以下、本発明の複層塗膜形成方法について詳細に説明する。
本発明の複層塗膜形成方法(以下、単に「本発明の方法」ともいう)は、下記工程(1)〜(5)を含むものである。
工程(1):シーラー(S)を塗装してシーラー塗膜を形成する工程
工程(2):前記工程(1)で形成されたシーラー塗膜上に、中塗り塗料(X)を塗装して中塗り塗膜を形成する工程
工程(3):前記工程(2)で形成された中塗り塗膜上に、水性ベース塗料(Y)を塗装してベース塗膜を形成する工程
工程(4):前記工程(3)で形成されたベース塗膜上に、水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有するクリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程
工程(5):前記工程(1)〜(4)で形成されたシーラー塗膜、中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を加熱硬化する工程
工程(1)〜(5)について、以下に詳細に説明する。
<被塗物>
本方法が適用される被塗物は、ヘミング部を有する自動車車体であれば特に限定されない。
ヘミング部とは、車体を形成する鋼板のインナーパネルとアウターパネルとを重ね合わせ、インナーパネルの端部を挟む様にアウターパネルの縁部がインナーパネル側に折り返された、いわゆるヘミング加工がされた部分のことである。ヘミング部はこのような狭隘な構造であるために溜りが生じやすい。さらに、ヘミング加工が難しい鋼板の角(あるいは緩やかにカーブする形状)の部分等はヘミング加工が不十分となって、ヘミング部の間隙が生じやすい。このようなヘミング部とヘミング部の間隙部はさらに溜まりが発生しやすい部分である。本発明の方法では、このようなヘミング部を有する自動車車体に複層塗膜を形成する際に有用な方法である。
自動車車体を形成する被塗物の材質としては、特に限定されるものではない。例えば、鉄、アルミニウム、アルミニウム合金、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼、錫メッキ鋼等の金属材料等を挙げることができる。
また、ヘミング部を有する自動車車体は、金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。
ヘミング部を有する自動車車体は、下塗りとして、電着塗装されたものが好ましく、なかでも、カチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が特に好ましい。
<工程(1)>
本発明の方法によれば、ヘミング部を有する自動車車体に、まず、工程(1)として、シーラー(S)が塗装され、シーラー塗膜が形成される。
一般に、自動車車体の塗装において、ヘミング部、溶接部等には、中塗り塗装に先立って、防水や外観品質の向上のために、一般にシーラーとよばれる充填剤の塗装がよく行われている。
シーラー(S)としては、一般に、ビニル樹脂系シーリング剤若しくは塩化ビニル樹脂系ゾル塗料等が使用されることが多い。
ビニル樹脂系シーリング剤としては、例えば、アイシン化工株式会社製「シールエース390A」、アサヒゴム株式会社製「サンダイン2690A−2」等が挙げられる。
塩化ビニル樹脂系ゾル塗料としては、例えば、アサヒゴム株式会社製「615−2」、アイシン化工株式会社製「PV−129」、セメダインヘンケル株式会社製「PT187」等が挙げられる。
上記シーラー(S)には、副成分として、可塑剤等が含まれていることが多く、この可塑剤の影響(可塑剤が次工程で塗装される中塗り塗膜にブリード(移行)する)により、ハガレ、仕上がり外観不良等の塗装の不具合を発生させる原因となっている。
シーラー(S)は、エアスプレー、エアレススプレー、刷毛塗り、へら塗り等公知の方法で、塗装することができ、その膜厚は、硬化塗膜に基づいて1mm以下となるように塗装することが好ましい。
本発明の方法では、工程短縮の観点から、ヘミング部等に塗装されたシーラー塗膜が未硬化の状態で塗装面全面にわたって中塗り塗料(X)が塗装される。
<工程(2)>
本発明の方法によれば、次に、工程(1)で形成されたシーラー塗膜上に、中塗り塗料(X)が塗装され、中塗り塗膜が形成される。一般に、中塗り塗料は、下塗り塗膜と上塗り塗膜の間に中塗り塗膜層を形成させ、複層塗膜層間の付着性向上に寄与し、被塗物表面の粗度隠蔽による仕上がり外観、及び耐チッピング性向上等の目的で塗装される塗料である。
<<中塗り塗料(X)>>
本発明の方法において、中塗り塗料(X)は、(A)水酸基含有ポリエステル樹脂、(B)メラミン樹脂及びブロックポリイソシアネート化合物のうちの少なくとも1種、(C)硬化触媒、(D)顔料、及び(E)有機溶剤を含有する塗料組成物である。
<<水酸基含有ポリエステル樹脂(A)>>
水酸基含有ポリエステル樹脂は、既知の方法で、常法に従い、多塩基酸と多価アルコ−ルとをエステル化反応させることによって合成することができる。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、カルボキシル基等の酸基を有しているものが好ましい。
多塩基酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4'−ジカルボン酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、及びこれらの無水物などを挙げることができる。
また、多価アルコ−ルは1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルなどのグリコール類、これらのグリコール類にε−カプロラクトンなどのラクトン類を付加したポリラクトンジオール、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのポリエステルジオール類、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、スピログリコール、ジヒドロキシメチルトリシクロデカン、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、並びに、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸等のヒドロキシカルボン酸を挙げることができる。
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)として、あまに油脂肪酸、やし油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸などの(半)乾性油脂肪酸などで変性した脂肪酸変性ポリエステル樹脂も使用することができる。これらの脂肪酸の変性量は一般に油長で30質量%以下であることが適している。また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は安息香酸などの一塩基酸を一部反応させたものであってもよい。
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)は、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイド等のα−オレフィンエポキシド、カージュラE10(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物等をポリエステル樹脂の酸基と反応させたものであってもよい。
ポリエステル樹脂へカルボキシル基を導入する場合、例えば、水酸基含有ポリエステル樹脂に無水酸を付加し、ハーフエステル化することで導入することもできる。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の水酸基価は、塗膜の仕上がり外観及び硬化性の観点から、10〜250mgKOH/g、特に40〜170mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)が酸基を有する場合、酸価は、塗膜の硬化性及び付着性の観点から、1〜100mgKOH/g、特に5〜60mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量は、塗膜の硬化性及び仕上がり外観の観点から、1000〜50000、特に1000〜10000の範囲内であることが好ましい。なお、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めるものとする。
中塗り塗料(X)は、基体樹脂として、上記水酸基含有ポリエステル樹脂(A)以外の通常、塗料用途で使用される樹脂を必要に応じて含有させることができる。具体的には、水酸基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。
<<メラミン樹脂及び/又はブロックポリイソシアネート化合物(B)>>
本発明において、中塗り塗料(X)の架橋剤成分として、メラミン樹脂及びブロックポリイソシアネート化合物の少なくとも1種(B)(以下、架橋剤(B)と称することがある。)を含有する。
上記メラミン樹脂としては、メラミン成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化メラミン樹脂又は完全メチロール化メラミン樹脂を使用することができる。アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等を挙げることができる。
また、上記メチロール化メラミン樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等を挙げることができる。
メラミン樹脂としては、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましく、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂がより好ましい。
上記メラミン樹脂は、重量平均分子量が400〜6,000であるのが好ましく、500〜4,000であるのがより好ましく、600〜3,000であるのがさらに好ましい。
メラミン樹脂としては市販品を使用することができる。市販品の商品名としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル204」、「サイメル211」、「サイメル212」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル253」、「サイメル254」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル370」、「サイメル380」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、日本サイテックインダストリーズ株式会社製);「レジミン735」、「レジミン740」、「レジミン741」、「レジミン745」、「レジミン746」、「レジミン747」(以上、モンサント社製);「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上、三井化学株式会社製);「スミマールM55」、「スミマールM30W」、「スミマールM50W」(以上、住友化学株式会社製);等を挙げることができる。
上記ブロックポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物の遊離のイソシアネート基をブロック剤により封鎖(ブロック)した化合物である。
ブロックポリイソシアネート化合物は、例えば、100℃以上、好ましくは130℃以上に加熱することにより、イソシアネート基が再生し、反応性基と容易に反応することができる。
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、具体的には、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネートまたはその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−または1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート、例えば、ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記ポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDI等を挙げることができる。
ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系;ベンジルアルコール;グリコール酸;グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル等のグリコール酸エステル;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等の乳酸エステル;メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系;3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系等のブロック剤を挙げることができる。
上記架橋剤(B)はメラミン樹脂、ブロックポリイソシアネート化合物を各々単独で用いることも、併用することもできる。
中塗り塗料(X)において、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)と架橋剤(B)の比率は、両者の固形分総量に対して、水酸基含有ポリエステル樹脂(A)が50〜80質量%、特に55〜75質量%、架橋剤(B)が20〜50質量%、特に25〜45質量%の範囲内であることが塗膜性能の観点から好ましい。
本発明において、上記架橋剤(B)以外の架橋剤も必要に応じて使用することができる。具体的には、例えば、尿素樹脂、ポリヒドラジド化合物、ポリセミカルバジド化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、エポキシ化合物、ポリカルボン酸等を挙げることができる。架橋剤(B)以外の架橋剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
<<硬化触媒(C)>>
硬化触媒(C)としては、上記(B)成分のうち、メラミン樹脂に対しては、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等のスルホン酸;該スルホン酸とアミンとの中和塩;リン酸エステル化合物とアミンとの中和塩等を使用することができる。
上記(B)成分のうち、ブロックポリイソシアネート化合物に対しては、有機錫化合物等の有機金属化合物を使用することができる。
具体的には、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、2−エチルヘキサン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛などの有機金属触媒、第三級アミンなどを挙げることができる。
上記のうち特に亜鉛触媒を適用することで仕上がり外観との両立の観点から好適に使用することができる。
硬化触媒として上記したこれらの化合物は単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。硬化触媒の量はその種類により異なるが、(A)成分及び(B)成分の固形分総量に対し、通常、0.1〜0.5質量%、特に0.2〜0.5質量%程度であることが好ましい。
<<顔料(D)>>
顔料(D)としては、通常、塗料に用いられる顔料を使用することができる。具体的には、二酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等の着色顔料;クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイト、タルク等の体質顔料;アルミニウムフレーク、雲母フレーク等の光輝性顔料等を好適に使用することができる。
中塗り塗料(X)において上記顔料は、粉体として塗料中に配合することができるが、顔料を樹脂成分の一部と混合分散して予め顔料分散体を調製し、これを残りの樹脂成分や他の成分と共に混合することにより塗料化することもできる。顔料分散体の調製にあたっては、必要に応じて、消泡剤、分散剤、表面調整剤等の慣用の塗料添加剤を使用することができる。なお、上記顔料は、分散性を考慮し、平均粒径0.01μm〜6μmの粉体を用いることが好ましい。
顔料(D)の含有量は、ハガレ抑制及び仕上がり外観の両立の観点から、PWC(顔料重量濃度 Pigment Weight Content)が40〜60%の範囲内であり、好ましくは45〜55%の範囲内である。
<<有機溶剤(E)>>
有機溶剤(E)としては、例えばヘキサン、ヘプタン、キシレン、トルエン等の炭化水素系;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系;エタノール、プロパノール、2−エチルヘキシルアルコール等のアルコール系;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系;スワゾール310、スワゾール1000(コスモ石油株式会社製)等の芳香族炭化水素系;脂肪族炭化水素系、脂環族炭化水素系、アミド系等の溶剤を挙げることができる。これらの有機溶剤は単独でもしくは2種以上を併用して使用することができる。
有機溶剤(E)の含有量は、中塗り塗料(X)中、通常、20〜50質量%であり、特に25〜40質量%程度であることが好ましい。
さらに、中塗り塗料(X)には、必要に応じて、顔料分散剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、艶調整剤等の各種添加剤を適宜配合することができる。
中塗り塗料(X)は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製することができる。塗装時の固形分含有率は、45〜75質量%、特に50〜70質量%の範囲に調整しておくことが好ましい。
中塗り塗料(X)は、有機溶剤を加えて、塗装に適正な粘度に調整した後に、回転霧化塗装、エアスプレー、エアレススプレー等公知の方法で、必要に応じて印加して、塗装することができ、その膜厚は、塗膜の平滑性や仕上り性等の観点から、硬化塗膜に基づいて10〜40μm、好ましくは、25〜40μmとなるように塗装することができる。
中塗り塗料(X)を塗装して得られる中塗り塗膜それ自体は、焼付け乾燥型の場合、通常、約120℃〜約180℃の温度で硬化させることができる。
本発明の複層塗膜形成方法においては、さらにシーラー塗膜上に中塗り塗料(X)により形成された中塗り塗膜の硬化後の塗面の水接触角が70°〜75°の範囲内となることが必要である。水接触角を上記範囲内に制御することにより、可塑剤のブリードを抑制する効果を得ることができる。水接触角は、70°〜73°の範囲内であることが好ましい。
なお、本発明の複層塗膜形成方法における上記水接触角は、携帯式接触角計(PG−X+:FIBRO、System社製)を用いてシーラー塗膜上の中塗り塗膜の水滴下後1分後の水接触角を測定することにより得られる値である。
本発明の方法においては、通常、中塗り塗膜を硬化させてから中塗り塗膜上に水性ベース塗料(Y)が塗装される。
<工程(3)>
本発明の方法によれば、次に、工程(2)で形成された中塗り塗膜上に、水性ベース塗料(Y)が塗装され、ベース塗膜が形成される。水性ベース塗料(Y)は、本発明により形成される複層塗膜の意匠性の付与、中塗り塗膜との積層による意匠性及び深み感を向上させる塗料である。
水性ベース塗料(Y)につき、まず上記ベース塗膜が、観察角度によって色の見え方が変化しないソリッド色を呈する塗膜である場合について説明する。この場合、ベース塗膜は、水性カラーベース塗料を塗装することによって形成させることができる。
水性カラーベース塗料は、通常、着色顔料を含有する。着色顔料としては、具体的には、例えば、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料等の有機顔料;酸化チタン顔料等の金属酸化物顔料及びカーボンブラック顔料等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
本発明において、水性カラーベース塗料における着色顔料の配合量は、複層塗膜の明度等の観点から、水性カラーベース塗料中の樹脂固形分総量に対して、通常0.01〜150質量%、特に0.05〜120質量%の範囲内であることが好ましい。水性カラーベース塗料において配合せしめる着色顔料は、粉体として塗料中に配合することができるが、着色顔料を樹脂組成物の一部と混合分散して予め顔料分散体を調製し、これを残りの樹脂成分や他の成分と共に混合することにより塗料化することもできる。顔料分散体の調製にあたっては、必要に応じて、消泡剤、分散剤、表面調整剤等の慣用の塗料添加剤を使用することができる。
水性カラーベース塗料は、通常、ビヒクルとして、樹脂成分を含有することができる。樹脂成分としては、具体的には、水酸基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等の基体樹脂を、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネ−ト化合物(ブロック体も含む)等の架橋剤と併用したものを挙げることができ、これらは有機溶剤及び/又は水等の溶媒に溶解または分散して使用される。
さらに、水性カラーベース塗料には、必要に応じて、水あるいは有機溶剤等の溶媒、分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、レオロジーコントロール剤等の各種添加剤、体質顔料などを適宜配合することができる。
水性カラーベース塗料は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製される。塗装時の固形分含有率を、塗料組成物に基づいて、12〜60質量%、特に15〜50質量%に調整しておくことが好ましい。
水性カラーベース塗料は、水や有機溶媒等を加えて、塗装に適正な粘度に調整した後に、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレー等の方法で塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて5〜30μm、特に5〜25μm、さらに特に10〜25μmの範囲内とするのが、塗膜の平滑性の点から好ましい。
次に、前記ベース塗膜が、観察角度によって色の見え方が変化するメタリック色を呈する塗膜である場合について説明する。この場合、ベース塗膜は、水性ベース塗料(Y)として水性メタリックベース塗料を塗装することによって形成させることができる。
水性メタリックベース塗料は塗膜に粒子感を付与することを目的として、通常、鱗片状光輝性顔料を含有する。鱗片状光輝性顔料としては、光反射性顔料及び光干渉性顔料の中から、1種類もしくは2種以上を組合せて適宜選択して使用することができる。
光反射性顔料としては、具体的には、アルミニウム、銅、ニッケル合金、ステンレス等の鱗片状金属顔料、表面を金属酸化物で被覆した鱗片状金属顔料、表面に着色顔料を化学吸着又は結合させた鱗片状金属顔料、表面に酸化反応を起こさせることにより酸化アルミニウム層を形成した鱗片状アルミニウム顔料等を挙げることができる。なかでも粒子感や仕上がり外観の点から鱗片状アルミニウム顔料を好適に使用することができる。
鱗片状アルミニウム顔料は、一般にアルミニウムをボールミルやアトライターミル中で粉砕媒液の存在下、粉砕助剤を用いて粉砕、摩砕して製造される。粉砕助剤としては、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸の他、脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族アルコール等を使用することができる。粉砕媒液としてはミネラルスピリット等の脂肪族系炭化水素を使用することができる。
鱗片状アルミニウム顔料は、粉砕助剤の種類によって、リーフィングタイプとノンリーフィングタイプに大別することができる。リーフィングタイプは、塗料組成物に配合すると塗装して得られた塗膜の表面に配列(リーフィング)し、金属感の強い仕上がりが得られ、熱反射作用を有し、防錆力を発揮するものであるため、生産設備等のタンク、ダクト、配管類および屋上ルーフィングをはじめ各種建築材料等に利用されることが多い。本発明において、リーフィングタイプの鱗片状アルミニウム顔料を使用可能であるが、このタイプの鱗片状アルミニウム顔料を使用した場合には、その配合量にもよるが、塗膜形成過程において、粉砕助剤の表面張力の効果によって、表面を完全に隠蔽してしまい、粒子感が発現しなくなる可能性があるので注意が必要である。この点から、ノンリーフィングタイプの鱗片状アルミニウム顔料を使用することが好ましい。
上記鱗片状アルミニウム顔料の大きさは、平均粒子径が8〜25μm、特に10〜18μmの範囲内のものを使用することが、複層塗膜の仕上がり外観やハイライトの明度及び粒子感の点から好ましく、厚さは0.2〜1.0μmの範囲内であることが好ましい。ここでいう粒子径及び厚さは、マイクロトラック粒度分布測定装置 MT3300(商品名、日機装社製)を用いてレーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を意味する。
平均粒子径が前記上限値を超えると得られる塗膜の粒子感が過剰になって意匠的に好ましくない場合があり、下限値未満では粒子感が不十分になる場合がある。
水性メタリックベース塗料においては、鱗片状光輝性顔料として、光干渉性顔料を使用することができる。
光干渉性顔料としては、具体的には天然マイカ、人工マイカ、アルミナフレーク、シリカフレーク、ガラスフレーク等の半透明の基材を金属酸化物で被覆した顔料を使用することができる。
金属酸化物被覆マイカ顔料は、天然マイカ又は人工マイカを基材とし、基材表面に金属酸化物を被覆した顔料である。天然マイカとは、鉱石のマイカ(雲母)を粉砕した鱗片状基材であり、人工マイカとは、SiO2、MgO、Al203、K2SiF6、Na2SiF6等の工業原料を加熱し、約1500℃の高温で熔融し、冷却して結晶化させて合成したものであり、天然のマイカと比較した場合において、不純物が少なく、大きさや厚さが均一なものである。具体的には、フッ素系雲母(KMg3AlSi3O10F2)、カリウム四ケイ素雲母(KMg25AlSi4O10F2)、ナトリウム四ケイ素雲母(NaMg25AlSi4O10F2)、Naテニオライト(NaMg2LiSi4O10F2)、LiNaテニオライト(LiNaMg2LiSi4O10F2)等が知られている。被覆金属酸化物としては、酸化チタンや酸化鉄を挙げることができる。被覆金属酸化物によって、干渉色を発現することができるものである。
金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料は、アルミナフレークを基材とし、基材表面に金属酸化物が被覆した顔料である。アルミナフレークとは、鱗片状(薄片状)酸化アルミニウムを意味し、無色透明なものである。酸化アルミニウム単一成分である必要はなく、他の金属の酸化物を含有するものであってもよい。被覆金属酸化物としては、酸化チタンや酸化鉄を挙げることができる。被覆金属酸化物によって、干渉色を発現することができるものである。
金属酸化物被覆シリカフレーク顔料は、表面が平滑で且つ厚さが均一な基材である鱗片状シリカを、基材とは屈折率が異なる金属酸化物で被覆したものである。被覆金属酸化物としては、酸化チタンや酸化鉄を挙げることができる。被覆金属酸化物によって、干渉色を発現することができるものである。
金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料とは、鱗片状のガラス基材に金属酸化物を被覆したものであって、基材表面が平滑なため、強い光の反射が生じて粒子感を発現する。被覆金属酸化物としては、酸化チタンや酸化鉄を挙げることができる。被覆金属酸化物によって、干渉色を発現することができるものである。
上記光干渉性顔料は、分散性や耐水性、耐薬品性、耐候性等を向上させるための表面処理が施されたものであってもよい。
上記光干渉性顔料の大きさは、天然マイカ、人工マイカ、アルミナフレーク、シリカフレークを基材とする光干渉性顔料の場合は、塗膜の仕上がり外観や粒子感の点から平均粒子径が5〜30μm、特に7〜25μmの範囲内のものを好適に使用することができる。
ガラスフレークを基材とする光干渉性顔料の場合は、塗膜の粒子感の点から平均粒子径が15〜100μm、特に17〜45μmの範囲内のものを好適に使用することができる。
上記光干渉性顔料の厚さは、0.05〜7.0μm、特に0.1〜3μmの範囲内のものを使用することが好ましい。
ここでいう粒子径及び厚さは、マイクロトラック粒度分布測定装置 MT3300(商品名、日機装社製)を用いてレーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を意味する。
平均粒子径が前記上限値を超えると複層塗膜の光干渉性顔料による粒子感が過剰になって意匠的に好ましくない場合があり、下限値未満では粒子感が不十分になる場合がある。
前記水性メタリックベース塗料における鱗片状光輝性顔料の含有量は、得られる塗膜の仕上がり外観や粒子感の点から、塗料中の樹脂組成物固形分総量に対して、合計で0.01〜25質量%、特に0.01〜15質量%、さらに特に0.05〜5質量%の範囲内であることが好ましい。
前記水性メタリックベース塗料には、得られる塗膜の色相や明度を微調整することを目的として、着色顔料を含有させることができる。該着色顔料としては、具体的には、例えば、透明性酸化鉄顔料、チタンイエロー等の複合酸化物顔料、微粒子酸化チタンを含む酸化チタン顔料、カーボンブラック顔料等の無機顔料や、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料等の有機顔料が挙げることができる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
該着色顔料は、粉体として塗料中に配合することができるが、着色顔料を樹脂組成物の一部と混合分散して予め顔料分散体を調製し、これを残りの樹脂成分や他の成分と共に混合することにより塗料化することもできる。顔料分散体の調製にあたっては、必要に応じて、消泡剤、分散剤、表面調整剤等の慣用の塗料添加剤を使用することができる。
前記水性メタリックベース塗料に着色顔料を含有させる場合、その配合量は、複層塗膜の明度等の観点から、塗料中の樹脂組成物固形分総量に対して、通常、0.01〜10質量%、特に、0.01〜5質量%の範囲内であることが好ましい。
水性メタリックベース塗料は、通常、ビヒクル形成成分として樹脂組成物を含有する。具体的には、水酸基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等の基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック体も含む)等の架橋剤とを併用したものを挙げることができ、これらは有機溶剤及び/又は水等の溶媒に溶解または分散して使用される。
さらに、水性メタリックベース塗料には、必要に応じて、水あるいは有機溶剤等の溶媒、顔料分散剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、表面調整剤等の各種添加剤、艶調整剤、体質顔料等を適宜配合することができる。
水性メタリックベース塗料は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製される。塗装時の固形分含有率を、塗料組成物に基づいて、12〜60質量%、特に15〜50質量%に調整しておくことが好ましい。
水性メタリックベース塗料は、水や有機溶媒等を加えて、塗装に適正な粘度に調整した後に、回転霧化塗装、エアスプレー、エアレススプレー等公知の方法で塗装することができる。
塗装膜厚は、塗膜の平滑性等の観点から、硬化塗膜に基づいて10〜25μmの範囲となるように塗装することが好ましく、より好ましくは10〜20μm、さらに好ましくは13〜17μmの範囲内となるように塗装することができる。
本発明において、水性塗料とは、有機溶剤型塗料と対比される用語であって、一般に、水又は水を主成分とする媒体(水性媒体)に、塗膜形成樹脂、顔料等を分散及び/又は溶解させた塗料を意味する。
前記水性ベース塗料(Y)の樹脂組成物の基体樹脂は、酸基を有することが好ましく、水分散する場合、水への混合及び分散を容易にするため、中和剤により中和を行なうのが水分散性を向上させる観点から好ましい。
該中和剤としては、酸基を中和できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水等の塩基性化合物を挙げることができる。
水性ベース塗料(Y)を塗装して得られるベース塗膜それ自体は、焼付け乾燥型の場合、通常、約50℃〜約180℃の温度で硬化させることができ、常温乾燥型又は強制乾燥型の場合には、通常、常温乾燥〜約80℃の温度で硬化させることができる。
本発明の方法においては、通常、ベース塗膜を硬化させることなく未硬化の状態のベース塗膜上にクリヤー塗料(Z)が塗装される。
<工程(4)>
本発明の方法によれば、上記の如くして水性ベース塗料(Y)を塗装して得られたベース塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装して、クリヤー塗膜を形成する。
上記ベース塗膜は、クリヤー塗料(Z)を塗装する前に、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で前記プレヒート、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は、40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましく、60〜80℃が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間が好ましく、1〜10分間がより好ましく、2〜5分間が更に好ましい。また、上記エアブローは、例えば、被塗物の塗装面に、常温又は25℃〜80℃の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間吹き付けることにより行うことができる。
ベース塗膜は、クリヤー塗料(Z)を塗装する前に、必要に応じて、上記プレヒート、エアブロー等を行うことにより、塗膜の固形分含有率が通常70〜100質量%、好ましくは80〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%の範囲内となるように調整することが好適である。
<<クリヤー塗料(Z)>>
本発明の方法において、クリヤー塗料(Z)は、水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有するクリヤー塗料である。
水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基含有不飽和単量体(M−1)及びその他の共重合可能な不飽和単量体(M−2)を常法により共重合せしめることによって製造することができる。
水酸基含有不飽和単量体(M−1)は、1分子中に水酸基と不飽和結合とをそれぞれ1個有する化合物であり、この水酸基は主として架橋剤と反応する官能基として作用するものである。該単量体としては、具体的には、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数2〜10の2価アルコールとのモノエステル化物が好適であり、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。さらに、該単量体として、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンなどのラクトン類との開環重合付加物等も挙げることができる。水酸基含有不飽和単量体(M−1)としては、具体的には、例えば、「プラクセルFA−1」、「プラクセルFA−2」、「プラクセルFA−3」、「プラクセルFA−4」、「プラクセルFA−5」、「プラクセルFM−1」、「プラクセルFM−2」、「プラクセルFM−3」、「プラクセルFM−4」、「プラクセルFM−5」(以上、いずれもダイセル化学株式会社製、商品名)等を挙げることができる。
水酸基含有アクリル樹脂中の水酸基含有不飽和単量体(M−1)の配合割合は、単量体混合物全量に基づいて20〜50質量%、特に、25〜45質量%の範囲内であるのが好ましい。
水酸基含有不飽和単量体(M−1)の配合割合が20質量%未満となると、硬化塗膜の架橋が不十分となって、所定の耐擦り傷性が得られにくくなる場合がある。一方、50質量%を超えると、その他の共重合可能な不飽和単量体(M−2)との相溶性や共重合反応性が低下し、さらに得られた水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネート化合物(B)との相溶性が低下することにより、塗膜の仕上り外観が低下する場合がある。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
その他の共重合可能な不飽和単量体(M−2)は、上記水酸基含有不飽和単量体(M−1)以外の1分子中に1個の不飽和結合を有する化合物であり、その具体例を以下(1)〜(8)に列挙する。
(1)酸基含有不飽和単量体:1分子中に1個以上の酸基と1個の不飽和結合とを有する化合物で、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸及び無水マレイン酸などの如きカルボキシル基含有不飽和単量体;ビニルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレートなどの如きスルホン酸基含有不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェート、2−メタクロイルオキシエチルフェニルリン酸などの酸性リン酸エステル系不飽和単量体などを挙げることができる。これらは1種で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記酸基含有不飽和単量体は(A)成分が架橋剤と架橋反応する時の内部触媒としても作用することができるものであり、その使用量は水酸基含有アクリル樹脂を構成するモノマー混合物全量に基づいて、0.1〜5質量%、特に、0.1〜3質量%の範囲内で使用することが好ましい。
(2)アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのモノエステル化物:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、エチル(メタ)クリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、3−テトラシクロドデシルメタアクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−エチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−メトキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
(3)アルコキシシラン基含有不飽和単量体:例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アクリロキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等。これらのうち好ましいアルコキシシラン基含有不飽和単量体として、ビニルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
(4)芳香族系不飽和単量体:例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等を挙げることができる。
(5)グリシジル基含有不飽和単量体:1分子中にグリシジル基と不飽和結合とをそれぞれ1個有する化合物で、具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等を挙げることができる。
(6)窒素含有不飽和単量体:例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルプロピルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等を挙げることができる。
(7)その他のビニル化合物:例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、バーサティック酸ビニルエステルであるベオバ9、ベオバ10(ジャパンエポキシレジン)等を挙げることができる。
(8)不飽和結合含有ニトリル系化合物:例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。
これらのその他の共重合可能な不飽和単量体(M−2)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記単量体(M−1)及び(M−2)からなる単量体混合物を共重合して水酸基含有アクリル樹脂を得ることができる。
上記単量体混合物を共重合して水酸基含有アクリル樹脂を得るための共重合方法は、特に限定されるものではなく、それ自体既知の共重合方法を用いることができるが、なかでも有機溶剤中にて、重合開始剤の存在下で重合を行なう溶液重合法を好適に使用することができる。
上記溶液重合法に際して使用される有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、スワゾール1000(コスモ石油株式会社製、商品名、高沸点石油系溶剤)などの芳香族系溶剤;酢酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶剤、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、エトキシエチルプロピオネートなどを挙げることができる。
これらの有機溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができるが、樹脂の溶解性の点から高沸点のエステル系溶剤、ケトン系溶剤を使用することが好ましい。また、さらに高沸点の芳香族系溶剤を好適に組み合わせて使用することもできる。
水酸基含有アクリル樹脂の共重合に際して使用できる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、t−ブチルパーオクトエート、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのそれ自体既知のラジカル重合開始剤を挙げることができる。
水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は好ましくは80〜200mgKOH/gの範囲内であり、さらに好ましくは100〜170mgKOH/gの範囲内である。水酸基価が80mgKOH/g未満であると、架橋密度が低いために耐擦り傷性が不十分な場合がある。また、200mgKOH/gを超えると塗膜の耐水性が低下する場合がある。
水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は2500〜40000の範囲内であり、さらに好ましくは5000〜30000の範囲内である。重量平均分子量が2500未満であると耐酸性等の塗膜性能が低下する場合があり、また、40000を超えると塗膜の平滑性が低下するため、仕上り性が低下する場合がある。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー株式会社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー株式会社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行った。
水酸基含有アクリル樹脂のガラス転移温度は−40℃〜85℃、特に−30℃〜80℃の範囲内であるのが好ましい。ガラス転移温度が−40℃未満であると塗膜硬度が不十分な場合があり、また、85℃を超えると塗膜の塗面平滑性が低下する場合がある。
水酸基含有アクリル樹脂の他、必要に応じて基体樹脂として、水酸基含有の、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂等、通常塗料用途に使用される水酸基含有樹脂を含有させることができる。
上記水酸基含有アクリル樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に遊離のイソシアネート基を2個以上有する化合物であり、従来からポリウレタンの製造に使用されているものを使用することができる。例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネート、例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネートまたはその混合物、ω,ω’−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−または1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4’−または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン−4,4’,4’’’−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート、例えば、4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどを挙げることができる。
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDIなどを挙げることができる。
これらポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。また、これらポリイソシアネート化合物のうち、耐擦り傷性、耐候性等の観点から、脂肪族ジイソシアネートおよびこれらの誘導体を好適に使用することができる。
また、ポリイソシアネート化合物は、遊離のイソシアネート基がブロック剤によりブロックされたブロックポリイソシアネート化合物であってもよい。ブロックされたイソシアネート基はブロック剤の解離温度まで加熱されることにより、ブロックがはずれて遊離のイソシアネート基が再生する。
ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系;グリコール酸;グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチルなどのグリコール酸エステル;乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル;メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;3,5−ジメチルピラゾールなどのピラゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系などのブロック剤を挙げることができる。
なかでも得られる塗膜外観の観点からピラゾール系、オキシム系を好適に使用することができ、その中でも特に3,5−ジメチルピラゾール、メチルエチルケトオキシム等を好適に使用することができる。
クリヤー塗料(Z)は、水酸基含有アクリル樹脂の水酸基とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が常温でも反応するので(ブロックポリイソシアネート化合物である場合を除く)、貯蔵安定性の点から、水酸基含有アクリル樹脂を含有する主剤と、ポリイソシアネート化合物とが分離した形態とし、使用直前に両者を混合して使用することが好ましい。
クリヤー塗料(Z)において、塗膜の硬化性や耐擦り傷性等の観点から、水酸基含有アクリル樹脂の水酸基とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は好ましくは0.6〜1.4、さらに好ましくは0.8〜1.2の範囲内である。
クリヤー塗料(Z)は、前記水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネート化合物を必須成分とする塗料組成物であって、通常、有機溶剤を含有し、さらに必要に応じて、硬化触媒、顔料、顔料分散剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤等通常、塗料の分野で用いられる塗料用添加剤を含有することができる。
上記硬化触媒としては、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、2−エチルヘキサン酸亜鉛等の有機金属触媒、第三級アミン等を挙げることができる。
硬化触媒として上記したこれらの化合物は1種を単独で、又は2種以上を組合せて用いてもよい。硬化触媒の量はその種類により異なるが、水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネート化合物の固形分総量に対し、通常、0〜0.2質量%、好ましくは0〜0.1質量%程度である。
顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等の着色顔料;タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイト等の体質顔料;アルミニウム粉末、雲母粉末、酸化チタンで被覆した雲母粉末等のメタリック顔料等を挙げることができる。
上記したこれらの顔料は1種を単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。顔料の含有量はその種類により異なるが、水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネート化合物の固形分総量に対し、通常、0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%程度である。
なお、上記着色顔料の含有量はその種類により異なるが、透明性を阻害しない程度に添加することができる。
紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等の紫外線吸収剤を挙げることができる。
紫外線吸収剤を使用する場合、紫外線吸収剤のクリヤー塗料(Z)中の含有量としては、通常、樹脂固形分総合計量100質量部に対して0〜10質量部、特に0.2〜5質量部、さらに特に0.3〜2質量部の範囲内であるのが耐侯性、耐黄変性の面から好ましい。
光安定剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。
光安定剤を使用する場合、光安定剤のクリヤー塗料(Z)中の含有量としては、通常、樹脂固形分総合計量100質量部に対して0〜10質量部、特に0.2〜5質量部、さらに特に0.3〜2質量部の範囲内であるのが耐侯性、耐黄変性の面から好ましい。
クリヤー塗料(Z)の塗装方法としては、特に限定されないが、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等の塗装方法でウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法は、必要に応じて、静電印加してもよい。これらのうちエアスプレー塗装、回転霧化塗装が特に好ましい。クリヤー塗料(Z)の塗布量は、通常、硬化膜厚として、10〜50μm、好ましくは20〜40μmとなる量とすることが好ましい。
また、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装及び回転霧化塗装する場合には、クリヤー塗料(Z)の粘度を、該塗装に適した粘度範囲、通常、フォードカップ#No.4粘度計において、20℃で15〜60秒程度の粘度範囲となるように、有機溶剤等の溶媒を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
該有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチル−3−エトキシプロピオネート等のエステル系、トルエン、キシレン、芳香族系混合溶剤(「スワゾール1000」、「スワゾール1500」(いずれもコスモ石油化学株式会社製、商品名)等)等を使用することができ、これらを1種単独で又は2種以上を適宜組合せて用いることができる。
クリヤー塗料(Z)を塗装して得られるクリヤー塗膜それ自体は常温〜約150℃の温度で加熱して硬化させることができる。
また、クリヤー塗料(Z)の塗装後は、必要に応じて、室温で1〜60分間程度のインターバルをおいたり、50〜110℃程度で1〜30分間程度プレヒートすることができる。
<工程(5)>
本発明の複層塗膜形成方法においては、上記工程(1)〜(4)で形成されるシーラー塗膜、中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜が加熱硬化される。
クリヤー塗料(Z)を塗装してなるクリヤー塗膜は、未硬化のベースコート塗膜と一度に加熱硬化される。
上記加熱は、通常の塗膜の加熱手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により行うことができる。加熱温度は、60〜180℃が好ましく、110〜170℃がより好ましく、130〜160℃がさらに好ましい。また加熱時間は、特に制限されるものではないが10〜90分間が好ましく、15〜60分間がより好ましく、15〜30分間がさらにより好ましい。
加熱硬化の前に適宜プレヒートを行ってもよい。プレヒートの温度は、40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間が好ましく、1〜10分間がより好ましい。
この加熱により、シーラー塗膜、中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜の層からなる複層塗膜を硬化させることができる。
また、本発明の方法により得られる複層塗膜は、仕上がり外観の観点から、その膜厚を硬化塗膜に基づいて、45〜95μmとするのが好ましく、より好ましくは50〜90μmである。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものであり、また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づくものである。
また、樹脂の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものである。
<中塗り塗料(X)の製造>
(製造例1〜9)
表1に示す組成の各原材料((A)水酸基含有ポリエステル樹脂、(B)メラミン樹脂及び/又はブロックポリイソシアネート化合物、(C)硬化触媒、(D)顔料、(E)有機溶剤)を混合、攪拌することにより、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度30秒の各中塗り塗料(X1)〜(X9)を得た。なお、各成分の配合量は固形分量である。
なお、中塗り塗料(X7)〜(X9)は、比較例用の中塗り塗料である。
表1中の使用原材料は以下のとおりである。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A−1):トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸およびアジピン酸を用いて常法によりエステル化反応せしめた。数平均分子量4500、水酸基価120、酸価10。
水酸基含有ポリエステル樹脂(A−2):トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸およびアジピン酸を用いて常法によりエステル化反応せしめた。数平均分子量5000、水酸基価90、酸価6。
メラミン樹脂(B−1):数平均分子量1500、トリアジン核1個あたりイミノ基2個、メチロール基1個、メトキシ基1.5個、ブトキシ基1.5個。
ブロックポリイソシアネート化合物(B−2):ヘキサメチレンジイソシアネ−トをメチルエチルケトオキシムでフルブロックした化合物。
硬化触媒(C−1):オクチル酸亜鉛
硬化触媒(C−2):アルキルリン酸エステル
顔料(D−1):二酸化チタン、平均粒径0.25μm
顔料(D−2):硫酸バリウム、平均粒径0.7μm
顔料(D−3):カーボンブラック、平均粒径0.02μm
有機溶剤(E−1):酢酸ブチル
<水性ベース塗料(Y)の製造>
(製造例10)
水酸基含有アクリル樹脂分散液(i)100部(固形分30部)、水酸基含有水溶性アクリル樹脂(ii)73部(固形分40部)、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂(固形分60%、重量平均分子量2,000)50部(固形分30部)及びXirallic T60−10WNTCrystal Silver(商品名,酸化チタン被覆酸化アルミニウムフレーク顔料,メルク社製)10部を配合して、ASE−60(アルカリ膨潤型増粘剤、商品名、ロームアンドハース社製)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加して調整、攪拌混合し、塗装に適正な粘度に希釈して、pH8.0、塗料固形分23%の水性ベース塗料(Y1)を得た。
水酸基含有アクリル樹脂分散液(i):
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水130部、「アクアロンKH−10」(商品名、第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩エステルアンモニウム塩、有効成分97%)0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。次いで、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下した。滴下終了後、1時間熟成した。
次いで、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下した。1時間熟成した後、5% 2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過することにより、濾液として、平均粒子径120nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈して20℃で測定した。)、固形分濃度30%の水酸基含有アクリル樹脂分散液(i)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂分散液(i)の酸価は33mgKOH/g、水酸基価は25mgKOH/gであった。
モノマー乳化物(1):脱イオン水42部、「アクアロンKH−10」0.72部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
モノマー乳化物(2):脱イオン水18部、「アクアロンKH−10」0.31部、過硫酸アンモニウム0.03部、メタクリル酸5.1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、スチレン3部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
水酸基含有水溶性アクリル樹脂(ii):
フラスコにプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、n−ブチルアクリレート29部、ヒドロキシエチルアクリレート15部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分濃度55%、酸価47mgKOH/g、水酸基価72mgKOH/gの水酸基含有水溶性アクリル樹脂(ii)を得た。
<クリヤー塗料(Z)の製造>
(製造例11)
水酸基含有アクリル樹脂(iii)64部、UV1164(チバガイギー社製、紫外線吸収剤)2部、及びHALS292(チバガイギー社製、光安定剤)2部からなる主剤を酢酸エチルに溶解させた主剤と、硬化剤N−3300(住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、固形分100%、NCO含有率21.8%)36部とをディスパーを用いて攪拌して混合し、酢酸エチル及び酢酸ブチルの混合溶剤(質量比1/1)で希釈してフォードカップ#No.4を用いて20℃で17秒の粘度に調整することによりクリヤー塗料(Z1)を得た。
水酸基含有アクリル樹脂(iii):モノマー組成がスチレン/シクロヘキシルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート/アクリル酸=20/26/19/34/1のモノマー組成物を準備し、該モノマー組成物100部に対して重合開始剤ジt−アミルパーオキサイド1部を用いて重合し、水酸基含有アクリル樹脂(iii)を得た。固形分60質量%(希釈溶剤:エトキシエチルプロピオネート)、重量平均分子量10000、水酸基価164mgKOH/g、酸価8mgKOH/g)であった。
<試験板の作製>
(試験用被塗物の作製)
リン酸亜鉛処理された冷延鋼板に「エレクロンGT−10」(商品名、関西ペイント株式会社製、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させて試験用被塗物とした。
(実施例1)
試験用被塗物にシーリング剤(商品名「PS2182」、サンスター技研株式会社製、自動車用シーリング剤)を、0.5mm程度の厚さになるようにへらで表面を均一にした後、常温で90分静置した。
その後、前記製造例1で得た中塗り塗料(X1)をハンドスプレーガン塗装で硬化塗膜15μmになるように塗装し、7分間放置後、120℃で30分間焼付した。
次いで、該中塗り塗膜上に前記製造例10で得た水性ベース塗料(Y1)をハンドスプレーガン塗装を用いて、硬化膜厚10μmとなるように塗装し、5分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。
次いで、該未硬化のベース塗膜上に製造例11で作成したクリヤー塗料(Z1)を硬化膜厚20μmとなるようにハンドスプレーガン塗装し、7分間放置した後、130℃で30分間加熱して該複層塗膜をすべて加熱硬化させることにより試験板を作製した。
(実施例2〜6及び比較例1〜3)
実施例1において、中塗り塗料(X1)を中塗り塗料(X2)〜(X9)のいずれかに変更する以外は、実施例1と同様にして各試験板を作製した。
得られた各試験板につき、仕上がり外観(平滑性)及び付着性の試験を以下の試験方法及び評価方法に基づき行った。また、未硬化のシーラー塗膜上に形成された中塗り塗膜の硬化後の塗面の水接触角も併せて測定した。試験結果は表1に併せて示す。
<仕上がり外観(平滑性)>
各試験板の複層塗膜表面を、以下の「◎」、「○」、「△」、「×」の基準に従い、目視評価で実施した。
◎:良好
○:やや良好
△:やや劣る
×:劣る
<付着性>
各試験板の複層塗膜の試験用塗被物への付着性を、旧「JIS K5400 塗料一般試験方法」の2mm幅 碁盤目テープ法に準じて、碁盤目剥離試験を行い、以下の「◎」、「○」、「△」、「×」の基準で評価した。
◎:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じていない
○:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じている
△:ゴバン目塗膜が90〜99個残存する
×:ゴバン目塗膜の残存数が89個以下である
<水接触角>
携帯式接触角計(PG−X+:FIBRO System社製)を用いて、未硬化のシーラー塗膜上の中塗り塗膜の水滴下後1分後の水接触角を測定した。
表1の結果から、実施例1〜6はいずれも、仕上がり外観(平滑性)と付着性を両立した複層塗膜を形成できた。また、実施例1〜6の複層塗膜は、中塗り塗膜の水接触角が70°〜75°であり、可塑剤のブリードを十分に抑制できるものであった。一方、比較例1〜3は、仕上がり外観は実際の使用には問題ないレベルであるが、付着性を満足することができなかった。また、比較例1〜3の複層塗膜の中塗り塗膜の水接触角は70°より小さく、可塑剤のブリードを十分に抑制できないものと推測される。