JP2016155699A - Zn原子とSn原子とN原子を含むβ−NaFeO2型構造の高結晶性化合物及びその製法、並びにその用途 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本願発明によれば、Zn原子とSn原子とN原子を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物であって、粉末X線回折法による前記結晶性化合物に帰属される(121)又は(002)結晶面での回折ピークの半値幅が0.5°未満である、結晶性化合物が与えられる。
【選択図】なし
Description
また、非特許文献2で報告されている組成式がZnSnN2の結晶性化合物からなる薄膜は、そのXRD(X線回折)パターン(Figure 2(a))がブロードである(即ち、その結晶性化合物に帰属される結晶面での回折ピークの半値幅がいずれも非常に大きい)ことからも明らかなように、結晶性が非常に悪い。加えて、非特許文献2は、Zn0.75Sn0.25ターゲット、或いはZn元素のターゲットとSn元素のターゲットを用いてスパッタ法により薄膜を合成するものであって、薄膜とは異なるバルク結晶を合成するものではない。
非特許文献3で報告されている組成式がZnSnxGe1−xN2の結晶性化合物からなる薄膜も、Zn0.75Sn0.25ターゲットとGe元素のターゲットを用いてスパッタ法により薄膜を合成していることからも明らかなように、非特許文献2と同様な方法で合成するものである。そのため、非特許文献3で報告されている上記結晶性化合物の結晶性も、非特許文献2で報告されているZnSnN2の組成式を有する結晶性化合物と同程度であると言え、また、その合成方法も、非特許文献2と同様、薄膜とは異なるバルク結晶を合成するものではない。
また、Zn原子とSn原子とN原子のみからなるβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物(具体的には、組成式がZnSnN2の結晶性化合物)だけでなく、Zn原子とSn原子とN原子以外にも他の原子を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物も、バンドギャップのチューニングや電気特性制御等の観点から極めて重要なものである。
そこで、本願発明では、Zn原子とSn原子とN原子を含むβ−NaFeO2型構造を有する高結晶性の化合物及びその製法、並びにその用途を提供することを目的とする。Zn原子とSn原子とN原子を含むβ−NaFeO2型構造を有する結晶性化合物に関して、具体的には、既存のものよりも結晶性が高いものを提供することを目的とする。
また、本願発明では、Zn原子とSn原子とN原子を含むβ−NaFeO2型構造を有する結晶性化合物をバルク結晶として提供することを目的とする。
また、本願において、「Zn原子とSn原子とN原子のみからなる」という記載は、本願発明の目的に影響を与えない程度の微量な酸素等の不純物(例えば、製造過程等で混入してしまう可能性のある酸素等の不可避な微量の不純物)は含んでもよいという意味で使用される。
(1) 本願発明の一側面によれば、Zn原子とSn原子とN原子を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物であって、その粉末X線回折法による前記結晶性化合物に帰属される(121)又は(002)結晶面での回折ピークの半値幅が0.5°未満である結晶性化合物が与えられる。
(2) ここで、前記結晶性化合物は、Zn原子とSn原子以外の2価及び/又は4価の原子価を有する原子を更に含むものであってもよい。
(3) 或いは、前記結晶性化合物は、Ge原子、Si原子、Pb原子、及びTi原子からなる群から選択される少なくとも一以上の原子を更に含むものであってもよい。
(4) 本願発明の他の側面によれば、亜鉛のハロゲン化物と、スズのハロゲン化物と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の窒化物を混合するか、又は、亜鉛のハロゲン化物と、スズのハロゲン化物と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のアジ化物を混合することにより、Zn原子とSn原子とN原子を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物を製造する方法が与えられる。
(5) 本願発明の他の側面によれば、亜鉛のハロゲン化物と、スズのハロゲン化物と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の窒化物を含む混合物を3GPa以上で加圧するか、又は、亜鉛のハロゲン化物と、スズのハロゲン化物と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のアジ化物を含む混合物を3GPa以上で加圧することを含む、Zn原子とSn原子とN原子を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物を製造する方法が与えられる。
(6) ここで、前記のいずれかのZn原子とSn原子とN原子を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物を製造する方法において、亜鉛のハロゲン化物と、スズのハロゲン化物と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の窒化物に対して、更にアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物を混合させるものであってもよい。
(7) また、前記のいずれかのZn原子とSn原子とN原子を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物を製造する方法において、亜鉛のハロゲン化物とスズのハロゲン化物がいずれもフッ化物であってよく、また、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物を更に混合する場合には前記アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物もフッ化物であってもよい。
(8) また、前記のいずれかのZn原子とSn原子とN原子を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物を製造する方法において、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の窒化物として窒化リチウムを使用するものであってもよい。
(9) また、前記のいずれかのZn原子とSn原子とN原子を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物を製造する方法において、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のアジ化物としてアジ化ナトリウムを使用するものであってもよい。
(10) 本願発明の他の側面によれば、前記いずれかのZn原子とSn原子とN原子を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物を含む、半導体組成物が与えられる。
(11) 本願発明の他の側面によれば、前記半導体組成物を含む、太陽電池が与えられる。
(12) 本願発明の他の側面によれば、前記いずれかのZn原子とSn原子とN原子を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物を含む、光触媒が与えられる。
(13) 本願発明の他の側面によれば、前記いずれかのZn原子とSn原子とN原子を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物を含む、スパッタリング用ターゲット材が与えられる。
また、本願発明によれば、バンドギャップのチューニング用の原子(例えば、Ge原子)や電気特性を制御するために、適宜、Zn原子とSn原子とN原子以外の原子を導入したZnSnN2系の結晶性化合物を提供することも可能である。そのため、ZnSnN2系の結晶性化合物をデバイスとして利用するにあたり、用途に応じたデバイス設計を容易に行うことが可能である。
また、本願発明により、ZnSnN2系の結晶性化合物をバルク結晶として提供することができる。そのため、薄膜よりもサイズの大きな結晶形態で使用することが所望されている分野での利用も可能である。また、このバルク結晶は、例えば、スパッタ法による薄膜合成の際に用いられるターゲット材(即ち、スパッタリング用ターゲット材)として利用することも可能である。
したがって、Zn原子とSn原子とN原子を含むβ−NaFeO2型構造を有する結晶性化合物には、既に述べた通り、Zn原子とSn原子とN原子のみからなるβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物(具体的には、組成式がZnSnN2の結晶性化合物)だけでなく、Zn原子とSn原子とN原子以外にも他の原子を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物(例えば、組成式がZnSnxGe1−xN2(0<x<1)の結晶性化合物)も含まれる。
本願発明のZnSnN2系の結晶性化合物では、高結晶性という観点から、その粉末X線回折法で測定することによって得られるX線回折パターンのうち、その結晶性化合物に帰属される(121)又は(002)結晶面での回折ピークの半値幅は、0.5°未満であることが特に好ましく、0.25°未満であることが更に好ましい。
因みに、図4にも示す通り、非特許文献2で報告されている組成式がZnSnN2の結晶性化合物の粉末X線回折法によるX線回折パターン(Figure 2(a))のうち、その結晶性化合物に帰属される(121)又は(002)結晶面での回折ピークの半値幅は、少なくとも1°はあると認められる程非常に大きい。一方、本願発明の組成式がZnSnN2の結晶性化合物の粉末X線回折法による(121)又は(002)結晶面での回折ピークの半値幅は、本願の実施例で示す図2や5からも明らかなように、0.25°未満と非常に小さい。
したがって、本願発明のZnSnN2系の結晶性化合物では、高結晶性という観点から、拡散反射スペクトル測定によるバンドギャップの値がその理論値に近いことが好ましい。
組成式がZnSnN2の結晶性化合物では、その拡散反射スペクトル測定によるバンドギャップの値の範囲は、本願発明の目的を達成することが出来れば、特に制限はないが、その理論値(1.4eV付近)並びに製造過程等で混入してしまう可能性のある酸素のような不可避な不純物の存在等を考慮すると、1.0eV以上1.8eV以下であることが好ましい。
本願発明のZnSnN2系の結晶性化合物は、例えば、亜鉛のハロゲン化物と、スズのハロゲン化物と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の窒化物を原料とし、これらを混合して製造する。
ここで、亜鉛のハロゲン化物をZnL2(Lはハロゲン元素で、例えば、F、Cl、Br又はI)、スズのハロゲン化物をSnL4(Lはハロゲン元素で、例えば、F、Cl、Br又はI)、アルカリ金属の窒化物をM3N(Mはアルカリ金属元素で、例えば、Li、Na、又はK)と、アルカリ金属のハロゲン化物をML(Mはアルカリ金属元素(例えば、Li、Na、又はK)で、Lはハロゲン元素(例えば、F、Cl、Br又はI))と表記し、これらの化合物を使用して組成式がZnSnN2の結晶性化合物(即ち、Zn原子とSn原子とN原子のみからなるβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物)を製造する際の化学反応式を以下に示す。
(化1)
ZnL2 + SnL4 + 2M3N + 3ML → ZnSnN2 + 9ML
(ここで、Lはハロゲン元素(例えば、F、Cl、Br又はI)で、Mはアルカリ金属元素(例えば、Li、Na、又はK)である。)
M3Nで表されるアルカリ金属の窒化物の代わりに、アルカリ土類金属の窒化物を使用することも可能である。このアルカリ土類金属の窒化物としては、例えば、Be3N2、Mg3N2、Ca3N2、Sr3N2、又はBa3N2が挙げられる。
上記反応抑制剤を使用する場合、その使用量は、本願発明の目的を達成できる限り、特に制限はなく、必要に応じて任意に決めればよい。つまり、上記(化1)に示す化学反応式に鑑みれば、この反応抑制剤の使用量は、ZnL2で表される亜鉛のハロゲン化物やSnL4で表されるスズのハロゲン化物に対するモル比で理論上3が好ましいことになるが、本願発明の目的を達成できる限り、3未満の場合も3超の場合もあり得る。
加圧する圧力としては、3GPa以上が好ましい。
加熱する温度としては、500℃以上1000℃以下が好ましく、700℃以上900℃以下がより好ましい。
上記他の原子のハロゲン化物としては、固体として安定性の高いものが好ましい。かかる観点から、例えば、ヨウ化物(Ge原子を例にとるとGeI4)が好ましい。
上記他の原子を含む窒化物としては、Ge原子を例にとると、Ge3N4が挙げられる。
Zn原子とSn原子とN原子以外にも他の原子(例えば、Ge原子、Si原子、Pb原子、及びTi原子からなる群から選択される少なくとも一以上の原子)を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物の製法としては、上記方法によって製造されるZn原子とSn原子とN原子のみからなるZnSnN2の結晶性化合物の原料として使用されるハロゲン化物(即ち、亜鉛のハロゲン化物とスズのハロゲン化物)に対して更に上記他の原子のハロゲン化物も混合させて製造する方法の一例を挙げると、ZnF2粉末とSnF4粉末とGeI4粉末を原料とし、更に固体窒素源としてLi3N粉末、そして反応抑制剤としてLiF粉末を混合して製造する方法が挙げられる。
また、これらの製法以外にも、例えば、ターゲットとして、固体窒素源としてアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の窒化物を使用する上記方法によって製造したZnSnN2の結晶性化合物からなるターゲットと導入したい他の原子(例えば、Ge原子、Si原子、Pb原子、及びTi原子からなる群から選択される少なくとも一以上の原子)からなるターゲットを使用して、スパッタ法により、Zn原子とSn原子とN原子以外にも上記他の原子を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物を製造する方法が挙げられる。
本願発明のZnSnN2系の結晶性化合物は、亜鉛のハロゲン化物と、スズのハロゲン化物と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のアジ化物を原料とし、これらを混合して製造する。
ここで、亜鉛のハロゲン化物をZnL2ZnL2(Lはハロゲン元素で、例えば、F、Cl、Br又はI)、スズのハロゲン化物をSnL4ZnL2(Lはハロゲン元素で、例えば、F、Cl、Br又はI)、アルカリ金属のアジ化物をMN3(Mはアルカリ金属元素で、例えば、Li、Na、K、Rb、又はCs)と表記し、これらの化合物を使用して組成式がZnSnN2の結晶性化合物(即ち、Zn原子とSn原子とN原子のみからなるβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物)を製造する際の化学反応式を以下に示す。
(化2)
ZnL2 + SnL4 + 6MN3 → ZnSnN2 + 6ML + 8N2
(ここで、Lはハロゲン元素(例えば、F、Cl、Br又はI)で、Mはアルカリ金属元素(例えば、Li、Na、K、Rb、又はCs)である。)
MN3で表されるアルカリ金属のアジ化物の代わりに、アルカリ土類金属のアジ化物を使用することも可能である。このアルカリ土類金属のアジ化物としては、例えば、Be(N3)2、Mg(N3)2、Ca(N3)2、Sr(N3)2、又はBa(N3)2が挙げられる。
加圧する圧力としては、3GPa以上が好ましい。
加熱する温度としては、500℃以上1000℃以下が好ましく、700℃以上900℃以下がより好ましい。
上記他の原子のハロゲン化物としては、固体として安定性の高いものが好ましい。例えば、ヨウ化物(Ge原子を例にとるとGeI4)が好ましい。
上記他の原子を含むアジ化物としては、Pb原子を例にとると、Pb(N3)2が挙げられる。
Zn原子とSn原子とN原子以外にも他の原子(例えば、Ge原子、Si原子、Pb原子、及びTi原子からなる群から選択される少なくとも一以上の原子)を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物の製法としては、上記方法によって製造されるZn原子とSn原子とN原子のみからなるZnSnN2の結晶性化合物の原料として使用されるハロゲン化物(即ち、亜鉛のハロゲン化物とスズのハロゲン化物)に対して更に上記他の原子のハロゲン化物も混合させて製造する方法の一例を挙げると、ZnF2粉末とSnF4粉末とGeI4粉末を原料とし、更に固体窒素源としてNaN3粉末を混合して製造する方法が挙げられる。
また、これらの製法以外にも、例えば、ターゲットとして、固体窒素源としてアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のアジ化物を使用する上記方法によって製造したZnSnN2の結晶性化合物からなるターゲットと導入したい他の原子(例えば、Ge原子、Si原子、Pb原子、及びTi原子からなる群から選択される少なくとも一以上の原子)からなるターゲットを使用して、スパッタ法により、Zn原子とSn原子とN原子以外にも上記他の原子を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物を製造する方法が挙げられる。
[試料製造]
図1は、本実施例で用いた高圧セル及びベルト型高圧装置の構成を示す概略図である。なお、図中に示されているガスケットは高圧セルを覆う部材である。
図1に示す通り、高圧セルには、円筒状のパイロフィライトと、前記パイロフィライトの筒内に、筒内壁面上部側と下部側に接するように配置された2つのスティールリングと、これらのスティールリングの中心軸側に配置された円筒状のカーボンヒーターと、前記カーボンヒーターの内部に配置されたタングステン(W)製カプセルと、前記カプセルの内部に充填された原料粉末と、を有するものを使用した。
パイロフィライトとカーボンヒーターの間の隙間には、充填用粉末(NaCl)を、そして、カーボンヒーターとタングステン製カプセルの間の隙間には、充填用粉末(NaCl+10wt%ZrO2)を充填した。
原料粉末は、ZnF2粉末(104mg)と、SnF4粉末(193mg)と、Li3N粉末(70mg)と、LiF粉末(75mg)を均一に混合したものを使用した。
次に、ベルト型高圧装置(KOBELCO製)にこの高圧セルをガスケットの形態でセットして、高圧セル中のタングステン製カプセルに対して圧力を7.7GPaまで加圧し、温度を1000℃として、60分間保持した。
その後、高圧セルからタングステン製カプセルを取り出して開封し、試料1を製造した。
得られた試料1の粉末X線回折(RIGAKU製RINT2200V)によるX線回折(XRD)パターンを図2に示す。この測定は、操作軸は2θ/θ、装置出力は40kV−40mA、発散スリットは1°、発散縦制限スリットは1.2mm、散乱スリットは0.3mm、受光スリットは0.3mm、モノクロ受光スリットは無し、θオフセットは0°の条件下で行った。
また、得られた試料1の走査型電子顕微鏡(JEOL製JSM−5410)によるSEM写真を図3に示す。
図2(a)に示すX線回折パターンより、製造した試料1が結晶性のZnSnN2化合物であることを確認した。因みに、このX線回折パターンには、金属スズや金属亜鉛に帰属される回折ピークも認められるが、これは、原料に使用したZnF2粉末やSnF4粉末のうち未反応だったものや製造したZnSnN2化合物が分解したことによって生じたものと推察している。
また、このX線回折パターンでは、ZnSnN2化合物に帰属される結晶面の回折ピークはいずれも半値幅が非常に小さくシャープであり、非特許文献2のFigure 2(a)で報告されているようなブロードではないことを確認した。図2(b)は、この中のZnSnN2化合物に帰属される(121)又は(002)結晶面での回折ピークを拡大した図であり、このピークの半値幅は、(121)結晶面で0.20°そして(002)結晶面で0.18°であり、いずれも0.25°未満の非常に小さな値であった。これらのことから、結晶性が非常に高いZnSnN2化合物が製造できたことを確認した。
図3に示すSEM写真より、製造された試料1のZnSnN2化合物はバルク結晶であること、また、その結晶は不定形の形状であり、サブミクロンサイズの凝集体結晶であることを確認した。
[試料製造]
原料粉末として、ZnF2粉末(104mg)と、SnF4粉末(193mg)と、NaN3粉末(195mg)を均一に混合したものを使用したこと以外は、実施例1と同じ方法で試料2を製造した。
得られた試料2の粉末X線回折(RIGAKU製RINT2200V)によるX線回折(XRD)パターンを図5(a)に示す。この測定も実施例1と同じ条件下で行った。
また、得られた試料2の走査型電子顕微鏡(JEOL製JSM−5410)によるSEM写真を図6に示す。
図5(a)に示すX線回折パターンより、製造した試料2が結晶性のZnSnN2化合物であることを確認した。因みに、このX線回折パターンには、金属スズや金属亜鉛に帰属される回折ピークも認められるが、これは、原料に使用したZnF2粉末やSnF4粉末のうち未反応だったものや製造したZnSnN2化合物が分解したことによって生じたものと推察している。
また、このX線回折パターンでは、ZnSnN2化合物に帰属される結晶面の回折ピークはいずれも半値幅が非常に小さくシャープであり、非特許文献2のFigure 2(a)で報告されているようなブロードではないことを確認した。図5(b)は、この中のZnSnN2化合物に帰属される(121)又は(002)結晶面での回折ピークを拡大した図であり、このピークの半値幅は、(121)結晶面で0.22°そして(002)結晶面で0.17°であり、いずれも0.25°未満の非常に小さな値であった。これらのことから、結晶性が非常に高いZnSnN2化合物が製造できたことを確認した。
図6に示すSEM写真より、製造された試料2のZnSnN2化合物はバルク結晶であること、また、その結晶は不定形の形状であり、サブミクロンサイズの凝集体結晶であることを確認した。
更に、得られた試料2の結晶性のZnSnN2化合物について、拡散反射測定装置(紫外可視分光光度計、日本分光製、V−570型)を用いて拡散反射スペクトルを測定した。得られた拡散反射スペクトルを図7に示す。この図から、バンドギャップは1.35eV付近にあり、1.4eV付近という理論値に近いことを確認できた。そのため、この測定値からも、得られた試料2のZnSnN2化合物は高い結晶性を有していることが確認できた。
[試料製造]
原料粉末として、ZnF2粉末(104mg)と、SnF4粉末(146mg)と、GeI4粉末(145mg)と、Li3N粉末(70mg)と、LiF粉末(75mg)を均一に混合したものを使用したこと以外は、実施例1と同じ方法で試料3を製造した。
[材料分析]
得られた試料3の粉末X線回折(RIGAKU製RINT2200V)によるX線回折(XRD)パターンを図8に示す。得られた試料3の粉末X線回折(RIGAKU製RINT2200V)によるX線回折(XRD)パターンを図8に示す。この測定も実施例1と同じ条件下、即ち、操作軸は2θ/θ、装置出力は40kV−40mA、発散スリットは1°、発散縦制限スリットは1.2mm、散乱スリットは0.3mm、受光スリットは0.3mm、モノクロ受光スリットは無し、θオフセットは0°の条件下で行った。
図8に示すX線回折パターンより、ゲルマニウムのハロゲン化物を更に用いて製造する場合もZn原子、Sn原子、N原子を含むβ−NaFeO2型構造を有する結晶性化合物(図8では、これをZnSnN2系の結晶性化合物と称する。)が製造できたことを確認した。また、このZnSnN2系の結晶性化合物の(121)結晶面と(002)結晶面での回折ピークの半値幅は、それぞれ0.22°と0.20°であり、高い結晶性を有することを確認した。
また、得られた試料3のZnSnN2系の結晶性化合物(具体的には、Zn原子、Sn原子、N原子を含むβ−NaFeO2型構造を有する結晶性化合物であってGe原子を更に含む化合物)について、拡散反射測定装置(紫外可視分光光度計、日本分光製、V−570型)を用いて拡散反射スペクトルを測定した。得られた拡散反射スペクトルを図9に示す。この図から、Ge原子を含む試料3のバンドギャップは1.48eV付近にあり、Ge原子を含まない試料2の測定値よりもバンドギャップが拡大していることを確認した。この測定値は、Snの原子位置がGe原子によって置き換えられた時に起こると予想される値(予想値)であった。そのため、この測定値からも、得られた試料3の化合物は高い結晶性を有していることが確認できた。
Claims (13)
- Zn原子とSn原子とN原子を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物であって、粉末X線回折法による前記結晶性化合物に帰属される(121)又は(002)結晶面での回折ピークの半値幅が0.5°未満である、前記結晶性化合物。
- Zn原子とSn原子以外の2価及び/又は4価の原子価を有する原子を更に含む、請求項1に記載の結晶性化合物。
- Ge原子、Si原子、Pb原子、及びTi原子からなる群から選択される少なくとも一以上の原子を更に含む、請求項1に記載の結晶性化合物。
- 亜鉛のハロゲン化物と、スズのハロゲン化物と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の窒化物を混合するか、又は、亜鉛のハロゲン化物と、スズのハロゲン化物と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のアジ化物を混合することによって、Zn原子とSn原子とN原子を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物を製造する方法。
- 亜鉛のハロゲン化物と、スズのハロゲン化物と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の窒化物を含む混合物を3GPa以上で加圧するか、又は、亜鉛のハロゲン化物と、スズのハロゲン化物と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のアジ化物を含む混合物を3GPa以上で加圧することを含む、Zn原子とSn原子とN原子を含むβ−NaFeO2型構造の結晶性化合物の製造方法。
- 亜鉛のハロゲン化物と、スズのハロゲン化物と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の窒化物に、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物を更に混合する、請求項4又は5に記載の製造方法。
- 亜鉛のハロゲン化物とスズのハロゲン化物がいずれもフッ化物であって、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物を更に混合する場合には前記アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物もフッ化物である、請求項4から6のいずれか一項に記載の製造方法。
- アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の窒化物として窒化リチウムを使用する、請求項4から7のいずれか一項に記載の製造方法。
- アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のアジ化物としてアジ化ナトリウムを使用する、請求項4から8のいずれか一項に記載の製造方法。
- 請求項1から3のいずれか一項に記載の結晶性化合物を含む、半導体組成物。
- 請求項10に記載の半導体組成物を含む、太陽電池。
- 請求項1から3のいずれか一項に記載の結晶性化合物を含む、光触媒。
- 請求項1から3のいずれか一項に記載の結晶性化合物を含む、スパッタリング用ターゲット材。
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Citations (9)
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JP6485858B2 (ja) | 2019-03-20 |
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