JP2016193513A - 表面処理金属板 - Google Patents

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辰彦 岩
Tatsuhiko Iwa
辰彦 岩
平野 康雄
Yasuo Hirano
康雄 平野
渡瀬 岳史
Takeshi Watase
岳史 渡瀬
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Abstract

【課題】ポリフェニレンスルフィド樹脂とのインサート成形に耐え得る耐熱性に優れたホットメルト接着剤層を有する表面処理金属板を提供する。
【解決手段】ポリフェニレンスルフィドを成形用樹脂とするインサート成形に用いられ、金属基板の少なくとも片面にホットメルト接着剤層が積層された表面処理金属板であって、ホットメルト接着剤層は、Tgが80℃以上のホットメルト接着剤と、架橋剤とを含む混合物が金属基板の少なくとも片面に塗布されて形成されたものであり、架橋剤は、溶融状態のポリフェニレンスルフィド樹脂とホットメルト接着剤層とが接触したときに架橋反応が始まる熱解離型架橋剤であり、ポリフェニレンスルフィド樹脂とホットメルト接着剤層の80℃での引張剪断接着強度が4MPa以上であることを特徴とする表面処理金属板である。
【選択図】なし

Description

本発明は、表面にホットメルト接着剤層が積層された表面処理金属板に関し、インサート成形によってポリフェニレンスルフィド樹脂と複合化されて用いられる表面処理金属板に関するものである。
家電製品、情報機器、建築材料、船舶・自動車部品等の移動媒体材料の分野において、金属板と樹脂とが複合化された部材(金属板複合樹脂成形品)が使用されることが多い。例えば、特許文献1には、金属板にウレタン硬化型コート剤を塗布し、これを射出成形用金型内にインサートしてポリアミド系樹脂組成物を射出させて一体化した複合体部材が開示されている。
こういったインサート成形のための類似技術は、他にも多くある。例えば特許文献2には、金属板に接着剤を塗布した後、インサート成形によって、リブ部やボス部を樹脂で形成する電子機器筐体の製造方法が記載されている。
近年では、例えば、自動車のエンジン周りの部品にも金属板複合樹脂成形品が用いられており、このような自動車のエンジン周りでは、周辺温度が80〜120℃となるため、耐熱性に優れたポリフェニレンスルフィド(PPS)が成形用樹脂として用いられるようになってきた。したがって、PPS樹脂と金属板を接着するための接着剤層にも耐熱性が求められる。
ホットメルト接着剤層の耐熱性を高める手段として、架橋構造を形成させることが考えられる。例えば、特許文献3には、架橋基が付与された変性ポリマーを含むホットメルト型接着剤が開示されている。しかし、この発明は、加熱接合の際の接着剤のはみ出しを防ぐことを目的としており、PPS樹脂用の表面処理金属板に適用できるレベルの耐熱性ではないし、PPS樹脂との接着性も全く考慮されていない。また、特許文献4も、架橋性のホットメルト接着剤を開示するが、ホットメルト接着剤に添加した多官能モノマーを架橋重合させるだけであり、マトリックスポリマーは非反応性であるため、耐熱性は不充分であると考えられる。一方、特許文献5には、2種類の感熱型架橋剤を用いた感熱接着性樹脂塗装金属板が開示されているが、インサート成形を考慮したものではない。
特開2005−67111号公報 特開平7−124995号公報 特開2013−231113号公報 特開2009−120825号公報 特開平9−1730号公報
本発明者らは、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂を成形品用樹脂とするインサート成形用表面処理金属板について検討している。しかしながら、PPS樹脂をインサート成形する場合、金型温度が120〜150℃、PPS樹脂の溶融温度は300〜340℃と極めて高い。また、成形後でも金属板複合樹脂成形品は120〜150℃レベルに冷却されるに止まり、射出成形の効率を考えれば、この温度レベルの金属板複合樹脂成形品を型から取り出さなければならない。このとき、ホットメルト接着剤層の耐熱性が不足していると、取り出しの際にホットメルト接着剤層がゆがんだり変形したりして、不良品となってしまうことがあった。
そこで、本発明では、PPS樹脂とのインサート成形に耐え得る耐熱性および自動車等のエンジンルーム等の高温環境での強度維持に優れたホットメルト接着剤層を有する表面処理金属板を提供することを課題として掲げた。
上記課題を解決し得た本発明は、ポリフェニレンスルフィドを成形用樹脂とするインサート成形に用いられ、金属基板の少なくとも片面にホットメルト接着剤層が積層された表面処理金属板であって、
ホットメルト接着剤層は、Tgが80℃以上のホットメルト接着剤と、架橋剤とを含む混合物が金属基板の少なくとも片面に塗布されて形成されたものであり、
架橋剤は、溶融状態のポリフェニレンスルフィド樹脂とホットメルト接着剤層とが接触したときに架橋反応が始まる熱解離型架橋剤であり、
ポリフェニレンスルフィド樹脂とホットメルト接着剤層の80℃での引張剪断接着強度が4MPa以上であることを特徴とする。
上記熱解離型架橋剤は、160℃以上でブロック剤が解離するものであることが好ましい。この場合において、熱解離型架橋剤は、ブロック型ポリイソシアネートであることが好ましく、ε−カプロラクタムでブロックされたポリイソシアネートであることがより好ましい。
本発明には、本発明の表面処理金属板とポリフェニレンスルフィドとが、インサート成形によって複合化されたことを特徴とする金属板複合樹脂成形品も包含される。
なお、熱解離型架橋剤とは、加熱によって、ブロック剤が解離して架橋反応を開始する架橋剤のことである。
本発明により、インサート成形で高耐熱性のPPS樹脂と複合することができ、型から取り出す際にも変形を起こさず、複合された後、PPS樹脂との間に優れた接着強度を発現し得るホットメルト接着剤層を有する表面処理金属板を提供できた。
本発明の表面処理金属板とインサート成形後の樹脂との引張剪断接着強度を測定するための試料の模式図である。
本発明者らは、まず、PPS樹脂とのインサート成形において、ホットメルト接着剤層がどのような熱履歴を受けるかを検討した。例えば、300℃の溶融PPS樹脂が150℃の金型に注入された場合、PPS樹脂は約30秒で150℃になった。すなわち、300℃から150℃までの平均降温速度は、約5℃/秒(10℃/2秒)であることがわかった。また、PPS樹脂の固化は約280℃から始まることも確認できた。
次に、架橋剤の架橋反応に要する温度や時間を検討した。熱解離型架橋剤として、高温解離型架橋剤の「デスモジュール(登録商標)BL 3272」(バイエル社製ブロックイソシアネート)を用い、温度と反応時間(反応が完了するまでに要する時間)の関係を調べた。具体的には、リガク社製の差動型示差熱天秤TG−DTA(TG8120)を用い、ブロック剤の解離時間から反応時間を求めた。
その結果を表1に示す。
表1からわかるように、例えば、150℃における反応時間は約60分であり、150℃の金型内に本発明の表面処理金属板をインサートしただけでは、ほとんど架橋反応が起こらないことがわかった。また、180℃における反応時間は約9分であり、220℃になると約61秒、250℃では約15秒であった。
次に、PPS樹脂が固化してしまうまでの架橋剤の反応率について検討した。まず、300℃の溶融PPS樹脂が150℃の金型に注入された場合、PPS樹脂が300℃から290℃まで降温するのに要する時間は、上記の平均降温速度から計算すると2秒である。表1によれば、300℃での反応時間は2秒であり、290℃での反応時間は3秒なので、この300℃から290℃での平均反応時間は、(2+3)/2で2.5秒となる。2.5秒あれば反応が完了するところ、2秒しか時間がなかったので、290℃での架橋剤の未反応率は、1−(2/2.5)×100で計算でき、20%となる。この未反応の架橋剤は、290℃から280℃へとPPS樹脂の温度が下がる間にさらに反応が進む。
280℃での反応時間は、表1から4.4秒であることがわかるので、上記と同様に平均反応時間を計算すると、(3+4.4)/2=3.7となり、未反応率は1−(2/3.7)×100で9%となる。すなわち、計算上は、PPS樹脂の固化開始温度である280℃での架橋剤の反応率は91%となる。実際には、PPS樹脂の固化は、過冷却現象によって280℃よりも低温で開始するので、さらに架橋反応が進むことが考えられ、250℃程度までに架橋反応が完了すると考えられる。また、PPS樹脂は、340℃程度で射出成形を行う場合もあるため、本発明のホットメルト接着剤と熱解離型架橋剤の反応は250〜340℃で起こるといえる。
上記は、「デスモジュール(登録商標)BL 3272」の結果であり、この高温解離型架橋剤は、PPS樹脂のインサート成形に使えることがわかった。同様の特性を有する架橋剤は、「エラストロン(登録商標)MF−9」や「エラストロン(登録商標)MF−25K」(いずれも第一工業製薬社製のブロックイソシアネート)等が挙げられ、これらも本発明で用いることができる。これらの高温解離型架橋剤は、ε−カプロラクタムでブロックされたポリイソシアネートであると考えられる。したがって、本発明ではε−カプロラクタムでブロックされたポリイソシアネートが好ましい架橋剤として使用できる。
ポリイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4−トルエンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等の黄変型のポリイソシアネート;o−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の難黄変型のポリイソシアネート;4,4’−ジシクロメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロメタンジイソシアネート、2,2’−ジシクロメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の無黄変型ポリイソシアネート;クルードトルエンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンイソシアネート等の重合体が挙げられる。
なお、低温解離型架橋剤は本発明では使用できなかった。低温解離型架橋剤はブロック剤が150℃以下の温度で解離するため、150℃の金型にインサートした段階で架橋が進行し、ホットメルト接着剤が硬くなって、PPS樹脂との接着性が悪くなる。このような低温解離型架橋剤には、ジメチルピラゾール、ジエチルマロネート、メチルエチルケトンオキシム等でブロックされたポリイソシアネートが含まれ、これらは本発明では使わない。本発明では160℃以上でブロック剤が解離する高温解離型架橋剤を用いることが好ましい。
高温解離型架橋剤によって、ホットメルト接着剤を構成するポリマーが架橋され、Tgを超えた温度域におけるホットメルト接着剤の強度や弾性率(硬さ)が向上する。これにより、本発明の表面処理金属板と複合された金属板複合樹脂成形品が、例えば自動車のエンジンルーム等で使用されても、80〜120℃という環境温度に耐えられるようになる。
本発明では、ホットメルト接着剤はTgが80℃以上のものを用いる。表面処理金属板の耐熱性を高めるためである。これにより、PPS樹脂とのインサート成形時の金型温度が120〜150℃であっても、変形しにくいホットメルト接着剤層となる。ホットメルト接着剤のTgは90℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。Tgの上限は特に限定されないが、120℃程度である。
ホットメルト接着剤の素材も特に限定されないが、架橋剤との反応性を考えると、水酸基や、アミノ基、ウレタン結合等を有しているホットメルト接着剤が好ましく、この観点から、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエステルウレタン系のホットメルト接着剤が好ましい。ポリエステル系のホットメルト接着剤でTgが80℃以上のものとしては、例えば、東洋紡社製「バイロン(登録商標)GK−88ME」(Tg84℃)等が挙げられ、ポリウレタン系のホットメルト接着剤でTgが80℃以上のものとしては、第一工業製薬株式会社製の「スーパーフレックス(登録商標)130」(Tg101℃)等が挙げられ、ポリエステルウレタン系のホットメルト接着剤でTgが80℃以上のものとしては、「バイロン(登録商標)UR−4800」(Tg106℃)等が挙げられる。
ホットメルト接着剤と熱解離型架橋剤の合計を100質量%としたとき、熱解離型架橋剤は5〜25質量%とすることが好ましい。ただし、Tgが80℃以上90℃未満のホットメルト接着剤の場合は架橋剤が多い方が好ましく、ホットメルト接着剤と熱解離型架橋剤の合計100質量%中、架橋剤を15〜25質量%とすることが好ましい。この範囲であれば、80℃での引張剪断接着強度が4MPa以上となる。なお、架橋剤は多い方が80℃での引張剪断接着強度が大きくなるが、25質量%を超えても向上効果は飽和し、逆に接着剤が相対的に少なくなるため、上限は25質量%とすることが好ましい。
ホットメルト接着剤と熱解離型架橋剤は、ホットメルト接着剤が溶融し、熱解離型架橋剤が解離しない温度で、ニーダー等で混合すればよい。混合の際には、公知の添加剤を添加してもよい。
ホットメルト接着剤層は、ロールコーター法、スプレー法、カーテンフローコーター法等の公知の方法で塗工できる。なお、ホットメルト接着剤層は、金属基板の少なくとも片面、あるいは後述する化成処理皮膜表面の全面に設けてもよいし、樹脂との複合化のために必要な場所だけに設けてもよいし、例えば何本かのライン状や、ドット状に設けてもよい。
また、ホットメルト接着剤層の厚さは10〜100μmとすることが好ましい。厚さが10μmより薄いと、充分な接着強度が得られないおそれがある。これは、射出成形樹脂の流れによって接着剤層が変形し、部分的に非常に薄い接着剤層しか金属板上に残ることができないことがあるためと考えられる。一方、厚さが100μmを超えると、外力による接着剤層の変形量が大きくなり、小さい応力であっても接着剤層の破壊が生じて、接着不良が起こることがあるため好ましくない。
本発明で用いられる金属基板としては、アルミニウム板、チタン板、銅板、熱延鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板等がいずれも利用可能である。中でも、合金化溶融亜鉛めっき鋼板が好ましい。なお、これらの金属基板には、後述する化成処理を施すことが好ましい。
本発明の表面処理金属板は、金属板とホットメルト接着剤層との間に、樹脂とコロイダルシリカを含む樹脂組成物から形成された化成処理皮膜を有するものであることが好ましい。接着強度や、耐食性を高める効果を有するからである。コロイダルシリカとしては、「スノーテックス(登録商標)」シリーズ(日産化学工業社製のコロイダルシリカ)の「XS」、「SS」、「40」、「N」、「UP」等が好適に用いられる。特に、表面積平均粒子径が10〜20nm程度の「スノーテックス−40」が好適に用いられる。コロイダルシリカの量は、樹脂100質量部に対し、50〜150質量部程度が好ましく、75〜125質量部がより好ましい。
樹脂としては、水性ウレタン樹脂、水性アクリル変性エポキシ樹脂、水性フェノール樹脂、水性カルボキシル基含有アクリル樹脂等が挙げられる。なお、本発明で水性とは、水溶性または水分散性(非水溶性)であることを意味する。また、本発明でいう水溶性樹脂とは、25℃の水に1質量%以上溶解するもの、より好ましくは5質量%以上溶解するものを指す。また、pHを5〜9にアルカリ等で調製することで、目視で均一な透明溶液になるようなものも、水溶性樹脂に含まれるものとする。
化成処理皮膜は、付着量を0.01〜1g/m2とすることが好ましく、0.05〜0.5g/m2とすることがより好ましい。付着量が少なすぎると化成処理皮膜による接着強度向上効果が不充分となる虞がある。1g/m2を超えて付着させても、接着強度向上効果が飽和するため、高コストとなる。
化成処理皮膜は、化成処理皮膜用塗工液を、ロールコーター法、スプレー法、カーテンフローコーター法等を用いて、金属基板表面の片面もしくは両面に塗布して、加熱乾燥すればよい。
本発明の表面処理金属板は、インサート成形によってPPS樹脂成形品と複合される。このとき、加工が必要な場合は、予め、表面処理金属板を目的とする形状に加工しておく。そして、加工後の表面処理金属板を射出成形機の金型の中に装入し、型締めして、溶融PPS樹脂を型内に射出し、PPS樹脂が冷却固化すれば、金属板複合樹脂成形品が得られる(インサート成形)。もちろん、本発明の表面処理金属板は、プレス成形法でPPS樹脂と複合することもできるが、射出成形の短時間・高効率というメリットを生かすには、射出成形法を採用することが好ましい。
射出成形は、シリンダー温度を300〜340℃、金型温度を120〜150℃、射出保持時間を3〜10秒、冷却時間を15〜45秒程度とする条件で行えばよい。この条件で射出成形を行うと、PPS樹脂と表面処理金属板とが強固に接着した本発明の金属板複合樹脂成形品が得られる。成形品としての強度を高めるために、ガラス繊維や炭素繊維等の強化繊維を5〜60質量%程度添加してもよい。また、各種顔料や染料、難燃剤、抗菌剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
本発明の表面処理金属板は、PPS樹脂を用いたインサート成形によって得られる金属板複合樹脂成形品の80℃で測定される引張剪断接着強度が4MPa以上であることが必要である。引張剪断接着強度の測定方法は後述する。
以下実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更実施は本発明に含まれる。以下では、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示すものとする。また、実施例で用いた評価方法は、以下の通りである。
[化成処理鋼板の製造]
厚さ1.0mmの合金化溶融亜鉛めっき鋼板(亜鉛めっき付着量:45g/m2)の表面に、日本パーカライジング社製のウレタン樹脂含有化成処理剤をバーコーターで付着量が0.5g/m2となるように塗布し、100℃で1分間加熱し、化成処理鋼板を得た。
比較例1〜5(架橋剤なし)
化成処理鋼板の表面に、表3に示したホットメルト接着剤をバーコーターで乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗工し、最高到達板温が150℃となるように2分間加熱して表面処理鋼板を得た。なお、PES369SX30は東亞合成社製のポリエステル系ホットメルト接着剤、「スーパーフレックス(登録商標)170」、「スーパーフレックス(登録商標)130」は、いずれも第一工業製薬社製のポリウレタン系ホットメルト接着剤であり、「バイロン(登録商標)GK−88ME」は東洋紡社製のポリエステル系ホットメルト接着剤であり、「バイロン(登録商標)UR−4800」は東洋紡社製のポリエステルウレタン系ホットメルト接着剤である。
[金属板複合樹脂成形品の製造]
150℃に加熱した射出成形金型に、100mm×25mmの表面処理鋼板を装入し、溶融状態のPPS樹脂(DIC社製「PPS Z−650」)を射出成形した。成形条件を以下の表2に示す。金型のコア内にPPS樹脂を流入させる部分の容積は、幅25mm×長さ100mm×厚さ3mmであり、25mm×8mmの領域で、ホットメルト接着剤層とPPS樹脂とが接触するようにした。図1に得られた試験片の正面図と側面図を示す。
[取り出し時の変形剥離に対する抵抗感]
また、金型から取り出し直後(すなわち、試験片は150℃)に、試験片の表面処理金属板の方を右手で、PPS成形品の方を左手で掴んで、手前側と向こう側に1回ずつひねり、ホットメルト接着剤層が変形して剥離する際の抵抗感を5点評価(5点:抵抗感が強い;1点:抵抗感が弱い;点数が小さくなるほど、抵抗感が弱くなる)した。
[引張剪断接着強度の測定]
試験片を一旦室温まで戻した後、80℃に調温した恒温槽付きの引張試験機に試験片をセットし、試験片が80℃になった時点で、引張速度10mm/分で試験片を引っ張り、破断強度を測定した。
これらの評価結果を接着剤のTgと共に表3に示した。
表3から明らかなように、Tgが低く架橋剤の含まれていない接着剤は、取り出し時の変形剥離に対する抵抗感が弱く、接着強度も低かった。Tgの高い接着剤の場合、取り出し時の変形剥離に対する抵抗感はそこそこ合ったが、接着強度は4MPaには届かなかった。
実施例1〜2と比較例6〜7(架橋剤5%)
ホットメルト接着剤層を表4に示した接着剤と架橋剤との混合物で形成した以外は、上記比較例1〜5と同様にして試験片を作製して評価した。ホットメルト接着剤層中、接着剤は95%である。「デスモジュール(登録商標) BL 3272」はバイエル社製ブロックイソシアネートであり、「エラストロン(登録商標)MF−9」は第一工業製薬社製のブロックイソシアネートである。評価結果を表4に示した。
比較例6と7は接着剤のTgが低いため、高温解離型架橋剤を加えても接着強度が低かった。実施例はいずれも4MPa以上の接着強度を示した。
実施例3〜4、比較例8〜9、参考例1(架橋剤10%)
ホットメルト接着剤層を表5に示した接着剤と架橋剤との混合物で形成した以外は、上記比較例1〜5と同様にして試験片を作製して評価した。なお、ホットメルト接着剤層中、接着剤は90%である。評価結果を表5に示した。
比較例8と9は接着剤のTgが低いため、高温解離型架橋剤を加えても接着強度が低かった。参考例1は、接着剤のTgが80℃以上90℃未満の範囲にあるため、架橋剤が10%では接着強度が不足した。実施例はいずれも4MPa以上の接着強度を示した。
実施例5〜7と比較例10(架橋剤15%)
ホットメルト接着剤層を表6に示した接着剤と架橋剤との混合物で形成した以外は、上記比較例1〜5と同様にして試験片を作製して評価した。なお、ホットメルト接着剤層中、接着剤は85%である。評価結果を表6に示した。
比較例10は、架橋剤を15%配合しても、接着強度が低かった。Tgが84℃の接着剤を用いた実施例5は、架橋剤を15%配合した結果、80℃での接着強度が4.6MPaと参考例1の3.5MPaから大きく向上した。
比較例11〜12(低温解離型架橋剤)
ホットメルト接着剤層を表7に示した接着剤と架橋剤との混合物で形成し、バーコーターで乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗工し、比較例11では最高到達板温(PMT)が150℃となるように、また比較例12では最高到達板温が180℃となるように、それぞれ2分間加熱して表面処理鋼板を得た。後は、上記比較例1〜5と同様にして試験片を作製して評価した。なお、「エラストロン(登録商標)H−38」は第一工業製薬社製の低温解離型のブロックイソシアネートであり、ホットメルト接着剤層中、接着剤は90%である。評価結果を表7に示した。
低温解離型架橋剤では、ホットメルト接着剤層形成時の加熱で架橋が進行してしまい、PPS樹脂とホットメルト接着剤層が接着しなかった。
参考例2〜7(Tgが80℃以上90℃未満のホットメルト接着剤)
Tgが84℃であるバイロン(登録商標)GK−88MEを用いて、架橋剤の量を表8に示したように変更した以外は、上記比較例1〜5と同様にして試験片を作製して評価した。接着剤の量は、100から架橋剤の配合量を引いた値(%)である。
Tgが80℃以上90℃未満のホットメルト接着剤の場合、架橋剤を15%以上入れないと、80℃での引張剪断接着強度が4MPa以上にならないことがわかった。
本発明により、インサート成形で高耐熱性のPPS樹脂と複合することができ、型から取り出す際にも変形を起こさず、複合された後、PPS樹脂との間に優れた接着強度を発現し得るホットメルト接着剤層を有する表面処理金属板を提供できた。したがって、本発明の表面処理金属板は、家電製品、情報機器、建築材料、船舶・自動車部品等の移動媒体材料の分野において、金属と樹脂とが複合化された部材を製造するのに有用である。

Claims (5)

  1. ポリフェニレンスルフィドを成形用樹脂とするインサート成形に用いられ、金属基板の少なくとも片面にホットメルト接着剤層が積層された表面処理金属板であって、
    ホットメルト接着剤層は、Tgが80℃以上のホットメルト接着剤と、架橋剤とを含む混合物が金属基板の少なくとも片面に塗布されて形成されたものであり、
    架橋剤は、溶融状態のポリフェニレンスルフィド樹脂とホットメルト接着剤層とが接触したときに架橋反応が始まる熱解離型架橋剤であり、
    ポリフェニレンスルフィド樹脂とホットメルト接着剤層の80℃での引張剪断接着強度が4MPa以上であることを特徴とする表面処理金属板。
  2. 上記熱解離型架橋剤が、160℃以上でブロック剤が解離するものである請求項1に記載の表面処理金属板。
  3. 上記熱解離型架橋剤が、ブロック型ポリイソシアネートである請求項1または2に記載の表面処理金属板。
  4. 上記ブロック型ポリイソシアネートが、ε−カプロラクタムでブロックされたポリイソシアネートである請求項3に記載の表面処理金属板。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の表面処理金属板とポリフェニレンスルフィドとが、インサート成形によって複合化されたことを特徴とする金属板複合樹脂成形品。
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