JP2016130368A - 容器用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】外観に優れる容器用鋼板を提供する。【解決手段】鋼板の表面の少なくとも一部をめっき層が覆うめっき鋼板と、上記めっき鋼板の上記めっき層側の表面上に配置された皮膜とを有する容器用鋼板であって、上記めっき層と上記皮膜との間に、錫酸化物を含有する錫酸化膜を有し、上記錫酸化物の還元に要する電気量が2.0〜5.0mC/cm2であり、上記皮膜が、Tiを含有し、上記めっき鋼板の片面あたりのTi換算の付着量が2.5〜30.0mg/m2であり、上記皮膜の表面からの深さ方向の原子濃度分布において、0価Snの原子濃度が上記めっき層の0価Snの原子濃度の25%と等しくなる深さL(単位:nm)と、上記皮膜の表面から深さLまでの0価Snの平均原子濃度A(単位:原子%)との積Xが、下記式(1)を満たす、容器用鋼板。0≦X(=L×A)≦60・・・(1)【選択図】なし

Description

本発明は、容器用鋼板およびその製造方法に関する。
缶等の容器に用いられる鋼板(容器用鋼板)として、例えば、特許文献1には、「金属板表面に無機成分を主体とする表面処理層…が形成されている…金属板であって、前記無機表面処理層が、…リン酸イオンを含有せずFと水酸基を含むTi或いはTi及びZrの酸化物からなり、…Tiの重量膜厚が5〜300mg/m2であることを特徴とする缶又は缶蓋用樹脂被覆表面処理金属板」が記載されている([請求項1])。
特許第4487651号公報
本発明者らは、特許文献1に記載された容器用鋼板の検討を行ったところ、塗料に対する密着性(以下、単に「密着性」ともいう)等については、比較的良好であることが分かった。
そこで、これらの容器用鋼板について、さらに検討を行った。具体的には、Tiを含有する皮膜(表面処理層)が配置される鋼板(金属板)として、Sn層やFe−Sn合金層などのSnを含むめっき層で表面が覆われためっき鋼板を用いた場合について、検討を行った。
その結果、皮膜中のTi量が多すぎる場合(例えば、皮膜のめっき鋼板の片面あたりのTi換算の付着量が5mg/m2以上である場合)には、皮膜が茶系色を呈したり、さらに、大気下での保管中に色調変化を起こして、より濃色の茶系色を呈したりすることが明らかとなった。このような色調の変化(茶系の呈色)は、容器用鋼板の外観を劣化させ、商品価値を著しく損なう。
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、外観に優れる容器用鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行なった結果、Sn層などのめっき層とTiを含有する皮膜との間に、特定の錫酸化膜を設けることで、皮膜の着色や経時的な着色濃化を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]を提供する。
[1]鋼板の表面の少なくとも一部をSn層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層のうちから選ばれた少なくとも1層を含むめっき層が覆うめっき鋼板と、上記めっき鋼板の上記めっき層側の表面上に配置された皮膜とを有する容器用鋼板であって、上記めっき層と上記皮膜との間に、錫酸化物を含有する錫酸化膜を有し、上記錫酸化物の還元に要する電気量が2.0〜5.0mC/cm2であり、上記皮膜が、Tiを含有し、上記めっき鋼板の片面あたりのTi換算の付着量が2.5〜30.0mg/m2である、容器用鋼板。
[2]上記皮膜が、Niを含有し、上記めっき鋼板の片面あたりのNi換算の付着量が0.1〜20.0mg/m2である、上記[1]に記載の容器用鋼板。
[3]上記皮膜の表面からの深さ方向の原子濃度分布において、0価Snの原子濃度が上記めっき層の0価Snの原子濃度の25%と等しくなる深さL(単位:nm)と、上記皮膜の表面から深さLまでの0価Snの平均原子濃度A(単位:原子%)との積Xが、下記式(1)を満たす、上記[1]または[2]に記載の容器用鋼板。
0≦X(=L×A)≦60・・・(1)
[4]上記[1]に記載の容器用鋼板を得る、容器用鋼板の製造方法であって、鋼板の表面の少なくとも一部をSn層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層のうちから選ばれた少なくとも1層を含むめっき層が覆うめっき鋼板を、酸化剤もしくは炭酸塩を含有する前処理液に浸漬する、または、上記前処理液中で陽極電解処理することにより、当該めっき鋼板のめっき層側の表面上に、上記錫酸化膜を形成する前処理工程と、Ti成分を含有する処理液中で、上記錫酸化膜を形成した上記めっき鋼板に陰極電解処理を施して、上記錫酸化膜の表面上に上記皮膜を形成する皮膜形成工程と、を備える容器用鋼板の製造方法。
[5]上記[2]に記載の容器用鋼板を得る、容器用鋼板の製造方法であって、鋼板の表面の少なくとも一部をSn層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層のうちから選ばれた少なくとも1層を含むめっき層が覆うめっき鋼板を、酸化剤もしくは炭酸塩を含有する前処理液に浸漬する、または、上記前処理液中で陽極電解処理することにより、当該めっき鋼板のめっき層側の表面上に、上記錫酸化膜を形成する前処理工程と、Ti成分およびNi成分を含有する処理液中で、上記錫酸化膜を形成した上記めっき鋼板に陰極電解処理を施して、上記錫酸化膜の表面上に上記皮膜を形成する皮膜形成工程と、を備える容器用鋼板の製造方法。
[6]上記酸化剤が、過塩素酸塩類、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の過酸化物、ならびに、過酸化水素またはその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、上記炭酸塩が、アルカリ金属の炭酸塩類である、上記[4]または[5]に記載の容器用鋼板の製造方法。
[7]上記めっき層中における上記鋼板片面当たりのSn付着量が、0.1〜15.0g/m2である、上記[4]〜[6]のいずれかに記載の容器用鋼板の製造方法。
本発明によれば、外観に優れる容器用鋼板を提供できる。
皮膜の表面からの深さ方向の原子濃度分布の例を示すグラフである。 XとL値との関係の一例を示すグラフである。
[容器用鋼板]
本発明の容器用鋼板は、Sn層やFe−Sn合金層などのSnを含むめっき層(以下、「錫めっき層」ともいう)を有するめっき鋼板と、めっき鋼板の錫めっき層側の表面上に配置されたTiを含有する皮膜とを有し、さらに、錫めっき層と皮膜との間に、特定量の錫酸化膜を有する。これにより、皮膜が有する良好な密着性等の特性を維持しつつ、皮膜の着色や経時的な着色濃化を抑制でき、容器用鋼板の外観が優れる。
このメカニズム(理由)は明らかではないが、以下のように推測される。すなわち、錫酸化膜を形成することで、錫めっき層から皮膜中への不純物(主にSn)ドープが抑制される。その結果、皮膜の主成分である酸化チタンのバンドギャップの縮小が抑制され、可視光吸収が低下する。これにより、茶系色の呈色が改善される。同様にして、大気放置時の経時的な着色濃化も改善される。
なお、上記メカニズムはいずれも推測であり、上記メカニズム以外であっても本発明の範囲内であるとする。
以下に、めっき鋼板、皮膜および錫酸化膜の具体的な態様について詳述する。まず、めっき鋼板の態様について詳述する。
〔めっき鋼板〕
めっき鋼板は、鋼板と、鋼板の表面の少なくとも一部を覆うSn層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層のうちから選ばれた少なくとも1層を含むめっき層とを有する。
素材の鋼板としては、一般的な缶用の鋼板を使用できる。めっき層は、連続層であってもよいし、不連続の島状であってもよい。また、めっき層は、鋼板の少なくとも片面に設けられていればよく、両面に設けられていてもよい。めっき層の形成は、含有される金属元素に応じた公知の方法で行える。
以下に、鋼板およびめっき層の好適態様について詳述する。
〈鋼板〉
鋼板の種類は特に限定されるものではない。通常、容器材料として使用される鋼板(例えば、低炭素鋼板、極低炭素鋼板)を用いることができる。この鋼板の製造方法、材質なども特に限定されるものではない。通常の鋼片製造工程から熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍、調質圧延等の工程を経て製造される。
鋼板は、必要に応じて、その表面にニッケル含有層(Ni含有層)を形成したものを用い、このNi含有層上に錫めっき層を形成してもよい。Ni含有層を有する鋼板を用いて錫めっきを施すことにより、島状Snを含む錫めっき層を形成できる。その結果、溶接性が向上する。
Ni含有層としてはニッケルが含まれていればよい。例えば、Niめっき層(Ni層)、Ni−Fe合金層などが挙げられる。
鋼板にNi含有層を付与する方法は特に限定されない。例えば、公知の電気めっきなどの方法が挙げられる。また、Ni含有層としてNi−Fe合金層を付与する場合、電気めっきなどにより鋼板表面上にNi付与後、焼鈍することにより、鋼中にNiを拡散させ、Ni−Fe合金層を形成できる。
Ni含有層中のNi付着量は特に限定されず、片面当たりのNi換算量として50〜2000mg/m2が好ましい。上記範囲内であれば、コスト面でも有利となる。
なお、Ni付着量は、蛍光X線により表面分析して測定できる。この場合、Ni付着量既知のNi付着サンプルを用いて、Ni付着量に関する検量線をあらかじめ特定しておき、同検量線を用いて相対的にNi付着量を特定する。ただし、後述する皮膜がNiを含む場合は、上記の蛍光X線による表面分析によりNi含有層中のNi付着量のみを測定することは困難である。その場合は、Ni含有層中のNi付着量は、蛍光X線により求めたNi付着量から後述する皮膜中に含まれるNi付着量を差し引いて求めることができる。
〈めっき層(錫めっき層)〉
めっき鋼板は、鋼板表面上にSnを含有するめっき層(錫めっき層)を有する。この錫めっき層は、鋼板の少なくとも片面に設けられていればよく、両面に設けられていてもよい。
錫めっき層中における鋼板片面当たりのSn付着量は、容器用鋼板の外観がより優れ、耐食性にも優れるという理由から、0.1〜15.0g/m2が好ましく、0.2〜15.0g/m2がより好ましく、加工性が優れる点で、1.0〜15.0g/m2がさらに好ましい。
なお、Sn付着量は、蛍光X線により表面分析して測定できる。蛍光X線の場合、Sn付着量既知のSn付着サンプルを用いて、Sn付着量に関する検量線をあらかじめ特定しておき、同検量線を用いて相対的にSn付着量を特定する。
錫めっき層は、鋼板表面上の少なくとも一部を覆う層であり、連続層であってもよいし、不連続の島状であってもよい。
錫めっき層としては、錫をめっきして得られる錫単体のめっき層であるSn層からなる錫めっき層のほか、錫めっき後通電加熱などにより錫を加熱溶融させて得られる、Sn層の最下層(Sn層/鋼板界面)にFe−Sn合金層が一部形成した錫めっき層、または、Sn層の全Snが合金化しFe−Sn合金層を形成した錫めっき層も含む。
また、錫めっき層としては、Ni含有層を表面に有する鋼板に対して錫めっきを行い、さらに通電加熱などにより錫を加熱溶融させて得られる、Sn層の最下層(Sn層/鋼板界面)にFe−Sn−Ni合金層、Fe−Sn合金層などが一部形成した錫めっき層、または、Sn層の全Snが合金化しFe−Sn−Ni合金層、Fe−Sn合金層を形成した錫めっき層も含む。
錫めっき層の製造方法としては、周知の方法(例えば、電気めっき法や溶融したSnに浸漬してめっきする方法)が挙げられる。
例えば、フェノールスルフォン酸錫めっき浴、メタンスルフォン酸錫めっき浴、またはハロゲン系錫めっき浴を用い、片面あたりの付着量が所定量となるように鋼板表面にSnを電気めっきする。その後、Snの融点(231.9℃)以上の温度で加熱溶融処理を行って、錫単体のめっき層(Sn層)の最下層またはSn層の全Snを合金化しFe−Sn合金層を形成した錫めっき層を製造できる。加熱溶融処理を省略した場合、錫単体のめっき層(Sn層)を製造できる。
また、鋼板がその表面上にNi含有層を有する場合、Ni含有層上に錫めっきを施して錫単体のめっき層(Sn層)を形成させ、加熱溶融処理を行うと、Sn層の最下層(Sn層/鋼板界面)またはSn層の全Snが合金化しFe−Sn−Ni合金層、Fe−Sn合金層などが形成される。
〔皮膜〕
次に、皮膜について説明する。皮膜は、概略的には、その成分として、Ti(チタニウム元素)を含有する皮膜であり、後述する処理液を用いて形成される。
皮膜は、めっき鋼板の片面あたりのTi換算の付着量(以下、「Ti付着量」ともいう)が2.5〜30.0mg/m2である。Ti付着量がこの範囲内であれば密着性が優れる。Ti付着量は、密着性がより優れるという理由から、3.0〜20.0mg/m2が好ましい。
また、皮膜は、密着性がより優れるという理由から、さらに、Ni(ニッケル元素)を含有するのが好ましい。この場合、めっき鋼板の片面あたりのNi換算の付着量(以下、「Ni付着量」ともいう)は、0.1〜20.0mg/m2が好ましく、0.4〜15.0mg/m2がより好ましく、0.4〜6.0mg/m2がさらに好ましい。
皮膜中のTi、Ni等は、それぞれ、各種のチタン化合物、ニッケル化合物として含まれ、これら化合物の種類や態様は特に限定されない。
なお、Ti付着量およびNi付着量は、蛍光X線による表面分析により測定する。
蛍光X線分析は、例えば、下記条件により実施される。
・装置:リガク社製蛍光X線分析装置System3270
・測定径:30mm
・測定雰囲気:真空
・スペクトル:Ti−Kα、Ni−Kα
・スリット:COARSE
・分光結晶:TAP
上記条件により測定した皮膜の蛍光X線分析のTi−Kα、Ni−Kαのピークカウント数を用いる。
ただし、めっき層がNiを含む場合(めっき層がNiを含まずに、単に、Ni含有層を有する鋼板を用いた場合も含む。以下同様。)は、上記の蛍光X線による表面分析により皮膜中に含まれるNi付着量のみを測定することは困難である。
その場合は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)や透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)による断面観察とグロー放電発光分析とを併用することで皮膜中に含まれるNi付着量とめっき層中に含まれるNi量とを区別できる。
具体的には、皮膜およびめっき層の断面を収束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)加工により露出させ、SEMまたはTEMによる断面観察から皮膜の厚さを算出する。次いで、グロー放電発光分析によるスパッタリング深さとスパッタリング時間との関係を求める。その後、皮膜厚さに相当するスパッタリング時間までのグロー放電発光分析のNi元素による発光カウント積算値を求める。このNi元素による発光カウント積算値から、あらかじめ求めておいた検量線を用いて、Ni付着量を求めることができる。
ここで、検量線は以下の方法で作成する。
まず、Niを含まないめっき層上にNiを含む皮膜を有する、Ni付着量の異なる複数のサンプルについてグロー放電発光分析し、Ni元素による発光カウントが検出されなくなるスパッタリング時間までのカウント積算値を求める。次いでこれらのサンプルのNi付着量を蛍光X線による表面分析により求める。このようにして、グロー放電発光分析によるNiカウント積算値とNi付着量との検量線を作成する。
皮膜の厚さは、特に限定されないが、10〜120nmが好ましく、20〜60nmがより好ましい。皮膜の厚さは、皮膜の断面を収束イオンビーム(FIB)加工により露出させ、透過型電子顕微鏡(TEM)観察による断面プロファイルから測定できる。
また、本発明の容器用鋼板は、皮膜の表面からの深さ方向の原子濃度分布において、0価Snの原子濃度がめっき層の0価Snの原子濃度の25%と等しくなる深さL(単位:nm)と、皮膜の表面から深さLまでの0価Snの平均原子濃度A(単位:原子%)との積Xが、下記式(1)を満たすことにより、外観がより優れる。
0≦X(=L×A)≦60・・・(1)
本発明において、原子濃度分布は、皮膜の表面から、アルゴンスパッタリングした後にX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)測定を行うことを繰り返して測定されたものとする。なお、皮膜の表面とは、皮膜のめっき鋼板側とは反対側の表面のことをいう。
図1は、皮膜の表面からの深さ方向の原子濃度分布の例を示すグラフであり、横軸は、皮膜の表面からの距離である深さ(単位:nm)を表し、縦軸は、原子濃度(単位:原子%)を表す。
図1に示されるような原子濃度分布において、0価Snの原子濃度が、めっき層(錫めっき層)の0価Snの原子濃度(バルク濃度)の25%と等しくなる深さ(皮膜の表面からの距離)をL(単位:nm)とし、皮膜の表面から深さLまでの0価Snの平均原子濃度(単位:原子%)をAとした場合に、両者の積X(=L×A)が、上述した式(1)を満たすことが好ましい。
ここで、バルク濃度の25%と等しくなる深さL(単位:nm)を採用した理由は、皮膜の表面から深くスパッタするほどめっき層(錫めっき層)からの情報が混在し、反対に、皮膜表面のごく近傍では皮膜の深さ方向の情報が反映されにくいからである。
このような深さLに、深さLまでの0価Snの平均原子濃度Aを乗じて得られるXは、めっき層(錫めっき層)よりも確実に上層側に存在し、かつ、皮膜の中に存在する0価Snの含有量を示す指標となる。
本発明者らは、容器用鋼板の試験材を作製し、作製した試験材について、X(=L×A)を求め、次いで、明度を表すL値を日本電色工業社製SQ−2000を用いて測定し、グラフにプロットした。
図2は、XとL値との関係の一例を示すグラフであり、横軸は、Xを表し、縦軸はL値を表す。図2のグラフから、XとL値とは良好な相関関係を示し、Xの値が大きくなるほど、L値は減少することが分かる。
ここで、L値が大きいほど、皮膜の着色が抑制されている(外観が良好である)と評価し得るものであり、例えば、L値は70以上であることが好ましい。このため、Xは、60以下が好ましく、38以下がより好ましい。
なお、Xが0である場合は、皮膜中に0価Snが含まれていないことを表し、上述した推定メカニズムによれば、皮膜の着色が抑制され、外観が良好な状態となる。したがって、Xの下限値は、理論上は0となる。もっとも、アルゴンスパッタリングにより表面から順次掘り進めていくXPS測定では、測定を進めるうちに、多少なりともバルクの0価Snの影響が出てくる。このため、Xが0を示すことは実際にはなく、5未満となることはない。したがって、Xは5以上が好ましく、10以上がより好ましい。
上述したように、Xを求める際の原子濃度分布は、皮膜の表面から、アルゴンスパッタリングした後にXPS測定を行うことを繰り返して測定される。
XPS測定に用いるXPS装置は、ULVAC−PHI社製のQuanteraSXMを使用し、分析条件は、X線源モノクロAl−Kα、電圧15kV、出力25W、測定領域100μmφとし、帯電中和は、電子線とArイオン照射との同時照射とし、スパッタ条件は、Arイオンによりスパッタレート1nm/分(SiO2スパッタレート換算)とする。
XPS測定に際しては、C1sスペクトルのC−C結合由来ピークが284.8eVとなるように各元素スペクトルの帯電補正(シフト補正)を行い、原子濃度は、ナロースキャンにおける各元素ピークの面積強度と、各元素の相対感度係数とを用いて算出する。
なお、0価Snの原子濃度は、PHIのハンドブックおよびNISTのデータベースを参照し、実測の検出傾向から、Sn3d5/2スペクトルにおける0価Sn由来ピークおよびSn酸化物由来ピークの検出エネルギー値の代表値を、それぞれ、484.8eVおよび486.8eVとして、ピーク分離を行って算出される値を用いる。
〔錫酸化膜〕
本発明の容器用鋼板は、上述しためっき層と皮膜との間に、錫酸化物を含有する錫酸化膜を有する。そして、この錫酸化膜の錫酸化物の還元に要する電気量(以下、「還元電気量」ともいう)が2.0〜5.0mC/cm2である。
本発明の容器用鋼板においては、このような錫酸化膜を有することにより、上述した皮膜の着色や経時的な着色濃化を抑制でき、外観に優れる。
一方、還元電気量が2.0mC/cm2未満であると、錫めっき層から皮膜中へのSnドープを抑制する効果が不十分となり、外観に劣る。また、還元電気量が5.0mC/cm2を超えると、錫めっき層から皮膜中へのSnドープは抑制し得るが、錫酸化膜そのものの呈色により、やはり、外観に劣る。
錫酸化膜の還元電気量は、皮膜の着色や経時的な着色濃化をより抑制でき、容器用鋼板の外観がより優れるという理由から、3.0〜5.0mC/cm2が好ましく、3.6〜5.0mC/cm2がより好ましい。
また、錫酸化膜の還元電気量が5.0mC/cm2以下であれば、錫酸化膜内での凝集破壊による密着性の低下が生じにくくなるため好ましい。
錫酸化物の還元に要する電気量は、窒素ガスのバブリング等の手段によって溶存酸素を除去した0.001mol/Lの臭化水素酸水溶液中で0.05mA/cm2の定電流で本発明の容器用鋼板を陰極電解し、錫酸化物を還元除去する時間と電流との積から求めることができる。
なお、皮膜がNiを含有する場合には、上述の定電流法では水素発生電流が共存し、錫酸化物の還元電流を直接測定できない。そのため、浸漬電位から−0.7V(vs.Ag/AgCl)の電位まで電位を掃引する過程で得られる1回目の還元電流曲線と、その後、同じく浸漬電位から−0.7V(vs.Ag/AgCl)の電位まで電位を掃引する2回目の還元電流曲線との差分に相当する電気量から求めることができる。
[容器用鋼板の製造方法]
上述した本発明の容器用鋼板を製造する方法としては、例えば、後述する前処理工程および皮膜形成工程をこの順に備える方法(以下、便宜的に「本発明の製造方法」ともいう)が好適に挙げられる。以下、このような本発明の製造方法について説明を行う。
〔前処理工程〕
本発明の製造方法は、後述する皮膜形成工程の前に、前処理工程を備える。前処理工程は、酸化剤もしくは炭酸塩を含有する前処理液に、めっき鋼板を浸漬する、または、上記前処理液中で陽極電解処理することにより、当該めっき鋼板のめっき層側の表面上に、上述した錫酸化膜を形成する工程である。
めっき鋼板を上記前処理液に浸漬する、または、上記前処理液中で陽極電解処理することで、めっき鋼板が有するSnを含むめっき層の一部が、前処理液中の酸化剤もしくは炭酸塩によって酸化されて、錫酸化物を含有する錫酸化膜が形成される。
前処理液に含有される酸化剤または炭酸塩は特に限定されない。
酸化剤としては、従来公知の酸化剤を用いることができる。例えば、二酸化塩素;過塩素酸、過ヨウ素酸などの過ハロゲン酸;過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸アンモニウムなどの過塩素酸塩類;亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムなどの亜塩素酸塩類;次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムなどの次亜塩素酸塩類;臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウムなどの臭素酸塩類;ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウムなどのヨウ素酸塩類;過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウムなどの過ヨウ素酸塩類;過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム、過酸化バリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の過酸化物;過酸化水素、過炭酸ナトリウムなどの過酸化水素またはその誘導体;等が挙げられる。
また、炭酸塩としては、従来公知の水溶性の炭酸塩を用いることができる。例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩類が挙げられる。
これらのうち、錫酸化膜を鋼板上に連続的かつ緻密に形成できるという理由から、酸化剤としては、過塩素酸塩類、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の過酸化物、過酸化水素またはその誘導体が好ましく、炭酸塩としては、炭酸ナトリウムが好ましい。
また、前処理液中の酸化剤または炭酸塩の含有量は、錫酸化膜を鋼板上に連続的かつ緻密に形成できるという理由から、5〜30g/Lが好ましく、10〜20g/Lがより好ましい。
前処理工程において、処理を実施する際の前処理液の液温は、形成される錫酸化膜量が適量となって、皮膜の色調変化をより抑制できるという理由から、20〜80℃が好ましく、40〜60℃がより好ましい。
また、前処理液中への浸漬時間は、液温と同様の理由から、0.1〜5秒が好ましく、0.2〜2秒がより好ましい。
なお、前処理液への浸漬後においては、必要に応じて、水洗処理を施してもよい。
また、前処理液中での電解条件は、液温と同様の理由から、鋼板側が陽極になるよう電解し、電解電流密度は1.0〜10.0A/dmが好ましく、3.0〜6.0A/dmがより好ましい。通電時間は、0.1〜5秒が好ましく、0.2〜2秒がより好ましい。
前処理液中での電解処理後においては、必要に応じて、水洗処理を施してもよい。
〔皮膜形成工程〕
皮膜形成工程は、前処理工程で形成された錫酸化膜の表面上に、上述した皮膜を形成する工程であって、後述する処理液中で錫酸化膜を形成しためっき鋼板に陰極電解処理を施す工程である。以下に、使用される処理液や陰極電解処理の条件などについて詳述する。
皮膜形成工程で使用される処理液は、上記皮膜にTi(チタニウム元素)を供給するためのTi成分(Ti化合物)を含有する。このTi成分としては、特に限定されない。例えば、チタンアルコキシド、シュウ酸チタニルアンモニウム、シュウ酸チタニルカリウム二水和物、硫酸チタン、チタンラクテート、チタンフッ化水素酸(H2TiF6)および/またはその塩などが挙げられる。なお、チタンフッ化水素酸の塩としては、例えば、六フッ化チタン酸カリウム(K2TiF6)、六フッ化チタン酸ナトリウム(Na2TiF6)、六フッ化チタン酸アンモニウム((NH42TiF6)等が挙げられる。
これらのうち、処理液の安定性、入手の容易性などの観点から、チタンフッ化水素酸および/またはその塩が好ましい。
処理液中のTi成分の含有量は、チタンフッ化水素酸および/またはその塩を使用する場合、六フッ化チタン酸イオン(TiF6 2-)に換算した量が、3.0〜15.0g/Lであるのが好ましく、5.0〜10.0g/Lがより好ましい。
また、上記皮膜がNi(ニッケル元素)を含有する場合には、皮膜形成工程で使用される処理液は、上記皮膜にNi(ニッケル元素)を供給するためのNi成分(Ni化合物)を含有する。このNi成分としては、特に限定されない。例えば、硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル(NiCl2)、塩化ニッケル六水和物などが挙げられる。
処理液中のNi成分の含有量は、Niイオン(Ni2+)に換算した量が、0.1〜3.0g/Lであるのが好ましく、0.3〜1.0g/Lがより好ましい。
なお、処理液中の溶媒としては、通常水が使用されるが、有機溶媒を併用してもよい。
処理液のpHは、特に限定されないが、pH2.0〜5.0が好ましい。この範囲内であれば、処理時間を短くでき、かつ、処理液の安定性に優れる。pHの調整には公知の酸成分(例えば、リン酸、硫酸)・アルカリ成分(例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア水)を使用できる。
また、処理液には、必要に応じて、ラウリル硫酸ナトリウム、アセチレングリコールなどの界面活性剤が含まれていてもよい。また、付着挙動の経時的な安定性の観点から、処理液には、ピロリン酸塩などの縮合リン酸塩が含まれていてもよい。
さらに、本発明の処理液は、伝導助剤を含有していてもよい。これにより、本発明の容器用鋼板の高速操業性が優れる。伝導助剤としては、例えば、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなどの硫酸塩;硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウムなどの硝酸塩;塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどの塩化物塩;等が挙げられる。
本発明の処理液における伝導助剤の含有量は、0.01〜1mol/Lが好ましく、0.02〜0.5mol/Lがより好ましい。
皮膜形成工程において処理を実施する際の処理液の液温は、20〜80℃が好ましい。この範囲であれば、形成される皮膜中のTi等が適量となって、密着性が優れる。
皮膜形成工程において、陰極電解処理を実施する際の電解電流密度は、形成される皮膜中のTi等が適量となって、密着性が優れるという理由から、1.0〜20.0A/dm2が好ましい。
このとき、陰極電解処理の通電時間は、電解電流密度と同様の理由から、0.1〜5秒が好ましく、0.3〜2秒がより好ましい。なお、陰極電解処理の際の電気量密度は、電流密度と通電時間との積であり、適宜設定される。
なお、皮膜表面の不純物を除去する観点から、陰極電解処理の後、得られた鋼板の水洗処理を行うのが好ましい。
水洗処理の方法は特に限定されない。例えば、連続ラインで製造を行う場合、皮膜処理タンクの後に水洗タンクを設け、皮膜処理後に連続して水に浸漬する方法などが挙げられる。水洗処理に用いる水の温度は、40〜90℃が好ましい。
水洗時間は、水洗処理による効果がより優れるという理由から、0.5秒超が好ましく、1.0〜5.0秒が好ましい。
水洗処理に代えて、または、水洗処理の後に、乾燥を行ってもよい。乾燥の際の温度および方式は特に限定されず、例えば、通常のドライヤーや電気炉乾燥方式が適用できる。乾燥処理の際の温度としては、100℃以下が好ましい。上記範囲内であれば、皮膜の酸化を抑制でき、皮膜組成の安定性が保たれる。なお、下限は特に限定されないが、通常室温程度である。
本発明の製造方法によって得られる本発明の容器用鋼板は、DI缶、食缶、飲料缶など種々の容器の製造に使用される。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
〈めっき鋼板の製造〉
以下の2つの方法[(K−1)および(K−2)]によって、めっき鋼板を製造した。
(K−1)
板厚0.22mmの鋼板(T4原板)について電解脱脂と酸洗とを行い、その後、第3表に示す片面当たりのSn付着量の錫めっきを施した。引き続き、Snの融点以上の温度で加熱溶融処理を施し、Fe−Sn合金層とその上層にSn層とを形成し、めっき鋼板を製造した。このようにして、下層側から順に、Fe−Sn合金層/Sn層からなるめっき層が両面に形成された。
(K−2)
板厚0.22mmの鋼板(T4原板)を電解脱脂し、ワット浴を用いて第3表に示す片面当たりのNi付着量でニッケルめっき層を形成後、10vol.%H2+90vol.%N2雰囲気中にて700℃で焼鈍してニッケルめっきを拡散浸透させることによりNi−Fe合金層(Ni含有層)(第3表にNi付着量を示す)を両面に形成した。
引き続き、上記表層にNi含有層を有する鋼板を、錫めっき浴を用い、第3表に示す片面当たりのSn付着量の錫めっきを施した。その後、Snの融点以上の温度で加熱溶融処理を施し、Fe−Sn−Ni合金層とその上層に不連続のSn層とを形成し、めっき鋼板を製造した。このようにして、下層側から順に、Ni−Fe合金層/Fe−Sn−Ni合金層/Sn層からなるめっき層が両面に形成された。
〈前処理工程(錫酸化膜の形成)〉
製造しためっき鋼板を、水洗した後に、第1表(その1)に示す組成の前処理液(溶媒:水)中に、第2表に示す処理温度(液温)、ならびに、浸漬時間もしくは陽極電解条件により、両面に錫酸化膜を形成した。なお、前処理工程によって錫酸化膜を形成しなかった場合には、第2表に「−」を記載した。
〈皮膜形成工程〉
次いで、前処理工程を経ためっき鋼板を水洗し、第1表(その2)に示す組成およびpHの処理液(溶媒:水)を用い、第2表に示す処理温度(液温)および電解条件(電流密度、通電時間、電気量密度)で陰極電解処理を施した。その後、水洗処理して、ブロアを用いて室温で乾燥を行い、皮膜を両面に形成した。
その後、作製した容器用鋼板の試験材について、以下の方法で、外観および密着性を評価した。各成分量、および、評価結果を第3表にまとめて示す。
錫酸化膜の還元電気量、ならびに、皮膜のTi付着量およびNi付着量は、上述した方法により測定ないし計算した。
〈外観〉
《初期色調》
作製した直後(作製後60分以内)の容器用鋼板について、皮膜の茶系色の呈色について評価した。具体的には、L値を、日本電色工業社製SQ−2000を用いて測定し、下記基準で評価した。◎または○であれば、皮膜の着色が抑制され、外観に優れるものとして評価できる。
◎:L値75以上
○:L値70以上75未満
△:L値60以上70未満
×:L値60未満
《耐変色性》
上記のようにして色調を評価した容器用鋼板について、50℃、相対湿度98%の恒温恒湿槽内に72時間放置した後、初期色調と同様にして、L値を測定し、下記基準で評価した。◎または○であれば、経時的な着色濃化が抑制されて、外観に優れるものとして評価できる。
◎:初期(作製後60分以内)からのL値低下が3未満
○:初期(作製後60分以内)からのL値低下が3以上7未満
△:初期(作製後60分以内)からのL値低下が7以上12未満
×:初期(作製後60分以内)からのL値低下が12以上
〈密着性〉
作製した容器用鋼板(幅100mm×長さ150mm)の表面に、エポキシフェノール系塗料を塗布し、210℃で10分間の焼付を行い、付着量が50mg/dm2の塗装を施した。次いで、上記塗装を施した、同一の条件で作製した2枚の容器用鋼板を、ナイロン接着フィルムを挟んで塗装面が向かい合わせになるように積層した後、圧力2.94×105Pa、温度190℃、圧着時間30秒の圧着条件下で貼り合わせた。その後、これを5mm幅の試験片に分割した。分割した試験片の2枚の容器用鋼板を引張試験機で引き剥がし、引き剥がしたときの引張強度を測定した。各試験材で、2つの試験片の平均値を下記基準で評価した。実用上、結果が○または△であれば、密着性に優れるものとして評価できる。
○:2.0kgf以上
△:1.0kgf以上2.0kgf未満
×:1.0kgf未満
上記第1表〜第3表に示す結果から明らかなように、本発明例1〜51の容器用鋼板は、いずれも外観が優れることが確認された。
なかでも、Xの値が38以下である本発明例は、Xの値が39以上60以下である本発明例とくらべて、外観がより良好であった。
これに対して、錫酸化膜の還元電気量が2.0mC/cm2未満または5.0mC/cm2超である比較例1〜4の容器用鋼板は、いずれも外観に劣ることが確認された。
なお、錫酸化膜の還元電気量が5.0mC/cm2超である比較例2〜4の容器用鋼板は、錫酸化膜によって、錫めっき層から皮膜中へのSnドープは抑制されている(そのため、Xの値が比較的小さい)が、錫酸化膜そのものの呈色のため、L値が低下し、外観が劣っているものと考えられる。

Claims (6)

  1. 鋼板の表面の少なくとも一部をSn層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層のうちから選ばれた少なくとも1層を含むめっき層が覆うめっき鋼板と、前記めっき鋼板の前記めっき層側の表面上に配置された皮膜とを有する容器用鋼板であって、
    前記めっき層と前記皮膜との間に、錫酸化物を含有する錫酸化膜を有し、前記錫酸化物の還元に要する電気量が2.0〜5.0mC/cm2であり、
    前記皮膜が、Tiを含有し、前記めっき鋼板の片面あたりのTi換算の付着量が2.5〜30.0mg/m2であり、
    前記皮膜の表面からの深さ方向の原子濃度分布において、0価Snの原子濃度が前記めっき層の0価Snの原子濃度の25%と等しくなる深さL(単位:nm)と、前記皮膜の表面から深さLまでの0価Snの平均原子濃度A(単位:原子%)との積Xが、下記式(1)を満たす、容器用鋼板。
    0≦X(=L×A)≦60・・・(1)
  2. 前記皮膜が、Niを含有し、前記めっき鋼板の片面あたりのNi換算の付着量が0.1〜20.0mg/m2である、請求項1に記載の容器用鋼板。
  3. 請求項1に記載の容器用鋼板を得る、容器用鋼板の製造方法であって、
    鋼板の表面の少なくとも一部をSn層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層のうちから選ばれた少なくとも1層を含むめっき層が覆うめっき鋼板を、酸化剤もしくは炭酸塩を含有する前処理液に浸漬する、または、前記前処理液中で陽極電解処理することにより、当該めっき鋼板のめっき層側の表面上に、前記錫酸化膜を形成する前処理工程と、
    Ti成分を含有する処理液中で、前記錫酸化膜を形成した前記めっき鋼板に陰極電解処理を施して、前記錫酸化膜の表面上に前記皮膜を形成する皮膜形成工程と、
    を備える容器用鋼板の製造方法。
  4. 請求項2に記載の容器用鋼板を得る、容器用鋼板の製造方法であって、
    鋼板の表面の少なくとも一部をSn層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層のうちから選ばれた少なくとも1層を含むめっき層が覆うめっき鋼板を、酸化剤もしくは炭酸塩を含有する前処理液に浸漬する、または、前記前処理液中で陽極電解処理することにより、当該めっき鋼板のめっき層側の表面上に、前記錫酸化膜を形成する前処理工程と、
    Ti成分およびNi成分を含有する処理液中で、前記錫酸化膜を形成した前記めっき鋼板に陰極電解処理を施して、前記錫酸化膜の表面上に前記皮膜を形成する皮膜形成工程と、
    を備える容器用鋼板の製造方法。
  5. 前記酸化剤が、過塩素酸塩類、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の過酸化物、ならびに、過酸化水素またはその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
    前記炭酸塩が、アルカリ金属の炭酸塩類である、請求項3または4に記載の容器用鋼板の製造方法。
  6. 前記めっき層中における前記鋼板片面当たりのSn付着量が、0.1〜15.0g/m2である、請求項3〜5のいずれか1項に記載の容器用鋼板の製造方法。
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