以下、本発明の樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置について詳細に説明する。
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、支持体と、接着層とを有し、接着層は、支持体上に設けられた第1の樹脂組成物層と、該第1の樹脂組成物層上に設けられた中間層と、該中間層上に設けられた第2の樹脂組成物層と、を有し、中間層中の無機充填材の含有量は、中間層中の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、80質量%以上であることを特徴とする。
本発明の樹脂シートは、支持体と、接着層とを有する。以下、本発明の樹脂シートを構成する各層について詳細に説明する。
<支持体>
本発明の樹脂シートは、支持体を有する。本発明における支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミドなどが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
支持体は、接着層(詳細には第1の樹脂組成物層)と接合する面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。
また、支持体としては、接着層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック(株)製の「SK−1」、「AL−5」、「AL−7」、東レ(株)製「ルミラーT6AM」などが挙げられる。
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm〜75μmの範囲が好ましく、10μm〜60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
<接着層>
接着層は、支持体上に設けられた第1の樹脂組成物層と、該第1の樹脂組成物層上に設けられた中間層と、該中間層上に設けられた第2の樹脂組成物層と、を有する。
<<第1の樹脂組成物層>>
第1の樹脂組成物層は支持体と接合しており、プリント配線板の製造に際しては、その上に導体層が設けられる絶縁層の表面近傍の領域を形成する。第1の樹脂組成物層の形成に使用される樹脂組成物(以下、「第1の樹脂組成物」ともいう。)は特に限定されず、その硬化物が十分な硬度と絶縁性を有するものであればよい。斯かる樹脂組成物としては、例えば、硬化性樹脂とその硬化剤を含む組成物が挙げられる。硬化性樹脂としては、プリント配線板の絶縁層を形成する際に使用される従来公知の硬化性樹脂を用いることができ、中でもエポキシ樹脂が好ましい。したがって一実施形態において、第1の樹脂組成物は(a)エポキシ樹脂及び(b)硬化剤を含む。第1の樹脂組成物は、必要に応じて、さらに(c)無機充填材、(d)熱可塑性樹脂、(e)硬化促進剤、(f)難燃剤及び(g)有機充填材等の添加剤を含んでいてもよい。
以下、第1の樹脂組成物の材料として使用し得るエポキシ樹脂、硬化剤、及び添加剤について説明する。
−(a)エポキシ樹脂−
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂及びトリメチロール型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。中でも、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)と、1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」という。)とを含むことが好ましい。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用することで、優れた可撓性を有する樹脂組成物が得られる。また、樹脂組成物の硬化物の破断強度も向上する。
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「YL7223」、「YL7723」、「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、「ZX1658」(シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂)、(株)ADEKA製の「EP−4088L」(ジシクロペンタジエンジメタノール型エポキシ樹脂)、ナガセケムテックス(株)製の「EX−721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、又はナフチレンエーテル型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、又はナフチレンエーテル型エポキシ樹脂がより好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂がさらに好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP−4700」、「HP−4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N−690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP−7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA7311」、「EXA7311−G3」、「EXA7311−G4」、「EXA7311−G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)製の「EPPN−502H」(トリスフェノールエポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラックエポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ESN475V」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「ESN485V」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、大阪ガスケミカル(株)製の「PG−100」、「CG−500」、三菱化学(株)製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1〜1:8の範囲が好ましく、1:0.3〜1:7の範囲がより好ましく、1:0.6〜1:6の範囲がさらに好ましい。
第1の樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上又は25質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらにより好ましくは40質量%以下である。
なお、本発明において、樹脂組成物(あるいは層)を構成する各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物(あるいは層)中の不揮発成分の合計を100質量%としたときの値である。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50〜3000、より好ましくは80〜2000、さらに好ましくは110〜1000である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100〜5000、より好ましくは250〜3000、さらに好ましくは400〜1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
−(b)硬化剤−
硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されず、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤などが挙げられる。硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び導体層との密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック硬化剤が好ましい。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成(株)製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」、日本化薬(株)製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金(株)製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN375」、「SN395」、DIC(株)製の「LA7052」、「LA7054」、「LA3018」、「EXB−9500」等が挙げられる。
粗化処理後に表面粗さの小さい絶縁層を得る観点、導体層との密着性に優れる絶縁層を得る観点から、活性エステル系硬化剤も好ましい。活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン−ジシクロペンタレン−フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000−65T」(DIC(株)製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416−70BK」(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子(株)製の「HFB2006M」、四国化成工業(株)製の「P−d」、「F−a」が挙げられる。
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン(株)製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル(株)製の「V−03」、「V−07」等が挙げられる。
エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.2〜1:2の範囲が好ましく、1:0.3〜1:1.5がより好ましく、1:0.4〜1:1.2がさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。エポキシ樹脂と硬化剤との量比を斯かる範囲とすることにより、樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより向上する。
一実施形態において、第1の樹脂組成物は、先述の(a)エポキシ樹脂及び(b)硬化剤を含む。第1の樹脂組成物は、(a)エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との混合物(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂の質量比は好ましくは1:0.1〜1:8、より好ましくは1:0.3〜1:7、さらに好ましくは1:0.6〜1:6)を、(b)硬化剤としてフェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤からなる群から選択される1種以上(好ましくはフェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤及び活性エステル系硬化剤からなる群から選択される1種以上)を、それぞれ含むことが好ましい。
第1の樹脂組成物中の硬化剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらにより好ましくは18質量%以下である。また、下限は特に制限はないが3質量%以上が好ましい。
−(c)無機充填材−
第1の樹脂組成物は、さらに無機充填材を含んでもよい。無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。またシリカとしては球状シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第1の樹脂組成物に使用される無機充填材の平均粒径は特に限定されないが、表面粗さの小さい絶縁層を得る観点や微細配線形成性向上の観点から、好ましくは600nm以下、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは200nm以下、さらにより好ましくは150nm以下、又は120nm以下である。該平均粒径の下限は、特に限定されないが、通常、5nm以上である。このような平均粒径を有する無機充填材の市販品としては、例えば、(株)アドマテックス製「YC100C」、「YA050C」、「YA050C−MJE」、「YA010C」、電気化学工業(株)製「UFP−30」、(株)トクヤマ製「シルフィルNSS−3N」、「シルフィルNSS−4N」、「シルフィルNSS−5N」、(株)アドマテックス製「SOC2」、「SOC1」等が挙げられる。
無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製「LA−500」等を使用することができる。
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤などの1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業(株)製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM−4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)等が挙げられる。
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下が更に好ましい。
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、(株)堀場製作所製「EMIA−320V」等を使用することができる。
第1の樹脂組成物中の無機充填材の含有量は特に限定されないが、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、さらにより好ましくは48質量%以下、46質量%以下、又は44質量%以下である。第1の樹脂組成物中の無機充填材の含有量の下限は特に限定されず0質量%であってもよい。
−(d)熱可塑性樹脂−
第1の樹脂組成物は、さらに熱可塑性樹脂を含んでもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリスルホン樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は8,000〜70,000の範囲が好ましく、10,000〜60,000の範囲がより好ましく、20,000〜60,000の範囲がさらに好ましい。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、新日鉄住金化学(株)製の「FX280」及び「FX293」、三菱化学(株)製の「YX7180BH40」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
アクリル樹脂としては、官能基含有アクリル樹脂が好ましく、エポキシ基含有アクリル樹脂がより好ましく、エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂がさらに好ましい。アクリル樹脂として官能基含有アクリル樹脂を用いる場合、その官能基当量は、好ましくは1000〜50000、より好ましくは2500〜30000である。
アクリル樹脂の具体例としては、ナガセケムテックス(株)製の「SG−80H」、「SG−P3」(エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体樹脂)が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業(株)製の電化ブチラール4000−2、5000−A、6000−C、6000−EP、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ、KSシリーズ(具体的には「KS−1」など)、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。また、ポリイミド樹脂の具体例としては、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報及び特開2000−319386号公報等)等の変性ポリイミドが挙げられる。
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業(株)製のポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド「KS9100」、「KS9300」等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)製の「PES5003P」等が挙げられる。
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
第1の樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、5質量%以上又は6質量%以上である。熱可塑性樹脂の含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
−(e)硬化促進剤−
第1の樹脂組成物は、さらに硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤等が挙げられ、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン等が挙げられ、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセンが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱化学(株)製の「P200−H50」等が挙げられる。
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンが好ましい。
第1の樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は特に限定されないが、エポキシ樹脂と硬化剤の不揮発成分合計量を100質量%としたとき、0.05質量%〜3質量%の範囲で使用することが好ましい。
−(f)難燃剤−
第1の樹脂組成物は、さらに難燃剤を含んでもよい。難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
難燃剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三光(株)製の「HCA−HQ」等が挙げられる。
第1の樹脂組成物層中の難燃剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.5質量%〜20質量%、より好ましくは1質量%〜15質量%、さらに好ましくは1.5質量%〜10質量%がさらに好ましい。
−(g)有機充填材−
第1の樹脂組成物は、さらに有機充填材を含んでもよい。有機充填材としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子などが挙げられ、ゴム粒子が好ましい。
ゴム粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、アイカ工業(株)製の「AC3816N」等が挙げられる。
第1の樹脂組成物中の有機充填材の含有量は、好ましくは1質量%〜20質量%、より好ましくは2質量%〜10質量%である。
−その他の成分−
第1の樹脂組成物は、必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよく、斯かる他の添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに有機フィラー、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
第1の樹脂組成物層の厚みとしては、薄膜の絶縁層を得る観点、導体層との密着性の観点から、0.3〜10μmが好ましい。第1の樹脂組成物層の厚みの下限は、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上、1.5μm以上、2μm以上、2.5μm以上、又は3μm以上である。特に第1の樹脂組成物層の厚みを1μm以上とすることで、より導体層との密着性を高めることができる。第1の樹脂組成物層の厚みの上限は、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは7μm以下、6μm以下、又は5μm以下である。なお、第1の樹脂組成物層の厚みは、第2の樹脂組成物層の厚みよりも薄いことが好ましい。第1の樹脂組成物層の厚みは、後述する[樹脂シートの各層の厚みの測定]に記載の手順に従って測定することができる。
先述のとおり、第1の樹脂組成物層は、支持体と接合しており、プリント配線板の製造に際しては、その上に導体層が形成される絶縁層の表面近傍の領域を形成する。したがって第1の樹脂組成物層は、その上に導体層が形成される樹脂組成物層(導体層形成用の樹脂組成物層)であり、中でも、その上にメッキ導体層が形成される樹脂組成物層(メッキ形成用の樹脂組成物層)として好適である。
<<中間層>>
本発明の樹脂シートは、第1の樹脂組成物層上に設けられた中間層を有する。
得られる絶縁層の平均線熱膨張係数(以下、熱膨張率ともいう)を十分に低下させ、部品の実装工程における反りを抑制する観点から、中間層は、無機充填材を高い含有量にて含む。中間層中の不揮発成分の合計を100質量%としたとき、中間層中の無機充填材の含有量は80質量%以上であり、好ましくは81質量%以上、より好ましくは83質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上である。無機充填材の含有量を高めることによって、得られる絶縁層の熱膨張率を低下させ得るばかりでなく、得られる絶縁層の剛性を高めることもでき、薄膜であっても、部品の実装工程における反りを抑制し得る絶縁層を実現することができる。しかしながら、無機充填材の含有量が高いと、層が脆性破壊し易く取り扱い性が低下したり、回路埋め込み性や導体層との密着性が低下したりするなどの問題が生じる。この点、中間層が第1及び第2の樹脂組成物層で挟持された層構造を有する本発明の樹脂シートでは、取り扱い性の低下等の問題なしに、中間層中の無機充填材の含有量をさらに高めることができる。例えば、中間層中の無機充填材の含有量は、87質量%以上、89質量%以上、90質量%以上、92質量%以上、94質量%以上、96質量%以上、又は98質量%以上にまで高めてよく、100質量%であってもよい。
中間層において、無機充填材としては、第1の樹脂組成物について説明した無機充填材を使用してよく、中でも、シリカが好適である。中間層に使用する無機充填材としてはまた、ガラスファイバーも好適である。したがって一実施形態において、中間層に使用する無機充填材は、シリカ又はガラスファイバーである。中間層に使用するシリカとしては、コロイダルシリカ、球状シリカが好適である。したがって一実施形態において、中間層に使用する無機充填材は、コロイダルシリカ、球状シリカ又はガラスファイバーである。中でも、熱膨張率が低く剛性の高い絶縁層が得られる観点から、中間層に使用する無機充填材は、コロイダルシリカ、平均粒径10μm以下の球状シリカ、又は平均フィラメント径10μm以下のガラスファイバーが好適である。
コロイダルシリカは、シリカ微粒子が分散媒に分散した分散体である。本発明において、分散媒は中間層を構成する他の成分(例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等の樹脂成分)であってよい。コロイダルシリカにおいて、シリカ微粒子の形状は、部品の実装工程における反りを十分に抑制し得る観点から、鎖状であることが好適である。以下、シリカ微粒子の形状が鎖状であるコロイダルシリカを「鎖状コロイダルシリカ」という。なお、コロイダルシリカについていう「鎖状」とは、シリカ微粒子のアスペクト比(鎖長/鎖直径比)が2以上であることを表す。鎖状コロイダルシリカのアスペクト比は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上である。該アスペクト比の上限は特に限定されないが、通常、1000以下、500以下、100以下などとし得る。
コロイダルシリカの平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.4μm以下、さらに好ましくは0.3μm以下又は0.2μm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、さらに好ましくは0.03μm以上である。なお、平均粒径は動的光散乱法で測定され、球相当平均径である。
コロイダルシリカは市販品を用いることができ、例えば、日産化学工業(株)製「MEK−ST−UP」、「MEK−ST−40」、「MEK−ST−L」、「MEK−ST−ZL」、「MEK−AC−4130Y」等が挙げられる。コロイダルシリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
ガラスファイバーとしては、公知の種々のガラスファイバーを用いることができる。ガラスファイバーの材料としては、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス、石英ガラス、Qガラスが挙げられ、中でもSガラス、Tガラス、石英ガラス、Qガラスが好ましい。ガラスファイバーの形態は、ヤーン、ロービング、ミルドファイバー、ストランド、チョップドストランド等いずれであってもよい。
ガラスファイバーの平均フィラメント径(平均直径)は、特に制限はないが、熱膨張率が低く剛性の高い絶縁層が得られる観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上である。
ガラスファイバーのチョップ長(平均繊維長)は、特に制限はないが、熱膨張率が低く剛性の高い絶縁層が得られる観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。下限については特に制限はないが、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。
ガラスファイバーは市販品を用いることができ、例えば、信越石英(株)製「SQCBC−02−3」、「SQCBC−02−3A」、「SQCBC−02−3B」、「SQCE225−02−3」、「SQMBC−00」、セントラル硝子(株)製「EFDE−50−01」、「EFDE−90−01」、「EFDE−50−31」等が挙げられる。ガラスファイバーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
中間層に含まれる球状シリカの平均粒径は、熱膨張率が低く剛性の高い絶縁層が得られる観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは5μm以下、3μm以下、又は1μm以下である。下限については充填性を向上させるという観点から、0.01μm以上、0.1μm以上などとし得る。球状シリカの市販品としては、例えば、(株)アドマテックス製「SOC4」、「SOC2」、「SOC1」が挙げられる。
中間層に含まれる無機充填材は、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の種類及び表面処理の程度は、<<第1の樹脂組成物層>>欄において説明したとおりである。
中間層は、無機充填材に加えて他の材料を含んでいてもよい。斯かる場合、中間層を形成するための組成物(以下、「中間層形成組成物」ともいう。)が含んでいてもよい他の材料としては、例えば、<<第1の樹脂組成物層>>欄において説明した(a)、(b)、(d)〜(g)成分、他の添加剤が挙げられる。一実施形態において、中間層形成組成物(ひいては中間層)は、(d)熱可塑性樹脂を含む。(d)熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂が好適である。したがって好適な一実施形態において、中間層形成組成物は、フェノキシ樹脂を含む。
中間層形成組成物がフェノキシ樹脂を含む場合、反りをさらに抑制する観点から、フェノキシ樹脂のTg(ガラス転移点)は低いことが好適である。例えば、フェノキシ樹脂のTgは100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。斯かる場合、フェノキシ樹脂のTgの下限は特に限定されないが、通常、−30℃以上とし得る。あるいはまた、加工性の観点から、フェノキシ樹脂のTgは高くてもよい。斯かる場合、フェノキシ樹脂のTgは、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、Tgの上限は、通常、200℃以下とし得る。なお、中間層形成組成物がエポキシ樹脂を含む場合、上記と同様の理由により、該エポキシ樹脂のTgは低くても高くてもよく、好適なTgの範囲は上記と同様である。
中間層形成組成物が(d)熱可塑性樹脂を含む場合、(d)熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。該含有量の上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、又は10質量%以下である。
一実施形態において、中間層形成組成物は、(a)エポキシ樹脂を含む。(a)エポキシ樹脂としては、固体状エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂(エポキシ樹脂中の固体状エポキシ樹脂の含有量は好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であり、固体状エポキシ樹脂のみであってもよい。)が好適である。
中間層形成組成物が(a)エポキシ樹脂を含む場合、(a)エポキシ樹脂の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。該含有量の上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
中間層形成組成物が(a)エポキシ樹脂を含む場合、(b)硬化剤をさらに含むことが好適である。(b)硬化剤の含有量は、2〜15質量%とし得る。
中間層の厚みとしては、薄膜の絶縁層を得る観点、反りを抑制する観点から、1〜20μmが好ましい。中間層の厚みの下限は、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは3μm以上、又は5μm以上である。中間層の厚みの上限は、より好ましくは18μm以下、さらに好ましくは17μm以下、15μm以下、13μm以下、又は11μm以下である。中間層の厚みは、後述する[樹脂シートの各層の厚みの測定]に記載の手順に従って測定することができる。
中間層の厚みは、反りを抑制する観点から、接着層の合計厚みの5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。上限については特に限定されないが、好ましくは85%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下、50%以下、又は40%以下である。
<<第2の樹脂組成物層>>
本発明の樹脂シートは、中間層上に設けられた第2の樹脂組成物層を有する。第2の樹脂組成物層は、プリント配線板の製造に際して内層基板と接合する層である。第2の樹脂組成物層の形成に使用される樹脂組成物(以下、「第2の樹脂組成物」ともいう。)は特に限定されず、良好な積層性を実現すると共に、その硬化物が十分な硬度と絶縁性を有するものであればよい。
熱膨張率の低い絶縁層を得る観点から、第2の樹脂組成層を形成するために使用する樹脂組成物(以下、「第2の樹脂組成物」ともいう。)は、無機充填材を含むことが好ましい。第2の樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、得られる絶縁層の熱膨張率を低下させる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、60質量%以上、又は70質量%以上である。第2の樹脂組成物中の無機充填材の含有量の上限は、積層性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは78質量%以下、さらに好ましくは76質量%以下又は74質量%以下である。
第2の樹脂組成物に含まれる無機充填材としては、例えば、第1の樹脂組成物について説明した無機充填材が挙げられ、中でもシリカが好ましく、球状シリカがより好ましい。
第2の樹脂組成物に含まれる無機充填材の平均粒径は、絶縁信頼性、及び小径ビア加工性を向上させる観点から、1μm以下が好ましく、0.8μm以下がより好ましく、0.6μm以下がさらに好ましい。下限については特に限定されないが、通常、0.01μm以上、0.1μm以上である。このような平均粒径を有する無機充填材の市販品としては、例えば、(株)アドマテックス製「SOC4」、「SOC2」、「SOC1」が挙げられる。
第2の樹脂組成物に含まれる無機充填材は、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の種類及び表面処理の程度は、<第1の樹脂組成物層>欄において説明したとおりである。
好適な一実施形態において、第2の樹脂組成物(ひいては第2の樹脂組成物層)は、平均粒径1μm以下の無機充填材を80質量%以下含む。
第2の樹脂組成物に含まれる他の材料としては、例えば、<第1の樹脂組成物層>欄において説明した、(a)エポキシ樹脂をはじめとする硬化性樹脂、及び(b)硬化剤が挙げられる。したがって一実施形態において、第2の樹脂組成物は、(a)エポキシ樹脂、(b)硬化剤及び(c)無機充填材を含む。各成分の好適な例は、<第1の樹脂組成物層>欄において説明したとおりであるが、中でも、第2の樹脂組成物は、(a)エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との混合物(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂の質量比は1:0.1〜1:4の範囲が好ましく、1:0.3〜1:3.5の範囲がより好ましく、1:0.6〜1:3の範囲がさらに好ましく、1:0.8〜1:2.5の範囲が特に好ましい)を、(b)硬化剤としてフェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤からなる群から選択される1種以上(好ましくはフェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤及び活性エステル系硬化剤からなる群から選択される1種以上)を、(c)無機充填材としてシリカをそれぞれ含むことが好ましい。
第2の樹脂組成物中の(a)エポキシ樹脂の含有量は特に限定されないが、好ましくは3質量%〜50質量%、より好ましくは5質量%〜45質量%、さらに好ましくは5質量%〜40質量%、さらにより好ましくは7質量%〜35質量%である。
第2の樹脂組成物における(a)エポキシ樹脂と(b)硬化剤との量比は、<第1の樹脂組成物層>欄において説明したものと同様とし得る。
第2の樹脂組成物中の(b)硬化剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらにより好ましくは15質量%以下、10質量%以下である。また、下限は特に制限はないが、3質量%以上が好ましい。
第2の樹脂組成物は、さらに(d)熱可塑性樹脂、(e)硬化促進剤、(f)難燃剤及び(g)有機充填材からなる群から選択される1種以上の成分を含んでもよい。これら(d)乃至(g)成分の好適な例は、<第1の樹脂組成物層>欄において説明したとおりである。第2の樹脂組成物中の(d)熱可塑性樹脂の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.1質量%〜20質量%、より好ましくは0.5質量%〜10質量%である。第2の樹脂組成物中の(e)硬化促進剤の含有量は、(a)エポキシ樹脂と(b)硬化剤の不揮発成分合計量を100質量%としたとき、好ましくは0.05質量%〜3質量%である。第2の樹脂組成物中の(f)難燃剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.5質量%〜10質量%、より好ましくは1質量%〜9質量%、さらにより好ましくは1.5質量%〜8質量%である。第2の樹脂組成物中の(g)有機充填材の含有量は特に限定されないが、好ましくは1質量%〜10質量%、より好ましくは2質量%〜5質量%である。
第2の樹脂組成物は、必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよく、斯かる他の添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに有機フィラー、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
第2の樹脂組成物層の厚みとしては、所期の厚さの絶縁層が得られる限り特に限定されないが、3〜200μmが好ましい。第2の樹脂組成物層の厚みの下限は、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上、又は15μm以上である。第2の樹脂組成物層の厚みの上限は、反りの抑制を高めるために、より好ましくは180μm以下、さらに好ましくは160μm以下、150μm以下、140μm以下、120μm以下、又は100μm以下、80μm以下、60μm以下、又は40μm以下である。第2の樹脂組成物層の厚みは、後述する[樹脂シートの各層の厚みの測定]に記載の手順に従って測定することができる。
第2の樹脂組成物層の最低溶融粘度としては、良好な回路埋め込み性を得る観点から、10000poise(1000Pa・s)以下が好ましく、8000poise(800Pa・s)以下がより好ましく、5000poise(500Pa・s)以下がさらに好ましい。該最低溶融粘度の下限は、プリント配線板の製造に際して樹脂の染みだしを抑制する観点から、500poise(50Pa・s)以上が好ましく、800poise(80Pa・s)以上がより好ましく、1000poise(100Pa・s)以上がさらに好ましい。
樹脂組成物層の最低溶融粘度とは、樹脂組成物層の樹脂が溶融した際に樹脂組成物層が呈する最低の粘度をいう。詳細には、一定の昇温速度で樹脂組成物層を加熱して樹脂を溶融させると、初期の段階は溶融粘度が温度上昇とともに低下し、その後、ある程度を超えると温度上昇とともに溶融粘度が上昇する。最低溶融粘度とは、斯かる極小点の溶融粘度をいう。樹脂組成物層の最低溶融粘度は、動的粘弾性法により測定することができ、例えば、後述する[最低溶融粘度の測定]に記載の方法に従って測定することができる。
先述のとおり、第2の樹脂組成物層は、プリント配線板の製造に際して内層基板と接合する層である。したがって第2の樹脂組成物層は、内層基板の表面回路を埋め込むための樹脂組成物層(回路埋め込み用の樹脂組成物層)として好適である。
本発明の樹脂シートにおいて、第1の樹脂組成物層中の無機充填材の含有量(質量%)をA、中間層中の無機充填材の含有量(質量%)をB、及び第2の樹脂組成物層中の無機充填材の含有量(質量%)をCとしたとき、A、B及びCが、A<C<Bの関係を満たすことが好ましい。斯かる関係を満たすことにより、各層に期待される上述の効果をより好適に達成し得る。
好適な一実施形態において、A及びCの差(C−A)は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、25質量%以上、又は30質量%以上である。差(C−A)の上限は特に限定されないが、通常、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、又は50質量%以下等とし得る。
また、好適な一実施形態において、B及びCの差(B−C)は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。差(B−C)の上限は特に限定されないが、通常、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、又は15質量%以下等とし得る。
本発明の樹脂シートは、第1の樹脂組成物層と中間層との間、及び/又は中間層と第2の樹脂組成物層との間に他の層を有していてもよい。
本発明の樹脂シートは、第2の樹脂組成物層の表面に、保護フィルムをさらに含んでもよい。保護フィルムは、第2の樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズの防止に寄与する。保護フィルムの材料としては、支持体について説明した材料と同じものを用いてよい。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm〜40μmである。樹脂シートは、プリント配線板を製造する際には、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
[樹脂シートの製造方法]
本発明の樹脂シートの製造方法は、支持体上に所期の層構成(第1の樹脂組成物層\中間層\第2の樹脂組成物層)を有する接着層を設けることができる限りにおいて特に限定されず、当業者に公知の方法を使用してよい。
支持体上に接着層を設ける方法としては、例えば、支持体上に、接着層を形成するための材料を含有する塗布液を塗布し、乾燥させて接着層を設ける方法が挙げられる。本発明の樹脂シートを製造するに際しては、塗布液として、第1の樹脂組成物を含有する塗布液(以下、「第1の塗布液」ともいう。)、中間層形成組成物を含有する塗布液(以下、「中間層形成用塗布液」ともいう。)、第2の樹脂組成物を含有する塗布液(以下、「第2の塗布液」ともいう。)を使用する。第1の塗布液、中間層形成用塗布液、及び第2の塗布液の塗布及び乾燥の方法は、所期の層構成(第1の樹脂組成物層\中間層\第2の樹脂組成物層)を有する接着層を設けることができる限り特に限定されず、同時塗工法、タンデム塗工法、2度塗り法、貼り合わせ法等をはじめとする公知の方法を使用してよい。なお、同時塗工法とは、複数の塗布液を同時に塗布し、その後乾燥させる方法であり、タンデム塗工法とは、或る塗布液xを塗布し、予備乾燥させた後、該塗布液x上に他の塗布液を塗布し、乾燥させる方法である。2度塗り法とは、或る塗布液xを塗布し、乾燥させた後、該樹脂組成物層上に他の塗布液を塗布し、乾燥させる方法である。貼り合せ法とは、或る塗布液xを塗布し、乾燥させた後、該樹脂組成物層上に他の樹脂組成物を貼り合わせる方法である。
好適な一実施形態において、第1の塗布液と中間層形成用塗布液の2液、中間層形成用塗布液と第2の塗布液の2液、又は第1の塗布液、中間層形成用塗布液及び第2の塗布液の3液を同時塗工法により塗布し、乾燥して接着層を形成する。例えば、第1の塗布液と中間層形成用塗布液の2液を同時塗工法により塗布し、乾燥させる場合、支持体上に第1の塗布液を塗布すると同時に第1の塗布液上に中間層形成用塗布液を塗布し、その後乾燥させ、支持体/第1の樹脂組成物層/中間層の順で積層したシートを作製する。この場合、第2の樹脂組成物層は、第2の塗布液を中間層上に塗布し、乾燥させることで形成する。
好適な他の一実施形態において、第1の塗布液と中間層形成用塗布液の2液、中間層形成用塗布液と第2の塗布液の2液、又は第1の塗布液、中間層形成用塗布液及び第2の塗布液の3液をタンデム塗工法により塗布し、乾燥して接着層を形成する。例えば、第1の塗布液と中間層形成用塗布液の2液をタンデム塗工法により塗布し、乾燥させる場合、支持体上に第1の塗布液を塗布し、予備乾燥させた後、第1の塗布液上に中間層形成用塗布液を塗布し、その後乾燥させ、支持体/第1の樹脂組成物層/中間層の順で積層したシートを作製する。この場合も、第2の樹脂組成物層は、第2の塗布液を中間層上に塗布し、乾燥させることで形成する。
また、同時塗工法とタンデム塗工法を組み合わせて用いて、所期の層構成(第1の樹脂組成物層\中間層\第2の樹脂組成物層)を有する接着層を支持体上に設けてもよい。
各塗布液は、各樹脂組成物や中間層形成組成物を溶剤に溶解して調製することができる。塗布液の調製に用いる溶剤としては特に制限はないが、有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶媒やソルベントナフサ等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。各塗布液に用いる溶剤は、同一であっても異なっていてもよい。
各塗布液中に含まれる溶剤は、塗布液中に含まれる不揮発成分の合計を100質量%としたとき、好ましくは75質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下、特に好ましくは45質量%以下となるように調整する。下限は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。
塗布液の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、リバースコート法、キスリバースコート法、ダイコート法、スロットダイ法、リップコート法、コンマコート法、ブレードコート法、ロールコート法、ナイフコート法、カーテンコート法、チャンバーグラビアコート法、スロットオリフィス法、スプレーコート法、ディップコート法等が挙げられる。各塗布液は、1回で塗布してもよく、数回に分けて塗布してもよい。数回に分けて塗布する場合、異なる塗布方法を複数組み合わせて塗布してもよい。中でも、塗布された層の均一性が良好であることから、塗布方法としてはダイコート法が好ましい。塗布液の塗布は、異物混入等をさけるために、クリーンルーム等の異物が少ない環境で実施することが好ましい。
同時塗工法においては、例えば、異なる塗布液を塗布するための複数のスリットを備えたマルチスリット型ダイコーター等の公知の多層塗工システムを用いて塗布することができる。
タンデム塗工法における予備乾燥は特に制限はなく、加熱、熱風吹きつけ等の公知の乾燥方法により実施してよい。予備乾燥条件は特に限定されないが、予備乾燥後の塗布液中の残留溶剤量が、塗布液中に含まれる不揮発成分の合計を100質量%としたとき、好ましくは70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、又は40質量%以下となるように予備乾燥させる。残留溶剤量の下限は、好ましくは15質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上である。塗布液中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%〜60質量%の有機溶剤を含む塗布液を用いる場合、50〜150℃で0.1〜3分間(より好ましくは60〜130℃で0.2〜2分間、さらに好ましくは70〜120℃で0.3〜1.5分間)乾燥させることが好ましい。
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の乾燥方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥後の接着層中の残留溶剤量が、接着層中に含まれる不揮発成分の合計を100質量%としたとき、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。残留溶剤量の下限は特に限定されないが、通常、0.1質量%以上、0.5質量%以上などとし得る。各塗布液中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%〜60質量%の有機溶剤を含む塗布液を用いる場合、50℃〜150℃で3分間〜10分間乾燥させることが好ましい。当業者は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。
本発明の樹脂シートを製造するに際しては、第2の樹脂組成物層の表面(支持体側とは反対側の面)に、保護フィルムを積層する工程をさらに実施してもよい。保護フィルムの詳細は先述のとおりである。
本発明の樹脂シートは、プリント配線板の製造に際して、熱膨張率の低い絶縁層(接着層の硬化物)をもたらすことができる。接着層の硬化物の30〜150℃の平均線熱膨張係数は、20ppm/℃以下であることが好ましく、17ppm/℃以下であることがより好ましく、16ppm/℃以下であることがさらに好ましい。下限については特に限定されないが、通常、0.1ppm/℃以上、0.5ppm/℃以上、又は1ppm/℃以上である。接着層の硬化物の平均線熱膨張係数は、後述する[接着層の硬化物の平均線熱膨張係数の測定]に記載の手順に従って測定することができる。
接着層の硬化物の150〜240℃の平均線熱膨張係数は、40ppm/℃以下であることが好ましく、35ppm/℃以下であることがより好ましく、30ppm/℃以下であることがさらに好ましい。下限については特に限定されないが、通常、0.1ppm/℃以上、0.5ppm/℃以上、又は1ppm/℃以上である。本発明の樹脂シートは、このように高温条件下においても熱膨張率の低い絶縁層(接着層の硬化物)をもたらすことができ、部品の実装工程等の高温環境下における反りの発生を抑制することができる。
好適な一実施形態において、接着層の硬化物の30〜150℃の平均線熱膨張係数は20ppm/℃以下であり、かつ、150〜240℃の平均線熱膨張係数は40ppm/℃以下である。
[プリント配線板及びその製造方法]
本発明の樹脂シートを用いて、プリント配線板を製造することができる。例えば、本発明の樹脂シートを内層基板上に積層し、熱硬化させた後に支持体を除去することによって、プリント配線板を製造することができる。したがって本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂シートを用いて形成された絶縁層を含むことを特徴とする。
詳細には、本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂シートを用いて、下記工程(I)乃至(III)を含む方法により製造することができる。
(I)本発明の樹脂シートを、第2の樹脂組成物層が内層基板と接合するように、内層基板に積層する工程
(II)樹脂シートを熱硬化して絶縁層を形成する工程
(III)支持体を除去する工程
工程(I)において、本発明の樹脂シートを、第2の樹脂組成物層が内層基板と接合するように、内層基板上に積層する。
工程(I)に使用する「内層基板」とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板、又は該基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された回路基板をいう。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう「内層基板」に含まれる。
工程(I)における樹脂シートと内層基板との積層は、従来公知の任意の方法で実施してよいが、ロール圧着やプレス圧着等で、第2の樹脂組成物層が内層基板と接合するようにラミネート処理することが好ましい。
ラミネート処理は、ロール圧着やプレス圧着等で、ラミネート処理することが好ましい。中でも、減圧下でラミネートする真空ラミネート法がより好ましい。ラミネートの方法は、バッチ式でも連続式であってもよい。
ラミネート処理は、一般に、圧着圧力を1〜11kgf/cm2(9.8×104〜107.9×104N/m2)の範囲とし、圧着温度を70〜120℃の範囲とし、圧着時間を5〜180秒間の範囲とし、空気圧が20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下で実施することが好ましい。
ラミネート処理は、市販の真空ラミネーターを用いて実施することができる。市販されている真空ラミネーターとしては、例えば、(株)名機製作所製の真空加圧式ラミネーター、ニチゴー・モートン(株)製のバキュームアップリケーター等が挙げられる。
なお、内層基板の表面凹凸(例えば、内層回路基板の表面回路の凹凸)に樹脂シートが十分に追随するように、耐熱ゴム等の弾性材を介してラミネート処理することが好ましい。
工程(I)において、樹脂シートは、内層基板の片面に積層してもよく、内層基板の両面に積層してもよい。
工程(I)の後、内層基板に積層された樹脂シートを、加熱及び加圧して、平滑化する処理を実施してもよい。平滑化処理は、一般に、常圧(大気圧)下、加熱された金属板又は金属ロールにより、樹脂シートを加熱及び加圧することにより実施される。加熱及び加圧の条件は、上記ラミネート処理の条件と同様の条件を用いることができる。なお、ラミネート処理と平滑化処理は、市販の真空ラミネーターを用いて連続的に実施してよい。
工程(II)において、樹脂シートを熱硬化して絶縁層を形成する。詳細には、積層された樹脂シートの接着層(第1の樹脂組成物層、中間層、及び第2の樹脂組成物層)を熱硬化して絶縁層を形成する。
熱硬化の条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
例えば、樹脂シートの熱硬化条件は、接着層を構成する各樹脂組成物や中間層形成組成物の組成によっても異なるが、硬化温度は120℃〜240℃の範囲(好ましくは150℃〜210℃の範囲、より好ましくは170℃〜190℃の範囲)、硬化時間は5分間〜150分間の範囲(好ましくは10分間〜120分間、より好ましくは15分間〜90分間)とすることができる。
樹脂シートを熱硬化させる前に、接着層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂シートを熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、接着層を5分間以上(好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは15分間〜120分間)予備加熱してもよい。
工程(III)において、支持体を除去する。これにより、絶縁層の表面が露出する。支持体の除去は、手動で行ってもよく、自動剥離装置等を用いて機械的に行ってもよい。また、支持体として金属箔を使用した場合には、化学薬品を用いて除去してもよい。
プリント配線板を製造するに際しては、(IV)絶縁層に穴あけする工程、(V)絶縁層を粗化処理する工程、(VI)絶縁層表面に導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(IV)乃至(VI)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体の除去は、工程(II)と工程(IV)との間、工程(IV)と工程(V)の間、又は工程(V)と工程(VI)との間に実施してよい。
工程(IV)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。例えば、ドリル、レーザー(炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等)、プラズマ等を使用して絶縁層にホールを形成することができる。
工程(V)は、絶縁層を粗化処理する工程である。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃〜90℃の膨潤液に絶縁層を1分間〜20分間浸漬することにより行うことができる。酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃〜80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間〜30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%〜10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクトCP、ドージングソリューション・セキュリガンスP等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のリダクションソリューション・セキュリガントPが挙げられる。中和液による処理は、酸化剤溶液による粗化処理がなされた処理面を30℃〜80℃の中和液に5分間〜30分間浸漬させることにより行うことができる。
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さRaは、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下、250nm以下、200nm以下、150nm以下、又は100nm以下である。本発明の樹脂シートを用いて形成された絶縁層は、このようにRaが小さい場合であっても、導体層に対し優れた密着性を呈する。Ra値の下限は特に限定はされないが、通常、0.5nm以上、1nm以上などとし得る。なお、粗化処理後の絶縁層表面のRaにばらつきがある場合、Raの最大値(Ramax)が上記の範囲にあることが好ましい。
絶縁層表面の算術平均粗さRaは、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。非接触型表面粗さ計の具体例としては、ビーコインスツルメンツ社製の「WYKO NT3300」が挙げられる。
工程(VI)は、絶縁層表面に導体層を形成する工程である。
導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm〜35μm、好ましくは5μm〜30μmである。
導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
まず、絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチングなどにより除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を含むことを特徴とし、本発明のプリント配線板を用いて、半導体装置を製造することができる。本発明のプリント配線板を用いることにより、部品の実装工程におけるプリント配線板の反りを抑制することができる。
一実施形態において、部品の実装工程におけるプリント配線板の反り量は、30μm以下が好ましく、29μm以下がより好ましく、28μm以下がさらに好ましく、27μm以下がさらにより好ましい。反り量の下限は低い程好ましく、0μm以上であってもよい。反り量は、後述する[反り量の評価]に記載の手順に従って測定することができる。
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
[調製例1:塗布液1の調製]
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032SS」、エポキシ当量約144)6部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)12部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000H」、エポキシ当量288)20部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)25部を、ソルベントナフサ15部及びシクロヘキサノン5部の混合溶媒に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(水酸基当量125、DIC(株)製「LA−7054」、固形分60%のMEK溶液)12部、ナフトール系硬化剤(新日鉄住金化学(株)製「SN485」、水酸基当量215、固形分60%のMEK溶液)14部、ポリビニルブチラール樹脂(ガラス転移温度105℃、積水化学工業(株)製「KS−1」)の固形分15%のエタノールとトルエンの1:1の混合溶液12部、アミン系硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)1部、イミダゾール系硬化促進剤(三菱化学(株)製「P200−H50」、固形分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)2部、ゴム粒子(アイカ工業(株)製「AC3816N」)5部をMEK20部に室温で12時間膨潤させておいたもの、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球状シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」、平均粒径0.5μm、単位表面積当たりのカーボン量0.38mg/m2)50部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP050」)で濾過して、塗布液1を調製した。
[調製例2:塗布液2の調製]
ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7760」、エポキシ当量238)10部、ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)製「ZX1059」、エポキシ当量約169、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品)5部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000H」、エポキシ当量288)25部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)6部、フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7769BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)20部を、MEK20部及びシクロヘキサノン5部の混合溶媒に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)30部、アミン系硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)4部、イミダゾール系硬化促進剤(1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(1B2PZ)、固形分5質量%のMEK溶液)3部、フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製「KBM103」)で表面処理された球状シリカ(電気化学工業(株)製「UFP−30」、平均粒径0.1μm、単位表面積当たりのカーボン量0.22mg/m2)45部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP030」)で濾過して、塗布液2を調製した。
[調製例3:塗布液3の調製]
シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)製「ZX1658GS」、エポキシ当量約135)5部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032SS」、エポキシ当量約144)5部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP−4710」、エポキシ当量約170)5部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)5部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000H」、エポキシ当量288)10部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)10部を、ソルベントナフサ20部及びシクロヘキサノン5部の混合溶媒に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(水酸基当量125、DIC(株)製「LA7054」、固形分60%のMEK溶液)12部、ナフトール系硬化剤(DIC(株)製「EXB−9500」、水酸基当量190、固形分50%のMEK溶液)12部、アミン系硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)1部、難燃剤(三光(株)製「HCA−HQ」、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−ヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド、平均粒径2μm)3部、ゴム粒子(アイカ工業(株)製「AC3816N」)2部をMEK10部に室温で12時間膨潤させておいたもの、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球状シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」、平均粒径0.5μm、単位表面積当たりのカーボン量0.38mg/m2)150部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP050」)で濾過して、塗布液3を調製した。
[調製例4:塗布液4の調製]
ジシクロペンタジエンジメタノール型エポキシ樹脂((株)ADEKA製「EP−4088L」、エポキシ当量約165)5部、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7760」、エポキシ当量238)12部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)5部、ナフタレン型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)製「ESN475V」、エポキシ当量330)24部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)10部、ソルベントナフサ25部及びシクロヘキサノン5部の混合溶媒に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(水酸基当量151、DIC(株)製「LA301850P」、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液)12部、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)12部、イミダゾール系硬化促進剤(1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(1B2PZ)、固形分5質量%のMEK溶液)4部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球状シリカ((株)アドマテックス製「SOC1」、平均粒径0.25μm、単位表面積当たりのカーボン量0.36mg/m2)150部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP030」)で濾過して、塗布液4を調製した。
[調製例5:塗布液5の調製]
アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球状シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」、平均粒径0.5μm、単位表面積当たりのカーボン量0.38mg/m2)をMEKに分散させたスラリー溶液(シリカ分70質量%)300部、フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7180BH40」、固形分40質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液、Tg:15℃)56部、イミダゾール系硬化促進剤(三菱化学(株)製「P200−H50」、固形分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)3.5部、MEK50部を添加し高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP050」)で濾過して、塗布液5を調製した。
[調製例6:塗布液6の調製]
石英チョップドストランド(信越石英(株)製「SQCBC−02−3」、平均フィラメント径4μm、チョップ長約30μm)200部、長鎖エポキシ型シラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM−4803」)2部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032SS」、エポキシ当量約144、Tg:159℃)12部、フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)40部、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC−8000−65T」、活性基当量約223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)28部、アミン系硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)10部、MEK100部を添加し高速回転ミキサーで均一に分散して、塗布液6を調製した。
[調製例7:塗布液7の調製]
アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球状シリカ((株)アドマテックス製「SOC2」、平均粒径0.5μm、単位表面積当たりのカーボン量0.38mg/m2)をMEKに分散させたスラリー溶液(シリカ分70質量%)120部、フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7180BH40」、固形分40質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液Tg:15℃)56部、イミダゾール系硬化促進剤(三菱化学(株)製「P200−H50」、固形分50質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)3.5部、MEK50部を添加し高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP050」)で濾過して、塗布液7を調製した。
[調製例8:塗布液8の調製]
塗布液8として、コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製「MEK−ST−UP」、鎖状シリカ20質量%のMEK溶液)を準備した。
[実施例1:樹脂シート1の作製]
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック(株)製「AL−5」)で離型処理したPETフィルム(東レ(株)製「ルミラーT6AM」、厚さ38μm、軟化点130℃)を用意した。
支持体上に、ダイコーターを使用して塗布液1の塗布、乾燥後の狙い厚みが3μmとなるように塗布し、70℃〜120℃(平均95℃)にて4分間乾燥させ、第1の樹脂組成物層を形成した。
次いで、タンデム塗工法を使用して、第1の樹脂組成物層上に中間層及び第2の樹脂組成物層を順に形成した。詳細には、第1の樹脂組成物層上に、ダイコーターを使用して、塗布液8を塗布、乾燥後の狙い厚みが2μmとなるように塗布し、90℃で0.6分間予備乾燥した後、ダイコーターを使用して中間層上に塗布液3を塗布、乾燥後の狙い厚みが20μmとなるように塗布し、80℃〜115℃(平均100℃)にて3分間乾燥させ、各層を形成した。次いで、第2の樹脂組成物層の中間層と接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子特殊紙(株)製「アルファンMA−411」、厚さ15μm)を、該保護フィルムの粗面が第2の樹脂組成物層と接合するように積層した。これにより、支持体、第1の樹脂組成物層(塗布液1由来)、中間層(塗布液8由来)、第2の樹脂組成物層(塗布液3由来)、及び保護フィルムの順からなる樹脂シート1を得た。なお、塗布液の塗布、乾燥後の狙い厚みとは、塗布液を塗布し、そのまま乾燥させた際の厚みのことをいう。
[実施例2:樹脂シート2の作製]
実施例1と同様にして、支持体上に第1の樹脂組成物層を形成した。
同時塗工法により、第1の樹脂組成物層上に中間層及び第2の樹脂組成物層を順に形成した。詳細には、第1の樹脂組成物層上に、2層スリットダイコーターを使用して、塗布、乾燥後の狙い厚みが6μmとなるように塗布液5を塗布すると同時に、塗布液3の塗布、乾燥後の狙い厚みが16μmとなるように塗布液5上に塗布液3を塗布した。70℃〜115℃(平均95℃)にて4分間乾燥させ、各層を形成した。次いで、実施例1と同様にして、第2の樹脂組成物層の中間層と接合していない面に、保護フィルムを積層した。このようにして、支持体、第1の樹脂組成物層(塗布液1由来)、中間層(塗布液5由来)、第2の樹脂組成物層(塗布液3由来)、及び保護フィルムの順からなる樹脂シート2を得た。
[実施例3:樹脂シート3の作製]
タンデム塗工及び同時塗工法により、以下の手順にて樹脂シート3を作製した。塗工機にロール形態のPETフィルムを設置し、巻き出していき、該支持体の離型面にダイコーターを使用して、塗布、乾燥後の狙い厚みが4μmとなるように塗布液2を塗布し、90℃で0.8分間予備乾燥した後、2層スリットダイコーターを使用して、塗布、乾燥後の狙い厚みが10μmとなるように塗布液6を塗布すると同時に、塗布液6上に、塗布、乾燥後の狙い厚みが16μmとなるように塗布液4を塗布した。80℃〜115℃(平均100℃)にて4分間乾燥させ、各層を形成した。次いで、実施例1と同様にして、第2の樹脂組成物層の中間層と接合していない面に、保護フィルムを積層した。このようにして、支持体、第1の樹脂組成物層(塗布液2由来)、中間層(塗布液6由来)、第2の樹脂組成物層(塗布液4由来)、及び保護フィルムの順からなる樹脂シート3を得た。
[比較例1:樹脂シート4の作製]
実施例1と同様にして、支持体上に第1の樹脂組成物層を形成した。
第1の樹脂組成物層上に、ダイコーターを使用して塗布液3を塗布、乾燥後の狙い厚みが22μmとなるように塗布した。70℃〜115℃(平均95℃)にて4分間乾燥させ、第2の樹脂組成物層を形成した。次いで、実施例1と同様にして、第2の樹脂組成物層に保護フィルムを積層し、支持体、第1の樹脂組成物層(塗布液1由来)、第2の樹脂組成物層(塗布液3由来)、及び保護フィルムの順からなる樹脂シート4を得た。
[比較例2:樹脂シート5の作製]
タンデム塗工により、以下の手順にて樹脂シート5を作製した。塗工機にロール形態の離形処理したPETフィルム(東レ(株)製「ルミラーT6AM」、厚さ38μm、軟化点130℃)を設置し、巻き出していき、該支持体の離型面にダイコーターを使用して、塗布液2を塗布、乾燥後の狙い厚みが4μmとなるように塗布し、90℃で0.8分間予備乾燥した後、ダイコーターを使用して塗布液4を塗布、乾燥後の狙い厚みが26μmとなるように塗布した。80℃〜115℃(平均100℃)にて4分間乾燥させ、各樹脂組成物層を形成した。次いで、実施例1と同様にして、第2の樹脂組成物層に保護フィルムを積層し、支持体、第1の樹脂組成物層(塗布液2由来)、第2の樹脂組成物層(塗布液4由来)、及び保護フィルムの順からなる樹脂シート5を得た。
[比較例3:樹脂シート6の作製]
実施例2において、塗布液5を塗布液7に変えた以外は実施例2と同様にして樹脂シート6を得た。
[最低溶融粘度の測定]
各実施例及び各比較例と同条件にてPETフィルム上に、支持体から第2の樹脂組成物(塗布液3又は4)を単層で塗工し、測定サンプルを用意した。動的粘弾性測定装置((株)ユー・ビー・エム製「Rheosol−G3000」)を使用し、試料樹脂組成物1gについて、直径18mmのパラレルプレートを使用して、開始温度60℃から200℃まで昇温速度5℃/分にて昇温し、測定温度間隔2.5℃、振動数1Hz、ひずみ1degの測定条件にて動的粘弾性率を測定し、最低溶融粘度(poise)を測定した。
[樹脂シートの各層の厚みの測定]
各実施例及び各比較例で作製した樹脂シート(200mm角)から保護フィルムを剥離した。第2の樹脂組成物層を上面として、樹脂シートを、255mm×255mmサイズのガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(0.7mm厚、松下電工(株)製「R5715ES」)上に設置し、樹脂シートの四辺をポリイミド接着テープ(幅10mm)で固定し、100℃(100℃のオーブンに投入後)で30分間、次いで175℃(175℃のオーブンに移し替えた後)で30分間、熱硬化させた。その後、基板を室温雰囲気下に取り出した。
熱硬化させた樹脂シートを、FIB−SEM複合装置(SIIナノテクノロジー(株)製「SMI3050SE」)を用いて、断面観察を行った。詳細には、樹脂シートの表面に垂直な方向における断面をFIB(集束イオンビーム)により削り出し、断面SEM画像(観察幅30μm、観察倍率9,000倍)を取得した。各サンプルにつき、無作為に選んだ5箇所の断面SEM画像を取得し、各層の厚みを平均値で示し、この値を各層の厚みとした。
[接着層の硬化物の平均線熱膨張係数の測定]
離型PETフィルム(リンテック(株)製「501010」、厚さ38μm、240mm角)の未処理面がガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(松下電工(株)製「R5715ES」、厚さ0.7mm、255mm角)に接するように、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板上に設置し、該離型フィルムの四辺をポリイミド接着テープ(幅10mm)で固定した。
実施例及び比較例で作製した各樹脂シート(200mm角)を、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニチゴー・モートン(株)製 2ステージビルドアップラミネーター CVP700)を用いて、第2の樹脂組成物層が離型PETフィルムの離型面と接するように、中央にラミネート処理した。ラミネート処理は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。
次いで、100℃(100℃のオーブンに投入後)で30分間、次いで175℃(175℃のオーブンに移し替えた後)で30分間、熱硬化させた。その後、基板を室温雰囲気下に取り出し、樹脂シートの支持体を剥離した後、さらに190℃で90分間の硬化条件で樹脂組成物層を熱硬化させた。
熱硬化後、ポリイミド接着テープを剥がし、積層樹脂シートをガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板から取り外した。更に積層樹脂シートから離型PETフィルムを剥離して、シート状の硬化物を得た。得られた硬化物を、幅5mm、長さ15mmの試験片に切断し、熱機械分析装置((株)リガク製「Thermo Plus TMA8310」)を用いて、引張加重法にて熱機械分析を行った。詳細には、試験片を前記熱機械分析装置に装着した後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。そして2回目の測定において、30℃から150℃までの範囲における平面方向の平均線熱膨張係数(α1;ppm/℃)、及び150℃から240℃までの範囲における平面方向の平均線熱膨張係数(α2;ppm/℃)を算出した。
[反り量の評価]
<反り評価用基板の調製>
(1)内層基板の準備
内層基板として、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板の両面銅箔を全て除去したアンクラッド板(厚さ100μm、三菱ガス化学(株)製「HL832NSF−LCA」)を用意した。
(2)樹脂シートの積層
実施例及び比較例で作製した各樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニチゴー・モートン(株)製 2ステージビルドアップラミネーター CVP700)を用いて、保護フィルムを剥離した第2の樹脂組成物層が内層基板と接するように、内層基板の両面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、110℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、積層された樹脂フィルムを、大気圧下、110℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスして平滑化した。
(3)樹脂組成物層の硬化
樹脂シートの積層後、100℃(100℃のオーブンに投入後)で30分間、次いで175℃(175℃のオーブンに移し替えた後)で30分間、熱硬化させた。その後、基板を室温雰囲気下に取り出し、支持体を剥離した後、さらに190℃で90分間の硬化条件で接着層を熱硬化させて絶縁層を形成した。得られた基板を「評価基板A」とした。
(4)反り量の測定
評価基板Aを45mm角の個片に切り出した後(n=5)、ピーク温度260℃の半田リフロー温度を再現するリフロー装置(日本アントム(株)製「HAS−6116」)に一回通した(リフロー温度プロファイルはIPC/JEDEC J−STD−020Cに準拠)。次いで、シャドウモアレ装置(Akrometrix社製「TherMoire AXP」)を用いて、IPC/JEDEC J−STD−020C(ピーク温度260℃)に準拠したリフロー温度プロファイルにて基板下面を加熱し、基板中央の10mm角部分の変位を測定した。
上記表から、実施例1〜3の樹脂シートは、接着層の硬化物の150〜240℃の平均線熱膨張係数が小さく、プリント配線板に適用した際に高温環境下における反りの低減に寄与することが確認された。
一方、中間層がない比較例1、2の樹脂シート、及び中間層中の無機充填材の含有量が80質量%未満である比較例3の樹脂シートは、実施例1〜3よりも反りが多いことがわかる。