(3H)−ジオンおよび3−(ピラジン−2−イル)−2H−ピラジノ[1,2−a][1,3,5]トリアジン−2,4(3H)−ジオンを製造することができた。
工程2. (4S)−7−クロロ−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(4S)−7−クロロ−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
標題化合物を以下のプロトコールを用いて製造した:(4S)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(2.0g、10.2mmol、1.0当量)を2−メチル−テトラヒドロフラン(40mL)に溶かし、室温にてNaH(1.7g、30.6mmol、3.0当量)で処理した。次に、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。その後、3−(ピリジン−2−イル)−2H−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−2,4(3H)−ジオン(2.4g、10.2mmol、1.0当量)を加えた後、反応物に還流冷却器を取り付け、一晩80℃に加熱した。次に、この反応物を室温まで冷却し、氷浴上に置き、NaHCO3(65mL)をゆっくり添加して急冷した。次に、粗反応物をEtOAc(各75mL)で3回抽出し、有機層を無水MgSO4で乾燥させ、濃縮した。反応物を10−100%EtOAc/ペンタンの勾配を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製し、(4S)−7−クロロ−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(4S)−7−クロロ−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(2.5g、78%)を得た。MS(ESI)C15H14ClN5Oの理論値:315.09;測定値:316.10[M+H]。
工程3. (4S)−7−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
(4S)−7−クロロ−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(79mg、0.250mmol、1.0当量)をPd2(dba)3(2.3mg、0.006mmol、0.02当量)、K3PO4(80mg、0.380mmol、2当量)、S−Phos(4.8mg、0.012mmol、0.05当量)と合わせ、このフラスコをN2でパージし、密閉した。次に、N−ブタノール(1mL)をシリンジで加え、この反応物を3時間100℃に加熱した。その後、この反応物を室温まで冷却し、濾過した後、そのまま5−95%CH3CN/H2O(0.1%TFA)の勾配を用いる逆相クロマトグラフィーにより精製し、(4S)−7−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソl−5−イル)−N−(ピリジン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(11mg、10%)を得た。C15H14ClN5O:437.13;測定値:438.17[M+H]。
Pd(dppf)Cl2を用いこの一般的手順を用い、2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−ボロン酸を適当なボロン酸またはエステル部分に置き換えることにより、様々な(4S)−7−(ピリジン−2−イル)−N−(アリール)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドおよび(4S)−N−(ピラジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造することができた。
実施例20. (4S)−N−(5−フルオロピリジン−2−イル)−7−(2−(3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリジン−4−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
工程1. (4S)−7−クロロ−N−(5−フルオロピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
DMF(7mL)中、(4S)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(280mg、1.43mmol)、(5−フルオロピリジン−2−イル)カルバミン酸4−クロロフェニル(1.14g、4.29mmol)およびDMAP(174mg、1.43mmol)の混合物を密閉フラスコ内で80℃に加熱した。80℃で一晩撹拌した後、この反応混合物を室温まで冷却し、EtOAc(100mL)で希釈した。有機相を水(50mL×1、10mL×6)、次いで、ブライン(50mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。次に、この濃縮物をカラム(CH2Cl2/EtOAc=1/1)により精製し、(4S)−7−クロロ−N−(5−フルオロピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(360mg、75%)を灰白色固体として得た。MS(ESI)C15H13ClFN5Oの理論値:333.1。
工程2. (4S)−N−(5−フルオロピリジン−2−イル)−7−(2−(3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリジン−4−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
脱気したジオキサン/H2O(2mL、v/v=9/1)中、(4S)−7−クロロ−N−(5−フルオロピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(50mg、0.149mmol)、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2−(3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリジン(102mg、0.298mmol)、PCy3(8mg、0.0298mmol)、Pd2(dba)3(14mg、0.0149mmol)、およびK3PO4・3H2O(79mg、0.373mmol)の混合物を密閉フラスコ内で120℃に加熱した。一晩撹拌した後、この混合物を室温まで冷却し、EtOAc(60mL)で希釈した。この希釈溶液をH2O(20mL×1、10mL×5)およびブライン(20mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。prep−TLC(CH2Cl2/EtOAc/MeOH=3/1/2滴)により精製し、(4S)−N−(5−フルオロピリジン−2−イル)−7−(2−(3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリジン−4−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(54mg、71%)を灰白色固体として得た。MS(ESI)C25H23F4N7Oの理論値:513.2;測定値:514.3[M+H]。
Pd2(dba)3を用いるこの一般的手順を用い、適当な(4S)−7−クロロ−N−(アリール)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドおよび適当なボロン酸またはエステルを使用することにより、様々な(4S)−7−(2−(3−置換−ピロリジン−1−イル)ピリジン−4−イル)−N−(アリール)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造することができた。
実施例21. (4S)−7−(3−クロロフェニル)−9−メトキシ−N−(ピラジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
工程1. 2,6−ジクロロ−4−メトキシピリジンの合成:
MeOH中、2,4,6−トリクロロピリジン(30g、165mmol)の溶液に、ナトリウムメトキシド(10.7g、197mmol)をゆっくり加えた。この混合物を一晩撹拌し、300mlの水で急冷した。この懸濁液を濾過し、水および石油エーテルで洗浄し、2,6−ジクロロ−4−メトキシピリジンを白色固体として得た(18.0g、収率61%)。MS(ESI)C6H5Cl2NOの理論値:176.97。
工程2. 2,6−ジクロロ−4−メトキシ−3−ニトロピリジンの合成:
硫酸(110mL)中、2,6−ジクロロ−4−メトキシピリジン(18.1g、102mmol)の溶液に、0℃で硝酸(15.6mL)を滴下した後、この混合物を2時間100℃に加熱した。この反応混合物を氷水に注ぎ、この懸濁液を濾過し、水で洗浄し、2,6−ジクロロ−4−メトキシ−3−ニトロピリジンを白色固体として得た(19.9g、収率88%)。MS(ESI)C6H4Cl2N2O3の理論値:221.96。
工程3. 2−((6−クロロ−4−メトキシ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)コハク酸(S)−ジ−tert−ブチルの合成:
DMF(150mL)中、2,6−ジクロロ−4−メトキシ−3−ニトロピリジン(14.5g、65mmol)および(S)−1,4−ジ−tert−ブトキシ−1,4−ジオキソブタン−2−アミニウムクロリド(22g、78mmol)の溶液に、DIEA(32.3mL)を加え、この混合物を3時間80℃に加熱した。DMFを真空下で除去し、残渣を酢酸エチルに溶かし、ブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、フラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル中10%酢酸エチル)により精製し、2−((6−クロロ−4−メトキシ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)コハク酸(S)−ジ−tert−ブチルを黄色油状物として得た(4.8g、収率16%)。MS(ESI)C18H26ClN3O7の理論値:431.15。
工程4. 2−(6−クロロ−8−メトキシ−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)酢酸(S)−tert−ブチルの合成:
AcOH(60ml)中、2−((6−クロロ−4−メトキシ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)コハク酸(S)−ジ−tert−ブチル(4.7g、10.9mmol)の混合物に、鉄粉(6.107g、109mmol)を加え、この反応混合物を100℃で2時間撹拌した。この反応物を1N NaOHで急冷し、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、フラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル中40%酢酸エチル)により精製し、2−(6−クロロ−8−メトキシ−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)酢酸(S)−tert−ブチルを 黄色油状物として得た(1.87g、収率52%)。MS(ESI)C14H18ClN3O4の理論値:327.10。
工程5. (S)−2−(6−クロロ−8−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)エタノールの合成:
THF(20mL)中、2−(6−クロロ−8−メトキシ−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)酢酸(S)−tert−ブチル(1.7g、5.2mmol)の溶液に、BH3−Me2S(5.2mL、Me2S中10M、52mL)を加えた後、この反応混合物を50℃で一晩加熱した。室温まで冷却したところで、この反応物を、水を滴下して急冷し、その後、1N HCl水溶液(10mL)を加え、この混合物を50℃で2時間撹拌した。飽和NaHCO3を加え、この混合物をCH2Cl2で抽出し、濃縮して油状物とした。この油状物をCH2Cl2(15mL)中TFA(15mL)で2時間処理し、DCMおよびTFAを真空下で除去した。残渣をMeOH(20mL)に溶かし、Cs2CO3(2g)を加えた。この混合物を1時間撹拌し、濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(30:1 CH2Cl2/MeOH)により精製し、(S)−2−(6−クロロ−8−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)エタノールを黄色油状物として得た(997mg、収率79%)。MS(ESI)C10H14ClN3O2の理論値:243.08。
工程6. (4S)−7−クロロ−9−メトキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンの合成:
CH2Cl2(50mL)中、PPh3(1.003g、3.83mmol)の溶液に、DDQ(869mg、3.83mmol)を加えた後、(S)−2−(6−クロロ−8−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)エタノール(620mg、2.55mmol)を加えた。この混合物を30分間撹拌し、濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル中33から100%酢酸エチルへ)により精製し、(4S)−7−クロロ−9−メトキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンを黄色固体として得た(413mg、収率72%)。MS(ESI)C10H12ClN3Oの理論値:225.07。
工程7. (4S)−7−(3−クロロフェニル)−9−メトキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンの合成:
10:1ジオキサン/水(6mL)溶液中、(4S)−7−クロロ−9−メトキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(226mg、1.0mmol、(3−クロロフェニル)ボロン酸(187mg、1.2mmol)、Cs2CO3(654mg、2.0mmol)およびPd(dppf)Cl2.DCM(40mg、0.05mmol)の混合物をマイクロ波加熱した(130℃×1時間)。この反応混合物を濃縮乾固し、CH2Cl2に懸濁させ、飽和NaHCO3、水、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濃縮した。この反応混合物をまず、シリカゲルクロマトグラフィー(CH2Cl2中0から10%MeOHへの勾配)により精製し、次に、Prep HPLCにより精製した。この反応を同じスケールで2回繰り返し、合わせたHPLC画分を凍結乾燥させ、(4S)−9−メトキシ−7−(3−クロロフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(199mg、3収率3%)を得た。MS(ESI)C16H16ClN3Oの理論値:301.10;測定値:302[M+H]。
この一般的手順を用い、(3−クロロフェニル)ボロン酸を(3−(トリフルオロメチル)フェニル)ボロン酸に置き換えることにより、(4S)−9−メトキシ−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンを製造することができた。
工程8. (4S)−7−(3−クロロフェニル)−9−メトキシ−N−(ピラジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
THF(10mL)中、(4S)−7−(3−クロロフェニル)−9−メトキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(60mg、0.2mmol)の溶液に、鉱油中60%NaH懸濁液(24mg、1mmol)を加えた。この混合物を1時間加熱還流し、3−(ピラジン−2−イル)−2H−ピラジノ[1,2−a][1,3,5]トリアジン−2,4(3H)−ジオン(73mg、0.3mmol)を加え、この混合物をさらに2時間還流下で加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、濃縮乾固し、飽和NaHCO3で希釈し、CH2Cl2で抽出した(3回)。有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮し、prep−HPLCにより精製し、凍結乾燥させ、(4S)−7−(3−クロロフェニル)−9−メトキシ−N−(ピラジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(54mg、収率64%)を得た。MS(ESI)C21H19ClN6O2の理論値:422.13;測定値:423[M+H]。
実施例22. (4S)−9−メトキシ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
15mlのアセトニトリル中、ピリジン−2−イルカルバミン酸フェニル(191.6mg、0.8995mmol)、(4S)−9−メトキシ−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(150mg、0.4477mmol)およびDMAP(65.55mg、0.5373mmol)の混合物を60℃で一晩撹拌した。この混合物をそのままprep−TLCにロードし、精製し(溶出剤として酢酸エチルを使用)、(4S)−9−メトキシ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを白色固体として得た(150mg、収率:74%)。MS(ESI)C23H20F3N5O2の理論値:455.2;測定値:456[M+H]。
この一般的手順を用い、ピリジン−2−イルカルバミン酸フェニルを適当なカルバミン酸部分に置き換えることにより、(4S)−9−メトキシ−N−(アリール)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造することができた。
実施例23. (4S)−9−ヒドロキシ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
窒素雰囲気下、0℃で、3mlの乾燥CH2Cl2中、(4S)−9−メトキシ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(50mg、0.1098mmol)の混合物に、BBr3(0.5mL、0.5494mmol)を滴下した。次に、この反応混合物を50℃で一晩撹拌した。この反応混合物に重炭酸ナトリウム溶液(5mL)およびジクロロメタン(10mL)を加え、有機層を水、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空濃縮した。粗生成物を、溶出剤として(CH2Cl2中1:20 MeOH)を用いるprep−TLCにより精製し、(4S)−9−ヒドロキシ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを白色固体として得た(18mg、収率35%)。MS(ESI)C22H18F3N5O2の理論値:441.1;測定値:442[M+H]。
この一般的手順を用い、(4S)−9−メトキシ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを適当な(4S)−9−メトキシ−N−(アリール)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドに置き換えることにより、((4S)−9−ヒドロキシ−N−(アリール)−7−(3(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造することができた。
実施例24. (4S)−N−(4−((3−(3−メチル−3H−ジアジリン−3−イル)プロパンアミド)メチル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
DMF(2mL)中、(4S)−N−(4−(アミノメチル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド塩酸塩(49mg、0.1mmol)、3−(3−メチル−3H−ジアジリン−3−イル)プロパン酸2,5−ジオキソピロリジン−1−イル(23mg、0.1mmol)、およびトリエチルアミン(70μL、0.5mmol)の溶液を室温で1時間撹拌した。水(10mL)および飽和NaHCO3(5mL)を加え、この反応混合物をCH2Cl2で抽出し(3回)、濃縮乾固した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(CH2Cl2中0から10%MeOHへの勾配)で精製し、濃縮し、ジエチルエーテルおよびペンタンでチェースし、真空下で乾燥させ、(4S)−N−(4−((3−(3−メチル−3H−ジアジリン−3−イル)プロパンアミド)メチル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを白色泡沫として得た(39mg、収率68%)。MS(ESI)C29H28F3N7O2の理論値:563.23;測定値:564[M+H]。
実施例25: (4S)−N−(3−(3−(トリフルオロメチル)−3H−ジアジリン−3−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
CH2Cl2(2mL)中、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(46mg、0.15mmol)およびトリホスゲン(36mg、120mmol)の溶液に、トリエチルアミン(56μL、0.45mmol)を加えた。この反応混合物を40℃で2.5時間撹拌し、CH2Cl2(1mL)に溶かした3−(3−(トリフルオロメチル)−3H−ジアジリン−3−イル)アニリン(40mg、0.2mmol)を加えた。この反応混合物を室温で2時間撹拌した。有機層を飽和NaHCO3、水、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(まず、ペンタン中、0から100%CH2Cl2へ、次に、CH2Cl2中0から10%MeOHへの勾配で溶出)により精製し、(4S)−N−(3−(3−(トリフルオロメチル)−3H−ジアジリン−3−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを得た(40mg、収率50%)。MS(ESI)C25H18F6N6Oの理論値:532.14;測定値:533[M+H]。
上記の3−(3−(トリフルオロメチル)−3H−ジアジリン−3−イル)アニリンは、Biasotti B. et. al., Bioorganic and Medicinal Chemistry, 2003, 11, 2247-2254に従って製造した。
この一般的手順を用い、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンを適当なアミンに置き換えることにより、様々な(3−(3−(トリフルオロメチル)−3H−ジアジリン−3−イル)フェニル)尿素を製造した。
実施例26. (3R,4R)−7−クロロ−3−((トリメチルシリル)オキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンの製造:
工程1. 2−ベンズアミドコハク酸(S)−ジメチルの合成
温度計、冷却器、および機械的撹拌機を備えた5L3頚フラスコに、161g(1.00mol)のL−アスパラギン酸ジメチルエステル、2500mLのジクロロメタン、および198g(1.96mol)のトリエチルアミンを加えた。この溶液を−5℃に冷却した後、内部温度を−5℃に維持しながら、156g(1.11mol)の塩化ベンゾイルを滴下した。この混合物を−5℃で1時間撹拌した後、それを濾過した。沈澱をさらなるジクロロメタンで3回洗浄した後、合わせた濾液および洗液を飽和K2CO3水溶液で抽出した。ジクロロメタン層をNa2SO4で乾燥させた後、真空濃縮し、200g(75%)の生成物を白色固体として得た。MS(ESI)C13H15NO5の理論値:265.1。
工程2. 2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール−4,5−ジカルボン酸(4S,5S)−ジメチルの合成.
温度計、機械的撹拌機、およびN2流入口を備えた10L4頚フラスコに、100g(0.377mol)の2−ベンズアミドコハク酸(S)−ジメチル、次いで、4Lの乾燥テトラヒドロフランを加えた。この混合物を撹拌し、0℃に冷却した。この溶液に、テトラヒドロフラン中、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドの1.0M溶液770mL(0.77mol)を、添加時に内部温度を0℃に維持しながら加えた。この反応物を0℃で30分間撹拌した後、それを−78℃まで冷却した。これに−78℃で、2Lのテトラヒドロフラン中、195g(0.77mol)のヨウ素の溶液を滴下した。この反応物を−78℃で1時間撹拌した後、それを2Lの飽和NH4Cl(水溶液)および400g(2.53mol)のNa2S2O3の添加により急冷した。この混合物を周囲温度で30分間撹拌した後、2Lの酢酸エチルを加え、層を分離した。水相をさらなる酢酸エチル(3×2L)で抽出した。合わせた酢酸エチル層をNa2SO4で乾燥させた後、真空濃縮した。残渣を、20:1(v/v)ヘプタン:酢酸エチルで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、30g(30%)の生成物を白色固体として得た。MS(ESI)C13H13NO5の理論値:263.1。
工程3. (2S,3S)−2−アミノ−3−ヒドロキシコハク酸の合成
還流冷却器を備えた500mLフラスコに、13g(50mmol)の2−フェニル−4,5−ジヒドロオキサゾール−4,5−ジカルボン酸(4S,5S)−ジメチルおよび200mL(2.4mol)の12M HCl(水溶液)を加えた。この反応物を50℃で16時間撹拌した後、溶媒を真空下除去した。残渣を1000mLの水に取り、HPLCにより安息香酸が水層に存在しなくなるまで、酢酸エチルで抽出した。有機層を廃棄し、水層を真空濃縮し、8.6g(94%)の(2S,3S)−2−アミノ−3−ヒドロキシコハク酸塩酸塩を白色結晶性固体として得た。MS(ESI)C4H7NO5の理論値:149.0。
工程4. 2−アミノ−3−ヒドロキシコハク酸(2S,3S)−ジメチルの合成
還流冷却器を備えた500mL3頚フラスコに、170mLのメタノールを加えた。このメタノールを−5℃に冷却した後、23.6g(198mmol)のSOCl2を滴下した。添加が完了した後、8.6g(46mmol)の(2S,3S)−2−アミノ−3−ヒドロキシコハク酸HCl塩を加え、この溶液を周囲温度で16時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、粗2−アミノ−3−ヒドロキシコハク酸(2S,3S)−ジメチルHCl塩を黄色油状物として得、これをそれ以上精製せずに次の工程で使用した。MS(ESI)C6H11NO5の理論値:177.1。
工程5. 2−((6−クロロ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)−3−ヒドロキシコハク酸(2S,3S)−ジメチルの合成
還流冷却器を備えた500mL丸底フラスコに、18g(84.3mmol)の2−アミノ−3−ヒドロキシコハク酸(2S,3S)−ジメチルHCl、29g(150mmol)の2,6−ジクロロ−3−ニトロピリジン、42.5gのNaHCO3(506mmol)、および350mLのTHFを加えた。この反応物を40℃で36時間撹拌した。固体を濾去し、さらなるTHF(30mL×3)で洗浄した。濾液および洗液を合わせ、真空濃縮した。残渣を、5:1(v/v)から1:1(v/v)ヘプタン:酢酸エチルへの勾配で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、22g(63%)の2−((6−クロロ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)−3−ヒドロキシコハク酸(2S,3S)−ジメチルを黄色結晶性固体として得た。MS(ESI)C11H12ClN3O7の理論値:333.0。
この手順を用い、2−アミノ−3−ヒドロキシコハク酸(2S,3S)−ジメチル塩酸塩を2−アミノ−3−ヒドロキシコハク酸ジメチル塩酸塩に置き換えることにより、2−((6−クロロ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)−3−ヒドロキシコハク酸ジメチルを製造することができた。
工程6. 2−((S)−6−クロロ−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)−2−ヒドロキシ酢酸(S)−メチルの合成
H2O中、10gのラネーNiのスラリーを、デカントして水を除去し、2−プロパノールで希釈し、再びデカントし、10gの重量の湿潤混合物を得た。500mLフラスコに10g(30mmol)の2−((6−クロロ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)−3−ヒドロキシコハク酸(2S,3S)−ジメチル、200mLの2−プロパノール、次いで、10gのラネーNiを加えた。この反応を真空下に置き、水素を3回再充填した後、それを1気圧のH2下で3時間、またはHPLCにより出発ニトロ化合物の残留が無くなるまで撹拌した。ラネーNiを濾去した後、濾液を500mL丸底フラスコに入れ、5mL(87mmol)の氷酢酸を加えた。このフラスコに還流冷却器を取り付けた後、この反応物を80℃で16時間、HPLCにより中間体ジアミノピリジンが存在しなくなるまで撹拌した。溶媒を真空下で除去した。残渣を、5/1(v/v)ヘプタン/酢酸エチルで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、6g(72%)の生成物を淡黄色固体として得た。MS(ESI)C10H10ClN3O4の理論値:271.0。
この手順を用い、2−((6−クロロ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)−3−ヒドロキシコハク酸(2S,3S)−ジメチルを2−((6−クロロ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)−3−ヒドロキシコハク酸ジメチルに置き換えることにより、2−(6−クロロ−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)−2−ヒドロキシ酢酸メチルを製造することができた。
工程7. (S)−1−((R)−6−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)エタン−1,2−ジオールの合成
還流冷却器および温度計を備えた100mL3頚丸底フラスコに、20mLのテトラヒドロフラン、次いで、1.19g(30mmol)のLiAlH4を加えた。この撹拌混合物を−5℃に冷却した後、20mLのテトラヒドロフラン中、0.5g(2mmol)の2−((S)−6−クロロ−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)−2−ヒドロキシ酢酸(S)−メチルの溶液を滴下した。この反応物を70℃で16時間、またはHPLCにより反応が完了するまで撹拌した。(ラクタムの還元はエステルの還元よりも遅かった。)この反応物を−10℃に冷却した後、1.2mLの水を滴下し、この反応物を10分間撹拌した。次に、1.2mLの15%(w/v)NaOH(水溶液)を滴下し、この反応物を20分間撹拌した。過剰量のLiAlH4の急冷を行うために、さらに3.6mLの水を滴下し、その後、この反応物を20分間撹拌した。この反応物を濾過し、沈澱をテトラヒドロフラン(3×20mL)で洗浄した。合わせた濾液および洗液を真空濃縮し、約1.5gの固体を得た。これを16mLの酢酸エチルで希釈し、濾過した。濾液を真空濃縮し、310mg(80%)の生成物を褐色固体として得た。MS(ESI)C9H12ClN3O2の理論値:229.1。
この手順を用い、2−(6−クロロ−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)−2−ヒドロキシ酢酸(S)−メチルを2−((S)−6−クロロ−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)−2−ヒドロキシ酢酸メチルに置き換えることにより、1−(6−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)エタン−1,2−ジオールを製造することができた。
工程8. (1S,4R)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−3−オールの合成
還流冷却器を備えた10mL丸底フラスコに、250mg(1.1mmol)の(S)−1−((R)−6−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)エタン−1,2−ジオール、次いで、5mLの48%HBr(水溶液)を加えた。この反応物を105℃で16時間、またはHPLCが総ての出発材料が消費されたことを示すまで加熱した。この反応物を冷却した後、K2CO3(S)をpH=8までゆっくり加えた。溶媒を真空下で除去した後、残渣を、20/1(v/v)ジクロロメタン/メタノールで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、110mg(47%)の生成物を白色結晶性固体として得た。MS(ESI)C9H10ClN3Oの理論値:211.1。
この手順を用い、(S)−1−((R)−1−(6−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)エタン−1,2−ジオールを6−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)エタン−1,2−ジオールに置き換えることにより、7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−3−オールを製造することができた。
工程9. (1S,4R)−7−クロロ−3−((トリメチルシリル)オキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンの合成
10mL丸底フラスコに、1.68g(7.9mmol)の(1S,4R)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−3−オール、5mLのN,N−ジメチルホルムアミド、および2.8mL(24mmol)の2,6−ジメチルピリジンを加えた。この混合物をそれが均質となるまで撹拌した後、周囲温度で1.5mL(12mmol)のクロロトリメチルシランを滴下した。この反応物を周囲温度で3時間撹拌した後、それを100mLのジクロロメタンで希釈し、飽和NaHCO3(水溶液)(1×50mL)、次いで、ブライン(3×50mL)で抽出し、真空濃縮し、2.04g(91%)の生成物を白色結晶性固体として得た。MS(ESI)C12H18ClN3OSiの理論値:283.1。
この手順を用い、(1S,4R)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−3−オールを7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−3−オールに置き換えることにより、7−クロロ−3−((トリメチルシリル)オキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンを製造することができた。
実施例27. (3R,4R)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3−((トリメチルシリル)オキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンの製造:
10:1ジオキサン:水(8.8mL)中、(3R,4R)−7−クロロ−3−((トリメチルシリル)オキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(283mg、1.0mmol)、(3−(トリフルオロメチル)フェニル)ボロン酸(285mg、1.5mmol)、XPhos(24mg、0.05mmol)、Pd(OAc)2(5.6mg、0.025mmol)、Cs2CO3(977mg、3.0mmol)の混合物を脱気し、100℃で25分間マイクロ波加熱した。ジオキサン層を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2中0から7%MeOHへの勾配)により精製し、(3R,4R)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3−((トリメチルシリル)オキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンを得た。これらの画分を濃縮し、EtOAcに溶かし、飽和NaHCO3、水、ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮し、(3R,4R)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3−((トリメチルシリル)オキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(338mg、収率85%)を得た。MS(ESI)C19H22F3N3OSiの理論値:393.15;測定値:394[M+H]。
水素化ナトリウムを用いるこの一般的カップリング手順を用い、3−(ピリジン−2−イル)−2H−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−2,4(3H)−ジオンを適当なイソシアン酸アリールまたはイソシアン酸アリール二量体(aryl isocyante dimer)に置き換えることにより、(3R,4R)−3−ヒドロキシ−N−アリール−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造することができた。非立体特異的シリーズは、7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3−((トリメチルシリル)オキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンで出発して製造することができた。
実施例28. (3R,4R)−3−ヒドロキシ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
THF(30mL)中、(3R,4R)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3−((トリメチルシリル)オキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(215mg、0.55mmol)および鉱油中60%NaH(66mg、1.65mmol)の溶液を20分間加熱還流した。3−(ピリジン−2−イル)−2H−ピリド[1,2−a][1,3,5]トリアジン−2,4(3H)−ジオン(197mg、0.82mmol)を加え、この反応混合物を還流下で2時間加熱した。この反応混合物を冷却し、濃縮乾固し、CH2Cl2で希釈した。有機層を飽和NaHCO3、水、ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮乾固した。残渣をPrep−HPLCにより精製し、これらの画分を濃縮乾固し、ジエチルエーテルとペンタンの混合物で摩砕し、2,2,2−トリフルオロ酢酸(3R,4R)−3−ヒドロキシ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを白色固体として得た(132mg、収率44%)。MS(ESI)C22H18F3N5O2の理論値:441.14;測定値:442[M+H]。
実施例29. (4R)−3−オキソ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
CH2Cl2(20mL)中、2,2,2−トリフルオロ酢酸(3R,4R)−3−ヒドロキシ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(92mg、0.166mmol)の溶液に、デス・マーチン・ペリオダン(Dess-Martin Periodane)(105mg、0.25mmol)を加えた。この反応混合物を室温で1.5時間撹拌した。第2分量のデス・マーチン・ペリオダン(Dess-Martin Periodane)(105mg、0.25mmol)を装填し、この反応混合物を室温で0.5時間撹拌した。飽和NaHCO3(水溶液)を加え、この反応混合物をCH2Cl2で抽出した。有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮して白色泡沫を得た。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ペナーテ(Penate)中0から100%酢酸エチルへ)により精製した後、Prep−HPLCにより精製し、凍結乾燥させ、2,2,2−トリフルオロ酢酸(4R)−3−オキソ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(62mg、収率67%)を得た。MS(ESI)C22H16F3N5O2の理論値:439.13;測定値:440[M+H]。
この一般的手順を用い、(3R,4R)−3−ヒドロキシ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを(3R,4R)−3−ヒドロキシ−N−(3−(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドで置き換えることにより、(4R)−N−(3−(オキサゾール−5−イル)フェニル)−3−オキソ−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造した。
実施例30. (3S,4R)−3−ヒドロキシ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
窒素雰囲気下、−78℃にて、THF(10mL)中、2,2,2−トリフルオロ酢酸(4R)−3−オキソ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(50mg、0.09mmol)の溶液に、THF中1Mのスーパーヒドリドの溶液(0.45mL、0.45mmol)を滴下した。この反応混合物を−78℃で30分間撹拌し、EtOAc(5mL)の添加で急冷し、室温まで温め、濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2中0から10%MeOHへの勾配)により精製し、(3S,4R)−3−ヒドロキシ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(22mg、収率55%)を得た。MS(ESI)C22H18F3N5O2の理論値:441.14;測定値:442[M+H]。
実施例31. 酢酸(3S,4R)−5−(ピリジン−2−イルカルバモイル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−3−イルの製造:
CH2Cl2中、(3S,4R)−3−ヒドロキシ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(15mg、0.034mmol)の溶液に、トリエチルアミン(10μL、0.07mmol)、次いで、DMAP(1mg)および無水酢酸(10μL、0.011mmol)を加えた。この反応混合物を室温で2時間撹拌し、濃縮乾固し、Prep−HPLCにより精製した。これらの画分を凍結乾燥させ、酢酸(3S,4R)−5−(ピリジン−2−イルカルバモイル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−3−イル2,2,2−トリフルオロアセテート(5.9mg、収率29%)を得た。MS(ESI)C24H20F3N5O3の理論値:483.15;測定値:484[M+H]。
この一般的手順を用い、(3S,4R)−3−ヒドロキシ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを(3R,4R)−3−ヒドロキシ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドで置き換えることにより、酢酸(3R,4R)−5−(ピリジン−2−イルカルバモイル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−3−イルを製造した。
この一般的手順を用い、(3S,4R)−3−ヒドロキシ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを(3R,4R)−3−ヒドロキシ−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドで置き換え、かつ、無水酢酸および無水安息香酸を置き換えることにより、安息香酸(3R,4R)−5−(ピリジン−2−イルカルバモイル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−3−イルを製造した。
実施例32. (3R,4R)−3−ヒドロキシ−N−(3−(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
CH3CN(20mL)中、(3R,4R)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3−((トリメチルシリル)オキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(284mg、0.722mmol)、(3−(オキサゾール−5−イル)フェニル)カルバミン酸フェニル(404mg、1.44mmol)およびDMAP(44mg、0.36mmol)の溶液を60℃で(一晩)、次いで、80℃で(2時間)加熱した。次に、この反応混合物に追加量の(3−(オキサゾール−5−イル)フェニル)カルバミン酸フェニル(202mg、0.72mmol)およびDMAP(88mg、0.72mmol)を加えた。この反応混合物を80℃で一晩加熱し、濃縮乾固した。この反応混合物をまず、カラムクロマトグラフィー(ペンタン中0から100%酢酸エチルへの勾配)により精製し、次いで、prep−HPLCにより精製し、凍結乾燥させ、(3R,4R)−3−ヒドロキシ−N−(3−(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドをトリフルオロ酢酸塩として得た(161mg、36%)。MS(ESI)C26H20F3N5O3の理論値:507.15;測定値:508[M+H]。
実施例33. (3R,4R)−7−(3−クロロフェニル)−3−ヒドロキシ−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
工程1. (3R,4R)−3−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンの合成:
N2下、−20℃で、2mLのCH2Cl2中、(3R,4R)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−3−オール(90mg、0.28mmol)の溶液に、TBSOTf(111mg、0.42mmol)をゆっくり加えた。この混合物を1時間撹拌した後、1N HClおよび水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、蒸発乾固した。残渣をPrep.TLC(DCM/EA=20:1)により精製し、(3R,4R)−3−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンを黄色固体として得た(90mg、収率73%)。MS(ESI)C15H24ClN3OSiの理論値:325.14。
工程2. (3R,4R)−3−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−7−(3−クロロフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンの合成
ジオキサン/H2O(11mL、10:1)中、(3R,4R)−3−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(1.08g、3.32mmol)、(3−クロロフェニル)ボロン酸(570mg、3.65mmol)、CS2CO3(2.48g、7.63mmol)、Pd(dppf)Cl2(300mg、0.33mmol)の混合物をマイクロ波反応器にて130℃で2.5時間加熱した。この混合物を水に注ぎ、EtOAcで希釈した。有機相を水およびブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、蒸発乾固した。残渣をprep.HPLCにより精製し、(3R,4R)−3−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−7−(3−クロロフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンを淡黄色固体として得た(850mg、収率63%)。MS(ESI)C21H28ClN3OSiの理論値:401.17。
この一般的手順を用い、(3R,4R)−3−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−7−(5−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンを製造した。
工程3. (3R,4R)−3−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−7−(3−クロロフェニル)−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
5mlのMeCN中、ピリジン−2−イルカルバミン酸フェニル(86mg、0.20mmol)、(3R,4R)−3−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−7−(3−クロロフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(80mg、0.20mmol)およびDMAP(24mg、0.20mmol)の混合物を65℃で一晩撹拌した。粗反応混合物を、DCM:EA=20:1で溶出するprep.TLCにより精製し、(3R,4R)−3−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−7−(3−クロロフェニル)−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(110mg)を得た。MS(ESI)C27H32ClN3O2Siの理論値:521.2。
工程4. (3R,4R)−7−(3−クロロフェニル)−3−ヒドロキシ−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
10mLのTHFおよび濃HCl(1mL)中、(3R,4R)−3−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−7−(3−クロロフェニル)−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(110mg、0.21mmol)の溶液を室温で48時間撹拌した。この混合物を減圧下で濃縮した。飽和NaHCO3水溶液を用いてpHを8に調整した。この混合物をEtOAcで抽出し、ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)。濃縮した。残渣をEtOAc中で摩砕し、(3R,4R)−7−(3−クロロフェニル)−3−ヒドロキシ−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(34mg、収率39%)を白色固体として得た。MS(ESI)C21H18ClN5O2の理論値:407.1;測定値:408[M+H]。
実施例34. (3R,4R)−N−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシ−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
工程1. (3R,4R)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−3−オールの合成:
ジオキサン/H2O(30mL、10:1)中、(3R,4R)−7−クロロ−3−((トリメチルシリル)オキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(1g、3.53mmol)、((3−トリフルオロメチル)フェニル)ボロン酸(1.34g、7.06mmol)、CS2CO3(3.44g、10.6mmol)、Pd(dppf)Cl2(300mg、0.35mmol)の混合物を、マイクロ波下、130℃で2.5時間反応させた。次に、この反応混合物を水に注ぎ、EtOAcで抽出し、水、次いで、ブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(PE/EA=4:1)により精製し、(3R,4R)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−3−オール(600mg、39%収率)を得た。MS(ESI)C16H14F3N3Oの理論値:321.1。
工程2. (3R,4R)−3−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンの合成:
TBSCl(338mg、2.24mmol)、(3R,4R)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−3−オール(600mg、1.87mmol)、トリエチルアミン(415mg、4.11mmol)およびDMAP(22mg、0.20mmol)の混合物を48時間撹拌した。出発材料を消費するためにはさらなるTBSClおよびTEAが必要であった。粗残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、(3R,4R)−3−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(90mg、収率73%)を得た。MS(ESI)C22H28F3N3OSiの理論値:435.20。
工程3. (3R,4R)−3−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−N−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
5mlのMeCN中、(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)カルバミン酸フェニル(25mg、0.10mmol)、(3R,4R)−3−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−7−(3−クロロフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(30mg、0.05mmol)およびDMAP(6mg、0.05mmol)の混合物を65℃で一晩撹拌した。粗反応混合物をprep.TLCにより精製し、(3R,4R)−3−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−N−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(30mg、定量的)を得た。MS(ESI)C28H34F3N5O2SSiの理論値:589.22。
工程4. (3R,4R)−N−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシ−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
THF(2mL)中、(3R,4R)−3−((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)−N−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(30mg、0.051mmol)の溶液に、TBAF/THF(0.1mL、0.1mmol)を加えた。この混合物を室温で一晩(overninght)撹拌し、水に注ぎ、EtOAcで抽出した。有機層を水、次いで、ブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固した。残渣をprep.TLC(EtOAc)により精製し、(3R,4R)−N−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−3−ヒドロキシ−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを白色固体として得た(12mg、収率50%)。MS(ESI)C22H20F3N5O2Sの理論値:475.13;測定値:476[M+H]。
実施例35: (4S)−N−(4−(オキサゾール−5−イル)ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
0℃に冷却した、ピリジン(780μL、9.65mmol)およびジクロロメタン(10mL)中、4−(オキサゾール−5−イル)ピリジン−2−アミン(500mg、3.10mmol)の溶液に、クロロギ酸フェニル(466μL、3.72mmol)を1.5時間かけて加えた。この反応物を0℃で2時間撹拌した。水(15mL)をゆっくり加え、さらなるジクロロメタンを加えた。有機層を分離し、飽和炭酸ナトリウム(20mL)およびブライン(20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、総ての溶媒を真空下で除去した。残渣を5:1石油エーテル:酢酸エチルに30分間懸濁させた後、この懸濁液を濾過し、(4−(オキサゾール−5−イル)ピリジン−2−イル)カルバミン酸フェニル(547mg、1.94mmol、収率63%)を得た。
アセトニトリル(5mL)中、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(110mg、0.361mmol)、(4−(オキサゾール−5−イル)ピリジン−2−イル)カルバミン酸フェニル(203mg、0.722mmol)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(53.0mg、0.434mmol)の溶液を60℃で一晩撹拌した。この混合物を分取HPLCにより精製し、(4S)−N−(4−(オキサゾール−5−イル)ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(24.3mg、0.0493mmol、収率14%)を得た。MS(ESI)C25H19F3N6O2の理論値:492.2;測定値:493.2[M+H]。
実施例36: (4S)−N−(3,5−ビス(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
工程1. (3,5−ビス(オキサゾール−5−イル)フェニル)カルバミン酸フェニルの合成:
ジクロロメタン(15mL)中、3,5−ビス(オキサゾール−5−イル)アニリン(100mg、0.44mmol)、クロロギ酸フェニル(76mg、0.48mmol)およびピリジン(0.20mL)の混合物を室温で2時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残った材料を分取TLC(1:1石油エーテル:酢酸エチル)により精製し、(3,5−ビス(オキサゾール−5−イル)フェニル)カルバミン酸フェニル(140mg、0.40mmol、収率92%)を得た。MS(ESI)C19H13N3O4の理論値:347.1。
工程2. (4S)−N−(3,5−ビス(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
アセトニトリル(2mL)中、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(70mg、0.23mmol)、(3,5−ビス(オキサゾール−5−イル)フェニル)カルバミン酸フェニル(140mg、0.40mmol)およびDMAP(56mg、0.46mmol)の混合物を一晩還流させた。溶媒を真空下で除去し、残った残渣を分取TLC(10:1ジクロロメタン:メタノール)により精製し、(4S)−N−(3,5−ビス(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(13.7mg、0.0245mmol、収率11%)を得た。MS(ESI)C29H21F3N6O3の理論値:558.2;測定値:559.0。
実施例37. ((1−(3−((4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5−カルボキサミド)フェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル)カルバミン酸tert−ブチルの製造:
アセトニトリル(5mL)中、トリホスゲン(214mg、0.721mmol)の溶液に、アセトニトリル(5mL)およびトリエチルアミン(2mL)中、((1−(3−アミノフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル)カルバミン酸tert−ブチル(417mg、1.44mmol)の溶液を加えた。得られた懸濁液を室温で10分間撹拌した後、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(化合物#;302mg、0.989mmol)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(122mg、1.00mmol)を固体として加えた。この反応物を80℃で15分間撹拌した。この反応物を室温まで冷却し、メタノール(2mL)を加え、この反応物を飽和重炭酸ナトリウム(50mL)に注ぎ、ジクロロメタン(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を真空下で除去し、残った材料をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0%から8%メタノールへ)により精製し、((1−(3−((4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5−カルボキサミド)フェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル)カルバミン酸tert−ブチル(579mg、0.933mmol、収率94%)を得た。MS(ESI)C31H31F3N8O3の理論値:620.3;測定値:621.0[M+H]。
実施例38. (4S)−N−(3−(4−(アミノメチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
((1−(3−((4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5−カルボキサミド)フェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル)カルバミン酸tert−ブチル(160mg、0.258mmol)をトリフルオロ酢酸(1.6mL)に溶かした。この反応物を50℃で10分間撹拌した後、総ての溶媒を真空下で除去し、(4S)−N−(3−(4−(アミノメチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドトリフルオロ酢酸塩(164mg、0.258mmol、収率100%)を得た。MS(ESI)C26H23F3N8Oの理論値:520.2;測定値:521.0[M+H]。
実施例39: (4S)−N−(6−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
工程1: (4S)−N−(6−ブロモピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
アセトニトリル(25mL)中、トリホスゲン(1.81g、6.10mmol)の溶液に、アセトニトリル(25mL)中、6−ブロモピリジン−2−アミン(2.26g、13.1mmol)の溶液を加えた。トリエチルアミン(8.00mL、57.4mmol)を加え、この反応物を80℃で30分間撹拌し、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(1.04g、3.41mmol)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(410mg、3.36mmol)を固体として加え、この反応物を80℃で1時間撹拌した。この反応物を室温まで冷却し、水(30mL)に注ぎ、ジクロロメタン(2×50mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、総ての溶媒を真空下で除去した。残った残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン中30%から100%酢酸エチルへ)により精製し、(4S)−N−(6−ブロモピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(1.12g、2.22mmol、収率65%)を得た。MS(ESI)C22H17BrF3N5Oの理論値:503.1;測定値:503.8[M+H]。
工程2: (4S)−N−(6−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
マイクロ波バイアルに(4S)−N−(6−ブロモピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(46.0mg、0.0912mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(4.8mg、0.0042mmol)、フッ化セシウム(180mg、1.18mmol)、1−メチル−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール(60.0mg、0.288mmol)、DME(1.5mL)、および水(150μL)を装填した。このマイクロ波バイアルを密閉し、マイクロ波中、100℃で3時間加熱した。有機層を分離し、水層を10:1酢酸エチル:メタノール(2×2mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を真空下で除去し、残った残渣をDMSO(4mL)に溶かし、濾過し、濾液を分取HPLCにより精製し、(4S)−N−(6−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドトリフルオロ酢酸塩(28.4mg、0.0460mmol、収率50%)を得た。MS(ESI)C26H22F3N7Oの理論値:505.2;測定値:506.0[M+H]。
実施例40: (4S)−N−(3−(ピペラジン−1−イルメチル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
バイアルにトリホスゲン(75.0mg、0.253mmol)を装填し、これをアセトニトリル(2.5mL)に溶かした。アセトニトリル(2.5mL)中、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(150mg、0.491mmol)の溶液、次いで、トリエチルアミン(0.50mL、3.59mmol)を加えた。この反応物を室温で4時間撹拌し、4−(3−アミノベンジル)ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチル(480mg、1.65mmol)を固体として加え、次いで、DMAP(360mg、2.95mmol)を加えた。この反応物を80℃で16時間撹拌し、総ての溶媒を真空下で除去した。残った材料をトリフルオロ酢酸(5.0mL)に溶かし、この溶液を50℃で20分間撹拌した。余分な量のトリフルオロ酢酸を真空下で除去し、残った材料をDMSOに溶かし、得られた溶液を分取HPLCにより精製し、(4S)−N−(3−(ピペラジン−1−イルメチル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドトリフルオロ酢酸塩(89.1mg、0.140mmol、収率29%)を得た。MS(ESI)C28H29F3N6Oの理論値:522.2。
実施例41: (4S)−N−(4−(ピペラジン−1−イル)ピリミジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
工程1. 4−(2−((4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5−カルボキサミド)ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルの合成:
0℃で、THF(20mL)中、4−(2−アミノピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチル(200mg、0.716mmol)の溶液に、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド溶液(THF中1.0M、1.50mL、1.50mmol)を加えた。この反応物を室温まで温め、30分間撹拌し、THF(5mL)中、7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボン酸(4S)−フェニル(327mg、1.07mmol)の溶液を加えた。この反応物を室温で1.5時間撹拌した後、溶媒を真空下で除去し、残った残渣をprep TLC(3:1石油エーテル:酢酸エチル)により精製し、4−(2−((4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5−カルボキサミド)ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチル(160mg、0.262mmol、収率37%)を得た。MS(ESI)C30H33F3N8O3の理論値:610.3。
工程2. (4S)−N−(4−(ピペラジン−1−イル)ピリミジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
4−(2−((4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5−カルボキサミド)ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチル(160mg、0.262mmol)を酢酸エチル中の塩酸(2M、10mL)に溶かし、30分間撹拌した。総ての溶媒を真空下で除去し、(4S)−N−(4−(ピペラジン−1−イル)ピリミジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(47mg、0.092mmol、収率35%)を得た。MS(ESI)C25H25F3N8Oの理論値:510.2;測定値:511.0[M+H]。
実施例42: 2−(4−(3−((9S)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10−カルボキサミド)フェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)エチル)カルバミン酸tert−ブチルの合成:
バイアルにトリホスゲン(180mg、0.607mmol)を装填し、これをジクロロメタン(3mL)に溶かした。(9S)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン(320mg、1.00mmol)の溶液を加え、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.00mL、5.74mmol)を加えた。この反応物を室温で25分間撹拌した後、ジクロロメタン(5mL)中、(2−(4−(3−アミノフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)エチル)カルバミン酸tert−ブチル(415mg、1.37mmol)の溶液を加えた。この反応物を40℃で16時間撹拌した後、マイクロ波中120℃で1時間加熱した。冷却後、溶媒を真空下で除去し、残った残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0%から8%メタノールへ)により精製し、(2−(4−(3−((9S)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10−カルボキサミド)フェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)エチル)カルバミン酸tert−ブチル(99.0mg、0.153mmol、収率15%)を得た。MS(ESI)C33H35F3N8O3の理論値:648.3。
実施例43: (4S)−N−(3−(2−(グアニジノメチル)オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
DMF(1mL)中、1H−ピラゾール−1−カルボキシイミドアミド塩酸塩(15mg、0.10mmol)およびDIEA(17μL、0.10mmol)の溶液を室温で10分間撹拌し、(4S)−N−(3−(2−(アミノメチル)オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(52mg、0.10mmol)を加えた。この反応混合物を室温で一晩撹拌した後、prep−HPLCにより精製し、凍結乾燥させ、(4S)−N−(3−(2−(グアニジノメチル)オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドトリフルオロ酢酸塩(25.5mg、収率38%)を得た。MS(ESI)C28H25F3N8O2の理論値:562.21;測定値:563[M+H]。
この一般的手順を用い、(4S)−N−(3−(2−(アミノメチル)オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを適当なアミンで置き換えることにより、他のグアニジンを製造した。
実施例44: (4S)−N−(ピリミジン−4−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)ピペリジン−1−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
工程1. (9S)−2−(3−(トリフルオロメチル)ピペリジン−1−イル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシンの合成:
20mLマイクロ波バイアルに磁気撹拌子、(9S)−2−クロロ−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン(629mg、3.00mmol)、[1,3−ビス(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン]クロロ]アリルパラジウム(II)(62.1mg、0.120mmol)、3−トリフルオロメチルピペリジン(919mg、6.00mmol)およびカリウムtert−ブトキシド(673mg、6.00mmol)を装填した。DME(7.0mL)を加え、このマイクロ波バイアルに蓋をし、2時間90℃に加熱した。室温まで冷却した後、メタノール(5mL)およびシリカゲル(5g)を加え、総ての溶媒を真空下で除去した。残ったシリカゲルスラリーを40gシリカゲルカラムの上にロードし、フラッシュクロマトグラフィー(ペンタン中50%から100%酢酸エチルへ)により、(9S)−2−(3−(トリフルオロメチル)ピペリジン−1−イル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン2をジアステレオマーの1:1混合物で得た(713mg、2.18mmol、収率73%)。MS(ESI)C16H21F3N4の理論値:326.2。
工程2. (4S)−N−(ピリミジン−4−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)ピペリジン−1−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
アセトニトリル(2mL)およびピリジン(1mL)中、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)ピペリジン−1−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(40.0mg、0.128mmol)の溶液に、トリホスゲン(26.0mg、0.0876mmol)を固体として加えた。得られた赤色溶液を50℃で1時間撹拌した後、4−アミノピリミジン(95.0mg、1.00mmol)を固体として加え、この反応を70℃で6時間撹拌した。6時間後、窒素流下で大部分のアセトニトリルを除去し、この反応物にメタノール(1mL)およびDMSO(2mL)を加えた。得られた溶液をprep HPLCにより精製し、単離された材料をアセトニトリル/1N HCl水溶液から凍結乾燥させ、(4S)−N−(ピリミジン−4−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)ピペリジン−1−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド塩酸塩(34.9mg、0.0743mmol、収率58%)を得た。MS(ESI)C20H22F3N7Oの理論値:433.2。
実施例45: (4S)−7−((S)−3−(ジメチルアミノ)ピロリジン−1−イル)−N−(ピリジン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
工程1. (3S)−N,N−ジメチル−1−((4S)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−7−イル)ピロリジン−3−アミンの合成:
20mLマイクロ波バイアルに磁気撹拌子、(4S)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(978mg、5.00mmol)、[1,3−ビス(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン]クロロ]アリルパラジウム(II)(51.7mg、0.100mmol)、(S)−N,N−ジメチルピロリジン−3−アミン(1.14g、10.00mmol)およびカリウムtert−ブトキシド(1.12mg、10.00mmol)を装填した。DME(10.0mL)を加え、このマイクロ波バイアルに蓋をし、4時間100℃に加熱した。室温まで冷却した後、メタノール(20mL)およびシリカゲル(5g)を加え、総ての溶媒を真空下で除去した。残ったシリカゲルスラリーを40gシリカゲルカラムの上にロードし、フラッシュクロマトグラフィー(ペンタン中0%から10%メタノールへ)により、(3S)−N,N−ジメチル−1−((4S)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−7−イル)ピロリジン−3−アミン(524mg、1.92mmol、収率38%)を得た。MS(ESI)C15H23N5の理論値:273.2。
工程2. (4S)−7−((S)−3−(ジメチルアミノ)ピロリジン−1−イル)−N−(ピリジン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
アセトニトリル(540μL)およびピリジン(150μL)中、(3S)−N,N−ジメチル−1−((4S)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−7−イル)ピロリジン−3−アミン(40.0mg、0.146mmol)の溶液に、アセトニトリル(310μL)中、トリホスゲン(28.9mg、0.0975mmol)の溶液を加えた。この反応を50℃で30分間撹拌した後、トリエチルアミン(40μL)を加えた。3−アミノピリジン(94mg、1.00mmol)を固体として加え、この反応物を60℃で16時間撹拌した。16時間後、この反応物を室温まで冷却し、メタノール(1mL)を加え、得られた溶液を分取HPLCにより精製した。単離された材料をアセトニトリル/1N HCl水溶液から凍結乾燥させ、(4S)−7−((S)−3−(ジメチルアミノ)ピロリジン−1−イル)−N−(ピリジン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド塩酸塩(30.6mg、0.0712mmol、収率49%)を得た。MS(ESI)C21H27N7Oの理論値:393.2。
実施例46: 4−((9S)−10−(ピリミジン−4−イルカルバモイル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−2−イル)−1,4−ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチルの合成:
工程1. 4−((9S)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−2−イル)−1,4−ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチルの合成:
20mLマイクロ波バイアルに磁気撹拌子、(9S)−2−クロロ−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン(500mg、2.38mmol)、[1,3−ビス(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン]クロロ]アリルパラジウム(II)(12.4mg、0.0240mmol)、ホモピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチル(953mg、4.76mmol)およびカリウムtert−ブトキシド(534mg、4.76mmol)を装填した。DME(5.0mL)を加え、このバイアルに蓋をし、マイクロ波中、85℃で4時間加熱した。室温まで冷却した後、メタノール(20mL)およびシリカゲル(5g)を加え、総ての溶媒を真空下で除去し、残ったシリカゲルスラリーを40gシリカゲルカラム上にロードした。フラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中0%から8%メタノールへ)により、4−((9S)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−2−イル)−1,4−ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチル(550mg、1.48mmol、収率62%)を得た。MS(ESI)C20H31N5O2の理論値:373.2;測定値:374.2[M+H]。
工程2. 4−((9S)−10−(ピリミジン−4−イルカルバモイル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−2−イル)−1,4−ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチルの合成:
アセトニトリル(30mL)中、4−((9S)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−2−イル)−1,4−ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチル(500mg、1.34mmol)、ピリミジン−4−イル−カルバミン酸フェニルエステル(570mg、2.65mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(190mg、1.56mmol)の混合物を60℃で3.5時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をジクロロメタンに溶かし、水、ブラインで洗浄し、有機層を無水Na2SO4で乾燥させた。総ての溶媒を真空下で除去し、残った残渣を、ジクロロメタン:酢酸エチル(2:1)を用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製した後、ジクロロメタン中3%メタノールを用いる分取薄層クロマトグラフィーにより精製し、4−((9S)−10−(ピリミジン−4−イルカルバモイル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−2−イル)−1,4−ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチル(363mg、0.734mmol、収率55%)を得た。MS(ESI)C25H34N8O3の理論値:494.3;測定値:495.4[M+H]。
実施例47: (9S)−2−(1,4−ジアゼパン−1−イル)−N−(ピリミジン−4−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミドの合成:
4−((9S)−10−(ピリミジン−4−イルカルバモイル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−2−イル)−1,4−ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチル(400mg、0.808mmol)をMeOH中1MのHCl(20mL)に溶かし、この反応混合物を室温で1.5時間撹拌した。総ての溶媒を真空下で除去した。水(20mL)および炭酸カリウム(344mg、2.42mmol)を加え、この混合物を室温で1時間撹拌した。ジクロロメタン(3×5mL)で抽出し、溶媒を真空下で乾燥させ、(9S)−2−(1,4−ジアゼパン−1−イル)−N−(ピリミジン−4−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミド(300mg、0.761mmol、収94%率)を得た。MS(ESI)C20H26N8Oの理論値:394.2。
実施例48: (9S)−2−(4−(メチルスルホニル)−1,4−ジアゼパン−1−イル)−N−(ピリミジン−4−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミドの合成:
ジクロロメタン(3mL)中、(9S)−2−(1,4−ジアゼパン−1−イル)−N−(ピリミジン−4−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミド(60.0mg、0.152mmol)の溶液に、トリエチルアミン(46.1mg、0.457mmol)および塩化メタンスルホニル(18.1mg、0.152mmol)を加えた。この混合物を0℃で1時間撹拌した。この溶液を水、ブラインで洗浄し、有機層を無水Na2SO4で乾燥させた。残った溶液を、ジクロロメタン中3%メタノールを用いる分取クロマトグラフィーにより精製し、(9S)−2−(4−(メチルスルホニル)−1,4−ジアゼパン−1−イル)−N−(ピリミジン−4−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミド(30.0mg、0.0635mmol、収率42%)を得た。MS(ESI)C21H28N8O3Sの理論値:472.2。
実施例49: (9S)−2−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)−N−(ピリミジン−4−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミドの合成:
メタノール(3mL)中、(9S)−2−(1,4−ジアゼパン−1−イル)−N−(ピリミジン−4−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミド(100mg、0.254mmol)の溶液に、ホルムアルデヒド(水中37%、20μL)および10%パラジウム炭素(10mg)を加えた。この反応物を水素雰囲気下で1時間撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残った残渣を、ジクロロメタン中3%メタノールを用いる分取薄層クロマトグラフィーにより精製し、(9S)−2−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)−N−(ピリミジン−4−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミド(22.2mg、0.0543mmol、収率21%)を得た。MS(ESI)C21H28N8Oの理論値:408.2。
実施例50: (9S)−2−(4−イソプロピル−1,4−ジアゼパン−1−イル)−N−(ピリミジン−4−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミドの合成:
ジクロロメタン(3mL)中、(9S)−2−(1,4−ジアゼパン−1−イル)−N−(ピリミジン−4−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミド(50.0mg、0.127mmol)の溶液に、アセトン(12.9mg、0.254mmol)を加えた。この混合物を30分間撹拌し、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(20.1mg、0.0759mmol)を固体として加え、この反応物を室温で一晩撹拌した。総ての溶媒を真空下で除去し、残った残渣を分取薄層クロマトグラフィー(100%酢酸エチル)により精製し、(9S)−2−(4−イソプロピル−1,4−ジアゼパン−1−イル)−N−(ピリミジン−4−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミド(16.8mg、0.0385mmol、収率30%)を得た。MS(ESI)C23H32N8Oの理論値:436.3。
実施例51: (9S)−N−(ピリミジン−4−イル)−2−(4−(2,2,2−トリフルオロエチル)−1,4−ジアゼパン−1−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミドの合成:
DMF(3mL)中、(9S)−2−(1,4−ジアゼパン−1−イル)−N−(ピリミジン−4−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミド(100mg、0.254mmol)の溶液に、炭酸ナトリウム(80.7mg、0.761mmol)およびトリフルオロメタンスルホン酸2,2,2−トリフルオロエチル(163mg、0.508mmol)を加えた。この反応物を室温で一晩撹拌した後、ジクロロメタン(10mL)で希釈し、水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。総ての溶媒を真空下で除去し、残った残渣を、ジクロロメタン中3%メタノールを用いる分取薄層クロマトグラフィーにより精製し、(9S)−N−(ピリミジン−4−イル)−2−(4−(2,2,2−トリフルオロエチル)−1,4−ジアゼパン−1−イル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミド(19.5mg、0.0409mmol、収率16%)を得た。MS(ESI)C22H27F3N8Oの理論値:476.2。
実施例52: (4S)−7−(4−(2,2,2−トリフルオロエチル)−1,4−ジアゼパン−1−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンの合成:
工程1. 4−((4S)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−7−イル)−1,4−ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチルの合成:
DME(5mL)中、(4S)−7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(500mg、2.56mmol)、N−Bocホモピペラジン(953mg、4.76mmol)、カリウムtert−ブトキシド(534mg、4.76mmol)の溶液に、[1,3−ビス(2,6−ジ−イソプロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン]クロロ]アリルパラジウム(II)(12.4mg、0.0240mmol)を加えた。この混合物を90℃で3時間加熱した。冷却後、水を加え、この混合物を酢酸エチル(3×15mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残った残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(5:1ペンタン:酢酸エチル)により精製し、 4−((4S)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−7−イル)−1,4−ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチル(610mg、1.70mmol、収率66%)を得た。MS(ESI)C19H29N5O2の理論値:359.2。
工程2. (4S)−7−(1,4−ジアゼパン−1−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンの合成:
EtOAc(5M、10mL)中、4−((4S)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−7−イル)−1,4−ジアゼパン−1−カルボン酸tert−ブチル(610mg、1.70mmol)およびHClの混合物を室温で30分間撹拌した。溶媒を除去し、(4S)−7−(1,4−ジアゼパン−1−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(418mg、1.61mmol、収率95%)を得た。MS(ESI)C14H21N5の理論値:259.2。
工程3. (4S)−7−(4−(2,2,2−トリフルオロエチル)−1,4−ジアゼパン−1−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンの合成:
DMF(5mL)中、(4S)−7−(1,4−ジアゼパン−1−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(418mg、1.61mmol)の溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸2,2,2−トリフルオロエチル(748mg、3.23mmol)および炭酸カリウム(666mg、4.83mmol)を加えた。この反応物を室温で一晩撹拌した。この反応物を水で希釈し、酢酸エチル(3×10mL)で抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残った残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(6:1ペンタン:酢酸エチル)により精製し、(4S)−7−(4−(2,2,2−トリフルオロエチル)−1,4−ジアゼパン−1−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(320mg、0.937mmol、収率58%)を得た。MS(ESI)C16H22F3N5の理論値:341.2。
実施例53: (4S)−N−(3−(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−((R)−3−(トリフルオロメチル)ピペリジン−1−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドおよび(4S)−N−(3−(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−((S)−3−(トリフルオロメチル)ピペリジン−1−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
(4S)−N−(3−(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)ピペリジン−1−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(120mg、0.241mmol)を30×250mm chiralcel OD−Hカラムにロードした。20:80エタノール:ヘプタンで溶出すると、最初に(4S)−N−(3−(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−((R)−3−(トリフルオロメチル)ピペリジン−1−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(41.3mg、0.0828mmol、収率34%)、[α]D 25=+32(c、0.09、MeOH)が、次に、(4S)−N−(3−(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−((S)−3−(トリフルオロメチル)ピペリジン−1−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(44.8mg、0.0899mmol、収率37%)[α]D 25=+18.5(c、0.11、MeOH)が溶出した。MS(ESI)C25H25F3N6O2の理論値:498.2;測定値:499.3[M+H]。
実施例54. (5S)−N−(5−フルオロピリジン−3−イル)−8−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−4,5−ジヒドロ−2,5−メタノピリド[2,3−g][1,2,6]チアジアゾシン−6(3H)−カルボキサミド1,1−ジオキシドの製造:
工程1. (1−((2,6−ジクロロピリジン−3−イル)スルホニル)ピロリジン−3−イル)カルバミン酸(S)−tert−ブチルの合成:
ジクロロメタン(10mL)中、2,6−ジクロロピリジン−3−スルホニルクロリド(Org. Process Res. Dev. 2009, 13, 875-879)(3.40g、13.8mmol)の溶液に、ピロリジン−3−イルカルバミン酸(S)−tert−ブチル(2.82g、14.5mmol)、次いで、トリエチルアミン(3.00mL、21.5mmol)を加えた。この反応物を室温で30分間撹拌した後、飽和重炭酸ナトリウムに注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、溶媒を真空下で除去し、(1−((2,6−ジクロロピリジン−3−イル)スルホニル)ピロリジン−3−イル)カルバミン酸(S)−tert−ブチル(5.47g、13.8mmol、収率100%)を得た。
工程2. (5S)−8−クロロ−3,4,5,6−テトラヒドロ−2,5−メタノピリド[2,3−g][1,2,6]チアジアゾシン1,1−ジオキシドの合成:
ジクロロメタン(30mL)中、(1−((2,6−ジクロロピリジン−3−イル)スルホニル)ピロリジン−3−イル)カルバミン酸(S)−tert−ブチル(5.47g、13.8mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(10mL)を加えた。この反応物を室温で一晩撹拌し、総ての溶媒を真空下で除去した。残った残渣をDMF(30mL)に溶かし、炭酸ナトリウム(10.0g、94.3mmol)を加えた。この反応物を90℃で2時間撹拌した。この反応物を室温まで冷却し、氷水に注ぎ、得られた溶液を濾過し、固体を水で洗浄した。集めた固体を乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、(5S)−8−クロロ−3,4,5,6−テトラヒドロ−2,5−メタノピリド[2,3−g][1,2,6]チアジアゾシン1,1−ジオキシド(1.80g、6.93mmol、収率50%)を得た。
工程3. (5S)−8−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4,5,6−テトラヒドロ−2,5−メタノピリド[2,3−g][1,2,6]チアジアゾシン1,1−ジオキシドの合成:
10:1ジオキサン:水(45mL)中、(5S)−8−クロロ−3,4,5,6−テトラヒドロ−2,5−メタノピリド[2,3−g][1,2,6]チアジアゾシン1,1−ジオキシド(800mg、3.08mmol)、3−トリフルオロメチルベンゼンボロン酸(1.17g、6.16mmol)、炭酸セシウム(3.00g、9.21mmol)および[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(370mg、0.453mmol)の混合物を110℃で一晩撹拌した。冷却後、溶媒を真空下で除去し、残渣をジクロロメタンと水で分液した。有機層を分離し、水、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、溶媒を真空下で除去した。残った残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、(5S)−8−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4,5,6−テトラヒドロ−2,5−メタノピリド[2,3−g][1,2,6]チアジアゾシン1,1−ジオキシド(1.00g、2.71mmol、収率88%)を得た。
工程4. (5S)−8−((S)−3−フルオロピロリジン−1−イル)−3,4,5,6−テトラヒドロ−2,5−メタノピリド[2,3−g][1,2,6]チアジアゾシン1,1−ジオキシドの合成:
DMF(10mL)中、(5S)−8−クロロ−3,4,5,6−テトラヒドロ−2,5−メタノピリド[2,3−g][1,2,6]チアジアゾシン1,1−ジオキシド(800mg、3.08mmol)および炭酸ナトリウム(1.60g、15.1mmol)の溶液に、(S)−3−フルオロピロリジン塩酸塩(1.10g、8.76mmol)を加えた。この反応物を90℃で6時間撹拌した後、砕いた氷に注ぎ、撹拌し、濾過した。集めた固体を水で洗浄し、乾燥させ、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、(5S)−8−((S)−3−フルオロピロリジン−1−イル)−3,4,5,6−テトラヒドロ−2,5−メタノピリド[2,3−g][1,2,6]チアジアゾシン1,1−ジオキシド(680mg、2.18mmol、収率71%)を得た。
工程5. (5S)−N−(5−フルオロピリジン−3−イル)−8−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−4,5−ジヒドロ−2,5−メタノピリド[2,3−g][1,2,6]チアジアゾシン−6(3H)−カルボキサミド1,1−ジオキシドの合成:
(5S)−8−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4,5,6−テトラヒドロ−2,5−メタノピリド[2,3−g][1,2,6]チアジアゾシン1,1−ジオキシド(70.0mg、0.190mmol)をDMF(3mL)に溶かし、水素化ナトリウム(54mg、油中60%、1.35mmol)を加えた。この反応物を室温で2時間撹拌し、(5−フルオロピリジン−3−イル)カルバミン酸フェニル(176mg、0.768mmol)を加えた。この反応物を室温で1時間撹拌し、水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層を真空濃縮し、残った残渣を分取薄層クロマトグラフィーにより精製し、(5S)−N−(5−フルオロピリジン−3−イル)−8−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−4,5−ジヒドロ−2,5−メタノピリド[2,3−g][1,2,6]チアジアゾシン−6(3H)−カルボキサミド1,1−ジオキシド(24.0mg、0.0473mmol、収率25%)を得た。MS(ESI)C22H17F4N5O3Sの理論値:507.1;測定値:508.1(M+H)+。
以下の化合物を類似の方法で製造した:(5S)−N−(5−フルオロピリジン−3−イル)−8−((S)−3−フルオロピロリジン−1−イル)−4,5−ジヒドロ−2,5−メタノピリド[2,3−g][1,2,6]チアジアゾシン−6(3H)−カルボキサミド1,1−ジオキシド。
実施例55. (4S)−N−(3−(4−((6−アミノヘキサンアミド)メチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
トリフルオロ酢酸(3.0mL)中、((1−(3−((4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5−カルボキサミド)フェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル)カルバミン酸tert−ブチル(190mg、0.306mmol)の溶液を室温で1時間撹拌した後、余分なトリフルオロ酢酸を真空で除去した。残った残渣をDMF(5.0mL)およびトリエチルアミン(1.0mL)に溶かし、2, 6−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)ヘキサン酸5−ジオキソピロリジン−1−イル(250mg、0.761mmol)を加えた。この反応物を80℃で30分間撹拌した後、65℃に冷却し、4N HCl(4mL)を加えた。この反応物を65℃で2時間撹拌した後、濾過し、濾液を分取HPLCにより精製した。単離された材料をアセトニトリル/1N HClから凍結乾燥させ、(4S)−N−(3−(4−((6−アミノヘキサンアミド)メチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド塩酸塩(208mg、0.310mmol、収率100%)を得た。MS(ESI)C32H34F3N9O2の理論値:633.3;測定値:634.3(M+H)+。
実施例56. (4S)−N−(3−(4−((6−(5−((3aS,4S,6aR)−2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)メチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
アセトニトリル(1.3mL)およびトリエチルアミン(0.13mL、0.933mmol)中、(4S)−N−(3−(4−(アミノメチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(44.2mg、0.0850mmol)の溶液に、ビオチンアミドヘキサン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(40.9mg、0.090mmol)を加えた。この反応物を65℃で2時間撹拌した後、DMF(1mL)を加え、得られた反応混合物を濾過し、濾液を分取HPLCにより精製し、(4S)−N−(3−(4−((6−(5−((3aS,4S,6aR)−2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド)ヘキサンアミド)メチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(43.6mg、0.0448mmol、収率53%)を得た。
実施例57. (4S)−N−(3−(4−((3−(3’,6’−ジヒドロキシ−3−オキソ−3H−スピロ[イソベンゾフラン−1,9’−キサンテン]−5−イル)チオウレイド)メチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
アセトニトリル(1.3mL)およびトリエチルアミン(0.13mL、0.933mmol)中、(4S)−N−(3−(4−(アミノメチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(44.2mg、0.0850mmol)の溶液に、フルオレセインイソチオシアネート異性体I(35.0mg、0.090mmol)を加えた。この反応物を65℃で2時間撹拌した後、DMF(1mL)を加え、得られた反応混合物を濾過し、濾液を分取HPLCにより精製し、(4S)−N−(3−(4−((3−(3’,6’−ジヒドロキシ−3−オキソ−3H−スピロ[イソベンゾフラン−1,9’−キサンテン]−5−イル)チオウレイド)メチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(51.0mg、0.0498mmol、収率58%)を得た。
実施例58. (4S)−N−(3−(4−((3−((Z)−2−((1−(ジフルオロボリル)−1H−ピロール−2−イル)メチレン)−2H−ピロール−5−イル)プロパンアミド)メチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
アセトニトリル(0.35mL)およびトリエチルアミン(0.035mL、0.251mmol)中、(4S)−N−(3−(4−(アミノメチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(12.2mg、0.0234mmol)の溶液に、4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−プロピオン酸、スクシンイミジルエステル(10mg、0.0257mmol)を加えた。この反応物を60℃で30分間撹拌した後、この反応混合物を分取HPLCにより精製し、(4S)−N−(3−(4−((3−((Z)−2−((1−(ジフルオロボリル)−1H−ピロール−2−イル)メチレン)−2H−ピロール−5−イル)プロパンアミド)メチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(5.8mg、0.0064mmol、収率27%)を得た。
実施例59. (9S)−N−(4−(アセトアミドメチル)フェニル)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミドの合成:
ピリジン(3.0mL)中、(9S)−N−(4−(アミノメチル)フェニル)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミド塩酸塩(108mg、0.214mmol)の溶液に、無水酢酸(28.0μL、0.300mmol)を加えた。この反応物を室温で4時間撹拌し、この反応混合物を分取HPLCにより精製し、(9S)−N−(4−(アセトアミドメチル)フェニル)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミドトリフルオロアセテート(111mg、0.178mmol、収率83%)を得た。MS(ESI)C27H26F3N5O2の理論値:509.2;測定値:510.2(M+H)+。
実施例60. (4S)−N−(3−(ピロリジン−3−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
工程1: 3−(3−((4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5−カルボキサミド)フェニル)ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルの合成:
(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(A7、0.150g、0.490mmol)を5mlの塩化メチレンに溶かし、DIEA(193μl、1.08mmol)で処理した。この混合物を室温で30分間撹拌した。次に、3−(3−アミノフェニル)ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(0.141g、0.539mmol)を加え、この溶液を室温で一晩撹拌した。この反応物を5mlの塩化メチレンで希釈し、10mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄した。有機層を集め、濃縮乾固した。ペンタン中5−100%酢酸エチルを用いるシリカカラムクロマトグラフィーにより精製し、3−(3−((4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5−カルボキサミド)フェニル)ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(0.077g、26%)を得た。MS(ESI)C32H34F3N5O3の理論値:593.3、測定値:594[M+H]。
工程2: (4S)−N−(3−(ピロリジン−3−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
3−(3−((4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5−カルボキサミド)フェニル)ピロリジン−1−カルボン酸(S)tert−ブチル:(0.077g、0.130mmol)を1,4−ジオキサン中4NのHCl 5mLに溶かし、窒素下、室温で3時間撹拌した。次に、総ての溶媒を減圧下で除去し、得られた固体を真空下で一晩乾燥させ、(4S)−N−(3−(ピロリジン−3−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(0.078g、100%)を得た。MS(ESI)C27H26F3N5Oの理論値:493.21;測定値:494[M+H]。
実施例61. (4S)−N−(3−(1−(2−アミノ−2−オキソエチル)ピロリジン−3−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
(4S)−N−(3−(ピロリジン−3−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(B579、0.029g、0.058mmol)を2mlの塩化メチレンに溶かした後、DIEA(31μl、0.174mmol)で処理した。クロロアセトアミド(0.006g、0.064mmol)を加え、この反応物を一晩60℃に加熱した。次に、この反応物を室温まで冷却し、5mlの塩化メチレンで希釈し、10mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄した。有機層を濃縮乾固し、0.1%トリフルオロ酢酸(trifluroracetic acid)を含有する水中5−95%アセトニトリル(acetonitrle)の勾配を用いるC18での逆相クロマトグラフィーにより精製し、(4S)−N−(3−(1−(2−アミノ−2−オキソエチル)ピロリジン−3−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(0.008g、23%)を得た。MS(ESI)C29H29F3N6O2の理論値:550.2;測定値:551[M+H]。
実施例62: (4S)−N−(3−(1−(2−アミノ−2−オキソエチル)ピロリジン−3−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
(4S)−N−(3−(ピロリジン−3−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(B579、0.020g、0.038mmol)を1.5mlの塩化メチレンに溶かした後、DIEA(13μl、0.076mmol)で処理した。次に、塩化アセチル(0.005g、0.042mmol)を加え、この反応物を室温で一晩撹拌した。その後、この反応物を5mlの塩化メチレンで希釈し、10mlの飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄した。有機層を濃縮乾固し、C18での逆相クロマトグラフィーにより精製し、(4S)−N−(3−(1−(2−アミノ−2−オキソエチル)ピロリジン−3−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(0.023g、88%)を得た。MS(ESI)C29H28F3N5O2の理論値:535.2;測定値:536[M+H]。
この一般的アシル化手順を用い、(4S)−N−(3−(1−プロピオニルピロリジン−3−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドおよび(4S)−N−(3−(1−(シクロプロパンカルボニル)ピロリジン−3−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造した。
実施例63. ((5−(3−((4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5−カルボキサミド)フェニル)オキサゾール−2−イル)メチル)カルバミン酸ベンジルの製造:
4mLの塩化メチレン中、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(0.276g、0.902mmol)を、DIEA(400μL、2.261mmol)およびトリホスゲン(0.200g、0.676mmol)と合わせた。次に、この混合物を65℃に加熱し、この時点で、4mLの塩化メチレン中、((5−(3−アミノフェニル)オキサゾール−2−イル)メチル)カルバミン酸ベンジル(0.321g、0.992mmol)をゆっくり滴下した。次に、この混合物を65℃で5時間加熱した。その後、この反応物を室温まで冷却した後、10mLの塩化メチレンを加え、次いで、50mLの飽和炭酸水素ナトリウム(sodium hydrogen carnonate)溶液で洗浄した。有機層を集め、減圧下で濃縮乾固した。次に、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、((5−(3−((4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5−カルボキサミド)フェニル)オキサゾール−2−イル)メチル)カルバミン酸ベンジル(0.082g、14%)を得た。MS(ESI)C35H29F3N6O4の理論値:654.22;測定値:655[M+H]。
実施例64. (4S)−N−(3−(2−(アミノメチル)オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造(prepration):
((5−(3−((4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5−カルボキサミド)フェニル)オキサゾール−2−イル)メチル)カルバミン酸ベンジル(0.040g、0.06mmol)を10mLの酢酸エチルに溶かし、真空下で3回脱気した。次に、およそ(approximately)5mgのパラジウム(炭素上10%、脱気タイプ)を加え、反応容器を窒素でパージした後、水素バルーンを取り付けた。その後、撹拌を開始し、この混合物を水素下で2時間撹拌した。次に、この反応容器を排気し、窒素でパージした。固体を取り出し、溶媒を減圧下で除去し、(4S)−N−(3−(2−(アミノメチル)オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(0.032g、100%)を得、これを精製せずに使用した。MS(ESI)C27H23F3N6O2の理論値:520.51;測定値:521[M+H]。
実施例65. (4S)−N−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造
工程1. 7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボン酸(4S)−フェニルの合成:
DCM(15mL)中、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(1.5g、4.92mmol)およびピリジン(0.74mL、9.84mmol)の溶液に、0℃で、クロロギ酸フェニル(1.1mL、8.85mmol)を滴下した。得られた混合物をこの温度で2時間撹拌した後、飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濃縮して粗カルバミン酸フェニル(1.8g)を褐色油状物として得、これをそれ以上精製せずに次の工程で使用した。
工程2. (4S)−N−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
乾燥THF(5mL)中、アミン5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−アミン(30mg、0.18mmol)の溶液に、NaH(18mg、0.75mmol)を0℃で少量ずつ加え、この反応混合物を室温で30分間撹拌した後、7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボン酸(4S)−フェニル(157mg、0.37mmol)を加え、この混合物を一晩撹拌した。得られた混合物をMeOH(2mL)で急冷し、エバポレーターにより真空濃縮した。残渣をprep−TLCにより精製し、2−(3−((2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(50mg、収率54.9%)を白色固体として得た。
7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボン酸(4S)−フェニルを用いるこの一般的手順を用い、5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−アミンの代わりに適当なアリール−アミンを使用することにより、様々なカルボキサミドを製造することができた。
実施例66. (4S)−N−(3−(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボチオアミドの製造
工程1. 5−(3−イソチオシアナトフェニル)オキサゾールの合成:
乾燥THF(6mL)中、3−(オキサゾール−5−イル)アニリン(160mg、1.0mmol)およびTEA(0.4mL、3.0 mmol)の溶液に、乾燥THF(1.5mL)中、チオホスゲン(0.152mL、2.0mmol)の溶液を、アルゴン雰囲気下、0℃で、10分かけて滴下した。この反応混合物を周囲温度で30分間撹拌したところ、TLCは3−(オキサゾール−5−イル)アニリンが完全に消費されたことを示した。溶媒を減圧下でエバポレーターにより除去し、残渣を水(10mL)および酢酸エチル(25mL)で希釈し、有機層を分離した。水相を酢酸エチル(3×30mL)で抽出し、合わせた有機層を飽和NaHCO3水溶液、次いで、水およびブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して5−(3−イソチオシアナトフェニル)オキサゾールを得、これを、それ以上精製を行わずに次の反応に使用した。
工程2. (4S)−N−(3−(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボチオアミドの合成:
(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(244mg、0.8mmol)を乾燥DMF(5mL)に溶かし、NaH(128mg、60%、3.2mmol)を、アルゴン雰囲気下、0℃で少量ずつ加えた。この混合物を室温まで温め、1時間撹拌した。DMF(3mL)中、上記で作製5−(3−イソチオシアナトフェニル)オキサゾールの溶液を滴下し、この反応混合物を周囲温度で一晩撹拌した。次に、得られた混合物を飽和NH4Cl水溶液で急冷し、酢酸エチル(3×15mL)で抽出し、水およびブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗物質を、DCM:MeOH=10:1を用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、標題化合物(4S)−N−(3−(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボチオアミド(186.1mg、収率46%)を得た。
実施例67. (4S)−N−(3−(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノベンゾ[b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
工程1. 2−((5−ブロモ−2−ニトロフェニル)アミノ)コハク酸(S)−ジメチルの合成:
DMSO(127mL)中、4−ブロモ−2−フルオロ−1−ニトロベンゼン(15.0g、68mmol)、2−アミノコハク酸(S)−ジメチル塩酸塩(15g、75mmol)およびDIPEA(36mL)の混合物を100℃で2時間撹拌した。冷却した後、水(200mL)を加え、この混合物を酢酸エチル(3×300mL)で抽出した。合わせた有機層を水およびブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=4/1)により精製し、2−((5−ブロモ−2−ニトロフェニル)アミノ)コハク酸(S)−ジメチル(12.4g、収率51%)を得た。
工程2. 2−(7−ブロモ−3−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−2−イル)酢酸(S)−メチル(Sundia E655−523−23)の合成:
i−PrOH(250mL)および水(50mL)中、2−((5−ブロモ−2−ニトロフェニル)アミノ)コハク酸(S)−ジメチル(12.4g、34.4mmol)、Fe(22g、392mmol)およびAcOH(1.2mL)の混合物を還流下で2時間撹拌した。冷却後、固体を濾過し、濾液を濃縮した。残渣をDCM(300mL)および水(300mL)で希釈し、有機層を分離し、水相をDCM(3×300mL)で抽出した。合わせた有機層を水およびブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=4/1)により精製し、2−(7−ブロモ−3−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−2−イル)酢酸(S)−メチル(8.8g、収率86%)を得た。1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ 10.43 (s, 1H), 6.84 (s, 1H), 6.75-6.73 (m, 1H), 6.66-6.63 (m, 1H), 6.32 (s, 1H), 4.19-4.16 (m, 1H), 3.60 (s, 3H), 2.78-2.72 (m, 1H), 2.68-2.61 (m, 1H)。
工程3. (S)−2−(7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−2−イル)エタノールの合成:
THF(30mL)中、2−(7−ブロモ−3−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−2−イル)酢酸(S)−メチル(4.4g、14.7mmol)の溶液に、0℃で、15分かけて、BH3Me2S(10M、10mL)を滴下した。この反応物を一晩加熱還流した。冷却した後、この混合物を6N HCl(10mL)で急冷し、得られた混合物を50℃で2時間撹拌した。次に、この混合物を、2N NaOHを用いて塩基性化してpH約8とした。この混合物をDCM(3×50mL)で抽出し、合わせた有機層を水およびブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH=20/1)により精製し、(S)−2−(7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−2−イル)エタノール(2.4g、収率63%)を得た。
工程4. (4S)−7−ブロモ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノベンゾ[b][1,4]ジアゼピンの合成:
室温にて、DCM(100mL)中、PPh3(3.0g、11.7mmol)の溶液に、DDQ(2.7g、11.7mmol)を加えた。(S)−2−(7−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン−2−イル)エタノール(2.0g、7.8mmol)を加えた。この混合物を室温で2時間撹拌した。溶媒を除去した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH=40/1)により精製し、(4S)−7−ブロモ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノベンゾ[b][1,4]ジアゼピン(1.5g、収率81%)を得た。
工程5. (4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノベンゾ[b][1,4]ジアゼピンの合成:
ジオキサン(60mL)および水(6mL)中、(4S)−7−ブロモ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノベンゾ[b][1,4]ジアゼピン(600mg、2.5mmol)、(3−(トリフルオロメチル)フェニル)ボロン酸(950mg、5.0mmol)、Cs2CO3(2.4g、7.5mmol)の混合物に、N2雰囲気下、室温でPd(dppf)Cl2(204mg、0.25mmol)を加えた。この混合物を110℃で一晩撹拌した。冷却した後、固体を濾過し、濾液を濃縮した。残渣をDCM(30mL)および水(30mL)で希釈し、有機層を分離し、水相をDCM(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層を水およびブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH=20/1)により精製し、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノベンゾ[b][1,4]ジアゼピン(700mg、収率95%)を得た。
工程6. (4S)−N−(3−(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノベンゾ[b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
THF(5mL)中、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノベンゾ[b][1,4]ジアゼピン(50mg、0.16mmol)、TEA(0.1mL)およびトリホスゲン(40mg、0.13mmol)の混合物を60℃で2時間撹拌した。3−(オキサゾール−5−イル)アニリン(38mg、0.24mmol)を加えた。この混合物を60℃で一晩撹拌した。冷却した後、得られた混合物を濃縮し、残渣をprep−TLC(DCM/MeOH=20/1)により精製し、(4S)−N−(3−(オキサゾール−5−イル)フェニル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノベンゾ[b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(26.1mg、収率33%)を得た。
実施例68. (4S)−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノベンゾ[b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
CH3CN(2.5mL)中、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノベンゾ[b][1,4]ジアゼピン(50mg、0.16mmol)、DMAP(52mg、0.42mmol)およびピリジン−2−イルカルバミン酸フェニル(89mg、0.42mmol)の混合物を一晩還流そた。冷却した後、溶媒を除去した。残渣をprep−TLC(DCM/MeOH=20/1)により精製し、(4S)−N−(ピリジン−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノベンゾ[b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(24.4mg、収率35%)を得た。
実施例69. (4S)−N−(ピリジン−3−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
工程1. (4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンの合成:
この部分は、上記の一般的な根岸カップリング手順を用いて製造し、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンをジアステレオマーの11:1混合物として得た(482mg、36%)。MS(ESI)C16H20F3N3の理論値:311.16;測定値:312[M+H]。
工程2. (4S)−N−(ピリジン−3−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
これらの化合物は、上記のトリホスゲン尿素カップリング手順を用いて製造し、(4S)−N−(ピリジン−3−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドをジアステレオマーの9:1混合物として得た(38mg、62%)。MS(ESI)C22H24F3N5Oの理論値:431.19;測定値:432[M+H]。
実施例70. (4S)−N−(ピリミジン−4−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
このジアステレオマー混合物は、以下のプロトコールを用いて製造した。カルボニルジイミダゾール(CDI、21mg、0.13mmol)をDCM(1.5mL)中でスラリーとした後、4−アミノピリミジン(13mg、0.13mmol)を加えた。総てを溶液とするために、ジオキサンを加えた(0.5mL)。この混合物を窒素雰囲気下、室温で1時間撹拌した。DCM(1mL)中、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(41mg、0.13mmol)を加え、この反応物を一晩撹拌した後、さらなるCDIを加え(21mg)、この反応物を4時間加熱還流した。この反応物をLCMSによりモニタリングしたところ、中間体(4−アミノピリミジンの付加前)が主要反応成分であった。この反応物をを室温まで冷却し、濃縮した後、さらなる4−アミノピリミジン(25mg)を1mLのDMSO(より良い溶解度のため)中で加えた。この反応物を一晩60℃に温めた後、次の晩は100℃の密閉試験管中で温めた。さらなる4−アミノピリミジン(25mg)を加え、この反応物を密閉し、マイクロ波中で1時間120℃に加熱した。DCM(10mL)、次いで、1N HCl(3mL)を加えた。これをDCM(3×15mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0−10%MeOH/DCM)により精製した後、再びprep HPLCにより精製し、(4S)−N−(ピリミジン−4−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(4mg、7%)を得た。MS(ESI)C21H23F3N6Oの理論値:432.19;測定値:433[M+H]。
実施例71. (4S)−N−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
このジアステレオマー混合物は、以下のプロトコールを用いて製造した。
カルバメート形成の一般的手順:
DCM(16mL)中、4,5−ジメチルチアゾール−2−アミン(1.63g、12.7mmol、1.0当量)およびピリジン(3.01g、38.2mmol、3.0当量)の冷却溶液に、1.5時間かけてクロロギ酸フェニル(2.09g、13.3mmol、1.05当量)を滴下した。この反応物を、冷却を続けながら、2時間撹拌した。水(15mL)を30分かけてゆっくり加えた後、この混合物をDCMで希釈した。層を分離し、有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液(20mL)、次いで、ブライン(20mL)で洗浄した。次に、有機層をNa2SO4で乾燥させた後、減圧下で濃縮した。残渣をEA/PE(1:5)に30分間懸濁させた後、濾過し、(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)カルバミン酸フェニル(1.7g、54%)を得た。
カルバメートを介した尿素カップリングの一般的手順:
アセトニトリル(4mL)中、(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)カルバミン酸フェニル(80mg、0.322mmol、2.0当量)、(4S)−7−(3−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(75mg、0.161mmol、1.0当量)およびDMAP(24mg、0.193mmol、1.2当量)の混合物を60℃で一晩撹拌した。TLCおよびLC/MSを用いて反応の進行をモニタリングした。この混合物をprep HPLCにより精製し、(4S)−N−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)シクロヘキシル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(14.5mg、12%)を得た。MS(ESI)C22H26F3N5OSの理論値:465.18;測定値:466[M+H]。
実施例72. N−(ピリダジン−3−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(化合物xx)の製造:
工程1: 3−アミノペント−2−エン二酸ジエチル
250mL3頚フラスコに6.00g(29.7mmol)の1,3−アセトンジカルボン酸ジエチルエステル、4.70g(59.4mmol)の重炭酸アンモニウム、および80mLのエタノールを装填した。この反応物を周囲温度で24時間撹拌した後、それを真空濃縮した。残渣を100mLの水に取り、酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(1×200mL)で逆抽出し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮し、5g(87%)の生成物を無色の油状物として得た。これをそれ以上精製せずに次の反応で使用した。
工程2: 3−アミノペンタン二酸ジエチル
250mL3頚フラスコに5.00g(24.8mmol)の3−アミノペント−2−エン二酸ジエチル、40mLのエタノール、10mLの氷酢酸、および3.1g(49.6mmol)のNaBH3CNを装填した。この反応物を周囲温度で2時間撹拌した後、溶媒を真空で除去した。残渣を水に取り、酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。合わせた酢酸エチル層をブライン(1×200mL)で逆抽出し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮し、4g(80%)の生成物を無色の油状物として得た。これをそれ以上精製せずに次の反応で使用した。
工程3: 3−((6−クロロ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)ペンタン二酸ジエチル
250mL3頚フラスコに1.8g(9.8mmol)の2,6−ジクロロ−3−ニトロピリジン、4.0g(19.7mmol)の粗3−アミノペンタン二酸ジエチル、3.2g(39.0mmol)のNaHCO3、および60mLのテトラヒドロフランを装填した。この反応物を40℃で24時間撹拌した後、溶媒を真空下で除去した。残渣を100mLの水に溶かした後、酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。合わせた有機相をブライン(1×200mL)で逆抽出し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。残渣を、20/1(v/v)ヘキサン/酢酸エチルで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、2.7g(80%)の生成物を淡黄色固体として得た。
工程4: 3−((3−アミノ−6−クロロピリジン−2−イル)アミノ)ペンタン二酸ジエチル
温度計および磁気撹拌子を備えた250mL3頚フラスコに、2.7g(7.5mmol)の3−((6−クロロ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)ペンタン二酸ジエチル、2.1g(37.5mmol)の鉄粉、60mLの2−プロパノール、20mLの水、および675mg(11.0mmol)の酢酸を装填した。この混合物を、HPLCにより出発ニトロ化合物の消失に関してモニタリングしながら、100℃で1時間撹拌した。反応が完了した後、固体を濾過し、2−プロパノール(3×50mL)で洗浄した後、合わせた濾液および洗液を真空濃縮した。残渣を100mLの水に溶かし、ジクロロメタン(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(1×50mL)で逆抽出し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮乾固した。粗生成物を、4/1(v/v)ヘキサン/酢酸エチルで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、1.8g(75%)の生成物を灰色固体として得た。
工程5: 2−(7−クロロ−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−4−イル)酢酸エチル
温度計および還流冷却器を備えた100mL3頚フラスコを1.8g(5.4mmol)の3−((3−アミノ−6−クロロピリジン−2−イル)アミノ)ペンタン二酸ジエチル、20mLのトルエン、および1.0mL(13.4mmol)のトリフルオロ酢酸を装填した。この混合物を還流下で5時間撹拌し、反応をHPLCにより出発材料の消失に関してモニタリングした。反応が完了した後、溶媒を真空下で除去し、その後、残渣を、3/1(v/v)ヘキサン/酢酸エチルで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、1.1g(70%)の生成物を灰白色固体として得た。
工程6: 2−(7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−4−イル)エタノール
窒素流入口、還流冷却器、および温度計を備えた50mL3頚フラスコに、1.0g(3.5mmol)の2−(7−クロロ−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−4−イル)酢酸エチル、530mg(14.0mmol)のLiAlH4、および10mLのテトラヒドロフランを装填した。この反応物をN2下、60℃で、HPLCにより生成物の出現に関してモニタリングしながら6時間撹拌した。エステルは急速に還元されたが、ラクタムは完全な還元により長時間を要した。反応が完了したところで、この混合物を氷浴で冷却し、内部温度を5℃より低く維持しながら、530μLの水を加え、この混合物を15分間撹拌した。次に、530μLの15%(w/w)NaOH(水溶液)を、内部温度を5℃より低く維持しながら加え、その後、この混合物を15分間撹拌した。後処理を行うため、1590μLの水を加え、その後、この混合物を周囲温度で30分間撹拌した。固体を濾過した後、沈澱をテトラヒドロフラン(3×50mL)で洗浄した。濾液を真空濃縮した後、残渣を、2/1ヘキサン/酢酸エチルで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、520mg(65%)の生成物を淡黄色固体として得た。
工程7: 7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン
50mL3頚フラスコに、500mg(2.2mmol)の2−(7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−4−イル)エタノール、および10mLの40%(w/w)HBr(水溶液)を装填した。この混合物を還流下で18時間撹拌した後、それを周囲温度まで冷却し、飽和NaHCO3(水溶液)で中和した。この水性混合物を酢酸エチル(3×50mL)で抽出した後、合わせた有機層をブライン(1×50mL)で逆抽出し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、空濃縮した。残渣を、3/1ヘキサン/酢酸エチルで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、320mg(70%)の生成物を灰白色固体として得た。
工程8.7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンの合成:
ジオキサン/水混合物(10mL/1mL)を脱気し、7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(250mg、1.196mmol)、次いで、3−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸(454mg、2.392mmol)、Pd(dppf)Cl2(97mg、0.19mmol)、およびCs2CO3(1.16g、3.588mmol)を加えた。この混合物を110℃で12時間撹拌した後、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(PE/EtOAc=4/1)により精製し、7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(200mg、48%)を得た。MS(ESI)C17H16F3N3の理論値:319.13。
工程9. N−(ピリダジン−3−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
以下の一般的尿素カップリング手順を用いた:
アセトニトリル(5mL)中、ピリダジン−3−アミンのカルバミン酸塩(53.9mg、0.25mmol、2.0当量)、7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(40mg、0.12mmol、1.0当量)、およびDMAP(18.4mg、0.15mmol、1.2当量)を60℃で一晩撹拌した。反応の進行をTLCおよびLC/MSによりモニタリングした。この反応混合物をそのまま、溶出剤として100%EtOAcを用いるprep.TLC上にロードし、N−(ピリダジン−3−イル)−7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを白色固体として得た(16.9mg、30.6%)。MS(ESI)C22H19F3N6Oの理論値:440.16;測定値:440.9[M+H]。
この一般的尿素カップリング手順を用い、ピリダジン−3−アミンを適当なアミン部分に置き換えることにより、様々な7−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−、7−(3−クロロフェニル)−、7−(5−クロロピリジン−3−イル)−、および7−(5−フルオロピリジン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドを製造することができた。
実施例73. 7−(3−クロロフェニル)−N−(ピリジン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
工程1. tert−ブチル 7−クロロ−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキシレートの合成:
この部分は以下のプロトコールを用いて製造した。THF(5mL)中、7−クロロ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(3.0g、14.31mmol)、(Boc)2O(4.6g、21.05mmol、1.5当量)、およびDMAP(3.49g、28.62mmol、2.0当量)の混合物を60℃で2時間撹拌した。TLCおよびLC/MSを用いて反応の進行をモニタリングした。水(30mL)を加え、この混合物をDCM(3×15mL)で抽出した。有機層を濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、7−クロロ−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボン酸tert−ブチル白色固体として得た(4.5g、92%)。MS(ESI)C15H20ClN3O2の理論値:309.12。
工程2. tert−ブチル 7−(3−クロロフェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキシレートの合成:(Sundia Prop. 455)
この部分は以下のプロトコールを用いて製造した。ジオキサン/水(20mL/1mL)の脱気混合物に、7−クロロ−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボン酸tert−ブチル(1.5g、4.85mmol)、(3−クロロフェニル)ボロン酸(1.51g、9.70mmol)、Pd(dppf)Cl2(0.396g、0.485mmol)、およびCs2CO3(4.74g、14.56mmol)を加えた。この混合物を110℃で12時間撹拌した後、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(PE/EA=2/1)により精製し、7−(3−クロロフェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボン酸tert−ブチル(1.2g、89%)を得た。MS(ESI)C21H24ClN3O2の理論値:385.16。
この一般的カップリング手順を用い、(3−クロロフェニル)ボロン酸を適当なボロン酸またはボロン酸エステル部分に置き換えることにより、様々な7−(3−置換(substituted)フェニルまたはピリジル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンを製造することができた。
工程3. 7−(3−クロロフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンの合成:(Sundia Prop. 455)
この部分を以下のプロトコールを用いて製造した。7−(3−クロロフェニル)−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボン酸tert−ブチル(1.2g、3.1mmol)をHCl/MeOH(1M、20mL)に溶かし、この反応混合物を室温で1.5時間撹拌した後、真空濃縮した。水(20mL)およびK2CO3(3g)を加えた。この混合物を室温で2時間撹拌した後、DCM(3×15mL)で抽出した。有機層を濃縮し、7−(3−クロロフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(800mg、90%)を得た。MS(ESI)C16H16ClN3の理論値:285.10。
工程4. 7−(3−クロロフェニル)−N−(ピリジン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
この化合物は一般的尿素カップリング手順を用いて製造し、7−(3−クロロフェニル)−N−(ピリジン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(20.4mg、24%)を得た。MS(ESI)C22H20ClN5Oの理論値:405.14;測定値:406[M+H]。
実施例74. 7−(5−フルオロピリジン−3−イル)−N−(ピリジン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの製造:
工程1. 7−(5−フルオロピリジン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボン酸tert−ブチルの合成:
この部分は以下のプロトコールを用いて製造した。ジオキサン/水(30mL/3mL)の脱気混合物に、7−クロロ−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボン酸tert−ブチル(1.39g、4.5mmol)、(5−フルオロピリジン−3−イル)ボロン酸(1.27g、9.0mmol)、Pd(dppf)Cl2(0.37g、0.45mmol)、およびCs2CO3(4.40g、13.5mmol)を加えた。この混合物を110℃で12時間撹拌した後、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(PE/EA=2/1)により精製し、7−(5−フルオロピリジン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボン酸tert−ブチル(1.5g、89%)を得た。MS(ESI)C20H23FN4O2の理論値:370.18。
工程2. 7−(5−フルオロピリジン−3−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピンの合成:
この部分は以下のプロトコールを用いて製造した。DCM(20mL)中、7−(5−フルオロピリジン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボン酸tert−ブチル(1.50g)の溶液に、TFA(20mL)を加え、この反応混合物を室温で3時間撹拌した後、真空濃縮した。残渣を飽和NaHCO3溶液で塩基性化し、DCM(3×15mL)で抽出した。有機層を濃縮し、7−(5−フルオロピリジン−3−イル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン(1.2g、100%)を得た。MS(ESI)C15H15FN4の理論値:270.13。
工程3. 7−(5−フルオロピリジン−3−イル)−N−(ピリジン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミドの合成:
この化合物は一般的尿素カップリング手順を用いて製造し、7−(5−フルオロピリジン−3−イル)−N−(ピリジン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−エタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(12.8mg、15%)を得た。MS(ESI)C21H19FN6Oの理論値:390.16;測定値:391[M+H]。
実施例75. 3−ブロモ−5−(オキサゾール−5−イル)アニリンの製造:
工程1. 5−(3−ブロモ−5−ニトロフェニル)オキサゾールの合成:
DME(10mL)中、3−ブロモ−5−ニトロベンズアルデヒド(1g、4.34mmol)の溶液に、K2CO3(1.2g、8.68mmol)、次いで、1−((イソシアノメチル)スルホニル)−4−メチルベンゼン(891mg、4.56mmol)を加えた。この反応混合物を還流下で一晩撹拌した。室温まで冷却した後、EtOAcを加え、この混合物をH2Oで2回、次いで、ブラインで洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(ペンタン中0%から100%EtOAcへの勾配)のより精製し、5−(3−ブロモ−5−ニトロフェニル)オキサゾール(762mg、65%)を橙色固体として得た。MS(ESI)C9H5BrN2O3の理論値:268.0、270.0。
工程2. 3−ブロモ−5−(オキサゾール−5−イル)アニリンの合成:
THF(14mL)中、5−(3−ブロモ−5−ニトロフェニル)オキサゾール(762mg、2.83mmol)の溶液に、酢酸(13.6mL)、次いで、鉄粉(474mg、8.49mmol)を加えた。この反応混合物を60℃で一晩撹拌した。室温まで冷却した後、この混合物を飽和Na2CO3溶液(175mL)に注ぎ、EtOAc(50mL×2)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮し、3−ブロモ−5−(オキサゾール−5−イル)アニリン(697mg)を褐色油状物として得た。この材料をそれ以上精製せずに使用した。MS(ESI)C9H7BrN2Oの理論値:238.0、240.0。
このオキサゾール形成とその後のニトロ還元の一般的二段階手順を用い、4−ブロモ−5−ニトロベンズアルデヒドを使用することにより、4−ブロモ−5−(オキサゾール−5−イル)アニリンを製造することができた。
実施例76. 6−(オキサゾール−5−イル)ピリジン−2−アミンの製造:
工程1. 6−アミノ−N−メトキシ−N−メチルピコリンアミドの合成:
アセトニトリル(150mL)中、6−アミノピコリン酸(10.0g、72.5mmol)のスラリーに、N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(8.52g、87.0mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(11.8g、87.0mmol)、N−(3−ジメチルアミノ)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(16.7g、87.0mmol)、およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(37.7mL、217mmol)を加えた。この混合物を室温で一晩撹拌し、溶媒を真空で除去した。残渣を1N NaOHと酢酸エチルで分液し、水層を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空下で除去した。残った残渣をフラッシュクロマトグラフィー(0.1%トリエチルアミンを含有する酢酸エチル)により精製し、6−アミノ−N−メトキシ−N−メチルピコリンアミド(4.30g、23.7mmol、収率33%)を得た。MS(ESI)C8H11N3O2の理論値:181.1。
工程2. 6−(オキサゾール−5−イル)ピリジン−2−アミンの合成:
THF(30mL)中、6−アミノ−N−メトキシ−N−メチルピコリンアミド(4.30g、23.7mmol)の溶液に、水素化リチウムアルミニウム(1.08g、28.5mmol)を加えた。この反応物を室温で90分間撹拌した。酢酸エチル(30mL)をゆっくり加え、この反応物を濾過し、濾液を取り、総ての溶媒を真空下で除去して6−アミノピコリンアルデヒドを得、これをそのまま次の工程のために取得した。
メタノール(20mL)中、上記アルデヒドの溶液に、イソシアン化物p−トルエンスルホニルメチル(13.9g、71.2mmol)および炭酸カリウム(19.4g、140mmol)を加えた。この反応物を還流下で2時間撹拌し、総ての溶媒を真空下で除去した。残渣を酢酸エチル(150mL)と水(70mL)とで分液した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空下で除去した。残った残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中10%メタノール)により精製し、6−(オキサゾール−5−イル)ピリジン−2−アミン(2.00g、12.4mmol、二段階で収率52%)を得た。MS(ESI)C8H7N3Oの理論値:161.1。
以下の化合物を類似の方法で製造した:4−(オキサゾール−5−イル)ピリジン−2−アミン;5−(オキサゾール−5−イル)ピリジン−3−アミン。
実施例77: 3,5−ビス(オキサゾール−5−イル)アニリンの合成:
工程1. N 1 ,N 3 −ジメトキシ−N 1 ,N 3 −ジメチル−5−ニトロイソフタルアミドの合成:
ジクロロメタン(100mL)中、5−ニトロイソフタル酸(5.00g、23.7mmol)の溶液に、塩化オキサリル(5.00mL、59.1mmol)を加え、この溶液を0℃に冷却した。DMF(1.0mL)を30分かけて滴下した。この混合物を室温まで温め、4時間撹拌した。総ての溶媒を真空下で除去した。
ジクロロメタン(80mL)中、N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(4.6g、47.1mmol)およびトリエチルアミン(6.60mL、47.4mmol)の混合物に、0℃で、ジクロロメタン(20mL)中、上記酸塩化物の溶液を加えた。反応が完了したところで、この反応混合物を真空濃縮した。残渣を1N水酸化ナトリウムと酢酸エチルとで分液し、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空下で除去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(1:1石油エーテル:酢酸エチル)により精製し、N1,N3−ジメトキシ−N1,N3−ジメチル−5−ニトロイソフタルアミド(4.00g、13.5mmol、収率57%)を得た。MS(ESI)C12H15N3O6の理論値:297.1。
工程2. 5−ニトロイソフタルアルデヒドの合成:
−40℃で、(15THF0mL)中、N1,N3−ジメトキシ−N1,N3−ジメチル−5−ニトロイソフタルアミド(5.00g、16.9mmol)の撹拌溶液に、水素化リチウムアルミニウム(2.70g、71.1mmol)を加えた。この反応物を−40℃で4時間撹拌した。10%水酸化ナトリウム溶液(2.7mL)をゆっくり加えた後、水(2.7mL)を加えた。生じた固体を濾過し、濾液を真空濃縮し、5−ニトロイソフタルアルデヒド(1.37g、7.65mmol、収率45%)を得た。MS(ESI)C8H5NO4の理論値:179.0。
工程3. 5,5’−(5−ニトロ−1,3−フェニレン)ビス(オキサゾール)の合成:
メタノール(100mL)中、5−ニトロイソフタルアルデヒド(1.37g、7.65mmol)の溶液に、1−イソシアノメタンスルホニル−4−メチル−ベンゼン(7.40g、37.8mmol)および無水炭酸カリウム(5.20g、37.8mmol)を加えた。この反応物を窒素下で2時間還流させた。冷却後、溶媒を真空下で除去した。残渣を酢酸エチル(150mL)と水(70mL)とで分液した。有機層を除去し、水層を酢酸エチル(3×150mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、粗5,5’−(5−ニトロ−1,3−フェニレン)ビス(オキサゾール)(1.70g、6.61mmol、収率86%)を得た。MS(ESI)C12H7N3O4の理論値:257.0。
工程4. 3,5−ビス(オキサゾール−5−イル)アニリンの合成:
酢酸エチル(50mL)中、5,5’−(5−ニトロ−1,3−フェニレン)ビス(オキサゾール)(1.70g、6.61mmol)およびパラジウム炭素(200mg)の混合物を水素下で4時間撹拌した。固体を濾過し、濾液を真空濃縮した。残った残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(4:1石油エーテル:酢酸エチル)により精製し、3,5−ビス(オキサゾール−5−イル)アニリン(1.30g、5.72mmol、収率87%)を得た。MS(ESI)C12H9N3O2の理論値:227.1。
実施例78. (2−(4−(3−アミノフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)エチル)カルバミン酸tert−ブチルの製造:
20mLマイクロ波バイアルに、(2−ブロモエチル)カルバミン酸tert−ブチル(551mg、2.50mmol)、アジ化ナトリウム(460mg、7.05mmol)、およびDMF(5mL)を装填した。このバイアルを密閉し、マイクロ波中、110℃で12時間加熱した。この反応混合物を水(8mL)に注ぎ、酢酸エチル(2×10mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、総ての溶媒を真空下で除去し、粗(2−アジドエチル)カルバミン酸tert−ブチルを得た。
粗(2−アジドエチル)カルバミン酸tert−ブチルをTHF(5mL)およびトリエチルアミン(1mL)に溶かした。3−エチニルアニリン(350mg、2.99mmol)、次いで、ヨウ化銅(I)(15.0mg、0.0788mmol)を加えた。この反応物を60℃で2時間撹拌した後、総ての溶媒を真空下で除去し、残った残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン中50%から100%酢酸エチルへ)により精製し、(2−(4−(3−アミノフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)エチル)カルバミン酸tert−ブチル(415mg、1.37mmol、二段階の収率55%)を得た。MS(ESI)C15H21N5O2の理論値:303.2。
実施例79. ((1−(3−アミノフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル)カルバミン酸tert−ブチルの製造:
THF(9.0mL)およびトリエチルアミン(1.0mL)中、3−アジドアニリン(Chem. Commun. 2004; 888)(1.34g、9.99mmol)の溶液に、プロプ−2−イン−1−イルカルバミン酸tert−ブチル(1.55g、9.99mmol)およびヨウ化銅(I)(40mg、0.210mmol)を加えた。この反応物を60℃で1時間撹拌した後、総ての溶媒を真空下で除去した。残った残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ペンタン中0%から80%酢酸エチルへ)により精製し、((1−(3−アミノフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル)カルバミン酸tert−ブチル(化合物#;1.71g、5.91mmol、収率59%)を得た。MS(ESI)C14H19N5O2の理論値:289.1;測定値:290.1[M+H]。
実施例80: ((1−(3−アミノフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−5−イル)メチル)カルバミン酸tert−ブチルの製造:
3−アジドアニリン(1.33g、9.92mmol)、プロプ−2−イン−1−イルカルバミン酸tert−ブチル(1.55g、9.99mmol)、およびペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)クロリド(15.9mg、0.020mmol)を含むバイアルに、トルエン(10mL)を加えた。この反応物を100℃で72時間撹拌した後、反応物を室温まで冷却した。ジクロロメタン(5mL)を加えて固体を溶かし、残った溶液をシリカゲルクロマトグラフィー(ペンタン中50%から80%酢酸エチルへ)により精製し、((1−(3−アミノフェニル)−1H−1,2,3−トリアゾール−5−イル)メチル)カルバミン酸tert−ブチル(970mg、3.35mmol、収率34%)を得た。MS(ESI)C14H19N5O2の理論値:289.2。
実施例81: N 4 ,N 4 −ジメチルピリミジン−2,4−ジアミンの製造:
4−クロロ−2−アミノピリミジン(495mg、3.82mmol)を密閉試験管中、ジメチルアミン水溶液(33%)に溶かし、この反応物を100℃で一晩撹拌した。冷却後、この反応物を水で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。有機層を水およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空下で除去し。N4,N4−ジメチルピリミジン−2,4−ジアミン(400mg、2.89mmol、収率76%)を得た。 MS(ESI) C6H10N4の理論値:138.1。
実施例82: 4−(2−アミノピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルの製造:
4−クロロ−2−アミノピリミジン(500mg、3.87mmol)とN−Bocピペラジン(7.21g、38.7mmol)の混合物に、THF(20mL)を加えた。この反応物を70℃で一晩撹拌した。冷却後、溶媒を真空下で除去し、残った残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(1:1石油エーテル:酢酸エチル)により精製し、4−(2−アミノピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチル(650mg、2.33mmol、収率60%)を得た。MS(ESI)C13H21N5O2の理論値:279.2。
以下の化合物を類似の方法で製造した:4−(4−メチルピペラジン−1−イル)ピリミジン−2−アミン。
実施例83. (3−(4−アミノ−2−(オキサゾール−5−イル)フェニル)プロプ−2−イン−1−イル)カルバミン酸tert−ブチルの製造:
工程1. 2−ブロモ−5−ニトロベンズアルデヒドの合成:
H2SO4(100mL)中、2−ブロモベンズアルデヒド(10.0g、53.7mmol)の溶液に、KNO3(5.43g、53.7mmol)を0℃で、1時間かけて少量ずつ加えた。この混合物を40分間撹拌し、さらなるKNO3(0.72g)を加えた。この反応混合物を0℃で3時間撹拌した後、氷水に注いだ。生じた沈澱を濾取し、水ですすぎ、EtOAc/ペンタンから再結晶化させ、2−ブロモ−5−ニトロベンズアルデヒド(11.7g、収率94%)を白色固体として得た。MS(ESI)C7H4BrNO3の理論値:228.9。
工程2. 5−(2−ブロモ−5−ニトロフェニル)オキサゾールの合成:
MeOH中、2−ブロモ−5−ニトロベンズアルデヒド(1.0g、4.33mmol)、K2CO3(1.79g、12.9mmol)およびTosMIC(2.12g、10.8mmmol)の混合物を60℃で1.5時間加熱した。この混合物を濃縮した。水を加え、固体を濾取し、水、MeOH、次いで、石油エーテルですすぎ、5−(2−ブロモ−5−ニトロフェニル)オキサゾール(750mg、収率65%)を灰色固体として得た。MS(ESI)C9H5BrN2O3の理論値:228.9。
工程3. (3−(4−ニトロ−2−(オキサゾール−5−イル)フェニル)プロプ−2−イン−1−イル)カルバミン酸tert−ブチルの合成:
DME(20mL)中、5−(2−ブロモ−5−ニトロフェニル)オキサゾール(300mg、1.11mmol)の溶液に、N2下で、プロプ−2−イン−1−イルカルバミン酸tert−ブチル(431mg、2.77mmol)を加えた。CuI(21mg、0.11mmol)およびPd(dppf)Cl2(78mg、0.11mmol)、次いで、TEA(0.5mL)を加えた。この反応混合物を80℃で4時間加熱し、室温まで冷却し、水に注ぎ、EtOAc(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc:ペンタン=1:5)により精製し、(3−(4−ニトロ−2−(オキサゾール−5−イル)フェニル)プロプ−2−イン−1−イル)カルバミン酸tert−ブチル(350mg、収率92%)を黄色油状物として得た。MS(ESI)C17H17N3O5の理論値:343.1。
工程4. (3−(4−アミノ−2−(オキサゾール−5−イル)フェニル)プロプ−2−イン−1−イル)カルバミン酸tert−ブチルの合成:
飽和NH4Cl/MeOH水溶液(V/V=1:3)中、(3−(4−ニトロ−2−(オキサゾール−5−イル)フェニル)プロプ−2−イン−1−イル)カルバミン酸tert−ブチル(3.8g、11.1mmol)およびFe(4.96g、8.86mmol)の懸濁液を60℃で4.5時間加熱した。この混合物を室温まで冷却し、セライトパッドに通し、濾液を濃縮した。残渣をEtOAcに溶かし、水で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。粗残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、(3−(4−アミノ−2−(オキサゾール−5−イル)フェニル)プロプ−2−イン−1−イル)カルバミン酸tert−ブチル(1.51g、収率44%)を黄色油状物として得た。MS(ESI)C17H19N3O3の理論値:228.9。
(3−(3−アミノ−5−(オキサゾール−5−イル)フェニル)プロプ−2−イン−1−イル)カルバミン酸tert−ブチルは、3−ブロモ−5−ニトロベンズアルデヒドから、(3−(4−アミノ−2−(オキサゾール−5−イル)フェニル)プロプ−2−イン−1−イル)カルバミン酸tert−ブチルに関して記載したものと類似の方法で製造した。
実施例84. (3−(4−アミノ−2−(オキサゾール−5−イル)フェニル)プロピル)カルバミン酸tert−ブチルの製造:
MeOH(100mL)中、(3−(4−ニトロ−2−(オキサゾール−5−イル)フェニル)プロプ−2−イン−1−イル)カルバミン酸tert−ブチル(3.0g、8.75mmol)および10wt%Pd/C(1.0g)の混合物を、H2雰囲気下(50psi)で16時間撹拌した。この混合触媒を濾去し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、(3−(4−アミノ−2−(オキサゾール−5−イル)フェニル)プロピル)カルバミン酸tert−ブチル(940mg、収率35%)を黄色油状物として得た。MS(ESI)C17H23N3O3の理論値:228.9。
(3−(3−アミノ−5−(オキサゾール−5−イル)フェニル)プロピル)カルバミン酸tert−ブチルは、(3−(3−ニトロ−5−(オキサゾール−5−イル)フェニル)プロプ−2−イン−1−イル)カルバミン酸tert−ブチルから、(3−(4−アミノ−2−(オキサゾール−5−イル)フェニル)プロピル)カルバミン酸tert−ブチルに関して記載したものと類似の方法で製造した。
実施例85. 2−(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジンの製造:
NMP(13mL)中、2−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン(1g、4.48mmol)、3,3−ジフルオロピロリジン塩酸塩(1.9g、13.4mmol)、およびK2CO3(3g、22.4mmol)の混合物を110℃で一晩撹拌した。第2分量の3,3−ジフルオロピロリジン塩酸塩(0.5g)を加え、一晩撹拌した。この混合物を濾過し、H2Oで洗浄し、2N HClを加えてpHを1に調整した。この混合物をEtOAcで洗浄して残留する2−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジンを除去した。水層をK2CO3溶液でpH13に調整した後、EtOAcで抽出し、2−(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン(220mg、17%)を得た。MS(ESI)C15H21BF2N2O2の理論値:310.2。
この一般的手順を用い、3−(トリフルオロメチル)ピロリジン塩酸塩を使用することにより、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2−(3−(トリフルオロメチル)ピロリジン−1−イル)ピリジンを製造することができた。
実施例86. (S)−2−(3−フルオロピロリジン−1−イル)−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジンの製造:
IPA(3.5mL)中、2−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン(200mg)、(S)−3−フルオロピロリジン塩酸塩(350mg)、およびNa2CO3(480)の混合物を、91℃で17時間撹拌した。この混合物を濾過し、濃縮した。2N HClを加えてpHを1に調整し、EtOAcで抽出した。水層をNa2CO3溶液でpH7に調整し、トルエンを用いて水を除去した。残渣をEtOAcに取り、濾過し、濃縮し、(S)−2−(3−フルオロピロリジン−1−イル)−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン(95mg、36%)を得た。MS(ESI)C15H22BFN2O2の理論値:292.2。
この一般的手順を用い、(R)−3−フルオロピロリジン塩酸塩を使用するにより、(R)−2−(3−フルオロピロリジン−1−イル)−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジンを製造することができた。
実施例87. 3,3−ジフルオロ−1−(3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)ピロリジンの製造:
工程1. 1−(3−ブロモフェニル)−3,3−ジフルオロピロリジンの合成:
トルエン(20mL)中、1,3−ジブロモベンゼン(dibromobenzne)(1g、4.24mmol)、3,3−ジフルオロピロリジン塩酸塩(669mg、4.66mmol)、Pd2(dba)3(134mg、0.233mmol)、Cs2CO3(3.32g、10.2mmol)、およびBINAP(264mg、0.424mmol)の混合物を、N2雰囲気下で加熱還流した。一晩撹拌した後、この混合物を室温まで冷却し、濃縮した。この濃縮物をEtOAc(50mL)に懸濁させ、水(20mL×3)およびブライン(20mL)で洗浄し、Na2SO3で乾燥させ、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(chromaotography)(ヘキサン/EtOAc=100/1)により精製し、1−(3−ブロモフェニル)−3,3−ジフルオロピロリジン(645mg、>100%)を無色の油状物として得た。MS(ESI)C10H10BrF2Nの理論値:261.0。
工程2. 3,3−ジフルオロ−1−(3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)ピロリジンの合成:
ジオキサン(18mL)中、1−(3−ブロモフェニル)−3,3−ジフルオロピロリジン(899mg、3.43mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’−オクタメチル−2,2’−ビ(1,3,2−ジオキサボロラン)(957mg、3.77mmol)、Pd(dppf)Cl2(75mg、0.103mmol)、KOAc(1g、10.29mmol)の懸濁液を、N2雰囲気下、85℃で加熱した。一晩撹拌した後、この懸濁液を室温まで冷却し、濾過した。濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン、次いで、ヘキサン/EtOAc=100/1)により精製し、3,3−ジフルオロ−1−(3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)ピロリジン(化合物A#;873mg、82%)を白色固体として得た。MS(ESI)C16H22BF2NO2の理論値:309.2。
この一般的二段階手順を用い、3−(トリフルオロメチル)ピロリジン塩酸塩を使用することにより、1−(3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピロリジンを製造することができた。
実施例88. 2−(3−((2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの製造:
工程1. 1−アリル−3−ブロモベンゼンの合成:
3頚フラスコ中、金属Mg(1.78g、73.76mmol)をN2雰囲気下で、乾燥エーテル(20mL)に浸漬した。この混合物に、乾燥エーテル(20mL)中、1,3−ジブロモベンゼンの3分の1容量(15g、63.58mmol)を加えた。1,2−ジブロモエタン(0.1mL)を加えて反応を開始させた。還流が安定した後、残りの量の1,3−ジブロモベンゼン溶液を、還流を維持する様な速度で滴下した。添加が完了したところで、この混合物を還流下で1時間撹拌した。次に、乾燥エーテル(20mL)中、臭化アリル(7.87g、65.12mmol)の溶液を滴下した。添加が完了したところで、この懸濁液を還流下で1時間撹拌した。この反応物を飽和NH4Cl(100mL)で急冷し、この混合物を分離させた。水相をエーテル(20mL×2)で抽出した。合わせた有機相をs水(70mL×2)およびブライン(30mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮し、1−アリル−3−ブロモベンゼン(146g)を無色の油状物として得た。この材料をそれ以上精製せずに使用した。MS(ESI)C9H9Brの理論値:196.0。
工程2. 3−(3−ブロモフェニル)プロパン−1,2−ジオールの合成:
CH3CN/H2O(20mL、v/v=4/1)中、1−アリル−3−ブロモベンゼン(A#;1g、5.08mmol)の溶液に、NMO(1.3g、11.16mmol)およびK2OsO4・2H2O(187mg、0.508mmol)を加えた。この混合物を室温で2日間撹拌した。CH3CNを減圧下で除去し、この濃縮物をEtOAcで希釈した。この混合物をセライトで濾過し、濾液を濃縮し、3−(3−ブロモフェニル)プロパン−1,2−ジオール(化合物A#)を得た。この材料をそれ以上精製せずに使用した。MS(ESI)C9H11BrO2の理論値:230.0。
工程3. 4−(3−ブロモベンジル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソランの合成:
アセトン(25mL)中、3−(3−ブロモフェニル)プロパン−1,2−ジオール(A#; 1.17g、5.06mmol)の溶液に、2,2−ジメトキシプロパン(1.8mL、15.18mmol)およびPTSA(96mg、0.506mmol)を加えた。この混合物を室温で一晩撹拌した。この反応混合物を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc=20/1)により精製し、4−(3−ブロモベンジル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(化合物A#;200mg、15%)を淡黄色油状物として得た。MS(ESI)C12H15BrO2の理論値:270.0。
工程4. 2−(3−((2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの合成:
ジオキサン(15mL)中、4−(3−ブロモ−ベンジル)−2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン(A#;800mg、2.95mmol)およびビス(ピナコラト)二ホウ素(822mg、1.1当量)、Pd(dppf)Cl2(216mg、0.1当量)およびKOAc(868mg、3.0当量)の混合物を脱気し、N2下で85℃に加熱した。85℃で一晩撹拌した後、この黒色懸濁液を室温まで冷却し、セライトで濾過した。濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc=40/1)により精製し、2−(3−((2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(化合物A#; 800mg、85%)を無色の油状物として得た。MS(ESI)C18H27BO4の理論値:318.2。
実施例89. (9S)−N−(4−(アミノメチル)フェニル)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メト−アノピリド(meth-anopyrido)[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミド塩酸塩および2−(6−ヒドロキシ−3−オキソ−3H−キサンテン−9−イル)−5−((6−オキソ−6−((4−((9S)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10−カルボキサミド)ベンジル)アミノ)ヘキシル)カルバモイル)安息香酸の製造:
試薬および条件:a)NaHCO3、THF、40℃;b)Fe、AcOH、IPA/水、還流;c)AlH3、THF、−78℃〜室温;d)48%HBr;e)3−トリフルオロフェニルボロン酸、Pd(OAc)2、X−Phos、Cs2CO3、ジオキサン/水;f)トリホスゲン、DIEA、CH2Cl2;g)4N HCl、ジオキサン;h)DIEA、6[フルオレセイン−5(6)−カルボキサミド]ヘキサン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、CH3CN。
工程1. 2−((6−クロロ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)グルタル酸(S)−ジメチルの合成
2,6−ジクロロ−3−ニトロピリジン(40.0g、207mmol)、L−グルタミン酸ジメチルエステル塩酸塩(87.7g、414mmol)およびNaHCO3(69.6g、829mmol)の混合物にテトラヒドロフラン(600mL)を加えた。この混合物を、HPLCにより2,6−ジクロロ−3−ニトロピリジンの消失をモニタリングしながら、40℃で24時間撹拌した。反応が完了した後、固体を濾過し、酢酸エチル(3×100mL)で洗浄した。合わせた濾液および洗液を真空濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(10:1(v/v)ヘキサン/酢酸エチルで溶出する)により精製し、2−((6−クロロ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)グルタル酸(S)−ジメチルを黄色固体として得た(60g、87%)。LRMS(m/z)332.1[M+H]+; HRMS(m/z):[M+H]+C12H15N3O6Clの理論値332.0649;測定値332.0651。
工程2. 3−(6−クロロ−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)プロパン酸(S)−メチルの合成
2−((6−クロロ−3−ニトロピリジン−2−イル)アミノ)ペンタン二酸(S)−ジメチル(20g、60.2mmol)、および鉄粉(16.8g、301mmol)の混合物に、2−プロパノール(375mL)および水(125mL)を加えた。この撹拌混合物に酢酸(5.5g、90.3mmol)を加え、この反応物を、HPLCにより出発材料の消失をモニタリングしながら、還流下で1時間撹拌した。反応が完了した後、固体を濾過し、2−プロパノール(3×50mL)で洗浄した。合わせた濾液および洗液を濃縮乾固した後、残渣を真空濃縮し、3−(6−クロロ−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)プロパン酸(S)−メチルを暗黄色固体として得、これをそれ以上精製せずに次の工程で使用した(15g、81%)。LRMS(m/z)270.1[M+H]+;HRMS(m/z):[M+H]+C11H13N3O3Clの理論値270.0645;測定値270.0645。
工程3. (S)−3−(6−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)プロパン−1−オールの合成
N2下、テトラヒドロフラン(260mL)中、AlCl3(17.78g、133.3mmol)の溶液に、THF(200mL、400mmol)中、2MのLiAlH4を、ガスの発生を制御する速度で滴下した。これによりTHF中、アラン(AlH3)の溶液が得られた。別のフラスコで、THF(460mL)中、3−(6−クロロ−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)プロパン酸(S)−メチル(26.0g、96.4mmol)の溶液をN2下で作製した後、ドライアイス/アセトン浴で冷却した。これにアラン溶液を、撹拌しながら2時間かけて滴下した。添加が完了した際に、冷却浴を取り除き、反応物を周囲温度まで温めた。LCMS分析は反応が完了したことを示し、水(65mL)中、NaOH(17.6g)の溶液を、H2の発生を制御するようにゆっくり加えた。この懸濁液を18時間撹拌し、その後、固体を濾去した。沈澱を酢酸エチルで洗浄した後、濾液および洗液を真空濃縮した。この生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(CH2Cl2中MeOHの0から10%への勾配)により精製し、(S)−3−(6−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)プロパン−1−オールを黄色−橙色固体として得た(15.21g、69%)。LRMS(m/z)228.1[M+H]+;HRMS(m/z):[M+H]+C10H15N3OClの理論値228.0904;測定値228.0903。
工程4. (5R,9S)−2−クロロ−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシンの合成
(S)−3−(6−クロロ−1,2,3,4−テトラヒドロピリド[2,3−b]ピラジン−3−イル)プロパン−1−オール(12g、52.7mmol)に48%(w/w)HBr(水溶液)(160mL)を加え、この反応物を、HPLCにより出発アルコールの消失をモニタリングしながら、90℃で18時間撹拌した。反応が完了した後、それを周囲温度まで冷却し、次いで、1.2M NaHCO3水溶液をpH8となるまで加えた。この混合物を酢酸エチル(3×100mL)で抽出した後、有機相をブライン(1×100mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮乾固した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(2:1(v/v)ヘキサン/酢酸エチルで溶出する)により精製し、(5R,9S)−2−クロロ−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシンを淡黄色固体として得た(6.0g、55%)。LRMS(m/z)210.1[M+H]+;HRMS(m/z):[M+H]+C10H13N3Clの理論値210.0798;測定値210.0800。
工程5. (9S)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシンの合成
1,4−ジオキサンと水の10〜1(v/v)混合物(60mL)中、(9S)−2−クロロ−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン(3.0g、15.4mmol)、(3−(トリフルオロメチル)フェニル)ボロン酸(4.4g、23.1mmol)、酢酸パラジウム(344mg、1.54mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル(X−Phos、476mg、3.08mmol)、および炭酸セシウム(15g、46.2mmol)の溶液を90℃で24時間加熱した。次に、この反応物を周囲温度まで冷却し、酢酸エチル(150mL)で希釈した。この混合物を飽和NaHCO3水溶液(200mL×3)で洗浄した後、有機層を乾燥させ(MgSO4)、濃縮乾固した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ペンタン中10−100%酢酸エチルの勾配)により精製し、(9S)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシンを淡黄色固体として得た(3.7g、75%)。LRMS(m/z)320.2[M+H]+;HRMS(m/z):[M+H]+C17H17N3F3の理論値320.1375;測定値320.1375。
工程6. 4−((9S)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノ−ピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10−カルボキサミド)ベンジルカルバミン酸tert−ブチルの合成
CH2Cl2(30mL)中、(9S)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン(999mg、3.23mmol)の溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.7mL、9.78mmol)を加え、この反応混合物を、氷浴を用いて0℃で冷却した。次に、トリホスゲン(482mg、1.63mmol)を4回に分けて少量ずつ加えた。氷浴を取り除き、この混合物を室温まで温めた。反応の進行を、500μLアリコートを取り出し、メタノールと合わせ、中間体クロロホルメートの形成をしてカルバミン酸メチルへの変化をアッセイすることによりモニタリングした。出発材料が残っていれば、追加分量のトリホスゲン(200mg)を加え、反応混合物を室温で5時間撹拌した。次に、4−アミノベンジルカルバミン酸tert−ブチル(800mg、3.60mmol)を二等分して(各400mg)上記混合物に加え、得られた混合物を室温で2時間撹拌した。飽和水溶液NaHCO3(30mL)を加えた後、有機相を分離し、減圧下で濃縮乾固した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ペンタン中15−100%酢酸エチルの勾配)により精製し、4−((9S)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10−カルボキサミド)ベンジル−カルバミン酸tert−ブチルを白色固体として得た(761mg、42%)。LRMS(m/z)568.2[M+H]+;HRMS(m/z):[M+H]+C30H33N5O3F3の理論値568.2536;測定値568.2538。
工程7. (9S)−N−(4−(アミノメチル)フェニル)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メト−アノピリド(meth-anopyrido)[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミド塩酸塩の合成
4−((9S)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10−カルボキサミド)ベンジルカルバミン酸tert−ブチル(759mg、1.34mmol)を4N HCl(10mL)および1,4−ジオキサンに溶かし、窒素下、周囲温度で1時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、得られた固体を一晩真空下で乾燥させ、(9S)−N−(4−(アミノメチル)フェニル)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミド塩酸塩を淡黄褐色固体として得た(763mg、100%)。RMS(m/z)468.1[M+H]+;HRMS(m/z):[M+H]+C25H25N5OF3の理論値468.2011;測定値468.2010。
工程8. 2−(6−ヒドロキシ−3−オキソ−3H−キサンテン−9−イル)−5−((6−オキソ−6−((4−((9S)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−7,8,9,10−テトラヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10−カルボキサミド)ベンジル)アミノ)ヘキシル)カルバモイル)安息香酸の合成
(9S)−N−(4−(アミノメチル)フェニル)−2−(3−(トリフルオロ−メチル)フェニル)−8,9−ジヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10(7H)−カルボキサミド塩酸塩(39mg、0.10mmol)をアセトニトリル(2mL)およびメタノール(0.2mL)に溶かした。次に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(32μL、0.20mmol)、次いで、6−[フルオレセイン−5(6)−カルボキサミド]ヘキサン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(50mg、0.085mmol)を加えた。この混合物を室温で一晩撹拌した後、生成物を逆相HPLC(0.1%TFAで改質した水中5−95%アセトニトリルの勾配)により単離し、2−(6−ヒドロキシ−3−オキソ−3H−キサンテン−9−イル)−5−((6−オキソ−6−((4−((9S)−2−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−7,8,9,10−テトラ−ヒドロ−6H−5,9−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゾシン−10−カルボキサミド)ベンジル)アミノ)ヘキシル)カルブ−アモイル)安息香酸を褐色固体として得た(26mg、35%)。LRMS(m/z)939.2[M+H]+;HRMS(m/z):[M+H]+C52H46N6O8F3の理論値939.3329;測定値939.3328。
実施例90.ミニhSIRT1の設計および同定
全長hSIRT1タンパク質に対して陽子−重陽子交換質量分析(HDX−MS)を行い、hSIRT1の重要な機能的領域を識別および同定した。H−D交換速度はタンパク質の動的特性に極めて依存的であり、溶媒に曝されている領域および/またはフレキシブルな領域ではより速い交換が起こり、およびより埋没している領域および/または構造的にリジッドな領域ではより遅い交換が起こる(Hamuro, Y. et al. (2003) J biomol Techniques: JBT 14, 171)。hSIRT1(19−747)に対する従前の研究(Hubbard, B. P. et al. (2013) Science 339, 1216)と一致して、全長hSIRT1は、3つの主要な構造領域:触媒コア領域、残基229〜516(以下、hSIRT1ccと称する)(Jin, L. et al. (2009) J Biol Chem 284, 24394 and Frye, R. A. (2000) Biochem Biophys Res Commun 273, 793)、触媒コアの直前の190〜230のN末端領域、および触媒コアの後のC末端の640〜670前後の遠位領域を含む。
hSIRT1上のSTAC結合部位を探索するために、STAC 1の不在下または存在下でHDX−MSを行った。1の添加は、hSIRT1のN末端ドメインにおける残基190〜230前後でのH−D交換速度を低下させ、このことは、この領域がSTAC結合に関与することを示唆する。さらに、15N標識hSIRT1(180−230)の1H、15N HSQCスペクトルは十分分散しており、このことは、それが自律的に折り畳まれるドメインを形成することを示唆する。15N標識hSIRT1(180−230)への1の添加は有意な化学シフト摂動をもたらし、1とこの領域(以下、STAC結合ドメイン(SBD)と呼称)の直接的相互作用裏付ける。p53由来ペプチド基質(Ac−p53(W5))(Dai, H. et al. (2010) J Biol Chem 285, 32695)の存在下でのhSIRT1への1の添加は、触媒コアにおいてSBDの前後と推定基質結合部位(残基417〜424)の両方でH−D交換速度の摂動をもたらし、このことは、N末端ドメイン内のSTAC結合とhSIRT1の触媒コア内の基質結合が共役していることを示す。このことは、STACがhSIRT1の基質への結合を促進し、それにより、hSIRT1の触媒効率を高めるという従来の所見(Milne, J. C. et al. (2007) Nature 450, 712)と一致している。
SBDとは対照的に、HDX−MSにより同定されたC末端構造要素(641〜665)は、触媒コアから約150残基離れており、従前に報告されているマウスEssential for SIRT1 Activity(ESA)ペプチド(19)と類似の、C末端β鎖/シート(CBS)と呼ばれるいくつかのβ鎖を含むと推定される。hSIRT1cは、従前に報告されている(Dai, H. et al. (2010) J Biol Chem 285, 32695)脱アセチル化アッセイ条件を用いると、全長酵素の活性の約8分の1しか示さない。CBSペプチドは、hSIRT1ccの触媒活性をトランスで、全長hSIRT1の活性の80%にまで回復させ、EC50=59nMであり、従前の所見(Kang, H. et al. (2011) Mol Cell 44, 203 and Marmorstein, R. et al. (2012) J Biol Chem 287, 2468)と一致している。本発明者らはまた、β鎖領域(642〜658)のみにわたる最小CBS断片を設計し、これは親CBSペプチドと同様の挙動を示した。動態特性から、CBSペプチドがペプチド基質とhSIRT1ccのNAD+の両方でKM値を4分の1〜5分の1低下させることにより活性を回復させることが明らかである(表1)。
考え合わせると、上記のデータは、1)基本的触媒機構を構成する中心コア、2)STACの結合および活性化を媒介するN末端SBD、および3)より効率的な脱アセチル化酵素活性をもたらす触媒コアを安定化させるC末端CBSペプチドを含む、最小機能性hSIRT1の三成分構造を示唆する。これに基づいて、本発明者らは、共有結合された3つの構造要素の総てを包含するhSIRT1構築物を設計し、本発明者らはこれをミニhSIRT1と呼ぶ。これらの構築物は183〜505または183〜516にわたり、フレキシブルなポリ−グリシン/セリンリンカー(GS、(GGGS)2、または(GGGS)3)(Sauer, R. T. and Robinson, C. R. (1998) Proceedings of Nat Academy of Sciences of USA 95, 5929)を介してCBSペプチドに接続されている。競合的hSIRT1阻害剤EX−527またはニコチンアミド(NAM)に関するIC50値と同様に、KMおよびkcat値は、ミニhSIRT1構築物および全長酵素の間で比較することができ、ミニhSIRT1の機能的忠実度が確認される(表2参照)。加えて、ミニhSIRT1と全長酵素の間には、広範な化学型のセットにわたってSTACを介する活性化に関する優れた相関が存在する。SBDを除去すると、STACを介するミニhSIRT1の活性化が完全に無効となり、活性化に対するこのドメインの決定的な重要性が確認される。これに対して、CBSを欠くミニhSIRT1は有意なレベルのSTAC活性化を保持し、CBSはSTACを介する活性化を促進するものの、それに必要とされるわけではないことが示される。 最後に、E230K突然変異もまた、全長酵素の場合と同様に(Hubbard, B. P. et al. (2013) Science 339, 1216)、ミニhSIRT1におけるSTACを介する活性化を弱める。まとめると、これらの所見は、ミニhSIRT1は、その分子サイズの半分で、完全な機能があり、全長hSIRT1の、活性化可能な代用物であることを示す。
実施例91.ミニhSIRT1/STAC複合体の構造
hSIRT1触媒コアのX線結晶学的構造が報告されているが(Zhao, X. et al. (2013) J Med Chem 56, 963)、全長酵素の構造は、本発明者らの知る限りでは、存在しない。全長hSIRT1の構造は、1つには、延長されたN末端およびC末端ドメイン立体構造的フレキシビリティーのために、難しいことであった。ミニhSIRT1構築物は、本発明者らに、全長酵素の等機能的代用物を結晶化する機会を与えた。本発明者らは、HDX−MS試験で使用されるSTAC 1とともにミニhSIRT1(183−505−(GGGS)2−CBS)の結晶化に成功し、SIRT3のホモログモデル(Jin, L. et al. (2009) J Biol chem 284, 24394)に基づく検索モデルを用いた分子置換により、複合体(ミニhSIRT1/1)の構造を3.1Åで決定した。ミニhSIRT1は、総てのサーチュインに共通なロスマンフォールド・ラージローブ(Rossmann-fold large lobe)および亜鉛結合スモールローブ(zinc-binding small lobe)を仮定する触媒コア、N末端3ヘリックスバンドルSBDおよびC末端β−ヘアピンCBSから構成される。興味深いことに、結晶格子中には、結晶学的対称性が関連する、STACを介するミニhSIRT1の二量体が見られる。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、STAC 1の存在下の溶液中でミニhSIRT1は二量体を形成することが確認される。しかしながら、同じ化学型の類似のSTAC 7では、ミニhSIRT1二量体の形成は見られない。この所見と、結晶化に使用されるSTAC濃度は活性化を測定する生化学アッセイにおいて使用されるものよりもはるかに高いという事実を考えれば、結晶構造中に見られる二量体化は、STACによるhSIRT1活性化の必要条件ではないと思われる。
CBSは、CBS結合時のhSIRT1cc摂動のHDX−MS結果と一致して、触媒ドメインのロスマンフォールドローブの6鎖β−シートによるβ−増幅(β-augmentation)を媒介する。CBSにより媒介れるβ−増幅は、アセチル化ペプチドとNAD+基質の両方に見られるKM値を回復させるhSIRT1触媒コアの活性部位を安定化させると思われる。N末端SBDは、HDX−MS結果、NMR結果および酵素動態結果と一致して、SBD内のヘリックス−ターン−ヘリックス(H2−T−H3)モチーフと結合する1とともに、独立に折り畳まれる3ヘリックスバンドルを形成する。主要なミニhSIRT1/1結合部位は、1のCF3基が占有する、中心を外れた、より深い疎水性ポケットを有する、比較的浅い疎水性表面である。これは複数のSTAC化学型において構築された構造活性関係(structure activity relationship)(SAR)の所見と一致し、分子内水素結合により維持されるコアスキャフォールドが全体的に平坦であるという要件を示す(Vu, et al. (2009) J Med Chem, 52, 1275)。ミニhSIRT1の構造と酵母Sir2の構造の間にはドメイン構成に関する著しい類似性が見られ、両方とも、N末端ヘリカルバンドルと、典型的なロスマンフォールド・ラージローブを超えるβ−ヘアピンによるC末端β−増幅を有する(Hsu, H. C. et al. (2013) Genes & Dev 27, 64)。しかしながら、酵母Sir2は、hSIRT1に見られる150のアミノ酸挿入を含まず、酵母における天然の「ミニSIRT1」と見られる。Sir2のN末端ドメインは、酵母タンパク質Sir4によるアロステリック活性化に重要であると思われる(Hsu, H. C. et al. (2013) Genes & Dev 27, 64)。Sir2N末端ドメインの構造はhSIRT1 SBDとは異なるものの、この2つは触媒コアのアロステリック活性化において機能的に保存された役割を有すると思われる。
実施例92.STAC結合ポケットの部位特異的突然変異誘発
本発明者らは、全長hSIRT1の部位特異的突然変異誘発を用いて、ミニhSIRT1構造により同定されたSBDの重要な残基を確認した。3種類の残基、すなわち、a)活性剤と直接相互作用すると思われる残基(T219A、I223A、N226A、およびI227A)、b)カップリング調節剤Glu230 (Hubbard, B. P. et al. (2013) Science 339, 1216)(E230K、E230A、およびE230Q)、およびc)活性剤結合において明らかな役割を持たないSBD残基(Q222AおよびV224A)をプロービングする、全長hSIRT1の以下の点突然変異を作製した。Ac−p53(W5)基質を用いる基本触媒活性を有意に障害した、またはEX−527、TFA−p53ペプチド(Ac−RHK−KTFA−L−Nle−F−NH2)、またはニコチンアミド(NAM)による阻害に影響を及ぼした突然変異体は無かった(表4および5参照)。
活性化に及ぼす突然変異の全般的影響は、25μMの固定濃度で試験した246 STACの構造的に多様なセットを用い、野生型と変異型の全長SIRT1の活性化倍率を比較することにより評価した。加えて、本発明者らは、5種類の化合物のパネルを用い、それらのEC50値および最大活性化値それぞれのシフトをモニタリングすることにより、STAC結合と活性化に及ぼす突然変異の影響を検討した(STAC1、6〜9)。T219A、I223A、およびI227Aは総て、活性化の広範な障害を示し、野生型hSIRT1に比べてEC50が増大し、これは構造と一致する活性剤結合の障害を意味する(表6参照)。興味深いことに、I223Aは、最も化合物依存性の高い突然変異体であり、STACにより媒介される活性化は弱から強の範囲に及ぶ。活性化の増強を示すSTACは、オルトCF3置換フェニル環を含む構造に富んでいる。結晶構造では、Ile223は活性剤の直下にあり、1のメタCF3を挿入するポケットを裏打ちしている。Ile223からAlaへの突然変異により作り出されたキャビティは、オルト置換基とメタ置換をより良く適応させると思われる。この所見はさらにSTAC結合を支配する重要な分子相互作用をバリデートし、STACのSBDとの相互作用を変更するための戦略を指し示す。
Asn226は、タンパク質の表面で、そのカルボキサミド窒素と1のカルボニル酸素の間で水素結合を形成すると思われる。しかしながら、N226Aの活性化は、野生型に比べて最小の障害でしかない。この水素結合からの小さな寄与は、その高い溶媒暴露性によるものであると思われる。
Glu230のLysまたはAlaのいずれかへの突然変異は、STACによる活性化を広範囲に障害すると最近報告されたが、これが起こる機構は明らかでない(Hubbard, B. P. et al. (2013) Science 339, 1216)。本発明者らは、E230K、E230A、およびE230Q全長hSIRT1タンパク質の活性化を試験した。3種類のGlu230突然変異異体の総てで、最大活性化はEC50をシフさせることなく障害を受け(表7および8参照)、このことは、活性化されたhSIRT1の立体構造の形成または安定化におけるGlu230の役割を示唆している。E230Qの活性化もまた広範囲に障害を受け、Glu230の負電荷がhSIRT1の活性化された立体構造を安定化させるために重要であること、およびGlu230は活性化された立体構造中の正電荷残基と相互作用する可能性があることを示す。
上記の突然変異体とは対照的に、Q222AおよびV224Aは、それらの位置がミニhSIRT1/1構造中のSTACから離れていることと一致して、通常の活性化を示した。重要なことに、全長hSIRT1で得られたこれらのデータは総て、ミニSIRT1結晶構造が推定するものと一致し、これらの構造の生化学的重要性がさらに確認される。
上記の突然変異の広範囲の影響にもかかわらず、それらの中に、SBDの除去で見られたような、hSIRT1の活性化を完全に無効化したものは無かった。Ile223は結合したSTACの直下にあり、I223Aの活性化は化合物依存性が高いことから、本発明者らは、I223R hSIRT1が、これまでで最も著しく活性化が障害された全長酵素を構成するのではないかという仮説を立てた。IleからArgへの置換は、疎水性のSTAC結合部位に嵩と電荷を与え、これが構造に基づく化合物結合を乱すと思われる。I223Rは、Ac−p53(W5)またはFOXO−3a基質ペプチドとの基本触媒活性またはEX−527、TFA−p53ペプチド、またはNAMによる阻害を変化させない(表4、5および9参照)。しかしながら、活性化は、総ての246活性剤の場合には両基質で完全に失われる。
実施例93.STACと基質結合の間のアロステリック結合
本発明者らは、STACによるhSIRT1の活性化の機構を検討した。この目的のため、本発明者らは、ミニhSIRT1、1、p53に由来する7アミノ酸ペプチド基質(Ac−p53)、および非加水分解性NAD+類似体carbaNADの四元複合体の2.73Å構造、ならびにペプチドおよびNAD+結合部位を占有する新規な活性部位指向阻害剤2との複合体としてのミニhSIRT1/1の2.74Å構造を決定した。四元複合体構造では、Ac−p53ペプチドおよびcarbaNADは、ラージローブとスモールローブの間の活性部位溝に結合する。Ac−p53は、スモールローブ由来の残基Gly415およびGlu416ならびにラージローブ由来の残基Lys444およびArg446と水素結合を形成する主鎖のアミド基で、拡張された立体構造に適合する。ペプチド+1位のアミドとArg446のアミドの間の水素結合は、疎水性+1残基に対して側鎖間に潜在的相互作用を与え、これはSTACにより媒介されるhSIRT1の活性化に重要であり得る(Dai, H. et al. (2010) J Biol Chem 285, 32695)。アセチルリジン側鎖は、Phe414、Leu418およびVal445によって裏打ちされた疎水性キャビティに入り込む。アセチル基は、His363とPhe297の間に挟まれ、アセチルリジンのε−NはVal412のカルボニル酸素と水素結合を形成し、これがアセチル−リジン側鎖の配向および拡張された立体構造を維持する。CarbaNADもまたhSIRT1と複数の点で接触し、そのほとんどは、hSIRT1触媒コア/NAD/EX−527類似体の三元複合体で見られるものと同様である(Zhao, X. et al. (2013) J Med Chem 56, 963)。ニコチンアミド環のアミド基がC−ポケット内のIle347およびAsp348と水素結合を形成するなど、いくつかの違いが指摘されている。加えて、ニコチンアミド側のリボフラノースの2’および3’ヒドロキシル基もアセチル−リジンのカルボニル酸素原子と水素結合を形成し、続いて起こるペプチドN−ε−アセチル基による求核作用のためにNADのC−1’原子を配向する補助をしている。阻害剤2は、最近報告されたSIRT3/2複合体の構造と同様に、ミニhSIRT1のアセチル−リジン結合部位とニコチンアミド結合C−ポケットの両方を占有する。SIRT3と同様に、基質または活性部位阻害剤の結合は、ドメインの閉鎖をもたらし、スモールローブとラージローブを一緒にする(Szczepankiewicz, B. G. et al. (2012) J Org chem 77, 7319 and Jin, L. et al. J Biol Chem (2009) 284, 24394)。活性部位占有時のより顕著な立体構造変化は、N末端ドメインの上へ向かう動きであり、これはArg234を中心にヒンジを形成すると思われ、SBDを活性部位に近接させ、協調した動きを介したSTAC結合と基質結合部位のアロステリック結合の、可能性のある機構を提供する。このヒンジ残基Arg234は多塩基リンカー(残基233〜238)内に位置し、そのグアニジニウム基とAsp475のカルボン酸基の間に形成される塩橋およびHis473とVal459のカルボニル基に対する水素結合によってN末端SBDを触媒コアに係留している。これらの3つの構造におけるSBDの比較は、そのドメインが比較的リジッドであることを示し、重ね合わせ可能なSTAC−結合ヘリックス−ターン−ヘリックス(H2−T−H3)モチーフを有し、ミニhSIRT1/1/2複合体構造では、最初のヘリックスだけが若干外へ傾斜している。本発明者らは、Pro231およびPro232をGlyに変異させることによってリンカーのリジッド性を変調することにより、SBDと係留Arg234の間の短いリンカー(230〜233)がアロステリック結合に重要であり得るかどうかを評価した。実際に、P231G/P232Gは、ミニhSIRT1のSTAC活性化の著しい弱化を示し、このことは、この短いリンカーの、SBDの動きの媒介および結果としてのSTAC結合と基質結合の共役に対する重要性を裏付ける。
HDX−MSデータにより、野生型hSIRT1とは対照的に、E230K突然変異体に対するSTACの結合は、E230K/1/Ac−p53(W5)複合体内のペプチド結合部位の周辺にもはや保護を与えないことが明らかである。これは、E230K突然変異がSTAC結合部位と基質結合部位の間の共役を損なう可能性があることを示す。このことをさらに調べるために、hSIRT1に対するSTACの結合を測定し、基質の存在下で共役効果を検討するために、蛍光偏光(FP)アッセイを開発した。全長hSIRT1とKd 0.3μMで結合するフルオレセイン結合STAC(3)をFPプローブとして用い、それはその親化合物4によって効果的に競合排除された。3の結合はI223R hSIRT1に関して重大な障害を受け、全長酵素においてSTACの結合に直接関与するような、ミニhSIRT1/1構造において示されるこの残基の役割が確認される。STACは、活性化に関するKM低下機構と一致して、Ac−p53(W5)の存在下で結合親和性(Ki)の増強を示した5により例示されるAc−p53(W5)基質の不在下または存在下で、FPアッセイで試験した。E230K突然変異体は野生型に比べてほとんどのSTACに対して著しく同様の結合親和性を示すが、Ac−p53(W5)によるこの結合の増強は存在しないか、または著しく弱められている。HDX−MSおよび活性化データはともに、Glu230はSTAC結合に直接関与しないが、その代わりに、STACと基質結合の共役を媒介して活性化を促進する重要な残基である。このことは、化合物1および2とともにE230KミニhSIRT1タンパク質の構造を決定することによってさらに確認した。全体的な構造は野生型ミニhSIRT1/1/2三元複合体の構造に類似しており、Glu230はSTAC結合に直接関与しないが、その代わりに、アロステリック結合の際に動的役割を果たす可能性があることが確認された。さらに、E230KミニhSIRT1/STAC構造では、野生型タンパク質構造に関して見られたものと同様の結晶学的二量体が見られたが、このことは、二量体化はSTACによるhSIRT1の生化学的活性化に必要であるとは思えないことを示す。
STACにより媒介されるSIRT1の活性化のための、アセチル基質上の疎水性部分の一般的必要性を評価するために(Dai, H. et al. (2010) J Biol Chem 285, 32695)、本発明者らは、Arg446の+1位への近接に基づき、潜在的+1 Trp相互作用残基Arg446からAlaへ変異させた。R446A hSIRT1は、予想されたように、Ac−p53(W5)に関して、KM値の増大を示す(表2参照)。しかしながら、それはまた、E230K/A突然変異体に関して見られたものと同様の活性化の弱化も示す。この所見、Arg446の陽イオン的性質および活性部位とSTAC結合部位の間の共役を考慮して、本発明者らは、対照としてE230KおよびR446EミニhSIRT1を用い、Arg446がE230の、可能性のある静電気的パートナーであるかどうかを調べるために、ミニhSIRT1 R446E/E230K二重突然変異体を作製した。E230KまたはR446EはいずれもミニhSIRT1のSTAC活性化の有意な弱化をもたらすが、R446E/E230K二重突然変異体は、E230KまたはR446Eに比べて、STACにより媒介されるミニhSIRT1の活性化を部分的に回復させる。これらのデータは、活性化された立体構造におけるGlu230とArg446の間の塩橋の存在を裏付け、活性化状態で触媒コアと相互作用するためのSBDの提案される動きと一致している。
本発明者らが本明細書で述べた総てのミニhSIRT1構築物は、全長hSIRT1の3つの重要な特徴、すなわち、1)定常状態での酵素動態および阻害、2)複数の化学型にわたるSTAC活性化プロファイル、3)およびE230KによるSTAC活性化の障害を再現する。本発明者らは次に、ミニhSIRT1構築物を用いて、結合したSTACとともに、完全機能型のhSIRT1の、初めて報告される構造を得る。生化学的特性決定および構造特性決定により、CBSと触媒コアの間のhSIRT1分子内相互作用が明らかとなり、これはhSIRT1の基本的脱アセチル化活性に不可欠である。より重要なことに、ミニhSIRT1/STAC複合体の構造により、STAC結合部位の詳細な構造が明らかとなり、将来の構造に基づく創薬のために重要な情報が得られる。hSIRT1構造と、結合した種々のリガンドとの比較は、SBDの正確な場所は結晶充填によって影響を受ける可能性があるが、N末端SBDは立体構造反応座標に沿って上方移動を受けることを示唆する。従って、STAC活性化の、可能性のある機構は、すなわち、SBDの上方移動と、STAC結合と基質結合を共役させるための触媒コアのドメイン閉鎖との協調した動きと推論することができる。FPを用いる生物物理学的特性決定および全長hSIRT1を用いる部位特異的突然変異誘発は、STACの結合および活性化のこのモデルを支持して、ミニhSIRT1/STAC複合体の構造的所見と完全に一致する。本発明者らの知る限り、本明細書に報告されるミニhSIRT1/STAC複合体の構造は、グルコキナーゼを除く酵素と結合した合成アロステリック活性剤の第2の実施例のみを表す(Grimsby, J. et al. (2005) Science 301, 370)。要約すると、本明細書に示される結果は、ペプチド基質を伴う小分子によるhSIRT1の直接的アロステリック活性化の明白な視覚的および機能的証明を提供し、STACによる、およびおそらくはまたhSIRT1の内因性レギュレーターによるhSIRT1活性化の機構のさらなる解明の基礎を提供する。
実施例94.タンパク質のクローニング、発現、および精製
ミニhSIRT1構築物を改変pET21bベクター(Novagen)にクローニングした。タンパク質は、大腸菌(E. coli)BL21−Gold(DE3)細胞(Stratagene)で、TEVプロテアーゼ部位を組み込んだヘキサヒスチジンアフィニティータグとのN末端融合物として発現させた。単一のコロニーを100μg/mlアンピシリンを含有するLB培地で、37℃、250rpmにて、A600が0.3となるまで培養した。次に、この培養物を16℃、250rpmに、A600が0.6となるまで移行した。イソプロピル1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)を終濃度が0.2mMとなるように加え、16℃、250rpmで一晩、発現を続けた。細胞を遠心分離により回収し、ペレットを溶解バッファー(25mM HEPES、pH7.5、200mM NaCl、5%グリセロール、および5mM 2−メルカプトエタノール)に再懸濁させ、音波処理を施して細胞を破壊した。4℃、10,000xgで40分の遠心分離により上清を細胞残渣から分離し、25mM HEPES、pH7.5、200mM NaCl、5%グリセロール、5mM 2−メルカプトエタノール、および20mMイミダゾールを含有するバッファーで平衡化したNi−NTAカラム(Qiagen)にロードした。このカラムを、25mM HEPES、pH7.5、200mM NaCl、5%グリセロール、5mM 2−メルカプトエタノール、および50mMイミダゾールを含有する、5カラム容量のバッファーで洗浄し、25mM HEPES、pH7.5、200mM NaCl、5%グリセロール、5mM 2−メルカプトエタノール、および250mMイミダゾールを含有するバッファーで溶出させた。溶出したタンパク質を溶解中で透析し、TEVプロテアーゼ(Invitrogen)で消化して、4℃で一晩、N末端Hisタグを除去した。タンパク質を、溶解バッファーで平衡化した第2のNi−NTAカラムにロードした。タグのないタンパク質を、25mM HEPES、pH7.5、200mM NaCl、5%グリセロール、5mM 2−メルカプトエタノール、および5mMイミダゾールを含有するバッファーにより溶出した。精製したタンパク質を20mM Tris−HCl、pH8.0、250mM NaCl、5%グリセロール、および10mM DTTを含有する透析バッファーに対して透析し、濃縮した。タンパク質をさらにS200カラム(GE Healthcare)により、クーマシーブリリアントブルーR−250により染色したSDS−PAGE分析により評価した場合に、95%純度まで精製し、透析バッファー中、10〜15mg/mlまで濃縮した。
ヒトhsirt1 180−230を、改変pET21bベクター(Novagen)のBamHIとXhoIの間にクローニングし、これは発現をT7−lacOプロモーターの制御下に置く。タンパク質を、TEVプロテアーゼ部位を組み込んだヘキサヒスチジンアフィニティータグとのN末端融合物として発現させた。単一コロニーを、100μg/mlアンピシリンを含有する100ml LB培地中、37℃、250rpmで一晩培養した。次に、20mlのLB培地を、15NH4Clwp含有する1LのM9培地に播種し、それらをオービタルシェーカー(200rpm)上、37℃で、OD600が約0.8となるまでインキュベートした。次に、この培養物を16℃、250rpmに、A600が1.0となるまで移行した。イソプロピル1−チオ−β−D−ガラクトピラノシドを終濃度が0.3mMとなるように加え、16℃、200rpmで一晩、発現を続けた。細胞を遠心分離により回収し、ペレットを溶解バッファー(50mM Hepes、200mM NaCl、5%グリセロール、5mM β−ME、pH7.5)に再懸濁させ、音波処理を施して細胞を開放した。4℃、10,000xgで40分の遠心分離により上清を細胞残渣から分離し、50mM Hepes、200mM NaCl、5%グリセロール、5mM β−ME、pH7.5を含有するバッファーで平衡化したNi−NTAカラム(Qiagen)にロードした。このカラムを、50mM Hepes、200mM NaCl、5%グリセロール、5m MB−MEおよび20mMイミダゾール、pH7.5を含有する、20カラム容量のバッファーで洗浄した後、50mM Hepes、200mM NaCl、5% グリセロール、5mM β−MEおよび250mMイミダゾール、pH7.5を含有するバッファーで溶出させた。溶出したタンパク質を溶解バッファー中で透析し、TEVプロテアーゼ(Invitrogen)で消化して、4℃で一晩、N末端Hisタグを除去した。タンパク質を、溶解バッファーで平衡化した第2のNi−NTAカラムにロードした。タグのないタンパク質を、50mM Hepes、200mM NaCl、5%グリセロール、5mM β−MEおよび10mMイミダゾール、pH7.5を含有するバッファーにより溶出した。精製したタンパク質を濃縮し、S200カラム(GE Healthcare)により、クーマシーブリリアントブルーR−250により染色したSDS−PAGE分析により評価した場合に、95%純度までさらに精製し、50mM HEPES、50mM NaCl、0.5mM TCEP、pH6.5中、10mg/mlまで濃縮した。
実施例95.全長SIRT1製造
全長ヒトSIRT1(hSIRT1)タンパク質をC末端His6タグとともに発現させ、AKTAxpress(商標)(GE Lifesciences)を用いて精製したQ222A、およびI223R SIRT1以外は、Hubbard. et al. (2013) Science 339, 1216に記載のとおりに精製した。各細胞ペーストを、氷上で、cOmplete、EDTA不含プロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤(Roche)を添加した1,000Uベンゾナーゼヌクレアーゼ(Sigma Aldrich)とともにバッファーA(50mM Tris−HCl pH7.5、250mM NaCl、25mMイミダゾール、および0.1mM TCEP)に再懸濁させた。40Wで合計12分間、50%オンおよび50%オフのパルス音波処理により細胞を破砕した。不溶性残渣を遠心分離により除去した。明澄な上清をそのまま、1mL HisTrap FF Crudeカラム(GE Lifesciences)にロードした。バッファーAで洗浄した後、SIRT1をバッファーB(50mM Tris−HCl pH7.5、250mM NaCl、500mMイミダゾールおよび0.1mM TCEP)で溶出させた。タンパク質をさらに、Hi−load Superdex 200 16/60 カラム(GE Lifesciences)を用い、バッファーC(50mM Tris−HCl pH7.5、300mM NaCl、0.1mM TCEP)中、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。酵素濃度は、BSAを標品として用い、Bradfordアッセイにより測定した。最終的なタンパク質純度はゲル濃度計により評価した。タンパク質をLC/MSにより確認した。V224AおよびT219A(80%)およびE230A(85%)を除く総てのタンパク質が90%純度より高かった。
実施例96.SIRT1脱アセチル化反応
SIRT1脱アセチル化反応は、反応バッファー(50mM HEPES−NaOH、pH 7.5、150mM NaCl、1mM DTT、および1%DMSO)中25℃で、継続的PNC1/GDH結合アッセイ(continuous PNC1/GDH coupled assay) (Smith, B. C. et al. (2009) Anal Biochem 394, 101)を用いるニコチンアミド産生または質量分析によるO−アセチルADPリボース(OAcADPr)産生(Hubbard. et al. (2013) Science 339, 1216)のいずれかをモニタリングしながら行った。使用したPNC1/GDHカップリング系成分の終濃度は、20単位/mLウシGDH(Sigma−Aldrich)、1μM酵母PNC1、3.4mM α−ケトグルタレート、および220μM NADHまたはNADPHであった。吸光係数6.22mM−1cm−1および光路長0.81cmを用い、340nmでの吸光度を、用いた150μL反応に対する生成物濃度に変換した。OAcADPr産生をモニタリングするアッセイは、0.05%BSAを含む反応バッファー中で行い、1%ギ酸および5mMニコチンアミドの終濃度を与えた停止溶液で脱アセチル化反応を急冷することにより、各時点をとった。急冷した反応物を1:1アセトニトリル:メタノールで5倍希釈し、5,000xgで10分間回転させてタンパク質を沈降させた後、エレクトロスプレーイオン化源を取り付けたABSciex API 4000質量分析計に連結したAgilent RapidFire 200 High−Throughput質量分析システム(Agilent、ウェイクフィールド、MA)で分析した。p53系Ac−p53(W5)(Ac−RHKKAcW−NH2)ペプチドおよびFOXO−3a 21マー(Ac−SADDSPSQLSKAcWPGSPTSRSS−NH2)ペプチドはBiopeptide,Incから入手した。脱アセチル化アッセイでは、特に断りのない限り、Ac−p53(W5)基質を使用した。
基質のKM決定は、固定された第2基質の飽和濃度で、1つの基質濃度を変えることによって行った。SIRT1活性化および阻害アッセイは、0.05%BSAを含む反応バッファー中、25℃で行い、OAcADPrアッセイを用いて分析した。酵素および化合物を20分間プレインキュベートした後に基質を添加した。全長hSIRT1の活性化スクリーンについては、構造的に多様な246化合物のセットを各終濃度25μMで2回試験した。KM調節活性剤に対して感受性とするために、それらのKM値のおよそ10分の1の基質濃度を用いた(表5参照)。5つの化合物の用量依存性を調べ、活性化倍率データを数式1で表した。
式中、vx/v0は、活性剤(X)の存在下での反応速度(vx)と不在下での反応速度(v0)の比であり、RVmaxは、無限大活性剤濃度での相対速度であり、EC50は、2分の1のRVmaxを生じるために必要な活性剤の濃度であり、bは、vx/v0の最小値である。
実施例97.タンパク質の結晶化、データ収集および構造決定
ミニhSIRT1/1二元複合体の結晶は、ハンギングドロップ蒸気拡散法により18℃で得た。ドロップは、1μlのタンパク質/化合物混合物および0.2M塩化マグネシウム、0.1M Tris pH8.5、および16% w/vのPEG 4000の、1μlの結晶化バッファーから構成された。ミニhSIRT1/1/2の結晶は、ハンギングドロップ蒸気拡散法により18℃で得た。ドロップは、1μlのタンパク質/化合物混合物、および0.55M塩化ナトリウム、0.1M MES pH6.5、および20% w/vのPEG 40001μlの結晶化バッファーから構成された。ミニhSIRT1/1/p53−7マー/carbaNAD複合体の結晶は、ハンギングドロップ蒸気拡散法により18℃で得た。ドロップは、1μlのタンパク質/基質混合物、および5% v/v Tacsimate、pH.00.1 M HEPES pH 7.0および10% w/v PEG 5000 MMEの1μlの結晶化バッファーから構成された。ミニhSIRT1(E230K)/1/2の結晶は、ハンギングドロップ蒸気拡散法により18℃で得た。ドロップは、1μlのタンパク質/化合物混合物、および0.2M硫酸リチウム、0.1Mのビス−Tris pH6.5、29% w/v PEG 3350の1μlの結晶化バッファーから構成された。
これらの結晶を、20%グリセロールを含有する母液中で凍結保護した後、液体窒素中で急速凍結を行った。SSRF BL17U1、APS 21−ID−DまたはAPS 21−ID−Gビームラインで回折データを収集し、Xia2プログラム(Winter, G. (2010) J Appl Crystallogr 43, 186)を用いて処理した。分子置換ソフトウエアPhaser(McCoy, A. J. et al. (2007) J Appl Crystallogr 40, 658)を用い、SIRT3のホモログモデル(PDBコード:3GLU)に基づく残基242〜494を含有する検索モデルで構造を解明した。CCP4パッケージ((1994) Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 50, 760)のRefmac5(Murshudov, A. A. et al. (1997) Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 53, 240)とCoot et al. (2004) Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 60, 2126の間で反復構造精密化およびモデル構築を行った。回折データ、精密化、および構造統計値に関する詳細なデータを表3に示す。
実施例98.核磁気共鳴(NMR)分光法
1H、15N HSQC NMR試験は、400μMの1の存在下または不在下で、およそ200μMの15N標識SIRT1(180−230)を含有するサンプルを用い、凍結探針を備えたBruker AVANCE III 600MHz NMR分光計にて25℃で行った。NMRデータは総てNMRPipe(Delaglio, F. et al. (1995) J Biomol NMR 6, 277)で処理し、NMRView(Johnson, et al. (1994) J Biomol NMR 4, 603)で分析した。
実施例99.サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)アッセイ
これらのアッセイは、50mM HEPES−NaOH、pH 7.5、150mM NaCl、および0.5mM TCEPに溶かした100μM STACの不在下または存在下で、10μMミニhSIRT1を含有する100μLのサンプルを注入するSuperdex 75 10/300 GLカラム(GE healthcare)を用いて行った。結合反応物は室温で1時間インキュベートした後に、カラムに注入した。
実施例100.蛍光偏光(FP)アッセイ
FP試験は、20μLのアッセイバッファー(50mM HEPES−NaOH、pH7.5、150mM NaCl、および1mM DTT)中、25℃で行った。384ウェルプレートをPHERAstar FSにて、励起波長および発光波長それぞれ502nmおよび533nmで読み取った。プローブ結合に関しては、漸増濃度のSIRT1を10nMのプローブ3に加えた。結合等温線は数式2により表された。競合結合様式に関しては、15μMのAc−p53(W5)の不在下または存在下(in the absence or presence or 15μM Ac-p53(W5))で、10nMの3および0.3μMのSIRT1野生型またはE230K変異型の混合物に漸増濃度の競合因子を加えた。競合データは数式3で表された。IC50からKiへの変換は数式4で表され、ここで、KdはSIRT1に対する3の結合親和性であり、F0はプローブ結合B/(B+F)の分数であり、L0はプローブ3の濃度である。
実施例101.水素−重水素交換質量分析(HDX−MS)
SIRT1の交換時(on-exchange)試験
H/D交換反応の後に、他所に詳細に記載されている完全自動システム(Hamuro, Y. et al. (2003) J Biomol Techniques: JBT 14, 171)を用い、ペプシン消化、脱塩、HPLC分離、およびMS分析を行った。この試験セットに特有なものとして、交換時反応は、D2O中で20μLのSIRT1保存溶液(1.9%DMSO中、0.77mg/mL SIRT1、±3.88mM Ac−p53(W5)、±192μMリガンド)と20μLの100mMリン酸塩、pH読み取り7.0を混合することにより開始した。50%D2O混合物を0℃で15、50、150、500、1,500、または5,000秒間インキュベートした。SIRT1(229−516)では、交換時反応は、D2O中で、4μLのSIRT1保存溶液(1.36mg/mL SIRT1(229−516)、±1.67mM Trp−25マー)と36μLの200mMリン酸塩、pH読み取り7.0を混合することにより開始した。90%D2O混合物を0℃で15、50、150、500、1,500、または5,000秒間インキュベートした。分析直前に、20μLの1.6M塩酸グアニジン(GuHCl)、0.8%ギ酸、pH2.3を添加して交換時反応を急冷した。
実施例102.標準的HDXサンプルに関する一般的タンパク質処理
急冷した溶液を、製造者の指示に従い、Poros 20 AL媒体(Life Technologies、カールズバッド、CA)に固定化したブタペプシン(Sigma、セントルイス、MO)を充填したペプシンカラム(ベッド容積104μL)に、0.05%TFA水溶液(200μL/分)を用いて2分間通した。消化された断片を逆相トラップカラム(ベッド容積4μL)に一時的に回収し、脱塩した。このトラップカラムからペプチド断片を溶出させ、C18カラム(BioBacis−18; Thermo Scientific、サンノゼ、CA)により、23分で13%溶媒Bから40%溶媒Bの直線勾配(溶媒A、水中0.05%TFA;溶媒B、95%アセトニトリル、5%バッファーA;流速10μL/分)を用いて分離した。質量分析は、LTQ OrbiTrap XL質量分析計(Thermo Fisher Scientific、サンノゼ、CA)を用い、キャピラリー温度200℃で行った。
実施例103.SIRT1の消化/分離の最適化および非重水素化試験
非重水素化条件下、高解像度で、ペプチド断片によるSIRT1の高い配列包括度を得るために、H/D−交換試験の前に、消化および分離条件を最適化した。この工程では、20μLの0.77mg/mL(9.2μM)SIRT1と20μLのH2Oの混合物を、20μLの種々の酸性バッファーを添加することにより急冷した。SIRT1(229−516)の場合、4μLのSIRT1保存溶液(1.36mg/mL SIRT1(229−516)、±1.67mM Trp−25マー)と36μLのH2Oの混合物を、20μLの種々の酸性バッファーを添加することにより急冷した。急冷した混合物に対し、上記の一般的タンパク質処理を行った。非重水素化ペプチド断片はSequest in Proteome Discoverer 1.1 (Thermo Fisher Scientific, San Jose, CA)によって同定した。
実施例104.SIRT1の完全重水素化試験
完全重水素化サンプルは、D2O、pH2.5中、45μLの0.77mg/mL(9.2μM)SIRT1と45μLの100mM TCEPの混合物を60℃で3時間インキュベートすることにより調製した。SIRT1(229−516)の場合、完全重水素化サンプルは、D2O、pH2.5中、9μLの1.36mg/mL(41.7μM)SIRT1(229−516)と81μLの100mM TCEPの混合物を60℃で3時間インキュベートすることにより調製した。インキュベーション後、サンプルを0℃で維持した後、交換時溶液と同様に急冷し、一般的タンパク質処理を行った。
実施例105.交換時反応後の各ペプチドの重水素化レベルの測定
ペプチドアイソトープエンベロープの重心は、Sierra Analytics(モデスト、CA)と共同開発したインハウスプログラムを用いて測定した。タンパク質処理工程中の逆交換(back-exchange)の補正は、以下の標準数式5を用いて行った(Zhang, Z. et al. (1993) Protein Science 2, 522)。
式中、m(P)、m(N)、およびm(F)は、それぞれ部分的重水素化(交換時)ペプチド、非重水素化ペプチド、および完全重水素化ペプチドの重心値である。
実施例106.生物活性
質量分析に基づくアッセイを用いてSIRT1活性の調節剤を同定した。TAMRAに基づくアッセイでは、以下のような20アミノ酸残基を有するペプチドを用いた:Ac−EE−K(ビオチン)−GQSTSSHSK(Ac)NleSTEG−K(5TMR)−EE−NH2(配列番号1)(ここで、K(Ac)は、アセチル化リジン残基であり、Nleは、ノルロイシンである)。このペプチドをC末端において蛍光団5TMR(励起540nm/発光580nm)で標識した。このペプチド基質の配列は、いくつかの改変を伴うp53に基づくものであった。加えて、この配列中に本来存在するメチオニン残基は、メチオニンが合成および精製中の酸化に感受性があり得るために、ロイシンで置換した。Trpに基づくアッセイでは、以下のようなアミノ酸残基を有するペプチドを用いた:Ac−R−H−K−K(Ac)−W−NH2(配列番号2)。
TAMRAに基づく質量分析アッセイを次のように行った:0.5μMのペプチド基質および120μMのβNAD+を10nMのSIRT1とともに、反応バッファー(50mM Tris−酢酸pH8、137mM NaCl、2.7mM KCl、1mM MgCl2、5mM DTT、0.05%BSA)中、25℃で25分間インキュベートした。SIRT1タンパク質は、T7プロモーターを含有するベクターにSirT1遺伝子をクローニングし、次にこれをBL21(DE3)細菌細胞に形質転換し、発現させることによって得た。この反応混合物に試験化合物を種々の濃度で加え、生じた反応物をモニタリングした。SIRT1とともに25分間インキュベートした後、10μLの10%ギ酸を加えて反応を停止させた。得られた反応物を密閉し、その後の質量分析のために冷凍した。サーチュインにより媒介されるNAD依存性脱アセチル化反応により生じた脱アセチル化基質ペプチドの量(あるいはまた、生じたO−アセチル−ADP−リボース(OAADPR)の量)の決定は、試験化合物を含まない対照反応に対する、種々の濃度の試験化合物の存在下での相対的SIRT1活性の正確な測定を可能とした。
Trp質量分析アッセイは、次のように行った。0.5μMのペプチド基質および120μMのβNAD+を10nMのSIRT1とともに、反応バッファー(50mM HEPES pH7.5、1500mM NaCl,1mM DTT、0.05%BSA)中、25℃で25分間インキュベートした。SIRT1タンパク質は、T7プロモーターを含有するベクターにSirT1遺伝子をクローニングし、次にこれをBL21(DE3)細菌細胞で発現させ、以下にさらに詳細に記載するように精製することによって得た。この反応混合物に試験化合物を種々の濃度で加え、生じた反応物をモニタリングした。SIRT1とともに25分間インキュベートした後、10μLの10%ギ酸を加えて反応を停止させた。得られた反応物を密閉し、その後の質量分析のために冷凍した。次に、相対的SIRT1活性を、試験化合物を含まない対照反応に対する、種々の濃度の試験化合物の存在下でのNAD依存性サーチュイン脱アセチル化反応により生じたO−アセチル−ADP−リボース(OAADPR)量(あるいはまた、生じた脱アセチル化Trpペプチドの量)を測定することにより決定した。試験薬剤がSIRT1による脱アセチル化を活性化合物した程度は、EC1.5(すなわち、試験化合物を含まない対照の50%だけSIRT1活性を高めるために必要とされる化合物の濃度)、および最大活性化パーセント(すなわち、試験化合物に関して得られた、対照(100%)に対する最大活性)として表した。
サーチュイン活性の阻害に対する対照実験は、反応の開始時に陰性対照として1μLの500mMニコチンアミドを加えることによって行った(例えば、最大サーチュイン阻害の決定を可能とする)。サーチュイン活性の活性化の対照実験は、アッセイの直線範囲内の所与の時点での基質の脱アセチル化量を決定するために、10nMのサーチュインタンパク質を、化合物の代わりに1μLのDMSOとともに用いて行った。この時点は、直線範囲内で試験化合物に関して用いたものと同じであり、終点は速度変化を表す。
上記のアッセイのために、SIRT1タンパク質を次のように発現させ、精製した。SirT1遺伝子を、T7プロモーターを含有するベクターにクローニングし、BL21(DE3)に形質転換した。タンパク質は、18℃で一晩、1mM IPTGを用いた誘導により、N末端Hisタグ融合タンパク質として発現させ、30,000xgで採取した。細胞を溶解バッファー(50mM Tris−HCl、2mM Tris[2−カルボキシエチル]ホスフィン(TCEP)、10μM ZnCl2、200mM NaCl)中、リゾチームを用いて溶解させ、さらに完全に溶解させるために10分間の音波処理を施した。タンパク質はNi−NTAカラム(Amersham)で精製し、純粋なタンパク質を含有する画分をプールし、濃縮し、サイズ分画カラム(Sephadex S200 26/60 global)に流した。可溶性タンパク質を含有するピークを回収し、イオン交換カラム(MonoQ)に流した。勾配溶出(200mM−500mM NaCl)により純粋なタンパク質を得た。このタンパク質を濃縮し、透析バッファー(20mM Tris−HCl、2mM TCEP)に対して一晩透析した。このタンパク質をアリコートに分け、さらなる使用まで−80℃で冷凍した。
SIRT1を活性化した式(I)のサーチュイン調節化合物を上記のアッセイを用いて同定し、以下の表1に示す。EC1.5値は、SIRT1の150%の活性化をもたらす試験化合物の濃度に相当する。式(I)の活性化化合物のEC1.5値は、A(EC1.5<1μM)、B(EC1.5 1〜25μM)、C(EC1.5>25μM)で表される。最大活性化倍率%は、A(活性化倍率≧150%)またはB(活性化倍率<150%)で表される。「NT」は、試験せずを意味し;「ND」は、測定不可を意味する。表の化合物番号は化合物番号10で始まり、括弧内の数字(#)は、図4および実施例90〜106のSTACナンバリングシステムに相当する(すなわち、化合物番号68はSTAC 1でもあり、従って、それは68(1)として示される、さらなるSTAC:546(3)、444(4)、314(5)、816(7)、76(8)、および81(9))。
特定の実施態様では、化合物は、化合物番号1、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、23、25、27、28、29、30、31、32、33、34、36、38、39、40、41、42、45、46、47、48、49、53、54、56、57、59、61、63、66、68、75、76、80、81、83、86、87、90、93、95、99、101、102、107、110、118、119、120、121、122、128、129、130、133、135、136、138、139、140、141、142、145、150、151、153、156、159、160、161、162、163、164、165、166、168、170、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、184、189、191、194、197、207、212、214、216、218、220、222、223、230、233、235、239、250、254、260、261、264、268、271、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、285、286、288、289、290、292、293、295、299、314、316、322、324、325、329、330、332、333、335、341、344、347、348、350、351、352、353、354、356、359、360、361、365、366、367、369、373、375、376、377、378、379、380、383、385、387、388、389、391、392、393、394、396、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、415、417、419、421、422、423、425、427、428、430、431、435、452、459、461、463、470、472、473、474、475、480、481、483、485、491、492、496、497、498、499、500、502、503、504、505、506、507、509、515、517、519、523、526、527、530、538、540、541、542、556、557、559、562、563、574、575、580、581、583、588、589、590、591、592、593、594、595、596、601、604、605、606、607、611、617、623、625、626、629、630、635、636、637、638、639、640、642、643、645、646、647、648、651、652、653、654、655、656、657、658、659、660、663、665、666、667、668、670、671、672、676、683、692、693、694、698、703、706、708、709、710、714、717、718、719、720、721、722、723、724、725、727、730、731、733、736、737、739、740、741、742、743、746、747、748、749、750、751、752、753、754、756、757、758、760、763、765、766、767、770、776、777、780、788、790、792、797、798、799、801、803、804、806および808のうちのいずれか1つである。
実施例107
(4S)−N−(ピリジン−3−イル)−7−(4−(トリフルオロメチル)ピペリジン−1−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド
1,4−ジオキサン(20mL)中、((4S)−7−クロロ−N−(ピリジン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(700mg、2.217mmol)、4−(トリフルオロメチル)ピペリジン(679mg、4.43mmol)の脱気溶液に、20℃で、ジシクロヘキシル(2’,4’,6’−トリイソプロピル−[1,1’−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン(423mg、0.887mmol)、炭酸カリウム(919mg、6.65mmol)および酢酸パラジウム(II)(100mg、0.443mmol)を順次加え、この反応混合物を密閉試験管中、90℃で16時間撹拌した。この反応混合物を冷水(70mL)に注ぎ、酢酸エチル(150mL)で抽出した。有機層を分離し(seperated)、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムに添加し、ジクロロメタン中1%から2%メタノールで溶出させた。画分を集めたところ500mgとなった。これを再びGRACE逆相HPLCにより精製し、(4S)−N−(ピリジン−3−イル)−7−(4−(トリフルオロメチル)ピペリジン−1−イル)−3,4−ジヒドロ−1,4−メタノピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−5(2H)−カルボキサミド(320mg、0.710mmol、32%)を得た。MS(ESI)C21H23F3N6Oの理論値:433.2。
均等物
本発明は、とりわけ、サーチュイン調節化合物およびその使用方法を提供する。本発明の具体例を述べてきたが、上記の明細書は例示であって限定するものではない。本明細書を見直すと、当業者には本発明の多くの変形が明らかとなるであろう。本発明の全範囲は、特許請求の範囲をその均等物の全範囲と併せて、また、明細書をこのような変形と併せて参照することにより決定されるべきである。
引用による組み入れ
本明細書で言及する総ての刊行物および特許は、以下に列挙するものを含め、個々の刊行物または特許がそれぞれ具体的かつ個別に引用することにより組み入れられることが示されている場合と同様に、その全内容が引用することにより本明細書に組み入れられる。相違がある場合、本明細書におけるいずれの定義も含めて本出願が優先する。
さらに、ゲノム研究所(The Institute for Genomic Research)(TIGR)(www.tigr.org)、および/または米国バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)(www.ncbi.nlm.nih.gov)によって管理されるものなどの公共のデータベースへの登録に対応する受託番号を引用するいずれのポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列も、その全内容が引用することにより本明細書に組み入れられる。