以下に、本発明に係る実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせることも可能である。
図1は、実施例1のガスタービンを表す模式図である。図2は、系統周波数の変化に応じて応答するガスタービンの挙動に関するグラフである。図3から図10は、運転制御パラメータ値の一例を示すグラフである。
実施例1のガスタービン1は、図1に示すように、圧縮機11と、燃焼器12と、タービン13とにより構成されている。圧縮機11、燃焼器12およびタービン13の中心部には、ロータ18が貫通して配置され、圧縮機11とタービン13とは、ロータ18により一体回転可能に連結されている。このガスタービン1は、制御装置(動力制御装置)14によって制御されている。また、ガスタービン1には、発電機15が連結されており、発電可能となっている。
圧縮機11は、空気取入口から取り込んだ空気Aを圧縮して圧縮空気A1とする。この圧縮機11には、空気取入口から取り込む空気Aの吸気量を調整する入口案内翼(IGV:Inlet Guide Vane)22が配設される。入口案内翼22は、その開度が調整されることで、空気Aの吸気量が調整される。具体的に、入口案内翼22は、複数の翼本体22aと、複数の翼本体22aの翼角度を変更するためのIGV作動部22bとを有し、IGV作動部22bにより翼本体22aの翼角度が調整されることで、入口案内翼22の開度が調整され、空気Aの吸気量を調整する。入口案内翼22は、その開度が大きくなると、空気Aの吸気量が多くなり、圧縮機11の圧力比が増加する。一方で、入口案内翼22は、その開度が小さくなることで、空気Aの吸気量が少なくなり、圧縮機11の圧力比が低下する。
燃焼器12は、圧縮機11で圧縮された圧縮空気A1に対して燃料Fを供給し、圧縮空気A1と燃料Fとを混合して燃焼することで、燃焼ガスを生成する。タービン13は、燃焼器12で生成された燃焼ガスによって回転する。
ロータ18は、軸方向の両端部が図示しない軸受部により回転自在に支持されており、軸心を中心として回転自在に設けられている。そして、ロータ18の圧縮機11側の端部には(特に位置配置は限定しない)、発電機15の駆動軸が連結されている。発電機15は、タービン13と同軸上に設けられ、タービン13が回転することで発電することができる。
従って、圧縮機11の空気取入口から取り込まれた空気Aは、入口案内翼22を経て圧縮機11の内部を通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気A1となる。この圧縮空気A1に対して燃焼器12から燃料Fが供給され、圧縮空気A1と燃料Fとが混合され燃焼することで、高温・高圧の燃焼ガスが生成される。そして、燃焼器12で生成された高温・高圧の燃焼ガスが、タービン13の内部を通過することにより、タービン13を作動(回転)させてロータ18を駆動回転し、このロータ18に連結された発電機15を駆動する。これにより、ロータ18に連結された発電機15は、回転駆動されることで発電を行う。一方、タービン13を駆動した燃焼ガスは、排気ガスとして大気に放出される。
このガスタービン1には、車室圧力計51、吸気状態検出器52、ブレードパス温度計53、及び排気ガス温度計54が設けられている。車室圧力計51は、圧縮機11から燃焼器12に向けて圧縮空気A1が流通するラインに設けられ、具体的に、燃焼器12の車室内部に設けられ、圧縮空気A1の圧力(車室圧力)を計測する。吸気状態検出器52は、圧縮機11に取り込まれる空気Aの吸気温度と吸気圧力とを検出する。ブレードパス温度計53は、タービン13から排出される排気ガスが流通するラインに設けられ、タービン13の排気ガスの流れ方向の下流側に設けられる最終段のブレードを通過した排気ガスの温度を計測する。排気ガス温度計54は、ブレードパス温度計53の下流側に設けられ、排気ガスの温度を計測する。さらに、図示は省略するが、ガスタービン1には、ガスタービン1の負荷を検出するための発電機出力計が設けられている。そして、車室圧力計51、吸気状態検出器52、ブレードパス温度計53、及び排気ガス温度計54により計測された信号が、制御装置14に入力される。
制御装置14は、車室圧力計51、吸気状態検出器52、ブレードパス温度計53、及び排気ガス温度計54等の計測結果に基づいて、入口案内翼22及び燃料調整弁35等を制御して、ガスタービン1の運転を制御する。
制御装置14は、ガスタービン1の負荷(発電機15の出力)に応じて、ガスタービン1の部分負荷運転と、全負荷運転とを行っている。全負荷運転は、ガスタービン出力が定格出力となる運転である。部分負荷運転は、ガスタービン出力が定格出力よりも小さい出力となる運転である。
また、制御装置14は、部分負荷運転時及び全負荷運転時において、圧縮機11に取り込む空気の吸気量、及び燃焼器12から供給する燃料の燃料供給量等を調整して所望する発電機出力を制御し、さらに燃焼ガスが流入するタービン13のタービン入口温度が予め設定された上限温度を超えないように、温調制御を実行している。
制御装置14は、圧縮機11に取り込む空気量(吸気量)を調整すべく、入口案内翼22を作動させるIGV作動部22bを制御するIGV制御を実行している。制御装置14は、IGV作動部22bを制御することで、入口案内翼22の開度(以下、IGV開度という)を変更し、圧縮機11に取り込む空気Aの吸気量を調整する。具体的に、制御装置14は、全負荷運転時において、IGV開度が定格開度となるように制御する。定格開度は、ガスタービン出力が定格出力となるときの開度である。
また、制御装置14は、燃料Fの供給量を調整すべく、燃焼器12へ向けて燃料Fを供給する燃料供給ライン34に設けられる燃料調整弁35を制御する燃料制御を実行している。制御装置14は、燃料調整弁35を制御することで、圧縮空気A1に対して供給(噴射)する燃料Fの供給量を調整する。
ここで、図2を参照して、全負荷運転時において負荷変動したときの制御装置14による周波数応答の一例について説明する。全負荷運転時において、図2(a)に示すような系統周波数の低下が発生すると、ガスタービン1は、高負荷領域ですでに入口案内翼22が定格開度領域に到達している場合には、図2(b)に示すようにIGV開度を変化させずに、燃料制御により燃料Fの供給量を増大させて、図2(c)に示すように軸出力を大きくする必要がある。なお、軸出力は、ガスタービン1が図示しない蒸気タービンと組み合わされたコンバインドサイクルである場合、ガスタービン出力(GT出力)と蒸気タービン出力(ST出力)とを合わせた出力である。
このとき、図2(c)の実線に示すGridの要求レスポンスを満足させる軸出力とする場合、図2(d)に示すように、蒸気タービンの出力(ST出力)の増加が遅れるため、図2(d)の実線に示すガスタービン出力とする必要がある。図2(d)の実線に示すガスタービン出力を得るためには、図2(e)に示すように、タービン入口温度が、上限温度(オーバーシュート制限値)を超えてしまう。なお、Gridの要求レスポンスとは、グリッドコード(Grid Code)で要求(規定)される軸出力の応答性である。このように、タービン入口温度のオーバーシュートを許容する場合、機器保護の制約を超える可能性がある。
一方で、図2(e)に示すように、タービン入口温度が、上限温度を超えないようにする場合(オーバーシュートを許容しない場合)、図2(d)の点線に示すガスタービン出力となってしまうことから、図2(c)の点線に示す軸出力のGridの要求レスポンスを満足させることができない可能性がある。
ここで、軸出力の応答性は、グリッドコードの要求レスポンスによって、一意に決められていることから、タービン入口温度のオーバーシュートを許容する場合には、温調制御を実行することは困難となる。
このため、実施例1の制御装置14では、ガスタービン1が温調制御されている場合、IGV開度が温調制御時における開度よりも大きくなるように、IGV開度を制御するIGV先行開制御を実行している。また、制御装置14は、IGV先行開制御において、ガスタービン1が全負荷運転時において温調制御される場合、IGV開度を定格開度よりも大きい超開状態となるように制御している。なお、IGV先行開制御については、他の実施例において具体的に説明するが、制御装置14は、IGV先行開制御を実行することで、圧縮機11に取り込む空気の吸気量を通常の運転状態より多く投入し、タービン入口温度を低下させる。この結果、ガスタービン1の排気ガス温度は、温調線の上限温度よりも低くなることから、ガスタービン出力が調整可能となる。
このように、実施例1の制御装置14は、ガスタービン出力の応答性を高めるべく、IGV先行開制御を実行可能となっているが、IGV先行開制御を実行すると、タービン入口温度が低下するため、ガスタービン1の運転効率が低下する。
従って、制御装置14は、ガスタービン1の性能を高めるために、温調制御を実行すると、ガスタービン1は、温調線に沿った運転となり、また、温調線によって運転が制限されることから、負荷変動(特に、負荷上げ時)に追従して、ガスタービン出力を即応させることは困難となる。一方で、制御装置14は、ガスタービン1の応答性を高めるために、温調線の上限温度よりも低い排気ガス温度で負荷制御を実行すると、ガスタービン1は、タービン入口温度を高くできないため、運転効率を高めることは困難となる。このように、ガスタービン1は、運転効率を高めると、応答性が低下する一方で、応答性を高めると、運転効率が低下するという、トレードオフの関係となっている。
このため、実施例1の制御装置14は、ガスタービン1の運転効率と応答性とを調整可能な構成となっている。具体的に、制御装置14は、制御部61と、記憶部62と、操作部63とを有している。
記憶部62は、ガスタービン1の運転効率及び応答性を設定するための運転設定データ71と、運転設定データ71に対応付けられる複数の運転制御パラメータ値72とを記憶する。
図3に示すように、ある任意のガスタービン出力状態での運転設定データ71は、ガスタービン1の性能と、IGV開度とを関連付けた関数となっている。つまり、図3は、その横軸が、IGV開度となっており、その縦軸が、ガスタービン1の性能となっている。図3に示すように、ガスタービン1の性能は、IGV開度が最も小さいときには、高い性能となっており、IGV開度が僅かに大きくなるときが、ガスタービン1の性能が最も高くなる。そして、ガスタービン1の性能が最も高いときから、IGV開度が大きくなるにつれて、ガスタービン1の性能が低下する。このとき、ガスタービン1の性能が最も高くなる付近のIGV開度をθ1とし、ガスタービン1の性能が低くなるIGV開度をθ2とする。そして、制御装置14は、IGV開度θ1のときのガスタービン1の性能を100%の性能として設定可能とする。一方で、制御装置14は、IGV開度θ2のときのガスタービン1の性能を0%の性能として設定可能とする。なお、設定する値としては、100%または0%等の設定に、特に限定されない。
ここで、上記したように、ガスタービン1の性能と運転効率とは、トレードオフの関係となる。このため、制御装置14は、ガスタービン1の性能が100%に設定されたとき、ガスタービン1の応答性を0%に設定する。一方で、制御装置14は、ガスタービン1の性能が0%に設定されたとき、ガスタービン1の応答性を100%に設定する。
図4から図10に示すように、複数の運転制御パラメータ値72は、ガスタービン1を運転するために設定される各種パラメータである。この運転制御パラメータ値72は、IGV開度や大気条件(気圧、温度、湿度)に応じて変化するパラメータとなっている。このため、運転制御パラメータ値72は、ガスタービン1の性能に応じてIGV開度が設定されると、設定されたIGV開度に応じた所定のパラメータ値となる。具体的に、運転制御パラメータ値としては、例えば、PL比(パイロット比)、燃料温度等がある。
ここで、複数の運転制御パラメータ値72は、ガスタービン1の燃料調整時に記憶したものである。このため、複数の運転制御パラメータ値72は、相関関係を有するものとなっている。そして、複数の運転制御パラメータ値72のうち、大気温度及び大気圧の運転制御パラメータ値を補正し、補正した大気温度及び大気圧を基準の運転制御パラメータ値として、他の運転制御パラメータ値72を補正する。これにより、複数の運転制御パラメータ値72は、同一の基準によって定量的に調整可能なパラメータとなる。
具体的に、複数の運転制御パラメータ値72のうち、図4に示すPL比の運転制御パラメータ値は、この図の場合、IGV開度が大きくなるにつれて、PL比が低くなっていく。図5に示す燃料流量の運転制御パラメータ値は、IGV開度が大きくなるにつれて、燃料流量が大きくなっていく。図6に示すスプレー量の運転制御パラメータ値は、IGV開度が最も小さいときには、少量のスプレー量となっており、IGV開度が僅かに大きくなるときが、最も少ないスプレー量となり、IGV開度が大きくなるにつれて、スプレー量が大きくなっていく。図7に示すカロリーの運転制御パラメータ値は、IGV開度が大きくなっても、一定のカロリーとなる。図8に示す燃料温度の運転制御パラメータ値は、IGV開度が大きくなっても、一定の燃料温度となる。図9に示す大気温度の運転制御パラメータ値は、IGV開度が最も小さいときには、低い大気温度となっており、IGV開度が僅かに大きくなるときが、最も高い大気温度となり、IGV開度が大きくなるにつれて、大気温度が低下していく。図10に示す大気圧の運転制御パラメータ値は、IGV開度が大きくなっても、一定の大気圧となる。このような上述の運転データに基づいて性能値を算出し、これを設定できる制御システムを構築する。
操作部63は、ガスタービン1の性能及び応答性を設定可能となっている。操作部63は、制御部61に接続され、設定されたガスタービン1の性能及び応答性に基づく操作信号を制御部61に出力する。例えば、図11(a)に示すように、操作部63は、ガスタービン1の性能と応答性との割合に基づく所定の運転モードに設定するための運転モード操作バー74aを有している。この運転モード操作バー74aは、ガスタービン1の性能と応答性とを連動して設定可能となっており、ガスタービン1の性能を100%から0%の間で設定し、ガスタービン1の応答性を0%から100%の間で設定する。また、例えば、図11(b)に示すように、操作部63は、ガスタービン1の性能と応答性との割合に基づく所定の運転モードに設定するための運転モード設定入力項目74bを有している。この運転モード設定入力項目74bは、ガスタービン1の性能の割合と、ガスタービン1の応答性の割合とをそれぞれ入力可能となっている。このように、運転モード操作バー74a及び運転モード設定入力項目74bは、ガスタービン1の性能の割合を設定する性能操作部として機能すると共に、ガスタービン1の応答性の割合を設定する応答性操作部として機能している。運転モードは、ガスタービン1の性能が100%側に近い方に設定されることで、性能重視の運転モードとなる。一方で、運転モードは、ガスタービン1の応答性が100%側に近い方に設定されることで、応答性重視の運転モードとなる。なお、操作部63は、図示しない表示部と一体となる、いわゆるタッチパネル式の操作表示部であってもよいし、表示部と別体となる独立したものであってもよく、特に限定されない。
制御部61は、操作部63で設定された運転モードに基づいて、ガスタービン1の性能及び応答性を設定する。具体的に、制御部61は、ガスタービン1の性能及び応答性に基づく設定を行う運転モード設定部(配分器)75を含んで構成されている。
図12に示すように、運転モード設定部75は、操作部63で設定された運転モードに関するガスタービン1の性能の割合が運転モード指標値として入力される。また、運転モード設定部75は、運転設定データ71におけるガスタービン1の性能が100%(ガスタービン1の応答性が0%)のときのIGV開度が、性能重視モード設定値(性能パラメータ値)として入力され、運転設定データ71におけるガスタービン1の応答性が100%(ガスタービン1の性能が0%)のときのIGV開度が、応答性重視モード設定値(応答性パラメータ値)として入力される。そして、運転モード設定部75は、入力された運転モード指標値、性能重視モード設定値及び応答性重視モード設定値に基づいて、設定されるIGV開度の設定値を出力する。
図13に示すように、運転モード設定部75は、第1乗算器81と、第2乗算器82と、第3乗算器83と、第4乗算器84と、減算器85と、加算器86と、を含む按分回路となっている。なお、按分できる要素(ロジック)であれば、特に本ロジックに限定されない。
第1乗算器81は、運用モード指標値と、百分率を戻すための数値である「0.01」の数値とが入力される。第1乗算器81は、運転モード指標値として入力されるガスタービンの性能の割合(0〜100%)に0.01を乗算し、乗算後の数値を、第2乗算器82へ向けて出力する。
第2乗算器82は、性能重視モード設定値と、第1乗算器81から出力された数値とが入力される。第2乗算器82は、性能重視モード設定値として入力されるIGV開度θ1に、ガスタービン1の性能の割合に関する数値を乗算し、乗算後の数値を、加算器86へ向けて出力する。
第3乗算器83は、第1乗算器81と同様に、運用モード指標値と、百分率を戻すための数値である「0.01」の数値とが入力される。第3乗算器83は、運転モード指標値として入力されるガスタービンの性能の割合(0〜100%)に0.01を乗算し、乗算後の数値を、減算器85へ向けて出力する。
減算器85は、ガスタービンの性能の割合からガスタービン1の応答性の割合に換算するための数値である「1.0」と、第3乗算器83から出力された数値とが入力される。減算器85は、「1.0」から、0.01を乗算したガスタービン1の性能の割合を減算し、減算後の数値を、第4乗算器84に向けて出力する。
第4乗算器84は、応答性重視モード設定値と、減算器85から出力された数値とが入力される。第4乗算器84は、応答性重視モード設定値として入力されるIGV開度θ2に、ガスタービン1の応答性の割合に関する数値を乗算し、乗算後の数値を、加算器86へ向けて出力する。
加算器86は、第2乗算器82から出力された数値と、第4乗算器84から出力された数値とが入力される。加算器86は、ガスタービン1の性能の割合に基づくIGV開度θ1と、ガスタービン1の応答性の割合に基づくIGV開度θ2とを加算したIGV開度を、操作部63において設定された所定の運転モードに対応するIGV開度の設定値として出力する。
そして、制御部61は、運転モード設定部75において設定値が設定されると、設定値に対応するIGV開度に基づいて、複数の運転制御パラメータ72を設定する。これにより、制御部61は、操作部63において設定されたガスタービン1の性能及び応答性に基づく、ガスタービン1の負荷制御及び温調制御を実行する。
以上のように、実施例1によれば、ガスタービン1の運転制御パラメータ値72を、所定の負荷におけるガスタービン1の運転効率(性能)及び応答性の変化に対応付けることができる。このため、ガスタービン1の使用環境に応じて、ガスタービン1の運転効率及び応答性を設定することで、設定された運転効率及び応答性に応じた運転制御パラメータ値72を設定することが可能となる。すなわち、ガスタービン1の運転を性能重視とする場合には、所定の負荷におけるガスタービン1の運転効率が高くなる運転制御パラメータ値72を設定することができる。これにより、例えば、部分負荷運転におけるガスタービン1の温調制御を実行することが可能となる。一方で、ガスタービン1の運転を応答性重視とする場合には、所定の負荷におけるガスタービン1の応答性が高くなる運転制御パラメータ値72を設定することができる。これにより、例えば、部分負荷運転におけるガスタービン1の温調制御近傍での運転を実行せずに、負荷制御を実行することが可能となる。
また、実施例1によれば、入口案内翼22の開度に基づいて、運転制御パラメータ値72を設定することができる。このため、運転モード設定部75は、IGV開度を設定することで、運転制御パラメータ値72を設定することが可能となる。
また、実施例1によれば、操作部63を操作することで、ガスタービン1の運転効率及び応答性を設定することができ、また、設定された運転効率及び応答性に応じた運転制御パラメータ値72を設定することができる。このため、運転制御パラメータ値72の設定を、操作部63を操作するだけで、簡単に、ガスタービン1の運転効率及び応答性に応じた設定とすることができるため、ユーザフレンドリーな構成とすることができる。
また、実施例1によれば、運転モード設定部75により、操作部63で設定された運転効率及び応答性の割合に基づいて、性能重視モード設定値と応答性重視モード設定値とを配分することができ、運転モードに応じた最適な運転制御パラメータ値72を設定することができる。
また、実施例1によれば、ガスタービン1の運転環境に応じて、ガスタービン1の運転効率及び応答性を設定することが可能となることから、汎用性の高いものとすることができる。
次に、図14から図18を参照して、実施例2に係る制御装置100について説明する。図14は、実施例2の制御装置の構成を示すブロック図である。図15は、実施例2のIGV制御フラグ生成部の構成図である。図16は、実施例2のIGV制御部の構成図である。図17は、実施例2のIGV制御部の各種関数器が持つ関数を説明する説明図である。図18は、入口案内翼を急峻に開いた場合における、圧縮機動力、タービン出力、GT出力の時間変化の例を示す図である。
なお、実施例2では、重複した記載を避けるべく、実施例1と異なる部分について説明し、実施例1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。実施例2の制御装置100は、入口案内翼22のIGV先行開制御を実行しており、実施例1の運転モード設定部75が組み込まれている。
図14に示すように、実施例2の制御装置100は、燃料調整弁35を制御する燃料制御を実行する燃料制御部112と、ブレードパス温度制御及び排ガス温度制御を行う温度制御部114と、入口案内翼22のIGV制御を実行するIGV制御部113と、IGV先行開フラグを生成するIGV制御フラグ生成部115とを備えている。
図15に示すように、IGV制御フラグ生成部115は、ガスタービン1の出力を増加させる場合に、IGV先行開フラグを有効としている。例えば、IGV制御フラグ生成部115は、系統周波数が所定閾値α以下となって周波数低信号が入力された場合、又は、ガスタービン1の出力増加を要求する出力増要求信号が入力された場合に、ORゲート123によりIGV先行開フラグを有効として生成する。なお、IGV制御フラグ生成部115は、ガスタービン出力制限(ガスタービン出力≧αMW以上)が入力された場合、又は、ガスタービン入口温度(ガスタービン入口温度(推定値含む)≧β℃以上)制限が入力された場合に、ORゲート123によりIGV先行開フラグを有効として生成してもよい。なお、系統周波数が所定閾値α以下の場合、系統周波数を上昇させるためにガスタービン1は出力増加を行うこととなる。
図16に示すように、IGV制御部113は、乗算器211、テーブル関数器(FX1)212、リミッタ213、補正関数器(FX2)214及び制限関数器(FX3)215を備えた構成である。IGV制御部113では、GT出力の値がフィルタ210を介して乗算器11に入力される。IGV制御部113は、発電機出力(GT出力)に応じて、図17(a)に示すような関数に従ってIGV開度を設定する。そして、補正関数器(FX2)214により図17(b)に示すような圧縮機入口温度に対応した関係に基づきGT出力補正係数K2を生成して、乗算器211でGT出力にこのGT出力補正係数K2を掛け合わせることで、テーブル関数を参照するGT出力値を補正している。また、制限関数器(FX3)215により図17(c)に示すような圧縮機入口温度に対応した関係に基づきIGV最大開度(定格開度)M1を生成して、リミッタ213により、テーブル関数器(FX1)212で生成されたIGV開度がIGV最大開度M1を超えないように制限している。
また、IGV制御部113は、リミッタ213から出力されるIGV開度指令に対して、IGV先行開フラグに基づく加算量を加える構成と、IGV開度の変化率を制限する構成と、運転モード設定部75とが付加されている。
加算量を加える構成では、信号発生器(SG1)217及び(SG2)218をIGV先行開フラグに応じて信号切換器219で切り換え、レートリミッタ220を介して、加算器216で通常運転時におけるIGV開度指令に加算している。
これにより、IGV先行開フラグが有効とされた場合に、入口案内翼22の開度がそれまでに比べて開くように設定される。例えば、信号発生器(SG1)217に「0」を、信号発生器(SG2)218に所定値を設定しておき、IGV先行開フラグが有効になったときには、通常運転時のIGV開度指令に信号発生器(SG2)218の所定値を加算して、入口案内翼22の開度が通常よりも開くようにしている。
ここで、レートリミッタ220と加算器216との間には、運転モード設定部75が設けられている。運転モード設定部75は、操作部63において設定されたガスタービン1の性能と応答性との割合に基づいて、レートリミッタ220から出力されるIGV開度を調整する。具体的に、運転モード設定部75には、レートリミッタ220から出力されるIGV開度が応答性重視モード設定値として入力される。また、運転モード設定部75には、IGV開度が「0」となる性能重視モード設定値が入力される。そして、運転モード設定部75には、操作部63において設定された運転モード指標値が入力される。
運転モード設定部75は、これらの入力に基づいて、加算器216へ出力するIGV開度を調整する。運転モード設定部75は、例えば、ガスタービン1の性能が100%である場合、レートリミッタ220から出力されるIGV開度の割合を0%として、性能重視モード設定値であるIGV開度「0」を、加算器216へ向けて出力する。一方で、運転モード設定部75は、例えば、ガスタービン1の応答性が100%である場合、レートリミッタ220から出力されるIGV開度の割合を100%として、レートリミッタ220から出力されるIGV開度を、加算器216へ向けてそのまま出力する。
また、IGV開度の変化率を制限する構成は、信号発生器(SG3)223及び(SG4)224を、負荷遮断フラグに応じて信号切換器225で切り換え、これを変化率制限器221に供給してIGV開度の変化率制限値を変える構成である。ここで、信号発生器(SG3)223には通常時の変化率制限値(例えば、400[%/分])が、また信号発生器(SG4)224には負荷遮断時の変化率制限値(例えば、3000[%/分])が、それぞれ設定されている。
次に、実施例2に係るガスタービン1の制御装置100による運転制御について説明する。部分負荷でガスタービン1が運転された状態で、系統周波数が所定閾値α以下となった場合、又は、部分負荷でガスタービン1が運転された状態で、ガスタービン1の出力増加が要求された場合には、IGV制御フラグ生成部115でIGV先行開フラグが有効とされる。なお、IGV制御フラグ生成部115は、ガスタービン出力制限(ガスタービン出力≧αMW以上)が入力された場合、又は、ガスタービン入口温度(ガスタービン入口温度(推定値含む)≧β℃以上)制限が入力された場合に、ORゲート123によりIGV先行開フラグを有効として生成してもよい。
これを受けてIGV制御部113では、操作部63で設定されるガスタービン1の性能及び応答性の割合に応じて、入口案内翼22の開度が調整される。例えば、ガスタービン1の応答性を重視する場合、IGV制御部113では、入口案内翼22の開度がそれまでに比べて開くように設定され、入口案内翼22の開度は通常に比べて開き気味となる。
一般に、タービン入口温度は燃空比(燃料量/燃焼空気量の比)に比例することから、入口案内翼22が開く方向にIGV開度を変化させれば、圧縮機11の吸気量は増加し、燃焼空気量が増加するので、燃空比、即ちタービン入口温度は低下する。すなわち、IGV先行開フラグが有効とされ、また、ガスタービン1の応答性が重視されると、入口案内翼22は、通常設定に比べて開き気味とされることで、圧縮機11の吸気量が通常の設定より増加する。これにより、ガスタービン1は、タービン入口温度を通常より下げ気味で運転ができるので、風量の増加によりタービン出力を増加できる。例えば、入口案内翼22の開度を10〜20%増加させ、風量を定格流量よりも5%〜10%増加させる。
具体的には、「タービン出力=タービン通過流量×タービン熱落差×効率」の関係があり、入口案内翼22が開く方向にIGV開度を変化させれば、圧縮機11の吸気量が増加してタービン通過流量も増加する。このため、タービン入口温度低下による熱落差以上にタービン通過流量の増大が寄与すれば、発電機15の出力は増加することになる。また、圧縮機11の吸気量が増加してタービン入口温度を低下するので、燃焼器12へより多くの燃料投入が可能となり、燃料投入によってもタービン出力を増加できる。
なお、入口案内翼22を開くと圧縮機11の吸気量が増加するため、圧縮機11の動力が増加する。このため、図18の例に示すように、入口案内翼22を急峻に開くと、圧縮機11の動力がタービン出力の増加よりも速く増加し、その結果GT出力(発電機出力)が一時的に減少する可能性がある。このため、レートリミッタ220では、圧縮機11の動力の増加よりも、タービン出力の増加の方が速くなるように、変化率が設定されている。これにより、入口案内翼22を開くことによる圧縮機11の動力の増加に伴うGT出力の一時的な減少を抑制できる。
以上のように、実施例2に係るガスタービン1の制御装置100は、系統周波数が所定閾値α以下又はガスタービン1の出力増加が要求された場合に、IGV先行開フラグを有効とし、IGV先行開フラグが有効で、且つ、ガスタービン1の応答性が重視される場合に、入口案内翼22の開度をそれまでに比べて開くように設定する。従って、ガスタービン1の応答性が重視される場合には、ガスタービン1の運転状態に係らず、タービン入口温度を上げることなく出力の上昇が可能とされる。なお、ガスタービン1の性能が重視される場合には、入口案内翼22の開度が開くように設定しない。
なお、実施例2では、信号発生器(SG2)218において所定値となるIGV開度を設定したが、所定値となるIGV開度として、負荷変化率に応じた入口案内翼22の開度としてもよい。この構成によれば、入口案内翼22の開度を、負荷に追従して開くように設定することができ、負荷の追従性を向上させることができる。
次に、図19及び図20を参照して、実施例3に係る制御装置について説明する。図19は、実施例3に係る温度制御部の温調設定を生成する部分の構成図である。図20は、実施例3に係る温調設定の切り替えを説明する説明図である。
なお、実施例3でも、重複した記載を避けるべく、実施例1及び2と異なる部分について説明し、実施例1及び2と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。実施例3の制御装置は、温調制御時における入口案内翼22のIGV先行開制御を実行しており、実施例1の運転モード設定部75が組み込まれている。
実施例3の制御装置は、燃料制御部112からの制御信号により燃料調整弁35の開度制御を行って、燃料制御を実行することにより負荷調整を行っている。この燃料制御部112では、ブレードパス温度制御におけるブレードパス温度設定値BPCSO、排ガス温度制御における排ガス温度設定値EXCSO、ガバナ制御におけるガバナ設定値GVCSO、又はロードリミット制御におけるロードリミット設定値LDCSOに基づき、これらの内の最も低い値のものを燃料調整弁35に対する最終的な制御信号として使用している。
温度制御部114によるブレードパス温度制御では、ブレードパス温度(タービン13最終段直後の排気ガス温度)を計測し、これと温調設定に基づく目標値とを比較し、比例積分(PI)制御によりブレードパス温度設定値BPCSOを生成する。また、排ガス温度制御では、排ガス温度(タービン13最終段よりも後流の排気ダクトでの排気ガス温度)を計測し、これと温調設定に基づく目標値とを比較し、比例積分(PI)制御により排ガス温度設定値EXCSOを生成する。
図19に示すように、温度制御部114の温調設定EXREFを生成する部分は、関数器(FX11)331、加算器310と、先行信号生成部300と、運転モード設定部75とを備える。
関数器(FX11)331は、通常運転時における車室圧力と温調設定との関係を示す関数が設定されている。つまり、入口案内翼22のIGV開度指令値が例えば0[度]以上の通常運転時には関数器(FX11)331に基づく温調設定EXREFが生成される。
また、先行信号生成部300は、1次遅れフィルタ302,303、減算器304、関数器(FX16)305、関数器(FX15)301、乗算器306及びレートリミッタ307を備えた構成である。1次遅れフィルタ302,303は、1個(例えば302のみ)でも3個でもかまわない。減算器304、1次遅れフィルタ302,303は、変化率を算出するものであり、変化率を検出する仕組みであれば、この構成に限定するものではない。
先行信号生成部300では、まず、減算器304によりIGV開度指令値と1次遅れフィルタ302,303で遅延した信号と遅延していない信号との偏差を求め、この偏差をIGV開度指令値の変化率(擬似微分値)として得る。そして、関数器(FX16)305において、このIGV開度指令値の変化率の大きさ(擬似微分値)に応じて温調設定EXREFへの補正量(先行信号)を設定する。
また、関数器(FX15)301は、先行信号生成部300の作動範囲を入口案内翼22の開度が所定範囲にある場合のみとするものであり、例えば、関数FX15として、IGV開度が部分負荷時の開度範囲を「1」とし、全開時を「0」とするような関数を使用し、これを乗算器306で掛け合わせることにより、ガスタービン1が部分負荷で運転している状態でのみ先行信号生成部300による補正(先行信号)を有効とすることができる。
また、レートリミッタ307は、得られる温調設定EXREFへの補正量、即ち先行信号の時間変化率を制限するもので、該レートリミッタ307を介した補正量が、運転モード設定部75を介して加算器310により加算され、温調設定EXREFとして生成される。
このときの温調設定EXREFの時間的推移は図20(a)のT1に示すようになるが、実際のブレードパス温度又は排ガス温度は、温度の計測遅れがあるので図20(a)のT0に示すようにゆっくりとした変化となる。そこで、実施例3では、図20(b)に示すような先行信号生成部300による補正量(先行信号)を加算することにより、温調設定EXREFの時間的推移を図20(a)のT2に示すようにし、実際のブレードパス温度又は排ガス温度の追従性をより速くなるようにしている。
ここで、レートリミッタ307と加算器310との間には、運転モード設定部75が設けられている。運転モード設定部75は、操作部63において設定されたガスタービン1の性能と応答性との割合に基づいて、レートリミッタ307から出力されるIGV開度を調整する。具体的に、運転モード設定部75には、レートリミッタ307から出力されるIGV開度が応答性重視モード設定値として入力される。また、運転モード設定部75には、IGV開度が「0」となる性能重視モード設定値が入力される。そして、運転モード設定部75には、操作部63において設定された運転モード指標値が入力される。
運転モード設定部75は、これらの入力に基づいて、加算器310へ出力するIGV開度を調整する。運転モード設定部75は、例えば、ガスタービン1の性能が100%である場合、レートリミッタ307から出力されるIGV開度の割合を0%として、性能重視モード設定値であるIGV開度「0」を、加算器310へ向けて出力する。一方で、運転モード設定部75は、例えば、ガスタービン1の応答性が100%である場合、レートリミッタ307から出力されるIGV開度の割合を100%として、レートリミッタ307から出力されるIGV開度を、加算器310へ向けてそのまま出力する。
このように、実施例3では、ガスタービン1の応答性が重視される場合、先行信号生成部300により、入口案内翼22の開度の変化率を算出して該変化率に応じた補正量を算出し、温調設定EXREFを補正するので、ブレードパス温度設定値や排ガス温度設定値の追従性を速めて、温度設定の逃がしを過渡的に速くでき、系統周波数の変動に対する負荷即応性を向上させることができる。なお、ガスタービン1の性能が重視される場合には、先行信号生成部300による入口案内翼22の開度を補正しない。
次に、図21を参照して、実施例4に係る制御装置について説明する。図21は、実施例4に係る温度制御部におけるブレードパス温度制御部の構成図である。なお、実施例4でも、重複した記載を避けるべく、実施例1から3と異なる部分について説明し、実施例1から3と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。実施例4の制御装置には、実施例1の運転モード設定部75が組み込まれている。なお、温調設定EXREFを生成する部分については、実施例3に係る構成を使用するものとして省略する。また、実施例4に係るガスタービン1及びIGV制御部113の構成は、実施例2と同様であるため、各構成要素の説明を省略する。
実施例4の制御装置は、温度制御部114が図示しないブレードパス温度制御部を備え、ブレードパス温度制御部は、信号発生器(SG15)401,(SG16)403,(SG17)408,(SG18)409,(SG19)411及び(SG20)412、信号切換器410及び413、加算器402、減算器405及び406、低値選択器404、並びにPI制御器407を備えた構成である。また、ブレードパス温度制御部は、第1運転モード設定部75aと、第2運転モード設定部75bとを備えた構成である。
加算器402で温調設定EXREFに所定値SG15を加算した値と、所定値SG16との間でより低値となる値を低値選択器404により選択してこれを目標値BPREFとし、該目標値BPREFとブレードパス温度計53からのブレードパス温度計測値BPTとの偏差を減算器405により求め、該偏差に基づく比例積分制御をPI制御器407により行ってブレードパス温度設定値BPCSOを生成する。
PI制御器407における上限値は、減算器405による偏差と待機値RCSOとの偏差としている。また、実施例4に係るブレードパス温度制御部は、IGV先行開フラグが有効であり、且つ、ガスタービン1の応答性が重視される場合に、PI制御器407における運転制御パラメータ72を予め設定された値に設定する点に特徴があるが、ここでは、比例ゲイン及び時定数をIGV先行開フラグに応じて切替設定している。
すなわち、比例ゲインは、信号発生器(SG17)408及び(SG18)409をIGV先行開フラグに応じて信号切換器410で切り換えて生成する。ここで、信号発生器(SG17)408には通常時の比例ゲインが設定され、信号発生器(SG18)409にはIGV先行開時の比例ゲインが設定されている。
ここで、信号切換器410とPI制御器407との間には、第1運転モード設定部75aが設けられている。第1運転モード設定部75aは、操作部63において設定されたガスタービン1の性能と応答性との割合に基づいて、信号切換器410から出力される運転制御パラメータの一つである比例ゲインを調整する。具体的に、第1運転モード設定部75aには、信号切換器410から出力される比例ゲインが応答性重視モード設定値として入力される。また、第1運転モード設定部75aには、比例ゲインが「0」となる性能重視モード設定値が入力される。そして、第1運転モード設定部75aには、操作部63において設定された運転モード指標値が入力される。
第1運転モード設定部75aは、これらの入力に基づいて、PI制御器407へ出力する比例ゲインを調整する。第1運転モード設定部75aは、例えば、ガスタービン1の性能が100%である場合、信号切換器410から出力される比例ゲインの割合を0%として、性能重視モード設定値である比例ゲイン「0」を、PI制御器407へ向けて出力する。一方で、第1運転モード設定部75aは、例えば、ガスタービン1の応答性が100%である場合、信号切換器410から出力される比例ゲインの割合を100%として、信号切換器410から出力される比例ゲインを、PI制御器407へ向けてそのまま出力する。
また、時定数は、信号発生器(SG19)411及び(SG20)412をIGV先行開フラグに応じて信号切換器413で切り換えて生成する。ここで、信号発生器(SG19)411には通常時の時定数が設定され、また信号発生器(SG20)412にはIGV先行開時の時定数が設定されている。
ここで、信号切換器413とPI制御器407との間には、第2運転モード設定部75bが設けられている。第2運転モード設定部75bは、操作部63において設定されたガスタービン1の性能と応答性との割合に基づいて、信号切換器413から出力される運転制御パラメータの一つである時定数を調整する。具体的に、第2運転モード設定部75bには、信号切換器413から出力される時定数が応答性重視モード設定値として入力される。また、第2運転モード設定部75bには、時定数が「0」となる性能重視モード設定値が入力される。そして、第2運転モード設定部75bには、操作部63において設定された運転モード指標値が入力される。
第2運転モード設定部75bは、これらの入力に基づいて、PI制御器407へ出力する時定数を調整する。第2運転モード設定部75bは、例えば、ガスタービン1の性能が100%である場合、信号切換器413から出力される時定数の割合を0%として、性能重視モード設定値である時定数「0」を、PI制御器407へ向けて出力する。一方で、第2運転モード設定部75bは、例えば、ガスタービン1の応答性が100%である場合、信号切換器413から出力される時定数の割合を100%として、信号切換器413から出力される時定数を、PI制御器407へ向けてそのまま出力する。
なお、安定性の観点からは比例ゲイン及び時定数をより小さい値とすることが良いが、系統周波数が所定閾値α以下又はガスタービン1の出力増加が要求され、且つ、ガスタービン1の応答性を重視する場合は、緊急性があり追従性を優先することとして、比例ゲイン及び時定数を通常時よりも大きい値とするのが望ましい。
このように、実施例4に係る温度制御部114におけるブレードパス温度制御部(排ガス制御部も同様)では、温調設定EXREFに基づく目標値BPREFと計測したブレードパス温度計測値BPTとの偏差に基づきPI制御器407による比例積分制御を行ってタービン13のブレードパス温度設定値BPCSOを生成するが、IGV先行開フラグが有効で、且つ、ガスタービン1の応答性を重視する場合に、PI制御器407における運転制御パラメータ(比例ゲイン及び時定数)72を予め設定された値に設定するので、ブレードパス温度設定値BPCSOの動きを先行して速めることができ、系統周波数の変動や負荷増加時に対する負荷即応性を向上させることができる。
次に、図22を参照して、実施例5に係る制御装置について説明する。図22は、実施例5に係る温度制御部におけるブレードパス温度制御部の構成図である。なお、実施例5でも、重複した記載を避けるべく、実施例1から4と異なる部分について説明し、実施例1から4と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。実施例5の制御装置には、実施例1の運転モード設定部75が組み込まれている。なお、温調設定EXREFを生成する部分については、実施例3に係る構成を使用するものとして省略する。また、実施例5に係るガスタービン1及びIGV制御部113の構成は、実施例2と同様であるため、各構成要素の説明を省略する。
図22に示すように、実施例5に係る温度制御部114が図示しないブレードパス温度制御部を備え、ブレードパス温度制御部は、信号発生器(SG15)401及び(SG16)403と、加算器402及び510と、減算器405及び406と、低値選択器404と、PI制御器407と、先行信号生成部500と、運転モード設定部75とを備えた構成である。
加算器402で温調設定EXREFに所定値SG15を加算した値と、所定値SG16との間でより低値となる値を低値選択器404により選択してこれを目標値BPREFとし、該目標値BPREFとブレードパス温度計53からのブレードパス温度計測値BPTとの偏差を減算器405により求め、該偏差に基づく比例積分制御をPI制御器407により行ってブレードパス温度設定値BPCSOを生成する。なお、PI制御器407における上限値は、減算器405による偏差と待機値RCSOとの偏差としている。
実施例5の温度制御部114におけるブレードパス温度制御部は、入口案内翼22の開度の変化率を算出して該変化率に応じた補正量を算出し、温調設定EXREFに基づき生成したブレードパス温度設定値BPCSOを補正する先行信号生成部500を付加した点に特徴がある。
先行信号生成部500は、1次遅れフィルタ502,503、減算器504、関数器(FX18)505、関数器(FX17)501、乗算器506及びレートリミッタ507を備えた構成である。1次遅れフィルタは、1個でも3個でも良い。減算器504、1次遅れフィルタ502,503は、変化率を算出するものであり、変化率を検出する仕組みであれば、この構成に限定するものではない。
先行信号生成部500では、まず、減算器504によりIGV開度指令値を1次遅れフィルタ502,503で遅延した信号と遅延していない信号との偏差を求め、この偏差をIGV開度指令値の変化率(擬似微分値)として得る。そして、関数器(FX18)505において、このIGV開度指令値の変化率の大きさ(擬似微分値)に応じてブレードパス温度設定値BPCSOへの補正量(先行信号)を設定する。
また、関数器(FX17)501は、先行信号生成部500の作動範囲を入口案内翼22の開度が所定範囲にある場合のみとするものであり、例えば、関数FX17として、IGV開度が部分負荷時の開度範囲を「1」とし、全開時を「0」とするような関数を使用し、これを乗算器506で掛け合わせることにより、ガスタービン1が部分負荷で運転している状態でのみ先行信号生成部500による補正(先行信号)を有効とすることができる。
また、レートリミッタ507は、ブレードパス温度設定値BPCSOへの補正量、即ち先行信号の時間変化率を制限するもので、該レートリミッタ507を介した補正量が加算器510により加算され、ブレードパス温度設定値BPCSOとして生成される。
ここで、レートリミッタ507と加算器510との間には、運転モード設定部75が設けられている。運転モード設定部75は、操作部63において設定されたガスタービン1の性能と応答性との割合に基づいて、レートリミッタ507から出力されるブレードパス温度設定値BPCSOへの補正量を調整する。具体的に、運転モード設定部75には、レートリミッタ507から出力される補正量が応答性重視モード設定値として入力される。また、運転モード設定部75には、補正量が「0」となる性能重視モード設定値が入力される。そして、運転モード設定部75には、操作部63において設定された運転モード指標値が入力される。
運転モード設定部75は、これらの入力に基づいて、加算器510へ出力する補正量を調整する。運転モード設定部75は、例えば、ガスタービン1の性能が100%である場合、レートリミッタ507から出力される補正量の割合を0%として、性能重視モード設定値である補正量「0」を、加算器510へ向けて出力する。一方で、運転モード設定部75は、例えば、ガスタービン1の応答性が100%である場合、レートリミッタ507から出力される補正量の割合を100%として、レートリミッタ507から出力される補正量を、加算器510へ向けてそのまま出力する。
このように、実施例5では、ガスタービン1の応答性を重視する場合、先行信号生成部500により、入口案内翼22の開度の変化率を算出して該変化率に応じた補正量を算出し、ブレードパス温度設定値BPCSOに直接補正量(先行信号)を加算して補正するので、ブレードパス温度設定値BPCSOの動きを直接的に先行させ、より追従性を速めて、温度設定の逃がしを過渡的に速くでき、系統周波数の変動や負荷増加時に対する負荷即応性を向上させることができる。なお、ガスタービン1の性能を重視する場合には、先行信号生成部500によるブレードパス温度設定値BPCSOの補正を実行しない。
次に、図23を参照して、実施例6に係る制御装置について説明する。図23は、実施例6に係るIGV制御フラグ生成部の構成図である。なお、実施例6でも、重複した記載を避けるべく、実施例1から5と異なる部分について説明し、実施例1から5と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。なお、ガスタービン1の制御装置の全体構成は上述した実施例2と同様であり、各構成要素の説明を省略する。
図23に示すように、実施例6に係るIGV制御フラグ生成部115は、実施例2と同様に、系統周波数が所定閾値α以下又はガスタービン1の出力増加が要求された場合に、IGV先行開フラグを有効とするが、ORゲート123の出力にオフディレイ125が付加された構成となっている。
このオフディレイ125により、IGV先行開フラグが有効から無効に切り替わるとき、一定の遅延を持たせてIGV先行開フラグを無効とすることができる。なお、オフディレイ125による遅延時間は、例えばボイラ時定数程度であり、例えば5分から10分である。
ここで、系統周波数が変動していない場合であっても、負荷上昇時には蒸気タービンの出力(ST出力)の遅れと、発電機15出力の温調運転による上限とから、GTCC(ガスタービンコンバインドサイクル)では負荷上昇時に高負荷において負荷即応性(追従性)が悪い状況となっていた。このため、入口案内翼22をIGV先行開フラグで一定量開動作させる事で負荷追従性を高めたが、条件(所望負荷到達)が成立すれば即座に閉動作され、入口案内翼22の開閉動作が頻繁に発生することで、性能及び部品寿命の観点から頻繁に発生することを防止する必要がある。
そこで、実施例6では、IGV制御フラグ生成部115にオフディレイ125を付加することによって、負荷上昇中に周波数定信号又は出力増要求信号がオフとなった後でも一定期間、IGV先行開フラグが有効に保持される。これにより、性能及び部品寿命の観点から、入口案内翼22の開閉動作が頻繁に発生することを防止することができる。
次に、図24を参照して、実施例7に係る制御装置について説明する。図24は、実施例7に係る燃料制御部の構成図である。なお、実施例7でも、重複した記載を避けるべく、実施例1から6と異なる部分について説明し、実施例1から6と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。なお、ガスタービン1の制御装置の全体構成は上述した実施例2から6と同様であり、各構成要素の説明を省略する。
図24に示すように、実施例7の制御装置における燃料制御部112は、IGV先行開フラグが有効とされた場合に、入口案内翼22の開度に応じて燃料流量を増加させる。
燃料制御部112は、低値選択部730から出力されたCSOを補正するCSO補正部731を備える。
低値選択部730は、一例として、ガバナ設定値GVCSO、ロードリミット設定値LDCSO、ブレードパス温度設定値BPCSO、排ガス温度設定値EXCSOが入力され、このうちから最小のCSOを出力する。
CSO補正部731は、信号発生器(SG1)217、信号発生器(SG2)218と、信号切換器219と、レートリミッタ220と、補正関数器(FX20)736と、加算器737と、運転モード設定部75と、を備えている。
信号発生器(SG1)217は、例えば0とされる第1信号を発生し、信号発生器(SG2)218は、所定値を示す第2信号を発生し、信号切換器219は、信号発生器(SG1)217と信号発生器(SG2)218とをIGV先行開フラグが有効か無効かに応じて切り替える。レートリミッタ220は、信号切換器219からの信号の時間変化率を制限し、補正関数器(FX20)736は、IGV先行開フラグで設定された空気流量の増加に応じた燃料流量(CSO)の補正値を算出する。加算器737は、低値選択部730から出力されたCSOに補正関数器(FX20)736から出力された補正値を加算し、補正後のCSOとして出力する。
このような構成により、IGV先行開フラグが無効な場合には、信号切換器219により信号発生器(SG1)217の第1信号が選択され、第1信号に応じた補正値が低値選択部730から出力されたCSOに加算される。このとき、第1信号は「0」に設定されているので、IGV先行開フラグが無効な場合には、低値選択部730によって選択されたCSOが補正後のCSOとしてそのまま出力される。
一方、IGV先行開フラグが有効な場合には、信号切換器219により信号発生器(SG2)218の第2信号が選択され、第2信号に応じた補正値が低値選択部730から出力されたCSOに加算される。これにより、IGV先行開フラグが有効な場合には、低値選択部730によって選択されたCSOに補正値が加算され、補正後のCSOとして出力される。これにより、IGV先行開フラグが有効とされた場合に、燃焼器12へ供給される燃料流量が増加する。
ここで、レートリミッタ220と補正関数器736との間には、運転モード設定部75が設けられている。運転モード設定部75は、操作部63において設定されたガスタービン1の性能と応答性との割合に基づいて、レートリミッタ220から出力されるIGV開度を調整する。具体的に、運転モード設定部75には、レートリミッタ220から出力されるIGV開度が応答性重視モード設定値として入力される。また、運転モード設定部75には、IGV開度が「0」となる性能重視モード設定値が入力される。そして、運転モード設定部75には、操作部63において設定された運転モード指標値が入力される。
運転モード設定部75は、これらの入力に基づいて、補正関数器736へ出力するIGV開度を調整する。運転モード設定部75は、例えば、ガスタービン1の性能が100%である場合、レートリミッタ220から出力されるIGV開度の割合を0%として、性能重視モード設定値であるIGV開度「0」を、補正関数器736へ向けて出力する。一方で、運転モード設定部75は、例えば、ガスタービン1の応答性が100%である場合、レートリミッタ220から出力されるIGV開度の割合を100%として、レートリミッタ220から出力されるIGV開度を、補正関数器736へ向けてそのまま出力する。
なお、待機値RCSOは、加算器737から出力されたCSOに信号発生器(SG32)738から出力される値が加算器739によって加算され、信号発生器(SG33)740から出力される変化率(低下レート)によるレートリミッタ741を介して算出される。
入口案内翼22が全開でない場合に負荷を増加させる場合、負荷追従性を向上させるために、入口案内翼22の開度を通常より開け気味とすることにより、タービン入口温度が過度に低下することが懸念される。実施例7に係るガスタービン1の制御装置では、入口案内翼22の開度が開き気味になることによる空気流量の増加に応じて燃料流量を増加させることができるので、タービン入口温度の過度な低下を防ぐことができる。
次に、図25を参照して、実施例8に係る制御装置について説明する。図25は、実施例8に係る制御装置において用いられるガスタービンの負荷に応じて排気ガス温度が変化する温調線を示すグラフである。なお、実施例8でも、重複した記載を避けるべく、実施例1から7と異なる部分について説明し、実施例1から7と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図25に示すように、実施例8の制御装置における制御部61は、図25に示す定格温調線T1、先行設定線T2及び限界温調線T3を用いて、温調制御を行っている。図25のグラフは、その横軸が、ガスタービン負荷となっており、その縦軸が、排気ガス温度となっている。なお、定格温調線T1、先行設定線T2及び限界温調線T3は、排気ガス温度と圧縮機11の圧力比とで規定される関数となっている。このため、制御部61は、車室圧力計51の計測結果に基づいて、圧縮機11の圧力比を導出し、導出された圧力比から、定格温調線T1、先行設定線T2及び限界温調線T3に基づいて、排気ガス温度(後述する定格排気ガス温度、先行排気ガス温度及び限界排気ガス温度)を導出する。
図25に示すように、定格温調線T1、先行設定線T2及び限界温調線T3は、ガスタービン負荷(より具体的には、圧力比)が大きくなるにつれて排気ガス温度が低下するラインとなっている。以下、定格温調線T1、先行設定線T2及び限界温調線T3について具体的に説明する。
定格温調線T1は、所定のガスタービン負荷におけるガスタービン1の性能が定格性能となるように、ガスタービン負荷に応じた定格排気ガス温度に設定されている。このとき、定格温調線T1の定格排気ガス温度は、タービン入口温度が予め設定された上限温度を超えないような排気ガス温度となっている。なお、定格性能とは、発電機15からガスタービン1に所定の負荷が与えられたときに、ガスタービン1の運転効率が最適となる性能である。この定格温調線T1は、部分負荷運転または全負荷運転の整定時において、排気ガス温度計54により計測された排気ガス温度(排気ガス計測温度)が、定格温調線T1の定格排気ガス温度となるラインとなっている。つまり、制御部61は、排気ガス計測温度が、定格排気ガス温度となるように、ガスタービン1の運転をフィードバック制御(例えば、PI制御)している。
ここで、図25には、入口案内翼22が定格開度となるIGV定格角度ラインL1が図示されている。このため、定格温調線T1とIGV定格角度ラインL1とが交差する交差点におけるガスタービン負荷が、ガスタービン1の全負荷となる交差点(定格点P)であり、また、定格点Pのガスタービン負荷に応じたガスタービン出力が、ガスタービン1の定格出力となっている。
先行設定線T2は、所定のガスタービン負荷における排気ガス温度が、定格排気ガス温度よりも先行して低くなる先行排気ガス温度に設定するためのラインである。このため、所定のガスタービン負荷における先行排気ガス温度は、定格排気ガス温度よりも低くなっている。具体的に、この先行設定線T2は、定格温調線T1に先行して入口案内翼22の開度を大きくするためのラインとなっている。このため、制御部61は、先行設定線T2上に沿ってガスタービン1の運転制御点を変化させると、定格温調線T1に基づいて設定される入口案内翼22の開度よりも大きな開度となるように、入口案内翼22を制御する。
限界温調線T3は、所定のガスタービン負荷における排気ガス温度が、限界排気ガス温度を超えないようなラインとなっている。つまり、所定のガスタービン負荷における限界排気ガス温度は、定格排気ガス温度よりも高くなっており、タービン入口温度が上限温度を超えても(オーバーシュートしても)許容可能な排気ガス温度に設定されている。このため、制御部61は、排気ガス温度計54により計測された排気ガス温度(排気ガス計測温度)が、限界排気ガス温度を超えないように、ガスタービン1の運転を制御する。なお、限界温調線T3は、全負荷運転時において、その限界排気ガス温度が、定格温調線T1の定格排気ガス温度と一致するようなラインとなる。
また、図25には、排気ガス温度の制限値となる排気ガス温度制限ラインL2が図示されている。排気ガス温度制限ラインL2は、タービン13の排気側に配置される部材が熱負荷に耐え得ることが可能な温度となっている。制御部61は、排気ガス温度制限ラインL2に掛からないように、ガスタービン1の運転を制御する。
ここで、運転モード設定部75は、運転モード指標値に基づいて、先行設定線T2の先行排気ガス温度が設定されている。具体的に、運転モード設定部75は、先行設定線T2の先行排気ガス温度を設定する場合、定格温調線T1の定格排気ガス温度が性能重視モード設定値として入力され、先行設定線T2の先行排気ガス温度が応答性重視モード設定値として入力される。そして、運転モード設定部75には、操作部63において設定された運転モード指標値が入力される。
運転モード設定部75は、これらの入力に基づいて、先行設定線T2の先行排気ガス温度を調整する。運転モード設定部75は、例えば、ガスタービン1の性能が100%である場合、性能重視モード設定値である定格排気ガス温度を、先行設定線T2の先行排気ガス温度として設定する。つまり、運転モード設定部75は、ガスタービン1の性能が100%である場合、先行設定線T2を定格温調線T1に沿わせて設定する。一方で、運転モード設定部75は、例えば、ガスタービン1の応答性が100%である場合、応答性重視モード設定値である先行排気ガス温度を、先行設定線T2の先行排気ガス温度として設定する。つまり、運転モード設定部75は、ガスタービン1の応答性が100%である場合、先行設定線T2をそのままの状態とする。
以上のように、実施例8では、ガスタービン1の応答性が重視される場合、先行設定線T2をそのままの状態とする一方で、ガスタービン1の性能が重視される場合、先行設定線T2を定格温調線T1に沿わせることができる。
なお、実施例8において、限界温調線T3の限界排気ガス温度は、先行設定線T2と同様に、運転モード指標値に基づいて設定してもよい。つまり、運転モード設定部75は、定格温調線T1の定格排気ガス温度が性能重視モード設定値として入力され、限界温調線T3の限界排気ガス温度が応答性重視モード設定値として入力される。そして、運転モード設定部75には、操作部63において設定された運転モード指標値が入力される。
運転モード設定部75は、これらの入力に基づいて、限界温調線T3の限界排気ガス温度を調整する。運転モード設定部75は、例えば、ガスタービン1の性能が100%である場合、性能重視モード設定値である定格排気ガス温度を、限界温調線T3の限界排気ガス温度として設定する。つまり、運転モード設定部75は、ガスタービン1の性能が100%である場合、限界温調線T3を定格温調線T1に沿わせて設定する。一方で、運転モード設定部75は、例えば、ガスタービン1の応答性が100%である場合、応答性重視モード設定値である限界排気ガス温度を、限界温調線T3の限界排気ガス温度として設定する。つまり、運転モード設定部75は、ガスタービン1の応答性が100%である場合、限界温調線T3をそのままの状態とする。
次に、図26を参照して、実施例9に係る制御装置について説明する。図26は、実施例9に係る制御装置のIGV制御部の構成図である。なお、実施例9でも、重複した記載を避けるべく、実施例1から8と異なる部分について説明し、実施例1から8と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図26に示すように、実施例9の制御装置におけるIGV制御部113は、減算器971と、PI制御器972と、制御器973と、加算器974と、運転モード設定部75とを含む構成となっている。IGV制御部113には、ガスタービン出力と、出力デマンドと、排気ガス計測温度とが入力される。なお、IGV制御部113には、吸気温度及び車室圧力も入力され、この入力値に応じて入口案内翼22の開度が制御されるが、以下では、説明を簡単にするために、吸気温度及び車室圧力に関する説明は省略する。なお、ガスタービン出力は、ガスタービン1の実出力値である。また、出力デマンドは、ガスタービン1の負荷に応じて要求されるガスタービン1の要求出力値である。
減算器971は、排ガス計測温度と、温調線の上限温度との偏差Δを生成し、生成した偏差Δを、PI制御器972に出力する。PI制御器972は、偏差Δがゼロとなるような、IGV開度指令値を生成する。運転モード設定部75は、ガスタービン出力が性能重視モード設定値として入力され、出力デマンドが応答性重視モード設定値として入力される。そして、運転モード設定部75には、操作部63において設定された運転モード指標値が入力される。
運転モード設定部75は、これらの入力に基づいて、制御器973へ向けて出力するガスタービン1の出力値を調整する。運転モード設定部75は、例えば、ガスタービン1の性能が100%である場合、性能重視モード設定値であるガスタービン出力を、ガスタービン1の出力値として設定する。一方で、運転モード設定部75は、例えば、ガスタービン1の応答性が100%である場合、応答性重視モード設定値である出力デマンドを、ガスタービン1の出力値として設定する。
制御器973は、ガスタービン1の出力値とIGV開度とを対応付けた関数に基づいて、入力されたガスタービン1の出力値から、IGV開度指令値を生成する。加算器974は、PI制御器972で生成されたIGV開度指令値と、制御器973で生成されたIGV開度指令値とを加算して、IGV作動部22bに出力する。
このため、制御装置は、ガスタービン1の応答性を重視する場合、出力デマンドに基づいてIGV制御部113により入口案内翼22の開度を制御できることから、出力デマンドに基づくIGV制御を、ガスタービン出力に基づくIGV制御に比して、先行して制御することができる。また、制御装置は、ガスタービン1の性能を重視する場合、ガスタービン出力に基づいてIGV制御部113により入口案内翼22の開度を制御できることから、ガスタービン出力に基づくIGV制御を実行することができる。つまり、ガスタービン出力は、実出力値であることから、ガスタービン出力に基づくIGV制御では、燃料の燃焼後に、入口案内翼22の開度が制御されるため、燃空比が高めに推移する。一方で、出力デマンドに基づくIGV制御では、燃料の燃焼前に、入口案内翼22の開度が制御されるため、燃空比を低めに推移させることができる。
以上のように、実施例9では、ガスタービン1の応答性が重視される場合、制御装置は、出力デマンドに基づいてIGV制御部113を実行することで、燃空比を低めに推移させることができ、タービン入口温度を低下させることができる。一方で、ガスタービン1の性能が重視される場合、制御装置は、ガスタービン出力に基づいてIGV制御部113を実行することで、燃空比を高めに推移させることができ、タービン入口温度を上昇させることができる。
なお、実施例1から9では、発電を行うガスタービン1に適用したが、航空機等のガスエンジンに適用してもよく、特に限定されない。