JP2016208636A - 電動機制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】より簡易な制御で電気車が始動する際に適切な電流値を電動機に与えることができる電動機制御装置を提供することである。
【解決手段】実施形態の電動機制御装置は、インバータと、推定部と、制御部とを持つ。インバータは、突極性を有し、回転子を具備する電動機であって、電動機を駆動する。推定部は、前記電動機の回転子の回転角を推定する。制御部は、前記インバータを始動する際に、前記推定部により推定された回転子の回転角に基づいて、下記の関係式(Ld−Lq)Id+Φ>0を満たすように電流値Idを前記電動機に与えるようにインバータを制御する。また、Ldは電動機のd軸インダクタンス、Lqは電動機のq軸インダクタンス、Idはd軸電流値、Φは無負荷時に電機子に鎖交する磁束である。
【選択図】図1
【解決手段】実施形態の電動機制御装置は、インバータと、推定部と、制御部とを持つ。インバータは、突極性を有し、回転子を具備する電動機であって、電動機を駆動する。推定部は、前記電動機の回転子の回転角を推定する。制御部は、前記インバータを始動する際に、前記推定部により推定された回転子の回転角に基づいて、下記の関係式(Ld−Lq)Id+Φ>0を満たすように電流値Idを前記電動機に与えるようにインバータを制御する。また、Ldは電動機のd軸インダクタンス、Lqは電動機のq軸インダクタンス、Idはd軸電流値、Φは無負荷時に電機子に鎖交する磁束である。
【選択図】図1
Description
本発明の実施形態は、電動機制御装置に関する。
従来、回転角センサを用いずに電動機を制御する電動機制御装置が知られている。この電動機制御装置において、電気車が始動する際、モータ(車輪)が回転しているかが不明であるので、電動機によりトルクを発生させる制御が複雑化する場合があった。
本発明が解決しようとする課題は、より簡易な制御で電気車が始動する際に適切な電流値を電動機に与えることができる電動機制御装置を提供することである。
実施形態の電動機制御装置は、インバータと、推定部と、制御部とを持つ。インバータは、突極性を有し、回転子を具備する電動機であって、電動機を駆動する。推定部は、前記電動機の回転子の回転角を推定する。制御部は、前記インバータを始動する際に、前記推定部により推定された回転子の回転角に基づいて、下記の関係式(Ld−Lq)Id+Φ>0を満たすように電流値Idを前記電動機に与えるようにインバータを制御する。また、Ldは電動機のd軸インダクタンス、Lqは電動機のq軸インダクタンス、Idはd軸電流値、Φは無負荷時に電機子に鎖交する磁束である。
以下、実施形態の電動機制御装置を、図面を参照して説明する。以下の実施形態では、電動機制御装置は電気車に動力を伝達するための電動機の制御に用いられるものとして説明する。
図1は、実施形態の電動機制御装置を含む電気車1の構成図である。電気車1は、電動機10と、車輪20と、直流電源22と、電流検出部24と、電動機制御装置30とを備える。
電動機10は、突極性を有する(突極比が1ではない)同期電動機である。第1の実施形態において、電動機10は、例えば突極性を有する埋め込み磁石型同期電動機である。電動機10は、回転子(不図示)と固定子(不図示)とを備える。例えば固定子は、U相、V相、W相の3相の電力線を有する。回転子は、固定子の界磁空間に配置される永久磁石を含む。固定子は、電動機制御装置30から供給された電流によって回転磁界を発生させる。永久磁石の電機子鎖交磁束の方向をd軸とし、d軸と電気的に直交する軸をq軸とする。電動機10が突極性を有する電動機の場合、d軸上に生じるインダクタンス値と、q軸上に生じるインダクタンス値とは異なる値である。
電動機10が発生するトルクは、電機子に流れる電流と、そこに鎖交する磁束との外積で得られる。そのトルクは、回転子の永久磁石の磁極と、固定子により発生される回転磁界の極との吸収および反発によって磁石トルクと、固定子の回転磁界による極と回転子の突極との吸引力によってリラクタンストルクに分けられる。これらのトルクは、動力を伝達する回転軸(不図示)を介して車輪20に伝達される。
直流電源22は、例えば架線等から得られる直流電源、リチウムイオン電池等の蓄電池である。直流電源22は、直流電力をインバータ31に供給する。なお、図1では電源としての架線や集電装置を省略している。
電流検出部24は、例えば電流により生じる磁束強度をホールICによって電流を検出する電流センサである。電流検出部24は、電流検出部24uと、電流検出部24wとを有する。電流検出部24uは、U相の電力線に取り付けられる。電流検出部24uは、インバータ31からU相の電力線を介して電動機10に供給されるU相電流Iuを検出する。電流検出部24wは、W相の電力線に取り付けられる。電流検出部24wは、インバータ31からW相の電力線を介して電動機10に供給されるW相電流Iwを検出する。
電動機制御装置30は、例えば、インバータ31と、始動シーケンス部32と、トルク指令演算部34と、電流指令演算部40と、電流制御部46と、第1座標変換部48と、PWM制御部50と、第2座標変換部52と、極推定部60と、回転数演算部70とを備える。これらの機能部のうちインバータ31を除くものは、例えば、プログラムを実行することにより機能するソフトウェア機能部である。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェア機能部であってもよい。また、電動機制御装置30は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の記憶装置を備えている。
インバータ31は、複数のスイッチング素子を備える。インバータ31は、複数のスイッチング素子が任意に導通(オン)および阻止(オフ)動作されることによって、直流電圧を任意の電圧と任意の周波数の三相交流電圧に変換する。インバータ31は、第1座標変換部48から出力された制御信号(例えばPWM(Pulse Width Modulation)信号)に基づいて、直流電力を三相の交流電力に変換して電動機10に供給する。インバータ31は、電動機10が回生運転時には、電動機10により発電された交流の回生電力を直流の回生電力に変換する。
始動シーケンス部32は、例えば電気車1が有するマスターコントローラ(不図示)の操作によって出力される始動指令を取得する。始動シーケンス部32は、例えば、ノッチゼロから任意の正の数のノッチ数が取得されたときに、始動指令がなされたと判定する。始動シーケンス部32は、始動指令がなされたときに、電動機10に所望のトルクを発生させるように電動機制御装置30の各部を制御する(詳細は後述)。トルク指令演算部34は、始動シーケンス部32から取得した始動指令に応じてトルク指令値TmRefを算出し、出力する。
電流指令演算部40は、始動初期電流指令演算部42と、最適電流指令演算部44とを有する。始動初期電流指令演算部42は、電気車1の始動の際にトルク指令演算部34から出力されたトルク指令値TmRefを取得する。始動初期電流指令演算部42は、取得したトルク指令値TmRefに応じた電動機10に与える電流の電流振幅および電流位相を演算し、電流指令値IdRefおよび電流指令値IqRefを出力する。電流指令値IdRefはd軸電流の指令値である。電流指令値IqRefはq軸電流の指令値であり、電動機10の設計および構成に基づいて決定される。
最適電流指令演算部44は、電気車1の始動後にトルク指令演算部34からトルク指令値TmRefを取得する。電気車1の始動後におけるトルク指令値TmRefは、マスターコントローラの操作に基づくノッチ数に対応した値である。トルク指令演算部34は、例えば、マスターコントローラ(不図示)から入力されるノッチ数に基づく最大パワーと、電動機10の回転数ωmとに基づいて、トルク指令値TmRefを算出する。最適電流指令演算部44は、取得したトルク指令値TmRefに応じた電動機10に与える電流の電流振幅および電流位相を演算し、電流指令値IdRefおよび電流指令値IqRefを出力する。始動初期電流指令演算部42と、最適電流指令演算部44とが出力する電流指令値については後述する。
電流制御部46は、電流指令演算部40から出力された電流指令値IdRefおよび電流指令値IqRefを取得する。電流制御部46は電流検出部24により検出され、第2座標変換部52により変換された電流値(d軸電流値Idおよびq軸電流値Iq)を取得する。電流制御部46は、取得した電流指令値IdRefおよび電流指令値IqRefと、電流値(d軸電流値Idおよびq軸電流値Iq)とに基づいて、d軸電圧指令VdRef0およびq軸電圧指令VqRef0を生成し、第1座標変換部48に出力する。
第1座標変換部48は、電流制御部46から出力されたd軸電圧指令VdRef0およびq軸電圧指令VqRef0に対して、高周波重畳電圧演算部66により高周波電圧が重畳されたd軸電圧指令VdRefおよびq軸電圧指令VqRefを取得する。第1座標変換部48は、取得したd軸電圧指令VdRefおよびq軸電圧指令VqRefを、U相、V相、W相の電圧指令Vu、Vv、Vwに変換し、PWM制御部50に出力する。
PWM制御部50は、予め設定された三角波と各相電圧指令Vu、Vv、Vwとを個別に比較して各相ゲート指令を生成し、インバータ31を構成する各相スイッチング素子を制御する。第2座標変換部52は、電流検出部24u、wにより検出されたU相電流Iu、W相電流Iwを、d軸電流値Idおよびq軸電流値Iqに変換して、電流制御部46および極推定部60に出力する。
極推定部60は、高周波電流演算部62と、回転角推定部64と、高周波重畳電圧演算部66と、極性推定部68とを備える。高周波電流演算部62は、電流検出部24により検出された二相の電流Iu,Iwから高周波電流成分を抽出し、その時間変化率を算出して出力する。回転角推定部64は、高周波重畳電圧演算部66によりd軸電圧指令VdRef0およびq軸電圧指令VqRef0に対して重畳された電圧と、高周波電流演算部62により算出された高周波電流成分の時間的変化率とに基づいて電動機10の回転位相角θmを推定する。高周波重畳電圧演算部66は、電動機10の運転周波数に対して十分高い周波数の高周波電圧を、電流指令演算部40から出力されたd軸電圧指令VdRef0またはq軸電圧指令VqRef0のいずれか1つ以上に重畳する。
極性推定部68は、高周波重畳電圧演算部66により高周波電圧が重畳されたd軸電圧指令VdRefおよびq軸電圧指令VqRefを取得する。また、極性推定部68は、第2座標変換部52から出力されたd軸電流値Idおよびq軸電流値Iqを取得する。極性推定部68は、取得したd軸電圧指令VdRefおよびq軸電圧指令VqRefと、d軸電流値Idおよびq軸電流値Iqとに基づいて、回転子の極の極性(N極またはS極)を推定する。
回転数演算部70は、回転角推定部64の推定結果の時間的変化に基づいて、電動機10の回転子の回転数ωmを演算する。
図2は、電動機制御装置30により実行される始動時の処理の流れを示すフローチャートである。まず、始動シーケンス部32が、回転角推定部64に電動機10の回転子の初期回転位相角θmを推定させる(ステップS100)。例えば始動シーケンス部32が、微小電流を電動機10に与えるように電流制御部46を制御する。回転角推定部64が、高周波重畳電圧演算部66によりd軸電圧指令VdRef0およびq軸電圧指令VqRef0に対して印加された電圧と、高周波電流演算部62により算出された高周波電流成分の時間的変化率とに基づいて電動機10の初期回転位相角θmを推定する。
次に、始動シーケンス部32が、取得した始動指令に基づいてトルク指令演算部34にトルク指令値TmRefを算出させる(ステップS102)。次に、始動シーケンス部32は、回転数演算部70から取得した電動機10の回転数を算出し、算出した回転数が極性判定をする回転数以上であるか否かを判定する(ステップS104)。ここで極性判定をする回転数とは、電動機10の回転数が上昇し、極性判定を実行するために十分な誘起電圧が発生する回転数である。
回転数が極性判定をする回転数以上でないと判定された場合、始動シーケンス部32は、後述する始動初期電流指令値を始動初期電流指令演算部42に設定させる(ステップS106)。これによりインバータ31に始動初期電流指令値に応じた制御信号が入力される。次に、始動シーケンス部32は、回転数演算部70から取得した電動機10の回転数を算出し、算出した回転数が極性判定をする回転数以上であるか否かを判定する(ステップS108)。
回転数が極性判定をする回転数以上であると判定した場合、始動シーケンス部32は、極性推定部68に回転子の極の極性(N極またはS極)を推定させる(ステップS110)。この場合、始動シーケンス部32は、始動初期電流指令値を始動初期電流指令演算部42に算出させることを停止させる。次に、始動シーケンス部32は、推定結果である回転子の極の極性に基づいて、最適電流指令値を最適電流指令演算部44に設定させる(ステップS112)。これによりインバータ31に最適電流指令値に応じた制御信号が入力され、本フローチャートの処理は終了する。
最適電流指令値とは、例えば所望のトルクを維持しながら電動機10の損失が最小、電動機10とインバータ31との損失が最小、および電流値最小を実現するための値である。電動機制御装置30は、自装置の記憶装置に最適電流指令値を算出するための最適電流指令値テーブルを格納してもよい。最適電流指令値テーブルにはトルクの発生効率が最高効率となる値、例えば所望のトルクに対して、電動機10の損失が最小、電動機10とインバータ31との損失が最小、および電流値が最小となる値が対応付けられて記憶されている。始動シーケンス部32は、最適電流指令値テーブルを参照し、始動指令に含まれる所望のトルクから最適電流指令値を取得する。
ここで始動初期電流指令値について説明する。始動初期電流指令値とは、磁石トルクを上回るリラクタンストルクを発生させるための電流値である。始動初期電流指令値は、電動機10のインバータ31を介して固定子に与えられる電流値を決定する。以下、リラクタンストルクが、磁石トルクを上回るための固定子に与える電流値について説明する。ここでは理論上、永久磁石の電機子鎖交磁束の方向をd軸と定義すると、以下の式で表される。MоTは電動機10により生じるトルク式(1)、RlTはリラクタントトルク式(2)、MgTは磁石トルク式(3)を示している。Ldはd軸のインダクタンス、Lqはq軸のインダクタンス、Idはd軸電流値、Iqはq軸電流値である。また、Φは無負荷時に電機子に鎖交する磁束であり、ここでは永久磁石の電機子鎖交磁束である。
MоT=RlT+MgT ・・・(1)
RlT=(Ld−Lq)Id×Iq・・・(2)
MgT=Φ×Iq ・・・(3)
ここで、MоTは、その極の極性が逆であると仮定すると、以下の式(4)が成立する。
MgT=−Φ×Iq ・・・(4)
MоT=RlT+MgT ・・・(1)
RlT=(Ld−Lq)Id×Iq・・・(2)
MgT=Φ×Iq ・・・(3)
ここで、MоTは、その極の極性が逆であると仮定すると、以下の式(4)が成立する。
MgT=−Φ×Iq ・・・(4)
ここで、始動時に必要な電動機10のトルクをTref(Tref>0)とすると、Tref以上のトルクを確保するためには、以下の式(5)および式(6)が成立する必要がある。
Tref<(Ld−Lq)Id×Iq−Φ×Iq・・・(5)
Tref<{(Ld−Lq)Id−Φ}×Iq ・・・(6)
すなわち、以下の式(7)を満たす電流指令値にすれば、始動時に必要な電動機10のトルクを得ることができる。
Tref<{(Ld−Lq)IdRef−Φ}×IqRef・・・(7)
Tref<(Ld−Lq)Id×Iq−Φ×Iq・・・(5)
Tref<{(Ld−Lq)Id−Φ}×Iq ・・・(6)
すなわち、以下の式(7)を満たす電流指令値にすれば、始動時に必要な電動機10のトルクを得ることができる。
Tref<{(Ld−Lq)IdRef−Φ}×IqRef・・・(7)
特に始動時に必要な電動機10のトルクを正であることとすれば、以下の式(8)により表される関係に整理できる。
0<{(Ld−Lq)Id−Φ}×Iq・・・(8)
Iq>0は、必須であることを考慮すれば、以下の式(9)が成立する。
(Ld−Lq)Id+Φ>0 ・・・(9)
つまり、以下の式(10)を満たすようにd軸の電流指令値であるIdRefを決定すれば、正のトルク、またはゼロを超えるトルクを生じて、電動機10が逆回転することはない。
(Ld−Lq)IdRef+Φ>0 ・・・(10)
0<{(Ld−Lq)Id−Φ}×Iq・・・(8)
Iq>0は、必須であることを考慮すれば、以下の式(9)が成立する。
(Ld−Lq)Id+Φ>0 ・・・(9)
つまり、以下の式(10)を満たすようにd軸の電流指令値であるIdRefを決定すれば、正のトルク、またはゼロを超えるトルクを生じて、電動機10が逆回転することはない。
(Ld−Lq)IdRef+Φ>0 ・・・(10)
なお、実機に適用する場合、上述した各式に磁気飽和の影響を考慮してもよい。すなわちd軸電流値Idや、q軸電流値Iq、磁石温度等に応じて、電動機10の磁気回路の磁気飽和状態が変化する。つまりインダクタンスLd、またはインダクタンスLqが変化する。電動機制御装置30は、電動機10の動作点に応じた解析により電流指令値を算出するための条件を設定してもよい。
図3は、始動指令と、電動機電流と、電動機10の回転数との関係の一例を示す図である。図中の上段、中段、および下段の横軸は、それぞれ時間を表している。図中の上段の縦軸は始動シーケンス部32が取得する始動指令の出力状態を示している。始動指令が出力されている状態がオンであり、始動指令が出力されていない状態がオフである。図中の中段の縦軸は電動機電流を示している。また、図中の下段は電動機10の回転数を示している。
一般的に始動シーケンス部が始動指令を取得した場合、電動機の回転数に関わらずに突極比を利用して極を推定し回転子の磁極の判定を行っていた。この場合、始動シーケンス部は、判定結果に基づいて電流指令値Ixを電流制御部に出力させるように電流指令演算部を制御している場合があった。しかしながら、電動機の回転数が極性判定をする回転数ωh以上でない場合、すなわち電気車が停車している場合に電流指令値Ixを電流制御部に出力させると電気車が後退する場合があった。例えば磁極の判定が誤った場合に、始動初期電流指令値Ixにより発生するリラクタンストルクが磁石トルクを下回り負のトルクが発生する場合があるためである。
一方、実施形態では始動シーケンス部32が、始動指令を取得し、且つ電動機10の回転数が極性判定をする回転数ωh以上でない場合、始動初期電流指令値IRefを電流制御部46に出力させるように始動初期電流指令演算部42を制御する。この場合、始動初期電流指令値IRefのd軸の電流指令値IdRefは、上述した式(9)の(Ld−Lq)IdRef+Φ>0を満たす値である。すなわちIdRefは、磁石トルクを上回るリラクタンストルクを発生させる電流値である。これにより、始動シーケンス部32は、電気車1が始動する際に、適切な始動初期電流指令値IRefを電流制御部46に出力させるため、電気車1が後退することを抑制することができる。
また、実施形態では始動シーケンス部32が、電動機10の回転数が極性判定をする回転数ωh以上であると判定した場合、極性推定部68に回転子の極の極性(N極またはS極)を推定させる。この場合、回転数が上昇し、誘起電圧が所定以上となっているため、極性推定部68は、より正確に極の判定を行うことができる。これにより始動シーケンス部32は、推定した回転子の極の極性に基づいて、最適電流指令値を最適電流指令演算部44に設定させることができる。
なお、実施形態では、始動時に始動初期電流指令値に対応した電流値Idを電動機10に与えるものとしたが、始動時に限らず、低速運転時にも同様の処理をしてもよい。例えば回転数演算部70によって電動機10の回転数が極性判定をする回転数以上でないと判定された場合、始動シーケンス部32が、始動初期電流指令値を始動初期電流指令演算部42に設定させる。回転数演算部70によって電動機10の回転数が極性判定をする回転数以上であると判定された場合、すなわち低速運転時でないと判定された場合、始動シーケンス部32は、極性推定部68に回転子の極の極性(N極またはS極)を推定させる。そして、始動シーケンス部32は、推定結果である回転子の極の極性に基づいて、最適電流指令値を最適電流指令演算部44に設定させる。
また、図2に示すフローチャートの処理は、以下のように変更されてもよい。図4は、電動機制御装置30により実行される処理の流れの他の例を示すフローチャートである。まず、前述したように始動シーケンス部32が、ステップS100からステップS106の処理を実行する。次に、始動シーケンス部32は、ステップS106で設定された始動初期電流指令値に応じて電動機10が始動してから所定時間経過したか否かを判定する(ステップS108*)。
ステップS106で設定された始動初期電流指令値に応じて電動機10が始動してから所定時間経過したと判定した場合、始動シーケンス部32は、極性推定部68に回転子の極の極性(N極またはS極)を推定させる(ステップS110)。次に、始動シーケンス部32は、推定結果である回転子の極の極性に基づいて、最適電流指令値を最適電流指令演算部44に設定させる(ステップS112)。これによりインバータ31に最適電流指令値に応じた制御信号が入力され、本フローチャートの処理は終了する。この場合、電動機制御装置30は、回転角推定部64および回転数演算部70を用いて電動機10の回転数を算出する必要がないため、より簡易な制御で極性推定部68に回転子の極の極性を推定させるか否かを判定することができる。
以上説明した実施形態の電動機制御装置30によれば、インバータを始動する際に、回転角推定部64により推定された回転子の回転角に基づいて、始動シーケンス部32が、関係式(電動機のd軸インダクタンスLd−電動機のq軸インダクタンスLq)×d軸電流値Id+永久磁石の電機子鎖交磁束Φ>0を満たす電流値Idを電動機に与えるように始動初期電流指令演算部42を制御する。この結果、電動機の磁極(N極またはS極)の向きを判定する必要のない簡易な制御で電気車が始動する際に適切な電流値を電動機に与えることができる。
(実施形態の変形例)
以下、実施形態の変形例について説明する。実施形態の変形例では、電動機10として、リラクタンス型同期電動機を用いた点で実施形態とは異なる。リラクタンス型同期電動機の回転子は、突極性を有し、磁気抵抗が最大となる方向をd軸とし、d軸と電気的に直交する軸をq軸とする。d軸上に生じるインダクタンス値と、q軸上に生じるインダクタンス値とは異なる値である。なお、リラクタンス型同期電動機の回転子は、永久磁石は有していない。電動機10が発生するトルクは、電機子に流れる電流と、そこに鎖交する磁束との外積で得られる。そのトルクは、固定子の回転磁界による極と回転子の突極との吸引力によって生じる。
以下、実施形態の変形例について説明する。実施形態の変形例では、電動機10として、リラクタンス型同期電動機を用いた点で実施形態とは異なる。リラクタンス型同期電動機の回転子は、突極性を有し、磁気抵抗が最大となる方向をd軸とし、d軸と電気的に直交する軸をq軸とする。d軸上に生じるインダクタンス値と、q軸上に生じるインダクタンス値とは異なる値である。なお、リラクタンス型同期電動機の回転子は、永久磁石は有していない。電動機10が発生するトルクは、電機子に流れる電流と、そこに鎖交する磁束との外積で得られる。そのトルクは、固定子の回転磁界による極と回転子の突極との吸引力によって生じる。
この場合、磁石トルクはゼロとなるため、IdRef*は以下の式(11)を満たす値であればよい。
(Ld−Lq)IdRef*>0・・・(11)
始動シーケンス部32は、上記の式(11)を満たすIdRef*を電流制御部46に出力させるように始動初期電流指令演算部42を制御する。これにより始動シーケンス部32は、電気車1を始動させる際に適切なトルクを電動機10に出力させるための電流値を設定することができる。
(Ld−Lq)IdRef*>0・・・(11)
始動シーケンス部32は、上記の式(11)を満たすIdRef*を電流制御部46に出力させるように始動初期電流指令演算部42を制御する。これにより始動シーケンス部32は、電気車1を始動させる際に適切なトルクを電動機10に出力させるための電流値を設定することができる。
以上説明した変形例の電動機制御装置30によれば、始動シーケンス部32が、電気車を始動させる際に適切なトルクをリラクタンス型同期電動機に出力させるための電流値を設定する。この結果、簡易な制御で電気車が始動する際に適切な電流値を電動機に与えることができる。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、突極性を有し、回転子を具備する電動機であって、電動機を駆動するインバータ(31)と、電動機の回転子の回転角を推定する推定部(64)と、インバータを始動する際に、推定部により推定された回転子の回転角に基づいて、関係式(電動機のd軸インダクタンスLd−電動機のq軸インダクタンスLq)×d軸電流値Id+無負荷時に電機子に鎖交する磁束Φ>0を満たすように電流値Idを電動機に与えるようにインバータを制御する制御部(32、42)とを備えることで、より簡易な制御で電気車が始動する際に適切な電流値を電動機に与えることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
10…電動機、30…電動機制御装置、31…インバータ、34…トルク指令演算部、40…電流指令値演算部、42…始動初期電流指令演算部、44…最適電流指令演算部、46…電流制御部、60…極推定部、64…回転角推定部、68…極性推定部
Claims (7)
- 突極性を有し、回転子を具備する電動機であって、電動機を駆動するインバータと、
前記電動機の回転子の回転角を推定する推定部と、
前記インバータを始動する際に、前記推定部により推定された回転子の回転角に基づいて、下記の関係式(1)を満たすように電流値Idを前記電動機に与えるように前記インバータを制御する制御部と、
を備える電動機制御装置。
(Ld−Lq)Id+Φ>0・・・(1)
Ld:電動機のd軸インダクタンス
Lq:電動機のq軸インダクタンス
Id:d軸電流値
Φ :無負荷時に電機子に鎖交する磁束 - 前記制御部は、前記推定部の推定結果に基づいて前記電動機の回転数が所定以上となったと判定したときに、前記関係式(1)に基づく電流値Idの算出を停止する、
請求項1記載の電動機制御装置。 - 前記制御部は、前記電動機が始動してから所定時間が経過したと判定したときに、前記関係式(1)に基づく電流値Idの算出を停止する、
請求項1記載の電動機制御装置。 - 前記回転子の極の極性を推定する極推定部と、を備え
前記制御部は、前記推定部の推定結果に基づいて前記電動機の回転数が所定以上となったと判定したときに、または前記電動機が始動してから所定時間が経過したと判定したときに、前記極推定部に前記回転子の極の極性を推定させる、
請求項1記載の電動機制御装置。 - 前記制御部は、前記関係式(1)に基づく電流値Idとして、前記電動機での損失が最小、且つ前記電動機によるトルクの発生の効率が最高効率となる電流値を前記電動機に与えるように前記インバータを制御する、
請求項1から請求項4のうちいずれか一項記載の電動機制御装置。 - 前記電動機は、前記回転子に永久磁石を含み前記Φがゼロを超える値である埋め込み磁石型同期電動機である、
請求項1から請求項5のうちいずれか1項記載の電動機制御装置。 - 前記電動機は、前記回転子として永久磁石を有さない回転子を有し前記Φがゼロであるリラクタンス型同期電動機である、
請求項1記載の電動機制御装置。
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CN113437914A (zh) * | 2021-06-04 | 2021-09-24 | 长沙市日业电气有限公司 | 一种新的异步电机的转子磁链估计方法 |
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2015
- 2015-04-21 JP JP2015086688A patent/JP2016208636A/ja active Pending
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CN113437914A (zh) * | 2021-06-04 | 2021-09-24 | 长沙市日业电气有限公司 | 一种新的异步电机的转子磁链估计方法 |
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