以下、図面を用いて、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単に「プリンタ」という)の実施形態について説明する。実施の形態において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すに留め、先の説明との重複説明は極力省略する。なお、いわゆる当業者は、特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における一形態であって、本願の特許請求の範囲を限定するものではない。
図1は、本実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、プリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、転写装置としての転写ユニット30と、光書込ユニット80と、定着装置90と、給紙カセット100と、レジストローラ対101と、制御手段となる制御部60とを備えている。
4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,Kは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための画像形成ユニット1Kを例に説明すると、このユニットは、図2に示すように、像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。画像形成ユニット1Kは、これら構成要素が共通のケーシングに保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着可能とされていて、それら構成要素を同時に交換可能に構成されている。
感光体2Kは、ドラム状の基体の表面上に有機感光層が形成されたものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電させる。本プリンタでは、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電させる。より詳しくは、約−650[V]に一様に帯電させる。本形態において、帯電バイアスには直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる帯電方式を採用してもよい。
帯電装置6Kで一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、光書込ユニット80から発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。K用の静電潜像の電位は約−100[V]である。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写体でありベルト状の像担持体たる中間転写ベルト31上に1次転写される。
ドラムクリーニング装置3Kは、1次転写工程(後述する1次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去するものである。ドラムクリーニング装置3Kは、回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。ドラムクリーニング装置3Kは、回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取り、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落とす。なお、クリーニングブレードについては、その片持ち支持端側を自由端側よりもドラム回転方向下流側に向けるカウンタ方向で感光体2Kに当接させている。
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置8Kは、現像ロール9Kを内包する現像部12Kと、図示しないK現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。現像剤搬送部13Kは、第1スクリュウ部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。これらスクリュウ部材は、それぞれ軸線方向の両端部が軸受けによってそれぞれ回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設した螺旋羽根とを具備している。
第1スクリュウ部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュウ軸線方向の両端箇所に、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュウ部材10Kは、螺旋羽根内に保持している図示しないK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュウ部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュウ部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュウ部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュウ部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュウ部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内において、ケーシングの下壁には図示しないトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有する所謂二成分のK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、Kトナー濃度を検知していることになる。
このプリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kの各色のトナーをそれぞれ個別に補給するための図示しないY,M,C,K用のトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部60は、そのRAMに、Y,M,C,K用のトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。制御部60は、Y,M,C,K用のトナー濃度検知センサからの各出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差がそれぞれ所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,K用のトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置の第2搬送室内にY,M,C,Kのトナーが補給される。
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュウ部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。現像ロール9Kは、第1スクリュウ部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像よりも大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
先に示した図1において、Y,M,C用の画像形成ユニット1Y,1M,1Cにおいても、K用の画像形成ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,2M,2C上にY,M,Cのトナー像がそれぞれ形成される。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオード等の光源から発したレーザー光により、感光体2Y,2M,2C,2Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,2M,2C,2K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体2Yの一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光しながら、複数の光学レンズやミラーを介して各感光体に照射するものである。光書込ユニット80としては、LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって感光体2Y,2M,2C,2K上に光書込を行うものを採用してもよい。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動させる転写ユニット30が配設されている。転写ユニット30は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの1次転写部材となる1次転写ローラ35Y,35M,35C,35K、転写部材としてのニップ形成ローラ36、ベルトクリーニング装置37などを備えている。
無端の中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kによって張架されている。そして、本形態では図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、図1において反時計回り方向に無端移動せしめられる。
1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31をそれぞれ感光体2Y,2M,2C,2Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,2M,2C,2Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kには、図示しない1次転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,2M,2C,2K上のY,M,C,Kの各トナー像と、1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Yの表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の1次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に移動して1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写された中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の1次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,2C,2K上のM,C,Kのトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせのトナー像が形成される。
1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備する弾性ローラで構成されている。1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、感光体2Y,2M,2C,2Kの軸心に対し、それぞれの軸心を、約2.5[mm]ずつベルト移動方向下流側にずらした位置を占めるように配設されている。本プリンタでは、このような1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに対して、1次転写バイアスを定電流制御で印加する。なお、1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを1次転写部材として採用してもよい。
転写ユニット30のニップ形成ローラ36は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されており、ループ内側の2次転写裏面ローラ33との間に中間転写ベルト31を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成ローラ36とが当接する2次転写ニップNが形成されている。図1、図2に示す例では、ニップ形成ローラ36は接地されているのに対し、2次転写裏面ローラ33は、2次転写バイアスの電源39によって電圧としての2次転写バイアスが印加される。これにより、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に向けて静電移動させる2次転写電界が形成される。
転写ユニット30の下方には、記録材となる記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。給紙カセット100は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録紙Pを給紙路に向けて送り出す。給紙路の末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。レジストローラ対101は、給紙カセット100から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止する。そして、挟み込んだ記録紙Pを2次転写ニップN内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開し、記録紙Pを2次転写ニップNに向けて送り出す。2次転写ニップNで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、2次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙P上に一括2次転写され、記録紙Pの白色と相まってフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録紙Pは、2次転写ニップNを通過すると、ニップ形成ローラ36や中間転写ベルト31から曲率分離する。
2次転写裏面ローラ33は、芯金と、これの表面に被覆された導電性のNBR系ゴム層とを具備するものである。ニップ形成ローラ36も、芯金と、これの表面に被覆された導電性のNBR系ゴム層とを具備するものである。
2次転写ニップN内に挟み込んだ記録材Pに対して中間転写ベルト31上のトナー像を転写するために電圧(以下「2次転写バイアス」と記す)を出力する電源39は、直流電源と交流電源とを有しており、2次転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳せしめた重畳バイアスを出力する構成とされている。本形態では、図1に示すように、2次転写バイアスを2次転写裏面ローラ33に印加しつつ、ニップ形成ローラ36を接地している。
2次転写バイアスの供給形態としては、図1の形態に限定されるものではなく、図3に示すように電源39からの重畳バイアスをニップ形成ローラ36に印加しつつ、2次転写裏面ローラ33を接地してもよい。この場合、直流電圧の極性を異ならせる。すなわち、図1に示すように、マイナス極性のトナーを用い且つニップ形成ローラ36を接地した条件で、2次転写裏面ローラ33に重畳バイアスを印加する場合には、直流電圧としてトナーと同じマイナス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーと同じマイナス極性にする。
これに対し、図3に示す形態のように、2次転写裏面ローラ33を接地し、且つ重畳バイアスをニップ形成ローラ36に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーとは逆のプラス極性にする。
2次転写バイアスとなる重畳バイアスの供給形態としては、2次転写裏面ローラ33やニップ形成ローラ36の何れか一方に印加するのではなく、図4、図5に示すように、電源39から直流電圧を何れか一方のローラに印加するとともに、電源39から交流電圧を他方のローラに印加するようにしてもよい。
2次転写バイアスの供給形態としては、上記の形態だけでなく、図6、図7に示すように、「直流電圧+交流電圧」と「直流電圧」とを一方のローラに切替えて供給可能としても良い。図6に示す形態では、2次転写裏面ローラ33に電源39から「直流電圧+交流電圧」と「直流電圧」を切替えて供給し、図7に示す形態では、ニップ形成ローラ36に電源39から「直流電圧+交流電圧」と「直流電圧」を切替えて供給可能としている。
2次転写バイアスの供給形態としては、「直流電圧+交流電圧」と「直流電圧」とを切替える場合、図8、図9に示すように、「直流電圧+交流電圧」を何れか一方のローラに供給可能とし、「直流電圧」を他方のローラに供給可能として、適宜電圧供給を切替えるようにしてもよい。図8に示す形態では、2次転写裏面ローラ33に「直流電圧+交流電圧」を供給可能とし、ニップ形成ローラ36に直流電圧を供給可能としている。図9に示す形態では、2次転写裏面ローラ33に「直流電圧」を、ニップ形成ローラ36に「直流電圧+交流電圧」をそれぞれ供給可能としている。
このように2次転写ニップNに対する2次転写バイアスの供給形態としては様々あるが、この場合の電源としては、電源39のように「直流電圧+交流電圧」を供給できるものや、「直流電圧」と「交流電圧」とを個別に供給できるもの、「直流電圧+交流電圧」と「直流電圧」を1つの電源で切替えて供給できるものなど、その供給形態に対応させて適宜選択して用いればよい。2次転写バイアス用の電源39は、直流電圧だけからなるものを出力する第一のモードと、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたもの(重畳電圧)を出力する第二のモードとに切替え可能な構成としている。また、図1、図3〜図5の形態では、交流電圧の出力をオン/オフすることでモード切替えが可能となる。図6〜図9に示す形態では、リレーなどからなる切替え手段を用いて使用する2つの電源とし、これら2つの電源を選択的に切替えることでモード切替えを行えるようにすれば良い。
たとえば、記録紙Pとして、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いずに、普通紙のような表面凹凸の小さなものを用いる場合には、凹凸パターンにならった濃淡パターンが出現しないので、第一のモードにして、2次転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものを印加する。また、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いるときには、第2のモードにして、2次転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたものを出力する。すなわち、使用する記録紙Pの種類(記録紙Pの表面凹凸の大きさ)に応じて、2次転写バイアスを第一のモードと第二モードで切り替え可能としてもよい。
2次転写ニップNを通過した後の中間転写ベルト31には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップするものである。
2次転写ニップNよりも記録紙搬送方向下流側となる図1中右側方には、定着装置90が配設されている。定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録紙Pは、未定着トナー像の担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化されて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録紙Pは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
本プリンタでは、標準モード、高画質モード、高速モードが制御部60に設定されている。標準モードにおけるプロセス線速(感光体や中間転写ベルトの線速)は、約280[mm/s]と設定されている。但し、プリント速度よりも高画質化を優先する高画質モードにおけるプロセス線速は、標準モードよりも遅い値に設定されている。また、画質よりもプリント速度を優先する高速モードにおけるプロセス線速は、標準モードよりも速い値に設定されている。標準モード、高画質モード、高速モードの切り替えは、プリンタに設けられた操作パネル50(図16参照)に対するユーザーのキー操作、あるいはプリンタに接続されているパーソナルコンピュータ側でのプリンタプロパティメニューによって行われる。
本プリンタにおいて、モノクロ画像を形成する場合には、転写ユニット30におけるY,M,C用の1次転写ローラ35Y,35M,35Cを支持している図示しない揺動自在な支持板を移動せしめて、1次転写ローラ35Y,35M,35Cを、感光体2Y,2M,2Cから遠ざける。これにより、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2Y,2M,2Cから引き離して、中間転写ベルト31をK用の感光体2Kだけに当接させる。この状態で、4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kのうち、K用の画像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像を感光体2K上に形成する。
本プリンタにおいて、2次転写バイアスの直流成分は、電圧の時間平均値(Vave)、すなわち、直流成分の電圧たる時間平均電圧値(時間平均値)Vaveと同じ値である。電圧の時間平均値Vaveとは、電圧波形の1周期にわたる積分値を、1周期の長さで割った値である。
2次転写バイアスを2次転写裏面ローラ33に印加し、且つニップ形成ローラ36を接地した本プリンタでは、2次転写バイアスの極性がトナーと同じマイナス極性になっているときには、2次転写ニップN内において、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に静電的に押し出す。これにより、中間転写ベルト31上のトナーを記録紙P上に転移させる。一方、重畳バイアスの極性がトナーとは逆のプラス極性になっているときには、2次転写ニップN内において、マイナス極性のトナーをニップ形成ローラ36側から2次転写裏面ローラ33側に向けて静電的に引き寄せる。これにより、記録紙Pに転移させたトナーを中間転写ベルト31側に再び引き寄せる。
ところで、記録紙Pとして、和紙のような表面凹凸に富んだものを用いると、表面凹凸にならった濃淡パターンを画像中に発生させ易くなるため、特許文献1では、2次転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものではなく、交流電圧に対して直流電圧を重畳した重畳バイアスを2次転写バイアスとして印加している。
しかしながら、本発明者らは実験により、かかる構成においては、紙表面の凹部上に形成された画像箇所に複数の白点を発生させ易くなることを見出した。そこで、本発明者らは、白点を発生させる原因について鋭意研究を行ったところ、次のようなことがわかってきた。即ち、図10は、2次転写ニップNの一例を模式的に示す概念図である。同図において、中間転写ベルト531は、その裏面に当接している2次転写裏面ローラ533により、ニップ形成ローラ536に向けて押圧されている。この押圧により、中間転写ベルト531のおもて面とニップ形成ローラ536とが当接する2次転写ニップNが形成されている。2次転写ニップNに送り込まれた記録紙Pには、中間転写ベルト531上のトナー像が2次転写される。トナー像を2次転写するための2次転写バイアスは、同図に示される2つのローラのうち、何れか一方に印加され、他方のローラは接地されている。どちらのローラに転写バイアスを印加しても、トナー像を記録紙Pに転写することが可能であるが、2次転写裏面ローラ533に2次転写バイアスを印加する場合であって、且つトナーとしてマイナス極性のものを用いる場合を例にして説明する。この場合、2次転写ニップN内のトナーを2次転写裏面ローラ533側からニップ形成ローラ536側に移動させるためには、重畳バイアスからなる2次転写バイアスとして、電位の時間平均値がトナーの極性と同じマイナス極性の電位になるものを印加する。
図11は、2次転写裏面ローラ533に印加される重畳バイアスからなる2次転写バイアスの波形の一例を示す図である。同図において、時間平均電圧(以下「時間平均値」という)Vave[V]は、2次転写バイアスの時間平均値を表している。図示のように、重畳バイアスからなる2次転写バイアスは、図11に示すように、正弦波状の形状を示しており、戻し方向側のピーク値と、転写方向側のピーク値とを具備している。Vtという符号が付されているのは、それら2つのピーク値のうち、2次転写ニップN内でトナーをベルト側からニップ形成ローラ536側に移動させる方(転写方向側)のピーク値である(以下、「転写方向ピーク値Vt」という)。また、Vrという符号が付されているのは、トナーをニップ形成ローラ536側からベルト側に戻す方(戻し方向側)のピーク値である(以下、戻しピーク値Vrという)。また、図示のような重畳バイアスの代わりに、交流成分だけからなる交流バイアスを印加しても、2次転写ニップNにおいてトナーをベルトと記録紙との間で往復移動させることは可能である。しかし、交流バイアスでは、トナーを単に往復移動させるだけで、記録紙P上に転移させることはできない。直流成分を含む重畳バイアスを印加して、その時間平均値である時間平均電圧Vave[V]をトナーと同じマイナス極性にすることで、トナーを往復移動させながら、相対的にはベルト側から記録紙P側に移動させて記録紙P上に転移させることが可能になる。
本発明者らは、その往復移動の様子を観測したところ、次のようなことを見出した。即ち、2次転写バイアスの印加を開始すると、まず始めに、中間転写ベルト531上でトナー層の表面に存在しているごく僅かなトナー粒子だけがトナー層から離脱して、記録紙P表面の凹部内に向かう。しかし、トナー層中の殆どのトナー粒子は、トナー層中に留まったままである。トナー層から離脱したごく僅かなトナー粒子は、記録紙表面の凹部内に進入した後、電界の向きが逆になると、凹部内からトナー層に逆戻りする。このとき、逆戻りしたトナー粒子は、トナー層中に留まっていたトナー粒子に衝突して、そのトナー粒子のトナー層(あるいは記録紙)に対する付着力を弱める。すると、次に電界が記録紙Pに向かう方向に反転したときには、最初よりも多くのトナー粒子がトナー層中から離脱して、記録紙表面の凹部に向かう。このような一連の挙動を繰り返していくことで、トナー層中から離脱して記録紙表面の凹部内に進入するトナー粒子の数を徐々に増やしていって、凹部内に十分量のトナー粒子を転移させていることがわかった。
このようにしてトナー粒子を往復移動させる構成では、図11に示した戻しピーク値Vrをある程度大きな値に設定しないと、記録紙表面の凹部内に進入したトナー粒子をベルト上のトナー層に十分に引き戻すことができず、凹部上で画像濃度不足を引き起こしてしまう。また、2次転写バイアスの時間平均値Vave[V]をある程度大きな値に設定しないと、記録紙表面の凸部に対して十分量のトナーを転移させることができずに、凸部上で画像濃度不足を発生させてしまう。記録紙表面における凸部及び凹部の両方で十分な画像濃度を得るには、時間平均値Vave[V]と戻しピーク値Vrとをそれぞれある程度の大きな値にするために、電圧の最大値と最小値の幅となる戻しピーク値Vrから転写方向ピーク値Vtまでの電圧(以下、「ピークツウピーク電圧」と記す)Vppを比較的大きな値に設定する必要がある。すると、必然的に転写方向ピーク値Vtも比較的大きな値にすることになる。転写方向ピーク値Vtは、接地しているニップ形成ローラ536と、2次転写バイアスを印加している2次転写裏面ローラ533との最大電位差に相当するため、その値が大きくなるとローラ間の放電が発生し易くなる。特に、中間転写ベルト531と記録紙表面の凹部との間に形成される微小空隙で放電を発生させて、凹部上の画像箇所に白点を引き起こし易くなる。記録紙表面の凸部と凹部とでそれぞれ十分な画像濃度を得るために、ピークツウピーク電圧Vppを比較的大きな値に設定することにより、記録紙表面の凹部上の画像箇所で白点を発生させ易くなっていたことがわかった。
次に、本発明者らが行った観測実験について詳細に説明する。
本発明者らは、2次転写ニップN内におけるトナーの挙動を観測するために、特殊な観測実験装置を製造した。図12は、その観測実験装置を示す概略構成図である。この観測実験装置は、透明基板210、現像装置231、Zステージ220、照明241、顕微鏡242、高速度カメラ243、パーソナルコンピュータ244などを備えている。透明基板210は、ガラス板211と、これの下面に形成されたITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極212と、透明電極212の上に被覆された透明材料からなる透明絶縁層213とを具備している。この透明基板210は、図示しない基板支持手段によって所定の高さ位置で支持されている。この基板支持手段は、図示しない移動機構によって図12中上下左右方向に移動可能に構成されている。図示の例では、透明基板210が金属板215を載置したZステージ220の上に位置しているが、基板支持手段の移動により、Zステージ220の側方に配設された現像装置231の真上に移動することも可能である。なお、透明基板210の透明電極212は、基板支持手段に固定された電極に接続され、この電極は接地されている。
現像装置231は、実施形態に係るプリンタの現像装置と同様の構成とされていて、スクリュウ部材232、現像ロール233、ドクターブレード234などを有している。現像ロール233は、電源235によって現像バイアスが印加された状態で回転駆動される。
透明基板210が基板支持手段の移動により、現像装置231の真上で且つ現像ロール233に対して所定のギャップを介して対向する位置まで所定の速度で移動せしめられると、現像ロール233上のトナーが透明基板210の透明電極212上に転移する。これにより、透明基板210の透明電極212上には所定の厚みのトナー層216が形成される。トナー層216に対する単位面積あたりのトナー付着量は、現像剤のトナー濃度、トナーの帯電量、現像バイアス値、基板210と現像ロール233とのギャップ、透明基板210の移動速度、現像ロール233の回転速度などによって調整することができる。
トナー層216が形成された透明基板210は、平面状の金属板215上に導電性接着剤で貼り付された記録紙214との対向位置まで平行移動せしめられる。金属板215は、図示しない加重センサが設けられた基板221上に設置され、基板221はZステージ220上に設置されている。また、金属板215は、電圧増幅器217に接続されている。電圧増幅器217には、波形発生装置218によって直流電圧及び交番電圧からなる転写バイアスが入力され、金属板215には電圧増幅器217によって増幅された転写バイアスが印加される。Zステージ220を駆動制御して金属板215を上昇させると、記録紙214がトナー層216と接触し始める。金属板215を更に上昇させると、トナー層216に対する圧力が増加するが、加重センサからの出力が所定の値になるように金属板215の上昇を制御して停止させる。圧力を所定値にした状態で、金属板215に転写バイアスを印加してトナーの挙動を観察する。観察後は、Zステージ220を駆動制御して金属板215を下降させて、記録紙214を透明基板210から離間させる。すると、トナー層216は記録紙214上に転写されている。
トナーの挙動の観察については、透明基板210の上方に配設されている顕微鏡242及び高速度カメラ243を用いて行う。透明基板210は、ガラス板211、透明電極212、及び透明絶縁層213という各層が全て透明材料からなるので、透明電極210の上方から、透明基板210を介して、透明基板210の下側にあるトナーの挙動を観察することができる。
顕微鏡242としては、キーエンス社製のズームレンズVH−Z75からなるものを用いた。また、高速度カメラ243としては、フォトロン社製のFASTCAM−MAX 120KCを用いた。フォトロン社FASTCAM−MAX 120KCは、パーソナルコンピュータ244によって駆動制御される。顕微鏡242及び高速度カメラ243は、図示しないカメラ支持手段によって支持されている。このカメラ支持手段は、顕微鏡242の焦点を調整できるように構成されている。
透明基板210上におけるトナーの挙動を、次のようにして撮影した。即ち、まず、照明241によってトナーの挙動の観察位置に照明光を照射して、顕微鏡242の焦点を調整する。次に、金属板215に転写バイアスを印加して、透明基板210の下面に付着しているトナー層216のトナーを、記録紙214に向けて移動させる。このときのトナーの挙動を、高速度カメラ243で撮影した。
図12に示した観測実験装置と、実施形態に係るプリンタとでは、トナーを記録紙に転写する転写ニップの構造が異なるため、転写バイアスが同じであっても、トナーに作用する転写電界は異なる。適切な観察条件を調べるために、観測実験装置でも、良好な凹部濃度再現性が得られる転写バイアス条件を調べてみた。記録紙214としては、(株)NBSリコー社製のFC和紙タイプ「さざ波」と呼ばれるものを使用した。トナーとしては、平均粒径6.8[μm]のYトナーに、Kトナーを少量混入したものを用いた。観測実験装置では、記録紙(さざ波)の裏面に転写バイアスを印加する構成になっているため、トナーを記録紙に転写し得る転写バイアスの極性が、実施形態に係るプリンタとは逆になっている(即ち、プラス極性)。重畳バイアスからなる2次転写バイアスの交流成分として、波形が正弦波であるものを採用した。交流成分の周波数fを1000[Hz]、直流成分(本例では時間平均値Vaveに該当)を200[V]、ピークツウピーク電圧Vppを1000[V]に設定し、記録紙214に対して0.4〜0.5[mg/cm2]のトナー付着量でトナー層216を転写した。その結果、「さざ波」の表面の凹部上で十分な画像濃度を得ることができた。
そのとき、顕微鏡242の焦点を透明基板210上のトナー層216に合わせ、トナーの挙動を撮影した。すると、次のような現象が観察された。即ち、トナー層216中のトナー粒子は、転写バイアスの交流成分によって形成される交番電界により、透明基板210と記録紙214との間を往復移動するが、その往復移動回数の増加とともに、往復移動するトナー粒子の量が増加した。
具体的には、転写ニップにおいては、2次転写バイアスの交流成分の1周期(1/f)が到来する毎に、交番電界が1回作用してトナー粒子が透明基板210と記録紙214との間を1回往復移動する。初めの1周期では、図13に示すように、トナー層216のうち、層の表面に存在しているトナー粒子だけが層から離脱する。そして、記録紙216の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216のトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、次の1周期には、図14に示すように、前の1周期よりも多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。そして、記録紙216の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216中にまだ残っていたトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、更に次の1周期には、図15に示すように、前の1周期よりも更に多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。このように、トナー粒子は往復移動する毎に、その数を徐々に増やしていく。すると、ニップ通過時間が経過したときには(観測実験装置ではニップ通過時間に相当する時間が経過したとき)、記録紙Pの凹部内に十分量のトナーが転移していることがわかった。
次に、直流電圧(本例では時間平均値Vaveに該当)を200[V]に設定し、且つ1周期当たりのバイアスのプラス側とマイナス側(本例では戻し方向と転写方向側)でのピークツウピーク電圧値Vppを800[V]にした条件で、トナーの挙動を撮影したところ、次のような現象が観察された。即ち、トナー層216中のトナー粒子のうち、層の表面に存在しているものが、初めの1周期で層から離脱して記録紙Pの凹部内に進入する。ところが、進入したトナー粒子は、その後、トナー層216に向かうことなく凹部内に留まった。そして次の1周期が到来したとき、トナー層216から新たに離脱して記録紙Pの凹部内に進入したトナー粒子は、ごく僅かであった。よって、ニップ通過時間が経過した時点で、記録紙Pの凹部内には少量のトナー粒子しか転移していない状態であった。
本発明者らは、更なる観測実験を行ったところ、始めの一周期で、トナー層216から記録紙Pの凹部内に進入させたトナー粒子を、再びトナー層216に引き戻すことができる戻しピーク値Vrの値は、透明基板210上における単位面積あたりのトナー付着量に左右されることがわかった。すなわち、透明基板210上におけるトナー付着量が多くなるほど、記録紙213の凹部内のトナー粒子をトナー層216に引き戻すことが可能な戻しピーク値Vrが大きくなるのである。
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
図16は、図1に示したプリンタの制御系の一部を示すブロック図である。同図において、転写バイアス出力手段の一部を構成する制御部60は、演算手段たるCPU60a(Central Processing Unit),不揮発性メモリたるRAM60c(Random Access Memory),一時記憶手段たるROM60b(Read Only Memory)、フラッシュメモリ60d等を有している。プリンタ全体の制御を司る制御部60には、様々な構成機器やセンサ類が通信可能に電気的に接続されているが、図16においては、本プリンタの特徴的な構成に関連する構成機器だけを示している。
1次転写電源81(Y,M,C,K)は、1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに印加するための1次転写バイアスを出力するものである。2次転写用の電源39は、2次転写ニップNに供給する2次転写バイアスを出力するものである。本形態では、2次転写裏面ローラ33に印加するための2次転写バイアスを出力する。この電源39は、制御部60とともに転写バイアス出力手段を構成している。オペレータパネル50は、図示しないタッチパネルや複数のキーボタンなどから構成されていて、タッチパネルの画面に画像表示可能であり、タッチパネルやキーボタンによって操作者による入力操作を受付け、入力情報を制御部60に送信する機能を備えている。オペレータパネル50は、制御部60から送られてくる制御信号に基づいて、タッチパネルに画像を表示することもできる。
本発明においては、2次転写バイアスの交流成分における電圧の時間平均値(Vave)が、同じく交流成分の最大値と最小値の中心電圧値(電圧の最大値と最小値の中心値)Voffよりも転写側であることを必須としている。それを実現するためには、交流成分の中心電圧値Voffを挟んで転写方向側の面積よりも、戻し方向側の面積のほうが小さい波形にする必要がある。時間平均値とは、電圧の時間平均値であり、これは電圧波形の1周期にわたる積分値を、1周期の長さで割った値である。
これを達成するための一形態として、例えば図17に示すように、戻し方向側の電圧の立ち上がり及び立下りの傾きを、転写方向側の電圧の立ち上がり及び立下りの傾きよりも小さくする形態が考えられる。また、中心電圧値Voffと電圧の時間平均値Vaveとの関係を示す値として、交流波形全体に占める中心電圧値Voffよりも戻し方向側の面積の割合を、戻し時間[%]と設定した。
次に、本発明者らが行った実験と、実施形態に係るプリンタの更なる特徴的な構成について説明する。
[実験1]
本発明者らは、実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリント試験機を用意した。そして、このプリント試験機を用いて各機器構成を下記の設定として各種のプリントテストを行った。
・各感光体や中間転写ベルト31の線速であるプロセス線速 173[mm/s]
・2次転写バイアスの交流成分の周波数f 周波数を500[Hz]
・記録紙P 特殊製紙株式会社製のレザック66(商品名)175kg紙(四六版連量)
レザック66は、「さざ波」よりも紙表面の凹凸の度合いが大きい紙である。紙表面の凹部の深さは最大で100[μm]程度である。Mベタ画像とCベタ画像との重ね合わせによる青ベタ画像を、様々な2次転写バイアスの条件でそれぞれレザック66に出力した。そして出力された青ベタ画像を凹部・凸部ともに○と●を○、□と△を△、×を×として、様々なピークツウピーク電圧値Vpp及び時間平均値Vaveにおいて図27から図35に示した。
試験環境は、温度10℃/湿度15%の環境で行なった。
バイアス印加手段となる電源は、ファンクションジェネレーター(横河電機FG300)で波形を作り、それをアンプ(Trek High Voltage Amplifir Model10/40)で1000倍に増幅して図10の2次転写裏面ローラ533に印加した。
〔比較例1〕
図11で説明した交流成分として従来の正弦波を使用したもので、図17は比較例の波形を示す。比較例1では、戻し時間は50%とし、この時の効果を図27に示す。このとき図17に示す全てのピークツウピーク電圧値Vpp及び時間平均値Vaveにおいて、交流成分の中心電圧値Voff=時間平均値Vaveであった。
〔実施例1〕
交流成分としては、戻し方向側の電圧の立ち上がり及び立下りの傾きを、転写方向側の電圧の立ち上がり及び立下りの傾きよりも小さくした。すなわち、中心電圧値Voffよりも転写方向寄りの値の電圧の出力時間となる転写方向側の時間をA、中心電圧値Voffよりも転写方向とは逆極性寄りの値の電圧の出力時間となる戻り時間をBとしたとき、A>Bとなるように設定した。このときの波形を図18に示す。戻し時間は40%とし、その効果は図28に示す。
このとき図28の
ピークツウピーク電圧値Vpp=12kV
電圧の時間平均値Vave=−5.4kVのとき
交流成分の中心電圧値Voff=−4.0kV であった。
〔実施例2〕
交流成分として、戻し方向側の電圧の立ち上がり及び立下りの傾きを、転写方向側の電圧の立ち上がり及び立下りの傾きよりも小さくした。このとき出力電圧の波形は、電圧が転写方向の電圧のピーク値から中心電圧値Voffへと移行するまでの時間をt1、電圧が中心電圧値Voffから転写方向の電圧と逆極性の電圧のピーク値へと移行するまでの時間をt2としたとき、t2>t1である。このときの波形は図19に示す。戻し比率は40%とし、その効果は図28に示す。この方法によって、電圧の時間平均値Vaveを、電圧の最大値と最小値の中心電圧値Voffよりも転写方向寄りに設定できる。
〔実施例3〕
交流成分の中心電圧値Voffを挟んで転写方向側の面積よりも、戻し方向側の面積の方が小さい波形にする別な手段としては、図20に示すように戻し方向側の時間Bを、転写方向側の時間Aよりも短くする手法がある。この方法によって、転写方向側の時間Aに対する戻し時間Bを小さくすることができる。
〔実施例4〕
交流成分として、戻し時間Bを転写方向側の時間Aよりも短くした。このときの波形は図21に示す。戻し時間は45%とし、その効果は図29に示す。
〔実施例5〕
交流成分として、戻し時間Bを転写方向側の時間Aよりも短くした。このときの波形は図22に示す。戻し時間は40%とし、その効果は図30に示す。
〔実施例6〕
交流成分として、戻し時間Bを転写方向側の時間Aよりも短くした。このときの波形は図23に示す。戻し時間は32%とし、その効果を図31に示す。
〔実施例7〕
交流成分として、戻し時間Bを転写方向側の時間Aよりも短くした。このときの波形は図24に示す。戻し時間は16%とし、その効果を図32に示す。
〔実施例8〕
交流成分として、戻し時間Bを転写方向側の時間Aよりも短くした。このときの波形は図25に示す。戻し時間は8%とし、その効果を図33に示す。
〔実施例9〕
交流成分として、戻し時間Bを転写方向側の時間Aよりも短くした。このときの波形は図25と同様であるので省略する。戻し時間は4%とし、その効果を図34に示す。
〔実施例10〕
交流成分として、戻し時間Bを転写方向側の時間Aよりも短くし、波形を丸くした。このときの波形は図26に示す。戻し時間は16%とし、その効果を図35に示す。
このとき図35において
ピークツウピーク電圧値Vpp=12kV
電圧の時間平均値Vave=−5.4kVのとき
中心電圧値Voff=−2.4kVであった。
[実験2]
本発明者らは、2次転写ニップN内で、紙表面の凹部内に進入したトナーをベルト上に有効に戻すことができる立ち上がり時間t1の最小値を調べた。具体的には、戻し時間比=50[%]、の条件にて2次転写バイアスの交流成分の周波数fを適宜変化させて、青ベタ画像の凹部上の画像濃度を測定した。この実験によって得られた凹部のIDmax値と交流成分の周波数fとの関係を、図36示す。
[実験3]
交流成分のピークツウピーク電圧Vpp=2500[V]、中心電圧値としてのオフセット電圧Voff=−800[V]、戻し時間比=20[%]の条件にて、交流成分の周波数fと、プロセス線速vとを変化させながら、それぞれの周波数f及びプロセス線速vの条件で青ベタ画像を普通紙に出力し、出力されたベタ画像を目視で観察した。そして、2次転写ニップN内の交番電界の影響と思われる画像濃度ムラ(ピッチムラ)の有無を評価した。すると、同じ周波数fの条件では、プロセス線速vを速くするほどピッチムラを発生させ易くなり、同じプロセス線速vの条件では、周波数fを低くするほどピッチムラを発生させ易くなることがわかった。
これらの結果は、2次転写ニップN内で、トナーをある程度の回数(以下、ニップ内往復回数Nという)だけ中間転写ベルトと紙表面の凹部との間で往復移動させないと、ピッチムラを発生させてしまうことを示している。
プロセス線速v=282[mm/s]且つ周波数f=400[Hz]という条件では、ピッチムラは認められなかったが、
プロセス線速V=282[mm/s]で且つ周波数f=300[Hz]という条件ではピッチムラが認められた。
このときの2次転写ニップNのベルト移動方向の長さである2次転写ニップN幅dは3[mm]である。よって、ピッチムラは認められなかった条件におけるニップ内往復回数nは、(3mm×400Hz/282mm/s)=約4回と計算され、この値であればピッチムラをギリギリで回避することができることになる。すなわち、このニップ内往復回数は最低ニップ内往復回数となる。
また、プロセス線速v=141[mm/s]で且つ周波数f=200[Hz]という条件では、ピッチムラは認められなかったが、
プロセス線速V=141[mm/s]で且つ周波数f=100[Hz]という条件ではピッチムラが認められた。プロセス線速v=141[mm/s]で且つ周波数f=200[Hz]という条件も、プロセス線速v=282[mm/s]で且つ周波数f=400[Hz]という条件と同様に、
ニップ内往復回数nは、(3mm×200Hz/141mm/s)=約4回と計算される。よって、「周波数f>(4/d)*v」という最低条件を具備することで、ピッチムラのない画像を得ることができると言える。
そこで、本実施形態に係るプリンタにおいては、交流成分として、「f>(4/d)×v」という関係を具備するものを出力するように、2次転写用の電源39を構成している。なお、かかる条件を具備させるために、本プリンタでは、情報取得手段たるオペレータパネル50や、外部から送られてくるプリンタドライバ設定情報を通信によって取得する図示しない通信手段を具備しており、それらによって取得した情報に基づいて、高速モード、標準モード、低速モードの何れかでプリント動作を行うのかを把握する。そして、その把握結果に基づいて、プロセス線速vを制御部60で把握している。つまり、本形態では、高速モード、標準モード、低速モード毎に対応した異なるプロセス線速vが予め制御部60内に記憶されていて、制御部60は、モードが選択されることで、プロセス線速vを把握する。つまり、制御部60はオペレータパネル50による取得結果に応じて、予め設定された直流成分の出力電流の目標値を変更する変更手段として機能する。
[実験4]
2次転写ニップNにおいては、記録紙Pに対してある程度の転写電流が流れないと、トナーを良好に転写することができない。そして、当然ながら、厚紙に対しては、一般的な厚みの記録紙よりも転写電流が流れ難い。普通の厚みの和紙に対しても、肉厚の和紙に対しても、紙表面の凸部や凹部にそれぞれトナーを良好に付着させることが望ましい。そこで、2次転写バイアスをどのように制御すれば、それを実現するのに有利であるのかを調べるために、この実験4を行った。
2次転写用の電源39として、交流成分のピークツウピークVppと、オフセット電圧(中心電圧値)Voffとをそれぞれ定電圧制御で出力するものを用いた。その他の各種条件は次の通りである。
・プロセス線速v=282[mm/s]
・記録紙:レザック66の175kg紙
・テスト画像:A4版サイズの黒ベタ画像
・戻し時間比=40[%]
・オフセット電圧Voff:800〜1800[V]
・ピークツウピーク電圧Vpp:3〜8[kV]
・周波数f=500[Hz]
以上の条件で出力した黒ベタ画像の紙表面の凹部上おける画像濃度を、次のようにして評価した。
・ランク5:凹部内が完全にトナーで埋まっている
・ランク4:凹部内がほぼトナーで埋まっているが、凹部における深さの大きい箇所では僅かに紙地肌が見える
・ランク3:凹部における深さの大きい箇所で明らかに紙地肌が見える
・ランク2:ランク3より悪く、且つ後述するランク1より良い
・ランク1:凹部にトナーが全く付着していない
また、黒ベタ画像の紙表面の凸部上における画像濃度を次のようにして評価した。 ・ランク5:濃度ムラが全くなく、良好な画像濃度が得られている
・ランク4:僅かに濃度ムラがあるものの、薄い箇所でも問題ない画像濃度が得られている
・ランク3:濃度ムラがあり、薄い箇所の画像濃度が許容レベルを超えて不足している
・ランク2より悪く、且つ後述するランク1より良い
・ランク1:全体的に画像濃度不足
そして、次のようにして、凹部上における画像濃度の評価結果と、凸部上における画像濃度の評価結果とを統合した。
・●:凹部、凸部の画像濃度の評価結果が何れもランク5以上
・○:凹部、凸部の画像濃度の評価結果が何れもランク4以上
・□:凹部の画像濃度の評価結果だけがランク3以下
・△:凸部の画像濃度の評価結果だけがランク3以下
・×:凹部、凸部の画像濃度の評価結果が何れもランク3以下
次に、記録紙Pを、レザック66の175kg紙ではなく、それよりも厚いレザック66の215kg紙に代えて、同様の実験を行った。そして、オフセット電圧(中心電圧値)Voffとピークツウピーク電圧Vppとの組合せについて、実験に適用した全ての組合せの中から、レザック66(175kg紙)とレザック66(215kg紙)との両方で、●(凹部、凸部の画像濃度の評価結果が何れもランク5以上)という結果が得られたものや、○(凹部、凸部の画像濃度の評価結果が何れもランク4以上)という結果が得られたものを抽出した。その結果、両方の紙で●という結果が得られる前記組合せは存在しなかった。また、両方の紙で○という結果が得られる前記組合せは、Vpp=6[kV]、オフセット電圧Voff=−1100±100[V](中心値±9%)というものであった。
[実験5]
2次転写用の電源39として、オフセット電圧(中心電圧値)Voffをそれぞれ定電流制御で出力するものを用いた。その出力の目標値(オフセット電流Ioff)については、−30〜−60μAに設定した。これら以外の条件の他は、実験4と同様にして実験を行った。
この結果、凹部、凸部の画像濃度の評価結果が何れもランク5以上という結果(●)が得られるVppとオフセット電流Ippとの組合せは、Vpp=7kV、Ioff=−42.5±7.5[μA](中心値±18%)というものであった。また、両方の紙で○という結果が得られる前記組合せは、Vpp=7kV、オフセット電流Ioff=−47.5±12.5[μA](中心値±26%)。
このように、実験4では、両方の紙で●という結果が得られた組合せがなかったのに対し、実験5では、両方の紙で●という結果が得られた組合せが存在した。しかも、○という結果が得られた組合せに着目すると、実験4では、オフセット電圧Voff=−1100±100[V](中心値±9%)であるのに対し、実験5では、Vpp=7kV、オフセット電流Ioff=−47.5±12.5[μA](中心値±26%)であり、後者の方が明らかに中心値からの数値範囲が広くなっている。これらの実験結果は、2次転写バイアスにおいて、直流成分を定電圧制御する場合に比べて、定電流制御する場合の方が、一般の厚みの紙から厚紙までに対応可能な制御目標値の設定の余裕度を大きくし得ることを意味している。
そこで、実施形態に係るプリンタにおいては、2次転写用の電源39として、直流成分を定電流制御で出力するものを用いている。なお、この2次転写用の電源39は、交流成分についても、ピークツウピーク電流を定電流制御で出力するように構成されている。これにより、環境変動に関わらず、ピークツウピーク電流Vppを一定にすることで、有効な戻しピーク電流や送りピーク電流を確実に生起せしめることができる。
このような各実験の結果によると、比較例1と実施例1との比較からみても、電圧としての2次転写バイアスの最大値と最小値の中心値となる中心電圧値Voffよりも、2次転写バイアスの時間平均値Vaveが転写方向側にあることで、凹凸のある記録紙への転写性の成立範囲が格段に広がっている。成立範囲が広がっていることで、様々な紙種や画像パターン、使用環境などの各種パラメータが変化した場合でも、記録材表面の凹部と凸部とでそれぞれ十分な画像濃度を得ながら、白点の発生を抑えることができ、良好な画像を得られる。
これは、中心電圧値Voffよりも時間平均値Vaveが転写方向側にあることで、必要な戻しピーク値Vrを確保しつつ、放電の原因となる転写方向ピーク値Vtを大きくせずに、時間平均値Vaveのみを大きくすることができるため効果が得られていると考えられる。
実施例1〜7の結果より、戻し時間を転写時間よりも短くすることで、さらに戻し時間を小さくすることができるため、より良好な画質が得られる。つまり、中心電圧値Voffよりも転写方向寄りの値の電圧の出力時間をA、中心電圧値Voffよりも転写方向とは逆極性寄りの値の電圧の出力時間をBとしたとき、A>Bとなるように電源39の出力を設定することで、より良好な画質が得られる。
また、実施例8の結果より、戻し時間が小さくなりすぎると(正弦波よりは広いが)成立範囲が小さくなってしまうため、2次転写バイアスの電圧をXとし、Xの範囲が、X=B/(A+B)としたとき、0.10<X<0.40となるように電源39からの出力を設定するのが望ましい。
実験2の結果を示す図36から、周波数が15000Hzを越えた時点から急激に凹部のIDが下がっている。これは戻し時間が余りにも小さいため、トナーの往復運動が行なわれなくなっているためと考える。このときの戻し時間は周波数15000Hzの時の戻し時間が0.033m/secであるため、2次転写バイアスにおける、転写方向側への電圧と逆極性の電圧の印加時間が、少なくとも0.03m/sec以上となるように電源39の出力を設定するのが望ましい。
二次転写ニップN(二次転写部)に2次転写バイアスとしてAC転写電圧を印加する場合、(例えば)2次転写裏面ローラ33の芯金に制御した電圧を印加する。しかし実際には、二次転写ニップNに電位差を形成することが目的であるため、2次転写裏面ローラ33の芯金の電位を制御するだけでは、2次転写裏面ローラ33の抵抗層(ゴム・スポンジ等の樹脂部分)の抵抗が変化した場合、二次転写ニップN(二次転写部)に所望の電位差を形成することができなくなる。
そこで、記録紙Pが無い状態(記録紙が有る状態でも可)に一定の電流を流し、そのときに必要であった電圧から、二次転写ニップN(2次転写裏面ローラ33・中間転写ベルト31・ニップ形成ローラ36)の抵抗を測定し、それに基づいたAC転写電圧を印加することで、常に二次転写ニップN(二次転写部)に所望の値に近い電位差を形成することができる。
測定した抵抗値から、二次転写ニップNに印加する電圧値を求める時は、二次転写ニップNの抵抗値から直接印加電圧を求めてもよいし、抵抗値をある閾値で分けられたテーブルに分け、そのテーブルごとに求めても良い。
以下に、二次転写ニップNの抵抗値等が変化した場合の印加電圧の補正方法の一例を示す。ここでは直流成分を定電流制御、交流成分を低電圧制御した場合の補正方法を示しているが、この限りでは無い。直流成分、交流成分共に定電流、定電圧の制御が可能で、その場合も補正係数の値が異なるのみで、二次転写ニップNの抵抗から印加すべき電界を求めることが可能である。
ただし、どのような制御の組み合わせになったとしても、直流成分と交流成分は別々に補正をしなければならない。その理由として、直流成分は、印加された電流がほぼ全て2次転写裏面ローラ33から記録紙P及びニップ形成ローラ36に流れるのに対し、交流成分は、極性が素早く入れ替わるために、殆どの電流が2次転写裏面ローラ33、又はニップ形成ローラ36を充電するためだけに消費され、2次転写裏面ローラ33から記録紙P及びニップ形成ローラ36に流れるのは印加した電流の内の一部のみであるためである。具体的には、本構成において印加する直流成分の電流は−10μA〜−100μAであるのに対し、交流成分では±0.5mA〜±10mAの電流を印加している。
補正方法の例として、下記テーブル1では、抵抗の閾値を5つ設け、6つに区切られたテーブルを設け、抵抗が低い順にR−2〜R+3、R0が標準までを設定し、それぞれに抵抗の補正具合を決定している。係数の増減が交流成分と直流成分で逆の傾向となっているが、これは前述の定電圧制御と定電流制御の違いのためである。
定電流制御では、二次転写ニップNを通過する電流が制御されるため、2次転写裏面ローラ33の抵抗が低下した場合、二次転写ニップNに形成される電位差が小さくなるため、制御する電流を大きくしなければ転写ニップNの形成される電位差は一定にならない。一方定電圧制御では、2次転写裏面ローラ33の芯金部の電圧が制御されるため、二次転写ニップNでの電位差は、2次転写裏面ローラ33のゴム層で電圧降下したものとなる。よって2次転写裏面ローラ33の抵抗が低下した場合、二次転写ニップNに形成される電位差が大きくなるため、制御する電圧を小さくしなければ二次転写ニップNの形成される電位差は一定にならない。
テーブル1に示した補正係数を用いることで、二次転写ニップNの抵抗が変化した場合でも同じ転写性を得る事ができる。テーブル1の補正係数の値はあくまで本例での形態における値であり、システムが変わった場合は前記補正係数も変化する。
また、記録紙Pが含んでいる水分によっても、2次転写裏面ローラ33に印加すべき電界は異なる。これは、記録紙Pが含む水分が増加することで、記録紙Pの電気抵抗が低下するためである。記録紙Pの電気抵抗が低下した場合、二次転写ニップNに形成すべき電位差は小さくなる。
例えばテーブル2では、画像形成装置内の温湿度を計測し、そこから求めた絶対湿度ごとの閾値を5つ設け、6つに区切られたテーブルを設け、絶対湿度が小さい順にLLL、LL、ML、MM、MH、HHまでを設定し、それぞれに温湿度環境の補正具合を決定している。温湿度環境の係数は、転写ニップNに存在する紙の抵抗による変化を補正するものであるため、定電圧制御と定電流制御では係数増減の傾向は同じになる。
以上のように2次転写裏面ローラ33に印加する電界を制御する事で、誤差要因が変化した場合でも一定の転写性が得られる。
一方で、電圧印加手段としてより簡易的なものを使用した場合、電圧波形が鈍る事が考えられる。
また、二次転写ニップNにおける電気的容量が変化した場合も電圧波形が変化することが考えられる。例えば電気的容量が小さい場合、一旦印加した電荷が漏れ出す事で電圧降下が発生する。この場合を想定し、最大出力電流が低い電源で、二次転写ニップNの容量が低い場合と高い場合を想定して計算した電圧波形を求め、それを他の実施例と同様にファンクションジェネレーターで波形を作り、アンプで増幅して図10の2次転写裏面ローラ533に印加した。
〔実施例11〕
二次転写ニップNの静電容量を170pF(ピコファラド)、抵抗を17MΩと想定したもの。このときの波形を図37に示す。このときの戻し比率は12%であった。その効果を図38に示す。
〔実施例12〕
二次転写ニップNの静電容量を120pF(ピコファラド)、抵抗を15MΩと想定したもの。このときの波形は図38に示す。このときの戻し比率は12%であった。その効果を図39に示す。
実施例11〜12の結果から、二次転写ニップNの条件が変化した場合であっても、戻し時間を転写時間よりも短くすることで、比較例に対してより良好な画質が得られる。図39から、戻し比率が12%となっているにも関わらず、戻し比率が16%の実施例7よりも若干範囲が狭くなっている。これは電圧降下の影響と考えられるが、比較例に対しては大きく優れた効果をなっている。
次に図1に示した中間転者ベルト31、2次転写裏面ローラ33および2次転写ローラ36抵抗値、ベルト厚について説明する。
抵抗値
2次転写裏面ローラ33:6.0〜8.0LogΩで好ましくは7.0〜8.0LogΩ
2次転写ローラ36 :6.0〜12.0LogΩ(あるいはSUS)で好ましくは4.0LogΩ
中間転写ベルト31の表面抵抗:9.0〜13.0LogΩで、好ましくは10.0〜12.0LogΩC・m
中間転写ベルト31の体積抵抗:6.0〜13LogΩC・mで、好ましくは7.5〜12.5LogΩC・mより好ましくは約9LogΩC・m
中間転写ベルト31の厚み
20〜200μm 好ましくは60μm程度
測定方法
(2次転写ローラ36の体積抵抗測定)
回転測定
加重:5N/片側,バイアス印加:転写ローラ軸に印加(1KV)印加し、1min測定間にローラ1回転の抵抗測定し、平均値を体積抵抗とする。
(ベルト表面抵抗率抵抗測定)
ハイレスタ HRSプローブ(三菱化学製) 500V、10sec値
(ベルト体積抵抗率抵抗測定)
ハイレスタ HRSプローブ(三菱化学製) 100V、10sec値
転写ユニットの構成としては、図1のものに限定されるものではなく、以下に説明するものであってもよい。
図41に示す転写ユニット30Aでは、画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kに対向配置した像担当持体である中間転写ベルト31の内側ループ内に配置された2次転写裏面ローラ33に、転写部材として2次転写搬送ベルト36Cを対向配置して接触させたものである。この形態では中間転写ベルト31の移動方向が図1とは逆方向となっている。
2次転写搬送ベルト36Cは駆動ローラ36Aと従動ローラ36Bに巻き掛けられていて、2次転写搬送手段360を構成している。中間転写ベルト31と2次転写搬送ベルト36Cは2次転写裏面ローラ33と駆動ローラ36Aとの対向部において当接していて、2次転写ニップNを形成している。2次転写搬送ベルト36Cはレジストローラ101によって2次転写ニップNに向かって給紙された記録紙Pを受け取り搬送するものである。
本形態において、駆動ローラ36Aは接地されているのに対し、2次転写裏面ローラ33には二次転写バイアスを供給する電源39によって2次転写バイアスが印加されている。この電源39から供給される2次転写バイアスにより、二次転写ニップNにおいて、中間転写ベルト31に転写されたトナー像を中間転写ベルト31から二次転写ベルト36C側に向けて静電移動させる転写電界が形成される。中間転写ベルト31上のトナー像は、二次転写電界やニップ圧の作用によって、二次転写ニップNに進入した記録紙Pに転写される。
バイアスの印加形態としては、2次転写裏面ローラ33に印加するものではなく、2次転写裏面ローラ33を接地し、2次転写搬送手段360の構成としてバイアス供給ローラ36Dを二次転写ベルト36Cのループ内側に二次転写ベルト36Cと当接させて配置し、バイアス供給ローラ36Dと電源39とを接続して、バイアス供給ローラ36Dに二次転写バイアスを印加するようにしてもよい。
図42に示す転写ユニット30Bは、画像形成ユニット1M、1C、1Y、1Kに対向配置して、転写部材たる転写搬送ベルト310を複数のローラ部材に巻きけて配置したものである。転写搬送ベルト310は、図示しないレジストローラによって給紙された記録紙Pを吸着して後述の転写ニップN1に搬送するものであり、図中反時計周りに回転移動走行するように構成されている。転写搬送ベルト310のループの内側には、転写バイアスが電源39からそれぞれ供給される転写ローラ350M、350C、350Y、350Kが各色の感光体2M、2C、2Y、2Kと対向するように配置されている。転写ローラ350M、350C、350Y、350Kは、転写搬送ベルト310を各色の感光体にそれぞれ当接している。本形態では、各感光体2M、2C、2Y、2Kと転写搬送ベルト310の当接部が転写ニップN1として形成されている。
本形態では、各感光体は接地されているのに対し、転写ローラ350M、350C、350Y、350Kには、それぞれ電源39によって転写バイアスが印加される。これにより、転写ニップN1においてトナー像を感光体2M、2C、2Y、2Kから転写ローラ側に向けて静電移動させる転写電界が形成される。
記録紙Pは図右下側から搬送され、バイアスを印加された紙吸着ローラ351と転写搬送ベルト310の間を通過することで転写搬送ベルト310に吸着した後、各色の転写ニップN1へ搬送される。各感光体上の各色のトナー像は、転写電界やニップ圧の作用によって、転写ニップN1へ搬送された記録紙Pに順次転写され、記録紙Pにフルカラートナー像が形成される。
本形態では、転写ローラ350M、350C、350Y、350Kにそれぞれ個別な電源39から転写バイアスを印加するようにしたが、1つの電源39から転写ローラ350M、350C、350Y、350Kに分配するようにしてもよい。
上記形態では、画像形成装置としてフルカラー画像を形成するものを前提に説明したが、本発明はカラー画像を形成するものに限定されるものではなく、図43に示すようにブラックの画像形成ユニット1Kが備えるブラックの感光体2Kに対して転写部材として転写ローラ352を対向配置したモノクロの画像形成装置に適用することもできる。
転写ローラ352は、ステンレスやアルミニウム等からなる芯金上に導電性のスポンジからなる抵抗層が積層されて構成されている。抵抗層の表面にフッ素樹脂等からなる表層を設けてもよい。
本形態では、転写ローラ352と感光体2Kとが当接していて、両者の間に転写ニップNが形成されている。感光体2Kは接地されているのに対し、転写ローラ352には、電源39によって転写バイアスが印加される。これにより、転写ローラ352と感光体2Kとの間に、感光体2Kに形成されているトナー像を感光体2Kから転写ローラ352側に向けて静電移動させる転写電界が形成される。感光体2上のトナー像は、転写電界やニップ圧の作用によって転写ニップN2に向けて送り出された記録紙Pに転写される。
図44に示す形態は、1つの感光体2Kに対向配置されて接触する転写部材として転写搬送ベルト353を用いたものである。転写搬送ベルト353は駆動ローラ354と従動ローラ355との間に巻き掛けられて支持され、駆動ローラ354によって図中矢印で示す方向に移動するように構成されている。転写搬送ベルト353は、駆動ローラ354と従動ローラ355との間の位置で感光体2Kとその一部が当接していて、転写ニップN3を形成している。転写搬送ベルト353は、転写ニップN3に向かって給紙された記録紙Pを受け取り搬送するものである。
転写搬送ベルト353のループ内側には、転写バイアスローラ356とバイアスブラシ357とが配置されている。これら転写バイアスローラ356とバイアスブラシ357は、転写ニップN3よりもベルト移動方向の下流側の位置で、転写搬送ベルト353の内側に当接するように配置されている。
本形態では、感光体2Kは接地されているのに対し、転写バイアスローラ356とバイアスブラシ357には、電源39によって転写バイアスが印加されている。これにより、転写ニップN3においてトナー像を感光体2Kから転写搬送ベルト353側に向けて静電移動させる転写電界が形成される。感光体2K上のトナー像は、転写電界やニップ圧の作用によって、転写搬送ベルト353により搬送されて転写ニップN3に進入した記録紙Pに転写される。
本形態では、転写バイアスローラ356とバイアスブラシ357の両方を備え、それぞれ転写搬送ベルト353に接触するように設けたが、これら転写バイアスローラ356とバイアスブラシ357は必ずしも両方必要なわけではなく、いずれか一方だけを設ける形態であってもよい。また、転写バイアスローラ356またはバイアスブラシ357は転写ニップN3の直下に設けてもよい。
このように図41から図44に示した形態においても画像形成装置の制御部60によって2次転写バイアス、あるいは転写バイアスを、電圧としての2次転写バイアス(転写バイアス)の最大値と最小値の中心値となる中心電圧値Voffよりも、2次転写バイアス(転写バイアス)の時間平均値Vaveが転写方向側にあることで、凹凸のある記録紙Pへの転写性の成立範囲が格段に広がり、様々な紙種や画像パターン、使用環境などの各種パラメータが変化した場合でも、記録材表面の凹部と凸部とでそれぞれ十分な画像濃度を得ながら、白点の発生を抑えることができ、良好な画像を得ることができる。