JP2016104858A - 油圧作動油組成物 - Google Patents
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しかし、上述のネオペンチルポリオールと不飽和脂肪酸との完全エステルにおいて、キノリン系酸化防止剤とリン系や硫黄系の極圧剤とを併用した場合、高温での析出物が更に発生しやすくなるという問題があった。
(A)炭素数が5〜10であり、アルコールの価数が3〜6価のネオペンチルポリオールと、炭素数16〜22の直鎖不飽和脂肪酸とのエステル化合物であり、前記エステル化合物中、モノエステル(a1)を0.1〜5質量%、ジエステル(a2)を10〜30質量%、3価以上のエステル(a3)を65〜89.9質量%含有し、モノエステル(a1)/ジエステル(a2)の質量比が1/99〜20/80であるエステル化合物
(B)2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン又はその重合物、6−メトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン又はその重合物、及び6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン又はその重合物からなる群から選ばれる1又は2以上のキノリン誘導体又はその重合物
(C)下記式で表されるジチオリン酸エステル誘導体
エステル化合物(A)は、炭素数が5〜10であり、アルコールの価数が3〜6価のネオペンチルポリオールと、炭素数16〜22の直鎖不飽和脂肪酸とのエステル化合物である。
ネオペンチルポリオールとは、水酸基に対するβ位の炭素に水素原子を持たないネオペンチル骨格を有するアルコールである。本発明におけるネオペンチルポリオールは、炭素数が5〜10であり、かつアルコールの価数が3〜6価のネオペンチルポリオールである。3価のネオペンチルポリオールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが挙げられ、4価のネオペンチルポリオールとしては、例えば、ペンタエリスリトールなどが挙げられ、6価のネオペンチルポリオールとしては、例えば、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらのネオペンチルポリオールの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記ネオペンチルポリオールのうち、好ましくは3価又は4価のネオペンチルポリオールを使用することができ、特に好ましくは3価のトリメチロールプロパン、4価のペンタエリスリトールを使用することができる。
また、上記ネオペンチルポリオールを2種以上組み合わせて、エステル化合物(A)を形成するアルコールとして使用する際は、3価のトリメチロールプロパンと4価のペンタエリスリトールを併用することが好ましく、これらネオペンチルポリオールを使用して得られたエステル化合物(A)を含有することにより、油圧作動油組成物の潤滑性、酸化安定性をさらに高めることができる。トリメチロールプロパンとペンタエリスリトールとを併用して両者のエステルを調製する場合において、トリメチロールプロパンのエステル/ペンタエリスリトールのエステルの質量比は、好ましくは95/5〜50/50であり、特に好ましくは95/5〜60/40、さらに好ましくは95/5〜70/30である。
上記直鎖不飽和脂肪酸のうち、好ましくはオレイン酸、リノール酸、リノレン酸であり、更に好ましくはオレイン酸である。これら脂肪酸の中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ここで、モノエステル(a1)とは、ネオペンチルポリオール中の水酸基の1つが直鎖不飽和脂肪酸でエステル化されているものを意味する。ジエステル(a2)とは、ネオペンチルポリオール中の水酸基の2つが直鎖不飽和脂肪酸でエステル化されているものを意味する。3価以上のエステル(a3)とは、ネオペンチルポリオールの水酸基の3つ以上が直鎖不飽和脂肪酸でエステル化されているものを意味する。
エステル化の反応条件を制御して質量比を上記比率にする場合、例えば、原料の仕込み比を調整する方法、昇温速度や最終反応温度を制御する方法、触媒を使用する方法、などを採用することができる。
それぞれ別途合成した各種エステル(a1)〜(a3)を配合する方法は、予めモノエステル(a1)、ジエステル(a2)、3価以上のエステル(a3)を別途合成して、それらを上記含有量や質量比となるように配合してエステル化合物(A)を調製する方法である。
キノリン誘導体又はその重合物(B)は、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン又はその重合物、6−メトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン又はその重合物、及び6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン又はその重合物からなる群から選ばれる1又は2以上のキノリン誘導体又はその重合物である。
キノリン誘導体又はその重合物(B)は、キノリン系酸化防止剤として一般に使用されており、例えば、潤滑油用酸化防止剤やゴム用老化防止剤として市販されているものを使用することができる。例えば、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン又はその重合物(TMDQ)としては、R.T.Vandervilt社製Vanlube
RD、大内新興化学社製ノクラック224、川口化学工業社製アンテージRD、精工化学社製ノンフレックスRD、ノンフレックスQSなどが挙げられる。
また、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン又はその重合物としては、大内新興化学社製ノクラックAW、ノクラックAW−N、川口化学工業社製アンテージAW、精工化学社製ノンフレックスAW、ノンフレックスAW−Sなどが挙げられる。
本発明においては、エステル化合物(A)に優れた酸化安定性を付与できるという点から、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン又はその重合物(TMDQ)を使用することが好ましい。
R3は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。アルキル基は直鎖であっても分岐であっても良い。R3は、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基であり、更に好ましくは水素原子、メチル基、エチル基である。
また、Aは炭素数1〜5のアルキレン基を表し、直鎖状又は分岐状のアルキレン基が含まれる。Aとしては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、イソプロピリデン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基が挙げられ、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、イソプロピリデン基であり、特に好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基である。
さび止め剤(D)の含有量は、エステル化合物(A)100質量部に対して、0.01〜1質量部、好ましくは0.05〜0.5質量部であり、特に好ましくは0.1〜0.3質量部である。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、2,6−ジ−t−ブチルパラクレゾール、4,4−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)などが挙げられる。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−β−ナフチルアミン等のフェニルナフチルアミン系酸化防止剤、ビス(アルキルフェニル)アミン、フェノチアジン、モノオクチルジフェニルアミンなどが挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、アルキルジスルフィド、ベンゾジアゾール等が挙げられる。
キノリン誘導体又はその重合物(B)と、フェニルナフチルアミン系酸化防止剤と、フェノール系酸化防止剤との併用で好ましい配合割合は、キノリン誘導体又はその重合物(B)を100質量部としたとき、フェニルナフチルアミン系酸化防止剤が例えば25〜100質量部であり、フェノール系酸化防止剤が例えば25〜100質量部である。
金属不活性化剤の含有量は、エステル化合物(A)100質量部に対して、0.01〜0.1質量部、好ましくは0.02〜0.08質量部であり、特に好ましくは0.03〜0.06質量部である。
温度計、窒素導入管、攪拌機及び冷却管を取り付けた5L容の4つ口のフラスコに、トリメチロールプロパン(TMP)を1200g(8.94mol)、日油社製、工業用オレイン酸NAA−34(不飽和酸含有量:90質量%)を2486g(8.94mol)仕込み、窒素気流下、220℃で反応水を留去しつつ常圧で反応させ、酸価が0.1mgKOH/g以下となるまで反応させた。反応物を冷却後、未反応のトリメチロールプロパンの大部分をろ過し除去した。その後、蒸留することで、部分エステルIを約2500g得た。
得られた部分エステルIをシリル化(TMS化)した後、以下の条件でガスクロマトグラフィーにより分析すると、TMPモノエステル98. 1質量%、TMPジエステルが1.9質量%の部分エステル混合物であった。
カラム:パックドカラムOV−1(0.4m)
昇温条件:150℃から昇温速度5℃/分で350℃まで昇温し、350℃で10分間保持
インジェクション温度:375℃
検出器温度:375℃
ヘリウム流量:50mL/分
部分エステルIで使用した装置と同様の合成装置に、トリメチロールプロパン(TMP)を600g(4.47mol)、日油社製、工業用オレイン酸NAA−34(不飽和酸含有量:90質量%)を3108g(11.18mol)仕込み、窒素気流下、220℃で反応水を留去しつつ常圧で反応させ、酸価が0.1mgKOH/g以下となるまで反応させた。反応終了後、300℃、5torrにて低分子量成分を除去して、エステルを得た。
得られたエステルを部分エステルIで用いたガスクロマトグラフィー分析条件にて分析した結果、TMPジエステル41.5質量%、TMPトリエステル58.5質量%の部分エステルと完全エステルの混合物であった。
部分エステルIで使用した装置と同様の合成装置に、トリメチロールプロパン(TMP)を400g(2.98mol)、日油社製、工業用オレイン酸NAA−34(不飽和酸含有量:90質量%)を3315g(11.93mol)仕込み、窒素気流下、220℃で反応水を留去しつつ常圧で反応させ、水酸基価が0.1mgKOH/g以下となるまで反応させた。反応終了後、遊離脂肪酸を除去する目的で、水酸化カリウムを投入し、脱酸水洗を行った。
なお、脱酸水洗は、乳化を防止するために数回に分けて実施し、脱酸廃液が中性となるまで繰り返し同様の操作を行った。脱酸水洗後の溶液を95℃にて5torrにて減圧し、水分を除去して、エステルを得た。
得られたエステルを部分エステルIで用いたガスクロマトグラフィー分析条件にて分析した結果、TMPジエステル0.5質量%、TMPトリエステル99.5質量%のエステルの部分エステルと完全エステルの混合物であった。
部分エステルIで使用した装置と同様の合成装置に、ペンタエリスリトール(PE)を550g(4.04mol)、日油社製、工業用オレイン酸NAA−34(不飽和酸含有量:90質量%)を3369g(12.12mol)仕込み、窒素気流下、220℃で反応水を留去しつつ常圧で反応させ、酸価が0.1mgKOH/g以下となるまで反応させて、エステルを得た。
得られたエステルを部分エステルIで用いたガスクロマトグラフィー分析条件にて分析した結果、PEモノエステル4.8質量%、PEジエステル27.8質量%、PEトリエステル36.3質量%、PEテトラエステル31.1質量%(PEモノエステル、PEジエステル以外の合計含有量:67.4質量%)の部分エステルと完全エステルの混合物であった。
部分エステルIで使用した装置と同様の合成装置に、ペンタエリスリトール(PE)を350g(2.57mol)、日油社製、工業用オレイン酸NAA−34(不飽和酸含有量:90質量%)を3573g(12.85mol)仕込み、窒素気流下、220℃で反応水を留去しつつ常圧で反応させ、水酸基価が0.1mgKOH/g以下となるまで反応させた。反応終了後、遊離脂肪酸を除去する目的で、水酸化カリウムを投入し、脱酸水洗を行った。なお、脱酸水洗は、乳化を防止するため数回に分けて実施し、脱酸廃液が中性となるまで繰り返し同様の操作を行った。脱酸水洗後の溶液を95℃にて5torrにて減圧し、水分を除去して、エステルを得た。
得られたエステルを部分エステルIで用いたガスクロマトグラフィー分析条件にて分析した結果、PEトリエステル1.2質量%、PEテトラエステル98.8質量%(PEモノエステル、PEジエステル以外の合計含有量:100.0%)のエステルであった。
上記で合成したエステル混合物I〜Vを表1に記載の配合割合で混合し、エステル基油1〜12を調製した。調製したエステル基油のモノエステル、ジエステル、3価以上のエステル比率も表1に記載する。
上記で調製したエステル基油1〜12に下記の添加剤を所定量配合し、表2〜5の油圧作動油組成物を調製した。
(B−1)2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物(R.T.Vandervilt社製Vanlube RD)
(B−2)6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(精工化学社製ノンフレックスAW)
(C)プロパン酸, ビス(2−メチルプロポキシ)フォスフィノチオールチオ−2−メチル(BASF社製IRGALUBE 353)
(D−2)カルボキシイミダゾリン混合物(カルボキシイミダゾリン系さび止め剤:AFTON社製HiTEC536)
(フェノール系酸化防止剤)ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)
(アミン系酸化防止剤)N−フェニル−1,1,3,3−テトラメチルブチルナフタレン−1−アミン(BASF社製IRGANOX L06)
(金属不活性化剤)N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−(4又は5)−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン(BASF社イルガメット39)
調製した油圧作動油組成物について以下の評価を行い、その結果を表2〜5に記載した。
日本工業規格JIS K2514(1996)に従いタービン油酸化安定度試験(RBOT)を実施した。表に記載した数字は最大圧力から175kPa降下するのに要した時間(分)を表し、数値が大きいほど、酸化安定性が高いことを示す。
高速シェル4球試験機において、荷重294N(30kg)、回転数1200rpm、回転時間60分、温度75℃にて試験を実施し、3つの鋼球の摩耗痕径(μm)を測定し、その平均値を記載した。磨耗痕径(μm)が小さいほど、耐摩耗性が優れていることを示す。
日本工業規格JIS K2510に従い潤滑油さび止め性能試験(蒸留水)を実施した。
日本工業規格JIS K2540に記載のターンテーブル試験機にて、170℃、24時間にて潤滑油熱安定度試験を実施した。本試験において、析出物やスラッジが発生しなかった場合は、「スラッジ無し」として表に記載しており、熱安定度が高いことを表す。一方、析出物やスラッジが発生した場合は、「スラッジ有り」として表に記載しており、熱安定度が低いことを表す。
日本工業規格JIS K2565に従い、クリーブランド開放式にて引火点を測定した。本試験での引火点が高いほど、難燃性に優れている。
日本工業規格JIS K2565に従い、クリーブランド開放式にて燃焼点を測定した。本試験での燃焼点が高いほど、難燃性に優れている。
日本工業規格JIS K2520に従い、抗乳化性試験を実施した。表に記された数値は、油層(ml)−水層(ml)−乳化層(ml)(経過時間)を示し、経過時間が短いほど、抗乳化性が優れていることを示す。
OECD301Cに従い、生分解性試験を実施した。なお、公益財団法人日本環境協会エコマーク事務局では、本試験での生分解性が60%以上で生分解性潤滑油としての基準を満たしている。本試験では生分解性が60%以上のものを合格とし、60%未満のものを不合格とした。
Claims (1)
- 下記のエステル化合物(A)、下記のキノリン誘導体又はその重合物(B)及び下記のジチオリン酸エステル誘導体(C)を含有し、エステル化合物(A)100質量部に対して、キノリン誘導体又はその重合物(B)を0.5〜1.5質量部、ジチオリン酸エステル誘導体(C)を0.1〜0.5質量部含有する油圧作動油組成物。
(A)炭素数が5〜10であり、アルコールの価数が3〜6価のネオペンチルポリオールと、炭素数16〜22の直鎖不飽和脂肪酸とのエステル化合物であり、前記エステル化合物中、モノエステル(a1)を0.1〜5質量%、ジエステル(a2)を10〜30質量%、3価以上のエステル(a3)を65〜89.9質量%含有し、モノエステル(a1)/ジエステル(a2)の質量比が1/99〜20/80であるエステル化合物
(B)2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン又はその重合物、6−メトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン又はその重合物、及び6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン又はその重合物からなる群から選ばれる1又は2以上のキノリン誘導体又はその重合物
(C)下記式で表されるジチオリン酸エステル誘導体
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