JP2016096333A - 半導体レーザ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】反射型波長分散素子を使用した場合でも光ビームが波長重畳された、高光出力の半導体レーザ装置を提供する。【解決手段】半導体レーザ装置は、互いに異なる波長の光ビーム11a,11b,11cを放射する複数の半導体レーザ素子1a,1b,1cと、各発光点2a、2b、2cから放射される光ビームを、波長依存の回折角で反射する反射型波長分散素子6と、半導体レーザ素子の端面とともに外部共振器を構成し、反射型波長分散素子で回折した光ビーム12を部分的に反射する部分反射ミラー7と、各発光点から放射される光ビームを反射型波長分散素子上で重畳させるためのビーム結合素子4と、反射型波長分散素子に入射する光ビームおよび反射型波長分散素子で回折した光ビームが通過するように配置され、部分反射ミラーに入射する光ビームが平行になるように光ビームの発散角を補正するためのビーム発散角補正素子5とを備える。【選択図】図1
Description
本発明は、互いに異なる波長の光ビームを重畳させる半導体レーザ装置に関する。
従来の半導体レーザ装置(例えば、特許文献1)では、半導体レーザバーの各発光点の直後にレンズを配置することにより各発光点からのビームを波長分散素子に集光し、波長分散素子の近傍にレンズを配置することにより各ビームを平行化し、波長分散素子の波長分散性により各発光点からのビームを重畳し、重畳したビームに対して部分透過ミラーを設置して外部共振器を形成することにより、装置から出力されるビームの輝度を向上させている。
こうした波長結合外部共振器型半導体レーザ装置において、反射型の波長分散素子を使用した場合、波長分散素子へ入射する光ビームと、波長分散素子から回折して反射する光ビームとの間の分離角度が小さいために、波長分散素子の近傍にビーム平行化素子を配置することができないという課題がある。
本発明の目的は、半導体レーザバーの各発光点の直後にビーム結合素子を配置することにより各発光点からのビームを波長分散素子に集光する半導体レーザ装置において、波長分散素子に反射型の素子を使用した場合でも光ビームの波長重畳を実現でき、これにより小型で高効率な半導体レーザ装置を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明に係る半導体レーザ装置は、
互いに異なる波長の光ビームを放射する複数の発光点を有する半導体レーザ素子と、
各発光点から放射される光ビームを、波長依存の回折角で反射する反射型波長分散素子と、
前記半導体レーザ素子の端面とともに外部共振器を構成し、前記反射型波長分散素子で回折した光ビームを部分的に反射する部分反射ミラーと、
前記半導体レーザ素子の出射側に配置され、各発光点から放射される光ビームを前記反射型波長分散素子上で重畳させるためのビーム結合素子と、
前記反射型波長分散素子に入射する光ビームおよび前記反射型波長分散素子で回折した光ビームが通過するように配置され、前記部分反射ミラーに入射する光ビームが平行になるように光ビームの発散角を補正するためのビーム発散角補正素子と、を備えることを特徴とする。
互いに異なる波長の光ビームを放射する複数の発光点を有する半導体レーザ素子と、
各発光点から放射される光ビームを、波長依存の回折角で反射する反射型波長分散素子と、
前記半導体レーザ素子の端面とともに外部共振器を構成し、前記反射型波長分散素子で回折した光ビームを部分的に反射する部分反射ミラーと、
前記半導体レーザ素子の出射側に配置され、各発光点から放射される光ビームを前記反射型波長分散素子上で重畳させるためのビーム結合素子と、
前記反射型波長分散素子に入射する光ビームおよび前記反射型波長分散素子で回折した光ビームが通過するように配置され、前記部分反射ミラーに入射する光ビームが平行になるように光ビームの発散角を補正するためのビーム発散角補正素子と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、反射型波長分散素子に入射する光ビームおよび反射型波長分散素子で回折した光ビームがビーム発散角補正素子を通過するように構成することによって、外部共振器の小型化が図られる。また透過型波長分散素子よりも高い回折効率を望める反射型波長分散素子を用いることができるため、発振効率が向上する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による半導体レーザ装置を示す構成図であり、図1(a)は側面図、図1(b)は平面図である。半導体レーザ装置は、複数の半導体レーザ素子1a,1b,1cと、ビーム平行化光学系3と、ビーム結合素子4と、ビーム発散角補正素子5と、反射型波長分散素子6と、部分反射ミラー7などを備え、反射型波長分散素子6の波長分散効果を用いて、半導体レーザ素子1a,1b,1cの各発光点2a,2b,2cから放射され、互いに異なる波長の光ビーム11a,11b,11cを1本の光ビーム12に重畳するように構成される。ここでは、3つの半導体レーザ素子を使用した場合を例示するが、2つまたは4つ以上の半導体レーザ素子でも同様に本発明は適用できる。
図1は本発明の実施の形態1による半導体レーザ装置を示す構成図であり、図1(a)は側面図、図1(b)は平面図である。半導体レーザ装置は、複数の半導体レーザ素子1a,1b,1cと、ビーム平行化光学系3と、ビーム結合素子4と、ビーム発散角補正素子5と、反射型波長分散素子6と、部分反射ミラー7などを備え、反射型波長分散素子6の波長分散効果を用いて、半導体レーザ素子1a,1b,1cの各発光点2a,2b,2cから放射され、互いに異なる波長の光ビーム11a,11b,11cを1本の光ビーム12に重畳するように構成される。ここでは、3つの半導体レーザ素子を使用した場合を例示するが、2つまたは4つ以上の半導体レーザ素子でも同様に本発明は適用できる。
以下、理解容易のため、半導体レーザ素子1a〜1cの配列方向をX方向とし、光ビーム11bの進行方向をZ方向とし、X方向およびZ方向に垂直な方向をY方向とする。
半導体レーザ素子1a〜1cは、半導体結晶を通電することによって、電子と正孔の再結合により光を発生する。半導体結晶には、対向する2つの端面が形成される。一般の半導体レーザ素子は、これらの2つの端面を共振器ミラーとして使用する内部共振器型として構成される。一方、本実施形態に係る半導体レーザ素子1a〜1cは、後方の端面を第1共振器ミラーとして使用し、外部の部分反射ミラー7を第2共振器ミラーとして使用する外部共振器型として構成される。この場合、後方の端面は高反射コーティングが施され、前方の端面は無反射コーティングが施されることが好ましい。こうした外部共振器は、X方向およびY方向についてレーザ共振条件を満足している。
また、半導体レーザ素子1a〜1cは、1つのチップが1つの発光点(エミッタ)を有する個別素子(いわゆるシングルエミッタ半導体レーザ)として構成してもよく、あるいは、1つのチップが2つ以上の発光点を有する集積素子(いわゆる半導体レーザバー)として構成してもよい。
発光点2a〜2cから放射した光ビーム11a〜11cは、図1に示した光軸に沿って伝搬するが、そのビーム幅および発散角はX方向とY方向で独立している。一般の半導体レーザ素子から発生する光の発散角は異方性があり、Y方向には急速に発散し、X方向には緩やかに発散する。光ビームの品質を示すビームプロダクトパラメータ(BPP:ビーム半径とビーム発散角の積)は、Y方向でほぼ回折限界であるのに対し、X方向は回折限界の10倍程度であるのが一般的である。
ビーム平行化光学系3は、半導体レーザ素子1a〜1cの各発光点2a〜2cから放射される光ビーム11a〜11cを平行化する機能を有し、例えば、円筒レンズ、球面レンズ、非球面レンズ、曲率を有するミラーまたはこれらの組合せによって構成される。上述のように、半導体レーザ素子から放射される光ビームの発散角は、異方性があり、即ち、X方向発散角とY方向発散角とが異なる。従って、ビーム平行化光学系3は、複数枚のレンズまたは曲率ミラーを組み合わせて、光ビームのX方向発散角およびY方向発散角がほぼゼロになるように、X方向パワーとY方向パワーとが異なる光学系を構成することが好ましい。またビーム平行化光学系3は、ビーム回転光学系(例えば、シリンドリカルレンズアレイ(特開2000−137139号の図2参照)、反射鏡アレイ(国際公開第98/08128号参照)など)を含んでもよい。発光点から放射された異方性を持つ光ビームは、こうしたビーム回転光学系を通過することによって、光軸に垂直な面内で約90度回転する。
ビーム結合素子4は、半導体レーザ素子1a〜1cの出射側、好ましくは各発光点2a〜2cの近傍に配置され、各発光点から放射される光ビームを反射型波長分散素子6上で空間的に重畳させる機能を有し、例えば、円筒レンズ、球面レンズ、非球面レンズ、曲率を有するミラーまたはこれらの組合せによって構成され、好ましくはX方向にのみ屈折力を有し、Y方向パワーがゼロである円筒レンズを含む。
ビーム結合素子4のX方向焦点距離をfaとして、反射型波長分散素子6を発光点2からほぼfaの距離に配置することによって、発光点2a〜2cより出射した光ビーム11a〜11cは、反射型波長分散素子6上で空間的に重畳される。このとき、発光点2a〜2cとビーム結合素子4の間の距離は焦点距離faよりも十分短いため、発光点より出射した光ビームの発散角は、ビーム結合素子4によって殆ど影響を受けなくなる。
前述のように、光ビーム11a〜11cは、ビーム平行化光学系3を通過した時点で平行化されるが、ビーム平行化光学系3から反射型波長分散素子6までの距離がビーム平行化光学系3の出射後の光ビームのレイリー長よりも十分長く、そして、ビーム結合素子4により光ビームの発散角は殆ど影響を受けないことから、光ビーム11a〜11cは再度発散しながら伝搬するようになる。
ビーム発散角補正素子5は、部分反射ミラー7に入射する光ビーム12が平行になるように光ビームの発散角を補正する機能を有し、例えば、円筒レンズ、球面レンズ、非球面レンズ、曲率を有するミラーまたはこれらの組合せによって構成され、好ましくはX方向にのみ屈折力を有し、Y方向パワーがゼロである円筒レンズを含む。
ビーム発散角補正素子5のX方向焦点距離をfbとして、発光点2a〜2cから距離fbの位置にビーム発散角補正素子5を設置することによって、光ビーム11a〜11cの発散角が補正され、光ビームは平行化される。ここで、ビーム結合素子4を用いて反射型波長分散素子6上の一点に重畳された光ビーム11a〜11cがずれることを防ぐため、ビーム発散角補正素子5は反射型波長分散素子6の近傍に配置されることが好ましく、faとfbはできるだけ等しい長さとすることが好ましい。また、反射型波長分散素子6上において複数のビーム11a〜11cを完全に重畳させるためには、ビーム結合素子4の位置を少しずらして位置決めすることが好ましい。
反射型波長分散素子6は、互いに異なる波長の光ビーム11a〜11cを波長依存の回折角で反射する機能を有し、例えば、波長未満のピッチで周期的に配列した凹凸状の格子パターンを有する反射型回折格子によって構成される。反射型波長分散素子6上に重畳された複数の光ビーム11a〜11cは、各波長に応じて異なる角度で回折するため、これらの回折角の差に対応して予め入射角をずらしておくことによって、単一の光ビーム12に重畳することができる。
ここで、ZX面に関して、反射型波長分散素子6の配置角度Θは、反射型波長分散素子6に対する複数の光ビーム11a〜11cのいずれか1つの入射角αと、重畳された光ビーム12の回折角βとがほぼ等しくなるように設定することが好ましい。このように入射角αと回折角βの角度がほぼ等しくなる配置は、一般にリトロー配置と呼ばれ、反射型波長分散素子6の回折効率が最も高くなる。
なお、反射型波長分散素子6を完全にリトロー配置とすると、光ビーム11a〜11cと重畳された光ビーム12との分離が困難になる。そのため、YZ面に関して反射型波長分散素子6を僅かに傾斜させて、光ビーム12がZX面に対して傾くように配置することが好ましく、これにより光ビーム11a〜11cと光ビーム12との分離が可能になる。反射型波長分散素子6の傾斜角Ψは大きくなり過ぎると、回折効率が低下することが本発明者らの実験により判明しており、その結果、傾斜角Ψは5°以下であることが好ましい。反射型波長分散素子6の傾斜方向は、図1(b)に示すようにYZ面内で傾斜させてもよく、及び/又は、XY面内で傾斜させてもよく、これにより光ビーム12がZX面に対して傾くように設定できる。
反射型波長分散素子6としては、反射型回折格子が用いられる。透過型回折格子では、回折光が透過する際、格子パターンが形成されていない裏面での反射ロスが発生する。一方、反射型回折格子では、こうした裏面反射ロスが生じないため、透過型と比べて高い回折効率が得られる。特に、格子パターンが形成された誘電体多層膜を有する反射型回折格子を使用した場合、波長960nm〜1000nmという広帯域のビームに対して、溝本数密度が1850本/mm程度である非常に高密度の回折格子であっても理論的には95%以上の回折効率が得られる。
反射型波長分散素子6により回折角βで回折し重畳された光ビーム12は、反射型波長分散素子6の近傍に配置されたビーム発散角補正素子5に再度入射する。ビーム発散角補正素子5はX方向焦点距離fbを有しており、光ビーム12はビーム発散角補正素子5に入射する際に平行化されている。そのためビーム発散角補正素子5を通過した光ビーム12は、ビーム発散角補正素子5から距離fbの位置でビームウエストとなるように集光される。
このとき、光ビーム12のビームウエスト付近に部分反射ミラー7を配置することにより、部分反射ミラー7に入射する光ビーム12はほぼ平行になる。その結果、半導体レーザ素子1a〜1cの後方端面と部分反射ミラー7との間で安定した光共振器が得られる。光ビーム12の一部は、部分反射ミラー7を通過してレーザ出力21として取り出され、一方、光ビーム12の残部は、部分反射ミラー7で反射され、反射型波長分散素子6を経由して半導体レーザ素子1a〜1cの発光点2a〜2cに向けて逆向きに伝搬することにより、レーザ発振の動作に寄与する。安定した光共振器を実現するために、部分反射ミラー7の位置は、ビーム発散角補正素子5から0.6×fb〜1.4×fbの範囲が好ましく、さらに0.8×fb〜1.2×fbの範囲がより好ましい。
この外部共振器が成立している状態では、部分反射ミラー7と反射型波長分散素子6との間には、重畳された光ビーム12が伝搬する1本の光軸が形成され、一方、反射型波長分散素子6と各発光点2a〜2cとの間には、光ビーム11a〜11cが個々に伝搬する3本の光軸が形成される。従って、これらの光軸が成り立つように、各発光点2a〜2cでのレーザ発振波長が一意的に決定される。即ち、外部共振器が成立している場合、図1において、光ビーム11a〜11cが重畳されて光ビーム12となるように、発光点2a,2b,2cでの発振波長λa,λb,λcが互い異なるように一意的に決定される(λa≠λb≠λc≠λa)。
このように発光点2a〜2cから3本の光ビーム11a〜11cが重畳されて1本の光ビーム12となり、部分反射ミラー7からレーザ出力21として取り出すことによって、輝度を約3倍にすることが可能である。なお、半導体レーザ素子および発光点の数を増加させることによって、輝度をより向上させることが可能である。
本実施形態では、ビーム発散角補正素子5を反射型波長分散素子6の近傍に配置し、反射型波長分散素子6の入射前および反射後で光ビームがビーム発散角補正素子5を通過する構成について説明した。しかしながら、反射型波長分散素子6の近傍ではなく、光ビーム12が光ビーム11a〜11cから充分に分離された位置、即ち、光ビーム12だけが通過するようにビーム発散角補正素子5を設置することによっても外部共振器を構成することも可能であるが、その場合はビーム発散角補正素子5の焦点距離が非常に長くなってしまう。本発明者らの実験結果によると、ビーム発散角補正素子5の焦点距離が長くなるほど、共振器損失が増大し、レーザ出力21が低下することが判明している。
また、光ビーム11a〜11cと重畳された光ビーム12との分離角度を大きく確保すれば、反射型波長分散素子6の近傍にビーム発散角補正素子5を配置することは一応可能であるが、その場合はリトロー配置ではなくなり、回折効率が低下し、レーザ出力21が低下してしまう。
以上説明したように、本実施形態では、複数の発光点2a〜2cから出射した複数のビーム11a〜11cを、発光点の近傍に配置したビーム結合素子4を用いて反射型波長分散素子6上で一点に重畳し、1本の光ビーム12に変換する半導体レーザ装置において、ビーム発散角補正素子5を反射型波長分散素子6の近傍に配置した状態で外部共振器を構成することが可能になる。そのため、ビーム発散角補正素子5の焦点距離を短くすることが可能になり、共振器損失を低減できる。また透過型波長分散素子よりも高い回折効率を望める反射型波長分散素子6を用いることによって、レーザ出力21が大きく増加し、発振効率が向上する。さらには発光点の近傍にビーム結合素子4を配置できるため装置を小型化できるという顕著な効果を奏する。
実施の形態2.
図2は本発明の実施の形態2による半導体レーザ装置を示す構成図であり、図2(a)は側面図、図2(b)は平面図である。図2において、図1と同一符号は、同一または類似の部分を示している。実施の形態1では、ビーム発散角補正素子5のX方向焦点距離を、発光点からビーム発散角補正素子までの距離fbに対応させていたが、本実施形態では、ビーム発散角補正素子31のX方向焦点距離fcを該距離fbの約2倍以上とし(fc≧2×fb)、重畳された光ビーム12がビーム発散角補正素子31を通過する際に平行になるような構成を採用している。
図2は本発明の実施の形態2による半導体レーザ装置を示す構成図であり、図2(a)は側面図、図2(b)は平面図である。図2において、図1と同一符号は、同一または類似の部分を示している。実施の形態1では、ビーム発散角補正素子5のX方向焦点距離を、発光点からビーム発散角補正素子までの距離fbに対応させていたが、本実施形態では、ビーム発散角補正素子31のX方向焦点距離fcを該距離fbの約2倍以上とし(fc≧2×fb)、重畳された光ビーム12がビーム発散角補正素子31を通過する際に平行になるような構成を採用している。
ここで、ビーム発散角補正素子31のX方向焦点距離fcについて検討する。本実施形態において、特定の発散角を有する光ビーム11a〜11cがビーム発散角補正素子31を通過し、続いて反射型波長分散素子6で回折され、これにより重畳された光ビーム12が再度ビーム発散角補正素子31を通過する際に、光ビーム12が平行化される。即ち、特定の発散角を有する光ビームをビーム発散角補正素子31に2回通過させることによって、光ビームを平行化している。
ビーム発散角補正素子31のX方向焦点距離fcを求めるためには、2枚のビーム発散角補正素子31が距離2Lの間隔で配置されたとしたときの結合焦点距離Fall(2枚の発散角補正素子を組み合わせた焦点距離)を考えればよい。結合焦点距離Fallは以下の式(1)で求めることができる。
ビーム発散角補正素子31から、式(1)で求めた結合焦点までの距離Sは、式(2)で求めることができる。
外部共振器を成立させるためには、S>fbであることが好ましいため、fcは下記の式(3)のように求められる。
次に、式(3)について具体的に検討する。一例として、fb=550mm、L=50mmを式(3)に代入すると、fc>1152.268mmとなる。従って、ビーム発散角補正素子31として上記結果を満足する焦点距離fcのものを使用すればよい。
以上のように、本実施形態では、ビーム発散角補正素子31の焦点距離fcを、発光点からビーム発散角補正素子までの距離fbの約2倍以上とすることにより、ビーム発散角補正素子31を通過した後の重畳光ビーム12を平行化することができる。そのため、ビーム発散角補正素子31の後方における部分反射ミラー7の位置を任意に設定することができる。その結果、装置構成の自由度および配置裕度が格段に増加し、設計および組立の簡略化が図られる。さらに部分反射ミラー7上での光ビーム12のビーム径が大きくなるため、パワー密度が減少し、装置の信頼性も高くなるという顕著な効果を奏する。
実施の形態3.
図3は本発明の実施の形態3による半導体レーザ装置を示す構成図であり、図3(a)は側面図、図3(b)は平面図である。図3において、図1と同一符号は、同一または類似の部分を示している。
図3は本発明の実施の形態3による半導体レーザ装置を示す構成図であり、図3(a)は側面図、図3(b)は平面図である。図3において、図1と同一符号は、同一または類似の部分を示している。
本実施の形態3の効果を説明するために、まずは、比較対象である実施の形態1における部分反射ミラー7の設置場所に関する制限を改めて説明する。
実施の形態1では、ビーム発散角補正素子5を用いて、反射型波長分散素子6に入射するビーム11a,11b,11cの各ビームをそれぞれX方向にほぼ平行化する。反射型波長分散素子6により回折され、再びビーム発散角補正素子5に入射され形成される重畳光ビーム12は、X方向に集光されるが、そのビームウエストの近辺に部分反射ミラー7を設置している。このビームウエストの位置は、ビーム発散角補正素子5からビーム発散角補正素子5の焦点距離fb離れた所であるから、図1からも明らかなように、部分反射ミラー7は半導体レーザ素子1の近辺に設置されることになる。
半導体レーザ素子1a〜1cの周囲には、ビーム平行化光学系3およびビーム結合素子4が設置され、さらに半導体レーザ素子1には給電するための配線(不図示)が設置される。これらの部品設置のために、部分反射ミラー7およびその角度調整機構を設置することが困難であることがある。そこで、十分な設置スペースを確保するために、反射型波長分散素子6の傾斜角Ψを大きくすると、反射型波長分散素子6の回折効率が低下し、得られるレーザ出力も低下する傾向がある。
この対策として、本実施の形態3では、反射型波長分散素子6と部分反射ミラー7の間に、X方向リレーレンズ41を設置している。X方向リレーレンズ41はX方向にのみ屈折力を持ち、そのX方向の焦点距離はfdであり、Y方向の屈折力はゼロである。X方向リレーレンズ41は、反射型波長分散素子6とX方向リレーレンズ41との距離がほぼfb+fd+Lとなる位置に設置される。部分反射ミラー7は、X方向リレーレンズ41からの距離がfdとなる位置の近辺に設置される。よって反射型波長分散素子6と部分反射ミラー7との距離は、およそfb+2×fd+Lとなる。本素子間の距離条件を満たすとき、部分反射ミラー7上には、X方向のビームウエストが形成され、安定な発振が可能となる。部分反射ミラー7と半導体レーザ素子1の距離は、およそ2×fdであるから、fdすなわちX方向リレーレンズ41の焦点距離を適切に設定することで、反射型波長分散素子6の傾斜角Ψに依らず、部分反射ミラー7およびその調整機構を設置するためのスペースを十分確保することが可能となる。
以上のように、本実施の形態によれば、反射型波長分散素子6の傾斜角Ψを小さく維持しながら、高い回折効率を得ることができる。その結果、高いレーザ出力と調整及び組立の容易性を両立可能であるという顕著な効果を奏する。
実施の形態4.
図4は本発明の実施の形態4による半導体レーザ装置を示す構成図であり、図4(a)は側面図、図4(b)は平面図である。図4において、図1と同一符号は、同一または類似の部分を示している。
図4は本発明の実施の形態4による半導体レーザ装置を示す構成図であり、図4(a)は側面図、図4(b)は平面図である。図4において、図1と同一符号は、同一または類似の部分を示している。
本実施の形態4と実施の形態1〜3との差異は、ビーム発散角補正素子51が、光軸周りに等方的な球面レンズ、即ち、X方向およびY方向に同等の屈折力を有するレンズであることである。他の実施の形態1〜3におけるビーム発散角補正素子5,31は、X方向にのみ屈折力を有するシリンドリカルレンズであるが、本実施の形態4におけるビーム発散角補正素子51を球面レンズにすることにより、Y方向にも屈折力を有する。
半導体レーザ素子1から反射型波長分散素子6に向かう光ビーム11と、ビーム発散角補正素子51の中心はY方向にずらして設置する(以下ずらし量をδとする。図4(b)参照)。このとき、ビーム発散角補正素子51のY方向の屈折力によって、ビームはY方向に偏向される。偏向される角度は、ビーム発散角補正素子51の焦点距離fbと上記ずらし量δとを用いて、
Y方向偏向角度=tan―1(δ/fb)…(4)
で表わされる。
Y方向偏向角度=tan―1(δ/fb)…(4)
で表わされる。
光ビーム11がY方向に偏向されて反射型波長分散素子6に入射するので、反射型波長分散素子6からの出射光は、図4(b)に示すようにY方向に逆向き方向に進む。即ち、反射型波長分散素子6を傾斜せずに鉛直方向に設置した場合でも、反射型波長分散素子6への入射ビーム(光ビーム11a,11b,11c)と出射ビーム(重畳光ビーム12)の光路が分離しやすくなる。反射型波長分散素子6を傾斜させないため、回折効率の低下を抑制可能である。一方、反射型波長分散素子6を傾斜配置すると、光の進行方向に対して分散軸が傾斜することによってY方向の出射角が波長に依存して変化する。本効果は傾斜角Ψが小さいほど小さいが、外部共振器からのレーザ出力のビーム品質(集光性)をわずかながらにでも劣化させる。本実施の形態によると本現象による集光性の劣化を抑制することが可能になり、結果的に高出力でビーム品質の良いレーザ出力を得ることが可能となる。
fb=Lとなるときは、光ビーム11と重畳された光ビーム12は平行ビームとなる。fb≠Lの時には、光ビーム11と重畳された光ビーム12は平行にはならず、ビームはY方向に発散角を有するので、この発散角を補正して部分反射ミラー7への入射ビームを平行化するために、Y方向リレーレンズ52を挿入してもよい。また、部分反射ミラー7の距離を調整するために、さらに実施の形態3と同様にX方向リレーレンズを設置してもよいし、X方向およびY方向の双方に屈折力を持たせ、X方向リレーレンズとY方向リレーレンズを一枚で構成することも可能である。
以上のように本実施の形態によると反射型波長分散素子6を傾斜せずに設置しても、光ビーム11と重畳された光ビーム12を分離できるため、その結果、高出力で集光性の劣化の少ないレーザ出力を得ることが可能であるという顕著な効果を奏する。
1a,1b,1c 半導体レーザ素子、 2a,2b,2c 発光点、
3 ビーム平行化光学系、 4 ビーム結合素子、 5 ビーム発散角補正素子、
6 反射型波長分散素子、 7 部分反射ミラー、
11a,11b,11c 光ビーム、 12 重畳された光ビーム、
21 レーザ出力、 31 ビーム発散角補正素子。
41 X方向リレーレンズ、 51 ビーム発散角補正素子、
52 Y方向リレーレンズ。
3 ビーム平行化光学系、 4 ビーム結合素子、 5 ビーム発散角補正素子、
6 反射型波長分散素子、 7 部分反射ミラー、
11a,11b,11c 光ビーム、 12 重畳された光ビーム、
21 レーザ出力、 31 ビーム発散角補正素子。
41 X方向リレーレンズ、 51 ビーム発散角補正素子、
52 Y方向リレーレンズ。
Claims (8)
- 互いに異なる波長の光ビームを放射する複数の発光点を有する半導体レーザ素子と、
各発光点から放射される光ビームを、波長依存の回折角で反射する反射型波長分散素子と、
前記半導体レーザ素子の端面とともに外部共振器を構成し、前記反射型波長分散素子で回折した光ビームを部分的に反射する部分反射ミラーと、
前記半導体レーザ素子の出射側に配置され、各発光点から放射される光ビームを前記反射型波長分散素子の上で重畳させるためのビーム結合素子と、
前記反射型波長分散素子に入射する光ビームおよび前記反射型波長分散素子で回折した光ビームが通過するように配置され、前記部分反射ミラーに入射する光ビームが平行になるように光ビームの発散角を補正するためのビーム発散角補正素子と、を備えることを特徴とする半導体レーザ装置。 - 複数の発光点は、第1方向に沿って直線状に配置されており、
前記ビーム結合素子は、第1方向にのみ屈折力を有する円筒レンズを含むことを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ装置。 - 前記ビーム発散角補正素子は、第1方向にのみ屈折力を有する円筒レンズを含むことを特徴とする請求項2記載の半導体レーザ装置。
- 前記ビーム発散角補正素子から前記部分反射ミラーまでの距離は、前記ビーム発散角補正素子の第1方向の焦点距離をfbとして、0.6×fbより大きく、1.4×fbより小さいことを特徴とする請求項3記載の半導体レーザ装置。
- 前記ビーム発散角補正素子の第1方向の焦点距離は、発光点から前記ビーム発散角補正素子までの距離の2倍以上であることを特徴とする請求項3記載の半導体レーザ装置。
- 前記反射型波長分散素子は、各発光点から放射される光ビームの光軸を含む面と交差する方向に傾斜していることを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ装置。
- 前記ビーム発散角補正素子と前記部分反射ミラーの間に配置され、第1方向に屈折率を有するレンズをさらに備えることを特徴とする請求項2,3,6のいずれかに記載の半導体レーザ装置。
- 前記ビーム発散角補正素子は、光軸周りに等方的なレンズであることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ装置。
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