JP2016083831A - 射出成形品の製造方法および射出成形品 - Google Patents

射出成形品の製造方法および射出成形品 Download PDF

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忠勝 高崎
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Abstract

【課題】汎用の射出成形及び金型加熱設備を利用して、扁平状フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物を射出成形して得られる成形品の意匠面側の外観に優れた成形品の製造方法を提供すること。
【解決手段】射出成形品の意匠面金型表面温度を120℃以上にて、ゲート3からキャビティ1内に射出する工程、扁平状フィラー配向によるウェルドライン5が形成された後、他のゲート4からウェルドライン5に対して交差方向にさらに射出する工程、意匠面金型表面温度を熱可塑性樹脂組成物の荷重たわみ温度T(℃)以下にて型開きする工程を有し、熱可塑性樹脂組成物の成形温度T(℃)、溶融粘度が6,000Pa・sおよび9,000Pa・sになる温度T(℃)、温度T(℃)、意匠面裏側金型表面温度T(℃)とした場合、下記式<1><2>を満足する射出成形品の製造方法。式<1>T≦T≦(T+170)式<2>T≦100−(T−T
【選択図】図2

Description

本発明は、射出成形品の製造方法および射出成形品に関する。
熱可塑性樹脂および扁平状フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物は、扁平状フィラーがもたらす視覚的効果により、メタリック調やパール調の外観を発現させることから、製品の意匠性を求められる射出成形品に好適に用いられている。特に、扁平状フィラーとして、アルミフレークなどを原料とするメタリック着色剤などを含む熱可塑性樹脂組成物は、意匠性が高く、車輌内外装部品、掃除機、電話機、冷蔵庫等の家電製品、パソコン、デジタルカメラ、プリンター、オーディオ機器等の電子機器やOA機器、トイレ、洗面化粧台、浴室備品等のサニタリー用品、玩具、化粧品容器等に好適に用いられる。
扁平状フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物を射出成形する場合、金型キャビティ内に充填された溶融樹脂同士が会合した部位にウェルドラインが形成され、外観が損なわれる課題があった。
熱可塑性樹脂組成物中の扁平状フィラーは、射出成形時の樹脂組成物の流動に伴い、射出成形品表面に対して平行に配向することにより、目的とする意匠を発現する一方で、通常目視では判別できない樹脂組成物の流動パターンを可視させることにもなり、特に、ウェルド付近においては、扁平状フィラーの配向が樹脂組成物の流動ムラを可視させることにもなる。これは、金型キャビティ内に充填された樹脂組成物同士の会合部位において、熱可塑性樹脂組成物中の扁平状フィラーが、射出成形品表面に対して平行に近い角度で配向している部位と、そうではない様々な角度で配向している部位において、光の反射具合が異なるためである。ウェルドライン下部(射出成形品内部)においては、射出成形品表面に対して直立配向した扁平状フィラーが存在し、射出成形品表面に対して平行に配向した部分に比べて光が反射し難くなり、発色性に影響するため、色ムラが目立つこととなる。扁平状フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物は、商品価値を高める有用な表面加飾手段であるが、上述のような課題があるため、適用できる射出成形品の形状が制限されてきた。
外観特性に優れた成形品を作製する手段として、例えば、成形品表面を形成させるべき金型表面を選択的に予め成形材料の加熱変形温度以上に加熱し、溶融成形材料を金型キャビティ内に供給し、供給された溶融成形材料の少なくとも一部に剪断力を加えて流動させた後、成形材料を冷却・凝固させる成形方法(例えば、特許文献1参照)や、スチレン系樹脂、充填材を配合してなるメタリック調樹脂組成物を、射出圧縮成形法または射出プレス成形法により成形し、金型温度T(℃)をメタリック調樹脂組成物の荷重たわみ温度T(℃)に対してT≦T≦(T+20)の範囲で設定し、溶融温度を200〜280℃に設定して成形してなるメタリック調樹脂成形品(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。特許文献1で開示される技術は、ウェルドラインを目立たなくするために成形時にウェルドライン近傍に剪断力を加えるようにしているが、合成樹脂成形品に穴等の開口を形成するためにキャビティ内に開口形成体を臨ませ、前記ゲートに面する前記開口形成体の裏方に前記ウェルドライン及び配向ラインが形成されるものでは、剪断力による溶融した合成樹脂の流動が間接的で、さほど大きくないことから、フィラーが溶融した合成樹脂の流れ方向と垂直に配向されることに起因する配向ラインを外側から見えなくすることは困難であり、ウェルドラインをより効果的に解消することが求められていた。また、これら前記ゲートに面する開口形成体の裏側に発生したウェルドライン近傍に剪断力を加えるためには、より大きな剪断力を必要とするため、一般の射出成形機のシリンダーヘッドのみでは対応できず、設備の大型化や煩雑な周辺設備を必要とするものであり、汎用の設備を利用して、外観に優れた射出成形品をより容易に製造する方法が求められていた。また、特許文献2で開示される射出圧縮成形法または射出プレス成形法による技術は、金型内に充填した後に成形品表面に圧力を加えることで成形品表面に発生したウェルドラインを消すものであるが、その効果は十分ではなく、ウェルドラインをより効果的に解消することが求められていた。
これに対して、ゲートに面する開口形成体の裏方に形成される配向ラインを外側から極力見えなくして合成樹脂成形品の外観を良好に仕上げる手段として、例えば、第1ゲートにより合成樹脂が射出されて配向ラインが形成された後において、第2ゲートにより、第1ゲートに面する開口形成体の裏方に形成される配向ラインに向けて合成樹脂の射出を開始し、且つ、第1ゲートによる合成樹脂の射出開始時にその上端面が可動金型のキャビティ形成面と同じ面一にあった昇降ピンをキャビティ内に上昇させた後、元の位置に戻るように下降させる射出成形装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、特許文献3で開示される技術は、剪断力により再流動したウェルドライン付近にフローマークによる外観不良が発生しやすく、樹脂の流動末端に相当するフィラー配向ラインに向けて射出した樹脂充填圧力がゲート付近に集中し、フィラー配向ラインを変化させるために必要な剪断力が及ばず、優れたウェルド外観を得るために必要なフィラー配向を変化させることができないことから、外観がなお不十分である課題があった。また、金型温度を200℃以上に高めることができる特別な温調設備などの煩雑な設備を必要とするものであるため、スチーム媒体等を使用した普及タイプの加熱温調設備を利用して、外観に優れた射出成形品をより容易に製造する方法が求められていた。
特開平9−1611号公報 特開2003−200477号公報 特開2013−82230号公報
本発明は、前記従来技術の課題に鑑み、汎用の射出成形設備と、普及タイプの金型加熱設備を利用して、熱可塑性樹脂および扁平状フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物を射出成形して得られる射出成形品の意匠面側におけるウェルドライン、フローマークや成形ガスによる熱ヤケ、クモリ、アバタの発生を抑制し、外観に優れた射出成形品を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題の解決に向けて鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、主として以下の構成を有する。
熱可塑性樹脂および扁平状フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物を、表面の加熱と冷却が繰り返し可能であり、キャビティに樹脂を充填するための少なくとも2点のゲートを有する金型を用いて射出成形する射出成形品の製造方法であって、少なくとも
(1)射出成形品の意匠面を形成させるべき金型表面温度を120℃以上とする条件下において、1点のゲートから熱可塑性樹脂組成物をキャビティ内に射出する工程、
(2)射出成形品の意匠面を形成させるべき金型表面温度を120℃以上とする条件下において、前記工程(1)により射出された熱可塑性樹脂組成物に扁平状フィラー配向によるウェルドラインが形成された後、保圧が開始される前に、他のゲートから、前記ウェルドラインに対して交差方向に熱可塑性樹脂組成物をさらに射出する工程、
(3)前記工程(2)の終了後、意匠面を形成させるべき金型表面温度を熱可塑性樹脂組成物の荷重たわみ温度T(℃)以下とする条件下において型開きする工程、
を有し、
前記工程(1)および(2)における熱可塑性樹脂組成物の成形温度T(℃)、熱可塑性樹脂組成物の荷重たわみ温度T(℃)、熱可塑性樹脂組成物の剪断速度6.08sec−1における溶融粘度が6,000Pa・sになる温度T(℃)が下記式<1>を満足し、前記工程(1)および(2)における意匠面を形成させるべき面の裏側の金型表面温度T(℃)、熱可塑性樹脂組成物の成形温度T(℃)、熱可塑性樹脂組成物の剪断速度6.08sec−1における溶融粘度が9,000Pa・sになる温度T(℃)が下記式<2>を満足し、
式<1> T≦T≦(T+170)
式<2> T≦100−(T−T
熱可塑性樹脂組成物のキャピログラフを用いて測定した剪断速度6.08sec−1の条件下における溶融粘度が、荷重たわみ温度T(℃)Tが88℃未満の熱可塑性樹脂組成物は210℃において6,000Pa・s以下であり、Tが88℃以上の熱可塑性樹脂組成物は240℃において6,000Pa・s以下である、射出成形品の製造方法。
本発明の製造方法によれば、汎用の射出成形設備と、普及タイプの金型加熱設備により、熱可塑性樹脂および扁平状フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物を用いて、射出成形品の意匠面側におけるウェルドライン、フローマークや成形ガスによる熱ヤケ、クモリ、アバタの発生を抑制し、外観に優れる射出成形品を製造することができる。
本発明の実施態様に用いられる射出成形装置の一例の金型キャビティ面を上(金型コア面)から見た概略構造説明図である。 図1で示す金型キャビティ内で、工程(1)により射出された熱可塑性樹脂組成物に扁平状フィラー配向によるウェルドラインが形成される位置の概略説明図である。 本発明の実施態様の工程(1)における金型キャビティ内の概略断面図である。 図3の拡大図である。 本発明の実施態様の工程(2)における金型キャビティ内の概略断面拡大図である。 比較例3に用いた金型キャビティ面を上(金型コア面)から見た概略構造説明図である。 比較例4の工程(1)における金型キャビティ内の概略断面図である。
以下、本発明の射出成形品の製造方法について、具体的に説明する。
本発明は、熱可塑性樹脂および扁平状フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物を、表面の加熱と冷却が繰り返し可能であり、且つ、キャビティ内に樹脂を充填するための少なくとも2点のゲートを有する金型を用いて射出成形する射出成形品の製造方法である。本発明の射出成形品の製造方法において、後述する工程(1)においては、意匠面を形成させるべき金型表面温度(意匠面金型表面温度)を120℃以上とし、後述する工程(3)においては、意匠面金型表面温度を熱可塑性樹脂組成物の荷重たわみ温度以下にする。金型表面温度を変化させる方法に特に制限はないが、成形サイクル短縮の面において、いわゆるヒート&クール成形技術が好適に使用される。ヒート&クール成形における金型を加熱する方式としては、例えば、オイル方式、温水方式、蒸気方式、電磁誘導方式、電気ヒーター方式等が挙げられる。本発明においては、いずれの方式も利用することができ、求められる成形サイクルを満足できる方式を適宜選択することができる。ゲートの数は、射出成形品に発生するウェルドラインの本数に応じて3点以上としてもよい。熱可塑性樹脂組成物については後述する。
本発明の射出成形品の製造方法は、少なくとも、
(1)射出成形品の意匠面を形成させるべき金型表面温度を120℃以上とする条件下において、1点のゲートから熱可塑性樹脂組成物をキャビティ内に射出する工程、
(2)射出成形品の意匠面を形成させるべき金型表面温度を120℃以上とする条件下において、前記工程(1)により射出された熱可塑性樹脂組成物に扁平状フィラー配向によるウェルドラインが形成された後、保圧が開始される前に、他のゲートから、前記ウェルドラインに対して交差方向に熱可塑性樹脂組成物をさらに射出する工程、
(3)前記工程(2)の終了後、意匠面を形成させるべき金型表面温度を熱可塑性樹脂組成物の荷重たわみ温度T(℃)以下とする条件下において型開きする工程、
を有する。
まず、工程(1)について説明する。射出成形品の意匠面を形成すべき金型を120℃以上に加熱し、意匠面金型表面温度が120℃以上に達した後、1点のゲートから熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出する。意匠面を形成すべき金型を加熱するタイミングは、型締め前、型締め後、型締めと同時のいずれでもよいが、成形サイクルを短縮するためには、型締め前であることが好ましい。射出時の意匠面金型表面温度が120℃未満であると、金型内に射出充填される熱可塑性樹脂組成物の流動抵抗が大きくなり、ウェルドラインが発生しやすい。意匠面金型表面温度は130℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましい。一方、意匠面金型表面温度の上限は特に限定されない。
本発明において、工程(1)における熱可塑性樹脂組成物の成形温度T(℃)は、下記式<1>を満足する。
式<1> T≦T≦(T+170)
ただし、Tは熱可塑性樹脂組成物の荷重たわみ温度(℃)、Tは熱可塑性樹脂組成物の剪断速度6.08sec−1における溶融粘度が6,000Pa・sになる温度(℃)、Tは成形温度(℃)を表す。なお、成形温度Tは、射出成形機の加熱筒の設定温度を指す。成形温度Tの設定自由度を高くする観点から、Tは200℃以下が好ましい。
また、Tについて、剪断速度6.08sec−1における溶融粘度は、射出による剪断力条件下の熱可塑性樹脂組成物の金型内における流動性の指標であり、剪断速度6.08sec−1において溶融粘度が6000Pa・sになる温度は、射出成形に適した溶融粘度となる温度の指標である。なお、本発明においては、溶融粘度測定精度の観点から、剪断速度6.08sec−1における溶融粘度に着目した。
熱可塑性樹脂組成物の成形温度TがT未満の場合、金型内に射出充填される熱可塑性樹脂組成物の流動抵抗が大きくなり、金型内への熱可塑性樹脂組成物の未充填部分が発生しやすい。また、ウェルドライン、フローマークや成形ガスによる熱ヤケ、クモリ、アバタ(金型内に残ったガス成分が樹脂を充填することができない空間となって成形品表面に凹み現象として現れる)が発生しやすい。一方、(T+170)<Tの場合は、熱可塑性樹脂の熱分解や、成形ガスによるヤケやクモリやアバタが発生しやすい。
なお、本発明において、熱可塑性樹脂組成物の荷重たわみ温度Tは、次の方法により測定することができる。まず、熱可塑性樹脂組成物のペレットを、105℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥した後、シリンダ温度250℃に設定した成形機内に充填し、金型温度80℃で射出成形することにより、ISO3167(TypeA)の試験片を得る。得られた試験片を用いて、ISO75に準拠し、1.82MPa荷重条件下で荷重たわみ温度を測定する。
また、工程(1)において、意匠面を形成させるべき面の裏側の金型表面温度(意匠面裏側金型表面温度)は、意匠面金型温度以下であることが好ましく、離型後の放熱過程における変形を抑制する観点から、熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度以下とすることが好ましい。したがって、本発明において、工程(1)における意匠面裏側金型表面温度T(℃)は、下記式<2>を満足する。
式<2> T≦100−(T−T
ただし、Tは熱可塑性樹脂組成物の剪断速度6.08sec−1における溶融粘度が9,000Pa・sになる温度(℃)を表す。また、本発明における意匠面裏側金型表面温度T(℃)は、金型の設定温度を指す。
また、Tについて、剪断速度6.08sec−1における溶融粘度は、射出による剪断力条件下の熱可塑性樹脂組成物の金型内における流動性の指標であり、剪断速度6.08sec−1において溶融粘度が9000Pa・sになる温度は、金型内の熱可塑性樹脂組成物が、射出による剪断力によって固化層を形成し始める温度の指標である。なお、本発明においては、溶融粘度測定精度の観点から、剪断速度6.08sec−1における溶融粘度に着目した。
意匠面金型温度に対して意匠面裏側金型表面温度を低温に設定することにより、意匠面側においては熱可塑性樹脂組成物を流動可能な状態としながら、意匠面裏側においては熱可塑性樹脂組成物の固化層を形成させることができる。本発明において、T(℃)は、95−(T−T)以下がより好ましく、90−(T−T)以下がさらに好ましい。
工程(1)において、意匠面金型表面温度を120℃以上に設定し、成形温度T(℃)および意匠面裏側金型表面温度T(℃)を前記式<1>および式<2>を満たすように設定することにより、意匠面側と意匠面裏側の金型温度に温度分布をもたせ、これにより、後述する工程(2)で行われるウェルドラインに対して射出される樹脂圧による剪断力をより効率的に発生させ、射出成形品のウェルドラインを抑制して外観を向上させることができる。
なお、本発明において、熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が6000Pa・sまたは9000Pa・sになる温度は、次の方法により求めることができる。まず、熱可塑性樹脂組成物のペレットを、105℃熱風乾燥機中で3時間乾燥した後、(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1C(キャピラリー:L/D=10mm/1mm)を用いて、剪断速度6.08sec−1の条件下、T+170℃から10℃刻みで溶融粘度(Pa・s)を測定する。得られた測定結果から、測定温度と溶融粘度の関係をプロットして近似曲線を作成し、溶融粘度6,000Pa・sと9,000Pa・sの2点の溶融温度を読み取る。
次に、工程(2)について説明する。工程(2)は、工程(1)により射出された熱可塑性樹脂組成物に扁平状フィラー配向によるウェルドラインが形成された後、保圧が開始される前に、他のゲートから前記ウェルドラインに対して交差方向に前記熱可塑性樹脂組成物をさらに射出する工程である。
工程(1)により形成されたウェルドラインに対して、他のゲートから射出するタイミングは、前記ウェルドラインが形成された後であって、保圧が開始される前である。ウェルドラインが形成された後、保圧開始前の熱可塑性樹脂組成物がキャビティ内に完充填されていない状態で、他のゲートから前記ウェルドラインに対して交差方向に前記熱可塑性樹脂組成物をさらに射出することにより、射出された熱可塑性樹脂組成物がキャビティ内で流動し、ウェルドラインに対する剪断力を発生させ、ウェルドラインを解消することができる。工程(1)において形成されるウェルドラインの発生位置については、CAE解析等による予測が可能である。工程(2)における他のゲート配置は、これらCAE解析による設計や、予め工程(1)のゲートからの熱可塑性樹脂組成物の射出のみで成形した射出成形品に確認されるウェルドラインに対し、交差方向に射出可能な位置に配置することができる。ここで、ウェルドラインに対する交差方向とは、形成されたウェルドラインを基準にウェルドライン上の中央に対して交差する方向を指す。ウェルドライン上の中央に対して30〜150°の範囲が好ましく、45〜135°の範囲がより好ましく、55〜125°の範囲がさらに好ましい。
工程(2)により、扁平状フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物が金型キャビティ内に充填された後に形成される意匠面側のウェルド付近において、扁平状フィラーが意匠面と平行状態から直立状態にまで様々な角度で配向している状態を、他のゲートから、ウェルドラインに対して、交差方向に熱可塑性樹脂組成物をさらに射出することにより、射出成形品の意匠面に対して平行に近い角度に再配向させることが可能となる。扁平状フィラーが射出成形品意匠面に対して平行に近い角度に配向することにより、扁平状フィラーからの光が反射する方向がウェルド付近の周囲と同様となるため、一般的なウェルド付近に確認されるような扁平状フィラーからの光の反射に起因した色ムラを解消することができる。
なお、本発明においては、工程(1)と工程(2)のように、最初にウェルドラインを形成する熱可塑性樹脂組成物を充填した後に、他のゲートから熱可塑性樹脂組成物を充填する成形方法を、遅延射出成形と呼ぶ。
次に、工程(3)について説明する。工程(3)は、前記工程(2)の終了後、意匠面金型表面温度を熱可塑性樹脂組成物の荷重たわみ温度(T)以下とする条件下において型開きする工程である。離型時の射出成形品の変形を抑制する観点から、工程(3)における意匠面側金型表面温度は(T−20)℃以下がより好ましく、(T−40)℃以下がより好ましい。さらに、意匠面裏側の金型表面温度を材料の熱可塑性樹脂組成物の荷重たわみ温度(T)以下とすることが好ましく、離型時の射出成形品の変形をより抑制することができる。
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
図1に本発明の実施態様に用いられる射出成形装置の一例の金型キャビティ面を上(金型コア面)から見た概略構造説明図、図2に図1で示す金型キャビティ内で、工程(1)により射出された熱可塑性樹脂組成物に扁平状フィラー配向によるウェルドラインが形成される位置の概略説明図を示す。図1に示す金型は、開口形成体2を有するキャビティ1、ゲート3およびゲート4を有する。ゲート3は開口形成体2に臨む位置に配され、ゲート4は図2に示すウェルドラインが形成される位置5に対する交差方向に射出可能な位置に配される。さらに、金型表面の加熱と冷却を繰り返すことができる図示しない媒体通路を備える。
次に、工程(1)について、図3および図4を用いて説明する。図3は本発明の実施態様の工程(1)における金型キャビティ内の概略断面図、図4は図3の拡大図を示す。工程(1)において、媒体通路6を流れる熱媒体により、意匠面金型7を加熱し、意匠面金型7の表面温度が120℃以上に達した後、ゲート3から熱可塑性樹脂組成物10、11をキャビティ内に射出する。熱可塑性樹脂組成物10、11の会合部には、一旦ウェルドライン14が形成される。熱可塑性樹脂組成物中の扁平状フィラーは、ウェルド部以外においては符号12で示すように熱可塑性樹脂組成物の流動方向に配向するが、ウェルド部付近においては符号13で示すように多方向に配向する。
次に、工程(2)について図1および図5を用いて説明する。図5は工程(2)における金型キャビティ内の概略断面拡大図である。工程(2)において、工程(1)によりウェルドライン14が形成された後、保圧が開始される前に、ゲート4から熱可塑性樹脂組成物をさらに射出する。図5に示すウェルドライン14に対して、射出方向17に熱可塑性樹脂組成物を射出することにより、射出された熱可塑性樹脂組成物の剪断力を受けてウェルドライン14が移動してウェルドライン16を形成するとともに、ウェルド部付近の扁平状フィラーの配向方向も符号15に示すように変化する。
次に、工程(3)において、前記工程(2)の終了後、媒体通路6を流れる冷却媒体により、意匠面金型7を冷却し、意匠面金型7の表面温度が熱可塑性樹脂組成物の荷重たわみ温度(T)以下に低下した後、型開きする。
次に、本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物について説明する。本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂および扁平状フィラーを含む。熱可塑性樹脂を含むことにより、成形時の取り扱い性に優れる。扁平状フィラーを含むことにより、扁平状フィラーの視覚的効果により、メタリック調やパール調の外観を発現させ、意匠性を向上させることができる。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、荷重たわみ温度Tが88℃未満の場合、キャピログラフを用いて測定した剪断速度6.08sec−1の条件下における溶融粘度が、210℃において6,000Pa・s以下であることが好ましい。210℃における溶融粘度が6,000Pa・s以下であると、フローマークの発生をより抑制することができる。210℃における溶融粘度は5,000Pa・s以下がより好ましく、4,000Pa・s以下がより好ましい。また、同様の理由から、荷重たわみ温度Tが88℃以上の場合、キャピログラフを用いて測定した剪断速度6.08sec−1の条件下における溶融粘度は、240℃において6,000Pa・s以下が好ましく、5,000Pa・s以下がより好ましく、4,000Pa・s以下がより好ましい。なお、荷重たわみ温度が88℃未満の熱可塑性樹脂組成物の一般的な成形温度が210℃程度であり、荷重たわみ温度が88℃以上の熱可塑性樹脂組成物の一般的な成形温度が240℃程度であることから、本発明においては、それぞれ210℃、240℃における溶融粘度に着目した。
本発明において、熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度は、次の方法により求めることができる。まず、熱可塑性樹脂組成物のペレットを、105℃熱風乾燥機中で3時間乾燥した後、(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1C(キャピラリー:L/D=10mm/1mm)を用いて、剪断速度6.08sec−1の条件下、210℃または240℃における溶融粘度(Pa・s)を測定する。
熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が前記範囲にあれば、熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA樹脂)、ハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル/スチレン/アクリレート共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル/シリコン系複合ゴム/スチレン共重合体(ASS樹脂)、アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン共重合体(ACS樹脂)アクリロニトリル/エチレンプロピレン/スチレン共重合体(AES樹脂)等が挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。これらの中でも、ABS樹脂やMABS樹脂が好ましく、ABS樹脂がより好ましい。ABS樹脂を含むことにより、表面光沢性に優れた射出成形品を得ることができる。熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度を前記範囲にするためには、荷重たわみ温度が88℃未満であって、温度210℃、剪断速度6.08sec−1の条件下における溶融粘度が6,000Pa・s以下である熱可塑性樹脂や、荷重たわみ温度が88℃以上であって、温度240℃、剪断速度6.08sec−1の条件下における溶融粘度が6,000Pa・s以下である熱可塑性樹脂を選択することが好ましい。
扁平状フィラーとしては、例えば、扁平形状を有するアルミニウム、ニッケル、錫、銅、鉄、金、銀、白金などの金属粒子、これらの金属を基質とする黄銅、ステンレスなどの合金粒子、真鍮粒子、金属コーティングされたマイカ粒子、ワラストナイト粒子、カーボン粒子、ガラスフレーク、ガラス粒子などが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。これらの中でも、アルミニウムや、マイカやガラス粒子を酸化チタンでコーティングしたマイカ製パール顔料などが好ましい。
扁平状フィラーの含有量は、フローマークなどの外観不良をより抑制する観点から、熱可塑性樹脂組成物中10重量%以下が好ましく、5重量%以下がさらに好ましい。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、ヒンダードフェノール系、含硫黄有機化合物系、含リン有機化合物系等の酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系等の熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系等の紫外線吸収剤、有機ニッケル系、ヒンダードアミン系等の光安定剤等の各種安定剤、高級脂肪酸の金属塩類、高級脂肪酸アミド類等の滑剤、フタル酸エステル類、リン酸エステル類等の可塑剤、ポリブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール−A、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化ポリカーボネートオリゴマー等の含ハロゲン系化合物、リン系化合物、三酸化アンチモン等の難燃剤・難燃助剤、帯電防止剤、カーボンブラック、酸化チタン、顔料及び染料、水やシリコーンオイル、流動パラフィンなどの液体、炭素繊維等の補強材や充填材を挙げることができる。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、例えば、熱可塑性樹脂、扁平状フィラーおよび必要に応じてその他の成分を溶融混合することにより得ることができる。溶融混合する方法としては、例えば、加熱装置およびベントを有する単軸または二軸の押出機を用いて溶融混合する方法などが挙げられる。溶融混合時の温度は、200〜300℃の範囲が一般的であり、本発明の目的を損なわない範囲で、溶融混合時の温度勾配等を自由に設定することもできる。
次に、本発明の射出成形品について説明する。本発明の射出成形品は、前述の製造方法により得られるものであり、射出成形品の意匠面裏側のウェルド部に対向する意匠面の、ウェルド部の熱可塑性樹脂組成物充填方向に対して垂直方向からの断面観察において、幅800μm、深さ400μmの断面積中に存在する扁平状フィラーの90%以上が意匠面に対して20度以下で配向してなることが好ましい。熱可塑性樹脂組成物としては、射出成形品の製造方法において先に例示したものを用いることができる。
ここで、意匠面に対して20度以下で配向する扁平状フィラーの割合は、次の方法により算出することができる。まず、射出成形品からゼーゲミクロトームを用いてウェルド部の断面を切り出し、キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−1000を用いて、倍率200倍にて断面を観察する。ウェルドラインを中心に幅800μm、深さ400μmの断面積中に存在する扁平状フィラーの全数A(個)について、扁平状フィラーの長尺方向の両端を結ぶ直線と意匠面に対する角度を測定し、意匠面に対して20度以下で配向している扁平状フィラーの数A(個)の割合B(個%)を下記式により算出する。
式: B=(A/A)×100
扁平状フィラーが意匠面に対して20度以下で配向している場合、ウェルドライン発生への影響が小さいことから、本発明においては、意匠面に対して20度以下で配向している扁平状フィラーの割合に着目した。前記射出成形品は、例えば、前述の本発明の射出成形品の製造方法により得ることができる。
以下、本発明の射出成形品について、実施例を挙げて詳細に説明する。まず、各実施例および比較例における評価方法を説明する。
(1)熱可塑性樹脂組成物の荷重たわみ温度
参考例1〜6において得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、105℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥した後、シリンダ温度250℃に設定した住友重機製SE50DU成形機内に充填し、金型温度80℃で射出成形することにより、ISO3167(TypeA)の試験片を得た。得られた試験片を用いて、ISO75に準拠し、1.82MPa荷重条件下で荷重たわみ温度を測定した。
(2)熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度および溶融温度
参考例1〜6において得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、105℃熱風乾燥機中で3時間乾燥した後、(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1C(キャピラリー:L/D=10mm/1mm)を用いて、剪断速度6.08sec−1の条件下、180℃から270℃の温度範囲における溶融粘度(Pa・s)を10℃刻みで測定した。また、得られた測定結果から、測定温度と溶融粘度の関係をプロットして近似曲線を作成し、溶融粘度6,000Pa・sと9,000Pa・sの2点の溶融温度を読み取った。
(3)外観1(ウェルドライン)
各実施例および比較例により得られた射出成形品の意匠面について、目視にてウェルドラインを観察し、非ウェルド部分と比べて光の反射違い、ヘアライン、色ムラが確認されない場合は「○」、これら不具合が一つ以上確認された場合は「×」と評価した。
(4)外観2(フローマーク)
各実施例および比較例により得られた射出成形品の意匠面について、目視にて全体を観察し、フローマークが確認されない場合は「○」、フローマークが確認された場合は「×」と評価した。
(5)外観3(ヤケ・クモリ・アバタ)
各実施例および比較例により得られた射出成形品の意匠面について、目視にて全体を観察し、ヤケ・クモリ・アバタが確認されない場合は「○」、これら不具合が一つ以上確認された場合は「×」と評価した。
(6)意匠面に対して20度以下で配向している扁平状フィラーの割合
各実施例および比較例により得られた射出成形品から、ゼーゲミクロトームを用いてウェルド部の断面を切り出し、キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−1000を用いて、倍率200倍にて断面を観察した。ウェルドラインを中心に幅800μm、深さ400μmの断面積中に存在する扁平状フィラーの全数A(個)について、扁平状フィラーの長尺方向の両端を結ぶ直線と意匠面に対する角度を測定し、意匠面に対して20度以下で配向している扁平状フィラーの数A(個)の割合B(個%)を下記式により算出した。
式: B=(A/A)×100
次に、実施例および比較例に用いた熱可塑性樹脂組成物について説明する。
[参考例1]
ABS樹脂を98重量%、粒子径20μmのアルミ粒子(東洋アルミニウム(株)製 アルミペーストTypeE)からなる扁平状フィラーを2重量%含むABS樹脂組成物を使用した。このABS樹脂組成物の荷重たわみ温度は83℃、剪断速度6.08sec−1において溶融粘度が6000Pa・sになる溶融温度は205℃、溶融粘度が9000Pa・sになる溶融温度は195℃であり、210℃における溶融粘度は5000Pa・sであった。
[参考例2]
耐熱ABSを98重量%、粒子径20μmのアルミ粒子(東洋アルミニウム(株)製 アルミペーストTypeE)からなる扁平状フィラーを2重量%含む耐熱ABS樹脂組成物を使用した。この耐熱ABS樹脂組成物の荷重たわみ温度は90℃、剪断速度6.08sec−1において溶融粘度が6000Pa・sになる溶融温度は237℃、溶融粘度が9000Pa・sになる溶融温度は224℃であり、240℃における溶融粘度は5500Pa・sであった。
[参考例3]
ポリカーボネート/ABSアロイ樹脂を98重量%、粒子径20μmのアルミ粒子(東洋アルミニウム(株)製 アルミペーストTypeE)からなる扁平状フィラーを2重量%含むPC/ABS樹脂組成物を使用した。このPC/ABS樹脂組成物の荷重たわみ温度は102℃、剪断速度6.08sec−1において溶融粘度が6000Pa・sになる溶融温度は235℃、溶融粘度が9000Pa・sになる溶融温度は232℃であり、240℃における溶融粘度は4200Pa・sであった。
[参考例4]
ABS樹脂を98重量%、粒子径20μmのアルミ粒子(東洋アルミニウム(株)製 アルミペーストTypeE)からなる扁平状フィラーを2重量%含むABS樹脂組成物を使用した。このABS樹脂組成物の荷重たわみ温度は83℃、剪断速度6.08sec−1において溶融粘度が6000Pa・sになる溶融温度は195℃、溶融粘度が9000Pa・sになる溶融温度は185℃であり、210℃における溶融粘度は3300Pa・sであった。
[参考例5]
ABS樹脂を98重量%、粒子径20μmのアルミ粒子(東洋アルミニウム(株)製 アルミペーストTypeE)からなる扁平状フィラーを2重量%含むABS樹脂組成物を使用した。このABS樹脂組成物の荷重たわみ温度は82℃、剪断速度6.08sec−1において溶融粘度が6000Pa・sになる溶融温度は215℃、溶融粘度が9000Pa・sになる溶融温度は200℃であり、210℃における溶融粘度は6800Pa・sであった。
[参考例6]耐熱ABS樹脂
耐熱ABS樹脂を98重量%、粒子径20μmμmのアルミ粒子(東洋アルミニウム(株)製 アルミペーストTypeE)からなる扁平状フィラーを2重量%含む耐熱ABS樹脂組成物を使用した。この耐熱ABS樹脂組成物の荷重たわみ温度は103℃、剪断速度6.08sec−1において溶融粘度が6000Pa・sになる溶融温度が256℃、溶融粘度が9000Pa・sになる溶融温度は247℃であり、240℃における溶融粘度は20000Pa・sであった。
実施例および比較例に用いた金型温調設備は以下のとおりである。
設備1:加熱と冷却が繰り返し可能であるヒート&クール成形温調設備を使用した。
設備2:水を熱媒体とした一定温度で温調する一般成形温調設備を使用した。
[実施例1〜22、比較例1、5、7〜15]
図1に示す開口形成体2を有するキャビティ1、ゲート3およびゲート4を有し、図3に示す媒体通路6、8を有する金型と、前記金型温調設備1を用いて、表1〜4に記載の熱可塑性樹脂組成物から、本発明の射出成形品の製造方法における工程(1)〜(3)に従い、表1〜4に記載の条件により射出成形品を作製した。
[比較例2]
工程(2)を実施しなかったこと以外は実施例3と同様にして射出成形品を作製した。
[比較例3]
図6に示す開口形成体2を有するキャビティ1、ゲート3を有し、図3に示す媒体通路6、8を有する金型を用いたこと以外は比較例2と同様にして射出成形品を作製した。
[比較例4]
金型温調設備2を用いたこと、成形条件を表3に記載のとおりに変更したこと以外は実施例3と同様にして射出成形品を作製した。
[比較例6]
成形条件を表3に記載のとおりに変更したこと以外は実施例14と同様にして射出成形品を作製した。
各実施例および比較例の評価結果を表1〜4に示す。
実施例1〜22の結果から明らかなように、本発明によれば、外観に優れる射出成形品を得ることができる。
比較例1と実施例1〜2の対比、比較例5と実施例4の対比、比較例7と実施例18〜19、比較例10と実施例9の対比により、意匠面裏側金型表面温度Tが式<2>を満たさない場合、フローマークによる外観不良が発生することが分かる。
比較例2〜3と実施例3との対比により、工程(2)を有しない場合、ウェルドラインによる外観不良が発生することが分かる。
比較例4と実施例3との対比、比較例6と実施例14の対比により、意匠面金型表面温度が120℃未満である場合、ウェルドラインによる外観不良が発生することが分かる。
比較例8と実施例19との対比、比較例9と実施例7との対比、比較例11と実施例11との対比により、成形温度Tが式<1>の範囲を超える場合、成形ガスによる熱ヤケ、クモリ、アバタによる外観不良が発生することが分かる。
比較例12により、成形温度Tが式<1>の範囲未満であり、熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が高い場合、ウェルドラインやフローマークによる外観不良が発生することが分かる。
比較例13と比較例15により、成形温度Tが式<1>の範囲を超え、熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が高い場合、フローマークや成形ガスによる熱ヤケ、クモリ、アバタによる外観不良が発生することが分かる。
比較例14により、熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が高い場合、ウェルドラインやフローマークによる外観不良が発生することが分かる。
1 キャビティ
2 開口形成体
3 ゲート
4 ゲート
5 ウェルドラインが形成される位置
6 媒体通路
7 意匠面金型
8 媒体通路
9 意匠面裏側金型
10、11 熱可塑性樹脂組成物
12 流動方向に配向した扁平状フィラー
13 多方向に配向した扁平状フィラー
14 ウェルドライン
15 剪断力により配向方向が変化した扁平状フィラー
16 剪断力により移動したウェルドライン
17 射出方向

Claims (4)

  1. 熱可塑性樹脂および扁平状フィラーを含む熱可塑性樹脂組成物を、表面の加熱と冷却が繰り返し可能であり、キャビティに樹脂を充填するための少なくとも2点のゲートを有する金型を用いて射出成形する射出成形品の製造方法であって、少なくとも
    (1)射出成形品の意匠面を形成させるべき金型表面温度を120℃以上とする条件下において、1点のゲートから熱可塑性樹脂組成物をキャビティ内に射出する工程、
    (2)射出成形品の意匠面を形成させるべき金型表面温度を120℃以上とする条件下において、前記工程(1)により射出された熱可塑性樹脂組成物に扁平状フィラー配向によるウェルドラインが形成された後、保圧が開始される前に、他のゲートから、前記ウェルドラインに対して交差方向に熱可塑性樹脂組成物をさらに射出する工程、
    (3)前記工程(2)の終了後、意匠面を形成させるべき金型表面温度を熱可塑性樹脂組成物の荷重たわみ温度T0(℃)以下とする条件下において型開きする工程、
    を有し、
    前記工程(1)および(2)における熱可塑性樹脂組成物の成形温度T(℃)、熱可塑性樹脂組成物の荷重たわみ温度T(℃)、熱可塑性樹脂組成物の剪断速度6.08sec−1における溶融粘度が6,000Pa・sになる温度T(℃)が下記式<1>を満足し、前記工程(1)および(2)における意匠面を形成させるべき面の裏側の金型表面温度T(℃)、熱可塑性樹脂組成物の成形温度T(℃)、熱可塑性樹脂組成物の剪断速度6.08sec−1における溶融粘度が9,000Pa・sになる温度T(℃)が下記式<2>を満足し、
    式<1> T≦T≦(T+170)
    式<2> T≦100−(T−T
    熱可塑性樹脂組成物のキャピログラフを用いて測定した剪断速度6.08sec−1の条件下における溶融粘度が、荷重たわみ温度T(℃)Tが88℃未満の熱可塑性樹脂組成物は210℃において6,000Pa・s以下であり、Tが88℃以上の熱可塑性樹脂組成物は240℃において6,000Pa・s以下である、射出成形品の製造方法。
  2. 前記熱可塑性樹脂がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンを含む請求項1に記載の射出成形品の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の射出成形品の製造方法により得られる射出成形品。
  4. 射出成形品の意匠面裏側のウェルド部に対向する意匠面の、ウェルド部の熱可塑性樹脂組成物充填方向に対して垂直方向からの断面観察において、幅800μm、深さ400μmの断面積中に存在する扁平状フィラーの90%以上が意匠面に対して20度以下で配向してなる請求項3に記載の射出成形品。
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