JP2016172652A - 炭化物成形固体酸及びその製造方法 - Google Patents

炭化物成形固体酸及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】木質原料を用いて原価を抑えるとともにその処理の簡素化を図り、バインダーの被覆による触媒性能の劣化を回避した炭化物成形固体酸及びその製造方法を提供する。
【解決手段】不活性雰囲気下、300〜450℃の加熱処理条件において木質原料Mを炭化して原料炭化物11を得る炭化工程(S10)と、原料炭化物と熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の合成樹脂バインダーBを混練して混練炭化物12を得る混練工程(S30)と、混練炭化物を所定形状に成形し成形炭化物13を得る成形工程(S40)と、成形炭化物にスルホ基を導入し成形固体酸14を得るスルホ化工程(S60)とを有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、炭化物成形固体酸及びその製造方法に関し、特に炭化物を合成樹脂バインダーにより所定形状に成形した成形体にスルホ基(スルホン酸基)を導入した固体酸及び当該固体酸の製造方法に関する。
硫酸は高い活性を有することから、炭化水素化合物を反応させる際の触媒としても広く利用される。例えば、遊離高級脂肪酸とアルコールとを反応させて、高級脂肪酸エステルを得るエステル化反応の促進、セルロース等の糖鎖から単糖への加水分解反応の促進、その他、炭化水素燃料を合成するアルキル化反応の促進等の用途である。
硫酸は触媒として各種の反応促進に寄与した後、中和、洗浄され、その都度消費されていた。硫酸は液体であるため回収は容易ではない。回収処理と新規投入との経費差から、現状では使い捨てが主流である。しかし、使用済みの硫酸の中和、洗浄に加え、環境基準に準拠した排水処理までを考慮すると、この負担は大きい。このことから、触媒として連続使用に耐えうるとともに、反応後の分離、回収に容易なより利便性の高い触媒が求められるようになってきた。
そのような触媒として固体酸が挙げられる。例えば、硫酸処理を施したジルコニア、PTFEにスルホ基(スルホン酸基)を導入したフッ素樹脂がある。前記のジルコニアの場合、単位重量あたりのスルホ基濃度が低いため、触媒活性の低さが欠点である。また、前記のフッ素樹脂に関しては、熱に弱いことから適用できる反応種が限られている問題がある。
そこで、十分な触媒活性と耐熱性も併せ持つ固体酸として、炭素系の固体酸が提案された(特許文献1、特許文献2等参照)。例えば、特許文献1,2では、多環式芳香族炭化水素を濃硫酸中で加熱処理することにより得ることができる。
その後、安価に調達可能なオガ屑(オガコ)等の木質を炭素系原料として使用し、固体酸を製造する方法が提案されている(特許文献3参照)。特許文献3に開示の原料を用いた固体酸は高い触媒活性を有し、量産化に優れた方法であり価格面でも有望視されている。ただし、加工の途中、主にスルホ基を導入するスルホ化の段階で粉末化しやすくなる場合がある。
粉末化しやすい固体酸の利便性を高めるため、粒状物化等の成形が試みられている。例えば、樹脂系バインダーにより粉末固体酸を固めてペレット状にする手法がある。しかし、バインダー自体に触媒活性はないため、バインダーが固体酸表面を被覆することによって本来備わっていた触媒活性が大幅に低下してしまう。
特許第4041409号公報 特許第4582546号公報 特許第5528036号公報
そこで、バインダーを用いて成形した固体酸を得るに際し、バインダーを使用した際の触媒活性の低下、バインダー自体の劣化等の問題点に対処するべく、新たな製造方法が求められていた。このような経緯を踏まえ、発明者らは、木質原料を用いて製造原価を安価に抑えるとともに、合成樹脂のバインダーを用いて成形可能な加工法について鋭意検討を重ねた。
ところが、木質原料にはセルロース分が多量に含まれている。この繊維分を粉砕して粉砕粉末の大きさを揃えるために時間を要していた。それゆえ、事前の処理の簡素化の改善も必要となってきた。
本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、木質原料を用いて原価を抑えるとともにその処理の簡素化を図り、バインダーの被覆による触媒性能の劣化を回避した炭化物成形固体酸及びその製造方法を提供する。
すなわち、請求項1の発明は、木質原料を炭化して原料炭化物を得る炭化工程と、前記原料炭化物と合成樹脂バインダーを混練して混練炭化物を得る混練工程と、前記混練炭化物を所定形状に成形し成形炭化物を得る成形工程と、前記成形炭化物にスルホ基を導入し成形固体酸を得るスルホ化工程とを有することを特徴とする炭化物成形固体酸の製造方法に係る。
請求項2の発明は、前記炭化工程が、不活性雰囲気下における300〜450℃の加熱処理条件である請求項1に記載の炭化物成形固体酸の製造方法に係る。
請求項3の発明は、前記炭化工程と前記混練工程の間に、前記原料炭化物を粉砕する粉砕工程がさらに含められる請求項1に記載の炭化物成形固体酸の製造方法に係る。
請求項4の発明は、前記合成樹脂バインダーが熱可塑性樹脂である請求項1に記載の炭化物成形固体酸の製造方法に係る。
請求項5の発明は、前記合成樹脂バインダーが熱硬化性樹脂である請求項1に記載の炭化物成形固体酸の製造方法に係る。
請求項6の発明は、前記熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂またはジアリルフタレートである請求項5に記載の炭化物成形固体酸の製造方法に係る。
請求項7の発明は、前記成形工程と前記スルホ化工程の間に、前記成形炭化物を硬化する硬化工程がさらに含められる請求項1に記載の炭化物成形固体酸の製造方法に係る。
請求項8の発明は、前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂である場合における前記硬化工程が200℃以下の加熱である請求項7に記載の炭化物成形固体酸の製造方法に係る。
請求項9の発明は、前記成形固体酸における前記スルホ基量が0.5mmol/g以上である請求項1に記載の炭化物成形固体酸の製造方法に係る。
請求項10の発明は、請求項1に記載の炭化物成形固体酸の製造方法により製造したことを特徴とする炭化物成形固体酸に係る。
請求項1の発明に係る炭化物成形固体酸の製造方法によると、木質原料を炭化して原料炭化物を得る炭化工程と、前記原料炭化物と合成樹脂バインダーを混練して混練炭化物を得る混練工程と、前記混練炭化物を所定形状に成形し成形炭化物を得る成形工程と、前記成形炭化物にスルホ基を導入し成形固体酸を得るスルホ化工程とを有するため、木質原料を用いて原価を抑えるとともに木質原料の繊維分を粉砕して粉砕粉末の大きさを揃える処理の簡素化を図り、バインダーの被覆による触媒性能の劣化を回避することができる。さらに成形固体酸の形状設計の自由度が高く、しかも適度な硬度を有する成形固体酸の製造方法を確立することができる。
請求項2の発明に係る炭化物成形固体酸の製造方法によると、請求項1の発明において、前記炭化工程が、不活性雰囲気下における300〜450℃の加熱処理条件であるため、木質原料の炭化には十分であり、かつ木質原料の過剰な熱分解は回避される。
請求項3の発明に係る炭化物成形固体酸の製造方法によると、請求項1の発明において、前記炭化工程と前記混練工程の間に、前記原料炭化物を粉砕する粉砕工程がさらに含められるため、原料炭化物の粒径の調整は簡便かつ短時間で可能となる。
請求項4の発明に係る炭化物成形固体酸の製造方法によると、請求項1の発明において、前記合成樹脂バインダーが熱可塑性樹脂であるため、熱可塑性樹脂の合成樹脂バインダーは加熱で容易に溶融して流動化し原料炭化物と結着しやすくなる。そして、成形炭化物は塊状物としてスルホ化されるから、硬度は高くなる。
請求項5の発明に係る炭化物成形固体酸の製造方法によると、請求項1の発明において、前記合成樹脂バインダーが熱硬化性樹脂であるため、熱硬化性樹脂の合成樹脂バインダーは容易に硬化して原料炭化物と結着して全体で塊状となりスルホ化可能である。
請求項6の発明に係る炭化物成形固体酸の製造方法によると、請求項5の発明において、前記熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂またはジアリルフタレートであるため、スルホ化に用いる薬剤に対して高い耐性を有する。
請求項7の発明に係る炭化物成形固体酸の製造方法によると、請求項1の発明において、前記成形工程と前記スルホ化工程の間に、前記成形炭化物を硬化する硬化工程がさらに含められるため、炭化物成形固体酸の硬度は高められる。
請求項8の発明に係る炭化物成形固体酸の製造方法によると、請求項7の発明において、前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂である場合における前記硬化工程が200℃以下の加熱であるため、良好な熱硬化を得ることができる。
請求項9の発明に係る炭化物成形固体酸の製造方法によると、請求項1の発明において、前記成形固体酸における前記スルホ基量が0.5mmol/g以上であるため、良好な触媒活性を示す。
請求項10の発明に係る炭化物成形固体酸によると、請求項1に記載の製造方法により製造したため、木質原料の使用により原価抑制ができる。また、従前の事後的なバインダー被覆に起因する触媒性能の劣化は回避され、しかも形状設計の自由度の高い炭化物成形固体酸を得ることができる。
本発明の炭化物成形固体酸の製法例に係る概略工程図である。
本発明に規定する炭化物成形固体酸の製造方法について、図1の概略工程図を用い順に説明する。本発明の炭化物成形固体酸SAの主原料は、炭素系固体酸の本体を成す木質原料M由来の原料炭化物11と、これを賦形するための合成樹脂バインダーBである。両原料とも炭化水素化合物であることから、双方の化学的性質は比較的近似し全体として炭素系固体酸の構造体を構成する。
木質原料Mは、木材の製材、加工時に生じるオガコ(または大鋸屑や鉋屑等)、廃材や間伐材、廃竹や伐採竹、ヤシ殻、コーヒーの抽出時に生じるコーヒー豆等のセルロース分に富む原料である。次述の炭化工程における木質原料の均一な炭化を促すため、木質原料Mは必要に応じて予め適度な大きさに粉砕(破砕)される。併せて、石や金属片等の異物が混入していないことも事前に検査されそれらは除去される。木質原料は一般に燃料として用いられる他、焼却処理されていた廃棄物であり、これまで特段有効活用されてこなかった。そこで、木質原料が固体酸の基材に加工されることによって、原価は抑えられて有効活用が可能となる。
木質原料Mは焼失しない程度の温度条件下にて炭化されて原料炭化物11となる。すなわち、この処理が「炭化工程」である(S10)。「炭化工程」は窒素ガス等の不活性ガスを充満した雰囲気下、300ないし450℃の加熱処理条件において加熱される。当該温度域は木質原料の炭化促進に十分である。かつ木質原料の過剰な熱分解を回避可能な温度である。炭化工程中の加熱温度が300℃未満の加熱処理条件では炭化が不十分となり、未炭化の木質原料が残存するおそれがある。加熱温度が450℃を超過すると原料炭化物の表面に露出する官能基も喪失すると考えられ、事後の触媒化に適さない構造となる。後記の実施例においては、炭化工程は1時間の加熱とした。炭化時間は処理装置、処理量、木質原料の粒径等を勘案して規定される。加えて、木質原料に対する加熱処理温度は、原料の種類に応じても適宜調整される。
炭化工程(S10)の後、ここで原料炭化物11は所定の粒径に粉砕される。加えて、原料炭化物11は所望の粒径ごとに篩別される。この処理が「粉砕工程」である(S20)。粉砕工程は、原料炭化物11の品質を揃えるため、好ましくは加えられる。粉砕装置は公知のミル、グラインダー等の適宜である。粉砕及び篩別に際し、原料炭化物11は1mm以下、好ましくは0.5mm以下、さらには0.1mm以下の粒径とされる。
原料炭化物11を作製するに際し、予め木質原料に対して、または原料炭化物とした後に、賦活処理を加えることもできる。賦活処理が加わることにより細孔が発達しやすくなる。このため、表面積が大きくなって接触効率の高い原料炭化物とすることができる。賦活処理の方法は適宜であり、水蒸気賦活、塩化亜鉛賦活、リン酸賦活、硫酸賦活、空気賦活、炭酸ガス賦活等が例示される。
木質原料Mの段階においても粉砕は可能である。しかしながら、セルロース等の植物由来の繊維分は非常に強固である。粒度の揃った木質原料を得るため、磨り潰す等の木質原料に特有の粉砕方法が必要であった。当該粉砕方法によると、総じて粉砕の時間は長くなっていた。そこで、炭化工程(S10)を経ることにより木質原料Mは原料炭化物11となる。すると、木質原料Mの繊維分は炭化を通じて破壊されるため、原料自体の強度は低下する。つまり、原料炭化物11は当初の木質原料の段階よりも容易に粉砕されやすくなる。そうすると、固体酸の直接の原料となる原料炭化物11の粒径の調整等の事前加工は簡便かつ短時間で可能となる。また、いったん、原料炭化物11に加工されると、磨り潰し以外の粉砕装置も使用できる。それゆえ、粉砕処理の負荷や時間の軽減につながる。
原料炭化物11と合成樹脂バインダーBは所定量ずつ計量され、双方とも十分に混練され、混練炭化物12が得られる。この処理が「混練工程」である(S30)。原料炭化物11と合成樹脂バインダーBとの混練は、公知のニーダーやブレンダー等の混練機により行われる。
使用される合成樹脂バインダーは一般的に公知の合成樹脂である。例えば、ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、高分子量ポリエチレン(UHMPE)、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリイミド樹脂、またはポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂の合成樹脂バインダーは加熱で容易に溶融して流動化し原料炭化物と結着しやすくなる。そして、成形炭化物は塊状物としてスルホ化されることから、硬度は高くなる。
または、フェノール樹脂(レゾール型)、ジアリルフタレート樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、またはポリウレタン樹脂等の一般に入手可能な熱硬化性樹脂である。これらの熱硬化性樹脂において、後記実施例のフェノール樹脂またはジアリルフタレート樹脂が好ましい。傾向として、フェノール樹脂またはジアリルフタレート樹脂はスルホ化に用いる薬剤に対して高い耐性を有する。なお、同種類の樹脂であっても、組成や生成法等の相違から熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の両方に該当する樹脂も存在する。熱硬化性樹脂の合成樹脂バインダーは熱処理時に容易に硬化して原料炭化物と結着して全体で塊状となりスルホ化可能である。
熱硬化性樹脂の合成樹脂バインダーは後述する硬化処理(S50)において硬化して原料炭化物11同士は結着する。そして、混練炭化物12は、全体で成形後に塊状となりスルホ化される。このため、最終的に出来上がる固体酸の硬度は高くなる。
原料炭化物11と合成樹脂バインダーBを混練するに際し、合成樹脂バインダーの形態は自由である。粉末状(粒状)とすることにより、原料炭化物11とも均質に混合可能となる。粉末状の合成樹脂バインダーの粒径は配合割合等により適宜ではあるものの、概ね原料炭化物と同じ大きさ、あるいはそれよりも小さくすることが好ましい。ここでいう粉末状には、粒状等の合成樹脂バインダーを均質に混合しやすく粉砕した粉砕物も含まれる。なお、相互の結着性を確保するため、少量の水や接着剤等が混練に際し適宜添加され塊状の混練炭化物12となる。
また、合成樹脂バインダーとして液状の合成樹脂が用いられる。特に熱硬化性樹脂等の場合、常温の保管状態では当初から液体である種類もある。そうすると、液体のまま適量を計量して原料炭化物と均質に混合可能となる。この場合も、液状の合成樹脂バインダーは、原料炭化物に均等に拡散し原料炭化物同士の結着に有利に作用する。
あるいは、分散液状(ディスパージョン)の合成樹脂バインダーも使用することができる。分散液状の合成樹脂バインダーは、樹脂の微細粒子が水等の液体に分散しているコロイド状の溶液である。当該溶液には懸濁液も含まれる。当初から水分が含まれるバインダーであるため、原料炭化物と良好に混練し素早く混練炭化物となる。
そこで、混練炭化物12の全体に占める原料炭化物11及び合成樹脂バインダーBのそれぞれの配合量は、混練機の性能、その後の加工性、硬度等を勘案して規定される。なお、分散液状の合成樹脂バインダーを使用した場合、液中の濃度により換算される。
原料炭化物11と合成樹脂バインダーBとの混練により生じる混練炭化物12において、混練炭化物12の全重量に占める原料炭化物11の妥当な重量割合は、最大で概ね80重量%である。後記の実施例においては、原料炭化物11の重量割合は37重量%から80重量%の範囲である。木質原料に由来する原料炭化物の有効活用が目的であることから、原料炭化物の重量割合を増やした組成が望ましい。合成樹脂バインダーの配合量は後出の成形固体酸15の大きさ、形状、耐用期間、使用条件等を考慮して調整される。
混練炭化物12において、原料炭化物11の重量割合を基準とする理由は、原料の配合割合を容易に把握するためである。合成樹脂バインダー側には液状の種類があり、別途換算が必要となる。これに対し、原料炭化物11自体の重量は当初から変化しない。そこで、混練炭化物12における組成を規定するため基準として都合よい。また、実質的な原料炭化物11の重量割合を直接把握することができるためである。
混練炭化物12は所定形状に成形され、成形炭化物13が得られる。この処理が「成形工程」である(S40)。成形における形状は、球状(丸薬状)、錠剤状(円盤状)、ペレット状(円筒状)等形状であり、特段形状に制約はない。図示の成形炭化物13は球状、錠剤状、ペレット状の例を示す。混練炭化物12からの成形方法も形状に応じて適宜である。球状では造粒機を用いた球形化であり、錠剤状では打錠機が用いられ、ペレット状ではペレタイザー等が使用される。特に、固体酸が形状を維持することによって取り扱いの利便性が高まる。従って、合成樹脂バインダーの結着により最終的に固体酸が適切な硬度を発揮するため、前述の配合量範囲が必要とされる。
成形炭化物13は以降にスルホ化工程(S60)を控えているため、極端に大きすぎる場合には形状維持やスルホ基の導入が容易ではない。後記実施例では、成形炭化物13は直径2mmまたは4mmのペレット状(長さ約10mmの円筒体形状)とした。このようにすると、粉末状の固体酸と比較して反応相からの分離、回収等の利便性が高まる。
成形炭化物13は、自明ながら合成樹脂バインダーBにより混練炭化物12同士が結着した状態である。つまり、合成樹脂バインダーの種類に依存するものの、結着力はそのままの状態では弱い場合もある。そこで、合成樹脂バインダーBの硬化が促されて成形炭化物13の一体化が進行する。この処理が「硬化工程」であり(S50)、出来上がる炭化物成形固体酸の硬度は高められる。また、硬化処理によりバインダーは薬剤に安定な状態となる。なお、成形炭化物13を得た段階で混練炭化物12同士が合成樹脂バインダーにより十分に固着している場合、当該硬化工程は省略される。
合成樹脂バインダーBが熱可塑性樹脂である場合、当該硬化工程において、成形炭化物13は樹脂の種類に応じた溶融温度に加熱される。そこで、成形炭化物13は樹脂の溶融と固着により一体化する。合成樹脂バインダーBが熱硬化性樹脂である場合、当該硬化工程において、成形炭化物13は樹脂の種類に応じた熱硬化温度に加熱される。成形炭化物13は樹脂の熱硬化に伴って固着し一体化する。成形炭化物13は硬化して硬化成形体14となる。
また、熱硬化性樹脂の場合、その樹脂の種類に応じた熱硬化温度域が選択される。後記の実施例において、フェノール樹脂等の合成樹脂バインダーを使用した際、その硬化工程では80℃ないし200℃の範囲内の熱硬化条件が好ましい触媒活性となった。なお、高温度域では固体酸の触媒活性の低下が顕著となるため、好ましくないと考えられる。
硬化成形体14を得るに際し合成樹脂バインダーを硬化させる方法として、バインダーの熱硬化性樹脂に対する加熱の他に、硫酸等の酸浴中に浸漬する方法も採用される。例えば、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の場合、その種類いかんにより酸性下においても常温で硬化が進行することが知られている。加熱が不要なことや処理が簡便であることから量産化には向くと考えられる。加えて、その後に行われるスルホ化により硬化が促進される場合にも、当該工程は省略可能である。
硬化成形体14(硬化工程省略であれば成形炭化物13)に対し、スルホ基(またはスルホン酸基とも称される)を導入するスルホ化が行われる。この処理が「スルホ化工程」である(S60)。スルホ基(スルホン酸基)は「−SO3Hまたは−SO2(OH)」として表される酸性の官能基である。スルホ化により硬化成形体14(成形炭化物13)は成形固体酸15になる。スルホ基の導入は、濃硫酸、発煙硫酸、またはクロロスルホン酸等のスルホ化剤と硬化成形体14(成形炭化物13)との反応により行われる。当該スルホ化工程に用いるスルホ化剤の種類は通常のスルホ化反応に使用できる薬品の中から選択される。
成形固体酸15は、熱水等による洗浄を経ることにより、余分なスルホ化剤成分が洗い流される。この処理が「洗浄工程」である(S70)。そして、洗浄時の水分は適宜乾燥される。ここで、篩別により所定の大きさに揃えられた製品とすることができる。また、製造途中に砕けて生じた粉状物が取り除かれる。以上一連の工程を経て「炭化物成形固体酸SA」を得ることができる。
図示の製法例により得た成形固体酸15に存在する単位重量当たりのスルホ基量の多少は、触媒活性の高低の指標となり得る。このため、成形固体酸15の性能を評価する上で重視される。そこで、成形固体酸15に存在するスルホ基量は、少なくとも0.5mmol/g以上、好ましくは0.7mmol/g以上、より好ましくは1.5mmol/g以上と考えられる。スルホ基量は元素分析により硫黄の量から算出される。
後記の実施例から明らかであるように、成形固体酸のスルホ基量0.5mmol/g未満では相対的に触媒反応性が乏しい。反応性を加味してこのスルホ基量は多いほどよい。しかし、グラフェンシート様の構造や表面官能基等の要因による制約を受けることから、スルホ基量の上限はおおよそ10.0mmol/g前後になると考えられている。よって、前記のとおり単位重量当たりのスルホ基量範囲が導き出される。
これまでに図示し詳述してきた製造方法により製造した炭化物成形固体酸SAは、木質原料由来の原料炭化物の配合割合や形状の設計において比較的自由度を有する。そこで、所望の用途、目的に応じて作り分けることが可能である。特に、固体酸自体が所定形状の成形物となったことにより、触媒反応に使用した後の分離、回収が容易となり使用時の利便性は大きく向上する。
本発明の特徴は、原料炭化物として粉砕しやすくしたことである。また、バインダーも原料とともにスルホ化剤と接触させるため、バインダーにもスルホ化剤にある程度の耐性を備えた合成樹脂を採用したことである。自明ながら、本発明の炭化物成形固体酸の製造に用いたバインダーは、粉末の固体酸同士を最終的に結着させて一体化する性質ではない。このことから、従前の成形固体酸に生じていたバインダー被覆による触媒活性低下の問題は有効に解決される。
従って、まず、木質原料由来の原料炭化物のみを原料としてスルホ化した固体酸が粉末状であるという難点は解消される。そして、出来上がった固体酸は成形化とともに触媒活性の維持も両立することができる。しかも、炭化物成形固体酸重量の過半数以上を原料炭化物とすることも可能である。このため、原材料コスト等を大幅に圧縮することができる。このため、本発明の炭化物成形固体酸は、従前の固体酸の取り扱い難さを改善するとともに、より安価に製造でき、十分な触媒活性を発揮することができる。
さらに、本発明の炭化物成形固体酸の製造方法のとおり、合成樹脂バインダーと原料炭化物は混練、成形され、一体として熱処理されている。このことから、当初の細かな原料炭化物の粉末であっても、途中から所定の大きさを伴った成形物に転化する。そして、ほぼこの成形物のままスルホ化へと進む。この製法によると、程度の差はあるものの保形性とともに固体酸として硬さも備わる(後記実施例参照)。そこで、現実の反応処理設備での稼働を想定した場合、固体酸自体の耐久性が向上することから、反応系への投入、そしてそこからの回収等の利便性は大きく向上する。
[使用原料]
〈合成樹脂バインダー(熱硬化性樹脂:B1,B2)〉
フェノール樹脂の液状物として、DIC株式会社製のレゾール型,商品名「IF3300」を使用した{バインダーB1}。
ジアリルフタレート(DAP)の粉末として、ダイソー株式会社製,商品名「ダイソーイソダップ」を使用した{バインダーB2}。
〈合成樹脂バインダー(熱可塑性樹脂:B3,B4)〉
ポリエチレンの粉末として、三井化学株式会社製,高分子量ポリエチレン(UHMWPE),商品名「ミペロンXM200」を使用した{バインダーB3}。
ポリエチレンの水分散物として、三井化学株式会社製,水性ディスパージョン(低密度ポリエチレン(LDPE)),商品名「ケミパールM200」を使用した{バインダーB4}。
木質原料は、ベイマツ(米松)のオガコ(大鋸粉)を使用した。
スルホ化剤として、発煙硫酸、または濃硫酸(98%硫酸)(いずれも和光純薬工業株式会社製)を使用した。
[炭化物成形固体酸の作製]
表1ないし表4に開示の実施例1ないし5、実施例7ないし12、比較例1及び2の炭化物成形固体酸について、以下の手順に従い、バインダーB1ないしB4のいずれかを使用してそれぞれを作製した。実施例6と比較例3は後記の出発原料から作製した。作製した各実施例、比較例のそれぞれの炭化物成形固体酸について、木質原料と合成樹脂バインダーとの重量比(%)、硬度(N)、精製した固体酸触媒の硫黄分量(重量%)、スルホ基量(mmol/g)、2種類の触媒性能を測定し評価した。
〈原料炭化物の作製〉
実施例1ないし5、実施例7ないし12、比較例1及び2について、木質原料(オガコ)を金属板上に配しマッフル炉を用い、窒素ガスにより不活性雰囲気状態を維持し、表1ないし表4の炭化温度(概ね350℃の加熱温度)まで昇温して当該温度を1時間維持した。加熱が終了して冷却後、マッフル炉から取り出して原料炭化物とした。
実施例6は塩化亜鉛賦活を経て製造した活性炭であり、フタムラ化学株式会社製,商品名「太閤 S」を使用した。
比較例3事後的に粉末状の固体酸を合成樹脂バインダーにより結着して成形した成形固体酸である。市販の粉末状固体酸300gに合成樹脂バインダーB4を30g添加し適量の水とともに混練した。これを円筒ペレット形状に成形加工し乾燥した。
〈粉砕・篩別〉
各実施例及び比較例の原料炭化物について、粉砕機(増幸産業株式会社製,スーパーマスコロイダーMKZA10−20)により粉砕し、JIS試験用ふるいを用い篩別した。原料粉末の粒径(mm)は篩を通過した最大径に相当する。
〈原料混練〉
粉砕及び篩別を終えた実施例及び比較例の原料炭化物を規定量秤量し、表中の重量割合(重量パーセント)となる合成樹脂バインダー(B1ないしB5のいずれか)を添加した。ポリエチレンの水分散物のバインダー及び液状フェノール樹脂のバインダーは固形分量換算として混合量を設定した。その他の粉末状または粒状のバインダーについては、成分同士の結着性を高めるため、適量の水を添加しながら混練した。
〈成形〉
実施例及び比較例に対応する混練炭化物を成形により直径2mm×長さ10mmまたは直径4mm×長さ10mmの円筒ペレット状の成形炭化物に成形加工した。
〈硬化〉
実施例及び比較例に対応する成形炭化物を金属板上に配しマッフル炉を用い、窒素ガスにより炉内を不活性雰囲気状態に維持し、表1ないし表4の熱処理温度(100℃ないし350℃の加熱温度)まで昇温して当該温度を1時間ないし15時間維持した。加熱が終了して冷却後、マッフル炉から取り出して硬化成形体を得た。
実施例9については、加熱による硬化を省略して成形により生じた成形炭化物を静置して次のスルホ化に供した。実施例10については、成形炭化物を40℃に維持した濃硫酸中に10時間浸漬してバインダー樹脂を硬化した。実施例11については、成形により生じた成形炭化物を金属板上に配しマッフル炉を用い、窒素ガスにより不活性雰囲気状態を維持し、200℃の熱処理温度まで昇温して当該温度を10時間維持した。加熱が終了して冷却後、マッフル炉から取り出して硬化成形体を得た。
〈スルホ化〉
実施例及び比較例の硬化成形体(実施例9のみ成形炭化物)について、それぞれを10g秤量して500mLの三つ口フラスコ内に投入し、ここに11.3%の発煙硫酸100mLを添加した。80℃(実施例12のみ40℃)の反応温度を維持しながら攪拌した。その後、蒸留水で繰り返し洗浄した。洗浄後の蒸留水中の硫酸イオンが検出限界以下になるまで洗浄を繰り返し、これを乾燥して炭化物成形固体酸を得た。
実施例7については、硬化成形体10gを秤量して500mLの三つ口フラスコ内に投入し、ここに98%硫酸(濃硫酸)100mLを添加した。80℃の反応温度を維持しながら攪拌した。その後、蒸留水で繰り返し洗浄した。洗浄後の蒸留水中の硫酸イオンが検出限界以下になるまで洗浄を繰り返し、これを乾燥して炭化物成形固体酸を得た。
[物性測定]
〈原料炭化物量の重量割合〉
混練炭化物に占める原料炭化物Xの重量割合Rc(重量%)については、原料炭化物Xと合成樹脂バインダー等のバインダーYとの重量より、Rc(wt%)={X/(X+Y)}×100として算出した。例えば、実施例1の場合、原料炭化物は300g、バインダーB1は80g(固形分量換算)である。従って、混練炭化物は380gである。この混練炭化物中に占めるバインダーの重量割合は、(300/380)×100から導くことができ、重量割合は79重量パーセント(wt%)となる。他の実施例、比較例も同様に算出した。
〈硬度〉
実施例及び比較例の成形固体酸について、木屋式硬度計(株式会社藤原製作所製)、加圧棒(直径5mm)を用い硬度を測定した。ひとつの実施例、比較例当たり20回測定し、その平均値を当該実施例、比較例の炭化物成形固体酸の硬度(N)とした。なお、比較例1についてはスルホ化の段階で形状崩壊したため、硬度測定を省略した。
〈硫黄含有量とスルホ基量の測定〉
はじめに実施例等の炭化物成形固体酸を100℃に加熱して乾燥した。それぞれの炭化物成形固体酸に含まれる元素組成について、自動燃焼イオンクロマトグラフ:DIONEX製ICS−1000、燃焼装置:株式会社三菱化学アナリテック製AQF−100、吸収装置:株式会社三菱化学アナリテック製GA−100、送水ユニット:株式会社三菱化学アナリテック製WS−100、燃焼温度1000℃)により分析した。得られた硫黄分(mmol/g)は、スルホ基と等価であるとして、単位重量当たりの固体酸におけるスルホ基(スルホン酸基)量(mmol/g)を求めた。
[触媒活性の測定]
〈加水分解反応の測定〉
はじめに実施例及び比較例に対応する固体酸を100℃に加熱して乾燥した。サンプル瓶に各固体酸0.3gを分取し、ここにセロビオース0.36g、水2.1mLを添加して90℃の温度を維持しながら60分間反応させた。反応後冷却して水6.9mLを添加しシリンジフィルターにより濾過した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(株式会社島津製作所製,RID−10A)、カラム(BIO−RAD社製,品名:AminaxHPX−87Hカラム)を使用し、濾過液を当該HPLCにて測定し、グルコース等の単糖類のピーク面積比よりセロビオースから分解されて生成した糖類量を求めた。そして、1g固体酸当たりの1時間の反応による生成量(μmol)に換算した(μmol・g-1・h-1)。
〈エステル化反応の測定〉
はじめに実施例及び比較例に対応する固体酸を100℃に加熱して乾燥した。各固体酸0.2gをフラスコに分取して150℃で1時間、真空乾燥(0.4Pa以下)した。真空乾燥を終えた固体酸にエタノール58.5mL(1.0mol)、酢酸5.742mL(0.1mol)を添加し、70℃の温度を維持しながら60分間反応させた。反応後冷却してシリンジフィルターにより濾過した。濾液中に含まれる酢酸エチルの生成量をガスクロマトグラフィー(GC)(株式会社島津製作所製,GC−2014 FID−ガスクロマトグラフィー)、カラム(アジレント・テクノロジー株式会社製,J&W GCカラム DB−WAXキャピラリーカラム)を使用して求めた。そして、1g固体酸当たりの1分間の反応による生成量(mmol)に換算した(mmol・g-1・min-1)。
Figure 2016172652
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[結果,考察]
〈比較例について〉
比較例1では、相対的に合成樹脂バインダー量は少なくそもそもの保形性に欠く。つまり、成形自体ができなかった。従って、十分な成形を考慮して、混練炭化物に占める原料炭化物の量を80重量%程度に抑えることが望ましいといえる。比較例2では、合成樹脂バインダーを硬化させる際の温度が高すぎであった。そのため、樹脂の硬化が進みすぎ強固なフェノール樹脂となるため、スルホ化剤の含浸が妨げられ、スルホ基の導入量が減少し、触媒性能は低下した。他の実施例と比較してフェノール樹脂に関しては、200℃以下の加熱温度に抑えることが望ましい。
全実施例の成形固体酸はいずれも加水分解反応やエステル化反応の触媒作用を発揮し、スルホ基を有する固体酸としての機能を十分に備える。しかし、比較例3に着目すると、予め完成した粉末固体酸に合成樹脂バインダーを添加して成形した従来品に対応する固体酸である。比較例3は硬度も触媒反応性も十分ではない。表面に露出するスルホ基部分が事後添加された樹脂バインダーにより被覆され、実際に反応に寄与するスルホ基量が減少したと考えることができる。
〈木質原料の加熱処理温度〉
木質原料の加熱処理温度は、いずれの実施例においてもほぼ350℃であった。500℃付近では熱処理温度の上昇に伴い原料炭化物にグラフェンシート様の構造が多くなり、スルホ基と置換される官能基量が減少することも考えられる。250℃前後の加熱処理温度では炭化自体が不十分であり、木質の残存により、粉砕効率の低下、スルホ化処理時の溶解が起こった。そのような経緯から、加熱処理温度を350℃付近とした。
〈合成樹脂バインダーの種類〉
各実施例から把握できるように、合成樹脂バインダーについては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の双方とも使用できることが明らかとなった。なお、硬度等については使用バインダーの配合量の加減により調整可能といえる。バインダー樹脂の種類ごとに触媒活性の性能差は存在するものの、原料炭化物を結着するための合成樹脂バインダーは広範な樹脂から選択できることを明らかにした。熱硬化性樹脂においてもフェノール樹脂は調達しやすく、熱硬化条件は比較的低温であり、また容易に硬度を上げることもできる。また、硬化後の耐薬品性も高い。このような点からフェノール樹脂の利便性は高い。
〈硬化条件について〉
レゾール型フェノール樹脂は熱硬化性樹脂であるため、加熱を含めるとより硬度は上昇する。より高硬度を所望であれば加熱するほうがよい。なお、硬化自体も省略しても良い(実施例9)。また、加熱に限らず酸処理も可能である(実施例10)。ここで、レゾール型フェノール樹脂の熱硬化温度については、各実施例と比較例2との比較、良好な性能等を勘案して、200℃以下とすることが適当であった。
〈スルホ化剤、スルホ化条件について〉
実施例にて使用したスルホ化剤は、発煙硫酸と濃硫酸であった。いずれもスルホ化反応が進行し、良好な触媒活性を発現した。従って、スルホ化剤の選択は可能である。なお、スルホ化の温度条件は80℃または40℃で実施でき、特段制限されないことから特殊な設備を必要としない利点がある。
〈スルホ基量の範囲〉
各実施例並びに比較例の触媒反応の結果から勘案すると、下限値は0.5mmol/g、より好ましくは0.7mmol/gであり、さらに好ましくは1.5mmol/gである。上限値については高いほど好ましい。しかしながら、原料炭化物のグラフェンシート様の構造や表面官能基等による制約から、スルホ基量の上限値は概ね10.0mmol/gに収斂すると考えられる。そこで、好適なスルホ基量の範囲は0.5mmol/g以上、より具体的には、0.5ないし10.0mmol/gの範囲となる。
〈まとめ〉
本発明の固体酸の目的は良好な触媒活性及び硬度維持により形状維持性である。併せて、木質原料の粉砕効率の改善である。この点を鑑み、木質原料の炭化を通じて木質原料中の繊維分を脆弱にして、いったん原料炭化物となった後には、粉砕効率は高まった。その後は原料炭化物の成形とスルホ化を順に行うことができた。加えて、成形固体酸において、その成形炭化物(混練炭化物)に占める原料炭化物の重量割合も80重量%まで高めても良好な触媒活性を発揮できた。また、形状維持に不可欠な硬度も有することとなった。このように、硬度等の要望に応じて柔軟に原料量を加減して作り分けができた。結果、実需要に十分に対応した硬度を備えた成形固体酸を得ることができた。
本発明の炭化物成形固体酸及びその製造方法は、既に出来上がった粉末状の固体酸を合成樹脂バインダーにより結着して成形する方法ではないことから、スルホ基の被覆は抑えられる。加えて、安価な木質原料を原料とし、炭化を加えることにより処理の簡素化も可能である。しかも、形状維持に必要な硬度も十分に備わり、極めて利便性に富む。従って、固体酸を成形物として取り扱いやすさは向上し価格面も抑制できる。このため、従前の硫酸、粉末状固体酸、または成形固体酸の代替として非常に有望である。
M 木質原料
B 合成樹脂バインダー
11 原料炭化物
12 混練炭化物
13 成形炭化物
14 硬化成形体
15 成形固体酸
SA 炭化物成形固体酸

Claims (10)

  1. 木質原料を炭化して原料炭化物を得る炭化工程と、
    前記原料炭化物と合成樹脂バインダーを混練して混練炭化物を得る混練工程と、
    前記混練炭化物を所定形状に成形し成形炭化物を得る成形工程と、
    前記成形炭化物にスルホ基を導入し成形固体酸を得るスルホ化工程とを有する
    ことを特徴とする炭化物成形固体酸の製造方法。
  2. 前記炭化工程が、不活性雰囲気下における300〜450℃の加熱処理条件である請求項1に記載の炭化物成形固体酸の製造方法。
  3. 前記炭化工程と前記混練工程の間に、前記原料炭化物を粉砕する粉砕工程がさらに含められる請求項1に記載の炭化物成形固体酸の製造方法。
  4. 前記合成樹脂バインダーが熱可塑性樹脂である請求項1に記載の炭化物成形固体酸の製造方法。
  5. 前記合成樹脂バインダーが熱硬化性樹脂である請求項1に記載の炭化物成形固体酸の製造方法。
  6. 前記熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂またはジアリルフタレートである請求項5に記載の炭化物成形固体酸の製造方法。
  7. 前記成形工程と前記スルホ化工程の間に、前記成形炭化物を硬化する硬化工程がさらに含められる請求項1に記載の炭化物成形固体酸の製造方法。
  8. 前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂である場合における前記硬化工程が200℃以下の加熱である請求項7に記載の炭化物成形固体酸の製造方法。
  9. 前記成形固体酸における前記スルホ基量が0.5mmol/g以上である請求項1に記載の炭化物成形固体酸の製造方法。
  10. 請求項1に記載の炭化物成形固体酸の製造方法により製造したことを特徴とする炭化物成形固体酸。
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