JP2016107530A - 撥水材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】撥水性又は超撥水性を示し、かつ、長期間に渡って防霜性を維持することが可能な新規な撥水材及びその製造方法を提供すること。【解決手段】撥水材は、基材と、前記基材の表面を被覆する疎水性分子からなる疎水膜とを備えている。前記疎水膜は、その表面んいおける任意の100μm四方の領域において、直径が1μm以上の前記疎水性分子からなる凝集粒子が占める面積の割合が2.0%以下である。さらに、前記疎水性分子の少なくとも一部は、前記基材の表面と化学結合しているのが好ましい。このような撥水材は、基材表面を疎水性分子で被覆し、疎水膜被覆基材の表面を溶媒で洗浄し、必要に応じて基材−疎水性分子間の化学結合を強化する処理を施すことにより得られる。【選択図】図7
Description
本発明は、撥水材及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、基材表面に撥水層又は超撥水層が形成されており、かつ、防霜性に優れた撥水材及びその製造方法に関する。
超撥水とは、150°以上の接触角で材料表面に水滴が接する現象をいう。ある材料の表面が超撥水性を有する場合、材料表面上の水滴は球状になって表面を滑落する。このような超撥水性を備えた材料は、洗浄コストの削減が求められる車両のボディ、水の抵抗の軽減が求められる高速船の船体、防汚が求められる家屋の外壁、防水性が求められる雨具や衣類、着霜防止が求められる熱交換器や寒冷地のアンテナなどへの応用が検討されている。
このような超撥水性を備えた撥水材に関し、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、
(1)基材表面に、複数の板状粒子の集合体からなる花弁状構造と、柱状粒子からなる柱状構造とを備えた微細凹凸構造を形成し、
(2)前記微細凹凸構造の表面を疎水性分子で被覆する
撥水材の製造方法が開示されている。
同文献には、花弁状構造及び柱状構造を備えた微細凹凸構造の表面を疎水性分子で被覆すると、微細な花弁状構造のみを備えた基材の表面を疎水性分子で被覆した場合に比べて、高い超撥水性を示す点が記載されている。
例えば、特許文献1には、
(1)基材表面に、複数の板状粒子の集合体からなる花弁状構造と、柱状粒子からなる柱状構造とを備えた微細凹凸構造を形成し、
(2)前記微細凹凸構造の表面を疎水性分子で被覆する
撥水材の製造方法が開示されている。
同文献には、花弁状構造及び柱状構造を備えた微細凹凸構造の表面を疎水性分子で被覆すると、微細な花弁状構造のみを備えた基材の表面を疎水性分子で被覆した場合に比べて、高い超撥水性を示す点が記載されている。
特許文献2には、
(1)アルミニウム製の基材を熱水又は水蒸気に接触させることにより、基材の表面にベーマイトを形成し、
(2)ベーマイトが形成された基材をアルキルシランまたはフッ化アルキルシランで被覆し、
(3)アルキルシランまたはフッ化アルキルシラン被覆された基材を100℃〜300℃の温度に加熱する
撥水性基材の製造方法が開示されている。
同文献には、このような方法により、基材の表面に発生する凝縮水に対して、良好な撥水性能を発揮する撥水性基材が得られる点が記載されている。
(1)アルミニウム製の基材を熱水又は水蒸気に接触させることにより、基材の表面にベーマイトを形成し、
(2)ベーマイトが形成された基材をアルキルシランまたはフッ化アルキルシランで被覆し、
(3)アルキルシランまたはフッ化アルキルシラン被覆された基材を100℃〜300℃の温度に加熱する
撥水性基材の製造方法が開示されている。
同文献には、このような方法により、基材の表面に発生する凝縮水に対して、良好な撥水性能を発揮する撥水性基材が得られる点が記載されている。
特許文献3には、
(1)アルミニウム鋳物からなる固定スクロール及び旋回スクロール表面に陽極酸化処理を施し、
(2)陽極酸化層の細孔内にポリテトラフルオロエチレンを含浸させ、
(3)アルミニウム鋳物を炭酸ナトリウム水溶液の沸騰水に浸漬することにより、陽極酸化層の表面に微細な凹凸を有するアルミニウム水和物層を形成し、
(4)アルミニウム水和物層の表面にフッ素化合物層を形成した
スクロール真空ポンプが開示されている。
同文献には、このような処理によってアルミニウム鋳物の表面が超撥水性となる点が記載されている。
(1)アルミニウム鋳物からなる固定スクロール及び旋回スクロール表面に陽極酸化処理を施し、
(2)陽極酸化層の細孔内にポリテトラフルオロエチレンを含浸させ、
(3)アルミニウム鋳物を炭酸ナトリウム水溶液の沸騰水に浸漬することにより、陽極酸化層の表面に微細な凹凸を有するアルミニウム水和物層を形成し、
(4)アルミニウム水和物層の表面にフッ素化合物層を形成した
スクロール真空ポンプが開示されている。
同文献には、このような処理によってアルミニウム鋳物の表面が超撥水性となる点が記載されている。
さらに、特許文献4には、熱水処理した金属アルミ箔の表面に、直接、フッ素を含まないヘキシルトリメトキシシランの縮合物若しくはフッ素を含むヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランの縮合物の被膜を設けた超撥水アルミ箔が開示されている。
同文献には、
(1)金属アルミ箔を熱水処理すると、金属アルミ箔上にナノシートが垂直方向に成長する点、及び、
(2)このような金属アルミ箔上にヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランをコーティングすると超撥水性を示す点、
が記載されている。
同文献には、
(1)金属アルミ箔を熱水処理すると、金属アルミ箔上にナノシートが垂直方向に成長する点、及び、
(2)このような金属アルミ箔上にヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランをコーティングすると超撥水性を示す点、
が記載されている。
特許文献1〜4に記載されているように、基材表面に微細な凹凸を形成し、微細な凹凸表面を撥水性分子で被覆すると、高い撥水性が得られる。しかしながら、従来の撥水材は、撥水層が流水に曝されると、霜が付きやすくなるという問題があった。また、撥水性又は超撥水性を示すだけでなく、長期間に渡って防霜性を維持することが可能な撥水材が提案された例は、従来にはない。
本発明が解決しようとする課題は、撥水性又は超撥水性を示し、かつ、長期間に渡って防霜性を維持することが可能な新規な撥水材及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る撥水材は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記撥水材は、
基材と、
前記基材の表面を被覆する疎水性分子からなる疎水膜と
を備えている。
(2)前記疎水膜は、その表面における任意の100μm四方の領域において、直径が1μm以上の前記疎水性分子からなる凝集粒子が占める面積の割合が2.0%以下である。
但し、「直径」とは、飛行時間型二次イオン質量分析装置により得られる二次イオン像により測定される値をいう。
本発明に係る撥水材は、以下の構成をさらに備えているものが好ましい。
(3)前記疎水性分子の少なくとも一部は、前記基材の表面と化学結合している。
(1)前記撥水材は、
基材と、
前記基材の表面を被覆する疎水性分子からなる疎水膜と
を備えている。
(2)前記疎水膜は、その表面における任意の100μm四方の領域において、直径が1μm以上の前記疎水性分子からなる凝集粒子が占める面積の割合が2.0%以下である。
但し、「直径」とは、飛行時間型二次イオン質量分析装置により得られる二次イオン像により測定される値をいう。
本発明に係る撥水材は、以下の構成をさらに備えているものが好ましい。
(3)前記疎水性分子の少なくとも一部は、前記基材の表面と化学結合している。
本発明に係る撥水材の製造方法は、以下の工程を備えていることを要旨とする。
(1)基材の表面を、前記基材の表面と化学結合を形成可能な疎水性分子をからなる疎水膜で被覆し、疎水膜被覆基材を作製する被覆工程。
(2)前記疎水性分子を溶解可能な溶媒を用いて、前記疎水膜被覆基材の表面を洗浄し、本発明に係る撥水材を得る洗浄工程。
本発明に係る撥水材の製造方法は、以下の工程をさらに備えているものが好ましい。
(3)前記基材の表面と前記疎水性分子との間の前記化学結合を強化する処理を行う結合強化処理工程。
(1)基材の表面を、前記基材の表面と化学結合を形成可能な疎水性分子をからなる疎水膜で被覆し、疎水膜被覆基材を作製する被覆工程。
(2)前記疎水性分子を溶解可能な溶媒を用いて、前記疎水膜被覆基材の表面を洗浄し、本発明に係る撥水材を得る洗浄工程。
本発明に係る撥水材の製造方法は、以下の工程をさらに備えているものが好ましい。
(3)前記基材の表面と前記疎水性分子との間の前記化学結合を強化する処理を行う結合強化処理工程。
基材表面を疎水膜で被覆した後、必要に応じて結合強化処理(例えば、熱処理)を行う前に疎水膜被覆基材の表面を溶媒で洗浄すると、表面が撥水性又は超撥水性を示すだけでなく、長期間に渡って防霜性を維持することができる。これは、
(1)疎水膜に存在する凝集粒子が防霜性を低下させる原因となるため、及び、
(2)結合強化処理前の溶媒洗浄により、基材表面から凝集粒子が除去されるため
と考えられる。
(1)疎水膜に存在する凝集粒子が防霜性を低下させる原因となるため、及び、
(2)結合強化処理前の溶媒洗浄により、基材表面から凝集粒子が除去されるため
と考えられる。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 撥水材]
本発明に係る撥水材は、以下の構成を備えている。
(1)前記撥水材は、
基材と、
前記基材の表面を被覆する疎水性分子からなる疎水膜と
を備えている。
(2)前記疎水膜は、その表面における任意の100μm四方の領域において、直径が1μm以上の前記疎水性分子からなる凝集粒子の面積の割合が2.0%以下である。
但し、「直径」とは、飛行時間型二次イオン質量分析装置により得られる二次イオン像により測定される値をいう。
本発明に係る撥水材は、さらに以下の構成を備えているものが好ましい。
(3)前記疎水性分子の少なくとも一部は、前記基材の表面と化学結合している。
[1. 撥水材]
本発明に係る撥水材は、以下の構成を備えている。
(1)前記撥水材は、
基材と、
前記基材の表面を被覆する疎水性分子からなる疎水膜と
を備えている。
(2)前記疎水膜は、その表面における任意の100μm四方の領域において、直径が1μm以上の前記疎水性分子からなる凝集粒子の面積の割合が2.0%以下である。
但し、「直径」とは、飛行時間型二次イオン質量分析装置により得られる二次イオン像により測定される値をいう。
本発明に係る撥水材は、さらに以下の構成を備えているものが好ましい。
(3)前記疎水性分子の少なくとも一部は、前記基材の表面と化学結合している。
[1.1. 基材]
[1.1.1. 形状]
基材の形状は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。基材の形状としては、例えば、板、棒、管、ハニカム、繊維、箔、粉末、多孔体などがある。
基材の表面は、平滑面であっても良く、あるいは、その表面に微細凹凸構造が形成されていても良い。基材の表面に微細凹凸構造を形成すると、平滑面に比べて高い撥水性が得られる。微細凹凸構造の詳細については、後述する。
[1.1.1. 形状]
基材の形状は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。基材の形状としては、例えば、板、棒、管、ハニカム、繊維、箔、粉末、多孔体などがある。
基材の表面は、平滑面であっても良く、あるいは、その表面に微細凹凸構造が形成されていても良い。基材の表面に微細凹凸構造を形成すると、平滑面に比べて高い撥水性が得られる。微細凹凸構造の詳細については、後述する。
[1.1.2. 化学結合]
基材は、少なくともその表面が疎水性分子と化学結合を形成可能な材料からなるものであれば良い。基材は、表面のみがそのような材料からなるものでも良く、あるいは、全体がそのような材料からなるものでも良い。
「化学結合」とは、基材表面を疎水膜で被覆した時に、溶媒洗浄により疎水膜が完全に脱離せず、かつ、溶媒洗浄により凝集粒子を選択的に除去することが可能な程度の結合力を持つ結合をいう。化学結合は、吸着のような弱い結合でも良く、あるいは、共有結合のような強い結合でも良い。さらに、化学結合は、基材表面に疎水膜を形成した後、結合強化処理によりその結合力を強化することが可能なものが好ましい。
例えば、後述する極性官能基を持つ疎水性分子を基材表面に塗布した場合、一部は基材表面に弱く結合(吸着)し、他の一部は極性官能基を介して基材表面に強く結合(共有結合)すると考えられる。また、このような撥水材に対して結合強化処理を行うと、強い結合の割合が増加する。
基材は、少なくともその表面が疎水性分子と化学結合を形成可能な材料からなるものであれば良い。基材は、表面のみがそのような材料からなるものでも良く、あるいは、全体がそのような材料からなるものでも良い。
「化学結合」とは、基材表面を疎水膜で被覆した時に、溶媒洗浄により疎水膜が完全に脱離せず、かつ、溶媒洗浄により凝集粒子を選択的に除去することが可能な程度の結合力を持つ結合をいう。化学結合は、吸着のような弱い結合でも良く、あるいは、共有結合のような強い結合でも良い。さらに、化学結合は、基材表面に疎水膜を形成した後、結合強化処理によりその結合力を強化することが可能なものが好ましい。
例えば、後述する極性官能基を持つ疎水性分子を基材表面に塗布した場合、一部は基材表面に弱く結合(吸着)し、他の一部は極性官能基を介して基材表面に強く結合(共有結合)すると考えられる。また、このような撥水材に対して結合強化処理を行うと、強い結合の割合が増加する。
基材−疎水性分子間の化学結合の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な結合を選択することができる。基材−疎水性分子間に容易に化学結合を形成するためには、
(a)基材の表面が、金属酸化物、又は表面に極性官能基(A)を持つ材料からなり、
(b)疎水性分子が、極性官能基(B)を持つ分子からなる
のが好ましい。この場合、極性官能基(A)と極性官能基(B)は、同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。
これらの疎水性分子と基材の表面とを強固に結合させるには、熱処理や触媒を利用した化学反応によって共有結合化を促進させた方が良い。
(a)基材の表面が、金属酸化物、又は表面に極性官能基(A)を持つ材料からなり、
(b)疎水性分子が、極性官能基(B)を持つ分子からなる
のが好ましい。この場合、極性官能基(A)と極性官能基(B)は、同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。
これらの疎水性分子と基材の表面とを強固に結合させるには、熱処理や触媒を利用した化学反応によって共有結合化を促進させた方が良い。
極性官能基としては、例えば、
(1)シラノール基、若しくは、加水分解によってシラノール基を形成する官能基(例えば、クロロシラン基、メトキシシラン基、エトキシシラン基など)(以下、これらを「シラノール系官能基」ともいう)、
(2)水酸基、リン酸基、カルボキシル基、スルホ基、アルデヒド基、アミノ基、
(3)(1)又は(2)の塩、
などがある。
これらの中でも、シラノール系官能基又はその塩は、基材−疎水性分子間に強固な結合を形成することができるので、極性官能基(A)又は(B)として好適である。
(1)シラノール基、若しくは、加水分解によってシラノール基を形成する官能基(例えば、クロロシラン基、メトキシシラン基、エトキシシラン基など)(以下、これらを「シラノール系官能基」ともいう)、
(2)水酸基、リン酸基、カルボキシル基、スルホ基、アルデヒド基、アミノ基、
(3)(1)又は(2)の塩、
などがある。
これらの中でも、シラノール系官能基又はその塩は、基材−疎水性分子間に強固な結合を形成することができるので、極性官能基(A)又は(B)として好適である。
また、基材は、少なくともその表面に、疎水性分子と化学結合を形成することが可能な元素Mを含むものが好ましい。基材は、表面のみが元素Mを含む材料からなるものでも良く、あるいは、全体が元素Mを含む材料からなるものでも良い。
元素Mとしては、例えば、Al、Fe、Mg、Ca、Ni、Ti、Co、Si、Zr、Sn、In、Zn、Ge、Ga、C、Nなどがある。
元素Mとしては、例えば、Al、Fe、Mg、Ca、Ni、Ti、Co、Si、Zr、Sn、In、Zn、Ge、Ga、C、Nなどがある。
これらの中でも、元素Mは、Alが好ましい。Alを含む基材を熱水中で加熱すると、基材表面にベーマイトを含む層を容易に形成することができる。ベーマイトは、表面に水酸基を備えているので、極性官能基(特に、シラノール系官能基)と容易に化学結合を形成する。そのため、ベーマイトを含む層が形成された基板の表面を、極性官能基を含む疎水性分子で被覆すると、基材−疎水性分子間に容易に化学結合を形成することができる。
「ベーマイトを含む層」としては、例えば、
(a)ベーマイトからなる微細な花弁状構造を備えた層、
(b)ベーマイトからなる微細な花弁状構造と、バイヤライトからなる粗大な柱状構造とを備えた層、
などがある。
「ベーマイトを含む層」としては、例えば、
(a)ベーマイトからなる微細な花弁状構造を備えた層、
(b)ベーマイトからなる微細な花弁状構造と、バイヤライトからなる粗大な柱状構造とを備えた層、
などがある。
[1.1.3. 基材の具体例]
基材の材料としては、例えば、
(1)アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、コバルト、コバルト合金などの金属材料、
(2)ゼオライト、ジルコニア、ハイドロキシアパタイト、アルミナ、シリカ、チタニア、チタン酸バリウムなどのセラミックス、
(3)アモルファス炭素、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンド、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェンなどの炭素材料、
(4)ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレングリコール、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンなどの高分子材料、
(5)シリコン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化ガリウム、窒化ガリウム、シリコンカーバイドなどの半導体材料、
(6)上記の材料の表面を酸化させ、あるいは表面に極性官能基(A)を導入した材料、
などがある。
基材の材料としては、例えば、
(1)アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、コバルト、コバルト合金などの金属材料、
(2)ゼオライト、ジルコニア、ハイドロキシアパタイト、アルミナ、シリカ、チタニア、チタン酸バリウムなどのセラミックス、
(3)アモルファス炭素、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンド、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェンなどの炭素材料、
(4)ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレングリコール、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンなどの高分子材料、
(5)シリコン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化ガリウム、窒化ガリウム、シリコンカーバイドなどの半導体材料、
(6)上記の材料の表面を酸化させ、あるいは表面に極性官能基(A)を導入した材料、
などがある。
なお、後述する熱水処理法を用いて微細凹凸構造を形成する場合、基材には、アルミニウム含有材料を用いるのが好ましい。
「アルミニウム含有材料」とは、有為成分としてAlを含む材料であって、
(a)熱水処理によって材料表面にベーマイトを析出させるのに十分な量のAlを溶出させることが可能な材料、又は、
(b)アミン系分子共存下での熱水処理によって材料表面にベーマイトとバイヤライトとを析出させるのに十分な量のAlを溶出させることが可能な材料
をいう。
アルミニウム含有材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウムなどがある。
「アルミニウム含有材料」とは、有為成分としてAlを含む材料であって、
(a)熱水処理によって材料表面にベーマイトを析出させるのに十分な量のAlを溶出させることが可能な材料、又は、
(b)アミン系分子共存下での熱水処理によって材料表面にベーマイトとバイヤライトとを析出させるのに十分な量のAlを溶出させることが可能な材料
をいう。
アルミニウム含有材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウムなどがある。
[1.1.4. 微細凹凸構造]
基材の表面には、微細凹凸構造が形成されているのが好ましい。微細凹凸構造は、基材の全面に形成されていても良く、あるいは、基材の表面の内、撥水性又は超撥水性が要求される部分にのみ形成されていても良い。
「微細凹凸構造」とは、撥水性又は超撥水性を発現させることが可能な程度の微細な凹凸を含む構造をいう。
微細凹凸構造としては、例えば、
(a)微細な花弁状構造のみからなる構造、
(b)微細な花弁状構造と、粗大な柱状構造との組み合わせからなる構造、
(c)微細加工技術を用いて形成された微細な凹凸からなる構造、
などがある。
基材の表面には、微細凹凸構造が形成されているのが好ましい。微細凹凸構造は、基材の全面に形成されていても良く、あるいは、基材の表面の内、撥水性又は超撥水性が要求される部分にのみ形成されていても良い。
「微細凹凸構造」とは、撥水性又は超撥水性を発現させることが可能な程度の微細な凹凸を含む構造をいう。
微細凹凸構造としては、例えば、
(a)微細な花弁状構造のみからなる構造、
(b)微細な花弁状構造と、粗大な柱状構造との組み合わせからなる構造、
(c)微細加工技術を用いて形成された微細な凹凸からなる構造、
などがある。
微細凹凸構造は、その凹部断面の幅寸法が150nm以下であるものを含むのが好ましい。
「凹部断面の幅寸法」とは、微細凹凸構造の断面に現れる凹部の間隔をいう。幅寸法の異なる2種以上の凹凸構造の組み合わせからなる場合、少なくとも1つの微細凹凸構造が上記の条件を満たしていればよい。
例えば、微細な花弁状構造と粗大な柱状構造の組み合わせからなる場合、微細な花弁状構造の凹部断面の幅寸法は、150nm以下が好ましい。
「凹部断面の幅寸法」とは、微細凹凸構造の断面に現れる凹部の間隔をいう。幅寸法の異なる2種以上の凹凸構造の組み合わせからなる場合、少なくとも1つの微細凹凸構造が上記の条件を満たしていればよい。
例えば、微細な花弁状構造と粗大な柱状構造の組み合わせからなる場合、微細な花弁状構造の凹部断面の幅寸法は、150nm以下が好ましい。
[A. 花弁状構造]
「花弁状構造」とは、複数の板状粒子の集合体からなる構造をいう。個々の板状粒子は、基材表面において互いにランダムな方向を向いている。すなわち、花弁状構造とは、ナノメートルサイズの厚みを有する微細な板状粒子が花弁のように密集している構造をいう。
花弁状構造を構成する板状粒子の大きさは、花弁状構造の製造方法により異なる。高い撥水性を得るためには、板状粒子の厚さは、0.3nm以上50nm以下が好ましい。
「花弁状構造」とは、複数の板状粒子の集合体からなる構造をいう。個々の板状粒子は、基材表面において互いにランダムな方向を向いている。すなわち、花弁状構造とは、ナノメートルサイズの厚みを有する微細な板状粒子が花弁のように密集している構造をいう。
花弁状構造を構成する板状粒子の大きさは、花弁状構造の製造方法により異なる。高い撥水性を得るためには、板状粒子の厚さは、0.3nm以上50nm以下が好ましい。
[B. 花弁状構造と柱状構造の組み合わせ]
「微細な花弁状構造と粗大な柱状構造の組み合わせからなる構造」とは、サブミクロン〜ミクロンサイズの粗大な柱状粒子が基材表面に離散的に形成されており、その隙間にナノメートルサイズの微細な花弁状構造が形成されているものをいう。微細凹凸構造の製造方法によっては、さらに柱状構造の表面に、花弁状構造が形成される場合もある。
「微細な花弁状構造と粗大な柱状構造の組み合わせからなる構造」とは、サブミクロン〜ミクロンサイズの粗大な柱状粒子が基材表面に離散的に形成されており、その隙間にナノメートルサイズの微細な花弁状構造が形成されているものをいう。微細凹凸構造の製造方法によっては、さらに柱状構造の表面に、花弁状構造が形成される場合もある。
「柱状構造」とは、柱状粒子からなる構造をいう。柱状粒子は、その一端と他端の直径が同一でなくても良い。柱状構造は、基材の表面に直接、形成されている場合と、下地の花弁状構造の上に形成されている場合とがある。
個々の柱状粒子は、通常、ランダムな方向を向いており、柱状粒子の軸方向と基材表面とのなす角は、粒子毎に異なっている。すなわち、基材表面に対してほぼ垂直に成長している柱状粒子もあれば、基材表面に対してほぼ平行に成長している柱状粒子もある。
個々の柱状粒子は、通常、ランダムな方向を向いており、柱状粒子の軸方向と基材表面とのなす角は、粒子毎に異なっている。すなわち、基材表面に対してほぼ垂直に成長している柱状粒子もあれば、基材表面に対してほぼ平行に成長している柱状粒子もある。
[C. 微細凹凸構造の材料]
微細凹凸構造を構成する材料は、特に限定されるものではなく、その形成方法に応じて種々の材料で構成することができる。
例えば、微細加工により基材の表面に微細な凹凸を形成する場合、下地の材料がそのまま微細凹凸構造の材料となる。
微細凹凸構造を構成する材料は、特に限定されるものではなく、その形成方法に応じて種々の材料で構成することができる。
例えば、微細加工により基材の表面に微細な凹凸を形成する場合、下地の材料がそのまま微細凹凸構造の材料となる。
一方、基材の表面に花弁状構造や柱状構造を形成する場合、微細凹凸構造は、
(a)基材表面の材料が化学反応することにより生成する材料で構成される場合、
(b)基材表面に新たに析出させた、基材とは異なる材料で構成される場合、
などがある。
花弁状構造を構成する材料としては、例えば、ベーマイト、カーボン、水酸化ニッケル、酸化スズなどがある。
柱状構造を構成する材料としては、例えば、バイヤライト、カーボンなどがある。
(a)基材表面の材料が化学反応することにより生成する材料で構成される場合、
(b)基材表面に新たに析出させた、基材とは異なる材料で構成される場合、
などがある。
花弁状構造を構成する材料としては、例えば、ベーマイト、カーボン、水酸化ニッケル、酸化スズなどがある。
柱状構造を構成する材料としては、例えば、バイヤライト、カーボンなどがある。
微細凹凸構造が花弁状構造と柱状構造との組み合わせである場合において、これらの材料の組み合わせは、特に限定されるものではなく、その形成方法に応じて種々の組み合わせを選択することができる。
例えば、アルミニウム含有材料をアミン系分子共存下で熱水処理する場合やAlN粉末を水に分散させた懸濁液を基材表面に塗布する場合、花弁状構造はベーマイトからなり、柱状構造はバイヤライトからなる。
その他の(花弁状構造、柱状構造)の材料組み合わせとしては、例えば、
(a)(カーボンナノウォール、カーボンナノファイバー)、
(b)(カーボンナノウォール、カーボンナノチューブ)、
などがある。
例えば、アルミニウム含有材料をアミン系分子共存下で熱水処理する場合やAlN粉末を水に分散させた懸濁液を基材表面に塗布する場合、花弁状構造はベーマイトからなり、柱状構造はバイヤライトからなる。
その他の(花弁状構造、柱状構造)の材料組み合わせとしては、例えば、
(a)(カーボンナノウォール、カーボンナノファイバー)、
(b)(カーボンナノウォール、カーボンナノチューブ)、
などがある。
[1.2. 疎水性分子]
[1.2.1. 定義]
基材の表面は、疎水性分子からなる疎水膜によって被覆されている。本発明において、疎水性分子の少なくとも一部は、基材の表面と化学結合している。理想的には、疎水膜を構成するすべての疎水性分子が基材の表面と化学結合しているのが好ましい。
[1.2.1. 定義]
基材の表面は、疎水性分子からなる疎水膜によって被覆されている。本発明において、疎水性分子の少なくとも一部は、基材の表面と化学結合している。理想的には、疎水膜を構成するすべての疎水性分子が基材の表面と化学結合しているのが好ましい。
「疎水性分子」とは、平坦な表面にその分子を緻密に被覆し、水滴を滴下したときに、その表面と水滴とがなす角度(静的水滴接触角)が90度以上となる分子をいう。
本発明において、疎水性分子は、疎水性に寄与する部分だけでなく、基材の表面との間に化学結合を形成することが可能な官能基を備えている。疎水性分子の官能基は、上述した極性官能基(B)が好ましく、特に、シラノール系官能基が好ましい。
本発明において、疎水性分子は、疎水性に寄与する部分だけでなく、基材の表面との間に化学結合を形成することが可能な官能基を備えている。疎水性分子の官能基は、上述した極性官能基(B)が好ましく、特に、シラノール系官能基が好ましい。
[1.2.2. 具体例]
疎水性分子としては、具体的には、以下のようなものがある。これらの疎水性分子は、単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
疎水性分子としては、具体的には、以下のようなものがある。これらの疎水性分子は、単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
[A. シラノール系官能基を備えた疎水性分子]
シラノール系官能基を備えた疎水性分子としては、例えば、次の(a)式で表される構造を備えているものが好ましい。
シラノール系官能基を備えた疎水性分子としては、例えば、次の(a)式で表される構造を備えているものが好ましい。
Xは−OY(Yはアルキル基、水素、Si、又は前記元素M)、又はハロゲン、
Rは炭素数1〜8の1価の炭化水素、
kは1以上7以下の整数、mは1以上7以下の整数、nは0以上の整数、
pは0以上7以下の整数、qは1以上の整数、aは1以上3以下の整数。
(a)式において、「YはSiである」とは、隣接する疎水性分子のシラノール系官能基間の脱水縮合反応によって化学結合−Si−O−Si−が形成された場合をいう。
(a)式において、「Yは元素Mである」とは、その疎水性分子が−Si−O−M−結合を介して基材表面の元素Mと化学結合していることをいう。
(a)式で表される疎水性分子の分子量は、Rの炭素数や繰り返し単位の繰り返し数により異なるが、通常、192〜10000の範囲となる。(a)式で表される分子であって、Yがアルキル基又は水素であるものは、市販されている。
(a)式において、「Yは元素Mである」とは、その疎水性分子が−Si−O−M−結合を介して基材表面の元素Mと化学結合していることをいう。
(a)式で表される疎水性分子の分子量は、Rの炭素数や繰り返し単位の繰り返し数により異なるが、通常、192〜10000の範囲となる。(a)式で表される分子であって、Yがアルキル基又は水素であるものは、市販されている。
その他のシラノール系官能基を備えた疎水性分子(基材と化学結合を形成する前の疎水性分子)としては、例えば、
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン、
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)−1−トリエトキシシラン、
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)−1−トリメトキシシラン
などがある。
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン、
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)−1−トリエトキシシラン、
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)−1−トリメトキシシラン
などがある。
シラノール系官能基を備えた疎水性分子は、炭素−炭素間二重結合を備えた疎水性分子であるエチレン系疎水性分子、あるいは、炭素−炭素間三重結合を備えた疎水性分子であるアセチレン系疎水性分子を原料として作製できる。
例えば、クロロシラン基を備えた疎水性分子は、エチレン系疎水性分子とトリクロロシランとの反応によって作製できる。
例えば、メトキシシラン基を備えた疎水性分子は、エチレン系疎水性分子とトリメトキシシランとの反応によって作製できる。
例えば、エトキシシラン基を備えた疎水性分子は、エチレン系疎水性分子とトリエトキシシランとの反応によって作製できる。
これらの反応を進行させる触媒として、C8H18OSi2Pt(カルステッド触媒)やH2PtCl6(スパイヤー触媒)等の白金系触媒、ニッケル系触媒、パラジウム系触媒、ルテニウム系触媒等が使用できる。
例えば、クロロシラン基を備えた疎水性分子は、エチレン系疎水性分子とトリクロロシランとの反応によって作製できる。
例えば、メトキシシラン基を備えた疎水性分子は、エチレン系疎水性分子とトリメトキシシランとの反応によって作製できる。
例えば、エトキシシラン基を備えた疎水性分子は、エチレン系疎水性分子とトリエトキシシランとの反応によって作製できる。
これらの反応を進行させる触媒として、C8H18OSi2Pt(カルステッド触媒)やH2PtCl6(スパイヤー触媒)等の白金系触媒、ニッケル系触媒、パラジウム系触媒、ルテニウム系触媒等が使用できる。
[B. シラノール系官能基以外の極性官能基を備えた疎水性分子]
シラノール系官能基以外の極性官能基を備えた疎水性分子(基材と化学結合を形成する前の疎水性分子)としては、具体的には、
(1)カルボキシル基のアンモニウム塩を備えた疎水性分子として、アンモニウム4,8−ジオキサ−3H−パーフルオロノナン酸(ADONA)、
(2)水酸基を備えた疎水性分子として、N−メチルペルフルオロ酪酸スルホンアミドエタノール(N−MeFBSE)、
(3)水酸基を備えた疎水性分子として、N−エチルペルフルオロ酪酸スルホンアミドエタノール(N−EtFBSE)、
(4)水酸基を備えた疎水性分子として、その分子鎖の一端又は両端に水酸基を備えたパーフルオロポリエーテル(PFPE)、
などがある。
これらは、市販されている。また、他の極性官能基を備えた疎水性分子は、類似の分子構造を有する化合物を出発原料に用いて公知の方法により製造することができる。
シラノール系官能基以外の極性官能基を備えた疎水性分子(基材と化学結合を形成する前の疎水性分子)としては、具体的には、
(1)カルボキシル基のアンモニウム塩を備えた疎水性分子として、アンモニウム4,8−ジオキサ−3H−パーフルオロノナン酸(ADONA)、
(2)水酸基を備えた疎水性分子として、N−メチルペルフルオロ酪酸スルホンアミドエタノール(N−MeFBSE)、
(3)水酸基を備えた疎水性分子として、N−エチルペルフルオロ酪酸スルホンアミドエタノール(N−EtFBSE)、
(4)水酸基を備えた疎水性分子として、その分子鎖の一端又は両端に水酸基を備えたパーフルオロポリエーテル(PFPE)、
などがある。
これらは、市販されている。また、他の極性官能基を備えた疎水性分子は、類似の分子構造を有する化合物を出発原料に用いて公知の方法により製造することができる。
[1.2.3. 凝集粒子]
本発明において、疎水膜は、直径が1μm以上の疎水性分子からなる凝集粒子を実質的に含まない。この点が、従来とは異なる。具体的には、疎水膜は、その表面における任意の100μm四方の領域において、直径が1μm以上の凝集粒子が占める面積の割合が2.0%以下であるものからなる。
「(凝集粒子の)直径」とは、飛行時間型二次イオン質量分析装置により得られる二次イオン像により測定される値をいう。
「凝集粒子が占める面積の割合」とは、疎水性分子で被覆された表面における任意の100μm四方の領域の面積に対する直径1μm以上の凝集粒子の総面積の割合をいう。
実質的に凝集粒子を含まない疎水膜は、例えば、基材の表面を疎水膜で被覆した後、必要に応じて結合強化処理する前に、疎水膜の表面を溶媒洗浄することにより得られる。
本発明において、疎水膜は、直径が1μm以上の疎水性分子からなる凝集粒子を実質的に含まない。この点が、従来とは異なる。具体的には、疎水膜は、その表面における任意の100μm四方の領域において、直径が1μm以上の凝集粒子が占める面積の割合が2.0%以下であるものからなる。
「(凝集粒子の)直径」とは、飛行時間型二次イオン質量分析装置により得られる二次イオン像により測定される値をいう。
「凝集粒子が占める面積の割合」とは、疎水性分子で被覆された表面における任意の100μm四方の領域の面積に対する直径1μm以上の凝集粒子の総面積の割合をいう。
実質的に凝集粒子を含まない疎水膜は、例えば、基材の表面を疎水膜で被覆した後、必要に応じて結合強化処理する前に、疎水膜の表面を溶媒洗浄することにより得られる。
[2. 撥水材の製造方法]
本発明に係る撥水材の製造方法は、以下の工程を備えている。
(1)基材の表面を、前記基材の表面と化学結合を形成可能な疎水性分子をからなる疎水膜で被覆し、疎水膜被覆基材を作製する被覆工程。
(2)前記疎水性分子を溶解可能な溶媒を用いて、前記疎水膜被覆基材の表面を洗浄し、本発明に係る撥水材を得る洗浄工程。
本発明に係る撥水材の製造方法は、以下の工程をさらに備えているものが好ましい。
(3)前記基材の表面と前記疎水性分子との間の前記化学結合を強化する処理を行う結合強化処理工程。
本発明に係る撥水材の製造方法は、以下の工程を備えている。
(1)基材の表面を、前記基材の表面と化学結合を形成可能な疎水性分子をからなる疎水膜で被覆し、疎水膜被覆基材を作製する被覆工程。
(2)前記疎水性分子を溶解可能な溶媒を用いて、前記疎水膜被覆基材の表面を洗浄し、本発明に係る撥水材を得る洗浄工程。
本発明に係る撥水材の製造方法は、以下の工程をさらに備えているものが好ましい。
(3)前記基材の表面と前記疎水性分子との間の前記化学結合を強化する処理を行う結合強化処理工程。
[2.1. 被覆工程]
まず、基材の表面を、前記基材の表面と化学結合を形成可能な疎水性分子からなる疎水膜で被覆し、疎水膜被覆基材を作製する(被覆工程)。
まず、基材の表面を、前記基材の表面と化学結合を形成可能な疎水性分子からなる疎水膜で被覆し、疎水膜被覆基材を作製する(被覆工程)。
[2.1.1. 基材]
基材の形状、材料等は、特に限定されるものではなく、疎水性分子との間に化学結合を形成可能なものであれば良い。特に、基材は、少なくともその表面に、疎水性分子と化学結合を形成可能な元素Mを含むものが好ましい。また、元素Mは、Alが好ましい。さらに、基材は、その表面にベーマイトを含む層を有するものが好ましい。
基材に関するその他の点については、上述した通りであるので説明を省略する。
基材の形状、材料等は、特に限定されるものではなく、疎水性分子との間に化学結合を形成可能なものであれば良い。特に、基材は、少なくともその表面に、疎水性分子と化学結合を形成可能な元素Mを含むものが好ましい。また、元素Mは、Alが好ましい。さらに、基材は、その表面にベーマイトを含む層を有するものが好ましい。
基材に関するその他の点については、上述した通りであるので説明を省略する。
[2.1.2. 微細凹凸構造]
基材の表面に微細凹凸構造を形成する場合、その方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。
[A. 具体例1]
第1の方法は、基材としてアルミニウム含有材料を用い、基材を沸騰したイオン交換水中に所定時間浸漬する方法である。この方法により、微細な花弁状構造のみからなる微細凹凸構造であって、花弁状構造がベーマイトからなるものを、基材表面に形成することができる。
基材の表面に微細凹凸構造を形成する場合、その方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。
[A. 具体例1]
第1の方法は、基材としてアルミニウム含有材料を用い、基材を沸騰したイオン交換水中に所定時間浸漬する方法である。この方法により、微細な花弁状構造のみからなる微細凹凸構造であって、花弁状構造がベーマイトからなるものを、基材表面に形成することができる。
[B. 具体例2]
第2の方法は、基材としてアルミニウム含有材料を用い、水とアミン系分子とを含む温度60〜300℃の溶液に基材を浸漬する方法である。この方法により、微細な花弁状構造と粗大な柱状構造からなる微細凹凸構造であって、花弁状構造がベーマイトからなり、柱状構造がバイヤライトからなるものを、基材表面に形成することができる。
「アミン系分子」とは、アンモニア、又は、アンモニアの水素の全部又は一部を炭化水素基で置換した分子(例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミンなど)をいう。
第2の方法は、基材としてアルミニウム含有材料を用い、水とアミン系分子とを含む温度60〜300℃の溶液に基材を浸漬する方法である。この方法により、微細な花弁状構造と粗大な柱状構造からなる微細凹凸構造であって、花弁状構造がベーマイトからなり、柱状構造がバイヤライトからなるものを、基材表面に形成することができる。
「アミン系分子」とは、アンモニア、又は、アンモニアの水素の全部又は一部を炭化水素基で置換した分子(例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミンなど)をいう。
[C. 具体例3]
第3の方法は、AlNを水に分散させて懸濁液とし、所定の温度(例えば、70℃)に加熱された懸濁液に基材を浸漬し、所定時間経過後に引き上げ、乾燥させる方法である(K.Krnel et al., Journal of the American Ceramic Society, 92(10)2451-2454(2009)参照)。この方法により、微細な花弁状構造と粗大な柱状構造からなる微細凹凸構造であって、花弁状構造がベーマイトからなり、柱状構造がバイヤライトからなるものを、基材表面に形成することができる。この方法は、アルミニウム含有材料以外の基材であっても、ベーマイト及びバイヤライトからなる微細凹凸構造を形成できるという利点がある。
第3の方法は、AlNを水に分散させて懸濁液とし、所定の温度(例えば、70℃)に加熱された懸濁液に基材を浸漬し、所定時間経過後に引き上げ、乾燥させる方法である(K.Krnel et al., Journal of the American Ceramic Society, 92(10)2451-2454(2009)参照)。この方法により、微細な花弁状構造と粗大な柱状構造からなる微細凹凸構造であって、花弁状構造がベーマイトからなり、柱状構造がバイヤライトからなるものを、基材表面に形成することができる。この方法は、アルミニウム含有材料以外の基材であっても、ベーマイト及びバイヤライトからなる微細凹凸構造を形成できるという利点がある。
[D. 具体例4]
第4の方法は、花弁状構造と、柱状構造とを別個に作る方法である。この場合、微細凹凸構造の形成が可能である限りにおいて、何れの構造を先に形成しても良い。この方法は、花弁状構造を構成する材料と柱状構造を構成する材料との組み合わせを任意に選択できるという利点がある。また、製造方法によっては、基材の表面だけでなく、柱状構造の表面にも花弁状構造が形成される場合もある。
第4の方法は、花弁状構造と、柱状構造とを別個に作る方法である。この場合、微細凹凸構造の形成が可能である限りにおいて、何れの構造を先に形成しても良い。この方法は、花弁状構造を構成する材料と柱状構造を構成する材料との組み合わせを任意に選択できるという利点がある。また、製造方法によっては、基材の表面だけでなく、柱状構造の表面にも花弁状構造が形成される場合もある。
花弁状構造を製造する方法としては、
(1)水のみが存在する環境下において、アルミニウム含有材料を熱水処理する方法、
(2)炭素を含む原料を用いたプラズマ化学気相成長(CVD)法や高速・高圧のCVDを用いて、単層又は多層グラフェンからなる花弁状構造(カーボンナノウォールやグラフェンフラワー(登録商標)とも呼ばれる)を形成する方法(例えば、特許第4762945号参照)、
(3)ニッケル塩、エチレンジアミン、水酸化ナトリウムを含む水溶液を加熱して、水酸化ニッケルからなる花弁状構造を形成する方法(例えば、"Self-Assembled Hollow Spheres of β-Ni(OH)2 and Their Derived Nanomaterials"Shengmao Zhang, Hua Chun Zeng; Chemistry of Materials 21, 871-883(2009)参照)、
などがある。
(1)水のみが存在する環境下において、アルミニウム含有材料を熱水処理する方法、
(2)炭素を含む原料を用いたプラズマ化学気相成長(CVD)法や高速・高圧のCVDを用いて、単層又は多層グラフェンからなる花弁状構造(カーボンナノウォールやグラフェンフラワー(登録商標)とも呼ばれる)を形成する方法(例えば、特許第4762945号参照)、
(3)ニッケル塩、エチレンジアミン、水酸化ナトリウムを含む水溶液を加熱して、水酸化ニッケルからなる花弁状構造を形成する方法(例えば、"Self-Assembled Hollow Spheres of β-Ni(OH)2 and Their Derived Nanomaterials"Shengmao Zhang, Hua Chun Zeng; Chemistry of Materials 21, 871-883(2009)参照)、
などがある。
また、柱状構造を製造する方法としては、
(1)直径100nm以上、深さ100nm以上の複数の細孔を有する基板を鋳型として用い、細孔内に柱状構造を構成する材料を充填し、細孔内の材料を基材表面に転写する方法、
(2)粒子状又は薄膜状のニッケル触媒を担持したシリコン基板上に、炭素源(例えば、メタンなどの炭化水素ガス)を用いてプラズマ支援化学気相成長法によってカーボンナノファイバーからなる柱状構造を製造する方法、
(3)基板表面に微細な触媒(例えば、Fe−Ti−O系触媒)を密に担持させ、基板表面に炭素源を導入し、炭素源を熱分解させてカーボンナノチューブからなる柱状構造を製造する方法、
などがある。
(1)直径100nm以上、深さ100nm以上の複数の細孔を有する基板を鋳型として用い、細孔内に柱状構造を構成する材料を充填し、細孔内の材料を基材表面に転写する方法、
(2)粒子状又は薄膜状のニッケル触媒を担持したシリコン基板上に、炭素源(例えば、メタンなどの炭化水素ガス)を用いてプラズマ支援化学気相成長法によってカーボンナノファイバーからなる柱状構造を製造する方法、
(3)基板表面に微細な触媒(例えば、Fe−Ti−O系触媒)を密に担持させ、基板表面に炭素源を導入し、炭素源を熱分解させてカーボンナノチューブからなる柱状構造を製造する方法、
などがある。
複数の細孔を有する基板の製造方法としては、
(a)平坦な基板をフォーカスイオンビームによってエッチングする方法、
(b)アルミニウム基板の陽極酸化によって多孔質アルマイト層を形成する方法、
などがある。
細孔を有する基板への材料の充填方法としては、
(a)鋳型を電極に用いて、細孔内へ金属を電析させる方法、
(b)金属アルコキシド系原料を細孔内に含浸させ、細孔内において金属アルコキシド系原料を縮重合させる方法、
などがある。
(a)平坦な基板をフォーカスイオンビームによってエッチングする方法、
(b)アルミニウム基板の陽極酸化によって多孔質アルマイト層を形成する方法、
などがある。
細孔を有する基板への材料の充填方法としては、
(a)鋳型を電極に用いて、細孔内へ金属を電析させる方法、
(b)金属アルコキシド系原料を細孔内に含浸させ、細孔内において金属アルコキシド系原料を縮重合させる方法、
などがある。
このようにして形成された微細凹凸構造の表面が金属酸化物又は極性官能基(A)を有する材料で構成されていない場合、微細凹凸構造の表面を酸化し、あるいは、微細凹凸構造の表面に極性官能基(A)を導入するのが好ましい。極性官能基(A)の導入方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
微細凹凸構造がベーマイトとバイヤライトからなる場合、官能基導入処理は必ずしも必要ではなく、それらの化学構造に由来する水酸基が、既に表面に備わっている。
例えば、微細凹凸構造がベーマイトとバイヤライトからなる場合において、その表面にアミノ基を導入するためには、微細凹凸構造にアンモニウム分子を含む気体を接触させながら加熱するか、あるいは、アンモニアプラズマを接触させればよい。
例えば、微細凹凸構造がカーボンからなる場合において、その表面に水酸基を導入するためには、微細凹凸構造を酸素分子や水蒸気を含む気体と接触させながら、微細凹凸構造に紫外光を照射すればよい。
例えば、微細凹凸構造がカーボンからなる場合において、その表面にアミノ基を導入するためには、微細凹凸構造にアンモニアプラズマを接触させればよい。
例えば、微細凹凸構造がベーマイトとバイヤライトからなる場合において、その表面にアミノ基を導入するためには、微細凹凸構造にアンモニウム分子を含む気体を接触させながら加熱するか、あるいは、アンモニアプラズマを接触させればよい。
例えば、微細凹凸構造がカーボンからなる場合において、その表面に水酸基を導入するためには、微細凹凸構造を酸素分子や水蒸気を含む気体と接触させながら、微細凹凸構造に紫外光を照射すればよい。
例えば、微細凹凸構造がカーボンからなる場合において、その表面にアミノ基を導入するためには、微細凹凸構造にアンモニアプラズマを接触させればよい。
[E. 具体例4]
第4の方法は、花弁状構造と柱状構造を同時に製造する方法である。
例えば、シリコン基板上にニッケル触媒が存在する領域とシリコン基板表面が露出した領域の二領域を備えたパターンを形成する。このパターンを備えた基板上に炭素源を用いたプラズマCVDを行うと、ニッケル触媒の領域にカーボンナノファイバーからなる柱状構造を成長させ、基板表面が露出した領域にカーボンナノウォールからなる花弁状構造を成長させることができる。
第4の方法は、花弁状構造と柱状構造を同時に製造する方法である。
例えば、シリコン基板上にニッケル触媒が存在する領域とシリコン基板表面が露出した領域の二領域を備えたパターンを形成する。このパターンを備えた基板上に炭素源を用いたプラズマCVDを行うと、ニッケル触媒の領域にカーボンナノファイバーからなる柱状構造を成長させ、基板表面が露出した領域にカーボンナノウォールからなる花弁状構造を成長させることができる。
[2.1.3. 疎水性分子]
疎水性分子には、基材の表面と化学結合を形成可能なものを用いる。疎水性分子は、特に極性官能基(B)(特に、シラノール系官能基)を備えているものが好ましい。
さらに、疎水性分子は、特に次の(b)式で表される構造を備えているものが好ましい。この場合、基板は、少なくともその表面に元素Mを含むものを用いる。
疎水性分子には、基材の表面と化学結合を形成可能なものを用いる。疎水性分子は、特に極性官能基(B)(特に、シラノール系官能基)を備えているものが好ましい。
さらに、疎水性分子は、特に次の(b)式で表される構造を備えているものが好ましい。この場合、基板は、少なくともその表面に元素Mを含むものを用いる。
X'は−OY(Yはアルキル基、又は水素)、又はハロゲン、
Rは炭素数1〜8の1価の炭化水素、
kは1以上7以下の整数、mは1以上7以下の整数、nは0以上の整数、
pは0以上7以下の整数、qは1以上の整数、aは1以上3以下の整数。
(b)式中、「Si−X'」は、シラノール系官能基を表す。(b)式に関するその他の点については、(a)式と同様であるので、説明を省略する。
また、疎水性分子に関するその他の点については、上述した通りであるので、説明を省略する。
また、疎水性分子に関するその他の点については、上述した通りであるので、説明を省略する。
[2.1.4. 疎水膜の形成方法]
疎水膜の形成方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択するのが好ましい。
一般に、疎水性分子は有機溶媒に対して可溶性である。そのため、疎水膜は、
(a)疎水性分子を溶媒に溶解させて溶液とし、
(b)浸漬法、スプレー法等を用いて溶液を基材表面に塗布し、
(c)塗膜から溶媒を揮発させる
ことにより形成するのが好ましい。
疎水膜の形成方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択するのが好ましい。
一般に、疎水性分子は有機溶媒に対して可溶性である。そのため、疎水膜は、
(a)疎水性分子を溶媒に溶解させて溶液とし、
(b)浸漬法、スプレー法等を用いて溶液を基材表面に塗布し、
(c)塗膜から溶媒を揮発させる
ことにより形成するのが好ましい。
溶液中の疎水性分子の濃度、並びに、溶液の塗布方法及び塗布条件は、特に限定されるものではなく、基材表面を疎水膜で被覆することが可能なものであれば良い。
基材表面に溶液を塗布し、溶媒を揮発させると、基材表面に疎水膜が形成される。この時、疎水性分子の全部又は一部と基材表面との間に化学結合が形成される。
基材表面に溶液を塗布し、溶媒を揮発させると、基材表面に疎水膜が形成される。この時、疎水性分子の全部又は一部と基材表面との間に化学結合が形成される。
溶液を作製するための溶媒は、特に限定されるものではなく、疎水性分子を溶解可能なものであれば良い。溶媒としては、例えば、
(1)C4F9OC2H5(商品名:ノベック(登録商標)7200;住友スリーエム社製)、C3F7OCH2(商品名:ノベック(登録商標)7000;住友スリーエム社製)、C4F9OCH3(商品名:ノベック(登録商標)7100;住友スリーエム社製)、C2F5CF(OCH3)C3F7(商品名:ノベック(登録商標)7300;住友スリーエム社製)、CF3CH2OC2F4H(商品名:アサヒクリン(登録商標)AE−3000;旭硝子社製)などのハイドロフルオロエーテル、
(2)CF3[(OCF(CF3)CF2)n(OCF2)m]OCF3(商品名:ガルデン(登録商標)(型番;HT55、HT80、TH110、HT135等);ソルベイ社製)などのパーフルオロポリエーテル、
(3)パーフルオロヘキサン等のパーフルオロアルカン、
(4)1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、
などがある。
(1)C4F9OC2H5(商品名:ノベック(登録商標)7200;住友スリーエム社製)、C3F7OCH2(商品名:ノベック(登録商標)7000;住友スリーエム社製)、C4F9OCH3(商品名:ノベック(登録商標)7100;住友スリーエム社製)、C2F5CF(OCH3)C3F7(商品名:ノベック(登録商標)7300;住友スリーエム社製)、CF3CH2OC2F4H(商品名:アサヒクリン(登録商標)AE−3000;旭硝子社製)などのハイドロフルオロエーテル、
(2)CF3[(OCF(CF3)CF2)n(OCF2)m]OCF3(商品名:ガルデン(登録商標)(型番;HT55、HT80、TH110、HT135等);ソルベイ社製)などのパーフルオロポリエーテル、
(3)パーフルオロヘキサン等のパーフルオロアルカン、
(4)1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、
などがある。
[2.2. 洗浄工程]
次に、前記疎水性分子を溶解可能な溶媒を用いて、前記疎水膜被覆基材の表面を洗浄する(洗浄工程)。
洗浄に用いる溶媒は、疎水性分子を溶解可能なものであれば良い。洗浄用の溶媒は、疎水膜を形成する際に用いた溶媒と同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。
洗浄は、基材表面の疎水膜を完全に剥離させることなく、かつ、疎水性分子からなる直径が1μm以上の凝集粒子が除去される条件下で行う。通常、溶媒でリンス洗浄するだけで、凝集粒子のみを選択的に除去することができる。
なお、疎水膜の形成条件を最適化すると、溶媒洗浄を行わなくても凝集粒子の面積割合が2.0%以下になる場合がある。しかしながら、溶媒洗浄を行わない場合、通常、凝集粒子の面積割合を2%以下にするのは困難である。
これに対し、溶媒洗浄を行った場合には、容易に、かつ再現性良く凝集粒子をほぼゼロ(面積割合で、0.5%以下)にすることができる。
次に、前記疎水性分子を溶解可能な溶媒を用いて、前記疎水膜被覆基材の表面を洗浄する(洗浄工程)。
洗浄に用いる溶媒は、疎水性分子を溶解可能なものであれば良い。洗浄用の溶媒は、疎水膜を形成する際に用いた溶媒と同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。
洗浄は、基材表面の疎水膜を完全に剥離させることなく、かつ、疎水性分子からなる直径が1μm以上の凝集粒子が除去される条件下で行う。通常、溶媒でリンス洗浄するだけで、凝集粒子のみを選択的に除去することができる。
なお、疎水膜の形成条件を最適化すると、溶媒洗浄を行わなくても凝集粒子の面積割合が2.0%以下になる場合がある。しかしながら、溶媒洗浄を行わない場合、通常、凝集粒子の面積割合を2%以下にするのは困難である。
これに対し、溶媒洗浄を行った場合には、容易に、かつ再現性良く凝集粒子をほぼゼロ(面積割合で、0.5%以下)にすることができる。
[2.3. 結合強化処理工程]
次に、必要に応じて、溶媒により洗浄した後の前記疎水膜被覆基材に対し、前記基材の表面と前記疎水性分子との間の前記化学結合を強化する処理を行う(結合強化処理工程)。
結合強化処理の方法は、特に限定されるものではなく、目的とする耐久性が得られる方法であれば良い。
次に、必要に応じて、溶媒により洗浄した後の前記疎水膜被覆基材に対し、前記基材の表面と前記疎水性分子との間の前記化学結合を強化する処理を行う(結合強化処理工程)。
結合強化処理の方法は、特に限定されるものではなく、目的とする耐久性が得られる方法であれば良い。
前記結合強化工程は、特に、前記溶媒により洗浄した後の前記疎水膜被覆基材を100℃以上300℃以下の温度で熱処理する熱処理工程が好ましい。
熱処理温度が低すぎると、基材−疎水性分子間の化学結合が不十分となり、耐久性が低下する。従って、熱処理温度は、100℃以上が好ましい。
一方、熱処理温度が高すぎると、疎水性分子が熱分解するおそれがある。従って、熱処理温度は、300℃以下が好ましい。
熱処理温度が低すぎると、基材−疎水性分子間の化学結合が不十分となり、耐久性が低下する。従って、熱処理温度は、100℃以上が好ましい。
一方、熱処理温度が高すぎると、疎水性分子が熱分解するおそれがある。従って、熱処理温度は、300℃以下が好ましい。
また、熱処理は、室温における相対湿度が5%未満である低湿度雰囲気下において行うのが好ましい。これは、低湿度雰囲気で行うことによって、逆反応の加水分解反応が抑制され、脱水縮合反応による基材−疎水性分子間の化学結合形成が促進されるためと考えられる。
熱処理時間は、基材−疎水性分子間に十分な化学結合が形成される時間であれば良く、生産工程等に応じて最適な時間を選択すれば良い。
熱処理時間は、基材−疎水性分子間に十分な化学結合が形成される時間であれば良く、生産工程等に応じて最適な時間を選択すれば良い。
[3. 作用]
超撥水膜を形成するための疎水性分子には、一般に、パーフルオロポリエーテルシラン(PFPES)が用いられている。PFPESを用いて基材の表面に超撥水膜を形成する場合、PFPESを含む溶液を基材表面に塗布し、乾燥させ、そのまま熱処理するのが一般的である。しかしながら、従来の方法により得られる超撥水膜は、初期状態では高い撥水性を示すが、流水に長時間曝されると、霜が付きやすくなるという問題があった。
これに対し、基材表面を疎水膜で被覆した後、必要に応じて結合強化処理(例えば、熱処理)を行う前に疎水膜被覆基材の表面を溶媒で洗浄すると、表面が撥水性又は超撥水性を示すだけでなく、長期間に渡って防霜性を維持することができる。これは、
(1)疎水膜に存在する凝集粒子が防霜性を低下させる原因となるため、及び、
(2)結合強化処理前の溶媒洗浄により、基材表面から凝集粒子が除去されるため
と考えられる。
超撥水膜を形成するための疎水性分子には、一般に、パーフルオロポリエーテルシラン(PFPES)が用いられている。PFPESを用いて基材の表面に超撥水膜を形成する場合、PFPESを含む溶液を基材表面に塗布し、乾燥させ、そのまま熱処理するのが一般的である。しかしながら、従来の方法により得られる超撥水膜は、初期状態では高い撥水性を示すが、流水に長時間曝されると、霜が付きやすくなるという問題があった。
これに対し、基材表面を疎水膜で被覆した後、必要に応じて結合強化処理(例えば、熱処理)を行う前に疎水膜被覆基材の表面を溶媒で洗浄すると、表面が撥水性又は超撥水性を示すだけでなく、長期間に渡って防霜性を維持することができる。これは、
(1)疎水膜に存在する凝集粒子が防霜性を低下させる原因となるため、及び、
(2)結合強化処理前の溶媒洗浄により、基材表面から凝集粒子が除去されるため
と考えられる。
従来の超撥水膜に疎水性分子の凝集物が形成される原因は定かでないが、
(1)溶液中で疎水性分子が凝集したため、又は、
(2)溶液からの引き上げ時などに疎水膜表面に溶液が残存してしまい、その残液から溶媒蒸発により疎水性分子が乾固析出する際に疎水性分子が凝集したため、
と推定している。
(1)溶液中で疎水性分子が凝集したため、又は、
(2)溶液からの引き上げ時などに疎水膜表面に溶液が残存してしまい、その残液から溶媒蒸発により疎水性分子が乾固析出する際に疎水性分子が凝集したため、
と推定している。
例えば、PFPES膜では、膜を構成するPFPESの親水部であるシラン基が基材と膜との界面に位置し、かつ、PFPESの疎水部であるパーフルオロポリエーテル(PFPE)鎖が膜表面に向いている。流水試験では、このPFPE鎖が流水と接触しているため、膜内へ水分子が侵入し難い。
一方、凝集物中では、膜ほどPFPESが整然と並んでおらず、親水部へ水が到達し、吸着されやすいと推定される。
そのため、表面に凝集物が多く存在する超撥水膜では、流水試験後に凝集物が水を含むことで表面の撥水性が僅かに低下していまい、着霜しやすくなると考えられる。流水試験後も着霜しない表面を与えるには、その表面において凝集物が占める面積の割合を2.0%以下とするのが好ましく、1.5%以下とするのがより好ましく、1.0%以下とするのがさらに好ましい。
一方、凝集物中では、膜ほどPFPESが整然と並んでおらず、親水部へ水が到達し、吸着されやすいと推定される。
そのため、表面に凝集物が多く存在する超撥水膜では、流水試験後に凝集物が水を含むことで表面の撥水性が僅かに低下していまい、着霜しやすくなると考えられる。流水試験後も着霜しない表面を与えるには、その表面において凝集物が占める面積の割合を2.0%以下とするのが好ましく、1.5%以下とするのがより好ましく、1.0%以下とするのがさらに好ましい。
撥水性低下によって着霜しやすくなる原因としては、
(a)表面から凝縮水が滑落除去され難くなること、あるいは、
(b)凝縮水との接触面積が増えることで基材からの熱伝達が大きくなり、凝縮水が冷却されやすくなること、
が推定される。
(a)表面から凝縮水が滑落除去され難くなること、あるいは、
(b)凝縮水との接触面積が増えることで基材からの熱伝達が大きくなり、凝縮水が冷却されやすくなること、
が推定される。
(実施例1〜3、比較例1)
[1. 試料の作製]
[1.1. 微細凹凸処理]
イオン交換水をビーカーに入れ、加熱によって沸騰させながら、これに表面が平滑な板状のアルミニウム基板を10分間浸漬し、基板表面にベーマイト層を作製した。図1に、表面にベーマイト層を有するアルミニウム基板(以下、「ベーマイト基板」という)の表面の走査電顕微鏡(SEM)像を示す。図1より、基板表面に微細な花弁状構造が形成されていることがわかる。さらに、このSEM像を解析したところ、凹部断面の間隔(幅寸法)は、100nm以下であった。
[1. 試料の作製]
[1.1. 微細凹凸処理]
イオン交換水をビーカーに入れ、加熱によって沸騰させながら、これに表面が平滑な板状のアルミニウム基板を10分間浸漬し、基板表面にベーマイト層を作製した。図1に、表面にベーマイト層を有するアルミニウム基板(以下、「ベーマイト基板」という)の表面の走査電顕微鏡(SEM)像を示す。図1より、基板表面に微細な花弁状構造が形成されていることがわかる。さらに、このSEM像を解析したところ、凹部断面の間隔(幅寸法)は、100nm以下であった。
[1.2. 疎水分子の被覆]
[1.2.1. 実施例1]
オプツール(登録商標)DSX(ダイキン工業社製;高分子成分:20mass%;溶媒:パーフルオロヘキサン)を、ハイドロフルオロエーテル(化学式:C4F9OC2H5;商品名:ノベック(登録商標)7200;住友スリーエム社製)に溶解し、高分子成分の濃度が0.1mass%である溶液を作製した。オプツール(登録商標)DSXに含まれる高分子成分は、次の(a.1)式で表される構造を備えたPFPESであることが特開2009−109612号公報に開示されている。
[1.2.1. 実施例1]
オプツール(登録商標)DSX(ダイキン工業社製;高分子成分:20mass%;溶媒:パーフルオロヘキサン)を、ハイドロフルオロエーテル(化学式:C4F9OC2H5;商品名:ノベック(登録商標)7200;住友スリーエム社製)に溶解し、高分子成分の濃度が0.1mass%である溶液を作製した。オプツール(登録商標)DSXに含まれる高分子成分は、次の(a.1)式で表される構造を備えたPFPESであることが特開2009−109612号公報に開示されている。
次に、この溶液にベーマイト基板を3日間浸漬することで、ベーマイト基板の表面にPFPESを吸着させた。その後、溶液から試料を引き上げた。試料を引き上げた後、直ちに試料を上記の溶媒に用いたハイドロフルオロエーテルでリンス洗浄した。
その後、室温における相対湿度を5%未満とした窒素雰囲気中にて、試料を150℃で1時間熱処理した。この熱処理は、ベーマイトとPFPESとの結合を強化するために行った。PFPESは、高分子であるため揮発性が低く、熱処理中に蒸発して基板から脱落することはない。
その後、室温における相対湿度を5%未満とした窒素雰囲気中にて、試料を150℃で1時間熱処理した。この熱処理は、ベーマイトとPFPESとの結合を強化するために行った。PFPESは、高分子であるため揮発性が低く、熱処理中に蒸発して基板から脱落することはない。
[1.2.2. 実施例2]
オプツール(登録商標)DSXを実施例1と同じハイドロフルオロエーテルに溶解し、高分子成分の濃度が0.01mass%の溶液を作製した。この溶液を用いて、ベーマイト基板に実施例1と同一の条件で、溶液浸漬、洗浄、熱処理を施した。
[1.2.3. 実施例3]
オプツール(登録商標)DSXを1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンに溶解し、高分子成分の濃度が0.1mass%の溶液を作製した。次に、この溶液にベーマイト基板を1時間浸漬することで、ベーマイト表面にPFPESを吸着させた。その後、溶液から試料を引き上げた。なお、溶媒によるリンス洗浄は、行わなかった。
次に、室温における相対湿度を5%未満とした窒素雰囲気中にて、試料を150℃で1時間熱処理した。
オプツール(登録商標)DSXを実施例1と同じハイドロフルオロエーテルに溶解し、高分子成分の濃度が0.01mass%の溶液を作製した。この溶液を用いて、ベーマイト基板に実施例1と同一の条件で、溶液浸漬、洗浄、熱処理を施した。
[1.2.3. 実施例3]
オプツール(登録商標)DSXを1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンに溶解し、高分子成分の濃度が0.1mass%の溶液を作製した。次に、この溶液にベーマイト基板を1時間浸漬することで、ベーマイト表面にPFPESを吸着させた。その後、溶液から試料を引き上げた。なお、溶媒によるリンス洗浄は、行わなかった。
次に、室温における相対湿度を5%未満とした窒素雰囲気中にて、試料を150℃で1時間熱処理した。
[1.2.4. 比較例1]
オプツール(登録商標)DSXを実施例1と同じハイドロフルオロエーテルに溶解し、高分子成分の濃度が0.1mass%の溶液を作製した。次に、この溶液にベーマイト基板を1時間浸漬することで、ベーマイト表面にPFPESを吸着させた。その後、溶液から試料を引き上げた。
次に、室温における相対湿度を5%未満とした窒素雰囲気中にて、試料を150℃で1時間熱処理した。
オプツール(登録商標)DSXを実施例1と同じハイドロフルオロエーテルに溶解し、高分子成分の濃度が0.1mass%の溶液を作製した。次に、この溶液にベーマイト基板を1時間浸漬することで、ベーマイト表面にPFPESを吸着させた。その後、溶液から試料を引き上げた。
次に、室温における相対湿度を5%未満とした窒素雰囲気中にて、試料を150℃で1時間熱処理した。
[2. 試験方法]
[2.1. 飛行時間型二次イオン質量分析]
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)によって、試料の表面を分析した。TOF−SIMSは、パルス状の一次イオンを試料表面に照射した際に、試料表面から発生する二次イオンを検出する分析手法である。発生する二次イオンの種類や検出感度は、試料表面における組成や化学構造によって異なる。また、試料表面における各種二次イオンの分布を可視化することによって、試料表面における組成や化学構造の分布を推定することができる。
[2.1. 飛行時間型二次イオン質量分析]
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)によって、試料の表面を分析した。TOF−SIMSは、パルス状の一次イオンを試料表面に照射した際に、試料表面から発生する二次イオンを検出する分析手法である。発生する二次イオンの種類や検出感度は、試料表面における組成や化学構造によって異なる。また、試料表面における各種二次イオンの分布を可視化することによって、試料表面における組成や化学構造の分布を推定することができる。
本実験では、ION−TOF社製のTOF−SIMS装置(型式:TOF−SIMS5)を用いて、高面分解能測定モード(Burst alignment mode)で測定を行った。一次イオンにBi+(30keV、0.15〜0.19pA)を用いて、一次イオンのドーズ量が1×1012イオン/cm2以下のスタティック条件で測定した。測定時の真空度は、1〜3×10-8mbarとした。
ラスター領域は、500μm×500μm及び100μm×100μmとし、いずれのラスター領域においても256×256ピクセルとした。各ピクセルあたりに一次イオンを1ショット照射した。スキャン回数は、16回とした。
二次イオン像の解析には、装置付属の解析ソフトであるSurfacelab6を用いた。各二次イオン像の色調はすべてグレースケールとし、各ラスター領域毎に、同一のイオンに対して同様の明暗コントラスト比を適用することで、試料作製条件による二次イオン像の相違を調べた。二次イオン像において、各イオンが高強度で検出される領域は明るく表示され、低強度で表示される領域は暗く表示される。
二次イオン像の解析には、装置付属の解析ソフトであるSurfacelab6を用いた。各二次イオン像の色調はすべてグレースケールとし、各ラスター領域毎に、同一のイオンに対して同様の明暗コントラスト比を適用することで、試料作製条件による二次イオン像の相違を調べた。二次イオン像において、各イオンが高強度で検出される領域は明るく表示され、低強度で表示される領域は暗く表示される。
[2.2. 流水試験(耐久試験)]
純水を毎分300mLで流し続けたビーカ内へ、試料を90h浸漬した。90hの浸漬の後、試料をビーカーから取り出した。
[2.3. 静的水滴接触角の評価]
流水試験前後の試料表面に、各々水滴を滴下し、水滴と表面との界面で形成される角度(静的水滴接触角)を評価した。
純水を毎分300mLで流し続けたビーカ内へ、試料を90h浸漬した。90hの浸漬の後、試料をビーカーから取り出した。
[2.3. 静的水滴接触角の評価]
流水試験前後の試料表面に、各々水滴を滴下し、水滴と表面との界面で形成される角度(静的水滴接触角)を評価した。
[2.4. 防霜性の評価]
上記の流水試験の前後における試料表面への防霜性を以下のように評価した。試料をペルチェ素子上に設置し、試料表面が−5℃となるように冷却した。そこへ、相対湿度90%、温度10℃に調整した風を風速1m/sで送風しながら、試料表面の様子を顕微鏡によって観察した。
上記の流水試験の前後における試料表面への防霜性を以下のように評価した。試料をペルチェ素子上に設置し、試料表面が−5℃となるように冷却した。そこへ、相対湿度90%、温度10℃に調整した風を風速1m/sで送風しながら、試料表面の様子を顕微鏡によって観察した。
[3. 結果]
[3.1. 飛行時間型二次イオン質量分析]
図2〜5に、それぞれ、実施例1〜3、及び比較例1で作製した試料表面のF-及びAl+二次イオン像を示す。比較例1(図5)で作製した試料の表面には、PFPESからなる凝集物が存在する粒子状の領域、すなわち、「PFPES由来のF-がイオンが高強度で検出され、かつ、下地(ベーマイト)由来のAl+イオンが低強度で検出された領域」、が確認された。粒子状の領域の大きさは、約1〜9μmであった。また、試料表面において粒子状の領域が占める面積の合計は、試料表面の全面積の約3.2%であった。
実施例3(図4)で作製した試料の表面にも、粒子状の領域が確認された。各々の粒子状の領域の大きさは、約1〜7μmであった。また、試料表面において粒子状の領域が占める面積の割合の合計は、試料表面の全面積の約0.6%であった。
一方、実施例1(図2)、及び実施例2(図3)で作製した試料の表面には、このような粒子状の領域は確認されなかった。
[3.1. 飛行時間型二次イオン質量分析]
図2〜5に、それぞれ、実施例1〜3、及び比較例1で作製した試料表面のF-及びAl+二次イオン像を示す。比較例1(図5)で作製した試料の表面には、PFPESからなる凝集物が存在する粒子状の領域、すなわち、「PFPES由来のF-がイオンが高強度で検出され、かつ、下地(ベーマイト)由来のAl+イオンが低強度で検出された領域」、が確認された。粒子状の領域の大きさは、約1〜9μmであった。また、試料表面において粒子状の領域が占める面積の合計は、試料表面の全面積の約3.2%であった。
実施例3(図4)で作製した試料の表面にも、粒子状の領域が確認された。各々の粒子状の領域の大きさは、約1〜7μmであった。また、試料表面において粒子状の領域が占める面積の割合の合計は、試料表面の全面積の約0.6%であった。
一方、実施例1(図2)、及び実施例2(図3)で作製した試料の表面には、このような粒子状の領域は確認されなかった。
[3.2. 静的水滴接触角の評価]
いずれの試料とも、流水試験前後において静的水滴接触角が150°以上である超撥水性表面を有していた。
いずれの試料とも、流水試験前後において静的水滴接触角が150°以上である超撥水性表面を有していた。
[3.3. 流水試験前後の防霜性]
図6及び図7に、それぞれ、実施例1で作製した試料表面の流水試験前後の防霜性の評価結果を示す。図8及び図9に、それぞれ、実施例2で作製した試料表面の流水試験前後の防霜性の評価結果を示す。図10及び図11に、それぞれ、実施例3で作製した試料表面の流水試験前後の防霜性の評価結果を示す。図12及び図13に、それぞれ、比較例1で作製した試料表面の流水試験前後の防霜性の評価結果を示す。
流水試験の前後において、いずれの試料表面においても凝縮水からなる水滴が形成された。また、流水試験前は、いずれの試料表面においても凝縮水が凍結しなかった(図6、8、10、12)。
一方、流水試験後は、実施例1〜3では凝縮水が60分後でも凍結しなかった(図7、9、11)が、比較例1では試験開始2分後に凍結し始めた(図13)。
図6及び図7に、それぞれ、実施例1で作製した試料表面の流水試験前後の防霜性の評価結果を示す。図8及び図9に、それぞれ、実施例2で作製した試料表面の流水試験前後の防霜性の評価結果を示す。図10及び図11に、それぞれ、実施例3で作製した試料表面の流水試験前後の防霜性の評価結果を示す。図12及び図13に、それぞれ、比較例1で作製した試料表面の流水試験前後の防霜性の評価結果を示す。
流水試験の前後において、いずれの試料表面においても凝縮水からなる水滴が形成された。また、流水試験前は、いずれの試料表面においても凝縮水が凍結しなかった(図6、8、10、12)。
一方、流水試験後は、実施例1〜3では凝縮水が60分後でも凍結しなかった(図7、9、11)が、比較例1では試験開始2分後に凍結し始めた(図13)。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
本発明に係る撥水材及びその製造方法は、車両のボディ、高速船の船体、家屋の外壁、雨具、衣類、熱交換器、アンテナなどに使用することができる。
Claims (17)
- 以下の構成を備えた撥水材。
(1)前記撥水材は、
基材と、
前記基材の表面を被覆する疎水性分子からなる疎水膜と
を備えている。
(2)前記疎水膜は、その表面における任意の100μm四方の領域において、直径が1μm以上の前記疎水性分子からなる凝集粒子が占める面積の割合が2.0%以下である。 - 以下の構成をさらに備えた請求項1に記載の撥水材。
(3)前記疎水性分子の少なくとも一部は、前記基材の表面と化学結合している。 - 前記元素Mは、Alである請求項3に記載の撥水材。
- 前記基材は、その表面に微細凹凸構造を備えている請求項1から4までのいずれか1項に記載の撥水材。
- 前記微細凹凸構造は、その凹部断面の幅寸法が150nm以下のものを含む請求項5に記載の撥水材。
- 前記基材は、その表面にベーマイトを含む層を有する請求項1から6までのいずれか1項に記載の撥水材。
- 以下の工程を備えた撥水材の製造方法。
(1)基材の表面を、前記基材の表面と化学結合を形成可能な疎水性分子をからなる疎水膜で被覆し、疎水膜被覆基材を作製する被覆工程。
(2)前記疎水性分子を溶解可能な溶媒を用いて、前記疎水膜被覆基材の表面を洗浄し、請求項1に記載の撥水材を得る洗浄工程。 - 以下の工程をさらに備えた請求項8に記載の撥水材の製造方法。
(3)前記基材の表面と前記疎水性分子との間の前記化学結合を強化する処理を行う結合強化処理工程。 - 前記結合強化処理工程は、前記溶媒により洗浄した後の前記疎水膜被覆基材を100℃以上300℃以下の温度で熱処理する熱処理工程である請求項9に記載の撥水材の製造方法。
- 前記熱処理工程は、室温における相対湿度が5%未満である低湿度雰囲気下において、前記熱処理を行うものである請求項10に記載の撥水材の製造方法。
- 前記元素Mは、Alである請求項12に記載の撥水材の製造方法。
- 前記基材は、その表面に微細凹凸構造を備えている請求項8から13までのいずれか1項に記載の撥水材の製造方法。
- 前記微細凹凸構造は、その凹部断面の幅寸法が150nm以下のものを含む請求項14に記載の撥水材の製造方法。
- 前記基材は、その表面にベーマイトを含む層を有する請求項8から15までのいずれか1項に記載の撥水材の製造方法。
- 請求項8から16までのいずれか1項に記載の方法により得られる撥水材。
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