JP2016069786A - 導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸 - Google Patents

導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸 Download PDF

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石田  央
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Abstract

【課題】電気抵抗値のバラツキが抑制された繰り返しの使用でも安定した導電性を示し得る導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸の提供。
【解決手段】鞘部2と芯部3とからなる芯鞘複合繊維1を含む導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸であって、鞘部2がポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂を含み、1.5〜7.0μmの厚み4を有し、芯部3がポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂とカーボンブラックとを含み、前記カーボンブラックの含有割合が芯部全量に対して15〜35質量%であり、芯鞘複合繊維1の長手方向の表面における電気抵抗値が9×10〜1×1013Ω/cmであり、芯鞘複合繊維1の長手方向の断面における電気抵抗値が1×10〜1×1010Ω/cmである芯鞘複合導電性マルチフィラメント糸。
【選択図】図1

Description

本発明は、導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸に関する。
ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、又はポリオレフィン樹脂のような疎水性ポリマーからなる繊維は、機械特性、耐薬品性、及び耐候性といった多くの特性に優れる。そのため、衣料用途のみならず産業資材用途にも広く用いられている。これらの繊維の表面は、例えば着用時の摩擦によって静電気が発生し易いため、空気中の粉塵を吸引して繊維表面の美観を低下させ、又は、人体に電撃を与え、ひいては不快感を与える。さらには、スパークによって電子機器に障害を発生させたり、引火性物質へ引火したりする。また、こうした繊維が、電子写真記録方式の乾式複写機、ファクシミリ又はプリンター等の精密機器において用いられる場合は、静電気の発生により致命的な故障が発生することもある。そこで、静電気に起因するこれらの問題を解決するために、導電性が付与された繊維が検討されている。
例えば、全体にカーボンブラックを含有する導電性繊維が知られている(特許文献1)。特に、特許文献2には、導電性の芯鞘型複合繊維が記載されている。この導電性芯鞘複合繊維においては、導電性粒子を含有する導電性成分が鞘部に配される。
そして、衣料用途以外の分野(特に、電子写真記録方式の乾式複写機、ファクシミリ、又はプリンターの分野)においても導電糸が用いられる。従来、このような分野に使用する導電糸にはセルロース系繊維が多く用いられていたが、近年では、ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂を主成分とする繊維も用いられている。
特開2004−183180号公報 国際公開第2002/075030号パンフレット 特開平09−143821号公報 特開2002−363826号公報
しかし、特許文献1及び2においては、電気的な特性に顕著に優れるカーボンブラックが繊維表面に分散している。そのため、電気抵抗値のバラツキ(繊維表面の長手方向における電気抵抗値のバラツキ)が非常に大きくなるという問題がある。また、繊維表面にカーボンブラックが露出するため、操業時に紡糸切れなどのトラブルが生じやすく、さらに、カーボンブラックが繊維表面から脱落しやすい。
つまり、特許文献1又は2に記載された導電性繊維では、電気的な特性に過度に優れるカーボンブラックが繊維表面に含有されているため、特に高抵抗域で均一な電気抵抗値が得られにくく、安定した導電性を得ることが困難である。また、繰り返しの使用に伴い繊維が摩耗し繊維の一部が欠落するため、使用当初と同様の電気抵抗値を示すことが困難となる。その結果、長期にわたって安定した導電性を得ることができない。また、電子写真記録方式の乾式複写機、ファクシミリ又はプリンター等の飛躍的な高性能化に伴い、これらの精密機器製品またはそれらの製造工程で用いられる、導電糸を使用した帯電ブラシ又はクリーニングブラシの粉塵除去性能の向上も重要な課題になっている。
このような問題を解決するために、カーボンブラック又は金属粉などを含有する導電成分を芯部とし、鞘部に非導電ポリマーが配された導電性芯鞘複合繊維が知られている(例えば、特許文献3、又は特許文献4)。このような芯鞘型の複合繊維においては、導電性粒子が繊維表面に存在しないため操業時のトラブルが生じにくく、導電性粒子の脱落が生じにくい。しかしながら、特許文献3においては、繊維の横断面における芯部の形状が凹部及び凸部を有する異形断面であるのに対して、鞘部の形状が丸断面形状である。芯部の凸部では十分な電気抵抗値が発現するが、凹部は十分な電気抵抗値が発現しないため、繊維の長手方向の表面に発現する電気抵抗値が不均一となる。
また、特許文献4に記載された実質的に芯部のみに導電性微粒子が存在する導電性芯鞘複合繊維においては、鞘部の厚みを1μm以下とすることにより導電性芯鞘複合繊維の電気抵抗値のバラツキが少なくなることが記載されているものの、当該電気抵抗値の範囲が10Ωcm程度の低抵抗値範囲に限られる。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、芯部にカーボンブラックを含有する導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸において、鞘部の厚みを従来の範囲とは異なる特定の範囲に制御することによって、電気抵抗値のバラツキを抑えることが困難であった9×10Ω/cm以上1×1013Ω/cm以下の高抵抗範囲において、繊維表面の電気抵抗値のバラツキを極めて少なくすることができることを見出し、本発明に到達した。より具体的には、芯鞘複合繊維を含む導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸において、前記繊維の鞘部の厚みを1.5μm以上7.0μm以下の範囲に制御すること等により、表面の電気抵抗値を9×10Ω/cm以上1×1013Ω/cm以下という範囲に制御できることを新たに見出し、こうした知見に基づいて本発明を完成させたのである。
すなわち、本発明は以下を要旨とする。
(1)鞘部と芯部とからなる芯鞘複合繊維を含む導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸である。鞘部はポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂を含み、1.5μm以上7.0μm以下の厚みを有する。芯部はポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂とカーボンブラックとを含み、カーボンブラックの含有割合は芯部全量に対して15質量%以上35質量%以下である。芯鞘複合繊維の長手方向の表面における電気抵抗値が9×10Ω/cm以上1×1013Ω/cm以下であり、芯鞘複合繊維の長手方向の断面における電気抵抗値が1×10Ω/cm以上1×1010Ω/cm以下である。
(2)カーボンブラックの平均粒子径が15nm以上60nm以下である、(1)の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸。
(3)カーボンブラックのDBP吸収量が40cm/100g以上180cm/100g以下である、(1)又は(2)の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸。
(4)芯鞘複合繊維の長手方向の断面における、芯部の形状と鞘部の形状とが互いに同一であり、かつ同心である、(1)〜(3)の何れかの導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸。
(5)芯鞘複合繊維の長手方向の表面において、下記式(I)より算出されるCV値が50%以下である、(1)〜(4)の何れかの導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸。
CV値(%)=(V/X)×100 (I)
上記式(I)中、Vは前記芯鞘複合繊維の長手方向の表面における電気抵抗値の不偏分散の平方根を示す。Xは前記芯鞘複合繊維の長手方向の表面における電気抵抗値を示す。
(6)30分間の沸水処理を施した後の収縮率が5%以下である、(1)〜(5)の何れかの導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸。
本発明の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸は、芯鞘複合繊維を含む。この芯鞘複合繊維の芯部におけるカーボンブラックの含有量、及び鞘部の厚みを、同時に特定の範囲とすることで、繊維表面に特定範囲の電気抵抗値を発現させ、その結果、導電性のバラツキを低減させることができる。こうした本発明の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸は、衣料用途(例えば、制電作業着、又はユニフォーム)、インテリア用途(例えば、カーテン)、又は産業資材用途のみならず、電子写真記録方式の乾式複写機、ファクシミリ、又はプリンターのような装置に用いられる部材(例えば、帯電ブラシ、除電ブラシ、又はクリーナーブラシ)に好適に使用される。また、本発明の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸の単糸繊度が小さい場合は、芯鞘複合繊維の表面積を極めて大きくすることができ微細な粉塵又は汚れを高効率に除去できるため、電子写真記録方式の乾式複写機、ファクシミリ、又はプリンター等の精密機器製品、又はそれらの製造工程で用いられる帯電ブラシ又はクリーナーブラシに特に好適に用いられる。
本発明の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸の一例の概略断面図である。 本発明の実施例で得られた導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−12)又は(B−5)の概略断面図である。 鞘部の厚みと第一の電気抵抗値との関係性を示す図である。 鞘部の厚みと第一の電気抵抗値との関係性を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(以下、単に「マルチフィラメント糸」と称する場合がある)は、鞘部と芯部とからなる芯鞘複合繊維(以下、単に「繊維」と称する場合がある)を含む。詳しくは、本発明の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸は、芯鞘複合繊維の集合体である。芯鞘複合繊維の鞘部はポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂を含み、非導電性である。一方、芯部はポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂とカーボンブラックとを含み、導電性を有する。
図1に本発明の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸の一例の断面図の概略を示す。図1に示すように、本発明の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸1においては、鞘部2が芯部3の表面を被覆している。
鞘部及び芯部に含まれる樹脂は、ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂である。ポリエステル樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートを主成分とする樹脂が好ましい。また、これらの主成分に、ジオール成分(例えば、アジピン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ビフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸、1,5−ペンタメチレンジオール、1,6−ヘキサメチレンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、又はビスフェノールSのエチレンオキシド付加体)が共重合された樹脂であってもよい。また、複数種類のポリエステル樹脂をブレンドした樹脂、又は、生分解ポリエステルとして知られるポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、若しくはポリε−カプロラクタムのような脂肪族ポリエステル樹脂であってもよい。また、ポリアミド樹脂は、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、ポリメタキシレンアジパミド、又はこれらの各成分を、共重合又はブレンドした樹脂である。なかでも、樹脂の電気的な特性や曳糸性観点から、芯部及び鞘部の何れもがポリアミド樹脂を含むことが好ましい。
電気抵抗値について以下に述べる。
芯鞘複合繊維の長手方向の表面における電気抵抗値(以下、「第一の電気抵抗値」と称する場合がある)は9×10Ω/cm以上1×1013Ω/cm以下の範囲であり、9×1010Ω/cm以上9×1012Ω/cm以下の範囲であることが好ましく、2×1011Ω/cm以上8×1011Ω/cm以下の範囲であることがより好ましい。後述するように、鞘部の厚み、又は芯部のカーボンブラック量などを特定の範囲とすることにより、第一の電気抵抗値範囲を9×10Ω/cm以上1×1013Ω/cm以下とすることができ、第一の電気抵抗値のバラツキを抑制できる。
芯鞘複合繊維の長手方向の断面における電気抵抗値(以下、「第二の電気抵抗値」と称する場合がある)は1×10Ω/cm以上1×1010Ω/cm以下の範囲であり、5×10Ω/cm以上1×10Ω/cm以下の範囲であることが好ましく、1×10Ω/cm以上3×10Ω/cm以下の範囲であることがより好ましく、5×10Ω/cm以上5×10Ω/cm以下の範囲であることがいっそう好ましい。第二の電気抵抗値が1×10Ω/cm未満と低過ぎると、第一の電気抵抗値を所望の範囲とすることができない場合がある。第二の電気抵抗値が1×1010Ω/cmを超えて高過ぎると、第一の電気抵抗値を所望の範囲とすることができなかったり、導電性が不十分となったり、第一の電気抵抗値のバラツキが大きくなったりする。
芯部は樹脂(ポリエステル樹脂、又はポリアミド樹脂)とカーボンブラックとを含み、導電性を有する。カーボンブラックの含有割合は芯部全量に対して15質量%以上35質量%以下であり、17質量%以上30質量%以下の範囲が好ましく、20質量%以上27質量%以下の範囲がより好ましい。カーボンブラックの含有量を適宜に調整することで、所望の電気抵抗値を達成することが出来る。
すなわち、芯部におけるカーボンブラックの含有量が15質量%以下であると、芯部の電気抵抗値が高くなり過ぎて、第一の電気抵抗値が発現しなかったり上記の範囲とならなかったりする場合がある。一方、芯部におけるカーボンブラックの含有量が35質量%を超えると、前述のように第一の電気抵抗値を所望の範囲とすることができない場合があるとともに、カーボンブラックの濃度が高いため繊維が脆くなりやすく、操業性又は加工性に劣る場合がある。
なお、本発明において、電気抵抗値は以下の手法により測定する。繊維の長手方向の100m毎に長さ10cmの試験片を20個採取する。各々の試験片の両端に50Vの電圧を印可し、温度20℃かつ相対湿度20%RHの環境下、抵抗値測定機(例えば、東亜電波工業社製の「SM−10E」)を使用して電気抵抗値を測定する。そして、20個の試験片の測定結果の平均値を算出する。なお、第一の電気抵抗値を測定するには、繊維の長手方向の表面のみに電圧を印可する。また、第二の電気抵抗値を測定する際には、繊維の長手方向の断面に導電性ペースト(フクダ電子株式会社製、商品名「ケラチンクリーム」、型式「OJE−01D」)を塗布し、断面のみに電圧を印可する。
第二の電気抵抗値は、芯部におけるカーボンブラックの含有量(濃度)などにより調整することができる。
カーボンブラックについて以下に述べる。カーボンブラックは、導電性を有し、かつ粉末状態を維持し得るものであれば特に限定するものではないが、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、又はケッチェンブラックである。中でも、分散性に優れるためにファーネスブラックが好ましい。
カーボンブラックの平均粒子径は15nm以上60nm以下であることが好ましく、20nm以上40nm以下であることがより好ましい。平均粒子径が60nm以下であるカーボンブラックを用いることによって、安定した電気抵抗値を得られ易い。なぜなら、カーボンブラックの平均粒子経が小さいほど被表面積が大きくなり、導電性が安定し易いため、電気抵抗値のバラツキがより抑制されるからである。また、平均粒子径が60nm以下であるカーボンブラックは分散性が良好であるため、操業性にもより優れる。一方で、カーボンブラックの平均粒子径が15nm未満であると凝集が発生しやすくなり、操業性が低下し易くなる。
また、カーボンブラックは、複数のカーボンブラック粒子同士のつながり(ストラクチャー)を有する。ストラクチャーが発達しているカーボンブラックが繊維の芯部に含有されると、繊維の長手方向の電気抵抗値が低くなり導電性を優れたものとすることができ、さらに均一な電気抵抗値を示す。ここで、カーボンブラックの平均粒子径が15nm未満であると、カーボンブラック粒子同士のつながりが良好に構成されない場合があり、繊維の長さ方向において電気抵抗値のバラツキが発生しやすくなる場合がある。
カーボンブラックの平均粒子径は以下のような手法により求めることができる。複数のカーボンブラック粒子を電子顕微鏡により観察して各々の粒子の粒子径を測定し、それらの平均値を算出して平均粒子径を算出する。
カーボンブラックのDBP(フタル酸ジブチル)吸収量は40cm/100g以上180cm/100g以下であることが好ましく、50cm/100g以上170cm/100g以下であることがより好ましい。DBP吸収量が上記の範囲であるカーボンブラックを用いると、ストラクチャーがより良好に形成され、第一の電気抵抗値のバラツキがより少なくなるため好ましい。本発明においては、ストラクチャーが発達しすぎないため、カーボンブラックの濃度や分散状態によって電気抵抗値が変化しやすくなることを抑制し、糸長方向の電気抵抗値のバラツキをよりいっそう低減することができる。さらには操業性が著しく悪くなることを抑制できる。
DBP吸収量は、JIS K6217に従って、以下のような手法により求める。まず、カーボンブラックにDBPを添加する。次いで、アブソープトメーターを用いて、カーボンブラック100g当たりのDBP吸収量を測定する。
導電性複合繊維においては、鞘部が非導電性である。そのため、第一の電気抵抗値は第二の電気抵抗値と鞘部の厚みなどにより決定される。詳しくは、第二の電気抵抗値が1×10Ω/cm以上1×1010Ω/cm以下であり、さらに非導電性である鞘部の厚みが1.5μm以上7.0μm以下の範囲であるため、導電成分を非導電成分で覆った芯鞘複合繊維であっても、繊維表面に9×10Ω/cm以上1×1013Ω/cm以下という範囲の高電気抵抗値が発現する。
鞘部の厚みについて述べる。鞘部の厚みは1.5μm以上7.0μm以下であり、1.8μm以上6.3μm以下の範囲であることが好ましく、2.0μm以上4.0μm以下の範囲であることがいっそう好ましい。本発明においては、第二の電気抵抗値を特定の範囲とし、さらに鞘部の厚みを特に限定された範囲とすることで、従来技術では電気抵抗値のバラツキを抑えることが困難であった9×10Ω/cm以上1×1013Ω/cm以下の高抵抗範囲において、繊維表面の電気抵抗値のバラツキを極めて少なくすることができる。こうした本発明の効果について、以下に詳述する。
図3及び図4は、鞘部の厚みと第一の電気抵抗値との関係を示す図である。詳しくは、後述する導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−1)〜(A−13)及び(B−3)〜(B−5)に関し、横軸に鞘部の厚みを、縦軸に第一の電気抵抗値(対数値)を示した図である。また、図4は、後述する導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−18)〜(A−29)及び(B−8)〜(B−9)に関し、横軸に鞘部の厚みを、縦軸に第一の電気抵抗値(対数値)を示した図である。図3、図4から分かるように、第二の電気抵抗値を特定の範囲とした上で鞘部の厚みを変化させると、第一の電気抵抗値が変わり得るが、鞘部の厚みが1.5μm以上7.0μm以下の範囲で、第一の電気抵抗値が特定の範囲となる臨界的意義があることが確認された。そして、当該臨界的意義は、導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸における樹脂種、カーボンブラックの含有量、又は断面形状などによらないものであった。また、特に鞘部の厚みが1.8μm以上6.3μm以下の範囲で、本発明の効果はいっそう顕著であった。
こうした臨界的意義が生じる理由は明らかではないが、本発明においては第二の電気抵抗値を特定の範囲とした上で鞘部の厚みを1.5μm以上7.0μm以下とすることなどにより、特許文献3のような通電時の鞘部の絶縁破壊により低抵抗値を誘発するメカニズムとは異なる何らかのメカニズムに従って、第一の電気抵抗値が比較的高抵抗域に制御できると推測される。
芯鞘複合繊維においては、芯部の形状と鞘部の形状とが互いに同一であり、かつ同心であることが好ましい。芯部の形状と鞘部の形状とが異なったり、又は形状は同一であっても中心が互いに異なったりすると、繊維表面の鞘部の厚みが均一ではなくなるため、第一の電気抵抗値のバラツキが大きくなる場合がある。
芯鞘複合繊維において、芯部と鞘部の割合(芯部/鞘部、質量比)は、20/80〜70/30の範囲が好ましく、40/60〜70/30の範囲がより好ましく、50/50〜70/30の範囲が特に好ましい。
繊維の第一の電気抵抗値のバラツキを示す指標は、CV値(単位:%)である。CV値は、以下の手法により測定する。繊維の長手方向に100m毎に長さ10cmの試験片を100個採取し、各々の試験片の第一の電気抵抗値を測定し、それらの平均値を算出する。そして、下記式(1)に従ってCV値を算出する。
第一の電気抵抗値のCV値(%)=(V/X)×100 (1)
なお、上記式(1)中、Vは第一の電気抵抗値の不偏分散の平方根を示し、Xは第一の電気抵抗値(20個の試験片の平均値)を示す。
不偏分散は以下の手法により求める。100個の試験片の第一の電気抵抗値の実測値と、試験片の電気抵抗値の平均の差をそれぞれ求め、この差を自乗する。そして自乗して得られた値の総和を(試験片の数−1)で除して、得られた値を不偏分散とする。
CV値は50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがより好ましい。CV値が50%を超えると、電気抵抗値のバラツキが発生しているため、例えば、電子写真記録方式の乾式複写機、ファクシミリ、又はプリンターのような装置に用いられる部材(例えば、帯電ブラシ、除電ブラシ、又はクリーナーブラシ)に使用する際に帯電斑又は除電斑が生じ、均一な帯電、除電、又はクリーニングが困難となったりする。なお、CV値を上記の範囲とするためには、例えば、芯部の形状と鞘部の形状とを互いに同一かつ同心としたり、鞘部の厚みをより均一としたりする手法を採用する。
本発明の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸に関し、30分間で沸水処理した後の収縮率が5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましい。沸水収縮率が5%を超えると、導電性芯鞘複合繊維を得た後の工程(例えば、染色工程など)において熱処理を施すと繊維が変形し易くなるため、芯部に含有されるカーボンブラックの分散状態が変化する。その結果、熱処理の前後における第二の電気抵抗値が大きく変化してしまうため、安定した電気抵抗値が得られなくなる。
沸水収縮率を制御するためには、例えば、延伸時の熱処理温度を適宜に調整すればよい。
ここでいう沸水収縮率とは、JISL−1013−7.15B法に従って、沸水で処理し風乾燥後の糸長(L′)と処理前の糸長(L)を測定し、下記式(2)により算出した数値である。
沸水収縮率(%)=〔(L−L′)/L〕×100 …(2)
本発明の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸の繊度は、例えば、100dtex以上400dtex以下である。また、20フィラメント以上60フィラメント以下で撚り合わせた構造を有していてもよい。導電性複合繊維の単糸繊度は、本発明の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸の用途などに応じて適宜に調整することができ、例えば、2.0dtex以上20.0dtex以下である。単糸繊度がより細く、詳しくは2.0dtex以上5.0dtex以下、好ましくは2.0dtex以上2.5dtex以下であると、導電性複合繊維の表面積が大きくなり、除電ブラシ又はクリーニングブラシに用いられた場合の粉塵除去性能が大きく向上する。
本発明の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸の製造方法の一例について説明する。
まず、以下のようにして、導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸に含まれる導電性芯鞘複合繊維の芯部を形成する。芯部を形成するには、樹脂(ポリエステル樹脂、又はポリアミド樹脂)とカーボンブラックとを混練する。混練方法としては、ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂のペレット(樹脂ペレット)にカーボンブラックを混合し、両者を溶融混練する方法;樹脂ペレットと高濃度のカーボンブラックを含有するマスターペレットとを予め作成しておき、両者を混合し溶融混練する方法;溶融させた樹脂中にカーボンブラックを添加し、混練する方法などが挙げられる。中でも、カーボンブラックをポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂により均一に分散させるためには、樹脂ペレットにカーボンブラックを混合し、溶融混練する方法が好ましい。そして、得られた混練物をチップ化し、導電性チップを得る。
別途、ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂を溶融してチップ化し、非導電性チップを得る。
次いで、導電性チップと非導電性チップとを押出機に供給して溶融する。その後、複数の紡糸孔を有する複合溶融紡糸装置を用い、適宜の紡糸条件を選択して溶融紡糸を行う。溶融紡糸して得られた糸条を、下記の一工程法又は二工程法に付して導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸を得る。一工程法は、糸条を空気流により冷却し、表面に油剤を付与した後、一旦捲き取ることなく連続して延伸を行って捲き取る方法である。二工程法は、紡糸後、延伸することなく一旦捲き取り、その未延伸糸を延伸工程に導いて延伸を行う方法である。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例にて得られたマルチフィラメント糸に関する測定方法、又は評価方法は以下の通りである。
1.第一の電気抵抗値、及び第二の電気抵抗値
得られた導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸から、芯鞘複合繊維の長手方向の100m毎に長さ10cmの試験片を20個採取した。各々の試験片の両端に50Vの電圧をかけて、温度20℃、かつ相対湿度20%RHの環境下、抵抗値測定機(東亜電波工業株式会社製の「SM−10E」)を使用して電気抵抗値を測定した。そして、20個の試験片の測定結果の平均値を算出し電気抵抗値とした。なお、第一の電気抵抗値を測定するには、繊維の長手方向の表面のみに電圧を印可した。また、第二の電気抵抗値を測定する際には、繊維の長手方向の断面に導電性ペースト(フクダ電子株式会社製、商品名「ケラチンクリーム」、型式「OJE−01D」)を塗布し、断面のみに電圧を印可する。
2.CV値
得られた導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸から、芯鞘複合繊維の長手方向に100m毎に長さ10cmの試験片を100個採取した。上記1.の第一の電気抵抗値と同様の操作で第一の電気抵抗値を測定した。そして、不偏分散を以下の手法により求めた。詳しくは、100個の試験片の第一の電気抵抗値と、全ての試験片の電気抵抗値の平均の差を、それぞれ求めた。これらの差を自乗して得られた値の総和を(試験片の数−1)で除して、得られた値を不偏分散とした。そして、下記式(1)に従ってCV値を算出した。
繊維表面の電気抵抗値のCV値(%)=(V/X)×100 (1)
V:第一の電気抵抗値の不偏分散の平方根
X:第一の電気抵抗値
3.鞘部の厚み
得られた導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸から、5本の芯鞘複合繊維を採取し、電子顕微鏡(キーエンス社製のマイクロスコープ(VHX−600))にて断面を撮影し(倍率:1000倍)、それぞれの鞘部の厚みを求めた。これらの平均値を鞘部の厚みとした。
4.沸水収縮率
得られた導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸から、JISL−1013−7.15B法に従って、30分間沸水で処理し風乾燥後の糸長(L′)と処理前の糸長(L)を測定し、下記式により算出した。
沸水収縮率(%)=〔(L−L′)/L〕×100
5.沸水処理後の電気抵抗値(第一の電気抵抗値、第二の電気抵抗値)
得られた導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸に対し、上記4.(沸水収縮率)の測定と同様の手法により沸水処理を施した。次いで、上記1.(第一の電気抵抗値、及び第二の電気抵抗値)と同様の手法により電気抵抗値を測定し、沸水処理後の電気抵抗値とした。
6.操業性
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸を製造するに際し、24時間連続して紡糸を行った。紡糸時の切糸回数に基づき、以下の基準で評価した。
○:紡糸時に切糸が発生しなかった。
×:紡糸時に切糸が発生した。
<実施例1>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−1)の製造
相対粘度が1.95であるナイロン6チップを準備した。ナイロン6チップの相対粘度は96質量%の硫酸を溶媒として、濃度1g/dl、温度25℃で測定した。このナイロン6チップに対し、濃度が25質量%となるようにカーボンブラック(平均粒子径:25nm、DBP吸収量:130cm/100g)を添加した。これらを溶融し、次いでチップ化し、導電性チップを製造した。非導電性チップとして、相対粘度が2.50であるナイロン6チップを準備した。導電性チップと非導電性チップとを、質量比70/30にて、それぞれ、255℃に設定された押出機に供給した。詳しくは、導電性チップが芯部を形成する原料となり、非導電チップが鞘部を形成する原料となる様に溶融紡糸装置に供給した。次いで、以下の操作で溶融紡糸を行った。紡糸口金として、24個の紡糸孔(孔径:0.4mmφ)が穿設されている口金を使用した。紡出した糸条を空気流により冷却し、オイリング装置(油剤供給装置)を通過させて油剤を付与した。油剤の付着量は糸状の質量に対して0.2質量%であった。続いて、この糸状を、紡糸速度を800m/分に調整したローラで引き取り、捲取機にて巻き取って、429dtex/24fの未延伸糸を得た。そして、この未延伸糸を130℃の熱ローラを介して2.6倍に延伸し、さらに、190℃のヒートプレートで熱処理を行って巻き取った。その結果、165dtex/24f(単糸繊度:6.9dtex)の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸を得た。
<実施例2>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−2)の製造
相対粘度が1.35であるポリエチレンテレフタレート(PET)チップを準備した。PETチップの相対粘度は、フェノールと四塩化エタンとの等質量混合液を溶媒とし、温度20℃で測定した。このPETチップに対し、カーボンブラック(平均粒子径:25nm、DBP吸収量:130cm/100g)を濃度が25質量%となるように添加した。これらを溶融し、次いでチップ化し、導電性チップを製造した。非導電性チップとして、相対粘度が1.38であるポリエステルチップを準備した。導電性チップと非導電性チップとを、質量比70/30にて、それぞれ、295℃に設定された押出機に供給した。詳しくは、導電性チップが芯部を形成する原料となり、非導電チップが鞘部を形成する原料となる様に溶融紡糸装置に供給した。次いで、以下の操作で溶融紡糸を行った。紡糸口金として、24個の紡糸孔(孔径:0.4mmφ)が穿設されている口金を使用した。紡出した糸条を空気流により冷却し、オイリング装置(油剤供給装置)を通過させて、油剤を付与した。油剤の付着量は糸状の質量に対して0.2質量%であった。続いて、この糸条を、紡糸速度を800m/分に調節したローラで引き取り、捲取機にて巻き取って、363dtex/24fの未延伸糸を得た。そして、この未延伸糸を130℃の熱ローラを介して2.2倍に延伸し、さらに、190℃のヒートプレートで熱処理を行って巻き取った。その結果、165dtex/24f(単糸繊度:6.9dtex)の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸を得た。
<実施例3〜4、比較例1〜2>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−3)〜(A−4)、及び(B−1)〜(B−2)の製造
表1に示すようにカーボンブラックの含有量を変更し、マルチフィラメント糸(A−1)の製造と同様の手法により製造した。なお、マルチフィラメント糸(B−2)の製造に際しては、切糸が発生したためマルチフィラメント糸を得ることができなかった。
<実施例5〜8、比較例3〜4>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−5)〜(A−8)、及び(B−3)〜(B−4)の製造
表1に示すように鞘部の厚みを変更した以外は、(A−1)の製造と同様の手法により製造した。
<実施例9>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−9)の製造
表1に示すようにカーボンブラックの含有量を変更し、(A−2)の製造と同様の手法により製造した。
<実施例10〜11>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−10)〜(A−11)の製造
表1に示すように鞘部の厚みを変更した以外は、(A−2)の製造と同様の手法により製造した。
<比較例5>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(B−5)の製造
紡糸口金の種類を変更することにより、芯部の断面形状と鞘部の断面形状とを図2で示される形状(芯部が三角断面、鞘部が丸断面)とし、鞘部の厚みを変更した以外は、(A−1)の製造と同様の手法により製造した。
<実施例12>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−12)の製造
紡糸口金の種類を変更し、芯部の断面形状と鞘部の断面形状とを図2で示される形状とした以外は、(A−1)の製造と同様の手法により製造した。
<実施例13>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−13)
延伸時の熱処理温度を190℃から160℃に変更することにより、沸水収縮率を8.3%にした以外は、(A−1)の製造と同様の手法により製造した。
<実施例14>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−14)
表1に示したように使用するカーボンブラックのDBP吸収量を変更した以外は、(A−1)の製造と同様の手法により製造した。
<実施例15>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−15)
表1に示したように使用するカーボンブラックの平均粒子径を変更した以外は、(A−1)の製造と同様の手法により製造した。
<実施例16>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−16)
表1に示したように使用するカーボンブラックの平均粒子径とDBP吸収量を変更した以外は、(A−1)の製造と同様の手法により製造した。
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−1)〜(A−16)、及び(B−1)〜(B−5)の特性値及び評価結果を表1に示す。
なお、導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−12)及び(B−5)では、鞘部の厚みとして、三角形状の頂点と繊維表面との距離を表1に記載した。
表1から理解されるように、導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−1)〜(A−13)は、第二の電気抵抗値が1×10Ω/cm以上1×1010Ω/cm以下の範囲の電気抵抗値を有し、かつ第一の電気抵抗値が9×10Ω/cm以上1×1013Ω/cm以下の範囲の電気抵抗値を有していた。こうした導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸は、電気抵抗値のバラツキが小さく安定した電気抵抗値を有し、操業性においても優れていた。特に、芯部及び鞘部の断面形状が円形状である(A−1)〜(A−11)、さらには第二の電気抵抗値が5×10Ω/cm以上5×10Ω/cm以下の範囲である(A−1)、(A−5)〜(A−8)においては電気抵抗値のバラツキがいっそう小さいものであった。
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(B−1)においては、芯部に含有されるカーボンブラックの含有量が過少であった。そのため、第二の電気抵抗値が過度に高くなり、第一の電気抵抗値が発現しなかった。
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(B−2)においては、芯部中のカーボンブラックの含有量が過多であった。そのため、操業性が悪くフィラメント糸を得ることが出来なかった。
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(B−3)においては、鞘部の厚みが薄過ぎた。そのため、電圧を印可した際に鞘部の非導電成分が絶縁破壊を起こし、第一の電気抵抗値を所望の値とすることが出来なかった。
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(B−4)においては、鞘部の厚みが厚過ぎた。そのため、第一の電気抵抗値を所望の値とすることが出来なかった。
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(B−5)においては、鞘部の断面形状が丸断面形状であり芯部の断面形状が三角断面形状であったため、鞘部と芯部の形状が異なり、また、鞘部における最も薄い部分が薄過ぎた。そのため、鞘部が絶縁破壊を起こして、第一の電気抵抗値を所望の値とすることが出来なかった。
<実施例17>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−17)の製造
相対粘度が1.95であるナイロン6チップを準備した。ナイロン6チップの相対粘度は96質量%の硫酸を溶媒として、濃度1g/dl、温度25℃で測定した。このナイロン6チップに対し、濃度が25質量%となるようにカーボンブラック(平均粒子径:50nm、DBP吸収量:130cm/100g)を添加した。これらを溶融し、次いでチップ化し、導電性チップを製造した。非導電性チップとして、相対粘度が2.50であるナイロン6チップを準備した。導電性チップと非導電性チップとを、質量比70/30にて、それぞれ、255℃に設定された押出機に供給した。詳しくは、導電性チップが芯部を形成する原料となり、非導電チップが鞘部を形成する原料となる様に溶融紡糸装置に供給した。次いで、以下の操作で溶融紡糸を行った。紡糸口金として、24個の紡糸孔(孔径:0.4mmφ)が穿設されている口金を使用した。紡出した糸条を空気流により冷却し、オイリング装置(油剤供給装置)を通過させて油剤を付与した。油剤の付着量は糸状の質量に対して0.2質量%であった。続いて、この糸状を、紡糸速度を800m/分に調整したローラで引き取り、捲取機にて巻き取って、256dtex/24fの未延伸糸を得た。そして、この未延伸糸を130℃の熱ローラを介して2.6倍に延伸し、さらに、190℃のヒートプレートで熱処理を行って巻き取った。その結果、99dtex/24f(単糸繊度4.1dtex)の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸を得た。
<実施例18>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−18)の製造
相対粘度が1.35であるポリエチレンテレフタレート(PET)チップを準備した。PETチップの相対粘度は、フェノールと四塩化エタンとの等質量混合液を溶媒とし、温度20℃で測定した。このPETチップに対し、カーボンブラック(平均粒子径:50nm、DBP吸収量:130cm/100g)を濃度が25質量%となるように添加した。これらを溶融し、次いでチップ化し、導電性チップを製造した。非導電性チップとして、相対粘度が1.38であるポリエステルチップを準備した。導電性チップと非導電性チップとを、質量比70/30にて、それぞれ、295℃に設定された押出機に供給した。詳しくは、導電性チップが芯部を形成する原料となり、非導電チップが鞘部を形成する原料となる様に溶融紡糸装置に供給した。次いで、以下の操作で溶融紡糸を行った。紡糸口金として、24個の紡糸孔(孔径:0.4mmφ)が穿設されている口金を使用した。紡出した糸条を空気流により冷却し、オイリング装置(油剤供給装置)を通過させて、油剤を付与した。油剤の付着量は糸状の質量に対して0.2質量%であった。続いて、この糸条を、紡糸速度を800m/分に調節したローラで引き取り、捲取機にて巻き取って、233dtex/24fの未延伸糸を得た。そして、この未延伸糸を130℃の熱ローラを介して2.2倍に延伸し、さらに、190℃のヒートプレートで熱処理を行って巻き取った。その結果、106dtex/24f(単糸繊度4.4dtex)の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸を得た。
<実施例19〜20、比較例6〜7>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−19)〜(A−20)、及び(B−6)〜(B−7)の製造
表2に示すようにカーボンブラックの含有量を変更し、マルチフィラメント糸(A−17)の製造と同様の手法により製造した。なお、マルチフィラメント糸(B−7)の製造に際しては、切糸が発生したためマルチフィラメント糸を得ることができなかった。
<実施例21〜24、比較例8〜9>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−21)〜(A−24)、及び(B−8)〜(B−9)
表2に示すように鞘部の厚みを変更した以外は、(A−17)の製造と同様の手法により製造した。
<実施例25>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−25)の製造
表2に示すようにカーボンブラックの含有量を変更し、(A−18)の製造と同様の手法により製造した。
<実施例26〜27>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−26)〜(A−27)の製造
表2に示すように鞘部の厚みを変更した以外は、(A−18)の製造と同様の手法により製造した。
<実施例28>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−28)
延伸時の熱処理温度を190℃から160℃に変更することにより、沸水収縮率を8.3%にした以外は、(A−17)の製造と同様の手法により製造した。
<実施例29>
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−29)
導電性チップと非導電性チップとを、質量比30/70にて、それぞれ、295℃に設定された押出機に供給した。詳しくは、導電性チップが芯部を形成する原料となり、非導電チップが鞘部を形成する原料となる様に溶融紡糸装置に供給した。次いで、以下の操作で溶融紡糸を行った。紡糸口金として、48個の紡糸孔(孔径:0.4mmφ)が穿設されている口金を使用した。紡出した糸条を空気流により冷却し、オイリング装置(油剤供給装置)を通過させて、油剤を付与した。油剤の付着量は糸状の質量に対して0.2質量%であった。続いて、この糸条を、紡糸速度を3000m/分に調節したローラで引き取り、捲取機にて巻き取って、145dtex/48fの未延伸糸を得た。そして、この未延伸糸を130℃の熱ローラを介して1.4倍に延伸し、さらに、190℃のヒートプレートで熱処理を行って巻き取った。その結果、105dtex/48f(単糸繊度2.2dtex)の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸を得た。原料チップは(A−18)の製造と同様の手法により製造した。
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−17)〜(A−29)、及び(B−6)〜(B−9)の特性値及び評価結果を表2に示す。
表2から理解されるように、導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(A−17)〜(A−29)は、第二の電気抵抗値が1×10Ω/cm以上1×1010Ω/cm以下の範囲の電気抵抗値を有し、かつ第一の電気抵抗値が9×10Ω/cm以上1×1013Ω/cm以下の範囲の電気抵抗値を有していた。こうした導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸は、電気抵抗値のバラツキが小さく安定した電気抵抗値を有し、操業性においても優れていた。また、単糸繊度が小さく、電子写真記録方式の乾式複写機、ファクシミリ、又はプリンター等の帯電ブラシ又はクリーニングブラシとして用いられた場合に、微細な粉塵又は汚れの除去性に優れるものである。
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(B−6)においては、芯部に含有されるカーボンブラックの含有量が過少であった。そのため、第二の電気抵抗値が過度に高くなり、第一の電気抵抗値が発現しなかった。
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(B−7)においては、芯部中のカーボンブラックの含有量が過多であった。そのため、操業性が悪くマルチフィラメント糸を得ることが出来なかった。
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(B−8)においては、鞘部の厚みが薄過ぎた。そのため、電圧を印可した際に鞘部の非導電成分が絶縁破壊を起こし、第一の電気抵抗値を所望の値とすることが出来なかった。
導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸(B−9)においては、鞘部の厚みが厚過ぎた。そのため、第一の電気抵抗値を所望の値とすることが出来なかった。
本発明の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸は、衣料用途、資材用途のみならず、電子写真記録方式の乾式複写機、ファクシミリ、又はプリンターのような精密機器製品またはその製造工程で用いられる微細な粉塵や汚れを高効率に除去できる高性能な帯電ブラシ、クリーニングブラシにも好適に使用することができる。
1 導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸
2 鞘部
3 芯部
4 鞘部の厚み
5 鞘部
6 芯部
7 導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸

Claims (6)

  1. 鞘部と芯部とからなる芯鞘複合繊維を含む導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸であって、
    前記鞘部はポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂を含み、1.5μm以上7.0μm以下の厚みを有し、
    前記芯部はポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂とカーボンブラックとを含み、前記カーボンブラックの含有割合は芯部全量に対して15質量%以上35質量%以下であり、
    前記芯鞘複合繊維の長手方向の表面における電気抵抗値が9×10Ω/cm以上1×1013Ω/cm以下であり、
    前記芯鞘複合繊維の長手方向の断面における電気抵抗値が1×10Ω/cm以上1×1010Ω/cm以下である、
    導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸。
  2. 前記カーボンブラックの平均粒子径が15nm以上60nm以下である、請求項1に記載の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸。
  3. 前記カーボンブラックのDBP吸収量が40cm/100g以上180cm/100g以下である、請求項1又は2に記載の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸。
  4. 前記芯鞘複合繊維の長手方向の断面における、芯部の形状と鞘部の形状とが互いに同一であり、かつ同心である、請求項1〜3の何れか1項に記載の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸。
  5. 前記芯鞘複合繊維の長手方向の表面において、下記式(I)より算出されるCV値が50%以下である、請求項1〜4の何れか1項に記載の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸。
    CV値(%)=(V/X)×100 (I)
    上記式(I)中、Vは前記芯鞘複合繊維の長手方向の表面における電気抵抗値の不偏分散の平方根を示し、Xは前記芯鞘複合繊維の長手方向の表面における電気抵抗値を示す。
  6. 30分間の沸水処理を施した後の収縮率が5%以下である、請求項1〜5の何れか1項に記載の導電性芯鞘複合マルチフィラメント糸。
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