JP2016150547A - Cfrtp複合体の製造方法とそのcfrtp複合体 - Google Patents

Cfrtp複合体の製造方法とそのcfrtp複合体 Download PDF

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Abstract

【課題】金属材、CFRTP、CFRTPのマトリックス樹脂等を積層したCFRTP複合体を射出成形で製造する。【解決手段】射出成形金型10のキャビティ13に、CFRTP形状物1とアルミ合金板板9の双方をインサートし、CFRTPのマトリックス樹脂を主成分とする結晶性熱可塑性樹脂を射出する。射出された樹脂は、表面を化成処理した、チタン合金、アルミ合金等の金属板9と、CFRTP形状物1の間の隙間18に侵入し、アルミ合金板板9とCFRTP形状物1を一体に固着(接合)する。アルミ合金板付きのCFRP複合体を得る。【選択図】 図4

Description

本発明は、炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(以下、「CFRTP(Carbon- fiber reinforced thermo-plastics)」という。)複合体の製造方法とそのCFRTP複合体に関する。更に詳しくは、CFRTPと、これと一体化した結晶性熱可塑性合成樹脂、金属部材等を射出成形で一体化した複合体を製造するものであり、CFRTP複合体の製造方法とそのCFRTP複合体に関する。
CFRTPは、軽量高強度で耐食性があり、機械、各種設備等の構造材、カバー材、特に、軽量部材が要求される自動車のような部品の素材に有効である。従って、CFRTPを素材とした成形品は、自動車、航空機等の移動機械、一般機械、医療機械、家屋等の建築物の建材、土木構造物等の土木資材等のあらゆる分野に使用できる。機械的強度、軽量等の優れた物性を有するCFRTPは、そのマトリックス樹脂が6ナイロン(以下「PA6」という。)、66ナイロン(以下「PA66」という。)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下「PPS」という。)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(以下「PEEK」という。)、又は熱可塑性ポリイミド樹脂を使用したものが知られている。CFRTPは、一般に熱プレス成形で汎用品である板状物等から所望の形状に成形されており、常温下における強度がCFRPと同等であることが確認されている。
それ故、CFRTPの開発の次の段階として、上記のような利用分野にその用途を広げるには、このCFRTP、このマトリックス樹脂である結晶性熱可塑性樹脂、金属等の素材を二層以上に積層して一体化して、所望の形状、構造に成形されたCFRTPの積層体(以下、「CFRTP複合体」という。)の量産方法の開発が要求されている。取り分け、CFRTPと金属材を一体化したCFRTP複合体の製造法の開発が要請されている。CFRTPの成形は、一般には軟化温度以上に加熱した後、これを成形金型内にインサートして加温し圧力をかけて成形する、所謂熱プレス成形で製造されている。ただ熱プレス成形では、プレス金型内のCFRTPの温度を樹脂融点以上の高温にする必要がある。即ち、成形金型内のCFRTPのマトリックス樹脂分が均一に溶融した後に、プレス圧をかけて成形金型内の空気、ガスを追い出して成形されている。
このために熱プレス成形では、成形金型温度を樹脂融点より低い温度、例えば、120〜140℃低い温度に設定されおり、成形金型の隙間から排出されるのをガス化成分のみとなるように設計されている。仮に、隙間が大きく、成形金型から溶融樹脂が漏れ出したとしても、溶融樹脂は成形金型で冷やされてバリとなるようにするためである。CFRTPを熱プレス機で、所望の形状に熱プレス成形するために、成形金型から溶融樹脂の漏れ量を少なくして安定した精密なCFRTPを素材とする製品を製造することは、CFRTPの量産品の製造では大きな課題であるがこの解決は容易ではない。この理由は、熱プレス成形で成形金型内のCFRTPを均一に加熱することは困難であり、成形金型を構成する上型、下型の隙間部も樹脂の融点以上になり、完全に溶融樹脂の漏れを防ぐことは困難であるからである。
本発明の発明者等が行った対策の一例では、熱プレス機に取り付ける熱盤の温度を精密に制御して、成形金型内でのCFRTPの温度ムラを小さくする方法を採用した。これで樹脂の溶け出しから全溶融に至る時間を短時間で、成形金型内で樹脂温度を樹脂の融点近くにすることが可能になるはずである。熱盤の温度制御を精密にした上で、樹脂の表面近傍がほぼ全溶融したとき(この時にプレス油圧が急減する)、熱盤に冷却水を供給して急冷し、かつ同時にプレス圧をゆっくり昇圧する方法を試した。しかしながら、通常の熱プレス機の構造では、熱盤を急冷しても成形金型の隙間部の近傍が、熱伝導により急冷されるまで時間を要する、即ちタイムラグによりかなりの樹脂が隙間から漏れ出す。
又、熱プレス成形のためのプレス圧の昇圧を開始するタイミングを遅くし、且つ、熱プレス圧自体も数MPaレベルのごく低いものにすれば樹脂漏れ量を減らせるが、このような低圧で得たCFRTPは、強度も外観も良くない。更に言えば、大型のCFRTPを用いた成形物を製造するとき、熱プレス成形のための成形金型も大型化する。このため機械設計上の制約(公差等)から成形金型の隙間も大きくなり、小型のCFRTP成形品よりも樹脂の漏れに関し、更に対策が難しくなる。要するに、既存の熱プレス成形には、高精度の成形ができる最適な成形金型、熱プレス成形方法がないと言わざるをえない。
一方、本発明者等は、表面処理された各種金属板とCFRTPとを熱プレスで接合する方法を提案した(特許文献1)。しかしながら、各種金属板とCFRTPとの複合体は、熱プレス成形で接合するものであり、この熱プレス成形は前述した諸問題があり、しかも射出成形のような複雑な形状、構造を成形できる成形方法ではない。即ち、熱プレス成形方法は、CFRTPと樹脂、又はCFRTPと金属部材等の複雑な立体形状の積層体を製造できるものではなく、しかも品質、生産性が悪い。更に、この熱プレス成形方法は、CFRTPと接合される金属との間の接合強度が弱い。
特開2011−240620号
本発明は、以上のような背景で発明されたものであり、以下のような課題を解決するものである。
本発明の目的は、生産性の高い射出成形方法により、CFRTPと、このマトリックス樹脂である結晶性熱可塑性樹脂を主成分とする結晶性熱可塑性樹脂組成物、金属部材等を一体化して成形したCFRTP複合体(積層体)を製造するものであり、CFRTP複合体の製造方法とそのCFRTP複合体を提供することにある。
本発明の他の目的は、CFRTPと、このマトリックス樹脂である結晶性熱可塑性樹脂を主成分とする結晶性熱可塑性樹脂組成物、金属部材等を積層し一体化して成形したCFRTP複合体(積層体)において、互いの素材間の接合強度が高いCFRTP複合体の製造方法とそのCFRTP複合体を提供することにある。
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採る。
本発明1のCFRTP複合体の製造方法は、
CFRTPを積層したCFRTP複合体の製造方法において、
結晶性熱可塑性樹脂(A)をマトリックス樹脂とするCFRTPプリプレグを原料として熱プレス成形を行い、CFRTP形状物を得る工程と、
前記結晶性熱可塑性樹脂(A)を主成分とする樹脂組成物(B)を用意する工程と、
前記結晶性熱可塑性樹脂(A)の融点をMpAとして、射出温度をMpA+45℃以上とし、金型温度をMpA−95℃以上か130℃以上の射出成形条件で、前記CFRTP形状物を射出成形金型にインサートし、前記樹脂組成物(B)を射出する射出接合工程とからなる。
本発明2のCFRTP複合体の製造方法は、
CFRTPを積層したCFRTP複合体の製造方法において、
結晶性熱可塑性樹脂(A)をマトリックス樹脂とするCFRTPプリプレグを原料として熱プレス成形を行い、CFRTP形状物を得る工程と、
前記結晶性熱可塑性樹脂(A)を主成分とし、この主成分高分子と異なる熱可塑性樹脂又は高沸点有機物である結晶化速度抑制物質(C)を配合した組成の樹脂組成物(D)を用意する工程と、
前記結晶性熱可塑性樹脂(A)の融点をMpAとして、金型温度を(MpA−140)℃以上か130℃以上にした上で、射出成形金型に前記CFRTP形状物をインサートし、金型を閉め、前記樹脂組成物(D)を射出する射出接合工程とからなる。
本発明1のCFRTP複合体は、
結晶性熱可塑性樹脂(A)を主成分とする樹脂組成物の形成層が表面を覆い、その内部に前記結晶性熱可塑性樹脂(A)をマトリックス樹脂とするCFRTPが含まれる形状を基本的にとるCFRTP複合体であって、
前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及びポリエーテルエーテルケトン樹脂から選択される1種であり、且つ
前記樹脂組成物の形成層が、射出成形機によって形成された層であることを特徴とする。
本発明2のCFRTP複合体は、
20〜40nm径の凹部で全面が覆われたアルミ合金形状物上に、
結晶性熱可塑性樹脂(A)を主成分とする樹脂組成物の形成層、前記結晶性熱可塑性樹脂(A)をマトリックス樹脂とするCFRTPが積層されているCFRTP複合体であって、
前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及び、ポリエーテルエーテルケトン樹脂から選択される1種であり、且つ
前記樹脂組成物の形成層が、射出成形機によって形成された層であることを特徴とする。
本発明3のCFRTP複合体は、
0.8〜10μm周期の凹凸ある粗面で全面が覆われ、その粗面に5〜200nm周期の超微細凹凸面形状があり、且つ、その表面が金属酸化物又は金属リン酸化物の如きセラミック質薄層で覆われている金属形状物上に、
結晶性熱可塑性樹脂(A)を主成分とする樹脂組成物の形成層、前記結晶性熱可塑性樹脂(A)をマトリックス樹脂とするFRTPが積層されたCFRTP複合体であって、
前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及び、ポリエーテルエーテルケトン樹脂から選択される1種であり、且つ
前記樹脂組成物の形成層が、射出成形機によって形成された層であることを特徴とする。
[CFRTP、CFRTP形状物、CFRTP複合体]
以下、本発明でいうCFRTPは、炭素繊維強化熱可塑性プラスチックであり、炭素繊維に樹脂を含浸した成形用中間材料であるCFRTPプリプレグ等で作られた、炭素繊維強化熱可塑性プラスチックの板材、管材等の汎用製品、製造工程中の中間製品をいう。本発明でいうCFRTP形状物、CFRTP板状体は、上記CFRTPを熱成形、機械加工等で所望の形状に加工したものをいう。本発明でいう金属形状物は、汎用の金属材等を所望の形状に加工、又は表面処理されたものをいう。本発明でいうCFRTP複合体は、このCFRTP、CFRTP形状物、金属形状物、CFRTPを構成するマトリックス樹脂等を積層した積層物をいう。
[CFRTP複合体の概要]
以下、前述したCFRTP複合体の成形の概要を説明する。図1は、本発明のCFRTP複合体の製造工程の概要を示すプロック図である。図1に示すCFRTPプリプレグは、炭素繊維にマトリックス樹脂である結晶性熱可塑性合成樹脂を含浸させた成形用中間材料である。このCFRTPプリプレグを積層、ワインデング等を行って、成形前、及び/又は熱プレス成形金型内で加熱して、成形金型による熱プレス成形で所望の形状に成形してCFRTP形状物を作製する。このCFRTP形状物は、この成形後に必要があれば所望の形状に整えるために孔明け、切削、切断等の機械加工を行う。更に、このCFRTP形状物の表面に、後述する結晶化抑制物質を塗布すると良い。ただし、CFRTP形状物の表面に、この結晶化抑制物質を塗布することは、必須要件ではない。
本発明でいう結晶化抑制物質は、射出成形のときに射出される溶融樹脂が固体表面に接触したとき、溶融樹脂の結晶化を遅延させるものである。この結晶化抑制物質の詳細なメカニズムについては後述する。ただし、この結晶化抑制物質の塗布は必ずしも必須ではなく、後述する射出成形のときに射出する結晶性熱可塑性合成樹脂に配合し混合する方法であっても良い。上記の方法で製造したCFRTP形状物を射出成形金型にインサートし、結晶性熱可塑性合成樹脂を射出して所望の形状、構造を有したCFRTP複合体を成形する。このCFRTP複合体は、CFRTPとそのマトリックス樹脂を主成分とする樹脂でできた積層体である。なお、CFRTP形状物を射出成形金型にインサートする成形方法で説明したが、製造方法によってはFRTPプリプレグを成形することなくインサートしたものでも良い。
(CFRTP複合体1〜3の製造方法)
前述したCFRTP複合体の製造方法の概要は、前述した通りであるが、本発明の製造方法の要旨は次の4通りである。
(1)CFRTPを構成するマトリックス樹脂である結晶性熱可塑性樹脂を主成分とする結晶性熱可塑性樹脂組成物の融点をMpAとしたとき、射出温度をMpA+45℃以上とし、金型温度をMpA−95℃以上から130℃以上にした上で、前記CFRTP形状物を射出成形金型にインサートし、前記結晶性熱可塑性樹脂組成物を射出する射出接合工程を有するものである。
(2)CFRTPを構成するマトリックス樹脂である結晶性熱可塑性樹脂を主成分とする結晶性熱可塑性樹脂組成物と、この主成分と異なる低分子の高分子及び/又は高沸点有機物である結晶化速度抑制物質(C)を配合した前記結晶性熱可塑性樹脂組成物を主成分とする樹脂を射出する射出接合工程を有するものである。
(3)CFRTP形状物の全面又は必要な表面部に、このCFRTPを構成するマトリックス樹脂である結晶性熱可塑性樹脂を主成分とする結晶性熱可塑性樹脂組成物が溶融後に再結晶するとき、その結晶を遅延させるための結晶化速度抑制物質を塗布乾燥した後、前記結晶性熱可塑性樹脂組成物を主成分とする樹脂を射出する射出接合工程を有するものである。又は、結晶化速度抑制物質の塗布に換えて、結晶化速度抑制物質を前記結晶性熱可塑性樹脂組成物に配合したものでも良い。
(4)CFRTP複合体の製造方法の要点は、前述した上記3点の方法と同一である。異なるのは、CFRTP形状物と積層する所望の形状の金属形状物を用意することである。この金属形状物の表面処理方法は、公知技術であり、本発明の発明者等が提唱した後述するNMT処理、又は新NMT処理により、その表面に微細な凹凸を形成する。こうして処理した金属形状物とCFRTP形状物とを射出成形金型にインサートし、前述した結晶性熱可塑性合成樹脂組成物を射出して、これを両者の接着材であるかのように用いて、所望の形状、構造を有した金属形状物とCFRTP形状物とが一体化した金属付きCFRTP複合体を製造する。
[CFRTP形状物と射出樹脂の接合]
熱プレス成形で得たCFRTP形状物を、射出成形金型にインサートし、そこへCFRTPに使用されているマトリックス樹脂である結晶性熱可塑性樹脂を主成分とする結晶性熱可塑性樹脂組成物を射出し、接合させることで、正確な一定形状のCFRTP複合体が量産できる。この製造方法は、生産性の高い射出成形であり、生産性が高く、しかも例えば自動車の車体等の複雑な形状のCFRTP複合体が得られる。
CFRTP形状物は、最初に平板上のCFRTPを作成し、又は市販されている汎用のCFRTPをそのマトリックス樹脂の溶融温度以下の熱プレスにかけてゆっくり曲面化し、周辺部を裁断する等の形状修正工程を入れて所望のCFRTP形状物を作成する。次に、CFRTP形状物を射出成形金型にインサートする。この射出成形金型内に、前述した結晶性熱可塑性樹脂組成物である溶融樹脂を射出して、インサートされているCFRTP形状物と接合させる。この製造方法により、正確に曲面化したCFRTP複合体(積層体)が容易にできる成形法となり、所望の最終形状化品であるCFRTP複合体を得ることができる。又、射出成形金型にインサートするCFRTP形状物は、パズルのように異なる板厚、構造のCFRTP(汎用の板材、管材等)を組み合したものでもよい。このCFRTP複合体は、所望の樹脂製のリブ、ボス等を任意に配置することが可能となるので、複雑な各種構造体、部品の製造できる。
[CFRTPのマトリックス樹脂と射出される溶融樹脂との接合仮説]
この製造法の問題は、射出成形金型内にインサートしたCFRTP形状物、即ち強化繊維入り結晶性熱可塑性樹脂組成物の成形品と、射出される結晶性熱可塑性樹脂が熱融着するか否かが不確かなことである。要するに、CFRTPを構成するマトリックス樹脂である結晶性熱可塑性樹脂と、射出される溶融樹脂が同種であっても、結晶性熱可塑性樹脂同士の樹脂・樹脂間の射出接合は、従来の理論では接合力が弱いとされている。即ち、高分子の物理化学では、一旦結晶化して固化した、マトリックス樹脂であるPA66、PPS、PEEK等の高結晶性熱可塑性樹脂は、射出成形金型内にインサートされた後に、同種の高結晶性熱可塑性樹脂の射出を受けても熱融着し難いとされ、事実もその通りである。本発明は、この点を解決しないと使用可能な技術にならない。
前述したように、本発明者等は、一旦結晶化固化した結晶性熱可塑性樹脂製の形状物を射出成形金型にインサートし、その射出成形金型に、同種の結晶性熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂組成物を射出した場合、双方の樹脂成形物同士が何とか熱融着し得る種々の条件を推測した。即ち、ウエルド接合力に近づけるために必要な条件を理論的に予測して数個の仮説とし、これをPA6、PA66、PPS、PEEKに対して試した。その結果、明確な効果があった仮説は樹脂毎に異なるものの前記した全ての樹脂種で25MPa以上の接合力(引っ張り破断力)が得られ本発明に至った。この発見に至った仮説は以下に示す。
[結晶化した結晶性熱可塑性樹脂と溶融樹脂との接合の仮説](結晶化抑制物質の機能と働き)
本発明でいう結晶化抑制物質は、溶融し射出された結晶性熱可塑性合成樹脂がインサート物に接触したとき、一瞬、その結晶性熱可塑性合成樹脂の結晶化を遅延させるためのものである。PA6、PA66等のポリアミドであれば、脂肪族ジアミンを含むジアミン、又はポリオレフィン、熱可塑性エラストマー等の非晶性高分子である。PPS、PEEKであれば、ポリオレフィン、熱可塑性エラストマー等の非晶性高分子を配合したものがこれに該当する。
以下、本発明でいう結晶化抑制物質の働き、機能について説明する。本発明者等は、射出成形金型内にインサートされたマトリックス樹脂であるPA6系樹脂に、PA6系樹脂を射出接合する、以下同様に、PBT系樹脂にPBT系樹脂を射出接合する、PA66系樹脂にPA66系樹脂を射出接合する、PPS系樹脂にPPS系樹脂を射出接合する、PEEKにPEEKを射出接合する、等の全く同種の樹脂組成物同士の場合は、熱融着による射出接合が困難である。射出成形金型内に、CFRTP形状物を構成するマトリックス樹脂である結晶性熱可塑性樹脂をインサートし、これに同種の結晶性熱可塑性樹脂を射出しても、両者の固着強度は、少なくとも実用レベルの接合強度に達しないことを実験により再確認した。この実験は、射出された溶融樹脂から、インサートされているCFRTP形状物の結晶性熱可塑性樹脂に、与える温度と凝縮熱量では、固化している同種樹脂結晶を十分に緩めるに至らないことを示した。
射出樹脂である結晶性熱可塑性樹脂組成物(以下、「第2樹脂組成物」という。)が、射出成形金型内にインサートされている結晶性熱可塑性樹脂組成物(以下、この樹脂組成物を「第1樹脂組成物」という。)に接触するとき、以下のメカニズムが考えられる。即ち、射出される第2樹脂組成物は、溶融状態でありながらも、射出成形金型内のランナー等の通路で冷やされて、既に融点以下の温度になっており、物理化学的には過冷却状態にある。それ故、流動していた第2樹脂組成物が固化している第1樹脂組成物のごく近くまで接近して衝突し、その物理的衝撃で同時多発的に、第2樹脂組成物に微結晶が発生する。この微結晶の発生と、その微結晶を核として、結晶の拡大化が進む間に発する凝縮熱(結晶化熱、溶融熱)は、過冷却状態にあるので本来の凝縮熱よりも少ない。それ故に、融点より低温である状態で、かつ十分な熱量も獲得できないので、少なくとも固化している第1樹脂組成物中の結晶化部は、その高分子結晶が解れることは期待出来ないのである。第1樹脂組成物と第2樹脂組成物は、相溶することはない。
即ち、樹脂融点から射出成形用の金型温度の間の温度域で、第2樹脂組成物が出す凝縮熱を得て、第1樹脂組成物が受ける熱量は、その非晶部分が昇温して高粘度液状に相変化するはずである。しかも、両樹脂組成物間で、互いに干渉や接合関係が出来るには、前記した第1樹脂組成物中の非晶部が、瞬間的に金型温度から樹脂融点近くまで上がって高粘度液状になり、その後に再び金型温度まで下がるごく僅かな時間帯の中心部だけである。この時間、第2樹脂組成物にも結晶化が進み、高温液状の非晶部は大きく減る。前述した第1樹脂組成物中の非晶部が、高粘度液状になる僅かな時間帯が、第2樹脂組成物での結晶化が未だ低率である間、即ち、非晶化率の高い時間帯に重なれば、高粘度であろうが液状物同士であり、両者は互いに物理的に混ざり合い、この混ざり合った中からの結晶生成が期待できると推論した。
[樹脂・樹脂の射出接合技術:仮説]
一つは樹脂の最も基本特性を考慮した推論である。通常用いられている射出成形条件よりも射出温度を上げ、金型温度を上げることである。この方法は、結晶性熱可塑性樹脂中の非晶性樹脂同士の射出接合を、2色成形機で成功させるために使われる常識的な方法であり、それを高結晶性の熱可塑性合成樹脂に使えるかを試すことである。理論的には、第1樹脂組成物により高温で大量の熱量を与えることで、第1樹脂組成物中の結晶が多少は緩み、且つ、その非晶部が溶融することを狙ったものである。ただ、この最も単純な方法が高結晶性樹脂に対して、実際には使われない理由は全く別のところにある。
仮に、樹脂融点よりはるかに高い温度に射出温度を設定すれば、樹脂粘度が下がり過ぎて、所謂ハナタレ現象を起こし、且つ熱分解によるガスと不溶物の発生が増える。そして最悪の場合は加熱シリンダ内で、スクリュウに樹脂が固着する恐れが急増する。又、射出成形金型内での冷却速度が落ち、離型やランナー取り出しが困難になり、結局は成形サイクルを異常に伸ばすことになる。要するに、自動化合理化が可能な故に使われる射出成形法の利点が全て無くなるが故に、一般に樹脂融点よりはるかに高い温度に射出温度を設定する方法は採用されていない。
他の一つは、第2樹脂組成物の熱物性を変えることであると考えた。射出成形金型内にインサートされる第1樹脂組成物として、本発明ではCFRTP形状物を想定するわけであるから、このマトリックス樹脂であるPA6、PA66、PPS、PEEK等は、そのままの樹脂又はガラス繊維(GF)、炭素繊維(CF)等の繊維を数十%含む単純型樹脂組成物と考える。このような第1樹脂組成物を用いた場合、第2樹脂組成物をどのような考え方でコンパウンドするかが鍵と考えた。例えば、第2樹脂組成物が、溶融物となりその後の急冷時の結晶化速度が遅くなるように仕組まれていた場合、固化している第1樹脂成形物の表面に、射出樹脂(第2樹脂組成物)が衝突し、その物理的衝撃で射出樹脂は結晶化固化が始まるのだが、その後の結晶成長速度が通常よりずっと遅く、別の言い方では液状に溶融したまま存在する時間が長くなる。
その長くなった時間だけ、固化している第1樹脂組成物の表面層は、長時間熱を受け取り、少なくともその表面の非晶部は軟化し高粘度であるだろうが溶融する。そして一方の射出された溶融樹脂も、未だ結晶化していない部分(溶融部分)が多く残っており、両者の溶融樹脂同士が互いに混ざり合う時間が生まれるであろうと推察できる。このようにして生じた溶融樹脂同士の混合部は、その後、この溶融樹脂の中には結晶化まで至る高分子もある確率で発生すると推定されるので、結晶部分の機械的強度から接合力が生じると予想した。
[使用可能な結晶性熱可塑性合成樹脂]
本発明者等は、金属材とエンプラ、スーパーエンプラ等との射出接合法(本発明者等の定義)を開発した者である。具体的には、アルミ合金材とポリアミド樹脂、ポリブチレンサルファイド樹脂(以下、「PBT」という。)、PPS等とを、剪断破断応力で40MPa以上の強い接合力で射出接合して一体化するNMT技術(例えば、WO2004/041532)、及び、あらゆる金属材とポリアミド樹脂、PBT、PPS等とを、40MPa程度の強い接合力で射出接合して一体化する新NMT技術(例えば、WO2008/069252、WO2008/081933等)を発明し、NMT技術、新NMT技術と命名した。更に言えば、各種金属材とポリエーテルエーテルケトン樹脂(以下「PEEK」という。)、熱可塑性ポリイミドを30〜40MPaで射出接合する技術を本発明者等は開発し、又は開発中である。
これら射出接合法とは、予め各種金属合金材毎に決められているNMT処理法、新NMT処理法、等の表面処理法を金属材に施して、その表面に超微細凹凸形状を与えおくものの、その金属材を射出成形金型にインサートしそこへ射出する樹脂組成物の考え方は、前項で述べた第2樹脂組成物と実質的に同一物である。要するに、樹脂と樹脂の射出接合を成功させるために、使用する第2樹脂組成物としてNMT、新NMT用とされる樹脂組成物が使用可能と本発明者は仮説を置いた。実際に第1樹脂組成物を一旦射出成形して板状成形物をえて、これを1/2に切断して板状とし、次には同射出成形金型に前記1/2の板状物をインサートし、そこへ第2樹脂組成物を射出して一体化物(板状成形物)を得た(図8参照)。これを引っ張り試験機で破断して樹脂成形部間の接合力(引っ張り破断応力)を測定した(後述する実験例7)。
後述する表1に示すように、その結果、第2樹脂組成物として、PA6、PA66では、これらに高級アミン系化合物を配合したNMT用樹脂が30MPa台の接合力を示し、PPSでは変性ポリオレフィンと相溶化剤(樹脂)を配合したNMT、新NMT用樹脂を使用して、これも30MPa近い接合力を示した。又、PEEKではPEEKに、相溶性ある耐熱性樹脂のポリエーテルイミド樹脂(以下、「PEI」という。)を少量コンパウンドした樹脂が20MPa以上の接合力を示した。使用した第2樹脂組成物は、全て表面処理した金属材に対して接合力(せん断破断力)40MPa以上で射出接合する樹脂組成物であり、予期した通り、金属への射出接合と樹脂への射出接合とは何れも射出樹脂の結晶化速度を抑制することで成功するという推論が証明されたものと思われる。
但し、本発明者等の予想と全く違った結果を示した樹脂もあった。即ち、PBTである(後述する表1参照)。第1樹脂組成物として、GF30%入りのPBT系樹脂を使用し、第2樹脂組成物として、NMT用のPBT系樹脂を使用したが樹脂・樹脂の射出接合は弱かった。使用した第2組成物は、PBTを主成分に、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PET」という。)と、変性ポリオレフィン樹脂を従成分として含む物で、理論上は、PBTにPETが相溶して、PBTの結晶化速度を抑制するという仕組みであり、この樹脂を前述のNMT処理したAl合金に対して、射出接合させるとその接合力は剪断破断応力で40MPa以上を示す。しかしながら、前述した樹脂・樹脂の射出接合試験の結果(引っ張り破断応力)では全く異なったのである。PBTが前述した本発明者等の樹脂・樹脂の射出接合論で説明できない。但し、CFRTP用の高結晶性熱可塑性樹脂として、PBTを使用するものは理由不明だが、本発明者が知る限りでは市場の製品、及び提案はない。本発明は、あくまでもCFRTP複合体の合理的な量産製造法の開発にあり、この開発過程ではPBTは、本発明に使用する結晶性熱可塑性樹脂としては適さないと判断した。
[金属材と接合したCFRTP]
理論的な一致から、金属との射出接合、固化した樹脂との射出接合に同じ樹脂組成物が使用できることが判明した。それ故、射出成形金型に、CFRTP、又はこれを成形したCFRTP形状物と、前述の本発明者等が提案したNMT、新NMT処理をした金属材の双方をインサートし、そこへCFRTPのマトリックス樹脂を主成分とする樹脂組成物である金属射出接合用の樹脂組成物を射出すれば、金属材とCFRTP形状物が接合したCFRTP複合体を製造できることが判明した。
何れにしても、本発明者等が提唱した樹脂・樹脂の射出接合理論を利用することで、本発明は実現可能になった。即ち本発明は、先ず汎用品、又は中間品であるCFRTPから、低圧型の熱プレス成形を行って、所望のCFRTP形状物を得て、このCFRTP形状物のみ、又は、CFRTP形状物(又は汎用のCFRTP)と、特定の前処理した金属形状体の双方を射出成形金型にインサートする。そこへCFRTPのマトリックス樹脂主成分とした結晶性熱可塑性樹脂組成物であり、前述したNMT、新NMTの射出接合用樹脂組成物を射出し、CFRTP複合成体が製造することが可能となった。
本発明のCFRTP複合体とその製造方法は、射出成形方法により製造できるので生産性が良い。また、本発明のCFRTP複合体とその製造方法は、積層されたCFRTP、このCFRTPのマトリックス樹脂である結晶性熱可塑性樹脂を主成分とする結晶性熱可塑性樹脂組成物、金属材等からなる積層体を、射出成形金型内で容易に一体に組立できるので、組立工程が必要なく、生産性が高い。更に、本発明のCFRTP複合体は、積層されたCFRTP、このCFRTPのマトリックス樹脂である結晶性熱可塑性樹脂を主成分とする結晶性熱可塑性樹脂組成物、金属材等の積層物である相互の素材間の接合強度が高い。
図1は、本発明のCFRTP複合体の製造工程の概要を示すブロック図である。 図2(a)は、熱プレス成形により得られた板状体を加工したCFRTP形状物の外観であり、図2(b)は、図2(a)の断面図である。 図3は、CFRTP形状物を射出成形金型にインサートして、CFRTP複合体を射出成形するときの射出成形金型の断面図である。 図4は、金属板とCFRTP形状物を射出成形金型にインサートして、CFRTP複合体を射出成形するときの射出成形金型の断面図である。 図5は、金属板付きCFRTP複合体の外観と寸法を示す外観図である。 図6は、図5に示した金属板付きCFRTP複合体から切り出した金属板付きCFRTP複合体の小型片を示す外観と寸法を示す外観図である。 図7は、図6の金属板付きCFRTP複合体に切れ目を入れてものであり、引っ張り破断試験を行うための試験片を示す側面図である。 図8は、樹脂・樹脂の射出接合実験したときの引っ張破断応力をするための射出成形物の形状とピンゲート位置を示したものである。 図9は、A5052アルミ合金に新NMT処理をした物の表面を1,5,10万倍電顕観察した結果を示したものである。 図10は、純チタン系チタン合金に新NMT処理をした物の表面を1,5,10万倍電顕観察した結果を示したものである。
以下、本発明のCFRTP複合体の製造方法の各工程の実施の形態の詳細を説明する。
[1.金属形状物とその表面処理]
本発明の金属材付きCFRTP複合体を作成する場合、以下の表面処理をした金属材を使用する。使用する金属種に実質な制限はない。即ち、マグネシウム合金、アルミ合金、チタン合金、銅合金、ステンレス鋼、一般鋼材、アルミ鍍金鋼板等のあらゆる物が使用できる。
(NMT処理とNMT用射出樹脂)
本発明者等がいうNMT処理法は、公知技術であり、アルミ合金、アルミ鍍金鋼板の表面処理方法である。NMT処理法は、機械加工等で必要な形状物に標準品であるアルミ合金、アルミ鍍金鋼板等を加工した後、各種合金やアルミ鍍金鋼板に適した特定のNMT処理(例えば、特開2003−251654参照)を施して、射出接合に最適の表面物性(自然酸化被膜等)、表面形状(粗さ)を形成するものである。
このNMT処理方法は、アルミ合金材の表面を、ヒドラジンによる液浸漬処理法によって、結果的に、20〜40nm径で同等深さの超微細凹部で全面を覆うようにし、且つ、広義のアミン系分子が表面に化学吸着された状態にする処理法である。そしてこのように、NMT処理をしたアルミ合金、アルミ鍍金鋼板等の形状物を射出成形金型にインサートし、特定の樹脂組成物を射出した場合、強く射出接合した金属/樹脂の一体化した積層体である複合体を得ることが出来る。この複合体の製造は、射出する樹脂側にも条件があって、樹脂組成物として主成分がポリアミド樹脂、PBT、PPS等の硬質の結晶性熱可塑性樹脂であり、更に好ましくは、主成分樹脂に分子レベルで混ざり得る異高分子等の結晶化速度抑制物質が加えられている。
例えば、PA6、PA66には高級アミン類(ジアミン類)を結晶化抑制剤として少量加えたものがNMT射出接合用樹脂として使用され、PBTにはポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PET」という。)、変性ポリオレフィン樹脂等の異高分子が加えられ、PPSには変性ポリオレフィンと相溶化材としての特殊な樹脂が少量加えられてNMT射出接合用樹脂として使用できる。これらの基本組成は本発明者等が樹脂メーカーと共同研究の中で見出されたものである。日本国内で市販されているNMT用の射出接合用樹脂は、PA6、PA66、PBT、PPSで各数種がある。
(新NMT処理と新NMT用射出樹脂)
上記NMTを改良した新NMT処理も公知技術であり、全金属の種類が対象の処理方法である。新NMT処理による金属と樹脂の複合体の製造方法は、機械加工等で必要な形状物に金属合金材を加工した後、新NMT処理で各合金に適した特定の表面処理を施して、この合金を射出成形金型内にインサートして、これに結晶性熱可塑性樹脂を射出して、金属と樹脂の複合体(積層体)を得るものである。このとき、金属表面を最適な表面形状、表面物性品に仕上げるのが、新NMT処理法(例えば、WO2008/081933、WO2004/41532等)である。新NMT処理とは、金属材の種類で若干異なるが、表面を液浸漬処理法によって、結果的に、0.8〜10μm周期(好ましくは1〜4μm周期)の凹凸ある粗面とし、且つ、その粗面を更に5〜300nm周期の微細凹凸面形状にし、且つ、その表面は金属酸化物、金属リン酸化物の様なセラミック質の表面薄層で覆われた物にする処理法である。
そしてこのように、新NMT処理をした各種金属合金の形状物を、射出成形金型にインサートし、特定の樹脂組成物を射出した場合、強く射出接合した金属/樹脂の一体化した複合体(積層体)を得ることが出来る。NMTと同様に射出樹脂側に条件があって、一般に硬質の結晶性熱可塑性樹脂を主成分として他の有機物や樹脂をコンパウンドすることで、急冷時の結晶化速度を抑制するように仕組んだ樹脂組成物が有効で、樹脂種がポリアミド樹脂の一部、PBT、PPSの場合に使用できる。そしてポリアミド樹脂の内のPA6やPA66は、元々の結晶化速度が非常に速く、前記NMT用の射出接合用樹脂を用いたのでは強い射出接合力が再現できない。PA6、PA66については、新NMT条件で示した金属表面微細凹凸周期の範囲(5〜300nm周期の凹凸)ではなく、微細凹凸面形状を5〜50nm周期の細かくて凹部深さも浅い形状にしなければ、十分強い射出接合力が獲得できないことが判明している。
又、このような超微細凹凸形状を有する金属片に対して、強く射出接合するPA6、PA66系の樹脂組成物も、前述したNMT用樹脂で添加している高分子ではなく結晶化速度抑制物質として高級アミン系化合物等の高沸点型有機化合物を使用する。又、このようなな結晶化速度抑制物質入りのPA66等を使用しても、凹凸周期がやや大きい新NMT処理金属材については、射出側の樹脂に更にナイロン610(以下、「PA610」という。)を少量コンパウンドするのが効果あった。そして本発明で最も重要なことだが、前述したこれらの金属用の射出接合用の結晶性熱可塑性樹脂組成物が、本発明の最終工程である後述の「射出接合工程」でそのまま使用できる。
[2.CFRTPプリプレグ]
炭素繊維束を樹脂で固めつつテープ状に押し出したものが樹脂メーカー、炭素繊維メーカー等で量産試作されており、かつ市販されているので入手でき、本発明ではこれらを使用できる。本発明者等が使用したのは、市販のPA6、PA66、PPSの炭素繊維束樹脂テープであり、幅50mm厚さ約0.2mmの長尺黒色テープであった。繊維含有率は50%程度とされる。これらを裁断してプレス金型の下型のキャビティー内に、繊維方向を勘案しながら敷き並べて、投入量は質量で決めて積層した。積層が完了すると、この上にプレス金型の上型を挿入する。
プリプレグ用テープが入手できない場合もプレス金型を使ってCFRTPの作成は可能である。例えば、PPS製のCFRTPの場合だが、プレス金型内にPPSフィルムと炭素繊維クロス(炭素繊維クロスには平織、綾織の2種が市販されている)を重量で同量程度になるように重ねたフィルムとクロスを交互に積層し、金型を閉めて熱プレスしCFRTPを製造することが可能である。但し、実際にこの方法を行った結果は、フィルム間に挟まれた空気が抜け難くボイドが内部に残りやすいので、フィルムを多数の針で穿孔して、無数の孔を開けてから積層してCFRTPを熱プレスすると良い。
PEEKをマトリック樹歳するCFRTPの作成は、炭素繊維クロスと射出成形で作成した1mm厚のPEEKシートを重ねて熱プレスした。又、炭素繊維綾織クロスとPA66のクロスを交互に敷きつめて熱プレスする等、クロス同士からCFRTPを作成する方法も良い。この本発明者等のフィルム使用のCFRTP作成実験のように、多数の針で孔を開けて空気の排出が容易なようにすることと、このマトリックス樹脂である熱可塑性樹脂を線維化して編むことで、クロス化して使用することは空気排出を円滑にする上でよい。この方法とフィルムに多数の針で孔を開ける方法とは、空気の排出を容易にする点では実質的には同一方法である。要するに、CFRTPプリプレグとして通常は既に出来上がっている繊維束テープ状物を言うが、本発明では上記のように炭素繊維クロスと樹脂製フィルムやシートや布を交互に敷きつめて積層したものも、一般的なCFRTPプリプレグのように使用可能である。
[3.CFRTPを得る熱プレス成形操作]
以下に説明するCFRTPを得るには、少なくとも水冷回路付きの上下熱盤が装着されたプレス機が必要である。本発明者等は市販のミニプレス機を入手し使用した。前述したように熱プレス機で優れたCFRTPの成形品を再現性よく製造する方法は未だ分からないが、このミニプレス機を使用して本発明者等が行った熱プレス操作は以下の通りである。
(CFRTPを得るときの熱プレス操作)
本発明者等がCFRTPを所望の形状に成形した形状物を得るべく行った熱プレス手法は、以下の通りである。本発明者等の場合、目的とするCFRTPの形状は、100mm×100mm×約3mm厚でありプレス金型はこれに見合った金型寸法の物であった。プレス金型内にCFRTPプリプレグを充填して、プレス機に取り付け油圧計で確認出来る最低圧、例えばプレス面基準で、0.5MPa(5kg/cm)をかける。そして熱盤の昇温を開始した。上下熱盤の温度制御を各々制御し、上下熱盤の温度に差異なく昇温できるように務めた。そして昇温して行くと突然にプレス油圧が急落する。この時点は樹脂溶解が上下面の何れかで広く起こった時点であり、直ちに熱盤電源を切り、冷却水を供給し、そしてプレス型を覆っていた断熱材を外す。この油圧急低下の時点を起点として、10秒ほど後に下がっていたプレス油圧を0.5MPaレベルに戻した。
プレス油圧を戻したところ、樹脂漏れが生じて成形金型からゆっくりと漏れ出した。数秒で漏れが止まったときはそのままだが、漏れが出続ければプレス圧を最低圧にして漏れを止めた。樹脂漏れが止まったのを確認し、更にこの止まった起点時から1分ほど経過した時点で、プレス圧を5MPaまで上げた。その後に樹脂漏れがあれば、0.5MPaまで戻して10秒待ち再度上げたが、樹脂漏れがなければ5MPa圧を保ったままとし、上下熱盤温度が80℃以下になればプレス金型をプレス機から外し成形されたCFRTP形状物を取り出した。
(樹脂漏れを抑えることを優先した本発明に於ける熱プレス操作)
PPS製のCFRTP形状物を製造するときの熱プレス操作を例に述べる。PPSの融点280℃に対し、上下熱盤温度を一致させつつ昇温した処、熱盤の温度計が320℃を過ぎた時点でプレス油圧が急減した。直ちに冷却水をフルに流し断熱材を外した。これを起点時間として、20秒待ってからプレス圧をプレス面換算で、0.5MPaに戻した。この0.5MPa圧下でも樹脂漏れがごく低速ながら10秒ほどあった。起点時間より80秒待ち、熱盤温度が220℃まで下がった時点で、5MPaに昇圧し、樹脂漏れが再開していないのを確認したら、起点時間より90秒後だがプレス圧を8MPaまで昇圧した。昇圧によって樹脂漏れ部が動いたが続いての漏れはなかった。このまま水冷を続け、上下熱盤温度が80℃を切った時点でプレス機からプレス型を外し、プレス型から内容物を取り出した。
(CFRTP板状物の簡単判断法)
100mm×100mm×(2.5〜3)mm厚の熱プレス成形したCFRTP板状物を得たが、その簡単な評価法として本発明者等は以下3点を記録した。判定は、優良品、良品、並品、不良品の4段階で評価した。第1点は、板状物の重心位置を下から指先で支えて金属棒で成形品を叩くことで判定した。金属音がすれば優良品、木質音であれば不良品である。第2点は、上下表面の観察であり円滑面になっているかポツポツとした凹部がどれだけ何れの外観面で評価した。上下面とも円滑面が優良品、片面は円滑面だが別面にポツポツとした凹部が少量残っていると良品、片面は円滑面だが別面にポツポツした凹部が多数残っていると並品、上下面ともに円滑面でなければ不良品である。第3点は、周辺をダイヤモンド刃の小型高速回転鋸で0.5cm幅にて全周切断し90mm×90mm板状物にする。その上で切断面を観察する。綺麗に切断できていれば優良品、切断面がガサついておれば並品、ボイドが発見されれば不良品と判定した。
樹脂漏れを無視した前記定義した良品を製造する目的の熱プレス成形で成形した、PA6製CFRTP、PA66製CFRTP、PPS製CFRTP、PEEK製CFRTPでは、前記の簡単評価法であるが、上記判定法で、上記3点共に優良品であった。一方、樹脂漏れ減少を重視した前記の熱プレス成形で成形したPA6製CFRTP、PA66製CFRTP、PPS製CFRTP、PEEK製CFRTPでは、前記の簡単評価法だが、第1点は優良品、第2点は良品〜並品であり、第3点は優良品であった。本発明で用いるCFRTP板状物は、基本的に樹脂漏れ少なくCFRTP板状物としての機械的物性は、理論的な値の約80%程度の機械的な強度特性であるが、熱プレス圧を低くして生産性を高めたものとする。これで本発明の目的が達せられるからである。
[4.射出接合工程と射出樹脂:最終工程]
射出成形金型に、前述したCFRTP形状物(又は汎用の板材等のCFRTP)をインサートし、前述した射出接合用の結晶性熱可塑性樹脂組成物を射出し、CFRTP形状物(第1樹脂組成物の成形品)に、射出した樹脂組成物(第2樹脂組成物)が接合して、即ち、CFRTPと樹脂の積層体であるCFRTP複合体を得る。この所望の形状を成形する射出成形と、板材等の汎用のCFRTP、又はこれを成形したCFRTP形状物と、このCFRTPを構成するマトリックスを主成分とする結晶性熱可塑性樹脂組成物との接合を同士に行う工程は、本発明では最終工程に当たる。更に、射出成形金型に、前述した表面処理済み金属材と、前述したCFRTP形状物(又は、汎用のCFRTP)の双方をインサートし、前述した射出接合用の樹脂組成物を射出し、CFRTP形状物(第1樹脂組成物の成形品)に、射出した樹脂組成物(第2樹脂組成物)が接合して、金属材付きCFRTP複合体を得る。
当然だが、射出樹脂はCFRTPを構成するマトリックス樹脂毎に異なる。マトリックス樹脂がPA66であればPA66系の射出接合用樹脂、マトリックス樹脂がPPSであればPPS系の射出接合用樹脂、マトリックス樹脂がPEEKであればPEEK系の射出接合用樹脂である。本発明の発明者が知る限り、PBT製のCFRTPは作成されていないようだが、仮にPBT製のCFRTPが使用されるとすれば、これを使用するにはPBT系の射出接合用樹脂組成物となる。これらコンパウンドの具体的な中身は前述した。
この工程でむしろ重要なことは、射出接合用樹脂は接着剤的に使われるということであり、射出接合用樹脂はインサートした金型内面とCFRTP形状物の間を埋めること、又は、加えて金属材とCFRTP形状物が作る隙間を埋めることである。この場合、射出樹脂は全隙間を埋めるだけでなく、CFRTP形状物の表面層と金属材の表面に溶融樹脂を流して、両者を射出接合させねばならない。それ故に、樹脂が高速で流れ易くすべく隙間厚さを少なくとも1mm程度にするとか、CFRTP形状物に貫通孔を開けておくことで樹脂流れが反対面側に熱いまま到達するようにする。又、射出樹脂が接する射出成形金型面には、ガス抜き孔を多数形成し、CFRTP形状物の全周に溶融樹脂が熱いまま流れ着くようにするのが好ましい。
以下、本発明の実施例を実験例によって説明する。使用した主な実験機器は、次の通りである。
(a)接合強度の測定
引っ張り試験機「MODEL-1323VR(アイコーエンジニアリング株式会社(本社:日本国東大阪市)製)」を使用し、引っ張り速度10mm/分で剪断破壊応力を測定した。
(b)熱プレス操作に使用したプレス機
小型プレス機「ミニテストプレス(型式:MP-WNH、株式会社東洋精機製作所(本社:日本国東京都)製))」を使用した。
[実験例1](PA66によるCFRTP形状物)
炭素繊維束を、マトリックス樹脂であるPA66で固めて、幅50mm×0.2mm厚のテープ状物にした市販品を入手し、これを100mm毎の長さに切断して、多数のPA6製のCFRTPプリプレグを用意した。100mm×100mm×(1〜10)mmのキャビティーを有するプレス金型を用意し、その下型に前記プリプレグを80枚使い、2枚づつの40層を方向90度切り替えつつ積層した。そして、下型の上に上型を載せて閉じ、水冷回路付き上下熱盤が組み込まれている前述のプレス機(図示せず)に載置した。その後、プレス油圧をプレス面当たり0.5MPaに一致する圧力を供給する。そしてプレス金型の周りを断熱材で包んだ。
プレス金型の上下に配置された熱盤のセット温度を、230℃にして上下双方が230℃になるまで待ち、それから双方の温度セットを5℃上げては上下熱盤温度が一致してセット温度になるまで待ち、又5℃高い温度にセットを上げる作業を繰り返す。この間、プレス油圧は、実質的に変化しないことが油圧計で観察できる。熱盤温度が285℃付近になったとき、油圧計が急に下がったので、これを起点時間として記録する一方、直ちに熱盤を加熱している電源を遮断し、水冷回路に冷却用の公共水道水をバルブを全開して供給した。更に、直ちに熱盤を保温している断熱材を外した。上記起点時間から20秒後、プレス油を手動ポンプで送油し、この送油圧を0.5MPaに戻した。この時、プレス金型から樹脂漏れが生じたが漏れ速度は小さかくやがて止まった。
そして、上記起点時間から80秒経過後に、熱盤温度が200℃となった時点で、プレス油の油圧を5MPaとし、漏れが生じていないのを確認して直ちに8MPaまで上げた。樹脂漏れは相変わらず止まっていた。そのまま上下の熱盤の温度が80℃以下になるまで待ち、油圧をゼロに開放して、プレス金型をプレス機から外した。そして、矩形で板状の100mm(縦)×100mm(横)×3.6mm(肉厚)のPA66製の板状のCFRTP板状体を成形した(図示せず)。
次に、このCFRTP板状体の周辺部をダイヤモンド刃付きの回転鋸で切断し、矩形で板状の95mm×95mm×3.6mmのCFRTP形状物1とした(図2参照)。この工程までで得られた、このCFRTP形状物1の品質は、以下の三つの簡易評価法で評価した。(i)CFRTP板状体の重心位置を下から指先で支えて、金属棒でこの板状物を叩き打撃音を聞いた。この打撃音は、金属音がしたのでこの内部に空洞等がないものとして優良品と判定した。(ii)CFRTP板状体の両側面の表面状態の全体の観察では概ね平滑であったので、この表面観察からは良品と判定した。但し、ポツポツとした小径の凹凸部が、片面の一部で僅かな凹部が観察された。(iii)CFRTP板状体の外周をダイヤモンド刃を備えた小型高速回転鋸で切断した後の切断面には空洞等もなく平滑であり、切断面の評価からは優良品と判断した。
図2(a)は、前述の方法で試作したCFRTP板状体を加工したCFRTP形状物1の外観であり、図2(b)は、その断面図である。図2に示すように、板状のCFRTP形状物1に、中央部にドリルで2個の貫通孔穴2を明けた。貫通孔2は、射出成形で射出された溶融樹脂が、後述するようにCFRTP形状物1の裏面に流れるように、溶融樹脂を通すためのものである。更に、本例では6個の貫通孔を明けて、この貫通孔にPA66製の樹脂棒3を挿入して、図2に示す形状に組み立てた。樹脂棒3は、後述するように射出成形金型内のキャビティで、キャビティの壁面とCFRTP形状物1と間隔を保ち、溶融樹脂が円滑に回り、射出樹脂がCFRTP形状物1の外周面全体を均一にカバーできるようにするためのものである。
図3は、射出成形用金型10の断面図である。本実験例に用いる射出成形用金型10は、固定側型板11、可動側型板12、スプルーブッシュ等からなる一般的な構造の射出成形用金型である。可動側型板12に区画されたキャビティ13内に、CFRTP形状物1をインサートする。射出成形用金型10を閉じたとき、CFRTP形状物1に挿入した樹脂棒3により、このCFRTP形状物1とキャビティ13の壁面との間で、隙間14が区画される。一方、射出成形機のノズルから射出されたPA66の溶融樹脂は、射出成形用金型10内に射出される。この溶融樹脂は、スプル15からゲート16を通り、CFRTP形状物1の貫通孔2等に入り、更に隙間14に侵入する。この結果、PA6の溶融樹脂は、金属形状物9とCFRTP形状物1の隙間14を満たして、CFRTP形状物1の外周面を充填することになる。
この結果、射出されたPA66は、CFRTP形状物1と接合されて、両者を一体化することになる。言わば射出されたPA66は、両者の接着剤、及び構造の一部を構成する役目も果たす。本例のCFRTP形状物1の形状は、CFRTP形状物1の特定箇所に貫通孔2を明け、樹脂棒3により突起を形成したので、キャビティ13内で溶融樹脂が円滑に流れるようになった。このため、CFRTP形状物1を包み隠すように、溶融樹脂が流れて固化でき、かつこの溶融樹脂であるPA66を高温のままがCFRTP形状物1に接触させることができる。本例のPA66は、フィラー40%の他に、高級アミン系化合物を少々を含むNMT用のPA66系射出樹脂「91G40(旭化成ケミカルズ株式会社(本社:日本国東京都千代田区)製)」である。この高級アミン系化合物は、本発明でいう結晶化速度抑制物質である。射出成形金型10を開き、100mm×100mm×4.4mm厚のPA66で覆われたCFRTP複合体を得た(図示せず)。
上記の説明から理解されるように、CFRTP形状物1は、本発明でいう第1樹脂組成物であり、射出成形金型内にインサートされたCFRTP形状物1に射出されるPA66系の溶融樹脂が、本発明でいう第2樹脂組成物である。本発明でいうCFRTP複合体は、第1樹脂組成物であるCFRTP形状物1とこのマトリックス樹脂を主成分とする結晶性熱可塑性合成樹脂てある第2樹脂組成物とからなる。射出成形により成形されたCFRTP複合体は、極長繊維型の炭素繊維を約50%含むPA66の樹脂組成物であるとも言える。
[実験例2](アルミ合金薄板付きのPA66製CFRTP複合体)
矩形板である100mm(縦)×100mm(横)×0.4mm(肉厚)のA5052アルミ合金薄板に、前述したNMT処理を施した(図示せず)。具体的には、液槽にアルミ用脱脂剤「NE−6(メルテックス株式会社(本社:日本国東京都)製)」7.5%を含む水溶液を60℃とし、アルミ合金薄板を5分間浸漬して公共水道水(日本国群馬県太田市)で水洗した。次に別の槽に、40℃とした1%濃度の塩酸水溶液を用意し、この脱脂処理したアルミ合金薄板をこの塩酸水溶液に1分間浸漬して水洗した。次に別の槽に、40℃とした1.5%苛性ソーダ水溶液を用意し、これにアルミ合金薄板を4分間浸漬し、水洗した。次に別の槽に、40℃の3%濃度の硝酸水溶液に、3分間浸漬し水洗した。次に別の槽に、60℃とした3.5%濃度の水和ヒドラジン水溶液を用意してこれに1分間浸漬し、次に別の槽に、33℃とした0.5%濃度の水和ヒドラジン水溶液を用意して、これに6分間浸漬し水洗した。
これらの処理をしたアルミ合金薄板をアルミ箔で包んで保管した。同じA5052アルミ合金薄板の同様に処理したもの1個の10万倍電顕写真(図9)によれば、直径20〜30nmの微細凹部で全面が覆われていることが分かる。一方、実験例1と全く同様にして、炭素繊維束をPA66で固めて幅50mm×0.2mm厚のテープ状物にしたものを100mm毎に切断して多数のPA66製のCFRTPプリプレグにした。その後も実験例1と全く同様の方法で、熱プレス工程を実施し、前記プリプレグから100mm×100mm×3.6mm厚のPA66をマトリックス樹脂とするCFRTP板(図示せず)を得た。次に、回転鋸操作、孔開け操作、及び、貫通孔にPA66製の樹脂棒を突き刺して、形状加工操作も実験例1と全く同様に行い、図2に示したものと類似する形状のCFRTP形状物1を得た。これをCFRTP形状物1として保管した。
前述した射出成形金型10を用意し、図4に示すように、前述の処理をしたアルミ合金板板9をキャビティ13にインサートした。次に、前述したCFRTP形状物1をアルミ合金板板9と積層して双方をインサートし、金型を閉め、前述した高級アミン系化合物を含むNMT用PA66系射出樹脂「91G40(旭化成ケミカルズ株式会社(本社:日本国東京都千代田区)製)」を射出した。射出された樹脂は、アルミ合金板板9とCFRTP形状物1の間の隙間18に侵入し、アルミ合金板板9とCFRTP形状物1を一体に固着(接合)する。射出成形金型10を開き、100mm×100mm×4.8mm厚のアルミ合金板付きのPA66製のCFRP複合体20を得た(図5参照)。
[実験例3](金属薄板付きCFRTPでの金属とCFRTP間の接合力)
以下、実験3は、アルミ合金板板9とCFRTP形状物1の間の接合力(剪断破断応力)を計測するための加工処理であり、複合体の製造方法とは直接的には関係はない。実験例2で得た、アルミ合金薄板付きPA66製CFRTP複合体20(図5参照)の周辺を切断し、中央部から100mm×15mmの長方形片をダイヤモンド刃付きの小型回転鋸で切出した。更に、その両端を切断し90mm×15mmの長方形片とした(図示せず)。一方、1.6mm厚のSPCC(冷間圧延鋼板)から、90mm×15mmの長方形片を切り出した。このSPCC片21に以下の処理を加えた。即ち、槽にアルミ用脱脂剤「NE−6(メルテックス株式会社(本社:日本国東京都)製)」7.5%を含む水溶液を60℃とし、鋼板薄板板を5分間浸漬して水道水(群馬県太田市)で水洗した。
次いで、40℃とした1.5%苛性ソーダ水溶液を用意し、これに前記SPCC片を1分間浸漬し、水洗した。次いで別の槽に、50℃の5%濃度の硫酸水溶液を用意し、これに前記SPCC片21を4分間浸漬し水洗した。次いで別の槽に、1%濃度のアンモニア水を用意してこれに1分間浸漬して水洗し、次いで別の槽に、45℃とした2%濃度の過マンガン酸カリと1%濃度の酢酸と、0.5%濃度の水和酢酸ソーダの水溶液を用意し、これに前記SPCC片21を5分間浸漬し水洗した。次いで、80℃で15分間乾燥した。この処理はSPCCのNAT(Nano adhesion tech.の略)処理法であって、エポキシ接着剤に最適の被着材とするための処理法である(WO2008/146833、WO2008/133096等参照)。SPCC片のNAT処理は、後述する剪断破断応力を計測するときに、計測部分以外の部分から破断しないように補強するものであり、このために強力に接着するめの処理である。このNAT処理は、直接的には本発明の要旨とは関係しない。
ただし、複数種類の金属を積層する必要がある複合体が必要なときはこのNAT処理を行い、エポキシ樹脂等の接着剤で接合する製造方法を採用しても良い。前記NAT処理済みのSPCC片21の片面全面に、2液性エポキシ接着剤「1500(セメダイン株式会社(本社:日本国東京都)」の2液混合して得た接着剤を塗り、前記アルミ合金薄板付きCFRTP複合体20のアルミ薄板側に接着し、6個のクリップで固定した。このクリップ付きのまま50℃にした温風乾燥機に入れて1時間置き乾燥機の電源を切り翌日まで放置した。
乾燥機から出した接着物は図6に示す外観をしており、これを回転鋸で部分的にカットして図7に示す形状とした。即ち図7に示したものは、アルミ合金板9とCFRTP形状物1との間の接合力を、剪断破断応力で測定するために作った試験片25である。図7に示す図は、図6の中間品24に2か所の切れ目を入れたものであり、剪断破断応力を測定するための測定片の側面図である。この中間品24にミーリングマシンを使って、図7に示すように切れ目22を2か所入れて測定片25を作成した。この測定片25を、測定治具(図示せず)を用いて、両端から破断するまで引っ張ると、接合面23が剪断破断する、即ち、アルミニウム合金である金属形状物9とCFRTP1間の接合力(剪断破断応力)が計測できる。
図7に示した形状で、金属形状物9とCFRTP1の接合面23に当たる部分の面積は、15mm×9mm=1.35cm2である。引っ張り試験機で図7形状物の両端を引っ張り破断したところ、その接合力(せん断破断力)は3個平均で38MPaあった。又、破断試験後のアルミ合金側接合面跡には樹脂粉が点々と付着していた。これは十分強い接合が存在し、破断は材料破壊で生じたことを示している。
[実験例4](アルミ合金付きのPPS製CFRTP形状物)
矩形板である100mm×100mm×0.4mm厚のA5052アルミ合金薄板を、前述したNMT処理した。具体的には、実験例2のA5052アルミ合金の表面処理法と全く同様に行った。一方、炭素繊維束をPPSで固めて幅50mm×0.2mm厚のテープ状物にした物を入手し、これを100mm毎に切断して多数のPPS製のCFRTPプリプレグを得た。100mm×100mm×(1〜10)mmのキャビティーを有するプレス金型(図示せず)を用意し、その下型に前記プリプレグを80枚使い、2枚づつの40層を方向90度切り替えつつ積層した。そして上型をして閉め、水冷回路付き上下熱盤が組み込まれている前述した小型プレス機に乗せた。そしてプレス油圧をプレス面当たり1MPaに一致する圧に送油する。そしてプレス金型の周りを断熱材で包んだ。
上下の熱盤のセット温度を、310℃にして双方が250℃になるまで待ち、それから双方の温度セットを5℃上げては上下熱盤温度が一致してセット温度になるまで待ち、又5℃高い温度にセットを上げる作業を繰り返す。この間、プレス油圧は大して変わらないのが油圧計で分かる。熱盤温度が310℃付近になった時に油圧計が急に下がったのでこれを起点時間として記録し、熱盤電源を切り水冷回路に水道水をフルに送った。そして断熱材を外した。起点の15秒後にプレス油をポンプで送油して圧を1MPaに戻した。この時、プレス型から樹脂漏れが生じたが漏れ速度は小さかくやがて止まった。そして起点時間から80秒経過後に熱盤温度が220℃となった時点でプレス油を送油して圧を5MPaとし、漏れが生じていないのを確認して起点時間から2分後に8MPaまで上げた。樹脂漏れは相変わらず止まっていた。そのまま上下熱盤温度が100℃以下になるまで待ち、油圧をゼロとしプレス板を上げてプレス金型をプレス機から外した。そして100mm×100mm×3.2mm厚のPPS製CFRTP板状物(図示せず)を得た。
次に、回転鋸操作、穴開け操作、及び、穴にPA6製の樹脂棒を突き刺しての形状加工操作を実験例2と全く同様に行い、図2示すような形状のPPS製のCFRTP形状物である加工品を得た。これをCFRTP形状物として保管した。射出成形金型を用意し、図4に示した射出成形金型10に前記のアルミ合金板片、次いでCFRTP加工物の順でインサートし金属を閉め、NMT用PPS系射出樹脂「SGX120(東ソー株式会社(本社:日本国東京都港区)製)」を射出した。金型を開き、100mm×100mm×4.5mm厚のアルミ合金板付きのPPS製CFRTP成形品を得た。以下、その詳細な説明を省略するが、実験例3と同様な加工手順で試験片を作成し、剪断破断応力を計測した。
[実験例5](アルミ合金付きのPEEK製CFRTP形状物)
矩形板である100mm×100mm×0.4mm厚のA5052アルミ合金薄板を、前述したNMT処理をした。具体的には、実験例2のA5052アルミ合金の表面処理法と同じである。一方、PEEKをマトリックス樹脂とし、綾織炭素繊維クロスから製造された市販のCFRTP板状物(120mm×100mm×3mm厚)(株式会社UCH(本社:埼玉県入間郡三芳町)製)を入手した。外観の表面性状が良く、叩くと金属音がしてCFRTPとしては良い出来上がりものと判断される。
CFRTP成形品として出来上がっているので、これを原材として形状加工した。即ち、ダイヤモンド刃付きの回転鋸で切り、削り残しあるがその基本形状を95mm×95mmの板状体(図2参照)とした。更にドリルで貫通孔をあけ、その貫通孔にPA66製の樹脂棒を突き刺して図2に示す形状に加工した。これを粗CFRTPとして以下の工程に廻した。
前述した射出成形金型10を用意し、前述したNMT処理済みA5052アルミ合金薄板と、前記のCFRTP板状物の双方をインサートしてこの金型を閉め、フィラーを含むPEEK「90G(ビクトレックスジャパン株式会社(本社:日本国東京都港区))」とPEI「ウルテム1000(SABICジャパン合同会社)」を95:5の重量比でドライブレンドした樹脂混合物を射出した。金型を開き、矩形板状の100mm×100mm×4.5mm厚のアルミ合金板付きのPEEK製のCFRTP複合体を得た。
[実験例6](チタン合金とPPS系CFRTPの接合物)
矩形板である100mm×100mm×0.4mm厚の純チタン系チタン合金薄板「TP340(新日鐵住金株式会社(本社:日本国東京都千代田区)製)」を、新NMT処理した。具体的には、槽にアルミ用脱脂剤「NE−6(メルテックス株式会社(本社:日本国東京都)製)」7.5%を含む水溶液を60℃とし、その合金薄板を5分間浸漬して水道水(群馬県太田市)で水洗した。次いで、別の槽に40℃とした1.5%濃度の苛性ソーダ水溶液を用意し、これにチタン片を1分間浸漬して水洗した。次いで、別の槽に60℃とした2%濃度の万能エッチング剤「KA−3(株式会社金属化工技術研究所( 本社:日本国東京都墨田区)製)」水溶液を用意し、これに薄板片を4分間浸漬し、水洗した。
次いで、別の槽に40℃の3%濃度の硝酸水溶液に、3分間浸漬し水洗した。次いで、別の槽に70℃とした2%濃度の過マンガン酸カリと3%濃度の苛性カリを含む水溶液を用意してこれに5分間浸漬し水洗した。これをアルミ箔で包んで保管した。同じチタン片の同様に処理した物1個の10万倍電顕写真(図10)によれば直径20〜30nmの微細凹部で全面が覆われていることが分かる。その後は実験例4と全く同様に実験を進めた。即ち、矩形板である100mm×100mm×3.5mm厚のPPS製CFRTP板(図示せず)を得た。次いで得たCFRTP板状物を回転鋸やドリルを使って加工して図2に示すような形状にした。そして射出成形金型を用意し、金属材がチタンであることが異なる以外は全て実験例4と同様にして前記チタン薄板片とCFRTP形状物をインサートし、新NMT用PPS系射出樹脂「サスティールSGX120(東ソー株式会社(本社:日本国東京都港区)製)」を射出した。射出成形金型を開き、100mm×100mm×4.8mm厚のチタン薄板付きのPPS製CFRP複合体を得た。
[実験例7](アルミ鍍金鋼板とPPS系CFRTPの接合物)
矩形板である100mm×100mm×0.4mm厚のアルミ鍍金鋼板「アルスター鋼板(登録商標、日新製鋼株式会社(本社:日本国東京都千代田区)製)」を新NMT処理した。具体的には、槽にアルミ用脱脂剤「NE−6(メルテックス株式会社(本社:日本国東京都)製)」を7.5%を含む水溶液を60℃とし、薄板片を5分間浸漬して水道水(群馬県太田市)で水洗した。次いで、別の槽に40℃とした1%濃度の塩酸水溶液を用意し、これに鋼板片を1分間浸漬して水洗した。次いで別の槽に40℃とした1.5%濃度の苛性ソーダ水溶液を用意し、これに鋼板片を4分間浸漬し、水洗した。次いで別の槽に40℃の3%濃度の硝酸水溶液に3分間浸漬し、超音波発振端付きの水洗槽に5分浸漬した。
次いで別の槽に、40℃の3%濃度の硝酸水溶液に0.5分間浸漬し、水洗した。次いで別の槽に60℃とした3.5%濃度の水和ヒドラジン水溶液に2分浸漬し、水洗した。次いで別の槽に5%濃度の過酸化水素水を用意してこれに5分間浸漬し水洗した。これを80℃で15分乾燥しアルミ箔で包んだ。その後は、実験例6と金属材が異なる以外は全て同様に実験を行った。即ち、100mm×100mm×3.5mm厚のPPS製CFRTP板状物を得た。次いで得たCFRTP板状物を回転鋸やドリルを使って加工して図2に示すような形状のCFRTP形状物にした。そして射出成形金型を用意し、金属材がアルミ鍍金鋼板であることが異なる以外は全て実験例6と同様にして前記アルミ鍍金鋼板片とCFRTP形状物をインサートし、新NMT用PPS系射出樹脂「サスティールSGX120(東ソー株式会社(本社:日本国東京都港区)製)」を射出した。射出金型を開き、100mm×100mm×4.8mm厚のチタン薄板付きのPPS製CFRP複合体を得た。
更に、実験例3と全く同様にして、得たアルミ鍍金鋼板付きPPS製CFRTP複合体の中央部から100mm×15mmの長方形片をダイヤモンド刃付き回転鋸で切出し、更に両端部を切断して90mm×15mmの長方形片とした。その一方で、実験例3と同様にNAT処理した90mm×15mmのSPCC片を得、これと前記アルミ鍍金鋼板付きCFRTP複合体片とを2液性エポキシ接着剤で接着し、更に加工して引っ張り試験機にかけた。得られた接合力(せん断破断力)は37.2MPaあり、破断片のアルミ鍍金鋼板側接合面跡には樹脂粉が付着していた。
[実験例7](樹脂・樹脂の射出接合試験:参考試験)
図8は、樹脂・樹脂の射出接合実験をしたときの引っ張破断応力をするための射出成形物の形状とピンゲート位置を示したものである。この射出成形金型を使い、PA6、PA66、PBT、PPS、PEEKの単独樹脂型の樹脂成形物(第1樹脂組成物)を射出成形した。これで得た45mm×10mm×3mm厚の樹脂成形物を約1/2に、回転鋸で切断し、ピンゲート跡の付いていない方を取り、切断面を回転砥石で研磨し平面とした。そして得た各種樹脂製の多数の樹脂片をSUS製ザルに取り、中性洗剤を溶かした超音波発振端付きの槽(脱脂槽)に前記ザルを5分間沈めて洗浄し、次いで水道水でよく水洗し、80℃にした温風乾燥機に15分入れてザルごと乾燥し、樹脂片をザルから空けてアルミ箔で包んで保管した。
再び前述した射出成形金型を取り付けた射出成形機を準備し、金型を開いて前記の樹脂片をインサートし(図8参照)、用意した第2樹脂組成物を射出し、樹脂・樹脂の射出成形物を離型した。この場合の成形条件(特に金型温度)は、通常の各種樹脂種の射出成形条件と同じにすべきと考えPA6の場合は金型温度80℃として始めた。それ故に、PA66、PBTでは100℃程度、PPSでは120℃程度、PEEKでは140℃程度が通常の金型温度と思われたが、一方で本発明の目的の重要な一面が金属との射出接合も同時に行うことであり、金属との射出接合を行う場合の金型温度(PA6、PA66、PBT、PPSでは概ね140℃、PEEKでは160℃)に合わせるのが筋とも考えた。そこでPA6の80℃条件が入っているものの全体は金属との射出接合時を想定したものとした。
次に示す表1は、以上に説明した実験例7の樹脂と樹脂の引っ張り破断応力のデータである。
表1で明らかなように、全く同じ樹脂組成物同士の樹脂・樹脂の射出接合物では、同様な射出接合力は2〜15MPaでありその数値はインサートする方の樹脂成形物の接合面の粗面状況による。粗面になっていれば10MPaもあるが射出成形面で且つ鏡面に近い綺麗な平面では2〜4MPaと低くなる。何らかの熱融着的な射出接合があれば15〜20MPaを超えること。更に分かったことはPBT系で良好な引っ張り破断強度は得られず、この点で、本発明者等の推論とは、PBTではNMTでの射出接合と樹脂・樹脂の射出接合で不一致であることが判明した。
1…CFRTP形状物
2…貫通孔
3…樹脂棒
9…金属形状物
10…射出成形用金型
11…固定型板
12…可動型板
13…キャビティ
23…接合面
25…測定片

Claims (13)

  1. CFRTPを積層したCFRTP複合体の製造方法において、
    結晶性熱可塑性樹脂(A)をマトリックス樹脂とするCFRTPプリプレグを原料として熱プレス成形を行い、CFRTP形状物を得る工程と、
    前記結晶性熱可塑性樹脂(A)を主成分とする樹脂組成物(B)を用意する工程と、
    前記結晶性熱可塑性樹脂(A)の融点をMpAとして、射出温度をMpA+45℃以上とし、金型温度をMpA−95℃以上か130℃以上の射出成形条件で、前記CFRTP形状物を射出成形金型にインサートし、前記樹脂組成物(B)を射出する射出接合工程と
    からなるCFRTP複合体の製造方法。
  2. CFRTPを積層したCFRTP複合体の製造方法において、
    結晶性熱可塑性樹脂(A)をマトリックス樹脂とするCFRTPプリプレグを原料として熱プレス成形を行い、CFRTP形状物を得る工程と、
    前記結晶性熱可塑性樹脂(A)を主成分とし、この主成分高分子と異なる熱可塑性樹脂又は高沸点有機物である結晶化速度抑制物質(C)を配合した組成の樹脂組成物(D)を用意する工程と、
    前記結晶性熱可塑性樹脂(A)の融点をMpAとして、金型温度を(MpA−140)℃以上か130℃以上にした上で、射出成形金型に前記CFRTP形状物をインサートし、金型を閉め、前記樹脂組成物(D)を射出する射出接合工程と
    からなるCFRTP複合体の製造方法。
  3. 請求項1又は2のCFRTP複合体の製造方法において、
    前記CFRTP形状物の全面又は必要な表面に、高沸点有機物である結晶化速度抑制物質(E)の有機溶剤溶液に溶かして塗布、乾燥させ、前記結晶化速度抑制物質(E)が塗布された前記CFRTP形状物を得る工程と
    からなることを特徴とするCFRTP成形品の製造方法。
  4. 請求項1〜3から選択される1項に記載のCFRTP複合体の製造方法において、
    化成処理することで20〜40nm径の凹部で全面が覆われた形状とし、且つ、表面にアミン系分子が化学吸着しているものとしたアルミ合金形状物を用意するか、又は、
    化成処理することで、0.8〜10μm周期の凹凸ある粗面で全面が覆われ、その粗面に5〜200nm周期の超微細凹凸面形状があり、且つ、その表面が金属酸化物又は金属リン酸化物の如きセラミック質薄層で覆われている金属形状物を用意して、
    前記射出成形金型に、前記CFRTP形状物と前記金属形状物の双方をインサートして行う射出接合工程である
    ことを特徴とする金属付きのCFRTP複合体の製造方法。
  5. 請求項1ないし4から選択される1項に記載のCFRTP複合体の製造方法において、
    前記結晶性熱可塑性樹脂(A)は、6ナイロン樹脂、66ナイロン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及びポリエーテルエーテルケトン樹脂から選択される1種である
    ことを特徴とするCFRTP成形品の製造方法。
  6. 請求項1ないし5から選択される1項に記載のCFRTP複合体の製造方法において、
    前記結晶化速度抑制物質(C,E)は、
    前記主成分である前記結晶性熱可塑性樹脂(A)と異なる異高分子であり、且つ、前記結晶性熱可塑性樹脂(A)と相溶る高分子である、
    少なくとも2種の高分子の組み合わせであり、その一つ前記結晶性熱可塑性樹脂(A)と異なる高分子であって、且つ前記結晶性熱可塑性樹脂(A)と完全相溶しない高分子であり、他の少なくとも一つが前記結晶性熱可塑性樹脂(A)と前記異高分子とを部分相溶又は完全相溶させる相溶化剤的高分子である、
    高沸点の有機物分子であり、200℃程度の高温下で高分子(A)と化学反応して高分子断裂反応を起こし得る有機物であること、及び
    高沸点の有機物分子又はやや低分子量の高分子(オリゴマー)であって、高温下で高分子(A)とよく相溶する物である
    から選択される一種である
    ことをを特徴とするCFRTP複合体の製造方法。
  7. 請求項1ないし6から選択される1項に記載のCFRTP複合体の製造方法において、
    前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、6ナイロン樹脂の場合、
    前記の射出接合工程に於ける射出温度が265℃以上、金型温度が130℃以上である
    ことを特徴とするCFRTP複合体の製造方法。
  8. 請求項1ないし6から選択される1項に記載のCFRTP複合体の製造方法において、
    前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、6ナイロン樹脂又は66ナイロン樹脂の場合、
    前記の結晶化速度抑制物質(C)が高沸点アミン系化合物である
    ことを特徴とするCFRTP複合体の製造方法。
  9. 請求項1ないし6から選択される1項に記載のCFRTP複合体の製造方法において、
    前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、ポリフェニレンサルファイド樹脂の場合、
    前記結晶化速度抑制物質(C)が、変性ポリオレフィン樹脂と何らかの相溶化性樹脂の組み合わせである
    ことを特徴とするCFRTP複合体の製造方法。
  10. 請求項1ないし5から選択される1項に記載のCFRTP成形品の製造方法に於いて、
    前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の場合、
    前記の結晶化速度抑制物質(B)が、ポリエーテルイミド樹脂である
    ことを特徴とするCFRTP複合体の製造方法。
  11. 結晶性熱可塑性樹脂(A)を主成分とする樹脂組成物の形成層が表面を覆い、その内部に前記結晶性熱可塑性樹脂(A)をマトリックス樹脂とするCFRTPが含まれる形状を基本的にとるCFRTP複合体であって、
    前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及びポリエーテルエーテルケトン樹脂から選択される種であり、且つ
    前記樹脂組成物の形成層が、射出成形機によって形成された層である
    ことを特徴とするCFRTP複合体。
  12. 20〜40nm径の凹部で全面が覆われたアルミ合金形状物上に、
    結晶性熱可塑性樹脂(A)を主成分とする樹脂組成物の形成層、前記結晶性熱可塑性樹脂(A)をマトリックス樹脂とするCFRTPが積層されているCFRTP複合体であって、
    前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及び、ポリエーテルエーテルケトン樹脂から選択される1種であり、且つ
    前記樹脂組成物の形成層が、射出成形機によって形成された層である
    ことを特徴とするCFRTP複合体。
  13. 0.8〜10μm周期の凹凸ある粗面で全面が覆われ、その粗面に5〜200nm周期の超微細凹凸面形状があり、且つ、その表面が金属酸化物又は金属リン酸化物の如きセラミック質薄層で覆われている金属形状物上に、
    結晶性熱可塑性樹脂(A)を主成分とする樹脂組成物の形成層、前記結晶性熱可塑性樹脂(A)をマトリックス樹脂とするFRTPが積層されたCFRTP複合体であって、
    前記結晶性熱可塑性樹脂(A)が、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、及び、ポリエーテルエーテルケトン樹脂から選択される1種であり、且つ
    前記樹脂組成物の形成層が、射出成形機によって形成された層である
    ことを特徴とするCFRTP複合体。
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