JP2016222965A - 金属炭化物皮膜の形成方法および金属炭化物皮膜被覆部材 - Google Patents
金属炭化物皮膜の形成方法および金属炭化物皮膜被覆部材 Download PDFInfo
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Abstract
Description
(1)即ち、本発明は、炭化物形成用金属化合物を含む高温溶融状態の硼砂含有塩浴中に、従来(特許文献2記載)の如き金属アルミニウムの使用に代え、アルミニウム−マグネシウム合金(以下、「Al−Mg合金」という)の小片または小塊を添加し、溶融塩浴(以下、単に「塩浴」という)中に残存しているアルミニウム酸化物(A12O3)粒子を、Al−Mg合金中のMgによって還元して金属Al粒子として改質させ、再び塩浴中で強力な還元材としての作用を発揮するようにしている点に第1の特徴がある。
(2)また、本発明の第2の特徴としては、前記塩浴中に添加するAl−Mg合金は、Mgの含有量が、1.2〜93mass%のものであり、塩浴中に残存するA12O3粒子の量によって、Mg含有量の異なるAl−Mg合金の種類と添加量を調節することにある。
(3)また、本発明の第3の特徴としては、前記Al−Mg合金として、直径1〜10mm、長さ5〜10mmの小片または小塊の形で塩浴中に添加し、800℃〜1150℃に加熱された塩浴中において完全な溶融状態の微粒子として存在させ、しかもこの塩浴を適宜に撹拌することによってA12O3粒子とMg成分との接触効率を上げて、金属Al粒子への還元作用を促して、塩浴全体の化学的活性力を回復させることにある。
(4)また、本発明の第4の特徴は、Al−Mg合金中のAl成分を、塩浴中における炭化物形成用金属化合物の還元作用に寄与させることにより、炭化物形成金属粒子の生成を促進させ、最終的には被処理鋼製部材の表面への硬質の炭化物皮膜の形成に寄与させるようにすることにある。
(5)また、本発明の第5の特徴は、Al−Mg合金中のMg成分を、塩浴中に生成したA12O3粒子の還元作用に利用するだけでなく、Al成分に比較して一段と強い還元力を利用することにより、炭化物形成用金属化合物から純度の高い炭化物形成金属粒子を生成させ、これによって高品質の炭化物皮膜を形成させるようにすることにある。
(6)さらに、本発明の第6の特徴は、Al−Mg合金の小片・小塊を還元材として用いる本発明に係る塩浴法では、Al金属を使用する場合に比較して塩浴の化学的活性力の回復が顕著で、長期間にわたって、品質の高い炭化物皮膜の形成条件を維持することができるので、生産性の向上とともに生産コストの低減が期待できる点にある。
(1)硼砂と炭化物形成用金属化合物とアルミニウム−マグネシウム合金とを含む混合塩を加熱して溶融状態の塩浴とし、その溶融塩浴中に被処理鋼製部材を浸漬し、この被処理鋼製部材に含まれている炭素と当該塩浴中に析出して遊離状態で存在する微細な上記炭化物形成用金属の粒子とを反応させることにより、該鋼製部材の表面に金属炭化物の皮膜を形成すること。
(2)前記炭化物形成用金属化合物が、Ti、Cr、Mn、Ta、Nb、V、Hf、MoおよびWから選ばれるいずれか1種以上の金属の、酸化物、硫酸塩、炭酸塩、塩化物、水酸化物または硼化物のいずれかの化合物であること。
(3)前記アルミニウム−マグネシウム合金は、マグネシウム(Mg)を1.2〜93mass%含み、残部がアルミニウムおよび不可避的不純物からなること。
(4)前記被処理鋼製部材は、この部材に含まれる炭素量が、0.05〜2.3mass%であること。
(5)前記塩浴の温度が、800℃〜1150℃であること。
(6)前記塩浴中に浸漬する被処理鋼製部材は、鋼製部材と塩浴成分との接触機会を増やすべく該塩浴中に可動保持すること。
(7)前記金属炭化物皮膜は、TiC、CrC、MnC、TaC、NbC、VC、HfC、MoCのうちから選ばれる1種以上の金属炭化物の皮膜であること。
(8)前記金属炭化物の皮膜は、塩浴中において還元反応によって析出、遊離した微細な炭化物形成用金属の粒子と、被処理鋼製部材中に含まれている炭素との反応によって生成した皮膜であること。
(9)前記金属炭化物皮膜は、ビッカース硬さ(HV):2300以上であること。
(10)前記金属炭化物皮膜は、その厚さが、2μm〜30μmであること。
(1)還元材として金属Alを使用する塩浴法や、塩浴中に予めA12O3を添加する既知の方法の場合、塩浴中に多量のA12O3(酸化アルミニウム)が残存して塩浴を汚染し、炭化物生成反応を阻害したり、形成される金属炭化物皮膜の品質を低下させるおそれがある。しかし、本発明のように、Al−Mg合金を還元材として使用する場合、MgがA12O3を還元してAl微粒子に変化させることができるので、塩浴中に存在しているA12O3の再利用が可能となり、浴の化学的活性力が回復して高品質の炭化物皮膜の形成に有効に作用する。
(2)本発明において、還元材として用いるMg(A1−Mg合金中のMg)は、従来のAl還元材に比較すると、塩浴中における炭化物形成用金属化合物に対する還元作用が強く、純度の高い炭化物皮膜形成用金属の微粒子を短期間のうちに多量に生成させることができる。そのため、被処理鋼製部材の表面における炭化物皮膜の形成速度を向上させ、しかも生成した炭化物皮膜の高硬度化にも寄与する。
(3)しかも、本発明においては、前記Al−Mg合金中のAlもまた、従来の塩浴法と同様に炭化物形成用金属化合物の還元作用を発揮するので、作用効果がより倍増する。
(4)本発明において、還元材であるAl−Mg合金は、800℃〜1150℃の塩浴中の作業温度条件下では完全に溶融しており、しかも微粒子として塩浴中に分散しているので、前記(1)〜(2)の反応がより効率的なものになる。
(5)本発明において、Al−Mg合金中のMgは、前記(1)〜(4)の作用を発揮した後、最終的にはMgO(酸化マグネシウム)の微粒子となって、塩浴中に残留することになる。しかし、そのMgOの密度は3.65g/cm3であり、従来のAl還元材の最終生成物であるA12O3の密度3.99g/cm3に比較すると軽いため、塩浴の表面に集合しやすい傾向がある。そのため、その除去作業が容易であり、塩浴の清浄化維持に有利である。
(6)本発明において、Al−Mg合金は、Mgの含有量が1.2〜93mass%の範囲内のものであり、溶射皮膜用材料および一般構造用材料として使用されている既存の合金であり、しかも空気が完全に遮断された硼砂の溶融塩中で使用されるため、本発明の実施に当たって必要な全ての作業を安全に行なうことができる。
(1)塩浴を構成する物質とその化学成分
本発明において用いられる塩浴は、硼砂(Na2B4O7)を主成分として、これに炭化物形成用金属化合物やAl−Mg合金の小片または小塊を添加して形成されるものである。硼砂は、市販のものでもよく、その多くは結晶水を含むNa2B2O7・10H2Oの化学式で示されるものを使用することができる。この硼砂は、加熱すると350℃〜400℃で結晶水を放出してガラス状の粘性を有する融体となる。一旦、ガラス状になった硼砂は、大気を遮断して空気の内部侵入を防止して無酸化環境を構成するだけでなく、この浴に被処理鋼製部材を浸漬した際に、該部材表面の薄い鉄酸化膜を除去するフラックスとしての作用も有する。
本発明において使用可能な炭化物形成用金属化合物の主要成分として含有する金属としては次のようなものがある。
チタン(TiC)、クロム(Cr23C6、Cr7C3)、マンガン(Mn23C6)、タンタル(Ta2C、TaC)、ハフニウム(HfC)、バナジウム(VC、V4C3)、ニオブ(Nb2C、NbC)、モリブデン(Mo2CMoC)、タングステン(W2C、WC)
なお、括弧内は、それぞれの金属が炭化物を形成した際の化学記号を示す。
本発明において最も特徴的なことは、前記炭化物形成用金属化合物の還元材として、A1−Mg合金を用いることにある。この合金の化学成分は、Mg:1.2〜93mass%、残部がAlであるものが好ましく、さらにMg:5〜50mass%のものを用いることがより好ましい。その理由は、MgO含有量が1.2mass%(より好ましい場合では5mass%)よりも少ないと、Mgによる酸化アルミニウム(Al2O3)の還元作用に長時間を要するうえ、還元できる量が少なく、一方、93mass%(より好ましい場合では50mass%)よりも多いと、前記Al2O3の還元作用によるAl粒子の生成量が増加して、塩浴の化学活性度が必要以上に高くなって鋼製の塩浴槽と反応し、その溶解成分による塩浴の汚染および塩浴槽寿命を短くするからである。
なお、市販のAl−Mg合金は、微量のZn、Mn、Fe、Si、Cu、CrあるいはTiなど、またその他の不可避的不純物が含まれているが、これらは本発明の作用、効果を得る上であまり障害とならないため、特には規制されない。
本発明において用いられる被処理鋼製部材としては、塩浴中において、炭化物形成金属の微粒子と接触したときに、炭化物皮膜を早期に形成するのに必要な炭素量を有すること、即ち、該鋼製部材表面に所定の炭化物皮膜を形成するために必要とされる炭素量を有するもの、好ましくは高炭素鋼鋼材であることが望ましい。この目的を達成するのに必要な炭素の含有量は、0.05mass%〜2.3mass%程度のものが好適である。より好ましくは、0.07mass%〜1.5mass%程度である。
炭化物形成用金属化合物とAlやAl−Mg合金を含む溶融状態の硼砂含有塩浴中では、下記に示す化学反応によって、被処理鋼製部材の表面に硬質の炭化物皮膜が形成される。
3V2O5+10Al→6V+5A12O3 (1)
鋼製部材中のC+塩浴中のV粒子 → VC炭化物粒子 (2)
その後、時間が経過しても、上記(2)式の反応が継続的に続くため、VC粒子が次第に堆積を繰り返しつつ成長し、最終的には膜状のVC炭化物層となる。
A12O3+3Mg → 3MgO+2Al (3)
そして、上記(3)式によって生成したAlは、再び上記(1)式の反応の主役となってV粒子を生成させ、VC炭化物皮膜の形成に寄与することになる。
2V2O5+10Mg → 10MgO+4V (4)
なお、Al−Mg合金中のAlの方は、当然のことながら、上記(1)式の反応によってV粒子の析出に寄与するので、無駄なものはない。
前記塩浴中に添加する炭化物形成用金属化合物とAl−Mg合金の割合は、金属化合物の種類やAl−Mg合金中に含まれるMg量および塩浴に含まれているA12O3量によって相違するので、一義的に決定するのは困難であるが、一応、下記に示す概念に基づき塩浴の管理を行なうことが好ましい。
本発明の実施によって形成される金属炭化物皮膜の厚さは、皮膜形成後の表面研磨などの仕上後の厚さとして、2μm〜30μmの範囲が好適である。その理由は、厚さが2μmより薄い皮膜では、被処理鋼製部材の形状の影響を受けて、皮膜厚さの均等性に起因する問題が発生しやすいからである。
この実施例では、硼砂を主剤とし、これに五酸化バナジウムおよびA1−Mg合金を添加した塩浴中に、炭素量の異なる鋼製部材の試験片を浸漬し、その表面に形成されるVC炭化物皮膜の性状、外観などを、塩浴温度との関係で調査した。
(1)供試塩浴組成
硼砂:30kg、V2O5:500g、A1−20mass%Mg:400g
(2)供試鋼材
炭素量が0.07〜1.5mass%の炭素鋼を直径10mm×長さ15mmの寸法に仕上げたものを試験片とし、比較例として炭素量の少ないSUS304L鋼、SUS312L鋼を用いた。
(3)塩浴温度・時間
塩浴温度は700℃〜1200℃に加熱し、それぞれの温度で3時間浸漬した。
(4)評価方法
塩浴から引き上げた試験片の表面に形成されているVC炭化物皮膜の外観を目視および拡大鏡で観察するとともに、必要の都度、皮膜のミクロ硬さを測定した。
(5)試験結果
試験結果は、表1に要約して示した。この表に示す結果から明らかなように、たとえ鋼製部材であっても、温度の低い700℃の塩浴では、VC皮膜の形成が十分ではない。一方、1200℃超の高温の塩浴では、VC皮膜の形成は認められるものの、皮膜は脆く、密着性にも乏しい傾向が見られた。また、1200℃に加熱した塩浴では、硼砂の分解反応の傾向が顕著となり、安定した塩浴環境が得られなかった。
この実施例では、実施例1で用いた五酸化バナジウム(V2O5)を添加した硼砂系塩浴に対して、Mg含有量の異なるAl−Mg合金を添加した後、鋼製部材の試験片を浸漬し、その表面に形成されるVC炭化物皮膜の形成状況を調査した。
(1)供試塩浴組成
実施例1と同組成の塩浴中に、Mg量:1.2〜93mass%のAl−Mg合金を添加した。なお、供試合金中には高Mg含有合金のJIS H4201規定の合金記号MPIBを用いた。化学成分からは、Mg合金と称すべきところであるが、本発明の主旨から、敢えてA1−Mg合金として表示していることを付記する。また比較例として、従来技術に属するAlおよびA12O3を供試した。
(2)供試鋼材
供試鋼材は、SK60鋼、SKD7鋼、S35C鋼の3種類とし、それぞれ寸法を直径10mm×長さ15mmに仕上げたものを試験片とした。
(3)塩浴温度・浸漬時間
1000℃とし、3時間浸漬した。
(4)評価方法
実施例1と同様である。
(5)試験結果
試験の結果は表2に要約して示した。表2に示す結果から明らかなように、Mg含有量1.2〜93mass%のAl−Mg合金を添加した塩浴中に浸漬した試験片(試験片No.1〜5)の表面には、HV:2300以上のVC炭化物皮膜が形成され、従来技術に属する比較例のAl添加浴から形成されるVC炭化物皮膜と全く遜色がなかった(試験片No.6)。
一方、比較例のA12O3を添加した塩浴からは、いずれの鋼材試験片に対しても炭化物皮膜(VC)の形成は認められなかった。
この実施例では、各種の炭化物形成用金属酸化物を添加した硼砂含有塩浴に対して、Al−Mg合金を添加し、高炭素鋼試験片の表面に形成される炭化物皮膜の形成状況を調査した。
(1)供試塩浴組成
実施例1と同じ硼砂含有塩浴中に、下記の金属炭化物形成酸化物およびAl−Mg合金を還元材として添加した供試塩浴を準備した。また、比較例として、Al還元材を用いて同条件での効果を比較した。
金属炭化物形成金属酸化物の種類:TiO2、Cr2O3、Ta2O5、Nb2O5
(2)供試鋼材
SK60、SKD7、S45Cとし、それぞれ実施例1と同じ寸法の試験片を採取して実験した。
(3)塩浴温度・浸漬時間
1000℃とし、3時間浸漬した。
(4)評価方法
実施例1と同じ方法を採用した。
(5)試験結果
試験の結果は表3に要約して示した。表3に示す結果から明らかなように、Al−Mg合金を添加した硼砂塩浴は、各種の金属炭化物形成酸化物からそれぞれの金属炭化物皮膜を形成させることが可能である。しかも、生成したそれぞれは炭化物皮膜はいずれも硬く(HV:2300以上)、高炭素鋼試験片との密着性も良好であった。
また、同条件で実験したAl材(試験No.5、6)の使用によって形成されるTiおよびCr炭化物皮膜に比べても、硬さ、密着性に遜色はなかった。
この実施例では、硼砂含有塩浴による金属炭化物皮膜の形成処理を継続的に実施した場合、塩浴中で増加し続けるA12O3微粉末の金属炭化物皮膜の品質および作業性に与える影響について、従来技術による金属Alと、本発明に係るAl−Mg合金の作用を比較検討した。
(1)供試塩浴組成
比較例の塩浴組成:硼砂:10kg、V2O5:500g、Al:400g
発明例の塩浴組成:硼砂10kg、V2O5:500g、Al−Mg(30mass%):400g
上記組成を塩浴組成とし、これに比較例の塩浴および本発明に適合する塩浴に対し、それぞれA12O3粉末を1回の添加量400g一定とし、5回にわたって添加(追添加)し、その都度、供試鋼材試験片を浸漬してVC炭化物皮膜の形成処理を実施した。
(2)供試鋼材
SK60を使用して、寸法が直径10mm×長さ15mmの試験片を準備した。
(3)塩浴温度・浸漬時間
1000℃とし、8時間浸漬した。
(4)評価方法
供試試験片の表面に形成されたVC炭化物皮膜の硬さおよびその断面ミクロ組織観察によって評価した。
(5)試験結果
試験結果は表4に要約して示した。表4に示す結果から明らかなように、比較例として示す従来技術に従う金属Alを還元材とする塩浴から形成されるVC炭化物皮膜は、塩浴処理直後およびA12O3粉末を1回追添加した後の塩浴では良好な硬さを示し、皮膜の断面ミクロ組織も欠陥のないものが得られた。しかし、A12O3粉末を1回追添加した塩浴(塩浴中のA12O3累計量約1160g、但し、塩浴時に添加したAlもA12O3に変化したものとして加算)から形成されるVC炭化物皮膜には、微細な割れや欠陥の発生が見られ、2回追添加した浴では、皮膜欠陥が一層顕著となり、硬さもHV2000未満を示すなど、皮膜品質の低下が明らかとなった。また、局部的に炭化物皮膜が生成していない場合もあった。
これに対し、本発明に適合する塩浴では、Al−Mg合金中のMg成分によるA12O3粉末からのAl還元作用効果によって、塩浴中のA12O3をAlとして再活性化させているため、A12O3を3回追添加した浴からも、高硬度(HV:2300以上)で欠陥のないVC炭化物皮膜が得られ、塩浴の寿命延長効果にも優れていることが認められた。
この実施例では、実施例4で使用したA12O3追添加浴(表4に記載のA12O3粉末追添加累計2000g)を基本塩浴とし、これに本発明に適合するA1−30mass%Mg合金を追添加した場合の塩浴の回復状況を、従来技術のAl金属を添加した比較例の塩浴と比較した。
(1)供試塩浴組成
比較例の塩浴組成:実施例4で実施した表4に記載のA12O3追添加累計量2000g浴(*2)
発明例の塩浴組成:実施例4で実施した表4に記載のA12O3追添加累計量2000g浴(*1)
上記基本塩浴に対し、従来技術に従う比較例の塩浴には、V2O5 500gとA1 400g、本発明に適合する塩浴には、V2O5 500g、A1−30mass%Mg合金400gを添加した。
(2)供試鋼材
実施例4と同種のSK60を供試した。
(3)塩浴温度・浸漬時間
1000℃とし、8時間浸漬した。
(4)評価方法
実施例1と同じ方法で実施した。
(5)試験結果
試験結果は表5に要約して示した。表5に示す結果から明らかなように、従来技術に係る金属Alを添加した試験(比較例)では、VC炭化物皮膜の形成は認められるものの、その皮膜中に多量のA12O3粉末が含まれているため、皮膜欠陥が大きく、硬さもHV2000未満を示した。この結果から、従来技術に従う金属Alの添加法では、A12O3を多量に含み、VC炭化物皮膜形成能力を消失している塩浴に対しては効果がなく、塩浴の活性化機能の回復には効果がなかった。
これに対し、Al−Mg合金を添加する本発明に適合する方法では、硬く、しかも欠陥のないVC炭化物皮膜の形成が認められ、長期間使用して塩浴の活性力が低下した状態であっても、その炭化物皮膜形成能力を回復させることが判明した。
この実施例では、硼砂含有塩浴中に浸漬した被処理鋼製部材の表面への炭化物被膜形成速度に及ぼす、被処理鋼製部材の回転および移動などの運動因子の効果を調査した。
(1)供試塩浴組成
供試塩浴として実施例1に適用した塩浴を用いた。
(2)供試鋼材
供試鋼材はS45Cとし、浸漬用試験片は、直径10mm×長さ50mmの棒状試験片に加工したものを用いた。
(3)塩浴温度、浸漬時間
1000℃、15時間浸漬の条件としたが、試験片の浸漬条件を下記のように変化させた。
(a)浸漬期間中、試験片を静かに上下運動させた。(上下運動試験片)
(b)浸漬期間中、試験片を静かに回転運動させた。(回転運動試験片)
(c)浸漬期間中、試験片を塩浴槽の内壁に沿って静かに移動させた。(内壁移動試験片)
(d)浸漬期間中、試験片を塩浴槽の中心部で静止状態にした。(静止試験片)
(4)評価方法
浸漬試験後の各試験片の表面に形成されているVC皮膜の形成状況を目視観察するとともに、その皮膜断面を光学顕微鏡で観察し、さらにミクロビッカース硬さ計にて皮膜の硬度を測定した。
(5)試験結果
試験結果を表6に要約して示した。表6に示す結果から明らかなように、塩浴中に浸漬した試験片は、試験片の静止、回転や移動などの運転の有無に関係なく、緻密で、高硬度で、欠陥も認められない良好なVC炭化物皮膜の形成が認められた。ただ、VC炭化物皮膜の成長速度には明らかな差が認められ、回転や移動を付与した試験片には、静止状態に比較して15%〜23%程度厚くなっていることが判明した。この結果から、何らかの運動を付与した試験片の表面では、塩浴中でAl−Mg合金の還元作用によって生成した微細なV粒子との接触回数が増加して、その炭化物化を促進したことがうかがえる。また、試験片の運動に伴って塩浴自体も流動するので、この現象も有利に作用したものと考えられる。
また、金属炭化物皮膜は、溶融状態の亜鉛、錫、アルミニウムなどの金属に対して、優れた耐侵食性を発揮し、溶融金属の付着防止用皮膜としても適用が可能である。
Claims (14)
- 硼砂、炭化物形成用金属化合物および還元材を含む塩浴中に被処理鋼製部材を浸漬して、該被処理鋼製部材の表面に金属炭化物の皮膜を形成する方法において、
前記還元材として、アルミニウム−マグネシウム合金を用いることを特徴とする金属炭化物皮膜の形成方法。 - 硼砂と炭化物形成用金属化合物とアルミニウム−マグネシウム合金とを含む混合塩を加熱して溶融状態の塩浴とし、その溶融塩浴中に被処理鋼製部材を浸漬し、この被処理鋼製部材に含まれている炭素と当該塩浴中に析出して遊離状態で存在する微細な上記炭化物形成用金属の粒子とを反応させることにより、該鋼製部材の表面に金属炭化物の皮膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の金属炭化物皮膜の形成方法。
- 前記炭化物形成用金属化合物が、Ti、Cr、Mn、Ta、Nb、V、Hf、MoおよびWから選ばれる1種以上の金属の、酸化物、硫酸塩、炭酸塩、塩化物、水酸化物または硼化物のいずれかの化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属炭化物皮膜の形成方法。
- 前記アルミニウム−マグネシウム合金は、マグネシウム(Mg)を1.2〜93mass%含み、残部がアルミニウムおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の金属炭化物皮膜の形成方法。
- 前記被処理鋼製部材は、この部材に含まれる炭素量が、0.05〜2.3mass%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の金属炭化物皮膜の形成方法。
- 前記塩浴の温度が、800℃〜1150℃であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の金属炭化物皮膜の形成方法。
- 前記塩浴中に浸漬する被処理鋼製部材は、鋼製部材と塩浴成分との接触機会を増やすべく該塩浴中に可動保持することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の金属炭化物皮膜の形成方法。
- 被処理鋼製部材の表面が、
硼砂、炭化物形成用金属化合物、還元材であるアルミニウム−マグネシウム合金を含む塩浴中に析出し、遊離している炭化物形成用金属の微粒子と該被処理鋼製部材中に含まれている炭素との冶金反応によって生成させた金属炭化物皮膜、
にて被覆されている、
ことを特徴とする金属炭化物皮膜被覆部材。 - 前記金属炭化物皮膜は、TiC、CrC、MnC、TaC、NbC、VC、HfC、MoCのうちから選ばれる1種以上の金属炭化物の皮膜であることを特徴とする請求項8に記載の金属炭化物皮膜被覆部材。
- 前記アルミニウム−マグネシウム合金は、マグネシウム(Mg)を1.2〜93mass%含み、残部がアルミニウムおよびそ不可避的不純物からなることを特徴とする請求項8または9に記載の金属炭化物皮膜被覆部材。
- 前記金属炭化物の皮膜は、塩浴中において還元反応によって析出、遊離した微細な炭化物形成用金属の粒子と、被処理鋼製部材中に含まれている炭素との反応によって生成した皮膜であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1に記載の金属炭化物皮膜被覆部材。
- 前記金属炭化物皮膜は、ビッカース硬さ(HV):2300以上であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1に記載の金属炭化物皮膜被覆部材。
- 前記被処理鋼製部材は、この部材中に含まれる炭素の含有量が0.05〜2.3mass%であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1に記載の金属炭化物皮膜被覆部材。
- 前記金属炭化物皮膜は、その厚さが、2μm〜30μmであることを特徴とする請求項8〜13のいずれか1に記載の金属炭化物皮膜被覆部材。
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