JP2016164210A - シンチレータ材料、放射線検出器及び放射線検査装置 - Google Patents

シンチレータ材料、放射線検出器及び放射線検査装置 Download PDF

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真憲 碇
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Abstract

【課題】シンチレート光の透過率が高く、Siフォトダイオードで光電変換可能な発光波長を有し、減衰時間も短く、1800℃以下の熱処理で製造可能で製造コストも抑えられたシンチレータ材料を提供する。【解決手段】下記式(1)で表される複合酸化物の透光性セラミックス又は単結晶からなることを特徴とするシンチレータ材料である。(TbxR1-x-yCey)pBqOr(1)(式中、0<x<1、0.00001≦y≦0.15、x+y≦1、1.76≦p<2.00、0.80≦p/q<1.0、rは電気的中性を保つための正の数、RはY、Gd、Lu、La、Ho、Tm、Dy、Eu、Prよりなる群から選択された少なくとも1つの希土類元素、BはTi、Sn、Hf、Si、Ge、Zrよりなる群から選択された少なくとも1つの元素(ただし、Si及びGeについては当該元素単独である場合を除く)である。)【選択図】図1

Description

本発明は、X線を検出する放射線検出器及び/又はガンマ線を検出する放射線検出器に用いられるシンチレータ材料に関し、より詳細にはX線CT装置及び/又はガンマ線PET装置に用いられる放射線検出器に適用可能な複合酸化物を含む透光性セラミックス又は単結晶からなるシンチレータ材料、放射線検出器及び放射線検査装置に関する。
X線やガンマ線などの放射線エネルギー(高エネルギー電磁フォトン)によって励起されると、可視及び/又は近可視域の光エネルギーを放出する固体のシンチレータ材料は、光信号を電気信号に変換する光電変換回路と組み合わせた放射線検出器として、従来から資源探索用、セキュリティー用、荷物や食品の検査用、高エネルギーの研究用などの様々な用途に用いられてきた。その中でも、上記、放射線エネルギーを可視及び/又は近可視域の光エネルギーに変換する固体のシンチレータ材料と、光エネルギーを電気信号に変換する光電変換回路、並びに出力された電気信号をデジタル化して計算処理して画像化するコンピューティドトモグラフィ(CT)システムと組み合わせた、X線CT装置やガンマ線PET(Positron Emission Tomography)装置は、近年の高齢化社会の進展に伴って、医療機関を中心として急速に普及が進んでいる。
X線CT装置とガンマ線PET装置とは、放出される放射線の波長も、得られる光信号並びにそれを処理するシステムも大きく異なり、それぞれ一長一短がある。例えばX線CT装置はガンマ線PET装置に比べ安価だが、被曝線量がガンマ線PET装置に比べて大きい。他方、ガンマ線PET装置は高速撮影が可能で、ガン細胞に特異に蓄積させた放射性同位元素を検出することでガンの位置を検出することに適しているが、非常に高価な装置である。そのため、いずれの装置も適宜住み分けをしながら共に普及が進んでいる。とはいえ、今後の高齢化社会に対応した放射線医療機器の益々の普及促進のためには、X線CT装置、ガンマ線PET装置いずれにおいても、被曝線量低減化に寄与する新たなシンチレータ材料の開発が求められている。
X線CT装置用のシンチレータ材料としては、過半量のイットリア(Y23)、約50モル%までのガドリニア(Gd23)及び小活性量(典型的には約0.02モル%〜12モル%、好ましくは約1モル%〜6モル%、最も好ましくは約3モル%)の希土類活性剤酸化物であるユーロピウムを含んだ立方晶構造の透光性酸化物焼結体シンチレータが昔から知られている(米国特許第4,421,671号明細書(特許文献1))。このユーロピウム活性型のシンチレータは発光効率が高く、残光レベルが低く、また他の好ましい特性を有するため、従来から商用利用がなされていた。
その他のX線CT装置用のシンチレータ材料としては、例えば特公平7−97139号公報(特許文献2)に放射線により発光する粉末シンチレータであり、一般式
(Ln1-x-yPrxCey22S:(X)
(但し、LnはGd、La及びYからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素を表し、XはF及びClからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素を表し、xは3×10-6≦x≦0.2の範囲の値、yは1×10-6≦x≦5×10-3の範囲の値、Xの量は2乃至1000ppmの範囲である)で表される粉末に焼結助剤を加えて、金属製の容器に詰めて真空封止して、熱間静水圧加圧し、更にアニールしてなる透光性焼結体シンチレータと、該シンチレータの発光を検知する光検出器とからなることを特徴とする放射線検出器が開示されており、発光効率の高いシンチレータ材料が得られている。
また、この系統の材料も、以前からX線CT装置用のシンチレータ材料として広く商用利用がなされており、例えば特許第3741302号公報(特許文献3)のように継続的に改良発明が提案されている。
更に、他のX線CT装置用のシンチレータ材料として、特開2007−169647号公報(特許文献4)には、
「[請求項1]
焼鈍の前に、式A32312を有するガーネットを備えた焼結及び焼鈍を施したシンチレータ組成物であって、式中、AはTb、Ce及びLuからなる群の少なくとも一つの要素又はこれらの組み合わせを有する位置であり、Bは八面***(Al)であり、Cは四面***(やはりAl)であり、上記ガーネットは、
(1)上記式において、上記八面***Bの0.05原子〜2原子までのAlをScで置き換えたもの、
(2)上記式において、0.005原子〜2原子までの酸素をフッ素で置き換え、且つ上記A位において同数のCa原子を置き換えたもの、
(3)上記式において、B位の0.005原子〜2原子をMgで置き換え、且つ同数の酸素原子をフッ素で置き換えたもの、
(4)上記式において、B位の0.005原子〜2原子までをMg/Si、Mg/Zr、Mg/Ti及びMg/Hfからなる群から選択される少なくとも一つの組み合わせの原子で置き換えたもの、
(5)上記式において、B位の0.005原子〜2原子までをLi/Nb、Li/Taからなる群から選択される少なくとも一つの組み合わせの原子で置き換えたもの、並びに
(6)上記式において、上記A位の0.005原子〜2原子までをCaで置き換え、且つ等しい数のB位又はC位をケイ素で置き換えたもの、
から成る群から選択される少なくとも一つの置換を有する、
シンチレータ組成物。」
が開示されており、公知のシンチレータ組成物よりも短い減衰時間と高エネルギー線での曝射時の損傷を低減することができるとされている。
この系統のガーネット構造を持つシンチレータ材料は、新しく発明されたもので、最近盛んに類似の発明が提案されている(例えば、特開2012−72331号公報(特許文献5)、特開2012−184397号公報(特許文献6)など)。
最新のX線CT装置のフラッグシップ機種で、こうしたシンチレータ材料の搭載が進んでいる模様である。
他方、ガンマ線PET装置用のシンチレータ材料としては、古くからBi4Ge312単結晶(通称BGO)が利用されてきた。BGOは発光強度がある程度強く、減衰時間もある程度短いが融点が低く、製造コストが嵩まないため、比較的安価なPET装置用材料として需要がある。またその後、発光量も増し、減衰時間も飛躍的に短くなったGd2SiO5:Ce(通称GSO)単結晶が開発され、ガンマ線PET装置のハイエンド機種に採用されている(例えば、特公昭62−8472号公報(特許文献7))。
更にその後、発光量がより大きく、減衰時間も更に短いLu2SiO5:Ce(通称LSO)単結晶が開発され、現在でもガンマ線PET装置にフラッグシップ機に搭載されている(例えば、特開平9−118593号公報(特許文献8))。
米国特許第4,421,671号明細書 特公平7−97139号公報 特許第3741302号公報 特開2007−169647号公報 特開2012−72331号公報 特開2012−184397号公報 特公昭62−8472号公報 特開平9−118593号公報
しかしながら、X線CT装置に関して、上記特許文献1に開示されている(Y過半量Gd≦0.523:Eu系のシンチレータ材料は、減衰時間が長い点及び密度が6.0g/cm3未満と小さく、厚膜化して使用しなければならない点が問題となっていた。
また、上記特許文献2、3に開示されている(Gd1-x-yPrxCey22S系のシンチレータ材料は、単斜晶のためシンチレート光の透過率が30%程度と低い点、及び高エネルギー線での曝射時の損傷が比較的大きい点が問題となっていた。
また、上記特許文献4、5、6に開示されている(Tb1-x-yLuxCey3(Al1-zScz2Al312系のシンチレータ材料は、減衰時間も短く、立方晶のためシンチレート光の透過率も80%以上と高く、高エネルギー線での曝射時の損傷も非常に小さい特徴を持ち、X線CT装置用のシンチレータ材料としては極めて好適な物質である。ただし、非常に複雑な組成の複合酸化物を高温で処理・作製しなくてはならないため、極めて高価になるという問題があった。あるいは、組成によっては、焼結処理温度を下げられる実施例も開示されているが、構成元素の種類が多いため、所望の組成で製造しようとすると、かなり歩留りが下がるという問題もあった。
一方、ガンマ線PET装置に関して、BGO単結晶についてはその製造コストはリーズナブルであるものの、発光強度及び減衰時間については不十分であった。また、GSO単結晶、LSO単結晶については、発光強度も大きく、減衰時間も短いため、ガンマ線PET装置用のシンチレータ材料としては非常に好適な物質である。しかしながら、融点が2000℃前後と極めて高いため、他のシンチレータ材料と比較しても、格段に高価になるという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、X線及び/又はガンマ線の励起によってSiフォトダイオードで光電変換可能な波長領域に発光ピーク波長を有するシンチレーション光を発し、該シンチレーション光の透過率が高く、また減衰時間も短く、比較的単純な組成の複合酸化物を1800℃以下の熱処理で製造可能で製造コストも抑えられた、新規なシンチレータ材料、放射線検出器及び放射線検査装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するため、下記のシンチレータ材料、放射線検出器及び放射線検査装置を提供する。
〔1〕 下記式(1)で表される複合酸化物を主成分として含む透光性セラミックス又は下記式(1)で表される複合酸化物の単結晶からなることを特徴とするシンチレータ材料。
(Tbx1-x-yCeypqr (1)
(式中、0<x<1、0.00001≦y≦0.15、x+y≦1、1.76≦p<2.00、0.80≦p/q<1.0、rは電気的中性を保つための正の数、Rはイットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、ランタン、ホルミウム、ツリウム、ディスプロシウム、ユーロピウム、プラセオジムよりなる群から選択された少なくとも1つの希土類元素(ただし、ホルミウム、ツリウム、ディスプロシウムよりなる群から2つ以上を選択しない)、Bはチタン、スズ、ハフニウム、シリコン、ゲルマニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの元素(ただし、シリコン及びゲルマニウムについては当該元素単独である場合を除く)である。)
〔2〕 X線及び/又はガンマ線で励起した場合に、540〜650nmの波長範囲に発光ピークを有する光を発する〔1〕記載のシンチレータ材料。
〔3〕 厚み1mmでの波長633nmの光の透過率が70%以上であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載のシンチレータ材料。
〔4〕 パイロクロア格子を有する立方晶を主相とすることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のシンチレータ材料。
〔5〕 〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のシンチレータ材料を搭載したことを特徴とする放射線検出器。
〔6〕 〔5〕記載の放射線検出器を搭載したことを特徴とする放射線検査装置。
本発明によれば、テルビウムを含有し、セリウム活性型で、ガーネット相とは別の立方晶希土類酸化物を主成分とし、更に化学量論組成からAサイト位置の元素とBサイト位置の元素との組成比(モル比)を所定の比率でずらしたシンチレータ材料とすることにより、X線及び/又はガンマ線の励起によってSiフォトダイオードで光電変換可能な波長領域に発光ピーク波長を有するシンチレーション光を発し、かつ該シンチレーション光の透過率が高く、更に減衰時間も短くしつつ化学量論組成のシンチレータ材料よりも大きな光出力が得られ、製造温度が1800℃以下で可能なため製造コストも抑えられた新規のシンチレータ材料を提供できる。
本発明に係る放射線検出器の構成を示す概略図であり、(a)はその正面図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。 実施例1−1の発光スペクトルの図である。
[シンチレータ材料]
以下、本発明に係るシンチレータ材料について説明する。
本発明に係るシンチレータ材料は、下記式(1)で表される複合酸化物を主成分として含む透光性セラミックス又は下記式(1)で表される複合酸化物の単結晶からなる。
(Tbx1-x-yCeypqr (1)
(式中、0<x<1、0.00001≦y≦0.15、x+y≦1、1.76≦p<2.00、0.80≦p/q<1.0、rは電気的中性を保つための正の数、Rはイットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、ランタン、ホルミウム、ツリウム、ディスプロシウム、ユーロピウム、プラセオジムよりなる群から選択された少なくとも1つの希土類元素(ただし、ホルミウム、ツリウム、ディスプロシウムよりなる群から2つ以上を選択しない)、Bはチタン、スズ、ハフニウム、シリコン、ゲルマニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの元素(ただし、シリコン及びゲルマニウムについては当該元素単独である場合を除く)である。)
なお、Tb、R、Ceを総称してAサイト位置の元素という。
上記式(1)において、テルビウム(Tb)は、X線及び/又はガンマ線照射により効率よく励起される骨格材料であり、且つ、該励起エネルギーが、賦活材(活性剤)であるセリウム(Ce)イオンに効率良くエネルギートランスファーさせられる励起準位を持っており、更に該エネルギートランスファーされたセリウムの励起エネルギーが、Siフォトダイオードで光電変換可能な波長領域に発光ピークを有する光で発光することのできる準位に調整できる元素であり、本発明においては必須の元素である。賦活材であるセリウムイオンに効率良くエネルギーをトランスファーできると発光強度が上がるため好ましい。また、Siフォトダイオードで光電変換ができると、光電子増倍管で受光するよりも遥かに低コストで放射線検出器が製造できるため好ましい。更に、従来よりも長波長側の可視光領域に発光ピークを有する光で発光できると、Siフォトダイオードを用いた放射線検出器においてバイアス電圧を下げることができるので回路の簡略化を図ることができ好ましい。
更に、テルビウムの別の作用効果として、波長ロック効果がある。即ち、テルビウムを添加することにより、紫外線、X線、ガンマ線の励起源の別なく、常に特定の波長、典型的には545nm±6nmの波長域に発光ピークを有する光で発光することができる。このときの発光スペクトルは波長545nm±6nmの波長域のみに特に強い発光ピーク(最強の発光ピークであって他の発光ピークと比べて2倍以上の発光強度を有するピーク)を有し、なおかつその発光スペクトルの半値幅は非常に狭く、例えば12〜20nmである。従って、本発明のシンチレータ材料は、波長545nmにおいて安定した発光強度で発光するものとなる。
これは他の希土類元素の有無にかかわらず発現するテルビウムの作用効果であり、特にテルビウムの添加量が少ないほど確実に得られる作用効果である。あたかも主成分が別の元素であって(即ち、Aサイト位置のTb−R−Ce系においてRのモル比が0.5以上になる場合であって)、テルビウムが微量含まれる副成分であるかのように見える組成の酸化物であっても得られる作用効果である。その上、典型的なテルビウムの発光波長である545nmは、Siフォトダイオードで光電変換可能な波長領域でもある。そこで、様々な組成の酸化物群を作製した場合に、少なくとも545nm以上に発光ピークを有する酸化物であることを担保するためも微量以上添加することが好ましい、重要で必須な元素である。
なお、従来のシンチレータ材料が発する光の発光ピークは、幾つかの組成により異なるが、510〜590nmの波長範囲内にある。
セリウム(Ce)は、テルビウム、及び更に別の1つ以上の希土類元素が吸収したX線及び/又はガンマ線のエネルギーを速やかに受け取って励起状態となり、速やかに低エネルギー状態に遷移する元素であり、本発明においては必須の別の元素である。セリウムを活性剤に利用すると、ユーロピウム等の他の活性剤に比べ、減衰時間が短くなり好ましい。
なお、セリウムは微量で上記作用効果を発現することが可能な元素であり、本発明においては量的にみた場合に主成分とは言えないにも拘らず、必須で重要な元素である。
Rは、材料の密度を上げてX線及び/又はガンマ線エネルギーの吸収断面積を向上させる作用を持つ元素群であり、更にセリウムの電子遷移状態と共鳴して発光効率を向上させる作用を持つ元素群もここに含まれる。
そのような元素としては、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、ルテチウム(Lu)、ランタン(La)、ホルミウム(Ho)、ツリウム(Tm)、ディスプロシウム(Dy)、ユーロピウム(Eu)、プラセオジム(Pr)が挙げられる。特に、イットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、ランタンは、紫外から赤外領域の広い波長範囲にかけて余計な吸収準位を持たない透明な元素群であるため、テルビウムや、セリウム、ユーロピウム又はプラセオジムからの発光を不必要に吸収して暗くしてしまう副作用を持たないため好ましい。
また、各希土類元素の電子軌道を見た場合、f軌道を占める電子の数が、ちょうどゼロ(f軌道に1つの電子も入らない場合)、全ての上向きのみを占める場合(7個)、上向きと下向きの全数を占める場合(14個)であると、ギブスの自由エネルギーが小さくなるため、紫外から赤外領域の広い波長範囲にかけ、余計な吸収準位を持たない透明な元素群となる。この条件に該当する元素群としてもイットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、ランタンが挙げられる。なお、いずれも透明元素であることには変わりなく、シンチレータにおける優劣はない。
一方、ホルミウム、ツリウム、ディスプロシウムは前記のような電子状態ではないため、可視光領域にいくつかの吸収準位をもつ。そのため取扱いには若干の注意が必要であり、少なくとも1つの組成において、ホルミウム、ツリウム、ディスプロシウムよりなる群から2つ以上を選択しないことが透明な材料を作る上で好ましい。
また、ユーロピウム、プラセオジムは、セリウムが励起状態となってから、速やかに低エネルギー状態に遷移すること、即ちセリウムが発光することをアシストする作用を持ち、更にその他の組成との組み合わせや濃度の調整によっては、前述のテルビウムと同様に、そしてテルビウムよりも長波長側において波長ロック効果を得ることのできる元素群であるため、発光量増大、並びに発光波長の長波長化を目指す目的のためには、好適に利用できる元素群である。
なお、イットリウムは材料の融点を下げる作用があるため、目的とする材料の製造温度を下げるために好適に利用できる元素である。
また、ガドリニウム、ルテチウム、ランタンは重い元素群であるため、目的とする材料の密度を上げるために好適に利用できる元素群である。
Bは、当該シンチレータ材料の結晶構造をパイロクロア型の立方晶に規定する作用を持つ元素であり、本発明においては重要な元素である。この結果、本発明のシンチレータ材料は、パイロクロア格子を有する立方晶(パイロクロア型立方晶)を主相とするものとなり、好ましくはパイロクロア型立方晶からなるものとなる。なお、主相とするとは、結晶構造としてパイロクロア型立方晶が全体の50体積%以上、好ましくは90体積%以上、より好ましくは99体積%以上、特に好ましくは99.9体積%以上を占めることをいう。結晶構造が立方晶であると、複屈折による散乱の影響がなくなり、X線及び/又はガンマ線で励起した場合に出力されるシンチレーション光の透過率が向上し、厚み1mmでの波長633nmの光の透過率が70%以上となるため好ましい。
そのような元素としては、チタン(Ti)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)が好適に利用できる。ただし、シリコン及びゲルマニウムについては当該元素単独である場合を除く。
なお、この位置に入る元素を、Bサイト位置の元素という。即ち、本発明のシンチレータ材料は、A227タイプの複合酸化物を主成分とする。
上記式(1)は、テルビウム及びセリウムと、Rとしてイットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、ランタン、ホルミウム、ツリウム、ディスプロシウム、ユーロピウム、プラセオジムよりなる群から選択された少なくとも1つの希土類元素とを含み、Bとしてチタン、スズ、ハフニウム、シリコン、ゲルマニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの元素(ただし、シリコン及びゲルマニウムについては当該元素単独である場合を除く)を含むもので構成されているが、更に他の元素を含有していてもよい。その他の元素としては、イッテルビウムが例示でき、様々な不純物群として、カルシウム、アルミニウム、燐、タングステン、モリブデン等が典型的に例示できる。
その他の元素の含有量は、Aサイト位置の元素の全量を100としたとき、10以下であることが好ましく、0.1以下であることが更に好ましく、0.001以下(実質的にゼロ)であることが特に好ましい。
式(1)中、テルビウムに関するxは0より大きく1未満であり、好ましくは0超0.8以下、より好ましくは0.001以上0.4以下、更に好ましくは0.001以上0.2未満、特に好ましくは0.002以上0.1未満である。xが1であるとセリウムに関するyを0.00001以上確保することができなくなり、吸収したX線及び/又はガンマ線のエネルギーを速やかに受け取って励起状態となり、速やかに低エネルギー状態に遷移する活性剤を添加することができなくなる。また、xが0.2未満の場合、本発明者らが鋭意検討したところ、X線及び/又はガンマ線で励起した場合の最強の発光ピーク波長が従来のシンチレータ材料が発する光の発光ピーク波長とほぼ同じものとなる一方、減衰時間など他の発光特性が従来のシンチレータ材料よりもよくなることから、従来の放射線検出器においてシンチレータ材料を本発明のシンチレータ材料に置き換えるだけで従来よりも性能のよい放射線検出器が得られることが判明した。xが0.1未満の場合、発光量増加傾向が顕著となり好ましい。ただし、xが0の場合、X線及び/又はガンマ線で励起した場合の発光の光出力が急激に小さくなるため好ましくない。
式(1)中、セリウムに関するyは0.00001以上0.015以下であり、0.0001以上0.01以下であることが好ましい。yが0.00001未満であると、吸収したX線及び/又はガンマ線のエネルギーを速やかに受け取って励起状態となり、速やかに低エネルギー状態に遷移する活性剤の濃度が薄すぎるため、発光強度が低下し、減衰時間が長くなる。またyが0.015超であると、再び発光強度が低下し始める。また、x+y≦1である。
なお、xはyの2倍以上である(x≧2y)ことが好ましい。x<2yでは、発光強度が低下するおそれがある。
式(1)中、p、q、rはすべて正の数であり、pは1.76以上2.00未満、好ましくは1.76以上1.90以下である。また、p/qは0.80以上1.0未満、好ましくは0.80以上0.90以下である。更に、rは電気的中性を保つための正の数である。pが1.76未満、又はp/qが0.80未満の場合、パイロクロア型立方晶が主相とならず、セラミックスの場合は透光性が著しく低下するため好ましくない。また、p/qが1.0より大きい場合、Tb、R及び/又はCeイオンがBサイト位置を占有し、Tb4価やCe4価等が生成し、結果として発光強度が低下するため好ましくない。なお、p+q=4であることが好ましい。
本発明のシンチレータ材料においてA227タイプの複合酸化物という組成全体で考えた場合には、Aサイト位置の元素群とBサイト位置の元素群の選択及びモル比をある適切な範囲に制御することで、より確実に立方晶型のパイロクロア相を主相とする結晶構造をもつシンチレータ材料を得ることができる。
そのような範囲としては、式(1)におけるp及びp/qに関する上記規定と共に、以下の式(2)、式(3)を同時に満たす範囲が挙げられる。

p×(92.3x+101y+90α+93.7β+86.1γ+105δ+90.1ε+88ζ+91.2η+94.7θ+99.7ι)+(q−4.58)×(60.5j+69k+71L+40m+54n+72o)≧0 (2)

(5.2−q)×(60.5j+69k+71L+40m+54n+72o)−p×(92.3x+101y+90α+93.7β+86.1γ+105δ+90.1ε+88ζ+91.2η+94.7θ+99.7ι)≧0 (3)

(式中、p、q、x、yは式(1)におけるp、q、x、yである。また、式(1)のAサイト位置の元素におけるモル比として、αはイットリウムの範囲、βはガドリニウムの範囲、γはルテチウムの範囲、δはランタンの範囲、εはホルミウムの範囲、ζはツリウムの範囲、ηはディスプロシウムの範囲、θはユーロピウムの範囲、ιはプラセオジムの範囲であり、α+β+γ+δ+ε+ζ+η+θ+ι=1−x−yである。更に、式(1)のBサイト位置の元素におけるモル比として、jはチタンの範囲、kはスズの範囲、Lはハフニウムの範囲、mはシリコンの範囲、nはゲルマニウムの範囲、oはジルコニウムの範囲であり、j+k+L+m+n+o=1である。即ちBサイトのモル数はq×(j+k+L+m+n+o)=qとなる。)
なお、式(1)においてR及びBに入る元素群の選択数を増やせば増やすほど、減衰時間が短くなる作用があるため、実際に製造することの可能な範囲内で、適宜選択元素数を増やすことが好ましい。
本発明のシンチレータ材料は、上記式(1)で表される複合酸化物を主成分として含有する。即ち、本発明のシンチレータ材料は、上記式(1)で表される複合酸化物を主成分として含有していればよく、その他の成分を副成分として含有していてもよい。
ここで、主成分として含有するとは、上記式(1)で表される複合酸化物を50質量%以上含有することを意味する。式(1)で表される複合酸化物の含有量は80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更に好ましく、99.9質量%以上であることが特に好ましい。
一般的に例示される、その他の副成分としては、単結晶育成の際にドープされるドーパントやフラックス、セラミックス製造の際に添加される焼結助剤等がある。
本発明のシンチレータ材料の製造方法としては、フローティングゾーン法、マイクロ引下げ法などの単結晶製造方法、並びにセラミックス製造法があり、いずれの製法を用いても構わない。ただし、一般に単結晶製造方法では固溶体の濃度比の設計に一定程度の制約があり、セラミックス製造法の方が本発明ではより好ましい。
以下、本発明のシンチレータ材料の製造方法の例としてセラミックス製造法について更に詳述するが、本発明の技術的思想を踏襲した単結晶製造方法を排除するものではない。
《セラミックス製造法》
[原料]
本発明で用いる原料としては、テルビウム及びセリウム、並びに希土類元素R(Rはイットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、ランタン、ホルミウム、ツリウム、ディスプロシウム、ユーロピウム、プラセオジムよりなる群から選択された少なくとも1つの希土類元素である)、更にB元素(Bはチタン、スズ、ハフニウム、シリコン、ゲルマニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの元素である)からなる本発明のシンチレータ材料の構成元素となる金属粉末、ないしは硝酸、硫酸、尿酸等の水溶液、あるいは上記元素の複合酸化物粉末等が好適に利用できる。特に、上記各元素の各酸化物粉末は安定で安全なため取扱いが容易となるため好ましい。なお、これら原料の純度は99.9質量%以上が好ましい。
また、上記原料の粉末形状については特に限定されず、例えば角状、球状、板状の粉末が好適に利用できる。また、二次凝集している粉末であっても好適に利用できるし、スプレードライ処理等の造粒処理によって造粒された顆粒状粉末であっても好適に利用できる。更に、これらの原料粉末の調製工程については特に限定されない。共沈法、粉砕法、噴霧熱分解法、ゾルゲル法、アルコキシド加水分解法、その他あらゆる合成方法で作製された原料粉末が好適に利用できる。また、得られた原料粉末を適宜湿式ボールミル、ビーズミル、ジェットミルや乾式ジェットミル、ハンマーミル等によって処理してもよい。
本発明で用いる複合酸化物粉末原料中には、適宜焼結抑制助剤(焼結助剤)を添加してもよい。特に高い透光性を得るためには、しばしばホスト材料に見合った好適な焼結抑制助剤を添加することが好ましい。ただし、その純度は99.9質量%以上が好ましい。なお、焼結抑制助剤を添加しない場合には、使用する原料粉末についてその一次粒子の粒径がナノサイズであって焼結活性が極めて高いものを選定するとよい。こうした選択は適宜なされてよい。
更に製造工程での品質安定性や歩留り向上の目的で、各種の有機添加剤が添加される場合がある。本発明においては、これらについても特に限定されない。即ち、各種の分散剤、結合剤、潤滑剤、可塑剤等が好適に利用できる。
[製造工程]
本発明では、上記原料粉末を用いて、所定形状にプレス成形した後に脱脂を行い、次いで焼結して、相対密度が最低でも95%以上に緻密化した焼結体を作製する。その後工程として熱間等方圧プレス(HIP)処理を行うことが好ましい。
(成形)
本発明の製造方法においては、通常のプレス成形工程を好適に利用できる。即ち、ごく一般的な、原料粉末を型に充填して一定方向から加圧するプレス工程や変形可能な防水容器に密閉収納して静水圧で加圧するCIP(Cold Isostatic Pressing)工程が利用できる。なお、印加圧力は得られる成形体の相対密度を確認しながら適宜調整すればよく、特に制限されないが、例えば市販のCIP装置で対応可能な300MPa以下程度の圧力範囲で管理すると製造コストが抑えられてよい。あるいはまた、成形時に成形工程のみでなく一気に焼結まで実施してしまうホットプレス工程や放電プラズマ焼結工程、マイクロ波加熱工程なども好適に利用できる。更に、プレス成形法ではなく、鋳込み成形法による成形体の作製も可能である。加圧鋳込み成形や押出し成形等の成形法も、出発原料である酸化物粉末の形状やサイズと各種の有機添加剤との組み合わせを最適化することで、採用可能である。
(脱脂)
本発明の製造方法においては、通常の脱脂工程を好適に利用できる。即ち、加熱炉による昇温脱脂工程を経ることが可能である。また、この時の雰囲気ガスの種類も特に制限はなく、空気、酸素、水素等が好適に利用できる。脱脂温度も特に制限はないが、もしも有機添加剤が混合されている原料を用いる場合には、その有機成分が分解消去できる温度まで昇温することが好ましい。
(焼結)
本発明の製造方法においては、一般的な焼結工程を好適に利用できる。即ち、抵抗加熱方式、誘導加熱方式等の加熱焼結工程を好適に利用できる。この時の雰囲気は特に制限されないが、不活性ガス、酸素、水素、真空等が好適に利用できる。
本発明の焼結工程における焼結温度は、選択される出発原料により適宜調整される。一般的には選択された出発原料を用いて、製造しようとする各種複合酸化物焼結体の融点よりも数10℃から100℃乃至は200℃程度低温側の温度が好適に選定される。また、選定される温度の近傍に立方晶以外の相に相変化する温度帯が存在するパイロクロア型複合酸化物焼結体を製造しようとする際には、厳密にその温度帯を外した条件となるように管理して焼結すると、立方晶以外の相の混入を抑制でき、複屈折性の散乱を低減できるメリットがある。
本発明の焼結工程における焼結保持時間は、選択される出発原料により適宜調整される。一般的には数時間程度で十分な場合が多い。ただし、焼結工程後の複合酸化物焼結体の相対密度は最低でも95%以上に緻密化されていなければならない。
(熱間等方圧プレス(HIP))
本発明の製造方法においては、焼結工程を経た後に更に追加で熱間等方圧プレス(HIP(Hot Isostatic Pressing))処理を行う工程を設けることができる。
なお、このときの加圧ガス媒体種類は、アルゴン、窒素等の不活性ガス、又はAr−O2が好適に利用できる。加圧ガス媒体により加圧する圧力は、50〜300MPaが好ましく、100〜300MPaがより好ましい。圧力50MPa未満では透光性改善効果が得られない場合があり、300MPa超では圧力を増加させてもそれ以上の透光性改善が得られず、装置への負荷が過多となり装置を損傷するおそれがある。印加圧力は市販のHIP装置で処理できる196MPa以下であると簡便で好ましい。
また、その際の処理温度(所定保持温度)は材料の種類及び/又は焼結状態により適宜設定すればよく、例えば1000〜2000℃、好ましくは1300〜1800℃の範囲で設定される。このとき、焼結工程の場合と同様に焼結体を構成する複合酸化物の融点以下及び/又は相転移点以下とすることが必須であり、熱処理温度が2000℃超では本発明で想定している複合酸化物焼結体が融点を超えるか相転移点を超えてしまい、適正なHIP処理を行うことが困難となる。また、熱処理温度が1000℃未満では焼結体の透光性改善効果が得られない。なお、熱処理温度の保持時間については特に制限されないが、焼結体を構成する複合酸化物の特性を見極めながら適宜調整するとよい。
なお、HIP処理するヒーター材、断熱材、処理容器は特に制限されないが、グラファイト、モリブデン(Mo)又はタングステン(W)が好適に利用できる。
(光学研磨)
本発明の製造方法においては、上記一連の製造工程を経た透光性複合酸化物焼結体(透光性セラミックス)について、その光学的に利用する軸上にある両端面を光学研磨することが好ましい。このときの光学面精度は測定波長λ=633nmの場合、λ/4以下が好ましく、λ/8以下が特に好ましい。なお、光学研磨された面に適宜反射防止膜を成膜することで光学損失を更に低減させることも可能である。
以上のようにして得られる本発明のシンチレータ材料は、パイロクロア格子を有する立方晶が主相であって、X線及び/又はガンマ線で励起した場合に、Siフォトダイオードで光電変換可能な波長領域に発光ピークを有するシンチレーション光、例えば好ましくは波長範囲540〜700nm、より好ましくは540〜650nmに発光ピークを有し、特に好ましくはこれらの波長範囲に最強の(最大の発光強度を示す)ピークを有する光を発する。また、その厚みを1mmとした場合の波長633nmの光の透過率が70%以上のものとなる。
[放射線検出器]
本発明のシンチレータ材料は、X線CT装置用途及び/又はガンマ線PET装置用途に好適であり、該装置内にアレイ状に多数配置されて、X線照射及び/又はガンマ線照射により励起される放射線検出器用として好適である。なお、本発明で想定しているX線及びガンマ線としては、例えばタングステン又はタングステン合金(Re−W合金)からなる電子線照射面を有するターゲットを用いたX線管で発生するX線、放射性同位体コバルト60のガンマ線源から発生するガンマ線が挙げられる。
本発明の放射線検出器は、本発明のシンチレータ材料からなるプレートと、その後段のSiフォトダイオードなどの受光素子とからなる。その構成例を図1に示す。本発明の放射線検出器10は、本発明のシンチレータ材料からなるシンチレータプレート11が反射材12で仕切られて縦6行、横6列の36素子に配置され、更に各シンチレータプレート11の後段に受光素子13を配置して容器14に収納したものである。この放射線検出器10は、前方から入射してきたX線及び/又はガンマ線によってシンチレータプレート11が励起され、該シンチレータプレート11から出力される発光エネルギーを受光素子13によって電気信号に変換し、増幅して出力する構成となっている。
なお、受光素子13は、本発明のシンチレータ材料の発光ピーク波長の領域の光を検出できるものであり、またX線CT装置やガンマ線PET装置に搭載される放射線検出器に用いられる一般的なものであり、Siフォトダイオード(PD)、Si−APD(Avalanche Photodiode)、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、光電子増倍管(PMT)などが挙げられる。受光素子13として、例えば、感度波長範囲450〜1050nm、最大感度波長が550nm以上、好ましくは感度波長範囲450〜800nm、最大感度波長が590nm以上のSi−APD(Avalanche Photodiode)が好ましい。
このようにアレイ状に配置された本発明の放射線検出器10と、放射線検出器10から出力される電気信号をデジタル化して計算処理して画像化するコンピューティドトモグラフィ(CT)システムとを組み合わせて、X線CT装置やガンマ線PET装置の放射線検査装置が作製される。
以下に、実施例、比較例及び参考例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、原料粉末の一次粒径は、レーザ光回折法による重量平均値として求めた。
[実施例1、比較例1、参考例1]
上記式(1)において、テルビウム及びセリウムの濃度を固定し、Bサイト位置の元素としてチタン、スズ、ハフニウム又はジルコニウムを選択したうえで、pとqの比率(p/q)を変化させた例について説明する。
信越化学工業(株)製の酸化テルビウム粉末、酸化セリウム粉末、酸化ルテチウム粉末、酸化ガドリニウム粉末、酸化ランタン粉末を入手した。また、(株)高純度化学研究所製の酸化チタン粉末、酸化第2スズ粉末、並びにAmerican Elements社製の酸化ハフニウム粉末、並びに第一稀元素化学工業(株)製酸化ジルコニウム粉末を入手した。純度はいずれも99.9質量%以上であった。
上記原料を用いて、表1のような最終組成となる混合比率の各混合酸化物原料を作製した。即ち、最終的なテルビウム、セリウム、R元素のモル数の合計p(つまり、Aサイト位置の元素のモル数)と、チタン、スズ、ハフニウム又はジルコニウムのモル数q(つまり、Bサイト位置の元素のモル数)とがp/q=0.33、0.80、0.90、0.98又は1.00となるように秤量した混合粉末をそれぞれ用意した。なお、p/qの数値は組成のモル比に基づき小数点以下3位で四捨五入している(以下同じ)。続いて、互いの試験サンプル同士の混入を防止しながらエタノール中でジルコニア製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は24時間であった。その後スプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状原料を作製した。
更に、これらの粉末をイリジウムるつぼに入れ、高温マッフル炉にて1600℃、3時間で焼成処理し、比較例、参考例を含めて20種類の焼成原料を得た。得られた各焼成原料をパナリティカル社製粉末X線回折装置で回折パターン解析した。その結果、いずれの焼成原料についても、結晶構造としてパイロクロア型立方晶(パイロクロア格子を有する立方晶)を主相とする酸化物原料となっていることが確認された。
得られた各種原料を再度エタノール中でジルコニア製ボールミル装置にて分散・混合処理した。この際、適宜有機分散剤と有機結合剤を添加した。処理時間は40時間であった。その後再びスプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状パイロクロア型酸化物原料(出発原料)を作製した。
Figure 2016164210
次に、得られた出発原料を直径40mmの金型に充填し、一軸プレス成形機で厚さ6mmのロッド状に仮成形した後、198MPaの圧力で、静水圧プレスしてCIP成形体を得た。続いて得られたCIP成形体をマッフル炉に入れ、大気中800℃で3時間熱処理して脱脂した。
次いで、得られた脱脂済み成形体を真空加熱炉に仕込み、100℃/hの昇温レートで1500〜1700℃まで昇温し、3時間保持してから600℃/hの降温レートで冷却して焼結体を得た。この際、サンプルの焼結相対密度が95%以上となるよう焼結温度や保持時間を調整した。
更に、上記焼結体について、加圧媒体としてArガスを用いて、HIP熱処理温度1500〜1750℃、圧力190MPaで保持時間3時間のHIP処理を行った。
こうして得られた各セラミックス焼結体につき、縦横2mm×2mm、厚み1mmになるように切断、研削及び研磨処理してシンチレータプレートとした。次いで、シンチレータプレート同士の間に反射材(シリコーンペースト中に分散させた酸化マグネシウム粉末からなり、乾燥により接着させたもの)を設けて縦6行、横6列の36素子に仕切った後、このサンプルの光学両端面を光学面精度λ/4(測定波長λ=633nmの場合)で最終光学研磨した。
得られた各シンチレータプレートについてHeNeレーザ(波長633nm)を用いて以下の要領で透過率を測定した。この際、レーザ光がシンチレータプレートとシンチレータプレートとの間の反射材に当らないよう注意した。
(透過率の測定方法)
透過率は、波長633nmの光を透過させたときの光の強度により測定され、以下の式に基づいて求めた。
透過率=I/Io×100
(式中、Iは透過光強度(厚み1mmのサンプルを透過した光の強度)、Ioは入射光強度を示す。)
その後、各シンチレータプレート11を受光素子13上に配置して図1の放射線検出器10を作製した。次いで、この放射線検出器10と、タングステンターゲットのX線管とを組み合わせて作製した光出力測定装置を用いて、X線管の管電圧120kVでシンチレータプレート11にX線照射し、受光素子13に流れる電流値を光出力として求めた。なお、受光素子13として、Si−APD(浜松ホトニクス(株)製短波長型、型番S5343、感度波長範囲450〜800nm、最大感度波長590nm)を用いた。
このとき、以下のようにシンチレータプレート11の最大発光ピーク波長、光出力及び減衰時間を求めた。
(最大発光ピーク波長の測定方法)
前記X線照射評価系で光出力を評価する前に、蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス(株)製Quantaurus−Tau:型番C11367−1)でフォトルミネッセンス(PL)測定し、その結果から最大発光ピーク波長を求めた。即ち、励起波長280nmの光で励起して、出てきた蛍光をグレーティングによる分光を経て、CCDカメラで蛍光波長スペクトル(発光スペクトル)を検出し、蛍光出力が最大となった波長をX線照射時の最大発光ピーク波長とみなした。なお、励起波長280nmの光は、蛍光寿命測定装置で入射可能な最短波長の、つまり最大のエネルギーを持つ紫外線であり、X線照射時のような骨格材の振動を起こさないが、シンチレータプレートを励起させた場合に順次緩和してきた励起エネルギーが最後に発光する波長を確認するには十分な励起波長であり、X線照射時の発光ピーク波長の測定のためのX線の代用の励起光として用いることができる。
なお、このときの発光スペクトル例として、図2に実施例1−1の発光スペクトルを示す。このほかの実施例の発光スペクトルのパターンは発光強度の大きさを除き実施例1−1のものとほぼ同じである。
(光出力の測定方法)
ここでは、比較を容易にする目的で、放射線検出器10において別途入手したCdWO4単結晶(CWO単結晶)シンチレータをシンチレータプレート11の代わりに配置し、前記光出力測定装置を用いた評価法によりこの場合の光出力を求め、その値を「1.0」とした場合のサンプルの光出力の比率(対CWO比)を各サンプルの光出力の値として示した。なお、ここでいう光出力は波長450〜800nmにおける光出力強度の積分値である。
(減衰時間の測定方法)
前記光出力測定装置を用いて前記のようにX線を照射して各サンプルの光出力が安定した状態を100%とし、次いでX線照射を停止し、停止してから各サンプルの光出力強度が安定状態の5%に減衰するまでの時間を測定した(X線照射時の減衰時間)。
また、前記蛍光寿命測定装置を用いて前記のように励起波長280nmの光を照射して各サンプルの光出力が安定した状態を100%とし、次いで光照射を停止し、停止してから各サンプルの光出力強度が安定状態の5%に減衰するまでの時間を測定した(紫外線照射時の減衰時間)。
以上の一連の評価結果をまとめて表2に示す。
Figure 2016164210
上記結果より、実施例の群からなるパイロクロア型の複合酸化物を主成分とするシンチレータ材料は、いずれも厚さ1mmとした場合の波長633nmの光の透過率が76%以上と透明であるため、シンチレータ材料として発光した光がその内部で無駄に散乱損失することなく、またX線で励起した場合の最強の発光ピーク波長が545nmであるため、受光素子としてSiフォトダイオードで光電変換を問題なく行うことができる。更にまた、光出力が従来材料と比べて増加し、その上、X線照射による残光出力5%時の減衰時間が6ms以下と短い。なお、紫外線照射による残光出力5%時の減衰時間はすべて10ns以下であった。より詳細に比較すると、Bサイトの元素が同じ組成群同士では、p/qが0.98、0.90、0.80と低下するほど光出力が増大する傾向が顕著となっている。これにより、本発明のシンチレータ材料をX線CT装置やガンマ線PET装置などの放射線検査装置に利用した場合に、スイッチングサイクルが高速化できるため、短時間、低被曝線量の操作性、安全性に優れた放射線検査装置に仕上げることが可能となる。
なお、参考例1−1、1−2、1−3、1−4の組成では、p/qが1.00、即ち化学量論組成のパイロクロア型酸化物組成となっており、特性上は問題がなく、当然X線CT装置やガンマ線PET装置などの放射線検査装置に利用可能である。本実施例ではこの化学量論組成からqが増え、pが減る方向に組成比をずらすことで、化学量論組成のシンチレータ材料よりも大きな光出力が得られることが特徴である。ただし、比較例1−1、1−2、1−3、1−4に示すように、p/qを小さくしすぎると、即ちqを減らしすぎたり、pを増やしすぎたりすると、光出力の大幅低下と減衰時間の増加が生じてしまう。
[実施例2、比較例2、参考例2]
上記式(1)において、テルビウムの量を変化させると共にpとqの比率(p/q)を変化させた例について説明する。
信越化学工業(株)製の酸化テルビウム粉末、酸化セリウム粉末、酸化ルテチウム、酸化ランタンを入手した。また、(株)高純度化学研究所製の酸化チタン粉末、並びにAmerican Elements社製の酸化ハフニウム粉末を入手した。純度はいずれも99.9質量%以上であった。
上記原料を用いて、表3のような最終組成となる混合比率の各混合酸化物原料を作製した。即ち、最終的なテルビウム、セリウム、R元素のモル比率の合計p(つまり、Aサイト位置の元素のモル数)と、チタン、ハフニウムのモル数q(つまり、Bサイト位置の元素のモル数)とがp/q=0.33、0.80、0.90、0.98又は1.00となるように秤量した混合粉末をそれぞれ用意した。続いて、互いの試験サンプル同士の混入を防止しながらエタノール中でジルコニア製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は24時間であった。その後スプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状原料を作製した。
更に、これらの粉末をイリジウムるつぼに入れ、高温マッフル炉にて1600℃、3時間で焼成処理し、比較例、参考例を含めて22種類の焼成原料を得た。得られた各焼成原料をパナリティカル社製粉末X線回折装置で回折パターン解析した。その結果、いずれの焼成原料についても、結晶構造としてパイロクロア型立方晶(パイロクロア格子を有する立方晶)を主相とする酸化物原料となっていることが確認された。
こうして得られた各種原料を再度エタノール中でジルコニア製ボールミル装置にて分散・混合処理した。この際、適宜有機分散剤と有機結合剤を添加した。処理時間は40時間であった。その後再びスプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状パイロクロア型酸化物原料(出発原料)を作製した。
Figure 2016164210
次に、得られた出発原料を直径40mmの金型に充填し、一軸プレス成形機で厚さ6mmのロッド状に仮成形した後、198MPaの圧力で、静水圧プレスしてCIP成形体を得た。続いて得られたCIP成形体をマッフル炉に入れ、大気中800℃で3時間熱処理して脱脂した。
次いで、得られた脱脂済み成形体を真空加熱炉に仕込み、100℃/hの昇温レートで1500〜1700℃まで昇温し、3時間保持してから600℃/hの降温レートで冷却して焼結体を得た。この際、サンプルの焼結相対密度が95%以上となるよう焼結温度や保持時間を調整した。
更に、上記焼結体について、加圧媒体としてArガスを用いて、HIP熱処理温度1500〜1750℃、圧力190MPaで保持時間3時間のHIP処理を行った。
続いて、得られた各セラミックス焼結体につき、縦横2mm×2mm、厚み1mmになるように切断、研削及び研磨処理した。次いでそれらを、反射材を介して6×6の36素子からなるシンチレータ材に加工後、サンプルの光学両端面を光学面精度λ/4(測定波長λ=633nmの場合)で最終光学研磨した。
得られた各シンチレータプレートについてHeNeレーザ(波長633nm)を用いて実施例1と同様にして透過率を測定した。この際、レーザ光がシンチレータプレートとシンチレータプレートとの間の反射材に当らないよう注意した。
その後、実施例1と同様に各シンチレータプレート11を受光素子13上に配置して図1の放射線検出器10を作製した。次いで、実施例1と同様に光出力測定装置を作製し、タングステンターゲットのX線管の管電圧120kVでシンチレータプレート11にX線照射し、受光素子13に流れる電流値を光出力として求めた。このとき、実施例1と同様にしてシンチレータプレート11の最大発光ピーク波長、光出力及び減衰時間を求めた。
以上の一連の評価結果をまとめて表4に示す。
Figure 2016164210
上記結果より、実施例の群からなるパイロクロア型の複合酸化物を主成分とするシンチレータ材料は、いずれも厚さ1mmとした場合の波長633nmの光の透過率が76%以上と透明であるため、シンチレータ材料として発光した光がその内部で無駄に散乱損失することなく、またX線で励起した場合の最強の発光ピーク波長が545nm以上であるため、受光素子としてSiフォトダイオードで光電変換を問題なく行うことができ、更にまた、光出力が従来材料と比べて遜色がなく、その上、X線照射による残光出力5%時の減衰時間が6ms以下と短い。なお、紫外線照射による残光出力5%時の減衰時間はすべて10ns以下であった。より詳細に比較すると、Bサイト位置の元素が同じ組成群同士では、p/qが0.98、0.90、0.80と低下するほど光出力が増大する傾向が顕著となっている。これにより、本発明のシンチレータ材料をX線CT装置やガンマ線PET装置などの放射線検査装置に利用した場合に、スイッチングサイクルが高速化できるため、短時間、低被曝線量の操作性、安全性に優れた放射線検査装置に仕上げることが可能となる。
なお、参考例2−1、2−2の組成では、p/qが1.00、即ち化学量論組成のパイロクロア型酸化物組成となっており、特性上は問題がなく、当然X線CT装置やガンマ線PET装置などの放射線検査装置に利用可能である。本実施例ではこの化学量論組成からqが増え、pが減る方向に組成比にずらすことで、化学量論組成のシンチレータ材料よりも大きな光出力が得られることが特徴である。ただし、比較例2−1、2−2にある通り、p/qを小さくしすぎると、即ちqを減らしすぎたり、pを増やしすぎたりすると、光出力の大幅低下と減衰時間の増加が生じてしまう。
[実施例3、比較例3]
上記式(1)において、セリウムの量を変化させると共にpとqの比率(p/q)を変化させた例について説明する。
信越化学工業(株)製の酸化テルビウム粉末、酸化セリウム粉末、酸化ランタンを入手した。また、第一稀元素化学工業(株)製酸化ジルコニウム粉末、並びにAmerican Elements社製の酸化ハフニウム粉末を入手した。純度はいずれも99.9質量%以上であった。
上記原料を用いて、表5のような最終組成となる混合比率の各混合酸化物原料を作製した。即ち、最終的なテルビウム、セリウム、R元素(ランタン)のモル比率の合計p(つまり、Aサイト位置の元素のモル数)と、ジルコニウム、ハフニウムのモル数q(つまり、Bサイト位置の元素のモル数)とがp/q=0.80、0.90又は0.98となるように秤量した混合粉末をそれぞれ用意した。続いて、互いの試験サンプル同士の混入を防止しながらエタノール中でジルコニア製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は24時間であった。その後スプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状原料を作製した。
更に、これらの粉末をイリジウムるつぼに入れ、高温マッフル炉にて1600℃、3時間で焼成処理し、比較例を含めて26種類の焼成原料を得た。得られた各焼成原料をパナリティカル社製粉末X線回折装置で回折パターン解析した。その結果、いずれの焼成原料についても、結晶構造としてパイロクロア型立方晶(パイロクロア格子を有する立方晶)を主相とする酸化物原料となっていることが確認された。
こうして得られた各種原料を再度エタノール中でジルコニア製ボールミル装置にて分散・混合処理した。この際、適宜有機分散剤と有機結合剤を添加した。処理時間は40時間であった。その後再びスプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状パイロクロア型酸化物原料(出発原料)を作製した。
Figure 2016164210
次に、得られた出発原料を直径40mmの金型に充填し、一軸プレス成形機で厚さ6mmのロッド状に仮成形した後、198MPaの圧力で、静水圧プレスしてCIP成形体を得た。続いて得られたCIP成形体をマッフル炉に入れ、大気中800℃で3時間熱処理して脱脂した。
次いで、得られた脱脂済み成形体を真空加熱炉に仕込み、100℃/hの昇温レートで1500〜1700℃まで昇温し、3時間保持してから600℃/hの降温レートで冷却して焼結体を得た。この際、サンプルの焼結相対密度が95%以上となるよう焼結温度や保持時間を調整した。
更に、上記焼結体について、加圧媒体としてArガスを用いて、HIP熱処理温度1500〜1750℃、圧力190MPaで保持時間3時間のHIP処理を行った。
続いて、得られた各セラミックス焼結体につき、縦横2mm×2mm、厚み1mmになるように切断、研削及び研磨処理した。次いでそれらを、反射材を介して6×6の36素子からなるシンチレータ材に加工後、サンプルの光学両端面を光学面精度λ/4(測定波長λ=633nmの場合)で最終光学研磨した。
得られた各シンチレータプレートについてHeNeレーザ(波長633nm)を用いて実施例1、2と同様にして透過率を測定した。この際、レーザ光がシンチレータプレートとシンチレータプレートとの間の反射材に当らないよう注意した。
その後、実施例1、2と同様に各シンチレータプレート11を受光素子13上に配置して図1の放射線検出器10を作製した。次いで、実施例1と同様に光出力測定装置を作製し、タングステンターゲットのX線管の管電圧120kVでシンチレータプレート11にX線照射し、受光素子13に流れる電流値を光出力として求めた。このとき、実施例1と同様にしてシンチレータプレート11の最大発光ピーク波長、光出力及び減衰時間を求めた。
以上の一連の評価結果をまとめて表6に示す。
Figure 2016164210
上記結果より、実施例の群からなるパイロクロア型の複合酸化物を主成分とするシンチレータ材料は、いずれも厚さ1mmとした場合の波長633nmの光の透過率が76%以上と透明であるため、シンチレータ材料として発光した光がその内部で無駄に散乱損失することなく、またX線で励起した場合の最強の発光ピーク波長が545nmであるため、受光素子としてSiフォトダイオードで光電変換を問題なく行うことができ、更にまた、光出力が従来材料と比べて遜色がなく、その上、X線照射による残光出力5%時の減衰時間が5ms以下と短い。なお、紫外線照射による残光出力5%時の減衰時間はすべて10ns以下であった。より詳細に比較すると、セリウム濃度が同じ組成群同士では、p/qが0.98、0.90、0.80と低下するほど光出力が増大する傾向が顕著となっている。これにより、本発明のシンチレータ材料をX線CT装置やガンマ線PET装置などの放射線検査装置に利用した場合に、スイッチングサイクルが高速化できるため、短時間、低被曝線量の操作性、安全性に優れた放射線検査装置に仕上げることが可能となる。
なお、比較例3−1、3−2、3−3、3−7の組成では、セリウム濃度が高すぎるため、濃度消光を起こし、光出力が低下している。また、比較例3−4、3−5、3−6、3−8の組成では、セリウム濃度が低すぎるため、光出力が低下している。
[実施例4、比較例4、参考例4]
上記式(1)において、R元素を変えた例について説明する。
信越化学工業(株)製の酸化テルビウム粉末、酸化セリウム粉末、酸化ルテチウム粉末、酸化イットリウム粉末、酸化ガドリニウム粉末、酸化ランタン粉末、酸化ユーロピウム粉末、酸化プラセオジム粉末、酸化ホルミウム粉末、酸化ツリウム及び酸化ディスプロシウム粉末を入手した。また、(株)高純度化学研究所製の酸化チタン粉末、酸化第2スズ粉末、並びにAmerican Elements社製の酸化ハフニウム粉末、並びに第一稀元素化学工業(株)製酸化ジルコニウム粉末を入手した。純度はいずれも99.9質量%以上であった。
上記原料を用いて、表7のような最終組成となる混合比率の各混合酸化物原料を作製した。即ち、最終的なテルビウム、セリウム、R元素のモル比率の合計p(つまり、Aサイト位置の元素のモル数)と、チタン、スズ、ハフニウム又はジルコニウムのモル数q(つまり、Bサイト位置の元素のモル数)とがp/q=0.33、0.80又は1.00となるように秤量した混合粉末をそれぞれ用意した。続いて、互いの試験サンプル同士の混入を防止しながらエタノール中でジルコニア製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は24時間であった。その後スプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状原料を作製した。
更に、これらの粉末をイリジウムるつぼに入れ、高温マッフル炉にて1600℃、3時間で焼成処理し、比較例、参考例を含めて17種類の焼成原料を得た。得られた各焼成原料をパナリティカル社製粉末X線回折装置で回折パターン解析した。その結果、いずれの焼成原料についても、結晶構造としてパイロクロア型立方晶(パイロクロア格子を有する立方晶)を主相とする酸化物原料となっていることが確認された。
こうして得られた各種原料を再度エタノール中でジルコニア製ボールミル装置にて分散・混合処理した。この際、適宜有機分散剤と有機結合剤を添加した。処理時間は40時間であった。その後再びスプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状パイロクロア型酸化物原料(出発原料)を作製した。
Figure 2016164210
次に、得られた出発原料を直径40mmの金型に充填し、一軸プレス成形機で厚さ6mmのロッド状に仮成形した後、198MPaの圧力で、静水圧プレスしてCIP成形体を得た。続いて得られたCIP成形体をマッフル炉に入れ、大気中800℃で3時間熱処理して脱脂した。
次いで、得られた脱脂済み成形体を真空加熱炉に仕込み、100℃/hの昇温レートで1500〜1700℃まで昇温し、3時間保持してから600℃/hの降温レートで冷却して焼結体を得た。この際、サンプルの焼結相対密度が95%以上となるよう焼結温度や保持時間を調整した。
更に、上記焼結体について、加圧媒体としてArガスを用いて、HIP熱処理温度1500〜1750℃、圧力190MPaで保持時間3時間のHIP処理を行った。
続いて、得られた各セラミックス焼結体につき、縦横2mm×2mm、厚み1mmになるように切断、研削及び研磨処理した。次いでそれらを、反射材を介して6×6の36素子からなるシンチレータ材に加工後、サンプルの光学両端面を光学面精度λ/4(測定波長λ=633nmの場合)で最終光学研磨した。
得られた各シンチレータプレートについてHeNeレーザ(波長633nm)を用いて実施例1〜3と同様にして透過率を測定した。この際、レーザ光がシンチレータプレートとシンチレータプレートとの間の反射材に当らないよう注意した。
その後、実施例1〜3と同様に各シンチレータプレート11を受光素子13上に配置して図1の放射線検出器10を作製した。次いで、実施例1と同様に光出力測定装置を作製し、タングステンターゲットのX線管の管電圧120kVでシンチレータプレート11にX線照射し、受光素子13に流れる電流値を光出力として求めた。このとき、実施例1と同様にしてシンチレータプレート11の最大発光ピーク波長、光出力及び減衰時間を求めた。
以上の一連の評価結果をまとめて表8に示す。
Figure 2016164210
上記結果より、実施例の群からなるパイロクロア型の複合酸化物を主成分とするシンチレータ材料は、いずれも厚さ1mmとした場合の波長633nmの光の透過率が70%以上と透明であるため、シンチレータ材料として発光した光がその内部で無駄に散乱損失することなく、またX線で励起した場合の最強の発光ピーク波長が545nm以上であるため、受光素子としてSiフォトダイオードで光電変換を問題なく行うことができ、更にまた、光出力が従来材料と比べて遜色がなく、その上、X線照射による残光出力5%時の減衰時間が6ms以下と短い。なお、紫外線照射による残光出力5%時の減衰時間はすべて10ns以下であった。これにより、本発明のシンチレータ材料をX線CT装置やガンマ線PET装置などの放射線検査装置に利用した場合に、スイッチングサイクルが高速化できるため、短時間、低被曝線量の操作性、安全性に優れた放射線検査装置に仕上げることが可能となる。
なお、実施例4−8、4−9の組成では、セリウムと共にユーロピウム、プラセオジムを活性剤として共添加した組成であり、光出力が増大すると共に、最大発光ピーク波長が590nm、610nmとなってより長波長側で波長ロック効果が現れている。
また、参考例4−1では、p/qが1.00、即ち化学量論組成のパイロクロア型酸化物組成となっており、特性上は問題がなく、当然X線CT装置やガンマ線PET装置などの放射線検査装置に利用可能である。実施例4−3ではこの化学量論組成からqが増え、pが減る方向に組成比をずらすことで(p/q=0.80)、化学量論組成のシンチレータ材料よりも大きな光出力が得られる。一方、比較例4−1に示すように、p/qを小さくしすぎると、即ちqを減らしすぎたり、pを増やしすぎたりすると、光出力の大幅低下と減衰時間の増加が生じてしまう。
また、比較例4−2、4−3では、ホルミウム、ツリウム、ディスプロシウムという若干吸収のある元素を複数同時に混合したことでトータル吸収量が累積し、光出力が低下している。
以上、本発明を実施形態をもって説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
10 放射線検出器
11 シンチレータプレート
12 反射材
13 受光素子
14 容器

Claims (6)

  1. 下記式(1)で表される複合酸化物を主成分として含む透光性セラミックス又は下記式(1)で表される複合酸化物の単結晶からなることを特徴とするシンチレータ材料。
    (Tbx1-x-yCeypqr (1)
    (式中、0<x<1、0.00001≦y≦0.15、x+y≦1、1.76≦p<2.00、0.80≦p/q<1.0、rは電気的中性を保つための正の数、Rはイットリウム、ガドリニウム、ルテチウム、ランタン、ホルミウム、ツリウム、ディスプロシウム、ユーロピウム、プラセオジムよりなる群から選択された少なくとも1つの希土類元素(ただし、ホルミウム、ツリウム、ディスプロシウムよりなる群から2つ以上を選択しない)、Bはチタン、スズ、ハフニウム、シリコン、ゲルマニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの元素(ただし、シリコン及びゲルマニウムについては当該元素単独である場合を除く)である。)
  2. X線及び/又はガンマ線で励起した場合に、540〜650nmの波長範囲に発光ピークを有する光を発する請求項1記載のシンチレータ材料。
  3. 厚み1mmでの波長633nmの光の透過率が70%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のシンチレータ材料。
  4. パイロクロア格子を有する立方晶を主相とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のシンチレータ材料。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載のシンチレータ材料を搭載したことを特徴とする放射線検出器。
  6. 請求項5記載の放射線検出器を搭載したことを特徴とする放射線検査装置。
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