そこで、本発明の第1の目的は、毛細管現象を利用したクロマトグラフィーについて、定量性をも確保することができる精度の高い測定を可能とするクロマトグラフィー処理用チップ、クロマトグラフィー処理装置およびクロマトグラフィー処理方法を提供することを目的としてなされたものである。
第2の目的は、毛細管現象を利用したクロマトグラフィーについて、クロスコンタミネーションを防止して信頼性の高い処理を行うことができるクロマトグラフィー処理用チップ、クロマトグラフィー処理装置およびクロマトグラフィー処理方法を提供することを目的としてなされたものである。
第3の目的は、毛細管現象を利用したクロマトグラフィーについて、免疫検査のみならず、検体から抽出し増幅した核酸に関する検査をも可能とする汎用性の高いクロマトグラフィー処理用チップ、クロマトグラフィー処理装置およびクロマトグラフィー処理方法を提供することを目的としてなされたものである。
第4の目的は、毛細管現象を利用したクロマトグラフィーについての反応から測定まで、さらには検体からの目的物質の抽出や増幅をも含む処理の一貫した自動化を容易にするクロマトグラフィー処理用チップ、クロマトグラフィー処理装置、およびクロマトグラフィー処理方法を提供することを目的としてなされたものである。
第1の発明は、容器に挿入されて液体の吸引および吐出が行われる口部を下端に有し、該口部と連通する細管および該細管と連通し吸引した液体を貯溜する貯溜部が下側に設けられた太管を有する透光性をもつ分注チップと、該分注チップの前記太管内に設けられ、吸引された移動相溶液中の目的物質を吸着し、捕獲し、分離し、または結合することを可能とする検査用物質が所定領域に所定量固定された検査用物質固定面が設けられた多孔質固定相担体とを有するとともに、該多孔質固定相担体は、前記分注チップの前記太管内に前記検査用物質固定面の光学的状態が該分注チップの側面の外部から測定可能となるように封入され、該多孔質固定相担体の下端は前記貯溜部内に設けられたクロマトグラフィー処理用チップである。
ここで、「分注チップ」とは、液体の吸引及び吐出が可能な器具であって、例えば、気体の吸引吐出を行う吸引吐出機構と連通するノズルに装着される装着用開口部を有するノズル装着式分注チップ、または吸引吐出機構としての可動部材により変形可能な変形要素を有しまたは変形壁を有する変形式分注チップである。前記装着用開口部は太管の上側に設けられる。分注チップの大きさとしては例えば、全長 2cmから30cm程度である。
「クロマトグラフィー」とは、固定相(または担体)と呼ばれる物質の表面あるいは内部を、移動相と呼ばれる物質が通過する過程で物質が結合、分離、抽出されるものである。
「多孔質固定相担体」とは、毛細管現象により移動相溶媒(または展開液)が内部を移動可能な担体であって、例えば、濾紙、綿糸、グラスファイバー、パルプ、不織布、合成繊維であり、より具体的には、ニトロセルロース、再生セルロース、ナイロン、ポリビニリデンフルオライト、ポリカーボネート、セルロースアセテート等により形成され、例えば、薄膜状(ペーパー、メンブレン)、短冊状、薄板状または棒状等である。該多孔質固定相担体の厚さは、例えば、1mm程度以下、好ましくは 0.1mm〜0.8mm程度、該多孔質固定相担体の大きさは、前記分注チップの太管に封入可能な大きさであって、上下方向の長さは、例えば、1cm〜20cm程度、幅は、例えば、1mm〜20mm程度である。「検査用物質」としては、検査対象の目的化学物質(生体物質を含む)に対して、結合性を有する核酸等の遺伝物質、抗原及び抗体等のタンパク質、糖、糖鎖、ペプチド等の化学物質(生体物質を含む)である。
「所定領域」とは、例えば、後述する移動相貯溜線とポジティブコントロール線との間の固定領域(1または2以上の種類の検査用物質が固定される領域)であって、目的物質と結合性を有する1または2以上の種類の検査用物質が、各々例えば、吸引吐出方向に直交する方向に沿って該領域を上側と下側に仕切るように直線状に固定されることになる。各検査用物質が固定された部位を「固定部位」という。これらの1または2以上の固定部位は相互に所定間隔を開けて予め定めた位置に配列されている。
「所定量」としたのは、予め定めた定量値であって、光学的状態を測定することによって定量性をも測定することが可能とするためである。「光学的状態」は、前記移動相溶液中で標識化された目的化学物質等によって引き起こされる状態であって、目的化学物質等の標識化は、目的化学物質等と標識化物質としての蛍光物質、化学発光物質、呈色物質、変光物質または変色物質との結合または反応によって行われ、蛍光や化学発光による発光、呈色、変光、変色等がある。
前記多孔質固定相担体の上端には、吸収パッドが接触して設けられることが好ましい。これによって、前記多孔質固定相担体が含浸可能な液量が拡大され、毛細管現象が停止する飽和状態を遅らせて、毛細管現象による溶液の固定領域内の移動距離の拡大や多孔質固定相担体の固定領域内の洗浄が可能になる。吸収パッドは、前記多孔質固定相担体と同様な素材またはスポンジや高吸水性ポリマー等の吸水体で形成される。
第2の発明は、前記多孔質固定相担体の前記検査用物質固定面は、液体の吸引吐出方向に平行に配置されたクロマトグラフィー処理用チップである。
ここで、前記検査用物質固定面は、前記多孔質固定相担体に形成された最大面積をもつ平面であることが好ましい。該分注チップの太管は角筒状に形成され、前記検査用物質固定面に対応する角筒側面の面積が最大に形成される薄型の角筒であることが好ましい。これによって、分注チップ内部の光学的状態を、レンズ効果による歪みを被ることなく、該分注チップの側面の外部から確実に得ることができる。「吸引吐出方向」とは、使用時における上下方向であり、ノズル装着式分注チップの場合には口部と装着用開口部を結ぶ方向、または分注チップの軸方向である。
第3の発明は、前記分注チップ内に流入した移動相溶媒と接触可能となるように、前記多孔質固定相担体を該分注チップ内に所定の配置位置に封入する封入部を該分注チップに設けたクロマトグラフィー処理用チップである。
前記封入部としては、例えば、前記多孔質固定相担体を貼り付けて支持する薄板状プレートを有し、該薄板状プレートは前記太管に、装着用開口部から挿入して太管の内壁との間で摩擦力や、細管と太管との間の移行部の段差または傾斜面を利用して取り付けられるのが好ましい。所定の配置位置とは、例えば、前記液体の吸引吐出方向に平行に該プレートを配置することである。
第4の発明は、前記多孔質固定相担体の前記検査用物質固定面には、前記吸引吐出方向に間隔を開けて、該吸引吐出方向に直交する方向に引かれた移動相貯溜線、前記所定領域、ポジティブコントロール線、およびネガティブコントロール線が下側から上側に向かって順に設けられたクロマトグラフィー処理用チップである。
ここで、「移動相貯溜線」とは、前記検査用物質固定面に沿って移動する移動相溶媒をその下端に接触させるために必要な貯溜部内に貯溜すべき液体の液面レベルを示す部位である。「ポジティブコントロール線」とは、移動相溶媒がこの位置まで移動すれば必ず呈色、発光、変色等する物質が固定されている部位であり、「ネガティブコントロール線」とは、移動相溶媒がこの位置まで移動しても通常、呈色(発光、変色等)しない物質が固定されている部位である。
第5の発明は、吸引吐出機構によって液体の吸引吐出が可能な1または2以上の分注チップが装着可能な処理用ヘッドと、前記処理用ヘッドに設けられ、該処理用ヘッドに装着された該分注チップに対して液体の吸引吐出を行わせる吸引吐出機構と、1または2以上の分注チップを前記処理用ヘッドに対して装着可能に収容する1または2以上のチップ収容部、および種々の液体を収容しまたは収容可能な1または2以上の液収容部を有する容器群と、前記処理用ヘッドを前記容器群に相対的に移動させる移動手段とを有するとともに、少なくとも1の前記分注チップは、移動相溶媒中の目的物質を吸着、捕獲、もしくは結合を可能とする検査用物質が固定された検査用物質固定面が設けられた多孔質固定相担体を分注チップ内に封入されたクロマトグラフィー処理用チップであり、前記吸引吐出機構の吸引もしくは吐出の量、時間または位置を、前記処理用ヘッドに装着される前記クロマトグラフィー処理用チップの構造、前記移動相溶液中に存在する物質の種類、濃度、該移動相溶液の量、該移動相溶液もしくは多孔質固定相担体の温度および前記移動相溶液の収容位置を含む座標位置の中から選択された少なくとも1の物質条件、および処理内容に基づいて制御する制御部をさらに有するクロマトグラフィー処理装置である。
前記液収容部には、少なくともサンプルを収容するサンプル収容部、蛍光物質、金コロイド等の標識化物質の溶液を収容する液収容部、またはこれらを多孔質固定相担体に対して移動させる移動相溶媒や展開液を収容する移動相溶媒(展開液)収容部、これらを混合した移動相溶液を収容する移動相溶液収容部、および、洗浄液が収容されている液収容部等を有している。
第6の発明は、前記クロマトグラフィー処理用チップに封入された前記多孔質固定相担体の前記検査用物質固定面での光学的状態を光学的に測定する測定部を有するクロマトグラフィー処理装置である。
前提として、前記多孔質固定相担体は、前記検査用物質固定面の光学的状態が前記分注チップの側面の外部から測定可能となるように封入されている。
第7の発明は、前記検査用物質固定面での光学的状態を、該検査用物質固定面に固定された検査用物質に結合した目的物質を標識化した蛍光物質または化学発光物質の発光強度とするクロマトグラフィー処理装置である。
蛍光物質による標識化は、例えば、目的物質のアミノ基、SH基、アルデヒド基、カルボキシル基、水酸基等に化学結合可能な蛍光物質や、化学発光性の化合物、例えば、アクリジニウムエステル誘導体等を用いて抗体または抗原を直接標識化するような場合がある。
第8の発明は、前記測定部は、前記クロマトグラフィー処理用チップに対応して設けられ、1の前記各検査用物質固定面に近接可能に設けられた測定端を有し、前記各検査用物質固定面での結合により生じ得る光学的状態に基づいて得られる光を接続端にまで導光可能に設けられた複数本の導光路と、複数本の前記導光路の前記測定端が、前記各クロマトグラフィー処理用チップの対応する各検査用物質固定面の所定測定位置に所定走査周期で一斉に到達するように前記各検査用物質固定面に対して相対的に移動可能に設けられた測定用ヘッドと、前記測定用ヘッドによって前記各測定端が前記所定測定位置にまで移動しまたはその位置に停止している間に、前記複数本の導光路を順次所定選択周期で選択し、選択された該導光路の接続端と光学的に接続して入射した光を出射可能とする導光領域を有する導光路選択部と、前記導光領域から出射された光を順次受光して光電変換する受光部と、該受光部から得られた画領域データを前記所定選択周期で変換して順次ディジタルデータを得るディジタルデータ変換部と、該ディジタルデータを順次格納する格納手段と、を有するクロマトグラフィー処理装置である。
ここで、「接触」には、密着、密接または連結を含む。
「受光部」とは、1もしくは複数または多数の受光素子を有するセンサをいう。高感度な受光素子の例としては、浜松ホトニクス製の APD(アバランシェ・フォトダイオード)アレイがある。受光素子の配列の密度が高い特別な場合として、例えば、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等の「撮像センサ」を含有する。例えば、ビットランBU-50LM (ICX415AL) 6.4×4.8mm で、772×580ピクセルである。受光部に属する受光素子によって得られた画領域データ(アナログ信号)を処理することによって、対応するディジタルデータが得られる。これらは集積回路(IC)で形成されている。「画領域データ」とは、前記受光部から、その受光素子の配列を考慮して得られたデータの集合であって、該受光部に 1個の受光素子のみがある場合には、画素データであり、複数または前述した個数程度(772×580ピクセル)のような多数の受光素子がある場合には画像データに相当する。
「受光素子」とは、光電効果を利用した電子素子であって、フォトダイオード、フォトトランジスタ等である。さらに、前記APDのような増倍効果を有するフォトンカウンティングセンサ、PMT等の場合も含む。
「所定測定位置」とは、前記各クロマトグラフィー処理用チップの検査用物質固定面に対応するように設けられ、前記測定端が該検査用物質固定面に関する測定を行う位置であって、少なくとも各検査用物質が固定された固定部位(または測定線)に近接または接触するように各固定部位ごとに少なくとも1または2以上設定されている。各固定部位は有限の大きさを持ち、測定端も有限の大きさを持ち、好ましくは、1の固定部位のみの全体を測定可能となるような大きさまたは形状または所定測定位置を持つことが好ましい。1の固定部位に対して該所定測定位置が複数設定されている場合には、各隣接する複数の固定部位間の相互の距離と同様に、隣接する所定測定位置間の相互の距離は等しく設定することが好ましい。例えば、固定部位が、1mmの間隔に設定されて一列状に配列されている場合に、所定測定位置を 0.1mmごとに設定するような場合である。この場合には、1の固定部位に対して、測定値が10個設定されていることになる。該所定測定位置の数が多い程、精密な測定を行うことができるが、測定に係る時間が延びることになる。
「所定走査周期(ts)」は、前記測定端が、同一のクロマトグラフィー処理用チップにおける隣接する所定測定位置間を移動しかつ測定が行われるための時間である。
一方、「所定選択周期」(tc)は、前記所定走査周期tsの間に前記複数の導光路の全てを選択することができるように、前記導光路選択部が各導光路を順次選択するための時間である。したがって、所定選択周期tcと所定走査周期tsとは相互に関連付けられており、最長したがって最善の所定選択周期tcは、前記所定走査周期tsおよび前記クロマトグラフィー処理用チップの個数nに基づいて、tc=ts/nにより定まることになる。すなわち、該所定選択周期は前記所定走査周期よりも短い時間となるので、該所定選択周期の間に受光部が受光した光を光電変換して必要な領域データを出力することができる程度の十分な長さを確保するためには、tcが最長の長さとなるように設定されることが好ましいからである。すると、各クロマトグラフィー処理用チップについて前記測定端が連続的に移動する場合には、前記測定端が次の前記所定測定位置にまで移動している間に全導光路が選択され、前記測定端が前記所定測定位置にまで間欠的に移動する場合には前記測定端が所定測定位置に停止している間に全導光路を選択されることが好ましい。
該所定走査周期および所定選択周期は、測定すべき光学的状態の内容、呈色、発光の種類(例えば、蛍光物質の種類、化学発光物質の種類)、呈色、発光で用いる試薬(試薬の種類、試薬の量も含む)、1のクロマトグラフィー処理用チップ当たりの測定位置の個数、発光の態様(例えば、瞬時発光、プラトー状の発光、発光の寿命、安定的受光可能時間等)、測定位置から次の測定位置までの移動態様(前記測定端が前記クロマトグラフィー処理用チップの検査用物質固定面を走査する場合、間欠動作、連続動作、走査速度、移動距離、移動時間、停止時間、移動経路等)、固定部位の大きさ、固定部位の配置若しくは検査用物質固定面内での個数等、クロマトグラフィー処理用チップの個数、導光部の大きさ、固定部位間の距離、受光部の特性、露光時間、および前記固定部位における反応時間等のグループの中から選択された1または2以上の要素からなる光測定態様に応じて定める。また、データの転送若しくはデータの読み出し時間(CCDを用いる場合)等を考慮することもある。例えば、蛍光の場合のように光の量が大きい場合には所定走査周期は短く、光の量が小さくなるに従って所定走査周期を長くする。
例えば、プラトー状の化学発光の場合には、該プラトーが維持される安定的受光可能時間(T)および固定部位数(m)(mは自然数)、固定部位当たりの所定測定位置の個数(受光回数)(ν)(νは自然数)、所定走査周期(ts)は、T/(m・ν)となり、この周期内に、各クロマトグラフィー処理用チップにおける所定測定位置から次の所定測定位置までの移動時間と、その所定測定位置での前記ディジタル変換のための時間等が含まれることになる。
すると、最長の「所定選択周期」(tc)としては、全ての導光路を1回ずつ選択するので、前記所定走査周期tsを、導光路の個数(n)で除したts/nとなり、該周期で各導光路を選択することになる。したがって、所定走査周期がts=T/(m・ν)の場合には、前記所定選択周期tcは、T/(m・ν・n)となり、該所定選択周期で全導光路が1回ずつ選択されることになる。したがって、各固定部位当たり、受光回数はν・n回ということになる。十分な受光時間が取れる場合には、各固定部位に対して複数回の選択が行われることが好ましい。
より具体的には、例えば、処理用ヘッドには、16本(=n)のクロマトグラフィー処理用チップがあり、1本のクロマトグラフィー処理用チップ当たり、縦方向に 50mm(=m)の検査用物質固定面がある場合に1個の各固定部位が上下方向に 1mmの間隔である場合に、各固定部位に対して 0.2mmごとの所定測定位置を 5個設定した場合(ν=5)に、連続的に走査を行うとともに、受光安定時間Tが 200秒であるとすると、前記所定走査周期tsは、ts=200/(50×5)=0.8秒となる。すると、前記所定選択周期tcは、tc=ts/16=50m秒ということになる。この時間は、前記受光部が、光を受光して光電変換が可能となる時間であることが必要になる。これによって、全体として 800mmの検査用物質固定面を、約 3分で一括して精密に光学的に測定することができることになる。
なお、前記「ディジタルデータ変換部」としては、例えば、CCDイメージセンサの場合には、ゲートコントロール可能なシフトレジスタ、アンプおよびAD変換器を有し、受光素子が受光した光の強度または輝度に応じた個数のフォトンを発生させるPMTフォトンカウンティングセンサや半導体を用いたフォトンカウンティングセンサの場合には、フォトン計数器としてのゲートコントロール可能なパルスカウンタを有し、受光素子アレイと同様にIC回路で形成される。これらは、後述する測定制御部からの指示によって前記光測定態様に基づいて得られた所定走査周期で動作する。
生成されたディジタルデータは、DRAM等の半導体記憶素子の格納手段に格納し、演算処理によって、前記受光部に対応する1または2以上の受光素子の画領域データを所定選択周期で変換したディジタルデータに基づき前記光学的状態の輝度の時間変化を導き出して解析する。「所定選択周期」は、例えば、該周期でパルス信号を発生させる駆動部またはCPU、プログラムおよびメモリを有する情報処理部に設けられた測定制御部の指示により出力されるパルス信号等の指示信号に基づいて設定される。
「受光部」は少なくとも1個の受光素子を有する。なお、少なくとも3個の受光素子を有する場合には、各受光素子ごとに、カラーフィルタ(RGB)を通して受光された光に基づいてカラー受光を可能にすることができる。なお受光素子の個数や種類は、該受光素子の大きさまたは感度、前記導光路の接続端に大きさや形状、接続時間の間隔、後述する出射端と受光面との間の間隔、出射端の形状または光学的状態の態様に依存する。
前記「ディジタルデータ」は、CPU等の情報処理装置によって処理可能な、例えば、数値を表すデータである。該データは、例えば、受光部に受光素子が多い場合には、圧縮や画領域データの間引き等によって格納手段に格納することも可能である。格納手段とは、データを記録するメモリであって、半導体メモリ、ハードディスク、CD、DVD、SSD、ブルーレイディスク等である。
「導光路」は、例えば、空洞、レンズ等の光学系要素、光ファイバ等を含有する。光ファイバとしては、例えば、外径500μmの可視光に対応可能なプラスチック製光ファイバである。光ファイバには、複数の光ファイバを束にした光ファイバ束をも含有する。導光路の少なくともその一部は可撓性をもつことが好ましい。
光学的状態が「蛍光」である場合には、前記固定部位に励起光を照射するための導光路であって、前記処理用ヘッドに設けられた1の前記クロマトグラフィー処理用チップに近接もしくは接触しまたは近接可能もしくは接触可能に設けられた照射端、および前記励起光光源の光源面に近接もしくは接触するように設けられた接続端を有する第2の導光路を有することが好ましい。また、光学的状態が「呈色」である場合には、前記各固定部位に可視光を照射するための導光路であって、前記処理用ヘッドの1の前記クロマトグラフィー処理用チップに近接もしくは接触しまたは近接可能もしくは接触可能に設けられた照射端、および前記可視光光源の光源面に近接もしくは接触するように設けられた接続端を有する第3の導光路を有することが好ましい。これらの場合には、前記測定端は該照射端と先端を揃えて束ねられて測定端として取り扱われることが好ましい。
「受光面」とは、前記受光素子の受光部分が配列されて形成される面であり、撮像センサの場合には緻密でADPアレイの場合には粗い。なお、格納されたディジタルデータはCPU等からなる情報処理部の解析手段によって読み出されて演算解析されて、目的化学物質の検査が行われることになる。
なお、前記導光路選択部は、選択した前記導光路以外の選択されていない導光路からの光を吸収可能とする吸光領域をさらに有し、前記導光領域が前記選択された導光路の接続端と光学的に接続した際に、該吸光領域は、選択されていない前記導光路の各接続端と光学的に接続するように設けられるのが好ましい。
ここで、該「吸光領域」とは、前記導光路からの光を吸収可能とすることで光の反射や散乱を防止しまたは軽減することができる領域である。該吸光領域は、前記導光領域が存在、貫通または交差しないように境界線または壁面で囲まれ、前記接続端と光学的に接続する平面部や開口部を除き外部から遮光性をもつように仕切られている領域であることが好ましい。例えば、黒色染料が塗布された前記接続端を包含する形状および面積を有する平面状領域、または前記接続端を包含する形状および面積を有する開口部をもち、前記接続端と逆方向に延びるように形成された窪み、凹部、溝、管若しくは空洞である。なお、前記接続端配列板の接続端以外の部分は遮光性をもつ遮光面が形成され、前記平面状領域および開口部は、前記接続端配列板の前記接続端および前記遮光面以外の部分と接続することはない。該窪み、凹部、溝、管もしくは空洞内の前記壁面は、金属や樹脂等の遮光性物質で形成され、さらに黒色染料が塗布され、または、炭化した綿のような黒色の繊維状物質が内部に収容されることが好ましい。
このように構成することによって、選択した導光路については、該接続端から出射する光を確実に前記受光部の受光面に導く一方、選択されなかった導光路については、単に遮光されるだけでなく、導光路からの光を吸収することで、光の反射や散乱に基づいて生ずる雑光の前記受光部への進入を確実に防止することができて信頼性が高い測定を行うことができる。
第9の発明は、前記処理用ヘッドには装着された分注チップ内に磁力を及ぼし除去することができる磁力機構および/または前記処理用ヘッドに装着された前記分注チップまたはクロマトグラフィー処理用チップの外側に対して接近しまたは接近可能に設けられ外部からの信号によって温度を昇降させる温度昇降体を設け、前記制御部によって制御されるクロマトグラフィー処理装置である。
第10の発明は、容器に挿入して液体の吸引および吐出が行われる口部を下端に有する細管および該細管と連通し吸引した液体を貯溜する貯溜部が下側に設けられた太管を有する透光性をもつ分注チップの太管内に、吸引された移動相溶液中の目的物質を吸着し、捕獲し、分離し、または結合することを可能とする検査用物質が所定領域に所定量固定された検査用物質固定面が設けられた多孔質固定相担体を封入したクロマトグラフィー処理用チップに対して液体の吸引吐出を可能とする吸引吐出機構が設けられた処理用ヘッドに装着し、前記吸引吐出機構の吸引若しくは吐出の量、時間または位置を、前記処理用ヘッドに装着される前記クロマトグラフィー処理用チップの構造、前記移動相溶液中に存在する物質の種類、濃度、該移動相溶液の量、該移動相溶液もしくは多孔質固定相担体の温度および前記移動相溶液の収容位置を含む座標位置の中から選択された少なくとも1からなる物質条件、および処理内容に基づいて制御することによって、該クロマトグラフィー処理用チップを、少なくとも移動相溶液が収容されている液収容部にまで相対的に移動し、かつ、前記多孔質固定相担体と、少なくとも前記移動相溶液とを接触させてクロマトグラフィーの処理を実行するクロマトグラフィー処理方法である。なお、前記移動相溶液は、前記クロマトグラフィー処理工程の前に、該移動相溶液に含有される目的化学物質等の標識化が行われる。したがって、予め、前記多孔質固定相担体に前記移動相溶液中の目的化学物質と結合可能なように標識化物質を用意しておく必要がない。
第11の発明は、前記クロマトグラフィー処理方法の前記実行工程は、前記吸引吐出機構によって該移動相溶液を前記クロマトグラフィー処理用チップの前記貯溜部の所定位置にまで吸引して前記多孔質固定相担体の下端に一定液量を接触させて前記移動相溶液を前記検査用物質固定面に沿って移動させ、該移動相溶液の残液を該クロマトグラフィー処理用チップから吐出し、前記クロマトグラフィー処理用チップを、移動手段によって展開液および/または洗浄液が収容されている液収容部にまで移動し、前記吸引吐出機構によって該展開液および/または洗浄液を貯溜部にまで吸引して前記多孔質固定相担体の下端に一定液量を接触させて前記展開液および/または洗浄液を接触前記検査用物質固定面に沿って移動させるクロマトグラフィー処理方法である。
ここで、「展開液」または移動相溶媒を前記多孔質固定相担体に接触させることによって、移動相溶液をさらに前記固定領域全域を通過させる程度に移動させることを可能にして、該移動相溶液内の目的物質を確実に前記検査用物質と結合させることを可能にして、定量性の高い処理を行うことができることになる。同様にして、「洗浄液」を前記多孔質固定相担体と接触させることによって、前記検査用物質に未結合の標識化物質を、前記固定領域から排除することができて、定量性の高い測定を行うことができることになる。
第12の発明は、前記クロマトグラフィー処理実行工程の後、前記クロマトグラフィー処理用チップ内部に封入された多孔質固定相担体の前記検査用物質固定面を光学的に測定するクロマトグラフィー処理方法である。
前提として、前記多孔質固定相担体は、前記検査用物質固定面の光学的状態が前記分注チップの側面の外部から測定可能となるように封入されている。
第13の発明は、前記検査用物質固定面での光学的状態は、蛍光物質または化学発光物質で標識化された目的物質の内、該検査用物質固定面に固定された検査用物質に結合した目的物質を標識化した蛍光物質または化学発光物質の発光強度であるクロマトグラフィー処理方法である。
本発明によれば、クロマトグラフィー処理において、発光の測定を可能にすることによって、精密で、定量的な測定を可能にする。
第14の発明は、前記測定工程は、前記各クロマトグラフィー処理用チップでの反応によって生ずる光学的状態に基づく光を、各クロマトグラフィー処理用チップに対応して設けられた複数本の導光路の各測定端を、前記多孔質固定相担体の検査用物質固定面に対して相対的に移動して、前記各検査用物質固定面の対応する所定測定位置に所定走査周期で一斉に到達させる走査工程と、前記測定端が前記各クロマトグラフィー処理用チップにおける前記検出用物質固定面の前記測定位置に移動しまたはその位置に停止している間に、前記複数本の導光路の全てを前記所定選択周期で順次選択し、選択された該導光路の前記接続端からの光を受光部の受光面に出射可能とする導光路選択工程と、前記選択された導光路から出射された光を順次受光部が受光して光電変換する受光工程と、該受光部から得られる画領域データを前記所定選択周期で順次ディジタルデータに変換して順次格納するディジタルデータ変換工程とを有するクロマトグラフィー処理方法である。
第15の発明は、磁力機構によって前記処理用ヘッドには装着された分注チップ内に磁力を及ぼし除去する工程、または、前記処理用ヘッドに装着された前記分注チップまたはクロマトグラフィー処理用チップの外側に対して外部からの信号によって温度を昇降させる温度昇降体を接近させる工程をさらに有するクロマトグラフィー処理方法である。
第1の発明および第5の発明および第10の発明によると、分注チップ内に多孔質固定相担体を封入することによって、該多孔質固定相担体に対して、移動相溶媒を吸引吐出機構によって分注チップ内で接触可能とすることによって、ユーザの負担を軽減してユーザによる固定相または移動相への接触事故によるクロスコンタミネーションを防止して、信頼性の高い処理を行うことができる。
さらに、複数の処理を併行して同時に行うことを可能にして、効率性の高い処理を行うことができる。したがって、処理時間を短縮化して迅速に処理を行うことができる。
本発明によれば、クロマトグラフィー処理用チップの処理用ヘッドへの装着からクロマトグラフィー処理および測定までを、ユーザが分注チップ自体にも触れることなく一貫して自動的に行うことを可能にし、したがって、信頼性の高い処理を行うことができる。
第2の発明によれば、前記検査用物質固定面を吸引吐出方向に平行に配置することによって、該検査用物質固定面によって吸引吐出が妨げられることがなく、分注チップの側面を通して外部から該検査用物質固定面で生ずる光学的状態を確実に測定することができる。
第3の発明によれば、多孔質固定相担体を封入部を用いて分注チップ内に封入することによって、薄膜状または可撓性のある薄板状の多孔質固定相担体であっても確実に分注チップ内に封入することができる。
第4の発明によれば、移動相溶媒を、移動相貯溜線に達するような所定量を吸引することが容易に設定することができて、信頼性の高い、また、定量性の高い処理を行うことができることになる。
第6の発明または第12の発明によれば、分注チップ内に多孔質固定相担体を封入し、吸引吐出機構によって定まった量の移動相溶媒を前記固定相担体に供給することができるので、該移動相溶媒中の目的物質を標識化し、所定の洗浄処理等を施すことによって前記検査用物質固定面の呈色等の光学的状態を測定することによって、定性的な測定結果のみならず、その定量的な測定結果をも得ることができる。これによって、液収容部の個数や作業面積、処理手順を削減することができる。
第7の発明または第13の発明によれば、クロマトグラフィー処理用チップ内で蛍光物質または化学発光物質で標識化された目的物質が前記検査用物質と結合可能とすることで、光学的状態として、発光強度を測定することによって、精密で信頼性の高い測定を行うことができるので定性的な測定を越えて、定量的な測定を行うことができる。
第8の発明または第14の発明によれば、複数のクロマトグラフィー処理用チップに対して、各クロマトグラフィー処理用チップごとに対応して設けられた導光路を順次選択して、各クロマトグラフィー処理用チップで生じた光学的状態に基づく光を1の受光部に導いて導光させ受光することで、多数のクロマトグラフィー処理用チップで一斉に行われる反応を1の受光部を用いてディジタルデータに変換して解析可能としている。したがって、複数のクロマトグラフィー処理用チップごとの光学的状態の空間的及び時間的な変化を1の受光部で受光することで時間的空間的に集積化して測定することができるので、装置規模の拡大を抑制するだけでなく、信頼性の高い処理を、迅速かつ効率良く行うことができる。
各クロマトグラフィー処理用チップ内での固定部位間の移動または走査とともに、クロマトグラフィー処理用チップ間での切り替えを行うことで、1の受光部で受光することで、高額な受光部の個数を削減して安価な装置を提供することができる。
各クロマトグラフィー処理用チップ間を独立かつ並行して処理や測定を行うことができるので、全体の固定部位をまとめて取り扱う場合に比較して、クロマトグラフィー処理用チップ間を物理的に離し、または各クロマトグラフィー処理用チップ間を遮光することによって、隣接するクロマトグラフィー処理用チップ間の光学的影響を排除してより信頼性の高い処理を行うとともに、同時並行処理によって効率的かつ迅速に処理を行うことができる。
多数の固定部位全体を、各クロマトグラフィー処理用チップに区分し、各クロマトグラフィー処理用チップに属する対応する前記固定部位に対し所定測定位置を設定し、所定走査周期で測定端を移動させるとともに、該所定走査周期と関連付けた所定選択周期で、該クロマトグラフィー処理用チップに対応する導光路を順次切り替えて1の受光部と光学的に接続するようにしているので、多数の固定部位の測定であるにも拘わらず、走査からディジタルデータの変換までが1の受光部を用いて整然と行われることになる。したがって、クロマトグラフィー処理用チップ数や固定部位数の変更についても、前記所定走査周期と所定選択周期を変更することで容易に対処することができて、柔軟性及び汎用性が高い。
第9の発明または第15の発明によれば、分注チップ内を前記温度昇降体を接近させることで温度制御を行うことで前記移動相溶媒内の目的物質と多孔質固定相担体に固定された検査用物質との間の反応を促進することができるので、反応時間を短縮し、効率の高い処理を行うことができることになる。また、磁力機構を設けることによって、磁性粒子を用いた、サンプルからの目的物質の分離を行うことで、抽出から測定までを1の装置で一貫して処理することができるので効率性が高い。
第11の発明によれば、展開液および/または洗浄液を前記多孔質固定相担体に自動的かつ容易に接触可能とすることによって、移動相溶液内の目的物質を確実に前記検査用物質にまで移動させて結合させることができるとともに、前記検査用物質に未結合の標識化物質を、前記固定領域から排除することができて、精密で定量性の高い測定を行うことができることになる。
続いて、本発明の第1の実施の形態に係るクロマトグラフィー処理装置10について、図1乃至図7に基づいて説明する。
図1は、該クロマトグラフィー処理装置10を示すブロック図である。
該クロマトグラフィー処理装置10は、大きくは、被検者から採取した血清、血漿、全血、便、尿等のサンプル、金コロイド、プラチナ=金コロイド、蛍光物質、化学発光物質等の標識化物質、溶媒や洗浄液や展開液としての生理的食塩水、バッファ液等の各種の溶液や、各種分注チップ41〜4nおよびクロマトグラフィー処理用チップ81〜8nが収容された複数の収容部3a〜3cがY軸方向に沿ってステージ上にn列分配列された収容部群31〜3nを有する容器群3と、該容器群3に対して水平方向、例えば、Y軸方向に沿って相対的に移動可能に設けられ、吸引吐出機構43によって液体の吸引吐出が可能な複数個(この例ではn個)の透光性を有する分注チップ41〜4nがX軸方向に配列されるように装着されて前記各収容部に先端の口部が挿入可能に設けられた処理用ヘッド7および該処理用ヘッド7と前記容器群3との間を少なくともY軸方向に沿って相対的に移動可能とする処理用ヘッド移動機構52と、該クロマトグラフィー処理用チップ81〜8nの太管内に封入されて、吸引された移動相溶媒中の目的物質を吸着し、捕獲し、分離し、または結合することを可能とする例えばニトロセルロースメンブレン等で形成された多孔質固定相担体21〜2nと、各種制御のための情報処理を行ういわゆる情報処理部としてのCPU+プログラム+メモリ9と、該CPU+プログラム+メモリ9に対するユーザの指示等の操作を行う操作パネル14と、を有する。
前記処理用ヘッド7には、前記処理用ヘッド7に設けられ装着された前記クロマトグラフィー処理用チップ81〜8nに封入された前記多孔質固定相担体21〜2nを光学的に測定する測定部6またはその一部を有する。該測定部6としては、1の測定端、該測定端と光学的に接続された1のPMT等の受光素子を有する測定器、および、X軸方向及びZ軸方向またはX軸方向のみに前記測定器を移動させて配列された各クロマトグラフィー処理用チップ81〜8nに順次近接可能に設ける測定器移動機構とを有するものである(第1の実施例)。または、他の例としては、複数の測定端を前記クロマトグラフィー処理用チップ81〜8nごとに設けた測定端支持体と、該測定端支持体をZ軸方向の移動により、接近または離間可能とし、かつ封入された前記多孔質固定相担体に対し一斉に順次近接するように前記測定端をZ軸方向に移動可能とする測定端移動機構とを有するものである(第2の実施例)。さらには、各クロマトグラフィー処理用チップ81〜8nごとに、測定端のみならず、PMT等の受光部を設けるものが考えられる。
前記処理用ヘッド7は、前述したように、前記分注チップ41〜4nおよびクロマトグラフィー処理用チップ81〜8nに対して、液体の吸引吐出を行う吸引吐出機構43を有し、該分注チップおよびクロマトグラフィー処理用チップは、X軸方向に沿って、前記容器群3の配列に応じた間隔で分注チップ支持部材45に配列かつ支持される。該分注チップ支持部材45には、例えば、前記吸引吐出機構43と連通する各ノズルが配列され、前記分注チップ41〜4nおよび前記クロマトグラフィー処理用チップ81〜8nは、そのノズルの下端部に装着されて支持されることになる。なお、吸引吐出機構には、前記ノズルから分注チップおよび前記クロマトグラフィー処理用チップを脱着する脱着機構(42、図5参照)を含有している。
また、他の例として、前記分注チップに対して変形式分注チップおよび変形式クロマトグラフィー処理用チップを用いる場合には、液体の吸引吐出を行うために変形式分注チップおよび変形式クロマトグラフィー処理用チップの変形要素、変形壁を変形させるための上下動可能なロッドやアームを可動させるモータ等からなる可動機構を有することになる。この場合には、前記変形式分注チップや変形式クロマトグラフィー処理用チップはこれらの指示部材に脱着可能に装着されることになる。
さらに、該処理用ヘッド7には、前記分注チップ41〜4nまたはクロマトグラフィー処理用チップ81〜8nが支持された分注チップ支持部材45を一斉にZ軸方向に移動させる分注チップZ軸移動機構53と、前記分注チップ41〜4n内に吸引された液体、または前記クロマトグラフィー処理用チップ81〜8nに封入された多孔質固定相担体21〜2nの温度制御を行うための、温度昇降体48、該温度昇降体48を前記各クロマトグラフィー処理用チップ81〜8nに近接しまたは接触させるために該温度昇降体48を前進させまたは後退させるための昇降体進退駆動機構48b、および温度昇降体48の温度の上昇および下降を制御するための温度制御器48aと、前記分注チップ41〜4n内に磁力を印加するための磁力機構44とを有する。前記処理用ヘッド移動機構52と該分注チップZ軸移動機構53とは、分注チップ41〜4nおよびクロマトグラフィー処理用チップ81〜8nの移動手段5を構成する。
前記CPU+プログラム+メモリ9には、前記温度制御器48a、昇降体進退駆動機構48b、吸引吐出機構43(脱着機構42も含む)、前記移動手段5、磁力機構44に対して抽出または反応の指示を行う抽出・反応制御部91と、前記測定部6、前記移動手段5、格納手段93、及び解析手段94に対して測定の指示を行う測定制御部92、前記測定部からのデータを格納する格納手段93と、該格納手段93に格納されているディジタルデータに基づいて演算により前記測定の解析を行う解析手段94とを有する。
続いて、図2乃至図8に基づいて、図1で説明した本発明の実施の形態に係るクロマトグラフィー処理装置10について、測定部6をより具体化したクロマトグラフィー処理装置100について説明する。
該クロマトグラフィー処理装置100にあっては、前記測定部6は、前記分注チップ支持部材45と連結した測定器支持体6bと、該測定器支持体6bにスライド可能に支持された測定器6aと、前記測定器支持体6bにスライド可能に支持された前記測定器6aの測定端をX軸方向に沿って各クロマトグラフィー処理用チップ81〜8nに近接可能に移動させる測定器移動機構6cとを有している。前記クロマトグラフィー処理用チップ81〜8nの前記多孔質固定相担体の検査用物質固定面で生じる光学的状態の状態に応じて、前記測定端は単なる受光端のみか照射端を含有するか、照射端が照射すべき光の種類が定まる。すなわち、光学的状態が呈色である場合には、所定の可視光が照射され、蛍光による発光の場合には、該当する励起光が照射されることになる。また、化学発光の場合には、受光端のみということになる。
続いて、図3乃至図8に基づいて、図2で説明した第1の実施例に係るクロマトグラフィー処理装置100をより具体化したクロマトグラフィー処理装置101,102について説明する。
図3は、クロマトグラフィー処理装置101の外観を示すものである。
該装置101は、筐体11内に組み込まれている。該筐体11は、前記装置101の主要部である処理用ヘッド71および容器群31が組み込まれている本体部12と、上側に開閉可能に設けられた蓋体13とを有し、符号14は操作パネルとしての本体と無線で接続されたタッチパネル式タブレットを示す。符号814は、前記処理用ヘッド71に装着されたクロマトグラフィー処理用チップを示す。
図4は、該クロマトグラフィー処理装置101のクロマトグラフィー処理用チップ81を詳細に示すものである。
図4に示すように、該クロマトグラフィー処理用チップ81は、分注チップ41内に多孔質固定相担体21が封入されたものである。分注チップ41は、先細りの円筒状の細管41aと、該細管41aと移行部41eを介して連通する太管41bと、前記細管41aの先端に設けられ容器内に挿入可能であって液体の吸引吐出が行われる口部41fと、前記太管41bの上側の前記太管41bよりも太く形成された円筒状の装着用管41hに設けられ気体の吸引吐出を行う吸引吐出機構と連通するノズル(43a、図6参照)に装着可能な装着用開口部41cと、該装着用開口部41cが設けられた太管41bの上側の装着用管41hの外側面の外周に沿って設けられた複数本の上下方向に延びる突条41dと、細管41aと太管41bとの間に設けられた角錐状の移行部41eとを有する。
前記太管41bの上側の装着用管41hを除く部分は、薄型の角柱状に形成され、内部に前記多孔質固定相担体21が封入されている。これによって、太管41b内に封入された前記多孔質固定相担体21の検査用物質固定面21aが前記太管41bの外部から、レンズ効果に基づく歪みなしに確実に測定することができることになる。
該多孔質固定相担体21の下端は、該太管41bの下側に設けられた貯溜部41g内に挿入され、該貯溜部41g内に吸引された液体との接触が可能である。前記検査用物質固定面21aには、前記貯溜部41g内に吸引すべき液体のレベルを示す移動相貯溜線21b、ポジティブコントロール線21d、およびネガティブコントロール線21eが、下側から上側に向かってこの順序で、各々水平方向に引かれている。さらに、前記移動相貯溜線21bと、前記ポジティブコントロール線21dとの間には、予め間隔を開けて設定された複数の固定部位のいずれかに検査用物質が固定されている1または2以上(この例では 3)個の固定部位21cが水平方向に引かれている。前記多孔質固定相担体21の上側は吸収パッド21fと接触または接続されており、該吸収パッド21fの上側は気体のみが通過可能なフィルタ21gが設けられている。また、該多孔質固定相担体21の全体は、封入部としての前記移行部41eの斜面に下側で支持され、上側で前記太管41bと前記装着用管41hとの間の斜面に支えられた薄板状プラスチック板21hに張り付けられて支持されている。
図5は、図3に示すクロマトグラフィー処理装置101を筐体11から取り出して、より詳細に示すものである。
該クロマトグラフィー処理装置101は、大きくは、Y軸方向に沿って延びるように一列状に配列された複数の収容部がX軸方向に複数列(この例では4列)配列されたカートリッジ容器311〜314からなる容器群31と、該容器群31に対して水平方向、例えばY軸方向に沿って相対的に移動可能に設けられ、吸引吐出機構431によって液体の吸引吐出が可能な複数個(この例では 4個)の透光性を有する分注チップ411〜414またはクロマトグラフィー処理用チップ811〜814がX軸方向に配列されるように前記吸引吐出機構431のノズル43aに各々装着されて前記各収容部に先端の口部が挿入可能に設けられた処理用ヘッド71と、該処理用ヘッド71と前記容器群31との間を少なくともY軸方向に沿って相対的に移動可能とする処理用ヘッド移動機構52としてタイミングベルトおよびプーリ等の機構と、前記クロマトグラフィー処理用チップ811〜814の太管41b内に封入されて、吸引された移動相溶液中の目的物質を吸着し、捕獲し、分離し、または結合することを可能にするニトロセルロースメンブレン等で形成された多孔質固定相担体211〜214と、前記処理用ヘッド71に設けられ、前記処理用ヘッド71に装着された前記クロマトグラフィー処理用チップ811〜814に封入された多孔質固定相担体211〜214を光学的に測定する測定部61と、を有する。
前記容器群31の各カートリッジ容器311〜314には、図6に併せて示すように、被検者が発病した感染症の細菌またはウィルスを特定するために、被検者から採取した血清、血漿、全血、体液等のサンプルを収容するサンプル収容部31g(第1の液収容部、順番は液収容部群31bにおけるもの)、細菌等を採取するために用いる磁性粒子懸濁液収容部(第2の液収容部)、細菌や細胞を破砕するためのタンパク質変性酵素溶液(Lysis 1)を40μL収容する収容部(第3の液収容部)、タンパク質分解酵素溶液(Lysis 2)を200μL収容する収容部(第4の液収容部)、分離抽出液(結合バッファ液、NaCl、SDS、isopropanol)を500μL収容する収容部(第5の液収容部、第6の液収容部)、洗浄液(水、isopropanol)を700μL収容する収容部(第7の液収容部、第8の液収容部)、解離液(第10の液収容部)、温度制御可能な反応容器31f(第9の液収容部)、および移動相溶媒(展開液、洗浄液)を計10mL収容部する収容部(第11の液収容部、第12の液収容部)、PCR用溶液収容部(第13の液収容部)からなる液収容部群31bと、前記クロマトグラフィー処理用チップ811〜814、分注チップ411〜414、穿孔用チップ46が、各チップの装着用開口部が上側に来るように収容されまたは収容可能なチップ収容部群31aと、抽出した核酸を増幅するPCR用反応容器31cと、温度制御可能なPCR容器31cの開口部を密閉する密閉蓋を収容する蓋収容部31eと、隣接するカートリッジ容器311〜314との間の飛沫によるクロスコンタミネーションを防止するための隔壁31dとを各々有するY軸方向に直列状に延びる各カートリッジ容器311〜314をX軸方向に平行に複数列(この例では 4列)配列した容器群31をステージ上又は本体部12に有している。
前記処理用ヘッド71の前記吸引吐出機構431は、内部をプランジャが摺動可能に設けられたシリンダ43bと、シリンダ43bの下端に設けられ前記分注チップ411〜414およびクロマトグラフィー処理用チップ811〜814の装着用開口部が装着可能なノズル43aと、前記ノズル43aよりも大きな内径を有するが前記分注チップ411〜414およびクロマトグラフィー処理用チップ811〜814の前記太管41bの上側の装着用管41hの外径よりも小さな内径を有する切欠き部42aおよび切欠き部42aが設けられた脱着部材42bを有する脱着機構42と、前記シリンダ43bおよび該シリンダ43b内を摺動するプランジャを往復運動させるシリンダ駆動機構を支持する分注チップ支持部材451と、該分注チップ支持部材451をZ軸方向に沿って移動可能とする分注チップZ軸駆動機構531とを有する。
前記脱着部材42bは、前記シリンダ駆動機構によって、プランジャの吸引吐出範囲を超える範囲にまでプランジャを押し下げる際に前記脱着部材42bの上端も該シリンダ駆動機構によって押し下げられることによって前記ノズル43aから分注チップ411〜414またはクロマトグラフィー処理用チップ811〜814を脱着させる。
前記処理用ヘッド71には、さらに測定部61が前記チップ支持部材451に支持されている前記処理用ヘッド71に装着されたクロマトグラフィー処理用チップ811〜814内に封入された前記多孔質固定相担体211〜214の検出用物質固定面21aの法線がY軸方向に向くように装着される。該測定部61は、前記各クロマトグラフィー処理用チップ811〜814の該検出用物質固定面21aで生じた光学的状態を受光する受光端および前記検出用物質固定面21aに照射用光を照射する照射端からなる測定端61aと、該測定端61aを支持するとともに照射端に照射用光を導光し、受光端からの光を受光部に導光する導光路が内部に設けられた測定器支持体6bとしての測定端支持用アーム61bと、該測定端支持用アーム61bをX軸方向に沿ってスライドさせる測定器移動機構6cとしてのスライド機構61cとを有する。ここで、「照射用光」とは、例えば、前記光学的状態が蛍光の場合には、励起光であり、光学的状態が呈色の場合には、可視光である。
さらに、前記処理用ヘッド71には、前記ノズルに装着された分注チップ411〜414内に磁力を及ぼすための磁力機構44が設けられている。該磁力機構44は、例えば、前記分注チップ411〜414の配列に応じた間隔で配列されたn個(この例では 4個)の永久磁石441と、該n個の永久磁石を支持する磁石配列部材442と、該磁石配列部材442を、X軸方向に沿い前記分注チップに対して進退動作を行うためのY軸方向に沿って設けられ、一端が前記磁石配列部材に軸支され他端がボール螺子軸支板に軸支されたボール螺子、該ボール螺子と螺合するナット部を回転駆動するモータが内蔵され、前記処理用ヘッド71に支持されて、該ボール螺子をY軸方向に沿って前後方向に移動させるアクチュエータ443とを少なくとも有する(図7参照)。また、該処理用ヘッド71には、前記分注チップ41〜4n内に吸引された液体、または前記クロマトグラフィー処理用チップ81〜8nに封入された多孔質固定相担体21〜2nの温度制御を行うための、温度昇降体481、該温度昇降体481を前記各クロマトグラフィー処理用チップ81〜8n等に近接しまたは接触させるために該温度昇降体481を前進させまたは後退させるための昇降体進退駆動機構,および温度昇降体481の温度の上昇および下降を制御するための温度制御器とを有する(図8参照)。
続いて、図6乃至図8に基づいて、該クロマトグラフィー処理装置101の動作について説明する。ここでは、被検者の検体中から所定の感染症の原因となる細菌が存在するか否かの検査を行う。ステップS1〜ステップS9は核酸抽出工程に相当する。
ステップS1で、前記操作パネル14のタッチパネル等の操作により、感染症の検査処理の開始を指示する。
ステップS2で、該クロマトグラフィー処理装置101のCPU+プログラム+メモリ9に設けられた抽出・反応制御部91は、前記処理用ヘッド移動機構52に指示して、前記処理用ヘッド71をY軸方向に沿って移動して、該カートリッジ容器311〜314のチップ収容部群31aに収容された穿孔用チップ46の上方に位置した後前記分注チップZ軸移動機構531を駆動して前記ノズル43aを下降させて、穿孔用チップ46を装着させて上昇し、前記容器群31の液収容部群31bの第2の液収容部の上方にまで前記処理用ヘッド移動機構52によって前記穿孔用チップ46を位置させ、前記分注チップZ軸移動機構53によって下降させることで該液収容部の開口部を被覆するフィルムを穿孔し、同様にして、前記処理用ヘッド71をY軸方向に移動させて該液収容部31bの他の液収容部および反応容器についても順次穿孔する。
ステップS3で、前記穿孔用チップ46を元のチップ収容部31a内に前記脱着部材42を用いて脱着した後、該処理用ヘッド71をY軸方向に沿って、前記分注チップ411〜414が収容されているチップ収容部群31aにまで移動させ、前記分注チップZ軸移動機構531によってノズル43aを下降させることによって分注チップ411〜414を該ノズル43aを介して処理用ヘッド71に装着する。次に、前記分注チップZ軸移動機構531によって上昇させた後、該分注チップ411〜414を前記処理用ヘッド移動機構52によってY軸に沿って移動させて、親検体が収容されているサンプル収容部31g(第1の液収容部)にまで移動した後、分注チップZ軸移動機構531を用いて、各分注チップ411〜414の口部を下降挿入させて、前記吸引吐出機構431によってプランジャを上昇および下降させることで該サンプル収容部31g に収容されているサンプル液について、吸引吐出を繰り返すことで該サンプルを液中に懸濁させた後、該サンプル液を分注チップ411〜414内に吸引する。該サンプル液は、分注チップ411〜414内に吸引された状態で前記処理用ヘッド71によってY軸方向に沿って移動し、分離抽出液としての Lysis 1 (酵素)が収容されている第3の液収容部31bにまで移動させて、穿孔されたフィルムの孔を通して前記分注チップ411〜414の細管41aを挿入してサンプル液と前記 Lysis 1とを撹拌するための吸引吐出を繰り返す。
ステップS4で、撹拌した該液の全量を、前記分注チップ411〜414によって吸引し、前記恒温制御器48cによって55℃に設定された収容孔に保持された反応用チューブからなる反応容器31f(第9の液収容部)に収容してインキュベーションを行う。これによって、前記サンプルに含まれるタンパク質を変性する。所定時間経過後、該反応液を前記反応容器31fに残したまま、前記分注チップ411〜414を前記処理用ヘッド移動機構52によって前記カートリッジ容器311〜314の第4の液収容部にまで移動し、前記分注チップZ軸移動機構531および吸引吐出機構431を用いて該第4の液収容部内に収容されている Lysis 2の全量を吸引し、前記処理用ヘッド移動機構52によって前記分注チップ411〜414を用いて移送し、前記第5の液収容部内に前記フィルムの孔を貫通して前記細管41aを挿入して前記液を吐出し、タンパク質を低分子化する。
ステップS5で、前記第5の液収容部内に収容されている分離抽出液としての結合バッファ液と、前記反応溶液とを撹拌して、可溶化したタンパク質をさらに脱水させ、核酸またはその断片を溶液中に分散させる。
ステップS6で、前記分注チップ411〜414を用いて該第5の液収容部中にその細管を前記フィルムの孔を通して挿入し、全量を吸引して前記分注チップZ軸移動機構531によって該分注チップ411〜414を上昇させ、該反応容器を、第2の液収容部にまで移送し、該第2の液収容部内に収容されている磁性粒子懸濁液と前記反応溶液とを撹拌する。該磁性粒子懸濁液内に含まれる磁性粒子を被覆するシリカ等の表面に形成された水酸基にNa+イオンが結合するカチオン構造が形成されている。そのために負に帯電したDNAが磁性粒子に捕獲される。
ステップS7で、図7に示すように、前記分注チップ411〜414の細管に前記磁力機構44の磁石441を接近させることによって該分注チップ411〜414の細管41aの内壁に前記磁性粒子を吸着させる。該磁性粒子を該分注チップ411〜414の細管41aに吸着させた状態で、前記分注チップZ軸移動機構531により上昇させ、前記処理用ヘッド移動機構52を用いて前記分注チップ411〜414を該第4の液収容部から第5の液収容部にまで移動させ前記フィルムの孔を貫通して前記細管を挿入する。
前記磁力機構44の前記磁石441を該分注チップ411〜414の細管41aから離間させることによって前記細管内への磁力を除去した状態で、該第6の液収容部に収容されている洗浄液1(NaCl, SDS, isopropanol)について吸引吐出を繰り返すことにより前記磁性粒子を前記内壁から離脱させて洗浄液1中で撹拌することで洗浄する。その後、前記磁力機構44の磁石を再び前記分注チップ411〜414の細管41aに接近させることで前記磁性粒子を細管の内壁に吸着させた状態で、前記分注チップ411〜414を、該分注チップZ軸移動機構531により該第6の液収容部から第7の液収容部にまで前記処理用ヘッド移動機構52により移動させる。
ステップS8で、前記分注チップ411〜414の細管を分注チップZ軸移動機構531を用いて前記フィルムの孔を貫通して挿入する。前記磁力機構44の磁石を前記分注チップ411〜414の細管から離間させることで前記細管内への磁力を除去した状態で、該第7の液収容部に収容されている洗浄液2 (isopropanol) について吸引吐出を繰り返すことで、前記磁性粒子を液中で撹拌させNaClおよびSDSを除去し、洗浄する。その後、前記磁力機構44の磁石を再び前記分注チップ411〜414の細管に接近させることで前記磁性粒子を細管の内壁に吸着させた状態で、前記分注チップ411〜414を、前記分注チップZ軸移動機構531により上昇させた後、該第7の液収容部から、蒸留水が収容されている前記第8の液収容部に前記処理用ヘッド移動機構52によって移動させる。
ステップS9で、前記分注チップZ軸移動機構531によって、前記分注チップ411〜414の細管を前記孔を通って下降させ、前記磁力を前記分注チップ411〜414の細管41a内に及ぼした状態で、ゆっくりとした流速での前記蒸留水の吸引吐出を繰り返すことで、洗浄液2(isopropanol)を水と置き換えて除去する。その後、前記磁力機構44の磁石を前記分注チップ411〜414の細管から離間させて磁力を除去した状態で前記磁性粒子を第10の液収容部に収容されている前記解離液としての蒸留水中に吸引吐出を繰り返すことで撹拌して、前記磁性粒子が保持していた核酸またはその断片を磁性粒子から液中に解離(溶出)する。その後、前記分注チップ411〜414の細管41aに前記磁石441を接近させることで細管内に磁場を及ぼし磁性粒子を内壁に吸着させ、前記第10の液収容部内に前記抽出した核酸等を含有する溶液を残留させる。処理用ヘッド移動機構52により洗浄液3が保持されている第8の液収容部にまで移動し、磁場を除去した状態で、吸引吐出を繰り返すことで磁性粒子を再懸濁した状態で洗浄液3とともに吐出して該分注チップを洗浄する。
以下、ステップS10〜ステップS15は核酸増幅および測定工程に相当する。
ステップS10において、前記処理用ヘッド71を前記処理用ヘッド移動機構52によって移動させ、前記第10の液収容部内に収容された核酸等を含有する溶液を吸引して、予め増幅用溶液が収容された前記PCR用容器31cにまで移送して吐出して該容器内に導入する。該PCR用容器31cには予め、検出しようとする感染症の目的細菌または目的ウィルスの特徴的な塩基配列部分を増幅するための蛍光物質で標識化されたプライマーを含有しており、該目的細菌等が存在すれば、該塩基配列部分が増幅されることになる。前記処理用ヘッド移動機構52によって、前記チップ収容部31aにまで戻り、前記脱着部材42bにより装着された前記分注チップ411〜414を脱着し、再び、前記密閉蓋収容部31eの上方にまで、前記ノズル43aを移動させる。前記分注チップZ軸移動機構531を用いて下降させることによって前記密閉蓋の上側の窪みをノズル43aの下端に嵌合させることで装着する。該分注チップZ軸移動機構531によって、密閉蓋を下降させて該PCR用容器31cの広口管部の開口部と嵌合させて装着密閉する。
ステップS11において、PCR法に基づく温度制御を行うことによって抽出された核酸の増幅が完了すると、前記密閉蓋を前記穿孔用チップ46で穿孔し、前記測定制御部92の指示により、前記処理用ヘッド移動機構52を指示して、前記処理用ヘッド71を移動させて前記分注チップ411〜414を装着し、第11の液収容部の上方にまで位置させて、前記分注チップを下降させることによって、展開液、例えば、生理食塩水またはバッファ液等を例えば数100μL〜数mL吸引し、前記処理用ヘッド移動機構52によってY軸方向に該分注チップ411〜414を移動させることで前記PCR用容器31cにまで移送して前記PCR用容器31c内に収容されている増幅産物と展開液とを混合させる。
ステップS12において、前記処理用ヘッド移動機構52によって、前記分注チップ411〜414を前記チップ収容部31aの上方にまでY軸方向に移動し、前記脱着部材42bによって脱着させた後、Y軸方向に移動させて前記クロマトグラフィー処理用チップ811〜814の上方に位置し、前記分注チップZ軸移動機構531を下降させることで、前記ノズル43aに該クロマトグラフィー処理用チップ811〜814を装着させ、上昇後に前記分注チップZ軸移動機構531によって、該クロマトグラフィー処理用チップ811〜814を前記PCR用容器31cの上方にまで移動させる。前記分注チップZ軸移動機構531によって、該クロマトグラフィー処理用チップ811〜814を下降させて該PCR用容器31c内に挿入して、図6に示すように、前記溶液を吸引吐出機構431によって前記クロマトグラフィー処理用チップ811〜814の前記移動相貯溜線まで吸引し、所定時間経過後(例えば、数秒後)に吸引した残液を吐出して、前記多孔質固定相担体21へ接触する液量を一定量(例えば、数100μL)とする。該多孔質固定相担体21の検査用物質固定面21aには、検査用物質として、予め、検出をしようとする目的細菌またはウィルスの前記特徴部分の塩基配列と相補的な塩基配列が固定されている。
ステップS13で、前記クロマトグラフィー処理用チップ811〜814を前記分注チップZ軸移動機構531によって上昇させて、前記洗浄液(前記展開液と同じ)が収容されている第12の液収容部にまで移動し、該洗浄液を例えば、数100μL〜数mL吸引して前記多孔質固定相担体21と接触させて、前記検査用物質としての前記目的塩基配列とハイブリダイズされていない標識化された塩基配列を前記吸収パッドまで移動させる。その際、図8に示すように、前記温度昇降体481を前記クロマトグラフィー処理用チップ811〜814に接近させることで、温度制御を行い反応を促進することが好ましい。
ステップS14で、前記測定制御部92からの指示により、前記測定部61の測定器移動機構6cによって、前記分注チップ支持部材45に連結され前記測定端支持用アーム61bに可動に支持された測定端61aをX軸方向に移動させることで、順次クロマトグラフィー処理用チップ811〜814ごとに測定を行う。すなわち、前記測定部61の測定端61aから励起光を各クロマトグラフィー処理用チップ811〜814ごとに照射することで、目的細菌またはウィルスが存在する場合には、生じた蛍光を前記測定端に設けた受光端から順次受光して、その強度を測定することができる。すると、定量で所定濃度のサンプル液に対して、定量の核酸増幅液および展開液を用いて検査用物質が固定された位置における蛍光強度を測定かつ比較することによって、患者の治療経過を監視することができることになる。
続いて、図9乃至図11に基づいて、図2に示された第1の実施例に係る前記クロマトグラフィー処理装置100をより具体化した他の例に係るクロマトグラフィー処理装置102について説明する。
図9は、クロマトグラフィー処理装置102を筐体から取り出して、より詳細に示すものである。
該クロマトグラフィー処理装置102は、前記例に係るクロマトグラフィー処理装置101と異なり、Y軸方向に沿って延びるように一列状に配列された複数の収容部がX軸方向に複数列(この例では4列)配列されたカートリッジ容器321〜324からなる容器群32を有するものである。
本例に係るクロマトグラフィー処理装置102を、4種類の食品について、表示義務7項目(卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに)から選択された項目についての特定食物アレルゲン検出を行う場合について説明する。該容器群32の各カートリッジ容器321〜324には、図10にも併せて示すように、被検食品から抽出された食品抽出液が 100μL収容されたサンプル収容部32g(第1の液収容部、順番は液収容部群32bにおけるもの)と、金コロイド標識化抗体溶液を収容する液収容部(第2の液収容部)、展開液を収容する液収容部(第3の液収容部、第4の液収容部)、洗浄液を収容する液収容部(第5の液収容部)、空の液収容部(第6の液収容部)、および空の液収容部(第7の液収容部)を有する。
前記チップ収容部32aには、穿孔用チップ46、分注チップ411〜414、クロマトグラフィー処理用チップ821〜824が装着用開口部を上にして予め収容されている。該クロマトグラフィー処理用チップ821〜824には、多孔質固定相担体221〜224が封入されている。該多孔質固定相担体22は、検査用物質固定面22aを有し、該検査用物質固定面22aには、下側から移動相貯溜線22bと、測定によって表示される固定部位22cと、ポジティブコントロール線22dと、ネガティブコントロール線22eとを有している。
該固定部位22cとしては、所定の特定された高さ位置に、2種類のアレルゲンを捕獲できる抗体(例、抗小麦抗体、抗卵抗体)が水平直線状に間隔を開けて形成されている。
またネガティブコントロール線22eとしては、抗原や抗体が結合しないようにブロッキングされた部分であり、ポジティブコントロール線22dとしては、必ず呈色する部分である。
以下に4種類の食品について、選択された2項目についての特定食物アレルゲン検出を行う動作について説明する。
ステップS21で、前記処理用ヘッド71を前記処理用ヘッド移動機構52によってY軸方向に移動させて、分注チップ411〜414が収容されているチップ収容部32aの上方に位置させる。前記分注チップZ軸移動機構531により、該処理用ヘッド71に設けられたノズル43aを下降させることで、該分注チップ411〜414を装着し、再び上昇させて、前記分注チップの下端が前記チップ収容部32aの上方にまで来ると相対的にY軸方向に移動する。
ステップS22で、液収容部32bの内、前記サンプルとしての食品抽出液が収容されているサンプル収容部32g(第1の液収容部)の上方に位置させ、下降することで該分注チップ411〜414の先端を該液収容部に挿入して、前記吸引吐出機構431を用いて、該食品抽出液を吸引し、前記処理用ヘッド移動機構52によりY軸方向に移動させ前記第6の液収容部の上方に位置させ下降させて該第6の液収容部内にサンプルを吐出する。続いて、前記処理ヘッド移動機構52によって該分注チップ411〜414を前記金コロイド標識化抗体溶液が収容されている第2の液収容部にまで移動し、下降させて該標識化抗体を吸引して前記第6の液収容部内に吐出するとともに、吸引吐出を繰り返して、前記サンプル中のアレルゲンと該金コロイド標識化抗体とを反応させる。前記分注チップ411〜414を第3の液収容部にまで移動し、第3の液収容部に収容されている展開液を所定量吸引して該第7の液収容部にまで移送して吐出し、第6の液収容部に収容されていたアレルゲンを金コロイドで標識化したものを所定量吸引して、第7の液収容部にまで移送し、吸引吐出を繰り返すことで撹拌させる。
ステップS23で、前記処理用ヘッド移動機構52により処理用ヘッド71をY軸方向に移動させ装着された前記分注チップ411〜414を前記脱着部材42bにより脱着させ、Y軸方向に移動し前記分注チップZ軸移動機構531により下降させて、新たにクロマトグラフィー処理用チップ821〜824を装着する。図10に示すように、上昇した後、前記処理用ヘッド移動機構52によりY軸方向に移動させて前記第7の液収容部の上方に位置させた後下降させて前記標識化されたサンプル液を、前記移動相貯溜線まで吸引し、所定時間経過後(例えば、数秒後)該液を吐出する。所定時間経過後(例えば、数秒後)に吸引した残液を吐出して、前記多孔質固定相担体21へ接触する液量を一定量とする。該多孔質固定相担体22の検査用物質固定面には、検査用物質として、予め、検出をしようとする食物アレルゲンに対応する抗体が固定されている。その際、図11に示すように、温度昇降体481を前記クロマトグラフィー処理用チップ82に接近させることによって、温度制御することで反応を促進することができる。
ステップS24で、前記クロマトグラフィー処理用チップ821〜824を前記分注チップZ軸移動機構531によって上昇させて、前記洗浄液(前記展開液と同じ)が収容されている第5の液収容部にまで移動し、該洗浄液を吸引して前記多孔質固定相担体221〜224と接触させて、前記検査用物質としての前記抗体と特異的に結合していない標識化された抗原等を前記吸収パッドまで移動させる。
ステップS25で、前記測定制御部92からの指示により、前記測定部61の測定器移動機構6cによって、前記分注チップ支持部材45に連結され前記測定器支持体としての測定端支持用アーム61bに動作可能に支持された測定端61aをX軸方向に移動させることで、順次クロマトグラフィー処理用チップ821〜824ごとに測定を行う。すなわち、前記測定部61の測定端61aから照射用光を各クロマトグラフィー処理用チップ821〜824ごとに照射することで、目的の食物アレルゲンが存在する場合には、生じた呈色に基づく光を前記測定端に設けた受光端から順次受光して、その呈色の程度を測定することができる。すると、定量で所定濃度のサンプル液に対して、定量の展開液を用いて検査用物質が固定された位置における呈色の程度を測定かつ比較することによって、食物アレルギーの程度を特定することができることになる。
続いて、図12および図13に基づく、第2の実施例に係るクロマトグラフィー処理装置103について説明する。
該クロマトグラフィー処理装置103は、第1の実施例に係るクロマトグラフィー処理装置101とは、測定部6が相違する。測定部6は、前記各クロマトグラフィー処理用チップ81〜8nから導光路61〜6nにより導光させた光について受光処理を行う受光処理部66が設けられている。前記導光路61〜6nは、前記各クロマトグラフィー処理用チップ81〜8nの太管に各々近接可能もしくは接触可能、したがって、封入された前記多孔質固定相担体21〜2nに近接可能に設けられたn個の測定端621〜62nを有し、該検査用物質固定面での反応により生じ得る光学的状態に基づいて得られる光を接続端641〜64nにまで導光するn本の導光路61〜6nと、複数本の前記導光路61〜6nの前記測定端621〜62nが、前記各クロマトグラフィー処理用チップの前記検査用物質固定面の対応する所定測定位置に所定走査周期(ts)で一斉に到達するように前記クロマトグラフィー処理用チップに対して相対的に移動可能に設けられた測定用ヘッド(621〜62n,63,65)と、を有している。
前記受光処理部66は、前記測定用ヘッドによって前記各測定端621〜62nが前記所定測定位置にまで移動しまたはその位置に停止している間に、前記複数本の導光路を順次所定選択周期(tc)で選択し、選択された該導光路61〜6nの接続端641〜64nと光学的に接続して入射した光を出射可能とする導光領域を有する導光路選択部73と、前記導光路選択部73の前記導光領域から出射された光を順次受光して光電変換する受光部67と、該受光部67から得られた画領域データを前記所定選択周期で変換して順次ディジタルデータを得るディジタルデータ変換部75とを有する。
前記測定用ヘッドは、複数の前記測定端621〜62nを前記クロマトグラフィー処理用チップ81〜8nの配列に応じた間隔を開けて配列させて支持する測定端支持体63と、該測定端支持体63を、Y軸方向の移動により前記分注チップ41〜4nに対し接近または離間可能とし、かつ封入された多孔質固定相担体21〜2nの各検査用物質固定面に一斉に順次近接するように前記測定端621〜62nをZ軸方向に移動可能とする測定端移動機構65とを有する。なお、前記測定端621〜62nは、前記収容部群31〜3nの内前記分注チップの移動経路の終点に相当する端に配列され、かつその位置で前記分注チップ41〜4nの先端が挿入可能な反応容器3cであって、該分注チップ41〜4nがその位置にある場合に、該分注チップ41〜4nに前記測定端移動機構65によって接近離間可能な位置に設けられるか、または前記容器群3がY軸方向に移動し、前記分注チップ41〜4nがY軸方向には不動の場合には、前記分注チップ41〜4nに対して前記測定端移動機構65によって接近離間可能な位置に配列されるのが好ましい。
図13は、前記受光処理部66をより詳細に示すものである。
前記受光部671と、前記導光路選択部731として、複数本(例えば、この例では 4本)の前記導光路611〜614の前記各接続端を円周に沿って所定の中心角、この例では90度で等角で配列して支持する接続端配列板73bと、暗箱内に組み込まれ前記導光領域が設けられ前記接続端配列板73bの前記円周と同心の回転軸線をもつように設けられた選択用回転体73aと、前記所定選択周期で該選択用回転体を連続的または間欠的に回転駆動可能な回転駆動機構76としてのモータ76aを有する。
前記受光部671として、CCDイメージセンサを用いた場合について説明する。CCDイメージセンサとしては、例えば、6.4mm×4.8mmの受光面を持ち 772×580個の受光素子が配列されたものである。この場合前記ディジタルデータ変換部75としては、ゲートコントロールによって電荷を順次転送するシフトレジスタ、電圧増幅を行うアンプおよび電荷量をディジタルデータに変換するAD変換器を有する。前記所定選択周期としては、例えば、前記操作パネル14からの指示またはCPU+プログラム+メモリ9の測定制御部による指示により指定された時間間隔に基づいて定めることができる。前記所定選択周期は、前述したように、前記所定走査周期、および検査用物質の種類数、各クロマトグラフィー処理用チップ数、光学的状態の種類、試薬、光学的状態の態様、受光部の特性、検査用物質固定面における移動相の移動時間、反応時間、光学的状態、またはその寿命や安定的受光可能時間等に基づいて定める。したがって、前記測定端移動機構65による、前記検査用物質固定面の走査速度、所定走査周期、前記検査用物質固定面の大きさ、形状またはその移動態様をも考慮した光測定態様に応じて定める。例えば、測定端に設けられた径 1mmの光ファイバを用いて、Z軸方向に沿って走査するように測定する。その場合、前記測定端を、相対的に、例えば、受光位置から次の受光位置までの距離が 0.1mmであって、化学発光のプラトー状態を考慮して受光時間(フォトンカウンティングに必要な停止時間)として10msecの時間停止しながら間欠的に移動するようにして、1の固定部位に関して、複数回(この例では10回)測定が行われるようにする。これは、固定部位の位置が必ずしも正確な一直線ではないことに基づく不確定さや光ファイバの大きさ等を考慮したものである。これによって、1の固定部位に対して、ガウス関数型の発光の輝度が得られ、それにより発光等の精密な測定を行うことができることになる。そのために、前記測定制御部92により、前記分注チップZ軸移動機構53および前記格納手段93に対してそのようなタイミングのパルス信号を発生させることで行う。すると、50mmの固定領域全体としては、移動時間を含めて約30秒から約50秒程度(化学発光のプラトー状態を考慮)間で 500回の受光またはディジタルデータ変換が行われることになる。
図13に示すように、前記容器群3には、さらに前記各クロマトグラフィー処理用チップの太管に各々接触可能に設けられた各測定端、および前記導光路選択部731の前記接続端配列板に支持された接続端を各々有する複数個(この例では 4個)の導光路611〜614を有する。前記測定端は、測定端支持体631に、前記クロマトグラフィー処理用チップの配列に応じた間隔でX軸方向に沿って配列されかつ支持されている。
また、前記容器群31には、前記測定端支持体631を、したがって、複数個(この例では 4個)の前記測定端を前記分注チップの軸方向であるZ軸方向に沿って移動可能とすることで、各クロマトグラフィー処理用チップの検査用物質固定面を走査可能な測定端移動機構65が前記処理用ヘッド71に設けられている。この例では処理用ヘッドは該筐体12にY軸方向については静止するように設けられているので、前記測定用ヘッドについても、容器群31に対しては静止するように設けられており、ただ、前記クロマトグラフィー処理用チップに対する接近及び離間のためのY軸方向についてのみ前記測定端移動機構65によって、移動可能となるように設けられている。
該測定端は、前記容器群のY軸方向に沿った後端側に設けられた反応容器31cの上方に前記クロマトグラフィー処理用チップ811〜814が来るように前記容器群を移動した場合に、測定処理が行われるようにする。
前記測定端移動機構65は、前記測定端支持体631と連結したアーム部材と、該アーム部材を摺動可能に保持し、Y軸方向に沿って前記クロマトグラフィー処理用チップ811〜814に向けて前進させるように弾性的に常時付勢する弾性部材が設けられたアーム保持台と、該アーム保持台をZ軸方向に沿って該ボール螺子を上下動させるために該ボール螺子と螺合するナット部を回転駆動するモータと、該モータが取り付けられ前記ボール螺子が貫通する孔が設けられかつ前記底に固定された基部と、前記モータによって回転駆動されるナット部と螺合し、上下方向に駆動されその先端が前記アーム保持台の下側に軸支されている前記ボール螺子と、該基部に下端が設けられ前記アーム保持台を貫通しその上端が取付け具に取り付けられているガイド柱と、前記筐体に取り付けられた取付け具とを有する。
すると、前記容器群3をY軸方向の処理を行いながら移動して、最終的に前記クロマトグラフィー処理用チップ811〜814を前記液収容部としての反応容器31cに到達すると、該分注チップの各細管が測定端を押圧して、弾性的な反発を受けて接触することになる。
したがって、前記測定端支持体631がZ軸方向に移動することで、前記クロマトグラフィー処理用チップ811〜814の配列に応じて配列された測定端621〜624が、前記多孔質固定相担体211〜214に対してZ軸方向に移動して、前記各クロマトグラフィー処理用チップの多孔質固定相担体211〜214に属する、検査用物質固定面の固定部位に対して一斉にかつ順次近接かつ離間して走査する。その場合に、前記測定端支持体631は、各クロマトグラフィー処理用チップの各固定部位(径 1mmの粒子)に対応して、0.2mmごとに設けられた複数(この例では 5)の所定測定位置を所定走査周期(ts、この例では、0.8秒)とする。
図13(a)、図13(b)および図13(c)は、前記導光路選択部731を詳細に示すものである。
図13(c)に示すように、該導光路選択部731は、複数本(この例では 4本)の前記導光路611〜614の前記接続端を円周に沿って所定の中心角(この例では、22.5度)で等角で配列して支持する接続端配列板73bと、前記導光領域としての切換用導光路74が設けられ前記接続端配列板73bの前記円周と同心の回転軸線73dを持つように設けられた選択用回転体73aと、前記所定選択周期tcで該選択用回転体73aを連続的または間欠的に回転駆動可能な回転駆動機構76と、を有する。前記導光領域は、前記各導光路611〜614の接続端に前記所定選択周期で順次連続的または間欠的に光学的に接続可能に設けられた入射端74aおよび前記受光部671の受光面に光学的に接続する出射端74bを有する切換用導光路74を少なくとも有している。
図13(a)は、図13(c)のAA線の矢印方向から見た前記接続端配列板73bを示す。前記入射端74aは、該接続端配列板73bに平行に近接するように定められる入射端配置面73eにおいて、前記接続端配列板73bの前記接続端641〜6416が配列された前記円周73gと同心同径の円周上に配置され、前記出射端74bは、前記回転軸線73d上に定められる出射端配置点73cに配置されている。
前記選択用回転体73aは、前記回転軸線73dに沿って設けられた回転軸73fを有し、その両端が軸支部76dにベアリング76eを介して軸支されている。該回転軸73fはカップリング76cを介して前記モータ76aの軸76bと回転可能に連結している。
図13(b)は、図13(c)のBB線の矢印方向から見た前記選択用回転体73aの内部を示すものである。該選択用回転体73aは中実の円筒体であって、前記切換用導光路74が設けられている部分には、溝74dが前記接続端配列板73bの前記円周73gの半径に沿って回転軸線73dから半径方向に沿って延びるように凹設され、前記吸光領域77として、溝77aが、前記溝74dと交差することなく、前記円周73gに沿う円弧状の開口部をもち、深さが前記回転軸線73d方向に沿って延びるが該選択用回転体73aの軸方向の長さよりは短い深さ(例えば、該長さの90%の長さ)となるように凹設されている。該溝77aの奥には、例えば、炭化した綿、または黒色の繊維等が詰められている。
続いて、第2の実施例に係るクロマトグラフィー処理装置103を、4人の被検者のゲノムについて所定の薬剤の効果に関連する特定のSNPsの検査を行って、その薬剤を使用するかどうかの妥当性を検査する場合の動作を説明する。
前記チップ収容部群31aには、抽出用分注チップ、PCR用分注チップ、穿孔用チップおよび前記多孔質固定相担体211〜2116が封入されたクロマトグラフィー処理用チップ811〜814が装着用開口部を上にして予め収容されている。前記液収容部群31bの各液収容部には、予め、順番に、被検者から採取した口腔粘膜等の検体、ゲノム抽出用試薬、磁性粒子懸濁液、PCR用試薬としてのプライマー含有液、制限酵素溶液等、ミネラルオイル及び洗浄液が収容され、一部の収容部は空である。また、温度制御可能なPCR容器等の反応容器を有している。前記クロマトグラフィー処理用チップ811〜814には、前記薬剤に関連する複数個所のSNPの多型の2種類ずつの塩基配列を持つプローブが適当な間隔を開けながら各固定部位に固定されているものとする。各固定部位は、例えば直線状で、線幅は、例えば 1mmである。
ステップS31で、前記処理用ヘッド71を前記処理用ヘッド移動機構52により、Y軸方向に移動させて未使用の抽出用分注チップが収容されているチップ収容部群31aの第1のチップ収容部の上方に位置させる。前記分注チップZ軸移動機構421により、該処理用ヘッド71に設けられた16個の前記ノズルを下降させることで、抽出用分注チップを装着し、再び上昇させて、分注チップの下端が前記チップ収容部の上方にまで来ると、Y軸方向に移動する。
ステップS32で、前記処理用ヘッド71を、前記ゲノム抽出用試薬を収容する液収容部群31bに属する1の液収容部の位置にまで移動し、下降させることで該分注チップの先端を該液収容部に挿入して、前記吸引吐出機構431を用いて該当する前記抽出用試薬を一斉に吸引する。該分注チップを前記検体溶液が収容されている前記液収容部群31bの1の液収容部にまで移送して前記分注チップの下端を該液収容部内に挿入して吐出する。さらに、同様にして、該液収容部群31bの1の液収容部に収容され、目的物質としての各被検者のDNAを抽出するための磁性粒子懸濁液を前記分注チップ内に吸引して前記検体溶液が収容されている前記液収容部にまで移送して吐出するとともに、吸引吐出を繰り返すことで撹拌を行い、目的物質である各被検者のDNAを磁性粒子に結合させる。なお、必要ならば、夾雑物を除去するためにさらに洗浄液で吸引吐出を繰り返す。
ステップS33で、前記磁力機構の前記アクチュエータを用いて、前記磁石配列部材を前記抽出用分注チップに接近させて磁石を該分注チップの細管に近接させることで細管内に磁場を及ぼし、各被検者のDNAを結合した前記磁性粒子を細管の内壁に吸着させて分離する。分離された該磁性粒子は、内壁に吸着させたまま、前記処理用ヘッド71によって前記液収容部群31bの乖離液が収容されている次の1の液収容部にまで移送され、磁力機構によって磁石配列部材を該抽出用分注チップから離間させた状態で、乖離用溶液の吸引吐出を繰り返すことで目的物質の各被検者のDNAを乖離用溶液内に懸濁させ、前記磁力機構により再度磁性粒子を内壁に吸着させたまま、該処理用ヘッド71を移動させてチップ収容部群31aにおいて、該抽出用分注チップを前記チップ脱着板43eを下降させることでノズルから脱着させて廃棄する。
ステップS34で、前記チップ収容部群31aの1のチップ収容部に収容されていた未使用のPCR用分注チップを、前記処理用ヘッド71の前記分注チップZ軸移動機構421によって下降させることで該分注チップの装着用開口部に前記ノズルを嵌合させて装着させ、上昇してY軸方向に該処理用ヘッド71を移動させ、前記液収容部群31bの前記液収容部に収容されていた前記DNA溶液を前記吸引吐出機構431により吸引し、前記分注チップZ軸移動機構421によって分注チップを上昇させて、該液収容部群31bに設けられたPCR用の液収容部にまで移動して該DNA溶液を吐出する。同様に、各SNPを含有する塩基配列を増幅するための対応する塩基配列を有するプライマー等の試薬溶液を前記PCR用の反応容器に吐出して、PCR法に基づく所定の温度制御サイクルによって、該当する各SNPを含む塩基配列を有するDNA断片を増幅かつ生成する。
ステップS35で、生成された各種SNPを含有するDNA断片溶液は、前記PCR用分注チップによって各DNA断片に特有な塩基配列と相補的な塩基配列を有するアダプタと連結された化学発光物質溶液を収容する前記液収容部群31bに設けられた1の液収容部内に分注され撹拌されて、該各種SNPを化学発光物質で標識化させる。ここで、化学発光物質としては酵素、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を用い、基質としては、ルミノール/過酸化水素を用い、CLEIA法により検出を行う。
ステップS36で、前記処理用ヘッド71を再度チップ収容部群31aにまで戻し、空のチップ収容部内に、装着されていたPCR用分注チップを前記チップ脱着板43eにより脱着させて廃棄する。
ステップS37で、該処理用ヘッド71を上昇させた後、再びY軸方向に移動して前記チップ収容部群31aにある1のチップ収容部であって、前記多孔質固定相担体211〜214が封入されている分注チップ411〜414が収容されているチップ収容部の上方に位置させる。前記分注チップZ軸移動機構421によって前記ノズルを下降させることでその装着用開口部に嵌合させて該分注チップ411〜414をノズルに装着させる。
ステップS38で、該分注チップ411〜414をY軸方向に移動させ、前記標識化された各種SNP断片が収容されているカートリッジ容器311〜314の前記液収容部群31bの前記液収容部の上方にまで移動させ、前記分注チップZ軸移動機構421を用いて該分注チップ411〜414の先端を該液収容部内に挿入させて、前記吸引吐出機構431によって吸引吐出を繰り返すことで前記固定部位を有する多孔質固定相担体211〜214と前記溶液と接触反応させる。その際、前記抽出・反応制御部91の指示によって前記昇降体進退駆動機構48bとしてのモータによって温度昇降体48が分注チップ411〜414にまで前進して密着して前記分注チップ411〜414内を所定温度に維持させる。
ステップS39で、該分注チップ411〜414を前記処理用ヘッド移動機構55を用いてY軸方向に移動させて、前記液収容部群31bの洗浄液が収容されている1の液収容部にまで移動させ、前記温度昇降体48を前記分注チップ411〜414から離間させた状態で吸引吐出を繰り返すことで洗浄する。
ステップS40で、該分注チップ411〜414を、化学発光の前記基質を収容する反応容器31cにまで移動させ、該反応容器31c内に先端を挿入する。その際、前記測定端移動機構65によって該分注チップ411〜414の細管に前記測定端621〜624を接触した状態になるようにY軸方向に移動する。また、前記昇降体進退駆動機構82としてのモータによって温度昇降体48が分注チップ411〜414にまで前進して密着して前記分注チップ411〜4116を所定温度に維持させる。
ステップS41で、前記分注チップ411〜414によって前記反応容器31c内の溶液を吸引する。すると、吸引された基質は、これらの分注チップ411〜414内に封入されている多孔質固定相担体211〜214の酵素と反応し発光することになる。
その後、前記測定端移動機構65によって、前記測定端支持体63をZ軸方向に沿って移動させることで、前記多孔質固定相担体211〜214に各々配列されている対応する固定部位を一斉に逐次測定端621〜624から接続端641〜644まで、導光路611〜614を通して前記多孔質固定相担体211〜214に対して導光されることになる。
ステップS42で各々50個に対応する光学的状態を前記測定端移動機構65による前記測定端621〜624のZ軸方向の移動に応じて順次受光する。すると、該測定端621〜6216の相対的な移動、例えば、0.2mmの前記所定測定位置間の距離を 800msecの移動および停止時間(ts:所定走査周期)を間欠的に繰り返すような移動を行うことで、1mmの1の固定部位に対して前記所定測定位置で 5回受光することを可能とする。その所定走査周期(ts)の間に、前記導光路選択部731によって、前記4本の全導光路611〜614を、所定選択周期(tc)で順次選択することで、1の受光部671が全クロマトグラフィー処理用チップの各固定部位を順次受光可能とする。この場合前記導光路選択部731の前記選択用回転体73aは、所定選択周期(tc)、800msec/4=200msecで停止しながら間欠的に回転することになる。すなわち、測定端のZ軸方向の走査速度は毎秒 1mmの間欠的な移動であり、選択用回転体の回転数は、前記測定端の移動に同期した毎分60回転の間欠的な回転である。
その際、前記測定制御部92からの指示により、前記ディジタルデータ変換部75によって、該所定選択周期で、前記受光部671が受光した光の強度または輝度を対応するディジタルデータに変換して、前記格納手段93内に順次格納され、前記解析手段94によって読み出されて演算解析されて、検査対象の目的生体物質を検査することができる。ここで、前記「所定走査周期」(ts)は、例えば、前記測定端移動機構による測定端の隣接する所定測定位置間の相対的な移動に要する移動時間(例えば、隣接する所定位置間について、800msec)、各クロマトグラフィー処理用チップに対する受光回数(例えば、5回)、固定部位の個数(例えば、50個)、および、化学発光を安定的に受光することができる安定的受光可能時間(発光のプラトー状態が維持される時間、例えば、200秒)からなる光測定態様に基づいて定められ、それによって、固定部位に対する受光(ディジタルデータ変換)のための停止時間が、例えば、800msecと定められることになり、前記測定制御部92によって指示される。一方、前記「所定選択周期」は、例えば、前記所定走査周期(ts)、および、前記クロマトグラフィー処理用チップ数(n)に基づいて定められる。
以上説明した各実施の形態は、本発明をより良く理解させる為に具体的に説明したものであって、別形態を制限するものではない。したがって、発明の主旨を変更しない範囲で変更可能である。例えば、以上の例では、光学的状態として化学発光、蛍光及び呈色のみ説明したが、その他の光学的状態、例えば、変光であってもそれによって生じた光を受光することによって行うことができる。また、化学発光の試薬について前述したアクリジニウムエステル誘導体、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)等に限定されるものではない。
以上の例では、処理用ヘッドに測定端が組み合わせた場合についてのみ説明したが、測定端が処理用ヘッドに設けられていない場合にも可能である。また、本発明の各実施の形態で説明した装置、これらの装置を形成する部品、またはこれらの部品を形成する装置や試薬等を適当に選んで適当な変更を加えて相互に組み合わせることができる。例えば、化学発光物質、クロマトグラフィー処理用チップ、多孔質固定相担体、固定部位、容器群、受光素子アレイ、受光素子、導光路、導光路選択部等の測定部、ディジタルデータ変換部、分注チップ、または測定制御部等である。
なお、本出願内の、「X軸」、「Y軸」、「Z軸」、「上方」、「下方」、「内部」、「外部」、「上下」、「行」、「列」等のような空間的な表示は、図解のためのみであって、前記構造の特定の空間的な方向または配置に制限するものではない。
以上の説明で用いた数値、回数、形状、個数、量等についてもこれらの場合に限定されるものではない。例えば、クロマトグラフィー処理用チップの個数は、4個の場合に限られず、各クロマトグラフィー処理用チップに属する固定部位の個数は、図面に示された場合に限られないことは言うまでもない。