JP2016079265A - 航空機内装用の水性塗料用組成物および航空機内装材 - Google Patents

航空機内装用の水性塗料用組成物および航空機内装材 Download PDF

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俊 齋藤
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Abstract

【課題】難燃剤等の塗膜構成成分が沈降しにくく、難燃性および耐汚染性に優れた塗膜を形成できる航空機内装用の水性塗料用組成物の提供。
【解決手段】含フッ素樹脂水分散体(A)と、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属ほう酸塩、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ほう酸、ほう酸亜鉛、六水酸化スズ亜鉛および三酸化スズ亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の難燃剤(B)と、を含み、前記難燃剤(B)の含有量が、前記含フッ素樹脂水分散体(A)中の含フッ素樹脂の100質量部に対して10〜100質量部である、航空機内装用の水性塗料用組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、航空機内装用の水性塗料用組成物および航空機内装材に関する。
従来、航空機の内装材には、強度、耐久性、安全性等の点から金属や強化ガラス等が用いられていたが、近年、軽量化の観点から樹脂が用いられているようになっている。内装材を構成する樹脂としては、たとえばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン系樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリスチレン等)、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)等が用いられている。
航空機の安全性のため、特に、火災が生じた場合、火災が拡大しないようにするため、内装材は難燃性が高いこと又は不燃性であることが求められる。
樹脂製の内装材の難燃性を高めるため、内装材の表面に、難燃剤を含む塗料を塗装して難燃性の塗膜を形成することがある。
内装材の塗装に用いる塗料としては、乗務員や乗客の影響を考慮し、水性塗料が求められる。
内装材の表面には、乗務員や乗客などによる様々な原因に基づく種々の生活汚れ(油性インク、水性インク、飲料、汗、口紅、整髪料、ファンデーションなどの化粧品)が付着しやすい。そのため、内装材の表面に設けられる塗膜には、優れた耐汚染性が要求される。
一方、布、紙に使用され、塗布することにより不燃性を得ることができる水性塗料として、ケイ酸リチウムまたはケイ酸カリウムと、特定の水性樹脂分散体とからなるものが提案されている(特許文献1)。
特開2012−77125号公報
しかし、特許文献1の水性塗料は、難燃剤であるケイ酸リチウムまたはケイ酸カリウムが経時で沈降しやすい問題がある。難燃剤等の塗膜構成成分が沈降すると、形成される塗膜中の難燃剤の分布が不均一となり、難燃性能にばらつき生じる。
また、特許文献1の水性塗料を用いて得られる塗膜の耐防汚性は、航空機内装材に求められる耐汚染性を満足するものではない。
本発明は、難燃剤等の塗膜構成成分が沈降しにくく、難燃性および耐汚染性に優れた塗膜を形成できる航空機内装用の水性塗料用組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、難燃性および耐汚染性に優れた塗膜を最表層に備える航空機内装材を提供することを他の目的とする。
本発明の航空機内装用の水性塗料用組成物は、含フッ素樹脂水分散体(A)と、
アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属ほう酸塩、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ほう酸、ほう酸亜鉛、六水酸化スズ亜鉛および三酸化スズ亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の難燃剤(B)と、
を含み、
前記難燃剤(B)の含有量が、前記含フッ素樹脂水分散体(A)中の含フッ素樹脂の100質量部に対して10〜100質量部である。
本発明の航空機内装材は、航空機内装用の水性塗料用組成物から形成された塗膜を最表層に備える。
本発明の水性塗料用組成物は、含有する難燃剤が沈降しにくい。また、難燃性および耐汚染性に優れた塗膜を形成できる。
本発明の航空機内装材が最表層に備える塗膜は、難燃性および耐汚染性に優れる。
本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「構成単位」とは、単量体が重合することによって形成された該単量体に由来する単位を意味する。重合反応によって直接形成された単位であってもよく、重合体を処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
「単量体」とは、ラジカル重合性不飽和基を有する化合物を意味する。
「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートのいずれか一方または両方を意味する。
「水性媒体」とは、水を含み、有機溶媒の含有量が3質量%以下である液体を意味する。
「マクロモノマー」とは、片末端にラジカル重合性不飽和基を有する低分子量のポリマーまたはオリゴマーを意味する。
「親水性部位」とは、親水性基を有する部位、親水性の結合を有する部位、またはこれらの組み合わせからなる部位を意味する。
<航空機内装用の水性塗料用組成物>
本発明の航空機内装用の水性塗料用組成物(以下、単に「水性塗料用組成物」ともいう。)は、含フッ素樹脂水分散体(A)と、難燃剤(B)とを含む。
本発明の水性塗料用組成物は、必要に応じて、化合物(C)をさらに含有してもよい。
本発明の水性塗料用組成物は、必要に応じて、顔料(D)をさらに含有してもよい。
本発明の水性塗料用組成物は、必要に応じて、含フッ素樹脂水分散体(A)、難燃剤(B)、化合物(C)および顔料(D)以外の他の成分をさらに含有してもよい。
(含フッ素樹脂水分散体(A))
「含フッ素樹脂水分散体」は、水性媒体に含フッ素樹脂が分散または溶解したものである。
含フッ素樹脂水分散体(A)中の含フッ素樹脂としては、含フッ素単量体に基づく構成単位を有する重合体が挙げられる。該重合体は、含フッ素単量体に基づく構成単位のみを有する重合体でもよく、含フッ素単量体に基づく構成単位と、含フッ素単量体と共重合可能な他の単量体に基づく構成単位とを有する重合体でもよい。
含フッ素単量体としては、たとえば、フルオロオレフィン(フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、含フッ素(メタ)アクリレート(トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロビル(メタ)アクリレート、ペルフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート等)等が挙げられる。
含フッ素単量体に基づく構成単位としては、フルオロオレフィンに基づく構成単位が好ましく、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンからなる群から選択される少なくとも1種に基づく構成単位がより好ましい。
含フッ素単量体と共重合可能な他の単量体としては、たとえば、アクリル系単量体、アクリル系単量体と共重合可能な他の単量体等が挙げられる。
該他の単量体に基づく構成単位としては、水酸基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有し、フッ素原子を有しない単量体に基づく構成単位が好ましい。該構成単位を有する場合、つまり含フッ素樹脂水分散体(A)中の含フッ素樹脂が水酸基およびカルボキシ基のいずれか一方または両方を有する場合、含フッ素樹脂の水性媒体中での分散安定性が優れる。また、後述する化合物(C)と組み合わたときに、塗膜として硬化塗膜を形成できる。塗膜が硬化塗膜であると、硬化していない塗膜(乾燥塗膜)に比して、耐溶剤性等に優れる。
水酸基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有し、フッ素原子を有しない単量体に基づく構成単位としては、たとえば、後述する単量体(m21)として挙げる(5)の単量体に基づく構成単位、(1)〜(4)および(6)のうちX”が水素原子である単量体に基づく構成単位、単量体(m3)に基づく構成単位、構成単位(a3)、構成単位(a4)のうちR15が水素原子であるもの等が挙げられる。
含フッ素樹脂水分散体(A)としては、後述する含フッ素樹脂水分散体(A1)、含フッ素樹脂水分散体(A2)または含フッ素樹脂水分散体(A3)が好ましく、塗膜にクラックが入りにくく、かつ、貯蔵時の防かび性や防藻性に優れるという点から、含フッ素樹脂水分散体(A1)または含フッ素樹脂水分散体(A2)がより好ましい。
含フッ素樹脂水分散体(A)の製造方法としては、たとえば、乳化重合によって含フッ素樹脂水分散体を得る方法、溶液重合によって含フッ素共重合体を得た後、含フッ素共重合体を水性媒体に分散させて含フッ素樹脂水分散体を得る方法等が挙げられる。
乳化重合は、バッチ重合で行ってもよく、モノマー滴下重合で行ってもよく、乳化モノマー滴下重合で行ってもよい。
〔含フッ素樹脂水分散体(A1)〕
含フッ素樹脂水分散体(A1)は、水性媒体に含フッ素共重合体(A1’)を含む合成樹脂が分散または溶解したものである。
含フッ素共重合体(A1’)は、単量体(m1)に基づく構成単位と、単量体(m2)に基づく構成単位と、単量体(m3)に基づく構成単位とを有する。
含フッ素共重合体(A1’)は、単量体(m1)〜(m3)と共重合可能な他の単量体(以下、「単量体(m4)」ともいう。)に基づく構成単位をさらに有していてもよい。
単量体(m1):
単量体(m1)は、フルオロオレフィンである。
フルオロオレフィンとしては、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン等が挙げられる。
単量体(m1)としては、炭素数2〜4のフルオロオレフィンが好ましく、ペルハロオレフィンが特に好ましい。
単量体(m2):
単量体(m2)は、親水性部位を有するマクロモノマーである。
単量体(m2)としては、主鎖に2つ以上の構成単位を有し、片末端にラジカル重合性不飽和基を有し、残りの末端、ペンダント基または主鎖に親水性部位を有する化合物が挙げられる。構成単位の数は、構成単位の種類によって異なるが、重合性、耐水性等の点から、通常、100以下が好ましい。
含フッ素樹脂水分散体(A1)においては、含フッ素共重合体(A1’)が、単量体(m2)に基づく構成単位を有することが重要である。含フッ素樹脂水分散体(A1)が、単量体(m2)に基づく構成単位を有する含フッ素共重合体(A1’)を含むことによって、含フッ素樹脂水分散体(A1)の機械的、化学的安定性が改善されるばかりでなく、含フッ素樹脂水分散体(A1)の造膜性、塗膜の耐水性等も向上する。
親水性部位を構成する親水性基は、イオン性、ノニオン性、両性およびこれらの組み合わせのいずれであってもよい。含フッ素樹脂水分散体(A1)の化学的安定性の点からは、親水性部位がイオン性の親水性基を有する部位のみからよりも、イオン性の親水性基を有する部位とノニオン性または両性の親水性基を有する部位と組み合わせる、またはイオン性の親水性基を有する部位と親水性の結合を有する部位とを組み合わせることが好ましい。
単量体(m2)としては、たとえば、下記のマクロモノマーが挙げられる。
単量体(m21):主鎖にポリエーテル鎖またはポリエステル鎖を有し、片末端にラジカル重合性不飽和基を有するマクロモノマー。
単量体(m22):親水性のエチレン性不飽和モノマーがラジカル重合した鎖を有し、片末端にラジカル重合性不飽和基(ビニルオキシ基またはアリルオキシ基)を有するマクロモノマー。
単量体(m21)としては、たとえば、下記のものが挙げられる。
(1)CH=CHO−C2a−(OC2bOX”
ただし、aは1〜10の整数であり、bは1〜4の整数であり、cは2〜20の整数であり、X”は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基(以下、「低級アルキル基」ともいう。)である。
(2)CH=CHCHO−C2d−(OC2eOX”
ただし、dは1〜10の整数であり、eは1〜4の整数であり、fは2〜20の整数であり、X”は水素原子または低級アルキル基である。
(3)CH=CHO−C2g−(OCHCH(OCHCH(CH))OX”
ただし、gは1〜10の整数であり、hは2〜20の整数であり、iは0〜20の整数であり、X”は水素原子または低級アルキル基であり、オキシエチレン単位およびオキシプロピレン単位はブロック、ランダムのいずれの型で配列されていてもよい。
(4)CH=CHCHO−C2j−(OCHCH(OCHCH(CH))OX”
ただし、jは1〜10の整数であり、kは2〜20の整数であり、lは0〜20の整数であり、X”は水素原子または低級アルキル基であり、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位はブロック、ランダムのいずれの型で配列されていてもよい。
(5)CH=CHO−C2p−O(CO−C2q−O)
ただし、pは1〜10の整数であり、qは1〜10の整数であり、rは1〜30の整数である。
(6)CH=CHOCH−cycloC10−CH(OC2sOX”
ただし、sは1〜4の整数であり、tは2〜20の整数であり、X”は水素原子または低級アルキル基である。
単量体(m21)としては、単量体(m1)との共重合性に優れている点から、片末端がビニルエーテル型の構造を有するものが好ましく、親水性に優れている点から、ポリエーテル鎖部分が、オキシエチレン単位からなるもの、またはオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とからなるものが特に好ましい。
単量体(m21)としては、安定性等の諸性質を十分に発揮させる点から、オキシエチレン単位を2つ以上有するものが好ましい。なお、オキシアルキレン単位の数が多すぎると、塗膜の耐水性、耐候性等が低下するおそれがある。
単量体(m21)は、水酸基を有するビニルエーテルもしくはアリルエーテルに、ホルムアルデヒドもしくはジオールを重合させる方法、またはアルキレンオキシドもしくはラクトン環を有する化合物を開環重合させる方法等により製造できる。
単量体(m22)は、たとえば、下記の方法により製造できる。
縮合可能な官能基を有する開始剤および連鎖移動剤の存在下に親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーをラジカル重合させることにより、縮合可能な官能基を有する重合体を製造し、縮合可能な官能基にグリシジルビニルエーテル、グリシジルアリルエーテル等を反応させ、末端にラジカル重合性不飽和基を導入する方法(山下ら,Polym.Bull.,5.335(1981))。
親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーに、他の単量体を共重合させてもよい。
親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、2−メトキシエチルアクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ジアセトンアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、多価アルコールのアクリレート、多価アルコールのメタクリレート、ビニルピロリドン等が挙げられる。
親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーに共重合可能な他の単量体としては、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体、N−メチロールアクリルアミド誘導体、アクリル酸エチルカルビトール、ブトキシエチルアクリレート等が挙げられる。
縮合可能な官能基を有する開始剤としては、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。
単量体(m3):
単量体(m3)は、下式(m3)で表される水酸基含有単量体である。
X’−Y’−OH ・・・(m3)
ただし、X’はラジカル重合性不飽和基を有する基であり、Y’はn−ノニレン基またはシクロヘキサン−1,4−ジメチレン基である。
含フッ素樹脂水分散体(A1)においては、含フッ素共重合体(A1’)が、単量体(m3)に基づく構成単位を有することが重要である。含フッ素共重合体(A1’)が単量体(m3)以外の水酸基含有単量体に基づく構成単位を有する場合、含フッ素共重合体(A1’)の製造時、貯蔵時または塗料化時に、含フッ素共重合体(A1’)が凝集してしまうことがある。
X’は、ラジカル重合性不飽和基と、必要に応じてラジカル重合性不飽和基とY’とを連結する連結基とを有する。
ラジカル重合性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。
連結基としては、エーテル結合が好ましい。
単量体(m3)としては、たとえば、下記のものが挙げられる。
(1)CH=CHOCH−cycloC10−CHOH
(2)CH=CHCHOCH−cycloC10−CHOH
(3)CH=CHOC18OH
(4)CH=CHCHOC18OH
単量体(m3)としては、単量体(m1)との交互共重合性に優れ、塗膜の耐候性が良好となる点から、ビニルエーテル型の構造を有するものが好ましい。
単量体(m4):
単量体(m4)は、単量体(m1)〜(m3)以外の単量体であって、単量体(m1)〜(m3)と共重合可能なものであれば特に限定されない。
単量体(m4)としては、たとえば、オレフィン(エチレン、プロピレン等)、ビニルエーテル(エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル(ブタン酸ビニルエステル、オクタン酸ビニルエステル等)、芳香族ビニル化合物(スチレン、ビニルトルエン等)、アリル化合物(エチルアリルエーテル等)、アクリロイル化合物(ブチルアクリレート等)、メタクリロイル化合物(エチルメタクリレート等)等が挙げられる。
単量体(m4)としては、オレフィン、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステルが好ましい。
オレフィンとしては、炭素数2〜10のオレフィンが好ましい。
ビニルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエーテル類、アリルエステル類としては、炭素数2〜15の直鎖状、分岐状または脂環状のアルキル基を有するものが好ましい。
単量体(m4)は、炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されたものであってもよい。
構成単位の割合:
単量体(m1)に基づく構成単位の割合は、すべての構成単位のうち、20〜80モル%が好ましく、30〜70モル%がより好ましい。単量体(m1)に基づく構成単位が20モル%以上であれば、耐候性が充分に発揮される。単量体(m1)に基づく構成単位が80モル%以下であれば、含フッ素共重合体(A1’)の水分散性が良好となる。
単量体(m2)に基づく構成単位の割合は、すべての構成単位のうち、0.1〜25モル%が好ましく、0.3〜20モル%がより好ましい。単量体(m2)に基づく構成単位が0.1モル%以上であれば、含フッ素共重合体(A1’)の水分散性が良好となる。単量体(m2)に基づく構成単位が25モル%以下であれば、塗膜の耐候性、耐水性が良好となる。単量体(m2)に基づく構成単位の割合が前記範囲内であれば、造膜性に極めて優れる。
単量体(m3)に基づく構成単位の割合は、すべての構成単位のうち、1〜40モル%が好ましい。
単量体(m3)に基づく構成単位の割合は、含フッ素共重合体(A1’)の水酸基価が20mgKOH/g以上となるような割合であることが好ましく、40mgKOH/g以上となるような割合であることがより好ましい。含フッ素共重合体(A1’)の水酸基価が20mgKOH/g以上であれば、化合物(C)との反応によって、塗膜の耐溶剤性等が格段に向上する。
含フッ素樹脂水分散体(A1)は、公知の乳化重合によって製造することができる。
他の合成樹脂:
含フッ素樹脂水分散体(A1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、含フッ素共重合体(A1’)以外の他の合成樹脂を含んでいてもよい。他の合成樹脂としては、含フッ素樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル系樹脂等が挙げられる。
含フッ素共重合体(A1’)の割合は、含フッ素樹脂水性分散体(A1)に含まれるすべての合成樹脂のうち、50質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。
合成樹脂の固形分濃度は、含フッ素樹脂水分散体(A1)中、10〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。
他の成分:
含フッ素樹脂水分散体(A1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、含フッ素共重合体(A1’)、他の合成樹脂、水性媒体以外の他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、後述するものが挙げられる。
含フッ素樹脂水分散体(A1)は水性塗料用組成物に配合されることから、含フッ素樹脂水分散体(A1)中の有機溶媒の含有量は、3質量%以下が好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
〔含フッ素樹脂水分散体(A2)〕
含フッ素樹脂水分散体(A2)は、水性媒体(好ましくは水)に含フッ素共重合体(A2’)を含む合成樹脂が分散または溶解したものである。
含フッ素共重合体(A2’)は、構成単位(a1)と、構成単位(a2)と、構成単位(a3)と、構成単位(a4)とを有する。
含フッ素樹脂水分散体(A2)としては、後述のように、含フッ素共重合体(B)にカルボキシ基を導入し、該カルボキシ基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和して、水に分散させて得られたものが好ましい。
構成単位(a1):
構成単位(a1)は、下式(a1)で表される構成単位である。フッ素共重合体(A2’)は、2種以上の構成単位(a1)を有していてもよい。
Figure 2016079265
ただし、XおよびXはそれぞれ独立に水素原子、塩素原子またはフッ素原子であり、Xは水素原子、塩素原子、フッ素原子または−CYであり、Y、Y、Yはそれぞれ独立に水素原子、塩素原子またはフッ素原子である。
構成単位(a1)としては、単量体(b1)に基づく構成単位が挙げられる。
単量体(b1)は、下式(b1)で表される化合物である。
Figure 2016079265
ただし、XおよびXはそれぞれ独立に水素原子、塩素原子またはフッ素原子であり、Xは水素原子、塩素原子、フッ素原子または−CYであり、Y、Y、Yはそれぞれ独立に水素原子、塩素原子またはフッ素原子である。
単量体(b1)としては、フルオロエチレン、フルオロプロペンが挙げられる。
フルオロエチレンとしては、CF=CF、CClF=CF、CHCl=CF、CCl=CF、CClF=CClF、CHF=CCl、CH=CClF、CCl=CClF、CF=CH等が挙げられる。
フルオロプロペンとしては、CFClCF=CF、CFCCl=CF、CFCF=CFCl、CFClCCl=CF、CFClCF=CFCl、CFClCF=CF、CFCCl=CClF、CFCCl=CCl、CClFCF=CCl、CClCF=CF、CFClCCl=CCl、CFClCCl=CCl、CFCF=CHCl、CClFCF=CHCl等が挙げられる。
単量体(b1)としては、塗膜の耐候性が優れる点で、CF=CF、CClF=CFが好ましい。
構成単位(a2):
構成単位(a2)は、下式(a2)で表される構成単位である。これらの中から所望の塗膜物性(硬度、光沢、顔料分散性等)に応じた構成単位が適宜選択される。含フッ素共重合体(A2’)は、2種以上の構成単位(a2)を有していてもよい。
Figure 2016079265
ただし、Rは水素原子またはメチル基であり、R11は炭素数1〜12のアルキル基または炭素数4〜10の1価の脂環式基であり、uは0〜8の整数であり、vは0または1である。
構成単位(a2)としては、単量体(b2)に基づく構成単位が挙げられる。
単量体(b2)は、下式(b2)で表される化合物である。
Figure 2016079265
ただし、Rは水素原子またはメチル基であり、R11は炭素数1〜12のアルキル基または炭素数4〜10の1価の脂環式基であり、uは0〜8の整数であり、vは0または1である。
単量体(b2)としては、uが0であり、vが0であるアルキルまたは脂環式基含有ビニルエーテル、uが0であり、vが1であるアルキルまたは脂環式基含有ビニルエステル、uが1であり、vが0であるアルキルまたは脂環式基含有アリルエーテル、uが1であり、vが1であるアルキルまたは脂環式基含有アリルエステル等が挙げられる。
単量体(b2)としては、アルキルもしくは脂環式基含有ビニルエーテルまたはアルキルもしくは脂環式基含有ビニルエステルが好ましい。すなわち、uが0であり、vが0または1であるものが好ましい。アルキルもしくは脂環式基含有ビニルエーテルまたはアルキルもしくは脂環式基含有ビニルエステルとしては、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、酢酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が挙げられる。
単量体(b2)としては、単量体(b1)との交互共重合性がよく、含フッ素共重合体(A2’)のガラス転移温度を調整しやすい点から、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルが好ましい。
構成単位(a3):
構成単位(a3)は、下式(a3)で表される構成単位である。
Figure 2016079265
ただし、Rは水素原子またはメチル基であり、R12は炭素数1〜10のアルキレン基または炭素数4〜10の2価の脂環式基であり、wは0〜8の整数であり、xは0または1である。
構成単位(a3)としては、単量体(b3)に基づく構成単位が挙げられる。
単量体(b3)は、下式(b3)で表される化合物である。
Figure 2016079265
ただし、Rは水素原子またはメチル基であり、R12は炭素数1〜10のアルキレン基または炭素数4〜10の2価の脂環式基であり、wは0〜8の整数であり、xは0または1である。
単量体(b3)としては、wが0であり、xが0である水酸基含有ビニルエーテル、wが0であり、xが1である水酸基含有ビニルエステル、wが1であり、xが0である水酸基含有アリルエーテル、wが1であり、xが1である水酸基含有アリルエステル等が挙げられる。
単量体(b3)としては、たとえば、2−ヒドロキシアルキルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルーテル、1−ヒドロキシメチル−4−ビニロキシメチルシクロヘキサン、4−ヒドロキシプチルビニルエステル等が挙げられる。
単量体(b3)としては、重合性、架橋性等の点から、ヒドロキシアルキルビニルエーテルが好ましい。
構成単位(a4):
構成単位(a4)は、下式(a4)で表される構成単位である。
Figure 2016079265
ただし、Rは水素原子またはメチル基であり、R13は炭素数1〜10のアルキレン基または炭素数4〜10の2価の脂環式基であり、R14は炭素数2〜10のアルキレン基または炭素数4〜10の2価の脂環式基であり、R15は水素原子または−NHZであり、Z、Z、Zはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基であり、yは0〜8の整数であり、zは0または1である。
含フッ素樹脂水分散体(A2)中の構成単位(a4)の少なくとも一部は、式(a4)中のR15が−NHZであるものである。
含フッ素樹脂水分散体(A2)中の構成単位(a4)のうち、R15が−NHZである構成単位の割合は、30〜100モル%が好ましく、50〜100モル%がより好ましい。
、R13、yおよびzは、含フッ素共重合体(A2’)の製造のしやすさの点から、構成単位(a3)のR、R12、wおよびxと同じであることが好ましい。
他の構成単位:
含フッ素共重合体(A2’)は、構成単位(a1)〜(a4)以外の他の構成単位を有していてもよい。
他の構成単位としては、たとえば、エチレン性単量体に基づく構成単位が挙げられる。
構成単位の割合:
構成単位(a1)の割合は、すべての構成単位のうち、40〜60モル%であり、45〜55モル%が好ましい。構成単位(a1)の割合が前記範囲内であれば、塗膜の耐候性が充分になり、含フッ素共重合体(A2’)のガラス転移温度が高くなりすぎず、非晶質で良好な塗膜が得られる。
構成単位(a2)の割合は、すべての構成単位のうち、3〜50モル%であり、20〜45モル%が好ましい。構成単位(a2)の割合が前記範囲内であれば、水中に分散しやすく、貯蔵中に含フッ素共重合体が沈降しにくい。
構成単位(a3)の割合は、すべての構成単位のうち、4〜30モル%であり、8〜25モル%が好ましい。構成単位(a3)の割合が4モル%以上であれば、架橋をした際、架橋密度が充分に高くなる。構成単位(a3)の割合が30モル%以下であれば、塗膜にしたときの耐水性の低下が抑えられる。
構成単位(a4)の割合は、すべての構成単位のうち、0.4〜7モル%であり、1.4〜6モル%が好ましい。構成単位(a4)の割合が前記範囲内であれば、水性媒体への分散性に優れ、水性媒体中での安定性に優れる。
構成単位(a1)〜(a4)の合計は、80〜100モル%であり、95〜100モル%が好ましい。
他の構成単位の割合は、20モル%以下であり、5モル%以下が好ましい。
含フッ素共重合体(A2’)としては、構成単位(a1)の45〜55モル%と、構成単位(a2)の14〜45.6モル%と、構成単位(a3)の8〜25モル%と、構成単位(a4)の1.4〜6モル%とからなり、他の構成単位を有しない(構成単位(a1)〜(a4)の合計が100モル%である)ものが好ましい。
含フッ素共重合体(A2’)の質量平均分子量は、3000〜200000が好ましい。含フッ素共重合体(A2’)の質量平均分子量が3000以上であれば、塗膜にした場合の耐候性が良好となる。含フッ素共重合体(A2’)の質量平均分子量が200000以下であれば、塗装性が良好となり、塗膜外観が良好となる。
含フッ素樹脂水分散体(A2)は、公知の方法、たとえば工程(α)〜工程(δ)を有する方法により製造できる。
(α)含フッ素共重合体(B)を製造する工程。
(β)含フッ素共重合体(B)と二塩基性酸無水物とを有機溶媒中で反応させることにより、構成単位(a3)における水酸基の一部をエステル化し、カルボキシ基を導入する工程。
(γ)エステル化反応によって導入されたカルボキシ基の少なくとも一部を塩基性化合物で中和する工程。
(δ)有機溶媒を除去する工程。
含フッ素共重合体(B)は、構成単位(a1)の40〜60モル%と、構成単位(a2)の3〜50モル%と、構成単位(a3)の4.4〜37モル%(ただし、構成単位(a1)〜(a3)の合計は80〜100モル%である。)を有する。
含フッ素共重合体(B)における構成単位(a3)のモル%は、含フッ素共重合体(A2’)における構成単位(a3)のモル%と構成単位(a4)のモル%の合計に等しい。
他の合成樹脂:
含フッ素樹脂水分散体(A2)は、本発明の効果を損なわない範囲で、含フッ素共重合体(A2’)以外の他の合成樹脂を含んでいてもよい。他の合成樹脂としては、含フッ素樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル系樹脂等が挙げられる。
含フッ素樹脂としては、含フッ素樹脂水分散体(A2)の機械的安定性および化学的安定性が改良される点から、特許第2955336号公報に記載された、フルオロオレフィンに基づく構成単位および親水性部位を有するマクロモノマーに基づく構成単位を必須とする含フッ素共重合体が好ましい。
含フッ素共重合体(A2’)の割合は、含フッ素樹脂水分散体(A2)に含まれるすべての合成樹脂のうち、10〜100質量%が好ましく、50〜100質量%がより好ましい。
他の合成樹脂として、含フッ素樹脂以外の他の合成樹脂を用いる場合は、塗膜に優れた耐候性を付与する点から、含フッ素共重合体(A2’)の割合は、すべての合成樹脂のうち、55質量%以上が好ましい。
合成樹脂の固形分濃度は、含フッ素樹脂水分散体(A2)中、10〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。
他の成分:
含フッ素樹脂水分散体(A2)は、本発明の効果を損なわない範囲で、含フッ素共重合体(A2’)、他の合成樹脂、水性媒体以外の他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては後述するものが挙げられる。
含フッ素樹脂水分散体(A2)は水性塗料用組成物に配合されることから、含フッ素樹脂水分散体(A2)中の有機溶媒の含有量は、3質量%以下が好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
有機溶媒としては、たとえば、工程(α)で用いた有機溶媒が残留したもの、工程(β)で用いた有機溶媒が残留したものが挙げられる。
〔含フッ素樹脂水分散体(A3)〕
含フッ素樹脂水分散体(A3)は、水性媒体に含フッ素重合体(A3’)(ただし、含フッ素共重合体(A1’)および含フッ素共重合体(A2’)を除く。)を含む合成樹脂が分散または溶解したものである。
含フッ素重合体(A3’)は、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の含フッ素単量体に基づく構成単位を有する。
含フッ素重合体(A3’)は、含フッ素単量体と共重合可能な他の単量体(たとえば、アクリル系単量体、アクリル系単量体と共重合可能な他の単量体等)に基づく構成単位を有していてもよい。
含フッ素樹脂水分散体(A3)は、塗膜の造膜性や基材への密着性の点から、含フッ素重合体(A3’)以外の他の合成樹脂としてアクリル樹脂を含むことが好ましい。
アクリル樹脂は、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸およびメタクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアクリルモノマーに基づく構成単位を有することが好ましい。
アクリル酸エステルとしては、透明性、造膜性に優れる塗膜が得られるという点で、アルキル基の炭素数が1〜10のアクリル酸アルキルエステルが好ましい。
メタクリル酸エステルとしては、透明性、造膜性に優れる塗膜が得られるという点で、アルキル基の炭素数が1〜10のメタクリル酸アルキルエステルが好ましい。
アクリル樹脂を含む含フッ素樹脂水分散体(A3)は、含フッ素重合体(A3’)の分散体と、アクリル樹脂の分散体とを混合することによって調製できる。
含フッ素重合体(A3’)とアクリル樹脂との質量比(含フッ素重合体(A3’)/アクリル樹脂)は、10/90〜90/10が好ましく、20/80〜80/20がより好ましい。含フッ素重合体(A3’)が多すぎると、塗膜の造膜性や基材への密着性が低下する。アクリル樹脂が多すぎると、塗膜の耐候性が低下する。
アクリル樹脂を含む含フッ素樹脂水分散体(A3)としては、Arkema社製、製品名「Kynar Aquatec FMA−12」(フッ化ビニリデン系重合体/アクリル樹脂=50/50(質量比)、アクリル樹脂=メタクリル酸メチル単位/メタクリル酸エチル単位/メタクリル酸ブチル単位=60/20/20(質量比))が挙げられる。
(難燃剤(B))
難燃剤(B)は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属ほう酸塩、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ほう酸、ほう酸亜鉛、六水酸化スズ亜鉛および三酸化スズ亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種である。
アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属ほう酸塩におけるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
難燃剤(B)としては、難燃効果に優れる点で、硫酸アンモニウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、塗料中の成分への影響が少ない点で、硫酸アンモニウムが特に好ましい。
水性塗料用組成物中の難燃剤(B)の含有量は、含フッ素樹脂水分散体(A)中の含フッ素樹脂の100質量部に対して10〜100質量部であり、11〜90質量部が好ましく、12〜85質量部がより好ましい。難燃剤(B)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、水性塗料用組成物を用いて形成される塗膜が難燃性、耐擦り傷性等に優れる。難燃剤(B)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜形成後の基材の加工性に優れる。
(化合物(C))
化合物(C)は、水酸基またはカルボキシ基と反応する官能基(h)を2個以上有する化合物である。
化合物(C)は、含フッ素樹脂水分散体中の含フッ素樹脂等の合成樹脂が、水酸基およびカルボキシ基のいずれか一方または両方を有する場合に、硬化剤(架橋剤)として機能する。
化合物(C)の種類によっては、常温乾燥でも架橋が可能であり、含フッ素樹脂水分散体(A)と化合物(C)とを混合した後に塗布することにより硬化塗膜を形成できる。化合物(C)が、架橋に加熱が必要なものである場合は、さらに加熱焼き付けすることにより硬化塗膜を形成できる。
化合物(C)において、官能基(h)としては、水酸基またはカルボキシ基と反応するものであればよい。基材への密着性の点では、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、アルコキシシリル基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、エポキシ基、アルキル化メチロール基、ヒドラジド基およびβ−ヒドロキシアルキルアミド基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基およびアルキル化メチロール基からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。化合物(C)が有する官能基(h)は1種でも2種以上でもよい。
化合物(C)が有する官能基(h)の数は、2個以上であり、2〜8個が好ましく、2〜4個がより好ましく、2個が特に好ましい。
化合物(C)としては、官能基(h)を2個以上有する水溶性または水分散型の化合物が好ましい。具体的には、イソシアネート系化合物、メラミン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂等が挙げられ、耐候性、機械的性質に優れた塗膜が得られやすい点から、イソシアネート系化合物が特に好ましい。
イソシアネート系化合物としては、機械的に水に分散し得るポリイソシアネート化合物(C1)、または自己乳化性のポリイソシアネート化合物(C2)が好ましい。
ポリイソシアネート化合物(C1):
ポリイソシアネート化合物(C1)としては、脂肪族ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート等)、芳香族ポリイソシアネート(m−またはp−フェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネート−3,3’−ジメチルジフェニル等)、脂環式ポリイソシアネート(ビス−(イソシアネートシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネート等)、クルードポリイソシアネート(クルードトリレンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート等)、変性ポリイソシアネート(カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリオール変性ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリオール変性ヘキサメチレンジイソシアネート等)等が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物(C1)は、ビューレット型、イソシアヌレート環型、ウレトジオン型等、2量体または3量体になっているものであってもよく、イソシアネート基をブロック化剤と反応させたブロックポリイソシアネートであってもよい。ブロック化剤としては、アルコール、フェノール、フェノール誘導体、カプロラクタム、オキシム、活性メチレン化合物等が挙げられる。
ブロックポリイソシアネートは、通常、140℃以上でないと硬化しないため、それより低い温度で硬化させる場合には、ブロック化されていないポリイソシアネートが好ましい。
ポリイソシアネート化合物(C2):
ポリイソシアネート化合物(C2)は、乳化剤なしに水に乳化分散できる自己乳化性のポリイソシアネート化合物である。自己乳化性のポリイソシアネート化合物は、特公平4−15270号公報等に記載されている。
ポリイソシアネート化合物(C2)としては、ポリイソシアネート化合物(C1)に親水性のポリオキシアルキレン鎖を有する化合物を反応させたプレポリマー等が挙げられる。ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物としては、イソシアネートと反応し得る基を少なくとも1つ有する、数平均分子量が200〜4000の化合物が好ましく、分子量が300〜1500のポリオキシアルキレンポリオールまたはポリオキシアルキレンモノオールがより好ましい。数平均分子量が200以上であれば、自己乳化性が充分に発揮される。数平均分子量が4000以下であれば、水中安定性が良好になる。また、結晶性が高くならず、低温での貯蔵安定性が良好となり、濁りが発生しにくい。
ポリオキシアルキレン鎖としては、親水性の点から、オキシアルキレン基のすべてまたは多くがオキシエチレン基であるものが好ましい。
他の硬化剤:
メラミン樹脂としては、アルキルエーテル化(メチルエーテル化、ブチルエーテル化、イソブチルエーテル化等)されたメラミン樹脂が挙げられ、水溶性の点から、少なくとも一部がメチルエーテル化されたメラミン樹脂が好ましい。
含フッ素樹脂水分散体(A)が含フッ素樹脂水分散体(A1)の場合、本発明の水性塗料用組成物は、化合物(C)をさらに含有してもよく、化合物(C)を含有しなくてもよい。
含フッ素樹脂水分散体(A)が含フッ素樹脂水分散体(A2)の場合、本発明の水性塗料用組成物は、化合物(C)をさらに含有することが好ましい。
含フッ素樹脂水分散体(A)が含フッ素樹脂水分散体(A3)の場合、本発明の水性塗料用組成物は、化合物(C)をさらに含有してもよく、化合物(C)を含有しなくてもよい。
本発明の水性塗料用組成物が化合物(C)をさらに含有する場合、含フッ素樹脂水分散体(A)と化合物(C)との、不揮発分(固形分)基準での質量比(含フッ素樹脂水分散体(A)/化合物(C))は、50〜95/5〜50が好ましく、65〜90/10〜35がより好ましい。
(顔料(D))
顔料(D)は、防錆顔料、着色顔料および体質顔料からなる群から選択される少なくとも1種である。
防錆顔料は、防錆性が必要な基材に対して、基材の腐食や変質を防止するための顔料である。防錆顔料としては、環境への負荷が少ない無鉛防錆顔料が好ましい。無鉛防錆顔料としては、シアナミド亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸カルシウムマグネシウム、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸バリウム、シアナミド亜鉛カルシウム等が挙げられる。
着色顔料は、硬化膜を着色するための顔料である。着色顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ジオキサジン等が挙げられる。
酸化チタンとしては、光触媒反応が進行しにくくなるような表面処理がなされたものが好ましく、具体的には、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セレン、有機成分(ポリオール等)等で表面処理された酸化チタンが好ましく、これらの表面処理によって、酸化チタン含有量が83〜90質量%に調整された酸化チタンが特に好ましい。酸化チタン含有量が前記下限値以上であれば、硬化膜の白色度に優れる。酸化チタン含有量が前記上限値以下であれば、硬化膜が劣化しにくい。
酸化チタンの市販品としては、石原産業社製の「タイペーク(登録商標) PFC105」(酸化チタン含有量:87質量%)、「タイペーク(登録商標) CR95」(酸化チタン含有量:90質量%)、堺化学社製の「D918」(酸化チタン含有量:85質量%)、デュポン社製の「Ti−Pure(登録商標) R960」(酸化チタン含有量:89質量%)、「Ti−Select(登録商標)」(酸化チタン含有量:90質量%)等が挙げられる。
体質顔料は、硬化膜の硬度を向上させ、かつ硬化膜の厚さを増すための顔料である。また、基材が切断された場合に、硬化膜の切断面をきれいにできることからも配合することが好ましい。体質顔料としては、タルク、硫酸バリウム、マイカ、炭酸カルシウム等が挙げられる。
顔料(D)としては、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
水性塗料用組成物中の顔料(D)の含有量は、顔料(D)の種類、塗膜の色調に応じて設定され、特に限定されないが、含フッ素樹脂分散体の100質量部に対して5〜200質量部が好ましく、10〜150質量部がより好ましい。顔料(D)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、下地基材の隠ぺい性に優れ、目的の塗色の調整が容易となる。顔料(D)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、塗膜の耐衝撃性に優れる。
(他の成分)
本発明の水性塗料用組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で、含フッ素樹脂水分散体(A)、難燃剤(B)、化合物(C)および顔料(D)以外の他の成分をさらに含有してもよい。
他の成分としては、公知の塗料用添加剤が挙げられ、具体的には、造膜助剤、硬化触媒、可塑剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。本発明の水性塗料用組成物には、他の成分を2種以上配合してもよい。
(水性塗料用組成物の製造方法)
本発明の水性塗料用組成物の製造方法は、公知の方法が採用できる。
例えば、含フッ素樹脂水分散体(A)と、難燃剤(B)と、必要に応じて任意成分(化合物(C)、顔料(D)、他の成分)を混合することにより水性塗料用組成物を調製できる。各成分の混合順序は特に限定されず、各成分を一括で混合してもよく、順次混合してもよい。
水性塗料用組成物が化合物(C)をさらに含有する場合、含フッ素樹脂水分散体(A)の全量を含む第1液と、化合物(C)の全量を含む第2液とを予め調製し、使用直前にそれらを配合して本発明の水性塗料用組成物を調製することが好ましい。含フッ素樹脂水分散体(A)および化合物(C)以外の成分は、第1液に配合されてもよく、第2液に配合されてもよい。
(作用効果)
以上説明した本発明の水性塗料用組成物にあっては、含フッ素樹脂水分散体(A)と、特定の難燃剤(B)とを含み、難燃剤(B)の含有量が、含フッ素樹脂水分散体(A)中の含フッ素樹脂の100質量部に対して10〜100質量部であるため、含フッ素樹脂水分散体(A)中の含フッ素樹脂、難燃剤(B)等の塗膜構成成分が沈降しにくい。また、難燃性および耐汚染性に優れた塗膜を形成できる。
本発明の水性塗料用組成物から形成される塗膜の難燃性および耐汚染性は、航空機内装材に求められる難燃性および耐汚染性を充分に満足するものである。たとえば耐汚染性について、乗務員や乗客などによる様々な原因に基づく種々の生活汚れ(油性インク、水性インク、飲料、汗や、口紅、整髪料、ファンデーションなどの化粧品)が付着しにくく、また、付着したとしても除去しやすい。
また、本発明の水性塗料用組成物は、有機溶媒の含有量が少ない水性塗料用組成物であるため、航空機の乗務員や乗客に影響を与えない。
したがって、本発明の水性塗料用組成物は、航空機の内装用として有用である。
さらに、本発明の水性塗料用組成物が硬化可能なものである場合、該水性塗料用組成物から形成される硬化塗膜は、未硬化の塗膜(乾燥塗膜)に比べて硬度が高く、乗客の所持品が接触した際の傷付きを防止することができ、航空機の内装用としての有用性が高い。
<航空機内装材>
本発明の航空機内装材は、本発明の水性塗料用組成物から形成された塗膜を最表層に備える。具体的には、被塗装物と、本発明の水性塗料用組成物により該被塗装物上に形成された塗膜とを備える。
本発明の航空機内装材が備える塗膜は、乾燥塗膜でもよく硬化塗膜でもよい。
「乾燥塗膜」は、塗料成分中から水などの揮発成分が揮発して形成される塗膜である。乾燥塗膜中の含フッ素樹脂は架橋していない。「硬化塗膜」は、塗料成分中から水などの揮発成分が揮発するとともに、含フッ素樹脂が架橋して形成される塗膜である。硬化塗膜中の含フッ素樹脂は、架橋により三次元構造を形成している。含フッ素樹脂は、例えば、含フッ素樹脂中の架橋性反応基(水酸基、カルボキシ基等)と硬化剤(化合物(C)等)との反応により架橋する。
塗膜の厚みは、3〜300μmが好ましく、5〜250μmがより好ましく、7〜200μmがさらに好ましい。塗膜の厚みが前記範囲の下限値以上であれば、塗膜によって付与される難燃性および耐汚染性が充分に優れ、前記範囲の上限値以下であれば、揮発成分が、塗膜内部に取り残されることなく、均一な塗膜を形成する。
被塗装物の材質としては、金属、強化ガラス、樹脂等が挙げられる。
金属としては、アルミニウム、マグネシウム等の、比重が6.0以下のものが好ましい。
樹脂としては、たとえばポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン系樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン(PS)等)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等)等が挙げられる。
上記の中でも、軽量化の観点、および本発明の水性塗料用組成物を用いることの有用性の観点から、樹脂が好ましい。
被塗装物の形状は特に限定されず、製造する航空機内装材に応じたものが用いられる。
航空機内装材の具体例としては、座席、座席まわりの部材、テーブル、トイレ、収納棚、ドア、床材、天井等が挙げられる。
本発明の航空機内装材の製造方法としては、本発明の水性塗料用組成物を用いる以外は、公知の方法を採用できる。例えば、本発明の水性塗料用組成物を被塗装物の表面に塗布し、乾燥させ、必要に応じて硬化させる方法が挙げられる。乾燥工程が、硬化工程を兼ねてもよい。
本発明の水性塗料用組成物は、被塗装物に直接塗布してもよく、被塗装物に公知の表面処理(下地処理等)を施した上に塗布してもよい。
水性塗料用組成物の塗布方法としては、スプレー塗装、エアスプレー塗装、はけ塗り、浸漬法、ロールコート、フローコート等が挙げられる。
乾燥方法としては、自然乾燥、真空乾燥、遠心乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。
硬化方法としては、熱硬化、光硬化等が挙げられる。
(作用効果)
以上説明した本発明の航空機内装材にあっては、本発明の水性塗料用組成物から形成された塗膜を最表層に有するため、表面の難燃性および耐汚染性が優れる。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。ただし本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の説明では、特に説明がない限り、成分割合は「質量%」を単に「%」と示した。
後述の例1〜6のうち、例1〜4は実施例であり、例5〜6は比較例である。
各例で用いた評価方法および樹脂水分散体を以下に示す。
<評価方法>
(沈降性)
水性塗料用組成物を密閉容器中で、50℃雰囲気下、2週間静置した。その後、塗膜構成成分(樹脂、硬化剤、難燃剤、顔料等)の沈降性について、目視により以下の基準で評価した。
「○」:均一な状態であり、塗膜構成成分の沈降は見られない。
「×」:塗膜構成成分の沈降が見られる。
(難燃性)
UL94規格の垂直燃焼試験(UL94V試験)を行い、以下の基準で難燃性を判定した(試験本数5本)。
「自己消火性なし」:接炎から30秒以内に自己消火しなかった。
「V−2」:燃焼試験時に樹脂組成物のドリップがあり、接炎から30秒以内に自己消火した(燃焼時間30秒以内)。
「V−1」:燃焼時に樹脂組成物のドリップがなく、接炎から30秒以内に自己消火した(燃焼時間30秒以内)。
「V−0」:燃焼時に樹脂組成物のドリップがなく、接炎から10秒以内に自己消火した(燃焼時間10秒以内)。
(耐汚染性)
容器内に試験片を、塗膜側を上側に向けて収容した。
インスタントコーヒー(AGF社製、商品名:Blendy)の10gおよびクリープ(森永乳業社製、商品名:Creap)の10gを90℃のお湯80gで溶かしたものを、50℃になるまで冷やし、前記試験片の上(塗膜側)に10滴置いた後、該試験片を収容した容器に時計皿で蓋をし、1週間静置した。その後、試験片の塗膜を、イオン交換水を用いて水洗し、乾燥させた。乾燥後の塗膜の状態を目視にて観察し、以下の基準で耐汚染性を評価した。
「○」:汚染物質の残存は見られず、膨れや塗膜失沢などの外観異常も見られない。
「×」:汚染物質が残存し、膨れや塗膜失沢などの外観異常も見られる。
<樹脂水分散体>
含フッ素樹脂水分散体(A−1):旭硝子社製、ルミフロン(登録商標) FE4300、固形分50%、水酸基価10mgKOH/g、酸価0mgKOH/g。
含フッ素樹脂水分散体(A−2):旭硝子社製、ルミフロン(登録商標) FE4400、固形分50%、水酸基価55mgKOH/g、酸価0mgKOH/g。
含フッ素樹脂水分散体(A−3):旭硝子社製、ルミフロン(登録商標) FD1000、固形分50%、水酸基価85mgKOH/g、酸価15mgKOH/g。
含フッ素樹脂水分散体(A−4):Arkema社製、製品名「Kynar Aquatec FMA−12」、固形分50%、水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g。
アクリル樹脂水分散体:Arkema社製、製品名「Flex 187」、固形分50%、水酸基価0mgKOH/g、酸価0mgKOH/g。
<調製例1>
顔料組成物の調製:
酸化チタン(堺化学工業社製、D−918)の210質量部、顔料分散剤(ビックケミー社製、Disperbyk(登録商標)190、顔料に親和性のある共重合物、酸価:10mgKOH/g)の21質量部、消泡剤(コグニス社製、デヒドラン(登録商標)1620)の4.5質量部、イオン交換水の64.5質量部、ガラスビーズの300質量部を混合し、分散機を用いて分散し、ガラスビーズを濾過により除去して顔料組成物を調製した。
<例1>
調製例1で得た顔料組成物の55gに、含フッ素樹脂水分散体(A−1)の193g、造膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールモノ(2−メチルプロパネート)の15g、増粘剤(アクゾノーベル社製、ベルモドール(登録商標)2150)の0.5g、硫酸アンモニウムの48.3gを加えて混合し、水性塗料用組成物(α)を調製した。
得られた水性塗料用組成物(α)を、フィルムアプリケータを用いて、ガラス基板の表面に、乾燥膜厚40μmになるよう塗布し、温度23℃、湿度50%にて2週間乾燥して塗膜(乾燥塗膜または硬化塗膜)を形成した。その後、該塗膜をガラス基板より剥離させ、難燃性評価用の試験片(1a)とした。
また、得られた水性塗料用組成物(α)を、フィルムアプリケータを用いて、アルミニウム板(厚さ1mm、表面をクロメート処理)の表面に、乾燥膜厚40μmになるよう塗布し、温度23℃、湿度50%にて2週間乾燥して塗膜を形成した。得られた積層体(アルミニウム板/塗膜)を、耐汚染性評価用の試験片(1b)とした。
<例2>
調製例1で得た顔料組成物の55gに、含フッ素樹脂水分散体(A−2)の193g、造膜助剤としてジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルの15g、増粘剤(アクゾノーベル社製、ベルモドール(登録商標)2150)の0.5g、硫酸アンモニウムの48.3g、水分散型イソシアネート硬化剤(住化バイエル社製、バイヒジュール(登録商標)3100)の22.9gを加えて混合し、水性塗料用組成物(β)を調製した。
水性塗料用組成物(α)の代わりに水性塗料用組成物(β)を用いた以外は、例1と同様にして、難燃性評価用の試験片(2a)と、耐汚染性評価用の試験片(2b)を作製した。
<例3>
調製例1で得た顔料組成物の55gに、含フッ素樹脂水分散体(A−3)の193g、表面調整剤(ビックケミー社製、BYK(登録商標)−348)の1.3g、増粘剤(アクゾノーベル社製、ベルモドール(登録商標)2150)の0.5g、硫酸アンモニウムの38.6g、水分散型イソシアネート硬化剤(住化バイエル社製、バイヒジュール(登録商標)3100)の25gを加えて混合し、水性塗料用組成物(γ)を調製した。
水性塗料用組成物(α)の代わりに水性塗料用組成物(γ)を用いた以外は、例1と同様にして、難燃性評価用の試験片(3a)と、耐汚染性評価用の試験片(3b)を作製した。
<例4>
調製例1で得た顔料組成物の55gに、含フッ素樹脂水分散体(A−4)の193g、造膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールモノ(2−メチルプロパネート)の15g、増粘剤(アクゾノーベル社製、ベルモドール(登録商標)2150)の0.5g、硫酸アンモニウムの48.3gを加えて混合し、水性塗料用組成物(δ)を調製した。
水性塗料用組成物(α)の代わりに水性塗料用組成物(δ)を用いた以外は、例1と同様にして、難燃性評価用の試験片(4a)と、耐汚染性評価用の試験片(4b)を作製した。
<例5>
硫酸アンモニウムを添加しない以外は、例1と同様にして水性塗料用組成物(ε)を調製した。
水性塗料用組成物(α)の代わりに水性塗料用組成物(ε)を用いた以外は、例1と同様にして、難燃性評価用の試験片(5a)と、耐汚染性評価用の試験片(5b)を作製した。
<例6>
含フッ素樹脂水分散体(A−1)をアクリル樹脂水分散体に変更した以外は、例1と同様にして水性塗料用組成物(θ)を調製した。
水性塗料用組成物(α)の代わりに水性塗料用組成物(θ)を用いた以外は、例1と同様にして、難燃性評価用の試験片(6a)と、耐汚染性評価用の試験片(6b)を作製した。
水性塗料用組成物(α)、(β)、(γ)、(δ)、(θ)について、沈降性の評価を行った。難燃性評価用の試験片(1a)〜(6a)について、難燃性の評価を行った。耐汚染性評価用の試験片(1b)〜(6b)について、耐汚染性の評価を行った。評価結果を表1に示す。なお、難燃性の評価において、各例の5本の試験片の結果は全て同じであった。
水性塗料用組成物(ε)については、難燃剤を配合していないため、沈降性の評価を行わなかった。
Figure 2016079265
表1に示すように、例1〜4の水性塗料用組成物は、塗膜構成成分の沈降が見られなかった。また、各水性塗料用組成物から形成された塗膜は、難燃性および耐汚染性に優れていた。
一方、難燃剤(B)を含まない例5の水性塗料用組成物、樹脂水分散体としてアクリル樹脂水分散体を用いた例6の水性塗料用組成物は、それぞれ、塗膜構成成分の沈降が見られた。また、自己消化性がなく、かつ塗膜表面に汚染物質が付着しやすいものであった。

Claims (8)

  1. 含フッ素樹脂水分散体(A)と、
    アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属ほう酸塩、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ほう酸、ほう酸亜鉛、六水酸化スズ亜鉛および三酸化スズ亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の難燃剤(B)と、
    を含み、
    前記難燃剤(B)の含有量が、前記含フッ素樹脂水分散体(A)中の含フッ素樹脂の100質量部に対して10〜100質量部である、航空機内装用の水性塗料用組成物。
  2. 前記含フッ素樹脂水分散体(A)中の含フッ素樹脂が、水酸基およびカルボキシ基のいずれか一方または両方を有する、請求項1に記載の航空機内装用の水性塗料用組成物。
  3. 前記含フッ素樹脂水分散体(A)中の含フッ素樹脂が、下記単量体(m1)に基づく構成単位と、下記単量体(m2)に基づく構成単位と、下記単量体(m3)に基づく構成単位とを有する含フッ素共重合体(A1’)である、請求項1または2に記載の航空機内装用の水性塗料用組成物。
    単量体(m1):フルオロオレフィン。
    単量体(m2):親水性部位を有するマクロモノマー。
    単量体(m3):下式(m3)で表される水酸基含有単量体。
    X’−Y’−OH ・・・(m3)
    ただし、X’はラジカル重合性不飽和基を有する基であり、Y’はn−ノニレン基またはシクロヘキサン−1,4−ジメチレン基である。
  4. 前記含フッ素樹脂水分散体(A)中の含フッ素樹脂が、下式(a1)で表される構成単位の40〜60モル%と、下式(a2)で表される構成単位の3〜50モル%と、下式(a3)で表される構成単位の4〜30モル%と、下式(a4)で表される構成単位の0.4〜7モル%とを有する(ただし、式(a4)で表される構成単位の少なくとも一部は、式(a4)中のR15が−NHZであるものであり、式(a1)で表される構成単位と式(a2)で表される構成単位と式(a3)で表される構成単位と式(a4)で表される構成単位との合計は、80〜100モル%である。)含フッ素共重合体(A2’)である、請求項1または2に記載の航空機内装用の水性塗料用組成物。
    Figure 2016079265
    ただし、XおよびXはそれぞれ独立に水素原子、塩素原子またはフッ素原子であり、Xは水素原子、塩素原子、フッ素原子または−CYであり、Y、YおよびYはそれぞれ独立に水素原子、塩素原子またはフッ素原子である。
    Figure 2016079265
    ただし、Rは水素原子またはメチル基であり、R11は炭素数1〜12のアルキル基または炭素数4〜10の1価の脂環式基であり、uは0〜8の整数であり、vは0または1である。
    Figure 2016079265
    ただし、Rは水素原子またはメチル基であり、R12は炭素数1〜10のアルキレン基または炭素数4〜10の2価の脂環式基であり、wは0〜8の整数であり、xは0または1である。
    Figure 2016079265
    ただし、Rは水素原子またはメチル基であり、R13は炭素数1〜10のアルキレン基または炭素数4〜10の2価の脂環式基であり、R14は炭素数2〜10のアルキレン基または炭素数4〜10の2価の脂環式基であり、R15は水素原子または−NHZであり、Z、ZおよびZはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基であり、yは0〜8の整数であり、zは0または1である。
  5. 水酸基またはカルボキシ基と反応する官能基(h)を2個以上有する化合物(C)をさらに含有する、請求項2〜4のいずれか一項に記載の航空機内装用の水性塗料用組成物。
  6. 前記官能基(h)が、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、アルコキシシリル基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、エポキシ基、アルキル化メチロール基、ヒドラジド基およびβ−ヒドロキシアルキルアミド基からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の航空機内装用の水性塗料用組成物。
  7. 防錆顔料、着色顔料および体質顔料からなる群から選択される少なくとも1種の顔料(D)をさらに含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の航空機内装用の水性塗料用組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の航空機内装用の水性塗料用組成物から形成された塗膜を最表層に備える航空機内装材。
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